説明

画像形成装置

【課題】上カバーを開いた時の画像読取部の本体設置面積からの飛び出し距離を短縮することで画像形成装置の設置場所の自由度を上げる。
【解決手段】本発明の画像形成装置は、画像を記録紙に出力する画像形成部100と、画像形成部の上部を開閉するように、画像形成部の一端側に配置された支点を中心として回動可能に支持された上カバー10と、上カバー10の上部に所定距離を空けて配置された画像読取部200と、画像読取部200を上カバー10に対し上下方向にスライド可能に支持する支持手段(支持部材210)と、上カバー10の回動と画像読取部200のスライドを連動させる連動手段(引張バネ12)と、を備え、上カバー10を開放する動作に連動して、画像読取部200を上カバー10に対して接近方向にスライドさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタや複写機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の上部に画像読取装置(スキャナ装置)を配置した構成が知られている。このような構成において、消耗品交換等のメンテナンスのために画像形成装置の上部に設けられた上カバーを開く必要がある場合、当該上カバーがその上方の画像読取装置と干渉しないように、画像形成部と画像読取部の距離を大きくとる方法が採用されている。
【0003】
しかし、上カバーのサイズが大きくなると画像形成部と画像読取部間の距離をさらに大きくとる必要があり、装置本体の高さが大きくなるという課題があった。この結果、必然的に画像読取部の原稿面が高くなり、原稿セット時の操作性が悪化するという課題もあった。そこで、このような課題を解決する先行技術として、以下の特許文献1〜3の画像形成装置が知られている。
【0004】
特許文献1(特開2004−354832号公報)の画像形成装置は、画像形成部の上部に配置された画像読取部を水平方向にスライドさせて退避させることで、画像形成部の上部を覆う上カバーを開いて内部の消耗品交換等のメンテナンスを行うようにしている。
【0005】
特許文献2(特開2000−039827号公報)の画像形成装置は、画像読取部を画像形成装置本体に対して上方に回動させて開放できるようにすると共に、画像形成装置の外装を構成する少なくとも一つの側壁を側方に回動させて開放できるようにしている。そして、前記側壁の開放に連動させて画像読取部を開放することで大きな開放スペースを形成し、この開放スペースを通じて画像形成装置内の消耗品交換等のメンテナンスを行うようにしている。
【0006】
特許文献3(特開2008−139763号公報)の画像形成装置は、画像読取部が画像形成部の上カバーと一体で構成され、上カバーを開くときに画像読取部も一緒に回動させるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1〜3に係る技術はそれぞれ以下の問題点を有する。
【0008】
特許文献1の画像形成装置は、画像読取部を画像形成部に対し前後方向に水平にスライドさせて退避させるため、本体設置領域から画像読取部が飛び出してしまう。したがって、本体設置時には画像読取部が飛び出すのに必要な空間を確保する必要があり、設置場所に制約が出てしまう。
【0009】
特許文献2の画像形成装置は、画像読取部を上方に回動させて開放するだけでなく、側壁を側方に開放させて画像読取部を開放する構造のため、特許文献1と同様に設置場所の制約を受ける。
【0010】
特許文献3の画像形成装置は、画像読取部が画像形成部の上カバーと一体で構成されているため、カバーの開操作で画像読取部も同時に退避するので操作性がよい。しかし、上カバーを開いた状態で上側の画像読取部が本体設置面積から飛び出してしまうため、本体設置時に画像読取部が飛び出すのに必要な空間を確保する必要があり、設置場所に制約が出る。特に、上カバーに排紙された用紙をスタックしておく必要があり、そのスタック量を多く確保しようとすると上カバーと画像読取部の距離を大きくとる必要が生じ、前記の本体設置面よりの飛び出し量が増えるという課題がある。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、画像形成部の上カバーと画像読取部を一体化した構造において、画像読取部の原稿面に対する原稿セットの容易性を維持しつつ、上カバーを開いた時の画像読取部の本体設置面積からの飛び出し距離を短縮することで画像形成装置の設置場所の自由度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、以下の発明、すなわち、画像を記録紙に出力する画像形成部と、前記画像形成部の上部を開閉するように、前記画像形成部の一端側に配置された支点を中心として回動可能に支持された上カバーと、前記上カバーの上部に所定距離を空けて配置された画像読取部と、前記画像読取部を前記上カバーに対し上下方向にスライド可能に支持する支持手段と、前記上カバーの回動と前記画像読取部のスライドを連動させる連動手段と、を備え、前記上カバーを開放する動作に連動して、前記画像読取部を前記上カバーに対して接近方向にスライドさせることを特徴とする画像形成装置により解決される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上カバーを開放する動作に連動して画像読取部を上カバーに対して接近方向にスライドさせるので、画像読取部が本体設置面積外に回り込む量を少なくすることができ、これにより画像形成装置の設置場所の自由度を向上させることができる。
また、上カバーに対する画像読取部の重心の偏りが少なくなるため、上カバーの開閉操作性を向上させることができ、転倒リスクも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成部100と画像読取部200から構成された画像形成装置の外観概略図である。
【図2a】本発明の第1実施形態に係る、上カバーを閉じた状態の画像形成部100の断面図である。
【図2b】本発明の第1実施形態に係る、上カバーを開いた状態の画像形成部100の断面図である。
【図3a】画像形成部と画像読取部から構成される画像形成装置の比較例1である。
【図3b】画像形成部と画像読取部から構成される画像形成装置の比較例2である。
【図3c】画像形成部と画像読取部から構成される画像形成装置の比較例3である。
【図3d】画像形成部と画像読取部から構成される画像形成装置の比較例4である。
【図4a】本発明の第1実施形態に係る、上カバーを閉じた状態の画像形成装置の概略断面図である。
【図4b】本発明の第1実施形態に係る、上カバーを開いた状態の画像形成装置の概略断面図である。
【図4c】本発明の第1実施形態に係る、上カバーを開いた状態で用紙を載せた画像形成装置の概略断面図である。
【図4d】本発明の変形実施形態に係る、上カバーを開いた状態の画像形成装置の概略断面図である。
【図4e】図4dの実施形態において当接部材を取り外して上カバーを閉じた輸送時の画像形成装置の概略断面図である。
【図4f】本発明の変形実施形態に係る、上カバーを開いた状態の画像形成装置の概略断面図である。
【図5a】本発明の第2実施形態に係る、上カバーを閉じた状態の画像形成装置の概略断面図である。
【図5b】本発明の第2実施形態に係る、上カバーを開いた状態の画像形成装置の概略断面図である。
【図6a】本発明の第3実施形態に係る、上カバーを閉じた状態の画像形成装置の概略断面図である。
【図6b】本発明の第3実施形態に係る、上カバーを開いた状態の画像形成装置の概略断面図である。
【図7a】本発明の変形実施形態に係る、当接部材を取り付けて上カバーを閉じた状態の画像形成装置の概略断面図である。
【図7b】本発明の変形実施形態に係る、当接部材を取り外して上カバーを閉じた輸送時の画像形成装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の第1〜第3実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図2bは本発明の各実施形態で共通の、画像形成部100と画像読取部200から構成された画像形成装置の外観概略図である。画像形成部100の上部に画像読取部200が配置され、画像形成部100の上面部101に記録紙が排出されるよう、画像形成部100と画像読取部200の間に所定の大きさの空間が設けられている。
【0016】
図2aと図2bは、本実施形態に係る画像形成部100の断面図を、上カバー10を閉じた状態と開いた状態で示したものである。上カバー10は後述の書込み装置1を収容し、その上部に所定距離を空けて画像読取部200が配置されている。画像読取部200は、原稿台201と、原稿台201にセットされた原稿を読み取って書込み装置1により書込みながら当該原稿を原稿台201に押し付ける圧板202を備え、この圧板202は矢印A方向に開放可能とされている。
【0017】
画像形成部100は、書込み装置1、現像ユニット2、中間転写ユニット3、中間転写ユニット清掃部4、廃トナー回収箱5、給紙カセット6、二次転写部7、定着ユニット8、排紙部9などを備え、一般的な電子写真プロセスに従ってフルカラー画像を形成する。書込み装置1は上カバー10の内部に収納され、上カバー10とともに図2bの矢印B方向に開放し、この開放によって現像ユニット2を上方に取り出すことが可能である。また、二次転写部7は前カバー19とともに図2bの矢印C方向に開放し、容易に紙詰まりの処理および廃トナー回収箱5の取出しが可能である。
【0018】
図3a〜3dは、画像形成部100a〜100dと画像読取部200a〜200dから構成される画像形成装置の比較例として、現像ユニット2等の消耗品交換時に、画像形成部100a〜100dの上部に設けられた上カバー10a〜10dを開ける構成に従来技術を適用した場合について説明するものである。
【0019】
図3aは、上カバー10aを矢印方向に開くときに上カバー10aが画像読取部200aの底面部に当たらないように、画像形成部100aと画像読取部200aの距離L1を大きくとる場合の比較例1である。この比較例1では、上カバー10aのサイズと同等以上の空間が画像形成部100aと画像読取部200aの間に必要とされるため、装置本体の高さが大きくなるという課題がある。また、必然的に画像読取部200aの原稿をセットする読取面が高くなり、原稿セット時の視認性や操作性が悪化するという課題がある。
【0020】
図3bは、上カバー10bを矢印方向に開くときに画像読取部200bが水平方向にスライドして退避する比較例2である。この比較例2では、図3aで示した装置本体の高さが高くなる問題は回避できる。しかし、本体設置領域より画像読取部200bが飛び出してしまうため、本体設置時には画像読取部200bが飛び出すのに必要な空間L2を確保する必要があり、設置場所に制約が出るという課題がある。また、上カバー10bを開けるときには画像読取部200bをスライドさせた後に上カバー10bを操作する必要があるため、操作が二段階になり操作性が悪いという課題がある。
【0021】
図3cは、上カバー10cと画像読取部200cがそれぞれ本体に対して回動可能に保持され、上カバー10cを矢印方向に開くときは、画像読取部200cも同じように矢印方向に回動させて退避させる比較例3である。この比較例3では、図3bで示した本体設置面積より画像読取部200cが飛び出す空間の確保は不要になり、設置場所の制約はない。しかし、上カバー10cを開けるときには画像読取部200cを回動させた後に上カバー10cを操作する必要があるため、操作が二段階になり操作性が悪いという課題がある。
【0022】
図3dは、上カバー10dと画像読取部200dが一体で構成され、上カバー10dを矢印方向に開く時には画像読取部200dも一緒に回動させる比較例4である。この比較例4では、図3bまたは図3cで示した二段階操作が不要で操作性を改善できる。しかし、本体設置領域より外側に画像読取部200dが飛び出してしまうため、本体設置時には画像読取部200dが飛び出すのに必要な空間L3を確保する必要があり、図3bで示した例と同様に設置場所に制約が出るという課題がある。また、上カバー10dを開いた時に画像読取部200の重心位置が上カバー10dを閉じた時よりも大きく移動するため本体の重心バランスが不安定になり、本体が転倒しやすくなるという課題がある。
【0023】
本発明の各実施形態に係る画像形成装置は、図3a〜3dでの問題点を鑑み、操作性の向上ならびに本体設置場所の制約を最小限に留めるため、次のような構成を有する。
【0024】
図4a〜4cは本発明の第1実施形態を示したものである。画像形成部100の上部に、当該画像形成部100の一端側に配置された支点としての支軸14を中心として回動可能に支持された上カバー10が配置されている。また、この上カバー10に対し画像読取部200が矢印Gで示す上下方向にスライド可能な状態で配置されている。上カバー10は上下方向に貫通形成された溝部11を有し、この溝部11に画像読取部200の下部に固定された支持部材210が上カバー10を上下方向に貫通するように挿入されている。この支持部材210の下端部にはフランジ部210aが形成されていて、フランジ部210aの周縁部が溝部11の内面に摺動自在に嵌合されている。支持部材210のフランジ部210aの下面と溝部11の底壁11aとの間に、画像読取部200を常に上カバー10側へ付勢する引張バネ12(連動手段)が掛け渡されている。
【0025】
支持部材210のフランジ部210aの下面には、下方に延びる当接部材211が支持部材210と同軸的に連結されている。この当接部材は上カバー10を閉じた時に画像形成部100の本体上面102と当接し、引張バネ12の付勢力に抗して支持部材210ひいては画像読取部200を上方向にスライドさせる。上カバー10には支持部材210のフランジ部210aが抜けないように溝部11の上開口を狭めるストッパ13が設けられており、画像読取部200を手で持って画像形成装置を持ち上げて運ぶようなことがあったとしても、支持部材210が画像形成部100から簡単には抜けないようになっている。
【0026】
画像読取部200は支軸203を中心として上方に回動可能な圧板202を有し、この圧板202を開放して原稿面に原稿をセットする。画像読取部200と上カバー10の間の空間は、用紙の排出とスタックに支障のない最小限度で済むから、圧板202の開閉操作性と原稿面に対する原稿のセットのしやすさは影響を受けない。
【0027】
図4bは、図4aの状態から上カバー10が支軸14を中心として反時計方向に回動させて開放したときの状態を示したものである。上カバー10を開放すると当接部材211が画像形成部100の本体上面から離れ、引張バネ12の付勢力により支持部材210および画像読取部200が矢印J方向へスライドする。この際、引張バネ12の付勢力は上カバー10の開放アシスト力として作用するので開放操作が容易である。矢印J方向のスライド移動は、画像読取部200の底面部が上カバー10の天面部に当接することで止まる。
【0028】
すなわち、図4aで示した上カバー10と画像読取部200との空間距離Hが画像読取部200のスライド量となり、この距離Hは排紙された用紙のスタックする空間と等しい。このとき画像形成部100からの画像読取部200の水平方向の飛出し量L’は、前記スライドしない場合の飛出し量L3(図3d参照)からHを引いた値(L‘=L3−H)となり、スライドした分だけ本体設置場所の制約を緩めることができる。また、画像読取部200の重心移動も距離Hの分だけ小さくすることができ、本体の重心バランスの変動をより小さくすることができる。
【0029】
このように、本発明の第1実施形態は、画像読取部200の底面部200gに支持部材210と当接部材211を取り付けて安価な引張バネ12を配設するだけの簡単な構成によって、画像読取部200のスライド退避機構を低コストで構成することができる。しかも、上カバー10を閉じた時は画像読取部200が支持部材210と当接部材211を介して画像形成部100の本体上面に確実かつ安定的に支持されて位置決めされる構造であるから、画像読取部200の操作性が安定する。
【0030】
図4cは、図4aおよび図4bで示した例において、上カバー10の天面部10gに、排紙された用紙Pが載っている状態を示したものである。上カバー10を開けると画像読取部200が上カバー10側にスライドして接近して来るが、画像読取部200の底面部200gと上カバー10の天面部10gとの間に用紙Pを挟み込んだ位置で画像読取部200のスライドが止まる。画像読取部200は引張バネ12によって常に上カバー10側に付勢されているため、画像読取部200の底面部200gが用紙Pを押圧し、このため用紙Pは上カバー10を開けた状態でも上カバー10の天面部10gから滑落することがない。
【0031】
図4dは、図4bにおいて支持部材210に固定していた当接部材211を、画像形成部100の本体上面102に着脱自在に配置した変形例を示す。当接部材211の下端部に設けたネジ部211aを画像形成装置の本体上面にねじ込むことで当接部材211を垂直に固定するようにしている。当接部材211は上カバー10を開いた時には画像形成部100側に残り、上カバー10を閉めると支持部材210のフランジ部210aの下面と当接し、画像読取部200を画像形成部100の本体上面102を基準として所定の高さ位置に押し上げる。
【0032】
図4eは、図4dで示した当接部材211を取り外した本体輸送時の状態を示したものである。図4dの上カバー10を開いた状態で当接部材211を鎖線で示すように上方に向けて取り外し、その後図4eのように上カバー10を閉じると、図4aと異なり、画像読取部200は支持部材211によって突き上げられないから、画像読取部200の底面部200gは自重と引張バネ12によって上カバー10の天面部10gに当接したままとなる。つまり、図4aで示した距離Hの分だけ本体高さを抑えることができ、本体輸送時の梱包サイズを小さくすることで輸送コストの削減が図れる。なお、輸送後の本体設置時には上カバー10を開き当接部材211を図4dのように元通りに取付けて使用する。
【0033】
図4fは、支持部材210の下端部の当接部材211を、支持部材210に対してそのネジ部211aにより着脱自在に取付けるようにした変形実施形態である。本体輸送時に、当接部材211を図示するように取り外すことで図4eと同様に画像読取部200を上カバー10に当接させることができ、本体輸送時の梱包サイズを小さくすることで輸送コストの削減が図れる。なお、輸送後の本体設置時には上カバー10を開き当接部材211を支持部材210の下端部にねじ込むことで使用可能となる。
【0034】
図5aおよび図5bは本発明の第2実施形態を示したものである。基本構成および動作は図4aで示したものと同一であるが、この第2実施形態は図4aの第1実施形態において、上カバー10の天面部10gと画像読取部200の底面部200gとの間に指を挟み込むリスクを回避する構成としている。指の挟み込み防止のため、画像読取部200のスライドはその底面部200gが上カバー10の天面部10gに当接する直前位置で止める。この直前停止のために、画像読取部200の底面部200gと上カバー10の天面部10gとの間が所定幅の隙間部C(約20mm)となった時に、上カバーの溝部11の底壁11aと支持部材210のフランジ部210aを互いに当接させる。このような指の挟み込み防止機構は、図5a、図5bのように、上カバー10の天面部10g(又は画像読取部200の底面部200g)に突起部30を配置する構成でもよい。この場合、底面部200gと天面部10gとの間が所定幅の隙間部C(約20mm)となった時に、突起部30が画像読取部200の底面部200gに当接する。
【0035】
この時、上カバー10に少量の用紙Pが載っているときは図4cで示したように画像読取部200と上カバー10で用紙Pを挟み込むことができず、上カバー10を開いた時に用紙Pが滑落する可能性がある。この対策として、上カバー10の支軸14側の端部に、画像読取部200のスライド動作と連動して画像読取部200と上カバー10の隙間を埋める用紙滑落防止部材15を設けている。
【0036】
用紙滑落防止部材15は短辺と長辺を有するようにL字形状に折曲げた板金部材であって、長辺側端部15aの長手方向に形成した不図示のスリット孔に画像読取部200の支持部材210に設けた不図示のピンが挿入連結され、上カバー10の開閉(すなわち支持部材210の上下動)と連動して用紙滑落防止部材15の短辺側端部15bが上カバー10の天面部10gから出没するようになっている。上カバー10を開いた時に用紙滑落防止部材15の短辺側端部15bが上カバー10の天面部10gから飛び出し、この短辺側端部15bが画像読取部200と上カバー10との間に出来た隙間部Cを完全に埋めることで用紙Pが上カバー10から滑落するのを防止する。すなわち、図5bのように上カバー10を開いた状態で、用紙滑落防止部材15の短辺側端部15bの突出長さが隙間部Cの間隔に等しくなっている。また、上カバー10を閉じている時は図5aのように用紙滑落防止部材15の短辺側端部15bが上カバー10の天面部10gから下方に退避し、画像形成部100の本体後方側からの用紙Pの取り出しを可能にする。
【0037】
図6a及び図6bは、上カバー10の回動と画像読取部200のスライドを連動させる連動手段として歯車機構を使用した第3実施形態である。この第3実施形態では前述した当接部材211を使用せず、上カバー10の支軸14自体か、或いは当該支軸14と同軸となる位置で画像形成部100の本体に固定歯車16を配置する。この固定歯車16は中心角が約90°の扇形をしており、その歯面は支持部材210の方向を向いて水平位置から垂直位置まで連続している。
【0038】
一方、上カバー10には互いに噛み合う2つの歯車17a、17bからなる歯車列17が設けられている。歯車列17は比較的大径の第1歯車17aと、小径な第2歯車17bで構成されている。第1歯車17aは二段歯車であって、小径歯車部17a1が固定歯車16と噛み合い、大径歯車部17a2が第2歯車17bと噛み合っている。そして第2歯車17bが画像読取部200の支持部材210の側面に形成されたラック18に噛み合っている。第1歯車17aを二段歯車としたのは、上カバー10の回動角度と画像読取部200の移動量を調整するためである。
【0039】
同様のことは複数の歯車の組み合わせによっても達成することができるが、二段歯車にすることで部品点数が少なくて済むためコストダウンに繋がる。なお、第1歯車17aではなく第2歯車17bを二段歯車にすることも可能である。固定歯車16は歯車列17により、上カバー10を開くと、図6bに示すように第1歯車17aが固定歯車16に沿って反時計方向に回転しながら上方後方に移動し、これにより支持部材210のラック18に噛み合う第2歯車17bが時計方向に回転し、画像読取部200の支持部材210を上カバー10の溝部11に引き込むように移動させる。
【0040】
また、上カバー10には支持部材210のフランジ部210aが抜けないように溝部11の上開口を狭めるストッパ13が設けてあるが、このストッパ13は、固定歯車16、歯車列17及びラック18のいずれかが破損した状態で、画像読取部200を手で持って装置本体を持ち上げるなどした場合の本体落下事故の防止に有効である。なお、図6a、6bの第3実施形態では引張バネ12は必ずしも必要ではないが、引張バネ12は歯車の噛み合いを円滑にすると共に上カバー10の開放アシスト力となるので設けておくのが望ましい。
【0041】
図7a、7bは変形実施形態であり、当接部材211が画像読取部200の本体上面102に形成した縦孔20の開口に装着した蓋板21に当接し、これにより画像読取部200を所定高さに支持する。また、輸送時は蓋板21を図7bのように取り外して当接部材211を縦孔20内に受け入れる。これにより、図4eと同様に本体輸送時の梱包サイズを小さくすることができ、輸送コストの削減が図れる。なお、輸送後の本体設置時には上カバー10を開いた状態で蓋板21を図7aのように元通りに取付けて使用する。
【0042】
以上、本発明を好適な実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1 書込み装置
2 現像ユニット
10 上カバー
11 溝部
12 引張バネ(連動手段)
13 ストッパ
14 支軸(支点)
15 用紙滑落防止部材
16 固定歯車(連動手段)
17 歯車列(連動手段)
18 ラック(連動手段)
100 画像形成部
200 画像読取部
202 圧板
210 支持部材
211 当接部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特開2004−354832号公報
【特許文献2】特開2000−039827号公報
【特許文献3】特開2008−139763号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を記録紙に出力する画像形成部と、
前記画像形成部の上部を開閉するように、前記画像形成部の一端側に配置された支点を中心として回動可能に支持された上カバーと、
前記上カバーの上部に所定距離を空けて配置された画像読取部と、
前記画像読取部を前記上カバーに対し上下方向にスライド可能に支持する支持手段と、
前記上カバーの回動と前記画像読取部のスライドを連動させる連動手段と、を備え、
前記上カバーを開放する動作に連動して、前記画像読取部を前記上カバーに対して接近方向にスライドさせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像読取部の支持手段を、前記上カバーを上下方向に貫通し上端部が当該画像読取部の底面部に固定されると共に下端部が前記上カバーにスライド可能に保持された支持部材で構成し、前記画像読取部と前記上カバーとの間に配設した付勢手段によって前記画像読取部を前記カバーに接近する方向に付勢し、前記上カバーを閉じた状態で前記支持部材の下端部が前記画像読取部の自重と前記付勢手段の付勢力によって前記上カバーの下側の画像形成部本体上面に当接することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像読取部の支持手段を、上端部が当該画像読取部の底面部に固定されると共に下端部が前記上カバーにスライド可能に保持された支持部材で構成し、前記画像読取部と前記上カバーとの間に配設した付勢手段によって前記画像読取部を前記カバーに接近する方向に付勢し、前記上カバーを閉じた状態で前記支持部材の下端部が前記画像読取部の自重と前記付勢手段の付勢力によって、前記上カバーの下側の画像形成部本体上面に固定した当接部材に当接することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記当接部材を画像形成部本体上面に着脱自在に固定したことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
上カバーを開放した状態で、前記付勢手段によって前記画像読取部の底面部が前記上カバーの天面部を弾性的に押圧することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記上カバーを開放した状態で、前記画像読取部の底面部又は前記支持部材の下端部が当接して前記上カバーの天面部と前記画像読取部の底面部との間に所定の隙間部を形成する干渉部を前記上カバーに設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記上カバーの回動支点側端部に用紙滑落防止部材を設け、前記画像読取部の前記上カバーに接近するスライドに連動して前記用紙滑落防止部材を、前記上カバーの天面部と前記画像読取部の底面部との間の前記隙間部に突出させることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記用紙滑落防止部材が、前記上カバーの天面部と前記画像読取部の底面部との間に形成される前記隙間部に突出する突出長さは、当該隙間部の間隔と同じであることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記連動手段を、上カバーの回動軸と同軸に前記画像形成部本体側に設けられた固定歯車と、前記固定歯車に噛み合うように前記上カバーに設けられた歯車列と、前記歯車列に噛み合うように前記画像読取部の支持部材の側面に形成されたラックとで構成したことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
請求項9において、前記歯車列の少なくとも1つの歯車は回転数を変化させるために2段歯車であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記上カバー又は前記画像読取部の支持部材に、前記画像読取部が前記上カバーから前記所定距離を越えて上方に移動するのを規制する抜け止め部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記付勢手段を引張バネにしたことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【公開番号】特開2013−54224(P2013−54224A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192767(P2011−192767)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】