画像形成装置
【課題】ヘッドタンクの液体残量に応じて変位する変位部材を装置本体側の検知手段で検知して満タン検知を行なうようにした場合に印字速度が低下する。
【解決手段】キャリッジ33の第1センサ251で変位部材205を検知した第1位置Hと装置本体の第2センサ301で変位部材205を検知した大気開放位置Fとの間の変位量jから所定変位量kを減じた差分変位量cに相当する差分供給量Cを保持し、画像形成動作中に、ヘッドタンク35の液体残量が減少する方向に変位部材205が変位して、第1センサ251が変位部材205を検知した後のヘッドタンクの液体の消費量が予め定めた所定液体消費量になったとき、メインタンク10からヘッドタンク35への液体供給を開始し、ヘッドタンク35の液体残量が増加する方向に変位部材205が変位して、第1センサ251が変位部材205を検知した後、差分供給量Cの液体をヘッドタンク35に供給する。
【解決手段】キャリッジ33の第1センサ251で変位部材205を検知した第1位置Hと装置本体の第2センサ301で変位部材205を検知した大気開放位置Fとの間の変位量jから所定変位量kを減じた差分変位量cに相当する差分供給量Cを保持し、画像形成動作中に、ヘッドタンク35の液体残量が減少する方向に変位部材205が変位して、第1センサ251が変位部材205を検知した後のヘッドタンクの液体の消費量が予め定めた所定液体消費量になったとき、メインタンク10からヘッドタンク35への液体供給を開始し、ヘッドタンク35の液体残量が増加する方向に変位部材205が変位して、第1センサ251が変位部材205を検知した後、差分供給量Cの液体をヘッドタンク35に供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッド及び記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置として例えばインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
このような画像形成装置において、記録ヘッドにインクを供給するヘッドタンク(サブタンク、バッファタンクとも称される。)を備え、記録ヘッドのノズルからのインクの染み出しやダレを防止するために負圧を発生する負圧形成機能(機構)をヘッドタンクに持たせたものが知られている。このヘッドタンクは、インクを収容するインク収容部の一面を形成する可撓性部材(フィルム部材)と、可撓性部材を外方に付勢する弾性部材とを含む負圧形成手段を有し、インク収容部内を大気に開放する開閉可能な大気開放機構を有して、インク収容部から記録ヘッドにインクを供給する構成となっている。
【0004】
そして、このヘッドタンクには可撓性部材の変位に応じて変位する変位部材(検知部材、検知フィラともいう。)を設け、ヘッドタンクの大気開放機構を開放してメインタンクからヘッドタンクにインクを供給する大気開放充填を行なうときには、キャリッジを所定の検知位置(満タン充填位置)に移動し、装置本体側に設けた大気開放機構の駆動手段を作動させてヘッドタンクを大気開放した状態で、キャリッジを予め定めたキャリッジ位置に移動させた状態からインク充填を行なって、装置本体側の検知手段が変位部材を検知したときを満タン充填位置とするようにしている(特許文献1ないし9)。
【0005】
この場合、印字動作中でもインクの補充供給を行えるようにするため、印刷中のインク消費量が予め定めた第1の所定値以上のとき、印刷中にメインタンクからヘッドタンクに対して供給したインク供給量に相関する情報に基づき、供給量が予め定めた第2の所定値以下のときにはメインタンクからヘッドタンクに対してインク供給を行い、供給量が第2の所定値を超えているときにはメインタンクからヘッドタンクに対してインク供給を行わないようにしている(上記特許文献9)。
【0006】
なお、上述したようなヘッドタンク構成ではなく、ヘッドタンクにインク残量検出手段を設けて印字動作中もインク供給を行なうものもある(特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4298464号公報
【特許文献2】特許第4190001号公報
【特許文献3】特許第4155879号公報
【特許文献4】特開2007−015153号公報
【特許文献5】特開2007−130979号公報
【特許文献6】特開2008−132638号公報
【特許文献7】特開2009−023329号公報
【特許文献8】特開2009−274325号公報
【特許文献9】特開2009−023092号公報
【特許文献10】特許第3219326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、ヘッドタンクにインク残量に応じて変位する変位部材を有し、装置本体側でヘッドタンクの満タン検知を行なうようにした場合、メインタンクからヘッドタンクにインクを供給するときに、キャリッジを所定の充填満タン位置まで移動しなければならず、印字動作中にヘッドタンク内のインク残量が少なくなると供給動作を行なうために印字動作を中断しなければならなくなり、印字速度が低下するという課題がある。
【0009】
この場合、ヘッドタンクのインク消費量を吐出滴数のカウントなどによって算出し、消費量に相当する供給量でメインタンクからインク供給を行なうこともできるが、正確に充填満タン位置の検知を行なっていないために、供給不足による過剰負圧、あるいは、供給過剰による過小負圧になるおそれがあり、必ず、定期的にキャリッジを充填満タン検知位置にして大気開放充填を行なう必要があり、印字動作を中断しなければならなり、印字速度が低下するという課題は残る。
【0010】
また、キャリッジ側にヘッドタンクのインク残量を検出する手段やヘッドタンクの大気開放機構を駆動する手段を備えて、ヘッドタンクに対するインク供給を制御するために必要な部材や手段をキャリッジに搭載することも考えられるが、このような構成を採用すると、キャリッジ重量が増加するという課題や、キャリッジサイズが大きくなり、装置全体が大型化するという課題が生じることになる。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ヘッドタンクの液体残量に応じて変位する変位部材を装置本体側の検知手段で検知して満タン検知を行なうようにした場合でも、印字動作中のヘッドタンクへの満タン充填を行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、
前記記録ヘッド及び前記ヘッドタンクを搭載したキャリッジと、
前記ヘッドタンクに供給する液体を収容するメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体供給を行なう送液手段と、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体の供給を制御する供給制御手段と、を備え、
前記ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、
前記キャリッジには前記変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、
装置本体側には前記変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、
前記第1検知手段で検知する前記変位部材の第1位置は前記第2検知手段で検知する前記変位部材の第2位置よりも前記ヘッドタンクの液体残量が少ない位置であり、
前記供給制御手段は、
前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量を検出し、検出した変位量から予め定めた所定変位量を減じた差分変位量又は前記差分変位量に相当する差分供給量を保持し、
画像形成動作中に、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後の前記ヘッドタンクの液体の消費量が予め定めた所定液体消費量になったとき、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの前記液体の供給を開始し、前記ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後、前記差分変位量に相当する差分供給量の前記液体を前記ヘッドタンクに供給する制御を行う
構成とした。
【0013】
また、前記供給制御手段は、前記差分変位量に相当する前記差分供給量の前記液体を供給するとき、前記送液手段を最大送液量で駆動したときの送液量が前記差分変位量に相当する前記差分供給量を越えない時間で、前記送液手段の駆動を管理する構成とできる。
【0014】
また、前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクが収容可能な予め定めた総液体量から、前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量に相当する液体量、及び、予め定めた所定液体量を減じた液体量である構成とできる。
【0015】
また、前記液体消費量を計測する消費量計測手段を有し、
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクが収容可能な予め定めた総液体量から、前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量に相当する液体量、及び、予め定めた所定液体量を減じた液体量を、前記消費量計測手段の計測誤差が予め定めた最大値であるときにも越えない消費量である
構成とできる。
【0016】
また、前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で前記変位部材が変位しなくなる位置と前記第1検知手段が前記変位部材を検知する第1位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた所定液体量を減じた液体量である構成とできる。
【0017】
また、前記液体消費量を計測する消費量計測手段を有し、
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で前記変位部材が変位しなくなる位置と前記第1検知手段が前記変位部材を検知する第1位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた所定液体量を減じた液体量を、前記消費量計測手段の計測誤差が予め定めた最大値であるときにも越えない消費量である
構成とできる。
【0018】
本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、
前記記録ヘッド及び前記ヘッドタンクを搭載したキャリッジと、
前記ヘッドタンクに供給する液体を収容するメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体供給を行なう送液手段と、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体の供給を制御する供給制御手段と、を備え、
前記ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、
前記キャリッジには前記変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、
装置本体側には前記変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、
前記第1検知手段は前記変位部材が充填満タン位置と供給開始位置との間で定めた第1位置を検知し、
前記第2検知手段は前記変位部材が前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で変位しなくなる第2位置を検知し、
前記第1検知手段で検知する前記変位部材の第1位置は前記第2検知手段で検知する前記変位部材の第2位置よりも前記ヘッドタンクの液体残量が多い位置であり、
前記供給制御手段は、
前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた第1所定変位量を減じた第1差分変位量に相当する液体量を所定液体消費量として保持し、
前記第2位置と前記充填満タン位置との間の前記変位部材の変位量から前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量を減じた第2差分変位量又は前記第2差分変位量に相当する差分供給量を保持し、
画像形成動作中に、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後の前記ヘッドタンクの液体の消費量が前記所定液体消費量になったとき、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの前記液体の供給を開始し、前記ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後、前記差分変位量に相当する差分供給量の前記液体を前記ヘッドタンクに供給する制御を行う
構成とした。
【0019】
ここで、前記ヘッドタンクには前記液体残量が減少する方向における前記変位部材の変位限度を規制する当接部が設けられている構成とできる。
【0020】
また、これらの本発明に係る画像形成装置においては、
前記ヘッドタンクは、
前記液体を収容する収容部を形成するタンク本体と、
前記収容部の壁面を形成する可撓性部材と、
前記可撓性部材を収容部の容積が拡大する方向に付勢する付勢手段と、を有し、
前記変位部材を前記収容部の外側で前記可撓性部材側に押し付けられて揺動可能に配設され、
前記変位部材を前記可撓性部材に押し付ける手段の押し付け力は、前記キャリッジが走査されたときに前記変位部材に作用する回転慣性力よりも強い
構成とできる。
【0021】
また、複数の前記ヘッドタンクが並べて前記キャリッジに搭載され、
隣り合う前記ヘッドタンクの前記変位部材の前記第1検知手段で検知される部位が互い違いに配置されている構成とできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る画像形成装置によれば、ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、キャリッジには変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、装置本体側には変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、第1検知手段で検知する変位部材の第1位置は第2検知手段で検知する変位部材の第2位置よりもヘッドタンクの液体残量が少ない位置であり、供給制御手段は、第1位置と第2位置との間の変位部材の変位量を検出し、検出した変位量から予め定めた所定変位量を減じた差分変位量又は差分変位量に相当する差分供給量を保持し、画像形成動作中に、ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後のヘッドタンクの液体の消費量が予め定めた所定液体消費量になったとき、メインタンクからヘッドタンクへの液体の供給を開始し、ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後、差分変位量に相当する差分供給量の液体をヘッドタンクに供給する制御を行う構成としたので、キャリッジの移動中でもヘッドタンクにメインタンクから適切な量の液体を供給することができ、印刷速度の向上を図れる。
【0023】
本発明に係る画像形成装置によれば、ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、キャリッジには変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、装置本体側には変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、第1検知手段は変位部材が充填満タン位置と供給開始位置との間で定めた第1位置を検知し、第2検知手段は変位部材がヘッドタンクの液体残量が減少する方向で変位しなくなる第2位置を検知し、第1検知手段で検知する変位部材の第1位置は第2検知手段で検知する変位部材の第2位置よりもヘッドタンクの液体残量が多い位置であり、供給制御手段は、第1位置と第2位置との間の変位部材の変位量から予め定めた第1所定変位量を減じた第1差分変位量に相当する液体量を所定液体消費量として保持し、第2位置と充填満タン位置との間の変位部材の変位量から第1位置と第2位置との間の変位部材の変位量を減じた第2差分変位量又は第2差分変位量に相当する差分供給量を保持し、画像形成動作中に、ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後のヘッドタンクの液体の消費量が所定液体消費量になったとき、メインタンクからヘッドタンクへの液体の供給を開始し、ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後、差分変位量に相当する差分供給量の液体をヘッドタンクに供給する制御を行う構成としたので、キャリッジの移動中でもヘッドタンクにメインタンクから適切な量の液体を供給することができ、印刷速度の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態の説明に供する画像形成装置の機構部の側面概略構成図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】ヘッドタンクの一例を示す模式的平面説明図である。
【図4】同じく図3の模式的正断面説明図である。
【図5】インク供給排出系の説明に供する模式的説明図である。
【図6】制御部の概要を説明するブロック説明図である。
【図7】ヘッドタンクの負圧形成動作の説明に供する説明図である。
【図8】ヘッドタンク内の負圧とインク量の関係の説明に供する説明図である。
【図9】ヘッドタンクの変位部材を大気開放位置に設定する方法の説明に供する説明図である。
【図10】ヘッドタンクの変位部材の変位量の検知の説明に供する説明図である。
【図11】第1センサが変位部材を検知する第1位置と第2センサが変位部材を検知する第2位置との間における変位部材の変位量(差分)を検出する方法の説明に供する説明図である。
【図12】ヘッドタンクの変位部材の各位置の説明に供する模式的説明図である。
【図13】第1センサ及び第2センサの配置例を説明する説明図である。
【図14】制御部による差分変位量の検出処理の説明に供するフロー図である。
【図15】同じく印字中充填の説明に供するフロー図である。
【図16】本発明の第1実施形態における差分供給量の設定の説明に供するヘッドタンクの変位部材の各位置を説明する模式的説明図である。
【図17】同じく差分供給量の決定方法の説明に供する模式的説明図である。
【図18】同じく変位部材の変位量に対する液体量のバラツキ範囲の関係の一例を示す説明図である。
【図19】本発明の第2実施形態における所定液体消費量の設定の説明に供する説明図である。
【図20】本発明の第3実施形態における所定液体消費量の設定の説明に供する説明図である。
【図21】本発明の第4実施形態における差分供給量及び所定液体消費量の設定の説明に供する説明図である。
【図22】本発明の第5実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【図23】本発明の第6実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【図24】本発明の第7実施形態の説明に供するヘッドタンク配列の模式的平面説明図である。
【図25】同ヘッドタンクの変位部材の要部斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、後述する主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0026】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0027】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0028】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のメインタンクであるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0029】
また、キャリッジ33の主走査方向に沿ってエンコーダスケール91が配設され、キャリッジ33にはエンコーダスケール91を読み取るエンコーダセンサ92が設けられて、これらのエンコーダスケール91とエンコーダセンサ92によってリニアエンコーダ90を構成し、このリニアエンコーダ90の検出信号によってキャリッジ33の主走査方向位置(キャリッジ位置)や移動量を検出するようにしている。
【0030】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0031】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0032】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、後述する副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0033】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0034】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0035】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0036】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0037】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0038】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0039】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0040】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0041】
次に、ヘッドタンク35の一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドタンク35の1つのノズル列分の模式的上面説明図、図4は同じく模式的正面説明図である。
ヘッドタンク35は、インクを保持するための一側部が開口したインク収容部を形成するタンク本体であるタンクケース201を有し、このタンクケース201の開口部は可撓性部材である可撓性フィルム203で密閉してインク収容部202を形成し、タンクケース201内に配置した弾性部材としてバネ204によって可撓性部材である可撓性フィルム203を常時外方へ付勢している。これにより、タンクケース201のフィルム203がバネ204によって外方への付勢力が作用しているので、タンクケース201のインク収容部202内のインク残量が減少することによって負圧が発生する。
【0042】
また、タンクケース201の外側には、一端部側を支軸206で揺動可能に支持され、スプリング210によってタンクケース201側に向けて付勢されているフィラからなる変位部材(以下、単に「フィラ」とも表記することがある。)205がフィルム203に接着などで固定され、可撓性フィルム203の動きに連動して変位部材205が変位する。
【0043】
この変位部材205をキャリッジ33に設ける後述する第1検知手段(第1センサ)251や装置本体側に配置された後述する第2検知手段(第2センサ)301などで検知することでヘッドタンク35内のインク残量や負圧などを検知することができる。
【0044】
また、タンクケース201の上部には、インクカートリッジ10からインクを供給するための供給口209があり、インク供給チューブ36に接続されている。また、タンクケース201の側部には、ヘッドタンク35内を大気に開放する大気開放機構207が設けられている。
【0045】
この大気開放機構207は、ヘッドタンク35内に連通する大気開放路207aを開閉する弁体207b及びこの弁体207bを閉弁状態に付勢するスプリング207cなどを備え、装置本体側の大気開放ソレノイド302によって弁体207bを押すことで開弁されて、ヘッドタンク35内に大気開放状態(大気に連通した状態)になる。
【0046】
また、ヘッドタンク35内のインク液面高さを検出するための電極ピン208aと208bが取り付けられている。インクは電導性を持っており、電極ピン208aと208bの所までインクが到達すると、電極ピン208aと208b間に電流が流れて両者の抵抗値が変化するため、インク液面高さが所定高さ以下になった、すなわち、ヘッドタンク35の空気量が所定量以上になったことを検出することができる。
【0047】
次に、この画像形成装置におけるインク供給排出系について図5を参照して説明する。
まず、インクカートリッジ(以下、「メインタンク」という。)10からヘッドタンク35に対するインク供給は、供給ユニット24の送液手段である送液ポンプ241によって供給チューブ36を介して行なわれる。なお、供給ポンプ241は、チューブポンプなどで構成した可逆型ポンプであり、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを供給する動作と、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻す動作とを行なえるようにしている。
【0048】
また、維持回復機構81は、前述したように記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする吸引キャップ82aと、吸引キャップ82aに接続された吸引ポンプ812を有し、キャップ82aでキャッピングした状態で吸引ポンプ812を駆動することで吸引チューブ811を介してノズルからインクを吸引することによってヘッドタンク35内のインクを吸引することができる。なお、吸引された廃インクは廃液タンク813に排出される。
【0049】
また、装置本体側にはヘッドタンク35の大気開放機構207を開閉する押圧部材である大気開放ソレノイド302が配設され、この大気開放ソレノイド302を作動させることで大気開放機構207を開放することができる。
【0050】
さらに、キャリッジ33には、変位部材205を検知する第1検知手段である光学センサからなる第1センサ251が設けられ、装置本体側には変位部材205を検知する光学センサからなる第2検知手段である第2センサ301が設けられている。後述するように、これらの第1、第2センサ251、301の検知結果を使用してヘッドタンク35に対するインク供給動作を制御する。
【0051】
なお、上述した送液ポンプ241、大気開放ソレノイド302、吸引ポンプ812の駆動制御、本発明に係るインク供給制御は、制御部500によって行なわれる。
【0052】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図6を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司り、本発明に係る供給制御手段などを兼ねるCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な記憶保持手段を兼ねる不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0053】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81の維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、ヘッドタンク35の大気開放機構207を開閉する装置本体側に設けられた大気開放ソレノイド302、送液ポンプ241を駆動する供給系駆動部512などを備えている。
【0054】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0055】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0056】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0057】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0058】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0059】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ制御部510、ACバイアス供給部511の制御、ヘッドタンク35に対するインク供給の制御などに使用する。
【0060】
センサ群515は、前述した第1センサ251、第2センサ301、検知電極ピン208a、208bのほか、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ(環境温度センサ、環境湿度センサ)、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
【0061】
次に、このように構成した画像形成装置におけるヘッドタンク35の負圧形成動作について図7を参照して説明する。
図7(a)に示すように、ヘッドタンク35にメインタンク10からインクを供給した後、上述したようにしてヘッドタンク35からインクを吸引し、あるいは、記録ヘッド34を駆動して滴吐出(画像形成に寄与しない液滴の吐出:空吐出)を行ない、ヘッドタンク35内のインク量を減少させることで、同図(b)に示すように、スプリング204の付勢力に抗して可撓性フィルム203が内側に変位しようとし、スプリング204の付勢力でヘッドタンク35内に負圧が発生する。
【0062】
さらに、送液ポンプ241にてヘッドタンク35内を吸引することで、可撓性フィルム203がヘッドタンク35の内方に引き込まれ、スプリング204が更に圧縮されて負圧が高まる。
【0063】
この状態からヘッドタンク35内へインクを供給すると、可撓性フィルム203がヘッドタンク35の外方向に押し出されるので、スプリング204が伸びて負圧が低下する。
【0064】
これらの動作を繰り返すことで、ヘッドタンク35内の負圧を一定内に保つよう制御することができる。
【0065】
すなわち、図8に示すように、ヘッドタンク35内の負圧はヘッドタンク35内のインク量と相関関係にあり、ヘッドタンク35内のインク量が多いとき、ヘッドタンク35内の負圧は小さく弱い状態であり、インク量が少ないとき、ヘッドタンク35内の負圧は大きく強くなる。そして、ヘッドタンク35内の負圧が弱すぎると記録ヘッド34からインクが漏液することになり、負圧が強すぎると記録ヘッド34から空気や塵を混入してしまい、吐出不良が生じやすくなる。
【0066】
そこで、ヘッドタンク35内の負圧が所定の負圧制御範囲A内に収まるヘッドタンク35内のインク量Bの範囲内になるように、ヘッドタンク35に対するインク供給を制御するようにしている。なお、以下では、この負圧制御範囲Aの下限値(負圧が小さい値、インク量が多い値)に対応するヘッドタンク35のインク量を変位部材205の変位位置で「充填満タン位置」と表記し、負圧制御範囲Aの上限値(負圧が大きい値、インク量が少ない値)に対応するインク量を変位部材205の変位位置で「インク空位置」(インク残量なしとして設定する位置)と表記する。
【0067】
次に、ヘッドタンク35の変位部材205を大気開放位置に設定する方法について図9を参照して説明する。なお、ヘッドタンク35は図3及び図4と異なり模式的に示している。
【0068】
まず、図9(a)に示す状態から、大気開放機構207を開いてヘッドタンク35内の負圧を解放することで、図9(b)に示すようにヘッドタンク35内の液面が低下する。なお、このとき、供給口部209の供給口209aは液面下にあることが好ましい。
【0069】
すなわち、供給口209aが液面上になると、供給口209aか供給口部209を介して供給チューブ36に空気が混入し、次にインクを供給したとき、供給口209aからインクと共に気泡が排出されることがあり、そのまま供給を続けると、気泡が大気開放機構207内に付着して、弁の固着や液漏れを生じるおそれがある。
【0070】
そして、ヘッドタンク35の負圧が解放され、液面が下がった後、図9(c)に示すように、インク300を供給する。インク300を供給することで液面が上昇し、電極ピン208a、208bが所定高さの液面を検知するまで、つまり所定の位置までインク300を供給する。このときのヘッドタンク35の変位部材205の位置を大気開放位置とする。
【0071】
次に、ヘッドタンク35の変位部材205の変位量の検知について図10を参照して説明する。なお、ここでは、装置本体側に設けられた第2センサ301のみを使用して変位量を検知する場合について説明する。
【0072】
図10(a)に示すように、第2センサ301がヘッドタンク35の変位部材205を検知しているときのキャリッジ33の位置(キャリッジ位置:リニアエンコーダ90によって得られる。)を記憶しておき、図10(b)に示すように変位部材205が実線図示の位置から破線図示の位置まで変位した場合に、第2センサ301が変位部材205を検知するまでキャリッジ33を相対移動することで、記憶したキャリッジ位置との差分(キャリッジ移動量)を変位部材205の変位量として得ることができる。
【0073】
次に、ヘッドタンク35のインク量を充填満タン位置に設定する方法について説明する。
前述したように、大気開放機構207を開放状態にしてヘッドタンク35内を大気圧にした後、電極ピン208が液面を検知する所定の位置までインク供給して大気開放機構207を閉じることで、変位部材205は大気開放位置となる。
【0074】
このヘッドタンク35の変位部材205が大気開放位置にあることを第2センサ301で検知し、このときのキャリッジ位置から予め定めた指定カウント値L分をキャリッジ走査し、第2センサ301が変位レバー205を検知するまでインクを逆引きする(メインタンク10にインクを戻す。)。そして、この位置を充填満タン位置とする。
【0075】
つまり、充填満タン位置は、大気開放位置から所定の変位量分だけ変位部材205を変位させた位置として設定する。これにより、負圧を考慮した充填満タン位置を設定でき、大気開放位置から充填満タン位置までの変位部材205の変位量のバラツキを一切無くし、変位部材205の変位量にて制御を行う動作に対して高精度の制御を行うことができるようになる。
【0076】
次に、第1センサ251が変位部材205を検知する第1位置と第2センサ301が変位部材205を検知する第2位置との間における変位部材205の変位量(差分)を検出する方法について図11を参照して説明する。
【0077】
図11(a)に示すように、第2センサ301が変位部材205を検知可能な位置にキャリッジ33を移動させ、図11(b)に示すように、変位部材205が大気開放位置又は充填満タン位置にある状態から送液ポンプ241の逆転動作にて、第1センサ251が変位部材205を検知するまでインク吸引してから逆転動作を停止する。
【0078】
そして、図11(c)に示すように、第1センサ251を変位部材205が検知している状態で、キャリッジ33を第2センサ301が変位部材205を検知するまで移動し、その移動距離をリニアエンコーダ90で計測(カウント)することで、大気開放位置又は充填満タン検出位置から第1センサ251が変位部材205を検知するまでの可撓性フィルム203又は変位部材205の変位量(差分)を得ることができる。
【0079】
次に、第2センサ301を使用しないでヘッドタンク35に対するインク供給を行うときの制御について説明する。
ここでは、詳細は後述するが、大気開放位置から第1センサ251が変位部材205を検知する第1位置の変位量(差分)を検出して、差分から予め定めた所定変位量を減じた値を差分変位量とし、この差分変位量に相当する液体量を差分供給量としてNVRAM504などの不揮発性記憶手段に記憶保持する。
【0080】
そして、キャリッジ33の走査中(画像形成動作中)に、ヘッドタンク35のインク残量が減少する方向に変位部材205が変位して、第1センサ251が変位部材205を検知した後のヘッドタンク35のインクの消費量が予め定めた所定液体消費量になったときに、メインタンク10からヘッドタンク35にインクを供給充填し、ヘッドタンク35の変位部材205がインク残量が増加する方向に変位して第1センサ251で変位部材205を検知した後、更に差分供給量のインクを供給することで、ヘッドタンク35内に充填満タン位置までインクを供給する。
【0081】
この場合、第1センサ251による検知は位置検知であるので、インクの吐出量の検知誤差や、送液ポンプ241の送液量の検知誤差など、検知誤差の積み上がりは、第1センサ251が検知した時点でなくなり、検知誤差が積み上がることなく、キャリッジ33を走査中でも、インク吐出及びインク供給を繰返し行うことができるようになる。
【0082】
また、ヘッドタンク35のインク残量が減少する方向に変位部材205が変位して、第1センサ251が変位部材205を検知した後のヘッドタンク35のインクの消費量を計測することで、後述するソフトカウントによるインク消費量の計測誤差を低減することができる。
【0083】
これら一連の動作を繰り返すことにより、印刷動作を途中で中断することなく、常にヘッドタンク35に充填満タン位置までインクを供給することができ、印刷速度や印刷効率の向上を図ることができる。
【0084】
ここで、上述したヘッドタンク35の変位部材の変位位置について図12を参照して説明する。
ヘッドタンク35の負圧の適正範囲として、変位部材205の位置を、図12に示すように、負圧の小さい側を充填満タン位置(インク量上限値)G、負圧の大きい側を供給開始位置(インク量下限値)Iとする。この充填満タン位置Gと供給開始位置Iとの間における変位部材205の変位が、前述した適正負圧A(図8)が得られる適正負圧領域Yとなる。
【0085】
このとき、大気開放位置Fは充填満タン位置Gよりも変位部材205が開いた位置(ヘッドタンク35のインク残量が多い位置)となり、大気開放位置Fと充填満タン位置Gとの間の変位部材205の変位量は前述したキャリッジ移動量のカウント値Lとなる。
【0086】
次に、第1センサ及び第2センサの配置例について図13を参照して説明する。なお、図13は同配置例の一例を示す模式的説明図である。
ここでは、サブタンク35の変位部材205に支軸206(揺動支点)からの長さの異なる検知部205a、205bを下方に設けて設け、キャリッジ33の第1センサ251で検知部205aを、装置本体側の第2センサ301で検知部205bを検知する構成としている。
【0087】
次に、制御部による上述した動作の制御について図14及び図15のフロー図を参照して説明する。
まず、図14に示す差分量検出処理では、ヘッドタンク35を大気開放状態にしてインクを充填した状態にし、第2センサ301で変位部材205(以下、図中では「フィラ」と表記する。)を検知する位置にキャリッジ33を移動する。これにより、ヘッドタンク35の変位部材205は大気開放位置になる。
【0088】
そして、変位部材205が大気開放位置にある状態から送液ポンプ241の逆転動作にて、第1センサ251が変位部材205を検知するまでインク吸引してから逆転動作を停止する。
【0089】
次いで、第2センサ301が変位部材205を検知する位置までキャリッジ33の移動を開始し、リニアエンコーダ90によるカウントを開始して、第2センサ301が変位部材205を検知したときにカウントを停止する。
【0090】
これにより、大気開放位置(第2位置)と第1センサ251が変位部材205を検知する第1位置との間の変位部材205の変位量(差分)が検出されるので、この差分から予め定めた所定変位量を減じた値(差分変位量)を得て、この差分変位量に相当する液体量を差分供給量として記憶保持する。なお、差分変位量そのものを記憶保持して、インク供給動作を行うときに差分変位量に相当する液体量である差分供給量の供給を行うようにすることもできる。
【0091】
次に、図15を参照して、印字動作中充填処理では、充填満タン状態からインクが消費されることで、変位部材205はヘッドタンク35のインク残量が減少する方向に変位するので、第1センサ251が変位部材205を検知したか否かを判別する。
【0092】
そして、ヘッドタンク35のインク残量が減少する方向に変位部材205が変位して第1センサ251が変位部材205を検知したときには、その後のインク消費量を算出し、インク消費量が予め定めた所定液体消費量(所定量)以上になったか否かを判別する。
【0093】
ここで、インク消費量の算出は、例えば画像形成のために吐出された滴数や印字動作中の空吐出動作で吐出された滴数をカウントし、そのカウント値に当該滴の滴量を乗じることで計算上得ることができる(これを、ソフトカウントといい、ソフトカウントで消費量計測手段を構成している。)。また、記録ヘッド34からインクを吸引するクリーニング動作を行なったときには、当該吸引による消費量(吸引量)は予め定められているので、当該吸引量を加算すればよい。
【0094】
そして、インク消費量が予め定めた所定液体消費量(所定量)以上になったときを供給開始位置とし、送液ポンプ241を正転駆動してメインタンク10からヘッドタンク35へのインク充填(供給)を開始する。
【0095】
このとき、第1センサ251がヘッドタンク35の変位部材205を検知したか否かを判別し、第1センサ251がヘッドタンク35の変位部材205を検知したときには、そのときから更に差分供給量のインクをヘッドタンク35に充填する。
【0096】
ここで、差分供給量は、後述するように、差分から減じる所定変位量を充填満タン位置とバラツキを考慮して定めていることから、ヘッドタンク35には、充填満タン位置又はその近傍(インク残量が少ない側)までインク充填を行うことができる。
【0097】
その後、送液ポンプ241を停止し、インク消費量の計算値をリセットする。
【0098】
このようにして、印字動作中でも、キャリッジ33をホーム位置に戻すことなく、ヘッドタンク35にインクを充填することができる。
【0099】
このように、ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、キャリッジには変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、装置本体側には変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、第1検知手段で検知する変位部材の第1位置は第2検知手段で検知する変位部材の第2位置よりもヘッドタンクの液体残量が少ない位置であり、供給制御手段は、第1位置と第2位置との間の変位部材の変位量を検出し、検出した変位量から予め定めた所定変位量を減じた差分変位量又は差分変位量に相当する差分供給量を保持し、画像形成動作中に、ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後のヘッドタンクの液体の消費量が予め定めた所定液体消費量になったとき、メインタンクからヘッドタンクへの液体の供給を開始し、ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後、差分変位量に相当する差分供給量の液体をヘッドタンクに供給する制御を行う構成とすることで、画像形成中、特にキャリッジの移動中でもヘッドタンクにメインタンクから適切な量の液体を供給することができ、印刷速度の向上を図れる。
【0100】
ここで、キャリッジ33側の第1センサ251のみで検知を行わないで装置本体側にも第2センサ301を設ける理由について説明しておく。
まず、ヘッドタンク35が満タンになる位置は環境によって変化し、その変化量はキャリッジ33に搭載した第1センサ251では一点の位置しか検知できないために把握することができない。そこで、装置本体側に第2センサ301を設けることで、環境によって変化する大気開放位置や満タン検知位置を、キャリッジ33を移動することで検出することができるようになる。
【0101】
つまり、キャリッジ33上の固定された検知点とキャリッジ33を移動することで検知位置を移動可能な検知点の2点間をポンプ駆動時間や駆動回転数、またはキャリッジ移動によるエンコーダカウントにより2点間距離を検出することができ、環境に応じた供給量制御を行なうことができるようになる。
【0102】
また、キャリッジ33上のみで全ての変位を確認できるセンサやエンコーダを搭載することは、検出手段のコストが高くなり、更にキャリッジサイズが大きくなることで装置が大型化するという問題を生じることになる。
【0103】
また、送液ポンプの送液量(供給量や吸引量)は環境や経年度合い、各ポンプの部品ばらつきなどによってバラツキが生じる。そのため、環境によって変化する装置本体側の第2センサ301による検知位置までのポンプ供給量をセンサによる位置検知にて確認する必要がある。これを、装置本体側に第2センサ301を設けないで、送液ポンプの駆動量だけで制御すると、供給過多や不足による障害が発生することになるので、装置本体側にも第2センサ251を設けて制御の安全性を確保している。
【0104】
次に、本発明の第1実施形態における差分供給量の設定について図16ないし図18を参照して説明する。なお、図16はヘッドタンクの変位部材の各位置の説明に供する模式的説明図、図17は同じく差分供給量の設定方法の説明に供する模式的説明図、図18は変位部材の変位量に対する液体量のバラツキ範囲の関係の一例を示す説明図である。
【0105】
まず、図16に示すように、第2センサ301で検知する第2位置を大気開放位置Fとし、第1センサ251で検知する位置を第1位置Hとする。
【0106】
そして、大気開放位置Fを基準として差分供給量Cを決定している。つまり、大気開放位置Fと第1位置Hとの検知部材205の変位量を変位距離jとする。そして、この変位距離jから所定変位量である所定距離kを減じた距離を差分変位量cとし、この差分変位量cに相当するインク量を差分供給量Cとする。
【0107】
ここで、大気開放位置Fと第1位置Hとの間の変位距離jは、前述したように、第2センサ301でヘッドタンク35が大気開放状態にあるときの変位部材205を検知し、その後充填を行ってインクを逆引きし、第1センサ251が変位部材205を検知した状態にし、キャリッジ23を第2センサ301が変位部材205を検知するまで移動することで、キャリッジ移動距離として得ることができる。
【0108】
一方、所定距離kとは、大気開放位置Fから充填満タン位置Gまでの距離Lに、各バラツキによる所定距離mを加算したものである。各バラツキmは、変位部材205のキャリッジ走査によるバタツキ、第1、第2センサ251、301の検知距離バラツキ、検知時間バラツキ、送液ポンプ241の停止ラグなどを含むものである。
【0109】
また、距離(差分変位量)cは、ヘッドタンク35の変位部材205の変位特性(R=液体量/変位量[cc/mm])から液体量(インク量)に換算できる。
【0110】
このとき、図18に示すように、変位距離(変位量)と液体量との間には、バラツキの幅がある(斜線を施して示す領域)。つまり、同じ変位距離であっても、最小Rmin[cc]から最大Rmax[cc]まで相当する液体量には幅がある。
【0111】
そこで、差分変位量cを差分供給量Cに換算するときには、最小(Rmin[cc/mm])の液体量を使用して差分供給量Cを算出する。つまり、差分変位量cに対応する最小Rmin[cc/mm]の液体量を差分供給量Cとする。
【0112】
これにより、変位部材205の変位量のバラツキがあっても、前述したように、印字動作中に第1センサ251が変位部材205を検知した後の差分供給量Cの供給を行うときに、少なくとも満タン充填位置を超えて過充填が行われ、適正負圧範囲Aを外れて負圧が低下することを防止できる。
【0113】
また、画像形成中に差分供給量Cの供給を行うとき、供給量の管理は送液ポンプ241の送液時間(駆動時間)で管理するしている。この場合、送液ポンプ241を最大流量で駆動して送液を行っても、差分供給量Cを越えない時間tの間だけ送液を行うようにする。
【0114】
これにより、印字動作中に第1センサ251が変位部材205を検知した後の差分供給量Cの供給を行うときに、満タン充填位置を超えて過充填が行われ、適正負圧範囲Aを外れて負圧が低下することを防止できる。
【0115】
なお、前記所定距離dは、温湿度環境による変数とすることもできる。これにより、使用環境において適切な吐出性能が得られる。
【0116】
次に、本発明の第2実施形態における印字動作中の供給開始位置を決める所定液体消費量の設定について図19を参照して説明する。なお、図19は同設定の説明に供する説明図である。
【0117】
所定液体消費量Dは、ヘッドタンク35の使用する総液体量Eと大気開放位置F(前記変位距離j)を基準として設定している。
【0118】
ここでは、所定液体消費量Dは、総液体量Eから前記変位距離jに相当する最大液体量J(Rmax[cc]を用いる。)及び所定液体量M(各バラツキに相当する)を引いた液体量を、ソフトカウントによる消費量カウントが実際の吐出量と最大にずれた場合、つまり、計測誤差が予め定めた最大値であるときにも超えることがない消費量とする。
【0119】
ここで、所定液体量Fは、変位部材205のキャリッジ走査によるバタツキや、第1、第2センサ251、302の検知距離バラツキ、検知時間バラツキ、送液ポンプ241の駆動ラグなどによる供給量のバラツキを含むものである。
【0120】
これにより、変位距離−液体量換算のバラツキで所定液体消費量Dが最小になる条件で、更にソフトカウントで得られる消費量よりも実際の消費量が多かった場合でも、インクを消費しすぎてノズルダウンすることが防止される。
【0121】
なお、液体量Fは、温湿度環境による変数とすることもできる。
【0122】
次に、本発明の第3実施形態における印字動作中の供給開始位置を決める所定液体消費量の設定について図20を参照して説明する。なお、図20は同設定の説明に供する説明図である。
【0123】
本実施形態では、所定液体消費量Dは、ヘッドタンク35の変位部材205の下限側位置、即ちヘッドタンク35の液体残量が減少する方向で変位部材205の変位しなくなる位置(これを「レバー下限位置」という。)を基準として設定している。
【0124】
ここでは、所定液体消費量Dは、変位部材205のレバー下限位置と第1センサ251で変位部材205を検知する第1位置との距離nに相当する最小液体量N(Rmin[cc]を使用する。)と所定液体量P(レバー下限位置+各バラツキ分)の差の液体量を、ソフトカウントによる消費量カウントが実際の吐出量と最大にずれた場合でも超えることがない量とする。
【0125】
ここで、所定液体量Pは、変位部材205が変位しなくなる位置から、いくら手前まで使用できるかという値である。これも、各バラツキを含んでいる。
【0126】
これにより、変位距離−液体量換算のバラツキで所定液体消費量Dが最小になる条件で、更にソフトカウントで得られる消費量よりも実際の消費量が多かった場合でも、インクを消費しすぎてノズルダウンすることが防止される。
【0127】
なお、所定液体量Pは温湿度環境による変数とすることもできる。また、変位部材205が変位しなくなる位置から更に使用可能であれば、所定液体量Pを負の値として算出することもできる。
【0128】
次に、本発明の第4実施形態について図21を参照して説明する。なお、図21は同実施形態における差分供給量及び所定液体消費量の設定の説明に供する説明図である。
【0129】
本実施形態では、第1センサ251は、ヘッドタンク35の充填満タン位置から供給開始位置の間のいずれかに設定した位置を第1位置Hとして検知する。第2センサ301は、ヘッドタンク35の液体残量の下限側位置、すなわち液体残量が減少する方向において変位部材205が変位しなくなるレバー下限位置を第2位置Qとして検知する。
【0130】
この場合、第1位置Hは第2位置(レバー下限位置)Qよりもヘッドタンク35の液体残量が多い位置である。
【0131】
そして、第1位置Hと第2位置Qとの間の変位距離sから、第1所定変位量である第1所定距離u(第2位置Qと供給開始位置Iとの間の距離)を引いた第1差分変位量(距離)に相当する液体量を所定液体消費量Dとして記憶保持する。
【0132】
また、第2所定変位量である第2所定距離v(第2位置Qと充填満タン位置Gとの間の距離)から第1位置Hと第2位置Qとの間の変位距離sを減じた第2差分変位量(距離)に相当する液体量を差分供給量Cとして記憶保持する。
【0133】
そして、印字動作中にメインタンク10からヘッドタンク35にインクを供給するときには、第1センサ251が変位部材205を検知した位置から所定液体消費量D使用したときに、メインタンク10からヘッドタンク35へのインク供給を開始し、第1センサ251が変位部材205を検知した後差分供給量Cのインクをヘッドタンク35に供給する。
【0134】
つまり、本実施形態では、大気開放位置は使用せず、変位部材が変位しなくなる位置と第1センサによる第1位置を基準として、所定液体消費量D及び差分供給量Cを設定している。
【0135】
なお、第1、第2所定距離u、vは、固定値でも温湿度環境による変数でもよく、各バラツキ及びヘッドタンク35の固体バラツキを見込んで成立する値を設定する。
【0136】
これにより、大気開放位置と第1センサ251による検知位置との変位部材の変位量を検出することに伴うインクの無駄な消費を避けることができ、制御が簡単になる。
【0137】
次に、本発明の第5実施形態について図22を参照して説明する。なお、図22は同実施形態の説明に供する模式的説明図である。
ここでは、ヘッドタンク35の変位部材205の変位方向の幅を、第1センサ251が変位部材205を検知するときに、変位部材205の検知部位205aが必ず1箇所となる幅に設定している。
【0138】
つまり、変位部材205の幅が狭い場合、各バラツキや、ヘッドタンク35の固体バラツキ、変位部材205のバタツキにより、変位部材205の変位方向のどちらの端部で検知しているか判断するためには、難しい制御が必要になってしまう。
【0139】
そこで、変位部材205の検知部材205aとして十分な幅を持たせることで、図22(a)に示すように、第1センサ251がオフ(検知していないとき)には、必ず、変位部材205が第1センサ251より液体残量の多い側となり、同図(b)、あるいは(c)に示すように、オン(検知しているとき)には、必ず、変位部材205が第1センサ251より液体残量の少ない側であるようになり、必ず検知したい位置で検知できるようになる。
【0140】
また、ヘッドタンク35には変位部材205の液体残量が少なくなる方向における下限位置を規定するためのレバー当接部211を設けている。
【0141】
これにより、液体残量が少なくなる方向において変位部材205が変位しなくなるレバー下限位置の精度を向上することができる。
【0142】
次に、本発明の第6実施形態について図23を参照して説明する。なお、図23は同実施形態の説明に供する模式的説明図である。
本実施形態では、変位部材205を支軸206は、変位部材205の重心212に近い位置に配置されている。
【0143】
これにより、キャリッジ23の走査による慣性が小さくなり、変位部材205のバタツキが小さくなる。
【0144】
また、変位部材205を付勢するばね210は、キャリッジ走査よって変位部材205に作用する回転慣性力より強い付勢力で変位部材205を付勢している。
【0145】
これによっても、キャリッジ23の走査による慣性が小さくなり、変位部材205のバタツキが小さくなる。
【0146】
次に、本発明の第7実施形態について図24及び図25を参照して説明する。なお、図24は同実施形態の説明に供するヘッドタンク配列の模式的平面説明図、図25は同ヘッドタンクの変位部材の要部斜視説明図である。
【0147】
前述したようように、2つのヘッドタンク35、35が並列に配列されてキャリッジ35に搭載されている。ここで、隣り合うヘッドタンク35、35の隣り合う変位部材205については、第1センサ251による検知部位205a1、205a2が互い違いになるように設けられている。
【0148】
つまり、狭い間隔で複数のヘッドタンク35を配置したとき、第1センサ251の配置位置が限られてくるため、目的位置で検知するように、変位部材205の検知位置が設定される。このとき、隣り合う変位部材205が干渉すると正確な検知を行うことができない。そこで、隣り合う変位部材205の検知部位205a1、205a1を変位部材205が延びる方向でずらすことにより、第1センサ251による正確な検知を行うことができる。
【0149】
以上のヘッドタンクに対するインク供給動作に関する制御(処理)は、ROM502に格納されているプログラムによってコンピュータに実行させる。このプログラムは、情報処理装置(ホスト600)側にダウンロードして画像形成装置にインストールすることができる。また、本発明に係る画像形成装置と情報処理装置又は画像形成装置と本発明に係る処理を行うプログラムを有する情報処理装置とを組み合わせて画像形成システムとして構成することもできる。
【0150】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0151】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0152】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0153】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0154】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0155】
10 インクカートリッジ(メインタンク)
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35 ヘッドタンク
81 維持回復機構
201 タンクケース(液体収容部)
203 可撓性部材(可撓性フィルム)
205 変位部材(フィラ)
251 第1センサ(第1検知手段)
301…第2センサ(第2検知手段)
500…制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッド及び記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置として例えばインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
このような画像形成装置において、記録ヘッドにインクを供給するヘッドタンク(サブタンク、バッファタンクとも称される。)を備え、記録ヘッドのノズルからのインクの染み出しやダレを防止するために負圧を発生する負圧形成機能(機構)をヘッドタンクに持たせたものが知られている。このヘッドタンクは、インクを収容するインク収容部の一面を形成する可撓性部材(フィルム部材)と、可撓性部材を外方に付勢する弾性部材とを含む負圧形成手段を有し、インク収容部内を大気に開放する開閉可能な大気開放機構を有して、インク収容部から記録ヘッドにインクを供給する構成となっている。
【0004】
そして、このヘッドタンクには可撓性部材の変位に応じて変位する変位部材(検知部材、検知フィラともいう。)を設け、ヘッドタンクの大気開放機構を開放してメインタンクからヘッドタンクにインクを供給する大気開放充填を行なうときには、キャリッジを所定の検知位置(満タン充填位置)に移動し、装置本体側に設けた大気開放機構の駆動手段を作動させてヘッドタンクを大気開放した状態で、キャリッジを予め定めたキャリッジ位置に移動させた状態からインク充填を行なって、装置本体側の検知手段が変位部材を検知したときを満タン充填位置とするようにしている(特許文献1ないし9)。
【0005】
この場合、印字動作中でもインクの補充供給を行えるようにするため、印刷中のインク消費量が予め定めた第1の所定値以上のとき、印刷中にメインタンクからヘッドタンクに対して供給したインク供給量に相関する情報に基づき、供給量が予め定めた第2の所定値以下のときにはメインタンクからヘッドタンクに対してインク供給を行い、供給量が第2の所定値を超えているときにはメインタンクからヘッドタンクに対してインク供給を行わないようにしている(上記特許文献9)。
【0006】
なお、上述したようなヘッドタンク構成ではなく、ヘッドタンクにインク残量検出手段を設けて印字動作中もインク供給を行なうものもある(特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4298464号公報
【特許文献2】特許第4190001号公報
【特許文献3】特許第4155879号公報
【特許文献4】特開2007−015153号公報
【特許文献5】特開2007−130979号公報
【特許文献6】特開2008−132638号公報
【特許文献7】特開2009−023329号公報
【特許文献8】特開2009−274325号公報
【特許文献9】特開2009−023092号公報
【特許文献10】特許第3219326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、ヘッドタンクにインク残量に応じて変位する変位部材を有し、装置本体側でヘッドタンクの満タン検知を行なうようにした場合、メインタンクからヘッドタンクにインクを供給するときに、キャリッジを所定の充填満タン位置まで移動しなければならず、印字動作中にヘッドタンク内のインク残量が少なくなると供給動作を行なうために印字動作を中断しなければならなくなり、印字速度が低下するという課題がある。
【0009】
この場合、ヘッドタンクのインク消費量を吐出滴数のカウントなどによって算出し、消費量に相当する供給量でメインタンクからインク供給を行なうこともできるが、正確に充填満タン位置の検知を行なっていないために、供給不足による過剰負圧、あるいは、供給過剰による過小負圧になるおそれがあり、必ず、定期的にキャリッジを充填満タン検知位置にして大気開放充填を行なう必要があり、印字動作を中断しなければならなり、印字速度が低下するという課題は残る。
【0010】
また、キャリッジ側にヘッドタンクのインク残量を検出する手段やヘッドタンクの大気開放機構を駆動する手段を備えて、ヘッドタンクに対するインク供給を制御するために必要な部材や手段をキャリッジに搭載することも考えられるが、このような構成を採用すると、キャリッジ重量が増加するという課題や、キャリッジサイズが大きくなり、装置全体が大型化するという課題が生じることになる。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ヘッドタンクの液体残量に応じて変位する変位部材を装置本体側の検知手段で検知して満タン検知を行なうようにした場合でも、印字動作中のヘッドタンクへの満タン充填を行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、
前記記録ヘッド及び前記ヘッドタンクを搭載したキャリッジと、
前記ヘッドタンクに供給する液体を収容するメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体供給を行なう送液手段と、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体の供給を制御する供給制御手段と、を備え、
前記ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、
前記キャリッジには前記変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、
装置本体側には前記変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、
前記第1検知手段で検知する前記変位部材の第1位置は前記第2検知手段で検知する前記変位部材の第2位置よりも前記ヘッドタンクの液体残量が少ない位置であり、
前記供給制御手段は、
前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量を検出し、検出した変位量から予め定めた所定変位量を減じた差分変位量又は前記差分変位量に相当する差分供給量を保持し、
画像形成動作中に、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後の前記ヘッドタンクの液体の消費量が予め定めた所定液体消費量になったとき、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの前記液体の供給を開始し、前記ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後、前記差分変位量に相当する差分供給量の前記液体を前記ヘッドタンクに供給する制御を行う
構成とした。
【0013】
また、前記供給制御手段は、前記差分変位量に相当する前記差分供給量の前記液体を供給するとき、前記送液手段を最大送液量で駆動したときの送液量が前記差分変位量に相当する前記差分供給量を越えない時間で、前記送液手段の駆動を管理する構成とできる。
【0014】
また、前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクが収容可能な予め定めた総液体量から、前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量に相当する液体量、及び、予め定めた所定液体量を減じた液体量である構成とできる。
【0015】
また、前記液体消費量を計測する消費量計測手段を有し、
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクが収容可能な予め定めた総液体量から、前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量に相当する液体量、及び、予め定めた所定液体量を減じた液体量を、前記消費量計測手段の計測誤差が予め定めた最大値であるときにも越えない消費量である
構成とできる。
【0016】
また、前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で前記変位部材が変位しなくなる位置と前記第1検知手段が前記変位部材を検知する第1位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた所定液体量を減じた液体量である構成とできる。
【0017】
また、前記液体消費量を計測する消費量計測手段を有し、
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で前記変位部材が変位しなくなる位置と前記第1検知手段が前記変位部材を検知する第1位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた所定液体量を減じた液体量を、前記消費量計測手段の計測誤差が予め定めた最大値であるときにも越えない消費量である
構成とできる。
【0018】
本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、
前記記録ヘッド及び前記ヘッドタンクを搭載したキャリッジと、
前記ヘッドタンクに供給する液体を収容するメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体供給を行なう送液手段と、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体の供給を制御する供給制御手段と、を備え、
前記ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、
前記キャリッジには前記変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、
装置本体側には前記変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、
前記第1検知手段は前記変位部材が充填満タン位置と供給開始位置との間で定めた第1位置を検知し、
前記第2検知手段は前記変位部材が前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で変位しなくなる第2位置を検知し、
前記第1検知手段で検知する前記変位部材の第1位置は前記第2検知手段で検知する前記変位部材の第2位置よりも前記ヘッドタンクの液体残量が多い位置であり、
前記供給制御手段は、
前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた第1所定変位量を減じた第1差分変位量に相当する液体量を所定液体消費量として保持し、
前記第2位置と前記充填満タン位置との間の前記変位部材の変位量から前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量を減じた第2差分変位量又は前記第2差分変位量に相当する差分供給量を保持し、
画像形成動作中に、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後の前記ヘッドタンクの液体の消費量が前記所定液体消費量になったとき、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの前記液体の供給を開始し、前記ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後、前記差分変位量に相当する差分供給量の前記液体を前記ヘッドタンクに供給する制御を行う
構成とした。
【0019】
ここで、前記ヘッドタンクには前記液体残量が減少する方向における前記変位部材の変位限度を規制する当接部が設けられている構成とできる。
【0020】
また、これらの本発明に係る画像形成装置においては、
前記ヘッドタンクは、
前記液体を収容する収容部を形成するタンク本体と、
前記収容部の壁面を形成する可撓性部材と、
前記可撓性部材を収容部の容積が拡大する方向に付勢する付勢手段と、を有し、
前記変位部材を前記収容部の外側で前記可撓性部材側に押し付けられて揺動可能に配設され、
前記変位部材を前記可撓性部材に押し付ける手段の押し付け力は、前記キャリッジが走査されたときに前記変位部材に作用する回転慣性力よりも強い
構成とできる。
【0021】
また、複数の前記ヘッドタンクが並べて前記キャリッジに搭載され、
隣り合う前記ヘッドタンクの前記変位部材の前記第1検知手段で検知される部位が互い違いに配置されている構成とできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る画像形成装置によれば、ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、キャリッジには変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、装置本体側には変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、第1検知手段で検知する変位部材の第1位置は第2検知手段で検知する変位部材の第2位置よりもヘッドタンクの液体残量が少ない位置であり、供給制御手段は、第1位置と第2位置との間の変位部材の変位量を検出し、検出した変位量から予め定めた所定変位量を減じた差分変位量又は差分変位量に相当する差分供給量を保持し、画像形成動作中に、ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後のヘッドタンクの液体の消費量が予め定めた所定液体消費量になったとき、メインタンクからヘッドタンクへの液体の供給を開始し、ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後、差分変位量に相当する差分供給量の液体をヘッドタンクに供給する制御を行う構成としたので、キャリッジの移動中でもヘッドタンクにメインタンクから適切な量の液体を供給することができ、印刷速度の向上を図れる。
【0023】
本発明に係る画像形成装置によれば、ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、キャリッジには変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、装置本体側には変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、第1検知手段は変位部材が充填満タン位置と供給開始位置との間で定めた第1位置を検知し、第2検知手段は変位部材がヘッドタンクの液体残量が減少する方向で変位しなくなる第2位置を検知し、第1検知手段で検知する変位部材の第1位置は第2検知手段で検知する変位部材の第2位置よりもヘッドタンクの液体残量が多い位置であり、供給制御手段は、第1位置と第2位置との間の変位部材の変位量から予め定めた第1所定変位量を減じた第1差分変位量に相当する液体量を所定液体消費量として保持し、第2位置と充填満タン位置との間の変位部材の変位量から第1位置と第2位置との間の変位部材の変位量を減じた第2差分変位量又は第2差分変位量に相当する差分供給量を保持し、画像形成動作中に、ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後のヘッドタンクの液体の消費量が所定液体消費量になったとき、メインタンクからヘッドタンクへの液体の供給を開始し、ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後、差分変位量に相当する差分供給量の液体をヘッドタンクに供給する制御を行う構成としたので、キャリッジの移動中でもヘッドタンクにメインタンクから適切な量の液体を供給することができ、印刷速度の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態の説明に供する画像形成装置の機構部の側面概略構成図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】ヘッドタンクの一例を示す模式的平面説明図である。
【図4】同じく図3の模式的正断面説明図である。
【図5】インク供給排出系の説明に供する模式的説明図である。
【図6】制御部の概要を説明するブロック説明図である。
【図7】ヘッドタンクの負圧形成動作の説明に供する説明図である。
【図8】ヘッドタンク内の負圧とインク量の関係の説明に供する説明図である。
【図9】ヘッドタンクの変位部材を大気開放位置に設定する方法の説明に供する説明図である。
【図10】ヘッドタンクの変位部材の変位量の検知の説明に供する説明図である。
【図11】第1センサが変位部材を検知する第1位置と第2センサが変位部材を検知する第2位置との間における変位部材の変位量(差分)を検出する方法の説明に供する説明図である。
【図12】ヘッドタンクの変位部材の各位置の説明に供する模式的説明図である。
【図13】第1センサ及び第2センサの配置例を説明する説明図である。
【図14】制御部による差分変位量の検出処理の説明に供するフロー図である。
【図15】同じく印字中充填の説明に供するフロー図である。
【図16】本発明の第1実施形態における差分供給量の設定の説明に供するヘッドタンクの変位部材の各位置を説明する模式的説明図である。
【図17】同じく差分供給量の決定方法の説明に供する模式的説明図である。
【図18】同じく変位部材の変位量に対する液体量のバラツキ範囲の関係の一例を示す説明図である。
【図19】本発明の第2実施形態における所定液体消費量の設定の説明に供する説明図である。
【図20】本発明の第3実施形態における所定液体消費量の設定の説明に供する説明図である。
【図21】本発明の第4実施形態における差分供給量及び所定液体消費量の設定の説明に供する説明図である。
【図22】本発明の第5実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【図23】本発明の第6実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【図24】本発明の第7実施形態の説明に供するヘッドタンク配列の模式的平面説明図である。
【図25】同ヘッドタンクの変位部材の要部斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、後述する主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0026】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0027】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0028】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のメインタンクであるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0029】
また、キャリッジ33の主走査方向に沿ってエンコーダスケール91が配設され、キャリッジ33にはエンコーダスケール91を読み取るエンコーダセンサ92が設けられて、これらのエンコーダスケール91とエンコーダセンサ92によってリニアエンコーダ90を構成し、このリニアエンコーダ90の検出信号によってキャリッジ33の主走査方向位置(キャリッジ位置)や移動量を検出するようにしている。
【0030】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0031】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0032】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、後述する副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0033】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0034】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0035】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0036】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0037】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0038】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0039】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0040】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0041】
次に、ヘッドタンク35の一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドタンク35の1つのノズル列分の模式的上面説明図、図4は同じく模式的正面説明図である。
ヘッドタンク35は、インクを保持するための一側部が開口したインク収容部を形成するタンク本体であるタンクケース201を有し、このタンクケース201の開口部は可撓性部材である可撓性フィルム203で密閉してインク収容部202を形成し、タンクケース201内に配置した弾性部材としてバネ204によって可撓性部材である可撓性フィルム203を常時外方へ付勢している。これにより、タンクケース201のフィルム203がバネ204によって外方への付勢力が作用しているので、タンクケース201のインク収容部202内のインク残量が減少することによって負圧が発生する。
【0042】
また、タンクケース201の外側には、一端部側を支軸206で揺動可能に支持され、スプリング210によってタンクケース201側に向けて付勢されているフィラからなる変位部材(以下、単に「フィラ」とも表記することがある。)205がフィルム203に接着などで固定され、可撓性フィルム203の動きに連動して変位部材205が変位する。
【0043】
この変位部材205をキャリッジ33に設ける後述する第1検知手段(第1センサ)251や装置本体側に配置された後述する第2検知手段(第2センサ)301などで検知することでヘッドタンク35内のインク残量や負圧などを検知することができる。
【0044】
また、タンクケース201の上部には、インクカートリッジ10からインクを供給するための供給口209があり、インク供給チューブ36に接続されている。また、タンクケース201の側部には、ヘッドタンク35内を大気に開放する大気開放機構207が設けられている。
【0045】
この大気開放機構207は、ヘッドタンク35内に連通する大気開放路207aを開閉する弁体207b及びこの弁体207bを閉弁状態に付勢するスプリング207cなどを備え、装置本体側の大気開放ソレノイド302によって弁体207bを押すことで開弁されて、ヘッドタンク35内に大気開放状態(大気に連通した状態)になる。
【0046】
また、ヘッドタンク35内のインク液面高さを検出するための電極ピン208aと208bが取り付けられている。インクは電導性を持っており、電極ピン208aと208bの所までインクが到達すると、電極ピン208aと208b間に電流が流れて両者の抵抗値が変化するため、インク液面高さが所定高さ以下になった、すなわち、ヘッドタンク35の空気量が所定量以上になったことを検出することができる。
【0047】
次に、この画像形成装置におけるインク供給排出系について図5を参照して説明する。
まず、インクカートリッジ(以下、「メインタンク」という。)10からヘッドタンク35に対するインク供給は、供給ユニット24の送液手段である送液ポンプ241によって供給チューブ36を介して行なわれる。なお、供給ポンプ241は、チューブポンプなどで構成した可逆型ポンプであり、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを供給する動作と、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻す動作とを行なえるようにしている。
【0048】
また、維持回復機構81は、前述したように記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする吸引キャップ82aと、吸引キャップ82aに接続された吸引ポンプ812を有し、キャップ82aでキャッピングした状態で吸引ポンプ812を駆動することで吸引チューブ811を介してノズルからインクを吸引することによってヘッドタンク35内のインクを吸引することができる。なお、吸引された廃インクは廃液タンク813に排出される。
【0049】
また、装置本体側にはヘッドタンク35の大気開放機構207を開閉する押圧部材である大気開放ソレノイド302が配設され、この大気開放ソレノイド302を作動させることで大気開放機構207を開放することができる。
【0050】
さらに、キャリッジ33には、変位部材205を検知する第1検知手段である光学センサからなる第1センサ251が設けられ、装置本体側には変位部材205を検知する光学センサからなる第2検知手段である第2センサ301が設けられている。後述するように、これらの第1、第2センサ251、301の検知結果を使用してヘッドタンク35に対するインク供給動作を制御する。
【0051】
なお、上述した送液ポンプ241、大気開放ソレノイド302、吸引ポンプ812の駆動制御、本発明に係るインク供給制御は、制御部500によって行なわれる。
【0052】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図6を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司り、本発明に係る供給制御手段などを兼ねるCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な記憶保持手段を兼ねる不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0053】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81の維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、ヘッドタンク35の大気開放機構207を開閉する装置本体側に設けられた大気開放ソレノイド302、送液ポンプ241を駆動する供給系駆動部512などを備えている。
【0054】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0055】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0056】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0057】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0058】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0059】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ制御部510、ACバイアス供給部511の制御、ヘッドタンク35に対するインク供給の制御などに使用する。
【0060】
センサ群515は、前述した第1センサ251、第2センサ301、検知電極ピン208a、208bのほか、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ(環境温度センサ、環境湿度センサ)、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
【0061】
次に、このように構成した画像形成装置におけるヘッドタンク35の負圧形成動作について図7を参照して説明する。
図7(a)に示すように、ヘッドタンク35にメインタンク10からインクを供給した後、上述したようにしてヘッドタンク35からインクを吸引し、あるいは、記録ヘッド34を駆動して滴吐出(画像形成に寄与しない液滴の吐出:空吐出)を行ない、ヘッドタンク35内のインク量を減少させることで、同図(b)に示すように、スプリング204の付勢力に抗して可撓性フィルム203が内側に変位しようとし、スプリング204の付勢力でヘッドタンク35内に負圧が発生する。
【0062】
さらに、送液ポンプ241にてヘッドタンク35内を吸引することで、可撓性フィルム203がヘッドタンク35の内方に引き込まれ、スプリング204が更に圧縮されて負圧が高まる。
【0063】
この状態からヘッドタンク35内へインクを供給すると、可撓性フィルム203がヘッドタンク35の外方向に押し出されるので、スプリング204が伸びて負圧が低下する。
【0064】
これらの動作を繰り返すことで、ヘッドタンク35内の負圧を一定内に保つよう制御することができる。
【0065】
すなわち、図8に示すように、ヘッドタンク35内の負圧はヘッドタンク35内のインク量と相関関係にあり、ヘッドタンク35内のインク量が多いとき、ヘッドタンク35内の負圧は小さく弱い状態であり、インク量が少ないとき、ヘッドタンク35内の負圧は大きく強くなる。そして、ヘッドタンク35内の負圧が弱すぎると記録ヘッド34からインクが漏液することになり、負圧が強すぎると記録ヘッド34から空気や塵を混入してしまい、吐出不良が生じやすくなる。
【0066】
そこで、ヘッドタンク35内の負圧が所定の負圧制御範囲A内に収まるヘッドタンク35内のインク量Bの範囲内になるように、ヘッドタンク35に対するインク供給を制御するようにしている。なお、以下では、この負圧制御範囲Aの下限値(負圧が小さい値、インク量が多い値)に対応するヘッドタンク35のインク量を変位部材205の変位位置で「充填満タン位置」と表記し、負圧制御範囲Aの上限値(負圧が大きい値、インク量が少ない値)に対応するインク量を変位部材205の変位位置で「インク空位置」(インク残量なしとして設定する位置)と表記する。
【0067】
次に、ヘッドタンク35の変位部材205を大気開放位置に設定する方法について図9を参照して説明する。なお、ヘッドタンク35は図3及び図4と異なり模式的に示している。
【0068】
まず、図9(a)に示す状態から、大気開放機構207を開いてヘッドタンク35内の負圧を解放することで、図9(b)に示すようにヘッドタンク35内の液面が低下する。なお、このとき、供給口部209の供給口209aは液面下にあることが好ましい。
【0069】
すなわち、供給口209aが液面上になると、供給口209aか供給口部209を介して供給チューブ36に空気が混入し、次にインクを供給したとき、供給口209aからインクと共に気泡が排出されることがあり、そのまま供給を続けると、気泡が大気開放機構207内に付着して、弁の固着や液漏れを生じるおそれがある。
【0070】
そして、ヘッドタンク35の負圧が解放され、液面が下がった後、図9(c)に示すように、インク300を供給する。インク300を供給することで液面が上昇し、電極ピン208a、208bが所定高さの液面を検知するまで、つまり所定の位置までインク300を供給する。このときのヘッドタンク35の変位部材205の位置を大気開放位置とする。
【0071】
次に、ヘッドタンク35の変位部材205の変位量の検知について図10を参照して説明する。なお、ここでは、装置本体側に設けられた第2センサ301のみを使用して変位量を検知する場合について説明する。
【0072】
図10(a)に示すように、第2センサ301がヘッドタンク35の変位部材205を検知しているときのキャリッジ33の位置(キャリッジ位置:リニアエンコーダ90によって得られる。)を記憶しておき、図10(b)に示すように変位部材205が実線図示の位置から破線図示の位置まで変位した場合に、第2センサ301が変位部材205を検知するまでキャリッジ33を相対移動することで、記憶したキャリッジ位置との差分(キャリッジ移動量)を変位部材205の変位量として得ることができる。
【0073】
次に、ヘッドタンク35のインク量を充填満タン位置に設定する方法について説明する。
前述したように、大気開放機構207を開放状態にしてヘッドタンク35内を大気圧にした後、電極ピン208が液面を検知する所定の位置までインク供給して大気開放機構207を閉じることで、変位部材205は大気開放位置となる。
【0074】
このヘッドタンク35の変位部材205が大気開放位置にあることを第2センサ301で検知し、このときのキャリッジ位置から予め定めた指定カウント値L分をキャリッジ走査し、第2センサ301が変位レバー205を検知するまでインクを逆引きする(メインタンク10にインクを戻す。)。そして、この位置を充填満タン位置とする。
【0075】
つまり、充填満タン位置は、大気開放位置から所定の変位量分だけ変位部材205を変位させた位置として設定する。これにより、負圧を考慮した充填満タン位置を設定でき、大気開放位置から充填満タン位置までの変位部材205の変位量のバラツキを一切無くし、変位部材205の変位量にて制御を行う動作に対して高精度の制御を行うことができるようになる。
【0076】
次に、第1センサ251が変位部材205を検知する第1位置と第2センサ301が変位部材205を検知する第2位置との間における変位部材205の変位量(差分)を検出する方法について図11を参照して説明する。
【0077】
図11(a)に示すように、第2センサ301が変位部材205を検知可能な位置にキャリッジ33を移動させ、図11(b)に示すように、変位部材205が大気開放位置又は充填満タン位置にある状態から送液ポンプ241の逆転動作にて、第1センサ251が変位部材205を検知するまでインク吸引してから逆転動作を停止する。
【0078】
そして、図11(c)に示すように、第1センサ251を変位部材205が検知している状態で、キャリッジ33を第2センサ301が変位部材205を検知するまで移動し、その移動距離をリニアエンコーダ90で計測(カウント)することで、大気開放位置又は充填満タン検出位置から第1センサ251が変位部材205を検知するまでの可撓性フィルム203又は変位部材205の変位量(差分)を得ることができる。
【0079】
次に、第2センサ301を使用しないでヘッドタンク35に対するインク供給を行うときの制御について説明する。
ここでは、詳細は後述するが、大気開放位置から第1センサ251が変位部材205を検知する第1位置の変位量(差分)を検出して、差分から予め定めた所定変位量を減じた値を差分変位量とし、この差分変位量に相当する液体量を差分供給量としてNVRAM504などの不揮発性記憶手段に記憶保持する。
【0080】
そして、キャリッジ33の走査中(画像形成動作中)に、ヘッドタンク35のインク残量が減少する方向に変位部材205が変位して、第1センサ251が変位部材205を検知した後のヘッドタンク35のインクの消費量が予め定めた所定液体消費量になったときに、メインタンク10からヘッドタンク35にインクを供給充填し、ヘッドタンク35の変位部材205がインク残量が増加する方向に変位して第1センサ251で変位部材205を検知した後、更に差分供給量のインクを供給することで、ヘッドタンク35内に充填満タン位置までインクを供給する。
【0081】
この場合、第1センサ251による検知は位置検知であるので、インクの吐出量の検知誤差や、送液ポンプ241の送液量の検知誤差など、検知誤差の積み上がりは、第1センサ251が検知した時点でなくなり、検知誤差が積み上がることなく、キャリッジ33を走査中でも、インク吐出及びインク供給を繰返し行うことができるようになる。
【0082】
また、ヘッドタンク35のインク残量が減少する方向に変位部材205が変位して、第1センサ251が変位部材205を検知した後のヘッドタンク35のインクの消費量を計測することで、後述するソフトカウントによるインク消費量の計測誤差を低減することができる。
【0083】
これら一連の動作を繰り返すことにより、印刷動作を途中で中断することなく、常にヘッドタンク35に充填満タン位置までインクを供給することができ、印刷速度や印刷効率の向上を図ることができる。
【0084】
ここで、上述したヘッドタンク35の変位部材の変位位置について図12を参照して説明する。
ヘッドタンク35の負圧の適正範囲として、変位部材205の位置を、図12に示すように、負圧の小さい側を充填満タン位置(インク量上限値)G、負圧の大きい側を供給開始位置(インク量下限値)Iとする。この充填満タン位置Gと供給開始位置Iとの間における変位部材205の変位が、前述した適正負圧A(図8)が得られる適正負圧領域Yとなる。
【0085】
このとき、大気開放位置Fは充填満タン位置Gよりも変位部材205が開いた位置(ヘッドタンク35のインク残量が多い位置)となり、大気開放位置Fと充填満タン位置Gとの間の変位部材205の変位量は前述したキャリッジ移動量のカウント値Lとなる。
【0086】
次に、第1センサ及び第2センサの配置例について図13を参照して説明する。なお、図13は同配置例の一例を示す模式的説明図である。
ここでは、サブタンク35の変位部材205に支軸206(揺動支点)からの長さの異なる検知部205a、205bを下方に設けて設け、キャリッジ33の第1センサ251で検知部205aを、装置本体側の第2センサ301で検知部205bを検知する構成としている。
【0087】
次に、制御部による上述した動作の制御について図14及び図15のフロー図を参照して説明する。
まず、図14に示す差分量検出処理では、ヘッドタンク35を大気開放状態にしてインクを充填した状態にし、第2センサ301で変位部材205(以下、図中では「フィラ」と表記する。)を検知する位置にキャリッジ33を移動する。これにより、ヘッドタンク35の変位部材205は大気開放位置になる。
【0088】
そして、変位部材205が大気開放位置にある状態から送液ポンプ241の逆転動作にて、第1センサ251が変位部材205を検知するまでインク吸引してから逆転動作を停止する。
【0089】
次いで、第2センサ301が変位部材205を検知する位置までキャリッジ33の移動を開始し、リニアエンコーダ90によるカウントを開始して、第2センサ301が変位部材205を検知したときにカウントを停止する。
【0090】
これにより、大気開放位置(第2位置)と第1センサ251が変位部材205を検知する第1位置との間の変位部材205の変位量(差分)が検出されるので、この差分から予め定めた所定変位量を減じた値(差分変位量)を得て、この差分変位量に相当する液体量を差分供給量として記憶保持する。なお、差分変位量そのものを記憶保持して、インク供給動作を行うときに差分変位量に相当する液体量である差分供給量の供給を行うようにすることもできる。
【0091】
次に、図15を参照して、印字動作中充填処理では、充填満タン状態からインクが消費されることで、変位部材205はヘッドタンク35のインク残量が減少する方向に変位するので、第1センサ251が変位部材205を検知したか否かを判別する。
【0092】
そして、ヘッドタンク35のインク残量が減少する方向に変位部材205が変位して第1センサ251が変位部材205を検知したときには、その後のインク消費量を算出し、インク消費量が予め定めた所定液体消費量(所定量)以上になったか否かを判別する。
【0093】
ここで、インク消費量の算出は、例えば画像形成のために吐出された滴数や印字動作中の空吐出動作で吐出された滴数をカウントし、そのカウント値に当該滴の滴量を乗じることで計算上得ることができる(これを、ソフトカウントといい、ソフトカウントで消費量計測手段を構成している。)。また、記録ヘッド34からインクを吸引するクリーニング動作を行なったときには、当該吸引による消費量(吸引量)は予め定められているので、当該吸引量を加算すればよい。
【0094】
そして、インク消費量が予め定めた所定液体消費量(所定量)以上になったときを供給開始位置とし、送液ポンプ241を正転駆動してメインタンク10からヘッドタンク35へのインク充填(供給)を開始する。
【0095】
このとき、第1センサ251がヘッドタンク35の変位部材205を検知したか否かを判別し、第1センサ251がヘッドタンク35の変位部材205を検知したときには、そのときから更に差分供給量のインクをヘッドタンク35に充填する。
【0096】
ここで、差分供給量は、後述するように、差分から減じる所定変位量を充填満タン位置とバラツキを考慮して定めていることから、ヘッドタンク35には、充填満タン位置又はその近傍(インク残量が少ない側)までインク充填を行うことができる。
【0097】
その後、送液ポンプ241を停止し、インク消費量の計算値をリセットする。
【0098】
このようにして、印字動作中でも、キャリッジ33をホーム位置に戻すことなく、ヘッドタンク35にインクを充填することができる。
【0099】
このように、ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、キャリッジには変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、装置本体側には変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、第1検知手段で検知する変位部材の第1位置は第2検知手段で検知する変位部材の第2位置よりもヘッドタンクの液体残量が少ない位置であり、供給制御手段は、第1位置と第2位置との間の変位部材の変位量を検出し、検出した変位量から予め定めた所定変位量を減じた差分変位量又は差分変位量に相当する差分供給量を保持し、画像形成動作中に、ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後のヘッドタンクの液体の消費量が予め定めた所定液体消費量になったとき、メインタンクからヘッドタンクへの液体の供給を開始し、ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に変位部材が変位して、第1検知手段が変位部材を検知した後、差分変位量に相当する差分供給量の液体をヘッドタンクに供給する制御を行う構成とすることで、画像形成中、特にキャリッジの移動中でもヘッドタンクにメインタンクから適切な量の液体を供給することができ、印刷速度の向上を図れる。
【0100】
ここで、キャリッジ33側の第1センサ251のみで検知を行わないで装置本体側にも第2センサ301を設ける理由について説明しておく。
まず、ヘッドタンク35が満タンになる位置は環境によって変化し、その変化量はキャリッジ33に搭載した第1センサ251では一点の位置しか検知できないために把握することができない。そこで、装置本体側に第2センサ301を設けることで、環境によって変化する大気開放位置や満タン検知位置を、キャリッジ33を移動することで検出することができるようになる。
【0101】
つまり、キャリッジ33上の固定された検知点とキャリッジ33を移動することで検知位置を移動可能な検知点の2点間をポンプ駆動時間や駆動回転数、またはキャリッジ移動によるエンコーダカウントにより2点間距離を検出することができ、環境に応じた供給量制御を行なうことができるようになる。
【0102】
また、キャリッジ33上のみで全ての変位を確認できるセンサやエンコーダを搭載することは、検出手段のコストが高くなり、更にキャリッジサイズが大きくなることで装置が大型化するという問題を生じることになる。
【0103】
また、送液ポンプの送液量(供給量や吸引量)は環境や経年度合い、各ポンプの部品ばらつきなどによってバラツキが生じる。そのため、環境によって変化する装置本体側の第2センサ301による検知位置までのポンプ供給量をセンサによる位置検知にて確認する必要がある。これを、装置本体側に第2センサ301を設けないで、送液ポンプの駆動量だけで制御すると、供給過多や不足による障害が発生することになるので、装置本体側にも第2センサ251を設けて制御の安全性を確保している。
【0104】
次に、本発明の第1実施形態における差分供給量の設定について図16ないし図18を参照して説明する。なお、図16はヘッドタンクの変位部材の各位置の説明に供する模式的説明図、図17は同じく差分供給量の設定方法の説明に供する模式的説明図、図18は変位部材の変位量に対する液体量のバラツキ範囲の関係の一例を示す説明図である。
【0105】
まず、図16に示すように、第2センサ301で検知する第2位置を大気開放位置Fとし、第1センサ251で検知する位置を第1位置Hとする。
【0106】
そして、大気開放位置Fを基準として差分供給量Cを決定している。つまり、大気開放位置Fと第1位置Hとの検知部材205の変位量を変位距離jとする。そして、この変位距離jから所定変位量である所定距離kを減じた距離を差分変位量cとし、この差分変位量cに相当するインク量を差分供給量Cとする。
【0107】
ここで、大気開放位置Fと第1位置Hとの間の変位距離jは、前述したように、第2センサ301でヘッドタンク35が大気開放状態にあるときの変位部材205を検知し、その後充填を行ってインクを逆引きし、第1センサ251が変位部材205を検知した状態にし、キャリッジ23を第2センサ301が変位部材205を検知するまで移動することで、キャリッジ移動距離として得ることができる。
【0108】
一方、所定距離kとは、大気開放位置Fから充填満タン位置Gまでの距離Lに、各バラツキによる所定距離mを加算したものである。各バラツキmは、変位部材205のキャリッジ走査によるバタツキ、第1、第2センサ251、301の検知距離バラツキ、検知時間バラツキ、送液ポンプ241の停止ラグなどを含むものである。
【0109】
また、距離(差分変位量)cは、ヘッドタンク35の変位部材205の変位特性(R=液体量/変位量[cc/mm])から液体量(インク量)に換算できる。
【0110】
このとき、図18に示すように、変位距離(変位量)と液体量との間には、バラツキの幅がある(斜線を施して示す領域)。つまり、同じ変位距離であっても、最小Rmin[cc]から最大Rmax[cc]まで相当する液体量には幅がある。
【0111】
そこで、差分変位量cを差分供給量Cに換算するときには、最小(Rmin[cc/mm])の液体量を使用して差分供給量Cを算出する。つまり、差分変位量cに対応する最小Rmin[cc/mm]の液体量を差分供給量Cとする。
【0112】
これにより、変位部材205の変位量のバラツキがあっても、前述したように、印字動作中に第1センサ251が変位部材205を検知した後の差分供給量Cの供給を行うときに、少なくとも満タン充填位置を超えて過充填が行われ、適正負圧範囲Aを外れて負圧が低下することを防止できる。
【0113】
また、画像形成中に差分供給量Cの供給を行うとき、供給量の管理は送液ポンプ241の送液時間(駆動時間)で管理するしている。この場合、送液ポンプ241を最大流量で駆動して送液を行っても、差分供給量Cを越えない時間tの間だけ送液を行うようにする。
【0114】
これにより、印字動作中に第1センサ251が変位部材205を検知した後の差分供給量Cの供給を行うときに、満タン充填位置を超えて過充填が行われ、適正負圧範囲Aを外れて負圧が低下することを防止できる。
【0115】
なお、前記所定距離dは、温湿度環境による変数とすることもできる。これにより、使用環境において適切な吐出性能が得られる。
【0116】
次に、本発明の第2実施形態における印字動作中の供給開始位置を決める所定液体消費量の設定について図19を参照して説明する。なお、図19は同設定の説明に供する説明図である。
【0117】
所定液体消費量Dは、ヘッドタンク35の使用する総液体量Eと大気開放位置F(前記変位距離j)を基準として設定している。
【0118】
ここでは、所定液体消費量Dは、総液体量Eから前記変位距離jに相当する最大液体量J(Rmax[cc]を用いる。)及び所定液体量M(各バラツキに相当する)を引いた液体量を、ソフトカウントによる消費量カウントが実際の吐出量と最大にずれた場合、つまり、計測誤差が予め定めた最大値であるときにも超えることがない消費量とする。
【0119】
ここで、所定液体量Fは、変位部材205のキャリッジ走査によるバタツキや、第1、第2センサ251、302の検知距離バラツキ、検知時間バラツキ、送液ポンプ241の駆動ラグなどによる供給量のバラツキを含むものである。
【0120】
これにより、変位距離−液体量換算のバラツキで所定液体消費量Dが最小になる条件で、更にソフトカウントで得られる消費量よりも実際の消費量が多かった場合でも、インクを消費しすぎてノズルダウンすることが防止される。
【0121】
なお、液体量Fは、温湿度環境による変数とすることもできる。
【0122】
次に、本発明の第3実施形態における印字動作中の供給開始位置を決める所定液体消費量の設定について図20を参照して説明する。なお、図20は同設定の説明に供する説明図である。
【0123】
本実施形態では、所定液体消費量Dは、ヘッドタンク35の変位部材205の下限側位置、即ちヘッドタンク35の液体残量が減少する方向で変位部材205の変位しなくなる位置(これを「レバー下限位置」という。)を基準として設定している。
【0124】
ここでは、所定液体消費量Dは、変位部材205のレバー下限位置と第1センサ251で変位部材205を検知する第1位置との距離nに相当する最小液体量N(Rmin[cc]を使用する。)と所定液体量P(レバー下限位置+各バラツキ分)の差の液体量を、ソフトカウントによる消費量カウントが実際の吐出量と最大にずれた場合でも超えることがない量とする。
【0125】
ここで、所定液体量Pは、変位部材205が変位しなくなる位置から、いくら手前まで使用できるかという値である。これも、各バラツキを含んでいる。
【0126】
これにより、変位距離−液体量換算のバラツキで所定液体消費量Dが最小になる条件で、更にソフトカウントで得られる消費量よりも実際の消費量が多かった場合でも、インクを消費しすぎてノズルダウンすることが防止される。
【0127】
なお、所定液体量Pは温湿度環境による変数とすることもできる。また、変位部材205が変位しなくなる位置から更に使用可能であれば、所定液体量Pを負の値として算出することもできる。
【0128】
次に、本発明の第4実施形態について図21を参照して説明する。なお、図21は同実施形態における差分供給量及び所定液体消費量の設定の説明に供する説明図である。
【0129】
本実施形態では、第1センサ251は、ヘッドタンク35の充填満タン位置から供給開始位置の間のいずれかに設定した位置を第1位置Hとして検知する。第2センサ301は、ヘッドタンク35の液体残量の下限側位置、すなわち液体残量が減少する方向において変位部材205が変位しなくなるレバー下限位置を第2位置Qとして検知する。
【0130】
この場合、第1位置Hは第2位置(レバー下限位置)Qよりもヘッドタンク35の液体残量が多い位置である。
【0131】
そして、第1位置Hと第2位置Qとの間の変位距離sから、第1所定変位量である第1所定距離u(第2位置Qと供給開始位置Iとの間の距離)を引いた第1差分変位量(距離)に相当する液体量を所定液体消費量Dとして記憶保持する。
【0132】
また、第2所定変位量である第2所定距離v(第2位置Qと充填満タン位置Gとの間の距離)から第1位置Hと第2位置Qとの間の変位距離sを減じた第2差分変位量(距離)に相当する液体量を差分供給量Cとして記憶保持する。
【0133】
そして、印字動作中にメインタンク10からヘッドタンク35にインクを供給するときには、第1センサ251が変位部材205を検知した位置から所定液体消費量D使用したときに、メインタンク10からヘッドタンク35へのインク供給を開始し、第1センサ251が変位部材205を検知した後差分供給量Cのインクをヘッドタンク35に供給する。
【0134】
つまり、本実施形態では、大気開放位置は使用せず、変位部材が変位しなくなる位置と第1センサによる第1位置を基準として、所定液体消費量D及び差分供給量Cを設定している。
【0135】
なお、第1、第2所定距離u、vは、固定値でも温湿度環境による変数でもよく、各バラツキ及びヘッドタンク35の固体バラツキを見込んで成立する値を設定する。
【0136】
これにより、大気開放位置と第1センサ251による検知位置との変位部材の変位量を検出することに伴うインクの無駄な消費を避けることができ、制御が簡単になる。
【0137】
次に、本発明の第5実施形態について図22を参照して説明する。なお、図22は同実施形態の説明に供する模式的説明図である。
ここでは、ヘッドタンク35の変位部材205の変位方向の幅を、第1センサ251が変位部材205を検知するときに、変位部材205の検知部位205aが必ず1箇所となる幅に設定している。
【0138】
つまり、変位部材205の幅が狭い場合、各バラツキや、ヘッドタンク35の固体バラツキ、変位部材205のバタツキにより、変位部材205の変位方向のどちらの端部で検知しているか判断するためには、難しい制御が必要になってしまう。
【0139】
そこで、変位部材205の検知部材205aとして十分な幅を持たせることで、図22(a)に示すように、第1センサ251がオフ(検知していないとき)には、必ず、変位部材205が第1センサ251より液体残量の多い側となり、同図(b)、あるいは(c)に示すように、オン(検知しているとき)には、必ず、変位部材205が第1センサ251より液体残量の少ない側であるようになり、必ず検知したい位置で検知できるようになる。
【0140】
また、ヘッドタンク35には変位部材205の液体残量が少なくなる方向における下限位置を規定するためのレバー当接部211を設けている。
【0141】
これにより、液体残量が少なくなる方向において変位部材205が変位しなくなるレバー下限位置の精度を向上することができる。
【0142】
次に、本発明の第6実施形態について図23を参照して説明する。なお、図23は同実施形態の説明に供する模式的説明図である。
本実施形態では、変位部材205を支軸206は、変位部材205の重心212に近い位置に配置されている。
【0143】
これにより、キャリッジ23の走査による慣性が小さくなり、変位部材205のバタツキが小さくなる。
【0144】
また、変位部材205を付勢するばね210は、キャリッジ走査よって変位部材205に作用する回転慣性力より強い付勢力で変位部材205を付勢している。
【0145】
これによっても、キャリッジ23の走査による慣性が小さくなり、変位部材205のバタツキが小さくなる。
【0146】
次に、本発明の第7実施形態について図24及び図25を参照して説明する。なお、図24は同実施形態の説明に供するヘッドタンク配列の模式的平面説明図、図25は同ヘッドタンクの変位部材の要部斜視説明図である。
【0147】
前述したようように、2つのヘッドタンク35、35が並列に配列されてキャリッジ35に搭載されている。ここで、隣り合うヘッドタンク35、35の隣り合う変位部材205については、第1センサ251による検知部位205a1、205a2が互い違いになるように設けられている。
【0148】
つまり、狭い間隔で複数のヘッドタンク35を配置したとき、第1センサ251の配置位置が限られてくるため、目的位置で検知するように、変位部材205の検知位置が設定される。このとき、隣り合う変位部材205が干渉すると正確な検知を行うことができない。そこで、隣り合う変位部材205の検知部位205a1、205a1を変位部材205が延びる方向でずらすことにより、第1センサ251による正確な検知を行うことができる。
【0149】
以上のヘッドタンクに対するインク供給動作に関する制御(処理)は、ROM502に格納されているプログラムによってコンピュータに実行させる。このプログラムは、情報処理装置(ホスト600)側にダウンロードして画像形成装置にインストールすることができる。また、本発明に係る画像形成装置と情報処理装置又は画像形成装置と本発明に係る処理を行うプログラムを有する情報処理装置とを組み合わせて画像形成システムとして構成することもできる。
【0150】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0151】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0152】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0153】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0154】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0155】
10 インクカートリッジ(メインタンク)
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35 ヘッドタンク
81 維持回復機構
201 タンクケース(液体収容部)
203 可撓性部材(可撓性フィルム)
205 変位部材(フィラ)
251 第1センサ(第1検知手段)
301…第2センサ(第2検知手段)
500…制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、
前記記録ヘッド及び前記ヘッドタンクを搭載したキャリッジと、
前記ヘッドタンクに供給する液体を収容するメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体供給を行なう送液手段と、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体の供給を制御する供給制御手段と、を備え、
前記ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、
前記キャリッジには前記変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、
装置本体側には前記変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、
前記第1検知手段で検知する前記変位部材の第1位置は前記第2検知手段で検知する前記変位部材の第2位置よりも前記ヘッドタンクの液体残量が少ない位置であり、
前記供給制御手段は、
前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量を検出し、検出した変位量から予め定めた所定変位量を減じた差分変位量又は前記差分変位量に相当する差分供給量を保持し、
画像形成動作中に、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後の前記ヘッドタンクの液体の消費量が予め定めた所定液体消費量になったとき、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの前記液体の供給を開始し、前記ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後、前記差分変位量に相当する差分供給量の前記液体を前記ヘッドタンクに供給する制御を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記供給制御手段は、前記差分変位量に相当する前記差分供給量の前記液体を供給するとき、前記送液手段を最大送液量で駆動したときの送液量が前記差分変位量に相当する前記差分供給量を越えない時間で、前記送液手段の駆動を管理することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクが収容可能な予め定めた総液体量から、前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量に相当する液体量、及び、予め定めた所定液体量を減じた液体量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記液体消費量を計測する消費量計測手段を有し、
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクが収容可能な予め定めた総液体量から、前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量に相当する液体量、及び、予め定めた所定液体量を減じた液体量を、前記消費量計測手段の計測誤差が予め定めた最大値であるときにも越えない消費量である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で前記変位部材が変位しなくなる位置と前記第1検知手段が前記変位部材を検知する第1位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた所定液体量を減じた液体量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記液体消費量を計測する消費量計測手段を有し、
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で前記変位部材が変位しなくなる位置と前記第1検知手段が前記変位部材を検知する第1位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた所定液体量を減じた液体量を、前記消費量計測手段の計測誤差が予め定めた最大値であるときにも越えない消費量である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、
前記記録ヘッド及び前記ヘッドタンクを搭載したキャリッジと、
前記ヘッドタンクに供給する液体を収容するメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体供給を行なう送液手段と、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体の供給を制御する供給制御手段と、を備え、
前記ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、
前記キャリッジには前記変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、
装置本体側には前記変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、
前記第1検知手段は前記変位部材が充填満タン位置と供給開始位置との間で定めた第1位置を検知し、
前記第2検知手段は前記変位部材が前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で変位しなくなる第2位置を検知し、
前記第1検知手段で検知する前記変位部材の第1位置は前記第2検知手段で検知する前記変位部材の第2位置よりも前記ヘッドタンクの液体残量が多い位置であり、
前記供給制御手段は、
前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた第1所定変位量を減じた第1差分変位量に相当する液体量を所定液体消費量として保持し、
前記第2位置と前記充填満タン位置との間の前記変位部材の変位量から前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量を減じた第2差分変位量又は前記第2差分変位量に相当する差分供給量を保持し、
画像形成動作中に、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後の前記ヘッドタンクの液体の消費量が前記所定液体消費量になったとき、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの前記液体の供給を開始し、前記ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後、前記差分変位量に相当する差分供給量の前記液体を前記ヘッドタンクに供給する制御を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記ヘッドタンクには前記液体残量が減少する方向での前記変位部材の変位限度を規制する当接部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ヘッドタンクは、
前記液体を収容する収容部を形成するタンク本体と、
前記収容部の壁面を形成する可撓性部材と、
前記可撓性部材を収容部の容積が拡大する方向に付勢する付勢手段と、を有し、
前記変位部材を前記収容部の外側で前記可撓性部材側に押し付けられて揺動可能に配設され、
前記変位部材を前記可撓性部材に押し付ける手段の押し付け力は、前記キャリッジが走査されたときに前記変位部材に作用する回転慣性力よりも強い
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
複数の前記ヘッドタンクが並べて前記キャリッジに搭載され、
隣り合う前記ヘッドタンクの前記変位部材の前記第1検知手段で検知される部位が互い違いに配置されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、
前記記録ヘッド及び前記ヘッドタンクを搭載したキャリッジと、
前記ヘッドタンクに供給する液体を収容するメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体供給を行なう送液手段と、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体の供給を制御する供給制御手段と、を備え、
前記ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、
前記キャリッジには前記変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、
装置本体側には前記変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、
前記第1検知手段で検知する前記変位部材の第1位置は前記第2検知手段で検知する前記変位部材の第2位置よりも前記ヘッドタンクの液体残量が少ない位置であり、
前記供給制御手段は、
前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量を検出し、検出した変位量から予め定めた所定変位量を減じた差分変位量又は前記差分変位量に相当する差分供給量を保持し、
画像形成動作中に、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後の前記ヘッドタンクの液体の消費量が予め定めた所定液体消費量になったとき、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの前記液体の供給を開始し、前記ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後、前記差分変位量に相当する差分供給量の前記液体を前記ヘッドタンクに供給する制御を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記供給制御手段は、前記差分変位量に相当する前記差分供給量の前記液体を供給するとき、前記送液手段を最大送液量で駆動したときの送液量が前記差分変位量に相当する前記差分供給量を越えない時間で、前記送液手段の駆動を管理することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクが収容可能な予め定めた総液体量から、前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量に相当する液体量、及び、予め定めた所定液体量を減じた液体量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記液体消費量を計測する消費量計測手段を有し、
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクが収容可能な予め定めた総液体量から、前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量に相当する液体量、及び、予め定めた所定液体量を減じた液体量を、前記消費量計測手段の計測誤差が予め定めた最大値であるときにも越えない消費量である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で前記変位部材が変位しなくなる位置と前記第1検知手段が前記変位部材を検知する第1位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた所定液体量を減じた液体量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記液体消費量を計測する消費量計測手段を有し、
前記所定液体消費量は、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で前記変位部材が変位しなくなる位置と前記第1検知手段が前記変位部材を検知する第1位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた所定液体量を減じた液体量を、前記消費量計測手段の計測誤差が予め定めた最大値であるときにも越えない消費量である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、
前記記録ヘッド及び前記ヘッドタンクを搭載したキャリッジと、
前記ヘッドタンクに供給する液体を収容するメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体供給を行なう送液手段と、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの液体の供給を制御する供給制御手段と、を備え、
前記ヘッドタンクは液体残量に応じて変位する変位部材を有し、
前記キャリッジには前記変位部材を検知する第1検知手段が設けられ、
装置本体側には前記変位部材を検知する第2検知手段が設けられ、
前記第1検知手段は前記変位部材が充填満タン位置と供給開始位置との間で定めた第1位置を検知し、
前記第2検知手段は前記変位部材が前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向で変位しなくなる第2位置を検知し、
前記第1検知手段で検知する前記変位部材の第1位置は前記第2検知手段で検知する前記変位部材の第2位置よりも前記ヘッドタンクの液体残量が多い位置であり、
前記供給制御手段は、
前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量から予め定めた第1所定変位量を減じた第1差分変位量に相当する液体量を所定液体消費量として保持し、
前記第2位置と前記充填満タン位置との間の前記変位部材の変位量から前記第1位置と前記第2位置との間の前記変位部材の変位量を減じた第2差分変位量又は前記第2差分変位量に相当する差分供給量を保持し、
画像形成動作中に、前記ヘッドタンクの液体残量が減少する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後の前記ヘッドタンクの液体の消費量が前記所定液体消費量になったとき、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクへの前記液体の供給を開始し、前記ヘッドタンクの液体残量が増加する方向に前記変位部材が変位して、前記第1検知手段が前記変位部材を検知した後、前記差分変位量に相当する差分供給量の前記液体を前記ヘッドタンクに供給する制御を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記ヘッドタンクには前記液体残量が減少する方向での前記変位部材の変位限度を規制する当接部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ヘッドタンクは、
前記液体を収容する収容部を形成するタンク本体と、
前記収容部の壁面を形成する可撓性部材と、
前記可撓性部材を収容部の容積が拡大する方向に付勢する付勢手段と、を有し、
前記変位部材を前記収容部の外側で前記可撓性部材側に押し付けられて揺動可能に配設され、
前記変位部材を前記可撓性部材に押し付ける手段の押し付け力は、前記キャリッジが走査されたときに前記変位部材に作用する回転慣性力よりも強い
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
複数の前記ヘッドタンクが並べて前記キャリッジに搭載され、
隣り合う前記ヘッドタンクの前記変位部材の前記第1検知手段で検知される部位が互い違いに配置されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
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【図14】
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【図18】
【図19】
【図20】
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【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−10192(P2013−10192A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142784(P2011−142784)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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