画像形成装置
【課題】コイルの磁束変化に基づく回転速度の変動によりブラシレスモータを正常に回転制御できなくなることを抑制すること。
【解決手段】画像形成装置は、制御部を有し、当該制御部は、検出信号に基づくブラシレスモータの第1回転速度と目標速度との第1偏差の積分値の変化に関係なく、第1偏差の変化に応じて通電切替部による通電をオンオフさせる第1回転制御処理と、受光信号に基づく第2回転速度と目標速度との第2偏差の積分値を算出し、第2偏差の変化及びその積分値の変化に応じて通電切替部による通電をオンオフさせる第2回転制御処理と、第1回転制御処理の実行中に、第1偏差が規定範囲外から規定範囲以内になったと判断した場合に、第2回転制御処理に切り替える回転制御切替処理と、を実行する構成を有する。
【解決手段】画像形成装置は、制御部を有し、当該制御部は、検出信号に基づくブラシレスモータの第1回転速度と目標速度との第1偏差の積分値の変化に関係なく、第1偏差の変化に応じて通電切替部による通電をオンオフさせる第1回転制御処理と、受光信号に基づく第2回転速度と目標速度との第2偏差の積分値を算出し、第2偏差の変化及びその積分値の変化に応じて通電切替部による通電をオンオフさせる第2回転制御処理と、第1回転制御処理の実行中に、第1偏差が規定範囲外から規定範囲以内になったと判断した場合に、第2回転制御処理に切り替える回転制御切替処理と、を実行する構成を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される発明は、ブラシレスモータを使用して回転多面鏡を回転駆動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、光源からの光ビームを偏向して感光体上に照射するための回転多面鏡を有する光走査機構を備えるものがある。また、回転多面鏡を回転駆動するための駆動モータとして、複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータが使用されることがある。例えば、ブラシレスモータのロータの近傍に複数のホール素子を配置し、各ホール素子からの出力信号に基づきロータの位置及び回転速度を検出して各コイルへの通電タイミングを制御する画像形成装置がある(特許文献1参照)。また、ホール素子を利用せずに、ロータの回転によってコイルに発生する誘起電圧に基づきロータの位置及び回転速度を検出して各コイルへの通電タイミングを制御する画像形成装置がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−129538号公報
【特許文献2】特開2010−237622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ブラシレスモータの回転制御では、ブラシレスモータの回転速度と目標速度との残留偏差を抑制するために、PI(Proportional Integral)制御を利用する構成が好ましい。ところが、上述した画像形成装置のように、ホール素子からの出力信号や誘起電圧など、コイルに生ずる磁束変化に基づきロータの位置及び回転速度を検出してブラシレスモータを回転制御する技術では、ノイズ等の影響により、回転速度の検出結果が大きく変動する。このため、上記ブラシレスモータの回転制御に、単純に公知のPI制御を利用すると、回転速度の変動分により積分要素が不必要に増加したりして、ブラシレスモータを正常に回転制御できなくなるおそれがある。
【0005】
本明細書では、コイルの磁束変化に基づく回転速度の変動によりブラシレスモータを正常に回転制御できなくなることを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される画像形成装置は、光ビームを発光する光源と、感光体と、複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、前記回転多面鏡によって偏向された光ビームの受光の有無に応じた受光信号を出力する光学センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの第1回転速度と目標速度との第1偏差の積分値の変化に関係なく、前記第1偏差の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第1回転制御処理と、前記受光信号に基づく前記ブラシレスモータの第2回転速度と前記目標速度との第2偏差の積分値を算出し、前記第2偏差の変化、及び、前記第2偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第2回転制御処理と、前記第1偏差が規定範囲以内であるかどうかを判断する速度判断処理と、前記第1回転制御処理の実行中に、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲以内になったと判断した場合に、前記第2回転制御処理に切り替える回転制御切替処理と、を実行する構成を有する、
【0007】
上記画像形成装置では、前記制御部は、前記第1偏差の積分値を算出する積分処理と、前記第1偏差と前記第1偏差の積分値との合算値が上限値に達すると、前記第1偏差の積分動作を停止する積分動作停止処理とを実行する構成を有し、前記第1回転制御処理では、前記合算値が前記上限値に達したかどうかにかかわらず、前記第1偏差の積分動作を停止する構成でもよい。
【0008】
また、画像形成装置は、光ビームを発光する光源と、感光体と、複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの回転速度と目標速度との偏差の積分値を算出する積分処理と、前記偏差の変化、及び、前記積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる回転制御処理と、前記偏差と前記積分値との正負が一致するかどうかを判断する正負判断処理と、前記正負が一致すると判断した場合、前記偏差と前記積分値との合算値が上限値に達すると、前記偏差の積分動作を停止させ、前記正負が相違すると判断した場合、前記合算値が前記上限値に達したかどうかにかかわらず、前記偏差の積分動作を実行する積分動作切替処理と、を実行する構成を有してもよい。
【0009】
更に、画像形成装置は、光ビームを発光する光源と、感光体と、複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、前記制御部とを備え、前記制御部は、前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの回転速度と目標速度との偏差の積分値を算出する積分処理と、前記偏差の変化、及び、前記積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる回転制御処理と、前記偏差が上限値に達すると、前記偏差の積分動作を停止させる積分動作停止処理とを実行する構成を有してもよい。
【0010】
また、画像形成装置は、光ビームを発光する光源と、感光体と、複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、前記回転多面鏡によって偏向された光ビームの受光の有無に応じた受光信号を出力する光学センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの第1回転速度と目標速度との第1偏差の積分値を算出し、前記第1偏差の変化、及び、前記第1偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第1回転制御処理と、前記受光信号に基づく前記ブラシレスモータの第2回転速度と前記目標速度との第2偏差の積分値を算出し、前記第2偏差の変化、及び、前記第2偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第2回転制御処理と、前記第1回転速度と前記目標速度との第1偏差が規定範囲以内であるかどうかを判断する速度判断処理と、前記第1回転制御処理の実行中に、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲内になったと判断した場合に、当該判断時の前記第1偏差の積分値以下の値を、前記第2偏差の積分値の初期値として、前記第1回転制御処理から前記第2回転制御処理に切り替える回転制御切替処理と、を実行する構成を有してもよい。
【0011】
上記画像形成装置では、前記制御部は、前記回転制御切替処理では、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲内になったと判断した場合に、当該判断時の前記第1偏差の積分値、あるいは前記通電切替部による通電のオンオフ比率を固定して、前記第1回転制御処理から前記第2回転制御処理に切り替える構成でもよい。
【0012】
上記画像形成装置であって、制御部は、積分器、及び、非線形スイッチを有し、前記積分器により前記積分処理を実行し、前記非線形スイッチをオンオフすることにより、前記積分動作を入り切りする構成でもよい。
【0013】
なお、この発明は、画像形成装置、画像形成方法、回転制御装置、回転制御印刷方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コイルの磁束変化に基づく回転速度の変動によりブラシレスモータを正常に回転制御できなくなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係るレーザプリンタの内部構成図
【図2】スキャナ部の構成を示す模式図
【図3】FG信号及び通電オンオフ信号の波形を示すタイムチャート
【図4】制御回路の構成を示すブロック図
【図5】ブラシレスモータの回転制御処理を示すフローチャート
【図6】ブラシレスモータの回転速度の時間的変化を示したグラフ
【図7】実施形態2のブラシレスモータの回転制御処理を示すフローチャート
【図8】ブラシレスモータの回転速度の時間的変化を示したグラフ
【図9】実施形態3の制御回路の構成を示すブロック図
【図10】実施形態4のブラシレスモータの回転制御処理を示すフローチャート
【図11】ブラシレスモータの回転速度の時間的変化を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
実施形態1について図1〜図6を参照しつつ説明する。
(レーザプリンタの構成)
図1に示すように、本実施形態のレーザプリンタ1は本体フレーム2を備え、この本体フレーム2内に、用紙等のシート3を供給するためのフィーダ部4や、供給されたシート3に画像を形成するための画像形成部5などが収容されている。
【0017】
なお、レーザプリンタ1は、画像形成装置の一例であり、単色プリンタだけでなく、2色以上のカラープリンタでもよい。また、印刷機能を有していれば、例えば、ファクシミリ機能、コピー機能、読み取り機能(スキャナ機能)等を備えた複合機でもよい。
【0018】
フィーダ部4は、シートトレイ6、押圧板7、ピックアップローラ8、一対のレジストレーションローラ9,9を有する。押圧板7は、その後端部を中心に回転可能とされており、押圧板7上の最上位にあるシート3がピックアップローラ8に向かって押圧されている。シートトレイ6内のシート3は、ピックアップローラ8の回転によって1枚毎に取り出される。取り出されたシート3は、レジストレーションローラ9,9によってレジストされた後に転写位置に送られる。転写位置は、シート3に感光体10上のトナー像を転写する位置であって、感光体10と転写ローラ11との接触位置である。
【0019】
画像形成部5は、例えば、スキャナ部12、プロセスカートリッジ13および定着部14を有する。スキャナ部12は、光源15(図2参照)、及び、ポリゴンミラー16等を有する。光源15から発光されたレーザ光Lは、ポリゴンミラー16によって周期的に偏向されつつ感光体10の表面上に照射される。スキャナ部12の詳細については後述する。なお、ポリゴンミラー16は回転多面鏡の一例であり、レーザ光Lは光ビームの一例である。
【0020】
プロセスカートリッジ13は、感光体10、及びスコロトロン型の帯電器17、現像ローラ18等を有する。帯電器17は、感光体10の表面を一様に正極性に帯電させる。帯電された感光体10の表面は、スキャナ部12からのレーザ光Lにより露光され、静電潜像が形成される。その形成された静電潜像は、現像ローラ18の表面上に担持されたトナーが供給されることにより現像化され、転写位置にてシート3上に転写される。画像が形成されたシート3は、定着部14によってトナーが熱定着され、排紙パス19を介して排紙トレイ20上に排紙される。
【0021】
(スキャナ部の構成)
図2に示すように、スキャナ部12は、レーザ光Lを発光する半導体レーザ等の光源15、第1レンズ部30、ポリゴンミラー16、第2レンズ部31、光学センサ32、ブラシレスモータ33、制御基板34等を備える。
【0022】
第1レンズ部30は、コリメータレンズやシリンドリカルレンズなどで構成されており、光源15から発光されたレーザ光Lを透過してポリゴンミラー16に照射させる。第2レンズ部31は、fθレンズやシリンドリカルレンズなどで構成されており、ポリゴンミラー16にて偏向、換言すれば反射されたレーザ光Lを透過して感光体10上に照射させる。
【0023】
ポリゴンミラー16は、例えば6つのミラー面で構成されており、ブラシレスモータ33によって高速で回転駆動される。ポリゴンミラー16は、高速回転されることで、光源15から発光されたレーザ光Lを周期的に偏向し、第2レンズ部31を介して感光体10上に走査ラインを順次形成する。なお、走査ラインは、画像データの各ラインデータに応じたドット状の露光ラインであり、各ラインデータが画像の空白部分に対応する場合には走査ラインは形成されない。
【0024】
ブラシレスモータ33は、3相のブラシレスDCモータであり、U相、V相、W相の各コイルが配置されたステータ35、及び、界磁用永久磁石が配置されたロータ36を有する。図2には、ブラシレスモータ33の構成として、各コイルがスター結線で配置され、ロータ36が例えば10極の界磁用永久磁石を有する構成が例示されている。ポリゴンミラー16は、ロータ36と共に一体的に回転する。
【0025】
制御基板34には、ブラシレスモータ33を回転駆動する駆動回路37、及び、制御回路38等が実装されている。駆動回路37は、例えばインバータ37Aを有し、各コイルへの通電をオンオフ、換言すれば入り切りする。インバータ37Aは、通電切替部の一例である。制御回路38は、光源15の発光制御と、ポリゴンミラー16の回転制御とを行う。なお、制御回路38の構成は後述する。
【0026】
光学センサ32は、ポリゴンミラー16で偏向されたレーザ光Lが感光体10に達する前に当該レーザ光Lを受光する位置に配置されている。光学センサ32は、レーザ光Lによる各走査ラインの書き出しタイミングを決定するためのものであって、光源15から発光されたレーザ光Lを受光してBD(Beam Detect)信号を制御回路38に出力する。BD信号は受光信号の一例である。なお、光学センサ32は、レーザ光Lが感光体10を通過した後に当該レーザ光Lを受光する位置に配置してもよい。
【0027】
(ロータの位置検出のための構成)
制御回路38は、ホール素子等の位置検出素子を利用せずにロータ36の位置を検出する。即ち、ステータ35に対するロータ36の回転に伴って各コイルに発生する誘起電圧に基づきロータ36の位置を検出する。
【0028】
ロータ36の回転により、各コイルには、S極の磁石とN極の磁石とが交互に接近、即ち、着磁し、これに伴ってコイル中の磁束が変化して各コイルに誘起電圧が発生する。また、各コイルのインピーダンスは、その接近する磁石がS極かN極かによって異なる。従って、誘起電圧は、S極が接近したときとN極が接近したときとで異なるレベルに周期的に変化した正弦波等の波形を示す。従って、この誘起電圧を検出することにより、ロータ36の位置、即ち、各コイルにどの極性の磁石が接近しているかを検出することが可能になる。
【0029】
誘起電圧を検出するための構成は次の通りである。図2に示すように、駆動回路37は、各コイルに対応する3つの電圧検出回路39,39,39を有する。各電圧検出回路39は、磁束変化検出部の一例であり、対応するコイルの端点Pとスター結線の中位点Oとの間の電圧差に応じた検出信号を出力する。端点Pは、駆動回路37と接続される側のコイルの端部であり、上記電圧差には、誘起電圧が含まれる。駆動回路37は、例えば図示しないコンパレータを有し、コンパレータは、各検出信号を、各コイルに接近する磁石の極性の入れ替わりによる誘起電圧の変化に応じてレベル反転するハイロー信号に変換して制御回路38に与える。以下、このハイロー信号をFG信号という。
【0030】
図3に示すように、各相に対応するFG信号は、互いに略120度ずつ位相がずれた波形として制御回路38に与えられる。そして、制御回路38は、各FG信号に応じた通電オンオフ信号、後述するPWM信号を駆動回路37に与えて各コイルへの通電の入りきりを制御し、これにより、ブラシレスモータ33を回転駆動することができる。
【0031】
また、図2に示すように、制御基板34は、ブラシレスモータ33の設置場所から離間した位置に配置されており、制御基板34とブラシレスモータ33とは、3つのコイルの端点P及び中位点0とそれぞれ接続された4本の信号線のみによって接続されている。
【0032】
(制御回路の構成)
制御回路38は、制御部の一例であり、上記FG信号に基づきブラシレスモータ33の回転駆動を制御することが可能であり、以下、この制御をFG回転制御という。また、制御回路38は、上記BD信号に基づきブラシレスモータ33の回転駆動を制御することが可能であり、以下、この制御をBD回転制御という。
【0033】
図4に示すように、制御回路38には、CPU41、メモリ42、PI制御回路43が搭載されている。メモリ42には、例えば40000rpm等の目標速度Vt、規定範囲ΔVthに関する情報や、後述する回転制御処理を実行するためのプログラム等が記憶されている。CPU41は、上記FG回転制御の実行時には、電圧検出回路39から上記3つのFG信号を受け、3つのFG信号のうち少なくとも1つの信号のオンオフ周期に基づきブラシレスモータ33の回転速度を検出する。以下、このFG信号に基づき検出された回転速度を、FG回転速度という。また、CPU41は、上記BD回転制御の実行時には、光学センサ32からBD信号を受け、BD信号のオンオフ周期に基づきブラシレスモータ33の回転速度を検出することが可能である。以下、このBD信号に基づき検出された回転速度を、BD回転速度という。
【0034】
CPU41は、FG回転速度またはBD回転速度と目標速度Vtとの偏差を算出し、当該偏差に応じた電圧信号を、図示しないD/A変換器を介して、PI制御回路43に与える。本実施形態では、偏差は、FG回転速度またはBD回転速度から目標速度Vtを差し引いた値であるものとする。
【0035】
PI制御回路43は、比例ゲイン素子44、加算回路45、非線形(PDF)スイッチ46、積分器47、積分ゲイン素子48、比較器49、飽和演算回路50、PWM変調回路51を有する。比例ゲイン素子44は、CPU41からの偏差を、予め定められた比例ゲインKpに応じて増幅し、増幅後の偏差に応じた電圧信号を加算回路45に与える。非線形スイッチ46は、CPU41からの偏差を積分器47に与えるオン状態と、偏差を積分器47に与えないオフ状態とに切り替え可能である。積分器47は、非線形スイッチ46からの偏差を積分し、その積分値に応じた電圧信号を、積分ゲイン素子48に与える。積分ゲイン素子48は、積分器47からの積分値を、予め定められた積分ゲインKiに応じて増幅し、増幅後の積分値に応じた電圧信号を加算回路45に与える。
【0036】
加算回路45は、比例ゲイン素子44及び積分ゲイン素子48からの電圧信号に基づき、偏差と、積分器47の積分値とを合算し、その合算値に応じた電圧信号を飽和演算回路50に与える。飽和演算回路50は、上記合算値と、予め定められた飽和値とを比較し、合算値が飽和値以下である場合には、当該合算値に応じた電圧信号をPWM変調回路51に与える。一方、飽和演算回路50は、合算値が飽和値を超える場合には、当該飽和値に応じた電圧信号をPWM変調回路51に与える。なお、飽和値は、ブラシレスモータ33のコイルに流す駆動電流の上限値、例えば2Aに対応した電圧値であることが好ましい。
【0037】
PWM変調回路51は、飽和演算回路50からの電圧信号をPWM変調したPWM値(デューティ比)に応じたPWM信号をインバータ37Aに与える。インバータ37Aは、PWM信号に基づき各コイルへの通電がオンオフ制御され、これにより、ブラシレスモータ33が回転駆動される。また、PWM信号のPWM値が変更されると、これに応じて通電オン時のコイルへの通電量が変化し、これに伴ってブラシレスモータ33の回転速度が変更される。
【0038】
CPU41は、図示しないD/A変換器を介して、上限値に応じた電圧信号を比較器49に与える。上限値は、上記飽和値に略等しいことが好ましい。比較器49は、加算回路45及びCPU41からの電圧信号に基づき、合算値が上限値未満である場合に、非線形スイッチ46をオン状態とし、積分器47の積分動作を続行させる。一方、比較器49は、合算値が上限値以上である場合に、非線形スイッチ46をオフ状態とし、積分器47の積分動作を停止させる。これにより、積分器47の積分値が、飽和値に関係なく、不必要に増加することを抑制することができる。
【0039】
また、CPU41は、図示しないD/A変換器を介して、強制停止指令を示す電圧信号を非線形スイッチ46に与えることにより、合算値が上限値以上であるかどうかにかかわらず、非線形スイッチ46を強制的にオフ状態にすることができる。
【0040】
(ブラシレスモータの回転制御)
制御回路38は、例えばレーザプリンタ1の電源がオンされる等の所定の起動条件を満たすと、ブラシレスモータ33の回転制御処理を実行する。具体的には、CPU41が、メモリ42から上記プログラムを読み出して、図5に示す回転制御処理を実行する。
【0041】
CPU41は、速度検出信号としてFG信号を参照しつつ、非線形スイッチ46を強制的にオフ状態とすることで、P制御によるFG回転制御を実行し始める。次に、CPU41は、ロータ36の初期位置、例えば起動前の停止位置を検出する(S2)。具体的には、CPU41は、駆動回路37を制御して、各コイルに電流を流すことにより、コイル中の磁束が変化し、これに伴って変化する各FG信号に基づきロータ36の初期位置を検出することができる。
【0042】
CPU41は、ロータ36の初期位置を検出すると、強制通電を実行する(S3)。具体的には、CPU41は、上記初期位置の検出結果を踏まえた電圧信号をPI制御回路に与えて、駆動回路37により各コイルへの通電を順次オンオフして強制的に通電を行い、ロータ36の回転駆動させる。各コイルに生じる誘起電圧がFG信号に反映されるから、このFG信号に基づきロータ36の位置及びロータ36の回転速度を検出することが可能になる。CPU41は、その検出されたFG回転速度と目標速度Vtとの第1偏差に応じた電圧信号を、PI制御回路43に与えるようにする。これにより、PI制御回路43は、第1偏差の積分値の変化に関係なく、第1偏差の変化に比例したPWM値のPWM信号を出力する。なお、このP制御によるFG回転制御の処理は、第1回転制御処理の一例である。
【0043】
CPU41は、上記第1偏差が前述した規定範囲ΔVth以内であるかどうかを判断する速度判断処理を実行する(S4)。なお、この速度判断処理では、第1偏差が規定範囲ΔVth以内にある状態に一時的になったかどうかを判断してもよいが、同状態が所定期間だけ継続しているかどうかを判断することによりFG回転速度が目標速度Vt付近に安定したかどうかを判断してもよい。
【0044】
CPU41は、第1偏差が前述した規定範囲ΔVth外であると判断した場合(S4:NO)、上記P制御によるFG回転制御処理を続行する。一方、CPU41は、第1偏差が前述した規定範囲ΔVth以内であると判断した場合(S4:YES)、光源15の発光を開始させる(S5)。これにより、光学センサ32は、ポリゴンミラー16にて偏向されたレーザ光Lを周期的に受光し、その受光タイミングに応じてBD信号を出力するようになる。なお、光源15の発光タイミングは、S5よりも前でもよい。但し、光源15の発光タイミングをS5にすれば、光源15からのレーザ光Lが感光体10に照射される期間が短くなり、その分だけ、感光体10の損傷を抑制することができる。
【0045】
CPU41は、光源15を発光させると、BD信号チェックを行う(S6)。具体的には、CPU41は、BD信号の有無、BD回転速度と目標速度Vtとの第2偏差が規定範囲ΔVth以内であるかどうかを判断する。CPU41は、BD信号のチェック結果が正常であれば、速度検出信号としてBD信号を参照しつつ、非線形スイッチ46の強制オフ状態を解除することで、PI制御によるBD回転制御を実行し始める(S7)。具体的には、CPU41は、第2偏差に応じた電圧信号を、PI制御回路43に与えるようにする。これにより、PI制御回路43は、第2偏差の変化、及び、第2偏差の積分値の変化に応じたPWM値のPWM信号を出力する。なお、このPI制御によるBD回転制御の処理は、第2回転制御処理の一例である。CPU41は、印刷処理が終了するなど、所定の停止条件を満たすと、PI制御によるBD回転制御を終了し、本回転制御処理を終了する。
【0046】
(本実施形態の効果)
図6には、ブラシレスモータ33の回転速度の時間的変化を示したグラフが示されている。実線X1は、本実施形態の上記回転制御処理を実行した場合のグラフである。一点鎖線X2は、PI制御によるFG回転制御を実行した場合のグラフである。
【0047】
FG信号は、BD信号に比べて、ノイズ等の影響により高周期で変動する。このため、仮に、PI制御によりFG回転制御を実行すると、FG回転速度が目標速度Vtに近づいても、FG信号の変動分が積分器47で積分され、積分値が増加するに伴って、合算値も増加して上限値以上となり、非線形スイッチ46がオフ状態になってしまう。そうすると、図6の一点鎖線X2に示すように、FG回転速度が目標速度Vtを超えて、第1偏差が負の値になっても、積分値が減算されず、ブラシレスモータ33の回転速度が目標速度Vtに収束するのが遅れるという問題が発生する。
【0048】
これに対し、本実施形態では、第1偏差が規定範囲ΔVth外である場合、P制御によるFG回転制御が実行される。これにより、当該FG回転制御において、FG回転速度の変動分により積分要素が増加し、ブラシレスモータ33を正常に回転制御できなくなることを抑制することができる。一方、第1偏差が規定範囲ΔVth以内である場合、PI制御によるBD回転制御が実行される。BD回転速度は、FG回転速度に比べて、変動が小さいため、その変動による第2偏差の積分値の増加量は比較的少ない。従って、PI制御によるFG回転制御を実行した場合に比べて、ブラシレスモータ33の回転速度を早期に目標速度Vtに収束させることができる(図6の実線X1参照)。
【0049】
また、第2偏差の変化に加えて、第2偏差の積分値を利用するPI制御に切り替えることにより、P制御をそのまま続行した場合に比べて、残留偏差を抑制してブラシレスモータ33の回転速度を目標速度に近付けることができる。これにより、コイルの磁束変化に基づく回転速度の変動によりブラシレスモータ33を正常に回転制御できなくなることを抑制することができる。
【0050】
<実施形態2>
図7及び図8は実施形態2を示す。前記実施形態1との相違は、回転制御処理にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0051】
図7に示すように、CPU41は、強制通電(S3)を実行した後(図8のT1)、P制御によるFG回転制御から、PI制御によるFG回転制御に切り替え(S11)、非線形スイッチ46がオフ状態であるかどうかを判断する(S12)。具体的には、CPU41は、加算回路45の算出結果、比較器49の比較結果等に基づき、合算値が上限値以上であるかどうかを判断する。CPU41は、非線形スイッチ46がオフ状態であると判断すると(S12:YES)、第1偏差と、第1偏差の積分値との正負、換言すれば符号が一致するかどうかを判断する正負判断処理を実行する(S13)。
【0052】
CPU41は、正負判断処理の判断結果に基づき、積分器47の積分動作の入り切りを切り替える積分動作切替処理を実行する。具体的には、CPU41は、上記正負が一致すると判断した場合には(S13:YES)、非線形スイッチ46をオフ状態のままとし、S16に進む。要するに、CPU41は、正負が一致し、且つ、第1偏差と積分値との合算値が上限値に達している場合には、第1偏差の積分動作を停止させる。一方、CPU41は、上記正負が相違すると判断した場合には(S13:NO 図8のT2)、合算値が上限値に達したかどうかにかかわらず、非線形スイッチ46を強制的にオフ状態にして、第1偏差の積分動作を強制的に実行し、S16に進む。
【0053】
なお、CPU41は、第1偏差が規定範囲ΔVth外である場合には(S16:NO)、S12に戻り、第1偏差が規定範囲ΔVth以内である場合には(S16:YES 図8のT3)、S5に進む。また、CPU41は、BD信号チェック(S6)を実行した後、PI制御によるFG回転制御から、PI制御によるBD回転制御に切り替える(S17)。
【0054】
本実施形態によれば、第1偏差と積分値との正負が相違すると判断した場合、第1偏差と積分値との合算値が上限値に達したかどうかにかかわらず、第1偏差の積分動作が実行される。このため、第1偏差が負の値になると、積分値が減算されるため、ブラシレスモータ33の回転速度が目標速度Vtに収束するのが遅れることを抑制することができる。
【0055】
<実施形態3>
図9は実施形態3を示す。前記実施形態1との相違は、PI制御回路の構成にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0056】
実施形態1のPI制御回路43は、比較器49が、偏差と積分器47の積分値との合算値と上限値とを比較する構成であった。これに対し、図9に示すように、本実施形態の制御回路61が有するPI制御回路60は、比較器49が、偏差と上限値とを比較する構成である。CPU41は、図7に示す回転制御処理に対して、S12〜S15を除いた回転制御処理を実行する。具体的には、CPU41は、P制御によるFG回転制御から、PI制御によるFG回転制御に切り替えた(S11)後、第1偏差が規定範囲ΔVth以内であるかどうかを判断し(S16)、第1偏差が規定範囲ΔVth以内であると判断すれば(S16:YES)、S5に進む。
【0057】
本実施形態によれば、偏差と積分値との合算値ではなく、偏差が上限値に達したときに積分動作が停止される。このため、FG信号の変動分により積分器47の積分値が増加しても、その増加分は、比較器49での比較結果に影響しない。このため、積分値の増加により非線形スイッチ46がオフ状態になってしまうことを抑制し、コイルの磁束変化に基づく回転速度の変動によりブラシレスモータ33を正常に回転制御できなくなることを抑制することができる。
【0058】
<実施形態4>
図10及び図11は実施形態4を示す。前記実施形態1との相違は、回転制御処理にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0059】
図10に示すように、CPU41は、PI制御によるFG回転制御の実行を開始し(S21)、S2〜S6までの処理を実行し、駆動回路47に与えるPWM信号のPWM値、換言すれば制御回路38の出力値を固定し、それと同時以降に、積分器47の積分値をゼロにリセットする(S22 図11のT1)。PWM値を固定する処理の一例は次の通りである。CPU41は、飽和演算回路50の飽和上限値及び飽和下限値を変更可能であり、また、加算回路45の合算値を検知可能とする。そして、CPU41は、加算回路45の合算値に基づき、飽和上限値及び飽和下限値を、加算回路45のリセット直前の合算値に変更することで、PWM値をリセット直前の値に固定する。なお、S22の処理は、S5、S6の処理の前に実行してもよい。
【0060】
そして、CPU41は、PI制御によるFG回転制御から、PI制御によるBD回転制御に切り替える回転制御切替処理を実行し(S23)、加算回路45の合算値が、リセット直前の値に回復したと判断した場合に(S24:YES)、上記PWM信号のPWM値の固定を解除する(S25 図11のT2)。なお、CPU41は、第2偏差が規定範囲ΔVth以内になった場合にPWM値の固定を解除する構成でもよい。
【0061】
本実施形態によれば、PI制御によるFG回転制御の実行中に、第1偏差が規定範囲ΔVth以内になった場合に、積分器47の積分値がゼロにリセットされる。従って、PG回転制御での第1偏差の積分値が、BD回転制御のPI制御に引き継がれることを抑制することができる。
【0062】
ここで、本実施形態とは異なり、CPU41が、PWM信号のPWM値を固定せずに、積分器47の積分値をゼロにリセット構成でもよい。しかし、この構成にすると、図11の一点鎖線X4に示すように、上記リセットにより、ブラシレスモータ33の回転速度が急激に落ち込むおそれがある。これに対し、本実施形態では、CPU41が、PWM値を固定して、積分器47の積分値をリセットする。このため、図11の実線X3に示すように、リセットによりブラシレスモータ33の回転速度が急激に落ち込むことを抑制して、円滑に回転制御切替処理を行うことができる。
【0063】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施形態のブラシレスモータは、3相、アウターロータ型、且つ、スター結線を採用したものであったが、本発明はこれに限られない。2相、或いは、4相以上であってもよい。また、インナーロータ型であってもよく、デルタ結線であってもよい。なお、デルタ結線の場合、例えば各コイルの端子間電圧に基づき、誘起電圧に応じた検出信号を得ることができる。
【0064】
上記実施形態では、6面のポリゴンミラー16と10極のブラシレスモータ33を使用したが、本発明はこれに限られない。6面以外の面数を有するポリゴンミラー、10極以外の極数(ポール数)を有するブラシレスモータであってもよい。
【0065】
上記実施形態では、ホール素子を利用せずに、ロータの回転によってコイルに発生する誘起電圧に基づきロータの位置及び回転速度を検出して各コイルへの通電タイミングを制御する構成を例に挙げた。しかし、これに限らず、ブラシレスモータのロータの近傍に複数のホール素子を配置し、各ホール素子からの出力信号に基づきロータの位置及び回転速度を検出して各コイルへの通電タイミングを制御する構成でもよい。この場合、ホール素子が、磁束変化検出部の一例である。
【0066】
上記実施形態では、制御回路38は、1つのCPUを備える構成とした。しかし、制御回路38は、複数のCPUを備える構成や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハード回路を備える構成でもよい。具体的には、上記実施形態では、積分器47を利用したハード構成によって積分処理を実行した。しかし、CPU41のソフト処理により積分処理を実行する構成でもよい。また、非線形スイッチ46を利用したハード構成によって積分動作停止処理を実行した。しかし、CPU41のソフト処理により積分動作停止処理を実行する構成でもよい。また、比較器49、加算回路45、飽和演算回路50、PWM変調回路51の少なくとも1つの動作を、CPU41によるソフト処理で実行する構成でもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、回転制御処理、正負判断処理、積分動作切替処理、回転制御切替処理を、CPU41によるソフト処理で実行した。しかし、上記処理の少なくとも1つを、ハード回路で実行する構成でもよい。
【0068】
上記実施形態1において、積算動作停止処理を実行しない構成でもよい。このような構成でも、第1偏差が規定範囲ΔVth以内になった場合に、P制御によるFG回転制御から、PI制御によるBD回転制御に切り替えることにより、コイルの磁束変化に基づく回転速度の変動によりブラシレスモータを正常に回転制御できなくなることを抑制することができる。
【0069】
上記実施形態では、回転制御処理のプログラムの一例として、メモリ42に記憶されたものを例に挙げた。しかし、上記プログラムは、これに限らず、ハードディスク装置、フラッシュメモリ(登録商標)などの不揮発性メモリや、CD−Rなどの記憶媒体などに記憶されたものでもよい。
【0070】
上記実施形態において、PI制御の代わりに、PID(Proportional Integral Derivative)制御を実行してもよい。また、P制御の代わりに、PD制御を実行してもよい。
【0071】
上記実施形態1では、CPU41が、非線形スイッチ46に強制停止指令を与えて強制オフさせることにより(図1のS1)、第1偏差の積分値の変化に関係なく、第1偏差の変化に応じてFG回転制御を実行した。しかし、これに限らず、CPU41が、非線形スイッチ46に強制停止指令を与えることなく、比較器49への上限値をゼロに設定することにより、実質的に積分動作を停止させることにより、第1偏差の積分値の変化に関係なく、第1偏差の変化に応じてFG回転制御を実行してもよい。
【0072】
上記実施形態1では、CPU41は、第1偏差が規定範囲外である場合、常に、P制御によるFG回転制御を実行した。しかし、これに限らず、CPU41は、第1偏差が規定範囲よりも更に大きい所定範囲外である場合に、PI制御によるFG回転制御を実行し、第1偏差が所定範囲以内になった場合にP制御によるFG回転制御に切り替える構成でもよい。
【0073】
上記実施形態2,3では、FG回転制御からBD回転制御に切り替える構成とした。しかし、FG回転制御をそのまま続行する構成でもよい。
【0074】
また、図4の構成に対し、非線形スイッチ46及び比較器49等を取り除き、FG回転制御ではPI制御を実行しつつ、積分ゲインKiを小さい第1値とし、BD回転制御への切替時に、積分器47の積分値をゼロにクリアして、積分ゲインKiを第2値にする構成でもよい。なお、第1値は、ゼロが好ましいが、ゼロでなくても、飽和演算回路50にて飽和しない程度の値であればよい。
【0075】
また、積分器47自体にリミッタを設けて、積分値の増加により、非線形スイッチ46が強制オフすることを抑制する構成でもよい。この場合、積分値のリミット値×Ki<上記飽和値であることが好ましい。更に、図4の構成に対し、積分器47の上段に、積分ゲイン素子48を設けて、積分ゲインKiを十分に小さくする構成でもよい。
【0076】
上記実施形態4に対し、飽和演算回路50とPWM変調回路51との間に選択素子を設け、CPU41は、通常は、飽和演算回路50の出力値を、選択素子を介してPWM変調回路51に与え、S22において、選択素子に切替動作をさせて、CPU41から、加算回路45のリセット直前の合算値を固定値として、PWM変調回路51に与える構成にしてもよい。但し、上記実施形態4の構成であれば、回転制御切替処理の実行期間(図11のT1〜T2)において、ブラシレスモータ33の回転速度変化に影響を受けずに、駆動回路37をオンオフ制御することができるため、より円滑に回転制御切替処理を行うことができる。
【0077】
また、上記実施形態では、積分値をゼロにリセットした。しかし、これに限らず、S4の判断時の第1偏差の積分値以下の値にリセットする構成であればよい。
【符号の説明】
【0078】
1:レーザプリンタ 10:感光体 15:光源 16:ポリゴンミラー 35:ステータ 36:ロータ 37A:インバータ 32:光学センサ 39:電圧検出回路 38,61:制御回路 Vt:目標速度
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される発明は、ブラシレスモータを使用して回転多面鏡を回転駆動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、光源からの光ビームを偏向して感光体上に照射するための回転多面鏡を有する光走査機構を備えるものがある。また、回転多面鏡を回転駆動するための駆動モータとして、複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータが使用されることがある。例えば、ブラシレスモータのロータの近傍に複数のホール素子を配置し、各ホール素子からの出力信号に基づきロータの位置及び回転速度を検出して各コイルへの通電タイミングを制御する画像形成装置がある(特許文献1参照)。また、ホール素子を利用せずに、ロータの回転によってコイルに発生する誘起電圧に基づきロータの位置及び回転速度を検出して各コイルへの通電タイミングを制御する画像形成装置がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−129538号公報
【特許文献2】特開2010−237622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ブラシレスモータの回転制御では、ブラシレスモータの回転速度と目標速度との残留偏差を抑制するために、PI(Proportional Integral)制御を利用する構成が好ましい。ところが、上述した画像形成装置のように、ホール素子からの出力信号や誘起電圧など、コイルに生ずる磁束変化に基づきロータの位置及び回転速度を検出してブラシレスモータを回転制御する技術では、ノイズ等の影響により、回転速度の検出結果が大きく変動する。このため、上記ブラシレスモータの回転制御に、単純に公知のPI制御を利用すると、回転速度の変動分により積分要素が不必要に増加したりして、ブラシレスモータを正常に回転制御できなくなるおそれがある。
【0005】
本明細書では、コイルの磁束変化に基づく回転速度の変動によりブラシレスモータを正常に回転制御できなくなることを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される画像形成装置は、光ビームを発光する光源と、感光体と、複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、前記回転多面鏡によって偏向された光ビームの受光の有無に応じた受光信号を出力する光学センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの第1回転速度と目標速度との第1偏差の積分値の変化に関係なく、前記第1偏差の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第1回転制御処理と、前記受光信号に基づく前記ブラシレスモータの第2回転速度と前記目標速度との第2偏差の積分値を算出し、前記第2偏差の変化、及び、前記第2偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第2回転制御処理と、前記第1偏差が規定範囲以内であるかどうかを判断する速度判断処理と、前記第1回転制御処理の実行中に、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲以内になったと判断した場合に、前記第2回転制御処理に切り替える回転制御切替処理と、を実行する構成を有する、
【0007】
上記画像形成装置では、前記制御部は、前記第1偏差の積分値を算出する積分処理と、前記第1偏差と前記第1偏差の積分値との合算値が上限値に達すると、前記第1偏差の積分動作を停止する積分動作停止処理とを実行する構成を有し、前記第1回転制御処理では、前記合算値が前記上限値に達したかどうかにかかわらず、前記第1偏差の積分動作を停止する構成でもよい。
【0008】
また、画像形成装置は、光ビームを発光する光源と、感光体と、複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの回転速度と目標速度との偏差の積分値を算出する積分処理と、前記偏差の変化、及び、前記積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる回転制御処理と、前記偏差と前記積分値との正負が一致するかどうかを判断する正負判断処理と、前記正負が一致すると判断した場合、前記偏差と前記積分値との合算値が上限値に達すると、前記偏差の積分動作を停止させ、前記正負が相違すると判断した場合、前記合算値が前記上限値に達したかどうかにかかわらず、前記偏差の積分動作を実行する積分動作切替処理と、を実行する構成を有してもよい。
【0009】
更に、画像形成装置は、光ビームを発光する光源と、感光体と、複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、前記制御部とを備え、前記制御部は、前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの回転速度と目標速度との偏差の積分値を算出する積分処理と、前記偏差の変化、及び、前記積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる回転制御処理と、前記偏差が上限値に達すると、前記偏差の積分動作を停止させる積分動作停止処理とを実行する構成を有してもよい。
【0010】
また、画像形成装置は、光ビームを発光する光源と、感光体と、複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、前記回転多面鏡によって偏向された光ビームの受光の有無に応じた受光信号を出力する光学センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの第1回転速度と目標速度との第1偏差の積分値を算出し、前記第1偏差の変化、及び、前記第1偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第1回転制御処理と、前記受光信号に基づく前記ブラシレスモータの第2回転速度と前記目標速度との第2偏差の積分値を算出し、前記第2偏差の変化、及び、前記第2偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第2回転制御処理と、前記第1回転速度と前記目標速度との第1偏差が規定範囲以内であるかどうかを判断する速度判断処理と、前記第1回転制御処理の実行中に、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲内になったと判断した場合に、当該判断時の前記第1偏差の積分値以下の値を、前記第2偏差の積分値の初期値として、前記第1回転制御処理から前記第2回転制御処理に切り替える回転制御切替処理と、を実行する構成を有してもよい。
【0011】
上記画像形成装置では、前記制御部は、前記回転制御切替処理では、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲内になったと判断した場合に、当該判断時の前記第1偏差の積分値、あるいは前記通電切替部による通電のオンオフ比率を固定して、前記第1回転制御処理から前記第2回転制御処理に切り替える構成でもよい。
【0012】
上記画像形成装置であって、制御部は、積分器、及び、非線形スイッチを有し、前記積分器により前記積分処理を実行し、前記非線形スイッチをオンオフすることにより、前記積分動作を入り切りする構成でもよい。
【0013】
なお、この発明は、画像形成装置、画像形成方法、回転制御装置、回転制御印刷方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コイルの磁束変化に基づく回転速度の変動によりブラシレスモータを正常に回転制御できなくなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係るレーザプリンタの内部構成図
【図2】スキャナ部の構成を示す模式図
【図3】FG信号及び通電オンオフ信号の波形を示すタイムチャート
【図4】制御回路の構成を示すブロック図
【図5】ブラシレスモータの回転制御処理を示すフローチャート
【図6】ブラシレスモータの回転速度の時間的変化を示したグラフ
【図7】実施形態2のブラシレスモータの回転制御処理を示すフローチャート
【図8】ブラシレスモータの回転速度の時間的変化を示したグラフ
【図9】実施形態3の制御回路の構成を示すブロック図
【図10】実施形態4のブラシレスモータの回転制御処理を示すフローチャート
【図11】ブラシレスモータの回転速度の時間的変化を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
実施形態1について図1〜図6を参照しつつ説明する。
(レーザプリンタの構成)
図1に示すように、本実施形態のレーザプリンタ1は本体フレーム2を備え、この本体フレーム2内に、用紙等のシート3を供給するためのフィーダ部4や、供給されたシート3に画像を形成するための画像形成部5などが収容されている。
【0017】
なお、レーザプリンタ1は、画像形成装置の一例であり、単色プリンタだけでなく、2色以上のカラープリンタでもよい。また、印刷機能を有していれば、例えば、ファクシミリ機能、コピー機能、読み取り機能(スキャナ機能)等を備えた複合機でもよい。
【0018】
フィーダ部4は、シートトレイ6、押圧板7、ピックアップローラ8、一対のレジストレーションローラ9,9を有する。押圧板7は、その後端部を中心に回転可能とされており、押圧板7上の最上位にあるシート3がピックアップローラ8に向かって押圧されている。シートトレイ6内のシート3は、ピックアップローラ8の回転によって1枚毎に取り出される。取り出されたシート3は、レジストレーションローラ9,9によってレジストされた後に転写位置に送られる。転写位置は、シート3に感光体10上のトナー像を転写する位置であって、感光体10と転写ローラ11との接触位置である。
【0019】
画像形成部5は、例えば、スキャナ部12、プロセスカートリッジ13および定着部14を有する。スキャナ部12は、光源15(図2参照)、及び、ポリゴンミラー16等を有する。光源15から発光されたレーザ光Lは、ポリゴンミラー16によって周期的に偏向されつつ感光体10の表面上に照射される。スキャナ部12の詳細については後述する。なお、ポリゴンミラー16は回転多面鏡の一例であり、レーザ光Lは光ビームの一例である。
【0020】
プロセスカートリッジ13は、感光体10、及びスコロトロン型の帯電器17、現像ローラ18等を有する。帯電器17は、感光体10の表面を一様に正極性に帯電させる。帯電された感光体10の表面は、スキャナ部12からのレーザ光Lにより露光され、静電潜像が形成される。その形成された静電潜像は、現像ローラ18の表面上に担持されたトナーが供給されることにより現像化され、転写位置にてシート3上に転写される。画像が形成されたシート3は、定着部14によってトナーが熱定着され、排紙パス19を介して排紙トレイ20上に排紙される。
【0021】
(スキャナ部の構成)
図2に示すように、スキャナ部12は、レーザ光Lを発光する半導体レーザ等の光源15、第1レンズ部30、ポリゴンミラー16、第2レンズ部31、光学センサ32、ブラシレスモータ33、制御基板34等を備える。
【0022】
第1レンズ部30は、コリメータレンズやシリンドリカルレンズなどで構成されており、光源15から発光されたレーザ光Lを透過してポリゴンミラー16に照射させる。第2レンズ部31は、fθレンズやシリンドリカルレンズなどで構成されており、ポリゴンミラー16にて偏向、換言すれば反射されたレーザ光Lを透過して感光体10上に照射させる。
【0023】
ポリゴンミラー16は、例えば6つのミラー面で構成されており、ブラシレスモータ33によって高速で回転駆動される。ポリゴンミラー16は、高速回転されることで、光源15から発光されたレーザ光Lを周期的に偏向し、第2レンズ部31を介して感光体10上に走査ラインを順次形成する。なお、走査ラインは、画像データの各ラインデータに応じたドット状の露光ラインであり、各ラインデータが画像の空白部分に対応する場合には走査ラインは形成されない。
【0024】
ブラシレスモータ33は、3相のブラシレスDCモータであり、U相、V相、W相の各コイルが配置されたステータ35、及び、界磁用永久磁石が配置されたロータ36を有する。図2には、ブラシレスモータ33の構成として、各コイルがスター結線で配置され、ロータ36が例えば10極の界磁用永久磁石を有する構成が例示されている。ポリゴンミラー16は、ロータ36と共に一体的に回転する。
【0025】
制御基板34には、ブラシレスモータ33を回転駆動する駆動回路37、及び、制御回路38等が実装されている。駆動回路37は、例えばインバータ37Aを有し、各コイルへの通電をオンオフ、換言すれば入り切りする。インバータ37Aは、通電切替部の一例である。制御回路38は、光源15の発光制御と、ポリゴンミラー16の回転制御とを行う。なお、制御回路38の構成は後述する。
【0026】
光学センサ32は、ポリゴンミラー16で偏向されたレーザ光Lが感光体10に達する前に当該レーザ光Lを受光する位置に配置されている。光学センサ32は、レーザ光Lによる各走査ラインの書き出しタイミングを決定するためのものであって、光源15から発光されたレーザ光Lを受光してBD(Beam Detect)信号を制御回路38に出力する。BD信号は受光信号の一例である。なお、光学センサ32は、レーザ光Lが感光体10を通過した後に当該レーザ光Lを受光する位置に配置してもよい。
【0027】
(ロータの位置検出のための構成)
制御回路38は、ホール素子等の位置検出素子を利用せずにロータ36の位置を検出する。即ち、ステータ35に対するロータ36の回転に伴って各コイルに発生する誘起電圧に基づきロータ36の位置を検出する。
【0028】
ロータ36の回転により、各コイルには、S極の磁石とN極の磁石とが交互に接近、即ち、着磁し、これに伴ってコイル中の磁束が変化して各コイルに誘起電圧が発生する。また、各コイルのインピーダンスは、その接近する磁石がS極かN極かによって異なる。従って、誘起電圧は、S極が接近したときとN極が接近したときとで異なるレベルに周期的に変化した正弦波等の波形を示す。従って、この誘起電圧を検出することにより、ロータ36の位置、即ち、各コイルにどの極性の磁石が接近しているかを検出することが可能になる。
【0029】
誘起電圧を検出するための構成は次の通りである。図2に示すように、駆動回路37は、各コイルに対応する3つの電圧検出回路39,39,39を有する。各電圧検出回路39は、磁束変化検出部の一例であり、対応するコイルの端点Pとスター結線の中位点Oとの間の電圧差に応じた検出信号を出力する。端点Pは、駆動回路37と接続される側のコイルの端部であり、上記電圧差には、誘起電圧が含まれる。駆動回路37は、例えば図示しないコンパレータを有し、コンパレータは、各検出信号を、各コイルに接近する磁石の極性の入れ替わりによる誘起電圧の変化に応じてレベル反転するハイロー信号に変換して制御回路38に与える。以下、このハイロー信号をFG信号という。
【0030】
図3に示すように、各相に対応するFG信号は、互いに略120度ずつ位相がずれた波形として制御回路38に与えられる。そして、制御回路38は、各FG信号に応じた通電オンオフ信号、後述するPWM信号を駆動回路37に与えて各コイルへの通電の入りきりを制御し、これにより、ブラシレスモータ33を回転駆動することができる。
【0031】
また、図2に示すように、制御基板34は、ブラシレスモータ33の設置場所から離間した位置に配置されており、制御基板34とブラシレスモータ33とは、3つのコイルの端点P及び中位点0とそれぞれ接続された4本の信号線のみによって接続されている。
【0032】
(制御回路の構成)
制御回路38は、制御部の一例であり、上記FG信号に基づきブラシレスモータ33の回転駆動を制御することが可能であり、以下、この制御をFG回転制御という。また、制御回路38は、上記BD信号に基づきブラシレスモータ33の回転駆動を制御することが可能であり、以下、この制御をBD回転制御という。
【0033】
図4に示すように、制御回路38には、CPU41、メモリ42、PI制御回路43が搭載されている。メモリ42には、例えば40000rpm等の目標速度Vt、規定範囲ΔVthに関する情報や、後述する回転制御処理を実行するためのプログラム等が記憶されている。CPU41は、上記FG回転制御の実行時には、電圧検出回路39から上記3つのFG信号を受け、3つのFG信号のうち少なくとも1つの信号のオンオフ周期に基づきブラシレスモータ33の回転速度を検出する。以下、このFG信号に基づき検出された回転速度を、FG回転速度という。また、CPU41は、上記BD回転制御の実行時には、光学センサ32からBD信号を受け、BD信号のオンオフ周期に基づきブラシレスモータ33の回転速度を検出することが可能である。以下、このBD信号に基づき検出された回転速度を、BD回転速度という。
【0034】
CPU41は、FG回転速度またはBD回転速度と目標速度Vtとの偏差を算出し、当該偏差に応じた電圧信号を、図示しないD/A変換器を介して、PI制御回路43に与える。本実施形態では、偏差は、FG回転速度またはBD回転速度から目標速度Vtを差し引いた値であるものとする。
【0035】
PI制御回路43は、比例ゲイン素子44、加算回路45、非線形(PDF)スイッチ46、積分器47、積分ゲイン素子48、比較器49、飽和演算回路50、PWM変調回路51を有する。比例ゲイン素子44は、CPU41からの偏差を、予め定められた比例ゲインKpに応じて増幅し、増幅後の偏差に応じた電圧信号を加算回路45に与える。非線形スイッチ46は、CPU41からの偏差を積分器47に与えるオン状態と、偏差を積分器47に与えないオフ状態とに切り替え可能である。積分器47は、非線形スイッチ46からの偏差を積分し、その積分値に応じた電圧信号を、積分ゲイン素子48に与える。積分ゲイン素子48は、積分器47からの積分値を、予め定められた積分ゲインKiに応じて増幅し、増幅後の積分値に応じた電圧信号を加算回路45に与える。
【0036】
加算回路45は、比例ゲイン素子44及び積分ゲイン素子48からの電圧信号に基づき、偏差と、積分器47の積分値とを合算し、その合算値に応じた電圧信号を飽和演算回路50に与える。飽和演算回路50は、上記合算値と、予め定められた飽和値とを比較し、合算値が飽和値以下である場合には、当該合算値に応じた電圧信号をPWM変調回路51に与える。一方、飽和演算回路50は、合算値が飽和値を超える場合には、当該飽和値に応じた電圧信号をPWM変調回路51に与える。なお、飽和値は、ブラシレスモータ33のコイルに流す駆動電流の上限値、例えば2Aに対応した電圧値であることが好ましい。
【0037】
PWM変調回路51は、飽和演算回路50からの電圧信号をPWM変調したPWM値(デューティ比)に応じたPWM信号をインバータ37Aに与える。インバータ37Aは、PWM信号に基づき各コイルへの通電がオンオフ制御され、これにより、ブラシレスモータ33が回転駆動される。また、PWM信号のPWM値が変更されると、これに応じて通電オン時のコイルへの通電量が変化し、これに伴ってブラシレスモータ33の回転速度が変更される。
【0038】
CPU41は、図示しないD/A変換器を介して、上限値に応じた電圧信号を比較器49に与える。上限値は、上記飽和値に略等しいことが好ましい。比較器49は、加算回路45及びCPU41からの電圧信号に基づき、合算値が上限値未満である場合に、非線形スイッチ46をオン状態とし、積分器47の積分動作を続行させる。一方、比較器49は、合算値が上限値以上である場合に、非線形スイッチ46をオフ状態とし、積分器47の積分動作を停止させる。これにより、積分器47の積分値が、飽和値に関係なく、不必要に増加することを抑制することができる。
【0039】
また、CPU41は、図示しないD/A変換器を介して、強制停止指令を示す電圧信号を非線形スイッチ46に与えることにより、合算値が上限値以上であるかどうかにかかわらず、非線形スイッチ46を強制的にオフ状態にすることができる。
【0040】
(ブラシレスモータの回転制御)
制御回路38は、例えばレーザプリンタ1の電源がオンされる等の所定の起動条件を満たすと、ブラシレスモータ33の回転制御処理を実行する。具体的には、CPU41が、メモリ42から上記プログラムを読み出して、図5に示す回転制御処理を実行する。
【0041】
CPU41は、速度検出信号としてFG信号を参照しつつ、非線形スイッチ46を強制的にオフ状態とすることで、P制御によるFG回転制御を実行し始める。次に、CPU41は、ロータ36の初期位置、例えば起動前の停止位置を検出する(S2)。具体的には、CPU41は、駆動回路37を制御して、各コイルに電流を流すことにより、コイル中の磁束が変化し、これに伴って変化する各FG信号に基づきロータ36の初期位置を検出することができる。
【0042】
CPU41は、ロータ36の初期位置を検出すると、強制通電を実行する(S3)。具体的には、CPU41は、上記初期位置の検出結果を踏まえた電圧信号をPI制御回路に与えて、駆動回路37により各コイルへの通電を順次オンオフして強制的に通電を行い、ロータ36の回転駆動させる。各コイルに生じる誘起電圧がFG信号に反映されるから、このFG信号に基づきロータ36の位置及びロータ36の回転速度を検出することが可能になる。CPU41は、その検出されたFG回転速度と目標速度Vtとの第1偏差に応じた電圧信号を、PI制御回路43に与えるようにする。これにより、PI制御回路43は、第1偏差の積分値の変化に関係なく、第1偏差の変化に比例したPWM値のPWM信号を出力する。なお、このP制御によるFG回転制御の処理は、第1回転制御処理の一例である。
【0043】
CPU41は、上記第1偏差が前述した規定範囲ΔVth以内であるかどうかを判断する速度判断処理を実行する(S4)。なお、この速度判断処理では、第1偏差が規定範囲ΔVth以内にある状態に一時的になったかどうかを判断してもよいが、同状態が所定期間だけ継続しているかどうかを判断することによりFG回転速度が目標速度Vt付近に安定したかどうかを判断してもよい。
【0044】
CPU41は、第1偏差が前述した規定範囲ΔVth外であると判断した場合(S4:NO)、上記P制御によるFG回転制御処理を続行する。一方、CPU41は、第1偏差が前述した規定範囲ΔVth以内であると判断した場合(S4:YES)、光源15の発光を開始させる(S5)。これにより、光学センサ32は、ポリゴンミラー16にて偏向されたレーザ光Lを周期的に受光し、その受光タイミングに応じてBD信号を出力するようになる。なお、光源15の発光タイミングは、S5よりも前でもよい。但し、光源15の発光タイミングをS5にすれば、光源15からのレーザ光Lが感光体10に照射される期間が短くなり、その分だけ、感光体10の損傷を抑制することができる。
【0045】
CPU41は、光源15を発光させると、BD信号チェックを行う(S6)。具体的には、CPU41は、BD信号の有無、BD回転速度と目標速度Vtとの第2偏差が規定範囲ΔVth以内であるかどうかを判断する。CPU41は、BD信号のチェック結果が正常であれば、速度検出信号としてBD信号を参照しつつ、非線形スイッチ46の強制オフ状態を解除することで、PI制御によるBD回転制御を実行し始める(S7)。具体的には、CPU41は、第2偏差に応じた電圧信号を、PI制御回路43に与えるようにする。これにより、PI制御回路43は、第2偏差の変化、及び、第2偏差の積分値の変化に応じたPWM値のPWM信号を出力する。なお、このPI制御によるBD回転制御の処理は、第2回転制御処理の一例である。CPU41は、印刷処理が終了するなど、所定の停止条件を満たすと、PI制御によるBD回転制御を終了し、本回転制御処理を終了する。
【0046】
(本実施形態の効果)
図6には、ブラシレスモータ33の回転速度の時間的変化を示したグラフが示されている。実線X1は、本実施形態の上記回転制御処理を実行した場合のグラフである。一点鎖線X2は、PI制御によるFG回転制御を実行した場合のグラフである。
【0047】
FG信号は、BD信号に比べて、ノイズ等の影響により高周期で変動する。このため、仮に、PI制御によりFG回転制御を実行すると、FG回転速度が目標速度Vtに近づいても、FG信号の変動分が積分器47で積分され、積分値が増加するに伴って、合算値も増加して上限値以上となり、非線形スイッチ46がオフ状態になってしまう。そうすると、図6の一点鎖線X2に示すように、FG回転速度が目標速度Vtを超えて、第1偏差が負の値になっても、積分値が減算されず、ブラシレスモータ33の回転速度が目標速度Vtに収束するのが遅れるという問題が発生する。
【0048】
これに対し、本実施形態では、第1偏差が規定範囲ΔVth外である場合、P制御によるFG回転制御が実行される。これにより、当該FG回転制御において、FG回転速度の変動分により積分要素が増加し、ブラシレスモータ33を正常に回転制御できなくなることを抑制することができる。一方、第1偏差が規定範囲ΔVth以内である場合、PI制御によるBD回転制御が実行される。BD回転速度は、FG回転速度に比べて、変動が小さいため、その変動による第2偏差の積分値の増加量は比較的少ない。従って、PI制御によるFG回転制御を実行した場合に比べて、ブラシレスモータ33の回転速度を早期に目標速度Vtに収束させることができる(図6の実線X1参照)。
【0049】
また、第2偏差の変化に加えて、第2偏差の積分値を利用するPI制御に切り替えることにより、P制御をそのまま続行した場合に比べて、残留偏差を抑制してブラシレスモータ33の回転速度を目標速度に近付けることができる。これにより、コイルの磁束変化に基づく回転速度の変動によりブラシレスモータ33を正常に回転制御できなくなることを抑制することができる。
【0050】
<実施形態2>
図7及び図8は実施形態2を示す。前記実施形態1との相違は、回転制御処理にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0051】
図7に示すように、CPU41は、強制通電(S3)を実行した後(図8のT1)、P制御によるFG回転制御から、PI制御によるFG回転制御に切り替え(S11)、非線形スイッチ46がオフ状態であるかどうかを判断する(S12)。具体的には、CPU41は、加算回路45の算出結果、比較器49の比較結果等に基づき、合算値が上限値以上であるかどうかを判断する。CPU41は、非線形スイッチ46がオフ状態であると判断すると(S12:YES)、第1偏差と、第1偏差の積分値との正負、換言すれば符号が一致するかどうかを判断する正負判断処理を実行する(S13)。
【0052】
CPU41は、正負判断処理の判断結果に基づき、積分器47の積分動作の入り切りを切り替える積分動作切替処理を実行する。具体的には、CPU41は、上記正負が一致すると判断した場合には(S13:YES)、非線形スイッチ46をオフ状態のままとし、S16に進む。要するに、CPU41は、正負が一致し、且つ、第1偏差と積分値との合算値が上限値に達している場合には、第1偏差の積分動作を停止させる。一方、CPU41は、上記正負が相違すると判断した場合には(S13:NO 図8のT2)、合算値が上限値に達したかどうかにかかわらず、非線形スイッチ46を強制的にオフ状態にして、第1偏差の積分動作を強制的に実行し、S16に進む。
【0053】
なお、CPU41は、第1偏差が規定範囲ΔVth外である場合には(S16:NO)、S12に戻り、第1偏差が規定範囲ΔVth以内である場合には(S16:YES 図8のT3)、S5に進む。また、CPU41は、BD信号チェック(S6)を実行した後、PI制御によるFG回転制御から、PI制御によるBD回転制御に切り替える(S17)。
【0054】
本実施形態によれば、第1偏差と積分値との正負が相違すると判断した場合、第1偏差と積分値との合算値が上限値に達したかどうかにかかわらず、第1偏差の積分動作が実行される。このため、第1偏差が負の値になると、積分値が減算されるため、ブラシレスモータ33の回転速度が目標速度Vtに収束するのが遅れることを抑制することができる。
【0055】
<実施形態3>
図9は実施形態3を示す。前記実施形態1との相違は、PI制御回路の構成にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0056】
実施形態1のPI制御回路43は、比較器49が、偏差と積分器47の積分値との合算値と上限値とを比較する構成であった。これに対し、図9に示すように、本実施形態の制御回路61が有するPI制御回路60は、比較器49が、偏差と上限値とを比較する構成である。CPU41は、図7に示す回転制御処理に対して、S12〜S15を除いた回転制御処理を実行する。具体的には、CPU41は、P制御によるFG回転制御から、PI制御によるFG回転制御に切り替えた(S11)後、第1偏差が規定範囲ΔVth以内であるかどうかを判断し(S16)、第1偏差が規定範囲ΔVth以内であると判断すれば(S16:YES)、S5に進む。
【0057】
本実施形態によれば、偏差と積分値との合算値ではなく、偏差が上限値に達したときに積分動作が停止される。このため、FG信号の変動分により積分器47の積分値が増加しても、その増加分は、比較器49での比較結果に影響しない。このため、積分値の増加により非線形スイッチ46がオフ状態になってしまうことを抑制し、コイルの磁束変化に基づく回転速度の変動によりブラシレスモータ33を正常に回転制御できなくなることを抑制することができる。
【0058】
<実施形態4>
図10及び図11は実施形態4を示す。前記実施形態1との相違は、回転制御処理にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0059】
図10に示すように、CPU41は、PI制御によるFG回転制御の実行を開始し(S21)、S2〜S6までの処理を実行し、駆動回路47に与えるPWM信号のPWM値、換言すれば制御回路38の出力値を固定し、それと同時以降に、積分器47の積分値をゼロにリセットする(S22 図11のT1)。PWM値を固定する処理の一例は次の通りである。CPU41は、飽和演算回路50の飽和上限値及び飽和下限値を変更可能であり、また、加算回路45の合算値を検知可能とする。そして、CPU41は、加算回路45の合算値に基づき、飽和上限値及び飽和下限値を、加算回路45のリセット直前の合算値に変更することで、PWM値をリセット直前の値に固定する。なお、S22の処理は、S5、S6の処理の前に実行してもよい。
【0060】
そして、CPU41は、PI制御によるFG回転制御から、PI制御によるBD回転制御に切り替える回転制御切替処理を実行し(S23)、加算回路45の合算値が、リセット直前の値に回復したと判断した場合に(S24:YES)、上記PWM信号のPWM値の固定を解除する(S25 図11のT2)。なお、CPU41は、第2偏差が規定範囲ΔVth以内になった場合にPWM値の固定を解除する構成でもよい。
【0061】
本実施形態によれば、PI制御によるFG回転制御の実行中に、第1偏差が規定範囲ΔVth以内になった場合に、積分器47の積分値がゼロにリセットされる。従って、PG回転制御での第1偏差の積分値が、BD回転制御のPI制御に引き継がれることを抑制することができる。
【0062】
ここで、本実施形態とは異なり、CPU41が、PWM信号のPWM値を固定せずに、積分器47の積分値をゼロにリセット構成でもよい。しかし、この構成にすると、図11の一点鎖線X4に示すように、上記リセットにより、ブラシレスモータ33の回転速度が急激に落ち込むおそれがある。これに対し、本実施形態では、CPU41が、PWM値を固定して、積分器47の積分値をリセットする。このため、図11の実線X3に示すように、リセットによりブラシレスモータ33の回転速度が急激に落ち込むことを抑制して、円滑に回転制御切替処理を行うことができる。
【0063】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施形態のブラシレスモータは、3相、アウターロータ型、且つ、スター結線を採用したものであったが、本発明はこれに限られない。2相、或いは、4相以上であってもよい。また、インナーロータ型であってもよく、デルタ結線であってもよい。なお、デルタ結線の場合、例えば各コイルの端子間電圧に基づき、誘起電圧に応じた検出信号を得ることができる。
【0064】
上記実施形態では、6面のポリゴンミラー16と10極のブラシレスモータ33を使用したが、本発明はこれに限られない。6面以外の面数を有するポリゴンミラー、10極以外の極数(ポール数)を有するブラシレスモータであってもよい。
【0065】
上記実施形態では、ホール素子を利用せずに、ロータの回転によってコイルに発生する誘起電圧に基づきロータの位置及び回転速度を検出して各コイルへの通電タイミングを制御する構成を例に挙げた。しかし、これに限らず、ブラシレスモータのロータの近傍に複数のホール素子を配置し、各ホール素子からの出力信号に基づきロータの位置及び回転速度を検出して各コイルへの通電タイミングを制御する構成でもよい。この場合、ホール素子が、磁束変化検出部の一例である。
【0066】
上記実施形態では、制御回路38は、1つのCPUを備える構成とした。しかし、制御回路38は、複数のCPUを備える構成や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハード回路を備える構成でもよい。具体的には、上記実施形態では、積分器47を利用したハード構成によって積分処理を実行した。しかし、CPU41のソフト処理により積分処理を実行する構成でもよい。また、非線形スイッチ46を利用したハード構成によって積分動作停止処理を実行した。しかし、CPU41のソフト処理により積分動作停止処理を実行する構成でもよい。また、比較器49、加算回路45、飽和演算回路50、PWM変調回路51の少なくとも1つの動作を、CPU41によるソフト処理で実行する構成でもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、回転制御処理、正負判断処理、積分動作切替処理、回転制御切替処理を、CPU41によるソフト処理で実行した。しかし、上記処理の少なくとも1つを、ハード回路で実行する構成でもよい。
【0068】
上記実施形態1において、積算動作停止処理を実行しない構成でもよい。このような構成でも、第1偏差が規定範囲ΔVth以内になった場合に、P制御によるFG回転制御から、PI制御によるBD回転制御に切り替えることにより、コイルの磁束変化に基づく回転速度の変動によりブラシレスモータを正常に回転制御できなくなることを抑制することができる。
【0069】
上記実施形態では、回転制御処理のプログラムの一例として、メモリ42に記憶されたものを例に挙げた。しかし、上記プログラムは、これに限らず、ハードディスク装置、フラッシュメモリ(登録商標)などの不揮発性メモリや、CD−Rなどの記憶媒体などに記憶されたものでもよい。
【0070】
上記実施形態において、PI制御の代わりに、PID(Proportional Integral Derivative)制御を実行してもよい。また、P制御の代わりに、PD制御を実行してもよい。
【0071】
上記実施形態1では、CPU41が、非線形スイッチ46に強制停止指令を与えて強制オフさせることにより(図1のS1)、第1偏差の積分値の変化に関係なく、第1偏差の変化に応じてFG回転制御を実行した。しかし、これに限らず、CPU41が、非線形スイッチ46に強制停止指令を与えることなく、比較器49への上限値をゼロに設定することにより、実質的に積分動作を停止させることにより、第1偏差の積分値の変化に関係なく、第1偏差の変化に応じてFG回転制御を実行してもよい。
【0072】
上記実施形態1では、CPU41は、第1偏差が規定範囲外である場合、常に、P制御によるFG回転制御を実行した。しかし、これに限らず、CPU41は、第1偏差が規定範囲よりも更に大きい所定範囲外である場合に、PI制御によるFG回転制御を実行し、第1偏差が所定範囲以内になった場合にP制御によるFG回転制御に切り替える構成でもよい。
【0073】
上記実施形態2,3では、FG回転制御からBD回転制御に切り替える構成とした。しかし、FG回転制御をそのまま続行する構成でもよい。
【0074】
また、図4の構成に対し、非線形スイッチ46及び比較器49等を取り除き、FG回転制御ではPI制御を実行しつつ、積分ゲインKiを小さい第1値とし、BD回転制御への切替時に、積分器47の積分値をゼロにクリアして、積分ゲインKiを第2値にする構成でもよい。なお、第1値は、ゼロが好ましいが、ゼロでなくても、飽和演算回路50にて飽和しない程度の値であればよい。
【0075】
また、積分器47自体にリミッタを設けて、積分値の増加により、非線形スイッチ46が強制オフすることを抑制する構成でもよい。この場合、積分値のリミット値×Ki<上記飽和値であることが好ましい。更に、図4の構成に対し、積分器47の上段に、積分ゲイン素子48を設けて、積分ゲインKiを十分に小さくする構成でもよい。
【0076】
上記実施形態4に対し、飽和演算回路50とPWM変調回路51との間に選択素子を設け、CPU41は、通常は、飽和演算回路50の出力値を、選択素子を介してPWM変調回路51に与え、S22において、選択素子に切替動作をさせて、CPU41から、加算回路45のリセット直前の合算値を固定値として、PWM変調回路51に与える構成にしてもよい。但し、上記実施形態4の構成であれば、回転制御切替処理の実行期間(図11のT1〜T2)において、ブラシレスモータ33の回転速度変化に影響を受けずに、駆動回路37をオンオフ制御することができるため、より円滑に回転制御切替処理を行うことができる。
【0077】
また、上記実施形態では、積分値をゼロにリセットした。しかし、これに限らず、S4の判断時の第1偏差の積分値以下の値にリセットする構成であればよい。
【符号の説明】
【0078】
1:レーザプリンタ 10:感光体 15:光源 16:ポリゴンミラー 35:ステータ 36:ロータ 37A:インバータ 32:光学センサ 39:電圧検出回路 38,61:制御回路 Vt:目標速度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを発光する光源と、
感光体と、
複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、
前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、
前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、
前記回転多面鏡によって偏向された光ビームの受光の有無に応じた受光信号を出力する光学センサと、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの第1回転速度と目標速度との第1偏差の積分値の変化に関係なく、前記第1偏差の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第1回転制御処理と、
前記受光信号に基づく前記ブラシレスモータの第2回転速度と前記目標速度との第2偏差の積分値を算出し、前記第2偏差の変化、及び、前記第2偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第2回転制御処理と、
前記第1偏差が規定範囲以内であるかどうかを判断する速度判断処理と、
前記第1回転制御処理の実行中に、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲以内になったと判断した場合に、前記第2回転制御処理に切り替える回転制御切替処理と、を実行する構成を有する、画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、
前記第1偏差の積分値を算出する積分処理と、
前記第1偏差と前記第1偏差の積分値との合算値が上限値に達すると、前記第1偏差の積分動作を停止する積分動作停止処理とを実行する構成を有し、
前記第1回転制御処理では、前記合算値が前記上限値に達したかどうかにかかわらず、前記第1偏差の積分動作を停止する、画像形成装置。
【請求項3】
光ビームを発光する光源と、
感光体と、
複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、
前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、
前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの回転速度と目標速度との偏差の積分値を算出する積分処理と、
前記偏差の変化、及び、前記積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる回転制御処理と、
前記偏差と前記積分値との正負が一致するかどうかを判断する正負判断処理と、
前記正負が一致すると判断した場合、前記偏差と前記積分値との合算値が上限値に達すると、前記偏差の積分動作を停止させ、前記正負が相違すると判断した場合、前記合算値が前記上限値に達したかどうかにかかわらず、前記偏差の積分動作を実行する積分動作切替処理と、を実行する構成を有する、画像形成装置。
【請求項4】
光ビームを発光する光源と、
感光体と、
複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、
前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、
前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、
前記制御部とを備え、
前記制御部は、
前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの回転速度と目標速度との偏差の積分値を算出する積分処理と、
前記偏差の変化、及び、前記積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる回転制御処理と、
前記偏差が上限値に達すると、前記偏差の積分動作を停止させる積分動作停止処理とを実行する構成を有する、画像形成装置。
【請求項5】
光ビームを発光する光源と、
感光体と、
複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、
前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、
前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、
前記回転多面鏡によって偏向された光ビームの受光の有無に応じた受光信号を出力する光学センサと、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの第1回転速度と目標速度との第1偏差の積分値を算出し、前記第1偏差の変化、及び、前記第1偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第1回転制御処理と、
前記受光信号に基づく前記ブラシレスモータの第2回転速度と前記目標速度との第2偏差の積分値を算出し、前記第2偏差の変化、及び、前記第2偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第2回転制御処理と、
前記第1回転速度と前記目標速度との第1偏差が規定範囲以内であるかどうかを判断する速度判断処理と、
前記第1回転制御処理の実行中に、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲内になったと判断した場合に、当該判断時の前記第1偏差の積分値以下の値を、前記第2偏差の積分値の初期値として、前記第1回転制御処理から前記第2回転制御処理に切り替える回転制御切替処理と、
を実行する構成を有する、画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、
前記回転制御切替処理では、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲内になったと判断した場合に、当該判断時の前記第1偏差の積分値、あるいは前記通電切替部による通電のオンオフ比率を固定して、前記第1回転制御処理から前記第2回転制御処理に切り替える、画像形成装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
制御部は、積分器、及び、非線形スイッチを有し、
前記積分器により前記積分処理を実行し、前記非線形スイッチをオンオフすることにより、前記積分動作を入り切りする、画像形成装置。
【請求項1】
光ビームを発光する光源と、
感光体と、
複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、
前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、
前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、
前記回転多面鏡によって偏向された光ビームの受光の有無に応じた受光信号を出力する光学センサと、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの第1回転速度と目標速度との第1偏差の積分値の変化に関係なく、前記第1偏差の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第1回転制御処理と、
前記受光信号に基づく前記ブラシレスモータの第2回転速度と前記目標速度との第2偏差の積分値を算出し、前記第2偏差の変化、及び、前記第2偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第2回転制御処理と、
前記第1偏差が規定範囲以内であるかどうかを判断する速度判断処理と、
前記第1回転制御処理の実行中に、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲以内になったと判断した場合に、前記第2回転制御処理に切り替える回転制御切替処理と、を実行する構成を有する、画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、
前記第1偏差の積分値を算出する積分処理と、
前記第1偏差と前記第1偏差の積分値との合算値が上限値に達すると、前記第1偏差の積分動作を停止する積分動作停止処理とを実行する構成を有し、
前記第1回転制御処理では、前記合算値が前記上限値に達したかどうかにかかわらず、前記第1偏差の積分動作を停止する、画像形成装置。
【請求項3】
光ビームを発光する光源と、
感光体と、
複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、
前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、
前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの回転速度と目標速度との偏差の積分値を算出する積分処理と、
前記偏差の変化、及び、前記積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる回転制御処理と、
前記偏差と前記積分値との正負が一致するかどうかを判断する正負判断処理と、
前記正負が一致すると判断した場合、前記偏差と前記積分値との合算値が上限値に達すると、前記偏差の積分動作を停止させ、前記正負が相違すると判断した場合、前記合算値が前記上限値に達したかどうかにかかわらず、前記偏差の積分動作を実行する積分動作切替処理と、を実行する構成を有する、画像形成装置。
【請求項4】
光ビームを発光する光源と、
感光体と、
複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、
前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、
前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、
前記制御部とを備え、
前記制御部は、
前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの回転速度と目標速度との偏差の積分値を算出する積分処理と、
前記偏差の変化、及び、前記積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる回転制御処理と、
前記偏差が上限値に達すると、前記偏差の積分動作を停止させる積分動作停止処理とを実行する構成を有する、画像形成装置。
【請求項5】
光ビームを発光する光源と、
感光体と、
複数のコイルが配置されたステータ、及び、磁石が配置されたロータを有するブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータによって回転駆動され、前記光源から発光された光ビームを周期的に偏向し、前記感光体上に走査ラインを順次形成する回転多面鏡と、
前記各コイルへの通電をオンオフして前記ブラシレスモータを回転させる通電切替部と、
前記ロータの回転により生じるコイルの磁束変化に応じた検出信号を出力する磁束変化検出部と、
前記回転多面鏡によって偏向された光ビームの受光の有無に応じた受光信号を出力する光学センサと、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記検出信号に基づく前記ブラシレスモータの第1回転速度と目標速度との第1偏差の積分値を算出し、前記第1偏差の変化、及び、前記第1偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第1回転制御処理と、
前記受光信号に基づく前記ブラシレスモータの第2回転速度と前記目標速度との第2偏差の積分値を算出し、前記第2偏差の変化、及び、前記第2偏差の積分値の変化に応じて前記通電切替部による通電をオンオフさせる第2回転制御処理と、
前記第1回転速度と前記目標速度との第1偏差が規定範囲以内であるかどうかを判断する速度判断処理と、
前記第1回転制御処理の実行中に、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲内になったと判断した場合に、当該判断時の前記第1偏差の積分値以下の値を、前記第2偏差の積分値の初期値として、前記第1回転制御処理から前記第2回転制御処理に切り替える回転制御切替処理と、
を実行する構成を有する、画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置であって、
前記制御部は、
前記回転制御切替処理では、前記速度判断処理で前記第1偏差が前記規定範囲外から前記規定範囲内になったと判断した場合に、当該判断時の前記第1偏差の積分値、あるいは前記通電切替部による通電のオンオフ比率を固定して、前記第1回転制御処理から前記第2回転制御処理に切り替える、画像形成装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
制御部は、積分器、及び、非線形スイッチを有し、
前記積分器により前記積分処理を実行し、前記非線形スイッチをオンオフすることにより、前記積分動作を入り切りする、画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−97088(P2013−97088A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238332(P2011−238332)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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