説明

画像形成装置

【課題】力率改善部のスイッチング損失を抑える。
【解決手段】交流電源140を整流する整流部421と、整流部から出力された直流を入力とする力率改善部422と、力率改善部から出力された直流を直流に変換するDC/DCコンバータ423を有する駆動用電源装置431と、交流電源からヒータ136に供給される電流を検知する定着電流検知部206を有し、記録紙上に形成されたトナー像をヒータにより加熱して記録紙に定着させる加熱定着装置130と、定着電流検知部により検知された電流値がIlimit1以上のときには、力率改善部をオン状態にして、整流部から入力された直流に力率改善を行い(S602)、検知された電流値がIlimit1未満のときには、力率改善部をオフ状態にして、力率改善を停止させる(S608)、力率改善部を制御するエンジンコントローラ212を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力率改善部を有する電源装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置は、プリント速度の向上と電源オンから画像形成開始までの時間の短縮が求められており、電源装置や加熱定着装置内に配備されるヒータの大電力化が進んでいる。一般的に、商用電源から画像形成装置に供給される入力電流には、日本国内においては15A(アンペア)という上限があり、特に、大電力電源装置や大電力ヒータを備えた画像形成装置では、この上限を超えないような設計をしなければならない。
【0003】
このような要求を満たすため、電源装置に力率改善部を付加して電力を有効利用する構成を有する画像形成装置がよく知られている。特に、電源装置は、主に駆動装置に電力供給するDC/DCコンバータと、主に制御装置に電力供給するDC/DCコンバータの、2つのDC/DCコンバータを備え、供給電力の大きい前者にのみ力率改善部を付加する場合が多い。このような大電力電源装置に用いられる力率改善部としては、一般的に昇圧タイプのものが多い。
【0004】
ところが、力率改善部には、スイッチング損失による発熱や効率の低下、ノイズの発生等の課題があり、できるだけ力率改善部のスイッチングを停止させて運用することが望ましい。これらの課題に対処するため、例えば、特許文献1では、画像形成装置がスタンバイ状態のときに、力率改善部のスイッチングを停止する構成が開示されている。また、駆動装置や制御装置に電力供給するDC/DCコンバータに流れる電流値が所定値以下ならば、力率改善部のスイッチングを停止させる構成が特許文献2に、力率改善部をショート(短絡)回路によりバイパスさせる構成が特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3466351号公報
【特許文献2】特開2007−101667号公報
【特許文献3】特開平04−087565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したそれぞれの特許文献には、以下のような課題がある。例えば、特許文献1の力率改善部は、画像形成装置がプリント動作中は常にスイッチングを行っていることになり、発熱低減や効率改善の効果は、画像形成装置がスタンバイ状態の場合に限られる。そもそも、商用電源電圧値やヒータ抵抗値のばらつきを考慮し、画像形成装置の電流値が最大になる条件下でも、商用交流電源から供給される電流値を電流規格15A以下に抑えるために、画像形成装置に力率改善部が設けられている。そのため、力率改善部が必要となる場合は非常に少なく、せいぜい、画像形成装置の電源オン時のウォームアップ中や、プリント開始後数秒から数十秒の間だけであり、商用電源の電圧値や定着装置のヒータ抵抗値によっては、力率改善部が不要な場合もある。
【0007】
また、特許文献2や特許文献3に開示された構成においては、プリント状態とスタンバイ状態とでは、DC/DCコンバータの負荷は大きく異なるが、同一の動作状態では、DC/DCコンバータの負荷変動は小さい。そのため、負荷が大きい状態で推移するプリント状態においては、ほとんど力率改善部のスイッチングを停止させることができない。従って、力率改善部のスイッチングを停止させるか否かを判断する場合の閾値として、DC/DCコンバータに流れる電流値を用いることはあまり適切ではないと考えられる。
【0008】
本発明はこのような状況のもとでなされたもので、力率改善部のスイッチング損失を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するため、本発明では次のとおりに構成する。
【0010】
(1)交流電源を整流によって直流に変換する整流手段と、前記整流手段から出力された直流を入力とする力率改善手段と、前記力率改善手段から出力された直流を直流に変換する直流/直流変換手段と、を有する電源装置と、前記交流電源からヒータに供給される電流を検知する検知手段を有し、記録紙上に形成されたトナー像を前記ヒータにより加熱して前記記録紙に定着させる加熱定着装置と、前記検知手段により検知された電流値が第1の閾値以上のときには、前記整流手段から入力された直流に対して力率改善を行い、前記検知手段により検知された電流値が前記第1の閾値未満のときには、力率改善を停止するように、前記力率改善手段を制御する制御手段と、を備えた画像形成装置。
【0011】
(2)交流電源を整流によって直流に変換する整流手段と、前記整流手段から出力された直流を入力とする力率改善手段と、前記力率改善手段から出力された直流を直流に変換する直流/直流変換手段と、前記力率改善手段に並列接続され、オン状態では、前記整流手段から出力された直流を、前記力率改善手段を介さずに、前記直流/直流変換手段に入力させ、オフ状態では、前記整流手段から出力された直流を、前記力率改善手段を介して、前記直流/直流変換手段に入力させるバイパス手段と、を有する電源装置と、前記交流電源からヒータに供給される電流を検知する検知手段を有し、記録紙上に形成されたトナー像を前記ヒータにより加熱して前記記録紙に定着させる加熱定着装置と、前記検知手段により検知された電流値が第2の閾値以上のときには、前記力率改善手段が前記整流手段から入力された直流に対して力率改善を行うと共に、前記バイパス手段をオフ状態にし、前記検知手段により検知された電流値が前記第2の閾値未満のときには、前記力率改善手段による力率改善を停止させると共に、前記バイパス手段をオン状態にするように、前記力率改善手段及び前記バイパス手段の制御を行う制御手段と、を備えた画像形成装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、力率改善部のスイッチング損失を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1、2における画像形成装置の概略構成図
【図2】実施例1、2における電源装置とヒータ制御部を示した模式図
【図3】実施例1、2における位相制御を説明する図
【図4】実施例1における電源装置の回路図
【図5】実施例1、2における力率改善部有無による皮相電流の違いを説明する図
【図6】実施例1、2における皮相電流と商用電源電圧との関係を説明する図
【図7】実施例1における力率改善部のオン・オフ制御の処理シーケンスを示すフローチャート
【図8】実施例1、2における画像形成装置のヒータ電流の変化を示す図
【図9】実施例2における電源装置の回路図
【図10】実施例2における力率改善部のオン・オフ制御の処理シーケンスを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
(1)画像形成装置
図1に、本実施例のカラー画像形成装置の概略構成図を示す。本実施例のカラー画像形成装置は、電子写真方式を用いて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー像を重ね合わせることにより、フルカラー画像を形成する装置である。画像形成装置100は、給紙部121、感光ドラム122(Y、M、C、K各色、以下記載を省略する)、帯電スリーブ123、トナー容器125、現像スリーブ126、中間転写ベルト127、転写ローラ128、加熱定着装置130から構成される。なお、感光ドラム122、帯電スリーブ123、トナー容器125、現像スリーブ126は、Y、M、C、Kの色毎に1つの容器にまとめられ、オールインワンカートリッジ101となっている。
【0016】
各色のオールインワンカートリッジ101において、帯電スリーブ123により帯電された感光ドラム122上に、画像処理部(非図示)が変換した露光時間に基づいてスキャナ部124から露光光線を照射し、感光ドラム122上に静電潜像を形成する。現像スリーブ126は、トナー容器125からのトナーを使って静電潜像を現像し、感光ドラム122上に単色トナー像を形成し、中間転写ベルト127に4色重ね合わせて多色トナー像を形成する。
【0017】
記録紙111は、給紙部121から給紙ローラ112により給紙され、各搬送ローラ113、114、115に挟まれながら搬送路118に沿って搬送される。そして、記録紙111は、多色トナー像が形成された中間転写ベルト127と転写ローラ128に挟み込まれて加圧され、その結果、中間転写ベルト127上の多色トナー像が記録紙111に転写される。記録紙111に転写されずに中間転写ベルト127上に残ったトナーは、クリーナ129によってクリーニングされ、クリーニングされた廃トナーは、クリーナ容器132に蓄えられる。
【0018】
トナー像が転写された記録紙111は、更に搬送路118に沿って搬送され、加熱定着装置130によって、記録紙111上にトナー像が定着される。本実施例の加熱定着装置130は、フィルム加熱方式を利用した装置であり、ヒータ136、定着フィルム134、加圧ローラ133、サーミスタ135等から構成される。加圧ローラ133は、定着駆動モータ(不図示)により、所定の周速度で回転駆動される。この加圧ローラ133の回転駆動により、加圧ローラ133と定着フィルム134の外面との摩擦力で、定着フィルム134に直接的に回転力が作用し、定着フィルム134はヒータ136に圧接摺動されつつ、回転駆動される。サーミスタ135は、ヒータ136の裏面に所定の圧力で押し当てられて、ヒータ136の裏面の温度を検知する。
【0019】
加圧ローラ133の回転による定着フィルム134の回転が安定し、ヒータ136が所定の温度まで昇温された状態になると、定着フィルム134と加圧ローラ133により形成されたニップ部に、トナー像が転写された記録紙111が搬送される。搬送された記録紙111は、ニップ部において加圧されながら搬送されることにより、ヒータ136の熱が定着フィルム134を介して記録紙111に加えられ、トナー像が記録紙111に加熱定着される。トナー像が加熱定着された記録紙111は、その後、排紙ローラ137を通り、排出トレイ131に排出される。
【0020】
以上説明した画像形成プロセスを実行するために必要な電力は、ACケーブル139を介して商用交流電源140から電力供給された電源装置138によって、画像形成装置100の各部へ供給される。電源装置138の詳細については、後述する。
【0021】
(2)ヒータへの電力供給制御
加熱定着装置130内のヒータ136への電力供給制御について、図2を使って説明する。図2は、画像形成装置100において、商用交流電源140から電力供給される電源装置138と、加熱定着装置130のヒータ制御部を示した模式図である。商用交流電源140からの給電ラインは、ヒータ136への給電ラインと、電源装置138を介してヒータ136以外の各負荷(駆動系負荷203a、制御系負荷203b)への給電ラインの2つに分かれる。
【0022】
ヒータ136は、カレントトランス205、リレー207、双方向3端子サイリスタ(以降、トライアックという)209を介して、商用交流電源140から給電される。サーモスイッチ211は、ヒータ136に接して、又は隣接して配置されており、ヒータ136の温度が異常に高くなったときに、商用交流電源140からの給電ラインを遮断する保護素子として用いられる。なお、サーモスイッチ211の代わりに、保護素子として温度ヒューズを用いても良い。トライアック209は、ヒータ136への給電/給電遮断を制御するための素子であり、トライアック209のオン・オフ制御は、トライアック駆動部210を介して、後述する位相制御により行われる。
【0023】
ゼロクロス検知部204は、商用交流電源140の電圧を監視し、電圧が0Vを通過するタイミング(ゼロクロスポイント)を検知し、エンジンコントローラ212にゼロクロス信号を出力する。定着電流検知部206は、カレントトランス205を介して、ヒータ136に給電される電流値を検知して、エンジンコントローラ212に検知信号を出力する。サーミスタ135は、ヒータ136の温度を検知する。エンジンコントローラ212は、ゼロクロス検知部204や定着電流検知部206からの検知信号、サーミスタ135が検知した温度等に基づいて、リレー駆動部208を介してリレー207の駆動制御を行う。更に、エンジンコントローラ212は、トライアック駆動部210を介して、トライアック209のオン・オフ制御を行う等、画像形成装置100の画像形成動作の制御を行う。また、エンジンコントローラ212は、不図示のROMとRAMを有している。ROMには、エンジンコントローラ212が実行する制御プログラムやデータが保持され、RAMは、エンジンコントローラ212が実行する制御プログラムが一時的に情報を保持するために使用される。
【0024】
本実施例におけるヒータ136への給電は、位相制御によって行われる。位相制御とは、図3(a)に示すように、商用交流電源140の1半波を複数に分解して、所定の位相角(以後、「給電位相角」と呼ぶ)で、トライアック209をオンすることにより、ヒータ136への給電を制御する方法である。商用交流電源140の電圧位相との同期方法は、ゼロクロス検知部204において電圧0Vを検知すると出力されるゼロクロス信号を用いて行われる。
【0025】
図3(b)は、ヒータ136への供給電力と、給電位相角の関係を示すグラフであり、縦軸は、電流値の二乗に比例した、ヒータ136へ供給される電力を、横軸は給電位相角を、それぞれ示している。図3(b)の波形より、給電位相角が0°に近い程、ヒータ136へ供給される電力が大きく、逆に、給電位相角が180°に近い程、ヒータ136へ供給される電力は小さいことが分かる。特に、給電位相角が0°のときに最大電力がヒータ136へ供給され、給電位相角が180°のときにヒータ136への電力供給はゼロになる。また、図3(b)において、上側の波形図は、ヒータ136の抵抗値が小さい場合又は商用交流電源140の電圧が大きい場合の、下側の波形図は、ヒータの抵抗値が大きい場合又は商用交流電源の電圧が小さい場合の、供給電力と給電位相角の関係を示している。2つの波形図から、ヒータ抵抗値が大きい程、又は商用交流電源電圧が小さい程、ヒータ136に投入される電力は小さくなり、逆に、ヒータ抵抗値が小さい程、又は商用交流電源電圧が大きい程、ヒータ136に投入される電力は大きくなることが分かる。
【0026】
図3(c)は、位相制御中の給電パターンの一例を示したものであり、左側から給電位相角が90度、61度、119度の場合の給電パターンを示している。図3(c)において、ハッチング部分は電力を投入していることを、ハッチングがかけられていない部分は電力を投入していないことを示している。
【0027】
(3)電源装置
画像形成装置100の各部へ電力を供給する電源装置138について、図4を用いて説明する。図4は、電源装置138の回路の模式図である。図2に示した電源装置138は、図4に示すように、駆動系負荷203aへ電力を供給する駆動用電源装置431と、制御系負荷203bへ電力を供給する制御用電源装置432から構成されている。駆動用電源装置431は、整流部421、力率改善手段である力率改善部422、フォワード方式のDC/DCコンバータ(直流/直流変換)423から構成され、直流電圧Vcc1を出力する。一方、制御用電源装置432は、整流平滑部424、DC/DCコンバータ425から構成され、直流電圧Vcc2を出力する。また、図4のヒータ制御部433は、図2に示すエンジンコントローラ212、ゼロクロス検知部204、定着電流検知部206、リレー駆動部208、トライアック駆動部210、カレントトランス205、サーモスイッチ211等から構成されている。
【0028】
駆動用電源装置431では、まず、商用交流電源140から供給された交流電流が整流部421で整流ダイオード401によって整流され、整流された直流電流が力率改善部422に入力される。力率改善部422は、チョークコイル402、FET(電界効果トランジスタ)403、ダイオード404、平滑コンデンサ405、力率改善制御部441から構成されている。力率改善制御部441は、入力電流波形が正弦波に近づくように、ダイオード404の出力に基づいて、FET403のオン・オフを制御するパルス信号(PWM信号)をFET403のゲート端子に入力し、FET403のデューティ(DUTY)制御を行う。以後、力率改善部422の力率改善制御部441が、エンジンコントローラ212からの力率制御のオン指示により、FET403をデューティ制御している状態を「力率改善部422がオンしている状態」と表現する。逆に、力率改善部422の力率改善制御部441が、エンジンコントローラ212からの力率制御のオフ指示により、FET403をオフ状態にする制御状態を「力率改善部422がオフしている状態」と表現する。DC/DCコンバータ423は、FET406、トランス407、整流ダイオード408、転流ダイオード409、チョークコイル410、コンデンサ411、Vcc1制御部442から構成されている。トランス407には、1次巻線と2次巻線とが巻かれており、1次巻線の一方の端子は力率改善部422に接続され、他方の端子はFET406のドレイン端子に接続されている。トランス407の2次巻線側は、整流ダイオード408、転流ダイオード409、チョークコイル410、コンデンサ411等で構成され、電圧Vcc1を出力している。FET406は、Vcc1制御部442からゲート端子にパルス信号が印加されることにより、オン・オフされる。Vcc1制御部442が、このパルス信号のデューティ比を制御することにより、DC/DCコンバータ423は、安定した電圧Vcc1を出力している。
【0029】
一方、制御用電源装置432では、商用交流電源140から供給された交流電流が、整流ダイオード412及びコンデンサ413から構成された整流平滑部424によって整流、平滑され、DC/DCコンバータ425に入力される。DC/DCコンバータ425は、FET414、トランス415、整流ダイオード416、コンデンサ417、Vcc2制御部443から構成されている。トランス415の1次巻線の一方の端子は、整流平滑部424の整流ダイオード412の出力側に直接接続され、他方の端子は、FET414のドレイン端子に接続されている。トランス415の2次巻線側は、整流ダイオード416、コンデンサ417等で構成され、電圧Vcc2を出力している。Vcc2制御部443は、安定した電圧Vcc2を出力するために、FET414のゲート端子に入力され、FET414のオン・オフを制御するパルス信号のデューティ制御を行う。
【0030】
力率改善部422がオンした状態で、DC/DCコンバータ423のFET406がVcc2制御部443によりデューティ制御されると、整流部421へ入力される電流の力率がほぼ1の状態で電圧Vcc1が出力される。一方、力率改善部422がオフした状態で、DC/DCコンバータ423のFET406がVcc2制御部443によりデューティ制御されても、電圧Vcc1は出力されるが、整流部421へ入力される電流の力率は向上しない。
【0031】
次に、整流部421とDC/DCコンバータ423の間に力率改善部422を付加した効果について、図5に示した具体例を用いて説明する。本実施例の画像形成装置100のプリント中における負荷は、駆動用電源装置431が300W、制御用電源装置432が80W、ヒータ136が1100Wである。また、商用交流電源140の電圧は110Vとする。上記の条件で、力率改善部422をオフした状態で、画像形成装置100がプリント動作を行ったときの各負荷に流れる電流の波形を、図5(a)、(b)、(c)に示す。図5(a)は駆動用電源装置431に、図5(b)は制御用電源装置432に、図5(c)はヒータ136に、それぞれ流れる電流の波形を示した図であり、縦軸は、電流値(単位:A)、横軸は時間(単位:秒)を示す。また、図5(a)〜(c)に示された電流を足し合わせた、即ち、画像形成装置100に流れる総電流の波形を示した図が、図5(d)である。
【0032】
図5(a)〜(c)において、有効電流値は、それぞれ駆動用電源装置431、制御用電源装置432、ヒータ136の各負荷を商用交流電源140の電圧110Vで除して算出し、皮相電流値は、各波形図に基づいて算出している。図5(a)〜(c)において、力率は、有効電流値を皮相電流値で除することで算出している。図5(d)の有効電流値は、図5(a)〜(c)の有効電流値の合計であり、皮相電流値は波形図に基づいて算出し、力率は、有効電流値を皮相電流値で除することで算出している。図5(a)、(b)より、駆動用電源装置431及び制御用電源装置432の力率が0.61程度と低く、合わせて約2Aが無効電流となっている。また、図5(c)より、ヒータ136は抵抗負荷であるが、エンジンコントローラ212が、商用交流電源140からヒータ136への給電を位相制御しているため、力率は1ではなく0.93と若干下がっている。図5(d)より、全ての負荷に流れる電流を合計すると力率は0.89となり、皮相電流値から有効電流値を差し引いた差分である約1.6A(=15.07A−13.45A)が無効電流となっていることが分かる。
【0033】
一方、駆動用電源装置431に付加されている力率改善部422をオンした状態でプリント動作を行ったときの各負荷に流れる電流波形、及び画像形成装置100に流れる総電流の波形を示した図が、図5(e)、(f)、(g)、(h)である。図5(e)は駆動用電源装置431、図5(f)は制御用電源装置432、図5(g)はヒータ136、に流れる電流の波形を示した図であり、縦軸は、電流値(単位:A)、横軸は時間(単位:秒)を示す。また、図5(e)〜(g)に示された電流を足し合わせた、即ち、画像形成装置100に流れる総電流の波形を示した図が、図5(h)である。図5(e)、(f)、(g)、(h)は、それぞれ図5(a)、(b)、(c)、(d)に対応し、図5(f)と(b)、図5(g)と(c)は、力率改善部422を有していない回路に流れる電流であるため、同一の波形を示している。図5(e)、(f)、(g)、(h)における有効電流値、皮相電流値、力率の算出方法は、図5(a)、(b)、(c)、(d)と同様であるため、説明を省略する。
【0034】
図5(e)は、力率改善部422をオンした状態での波形図であり、駆動用電源装置431の力率は、力率改善部422をオフした状態の図5(d)の0.61から1へと改善されている。図5(h)より、全ての負荷を合計すると力率は0.95まで向上し、無効電流値は0.66A(=14.11A−13.45A)となり、力率改善部422をオフした状態の図5(d)と比べて、約1A減少していることが分かる。このことから、15A電流規格を満足するためには、力率改善部422を付加することにより、非常に大きな効果があることが分かる。なお、駆動用電源装置431に力率改善部422を付加している理由は、駆動用電源装置431の方が制御用電源装置432に比べて負荷が大きく、力率改善の効果がより大きいためである。
【0035】
次に、画像形成装置100に流れる電流が最大になる条件について、図6を用いて説明する。図6は、商用交流電源140の電圧を変動させたときの、画像形成装置100に流れる皮相電流値をプロットした図であり、縦軸は皮相電流の電流値(単位:A)、横軸は商用電源電圧(単位:V)を示す。図6において、実線の波形は力率改善部(PFC:Power Factor Correction)422をオンした状態、破線の波形は力率改善部422をオフした状態での商用電源電圧と皮相電流との関係を示す。
【0036】
図6より、力率改善部422のオン・オフ状態に関わらず、商用交流電源140が100V付近で皮相電流が最大値になることが分かる。この100Vというのは、ヒータ136の給電位相角が0°となるポイントであり、このとき、ヒータ136に供給される電力が最大となる。即ち、電圧が100V未満では、ヒータ136に給電しても、電圧が低すぎて1100Wを給電できずに、常に給電位相角0°で給電している状態である。そして、定電力を供給する駆動用電源装置431及び制御用電源装置432では、電圧が低いため電流値は増加するが、増加した電流値よりも、ヒータ136に流れる電流値の低下が大きいため、画像形成装置100に流れる総電流は低下する。また、電圧が100Vより大きい場合では、給電位相角が0°より大きくなるため、ヒータ136の力率は低下する。ところが、定電力を供給する駆動用電源装置431及び制御用電源装置432では、電圧が高くなった分、電流値が下がるため、画像形成装置100に流れる総電流はやはり低下する。従って、本実施例における画像形成装置100に流れる電流が最大になる条件は、各負荷が最大な状態に加えて、ヒータ136の抵抗下限、商用交流電源140の電圧が100Vという状態であると言える。
【0037】
(4)定着電流検知部
ヒータ136に供給される電流は、図2に示すカレントトランス205によって電圧変換され、定着電流検知部206で実効値に変換され、アナログ信号として、エンジンコントローラ212に入力される。エンジンコントローラ212は、入力されたアナログ信号からデジタル信号に変換された、ヒータ136への電流値に基づいて、商用交流電源140の定格電流15Aを超えないように、ヒータ136への給電制御を行う。
【0038】
ここで、定着電流検知部206で出力される電流値は、二乗波形の交流電源周波数の半周期分の積分値であるため、周波数に依存した値となり、交流電源の周波数の検知も同時に必要となる。本実施例では、ゼロクロス検知部204によって検知されるゼロクロス信号パルスの立ち下がりのインターバル時間から、交流電源の周波数を算出している。電流検知のタイミングは、交流電源1周期分の時間である。また、この定着電流検知部206は、ヒータ136に異常な電流が流れたときに、リレー207の接続を遮断する保護回路(不図示)としても使用している。
【0039】
(5)力率改善部のオン・オフ制御
前述した力率改善部422には、FET403のスイッチング損失による発熱や効率の低下、ノイズの発生等の課題があるため、可能な限り力率改善部422をオフ状態にしておくことが望ましい。そこで、エンジンコントローラ212は、定着電流検知部206で検知した電流値が所定値を超えたら力率改善部422をオンし、所定値を下回ったらオフする制御を行う。ヒータ136の負荷は、画像形成装置100の全負荷のうちで、大きな割合を占めている。例えば、30ppm(page per minutes)程度のA3カラー対応の画像形成装置においては、「(3)電源装置」で説明したように、電源装置138の負荷が380W程度なのに対し、ヒータ136の負荷は1100W程度となる。しかも、電源装置138に比べて、ヒータ136は、常に負荷変動が大きい。そのため、力率改善部422のオン・オフを判断する電流の閾値としては、DC/DCコンバータ423に流れる電流の電流値ではなく、ヒータ136に流れる電流の電流値を用いる方が適切である。
【0040】
以下に、定着電流検知部206で検知した電流値を基に、力率改善部422のオン・オフ制御について、図7のフローチャートを用いて説明する。図7に示す処理は、エンジンコントローラ212のROM(不図示)に格納された制御プログラムに基づいて、エンジンコントローラ212により実行される。なお、以降の実施例におけるフローチャートの処理も同様に、エンジンコントローラ212により実行される。
【0041】
図7は、画像形成装置の電源オン時に起動される、力率改善部422のオン・オフ制御の処理シーケンスを示したフローチャートである。まず、画像形成装置100の電源がオンされると、ステップ601(以下、S601のように記す)では、エンジンコントローラ212が、エンジンコントローラ212のRAM(不図示)に設けられたメモリである変数n及び変数IFに0を書き込む。ここで、変数IFは、定着電流検知部206で検知された最新の電流値を保存するメモリであり、電流値が検知される毎に、即ち商用交流電源140の1周期毎に、電流値が更新される。変数nは、後述するS605の処理において、定着電流検知部206で検知された電流値が第1の閾値であるIlimit1未満であった回数を保存するメモリとして使用する。S602では、画像形成装置100のウォームアップに備え、エンジンコントローラ212は、力率改善制御部441がダイオード404の出力に基づき、FET403のデューティ制御を行うよう、力率改善制御部441に力率改善部422のオン状態を指示する。
【0042】
S603では、エンジンコントローラ212は、定着電流検知部206が検知したヒータ136への電流値の検知信号が入力されたかどうか判断する。エンジンコントローラ212は、検知信号が入力されていればS604に進み、検知信号が入力されていなければS603の処理を繰り返す。なお、前述したように、定着電流検知部206から検知信号がエンジンコントローラ212に入力されるタイミングは、交流電源1周期毎である。S604では、エンジンコントローラ212は、S603で検知された電流値を変数IFに書き込み、変数IFのメモリ内容を更新する。S605では、エンジンコントローラ212は、変数IFに保存された電流値が閾値Ilimit1より小さいかどうか判断し、変数IFに保存された電流値が閾値Ilimit1より小さければS606に進み、そうでなければS613に進む。ここで、閾値Ilimit1の値は、エンジンコントローラ212が力率改善部422をオフ状態にした状態で、画像形成装置100に商用交流電源140から供給される電流値が最大電流規格の15Aになるときに、ヒータ136に流れる電流値である。即ち、定着電流検知部206で検知される電流値が閾値Ilimit1未満(第1の閾値未満)ならば、力率改善部422をオフした状態でも、商用交流電源の15A電流規格を満足することができる。
【0043】
S606では、エンジンコントローラ212は、変数nに保存された値を1加算して、更新する。S607では、エンジンコントローラ212は、変数nの値が定数Nより大きいかどうか判断し、大きければS608に進み、変数nの値が定数Nの値以下であれば、S603に戻る。なお、定数Nについては、後述する。S613では、エンジンコントローラ212は、変数nに0を書き込み、S603に進む。
【0044】
S608では、エンジンコントローラ212は、力率改善部422をオフ状態にし、力率改善制御部441がFET403のデューティ制御をしないよう、力率改善制御部441に指示を行う。S609では、エンジンコントローラ212は、変数nに0を書き込み、リセットする。S610では、エンジンコントローラ212は、定着電流検知部206が検知したヒータ136への電流値の検知信号が入力されたかどうか判断する。エンジンコントローラ212は、検知信号が入力されていればS611に進み、検知信号が入力されていなければS610の処理を繰り返す。S611では、エンジンコントローラ212は、S610で検知した電流値を変数IFに書き込んで、変数IFのメモリ内容を更新する。S612では、エンジンコントローラ212は、変数IFに保存された電流値は閾値Ilimit1の値以上かどうか判断し、変数IFに保存された電流値が閾値Ilimit1以上(第1の閾値以上)であればS602に進み、そうでなければS610に戻る。
【0045】
図7のフローチャートにおいて、変数n及び定数Nは、定着電流検知部206の回路の誤動作防止のために設けている。定着電流検知部206の誤動作により、閾値未満の電流値が検知され、エンジンコントローラ212がすぐに力率改善部422をオフしてしまうと、画像形成装置100に流れる電流が15A電流規格を超えてしまう恐れがある。そのため、エンジンコントローラ212が力率改善制御部441に力率改善部422をオフ状態にする指示を行う場合は、定着電流値IFの更新時間分遅らせるようにしている。即ち、定着電流検知部206において検知された電流値が連続してN回、閾値Ilimit1未満であれば力率改善部422がオフ状態にされるので、誤動作防止のため、商用交流電源140の1周期に定数Nを乗じた時間分のガード時間を設けていることになる。
【0046】
以上説明した図7の制御フローに従って、実際に画像形成装置100の電源をオンしてプリント動作を行った場合に、力率改善部422のオン・オフ状態が時間の経過と共に変化する様子を、図8に示す。図8において、横軸は時間、縦軸は、定着電流検知部206で検知される電流値(ヒータ136へ流れる電流値)を示している。まず、画像形成装置100の電源をオンすると、画像形成装置100のウォームアップ動作が開始され、ヒータ温度を急速に上昇させるため、閾値Ilimit1を超える大きな電流がヒータ136に流れる。ヒータ136に閾値Ilimit1を超える電流が流れている間は、エンジンコントローラ212は、力率改善部422をオン状態にする。画像形成装置100のウォームアップ動作が終わると、スタンバイ状態に入り、商用交流電源140からヒータ136への供給電流が大きく低下して、閾値Ilimit1を下回るため、エンジンコントローラ212は、力率改善部422をオフ状態にする。このとき、前述した理由により、エンジンコントローラ212は、ヒータ136への供給電流値が閾値Ilimit1を下回ると、すぐに力率改善部422をオフ状態にするのではなく、所定時間のT×N時間経過した後に、力率改善部422をオフ状態にしている。ここで、Tは商用交流電源140の1周期時間を指し、Nは、図7に記載の定数を指す。
【0047】
続いて、プリント動作信号を受け、画像形成装置100においてプリントが開始されると、ヒータ136への供給電流が再び閾値Ilimit1を超え、エンジンコントローラ212は力率改善部422をオン状態にする。このときは、エンジンコントローラ212は、ヒータ136への供給電流値が閾値Ilimit1を超えると、すぐに力率改善部422をオン状態にする。プリント動作が継続されると、徐々に加熱定着装置130に熱が蓄積され、ヒータ136への供給電力は低下する。その結果、ヒータ136への供給電流が低下し、商用交流電源140の1周期毎に検知されるヒータ136への供給電流値が連続してN回、閾値Ilimit1を下回ると、エンジンコントローラ212は、力率改善部422をオフ状態にする。
【0048】
以上説明したように、本実施例によれば、力率改善部のスイッチング損失を抑えることができる。特に、本実施例では、画像形成動作中においても、多くの時間で力率改善部の動作を停止させることにより、商用交流電源の15A電流規格を満足しつつ、力率改善部のスイッチング損失を最小限に抑えることができる。
【実施例2】
【0049】
実施例1では、ヒータに流れる電流値に基づいて、力率改善部のオン・オフ制御を行うことにより、力率改善部におけるスイッチング損失を抑えることができる実施例について説明した。本実施例では、力率改善部に並列接続されたバイパススイッチを設けることにより、力率改善部を構成する素子における損失を改善する実施例について説明する。本実施例の画像形成装置、ヒータへの電力供給制御、定着電流検知部206の構成は実施例1と同じであるため、説明を省略し、実施例1と異なる部分について、以下に説明する。
【0050】
(1)電源装置
図9は、本実施例の画像形成装置100の電源装置138を示した図である。実施例1の図4と比べ、図9では、各素子につけられた符号が異なる点と、バイパススイッチ934が追加されている点を除けば、回路構成は図4と同様なので、異なる点についてのみ、以下に説明する。
【0051】
駆動用電源装置931は、整流部921、力率改善部922、バイパススイッチ934、DC/DCコンバータ923から構成され、電圧Vcc1を出力する。バイパススイッチ934は力率改善部922に並列に接続されており、エンジンコントローラ212からの不図示の制御信号により、スイッチのオン・オフが行われる。バイパススイッチ934がオンされると、整流部921で整流された電流は、インピーダンスの低いバイパススイッチ934側に流れ、力率改善部922を介さずに、DC/DCコンバータ923へ入力される。逆に、バイパススイッチ934がオフされると、整流部921で整流された電流は、力率改善部922側に流れ、力率改善部922の出力がDC/DCコンバータ923へ入力される。バイパススイッチ934がオフした状態で、DC/DCコンバータ923のFET906がデューティ制御されると、整流部921へ入力される電流の力率がほぼ1の状態で、電圧Vcc1が出力される。逆に、バイパススイッチ934がオンした状態で、DC/DCコンバータ923のFET906がデューティ制御されると、電圧Vcc1は出力されるが、整流部921へ入力される電流の力率は向上しない。
【0052】
なお、力率改善部922を付加することによる効果についての説明、及び、画像形成装置100に流れる電流が最大になる条件についての説明は、実施例1で説明した内容と重複するため、省略する。
【0053】
(2)力率改善部のオン・オフ制御
力率改善部922には、FET903のスイッチング損失による発熱や効率の低下、ノイズの発生等の課題があるため、可能な限り力率改善部922を介さず、DC/DCコンバータ923を動作させることが望ましい。更に、力率改善部922で発生する損失は、FET903でのスイッチング損失以外に、チョークコイル902、ダイオード904での損失も無視できない。従って、FET903のスイッチングを停止するだけでなく、バイパススイッチ934をオンすることにより、力率改善部922のチョークコイル902及びダイオード904をバイパスさせてしまうことが、上記の目的を達成する上で適切である。そこで、本実施例では、定着電流検知部206で検知したヒータ136への供給電流の電流値が所定値を超えた場合には、バイパススイッチ934をオフすると共に、力率改善部922をオン状態にして、FET903をデューティ制御する。逆に、定着電流検知部206で検知したヒータ136への供給電流の電流値が所定値を下回ったら場合には、バイパススイッチ934をオンして、力率改善部922をバイパスさせる制御を行う。
【0054】
バイパススイッチ934のオン・オフを判断する閾値としては、DC/DCコンバータ923に流れる電流よりヒータ136に流れる電流を用いる方が適しており、その理由については、実施例1で説明したとおりである。
【0055】
以下に、定着電流検知部206で検知した電流値を基に、バイパススイッチ934のオン・オフ制御について、図10のフローチャートを用いて説明する。図10は、画像形成装置の電源オン時に起動される、バイパススイッチ934のオン・オフ制御の処理シーケンスを示したフローチャートである。まず、画像形成装置100の電源がオンされると、S1001の処理が実行されるが、実施例1の図7のS601の処理と同じなので、ここでの説明を省略する。なお、図10における処理シーケンスは、図7の処理シーケンスと1対1に対応しており、図10の以降の処理においても、図7と同じ処理については、説明を省略する。
【0056】
S1002では、画像形成装置100のウォームアップに備え、エンジンコントローラ212は、バイパススイッチ934をオフにすると共に、力率改善制御部941に力率改善部922のオン状態を指示する。これにより、力率改善制御部941がダイオード904の出力に基づいて、FET903のデューティ制御を行い、整流部901からの出力電流は、力率改善部922を介して、DC/DCコンバータ923に入力される。S1003、S1004の処理は、それぞれ図7のS603、S604と同一の処理なので、説明を省略する。
【0057】
S1005では、エンジンコントローラ212は、変数IFに保存された電流値が第2の閾値Ilimit2より小さいかどうか判断し、変数IFに保存された電流値が閾値Ilimit2より小さければS1006に進み、そうでなければS1013に進む。ここで、閾値Ilimit2の値は、バイパススイッチ934をオンすると共に力率改善部922をオフ状態にした状態で、商用交流電源140から画像形成装置100に供給される電流値が最大電流規格の15Aになるときに、ヒータ136に流れる電流値である。即ち、定着電流検知部206で検知される電流値が閾値Ilimit2未満(第2の閾値未満)ならば、バイパススイッチ934をオンすると共に力率改善部922をオフ状態にした状態でも、商用交流電源の15A電流規格を満足することができる。S1006、S1007、及びS1013の処理は、それぞれ図7のS606、S607、S613と同一の処理なので、説明を省略する。
【0058】
S1008では、エンジンコントローラ212は、バイパススイッチ934をオンにすると共に、力率改善制御部941に力率改善部922のオフ状態を指示する。これにより、力率改善制御部941によるFET903のデューティ制御が停止され、整流部901からの出力電流は、バイパススイッチ934を介して、DC/DCコンバータ923に入力される。S1009、S1010、S1011の処理は、それぞれ図7のS609、S610、S611と同一の処理なので、説明を省略する。S1009では、エンジンコントローラ212は、変数nに0を書き込み、リセットする。S1012では、エンジンコントローラ212は、変数IFに保存された電流値は閾値Ilimit2の値以上かどうか判断し、変数IFに保存された電流値が閾値Ilimit2以上(第2の閾値以上)であればS1002に進み、そうでなければS1010に戻る。
【0059】
以上説明したように、本実施例によれば、力率改善部のスイッチング損失を抑えることができる。特に、本実施例では、画像形成動作中においても、多くの時間で力率改善部をバイパススイッチによりバイパスさせることにより、実施例1における効果に加えて、チョークコイルやダイオードでの損失も最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0060】
130 加熱定着装置
136 ヒータ
140 商用交流電源
206 定着電流検知部
212 エンジンコントローラ
421 整流部
422 力率改善部
423 DC/DCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を整流によって直流に変換する整流手段と、前記整流手段から出力された直流を入力とする力率改善手段と、前記力率改善手段から出力された直流を直流に変換する直流/直流変換手段と、を有する電源装置と、
前記交流電源からヒータに供給される電流を検知する検知手段を有し、記録紙上に形成されたトナー像を前記ヒータにより加熱して前記記録紙に定着させる加熱定着装置と、
前記検知手段により検知された電流値が第1の閾値以上のときには、前記整流手段から入力された直流に対して力率改善を行い、前記検知手段により検知された電流値が前記第1の閾値未満のときには、力率改善を停止するように、前記力率改善手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記力率改善手段に力率改善を行わせるタイミングは、前記検知手段により検知された電流値が前記第1の閾値以上であることを検知されたときであり、
前記制御手段が、前記力率改善手段による力率改善を停止させるタイミングは、前記検知手段により検知された電流値が前記第1の閾値未満であることを所定時間に連続して検知されたときであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の閾値は、前記力率改善手段による力率改善を停止させた状態で、前記交流電源から電流規格の最大値の電流が前記画像形成装置に供給されたときに、前記ヒータに流れる電流値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
交流電源を整流によって直流に変換する整流手段と、前記整流手段から出力された直流を入力とする力率改善手段と、前記力率改善手段から出力された直流を直流に変換する直流/直流変換手段と、
前記力率改善手段に並列接続され、オン状態では、前記整流手段から出力された直流を、前記力率改善手段を介さずに、前記直流/直流変換手段に入力させ、オフ状態では、前記整流手段から出力された直流を、前記力率改善手段を介して、前記直流/直流変換手段に入力させるバイパス手段と、を有する電源装置と、
前記交流電源からヒータに供給される電流を検知する検知手段を有し、記録紙上に形成されたトナー像を前記ヒータにより加熱して前記記録紙に定着させる加熱定着装置と、
前記検知手段により検知された電流値が第2の閾値以上のときには、前記力率改善手段が前記整流手段から入力された直流に対して力率改善を行うと共に、前記バイパス手段をオフ状態にし、前記検知手段により検知された電流値が前記第2の閾値未満のときには、前記力率改善手段による力率改善を停止させると共に、前記バイパス手段をオン状態にするように、前記力率改善手段及び前記バイパス手段の制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記力率改善手段に力率改善を行わせると共に前記バイパス手段をオフ状態にするタイミングは、前記検知手段により検知された電流値が前記第2の閾値以上であることを検知されたときであり、
前記制御手段が、前記力率改善手段による力率改善を停止させると共に前記バイパス手段をオン状態にするタイミングは、前記検知手段により検知された電流値が前記第2の閾値以上であることを所定時間に連続して検知されたときであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2の閾値は、前記力率改善手段による力率改善を停止させると共に前記バイパス手段をオン状態にした状態で、前記交流電源の供給する電流規格の最大値の電流が前記画像形成装置に供給されたときに、前記ヒータに流れる電流値であることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−106435(P2013−106435A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248778(P2011−248778)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】