画像形成装置
【課題】2次転写ニップ周囲の部材の劣化を抑えるとともに、白点、トナー散り、及び画像濃度不足の全ての発生を従来よりも確実に抑えることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録シートPをニップ形成ローラ36と中間転写ベルト31との当接による2次転写ニップに通してその第1面にトナー像を転写する際には、2次転写バイアスとして直流電圧を出力し、その後、定着装置90から反転再搬送装置105を介して記録シートPを2次転写ニップに再搬送してその第2面にトナー像を転写する際には、2次転写バイアスとして直流交流重畳バイアスであって、直流成分の絶対値を前記直流バイアスの絶対値よりも小さくしたものを出力するように、2次転写バイアス電源39を構成した。
【解決手段】記録シートPをニップ形成ローラ36と中間転写ベルト31との当接による2次転写ニップに通してその第1面にトナー像を転写する際には、2次転写バイアスとして直流電圧を出力し、その後、定着装置90から反転再搬送装置105を介して記録シートPを2次転写ニップに再搬送してその第2面にトナー像を転写する際には、2次転写バイアスとして直流交流重畳バイアスであって、直流成分の絶対値を前記直流バイアスの絶対値よりも小さくしたものを出力するように、2次転写バイアス電源39を構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ニップと定着手段とに順次通して第1面にトナー像を転写及び定着させた記録シートを、転写ニップと定着手段とに再送してその第2面にもトナー像を転写及び定着させる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の画像形成装置として、特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置は、周知の電子写真プロセスにより、像担持体たるドラム状の感光体にトナー像を形成する。感光体には、ニップ形成部材としての転写ローラを当接させて転写ニップを形成している。この転写ローラに対して転写バイアスを印加することで、転写ニップ内で感光体上のトナー像を感光体側から転写ローラ側に静電移動させるための電位差を、感光体と転写ローラとの間に形成する。記録シートの第1面及び第2面のうち、第1面だけにトナー像を形成する片面プリントモードでのプリントを実施する場合には、まず、給紙カセット内から送り出した記録シートの第1面を感光体に密着させる姿勢で、記録シートを転写ニップに送り込む。そして、転写ニップ内において、感光体の表面上のトナー像を記録シートの第1面に転写した後、記録シートを定着装置内に送って、そのトナー像を記録シートの第1面に定着させる。その後、定着装置通過後の記録シートを機外へと排出する。一方、両面プリントモードでのプリントを実施する場合には、定着装置通過後の記録シートを、上下反転させながら転写ニップに再送する。そして、転写ニップで記録シートの第2面にもトナー像を転写した後、定着装置でそのトナー像を第2面に定着させる。
【0003】
特許文献1に記載の画像形成装置は、このようにして両面プリントモードを実施する過程において、第1面に対するトナー像の転写時と、第2面に対するトナー像の転写時とで、転写バイアスの条件を異ならせている。具体的には、第1面に対するトナー像の転写時には、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを転写ローラに印加する。これに対し、第2面に対するトナー像の転写時には、転写バイアスとして、直流成分に交流成分を重畳せしめた重畳バイアスを印加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる構成においては、第1面に対するトナー像の転写時に、転写バイアスとして直流バイアスを用いることで、放電に起因する感光体や転写ローラの劣化を抑えることができる。具体的には、転写ローラと感光体との間では、少なからず放電が発生し、その際、感光体や転写ローラの劣化を助長する。転写バイアスとして、交流成分を含む重畳バイアスを用いると、直流バイアスを採用する場合に比べて、より多くの放電を発生させることから、感光体や転写ローラの劣化を早めてしまう。よって、第1面に対するトナー像の転写時には、転写バイアスとして直流バイアスを用いることで、重畳バイアスを採用する場合に比べて、感光体や転写ローラの劣化を抑えることができるのである。
【0005】
また、本発明者らの実験によれば、第2面に対するトナー像の転写時には、転写バイアスとして、直流バイアスに代えて重畳バイアスを用いることで、直流バイアスを用いる場合に比べて、白点、トナー散り、画像濃度不足などの発生を抑えることができた。白点は、本来であればトナーを付着させるはずの画像部において、トナーを付着させない箇所が点状に発生して白く抜けてしまう現象である。また、トナーチリは、画像部のエッジの周囲にトナーを飛び散らせて付着させてしまう現象である。記録シートの第2面にトナー像を転写するときには、それに先立って記録シートを定着装置に通しており、その際の加熱によって記録シートから水分を蒸発させた状態になっている。つまり、記録シートの第1面にトナー像を転写するときに比べて、記録シートの電気抵抗を増加させている。これにより、記録シートの画像部に流れる転写電流を低下させていることから、トナーを画像部に電気的に拘束する力が弱まって、トナー散りや画像濃度不足を発生させ易くなる。そこで、かかるトナー散りや画像濃度不足の発生を抑える目的で、トナー像を第1面に転写するときに比べて直流バイアスの値を大きくしたとする。すると、白点を発生させ易くなってしまう。直流バイアスの値を大きくするほど、感光体と転写ローラとの間で放電を発生させ易くなることから、転写ニップ内においてその放電によって逆帯電させたトナーを記録シートの画像部から感光体に逆転移させ易くなるからである。このように、白点の発生と、トナー散りや画像濃度不足の発生とはトレードオフの関係にある。転写バイアスとして、直流バイアスではなく、重畳バイアスを用いる場合にも、トレードオフの関係になるが、その度合いは直流バイアスを用いる場合よりも小さくなる。具体的には、重畳バイアスを用いる場合、感光体と転写ローラとの間に形成される交番電界により、トナーが転写ニップ内で感光体と記録シートとの間を往復移動しながら、相対的に記録シート表面上に移動する。その過程で、記録シートにおける画像部の周囲に飛び散ってしまったトナーが、感光体表面に引き戻された後、記録シートの画像部に転移することから、画像部周囲のトナー散りが発生し難くなる。更には、記録シートに付着したトナーが感光体表面に引き戻された際に、感光体表面上のトナーにぶつかって、そのトナーの感光体表面からの離脱を促すことで、感光体表面から記録シート表面へのトナーの移動を促進する。これらの結果、トナー散りや画像濃度不足の発生をより小さな値の直流成分で抑えられることが可能になることから、白点も発生し難くなる。よって、直流バイアスを用いる場合に比べて、トナー散り、画像濃度不足、及び白点の発生を抑えることが可能になるのである。
【0006】
しかしながら、重畳バイアスであっても、直流成分の値などによっては、白点の発生を十分に抑えることができなかったり、トナー散りや画像濃度不足の発生を十分に抑えることができなかったりする。よって、特許文献1に記載の画像形成装置は、白点、トナー散り、及び画像濃度不足の全ての発生を確実に抑えるものではなかった。
【0007】
なお、これまで、感光体と転写ローラとの当接によって形成した転写ニップでトナー像を記録シートに転写する構成において生ずる問題について説明してきたが、次のような構成においても、同様の問題が生じ得る。即ち、中間転写体など、感光体とは異なる像担持体と、これに当接するニップ形成部材との当接によって形成した転写ニップで、像担持体上のトナー像を記録シートに転写する構成である。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、像担持体やニップ形成部材の劣化を抑えるとともに、白点、トナー散り、及び画像濃度不足の全ての発生を従来よりも確実に抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、表面にトナー像を担持する像担持体と、前記表面にトナー像を形成する像形成手段と、前記表面に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材と、電位差発生手段によって前記像担持体と前記ニップ形成部材との間に電位差を発生させた状態で、前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに対して前記像担持体の表面上のトナー像を転写する転写手段と、前記転写ニップを通過した後の記録シートに対してトナー像の定着処理を施す定着手段と、前記転写ニップ及び前記定着手段を順次通過したことにより、第1面及び第2面のうち、前記第1面だけにトナー像が転写及び定着された記録シートを、面の向きを反転せしめながら前記転写手段に向けて再送する再送手段とを備え、前記電位差発生手段が、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第1面に転写する際の前記電位差である第1面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させる一方で、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第2面に転写する際の前記電位差である第2面転写時電位差として、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる処理を実施するものである画像形成装置であって、前記電位差発生手段が、前記第2面転写時電位差として、その単位時間あたりにおける平均の絶対値を、前記第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくしたものを発生させるものである、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、記録シートの第1面にトナー像を転写するときには、像担持体とニップ形成部材との間に、直流成分だけを含む第1面転写時電位差を発生させることで、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる場合に比べて、像担持体とニップ形成部材との間における放電の発生を抑える。これにより、像担持体やニップ形成部材の劣化を抑えることができる。
【0011】
また、本発明においては、記録シートの第2面にトナー像を転写するときには、像担持体とニップ形成部材との間に、直流成分及び交流成分を含む第2面転写時電位差を発生させる。このとき、第2面転写時電位差の単位時間あたりにおける平均の絶対値を、直流成分だけからなる第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくすることで、本発明者らが後述する実験で明らかにしたように、白点、トナー散り、及び画像濃度不足の全ての発生を従来よりも確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタにおけるK用の作像ユニットを拡大して示す拡大構成図。
【図3】同プリンタの電気回路の一部を示すブロック図。
【図4】同プリンタの2次転写バイアス電源から出力される重畳バイアスの波形を示すグラフ。
【図5】実験2によって得られた、直流バイアスからなる2次転写バイアスの電圧と、白点及びトナー散りのランクとの関係を示すグラフ。
【図6】実験3において記録シートの第2面のマゼンタの単色ベタ画像で得られたバイアス条件と、白点やトナー散りのランクと、同単色ベタ画像のIDとの関係を示すグラフ。
【図7】直流バイアスの値とIDとの関係を示すグラフ。
【図8】重畳バイアスの時間平均電圧VaveとIDとデューティ比との関係を示すグラフ。
【図9】実験4で採用した重畳バイアスの交流電圧の波形を示すグラフ。
【図10】実験4において記録シートの第2面のマゼンタの単色ベタ画像で得られたバイアス条件と、白点やトナー散りのランクと、同単色ベタ画像のIDとの関係を示すグラフ。
【図11】実験5において記録シートの第2面のマゼンタの単色ベタ画像で得られたバイアス条件と、白点やトナー散りのランクと、同単色ベタ画像のIDとの関係を示すグラフ。
【図12】実験6において記録シートの第2面のマゼンタの単色ベタ画像で得られたバイアス条件と、白点やトナー散りのランクと、同単色ベタ画像のIDとの関係を示すグラフ。
【図13】実験7において記録シートの第2面のマゼンタの単色ベタ画像で得られたバイアス条件と、白点やトナー散りのランクと、同単色ベタ画像のIDとの関係を示すグラフ。
【図14】正弦波や矩形波ではない交流波形の第1例を示すグラフ。
【図15】正弦波や矩形波ではない交流波形の第2例を示すグラフ。
【図16】正弦波や矩形波ではない交流波形の第3例を示すグラフ。
【図17】正弦波や矩形波ではない交流波形の第4例を示すグラフ。
【図18】第1変形例に係るプリンタにおける作像ユニット1の一部を示す構成図。
【図19】第2変形例に係るプリンタにおける作像ユニット1の一部と、紙搬送ベルトユニットとを示す構成図。
【図20】第3変形例に係るプリンタにおける各色の作像ユニットの一部と、転写ユニットとを示す構成図。
【図21】第4変形例に係るプリンタの要部を示す要部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの作像ユニット1Y,M,C,Kと、転写手段としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対102とを備えている。
【0014】
4つの作像ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための作像ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
【0015】
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。より詳しくは、感光体2Kの表面を約−650[V]に帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
【0016】
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。K用の静電潜像の電位は約−100[V]である。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。
【0017】
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
【0018】
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
【0019】
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
【0020】
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
【0021】
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
【0022】
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
【0023】
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
【0024】
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
【0025】
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0026】
先に示した図1において、Y,M,C用の作像ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の作像ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
【0027】
作像ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
【0028】
作像ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット30が配設されている。転写手段としての転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,M,C,K、ニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37などを有している。
【0029】
像担持体としての中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は6.0〜13[LogΩcm]、好ましくは7.5〜12.5[LogΩcm]である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT450にて、HRSプローブ使用、印加電圧100V、10msec値の条件で測定)。また、表面抵抗は、9.0〜13.0[LogΩ/□]、好ましくは10.0〜12.0[LogΩ/□]である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT450にて、HRSプローブ使用、印加電圧500V、10msec値の条件で測定)。
【0030】
4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0031】
1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、次のような特性を有している。即ち、外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。また、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、1次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、約1E7Ω〜3E7Ωである。このような1次転写ローラ35Y,M,C,Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0032】
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
【0033】
転写ユニット30の下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給紙路に向けて送り出す。送り出された記録シートPは、複数の給送ローラ対101によって鉛直方向下方から上方に向けて搬送された後、給紙路の末端付近に配設されたレジストローラ対102のレジストニップに挟み込まれる。このレジストローラ対102は、給紙カセット100から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括2次転写され、記録シートPの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
【0034】
2次転写裏面ローラ33は、芯金と、これの表面に被覆された導電性の弾性発泡体層とを具備するものである。これに対し、ニップ形成ローラ36は、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものである。なお、2次転写裏面ローラ33を、芯金と、これの表面に被覆されたNBRゴム層とを具備するものとするとともに、ニップ形成ローラ36を、芯金と、これの表面に被覆された導電性の弾性発泡体層とを具備するものとしてもよい。
【0035】
2次転写裏面ローラ33は、次のような特性を有している。即ち、外径は20〜24[mm]である。また、芯金の径は約16[mm]である。芯金の表面に被覆された導電性発泡体層の抵抗Rは1E6[Ω]〜2E7[Ω]である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。また、2次転写裏面ローラ33の抵抗は、6.0〜12.0[LogΩ]、好ましくは4.0[LogΩ]である。なお、2次転写裏面ローラ33として、導電性発泡体層を設けていないステンレスローラを使用してもよい。2次転写裏面ローラ33の抵抗については、次のようにして測定する。即ち、ローラの長手方向の両端部にそれぞれ5[N]の荷重をかけながら、ローラ軸に1[kV]の電圧を印加する。そして、ローラを1分間で1回転させている間に抵抗を複数回測定して平均値を求める。
【0036】
また、ニップ形成ローラ36は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。また、ニップ形成ローラ36の抵抗は、6.0〜8.0[LogΩ]、好ましくは7.0〜8.0[LogΩ]である。この抵抗は、2次転写裏面ローラ33と同様の方法によって測定されたものである。
【0037】
2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力したり、直流電圧に交流電圧を重畳せしめた重畳バイアスを出力したりすることができる。2次転写バイアス電源39の出力端子は、ニップ形成ローラ36の芯金に接続されている。ニップ形成ローラ36の芯金の電位は、2次転写バイアス電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、2次転写裏面ローラ33については、その芯金を接地(アース接続)している。
【0038】
なお、重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加しつつ、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ36の芯金に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。交流電圧としては、正弦波状の波形のものを採用しているが、矩形波状の波形のものを用いてもよい。
【0039】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0040】
2次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0041】
定着装置90を通過した記録シートPは、切換爪104による搬送路切換点に至る。この切換爪104は、記録シートPの搬送路を、排出路と戻し路とで切り替えることができる。図示の状態では、記録シートPを排出路に向けて案内する。これにより、記録シートPは、排紙ローラ対103を経て機外へと排出される。
【0042】
プリンタ筺体内において、鉛直方向における給紙カセット100と転写ユニット30との間には、スイッチバック部105aと再送部105bとを具備する反転再搬送装置105が配設されている。プリント動作モードとして、両面プリントモードが設定されている場合には、本プリンタは、切換爪104により、搬送路を排出路から戻し路に切り換えている。これにより、定着装置90を通過した記録シートPを戻し路に進入させる。戻し路に進入した記録シートPは、大きく湾曲している戻し路に沿って上下を反転せしめられながら、反転再搬送装置105のスイッチバック部105aに進入する。スイッチバック部105aは、自らの内部に記録シートPの全域を受け入れると、複数のスイッチバックローラ対の駆動を逆転させることで、記録シートPをスイッチバックさせる。これにより、記録シートPは後端を前方に向けた状態で、戻し路の湾曲に沿って上下反転しながら、スイッチバック部105aの真下に設けられた再送部105bに進入する。そして、再送部105bから再び給紙路に向けて送られる。その後、レジストローラ対102によるレジストニップと、2次転写ニップとを通過して、その第2面にもトナー像が転写された後、定着装置90内でそのトナー像が定着せしめられる。
【0043】
一方、プリント動作モードとして、片面プリントモードが設定されている場合には、本プリンタは、切換爪104により、搬送路を戻し路から排出路に切り換えている。これにより、第1面だけにトナー像を転写及び定着せしめた記録シートPを機外へと排出する。また、両面プリントモードが設定されている場合であっても、第2面にトナー像を定着せしめた記録シートPが定着装置90を通過するときには、切換爪104により、搬送路を戻し路から排出路に切り換えている。これにより、両面にトナー像を転写及び定着せしめた記録シートPを機外へと排出する。
【0044】
本プリンタにおいて、標準モードにおけるプロセス線速(感光体や中間転写ベルトの線速)は、約352[mm/s]に設定されている。但し、プリント速度よりも高画質化を優先する高画質モードに設定されている場合には、プロセス線速を352[mm/s]よりも遅くする。また、画質よりもプリント速度を優先する高速モードに設定されている場合には、プロセス線速を352[mm/s]よりも速くする。標準モード、高画質モード、高速モードの切り替えは、ユーザーの操作パネルに対するキー操作、あるいは、パーソナルコンピュータにおけるプリンタプロパティメニューによって行われる。
【0045】
以上の基本的な構成を備える本プリンタにおいては、各色の作図ユニット1Y,M,C,Kと、光書込ユニット80と、転写ユニット30と、それらの駆動を制御する図示しない制御部との組合せにより、像担持体たる中間転写ベルト31の表面にトナー像を形成する像形成手段が構成されている。また、転写ユニット30と、図示しない制御部との組合せにより、転写手段が構成されている。また、反転再搬送装置105と、切換爪104と、図示しない制御部との組合せにより、再搬送手段が構成されている。
【0046】
図3は、本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御部200は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等から構成され、各種の演算処理や、制御プログラムの実行を行うことができる。制御部200には、I/Oインターフェース201を介して、LANポート210、パラレルポート211、USBポート212、転写ユニット30、画像処理部202、切換モータ215、給紙カセット100、反転再搬送装置105、作像ユニット1Y,M,C,K、操作表示部300、湿度センサ301、シート抵抗測定器302などが接続されている。切換モータ215は、図1に示される切換爪(104)を駆動するためのものである。また、画像処理部202は、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてきた画像データを処理するものである。画像処理部202で処理された画像データは、書込制御部203に送られる。書込制御部203は、その画像データに基づいて、光書込ユニット80の駆動を制御して、各色感光体を光走査する。なお、操作表示部300、湿度センサ301、シート抵抗測定器302については、後に詳述する。
【0047】
制御部200は、両面プリントモードや片面プリントモードにおいて、記録シートの第1面に対するトナー像の2次転写処理を行うタイミングでは、転写ユニット30の2次転写バイアス電源39に対して、第1面転写信号を出力する。また、両面プリントモードにおいて、記録シートの第2面に対するトナー像の2次転写処理を行うタイミングでは、2次転写バイアス電源39に対して、第2面転写信号を出力する。
【0048】
2次転写バイアス電源39は、制御部200から出力される第1面転写信号を受信している際には、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力する。これにより、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する場合に比べて、2次転写裏面ローラ33と中間転写ベルト31との間の放電や、中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36との間の放電の発生を抑える。よって、放電に起因する2次転写裏面ローラ33、中間転写ベルト31、及びニップ形成ローラ36の劣化を抑えることができる。
【0049】
また、2次転写バイアス電源39は、制御部200から出力される第2面信号を受信している際には、2次転写バイアスとして、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する。これにより、直流バイアスを出力する場合に比べて、白点やトナー散りの発生を抑えることを可能にする。
【0050】
図4は、2次転写バイアス電源39から出力される重畳バイアスの波形を示すグラフである。同図に示される重畳バイアスは、直流電圧からなるオフセット電圧Voff[V]に対して、所定のピークツウピーク電圧Vppで振れる交流電圧が重畳されたものである。交流電圧は、所定の周期で正弦波状に波打つ特性を有するものであり、山側の箇所の面積と、谷側の箇所の面積とが全く同じであることから、1周期における電位の平均は0[V]である。重畳バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを記録シート表面側から中間転写ベルト側に戻す電界が形成される。プラス極性側のピーク値である戻しピーク値Vrが出現しているときには、かかる電界の強度が最も高まる。一方、重畳バイアスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを中間転写ベルト側から記録シート表面側に送る電界が形成される。プマイナス極性側のピーク値である送りピーク値Vtが出現しているときには、かかる電界の強度が最も高まる。
【0051】
図示のような重畳バイアスの代わりに、交流成分だけからなる交流バイアスを印加しても、2次転写ニップにおいてトナーをベルトと記録紙との間で往復移動させることは可能である。しかし、交流バイアスだけでは、トナーを単に往復移動させるだけで、記録シート上に転移させることはできない。直流成分を含む重畳バイアスを印加してその時間平均値である時間平均電圧Vave[V]をトナーと同じマイナス極性にすることで、トナーを往復移動させながら、相対的にはベルト側から記録シート側に移動させることが可能になる。
【0052】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
[実験1]
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて各種のプリントテストを行った。プロセス線速については、352[mm/s]に設定した。記録シートPとしては、株式会社リコー社製のマイペーパー A4サイズを使用した。実験室の環境を、通常環境(温度23℃、湿度50%)に設定した条件で、両面プリントモードにて、記録シートPの第1面、第2面にそれぞれマゼンタの単色ベタ画像を形成した。このとき、第1面、第2面ともに、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを採用した。直流バイアスについては、−1〜−6[kV]の範囲で−0.1[kV]刻みで徐々に大きくしていき、それぞれの電圧値で両面プリントを実施した。そして、記録シートPの第2面に形成されたマゼンタの単色ベタ画像について、ベタ部周囲のトナー散りと、ベタ部における白点とについて、ランクを評価した。
【0053】
トナー散りのランクについては、次のようにして評価した。即ち、肉眼での観察により、ベタ部周囲におけるトナー散りが全く観察されない場合を、最も成績の良いランク5として評価した。また、目を凝らすとベタ部周囲におけるトナー散りが僅かに確認できるものの、目を凝らさなければほとんど目立たない場合を、ランク5の次に成績の良いランク4として評価した。また、肉眼での観察により、ベタ部周辺に1mm幅ほどのトナー散りが確認できる場合を、ランク4の次に成績の良いランク3として評価した。また、ランク3よりも成績が悪く、且つ、後述するランク1よりも成績が良い場合を、ランク2として評価した。また、肉眼での観察により、ベタ部周辺に2mm幅以上のトナー散りが確認できる場合を、最も成績の悪いランク1として評価した。高画質として許容できるのは、トナー散りでランク4以上である。
【0054】
白点のランクについては、次のようにして評価した。即ち、肉眼での観察により、ベタ部内の白点が全く確認できない場合を、最も成績の良いランク5として評価した。また、肉眼での観察により、僅かに白点が確認されるものの、目を凝らさなければほとんど目立たない場合を、ランク5の次に成績の良いランク4として評価した。また、目を凝らさなくても白点が確認され、高画質として許容できる白点量を僅かに超えている場合を、ランク3として評価した。また、ランク3よりも悪く、且つ後述するランク1より良い場合を、ランク2として評価した。また、一見してベタ部の白点が確認でき、ベタ部内で白点が全体的に密に発生している場合を、最も成績の悪いランク1として評価した。
【0055】
この実験1においては、直流バイアスの値を−4[kV]付近に設定した条件において、第2面のマゼンタの単色ベタ画像で白点及びトナー散りの両方を許容範囲に留めることができた(何れもランク4以上)。
【0056】
[実験2]
実験室の環境を、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%)に設定した他は、実験1と同様の条件で白点及びトナー散りを評価した。この実験2の結果を、図5に示す。図示のように、トナー散りだけに着目すれば、直流バイアスの値(絶対値)を−4.2[kV]以下に設定することで、許容レベルであるランク4以上の成績を得ることができる。また、白点だけに着目すれば、直流バイアスの値(絶対値)を−5.9[kV]以上にすることで、許容レベルであるランク4以上の成績を得ることができる。しかしながら、トナー散り及び白点の両方をランク4以上にする電位値は存在しなかった。低温低湿の環境下では、第1面定着時の記録シートからの水分蒸発により、第2面転写時の記録シートの電気抵抗が高まり過ぎて、記録シートの画像部に転写電流が非常に流れ難くなることから、トナー散りを許容範囲に留め得るレベルまで直流バイアスの値を高めると、電位差が大きくなり過ぎて放電による白点が許容レベルを超えて発生してしまうからである。
【0057】
なお、第1面においては、直流バイアスの値を−4.8〜−6.6[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りの両方を許容範囲に留めることができた(何れもランク4以上)。よって、低温低湿環境下であっても、第1面については、転写バイアスとして直流バイアスを採用しても、白点及びトナー散りの両方を容易に許容範囲に留めることが可能である。
【0058】
[実験3]
プロセス線速については、352[mm/s]に設定した。記録シートPとしては、株式会社リコー社製のマイペーパー A4サイズを使用した。実験室の環境を、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%)に設定した条件で、両面プリントモードにて、記録シートPの第1面、第2面にそれぞれマゼンタの単色ベタ画像を形成した。2次転写バイアス電源39として、ファンクションジェネレーター(横河電機社製 FG300)で生成した波形を、アンプ(Trek社製 High Voltage Amplifir Model10/40)によって1000倍に増幅するものを用いた。そして、記録シートPの第2面にトナー像を転写する際には、転写バイアスとして、周波数f=500[Hz]、ピークツウピーク電圧Vpp=6[kV]の交流電圧に、直流電圧としてのオフセット電圧Voffを重畳した重畳バイアスを採用した。重畳バイアスについては、オフセット電圧Voffの調整により、時間平均電圧Vaveを−0.6〜−4.6[kV]の範囲において−0.4[kV]刻みで徐々に大きくしていき、それぞれの条件で両面プリントを実施した。そして、記録シートPの第2面に形成されたマゼンタの単色ベタ画像について、ベタ部周囲のトナー散りと、ベタ部における白点とについて、ランクを評価した。また、ベタ部の画像濃度(ID)を測定した。
【0059】
IDについては、X−Rite社製のX−Rite938によって測定した。高画質として許容できるIDは、1.4以上である。
【0060】
交流電圧の波形としては、正弦波を採用した。正弦波では、トナー戻し側のデューティ比が50[%]になる。トナー戻し側のデューティ比は、交流電圧のピークツウピークの中心線を境にして、中心線よりもトナー戻し側の波面と中心線とで囲まれる領域の面積の全面積に対する比率である。また、トナー戻し側は、ブラス極性とマイナス極性のうち、トナーを記録シート表面側から中間転写ベルト側に戻す方の極性の側である。プリンタ試験機や実施形態に係るプリンタでは、交流電圧の極性をプラス極性にしたときに、トナーを記録シート表面側から中間転写ベルト側に戻すことになる。よって、交流電圧のピークツウピークの中心線を境にして、中心線よりもプラス極性側に位置する箇所の波面と中心線とで囲まれる領域の面積が、トナー戻し側の面積である。これに対し、交流電圧のピークツウピークの中心線を境にして、中心線よりもマイナス極性側に位置する箇所の波面と中心線とで囲まれる領域の面積が、トナー送り側の面積である。正弦波の場合には、トナー戻し側の面積と、トナー送り側の面積とが同じであるため、トナー戻し側のデューティ比が50[%]になる。
【0061】
実験3で第2面のマゼンタの単色ベタ画像について評価した結果を図6に示す。図示のように、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveを−2.6〜−3.4[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りを何れも許容範囲のランク4以上にするとともに、IDを許容範囲の1.4以上にすることができた。これは次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、2次転写バイアスとして重畳バイアスを用いる場合、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に形成される交番電界により、トナーが2次転写ニップ内でベルト表面と記録シートとの間を往復移動しながら、相対的に記録シート表面上に移動する。その過程で、記録シートPにおける画像部の周囲に飛び散ってしまったトナーが、ベルト表面に引き戻された後、記録シートの画像部に転移することから、画像部周囲のトナー散りが発生し難くなる。更には、記録シートPに付着したトナーがベルト表面に引き戻された際に、ベルト表面上のトナーにぶつかって、そのトナーのベルト表面からの離脱を促すことで、ベルト表面からシート表面へのトナーの移動を促進する。これらの結果、トナー散りや画像濃度不足の発生を、直流バイアスよりも小さな値の直流成分で抑えられることが可能になることから、白点も発生し難くなる。よって、直流バイアスを用いる場合には実現できなかった、トナー散り、画像濃度不足、及び白点の全ての発生を抑えることが可能になったと考えられる。
【0062】
[実験4]
2次転写バイアスとして、実験2のように直流バイアスを用いた場合、図9に示すように、直流バイアスの値(絶対値)をある程度大きくすることで、1.4以上の画像濃度(ID)を実現することができる。また、2次転写バイアスとして、実験3のようの重畳バイアスを用いた場合、図8に示すように、その時間平均電圧Vaveを適切な値に設定することで、1.4以上の画像濃度(ID)を実現することができる。但し、その適切な値は、図示のように、トナー送り側のデューティ比によって変化する。実験3では、上述したように、交流電圧として、トナー送り側のデューティ比が50[%]であるものを用いたが、50[%]以下にした場合、その適正範囲は、図示のように広くなる。そこで、実験3とは異なる前記デューティ比の条件で、同様の実験を行うことにした。
【0063】
実験4においては、重畳バイアスの交流電圧として、ピークツウピーク電圧Vpp=6[kV]、トナー戻し側のデューティ比=40%、周波数f=500[Hz]のものを採用した。この交流電圧の波形は、図9に示すような矩形波である。同図において、オフセット電圧Voffは、交流電圧に重畳される直流電圧である。このオフセット電圧Voffの位置にある横線(点線)が、矩形波のピークツウピークの中心線である。そして、この中心線よりもプラス極性側の波における波面と、中心線とで囲まれる領域の面積が、トナー戻し側の面積である。また、中心線よりもマイナス曲線側の波における波面と、中心線とで囲まれる領域の面積が、トナー送り側の面積である。同図からわかるように、前者の面積は後者の面積よりも小さくなっている。実験4では、前者の面積の両面積に対する割合を40[%]にしている。
【0064】
かかるバイアス条件の他は、実験3と同様の条件にて(環境=10℃、15%)、第2面のマゼンタの単色ベタ画像について、トナー散り及び白点のランクを評価するとともに、IDを測定した。この結果を、図10に示す。図示のように、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveを−2.6〜−3.8[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りを何れも許容範囲のランク4以上にするとともに、IDを許容範囲の1.4以上にすることができた。
【0065】
[実験5]
実験5においては、重畳バイアスの交流電圧として、ピークツウピーク電圧Vpp=6[kV]、トナー戻し側のデューティ比=32%、周波数f=500[Hz]、波形=矩形波であるものを採用した。重畳バイアスについては、オフセット電圧Voffの調整により、時間平均電圧Vaveを−0.6〜−6.6[kV]の範囲において−0.4[kV]刻みで徐々に大きくしていき、それぞれの条件で両面プリントを実施した。かかるバイアス条件の他は、実験4と同様の条件にて(環境=10℃、15%)、第2面のマゼンタの単色ベタ画像について、トナー散り及び白点のランクを評価するとともに、IDを測定した。この結果を、図11に示す。図示のように、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveを−2.6〜−4.2[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りを何れも許容範囲のランク4以上にするとともに、IDを許容範囲の1.4以上にすることができた。
【0066】
[実験6]
実験6においては、重畳バイアスの交流電圧として、ピークツウピーク電圧Vpp=7[kV]、トナー戻し側のデューティ比=16%、周波数f=500[Hz]、波形=矩形波であるものを採用した。重畳バイアスの時間平均電圧については、オフセット電圧Voffの調整によって適宜変化させ、それぞれの条件で両面プリントを実施した。かかるバイアス条件の他は、実験5と同様の条件にて(環境=10℃、15%)、第2面のマゼンタの単色ベタ画像について、トナー散り及び白点のランクを評価するとともに、IDを測定した。この結果を、図12に示す。図示のように、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveを−3.8〜−4.6[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りを何れも許容範囲のランク4以上にするとともに、IDを許容範囲の1.4以上にすることができた。
【0067】
なお、ピークツウピーク電圧Vppを、実験1〜5において6[kV]に設定したのに対し、実験6において7[kV]に設定したのは、次に説明する理由からである。即ち、ピークツウピーク電圧Vppを一定にした条件においては、トナー戻し側のデューティ比を低くするほど、時間平均電圧Vaveをトナー送り側に大きな値にする。このため、基本的には、トナー戻し側のデューティ比を低くするほど、互いに密着しているベルト表面と記録シート表面との間でトナーをベルト側からシート側に移動させる能力を高めて、転写性を高めることができる。但し、かかる効果を得るためには、交番電界によってトナーをベルト表面とシート表面との間で確実に往復移動させることが必須の条件となる。トナーをシート表面からベルト表面に引き戻すことができないと、引き戻したトナーとの衝突により、ベルト表面に付着していたトナーのベルト表面からの離脱を促すという現象が得られなくなる結果、十分な転写性も得られなくなるからである。トナー戻し側のデューティ比を低くすると、トナーをベルト側からシート側に移動させる能力を高める反面、トナーをシート側からベルト側に戻す能力を低くすることから、トナーをシート表面からベルト表面に戻し難くなっていく。実験6では、実験1〜5と同様にピークツウピーク電圧を6[kV]に設定すると、トナーをシート表面からベルト表面に引き戻すことができずに、却って転写性を低下させる結果になってしまった。そこで、ピークツウピーク電圧を7[kV]に増加させて、戻しピーク値Vr[V]をより大きくすることで、短時間のうちにトナーを一気にシート表面からベルト表面に引き戻すようにしたのである。後述する実験7においても、同様の理由により、ピークツウピーク電圧を8[kV]に増大させている。
【0068】
[実験7]
実験7においては、重畳バイアスの交流電圧として、ピークツウピーク電圧Vpp=8[kV]、トナー戻し側のデューティ比=8%、周波数f=500[Hz]、波形=矩形波であるものを採用した。重畳バイアスの時間平均電圧については、オフセット電圧Voffの調整によって適宜変化させ、それぞれの条件で両面プリントを実施した。かかるバイアス条件の他は、実験6と同様の条件にて(環境=10℃、15%)、第2面のマゼンタの単色ベタ画像について、トナー散り及び白点のランクを評価するとともに、IDを測定した。この結果を、図13に示す。図示のように、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveを−3.8〜−4.2[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りを何れも許容範囲のランク4以上にするとともに、IDを許容範囲の1.4以上にすることができた。
【0069】
なお、トナー戻し側のデューティ比を50[%]よりも高くすると、直流電圧を印加しない場合には、時間平均電圧Vaveをトナー戻し側の極性(本例ではプラス極性)にしてしまうため、トナー像を記録シート表面に転写することができなくなってしまう。直流電圧を印加すれば、時間平均電圧Vaveをトナー送り側の極性にすることは可能であるが、印加前にトナー戻し側の極性にしている分だけ、効率が悪くなってしまう。このため、トナー戻し側のデューティ比を50[%]よりも高くすることは、エネルギー効率の観点から現実的ではない。
【0070】
実験3から実験7までをまとめると、低温低湿環境下(10℃、15%)において、第2面にトナー像を転写する際には、トナー戻し側のデューティ比=8〜50[%]の範囲において、時間平均電圧Vaveの適切範囲が、−2.6〜−4.6[kV]であった。これに対し、低温低湿環境下(10℃、15%)において、第1面にトナー像を転写する際には、実験2で説明したように、直流バイアスの適正範囲が−4.8〜−6.6[kV]であった。この適正範囲は、時間平均電圧Vaveの適正範囲と重ならず、且つ、時間平均電圧Vaveの適正範囲よりも大きな数値である。このことから、第2面にトナー像を転写する際には、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveの絶対値を、第1面にトナー像を転写する際の直流バイアスの絶対値よりも小さくすることで、トナー散り及び白点を許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDが得られることがわかった。
【0071】
そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、第2面にトナー像を転写する際の重畳バイアスの時間平均電圧Vaveとして、その絶対値を、第1面転写時の直流バイアスの絶対値よりも小さくしたものを印加する処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成している。
【0072】
なお、実施形態に係るプリンタにおいては、2次転写裏面ローラ33の芯金に対して2次転写バイアスを印加するとともに、ニップ形成ローラ36の芯金を接地している。かかる構成では、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの時間平均電圧Vaveと、2次転写裏面ローラ33〜ニップ形成ローラ36間の電位差の時間平均値である直流成分電位差Eoffとが、互いに同じになる。そして、それらは、重畳バイアスの直流成分であるオフセット電圧Voffと同じ値になる。ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ーラ36の芯金に直流電圧を印加した場合、2次転写裏面ローラ33の芯金に印加する直流電圧と、ニップ形成ローラ36の芯金に印加する直流電圧との重畳値を、オフセット電圧Voffとして取り扱うものとする。つまり、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ーラ36の芯金に直流電圧を印加した場合であっても、直流成分電位差Eoffとオフセット電圧Voffとは同じ値になる。
【0073】
ニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と、2次転写裏面ローラ33等の裏面当接部材との間に、直流成分と交流成分とを含む電位差を発生させる方法としては、次の6通りを例示することができる。
(1)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材をアース接続する。
(2)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(3)ニップ形成部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(4)ニップ形成部材をアース接続し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(5)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(6)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加する。
【0074】
これら6通りのうち、何れを採用してもよい。何れの方式であっても、記録シートの第2面にトナー像を2次転写する際の時間平均電位差Eoff(絶対値)を、第1面にトナー像を転写する際の電位差(直流の電位差の絶対値)よりも小さくすればよい。
【0075】
なお、これまで説明した実験では、重畳バイアスの交流電圧として、波形が正弦波又は矩形波からなるものを用いているが、波形はそれらに限定されるものではない。例えば、図14に示されるように、1周期における山の箇所と谷の箇所とが非対称になるような曲線の波形でもよい。また、図15に示されるような所定の周期で出現する三角波や、図16に示されるような所定の周期で立ち上がりと立ち下がりとを繰り返す台形波でもよい。また、図17に示されるような、所定の周期で立ち上がる台形波と、これとは非対称の形状で立ち下がる台形波との組み合わせでもよい。
【0076】
第2面にトナー像を2次転写する際に、2次転写バイアスとして重畳バイアスを採用すると、1.4以上のIDを実現することが可能になるのは、既に述べたように、次に説明する理由によるものである。即ち、白点を発生させないような比較的小さな値の時間平均電圧Vave(又は時間平均電位差Eoff)であっても、交番電界によってシート表面からベルト表面に戻されたトナーがベルト表面に付着しているトナーにぶつかってそのトナーのベルト表面からの離脱を促すことで、多くのトナーをシート表面に付着させることが可能になるからである。よって、2次転写ニップ内においては、理論的には、最低でもトナーをシート表面とベルト表面との間で2往復させる必要がある。但し、本発明者らの実験によれば、2往復だけでは、ベルト表面に戻ったトナーをベルト表面に付着しているトナーにぶつけてベルト表面から離脱を促すという効果が確実に得られず、効果が得られたときと、得られなかったときとのトナー付着量の際による周期的な濃度ムラが発生した。周期的な濃度ムラを回避するためには、トナーを4往復以上させる必要があった。そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、記録シートの2次転写ニップ通過時間を、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの交流成分の周期の4倍以上に設定している。具体的には、「周波数f>(4/ニップ幅d[mm])×プロセス線速v[mm/s]」という条件を具備させている。
【0077】
実施形態に係るプリンタにおいては、記録シートの第2面にトナー像を2次転写する際の重畳バイアスからなる2次転写バイアスとして、次のようなものを出力する処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成している。即ち、重畳バイアスとして、交流成分のトナー戻し側のデューティ比が50[%]未満であるものを出力する処理である。これは次に説明する理由からである。即ち、交流電圧は、デューティ比=50%のものが最も一般的である。最も一般的なデューティ比=50%の交流電圧を採用した場合、時間平均電圧Vaveは、オフセット電圧Voffと同じ値になる。そして、この場合、交流電圧は、単にトナーをベルト表面とシート表面との間で往復移動させるものであって、トナーをベルト表面側からシート表面側に相対移動させる作用は全く発揮しない。かかる作用は、オフセット電圧Voffだけによって発揮される。これに対し、トナー戻し側のデューティ比が50[%]未満である交流電圧は、トナーを往復移動させる作用の他、トナーをベルト表面側からシート表面側に相対移動させる作用も発揮するようになる。これにより、より小さなオフセット電圧Voffで所望のIDが得られるようになるため、より低エネルギーで所望のIDを得ることが可能になる。
【0078】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、記録シートの第2面にトナー像を2次転写する際の重畳バイアスからなる2次転写バイアスとして、次のようなものを出力する処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成している。即ち、重畳バイアスとして、交流成分のトナー戻し側のデューティ比が8[%]以上であるものを出力する処理である。これは次に説明する理由による。即ち、本発明者らの実験によれば、トナー戻し側のデューティ比を8[%]よりも小さくすると、2次転写バイアス電源39から所望の波形を出力することができなくなった。そこで、デューティ比を8[%]以上にすることで、所望の波形を確実に出力するようにしている。
【0079】
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例のプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、各実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第1実施例]
先に示した図3において、制御部200には、I/Oインターフェース201を介して、操作表示部300が接続されている。この操作表示部300は、図示しない液晶ディスプレイや、複数のタッチキーからなる図示しないキー操作部などを有している。そして、液晶ディスプレイに各種の画像や文字情報を表示したり、キー操作部に対するキー操作によってユーザーからの入力情報を受け付けたりする。
【0080】
ユーザーは、操作表示部300のキー操作部に対するキー操作を行ったり、パーソナルコンピュータにインストールされているプリンタユーティリティソフトを操作したりすることで、本プリンタの動作モードについて、省エネモードと高画質モードとを切り換えて設定することができる。省エネモードは、記録シートの第2面にトナー像を2次転写する際の2次転写バイアスとして、第1面転写時と同様に、直流バイアスを採用するモードである。交流電圧を使用しない分、重畳バイアスを用いる場合に比べて電力消費を抑えることができる。一方、高画質モードは、記録シートの第2面にトナー像を2次転写する際の2次転写バイアスとして、第1面転写時とは異なり、重畳バイアスを採用するモードである。それらモードの切り替えは、操作表示部b300に対するキー操作で行うことができる他、パソコンのプリンタユーティリティソフトを操作することでも行うことができる。プリンタユーティリティソフトを操作した場合、パソコンから発信されたその操作情報を制御部200が受信してモードの切り替えを把握する。制御部200は、モードを切り換えた場合には、切り替え後のモードの情報を2次転写バイアス電源39に送る。
【0081】
2次転写バイアス電源39は、第2面にトナー像を2次転写する際の2次転写バイアスとして、直流バイアスを出力するのか、あるいは、重畳バイアスを出力するのかを、ユーザーからの命令であるモード設定情報に基づいて選択する選択処理を実施するように構成されている。かかる構成においては、第2面に転写される画像の高画質化よりも、省エネを希望するユーザーに対しては、省エネ用のプリント動作を提供することができる。
【0082】
[第2実施例]
図3において、制御部200には、I/Oインターフェース201を介して、湿度検知センサ301が接続されている。この湿度検知センサ301は、機内の湿度を検知して、その結果をデジタルデータで制御部200に送信するものである。既に述べたように、環境が常温常湿(温度23℃、湿度50%)ある場合には、第2面転写時において、2次転写バイアスとして直流バイアスを採用しても、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDを得ることが可能である。にもかかわらず、2次転写バイアスとして重畳バイアスを採用すると、2次転写ニップ周囲の部材の劣化を無駄に早めたり、無駄なエネルギー消費を引き起こしたりする。
【0083】
そこで、第2実施例に係るプリンタにおいては、第2面にトナー像を転写する際の2次転写バイアスとして、直流バイアスを出力するのか、あるいは、重畳バイアスを出力するのかを、湿度センサ301による検知結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成している。より詳しくは、湿度センサ301による検知結果が所定の下限湿度を超える場合には、前記2次転写バイアスとして直流バイアスを採用しても、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDを得ることが可能である。そこで、この場合、2次転写バイアス電源39は、2次転写バイアスとして直流バイアスを出力する。一方、湿度センサ301による検知結果が所定の下限湿度以下である場合には、2次転写バイアスとして重畳バイアスを出力する。かかる構成では、直流バイアスからなる2次転写バイアスを用いても、記録シートの第2面において、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDが得られるほど、機内の湿度が低い場合には、2次転写バイアスとして直流バイアスを出力して、省エネルギー化を図るとともに、2次転写ニップ周囲の部材の劣化を抑えることができる。
【0084】
なお、機内の温度と湿度とには相関関係が成立する。よって、湿度センサ301による検知結果に代えて、温度センサによる検知結果に応じて、2次転写バイアスとして直流バイアスを出力するのか、あるいは重畳バイアスを出力するのかを選択させるようにしてもよい。
【0085】
[第3実施例]
図3において、制御部200には、I/Oインターフェース201を介して、シート抵抗測定器302が接続されている。このシート抵抗測定器302は、2次転写ニップに供給される前の記録シートの電気抵抗を測定して、その結果をデジタルデータとして出力するものである。かかるシート抵抗測定器302としては、レジストローラ対よりも上流側で、互いに当接する金属ローラ対と、この金属ローラ対のローラ間に一定の電圧をかけながら両ローラ間に流れる電流量を測定する電流測定手段とを有するものを例示することができる。レジストローラ対に挟み込まれる前の記録シートをそれら金属ローラ間に挟み込んだときに前記両ローラ間に流れる電流に基づいて、記録シートの電気抵抗を測定することが可能である。
【0086】
高湿度環境などにより、記録シートの電気抵抗が比較的低いときには、トナー像を記録シートの第2面に転写するときに、2次転写バイアスとして直流バイアスを採用しても、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDを得ることが可能である。にもかかわらず、2次転写バイアスとして重畳バイアスを採用すると、2次転写ニップ周囲の部材の劣化を無駄に早めたり、無駄なエネルギー消費を引き起こしたりする。
【0087】
そこで、第3実施例に係るプリンタにおいては、第2面にトナー像を転写する際の2次転写バイアスとして、直流バイアスを出力するのか、あるいは、重畳バイアスを出力するのかを、シート抵抗測定器302による測定結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成している。より詳しくは、シート抵抗測定器302による検知結果が所定の上限抵抗値を下回る場合には、前記2次転写バイアスとして直流バイアスを採用しても、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDを得ることが可能である。そこで、この場合、2次転写バイアス電源39は、2次転写バイアスとして直流バイアスを出力する。一方、シート抵抗測定器302による検知結果が所定の上限抵抗値以上である場合には、2次転写バイアスとして重畳バイアスを出力する。かかる構成では、直流バイアスからなる2次転写バイアスを用いても、記録シートの第2面において、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDが得られるほど、記録シートの電気抵抗が低い場合には、2次転写バイアスとして直流バイアスを出力して、省エネルギー化を図るとともに、2次転写ニップ周囲の部材の劣化を抑えることができる。
【0088】
これまで、中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36との当接によって2次転写ニップを形成する例について説明したが、中間転写ベルト31と、無端状のニップ形成ベルトとの当接によって2次転写ニップを形成してもよい。この場合、中間転写ベルト31のループ内側に配設された2次転写裏面ローラ33の芯金と、ニップ形成ベルトのループ内側でニップ形成ベルトを中間転写ベルト31に向けて押圧する押圧部材たる押圧ローラの芯金との間で、第2面転写時電位差の単位時間あたりにおける平均の絶対値を、第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくするという条件を得ればよい。
【0089】
次に、実施形態に係るプリンタにおける一部の構成を他の構成に変更した各変形例に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るプリンタの構成は実施形態と同様である。
[第1変形例]
図18は、第1変形例に係るプリンタにおける作像ユニット1の一部を示す構成図である。このプリンタは、単色のトナー像を作像するための作像ユニット1を1つだけ備えている単色機である。同図において、像担持体としての感光体2は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。
【0090】
感光体2の周囲には、第1実施形態に係るプリンタと同様の構成の図示しないドラムクリーニング装置、除電装置、帯電装置、現像装置等が配設されている。また、感光体2の下方には、ニップ形成部材としての転写ローラ235が配設されており、図示しない付勢手段によって感光体2に向けて付勢されながら感光体2に当接して転写ニップを形成している。この転写ニップには、記録シートPが送り込まれる。そして、感光体2上のトナー像が転写ニップで記録シートP上に転写される。
【0091】
転写ローラ235としては、回転軸部材の周面上に導電性発泡体からなる導電性発泡層が被覆されたものや、芯金上に導電性弾性層が被覆されたものを例示することができる。
【0092】
転写ニップを通過して第1面にトナー像が形成された記録シートPは、図示しない定着装置を経由して第1面にトナー像が定着せしめられる。そして、必要に応じて、図示しない反転再送装置によって転写ニップに再送されて、第2面にもトナー像が転写及び定着される。
【0093】
転写ローラ235には、転写バイアス電源240によって転写バイアスが印加される。電位差発生手段としての転写バイアス電源240は、実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス電源と同様に、直流電源と交流電源とを有しており、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力したり、直流電圧に交流電圧を重畳せしめた重畳バイアスを出力したりすることができる。
【0094】
制御部200は、両面プリントモードや片面プリントモードにおいて、記録シートの第1面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源240に対して、第1面転写信号を出力する。また、両面プリントモードにおいて、記録シートの第2面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源240に対して、第2面転写信号を出力する。
【0095】
転写バイアス電源240は、制御部200から出力される第1面転写信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力する。これにより、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する場合に比べて、感光体2と転写ローラ235との間の放電の発生を抑える。よって、放電に起因する感光体2や転写ローラ235の劣化を抑えることができる。
【0096】
また、転写バイアス電源240は、制御部200から出力される第2面信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する。これにより、直流バイアスを出力する場合に比べて、白点やトナー散りの発生を抑えることを可能にする。
【0097】
実施形態に係るプリンタでは、2次転写バイアスが印加される2次転写裏面ローラに対してマイナス極性のトナーを静電的に反発させることで、トナー像を2次転写裏面ローラ側から中間転写ベルト側に静電移動させていた。これに対し、第1変形例に係るプリンタでは、転写バイアスが印加される転写ローラ235に対して、感光体2上のマイナス極性のトナーを静電的に引き寄せることで、トナー像を感光体2側から転写ローラ235側に静電移動させる。このため、前述した重畳バイアスとしては、図4に示されるグラフとは、0[V]を軸にして線対称の関係になる波形のものを採用している。かかる重畳バイアスでは、オフセット電圧Voffの極性がプラス極性になる。この重畳バイアスは、単位時間あたりにおける平均の絶対値が、上述した直流電圧だけからなる直流バイアスの絶対値よりも小さい値になっている。
【0098】
[第2変形例]
図19は、第2変形例に係るプリンタにおける作像ユニット1の一部と、紙搬送ベルトユニット210とを示す構成図である。このプリンタは、単色のトナー像を作像するための作像ユニット1を1つだけ備えている単色機である。同図において、像担持体としての感光体2は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。
【0099】
感光体2の周囲には、第1実施形態に係るプリンタと同様の構成の図示しない、ドラムクリーニング装置、除電装置、帯電装置、現像装置等が配設されている。また、感光体2の下方には、紙搬送ベルトユニット210が配設されている。
【0100】
紙搬送ベルトユニット210は、無端状の紙搬送ベルト211を、そのループ内側に配設された駆動ローラ212と従動ローラ213とによって張架しながら、駆動ローラ212の回転駆動に伴って図中反時計回りに無端移動せしめる。ニップ形成部材としての紙搬送ベルト211は、感光体2に当接して転写ニップを形成している。転写ニップの付近では、紙搬送ベルト211のループ内側に配設された転写ブラシ215や転写ローラ214がそれぞれ紙搬送ベルト211の裏面に当接している。それら転写ブラシ215や転写ローラ214には、電位差発生手段としての転写バイアス電源240によって転写バイアスが印加される。
【0101】
感光体2と紙搬送ベルト211との当接による転写ニップには、レジストローラ対102によって記録シートが送り込まれる。そして、感光体2上のトナー像が転写ニップで記録シートP上に転写される。
【0102】
転写ローラ214としては、回転軸部材の周面上に導電性発泡体からなる導電性発泡層が被覆されたものや、芯金上に導電性弾性層が被覆されたものを例示することができる。また、転写ブラシ215としては、導電性支持体の表面上に複数の導電性繊維の直毛によるブラシ部を設けたものを例示することができる。
【0103】
転写ニップを通過して第1面にトナー像が形成された記録シートPは、図示しない定着装置を経由して第1面にトナー像が定着せしめられる。そして、必要に応じて、図示しない反転再送装置によって転写ニップに再送されて、第2面にもトナー像が転写及び定着される。
【0104】
同図では、紙搬送ベルト211の周方向における全域のうち、転写ニップのベルト移動方向の中心よりも下流側にずれた位置であって、且つ感光体2との間にベルトを挟み込む位置に、転写ブラシ215を当接させているが、転写ニップの中心に当接させてもよい。また、転写ブラシ215を転写ローラ214よりもベルト移動方向の上流側に配設しているが、両者の位置関係を逆にしてもよい。また、転写ブラシ215と転写ローラ214とのうち、何れか一方だけを配設してもよい。
【0105】
転写ブラシ215や転写ローラ214には、転写バイアス電源240によって転写バイアスが印加される。電位差発生手段としての転写バイアス電源240は、実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス電源と同様に、直流電源と交流電源とを有しており、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力したり、直流電圧に交流電圧を重畳せしめた重畳バイアスを出力したりすることができる。
【0106】
制御部200は、両面プリントモードや片面プリントモードにおいて、記録シートの第1面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源240に対して、第1面転写信号を出力する。また、両面プリントモードにおいて、記録シートの第2面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源240に対して、第2面転写信号を出力する。
【0107】
転写バイアス電源240は、制御部200から出力される第1面転写信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力する。これにより、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する場合に比べて、感光体2と転写ローラ235との間の放電の発生を抑える。よって、放電に起因する感光体2や転写ローラ235の劣化を抑えることができる。
【0108】
また、転写バイアス電源240は、制御部200から出力される第2面信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する。これにより、直流バイアスを出力する場合に比べて、白点やトナー散りの発生を抑えることを可能にする。
【0109】
第2変形例に係るプリンタでは、転写バイアスが印加される転写ローラ235に対して、感光体2上のマイナス極性のトナーを静電的に引き寄せることで、トナー像を感光体2側から転写ローラ235側に静電移動させる。このため、前述した重畳バイアスとしては、第1変形例に係るプリンタと同様の波形のものを採用している。この重畳バイアスは、単位時間あたりにおける平均の絶対値が、上述した直流電圧だけからなる直流バイアスの絶対値よりも小さい値になっている。
【0110】
[第3変形例]
図20は、第3変形例に係るプリンタにおける各色の作像ユニットの一部と、転写ユニット300とを示す構成図である。同図では、各色について、作像ユニットとして、感光体(2Y,M,C,K)だけを示しているが、感光体の周りには、図2で示されている作像ユニットと同様に、ドラムクリーニング装置、除電装置、帯電装置K、現像装置等が配設されている。
【0111】
各色の感光体2Y,M,C,Kの下方には、転写ユニット300が配設されている。この転写ユニット300は、無端状の転写搬送ベルト301を、そのループ内側に配設された、4つの転写ローラ302Y,M,C,K、分離ローラ307、駆動ローラ303、第1従動ローラ304、第2従動ローラ305、入口ローラ306などによって張架している。そして、転写搬送ベルト301を駆動ローラ303の回転駆動に伴って図中反時計回り方向に無端移動させる。
【0112】
転写ローラ302Y,M,C,Kは、感光体2Y,M,C,Kとの間に、転写搬送ベルト301を挟み込んでいる。これにより、ニップ形成部材としての転写搬送ベルト301のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接して、Y,M,C,K用の転写ニップを形成している。
【0113】
転写搬送ベルト301のループの外では、紙吸着ローラ308が、転写搬送ベルト301における入口ローラ306に対する掛け回し箇所に当接して紙吸着ニップを形成している。また、ベルトクリーニング装置311が、転写搬送ベルト301における駆動ローラ303に対する掛け回し箇所に当接してクリーニングニップを形成している。
【0114】
転写ローラ302Y,M,C,Kとしては、回転軸部材の周面上に導電性発泡体からなる導電性発泡層が被覆されたものや、芯金上に導電性弾性層が被覆されたものを例示することができる。転写ローラ302Y,M,C,Kには、転写バイアス電源310Y,M,C,Kによって転写バイアスが印加されている。これにより、転写ローラ302Y,M,C,Kと、感光体2Y,M,C,Kにおける静電潜像との間に、トナーを感光体側から転写ローラ側に静電移動させる転写電界が形成される。
【0115】
また、紙吸着ローラ308には、図示しない吸着バイアス電源により、紙吸着バイアスが印加される。この紙吸着ローラ308の付近には、レジストローラ対102が配設されており、図示しない記録シートを所定のタイミングで紙吸着ニップに向けて送り出す。紙吸着ニップに挟み込まれた記録シートは、静電気力によって転写搬送ベルト301のおもて面に吸着される。そして、転写搬送ベルト301の無端移動に伴って、Y,M,C,K用の転写ニップを順次通過する。これにより、記録シートの第1面に4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0116】
Y,M,C,K用の転写ニップのうち、転写工程が最後になるK用の転写ニップを通過した記録シートは、転写搬送ベルト301の無端移動に伴って、分離ローラ307との対向位置にさしかかる。この対向位置では、転写搬送ベルト301が大きな巻き付き角で分離ローラ307に巻き付いているため、移動方向を急転換させる。転写搬送ベルト301の表面に静電吸着された記録シートは、その急転換に追従することができず、ベルト表面から曲率分離される。
【0117】
このようにして転写搬送ベルト301から分離された記録シートは、図示しない定着装置を経由して第1面にトナー像が定着せしめられる。そして、必要に応じて、図示しない反転再送装置によってレジストローラ対102に再送されて、第2面にも4色重ね合わせトナー像が転写及び定着される。
【0118】
電位差発生手段としての転写バイアス電源310Y,M,C,Kは、それぞれ、実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス電源と同様に、直流電源と交流電源とを有しており、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力したり、直流電圧に交流電圧を重畳せしめた重畳バイアスを出力したりすることができる。
【0119】
制御部200は、両面プリントモードや片面プリントモードにおいて、記録シートの第1面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源310Y,M,C,Kに対して、それぞれ第1面転写信号を出力する。また、両面プリントモードにおいて、記録シートの第2面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源310Y,M,C,Kに対して、それぞれ第2面転写信号を出力する。
【0120】
転写バイアス電源310Y,M,C,Kは、制御部200から出力される第1面転写信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力する。これにより、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する場合に比べて、感光体2Y,M,C,Kと、転写搬送ベルト301との間の放電の発生を抑える。よって、放電に起因する感光体2Y,M,C,Kや転写搬送ベルト301の劣化を抑えることができる。
【0121】
また、転写バイアス電源310Y,M,C,Kは、制御部200から出力される第2面信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する。これにより、直流バイアスを出力する場合に比べて、白点やトナー散りの発生を抑えることを可能にする。
【0122】
第3変形例に係るプリンタにおいても、転写バイアスが印加される転写ローラ302Y,M,C,Kに対して、感光体2Y,M,C,K上のマイナス極性のトナーを静電的に引き寄せることで、トナー像を感光体2Y,M,C,K側から転写ローラ302Y,M,C,K側に静電移動させる。このため、前述した重畳バイアスとしては、図4に示されるグラフとは、0[V]を軸にして線対称の関係になる波形のものを採用している。この重畳バイアスは、単位時間あたりにおける平均の絶対値が、上述した直流電圧だけからなる直流バイアスの絶対値よりも小さい値になっている。
【0123】
[第4変形例]
図21は、第4変形例に係るプリンタの要部を示す要部構成図である。同図において、K用の作像ユニット1Kは、感光体2Kの周りに、除電ランプ14K、ドラムクリーニング装置3K、帯電装置6K、潜像書込ユニット15K、現像装置8Kなどを有している。潜像書込ユニット15Kは、LEDアレイを用いて、感光体2Kの表面に静電潜像を光書込するものである。Y,M,C用の作像ユニット1Y,M,Cも、K用の作像ユニット1Kと同様の構成になっている。
【0124】
転写ユニット30の中間転写ベルト31は、図中時計回り方向に無端移動せしめられながら、Y,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。これにより、中間転写ベルト31のおもて面に4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0125】
転写ユニット30の下方には、無端状の紙搬送ベルト401を無端移動させる紙搬送ベルトユニット400が配設されている。紙搬送ベルト401は、そのループ内側に配設された駆動ローラ402と、2次転写押圧ローラ403とによって張架された状態で、駆動ローラ402の回転駆動に伴って、図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。紙搬送ベルトユニット400は、紙搬送ベルト401の周方向における全域のうち、2次転写押圧ローラ403に対する掛け回し箇所を、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、2次転写裏面ローラ33に対する掛け回し箇所に当接させている。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成部材たる紙搬送ベルト401のおもて面との当接による2次転写ニップが形成されている。
【0126】
2次転写裏面ローラ33には、実施形態に係るプリンタと同様の構成の2次転写バイアス電源39により、2次転写バイスが印加される。これに対し、紙搬送ベルトユニット400の2次転写押圧ローラ403は接地されている。これにより、2次転写ニップやその周辺においては、2次転写裏面ローラ33と2次転写押圧ローラ403との間に2次転写電界が形成されている。
【0127】
レジストローラ対102から2次転写ニップに向けて送り出された記録シートPの第1面には、中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像が2次転写される。その後、記録シートPは、紙搬送ベルト401のおもて面に吸着された状態で、紙搬送ベルト401の無端移動に伴って2次転写ニップを通過する。そして、紙搬送ベルト401のループ内側に配設された駆動ローラ402との対向位置にさしかかる。この対向位置では、紙搬送ベルト401が大きな巻き付き角で駆動ローラ402に巻き付いているため、移動方向を急転換させる。紙搬送ベルト401の表面に静電吸着された記録シートPは、その急転換に追従することができず、ベルト表面から曲率分離される。
【0128】
このようにして紙搬送ベルト401から分離された記録シートPは、図示しない定着装置を経由して第1面にトナー像が定着せしめられる。そして、必要に応じて、図示しない反転再送装置によってレジストローラ対102に再送されて、第2面にも4色重ね合わせトナー像が転写及び定着される。
【0129】
2次転写バイアス電源39は、実施形態に係るプリンタと同様に、制御部200から出力される第1面転写信号を受信している際には、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力する。また、制御部200から出力される第2面信号を受信している際には、2次転写バイアスとして、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する。この重畳バイアスは、単位時間あたりにおける平均の絶対値が、上述した直流電圧だけからなる直流バイアスの絶対値よりも小さい値になっている。
【0130】
なお、2次転写裏面ローラ33を接地して、2次転写押圧ローラ403に対して2次転写バイアスを印加するようにしてもよい。この場合、既に説明したように、重畳バイアスとしては、図4に示されるグラフとは、0[V]を軸にして線対称の関係になる波形のものを採用すればよい。
【0131】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aにおいては、表面にトナー像を担持する中間転写ベルト31等の像担持体と、前記表面にトナー像を形成する例えば作像ユニットや転写ユニットなどからなる像形成手段と、前記表面に当接して転写ニップを形成するニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と、2次転写バイアス電源39等の電位差発生手段によって前記像担持体と前記ニップ形成部材との間に電位差を発生させた状態で、前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに対して前記像担持体の表面上のトナー像を転写する転写ユニット30等の転写手段と、前記転写ニップを通過した後の記録シートに対してトナー像の定着処理を施す定着装置90等の定着手段と、前記転写ニップ及び前記定着手段を順次通過したことにより、第1面及び第2面のうち、前記第1面だけにトナー像が転写及び定着された記録シートを、面の向きを反転せしめながら前記転写手段に向けて再送する反転再搬送装置105等の再送手段とを備え、前記電位差発生手段が、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第1面に転写する際の前記電位差である第1面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させる一方で、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第2面に転写する際の前記電位差である第2面転写時電位差として、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる処理を実施するものである画像形成装置において、前記第2面転写時電位差の単位時間あたりにおける平均の絶対値を、前記第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくする処理を実施するように、前記電位差発生手段を構成する。かかる構成では、第2面転写時電位差の単位時間あたりにおける平均の絶対値を、直流成分だけからなる第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくすることで、白点、トナー散り、及び画像濃度不足の全ての発生を従来よりも確実に抑えることができる。
【0132】
[態様B]
態様Bにおいては、重畳バイアスなどの前記第2面転写時電位差として、交流成分の周波数f[Hz]と、転写ニップにおける記録シート移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前記像担持体の表面移動速度v[mm/s]とについて「f>(4/d)×v」という関係を具備するものを発生させる処理を実施するように、2次転写バイアス電源39等の電位差発生手段を構成する。かかる構成では、既に説明したように、転写ニップ内のシート表面と像担持体表面との間のトナーの往復移動回数が不足することによる周期的な濃度ムラの発生を回避することができる。
【0133】
[態様C]
態様Cにおいては、重畳バイアス等の第2面転写時電位差として、交流成分のトナー戻し側のデューティ比が50[%]未満であるものを発生させる処理を実施するように、2次転写バイアス電源39等の電位差発生手段を構成する。かかる構成では、既に説明したように、デューティ比が50[%]以上であるものを発生させる場合に比べて、直流成分の絶対値をより小さくして所望の画像濃度が得られるようになるため、より低エネルギーで所望の画像濃度を得ることができる。
【0134】
[態様D]
態様Dにおいては、第2面転写時電位差として、交流成分のトナー戻し側のデューティ比が、8[%]以上であるものを発生させる処理を実施するように、2次転写バイアス電源39等の電位差発生手段を構成する。かかる構成では、既に説明したように、デューティ比を8[%]以上にすることで、所望の波形の電位差を確実に発生させることができる。
【0135】
[態様E]
態様Eにおいては、像担持体として、無端状の中間転写ベルトを用いるとともに、前記中間転写ベルトの裏面に当接しながら、前記中間転写ベルトを介してニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と対向する2次転写裏面ローラ33等の対向部材と、前記ニップ形成部材とのうち、何れか一方に印加するための転写バイアスを出力することで電位差を発生させる処理を実施するように、2次転写バイアス電源39等の前記電位差発生手段を構成する。かかる構成では、転写バイアスを出力することで、ニップ形成部材と対向部材との間に、トナー像転写用の電位差を発生させることができる。
【0136】
[態様F]
態様Fにおいては、2次転写バイアス等の転写バイアスを2次転写裏面ローラ33等の対向部材とニップ形成ローラ36等のニップ形成部材とのうち、対向部材だけに印加する構成を採用する。かかる構成では、記録シートに直接接触するニップ形成部材に転写バイアスを印加する場合に比べて、記録シートの電気抵抗の変動による転写電流量の変動を小さくして、転写性を安定させることができる。
【0137】
[態様G]
態様Gにおいては、2次転写バイアスなどの第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、ユーザーからの命令に基づいて選択する選択処理を実施するように、2次転写バイアス電源39などの電位差発生手段を構成する。かかる構成においては、第1実施例に係るプリンタと同様に、第2面に転写される画像の高画質化よりも、省エネを希望するユーザーに対しては、省エネ用のプリント動作を提供することができる。
【0138】
[態様H]
態様Hにおいては、湿度センサ301などの環境を検知する環境検知手段を設けるとともに、2次転写バイアスなどの第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、環境検知手段による検知結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、2次転写バイアス電源39などの電位差発生手段を構成する。かかる構成においては、第2実施例に係るプリンタと同様に、直流成分だけからなる第2面転写時電位差を採用しても、記録シートの第2面において、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、所望の画像濃度が得られるほど、機内の湿度が低い場合には、第2面転写時電位差として直流成分だけからなるものを出力して、省エネルギー化を図るとともに、2次転写関連の部材の劣化を抑えることができる。
【0139】
[態様I]
態様Iにおいては、シート抵抗測定器302などの記録シートの電気抵抗を検知する抵抗検知手段を設けるとともに、第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、抵抗検知手段による検知結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、2次転写バイアス電源39などの電位差発生手段を構成する。かかる構成においては、第3実施例に係るプリンタと同様に、直流成分だけからなる第2面転写時電位差を採用しても、記録シートの第2面において、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、所望の画像濃度が得られるほど、記録シートの電気抵抗が低い場合には、第2面転写時電位差として直流成分だけからなるものを出力して、省エネルギー化を図るとともに、2次転写関連の部材の劣化を抑えることができる。
【符号の説明】
【0140】
1Y,M,C,K:作像ユニット(像形成手段の一部)
2Y,M,C,K:感光体(潜像担持体)
30:転写ユニット(像形成手段の一部、転写手段の一部)
31:中間転写ベルト(像担持体)
33:2次転写裏面ローラ(裏面当接部材)
36:ニップ形成ローラ(ニップ形成部材)
39:2次転写バイアス電源(電位差発生手段)
80:光書込ユニット(像形成手段の一部)
90:定着装置(定着手段)
104:切換爪(再送手段の一部)
105:反転再搬送装置(再送手段の一部)
200:制御部(像形成手段の一部、転写手段の一部、再送手段の一部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0141】
【特許文献1】特開2008−58585号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ニップと定着手段とに順次通して第1面にトナー像を転写及び定着させた記録シートを、転写ニップと定着手段とに再送してその第2面にもトナー像を転写及び定着させる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の画像形成装置として、特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置は、周知の電子写真プロセスにより、像担持体たるドラム状の感光体にトナー像を形成する。感光体には、ニップ形成部材としての転写ローラを当接させて転写ニップを形成している。この転写ローラに対して転写バイアスを印加することで、転写ニップ内で感光体上のトナー像を感光体側から転写ローラ側に静電移動させるための電位差を、感光体と転写ローラとの間に形成する。記録シートの第1面及び第2面のうち、第1面だけにトナー像を形成する片面プリントモードでのプリントを実施する場合には、まず、給紙カセット内から送り出した記録シートの第1面を感光体に密着させる姿勢で、記録シートを転写ニップに送り込む。そして、転写ニップ内において、感光体の表面上のトナー像を記録シートの第1面に転写した後、記録シートを定着装置内に送って、そのトナー像を記録シートの第1面に定着させる。その後、定着装置通過後の記録シートを機外へと排出する。一方、両面プリントモードでのプリントを実施する場合には、定着装置通過後の記録シートを、上下反転させながら転写ニップに再送する。そして、転写ニップで記録シートの第2面にもトナー像を転写した後、定着装置でそのトナー像を第2面に定着させる。
【0003】
特許文献1に記載の画像形成装置は、このようにして両面プリントモードを実施する過程において、第1面に対するトナー像の転写時と、第2面に対するトナー像の転写時とで、転写バイアスの条件を異ならせている。具体的には、第1面に対するトナー像の転写時には、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを転写ローラに印加する。これに対し、第2面に対するトナー像の転写時には、転写バイアスとして、直流成分に交流成分を重畳せしめた重畳バイアスを印加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる構成においては、第1面に対するトナー像の転写時に、転写バイアスとして直流バイアスを用いることで、放電に起因する感光体や転写ローラの劣化を抑えることができる。具体的には、転写ローラと感光体との間では、少なからず放電が発生し、その際、感光体や転写ローラの劣化を助長する。転写バイアスとして、交流成分を含む重畳バイアスを用いると、直流バイアスを採用する場合に比べて、より多くの放電を発生させることから、感光体や転写ローラの劣化を早めてしまう。よって、第1面に対するトナー像の転写時には、転写バイアスとして直流バイアスを用いることで、重畳バイアスを採用する場合に比べて、感光体や転写ローラの劣化を抑えることができるのである。
【0005】
また、本発明者らの実験によれば、第2面に対するトナー像の転写時には、転写バイアスとして、直流バイアスに代えて重畳バイアスを用いることで、直流バイアスを用いる場合に比べて、白点、トナー散り、画像濃度不足などの発生を抑えることができた。白点は、本来であればトナーを付着させるはずの画像部において、トナーを付着させない箇所が点状に発生して白く抜けてしまう現象である。また、トナーチリは、画像部のエッジの周囲にトナーを飛び散らせて付着させてしまう現象である。記録シートの第2面にトナー像を転写するときには、それに先立って記録シートを定着装置に通しており、その際の加熱によって記録シートから水分を蒸発させた状態になっている。つまり、記録シートの第1面にトナー像を転写するときに比べて、記録シートの電気抵抗を増加させている。これにより、記録シートの画像部に流れる転写電流を低下させていることから、トナーを画像部に電気的に拘束する力が弱まって、トナー散りや画像濃度不足を発生させ易くなる。そこで、かかるトナー散りや画像濃度不足の発生を抑える目的で、トナー像を第1面に転写するときに比べて直流バイアスの値を大きくしたとする。すると、白点を発生させ易くなってしまう。直流バイアスの値を大きくするほど、感光体と転写ローラとの間で放電を発生させ易くなることから、転写ニップ内においてその放電によって逆帯電させたトナーを記録シートの画像部から感光体に逆転移させ易くなるからである。このように、白点の発生と、トナー散りや画像濃度不足の発生とはトレードオフの関係にある。転写バイアスとして、直流バイアスではなく、重畳バイアスを用いる場合にも、トレードオフの関係になるが、その度合いは直流バイアスを用いる場合よりも小さくなる。具体的には、重畳バイアスを用いる場合、感光体と転写ローラとの間に形成される交番電界により、トナーが転写ニップ内で感光体と記録シートとの間を往復移動しながら、相対的に記録シート表面上に移動する。その過程で、記録シートにおける画像部の周囲に飛び散ってしまったトナーが、感光体表面に引き戻された後、記録シートの画像部に転移することから、画像部周囲のトナー散りが発生し難くなる。更には、記録シートに付着したトナーが感光体表面に引き戻された際に、感光体表面上のトナーにぶつかって、そのトナーの感光体表面からの離脱を促すことで、感光体表面から記録シート表面へのトナーの移動を促進する。これらの結果、トナー散りや画像濃度不足の発生をより小さな値の直流成分で抑えられることが可能になることから、白点も発生し難くなる。よって、直流バイアスを用いる場合に比べて、トナー散り、画像濃度不足、及び白点の発生を抑えることが可能になるのである。
【0006】
しかしながら、重畳バイアスであっても、直流成分の値などによっては、白点の発生を十分に抑えることができなかったり、トナー散りや画像濃度不足の発生を十分に抑えることができなかったりする。よって、特許文献1に記載の画像形成装置は、白点、トナー散り、及び画像濃度不足の全ての発生を確実に抑えるものではなかった。
【0007】
なお、これまで、感光体と転写ローラとの当接によって形成した転写ニップでトナー像を記録シートに転写する構成において生ずる問題について説明してきたが、次のような構成においても、同様の問題が生じ得る。即ち、中間転写体など、感光体とは異なる像担持体と、これに当接するニップ形成部材との当接によって形成した転写ニップで、像担持体上のトナー像を記録シートに転写する構成である。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、像担持体やニップ形成部材の劣化を抑えるとともに、白点、トナー散り、及び画像濃度不足の全ての発生を従来よりも確実に抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、表面にトナー像を担持する像担持体と、前記表面にトナー像を形成する像形成手段と、前記表面に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材と、電位差発生手段によって前記像担持体と前記ニップ形成部材との間に電位差を発生させた状態で、前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに対して前記像担持体の表面上のトナー像を転写する転写手段と、前記転写ニップを通過した後の記録シートに対してトナー像の定着処理を施す定着手段と、前記転写ニップ及び前記定着手段を順次通過したことにより、第1面及び第2面のうち、前記第1面だけにトナー像が転写及び定着された記録シートを、面の向きを反転せしめながら前記転写手段に向けて再送する再送手段とを備え、前記電位差発生手段が、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第1面に転写する際の前記電位差である第1面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させる一方で、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第2面に転写する際の前記電位差である第2面転写時電位差として、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる処理を実施するものである画像形成装置であって、前記電位差発生手段が、前記第2面転写時電位差として、その単位時間あたりにおける平均の絶対値を、前記第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくしたものを発生させるものである、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、記録シートの第1面にトナー像を転写するときには、像担持体とニップ形成部材との間に、直流成分だけを含む第1面転写時電位差を発生させることで、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる場合に比べて、像担持体とニップ形成部材との間における放電の発生を抑える。これにより、像担持体やニップ形成部材の劣化を抑えることができる。
【0011】
また、本発明においては、記録シートの第2面にトナー像を転写するときには、像担持体とニップ形成部材との間に、直流成分及び交流成分を含む第2面転写時電位差を発生させる。このとき、第2面転写時電位差の単位時間あたりにおける平均の絶対値を、直流成分だけからなる第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくすることで、本発明者らが後述する実験で明らかにしたように、白点、トナー散り、及び画像濃度不足の全ての発生を従来よりも確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタにおけるK用の作像ユニットを拡大して示す拡大構成図。
【図3】同プリンタの電気回路の一部を示すブロック図。
【図4】同プリンタの2次転写バイアス電源から出力される重畳バイアスの波形を示すグラフ。
【図5】実験2によって得られた、直流バイアスからなる2次転写バイアスの電圧と、白点及びトナー散りのランクとの関係を示すグラフ。
【図6】実験3において記録シートの第2面のマゼンタの単色ベタ画像で得られたバイアス条件と、白点やトナー散りのランクと、同単色ベタ画像のIDとの関係を示すグラフ。
【図7】直流バイアスの値とIDとの関係を示すグラフ。
【図8】重畳バイアスの時間平均電圧VaveとIDとデューティ比との関係を示すグラフ。
【図9】実験4で採用した重畳バイアスの交流電圧の波形を示すグラフ。
【図10】実験4において記録シートの第2面のマゼンタの単色ベタ画像で得られたバイアス条件と、白点やトナー散りのランクと、同単色ベタ画像のIDとの関係を示すグラフ。
【図11】実験5において記録シートの第2面のマゼンタの単色ベタ画像で得られたバイアス条件と、白点やトナー散りのランクと、同単色ベタ画像のIDとの関係を示すグラフ。
【図12】実験6において記録シートの第2面のマゼンタの単色ベタ画像で得られたバイアス条件と、白点やトナー散りのランクと、同単色ベタ画像のIDとの関係を示すグラフ。
【図13】実験7において記録シートの第2面のマゼンタの単色ベタ画像で得られたバイアス条件と、白点やトナー散りのランクと、同単色ベタ画像のIDとの関係を示すグラフ。
【図14】正弦波や矩形波ではない交流波形の第1例を示すグラフ。
【図15】正弦波や矩形波ではない交流波形の第2例を示すグラフ。
【図16】正弦波や矩形波ではない交流波形の第3例を示すグラフ。
【図17】正弦波や矩形波ではない交流波形の第4例を示すグラフ。
【図18】第1変形例に係るプリンタにおける作像ユニット1の一部を示す構成図。
【図19】第2変形例に係るプリンタにおける作像ユニット1の一部と、紙搬送ベルトユニットとを示す構成図。
【図20】第3変形例に係るプリンタにおける各色の作像ユニットの一部と、転写ユニットとを示す構成図。
【図21】第4変形例に係るプリンタの要部を示す要部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの作像ユニット1Y,M,C,Kと、転写手段としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対102とを備えている。
【0014】
4つの作像ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための作像ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
【0015】
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。より詳しくは、感光体2Kの表面を約−650[V]に帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
【0016】
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。K用の静電潜像の電位は約−100[V]である。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。
【0017】
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
【0018】
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
【0019】
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
【0020】
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
【0021】
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
【0022】
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
【0023】
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
【0024】
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
【0025】
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0026】
先に示した図1において、Y,M,C用の作像ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の作像ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
【0027】
作像ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
【0028】
作像ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット30が配設されている。転写手段としての転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,M,C,K、ニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37などを有している。
【0029】
像担持体としての中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は6.0〜13[LogΩcm]、好ましくは7.5〜12.5[LogΩcm]である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT450にて、HRSプローブ使用、印加電圧100V、10msec値の条件で測定)。また、表面抵抗は、9.0〜13.0[LogΩ/□]、好ましくは10.0〜12.0[LogΩ/□]である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT450にて、HRSプローブ使用、印加電圧500V、10msec値の条件で測定)。
【0030】
4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0031】
1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、次のような特性を有している。即ち、外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。また、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、1次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、約1E7Ω〜3E7Ωである。このような1次転写ローラ35Y,M,C,Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0032】
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
【0033】
転写ユニット30の下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給紙路に向けて送り出す。送り出された記録シートPは、複数の給送ローラ対101によって鉛直方向下方から上方に向けて搬送された後、給紙路の末端付近に配設されたレジストローラ対102のレジストニップに挟み込まれる。このレジストローラ対102は、給紙カセット100から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括2次転写され、記録シートPの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
【0034】
2次転写裏面ローラ33は、芯金と、これの表面に被覆された導電性の弾性発泡体層とを具備するものである。これに対し、ニップ形成ローラ36は、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものである。なお、2次転写裏面ローラ33を、芯金と、これの表面に被覆されたNBRゴム層とを具備するものとするとともに、ニップ形成ローラ36を、芯金と、これの表面に被覆された導電性の弾性発泡体層とを具備するものとしてもよい。
【0035】
2次転写裏面ローラ33は、次のような特性を有している。即ち、外径は20〜24[mm]である。また、芯金の径は約16[mm]である。芯金の表面に被覆された導電性発泡体層の抵抗Rは1E6[Ω]〜2E7[Ω]である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。また、2次転写裏面ローラ33の抵抗は、6.0〜12.0[LogΩ]、好ましくは4.0[LogΩ]である。なお、2次転写裏面ローラ33として、導電性発泡体層を設けていないステンレスローラを使用してもよい。2次転写裏面ローラ33の抵抗については、次のようにして測定する。即ち、ローラの長手方向の両端部にそれぞれ5[N]の荷重をかけながら、ローラ軸に1[kV]の電圧を印加する。そして、ローラを1分間で1回転させている間に抵抗を複数回測定して平均値を求める。
【0036】
また、ニップ形成ローラ36は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。また、ニップ形成ローラ36の抵抗は、6.0〜8.0[LogΩ]、好ましくは7.0〜8.0[LogΩ]である。この抵抗は、2次転写裏面ローラ33と同様の方法によって測定されたものである。
【0037】
2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力したり、直流電圧に交流電圧を重畳せしめた重畳バイアスを出力したりすることができる。2次転写バイアス電源39の出力端子は、ニップ形成ローラ36の芯金に接続されている。ニップ形成ローラ36の芯金の電位は、2次転写バイアス電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、2次転写裏面ローラ33については、その芯金を接地(アース接続)している。
【0038】
なお、重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加しつつ、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ36の芯金に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。交流電圧としては、正弦波状の波形のものを採用しているが、矩形波状の波形のものを用いてもよい。
【0039】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0040】
2次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0041】
定着装置90を通過した記録シートPは、切換爪104による搬送路切換点に至る。この切換爪104は、記録シートPの搬送路を、排出路と戻し路とで切り替えることができる。図示の状態では、記録シートPを排出路に向けて案内する。これにより、記録シートPは、排紙ローラ対103を経て機外へと排出される。
【0042】
プリンタ筺体内において、鉛直方向における給紙カセット100と転写ユニット30との間には、スイッチバック部105aと再送部105bとを具備する反転再搬送装置105が配設されている。プリント動作モードとして、両面プリントモードが設定されている場合には、本プリンタは、切換爪104により、搬送路を排出路から戻し路に切り換えている。これにより、定着装置90を通過した記録シートPを戻し路に進入させる。戻し路に進入した記録シートPは、大きく湾曲している戻し路に沿って上下を反転せしめられながら、反転再搬送装置105のスイッチバック部105aに進入する。スイッチバック部105aは、自らの内部に記録シートPの全域を受け入れると、複数のスイッチバックローラ対の駆動を逆転させることで、記録シートPをスイッチバックさせる。これにより、記録シートPは後端を前方に向けた状態で、戻し路の湾曲に沿って上下反転しながら、スイッチバック部105aの真下に設けられた再送部105bに進入する。そして、再送部105bから再び給紙路に向けて送られる。その後、レジストローラ対102によるレジストニップと、2次転写ニップとを通過して、その第2面にもトナー像が転写された後、定着装置90内でそのトナー像が定着せしめられる。
【0043】
一方、プリント動作モードとして、片面プリントモードが設定されている場合には、本プリンタは、切換爪104により、搬送路を戻し路から排出路に切り換えている。これにより、第1面だけにトナー像を転写及び定着せしめた記録シートPを機外へと排出する。また、両面プリントモードが設定されている場合であっても、第2面にトナー像を定着せしめた記録シートPが定着装置90を通過するときには、切換爪104により、搬送路を戻し路から排出路に切り換えている。これにより、両面にトナー像を転写及び定着せしめた記録シートPを機外へと排出する。
【0044】
本プリンタにおいて、標準モードにおけるプロセス線速(感光体や中間転写ベルトの線速)は、約352[mm/s]に設定されている。但し、プリント速度よりも高画質化を優先する高画質モードに設定されている場合には、プロセス線速を352[mm/s]よりも遅くする。また、画質よりもプリント速度を優先する高速モードに設定されている場合には、プロセス線速を352[mm/s]よりも速くする。標準モード、高画質モード、高速モードの切り替えは、ユーザーの操作パネルに対するキー操作、あるいは、パーソナルコンピュータにおけるプリンタプロパティメニューによって行われる。
【0045】
以上の基本的な構成を備える本プリンタにおいては、各色の作図ユニット1Y,M,C,Kと、光書込ユニット80と、転写ユニット30と、それらの駆動を制御する図示しない制御部との組合せにより、像担持体たる中間転写ベルト31の表面にトナー像を形成する像形成手段が構成されている。また、転写ユニット30と、図示しない制御部との組合せにより、転写手段が構成されている。また、反転再搬送装置105と、切換爪104と、図示しない制御部との組合せにより、再搬送手段が構成されている。
【0046】
図3は、本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御部200は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等から構成され、各種の演算処理や、制御プログラムの実行を行うことができる。制御部200には、I/Oインターフェース201を介して、LANポート210、パラレルポート211、USBポート212、転写ユニット30、画像処理部202、切換モータ215、給紙カセット100、反転再搬送装置105、作像ユニット1Y,M,C,K、操作表示部300、湿度センサ301、シート抵抗測定器302などが接続されている。切換モータ215は、図1に示される切換爪(104)を駆動するためのものである。また、画像処理部202は、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてきた画像データを処理するものである。画像処理部202で処理された画像データは、書込制御部203に送られる。書込制御部203は、その画像データに基づいて、光書込ユニット80の駆動を制御して、各色感光体を光走査する。なお、操作表示部300、湿度センサ301、シート抵抗測定器302については、後に詳述する。
【0047】
制御部200は、両面プリントモードや片面プリントモードにおいて、記録シートの第1面に対するトナー像の2次転写処理を行うタイミングでは、転写ユニット30の2次転写バイアス電源39に対して、第1面転写信号を出力する。また、両面プリントモードにおいて、記録シートの第2面に対するトナー像の2次転写処理を行うタイミングでは、2次転写バイアス電源39に対して、第2面転写信号を出力する。
【0048】
2次転写バイアス電源39は、制御部200から出力される第1面転写信号を受信している際には、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力する。これにより、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する場合に比べて、2次転写裏面ローラ33と中間転写ベルト31との間の放電や、中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36との間の放電の発生を抑える。よって、放電に起因する2次転写裏面ローラ33、中間転写ベルト31、及びニップ形成ローラ36の劣化を抑えることができる。
【0049】
また、2次転写バイアス電源39は、制御部200から出力される第2面信号を受信している際には、2次転写バイアスとして、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する。これにより、直流バイアスを出力する場合に比べて、白点やトナー散りの発生を抑えることを可能にする。
【0050】
図4は、2次転写バイアス電源39から出力される重畳バイアスの波形を示すグラフである。同図に示される重畳バイアスは、直流電圧からなるオフセット電圧Voff[V]に対して、所定のピークツウピーク電圧Vppで振れる交流電圧が重畳されたものである。交流電圧は、所定の周期で正弦波状に波打つ特性を有するものであり、山側の箇所の面積と、谷側の箇所の面積とが全く同じであることから、1周期における電位の平均は0[V]である。重畳バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを記録シート表面側から中間転写ベルト側に戻す電界が形成される。プラス極性側のピーク値である戻しピーク値Vrが出現しているときには、かかる電界の強度が最も高まる。一方、重畳バイアスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを中間転写ベルト側から記録シート表面側に送る電界が形成される。プマイナス極性側のピーク値である送りピーク値Vtが出現しているときには、かかる電界の強度が最も高まる。
【0051】
図示のような重畳バイアスの代わりに、交流成分だけからなる交流バイアスを印加しても、2次転写ニップにおいてトナーをベルトと記録紙との間で往復移動させることは可能である。しかし、交流バイアスだけでは、トナーを単に往復移動させるだけで、記録シート上に転移させることはできない。直流成分を含む重畳バイアスを印加してその時間平均値である時間平均電圧Vave[V]をトナーと同じマイナス極性にすることで、トナーを往復移動させながら、相対的にはベルト側から記録シート側に移動させることが可能になる。
【0052】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
[実験1]
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて各種のプリントテストを行った。プロセス線速については、352[mm/s]に設定した。記録シートPとしては、株式会社リコー社製のマイペーパー A4サイズを使用した。実験室の環境を、通常環境(温度23℃、湿度50%)に設定した条件で、両面プリントモードにて、記録シートPの第1面、第2面にそれぞれマゼンタの単色ベタ画像を形成した。このとき、第1面、第2面ともに、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを採用した。直流バイアスについては、−1〜−6[kV]の範囲で−0.1[kV]刻みで徐々に大きくしていき、それぞれの電圧値で両面プリントを実施した。そして、記録シートPの第2面に形成されたマゼンタの単色ベタ画像について、ベタ部周囲のトナー散りと、ベタ部における白点とについて、ランクを評価した。
【0053】
トナー散りのランクについては、次のようにして評価した。即ち、肉眼での観察により、ベタ部周囲におけるトナー散りが全く観察されない場合を、最も成績の良いランク5として評価した。また、目を凝らすとベタ部周囲におけるトナー散りが僅かに確認できるものの、目を凝らさなければほとんど目立たない場合を、ランク5の次に成績の良いランク4として評価した。また、肉眼での観察により、ベタ部周辺に1mm幅ほどのトナー散りが確認できる場合を、ランク4の次に成績の良いランク3として評価した。また、ランク3よりも成績が悪く、且つ、後述するランク1よりも成績が良い場合を、ランク2として評価した。また、肉眼での観察により、ベタ部周辺に2mm幅以上のトナー散りが確認できる場合を、最も成績の悪いランク1として評価した。高画質として許容できるのは、トナー散りでランク4以上である。
【0054】
白点のランクについては、次のようにして評価した。即ち、肉眼での観察により、ベタ部内の白点が全く確認できない場合を、最も成績の良いランク5として評価した。また、肉眼での観察により、僅かに白点が確認されるものの、目を凝らさなければほとんど目立たない場合を、ランク5の次に成績の良いランク4として評価した。また、目を凝らさなくても白点が確認され、高画質として許容できる白点量を僅かに超えている場合を、ランク3として評価した。また、ランク3よりも悪く、且つ後述するランク1より良い場合を、ランク2として評価した。また、一見してベタ部の白点が確認でき、ベタ部内で白点が全体的に密に発生している場合を、最も成績の悪いランク1として評価した。
【0055】
この実験1においては、直流バイアスの値を−4[kV]付近に設定した条件において、第2面のマゼンタの単色ベタ画像で白点及びトナー散りの両方を許容範囲に留めることができた(何れもランク4以上)。
【0056】
[実験2]
実験室の環境を、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%)に設定した他は、実験1と同様の条件で白点及びトナー散りを評価した。この実験2の結果を、図5に示す。図示のように、トナー散りだけに着目すれば、直流バイアスの値(絶対値)を−4.2[kV]以下に設定することで、許容レベルであるランク4以上の成績を得ることができる。また、白点だけに着目すれば、直流バイアスの値(絶対値)を−5.9[kV]以上にすることで、許容レベルであるランク4以上の成績を得ることができる。しかしながら、トナー散り及び白点の両方をランク4以上にする電位値は存在しなかった。低温低湿の環境下では、第1面定着時の記録シートからの水分蒸発により、第2面転写時の記録シートの電気抵抗が高まり過ぎて、記録シートの画像部に転写電流が非常に流れ難くなることから、トナー散りを許容範囲に留め得るレベルまで直流バイアスの値を高めると、電位差が大きくなり過ぎて放電による白点が許容レベルを超えて発生してしまうからである。
【0057】
なお、第1面においては、直流バイアスの値を−4.8〜−6.6[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りの両方を許容範囲に留めることができた(何れもランク4以上)。よって、低温低湿環境下であっても、第1面については、転写バイアスとして直流バイアスを採用しても、白点及びトナー散りの両方を容易に許容範囲に留めることが可能である。
【0058】
[実験3]
プロセス線速については、352[mm/s]に設定した。記録シートPとしては、株式会社リコー社製のマイペーパー A4サイズを使用した。実験室の環境を、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%)に設定した条件で、両面プリントモードにて、記録シートPの第1面、第2面にそれぞれマゼンタの単色ベタ画像を形成した。2次転写バイアス電源39として、ファンクションジェネレーター(横河電機社製 FG300)で生成した波形を、アンプ(Trek社製 High Voltage Amplifir Model10/40)によって1000倍に増幅するものを用いた。そして、記録シートPの第2面にトナー像を転写する際には、転写バイアスとして、周波数f=500[Hz]、ピークツウピーク電圧Vpp=6[kV]の交流電圧に、直流電圧としてのオフセット電圧Voffを重畳した重畳バイアスを採用した。重畳バイアスについては、オフセット電圧Voffの調整により、時間平均電圧Vaveを−0.6〜−4.6[kV]の範囲において−0.4[kV]刻みで徐々に大きくしていき、それぞれの条件で両面プリントを実施した。そして、記録シートPの第2面に形成されたマゼンタの単色ベタ画像について、ベタ部周囲のトナー散りと、ベタ部における白点とについて、ランクを評価した。また、ベタ部の画像濃度(ID)を測定した。
【0059】
IDについては、X−Rite社製のX−Rite938によって測定した。高画質として許容できるIDは、1.4以上である。
【0060】
交流電圧の波形としては、正弦波を採用した。正弦波では、トナー戻し側のデューティ比が50[%]になる。トナー戻し側のデューティ比は、交流電圧のピークツウピークの中心線を境にして、中心線よりもトナー戻し側の波面と中心線とで囲まれる領域の面積の全面積に対する比率である。また、トナー戻し側は、ブラス極性とマイナス極性のうち、トナーを記録シート表面側から中間転写ベルト側に戻す方の極性の側である。プリンタ試験機や実施形態に係るプリンタでは、交流電圧の極性をプラス極性にしたときに、トナーを記録シート表面側から中間転写ベルト側に戻すことになる。よって、交流電圧のピークツウピークの中心線を境にして、中心線よりもプラス極性側に位置する箇所の波面と中心線とで囲まれる領域の面積が、トナー戻し側の面積である。これに対し、交流電圧のピークツウピークの中心線を境にして、中心線よりもマイナス極性側に位置する箇所の波面と中心線とで囲まれる領域の面積が、トナー送り側の面積である。正弦波の場合には、トナー戻し側の面積と、トナー送り側の面積とが同じであるため、トナー戻し側のデューティ比が50[%]になる。
【0061】
実験3で第2面のマゼンタの単色ベタ画像について評価した結果を図6に示す。図示のように、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveを−2.6〜−3.4[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りを何れも許容範囲のランク4以上にするとともに、IDを許容範囲の1.4以上にすることができた。これは次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、2次転写バイアスとして重畳バイアスを用いる場合、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に形成される交番電界により、トナーが2次転写ニップ内でベルト表面と記録シートとの間を往復移動しながら、相対的に記録シート表面上に移動する。その過程で、記録シートPにおける画像部の周囲に飛び散ってしまったトナーが、ベルト表面に引き戻された後、記録シートの画像部に転移することから、画像部周囲のトナー散りが発生し難くなる。更には、記録シートPに付着したトナーがベルト表面に引き戻された際に、ベルト表面上のトナーにぶつかって、そのトナーのベルト表面からの離脱を促すことで、ベルト表面からシート表面へのトナーの移動を促進する。これらの結果、トナー散りや画像濃度不足の発生を、直流バイアスよりも小さな値の直流成分で抑えられることが可能になることから、白点も発生し難くなる。よって、直流バイアスを用いる場合には実現できなかった、トナー散り、画像濃度不足、及び白点の全ての発生を抑えることが可能になったと考えられる。
【0062】
[実験4]
2次転写バイアスとして、実験2のように直流バイアスを用いた場合、図9に示すように、直流バイアスの値(絶対値)をある程度大きくすることで、1.4以上の画像濃度(ID)を実現することができる。また、2次転写バイアスとして、実験3のようの重畳バイアスを用いた場合、図8に示すように、その時間平均電圧Vaveを適切な値に設定することで、1.4以上の画像濃度(ID)を実現することができる。但し、その適切な値は、図示のように、トナー送り側のデューティ比によって変化する。実験3では、上述したように、交流電圧として、トナー送り側のデューティ比が50[%]であるものを用いたが、50[%]以下にした場合、その適正範囲は、図示のように広くなる。そこで、実験3とは異なる前記デューティ比の条件で、同様の実験を行うことにした。
【0063】
実験4においては、重畳バイアスの交流電圧として、ピークツウピーク電圧Vpp=6[kV]、トナー戻し側のデューティ比=40%、周波数f=500[Hz]のものを採用した。この交流電圧の波形は、図9に示すような矩形波である。同図において、オフセット電圧Voffは、交流電圧に重畳される直流電圧である。このオフセット電圧Voffの位置にある横線(点線)が、矩形波のピークツウピークの中心線である。そして、この中心線よりもプラス極性側の波における波面と、中心線とで囲まれる領域の面積が、トナー戻し側の面積である。また、中心線よりもマイナス曲線側の波における波面と、中心線とで囲まれる領域の面積が、トナー送り側の面積である。同図からわかるように、前者の面積は後者の面積よりも小さくなっている。実験4では、前者の面積の両面積に対する割合を40[%]にしている。
【0064】
かかるバイアス条件の他は、実験3と同様の条件にて(環境=10℃、15%)、第2面のマゼンタの単色ベタ画像について、トナー散り及び白点のランクを評価するとともに、IDを測定した。この結果を、図10に示す。図示のように、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveを−2.6〜−3.8[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りを何れも許容範囲のランク4以上にするとともに、IDを許容範囲の1.4以上にすることができた。
【0065】
[実験5]
実験5においては、重畳バイアスの交流電圧として、ピークツウピーク電圧Vpp=6[kV]、トナー戻し側のデューティ比=32%、周波数f=500[Hz]、波形=矩形波であるものを採用した。重畳バイアスについては、オフセット電圧Voffの調整により、時間平均電圧Vaveを−0.6〜−6.6[kV]の範囲において−0.4[kV]刻みで徐々に大きくしていき、それぞれの条件で両面プリントを実施した。かかるバイアス条件の他は、実験4と同様の条件にて(環境=10℃、15%)、第2面のマゼンタの単色ベタ画像について、トナー散り及び白点のランクを評価するとともに、IDを測定した。この結果を、図11に示す。図示のように、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveを−2.6〜−4.2[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りを何れも許容範囲のランク4以上にするとともに、IDを許容範囲の1.4以上にすることができた。
【0066】
[実験6]
実験6においては、重畳バイアスの交流電圧として、ピークツウピーク電圧Vpp=7[kV]、トナー戻し側のデューティ比=16%、周波数f=500[Hz]、波形=矩形波であるものを採用した。重畳バイアスの時間平均電圧については、オフセット電圧Voffの調整によって適宜変化させ、それぞれの条件で両面プリントを実施した。かかるバイアス条件の他は、実験5と同様の条件にて(環境=10℃、15%)、第2面のマゼンタの単色ベタ画像について、トナー散り及び白点のランクを評価するとともに、IDを測定した。この結果を、図12に示す。図示のように、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveを−3.8〜−4.6[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りを何れも許容範囲のランク4以上にするとともに、IDを許容範囲の1.4以上にすることができた。
【0067】
なお、ピークツウピーク電圧Vppを、実験1〜5において6[kV]に設定したのに対し、実験6において7[kV]に設定したのは、次に説明する理由からである。即ち、ピークツウピーク電圧Vppを一定にした条件においては、トナー戻し側のデューティ比を低くするほど、時間平均電圧Vaveをトナー送り側に大きな値にする。このため、基本的には、トナー戻し側のデューティ比を低くするほど、互いに密着しているベルト表面と記録シート表面との間でトナーをベルト側からシート側に移動させる能力を高めて、転写性を高めることができる。但し、かかる効果を得るためには、交番電界によってトナーをベルト表面とシート表面との間で確実に往復移動させることが必須の条件となる。トナーをシート表面からベルト表面に引き戻すことができないと、引き戻したトナーとの衝突により、ベルト表面に付着していたトナーのベルト表面からの離脱を促すという現象が得られなくなる結果、十分な転写性も得られなくなるからである。トナー戻し側のデューティ比を低くすると、トナーをベルト側からシート側に移動させる能力を高める反面、トナーをシート側からベルト側に戻す能力を低くすることから、トナーをシート表面からベルト表面に戻し難くなっていく。実験6では、実験1〜5と同様にピークツウピーク電圧を6[kV]に設定すると、トナーをシート表面からベルト表面に引き戻すことができずに、却って転写性を低下させる結果になってしまった。そこで、ピークツウピーク電圧を7[kV]に増加させて、戻しピーク値Vr[V]をより大きくすることで、短時間のうちにトナーを一気にシート表面からベルト表面に引き戻すようにしたのである。後述する実験7においても、同様の理由により、ピークツウピーク電圧を8[kV]に増大させている。
【0068】
[実験7]
実験7においては、重畳バイアスの交流電圧として、ピークツウピーク電圧Vpp=8[kV]、トナー戻し側のデューティ比=8%、周波数f=500[Hz]、波形=矩形波であるものを採用した。重畳バイアスの時間平均電圧については、オフセット電圧Voffの調整によって適宜変化させ、それぞれの条件で両面プリントを実施した。かかるバイアス条件の他は、実験6と同様の条件にて(環境=10℃、15%)、第2面のマゼンタの単色ベタ画像について、トナー散り及び白点のランクを評価するとともに、IDを測定した。この結果を、図13に示す。図示のように、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveを−3.8〜−4.2[kV]の範囲に設定した条件において、白点及びトナー散りを何れも許容範囲のランク4以上にするとともに、IDを許容範囲の1.4以上にすることができた。
【0069】
なお、トナー戻し側のデューティ比を50[%]よりも高くすると、直流電圧を印加しない場合には、時間平均電圧Vaveをトナー戻し側の極性(本例ではプラス極性)にしてしまうため、トナー像を記録シート表面に転写することができなくなってしまう。直流電圧を印加すれば、時間平均電圧Vaveをトナー送り側の極性にすることは可能であるが、印加前にトナー戻し側の極性にしている分だけ、効率が悪くなってしまう。このため、トナー戻し側のデューティ比を50[%]よりも高くすることは、エネルギー効率の観点から現実的ではない。
【0070】
実験3から実験7までをまとめると、低温低湿環境下(10℃、15%)において、第2面にトナー像を転写する際には、トナー戻し側のデューティ比=8〜50[%]の範囲において、時間平均電圧Vaveの適切範囲が、−2.6〜−4.6[kV]であった。これに対し、低温低湿環境下(10℃、15%)において、第1面にトナー像を転写する際には、実験2で説明したように、直流バイアスの適正範囲が−4.8〜−6.6[kV]であった。この適正範囲は、時間平均電圧Vaveの適正範囲と重ならず、且つ、時間平均電圧Vaveの適正範囲よりも大きな数値である。このことから、第2面にトナー像を転写する際には、重畳バイアスの時間平均電圧Vaveの絶対値を、第1面にトナー像を転写する際の直流バイアスの絶対値よりも小さくすることで、トナー散り及び白点を許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDが得られることがわかった。
【0071】
そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、第2面にトナー像を転写する際の重畳バイアスの時間平均電圧Vaveとして、その絶対値を、第1面転写時の直流バイアスの絶対値よりも小さくしたものを印加する処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成している。
【0072】
なお、実施形態に係るプリンタにおいては、2次転写裏面ローラ33の芯金に対して2次転写バイアスを印加するとともに、ニップ形成ローラ36の芯金を接地している。かかる構成では、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの時間平均電圧Vaveと、2次転写裏面ローラ33〜ニップ形成ローラ36間の電位差の時間平均値である直流成分電位差Eoffとが、互いに同じになる。そして、それらは、重畳バイアスの直流成分であるオフセット電圧Voffと同じ値になる。ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ーラ36の芯金に直流電圧を印加した場合、2次転写裏面ローラ33の芯金に印加する直流電圧と、ニップ形成ローラ36の芯金に印加する直流電圧との重畳値を、オフセット電圧Voffとして取り扱うものとする。つまり、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ーラ36の芯金に直流電圧を印加した場合であっても、直流成分電位差Eoffとオフセット電圧Voffとは同じ値になる。
【0073】
ニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と、2次転写裏面ローラ33等の裏面当接部材との間に、直流成分と交流成分とを含む電位差を発生させる方法としては、次の6通りを例示することができる。
(1)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材をアース接続する。
(2)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(3)ニップ形成部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(4)ニップ形成部材をアース接続し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(5)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(6)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加する。
【0074】
これら6通りのうち、何れを採用してもよい。何れの方式であっても、記録シートの第2面にトナー像を2次転写する際の時間平均電位差Eoff(絶対値)を、第1面にトナー像を転写する際の電位差(直流の電位差の絶対値)よりも小さくすればよい。
【0075】
なお、これまで説明した実験では、重畳バイアスの交流電圧として、波形が正弦波又は矩形波からなるものを用いているが、波形はそれらに限定されるものではない。例えば、図14に示されるように、1周期における山の箇所と谷の箇所とが非対称になるような曲線の波形でもよい。また、図15に示されるような所定の周期で出現する三角波や、図16に示されるような所定の周期で立ち上がりと立ち下がりとを繰り返す台形波でもよい。また、図17に示されるような、所定の周期で立ち上がる台形波と、これとは非対称の形状で立ち下がる台形波との組み合わせでもよい。
【0076】
第2面にトナー像を2次転写する際に、2次転写バイアスとして重畳バイアスを採用すると、1.4以上のIDを実現することが可能になるのは、既に述べたように、次に説明する理由によるものである。即ち、白点を発生させないような比較的小さな値の時間平均電圧Vave(又は時間平均電位差Eoff)であっても、交番電界によってシート表面からベルト表面に戻されたトナーがベルト表面に付着しているトナーにぶつかってそのトナーのベルト表面からの離脱を促すことで、多くのトナーをシート表面に付着させることが可能になるからである。よって、2次転写ニップ内においては、理論的には、最低でもトナーをシート表面とベルト表面との間で2往復させる必要がある。但し、本発明者らの実験によれば、2往復だけでは、ベルト表面に戻ったトナーをベルト表面に付着しているトナーにぶつけてベルト表面から離脱を促すという効果が確実に得られず、効果が得られたときと、得られなかったときとのトナー付着量の際による周期的な濃度ムラが発生した。周期的な濃度ムラを回避するためには、トナーを4往復以上させる必要があった。そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、記録シートの2次転写ニップ通過時間を、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの交流成分の周期の4倍以上に設定している。具体的には、「周波数f>(4/ニップ幅d[mm])×プロセス線速v[mm/s]」という条件を具備させている。
【0077】
実施形態に係るプリンタにおいては、記録シートの第2面にトナー像を2次転写する際の重畳バイアスからなる2次転写バイアスとして、次のようなものを出力する処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成している。即ち、重畳バイアスとして、交流成分のトナー戻し側のデューティ比が50[%]未満であるものを出力する処理である。これは次に説明する理由からである。即ち、交流電圧は、デューティ比=50%のものが最も一般的である。最も一般的なデューティ比=50%の交流電圧を採用した場合、時間平均電圧Vaveは、オフセット電圧Voffと同じ値になる。そして、この場合、交流電圧は、単にトナーをベルト表面とシート表面との間で往復移動させるものであって、トナーをベルト表面側からシート表面側に相対移動させる作用は全く発揮しない。かかる作用は、オフセット電圧Voffだけによって発揮される。これに対し、トナー戻し側のデューティ比が50[%]未満である交流電圧は、トナーを往復移動させる作用の他、トナーをベルト表面側からシート表面側に相対移動させる作用も発揮するようになる。これにより、より小さなオフセット電圧Voffで所望のIDが得られるようになるため、より低エネルギーで所望のIDを得ることが可能になる。
【0078】
また、実施形態に係るプリンタにおいては、記録シートの第2面にトナー像を2次転写する際の重畳バイアスからなる2次転写バイアスとして、次のようなものを出力する処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成している。即ち、重畳バイアスとして、交流成分のトナー戻し側のデューティ比が8[%]以上であるものを出力する処理である。これは次に説明する理由による。即ち、本発明者らの実験によれば、トナー戻し側のデューティ比を8[%]よりも小さくすると、2次転写バイアス電源39から所望の波形を出力することができなくなった。そこで、デューティ比を8[%]以上にすることで、所望の波形を確実に出力するようにしている。
【0079】
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例のプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、各実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第1実施例]
先に示した図3において、制御部200には、I/Oインターフェース201を介して、操作表示部300が接続されている。この操作表示部300は、図示しない液晶ディスプレイや、複数のタッチキーからなる図示しないキー操作部などを有している。そして、液晶ディスプレイに各種の画像や文字情報を表示したり、キー操作部に対するキー操作によってユーザーからの入力情報を受け付けたりする。
【0080】
ユーザーは、操作表示部300のキー操作部に対するキー操作を行ったり、パーソナルコンピュータにインストールされているプリンタユーティリティソフトを操作したりすることで、本プリンタの動作モードについて、省エネモードと高画質モードとを切り換えて設定することができる。省エネモードは、記録シートの第2面にトナー像を2次転写する際の2次転写バイアスとして、第1面転写時と同様に、直流バイアスを採用するモードである。交流電圧を使用しない分、重畳バイアスを用いる場合に比べて電力消費を抑えることができる。一方、高画質モードは、記録シートの第2面にトナー像を2次転写する際の2次転写バイアスとして、第1面転写時とは異なり、重畳バイアスを採用するモードである。それらモードの切り替えは、操作表示部b300に対するキー操作で行うことができる他、パソコンのプリンタユーティリティソフトを操作することでも行うことができる。プリンタユーティリティソフトを操作した場合、パソコンから発信されたその操作情報を制御部200が受信してモードの切り替えを把握する。制御部200は、モードを切り換えた場合には、切り替え後のモードの情報を2次転写バイアス電源39に送る。
【0081】
2次転写バイアス電源39は、第2面にトナー像を2次転写する際の2次転写バイアスとして、直流バイアスを出力するのか、あるいは、重畳バイアスを出力するのかを、ユーザーからの命令であるモード設定情報に基づいて選択する選択処理を実施するように構成されている。かかる構成においては、第2面に転写される画像の高画質化よりも、省エネを希望するユーザーに対しては、省エネ用のプリント動作を提供することができる。
【0082】
[第2実施例]
図3において、制御部200には、I/Oインターフェース201を介して、湿度検知センサ301が接続されている。この湿度検知センサ301は、機内の湿度を検知して、その結果をデジタルデータで制御部200に送信するものである。既に述べたように、環境が常温常湿(温度23℃、湿度50%)ある場合には、第2面転写時において、2次転写バイアスとして直流バイアスを採用しても、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDを得ることが可能である。にもかかわらず、2次転写バイアスとして重畳バイアスを採用すると、2次転写ニップ周囲の部材の劣化を無駄に早めたり、無駄なエネルギー消費を引き起こしたりする。
【0083】
そこで、第2実施例に係るプリンタにおいては、第2面にトナー像を転写する際の2次転写バイアスとして、直流バイアスを出力するのか、あるいは、重畳バイアスを出力するのかを、湿度センサ301による検知結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成している。より詳しくは、湿度センサ301による検知結果が所定の下限湿度を超える場合には、前記2次転写バイアスとして直流バイアスを採用しても、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDを得ることが可能である。そこで、この場合、2次転写バイアス電源39は、2次転写バイアスとして直流バイアスを出力する。一方、湿度センサ301による検知結果が所定の下限湿度以下である場合には、2次転写バイアスとして重畳バイアスを出力する。かかる構成では、直流バイアスからなる2次転写バイアスを用いても、記録シートの第2面において、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDが得られるほど、機内の湿度が低い場合には、2次転写バイアスとして直流バイアスを出力して、省エネルギー化を図るとともに、2次転写ニップ周囲の部材の劣化を抑えることができる。
【0084】
なお、機内の温度と湿度とには相関関係が成立する。よって、湿度センサ301による検知結果に代えて、温度センサによる検知結果に応じて、2次転写バイアスとして直流バイアスを出力するのか、あるいは重畳バイアスを出力するのかを選択させるようにしてもよい。
【0085】
[第3実施例]
図3において、制御部200には、I/Oインターフェース201を介して、シート抵抗測定器302が接続されている。このシート抵抗測定器302は、2次転写ニップに供給される前の記録シートの電気抵抗を測定して、その結果をデジタルデータとして出力するものである。かかるシート抵抗測定器302としては、レジストローラ対よりも上流側で、互いに当接する金属ローラ対と、この金属ローラ対のローラ間に一定の電圧をかけながら両ローラ間に流れる電流量を測定する電流測定手段とを有するものを例示することができる。レジストローラ対に挟み込まれる前の記録シートをそれら金属ローラ間に挟み込んだときに前記両ローラ間に流れる電流に基づいて、記録シートの電気抵抗を測定することが可能である。
【0086】
高湿度環境などにより、記録シートの電気抵抗が比較的低いときには、トナー像を記録シートの第2面に転写するときに、2次転写バイアスとして直流バイアスを採用しても、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDを得ることが可能である。にもかかわらず、2次転写バイアスとして重畳バイアスを採用すると、2次転写ニップ周囲の部材の劣化を無駄に早めたり、無駄なエネルギー消費を引き起こしたりする。
【0087】
そこで、第3実施例に係るプリンタにおいては、第2面にトナー像を転写する際の2次転写バイアスとして、直流バイアスを出力するのか、あるいは、重畳バイアスを出力するのかを、シート抵抗測定器302による測定結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、2次転写バイアス電源39を構成している。より詳しくは、シート抵抗測定器302による検知結果が所定の上限抵抗値を下回る場合には、前記2次転写バイアスとして直流バイアスを採用しても、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDを得ることが可能である。そこで、この場合、2次転写バイアス電源39は、2次転写バイアスとして直流バイアスを出力する。一方、シート抵抗測定器302による検知結果が所定の上限抵抗値以上である場合には、2次転写バイアスとして重畳バイアスを出力する。かかる構成では、直流バイアスからなる2次転写バイアスを用いても、記録シートの第2面において、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、1.4以上のIDが得られるほど、記録シートの電気抵抗が低い場合には、2次転写バイアスとして直流バイアスを出力して、省エネルギー化を図るとともに、2次転写ニップ周囲の部材の劣化を抑えることができる。
【0088】
これまで、中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36との当接によって2次転写ニップを形成する例について説明したが、中間転写ベルト31と、無端状のニップ形成ベルトとの当接によって2次転写ニップを形成してもよい。この場合、中間転写ベルト31のループ内側に配設された2次転写裏面ローラ33の芯金と、ニップ形成ベルトのループ内側でニップ形成ベルトを中間転写ベルト31に向けて押圧する押圧部材たる押圧ローラの芯金との間で、第2面転写時電位差の単位時間あたりにおける平均の絶対値を、第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくするという条件を得ればよい。
【0089】
次に、実施形態に係るプリンタにおける一部の構成を他の構成に変更した各変形例に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るプリンタの構成は実施形態と同様である。
[第1変形例]
図18は、第1変形例に係るプリンタにおける作像ユニット1の一部を示す構成図である。このプリンタは、単色のトナー像を作像するための作像ユニット1を1つだけ備えている単色機である。同図において、像担持体としての感光体2は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。
【0090】
感光体2の周囲には、第1実施形態に係るプリンタと同様の構成の図示しないドラムクリーニング装置、除電装置、帯電装置、現像装置等が配設されている。また、感光体2の下方には、ニップ形成部材としての転写ローラ235が配設されており、図示しない付勢手段によって感光体2に向けて付勢されながら感光体2に当接して転写ニップを形成している。この転写ニップには、記録シートPが送り込まれる。そして、感光体2上のトナー像が転写ニップで記録シートP上に転写される。
【0091】
転写ローラ235としては、回転軸部材の周面上に導電性発泡体からなる導電性発泡層が被覆されたものや、芯金上に導電性弾性層が被覆されたものを例示することができる。
【0092】
転写ニップを通過して第1面にトナー像が形成された記録シートPは、図示しない定着装置を経由して第1面にトナー像が定着せしめられる。そして、必要に応じて、図示しない反転再送装置によって転写ニップに再送されて、第2面にもトナー像が転写及び定着される。
【0093】
転写ローラ235には、転写バイアス電源240によって転写バイアスが印加される。電位差発生手段としての転写バイアス電源240は、実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス電源と同様に、直流電源と交流電源とを有しており、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力したり、直流電圧に交流電圧を重畳せしめた重畳バイアスを出力したりすることができる。
【0094】
制御部200は、両面プリントモードや片面プリントモードにおいて、記録シートの第1面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源240に対して、第1面転写信号を出力する。また、両面プリントモードにおいて、記録シートの第2面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源240に対して、第2面転写信号を出力する。
【0095】
転写バイアス電源240は、制御部200から出力される第1面転写信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力する。これにより、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する場合に比べて、感光体2と転写ローラ235との間の放電の発生を抑える。よって、放電に起因する感光体2や転写ローラ235の劣化を抑えることができる。
【0096】
また、転写バイアス電源240は、制御部200から出力される第2面信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する。これにより、直流バイアスを出力する場合に比べて、白点やトナー散りの発生を抑えることを可能にする。
【0097】
実施形態に係るプリンタでは、2次転写バイアスが印加される2次転写裏面ローラに対してマイナス極性のトナーを静電的に反発させることで、トナー像を2次転写裏面ローラ側から中間転写ベルト側に静電移動させていた。これに対し、第1変形例に係るプリンタでは、転写バイアスが印加される転写ローラ235に対して、感光体2上のマイナス極性のトナーを静電的に引き寄せることで、トナー像を感光体2側から転写ローラ235側に静電移動させる。このため、前述した重畳バイアスとしては、図4に示されるグラフとは、0[V]を軸にして線対称の関係になる波形のものを採用している。かかる重畳バイアスでは、オフセット電圧Voffの極性がプラス極性になる。この重畳バイアスは、単位時間あたりにおける平均の絶対値が、上述した直流電圧だけからなる直流バイアスの絶対値よりも小さい値になっている。
【0098】
[第2変形例]
図19は、第2変形例に係るプリンタにおける作像ユニット1の一部と、紙搬送ベルトユニット210とを示す構成図である。このプリンタは、単色のトナー像を作像するための作像ユニット1を1つだけ備えている単色機である。同図において、像担持体としての感光体2は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。
【0099】
感光体2の周囲には、第1実施形態に係るプリンタと同様の構成の図示しない、ドラムクリーニング装置、除電装置、帯電装置、現像装置等が配設されている。また、感光体2の下方には、紙搬送ベルトユニット210が配設されている。
【0100】
紙搬送ベルトユニット210は、無端状の紙搬送ベルト211を、そのループ内側に配設された駆動ローラ212と従動ローラ213とによって張架しながら、駆動ローラ212の回転駆動に伴って図中反時計回りに無端移動せしめる。ニップ形成部材としての紙搬送ベルト211は、感光体2に当接して転写ニップを形成している。転写ニップの付近では、紙搬送ベルト211のループ内側に配設された転写ブラシ215や転写ローラ214がそれぞれ紙搬送ベルト211の裏面に当接している。それら転写ブラシ215や転写ローラ214には、電位差発生手段としての転写バイアス電源240によって転写バイアスが印加される。
【0101】
感光体2と紙搬送ベルト211との当接による転写ニップには、レジストローラ対102によって記録シートが送り込まれる。そして、感光体2上のトナー像が転写ニップで記録シートP上に転写される。
【0102】
転写ローラ214としては、回転軸部材の周面上に導電性発泡体からなる導電性発泡層が被覆されたものや、芯金上に導電性弾性層が被覆されたものを例示することができる。また、転写ブラシ215としては、導電性支持体の表面上に複数の導電性繊維の直毛によるブラシ部を設けたものを例示することができる。
【0103】
転写ニップを通過して第1面にトナー像が形成された記録シートPは、図示しない定着装置を経由して第1面にトナー像が定着せしめられる。そして、必要に応じて、図示しない反転再送装置によって転写ニップに再送されて、第2面にもトナー像が転写及び定着される。
【0104】
同図では、紙搬送ベルト211の周方向における全域のうち、転写ニップのベルト移動方向の中心よりも下流側にずれた位置であって、且つ感光体2との間にベルトを挟み込む位置に、転写ブラシ215を当接させているが、転写ニップの中心に当接させてもよい。また、転写ブラシ215を転写ローラ214よりもベルト移動方向の上流側に配設しているが、両者の位置関係を逆にしてもよい。また、転写ブラシ215と転写ローラ214とのうち、何れか一方だけを配設してもよい。
【0105】
転写ブラシ215や転写ローラ214には、転写バイアス電源240によって転写バイアスが印加される。電位差発生手段としての転写バイアス電源240は、実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス電源と同様に、直流電源と交流電源とを有しており、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力したり、直流電圧に交流電圧を重畳せしめた重畳バイアスを出力したりすることができる。
【0106】
制御部200は、両面プリントモードや片面プリントモードにおいて、記録シートの第1面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源240に対して、第1面転写信号を出力する。また、両面プリントモードにおいて、記録シートの第2面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源240に対して、第2面転写信号を出力する。
【0107】
転写バイアス電源240は、制御部200から出力される第1面転写信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力する。これにより、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する場合に比べて、感光体2と転写ローラ235との間の放電の発生を抑える。よって、放電に起因する感光体2や転写ローラ235の劣化を抑えることができる。
【0108】
また、転写バイアス電源240は、制御部200から出力される第2面信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する。これにより、直流バイアスを出力する場合に比べて、白点やトナー散りの発生を抑えることを可能にする。
【0109】
第2変形例に係るプリンタでは、転写バイアスが印加される転写ローラ235に対して、感光体2上のマイナス極性のトナーを静電的に引き寄せることで、トナー像を感光体2側から転写ローラ235側に静電移動させる。このため、前述した重畳バイアスとしては、第1変形例に係るプリンタと同様の波形のものを採用している。この重畳バイアスは、単位時間あたりにおける平均の絶対値が、上述した直流電圧だけからなる直流バイアスの絶対値よりも小さい値になっている。
【0110】
[第3変形例]
図20は、第3変形例に係るプリンタにおける各色の作像ユニットの一部と、転写ユニット300とを示す構成図である。同図では、各色について、作像ユニットとして、感光体(2Y,M,C,K)だけを示しているが、感光体の周りには、図2で示されている作像ユニットと同様に、ドラムクリーニング装置、除電装置、帯電装置K、現像装置等が配設されている。
【0111】
各色の感光体2Y,M,C,Kの下方には、転写ユニット300が配設されている。この転写ユニット300は、無端状の転写搬送ベルト301を、そのループ内側に配設された、4つの転写ローラ302Y,M,C,K、分離ローラ307、駆動ローラ303、第1従動ローラ304、第2従動ローラ305、入口ローラ306などによって張架している。そして、転写搬送ベルト301を駆動ローラ303の回転駆動に伴って図中反時計回り方向に無端移動させる。
【0112】
転写ローラ302Y,M,C,Kは、感光体2Y,M,C,Kとの間に、転写搬送ベルト301を挟み込んでいる。これにより、ニップ形成部材としての転写搬送ベルト301のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接して、Y,M,C,K用の転写ニップを形成している。
【0113】
転写搬送ベルト301のループの外では、紙吸着ローラ308が、転写搬送ベルト301における入口ローラ306に対する掛け回し箇所に当接して紙吸着ニップを形成している。また、ベルトクリーニング装置311が、転写搬送ベルト301における駆動ローラ303に対する掛け回し箇所に当接してクリーニングニップを形成している。
【0114】
転写ローラ302Y,M,C,Kとしては、回転軸部材の周面上に導電性発泡体からなる導電性発泡層が被覆されたものや、芯金上に導電性弾性層が被覆されたものを例示することができる。転写ローラ302Y,M,C,Kには、転写バイアス電源310Y,M,C,Kによって転写バイアスが印加されている。これにより、転写ローラ302Y,M,C,Kと、感光体2Y,M,C,Kにおける静電潜像との間に、トナーを感光体側から転写ローラ側に静電移動させる転写電界が形成される。
【0115】
また、紙吸着ローラ308には、図示しない吸着バイアス電源により、紙吸着バイアスが印加される。この紙吸着ローラ308の付近には、レジストローラ対102が配設されており、図示しない記録シートを所定のタイミングで紙吸着ニップに向けて送り出す。紙吸着ニップに挟み込まれた記録シートは、静電気力によって転写搬送ベルト301のおもて面に吸着される。そして、転写搬送ベルト301の無端移動に伴って、Y,M,C,K用の転写ニップを順次通過する。これにより、記録シートの第1面に4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0116】
Y,M,C,K用の転写ニップのうち、転写工程が最後になるK用の転写ニップを通過した記録シートは、転写搬送ベルト301の無端移動に伴って、分離ローラ307との対向位置にさしかかる。この対向位置では、転写搬送ベルト301が大きな巻き付き角で分離ローラ307に巻き付いているため、移動方向を急転換させる。転写搬送ベルト301の表面に静電吸着された記録シートは、その急転換に追従することができず、ベルト表面から曲率分離される。
【0117】
このようにして転写搬送ベルト301から分離された記録シートは、図示しない定着装置を経由して第1面にトナー像が定着せしめられる。そして、必要に応じて、図示しない反転再送装置によってレジストローラ対102に再送されて、第2面にも4色重ね合わせトナー像が転写及び定着される。
【0118】
電位差発生手段としての転写バイアス電源310Y,M,C,Kは、それぞれ、実施形態に係るプリンタの2次転写バイアス電源と同様に、直流電源と交流電源とを有しており、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力したり、直流電圧に交流電圧を重畳せしめた重畳バイアスを出力したりすることができる。
【0119】
制御部200は、両面プリントモードや片面プリントモードにおいて、記録シートの第1面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源310Y,M,C,Kに対して、それぞれ第1面転写信号を出力する。また、両面プリントモードにおいて、記録シートの第2面に対するトナー像の転写処理を行うタイミングでは、転写バイアス電源310Y,M,C,Kに対して、それぞれ第2面転写信号を出力する。
【0120】
転写バイアス電源310Y,M,C,Kは、制御部200から出力される第1面転写信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力する。これにより、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する場合に比べて、感光体2Y,M,C,Kと、転写搬送ベルト301との間の放電の発生を抑える。よって、放電に起因する感光体2Y,M,C,Kや転写搬送ベルト301の劣化を抑えることができる。
【0121】
また、転写バイアス電源310Y,M,C,Kは、制御部200から出力される第2面信号を受信している際には、転写バイアスとして、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する。これにより、直流バイアスを出力する場合に比べて、白点やトナー散りの発生を抑えることを可能にする。
【0122】
第3変形例に係るプリンタにおいても、転写バイアスが印加される転写ローラ302Y,M,C,Kに対して、感光体2Y,M,C,K上のマイナス極性のトナーを静電的に引き寄せることで、トナー像を感光体2Y,M,C,K側から転写ローラ302Y,M,C,K側に静電移動させる。このため、前述した重畳バイアスとしては、図4に示されるグラフとは、0[V]を軸にして線対称の関係になる波形のものを採用している。この重畳バイアスは、単位時間あたりにおける平均の絶対値が、上述した直流電圧だけからなる直流バイアスの絶対値よりも小さい値になっている。
【0123】
[第4変形例]
図21は、第4変形例に係るプリンタの要部を示す要部構成図である。同図において、K用の作像ユニット1Kは、感光体2Kの周りに、除電ランプ14K、ドラムクリーニング装置3K、帯電装置6K、潜像書込ユニット15K、現像装置8Kなどを有している。潜像書込ユニット15Kは、LEDアレイを用いて、感光体2Kの表面に静電潜像を光書込するものである。Y,M,C用の作像ユニット1Y,M,Cも、K用の作像ユニット1Kと同様の構成になっている。
【0124】
転写ユニット30の中間転写ベルト31は、図中時計回り方向に無端移動せしめられながら、Y,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。これにより、中間転写ベルト31のおもて面に4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0125】
転写ユニット30の下方には、無端状の紙搬送ベルト401を無端移動させる紙搬送ベルトユニット400が配設されている。紙搬送ベルト401は、そのループ内側に配設された駆動ローラ402と、2次転写押圧ローラ403とによって張架された状態で、駆動ローラ402の回転駆動に伴って、図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。紙搬送ベルトユニット400は、紙搬送ベルト401の周方向における全域のうち、2次転写押圧ローラ403に対する掛け回し箇所を、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、2次転写裏面ローラ33に対する掛け回し箇所に当接させている。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成部材たる紙搬送ベルト401のおもて面との当接による2次転写ニップが形成されている。
【0126】
2次転写裏面ローラ33には、実施形態に係るプリンタと同様の構成の2次転写バイアス電源39により、2次転写バイスが印加される。これに対し、紙搬送ベルトユニット400の2次転写押圧ローラ403は接地されている。これにより、2次転写ニップやその周辺においては、2次転写裏面ローラ33と2次転写押圧ローラ403との間に2次転写電界が形成されている。
【0127】
レジストローラ対102から2次転写ニップに向けて送り出された記録シートPの第1面には、中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像が2次転写される。その後、記録シートPは、紙搬送ベルト401のおもて面に吸着された状態で、紙搬送ベルト401の無端移動に伴って2次転写ニップを通過する。そして、紙搬送ベルト401のループ内側に配設された駆動ローラ402との対向位置にさしかかる。この対向位置では、紙搬送ベルト401が大きな巻き付き角で駆動ローラ402に巻き付いているため、移動方向を急転換させる。紙搬送ベルト401の表面に静電吸着された記録シートPは、その急転換に追従することができず、ベルト表面から曲率分離される。
【0128】
このようにして紙搬送ベルト401から分離された記録シートPは、図示しない定着装置を経由して第1面にトナー像が定着せしめられる。そして、必要に応じて、図示しない反転再送装置によってレジストローラ対102に再送されて、第2面にも4色重ね合わせトナー像が転写及び定着される。
【0129】
2次転写バイアス電源39は、実施形態に係るプリンタと同様に、制御部200から出力される第1面転写信号を受信している際には、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなる直流バイアスを出力する。また、制御部200から出力される第2面信号を受信している際には、2次転写バイアスとして、直流電圧に対して交流電圧を重畳した重畳バイアスを出力する。この重畳バイアスは、単位時間あたりにおける平均の絶対値が、上述した直流電圧だけからなる直流バイアスの絶対値よりも小さい値になっている。
【0130】
なお、2次転写裏面ローラ33を接地して、2次転写押圧ローラ403に対して2次転写バイアスを印加するようにしてもよい。この場合、既に説明したように、重畳バイアスとしては、図4に示されるグラフとは、0[V]を軸にして線対称の関係になる波形のものを採用すればよい。
【0131】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aにおいては、表面にトナー像を担持する中間転写ベルト31等の像担持体と、前記表面にトナー像を形成する例えば作像ユニットや転写ユニットなどからなる像形成手段と、前記表面に当接して転写ニップを形成するニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と、2次転写バイアス電源39等の電位差発生手段によって前記像担持体と前記ニップ形成部材との間に電位差を発生させた状態で、前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに対して前記像担持体の表面上のトナー像を転写する転写ユニット30等の転写手段と、前記転写ニップを通過した後の記録シートに対してトナー像の定着処理を施す定着装置90等の定着手段と、前記転写ニップ及び前記定着手段を順次通過したことにより、第1面及び第2面のうち、前記第1面だけにトナー像が転写及び定着された記録シートを、面の向きを反転せしめながら前記転写手段に向けて再送する反転再搬送装置105等の再送手段とを備え、前記電位差発生手段が、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第1面に転写する際の前記電位差である第1面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させる一方で、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第2面に転写する際の前記電位差である第2面転写時電位差として、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる処理を実施するものである画像形成装置において、前記第2面転写時電位差の単位時間あたりにおける平均の絶対値を、前記第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくする処理を実施するように、前記電位差発生手段を構成する。かかる構成では、第2面転写時電位差の単位時間あたりにおける平均の絶対値を、直流成分だけからなる第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくすることで、白点、トナー散り、及び画像濃度不足の全ての発生を従来よりも確実に抑えることができる。
【0132】
[態様B]
態様Bにおいては、重畳バイアスなどの前記第2面転写時電位差として、交流成分の周波数f[Hz]と、転写ニップにおける記録シート移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前記像担持体の表面移動速度v[mm/s]とについて「f>(4/d)×v」という関係を具備するものを発生させる処理を実施するように、2次転写バイアス電源39等の電位差発生手段を構成する。かかる構成では、既に説明したように、転写ニップ内のシート表面と像担持体表面との間のトナーの往復移動回数が不足することによる周期的な濃度ムラの発生を回避することができる。
【0133】
[態様C]
態様Cにおいては、重畳バイアス等の第2面転写時電位差として、交流成分のトナー戻し側のデューティ比が50[%]未満であるものを発生させる処理を実施するように、2次転写バイアス電源39等の電位差発生手段を構成する。かかる構成では、既に説明したように、デューティ比が50[%]以上であるものを発生させる場合に比べて、直流成分の絶対値をより小さくして所望の画像濃度が得られるようになるため、より低エネルギーで所望の画像濃度を得ることができる。
【0134】
[態様D]
態様Dにおいては、第2面転写時電位差として、交流成分のトナー戻し側のデューティ比が、8[%]以上であるものを発生させる処理を実施するように、2次転写バイアス電源39等の電位差発生手段を構成する。かかる構成では、既に説明したように、デューティ比を8[%]以上にすることで、所望の波形の電位差を確実に発生させることができる。
【0135】
[態様E]
態様Eにおいては、像担持体として、無端状の中間転写ベルトを用いるとともに、前記中間転写ベルトの裏面に当接しながら、前記中間転写ベルトを介してニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と対向する2次転写裏面ローラ33等の対向部材と、前記ニップ形成部材とのうち、何れか一方に印加するための転写バイアスを出力することで電位差を発生させる処理を実施するように、2次転写バイアス電源39等の前記電位差発生手段を構成する。かかる構成では、転写バイアスを出力することで、ニップ形成部材と対向部材との間に、トナー像転写用の電位差を発生させることができる。
【0136】
[態様F]
態様Fにおいては、2次転写バイアス等の転写バイアスを2次転写裏面ローラ33等の対向部材とニップ形成ローラ36等のニップ形成部材とのうち、対向部材だけに印加する構成を採用する。かかる構成では、記録シートに直接接触するニップ形成部材に転写バイアスを印加する場合に比べて、記録シートの電気抵抗の変動による転写電流量の変動を小さくして、転写性を安定させることができる。
【0137】
[態様G]
態様Gにおいては、2次転写バイアスなどの第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、ユーザーからの命令に基づいて選択する選択処理を実施するように、2次転写バイアス電源39などの電位差発生手段を構成する。かかる構成においては、第1実施例に係るプリンタと同様に、第2面に転写される画像の高画質化よりも、省エネを希望するユーザーに対しては、省エネ用のプリント動作を提供することができる。
【0138】
[態様H]
態様Hにおいては、湿度センサ301などの環境を検知する環境検知手段を設けるとともに、2次転写バイアスなどの第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、環境検知手段による検知結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、2次転写バイアス電源39などの電位差発生手段を構成する。かかる構成においては、第2実施例に係るプリンタと同様に、直流成分だけからなる第2面転写時電位差を採用しても、記録シートの第2面において、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、所望の画像濃度が得られるほど、機内の湿度が低い場合には、第2面転写時電位差として直流成分だけからなるものを出力して、省エネルギー化を図るとともに、2次転写関連の部材の劣化を抑えることができる。
【0139】
[態様I]
態様Iにおいては、シート抵抗測定器302などの記録シートの電気抵抗を検知する抵抗検知手段を設けるとともに、第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、抵抗検知手段による検知結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、2次転写バイアス電源39などの電位差発生手段を構成する。かかる構成においては、第3実施例に係るプリンタと同様に、直流成分だけからなる第2面転写時電位差を採用しても、記録シートの第2面において、白点やトナー散りを許容レベルに留めつつ、所望の画像濃度が得られるほど、記録シートの電気抵抗が低い場合には、第2面転写時電位差として直流成分だけからなるものを出力して、省エネルギー化を図るとともに、2次転写関連の部材の劣化を抑えることができる。
【符号の説明】
【0140】
1Y,M,C,K:作像ユニット(像形成手段の一部)
2Y,M,C,K:感光体(潜像担持体)
30:転写ユニット(像形成手段の一部、転写手段の一部)
31:中間転写ベルト(像担持体)
33:2次転写裏面ローラ(裏面当接部材)
36:ニップ形成ローラ(ニップ形成部材)
39:2次転写バイアス電源(電位差発生手段)
80:光書込ユニット(像形成手段の一部)
90:定着装置(定着手段)
104:切換爪(再送手段の一部)
105:反転再搬送装置(再送手段の一部)
200:制御部(像形成手段の一部、転写手段の一部、再送手段の一部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0141】
【特許文献1】特開2008−58585号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にトナー像を担持する像担持体と、
前記表面にトナー像を形成する像形成手段と、
前記表面に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材と、
電位差発生手段によって前記像担持体と前記ニップ形成部材との間に電位差を発生させた状態で、前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに対して前記像担持体の表面上のトナー像を転写する転写手段と、
前記転写ニップを通過した後の記録シートに対してトナー像の定着処理を施す定着手段と、
前記転写ニップ及び前記定着手段を順次通過したことにより、第1面及び第2面のうち、前記第1面だけにトナー像が転写及び定着された記録シートを、面の向きを反転せしめながら前記転写手段に向けて再送する再送手段とを備え、
前記電位差発生手段が、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第1面に転写する際の前記電位差である第1面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させる一方で、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第2面に転写する際の前記電位差である第2面転写時電位差として、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる処理を実施するものである画像形成装置であって、
前記電位差発生手段が、前記第2面転写時電位差として、その単位時間あたりにおける平均の絶対値を、前記第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくしたものを発生させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置であって、
前記電位差発生手段が、前記第2面転写時電位差として、前記交流成分の周波数f[Hz]と、前記転写ニップにおける記録シート移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前記像担持体の表面移動速度v[mm/s]とについて「f>(4/d)×v」という関係を具備するものを発生させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置であって、
前記電位差発生手段は、前記第2面転写時電位差として、前記交流成分のトナー戻し側のデューティ比が50[%]未満であるものを発生させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項4の画像形成装置であって、
前記電位差発生手段は、前記第2面転写時電位差として、前記交流成分のトナー戻し側のデューティ比が、8[%]以上であるものを発生させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの画像形成装置であって、
前記像担持体として、無端状の中間転写ベルトを備えるとともに、
前記電位差発生手段が、前記中間転写ベルトの裏面に当接しながら、前記中間転写ベルトを介して前記ニップ形成部材と対向する対向部材と、前記ニップ形成部材とのうち、何れか一方に印加するための転写バイアスを出力することで前記電位差を発生させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
前記転写バイアスを前記対向部材と前記ニップ形成部材とのうち、前記対向部材だけに印加する構成を採用したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
前記第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、ユーザーからの命令に基づいて選択する選択処理を実施するように、前記電位差発生手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
環境を検知する環境検知手段を設けるとともに、
前記第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、前記環境検知手段による検知結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、前記電位差発生手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
前記記録シートの電気抵抗を検知する抵抗検知手段を設けるとともに、
前記第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、前記抵抗検知手段による検知結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、前記電位差発生手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
表面にトナー像を担持する像担持体と、
前記表面にトナー像を形成する像形成手段と、
前記表面に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材と、
電位差発生手段によって前記像担持体と前記ニップ形成部材との間に電位差を発生させた状態で、前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに対して前記像担持体の表面上のトナー像を転写する転写手段と、
前記転写ニップを通過した後の記録シートに対してトナー像の定着処理を施す定着手段と、
前記転写ニップ及び前記定着手段を順次通過したことにより、第1面及び第2面のうち、前記第1面だけにトナー像が転写及び定着された記録シートを、面の向きを反転せしめながら前記転写手段に向けて再送する再送手段とを備え、
前記電位差発生手段が、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第1面に転写する際の前記電位差である第1面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させる一方で、前記像担持体の表面上のトナー像を前記第2面に転写する際の前記電位差である第2面転写時電位差として、直流成分及び交流成分を含むものを発生させる処理を実施するものである画像形成装置であって、
前記電位差発生手段が、前記第2面転写時電位差として、その単位時間あたりにおける平均の絶対値を、前記第1面転写時電位差の絶対値よりも小さくしたものを発生させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置であって、
前記電位差発生手段が、前記第2面転写時電位差として、前記交流成分の周波数f[Hz]と、前記転写ニップにおける記録シート移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、前記像担持体の表面移動速度v[mm/s]とについて「f>(4/d)×v」という関係を具備するものを発生させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置であって、
前記電位差発生手段は、前記第2面転写時電位差として、前記交流成分のトナー戻し側のデューティ比が50[%]未満であるものを発生させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項4の画像形成装置であって、
前記電位差発生手段は、前記第2面転写時電位差として、前記交流成分のトナー戻し側のデューティ比が、8[%]以上であるものを発生させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの画像形成装置であって、
前記像担持体として、無端状の中間転写ベルトを備えるとともに、
前記電位差発生手段が、前記中間転写ベルトの裏面に当接しながら、前記中間転写ベルトを介して前記ニップ形成部材と対向する対向部材と、前記ニップ形成部材とのうち、何れか一方に印加するための転写バイアスを出力することで前記電位差を発生させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
前記転写バイアスを前記対向部材と前記ニップ形成部材とのうち、前記対向部材だけに印加する構成を採用したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
前記第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、ユーザーからの命令に基づいて選択する選択処理を実施するように、前記電位差発生手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
環境を検知する環境検知手段を設けるとともに、
前記第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、前記環境検知手段による検知結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、前記電位差発生手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至6の何れかの画像形成装置において、
前記記録シートの電気抵抗を検知する抵抗検知手段を設けるとともに、
前記第2面転写時電位差として、直流成分だけを含むものを発生させるのか、あるいは、直流成分及び交流成分を含むものを発生させるのかを、前記抵抗検知手段による検知結果に基づいて選択する選択処理を実施するように、前記電位差発生手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−29798(P2013−29798A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48153(P2012−48153)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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