説明

画像形成装置

【課題】光沢段差による画像の品位への影響を低減させながら、消費電力の増大、トナーの固着による画像の安定性の低下、及び転写材の給送性の低下を防止する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】定着装置よりも転写材搬送方向上流側において、定着装置へ向かう転写材における転写材搬送方向先端部を含む一部の領域と、転写材搬送方向後端部を含む一部の領域とのうち少なくとも一方を加熱するよう制御される加熱手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写材に対してトナー画像を定着する定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した画像形成装置は、転写材に対してトナー画像を定着する定着装置を備えている。この定着装置においては、トナー画像が転写された転写材を加熱及び加圧することで転写材へのトナー画像の定着が行われる。
【0003】
この定着装置の構成としては、転写材に対するトナー画像の定着の際に、所定の温度に加熱された定着部材を回転させながら転写材に押圧することで、トナー画像の定着を行いつつ転写材を搬送する構成が一般的に採用されている。
【0004】
このような構成において定着装置にトナー画像が転写された転写材が進入すると、室温に近い温度の転写材と所定の温度に加熱された定着部材とが接触することによって、定着部材の熱が転写材に奪われその温度が低下する。そして、転写材に対して定着が行われている間は、回転している定着部材に転写材が接触し続けているので、定着部材の温度は所定の温度より低下した温度のまま推移する。転写材に対する定着が完了すると、転写材が定着部材から離れるため、定着部材の温度は上昇し所定の温度まで回復する。
【0005】
先行の転写材に対する定着完了から、後続の転写材に対する定着開始までの期間は、定着部材は転写材と接触しないため、定着部材の熱が転写材に奪われることはない。そして、後続の転写材に対する定着が開始されると、再び定着部材の熱が転写材に奪われその温度が低下することになる。
【0006】
以上のように、定着部材を回転させることによりトナー画像を転写材に定着する際には、定着部材の周面上において転写材に接触する領域と接触しない領域とでその温度に差が生じてしまう。定着部材には、熱伝導性が低い材料が用いられることが多いため、上記の温度差は定着部材が1回転した後も残ってしまうことになる。すると、定着部材の周面上における温度差が生じている領域がトナー画像の定着のために再度転写材に接触することで、トナー画像の定着に影響が出ることとなる。
【0007】
即ち、定着部材における温度が高い領域によって定着された画像の光沢度は高くなるが、定着部材における温度が低い領域によって定着された画像の光沢度は低くなる、という光沢段差が生じる。特に、上述した定着部材における温度変化が急激である程、画像に現れる光沢段差がより目立ってしまい、画像の品位を損なうことになる。
【0008】
上述したように、定着部材の熱が転写材に奪われることによって生じる定着部材の周面上の温度差が原因となって光沢段差が現れる。従って、定着部材と転写材との温度差を小さくすることで、定着部材が転写材と接触することにより奪われる熱が少なくなるため、定着部材の周面上の温度差が小さくなり、画像に現れる光沢段差を和らげることが可能である。
【0009】
特許文献1には、定着部材に圧接する加圧部材を冷却する冷却手段と、転写材を加熱する予備加熱手段とを、加圧部材と転写材との温度差が小さくなるよう制御することで、光沢段差による定着画質不良を発生させることのない画像形成装置が記載されている。
【0010】
特許文献2には、第1の押圧部材と、定着部材に当接した第2の押圧部材とで、トナー像の転写前に転写材を予備加熱し、トナー像の転写後に第2の押圧部材と定着部材とでトナー像を定着することで、光沢段差を発生させることのない画像形成装置が記載されている。
【0011】
特許文献3には、機外の空気を定着装置へ導き冷却した後、定着装置冷却により暖められた空気を転写部の上流と下流のどちらか一方又は両方の像支持部材搬送路に送り像支持部材を予備加熱することで、光沢段差を防止することが可能な画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−330556号公報
【特許文献2】特開2006−337898号公報
【特許文献3】特開2007−57775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1〜3に記載の画像形成装置においては、何れも転写材全体を予備加熱することで定着部材と転写材との温度差を小さくし、光沢段差の発生を防止している。しかしながら、このような場合は多くのエネルギーを必要とするため、消費電力が大きくなるという課題があった。
【0014】
また、上記のように転写材全体を予備加熱する場合は、画像形成装置内の温度が過度に上昇してしまい、トナーが熱により固着する現象が生じていた。そして、固着したままのトナーが転写材に転写及び定着されることで、画像の安定性が低下するという課題があった。
【0015】
さらに、上記のように転写材全体を予備加熱する場合は、予備加熱された転写材にカールが生じやすくなり、ジャムが起きる等転写材の給送性が低下するという課題があった。
【0016】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、光沢段差による画像の品位への影響を低減させながら、消費電力の増大、トナーの固着による画像の安定性の低下、及び転写材の給送性の低下を防止することが可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の発明は、回転可能な定着部材と、前記定着部材を加熱する第1の加熱手段と、を有し、前記第1の加熱手段により前記定着部材を加熱し、加熱された前記定着部材を回転させながら転写材に熱と圧力を加えることで転写材上のトナー画像を該転写材へ定着する定着装置を備える画像形成装置において、前記定着装置より転写材搬送方向上流側に設けられた、前記定着装置へ向かう転写材を加熱する第2の加熱手段と、転写材における転写材搬送方向先端部を含む一部の領域と、転写材搬送方向後端部を含む一部の領域とのうち少なくとも一方を加熱するよう前記第2の加熱手段を制御することを特徴とする制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0018】
請求項2に記載の発明は、前記第2の加熱手段は、転写材へトナー画像を転写する転写部より転写材搬送方向上流側に設けられ、前記第2の加熱手段により加熱された転写材に対して前記転写部においてトナー画像を転写することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置である。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記第2の加熱手段は、転写材へトナー画像を転写する転写部より転写材搬送方向下流側且つ前記定着装置より転写材搬送方向上流側に設けられ、前記第2の加熱手段は、前記転写部においてトナー画像が転写された転写材を加熱することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置である。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記制御手段は、前記転写材における転写材搬送方向先端部を含む一部の領域及び前記転写材搬送方向後端部を含む一部の領域として、転写材におけるトナー画像が転写された領域以外の領域を加熱するよう制御することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置である。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記制御手段は、転写材に転写されるトナー画像の内容に基づいて、前記転写材における加熱される領域を変化させるよう制御することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の画像形成装置である。
【0022】
請求項6に記載の発明は、転写材に形成されるトナー画像の画質を設定する画質設定手段を有し、前記制御手段は、前記画質設定手段により高画質の画像を形成するとの設定がなされた場合に、前記転写材における、前記画質設定手段により高画質の画像を形成するとの設定がなされていない場合に加熱される領域より広い領域を加熱させるよう制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置である。
【0023】
請求項7に記載の発明は、前記第2の加熱手段は、転写材搬送方向に直交する方向に分割して設けられており、前記制御手段は、分割して設けられた前記第2の加熱手段をそれぞれ個別に制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置である。
【0024】
請求項8に記載の発明は、前記制御手段は、転写材における、トナー画像が形成される領域に対応した前記第2の加熱手段のみを動作させるよう制御することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置である。
【0025】
請求項9に記載の発明は、転写材の搬送を制御する搬送制御手段を有し、前記制御手段は、転写材における転写材搬送方向先端部を含む一部の領域のみを加熱するよう制御し、前記搬送制御手段は、転写材に対するトナー画像の定着の際に、該転写材と、定着部材における先行の転写材の転写材搬送方向後端部と接触した領域とを接触させないように制御することを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の画像形成装置である。
【0026】
請求項10に記載の発明は、転写材の搬送を制御する搬送制御手段を有し、前記制御手段は、転写材における転写材搬送方向後端部を含む一部の領域のみを加熱するよう制御し、前記搬送制御手段は、転写材に対するトナー画像の定着の際に、該転写材と、定着部材における先行の転写材の転写材搬送方向先端部と接触した領域とを接触させないように制御することを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る画像形成装置によれば、制御手段が、定着装置へ向かう転写材の転写材搬送方向先端部(以降、「先端部」と呼ぶ)を含む一部の領域と転写材搬送方向後端部(以降、「後端部」と呼ぶ)を含む一部の領域とを加熱するよう第2の加熱手段を制御する。
【0028】
このように、転写材の先端部を含む一部の領域と後端部を含む一部の領域とが温められると、転写材と定着部材とが接触することによる定着部材の温度変化を緩やかなものにすることができるため、画像に現れる光沢段差を目立たなくし、画像の品位を保つことが可能である。
【0029】
また同時に、転写材の一部の領域を加熱するものであるため、消費電力の増大、機内温度上昇によるトナーの固着に起因する画像の安定性の低下、及びカールが生じることによる転写材の給送性の低下を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の全体像を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における定着装置の全体像を示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における第2の加熱手段付近を拡大した図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置における各構成の電気的関係を示したブロック図である。
【図5】用紙の予備加熱を行わなかった場合における、トナー画像定着の際の定着ベルトの表面温度変化を示した図である。
【図6】用紙に対して予備加熱を行う様子を示した図である。
【図7】用紙の先端部を含む一部の領域及び後端部を含む一部の領域を予備加熱した場合における、トナー画像定着の際の定着ベルトの表面温度変化を示した図である。
【図8】用紙の先端部を含む一部の領域のみを予備加熱した場合における、トナー画像定着の際の定着ベルトの表面温度変化を示した図である。
【図9】用紙の後端部を含む一部の領域のみを予備加熱した場合における、トナー画像定着の際の定着ベルトの表面温度変化を示した図である。
【図10】第2の加熱手段に用紙が進入する様子を上方から見た図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態における、CPU300の制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における画像形成装置全体の構成を示す概略図である。
【0032】
画像形成装置1000は、画像読取部100、画像形成部200、給紙部20等から構成されている。
【0033】
画像読取部100は、自動原稿給紙装置DF、光学系101、CCDイメージセンサ102等から構成されている。
【0034】
画像形成部200は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応したトナー画像を形成する画像形成手段10Y、10M、10C、10Kと、各画像形成手段により形成されるトナー画像が転写される中間転写ベルト6、中間転写ベルト6上のトナー画像が転写材としての用紙に転写される2次転写部7A、用紙に転写されたトナー像を定着する定着装置9等から構成されている。2次転写部7Aは本発明における転写部としての役割を果たす。
【0035】
給紙部20は、給紙トレイ20A〜20C、ピックアップローラ21A〜21C等から構成されており、給紙部20より適切な用紙が適切なタイミングで給紙される。
【0036】
本発明の画質設定手段としての役割を果たす操作部30においては、画像形成の内容に関する設定や、画像形成開始の指示等を行う。また、後述するが、形成される画像の画質に関する設定を行うことができる。
【0037】
操作部30において、画像形成開始の指示がなされると、自動原稿給紙装置DFの原稿台103に載置された原稿Dは原稿読み取り部へ搬送される。そして、図示しない光源より原稿に照射された光の反射光が、光学系101を介してCCDイメージセンサ102により読み取られる。
【0038】
CCDイメージセンサ102により読み取られた信号に対しては、各種画像処理が施される。画像処理が施された画像信号に基づいて、画像形成手段10Y〜10Kが各色のトナー画像を形成する。
【0039】
イエロー色のトナー画像を形成する画像形成手段10Yは、感光体1Y、帯電部2Y、露光部3Y、現像部4Y、クリーニング部8Yから構成されている。感光体1Yは図1の反時計方向に回転されており、帯電部2Yにより一様に帯電される。帯電された感光体1Yに対して、画像信号に基づいて露光部3Yがレーザー光を照射し、イエロー色の画像に対応した静電潜像を形成する。
【0040】
静電潜像が形成されると、次に現像部4Yにより静電潜像に対してイエロー色のトナーが送り込まれ、感光体1Y上にイエロー色のトナー画像が形成される。形成されたトナー画像は、1次転写部7Yにおいて中間転写ベルト6に転写される。
【0041】
中間転写ベルト6に転写され切れずに感光体1Yの表面に残存したトナーは、クリーニング部8Yにより取り除かれ、次のトナー画像の形成に備える。
【0042】
マゼンタ色のトナー画像を形成する画像形成手段10M、シアン色の画像を形成する画像形成手段10C及びブラック色の画像を形成する画像形成手段10Kは、何れもイエロー色の画像を形成する画像形成手段10Yと同様の構成を有しているため、その詳細な説明は省略する。
【0043】
中間転写ベルト6は、複数のローラに巻き回された無端状のベルトであり、図1の時計方向に回転されている。イエロー色のトナー画像から順に、1次転写部7M、7C及び7Kにおいて、適切なタイミングでトナー画像を中間転写ベルト6に転写させることで、原稿画像に対応した適切なカラートナー画像が中間転写ベルト6上に形成される。
【0044】
一方、給紙トレイ20A〜20Cの何れかより給紙された用紙は、搬送ローラ対22A〜22Dにより搬送され、本発明の第2の加熱手段としてのレジストローラ対23に到達する。レジストローラ対23についての詳細な説明は後述するが、レジストローラ対23により、用紙の搬送方向の斜行が修正されるとともに、用紙の先端部を含む一部の領域及び後端部を含む一部の領域が加熱され、なおかつ中間転写ベルト6上のカラートナー画像とタイミングを合わせるように用紙が2次転写部7Aへと搬送される。
【0045】
2次転写部7Aにおいて、中間転写ベルト6上のカラートナー画像が、搬送されてきた用紙に転写される。カラートナー画像が転写された用紙は定着装置9に向けて搬送される。用紙に転写され切れずに中間転写ベルト6上に残存したトナーは、中間転写ベルトクリーニング部8Aにより取り除かれ、次のトナー画像形成に備える。
【0046】
カラートナー画像が転写された用紙に対しては、定着装置9により熱と圧力とを加えることでカラートナー画像を定着する。カラートナー画像が定着された用紙は、排出ローラ対24に向けて搬送され、排紙トレイ25に排出される。
【0047】
用紙の両面に画像を形成する場合は、定着装置9において用紙の表面に対してカラートナー画像が定着されると、用紙は分岐手段26によって反転経路27Aに向けて搬送され、反転部27Bにおいて搬送方向の先後端が反転される。先後端が反転された用紙は反転経路27Cを通りレジストローラ対23に搬送され、再び先端を含む一部の領域及び後端を含む一部の領域が加熱される。
【0048】
その後、2次転写部7Aにおいて用紙の裏面に形成される画像に対応したカラートナー画像が上述の通り転写され、定着装置9によって裏面のカラートナー画像が定着され、排出ローラ対24から排紙トレイ25に排出される。
【0049】
図2は、定着装置9の構成を表した断面図である。定着装置9においては、無端状のベルトである定着ベルト91が、加熱ローラ92と定着ローラ93とに巻き回されている。
【0050】
加熱ローラ92には、本発明における第1の加熱手段であるハロゲンランプ92Aが内蔵されている。ハロゲンランプ92Aを動作させることで、加熱ローラ92から定着ベルト91へ熱が伝わり、定着ベルト91が定着に適した所定温度に加熱される。
【0051】
定着ローラ93は、不図示の駆動手段によって図2の時計方向に回転される。定着ローラ93の時計方向の回転により、定着ベルト91が時計方向に回転し、さらに加熱ローラ92も時計方向に回転する。このようにして、定着ベルト91は加熱ローラ92により均一に加熱される。
【0052】
加圧ローラ94は、トナー画像の定着の際には定着ローラ93に圧接され、圧接により定着ローラに従動して反時計方向に回転される。一方、トナー画像の定着が行われないときには、定着ローラ93との圧接が解除される。この定着ローラ93との圧接及び圧接解除は、図示しない圧接解除機構により行われる。
【0053】
トナー画像の定着が行われる際には、トナー画像が転写された用紙が、定着ローラ93と加圧ローラ94とのニップ部Nに進入し、ニップ部Nにおいて定着ベルト91により加熱され、且つ加圧ローラ94により所定の圧力で押圧されることで、トナー画像が定着される。
【0054】
また、加圧ローラ94にはハロゲンランプ94Aが内蔵されており、ハロゲンランプ94Aを動作させることで、加圧ローラ94を所定の温度に加熱している。ハロゲンランプ94Aにより加熱される際の加圧ローラ94の温度は、定着ベルト91の温度よりは低くなるように予め設定されている。
【0055】
図3は、画像形成装置1000内のレジストローラ対23付近を拡大した図である。レジストローラ対23は、駆動ローラ23Aと従動ローラ23Bとからなる。駆動ローラ23Aは、不図示の駆動手段により図3の時計方向に回転され、従動ローラ23Bは、駆動ローラ23Aが回転されると駆動ローラ23Aとの圧接により従動して反時計方向に回転される。
【0056】
駆動ローラ23Aには、ハロゲンランプ23Cが内蔵されており、ハロゲンランプ23Cを動作させることで、2次転写部7Aへ向かう用紙に熱が伝わり、用紙が予備加熱される。
【0057】
図4は、画像形成装置1000における電気的構成を示すブロック図である。図1に示す構成と同じ構成に対しては、図1において付されている符号と同一の符号を付している。
【0058】
本発明における制御手段及び搬送制御手段としての役割を果たすCPU300は、操作部30における設定の情報に基づいて、画像読取部100及び画像形成部200を制御することで、画像読取部100によって読み取られた画像データに基づいて適切な画像を用紙に形成させる。
【0059】
また、CPU300は、給紙部20及び搬送ローラ対22A〜22Dを制御し、適切なタイミングで用紙を給紙及び搬送させる。
【0060】
さらに、CPU300は、レジストローラ対23の動作を制御する。具体的には、駆動ローラ23Aの回転駆動を制御することで、用紙の搬送のタイミングを制御するとともに、ハロゲンランプ23Cの動作を制御することで、用紙を適切に予備加熱させる。
【0061】
図5は、用紙に対してトナー画像の定着を行う前に用紙の予備加熱を行わない場合における、定着ベルト91の表面温度変化を示した図である。図5における縦軸は定着ベルト91の表面温度、横軸は定着ベルト91の周面方向の位置を示している。
【0062】
トナー画像を用紙に定着する際には、定着ベルト91は、定着に適した所定の温度Tに加熱され、加圧ローラ94と圧接した状態で定着ローラ93の回転駆動により回転されながら用紙に対して定着を行う。温度Tは、例えば195℃である。
【0063】
用紙が定着装置9に搬送され、定着ベルト91と加圧ローラ94とのニップ部Nに到達すると、用紙と定着ベルト91とが接触するため、加熱された定着ベルト91の熱が、室温に近い用紙に奪われ、定着ベルト91の表面温度が低下する現象が起こる。
【0064】
図5に示すように、用紙がニップ部Nに到達すると、定着ベルト91における用紙と接触した位置a1においてその温度が低下する。用紙と接触している定着ベルト91の表面温度は、温度平衡となる温度T1になると安定する。温度平衡となる温度T1は、用紙の温度により異なるが、185℃程度まで低下する。
【0065】
用紙に対して定着が行われている間、即ち用紙と定着ベルト91とが接触している間は、定着ベルト91の表面温度はT1のまま推移する。そして、用紙に対する定着が完了し、用紙と定着ベルト91とが離れると、定着ベルト91の熱は奪われなくなるため、その表面温度はその位置a2において所定の温度Tまで上昇する(a2−a1=f、fは用紙の搬送方向の長さ)。
【0066】
後続の用紙がニップ部Nに到達するまでは、定着ベルト91の表面温度は所定の温度Tのまま推移する。そして、後続の用紙がニップ部Nに到達すると、用紙に熱が奪われるため定着ベルト91の表面温度はその位置a3にて再び低下し、温度T1にて安定する(a3−a2=d、dは先行の用紙と後続の用紙との間隔の長さ)。
【0067】
このように、用紙の定着を行う際には、定着ベルト91の熱が用紙に奪われるため、定着ベルト91の周面方向に温度の段差が生じる。この温度の段差は定着ベルト91が1回転した後も残り、再び温度段差部分によって用紙に対して定着が行われたときに、その定着画像に対して影響を与えることになる。
【0068】
具体的には、定着ベルト91の表面温度がTである部分によって定着された画像の光沢度に比べて、定着ベルト91の表面温度がT1である部分によって定着された画像の光沢度が低くなる。このように、定着ベルト91における温度の段差が画像の光沢段差となって現れてしまう。
【0069】
特に図5に示すように、位置a1、a2、a3において定着ベルト91の表面温度が急激に低下或いは上昇しているような場合は、定着ベルト91が1回転後、定着ベルト91のこれらの位置によって再度定着が行われると、画像の光沢度が高い部分と低い部分との境界が明確に現れてしまうため、画像の品位が著しく低下する。
【0070】
図6はレジストローラ対23により用紙Pが予備加熱される様子を示した図である。
【0071】
給紙部20から給紙され搬送されてきた用紙Pは、その先端がレジストローラ対23の駆動ローラ23Aと従動ローラ23Bとのニップ部に突き当てられることで、搬送方向の斜行が修正される。
【0072】
搬送方向の斜行が修正されると、次に、レジストローラ対23により用紙Pの先端部を含む一部の領域を予備加熱する。具体的には、図6(a)に示すように、駆動ローラ23Aと従動ローラ23Bとで用紙Pの先端部を担持し用紙を静止させ、ハロゲンランプ23Cを起動するようCPU300が制御する。
【0073】
所定時間だけ用紙Pの先端部を含む一部の領域を加熱すると、CPU300は、ハロゲンランプ23Cの起動を停止させ、さらに駆動ローラ23Aを時計方向へ回転駆動させることで用紙Pを2次転写部7A方向へ搬送させる。次に、用紙Pの後端部を含む領域を予備加熱すべく、駆動ローラ23Aの回転駆動を停止させることで、図6(b)に示すように駆動ローラ23Aと従動ローラ23Bとで用紙Pの後端部を担持し用紙を静止させ、ハロゲンランプ23Cを起動させる。
【0074】
所定時間だけ用紙Pの後端部を含む一部を加熱すると、ハロゲンランプ23Cの起動を停止させ、駆動ローラ23Aを時計方向へ回転駆動させることで用紙Pを2次転写部7A方向へ搬送させる。
【0075】
このようにして、用紙の先端部を含む一部の領域及び後端部を含む一部の領域が予備加熱される。
【0076】
図7は、先端部を含む一部の領域及び後端部を含む一部の領域を予備加熱した用紙に対して定着装置9において定着を行った場合における、定着ベルト91の表面温度変化を示した図である。図7における実施の条件は、用紙が予備加熱されていること以外は図5にて示したときの条件と同じ条件とする。
【0077】
用紙の先端部を含む一部の領域及び後端部を含む一部の領域を予備加熱した場合は、予備加熱された領域に関しては定着ベルト91との温度差が小さくなっているので、定着ベルト91の表面温度低下の度合いが小さくなる。
【0078】
図7に示すように、予備加熱されトナー画像が転写された用紙がニップ部Nに到達すると、定着ベルト91の表面温度の低下がその周面上の位置a1から始まる。
【0079】
用紙の先端部を含む一部の領域が予備加熱されているので、定着ベルト91の表面温度が緩やかに低下する。そして、用紙と接触している定着ベルト91の表面温度は、温度平衡となる温度T1になると安定する。
【0080】
ニップ部Nにおいて用紙の後端部が近づいてくると、用紙の予備加熱された領域が定着ベルト91と接触するようになるため、定着ベルト91の表面温度は緩やかに上昇し始め、位置a2において温度Tまで上昇する。
【0081】
後続の用紙がニップ部Nに到達するまでは、定着ベルト91の表面温度は所定の温度Tのまま推移する。そして、後続の用紙がニップ部Nに到達すると、用紙に熱が奪われるため定着ベルト91の表面温度はその位置a3にて再び低下し始める。
【0082】
後続の用紙についても、その先端部を含む一部の領域が予備加熱されているので、定着ベルト91の表面温度はその位置a3から緩やかに低下する。
【0083】
図7に示すように、用紙の先端部を含む一部の領域及び後端部を含む一部の領域を予備加熱すると、予備加熱された用紙が定着ベルト91に接触することによる表面温度変化は、図5に示す場合と比較して緩やかなものになる。
【0084】
定着ベルト91の表面温度変化が緩やかになると、再度定着が行われたときに画像に現れる光沢段差も同様に緩やかなものとなるため、画像の見た目には目立たなくなる。よって、画像の品質低下を防ぐことが可能となる。
【0085】
以上のように、本発明の第1の実施の形態によれば、定着装置9によりトナー画像の定着が行われるより前に、第2の加熱手段によって用紙の先端部を含む一部の領域及び後端部を含む一部の領域を加熱するようにCPU300が制御する。
【0086】
このように制御することで、定着ベルト91と用紙とが接触することにより生じる定着ベルトの温度段差を緩やかなものにすることが可能となる。その結果、定着ベルト91が1回転した後その温度段差部分によってトナー画像の定着が行われた際に、画像に生じる光沢段差を目立たなくすることができ、画質の低下を防ぐことが可能となる。
【0087】
また、用紙の先端部を含む一部の領域及び後端部を含む一部の領域のみを予備加熱する構成であるので、用紙全体を予備加熱する場合よりも消費電力を低減することが可能となる。
【0088】
さらに、画像形成装置1000内の温度上昇を抑えることが可能となるため、トナーの固着による画質の低下を防ぐことが可能となる。
【0089】
さらに、予備加熱により発生するカールを軽微なものとすることが可能となるため、ジャム等の用紙の給送性の低下を抑えることが可能となる。
【0090】
以上、用紙の先端部を含む一部の領域及び後端部を含む一部の領域を予備加熱するようCPU300が制御する例を説明した。
【0091】
しかしながら、用紙の先端部を含む一部の領域と、後端部を含む一部の領域とを、必ずしも両方とも予備加熱しなければならないということはない。先行の用紙と後続の用紙との間隔の広さや、定着ベルト91の長さ、用紙の搬送方向の長さ等の諸条件によっては、何れか一方の領域のみ予備加熱すれば良い場合もある。
【0092】
具体的には、上記諸条件により、後続の用紙と、定着ベルト91における先行の用紙の後端部が接触した領域とが、互いに接触しないような場合は、先行の用紙の先端部を含む一部の領域のみを予備加熱することで、後続の用紙における画質の低下を防ぐことが可能となる。
【0093】
同様に、上記諸条件により、後続の用紙と、定着ベルト91における先行の用紙の先端部が接触した領域とが、互いに接触しないような場合は、先行の用紙の後端部を含む一部の領域のみを予備加熱することで、後続の用紙における画質の低下を防ぐことが可能となる。
【0094】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。第2の実施の形態においては、画像形成装置1000の構成は第1の実施の形態において説明した構成と同等の構成を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0095】
第2の実施の形態においては、用紙の先端部を含む一部の領域のみを予備加熱し、さらには後続の用紙の搬送のタイミングを制御する。
【0096】
給紙部20から給紙され、レジストローラ対23に到達した用紙Pは、図6(a)に示すようにその先端部を駆動ローラ23Aと従動ローラ23Bとに担持され、予備加熱が行われる。
【0097】
CPU300は、用紙の先端部を含む一部の領域の予備加熱が完了すると、ハロゲンランプ23Cを停止させ、駆動ローラ23Aを回転駆動させ、用紙の後端部を含む一部の領域を加熱しないまま2次転写部7A方向へ搬送させる。
【0098】
用紙の先端部を含む一部の領域が加熱された用紙に対しては、2次転写部7Aにおいてトナー画像が転写され、さらに定着装置9においてトナー画像が定着される。
【0099】
図8は、先端部を含む一部の領域のみを予備加熱した用紙に対して定着装置9において定着を行ったときの、定着ベルト91の表面温度変化を示した図である。図8における各条件は、用紙が予備加熱されていること以外は図5にて示したときの条件と同じ条件とする。
【0100】
用紙の先端部を含む一部の領域のみを予備加熱した場合は、加熱された用紙の先端部を含む一部の領域がニップ部Nを通過した際における、定着ベルト91の表面温度低下の度合いが小さくなる。
【0101】
図8に示すように、予備加熱されトナー画像が転写された用紙がニップ部Nに到達すると、定着ベルト91の周面上の位置a1から定着ベルト91の表面温度の低下が始まる。
【0102】
用紙の先端部を含む一部の領域が予備加熱されているので、定着ベルト91の表面温度が緩やかに低下する。そして、用紙と接触している定着ベルト91の表面温度は、温度平衡となる温度T1になると安定する。
【0103】
用紙の後端部は予備加熱されていないため、用紙の後端部がニップ部Nに到達すると、定着ベルト91の表面温度はその位置a2において温度T1から温度Tまで急激に上昇する。
【0104】
次の用紙がニップ部Nに到達するまでは、定着ベルト91の表面温度は所定の温度Tのまま推移する。そして、次の用紙がニップ部Nに到達すると、用紙に熱が奪われるため、定着ベルト91の表面温度はその位置a3にて再び低下し始める。
【0105】
次の用紙についても、その先端部を含む一部の領域が予備加熱されているので、定着ベルト91の表面温度はその位置a3より緩やかに低下する。
【0106】
図8に示すように、用紙の先端部を含む一部の領域のみを予備加熱すると、用紙の先端部を含む一部の領域が定着ベルト91に接触することによる表面温度変化は緩やかなものになるが、予備加熱されていない後端部が定着ベルト91から離れることによる表面温度変化は急激なものとなってしまう。
【0107】
さらに後続の用紙に対して定着を行う際には、先行の用紙の先端部と定着ベルト91との接触に起因する定着ベルト91の温度変化は緩やかなものであるので、画像に明確な光沢段差が現れることはなく、画像の品質低下には繋がらない。
【0108】
一方、定着ベルト91における、先行の用紙の後端部と定着ベルト91との接触及び離間に起因する急激な温度変化が生じている領域が、後続の用紙の定着の際に後続の用紙に接触することにより、後続の用紙に形成される画像において明確に光沢段差が現れてしまうことになる。
【0109】
そこで、このような場合に後続の用紙に光沢段差が現れないようにするために、後続の用紙の搬送タイミングを制御することで、画像に光沢段差が明確に現れないようにする。
【0110】
具体的には、後続の用紙を定着装置9に向けて搬送する際に、後続の用紙と、定着ベルト91における急激な温度変化が生じている領域(図8における位置a2)とを接触させないように、CPU300が搬送ローラ対22A〜22D或いはレジストローラ対23を制御する。
【0111】
このように、用紙の先端部のみを予備加熱し、さらに後続の用紙の搬送のタイミングを制御することによって、後続の用紙と、定着ベルト91における先行の用紙の後端部が接触した領域とが、互いに接触するような場合であっても、光沢段差が明確に現れることによる画質の低下を防ぐことが可能となるとともに、さらなる消費電力の低減を実現することができる。
【0112】
次に、本発明の第3の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。第3の実施の形態においては、画像形成装置1000の構成は第1の実施の形態において説明した構成と同等の構成を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0113】
第3の実施の形態においては、用紙の後端部を含む一部の領域のみを予備加熱し、さらには後続の用紙の搬送のタイミングを制御する。
【0114】
給紙部20から給紙され、レジストローラ対23に到達した用紙Pは、搬送方向の斜行が修正され、次に図6(b)に示すようにその後端部を駆動ローラ23Aと従動ローラ23Bとに担持され、予備加熱が行われる。
【0115】
CPU300は、用紙の後端部を含む一部の領域の予備加熱が完了すると、ハロゲンランプ23Cを停止させ、駆動ローラ23Aを回転駆動させ、用紙を2次転写部7A方向へ搬送させる。
【0116】
用紙の後端部を含む一部の領域が加熱された用紙に対しては、2次転写部7Aにおいてトナー画像が転写され、さらに定着装置9においてトナー画像が定着される。
【0117】
図9は、後端部を含む一部の領域のみを予備加熱した用紙に対して定着装置9において定着を行ったときの、定着ベルト91の表面温度変化を示した図である。図9における各条件は、用紙が予備加熱されていること以外は図5にて示したときの条件と同じ条件とする。
【0118】
用紙の先端部は予備加熱されていないため、用紙の先端部がニップ部Nに到達すると、定着ベルト91の表面温度は定着ベルト91の周面上の位置a1において温度Tから温度T1まで急激に下降し、温度平衡となる温度T1になると安定する。
【0119】
用紙の後端部を含む一部の領域のみを予備加熱した場合は、加熱された用紙の後端部を含む一部の領域がニップ部Nを通過した際における、定着ベルト91の表面温度上昇の度合いが小さくなる。
【0120】
図9に示すように、用紙の予備加熱された領域が定着ベルト91に接触すると、定着ベルト91の表面温度が緩やかに上昇し始め、用紙の後端部がニップ部Nに到達すると、定着ベルト91の表面温度はその位置a2において温度Tまで上昇する。
【0121】
次の用紙がニップ部Nに到達するまでは、定着ベルト91の表面温度は所定の温度Tのまま推移する。そして、次の用紙がニップ部Nに到達すると、用紙に熱が奪われるため定着ベルト91の表面温度はその位置a3にて再び温度T1まで急激に低下する。
【0122】
図9に示すように、用紙の後端部を含む一部の領域のみを予備加熱すると、用紙の予備加熱された領域が定着ベルト91に接触することによる温度変化は緩やかなものになるが、予備加熱されていない先端部が定着ベルト91から離れることによる温度変化は急激なものとなってしまう。
【0123】
さらに後続の用紙に対して定着を行う際には、先行の用紙の後端部と定着ベルト91との接触に起因する定着ベルト91の温度変化は緩やかなものであるので、画像に明確な光沢段差が現れることはなく、画像の品質低下には繋がらない。
【0124】
一方、定着ベルト91における、先行の用紙の先端部と定着ベルト91との接触に起因する急激な温度変化が生じている領域が、後続の用紙の定着の際に後続の用紙に接触することにより、画像に光沢段差が明確に現れてしまうことになる。
【0125】
そこで、このような場合に後続の用紙に光沢段差が現れないようにするために、本発明の第2の実施の形態における考え方と同様の考え方に基づいて、後続の用紙の搬送タイミングを制御することで、画像に光沢段差が明確に現れないようにする。
【0126】
具体的には、後続の用紙を定着装置9に向けて搬送するときに、後続の用紙と、定着ベルト91における急激な温度変化が生じている領域(図9における位置a1、a3)とを接触させないように、CPU300が搬送ローラ対22A〜22D或いはレジストローラ対23を制御する。
【0127】
このように、用紙の後端部のみを予備加熱し、さらに後続の用紙の搬送のタイミングを制御することによって、後続の用紙と、定着ベルト91における先行の用紙の先端部が接触した領域とが、互いに接触するような場合であっても、光沢段差が明確に現れることによる画質の低下を防ぐことが可能となるとともに、さらなる消費電力の低減を実現することができる。
【0128】
次に、本発明の第4の実施の形態について、図面を用いて説明する。第4の実施の形態においては、画像形成装置1000の構成については、第1の実施の形態において説明した構成とほぼ同等の構成を用いることができるため、重複する部分については詳細な説明を省略する。
【0129】
図10は、レジストローラ対23に向かって用紙Pが搬送される様子を上方から見た図である。本実施の形態においては、駆動ローラ23Aの内部に、5つのハロゲンランプ23D〜Hが搬送方向に直交する方向に並んだ状態で内蔵されている。
【0130】
CPU300は、5つのハロゲンランプ23D〜Hの動作を個別に制御することが可能となっている。CPU300は、用紙に形成される画像の内容に基づき、5つのハロゲンランプの動作を制御する。
【0131】
具体的には、図10に示すように、搬送方向に直交する方向に対して一部の領域のみ用紙Pに対して画像が形成される予定である場合、その画像が形成される予定の領域に対応する位置に内蔵されたハロゲンランプのみを動作させ(ハロゲンランプ23F)、画像が形成される領域に対応する先端部を含む領域及び後端部を含む領域のみを加熱するようにCPU300が制御する。
【0132】
このように制御することで、光沢段差が目立ってしまう恐れのある領域に対応した、用紙の先端部を含む一部の領域及び後端部を含む一部の領域のみを予備加熱することが可能となるので、光沢段差による画質の低下を防ぐとともに、余分な消費電力を抑制することが可能となる。
【0133】
次に、本発明の第5の実施の形態について、図面を用いて説明する。第5の実施の形態においては、画像形成装置1000の構成は第1の実施の形態において説明した構成と同等の構成を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0134】
第5の実施の形態においては、用紙に形成される画像に求められる画質に応じて、予備加熱する領域を変化させるようにする。
【0135】
例えば、画像形成開始前に操作部30において、高画質の画像を形成するとの設定がなされた場合は、そのような設定がなされていない場合よりも、用紙における予備加熱する領域を広げるようにCPU300が制御する。
【0136】
図11は、第5の実施の形態における、CPU300の制御例を示すフローチャートである。
【0137】
CPU300はまず、操作部30において、出力される画像の画質についての設定がなされたか否かを判断する(ステップS1)。
【0138】
画質についての設定がなされていないと判断すると(ステップS1:No)、CPU300は、画質についての設定がなされるまで待機する。
【0139】
画質についての設定がなされたと判断すると(ステップS1:Yes)、CPU300は、次にその設定が高画質の画像を出力するとの設定であるか否かを判断する(ステップS2)。
【0140】
高画質の画像を出力するとの設定がなされていないと判断すると(ステップS2:No)、CPU300は、レジストローラ対23が予備加熱のために用紙の先端部或いは後端部を担持する時間をt1と設定し(ステップS3)、処理を終了する。
【0141】
一方、高画質の画像を出力するとの設定がなされていると判断すると(ステップS2:Yes)、CPU300は、レジストローラ対23が予備加熱のために用紙の先端部或いは後端部を担持する時間をt2と設定し(ステップS4)、処理を終了する。ここで、時間t2は、時間t1より長い時間である。
【0142】
上記のようにCPU300が制御することで、高画質の画像を出力するとの設定がなされている場合に、予備加熱のために用紙を担持する時間を長くすることができる。用紙を担持する時間を長くすると、駆動ローラ23Aから用紙に熱が伝わる時間が長くなるため、用紙のより広い領域を予備加熱することが可能となる。
【0143】
このように、高画質の画像を出力する場合は、より広い領域を予備加熱することで、図7等で示した定着ベルト91の表面温度の変化をより緩やかなものし、より光沢段差が目立たなくなるようにしている。
【0144】
また、操作部30における高画質の画像形成の設定に基づく制御の他に、例えば写真調の画像のように、一般的に高画質が求められているような画像を形成する場合に、上記の通りより広い領域を予備加熱するようCPU300が制御するようにしても良い。
【0145】
以上説明してきた各実施の形態においては、何れも用紙の先端部を含む一部の領域或いは後端部を含む一部の領域を、2次転写部7Aより上流側にて予備加熱し、予備加熱された用紙に対して2次転写部7Aにおいてトナー画像を転写し、トナー画像が転写された用紙を定着装置9へ搬送していた。
【0146】
しかしながら、定着装置9より上流側であれば、第2の加熱手段を2次転写部7Aより下流側に設けても本発明を実現することが可能である。
【0147】
この場合は、第2の加熱手段を2次転写部7Aより下流側且つ定着装置9より上流側に設け、トナー画像が転写された用紙に対して第2の加熱手段が予備加熱を行うことになる。
【0148】
このような構成とすることで、用紙に対する予備加熱とトナー画像の定着との間隔が小さくなるため、用紙が定着装置9のニップ部Nに到達するまでにおける、予備加熱された領域からの放熱が少なくなる。即ち、用紙が予備加熱されてからニップ部Nに到達するまでにおける、予備加熱された領域の温度の低下が少ないということになる。
【0149】
すると、用紙が定着ベルト91に接触することによる表面温度の変化は、上述した各実施の形態における変化よりもさらに緩やかなものになる。従って、画像に現れる光沢段差はより目立たなくなり、良好な画像を形成することが可能となる。
【0150】
また、この場合は、画像が形成される領域以外の領域を予備加熱するようにCPU300が第2の加熱手段を制御することによって、既に用紙に転写されたトナー画像を直接加熱してその画像を乱すようなことがなく予備加熱を行うことができるため、さらに良好な画像を提供することが可能となる。
【0151】
本発明における第2の加熱手段は、図6等で説明したローラ対のような構成に限定されることはない。例えば面状の加熱部材を設け、用紙を予備加熱する際に加熱部材を用紙に圧接させるような構成や、温風を用紙に吹き付けるような構成等を採用しても、本発明は実現可能である。
【0152】
その他、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない限りにおいて異なる実施形態を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0153】
1000 画像形成装置
100 画像読取部
200 画像形成部
300 CPU
6 中間転写ベルト
7A 2次転写部
9 定着装置
91 定着ベルト
92 加熱ローラ
92A ハロゲンランプ
93 定着ローラ
94 加圧ローラ
10Y 画像形成手段(イエロー)
10M 画像形成手段(マゼンタ)
10C 画像形成手段(シアン)
10K 画像形成手段(ブラック)
20 給紙部
23 レジストローラ対
23A 駆動ローラ
23C ハロゲンランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な定着部材と、
前記定着部材を加熱する第1の加熱手段と、を有し、
前記第1の加熱手段により前記定着部材を加熱し、加熱された前記定着部材を回転させながら転写材に熱と圧力を加えることで転写材上のトナー画像を該転写材へ定着する定着装置を備える画像形成装置において、
前記定着装置より転写材搬送方向上流側に設けられた、前記定着装置へ向かう転写材を加熱する第2の加熱手段と、
転写材における転写材搬送方向先端部を含む一部の領域と、転写材搬送方向後端部を含む一部の領域とのうち少なくとも一方を加熱するよう前記第2の加熱手段を制御することを特徴とする制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2の加熱手段は、転写材へトナー画像を転写する転写部より転写材搬送方向上流側に設けられ、
前記第2の加熱手段により加熱された転写材に対して前記転写部においてトナー画像を転写することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の加熱手段は、転写材へトナー画像を転写する転写部より転写材搬送方向下流側且つ前記定着装置より転写材搬送方向上流側に設けられ、
前記第2の加熱手段は、前記転写部においてトナー画像が転写された転写材を加熱することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記転写材における転写材搬送方向先端部を含む一部の領域及び前記転写材搬送方向後端部を含む一部の領域として、転写材におけるトナー画像が転写された領域以外の領域を加熱するよう制御することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、転写材に転写されるトナー画像の内容に基づいて、前記転写材における加熱される領域を変化させるよう制御することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
転写材に形成されるトナー画像の画質を設定する画質設定手段を有し、
前記制御手段は、前記画質設定手段により高画質の画像を形成するとの設定がなされた場合に、前記転写材における、前記画質設定手段により高画質の画像を形成するとの設定がなされていない場合に加熱される領域より広い領域を加熱させるよう制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2の加熱手段は、転写材搬送方向に直交する方向に分割して設けられており、
前記制御手段は、分割して設けられた前記第2の加熱手段をそれぞれ個別に制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、転写材における、トナー画像が形成される領域に対応した前記第2の加熱手段のみを動作させるよう制御することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
転写材の搬送を制御する搬送制御手段を有し、
前記制御手段は、転写材における転写材搬送方向先端部を含む一部の領域のみを加熱するよう制御し、
前記搬送制御手段は、転写材に対するトナー画像の定着の際に、該転写材と、定着部材における先行の転写材の転写材搬送方向後端部と接触した領域とを接触させないように制御することを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
転写材の搬送を制御する搬送制御手段を有し、
前記制御手段は、転写材における転写材搬送方向後端部を含む一部の領域のみを加熱するよう制御し、
前記搬送制御手段は、転写材に対するトナー画像の定着の際に、該転写材と、定着部材における先行の転写材の転写材搬送方向先端部と接触した領域とを接触させないように制御することを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−24902(P2013−24902A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156455(P2011−156455)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】