説明

画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体

【課題】仮想カメラの移動速度に応じてぼかし処理を変化させ、スピード感を的確に表現する。
【解決手段】代表点から放射状に頂点が配列されるポリゴンメッシュを生成するメッシュ生成処理と、ポリゴンメッシュの各頂点に対して、原画像をテクスチャとする第1のテクスチャ座標を対応づけるとともに、仮想カメラの移動速度に基づいて、第1のテクスチャ座標をずらした第2のテクスチャ座標を設定するテクスチャ座標設定処理と、第2のテクスチャ座標に基づいて原画像から取得される色を、第1のテクスチャ座標に対応づけられたポリゴンメッシュの各頂点の色として設定して、ポリゴンメッシュを描画するメッシュ描画処理とを含むフィルタ処理を原画像に対して実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、仮想的な3次元空間(オブジェクト空間)に配置設定されたキャラクタなどのオブジェクトについて、仮想カメラ(所与の視点)から見た画像を生成する画像生成システムが実用化されている。
【0003】
このような画像生成システムは、仮想現実を体験させることができるものとして様々なシステムにて用いられるようになっており、例えば、スピード感を演出するために、仮想カメラから見える画像において、仮想カメラの移動速度に応じて、表示物(オブジェクト)を明確に描画する領域と表示物(オブジェクト)をぼかして描画する領域とを変化させる方法が知られている。
【0004】
具体的には、この画像生成システムは、仮想カメラの移動速度が上昇するのに従い、画像において表示物を明確に描画する領域を狭めるとともに、それ以外の領域(画像の色の濃淡の境目をはっきりさせないでぼかし処理を行う領域)を拡大させスピードが増した際の視野の状況を擬似的に再現してスピード感を演出する画像を生成することができるようになっている。
【特許文献1】特許3442736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような画像生成システムにあっては、画像中のぼかし領域を変化させることによってスピード感の演出を行うものの、ぼかし処理が施される領域については、スピードの変化に対応させた処理を行っていない(如何なるスピードであっても、ぼかし処理を行う領域に対しては同一の処理を行っている)ため、スピードの差を的確に表現できない場合がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、仮想カメラの移動速度に応じてぼかし処理を変化させ、スピード感を的確に表現することができるプログラム、情報記憶媒体及び画像生成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、オブジェクト空間において仮想カメラから見える画像を生成するための画像生成システムであって、オブジェクト空間にオブジェクトを設定するオブジェクト空間設定部と、所定の制御情報に基づいて前記仮想カメラの移動制御を行う仮想カメラ制御部と、前記仮想カメラから見えるオブジェクトをスクリーンに投影して原画像を描画するとともに、当該原画像に対して所定のフィルタ処理を実行する描画部と、を含み、前記描画部が、前記原画像に対応づけられた代表点から放射状に頂点が配列されるポリゴンメッシュを生成するメッシュ生成処理と、前記ポリゴンメッシュを構成する各頂点に対して、前記原画像をテクスチャとする第1のテクスチャ座標を対応づけるとともに、所定の条件に基づいて、前記第1のテクスチャ座標のずらし量を設定し、当該ずらし量に基づいて、第2のテクスチャ座標を設定するテクスチャ座標設定処理と、前記第2のテクスチャ座標に基づいて前記原画像から取得される色を、前記第1のテクスチャ座標に対応づけられた前記ポリゴンメッシュの各ピクセルの色として設定して、前記ポリゴンメッシュを描画するメッシュ描画処理と、を前記所定のフィルタ処理として実行する画像生成システムに関するものである。また本発明は、上記各部としてコンピュータを機能させるプログラム及びそのようなプログラムを記憶するコンピュータに読み取り可能な情報記憶媒体に関するものである。
【0008】
本発明によれば、原画像をテクスチャとして対応づけた特殊なポリゴンメッシュを用意して、ポリゴンメッシュを構成する各頂点のテクスチャ座標をずらしながら描画することでフィルタ処理を行っている。
【0009】
この結果、本発明によれば、例えば、レースゲームなどのオブジェクト空間内を移動するオブジェクトに対して注視点を設定してオブジェクトの動きに仮想カメラを追従させる場合などに、オブジェクトが移動する際のスピード感(高速、中速、低速などのスピードの差)をフィルタ処理によって的確に表現することができる。
【0010】
(2)本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、前記描画部が、前記所定のフィルタ処理において、前記代表点を原点とする極座標系にて前記ポリゴンメッシュの各頂点に対応する第3のテクスチャ座標を設定して、当該第3のテクスチャ座標に基づいて、補間係数を設定する補間係数設定処理と、前記第1のテクスチャ座標と前記第2のテクスチャ座標とを、前記補間係数に基づいて線形補間して第4のテクスチャ座標を設定するテクスチャ座標補間処理と、を更に実行するとともに、前記メッシュ描画処理において、前記第4のテクスチャ座標に基づいて前記原画像から取得される色を、前記第1のテクスチャ座標に対応づけられた前記ポリゴンメッシュの各ピクセルの色として設定して、前記ポリゴンメッシュを描画するようにしてもよい。
【0011】
このようにすれば、第1のテクスチャ座標と第2のテクスチャ座標とを基準に、極座標系にて特定された第3のテクスチャ座標を用いて第4のテクスチャ座標を求めて、第4のテクスチャ座標にて規定される原画像の色を第1のテクスチャ座標に対応するポリゴンメッシュのピクセルの色としてポリゴンメッシュを描画するので、代表点を中心とした回転方向へのずれを反映させて様々なパターンでぼかし処理を行うことができる。このためフィルタ処理のパターンを多様化することができ、シチュエーションに応じたスピード感を表現することができるようになる。
【0012】
(3)また本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、前記描画部が、前記補間係数設定処理において、ランダムに色が配列されたテクセルパターンを有するランダムテクスチャから前記第3のテクスチャ座標に基づいて色を取得し、当該取得された色の輝度値に基づいて前記補間係数を設定するようにしてもよい。
【0013】
このようにすれば、第4のテクスチャ座標に対して不規則な変化を与えることができるので、フィルタ処理が施された画像においてポリゴンメッシュの頂点の配列パターンが見えてしまうという不都合を解消することができる。
【0014】
(4)また本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、前記描画部が、前記補間係数設定処理において、前記第3のテクスチャ座標に基づいて設定される補間係数に対して、前記第1のテクスチャ座標に対応する前記原画像のピクセルの位置に基づいて補正処理を行い、前記テクスチャ座標補間処理において、前記補正処理後の補間係数に基づいて、前記第1のテクスチャ座標と前記第2のテクスチャ座標とを線形補間するようにしてもよい。
【0015】
このようにすれば、第4のテクスチャ座標を設定する際に用いる補正係数に変化を与えることによって、例えば、原画像における仮想カメラの注視対象の付近などがはっきりと見えるようにフィルタ処理の強度を調整することができる。
【0016】
(5)また本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、前記描画部が、前記テクスチャ座標設定処理において、前記仮想カメラの移動速度に基づいて、前記第1のテクスチャ座標のずらし量を設定するようにしてもよい。
【0017】
このようにすれば、例えば、仮想カメラの移動速度が速い場合には、第1のテクスチャ座標におけるずらし量を大きくし、仮想カメラの移動速度が遅い場合には、第1のテクスチャ座標におけるずらし量を小さくするなど、仮想カメラの移動速度に応じて各ピクセルのずらし量を変化させることができる。
【0018】
(6)また本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、前記描画部が、前記テクスチャ座標設定処理において、前記仮想カメラの移動速度が大きいほど、前記第1のテクスチャ座標のずらし量を大きく設定するようにしてもよい。
【0019】
このようにすれば、仮想カメラの移動速度が大きいときに原画像の歪みがおおきくなるようにフィルタ処理による原画像のぼかし効果を調整することができるので、例えば、レースゲームなどのオブジェクト空間内を移動するオブジェクトの動きに仮想カメラを追従させる場合に、オブジェクトが移動する際のスピード感を的確に表現することができるようになる。
【0020】
(7)また本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、前記描画部が、前記メッシュ生成処理において、前記スクリーンに対する前記仮想カメラの移動量及び移動方向の少なくとも一方に応じて前記代表点を設定するようにしてもよい。
【0021】
このようにスクリーンに対する仮想カメラの動きに追従するようにフィルタ処理の基準となる代表点を移動させるようにすれば、仮想カメラの移動量だけでなく仮想カメラの移動方向にも応じてスピード感を的確に表現することができ、更に臨場感を増すことができる。
【0022】
(8)また本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、前記描画部が、前記メッシュ生成処理において、前記ポリゴンメッシュの各頂点を、前記代表点から前記原画像を内包する略円形状の外周に至る放射線上において等間隔に配列するようにしてもよい。
【0023】
このようにすれば、スクリーンに対する仮想カメラの動きに応じてポリゴンメッシュの頂点が密に配列される領域と粗く配列される領域が生じるため、仮想カメラの動く向きに応じたスピード感を的確に表現することができ、更に臨場感を増すことができる。
【0024】
(9)また本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、前記描画部が、前記テクスチャ座標設定処理において、前記代表点から遠い頂点ほど、当該頂点に対応づけられる第1のテクスチャ座標のずらし量を大きく設定するようにしてもよい。
【0025】
このように代表点から遠くなるに伴って歪みを大きくすれば、仮想カメラに近い部分ほど、画像がぼやけて見えるという視覚特性をフィルタ処理に反映させることができる。
【0026】
(10)また本発明の画像生成システム、プログラム及び情報記憶媒体では、前記描画部が、前記テクスチャ座標設定処理において、前記代表点から頂点に向かう放射線に沿って前記第1のテクスチャ座標をずらすことによって、前記第2のテクスチャ座標を設定するようにしてもよい。
【0027】
このようにすれば、原画像に対して放射線状に原画像のピクセルをずらすフィルタ処理を施すことができるため、原画像内の特定の部分に向かってスピードが増していく様子を的確に表現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0029】
1.構成
図1に本実施形態の画像生成システム(ゲームシステム)の機能ブロック図の例を示す。なお本実施形態の画像生成システムは図1の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。
【0030】
操作部160は、プレーヤがプレーヤオブジェクト(移動体オブジェクトの一例、プレーヤが操作するプレーヤ車両など)の操作データを入力するためのものであり、その機能は、レバー、ボタン、ステアリング、マイク、タッチパネル型ディスプレイ、或いは筺体などにより実現できる。記憶部170は、処理部100や通信部196などのワーク領域となるもので、その機能はRAM、VRAMなどにより実現できる。
【0031】
情報記憶媒体180(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部100は、情報記憶媒体180に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。即ち情報記憶媒体180には、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)が記憶される。
【0032】
表示部190は、本実施形態により生成された画像を出力するものであり、その機能は、CRT、LCD、タッチパネル型ディスプレイ、或いはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などにより実現できる。音出力部192は、本実施形態により生成された音を出力するものであり、その機能は、スピーカ、或いはヘッドフォンなどにより実現できる。
【0033】
携帯型情報記憶装置194は、プレーヤの個人データやゲームのセーブデータなどが記憶されるものであり、この携帯型情報記憶装置194としては、メモリカードや携帯型ゲーム装置などがある。通信部196は外部(例えばホスト装置や他の画像生成システム)との間で通信を行うための各種制御を行うものであり、その機能は、各種プロセッサ又は通信用ASICなどのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
【0034】
なお本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(データ)は、ホスト装置(サーバー)が有する情報記憶媒体からネットワーク及び通信部196を介して情報記憶媒体180(あるいは記憶部170のメインメモリ172)に配信してもよい。このようなホスト装置(サーバー)の情報記憶媒体の使用も本発明の範囲内に含めることができる。
【0035】
処理部100(プロセッサ)は、操作部160からの操作データやプログラムなどに基づいて、ゲーム処理、画像生成処理、或いは音生成処理などの処理を行う。ここでゲーム処理としては、ゲーム開始条件が満たされた場合にゲームを開始する処理、ゲームを進行させる処理、キャラクタやマップなどのオブジェクトを配置する処理、オブジェクトを表示する処理、ゲーム結果を演算する処理、或いはゲーム終了条件が満たされた場合にゲームを終了する処理などがある。この処理部100は記憶部170内の主記憶部172をワーク領域として各種処理を行う。処理部100の機能は各種プロセッサ(CPU、GPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。
【0036】
処理部100は、オブジェクト空間設定部110、移動・動作処理部112、仮想カメラ制御部114、描画部120、音生成部130を含む。なおこれらの一部を省略する構成としてもよい。
【0037】
オブジェクト空間設定部110は、オブジェクトデータ記憶部172に記憶されているオブジェクトデータに基づいて、車、キャラクタ、建物、球場、樹木、柱、壁、コース(道路)、マップ(地形)などの表示物を表す各種オブジェクト(ポリゴン、自由曲面又はサブディビジョンサーフェスなどのプリミティブで構成されるオブジェクト)をオブジェクト空間に配置設定する処理を行う。即ちワールド座標系でのオブジェクトの位置や回転角度(向き、方向と同義)を決定し、決定された位置(X、Y、Z)に決定された回転角度(X、Y、Z軸回りでの回転角度)でオブジェクトを配置する。
【0038】
移動・動作処理部112は、オブジェクト(車、キャラクタ、又は飛行機等)の移動・動作演算(移動・動作シミュレーション)を行う。すなわち操作部160によりプレーヤが入力した操作データや、プログラム(移動・動作アルゴリズム)や、各種データ(モーションデータ)などに基づいて、オブジェクトをオブジェクト空間内で移動させたり、オブジェクトを動作(モーション、アニメーション)させる処理を行う。具体的には、オブジェクトの移動情報(位置、回転角度、速度、或いは加速度)や動作情報(オブジェクトを構成する各パーツの位置、或いは回転角度)を、1フレーム(1/60秒)毎に順次求めるシミュレーション処理を行う。なおフレームは、オブジェクトの移動・動作処理(シミュレーション処理)や画像生成処理を行う時間の単位である。
【0039】
仮想カメラ制御部114は、オブジェクト空間内の仮想カメラから見える画像を生成するための仮想カメラ(視点)の制御処理を行う。具体的には、仮想カメラの位置(X、Y、Z)又は回転角度(X、Y、Z軸回りでの回転角度)を制御する処理(視点位置、視線方向あるいは画角を制御する処理)を行う。
【0040】
例えば仮想カメラによりオブジェクト(例えば車、キャラクタ、ボール)を後方から撮影する場合には、オブジェクトの位置又は回転の変化に仮想カメラが追従するように、仮想カメラの位置又は回転角度(仮想カメラの向き)を制御する。この場合には、移動・動作処理部112で得られたオブジェクトの位置、回転角度又は速度などの情報(所定の制御情報の一例)に基づいて、仮想カメラを制御できる。或いは、仮想カメラを、予め決められた回転角度で回転させたり、予め決められた移動経路で移動させたりする制御を行ってもよい。この場合には、仮想カメラの位置(移動経路)又は回転角度を特定するための仮想カメラデータ(所定の制御情報の一例)に基づいて仮想カメラを制御する。なお、仮想カメラ(視点)が複数存在する場合には、それぞれの仮想カメラについて上記の制御処理が行われる。
【0041】
描画部120は、処理部100で行われる種々の処理(ゲーム処理)の結果に基づいて描画処理を行い、これにより画像を生成し、表示部190に出力する。いわゆる3次元ゲーム画像を生成する場合には、まずオブジェクト(モデル)の各頂点の頂点データ(頂点の位置座標、テクスチャ座標、色データ、法線ベクトル或いはα値等)を含むオブジェクトデータ(モデルデータ)がオブジェクトデータ記憶部176から入力され、入力されたオブジェクトデータに含まれる頂点データに基づいて、頂点処理(頂点シェーダによるシェーディング)が行われる。なお頂点処理を行うに際して、必要に応じてポリゴンを再分割するための頂点生成処理(テッセレーション、曲面分割、ポリゴン分割)を行うようにしてもよい。頂点処理では、頂点処理プログラム(頂点シェーダプログラム、第1のシェーダプログラム)に従って、頂点の移動処理や、座標変換(ワールド座標変換、カメラ座標変換)、クリッピング処理、あるいは透視変換等のジオメトリ処理が行われ、その処理結果に基づいて、オブジェクトを構成する頂点群について与えられた頂点データを変更(更新、調整)する。そして、頂点処理後の頂点データに基づいてラスタライズ(走査変換)が行われ、ポリゴン(プリミティブ)の面とピクセルとが対応づけられる。そしてラスタライズに続いて、画像を構成するピクセル(表示画面を構成するフラグメント)を描画するピクセル処理(ピクセルシェーダによるシェーディング、フラグメント処理)が行われる。ピクセル処理では、ピクセル処理プログラム(ピクセルシェーダプログラム、第2のシェーダプログラム)に従って、テクスチャの読出し(テクスチャマッピング)、色データの設定/変更、半透明合成、アンチエイリアス等の各種処理を行って、画像を構成するピクセルの最終的な描画色を決定し、透視変換されたオブジェクトの描画色をレンダリングターゲットである描画バッファ174(ピクセル単位で画像情報を記憶できるバッファ。)に出力(描画)する。すなわち、ピクセル処理では、画像情報(色、法線、輝度、α値等)をピクセル単位で設定あるいは変更するパーピクセル処理を行う。これにより、オブジェクト空間内において仮想カメラ(所与の視点)から見える画像が生成される。なお、仮想カメラ(視点)が複数存在する場合には、それぞれの仮想カメラから見える画像を分割画像として1画面に表示できるように画像を生成することができる。
【0042】
なお頂点処理やピクセル処理は、シェーディング言語によって記述されたシェーダプログラムによって、ポリゴン(プリミティブ)の描画処理をプログラム可能にするハードウェア、いわゆるプログラマブルシェーダ(頂点シェーダやピクセルシェーダ)により実現される。プログラマブルシェーダでは、頂点単位の処理やピクセル単位の処理がプログラム可能になることで描画処理内容の自由度が高く、従来のハードウェアによる固定的な描画処理に比べて表現力を大幅に向上させることができる。
【0043】
そして描画部120は、オブジェクトを描画する際に、ジオメトリ処理、テクスチャマッピング、隠面消去処理、αブレンディング等を行う。
【0044】
ジオメトリ処理では、オブジェクトに対して、座標変換、クリッピング処理、透視投影変換、或いは光源計算等の処理が行われる。例えば、透視投影変換では、仮想カメラ前方に設定されるスクリーンに仮想カメラの視野(ビューボリューム)内に配置されているオブジェクトを透視投影する。そして、ジオメトリ処理後(透視投影変換後)のオブジェクトデータ(オブジェクトの頂点の位置座標、テクスチャ座標、色データ(輝度データ)、法線ベクトル、或いはα値等)は、オブジェクトデータ記憶部176に保存される。
【0045】
テクスチャマッピングは、記憶部170に記憶されているテクスチャ(テクセル値)をオブジェクトにマッピングするための処理である。具体的には、オブジェクトの頂点に設定(付与)されるテクスチャ座標等を用いてテクスチャ(色(RGB)、α値などの表面プロパティ)を記憶部170から読み出す。そして、2次元の画像であるテクスチャをオブジェクトにマッピングする。この場合に、ピクセルとテクセルとを対応づける処理や、テクセルの補間としてバイリニア補間、トライリニア補間などを行う。
【0046】
隠面消去処理としては、描画ピクセルのZ値(奥行き情報)が格納されるZバッファ178(奥行きバッファ)を用いたZバッファ法(奥行き比較法、Zテスト)による隠面消去処理を行うことができる。すなわちオブジェクトのプリミティブに対応する描画ピクセルを描画する際に、Zバッファ178に格納されるZ値を参照する。そして参照されたZバッファのZ値と、プリミティブの描画ピクセルでのZ値とを比較し、描画ピクセルでのZ値が、仮想カメラから見て手前側となるZ値(例えば小さなZ値)である場合には、その描画ピクセルの描画処理を行うとともにZバッファ178のZ値を新たなZ値に更新する。
【0047】
αブレンディングとしては、α値(A値)に基づく半透明合成処理(通常αブレンディング、加算αブレンディング又は減算αブレンディング等)を行う。例えば通常αブレンディングの場合には下式(1)〜(3)の処理を行う。
【0048】
=(1−α)×R+α×R (1)
=(1−α)×G+α×G (2)
=(1−α)×B+α×B (3)
また、加算αブレンディングの場合には下式(4)〜(6)の処理を行う。なお単純加算の場合はα=1として下式(4)〜(6)の処理を行う。
【0049】
=R+α×R (4)
=G+α×G (5)
=B+α×B (6)
また、減算αブレンディングの場合には下式(7)〜(9)の処理を行う。なお単純減算の場合はα=1として下式(7)〜(9)の処理を行う。
【0050】
=R−α×R (7)
=G−α×G (8)
=B−α×B (9)
ここで、R、G、Bは、フレームバッファ172Bあるいはフレームバッファ174Dに既に描画されている画像(原画像)のRGB成分であり、R、G、Bは、描画バッファ174に描画すべき画像のRGB成分である。また、R、G、Bは、αブレンディングにより得られる画像のRGB成分である。なお、α値は、各ピクセル(テクセル、ドット)に関連づけて記憶できる情報であり、例えば色情報以外のプラスアルファの情報である。α値は、マスク情報、半透明度(透明度、不透明度と等価)、バンプ情報などとして使用できる。
【0051】
さらに本実施形態では描画部120が、フィルタ処理部122を含む。
【0052】
フィルタ処理部122は、描画バッファ174に描画された原画像を内包する略円形状のポリゴンメッシュを生成し、原画像をテクスチャとしてポリゴンメッシュの各頂点と対応させつつ、仮想カメラ(視点)の移動速度に基づいて、ポリゴンメッシュの各頂点に対応づけられるテクスチャ座標をポリゴンメッシュの代表点から放射状にずらしながら描画することにより原画像に対してフィルタ処理を施すことができるようになっている。
【0053】
具体的には、フィルタ処理126は、メッシュ生成処理、テクスチャ座標設定処理、補間係数設定処理、テクスチャ座標補間処理、メッシュ描画処理等をフィルタ処理として実行し、フィルタ処理の結果を描画バッファ174に出力する。
【0054】
メッシュ生成処理では、原画像に対応づけられた代表点から放射状に頂点が配列される略円形状のポリゴンメッシュを生成する処理を行う。
【0055】
具体的には、仮想カメラの位置(視点位置)、向き(視線方向)に基づいて、スクリーン上における仮想カメラの注視点に相当する位置に代表点を設定する。なお、本実施形態では、スクリーンに対する仮想カメラの移動量に応じて代表点を設定することができるようになっている。そして本実施形態では、代表点から原画像を内包する略円形状の外周に至る放射線上において頂点を等間隔に配列することによりポリゴンメッシュを生成する。なお、必ずしも頂点を等間隔に配列する必要はなく、代表点から遠ざかるに従って、頂点の間隔が狭くなっていてもよいし、代表点から遠ざかるに従って頂点の間隔が広くなっていてもよい。
【0056】
テクスチャ座標設定処理では、ポリゴンメッシュを構成する頂点のそれぞれに対して、原画像をテクスチャとする第1のテクスチャ座標を対応づけるとともに、仮想カメラの移動速度に基づいて、第1のテクスチャ座標のずらし量を設定し、設定されたずらし量に基づいて、第2のテクスチャ座標を設定する処理を行う。特に、本実施形態では、代表点から遠い頂点ほど、頂点に対応づけられる第1のテクスチャ座標のずらし量を大きく設定するとともに、仮想カメラの移動速度が大きいほど、第1のテクスチャ座標のずらし量を大きく設定する。
【0057】
補間係数設定処理では、代表点を原点とする極座標系にてポリゴンメッシュの各頂点における各第1のテクスチャ座標に対応する第3のテクスチャ座標を設定するとともに、第3のテクスチャ座標に基づいて、補間係数を設定する処理を行う。本実施形態では、ランダムに色(R、G、B)が配列されたテクセルパターンを有するランダムテクスチャから第3のテクスチャ座標に基づいて色(R、G、B)を取得し、取得された色のR成分の輝度値に基づいて補間係数を設定する。なおランダムテクスチャからサンプリングされた色のうちG成分の輝度値やB成分の輝度値を補間係数として設定してもよいし、R成分、G成分、B成分の各輝度値による任意の組合せに基づいて、補間係数を演算して求めるようにしてもよい。
【0058】
テクスチャ座標補間処理では、補間係数設定処理において設定された補間係数に基づいて、ポリゴンメッシュの各頂点に対応づけられた第1のテクスチャ座標および第2のテクスチャ座標を線形補間して第4のテクスチャ座標を設定する処理を行う。
【0059】
メッシュ描画処理では、第4のテクスチャ座標に基づいて原画像から取得される色を、第1のテクスチャ座標に対応づけられたポリゴンメッシュの各ピクセルの色として設定して、ポリゴンメッシュを描画することによってフィルタ処理が施された画像を描画する。なおメッシュ描画処理では、第2のテクスチャ座標に基づいて原画像から取得される色を、第1のテクスチャ座標に対応づけられたポリゴンメッシュの各ピクセルの色として設定して、ポリゴンメッシュを描画するようにしてもよい。
【0060】
音生成部130は、処理部100で行われる種々の処理の結果に基づいて音処理を行い、BGM、効果音、又は音声などのゲーム音を生成し、音出力部192に出力する。
【0061】
なお、本実施形態の画像生成システムは、1人のプレーヤのみがプレイできるシングルプレーヤモード専用のシステムにしてもよいし、複数のプレーヤがプレイできるマルチプレーヤモードも備えるシステムにしてもよい。また複数のプレーヤがプレイする場合に、これらの複数のプレーヤに提供するゲーム画像やゲーム音を、1つの端末を用いて生成してもよいし、ネットワーク(伝送ライン、通信回線)などで接続された複数の端末(ゲーム機、携帯電話)を用いて分散処理により生成してもよい。
【0062】
2.本実施形態の手法
2.1 本実施形態のフィルタ処理の概要
次に、図2を用いて本実施形態のフィルタ処理の概要について説明する。
【0063】
本実施形態では、原画像をテクスチャとして対応付けられたポリゴンメッシュを構成する各頂点(ポリゴンメッシュを構成するプリミティブの頂点)に関して、仮想カメラの移動速度に応じて各頂点のテクスチャ座標をずらしながらポリゴンメッシュを描画する手法を採用している。
【0064】
例えば、図2(A)に示すように、原画像をテクスチャとして代表点Aから放射状にほぼ等間隔に頂点が配列されたポリゴンメッシュPMを生成し、原画像を構成する各ピクセルの位置をずらすようにポリゴンメッシュPMの各頂点に対応づけられたテクスチャ座標をずらしながら、ポリゴンメッシュPMを描画するフィルタ処理を行うことによって図2(B)に示すようにスピード感がリアルに表現された画像を生成することができる。
【0065】
具体的には、ポリゴンメッシュを生成するメッシュ生成処理、生成されたポリゴンメッシュに対して各テクスチャ座標を設定するテクスチャ座標設定処理、設定されたテクスチャ座標に対して補間処理を行い新たな座標を設定するテクスチャ座標補間処理、当該テクスチャ座標補間処理を行う際に用いる補間係数を設定する補間係数設定処理、及び、最終的に設定されたテクスチャ座標に基づいてポリゴンメッシュを描画するメッシュ描画処理の各種の処理を行うことによってフィルタ処理が実現される。
【0066】
このような手法を採用することによって、原画像を構成する各ピクセルの位置がずらされて、原画像に対して仮想カメラの移動速度に応じたぼかし効果を与えることができる。また、仮想カメラの移動速度が速い場合には、ピクセルのずらし量を大きくし、仮想カメラの移動速度が遅い場合には、ピクセルのずらし量を小さくするなど、仮想カメラの移動速度の違いに応じて各ピクセルのずらし量を変化させている。
【0067】
また、本実施形態では、ポリゴンメッシュの各頂点におけるテクスチャ座標の代表点を基準とする放射線方向のずらし具合を仮想カメラの移動速度に対応させるとともに、極座標系を用いてテクスチャ座標の代表点まわりの歪み具合を調整することができるようになっている。
【0068】
したがって、本実施形態の手法によれば、例えば、レースゲームなどのオブジェクト空間内を移動するオブジェクトの動きに仮想カメラの動きを追従させる場合に、図2(B)に示すように、オブジェクトが移動する際のシチュエーションに合わせてスピード感(仮想カメラの移動速度の差)を的確に表現することができるようになっている。
【0069】
2.2 メッシュ生成処理
次に、図3を用いて本実施形態のメッシュ生成処理について説明する。
【0070】
本実施形態では、スクリーンにおける仮想カメラの向き(視線方向)を定める注視点に相当する位置などを代表点として設定し、代表点から原画像を内包する略円形状の外周に向かって放射状に頂点が配列されるポリゴンメッシュを生成する手法を採用している。
【0071】
例えば、図3(A)に示すように、代表点A(x,y)がテクスチャ(原画像)の中心付近に対応付けられる場合には、代表点A(x、y)からテクスチャの4つの角を通る円をポリゴンメッシュのPMの外周として設定し、代表点Aから放射状に外周に向かって(放射線方向に)48分割するとともに、代表点A(x、y)の周囲を所定の角度毎に16分割することにより略円形状のポリゴンメッシュPMを生成する。ポリゴンメッシュPMでは、各分割線の交点DPを頂点としたプリミティブPRが網目状に接合されている。
【0072】
また本実施形態では、例えば、図3(B)に示すように、ポリゴンメッシュPMの外周の中心点O(x,y)より左に位置する代表点A(x,y)が設定された場合には、代表点A(x,y)を基準に放射線方向に48分割され、かつ代表点A(x,y)の周囲を16分割して頂点を配列した略円形状のポリゴンメッシュPMを生成する。このように、本実施形態のメッシュ生成処理では、代表点Aがテクスチャとなる原画像の中心よりずれた場合であっても、所定数の等分割を行うことによって頂点を配列したポリゴンメッシュPMを生成するようになっている。特に本実施形態では、代表点Aの位置を仮想カメラのスクリーンに対する移動方向・移動量(仮想カメラの移動ベクトルのスクリーンに対する平行移動成分に相当)に応じて設定するため、仮想カメラの移動に伴って、ポリゴンメッシュPM内に頂点が密に配列される領域(プリミティブPRの面積が小さい領域)と、頂点が粗く配列される領域(プリミティブPRの面積が大きい領域)とを生成することができる。このようにすることによって、本実施形態の手法では、仮想カメラの移動方向に沿ってスピード感を適切に表現することができるフィルタ処理を実現することができるようになる。
【0073】
なお、メッシュ生成処理では、上述したように原画像をテクスチャとして、原画像を内包する略円形状のポリゴンメッシュを生成する場合に限らず、原画像を内包することができれば楕円形状などのポリゴンメッシュを生成するようにしてもよい。
【0074】
2.3 テクスチャ座標設定処理
次に、図4を用いて本実施形態のテクスチャ座標設定処理について説明する。
【0075】
本実施形態では、原画像をテクスチャとし、0〜1の範囲にUV座標値が正規化されているテクスチャ座標系を用いて、ポリゴンメッシュを構成する各頂点と原画像とを対応付けて、第1のテクスチャ座標を設定する手法を採用する。
【0076】
具体的には、例えば、図4(A)に示すように、ポリゴンメッシュPMにおける任意の頂点S,Sに関して、テクスチャの左上の点を原点(すなわち、(U,V)=(0,0))とするテクスチャ座標系に基づいて、頂点Sに第1のテクスチャ座標としてT1(Ub,Vb)が対応づけられ、頂点Sに第1のテクスチャ座標としてT1(Uc,Vc)が対応づけられる。
【0077】
また本実施形態では、頂点毎に設定した第1のテクスチャ座標に対して仮想カメラの奥行き方向(カメラ座標系のZ軸方向)に関する移動速度および代表点から各頂点までの距離をそれぞれ0〜1の値域に正規化したパラメータを求める演算を実行して第1のテクスチャ座標の放射線方向(ポリゴンメッシュPMの代表点から外周に至る方向)のずらし量を設定する。そして、設定されたずらし量に基づいて、第1のテクスチャ座標に対応する第2のテクスチャ座標を設定する手法を採用する。
【0078】
具体的には、例えば、図4(B)に示すように、ポリゴンメッシュPMの頂点Sに対応づけられた第1のテクスチャ座標T1や頂点Sに対応づけられた第1のテクスチャ座標T1に対して、仮想カメラの移動速度を正規化して2乗した値(Zv)と代表点Aから各頂点S,Sまでの距離L,Lとに基づいて、ずらし量ΔT1(ΔU,ΔV),ΔT1(ΔU,ΔV)を設定して(式1参照)、第2のテクスチャ座標T2及びT2を設定するようになっている(式2参照)。
【0079】
ΔT1(ΔU,ΔV)=f((Zv)×L)・・・(式1)
T2(U,V)=T1(U,V)+ΔT1(ΔU,ΔV)・・・(式2)
このように本実施形態の手法では、第1のテクスチャ座標T1のずらし量ΔT1(ΔU,ΔV)を、仮想カメラの奥行き方向の移動速度と代表点Aから頂点までの距離とを考慮して求めることによって、仮想カメラが奥行き方向に素早く移動するほど、頂点に対応づけられる第1のテクスチャ座標の放射線方向におけるずらし量が大きくなり、代表点Aから遠い頂点ほど、頂点に対応づけられる第1のテクスチャ座標の放射線方向におけるずらし量が大きくなるように、第2のテクスチャ座標を設定することができる。
【0080】
なお、本実施形態の手法では、仮想カメラの奥行き方向(視点位置から注視点に向かう方向)の移動速度を正規化しておき、正規化された値の2乗値(Zv)に応じて第2のテクスチャ座標が変動するようになっているが、仮想カメラの奥行き方向の移動速度は、以下のようにして正規化することができる。
【0081】
例えば、レースゲームを例に取ると、仮想カメラが車両などの移動体オブジェクトに追従するように移動制御される場合にあっては、仮想カメラの奥行き方向の移動速度が、時速0km/hから時速350km/hの範囲で変化する場合、時速0km/hから時速100km/hを「0」から「1.0」に対応づけるとともに、時速100km/hから時速350km/hまでを「1.0」の値にクランプすることで正規化することができる。
【0082】
さらに、本実施形態の画像生成システムは、視点の移動速度が大きいほど、第1のテクスチャ座標のずらし量を大きして第2のテクスチャ座標の位置を設定するようになっている。
【0083】
このように本実施形態の手法によれば、代表点から遠くなるのに従って原画像の歪みを大きくすることができるとともに、仮想カメラの奥行き方向の移動速度が大きくなるのに従って原画像の歪みが大きくなるようにぼかし効果を調整することができるので、仮想カメラの移動に伴うスピード感、特に、高速、中速、低速などのスピードの差を原画像の歪み具合によって的確に表現することができる。
【0084】
2.4 補間係数設定処理
次に、図5及び図6を用いて本実施形態のテクスチャ設定処理について説明する。
【0085】
本実施形態では、メッシュ生成処理にて定められた代表点を原点(座標の中心)とする極座標系において、ポリゴンメッシュの各頂点を示す第1のテクスチャ座標に対応させる第3のテクスチャ座標を設定するとともに、第3のテクスチャ座標に基づいて、第1のテクスチャ座標と第2のテクスチャ座標とを補間するための補間係数を設定する手法を採用している。
【0086】
特に本実施形態では、第3のテクスチャ座標に基づいて、ランダムに色が配列されたテクセルパターンを有するランダムテクスチャから色を取得し、取得された色の輝度値に基づいて補間係数を設定するようになっている。
【0087】
すなわち、補間係数設定処理では、第1のテクスチャ座標と第2のテクスチャ座標を合成する際に、第1のテクスチャ座標に対応する極座標を定め、極座標を用いて補間係数を設定するようになっており、原画像に対してぼかし処理を行う際に、代表点を中心とした回転方向へのずれを考慮して、フィルタ処理における原画像のサンプリングパターンを多様に変化させることができるようになっている。
【0088】
具体的には、代表点Aを原点(0,0)に設定した極座標系において、U軸成分の値を代表点Aからの距離とし、V軸成分の値を、代表点Aまわりの角度として第3のテクスチャ座標T3(U,V)をポリゴンメッシュPMの各頂点に対して設定している。
【0089】
例えば、図5に示すように、ポリゴンメッシュPMの頂点S、Sについて、極座標系で指定される第3のテクスチャ座標T3(Ub,Vb),T3(Uc,Vc)が設定されると、各第3のテクスチャ座標T3(Ub,Vb),T3(Uc,Vc)に基づいて、図6に示すようなランダムに色が配列されたテクセルパターンを有するランダムテクスチャから各第3のテクスチャ座標に対応するテクセルPb,Pcに設定された色(Rb,Gb,Bb),(Rc,Gc,Bc)を取得する。そして、取得された色のうちR成分の輝度値Rb,Rcをそれぞれの補間係数として設定する。
【0090】
なお、本実施形態では、補間係数を設定する際に、ランダムテクスチャに基づいて取得したRGBの各色成分のうちR成分の輝度値を用いるようになっているが、もちろん、G成分の輝度値を用いてもよいし、B成分の輝度値を用いてもよいし、各色成分の輝度値の任意の組合せから求めてもよい。
【0091】
また本実施形態では、第3のテクスチャ座標に基づいてランダムテクスチャから色を取得する場合を例に取り説明をしたが、必ずしもランダムテクスチャから色を取得する必要はなく、任意のテクセルパターンを有するテクスチャから第3のテクスチャ座標に基づいて色を取得して、取得された色の輝度値から補間係数を求めるようにしてもよい。
【0092】
2.5 テクスチャ座標補間処理
次に、本実施形態のテクスチャ座標補間処理について説明する。
【0093】
本実施形態では、第1のテクスチャ座標と第2のテクスチャ座標とを、補間係数設定処理にて設定された補間係数に基づいて線形補間して第4のテクスチャ座標を設定する手法を採用する。
【0094】
具体的には、テクスチャ座標設定処理によって設定された各頂点に対応づけられた第1のテクスチャ座標T1および第2のテクスチャ座標T2に対して、上述のように補間係数設定処理によって設定された補間係数Rを用いて(式3)に示す演算を実行し、第4のテクスチャ座標T4を設定するようになっている。
【0095】
T4(U4,V4)=T1(U1,V1)×(1-R)+T2(U2,V2)×R・・・(式3)
なお、上述した補間係数設定処理において、第3のテクスチャ座標T3に基づいてランダムテクスチャを用いて設定される補間係数Rに対して、第1のテクスチャ座標T1に対応する原画像のピクセルの位置に基づいて補正処理を行うようにしてもよい。
【0096】
例えば、原画像の中央より下部に観察者にはっきりと視認させたいオブジェクトが描画されるような場合には、原画像の中央より下部に配置されているピクセルほど、補間係数Rが低くなるように補正して第1のテクスチャ座標T1の合成割合を大きくすることによって、ずらし効果が低くなるようにしてもよい。またこの場合には、原画像の中央より上部に配置されているピクセルほど、補間係数Rが高くなるように補正して第2のテクスチャ座標T2の合成割合を大きくすることによって、ずらし効果が高くなるようにしてもよい。このようにすれば、第4のテクスチャ座標T4を設定する際に用いる補正係数Rに変化を与えることによって、例えば、原画像における仮想カメラの注視対象の付近などがはっきりと見えるようにフィルタ処理の強度を調整することができるため、ポリゴンメッシュPMの代表点Aの位置が視認させたいオブジェクトと離れている場合であっても、ぼかし効果が視認させたいオブジェクトの近傍で弱まることにより、観察者にストレスを与えにくい。
【0097】
以上に述べたように本実施形態の手法によれば、仮想カメラの移動速度に応じたずれのみならず、代表点を中心とした回転方向へのずれをも反映させて様々なパターンでぼかし処理を行うことができる。このためフィルタ処理のパターンを多様化することができ、シチュエーションに応じたスピード感を表現することができるようになる。
【0098】
2.6 メッシュ描画処理
次に、本実施形態のメッシュ描画処理について説明する。
【0099】
本実施形態では、テクスチャ座標補間処理にて設定された第4のテクスチャ座標T4に基づいて、原画像のテクスチャから取得される色を、テクスチャ座標設定処理にて設定された第1のテクスチャ座標T1に対応するポリゴンメッシュPMのピクセルの色として設定して、ポリゴンメッシュPMを描画する手法を採用する。
【0100】
したがって本実施形態の手法によれば、仮想カメラの移動速度に対応させて、原画像を構成するピクセルをずらす効果が得られるので、レースゲームなどのオブジェクト空間内を移動するオブジェクトに対して仮想カメラを追従させる場合に、オブジェクトが移動する際のスピード感、特に、高速や中速または低速などのスピードの差をぼかし処理によって的確に表現することができるようになっている。
【0101】
3.本実施形態の処理
次に、図7を用いて本実施形態におけるフィルタ処理について説明する。
【0102】
まず、原画像が描画されると(ステップS1)、原画像を構成する際の仮想カメラの制御情報(位置、向き)に基づいて代表点を設定し、代表点を基準として頂点を放射状に配列したポリゴンメッシュを生成する(ステップS2)。
【0103】
次いで、生成されたポリゴンメッシュを構成する各頂点と、原画像に基づくテクスチャのテクセルとを対応づけて、第1のテクスチャ座標を設定する(ステップS3)。
【0104】
次いで、ポリゴンメッシュの各頂点に対して仮想カメラにおける移動速度と代表点から各頂点までの距離をパラメータとして第1のテクスチャ座標のずらし量を設定し、各頂点に対応する第2のテクスチャ座標を設定する(ステップS4)。
【0105】
次いで、メッシュ生成処理にて定められた代表点を原点とする極座標系のテクスチャ座標において、ポリゴンメッシュの各頂点に対応する第3のテクスチャ座標を設定する(ステップS5)。
【0106】
次いで、第3のテクスチャ座標に基づいて、ランダムに色が配列されたテクセルパターンを有するランダムテクスチャからテクセルの色をサンプリングし、サンプリングされた色のR成分の輝度値を補間係数に設定する(ステップS6)。
【0107】
次いで、ポリゴンメッシュの頂点毎に、第1のテクスチャ座標と第2のテクスチャ座標とを、ステップS5の処理にて設定された補間係数に基づいて線形補間して第4のテクスチャ座標をそれぞれ設定する(ステップS7)。
【0108】
最後に、各ポリゴンメッシュの頂点毎に、第4のテクスチャ座標に基づいて原画像のテクスチャから色をサンプリングして、ポリゴンメッシュの各ピクセルの色として設定しながらポリゴンメッシュを描画する(ステップS9)。
【0109】
なお、本発明は、上記実施形態で説明したものに限らず、種々の変形実施が可能である。例えば、明細書又は図面中の記載において広義や同義な用語として引用された用語は、明細書又は図面中の他の記載においても広義や同義な用語に置き換えることができる。
【0110】
また、フィルタ処理の各処理についても本実施形態で説明したものに限定されず、これらと均等な手法も本発明の範囲に含まれる。
【0111】
例えば、本実施形態のフィルタ処理において、補間係数設定処理やテクスチャ座標補間処理を行わずに、第2のテクスチャ座標に基づいて原画像のテクスチャからポリゴンメッシュの各ピクセルの色を取得してポリゴンメッシュを描画してもよい。またテクスチャ座標補間処理を行う代わりに、第1のテクスチャ座標に基づいて原画像から取得される色と、第2のテクスチャ座標に基づいて原画像から取得される色とを、補間係数設定処理で設定した補間係数に基づいて線形補間することによりポリゴンメッシュを描画するようにしてもよい。ただし、この場合には、ピクセル単位での処理が多くなるため、処理負荷を考慮すると、頂点単位の処理で済むテクスチャ座標補間処理を採用した方が高速にフィルタ処理を実行することができる。
【0112】
また本実施形態のフィルタ処理の手法は、移動体オブジェクトを横滑りさせながらコーナーを曲がるといういわゆるドリフト状態(所定の移動状態)になった場合に、特殊パラメータをチャージ(増加更新)させて、操作部に対する特定の操作によってと特殊パラメータを消費(使用)して移動体を急加速させて有利にレースを進めることができるようにした画像生成システムに適用することができる。このような画像生成システムでは、操作部に対する特定の操作の種類に応じて、チャージされた特殊パラメータの消費量(使用量)を決定するような場合に、特殊パラメータの消費量に基づいてポリゴンメッシュの各頂点に対応づけられる第1のテクスチャ座標のずらし量を設定するようにしてもよい。
【0113】
また、本発明は、種々のゲームに適用できる。そして、本発明は、業務用ゲームシステム、家庭用ゲームシステム、多数のプレーヤが参加する大型アトラクションシステム、シミュレータ、マルチメディア端末、ゲーム画像を生成するシステムボード、携帯電話等の種々の画像生成システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本実施形態の画像生成システムの機能ブロック図。
【図2】本実施形態のフィルタ処理の概要を説明するための図。
【図3】本実施形態のメッシュ生成処理を説明するための図。
【図4】本実施形態のテクスチャ座標設定処理を説明するための図。
【図5】本実施形態の補間係数設定処理を説明するための図。
【図6】本実施形態の補間係数設定処理に用いられるランダムテクスチャの例。
【図7】本実施形態のフィルタ処理の例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0115】
100 処理部、
110 オブジェクト空間設定部、112 移動・動作処理部、
114 仮想カメラ制御部、120 描画部、122 フィルタ処理部、
130 音生成部、
160 操作部、170 記憶部、172 主記憶部、174 描画バッファ、
176 オブジェクトデータ記憶部、178 Zバッファ、
180 情報記憶媒体、190 表示部、192 音出力部、
194 携帯型情報記憶装置、196 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクト空間において仮想カメラから見える画像を生成するためのプログラムであって、
オブジェクト空間にオブジェクトを設定するオブジェクト空間設定部と、
所定の制御情報に基づいて前記仮想カメラの移動制御を行う仮想カメラ制御部と、
前記仮想カメラから見えるオブジェクトをスクリーンに投影して原画像を描画するとともに、当該原画像に対して所定のフィルタ処理を実行する描画部としてコンピュータを機能させ、
前記描画部が、
前記原画像に対応づけられた代表点から放射状に頂点が配列されるポリゴンメッシュを生成するメッシュ生成処理と、
前記ポリゴンメッシュを構成する各頂点に対して、前記原画像をテクスチャとする第1のテクスチャ座標を対応づけるとともに、所定の条件に基づいて、前記第1のテクスチャ座標のずらし量を設定し、当該ずらし量に基づいて、第2のテクスチャ座標を設定するテクスチャ座標設定処理と、
前記第2のテクスチャ座標に基づいて前記原画像から取得される色を、前記第1のテクスチャ座標に対応づけられた前記ポリゴンメッシュの各ピクセルの色として設定して、前記ポリゴンメッシュを描画するメッシュ描画処理と、
を前記所定のフィルタ処理として実行することを特徴とするプログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記描画部が、前記所定のフィルタ処理において、
前記代表点を原点とする極座標系にて前記ポリゴンメッシュの各頂点に対応する第3のテクスチャ座標を設定して、当該第3のテクスチャ座標に基づいて、補間係数を設定する補間係数設定処理と、
前記第1のテクスチャ座標と前記第2のテクスチャ座標とを、前記補間係数に基づいて線形補間して第4のテクスチャ座標を設定するテクスチャ座標補間処理と、
を更に実行するとともに、
前記メッシュ描画処理において、前記第4のテクスチャ座標に基づいて前記原画像から取得される色を、前記第1のテクスチャ座標に対応づけられた前記ポリゴンメッシュの各ピクセルの色として設定して、前記ポリゴンメッシュを描画することを特徴とするプログラム。
【請求項3】
請求項2において、
前記描画部が、前記補間係数設定処理において、
ランダムに色が配列されたテクセルパターンを有するランダムテクスチャから前記第3のテクスチャ座標に基づいて色を取得し、当該取得された色の輝度値に基づいて前記補間係数を設定することを特徴とするプログラム。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記描画部が、
前記補間係数設定処理において、前記第3のテクスチャ座標に基づいて設定される補間係数に対して、前記第1のテクスチャ座標に対応する前記原画像のピクセルの位置に基づいて補正処理を行い、
前記テクスチャ座標補間処理において、前記補正処理後の補間係数に基づいて、前記第1のテクスチャ座標と前記第2のテクスチャ座標とを線形補間することを特徴とするプログラム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記描画部が、前記テクスチャ座標設定処理において、
前記仮想カメラの移動速度に基づいて、前記第1のテクスチャ座標のずらし量を設定することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
請求項5において、
前記描画部が、前記テクスチャ座標設定処理において、
前記仮想カメラの移動速度が大きいほど、前記第1のテクスチャ座標のずらし量を大きく設定することを特徴とするプログラム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記描画部が、前記メッシュ生成処理において、
前記スクリーンに対する前記仮想カメラの移動量及び移動方向の少なくとも一方に応じて前記代表点を設定することを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項7において、
前記描画部が、前記メッシュ生成処理において、
前記ポリゴンメッシュの各頂点を、前記代表点から前記原画像を内包する略円形状の外周に至る放射線上において等間隔に配列することを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記描画部が、前記テクスチャ座標設定処理において、
前記代表点から遠い頂点ほど、当該頂点に対応づけられる第1のテクスチャ座標のずらし量を大きく設定することを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、
前記描画部が、前記テクスチャ座標設定処理において、
前記代表点から頂点に向かう放射線に沿って前記第1のテクスチャ座標をずらすことによって、前記第2のテクスチャ座標を設定することを特徴とするプログラム。
【請求項11】
コンピュータに読み取り可能な情報記憶媒体であって、請求項1〜10のいずれかに記載のプログラムを記憶したことを特徴とする情報記憶媒体。
【請求項12】
オブジェクト空間において仮想カメラから見える画像を生成するための画像生成システムであって、
オブジェクト空間にオブジェクトを設定するオブジェクト空間設定部と、
所定の制御情報に基づいて前記仮想カメラの移動制御を行う仮想カメラ制御部と、
前記仮想カメラから見えるオブジェクトをスクリーンに投影して原画像を描画するとともに、当該原画像に対して所定のフィルタ処理を実行する描画部と、
を含み、
前記描画部が、
前記原画像に対応づけられた代表点から放射状に頂点が配列されるポリゴンメッシュを生成するメッシュ生成処理と、
前記ポリゴンメッシュを構成する各頂点に対して、前記原画像をテクスチャとする第1のテクスチャ座標を対応づけるとともに、所定の条件に基づいて、前記第1のテクスチャ座標のずらし量を設定し、当該ずらし量に基づいて、第2のテクスチャ座標を設定するテクスチャ座標設定処理と、
前記第2のテクスチャ座標に基づいて前記原画像から取得される色を、前記第1のテクスチャ座標に対応づけられた前記ポリゴンメッシュの各ピクセルの色として設定して、前記ポリゴンメッシュを描画するメッシュ描画処理と、
を前記所定のフィルタ処理として実行することを特徴とする画像生成システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−77405(P2008−77405A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256025(P2006−256025)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000134855)株式会社バンダイナムコゲームス (1,157)
【Fターム(参考)】