説明

画像形成装置

【課題】中間転写ベルトを長期的に適切にクリーニングできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】カラープリンターは,中間転写ベルト101の回転による移動方向について,2次転写装置115より下流で作像部104より上流の箇所に,中間転写ベルト101をクリーニングするためのクリーナー組1〜4が配置されており,各クリーナー組1〜4はそれぞれ,中間転写ベルト101に圧接される発泡ローラー12を有しており,発泡ローラー12にバイアスを印加する電源15を有しており,中間転写ベルト101の回転による移動方向について上流側のものでは,発泡ローラー12の中間転写ベルト101への圧接力がより小さく,中間転写ベルト101の回転による移動方向について下流側のものでは,発泡ローラー12の中間転写ベルト101への圧接力がより大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置に関する。さらに詳細には,中間転写ベルトとその中間転写ベルトをクリーニングするクリーニング部材とを有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,中間転写ベルトを有する画像形成装置がある。画像形成時には,感光体上に形成されたトナー像が中間転写ベルトへ1次転写され,その後,そのトナー像が2次転写部によって中間転写ベルトから用紙へ転写される。このような画像形成装置は,通常,2次転写後も中間転写ベルト上に残留したトナーをクリーニングするためのクリーニング部材を有している。
【0003】
例えば,特許文献1には,中間転写ベルトに接触しながら回転する2つのファーブラシを備えた画像形成装置が開示されている。さらにこの文献の装置では,2つのファーブラシがいずれも導電性であり,各ファーブラシに接触させてそれぞれ,金属ローラーが設けられている。さらにこの金属ローラーには,それぞれ極性の異なる電圧が印加されている。これにより,各ファーブラシと中間転写ベルトとの間に,それぞれ異なる極性の電界が形成されるので,いずれの極性に帯電している転写残トナーも確実に回収されるとされている。
【0004】
また,特許文献2に開示されている画像形成装置には,中間転写ベルトをクリーニングするための部材として,ポリウレタンフォーム層を有する発泡ローラーが設けられている。ポリウレタンフォーム層のセル数や開口率を適切に設定しておくことにより,このクリーニング部材は,長期にわたって効率的にクリーニングできるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−229344号公報
【特許文献2】特開2009−300741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,前記した特許文献1に記載の画像形成装置では,ファーブラシを用いているため,クリーニング部材と中間転写ベルトとの間の空隙が比較的大きい。そのため,トナーのすり抜けを完全には防止できない。さらに,ブラシに電圧を印加しているので,この電界エネルギーによりトナー後処理剤がトナーから離脱する場合がある。特に,装置の高速化に伴い,電界エネルギーをより大きくした場合には,後処理剤の離脱の発生頻度が上昇する。
【0007】
このように発生した後処理剤やトナー粉などが残ったまま中間転写ベルトの周回を重ねると,これらの異物が次第に中間転写ベルトに固着され,フィルミングが発生する。特に,同じ画像を多数枚連続して形成した場合に,画像を形成した部分にはフィルミングが生じ,画像を形成しなかった部分には生じないため,中間転写ベルトの表面の平滑性や導電性が損なわれ,転写性能が劣化する。
【0008】
一方,前記した特許文献2に記載の画像形成装置のように,発泡ローラーを用いた場合,トナーのすり抜けは起こりにくく,フィルミングは回避できる。しかし,発泡ローラーと中間転写ベルトとの圧接力が小さすぎるとクリーニング不良が発生する。また,発泡ローラーと中間転写ベルトとの圧接力が大きすぎると,クリーニング時に,発泡ローラーが残留トナーに対し過剰のストレスを掛けてしまうおそれがある。その場合には,トナーに含有される油分,あるいは,トナー粒子が砕けることによって発生した微粉等が,中間転写ベルトに付着するという問題点があった。そのため,特にハーフトーン画像等の画像濃度の薄い画像において,濃度ムラ等の画質の劣化が発生するおそれがあった。
【0009】
本発明は,前記した従来の画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,中間転写ベルトを長期的に適切にクリーニングできる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,2以上のベルトローラーに巻き掛けられて回転される中間転写ベルトと,中間転写ベルトにトナー像を形成するトナー像形成部と,中間転写ベルトに形成されたトナー像を記録材に転写する転写部とを有する画像形成装置であって,中間転写ベルトの回転による移動方向について,転写部より下流でトナー像形成部より上流の箇所に,中間転写ベルトをクリーニングするための複数のクリーニング部材が配置されており,各クリーニング部材はそれぞれ,中間転写ベルトに圧接される発泡ローラーを有しており,発泡ローラーにバイアスを印加する電源を有しており,クリーニング部材のうち中間転写ベルトの回転による移動方向について上流側のものでは,発泡ローラーの中間転写ベルトへの圧接力がより小さく,クリーニング部材のうち中間転写ベルトの回転による移動方向について下流側のものでは,発泡ローラーの中間転写ベルトへの圧接力がより大きいものである。
【0011】
本発明の画像形成装置によれば,転写部を通り抜けた転写残トナー等がクリーニング部材でクリーニングされる。複数のクリーニング部材はそれぞれ,電源によってバイアスが印加された発泡ローラーを有している。そして,複数のクリーニング部材のうち,中間転写ベルトの回転による移動方向について上流側のものは圧接力が小さいので,残留トナーに大きなストレスを掛けない。上流側のものをすり抜けた残留トナーは,より圧接力の大きい下流側のもので確実に回収される。従って,中間転写ベルトを長期的に適切にクリーニングできる。
【0012】
さらに本発明では,発泡ローラーには,電源により正極性のバイアスが印加されるものと負極性のバイアスが印加されるものとがあり,上流側に属する発泡ローラーのうち正極性のバイアスが印加されているものの圧接力は,下流側に属する発泡ローラーのうち正極性のバイアスが印加されているものの圧接力より小さく,上流側に属する発泡ローラーのうち負極性のバイアスが印加されているものの圧接力は,下流側に属する発泡ローラーのうち負極性のバイアスが印加されているものの圧接力より小さいことが望ましい。
このようになっていれば,負に帯電している異物も正に帯電している異物もそれぞれ,圧接力の小さい発泡ローラーによってまず回収される。
【0013】
さらに本発明では,上流側に属する発泡ローラーの中間転写ベルトに対する食い込み量は,下流側に属する発泡ローラーの中間転写ベルトに対する食い込み量より小さいことが望ましい。
このようになっていれば,上流側の発泡ローラーの圧接力が小さく,下流側の発泡ローラーの圧接力が大きいものとなる。
【0014】
さらに本発明では,発泡ローラーに中間転写ベルトを介して対向する対向ローラーを有し,上流側に属する発泡ローラーに対する対向ローラーはより柔らかく,下流側に属する発泡ローラーに対する対向ローラーはより硬いことが望ましい。
このようになっていても,上流側の発泡ローラーの圧接力が小さく,下流側の発泡ローラーの圧接力が大きいものとすることができる。
【0015】
さらに本発明では,上流側に属する発泡ローラーに対する対向ローラーは弾性ローラーであり,下流側に属する発泡ローラーに対する対向ローラーは金属ローラーであることが望ましい。
例えば,弾性ローラーとして導電性を有するゴム製のローラーを用いることにより,金属ローラーより柔らかいローラーとすることができる。
【0016】
さらに本発明では,下流側に属する発泡ローラーに対する対向ローラーはベルトローラーを兼ねるものであることが望ましい。
ベルトローラーは金属ローラーであるので,ベルトローラーによって対向ローラーを兼用することにより,省スペース化が可能である。
【0017】
さらに本発明では,発泡ローラーのそれぞれに対し,中間転写ベルトを介して対向する対向ローラーを有し,発泡ローラーの中間転写ベルトへの接触箇所と対向ローラーの中間転写ベルトへの接触箇所とのずれ量は,上流側に属する発泡ローラーでは大きく,下流側に属する発泡ローラーでは小さいことが望ましい。
このようになっていても,上流側の発泡ローラーの圧接力が小さく,下流側の発泡ローラーの圧接力が大きいものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の画像形成装置によれば,中間転写ベルトを長期的に適切にクリーニングできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本形態のカラープリンターの概略構成図である。
【図2】発泡ローラーの圧接力とクリーニング可能量との関係を示すグラフ図である。
【図3】発泡ローラーの圧接力と耐久可能枚数との関係を示すグラフ図である。
【図4】ベルトクリーニング装置の例を示す概略構成図である。
【図5】ベルトクリーニング装置の例を示す概略構成図である。
【図6】ベルトクリーニング装置の例を示す概略構成図である。
【図7】ベルトクリーニング装置の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,中間転写ベルトを有し,カラー画像を形成することのできるカラープリンターに本発明を適用したものである。
【0021】
本形態に係るカラープリンターは,図1に示すように,中間転写ベルト101を有する,いわゆるタンデム方式のものである。中間転写ベルト101は,無端状ベルト部材であり,ローラー102,103に張り架けられている。中間転写ベルト101の図中下部に沿って,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の作像部104Y,104M,104C,104Kが配置されている。
【0022】
図1中では作像部104Yのみに符号を付して示しているが,各色の作像部104Y,104M,104C,104Kはいずれも同様の構成である。それぞれ,感光体ドラム106とその周囲に配置された帯電装置107,露光装置108,現像装置109,クリーナー装置110を有している。また,中間転写ベルト101を挟んで感光体ドラム106に対向する位置に,1次転写装置111が配置されている。これらは,既知のいかなる構成のものでも良い。
【0023】
図1中で下方に示すのは,用紙Pを収容する給紙装置112である。給紙装置112の上部には,用紙Pを送り出す給紙ローラー113が設けられている。用紙Pは,給紙装置112から搬送経路114に沿って図中で上方へ送られるようになっている。搬送経路114を挟んで,中間転写ベルト101のローラー103と対向する位置に,2次転写装置115が配置されている。さらに,用紙搬送方向についてその下流側(図中で上方)には,定着装置120が配置されている。本形態の定着装置120は,加熱ローラー121と加圧ローラー122とを有している。
【0024】
画像形成時には,中間転写ベルト101は図1中に矢印Aで示すように回転される。各色の画像データは,対応する画像形成部104Y,104M,104C,104Kにそれぞれ送出される。そして,各色の画像形成部では,それぞれの感光体ドラム106を帯電装置107によって帯電する。次に,その色の画像データに基づいて,露光装置108によって露光することによって静電潜像を形成する。さらに,形成された静電潜像を現像装置109によって現像して,感光体ドラム106にトナー像を形成する。形成されたトナー像は,順次,1次転写装置111によって中間転写ベルト101に転写され,重ね合わせられる。
【0025】
中間転写ベルト101に重ね合わせられたトナー像は,給紙装置112から送り出された用紙Pに,2次転写装置115によって転写される。トナー像を担持した用紙Pは,さらに搬送されて定着装置120に至り,定着装置120によって加熱されるとともに加圧される。これによりトナー像が用紙Pに定着される。トナー像が定着された用紙Pは,機外に排出される。あるいは,両面印刷の場合は第2面の印刷のために再び機内に引き込まれ,同様に印刷が行われる。
【0026】
そして,本形態のカラープリンターは,図1に示すように,中間転写ベルト101の移動方向について,2次転写装置115より下流側で,各色の作像部104より上流側の位置に,ベルトクリーニング装置10を有している。ベルトクリーニング装置10は,2次転写装置115を通過した後も中間転写ベルト101上に残るトナー等の残留物を回収するためのものである。本形態のベルトクリーニング装置10は,4組の同種のクリーナー組(クリーナー組1〜クリーナー組4)を備えたものである。そして各組ごとにそれぞれ,発泡ローラー12と対向ローラー13と回収ローラー14と電源15とが1つずつ設けられている。
【0027】
本形態のクリーナー組1〜4が有する発泡ローラー12は,図1に示すように,中間転写ベルト101の表面(おもてめん;トナー像を担持する面)に接触して配置された回転可能なローラーである。本形態の発泡ローラー12は,芯金12aとその外周を覆うポリウレタンフォーム層12bとを有するものである。本形態の発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bは,多数のセルを有する発泡材である。なお本形態の発泡ローラー12としては,セル径が50μm以上1000μm以下のものであることが好ましい。セル径は,回収しようとする異物の大きさに合わせて決定すればよい。
【0028】
本形態のポリウレタンフォーム層12bに使用されている発泡材は,隣り合うセル同士が開口を介して連なっているものである。セルの壁面全体の面積Sに対する開口の面積S1の割合で表される開口率(S1/S)は,3%以上50%以下である。なお,一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォームの開口率は1%程度であり,一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォームの開口率は60%程度である。つまり,本形態のポリウレタンフォーム層12bの開口率は,一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォームの開口率より大きく,一般的な連続気泡構造のポリウレタンフォームの開口率より小さい。
【0029】
従って,本形態の発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bは,一般的な独立気泡構造のポリウレタンフォームより柔らかい。従って,この発泡ローラー12は,中間転写ベルト101の表面に広く密着し,掻き取り性に優れたものである。また,本形態の発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bは,一般的な連続気泡のポリウレタンフォーム層ほど開口が大きくない。そのため,回収した異物がポリウレタンフォーム層12bの内部まで入り込むことはない。そのため,ポリウレタンフォーム層12bが異物で詰まるおそれはなく,長期にわたって発泡ローラー12の性能が維持できる。
【0030】
また,本形態の発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bは,導電性が付与されたものである。ポリウレタンフォーム層12bの体積抵抗値は,103Ω・cm以上107Ω・cm以下であることが望ましい。ポリウレタンフォーム層12bの体積抵抗値が小さすぎると,中間転写ベルト101との間に小さい隙間ができた箇所においてリークが発生するおそれがある。また,体積抵抗値が大きすぎると,電源の電圧を大きいものとする必要があり,電源装置の大型化やコストアップの原因となるので好ましくない。
【0031】
本形態の対向ローラー13は,図1に示すように,中間転写ベルト101を挟んで発泡ローラー12に対向して配置される導電性のローラーである。本形態の対向ローラー13はいずれも接地されている。また,回収ローラー14は,発泡ローラー12に付着した異物を回収するものである。回収ローラー14には,ブレード状の掻き取り部材14aが接触して設けられている。
【0032】
なお,本形態の回収ローラー14および掻き取り部材14aは,いずれも金属製のものである。そして,回収ローラー14には,図1に示すように,電源15が接続されている。従って,電源15によって電圧を印加することにより,回収ローラー14から発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bと中間転写ベルト101とを介して対向ローラー13までの間に,所定の電界を形成することができる。電源15としては,正の高電圧を印加するもの(+HV)と負の高電圧を印加するもの(−HV)とがある。なお,電源15は,本形態では定電流制御によって制御されている。この制御は定電圧制御としても良い。
【0033】
また,発泡ローラー12と対向ローラー13と回収ローラー14とはいずれも,回転可能にされている。これらの駆動源は,それぞれ別のものとしても良いし,共通の駆動源からギアを介してそれぞれの適切な速度で駆動するようにしても良い。また,本形態の発泡ローラー12の回転方向は,中間転写ベルト101との接触箇所では連れ回り方向となる方向である。また,回収ローラー14の回転方向は,発泡ローラー12との接触箇所ではカウンター方向となる方向である。
【0034】
本形態の各ローラーの回転速度は,以下のように設定されている。発泡ローラー12の周速度Vbは,中間転写ベルト101の周速度Vaに対して,速度比Θb(=Vb/Va)が0.5〜2.0の範囲内となるように決定されている。速度比Θbが0.5より小さいと,発泡ローラー12による中間転写ベルト101上の残留トナーの掻き取り力が不十分なものとなる。また,速度比Θbが2より大きいと,発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bに過剰な負荷がかかり,耐久の面で好ましくない。
【0035】
また,回収ローラー14の周速度Vcは,発泡ローラー12の周速度Vbに対して,速度比Θc(=Vc/Vb)が0.5〜2.0の範囲内となるように決定されている。速度比Θcが0.5より小さいと,回収ローラー14による発泡ローラー12に蓄積したトナーの掻き取り力が不十分なものとなる。また,速度比Θcが2より大きいと,発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bに過剰な負荷がかかり,耐久の面で好ましくない。
【0036】
次に,このような発泡ローラーを用いたクリーナー組によるクリーニング性能および耐久性について説明する。これらの点について,発明者らは,実験による調査を行った。まず,発泡ローラーのベルトに対する圧接力の大きさと異物のクリーニング可能量との関係は,図2に示すようなものであった。すなわち,圧接力が大きいほどクリーニング可能量は大きいものであった。例えば,圧接力が10N/m以下では,20N/mの場合に比較して,クリーニング可能量が4分の1程度であった。ただし,圧接力30N/m以上ではほぼ飽和状態となった。
【0037】
この実験は,以下の条件で行った。なお,トナーは負帯電性のものとした。
中間転写ベルトの周速:300mm/s
発泡ローラー:φ20mm(芯金径φ6mm),Θb=1(1本のみ)
回収ローラー:Θc=1,+バイアス印加
対向ローラー:φ10mmの金属ローラー
【0038】
次に,発明者らは,発泡ローラーのベルトに対する圧接力の大きさと耐久可能枚数との関係を調べた。この実験でも,各ローラー等の構成は,上記のものと同じとした。この実験では,A3の用紙に,420mmの長さ中400mmの縦帯画像の同一パターンを,トナー量0.5〜3g/m2で連続して形成し,適宜,チェック用のハーフトーン画像を形成した。ハーフトーン画像への濃度ムラ等の画質劣化の発生が始まる枚数は,図3に示したとおりであった。すなわち,発泡ローラーの圧接力が小さいほど,また,残留トナー量が少ないほど耐久可能枚数は多いことが確認できた。
【0039】
次に,本形態の4つのクリーナー組1〜4の差異について説明する。発泡ローラー12と対向ローラー13と回収ローラー14とはいずれも,各クリーナー組1〜4で同種で同形のものである。これらの差異は,電源15の極性と,発泡ローラー12の圧接力とにある。以下では,中間転写ベルト101の移動方向についての上流側または下流側を,単に上流側または下流側という。
【0040】
本形態のベルトクリーニング装置10では,クリーナー組1は,接地されている対向ローラー13から,中間転写ベルト101,発泡ローラー12,回収ローラー14の順に正側の極性となるように,電源15の電圧が正の高電圧に設定されている。つまり,最も上流側に配置されているクリーナー組1の電源15は,発泡ローラー12に正極性のバイアスを印加するものである。
【0041】
そして,電源15は,最も上流側から2つのクリーナー組1,2の発泡ローラー12に対して,互いに異なる極性のバイアスを印加するものである。それより下流側では,2つのクリーナー組の間での極性の順は問わないものの,正極性と負極性とがペアで配置されていることが好ましい。つまり,クリーナー組2の電源15は,発泡ローラー12に負極性のバイアスを印加するものである。そして,クリーナー組3,4に接続されている電源15は,それぞれの発泡ローラー12に互いに異なる極性のバイアスを印加するものである。
【0042】
なお,本形態のカラープリンターは,負帯電性のトナーを使用するものである。そのため,残留トナー等の異物としても,負に帯電しているものが多い。そして,残留トナーが最初に通る箇所であるクリーナー組1の発泡ローラー12には,トナーの帯電極性と逆の極性のバイアスが印加されている。そのため,中間転写ベルト101上に残留している異物のうちトナーの帯電極性に帯電しているものは,この電界により発泡ローラー12に引き寄せられる。さらに,その次のクリーナー組2の発泡ローラー12は,クリーナー組1とは逆の極性のバイアスが印加されている。従って,残りの異物のうち,正に帯電しているものは,クリーナー組2の発泡ローラー12に引き寄せられる。
【0043】
さらに本形態では,各クリーナー組1〜4の発泡ローラー12と中間転写ベルト101との圧接力がどれも同じというわけではない。すなわち,上流側のものでは,発泡ローラー12の中間転写ベルト101への圧接力が,下流側のものの発泡ローラー12の中間転写ベルト101への圧接力より小さい。特に最も上流側のクリーナー組1〜2の発泡ローラー12の中間転写ベルト101への圧接力は,トナー粒を粉砕しない程度の大きさに設定されている。ここで,「上流側のもの」や「下流側のもの」という語は,個々のクリーナー組を比較する際にも,正負のバイアスが印加されているクリーナー組のペアごとにまとめて比較する際にも使用する。
【0044】
例えば,本形態の上流側のものであるクリーナー組1〜2における発泡ローラー12の中間転写ベルト101に対する圧接力は1〜10N/mである。圧接力があまり大きくないため,クリーニング可能量は大きくない(図2参照)。つまり,クリーナー組1〜2では,おもに電気的な力で,残留トナーを吸い付けて回収する。残留トナーのうちのある程度の量は,クリーナー組1〜2をすり抜けると考えられる。クリーナー組1と2とでは,圧接力は等しい。
【0045】
一方,下流側のものの発泡ローラー12は,上流側のものより大きい圧接力で中間転写ベルト101に圧接されている。例えば,本形態の下流側のクリーナー組3〜4における発泡ローラー12の中間転写ベルト101に対する圧接力は10〜20N/mである。圧接力が大きいので,この下流側のクリーナー組によるクリーニング性は良好である。さらに,上流側である程度回収されているので,この下流側のクリーナー組の位置まで至る残留トナーは多くない。少ないトナー量であれば,大きい圧接力を加えても,耐久枚数が特に少なくなることはない(図3参照)。従って,上流側のクリーナー組をすり抜けたトナーを下流側で確実に擦り取ることができる。
【0046】
さらに本形態では,同極性の電源15を有するクリーナー組同士で比較した場合,上流側に配置されているものほど,圧接力が小さい。すなわち,クリーナー組1の発泡ローラー12の中間転写ベルト101への圧接力は,クリーナー組3の発泡ローラー12の圧接力より小さい。また,クリーナー組2の発泡ローラー12の圧接力は,クリーナー組4の発泡ローラー12の圧接力より小さい。クリーナー組3と4の圧接力は同じとすればよい。
【0047】
つまり,個々のクリーナー組同士で比較しても,上流側の発泡ローラー12の圧接力は,下流側の発泡ローラー12の圧接力以下となっている。従って,上流側の発泡ローラーで回収されなかった異物は,より強く圧接されている下流側の発泡ローラー12によって確実に回収される。下流側の発泡ローラー12の箇所まで到達する異物の量は少ないので,強く圧接しても耐久性は充分である。
【0048】
圧接力がこのような関係にあるようにするために,本形態では,発泡ローラー12の食い込み量,または,対向ローラー13の硬度,または,対向ローラー13の中心位置のうちの少なくともいずれか1つが,上流側と下流側とで異なるものとなっている。例えば,図4に示すように,上流側のクリーナー組1〜2における発泡ローラー12の食い込み量が,下流側のクリーナー組3〜4における発泡ローラー12の食い込み量より小さいものである。例えば,上流側で食い込み量を0.2〜0.6mmとし,下流側の食い込み量を0.6〜1.0mmとする。ただし,食い込み量は発泡ローラー12のポリウレタンフォーム層12bの厚さの40%以下とすることが望ましい。
【0049】
あるいは,上流側のクリーナー組1〜2における対向ローラー13の硬度が,下流側のクリーナー組3〜4における対向ローラー13の硬度より小さいものとしてもよい。そのために,図5に示すように,上流側のクリーナー組1〜2における対向ローラーを,前述した金属製のものではなく弾性ローラー21とする。下流側は金属製のもののままとする。あるいは,上流側と下流側とをともに弾性ローラーとし,その硬度に差を付けることによっても良い。
【0050】
弾性ローラー21は,例えば,EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム),NBR(ニトリルゴム)またはシリコンゴムをベースとして,適度に弾性と導電性とを持たせたローラーが好ましい。
【0051】
あるいは,例えば図6に示すように,上流側のクリーナー組1〜2における対向ローラー13の位置を,発泡ローラー12が圧接されている位置から,中間転写ベルト101の長手方向に沿って少しずらした位置に配置することとしても良い。つまり,発泡ローラー12の中間転写ベルト101への接触箇所と,対向ローラー13の中間転写ベルト101への接触箇所とのずれ量tが,上流側のクリーナー組1〜2では大きく,下流側のクリーナー組3〜4では小さい。
【0052】
このようにすると,上流側のクリーナー組1〜2では,発泡ローラー12の圧接力が,対向ローラー13の芯に当たらない配置となるので,発泡ローラー12と中間転写ベルト101との間の圧接力が小さいものとなる。対向ローラー13をずらす向きは上流側でも下流側でも構わない。なお,上流側のずれ量tは,4〜10mmの範囲内が適当である。ずれ量tが10mmを超えると,その分,電源電圧を高く設定する必要があり,電源のコストアップや大型化という不具合が生じる。下流側のずれ量tは0がベストであるが,必ずしもそれに限らない。
【0053】
以上詳細に説明したように本形態のカラープリンターによれば,それぞれに発泡ローラー12を有する複数のクリーナー組1〜4が設けられている。そして,中間転写ベルト101の進行方向について最も上流側に配置されているクリーナー組1,2では,発泡ローラー12の中間転写ベルト101への圧接力が小さい。これらの圧接力は,クリーニング性は充分ではないが,トナーに大きいストレスを掛けない程度に設定されている。さらにクリーナー組1と2の電源15は互いに逆極性である。従って,これらの最上流のクリーナー組1,2によって,ある程度の残留トナーが回収される。残った残留トナーは,より強く圧接されているクリーナー組3,4によって確実に回収される。
【0054】
例えば,本形態では,上流側から順に,小さい圧接力の正極性のクリーナー組1,小さい圧接力の負極性のクリーナー組2,大きい圧接力の正極性のクリーナー組3,大きい圧接力の負極性のクリーナー組4の順となっている。従って,正負ともまず電気的に回収できる異物を回収してから強く擦り取るので,確実に回収できるとともに耐久性も十分に確保される。従って,中間転写ベルトを長期的に適切にクリーニングできるものとなっている。
【0055】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,対向ローラーとして金属ローラーを用いる場合には,対向ローラーを発泡ローラーに対向させてそれぞれ配置する代わりに,中間転写ベルト101が巻き掛けられているローラー102を対向ローラーとして用いることもできる。特に,図7に示すように,下流側のクリーナー組3〜4は,ローラー102に対向して配置されることが好ましい。また例えば,クリーナー組の数は,4組に限らず,これより多くても良い。ただし,より多くのクリーナー組を備える場合でも,同極性のもの同士では,上流側に配置されるものほど圧接力が小さくなるように設定する。
【符号の説明】
【0056】
1,2,3,4 クリーナー組(クリーニング部材)
12 発泡ローラー
13 対向ローラー
15 電源
101 中間転写ベルト
102,103 ローラー(ベルトローラー)
104Y,104M,104C,104K 作像部(トナー像形成部)
115 2次転写装置(転写部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のベルトローラーに巻き掛けられて回転される中間転写ベルトと,前記中間転写ベルトにトナー像を形成するトナー像形成部と,前記中間転写ベルトに形成されたトナー像を記録材に転写する転写部とを有する画像形成装置において,
前記中間転写ベルトの回転による移動方向について,前記転写部より下流で前記トナー像形成部より上流の箇所に,前記中間転写ベルトをクリーニングするための複数のクリーニング部材が配置されており,
前記各クリーニング部材はそれぞれ,前記中間転写ベルトに圧接される発泡ローラーを有しており,
前記発泡ローラーにバイアスを印加する電源を有しており,
前記クリーニング部材のうち前記中間転写ベルトの回転による移動方向について上流側のものでは,前記発泡ローラーの前記中間転写ベルトへの圧接力がより小さく,
前記クリーニング部材のうち前記中間転写ベルトの回転による移動方向について下流側のものでは,前記発泡ローラーの前記中間転写ベルトへの圧接力がより大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記発泡ローラーには,前記電源により正極性のバイアスが印加されるものと負極性のバイアスが印加されるものとがあり,
前記上流側に属する前記発泡ローラーのうち正極性のバイアスが印加されているものの圧接力は,前記下流側に属する前記発泡ローラーのうち正極性のバイアスが印加されているものの圧接力より小さく,
前記上流側に属する前記発泡ローラーのうち負極性のバイアスが印加されているものの圧接力は,前記下流側に属する前記発泡ローラーのうち負極性のバイアスが印加されているものの圧接力より小さいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において,
前記上流側に属する前記発泡ローラーの前記中間転写ベルトに対する食い込み量は,前記下流側に属する前記発泡ローラーの前記中間転写ベルトに対する食い込み量より小さいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において,
前記発泡ローラーに前記中間転写ベルトを介して対向する対向ローラーを有し,
前記上流側に属する前記発泡ローラーに対する前記対向ローラーはより柔らかく,前記下流側に属する前記発泡ローラーに対する前記対向ローラーはより硬いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において,
前記上流側に属する前記発泡ローラーに対する前記対向ローラーは弾性ローラーであり,前記下流側に属する前記発泡ローラーに対する前記対向ローラーは金属ローラーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において,
前記下流側に属する前記発泡ローラーに対する前記対向ローラーは前記ベルトローラーを兼ねるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において,
前記発泡ローラーのそれぞれに対し,前記中間転写ベルトを介して対向する対向ローラーを有し,
前記発泡ローラーの前記中間転写ベルトへの接触箇所と前記対向ローラーの前記中間転写ベルトへの接触箇所とのずれ量は,前記上流側に属する前記発泡ローラーでは大きく,前記下流側に属する前記発泡ローラーでは小さいことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−29705(P2013−29705A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166254(P2011−166254)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】