説明

画像表示装置、画像表示装置の制御方法、および画像表示装置の制御プログラム

【課題】課題の一例として、医療画像表示装置の操作に熟練していないユーザ(医師等)であっても、医療画像表示装置に表示された画像を直感的であって容易にユーザが観察を希望している複数の画像として明瞭に区別して認識することができる画像表示装置等を提供することにある。
【解決手段】レイキャスト法により少なくとも一つのボリュームデータを可視化する医療画像表示装置において、前記ボリュームデータの一つに含まれるボクセルについて可視化する時の色を与える、少なくとも2以上の色取得関数による色取得手段と、前記色取得関数の少なくとも一つについて、その前記色取得関数に対応する新たな前記色取得関数を演算する色取得手段演算手段と、を備え、少なくとも1つ以上の新たな前記色取得関数を用いて、前記レイキャスト法によって前記少なくとも一つのボリュームデータを可視化する可視化手段と、を備える構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボリュームデータを可視化する画像表示装置、画像表示方法および画像表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータを用いた画像処理技術の進展により人体の内部構造を直接観測することを可能にしたCT( C o m p u t e d T o m o g r a p h y)、MRI( M a g n e t i c R e s o n a n c e I m a g i n g) の出現は医療分野に革新をもたらし、生体の断層画像を用いた医療診断が広く行われている。さらに、近年では、断層画像だけでは分かりにくい複雑な人体内部の3次元構造を可視化する技術として、例えば、CTにより得られた物体の3次元デジタルデータ(ボリュームデータ)から3次元構造のイメージを直接描画するボリュームレンダリングが医療診断に使用されている。
【0003】
ボリュームレンダリングにおける3次元画像処理として、ボリュームデータから任意断面を切り出し、その断面を表示するMPR( M u l t i P l a n a r R e c o n s t r u c t i o n)などが一般に使用されている。
【0004】
ボリュームレンダリングの優れた手法としてレイキャスト法が知られている。レイキャスト法は、仮想始点から物体に対して仮想光線(レイ)を照射し、物体内部からの仮想反射光の画像を仮想投影面に形成することにより、物体内部の3次元構造を透視するイメージ画像を形成する手法である。
【0005】
また、ボリュームデータに対するレイキャスト法による画像は、ボリュームデータのボクセル値に対する不透明度設定、色相、色彩、明度等の出力される色に関する色設定、あるいは描画領域であるマスクの設定によってそれぞれの画像が異なってくる。
【0006】
ここで、医療分野においては、複数の関心対象の空間的位置関係( 前後関係、交わり、等)の把握が診断に特に重要である。
【0007】
例えば、病変部位の様子を見る場合、病変部位と周辺組織との位置関係及び大きさにより病変を把握する。そのため、複数の関心対象の形状を同時に1つの画像の中に、明瞭に再現することが非常に重要である。それは、手術を行なう場合における施術者の治療方針(どのようにメスを進行させて手術を進めるか)に対して医療用画像が非常に大きな役割を果たし、手術が施される患者に対して行なう説明(インフォームドコンセント)に対して医療用画像が非常に重要な意義を有する等の観点から重要性が認識されるのである。
【0008】
そこで、ボリュームデータにおいて着目する臓器または病変部位それぞれについて区別して描画することが行われている。具体的にはCT値などのボクセル値が異なる臓器に対してそれぞれ異なる不透明度設定、色相、色彩、明度等を設定することによって区別して描画する。一方、CT値などのボクセル値が共通する臓器に対しては臓器抽出アルゴリズムなどにより領域抽出を行い、抽出された領域を描画領域として、描画領域毎にそれぞれ異なる不透明度設定、色相、色彩、明度等を設定することによって区別して描画する。また、上記の組み合わせによって区別して描画する。
【0009】
また、造影条件の異なる複数のボリュームデータを準備することにより複数の血管、及びその血管の栄養している臓器を区別して描画することが出来る。また、異なる種類の撮影装置から取得された複数のボリュームデータを用いて描画するマルチモダリティフュージョンという手法もある(例えば、特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2003−109030号公報
【特許文献2】特開2007−14706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記において説明した従来のレイキャスト法では、ボリュームデータにおいて着目する臓器または病変部位それぞれについて区別して描画するためのユーザ(医療オペレータ)の操作が煩雑であり、ユーザに対して大きなストレスがかり、また好適な画像の選択が困難(相当の時間をかければ好適な選択をすることもできる場合がある)であったり、表示された画像を直感的に認識することが困難であったり、処理できるデータ量に限界があるという難点があった。特に、抽出された領域毎に区別して描画するのは煩雑であった。これは、領域毎に異なるLUT関数を作成する必要があるからである。また、ユーザの主観によっても不透明度設定、色相、色彩、明度等の設定が左右されるのも問題であった。
【0011】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、その目的の一例は、医療画像表示装置の操作に熟練していないユーザ(オペレータとなる医師等)であっても、医療画像表示装置に表示された画像をポインティングデバイス等の入力装置を用いて操作することにより、直感的であって容易にユーザが観察を希望している複数の画像(表示対象物の部位)を明瞭に区別して認識することができる画像表示装置、画像表示装置の制御方法、および画像表示装置の制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、レイキャスト法により少なくとも一つのボリュームデータを可視化する医療画像表示装置において、前記ボリュームデータの一つに含まれるボクセルについて色を与える少なくとも2以上の色取得関数により色取得手段と、前記色取得関数の少なくとも一つについて、その前記色取得関数に対応する新たな前記色取得関数を演算する色取得手段演算手段と、を備え、少なくとも1つ以上の前記新たな前記色取得関数を用いて、前記レイキャスト法によって前記少なくとも一つのボリュームデータを可視化する可視化手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、複数の観察部位を含むボリュームデータをレイキャスト法によって可視化するときに、それぞれの観察部位を独立して観察するときには適切であった色の設定が、複数の観察部位を同時に観察するときに、その複数の観察部位の色の設定が互いに近似するために互いに識別が出来ず不適切であるときであったとしても、新たな色取得関数によって他の色に可視化されるので、画像に表示された複数の部位の判別がユーザにとって容易になる。
【0014】
さらに、新たな色取得関数を求める演算はユーザの判断によらず自動的に行なわれるので、一日に数多くの医療用画像を処理しなければならないユーザ(オペレータ)は、どの色に変換するかを一つ一つユーザインターフェースを介して操作する手間が省略できるので、ユーザの労力の軽減、判断ミスおよび操作ミスを大幅に減少することが可能となる。また、複数のユーザによって画像が取り扱われる場合でも、画一的な処理が行えるので結果画像の客観性を増すことが出来る。
【0015】
上記問題点を解決するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の医療画像表示装置において、前記色取得手段演算手段は、前記色取得関数によって得られる前記2以上の色取得関数が与える色が互いに近似する場合には、前記可視化手段が用いる前記色取得関数及び前記新たな色取得関数が与える色の色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように、少なくとも一つ以上の当該前記新たな色取得関数を演算させることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、色取得手段は、色取得関数を用いて一つの臓器等を構成する部位またはその一部毎に独立して可視化するので、異なる部位にも係らず同系統の(近似する)色を用いる場合もあるが、色取得手段演算手段が自動的に異なる部位(または同じ部位の一部毎)をユーザにとって視認しやすい色とするので、ユーザは異なる部位または同じ部位の一部を同時に表示した画面を見やすくなり、適切な判断に基づく治療、適切な患者への病変の説明を行なうことが可能になった。
【0017】
また、色取得手段演算手段によって新たな色取得関数を求める演算はユーザの判断によらず自動的に行なわれるので、一日に数多くの医療用画像を処理しなければならないユーザ(オペレータ)は、どの色に変換するかを一つ一つユーザインターフェースを介して操作する手間が省略できるので、ユーザの労力の軽減、判断ミスおよび操作ミスを大幅に減少することが可能となる。
【0018】
上記問題点を解決するために、請求項3に記載の発明は、1乃至2の何れかに記載の医療画像表示装置において、ユーザによって予め定められた前記色取得関数が有る場合には、前記色取得手段演算手段は、ユーザによって予め定められた前記色取得関数でない他の前記色取得関数に対応する前記新たな色取得関数を演算することを演算することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、それぞれの観察部位を独立して観察するときの色取得関数が与える色を予めユーザが決めていた場合(ユーザが自分の好みで可視化される画像の色を決めている場合)には、そのユーザの指示を尊重し、そのユーザが指定した一方の観察部位を独立して観察するときの色取得関数が与える色は、複数の観察部位を同時に観察するときにも用い、他方の観察部位の可視化に用いる色取得関数を新たに演算することによってユーザが期待するであろう結果が得られ、ユーザは再度ユーザが好む色に設定する必要がなく、ユーザ操作が少なく、ユーザに余計な負担および労力をかけることがなくなる(ユーザフレンドリーな設計となる)。
【0020】
上記問題点を解決するために、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の医療画像表示装置において、前記色取得手段演算手段は、前記ユーザによって予め定められた色取得関数が与える色と前記新たな色取得関数が与える色とが、色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように演算することを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、それぞれの観察部位を独立して観察するときの色取得関数が与える色をユーザが予め決めていた場合(ユーザが自分の好みで表示される画像の色を決めている場合)であっても、他方の観察部位の可視化に用いる色取得関数が与える色が、ユーザが予め定めた色とは異なる色(色相、明度、彩度の少なくとも何れか一つ以上が異なる色)を表示するように、異なる部位又は同じ部位の他の部分を表示するので、ユーザが期待するであろう結果が得られ、ユーザに対してユーザインターフェースを操作する負担をかけることなく、かつユーザにとって見やすい画像を提供することが可能になる。
【0022】
上記問題点を解決するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の医療画像表示装置は更に、それぞれの前記色取得関数に対応するマスクを取得するマスク取得手段を有し、前記可視化手段は前記マスクを用い、前記レイキャスト法によって前記一つのボリュームデータを可視化することを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、表示しようとしている一つの臓器等を構成する部位またはその一つの臓器等の一部(例:肺の中の腫瘍組織)を抽出し、演算する場合に、マスク(ボリュームデータ内の特定の領域のみ描画の対象にし、又は特定の領域のみ描画の対象にしない手段)を使用するので、一つの臓器等を構成する部位またはその同じ部位に含まれる一部等の特定領域を正確に表示する(所望していない他の領域の画像を表示しない)ことが可能になる。
【0024】
これは、特に、複数の観察部位に重複する範囲のCT値が存在する場合に、それぞれの観察部位を区別して描画したい場合に有効である。この場合は、巧妙な一つの色取得手段を作成することでは対応できないので、複数の色取得手段を持つ本発明は有効である。
【0025】
上記問題点を解決するために、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一項に記載の医療画像表示装置において、前記色取得関数は区分連続関数によって実現されることを特徴とする。
【0026】
上記問題点を解決するために、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の医療画像表示装置において、前記色取得関数に係る区分連続関数はルックアップテーブル(Look Up Table(L.U.T.))によって実現されることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、区分連続関数は与えられた数値を演算することにより、求められるべき数値を出力するのではなく、予め定められた表から与えられた数値を選択するだけであるので、高速で柔軟な連続関数の実現が可能となる。
【0028】
上記問題点を解決するために、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の医療画像表示装置の制御方法において、前記色取得工程演算工程は、前記2以上の色取得関数が与える色が互いに近似する場合には、前記可視化工程において用いられる前記色取得関数及び前記新たな前記色取得関数が与える色の色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように、少なくとも一つ以上の当該新たな前記色取得関数を演算させることを特徴とする。
【0029】
上記問題点を解決するために、請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の医療画像表示装置の制御方法において、前記色取得工程演算工程において、ユーザによって予め定められた前記色取得関数が有る場合には、前記色取得工程演算工程は、ユーザによって予め定められた前記色取得関数ではない他の前記色取得関数に対応する前記新たな前記色取得関数を演算することを特徴とする。
【0030】
上記問題点を解決するために、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の医療画像表示装置の制御方法において、前記色取得工程演算工程は、前記ユーザによって予め定められた前記色取得関数が与える色と前記新たな前記色取得関数が与える色とが、色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように演算することを特徴とする。
【0031】
上記問題点を解決するために、請求項12に記載の発明は、請求項8乃至11の何れか一項に記載の医療画像表示装置の制御方法は更に、それぞれの前記色取得関数に対応するマスクを取得するマスク取得工程を有し、前記可視化工程において前記マスクを用い、前記レイキャスト法によって前記一つのボリュームデータを可視化することを特徴とする。
【0032】
上記問題点を解決するために、請求項13に記載の発明は、請求項8乃至12の何れか一項に記載の医療画像表示装置の制御方法において、前記色取得関数は区分連続関数によって実現されることを特徴とする。
【0033】
上記問題点を解決するために、請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の医療画像表示装置の制御方法において、前記色取得関数に係る区分連続関数はルックアップテーブル(Look Up Table(L.U.T.))によって実現されることを特徴とする。
【0034】
上記問題点を解決するために、請求項15に記載の発明は、レイキャスト法により少なくとも一つのボリュームデータを可視化する医療画像表示装置に含まれるコンピュータを、前記ボリュームデータの一つに含まれるボクセルについて可視化する時の色を与える、少なくとも2以上の色取得関数による色取得手段、前記色取得関数の少なくとも一つについて、その前記色取得関数に対応する新たな前記色取得関数を演算する色取得手段演算手段、として機能させ、少なくとも1つ以上の新たな前記色取得関数を用いて、前記レイキャスト法によって前記少なくとも一つのボリュームデータを可視化する可視化手段、として機能させることを特徴とする。
【0035】
上記問題点を解決するために、請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の医療画像表示装置の制御プログラムにおいて、前記色取得手段演算手段は、前記2以上の色取得関数が与える色が互いに近似する場合には、前記可視化手段が用いる前記色取得関数及び前記新たな前記色取得関数が与える色の色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように、少なくとも一つ以上の当該新たな前記色取得関数を演算することを特徴とする。
【0036】
上記問題点を解決するために、請求項17に記載の発明は、請求項15又は16に記載の医療画像表示装置の制御プログラムにおいて、前記色取得手段演算手段は、ユーザによって予め定められた前記色取得関数が有る場合には、前記色取得手段演算手段は、ユーザによって予め定められた前記色取得関数でない他の前記色取得関数に対応する前記新たな前記色取得関数を演算することを特徴とする。
【0037】
上記問題点を解決するために、請求項18に記載の発明は、請求項17に記載の医療画像表示装置の制御プログラムにおいて、前記色取得手段演算手段は、前記ユーザによって予め定められた前記色取得関数が与える色と前記新たな前記色取得関数が与える色とが、色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように演算することを特徴とする。
【0038】
上記問題点を解決するために、請求項19に記載の発明は、請求項15乃至18の何れか一項に記載の医療画像表示装置の制御プログラムは更に、それぞれの前記色取得関数に対応するマスクを取得するように機能させるマスク取得手段を有し、前記可視化手段は前記マスクを用い、前記レイキャスト法によって前記一つのボリュームデータを可視化することを特徴とする。
【0039】
上記問題点を解決するために、請求項20に記載の発明は、請求項15乃至19の何れか一項に記載の医療画像表示装置の制御プログラムにおいて、前記色取得関数は区分連続関数によって実現されることを特徴とする。
【0040】
上記問題点を解決するために、請求項21に記載の発明は、請求項15に記載の医療画像表示装置の制御プログラムにおいて、前記色取得関数に係る区分連続関数はルックアップテーブル(Look Up Table(L.U.T.))によって実現されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
この発明によれば、複数の観察部位を含むボリュームデータをレイキャスト法によって可視化するときに、それぞれの観察部位を独立して観察するときには適切であった色の設定が、複数の観察部位を同時に観察するときに、その複数の観察部位の色の設定が互いに近似するために互いに識別が出来ず不適切であるときであったとしても、新たな色取得関数によって他の色に可視化されるので、画像に表示された複数の部位の判別がユーザにとって容易になる。
【0042】
さらに、新たな色取得関数を求める演算はユーザの判断によらず自動的に行なわれるので、一日に数多くの医療用画像を処理しなければならないユーザ(オペレータ)は、どの色に変換するかを一つ一つユーザインターフェースを介して操作する手間が省略できるので、ユーザの労力の軽減、判断ミスおよび操作ミスを大幅に減少することが可能となる。また、複数のユーザによって画像が取り扱われる場合でも、画一的な処理が行えるので結果画像の客観性を増すことが出来る。
【0043】
この発明によれば、色取得手段は、色取得関数を用いて一つの臓器等を構成する部位またはその一部毎に独立して可視化するので、異なる部位にも係らず同系統の(近似する)色を用いる場合もあるが、色取得手段演算手段が自動的に異なる部位(または同じ部位の一部毎)をユーザにとって視認しやすい色とするので、ユーザは異なる部位または同じ部位の一部を同時に表示した画面を見やすくなり、適切な判断に基づく治療、適切な患者への病変の説明を行なうことが可能になった。
【0044】
また、色取得手段演算手段によって新たな色取得関数を求める演算はユーザの判断によらず自動的に行なわれるので、一日に数多くの医療用画像を処理しなければならないユーザ(オペレータ)は、どの色に変換するかを一つ一つユーザインターフェースを介して操作する手間が省略できるので、ユーザの労力の軽減、判断ミスおよび操作ミスを大幅に減少することが可能となる。
【0045】
この発明によれば、それぞれの観察部位を独立して観察するときの色取得関数が与える色を予めユーザが決めていた場合(ユーザが自分の好みで可視化される画像の色を決めている場合)には、そのユーザの指示を尊重し、そのユーザが指定した一方の観察部位を独立して観察するときの色取得関数が与える色は、複数の観察部位を同時に観察するときにも用い、他方の観察部位の可視化に用いる色取得関数を新たに演算することによってユーザが期待するであろう結果が得られ、ユーザは再度ユーザが好む色に設定する必要がなく、ユーザ操作が少なく、ユーザに余計な負担および労力をかけることがなくなる(ユーザフレンドリーな設計となる)。
【0046】
この発明によれば、それぞれの観察部位を独立して観察するときの色取得関数が与える色をユーザが予め決めていた場合(ユーザが自分の好みで表示される画像の色を決めている場合)であっても、他方の観察部位の可視化に用いる色取得関数が与える色が、ユーザが予め定めた色とは異なる色(色相、明度、彩度の少なくとも何れか一つ以上が異なる色)を表示するように、異なる部位又は同じ部位の他の部分を表示するので、ユーザが期待するであろう結果が得られ、ユーザに対してユーザインターフェースを操作する負担をかけることなく、かつユーザにとって見やすい画像を提供することが可能になる。
【0047】
この発明によれば、表示しようとしている一つの臓器等を構成する部位またはその一つの臓器等の一部(例:肺の中の腫瘍組織)を抽出し、演算する場合に、マスク(ボリュームデータ内の特定の領域のみ描画の対象にし、又は特定の領域のみ描画の対象にしない手段)を使用するので、一つの臓器等を構成する部位またはその同じ部位に含まれる一部の特定領域を正確に表示する(所望していない他の領域の画像を表示しない)ことが可能になる。
【0048】
これは、特に、複数の観察部位に重複する範囲のCT値が存在する場合に、それぞれの観察部位を区別して描画したい場合に有効である。この場合は、巧妙な一つの色取得手段を作成することでは対応できないので、複数の色取得手段を持つ本発明は有効である。
【0049】
この発明によれば、区分連続関数は与えられた数値を演算することにより、求められるべき数値を出力するのではなく、予め定められた表から与えられた数値を選択するだけであるので、高速で柔軟な連続関数の実現が可能となる。
【0050】
従って、ユーザインターフェースの操作性が大幅に向上し、より効率的なユーザインターフェースを実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。
[1.システム構成の一例]
図1は、本発明のシステム構成の構成例(一実施形態)を示すブロック図である。
【0052】
図1(A)に示すように、画像表示装置1は、データベース2から例えば、CT(Computerized Tomography) 画像撮影装置により撮影されたCT画像データを読み取って、医療診断用の各種画像を生成し画面に表示する。本実施形態では、CT画像データを例に説明するが、これに限定されない。すなわち、使用される画像データは、CTに限らず、MRI(Magnetic Resonance Imaging)等の医用画像処理装置より得られるデータ及びそれらを組み合わせたり加工したりしたものである。
【0053】
画像表示装置1は、計算機(コンピュータ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ)3と、モニタ4と、キーボード5 及びマウス6 などの入力装置とを備えている。計算機3はデータベース2と接続されている。
【0054】
図1(B)は本発明方法を実現する画像表示装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。同図に示すように、この画像表示装置は、主として磁気ディスク10と、主メモリ15と、不透明度区分連続関数演算手段、色取得手段、新たな色取得手段、可視化手段、マスク取得手段としての中央処理装置(CPU)14と、表示メモリ16と、表示手段としてのモニタ4と、キーボード5、各種の操作指令、位置指令、メニュー選択指令を入力するためのポインティングデバイスとしてのマウス6、マウスコントローラ24と、これらの各構成要素を接続する共通バス26とから構成されている。
【0055】
磁気ディスク10には、複数の断層像、画像作成プログラム等が記憶され、必要に応じて共通バス26の外部に設けられているデータベース2から断層像を読み出して記憶される。主メモリ15には、装置の制御プログラムが格納されるとともに、演算処理用の領域等が設けられている。CPU14は、複数の断層像や各種のプログラムを読み出し、主メモリ15を用いて疑似三次元画像や展開表示する断面像等の作成を行い、その作成した画像を示す画像データを表示メモリ16に送り、モニタ4に表示させる。
【0056】
次にデータベース2に蓄積されるデータについて、図2を用いて説明する。図2では、本発明の一実施形態にかかる画像処理方法で使用されるコンピュータ断層撮影(CT)装置を概略的に示す。コンピュータ断層撮影装置は、被検体の組織(部位)等を可視化するものである。X線源101からは同図に鎖線で示す縁部ビームを有するピラミッド状のX線ビーム束102が放射される。X線ビーム束102は、例えば患者103である被検体を透過しX線検出器104に照射される。X線源101及びX線検出器104は、本実施形態の場合にはリング状のガントリー105に互いに対向配置されている。リング状のガントリー105は、このガントリーの中心点を通るシステム軸線106に対して、同図に示されていない保持装置に回転可能(矢印a参照)に支持されている。
【0057】
患者103は、本実施形態の場合には、X線が透過するテーブル107上に寝ている。このテーブルは、図示されていない支持装置によりシステム軸線106に沿って移動可能(矢印b参照)に支持されている。
【0058】
従って、X線源101及びX線検出器104は、システム軸線106に対して回転可能でありかつシステム軸線106に沿って患者103に対して相対的に移動可能である測定システムを構成するので、患者103はシステム軸線106に関して種々の投影角及び種々の位置のもとで投射されることができる。その際に発生するX 線検出器104の出力信号は、ボリュームデータ生成部111に供給され、ボリュームデータに変換される。
【0059】
シーケンス走査の場合には患者103の層毎の走査が行なわれる。その際に、X線源101及びX線検出器104はシステム軸線106を中心に患者103の周りを回転し、X線源101及びX線検出器104を含む測定システムは患者103の2次元断層を走査するために多数の投影を撮影する。その際に取得された測定値から、走査された断層を表示する断層像が再構成される。相連続する断層の走査の間に、患者103はその都度システム軸線106に沿って移動される。この過程は全ての関心断層が捕捉されるまで繰り返される。
【0060】
一方、スパイラル走査中は、X線源101及びX線検出器104を含む測定システムはシステム軸線106を中心に回転し、テーブル107は連続的に矢印bの方向に移動する。すなわち、X線源101及びX線検出器104を含む測定システムは、患者103に対して相対的に連続的にスパイラル軌道上を、患者103の関心領域が全部捕捉されるまで移動する。本実施形態の場合、同図に示されたコンピュータ断層撮影装置により、患者103の診断範囲における多数の相連続する断層信号がデータベース2に供給される。
[2.ボリュームデータを構成するボクセルの説明]
ここで、3次元以上の画像データとしてのボリュームデータとは、図3に示すように、ボクセル(Voxel)の集合であり、3次元の格子点にボクセル値として濃度値が割り当てられている。本実施形態では、CT画像データの画素値、すなわちCT値をそのままボクセルデータVDの濃度値としている。また、同様に、PET画像データの画素値をそのままボクセルデータVDの濃度値とすることも可能である。医療画像ではボクセルは−2048〜2047の値をとるスカラー値(モノクロ)で表現されることが多い。
【0061】
CT画像データは、患者等の人体を断層撮影したもので、1枚については骨、血管、臓器等の観察対象の2次元断層画像であるが、多数の隣接するスライス(断層)について得られていることから、これら全体では3次元の画像データ(ボリュームデータ)と言える。従って、以下、CT画像データは、複数のスライスを含んだ3次元の画像データを意味する。
【0062】
また、CT画像データの画素値であるCT値は、被写体としての組織の組成(骨、血液、脂質等)に応じたCT値を持っている。CT値は、水を基準として表現した組織のX線減弱係数であり、CT値により組織や病変の種類等が判断できるようになっている(単位はHU(Hounsfield Unit))。CT値は、水と空気のX線減弱係数で標準化されており、水のCT値を0、空気のCT値を−1000としている。この場合、脂肪のCT値は−120〜−100程度であり、通常組織のCT値は0〜120程度であり、骨のCT値は1000前後を示す。また、CT画像データには、CT撮影装置によりCTスキャンされた人体の断層画像(スライス画像)の座標データもすべてあり、視線方向(奥行き方向)における異なる組織間の位置関係は、座標データから判別できるようになっている。すなわち、ボクセルデータVDは、ボクセル値(CT装置の場合はCT値)及び座標データを備えている。
[3.ボクセル値と不透明度との関係の説明]
図4は、レイキャスト法におけるボクセル値と不透明度との関係を図に示したものである。レイキャスト法においては組織を三次元的に描画するに当たってCT値に応じてそれぞれ不透明度を設定することによって、不透明と設定された組織を3次元的に描画する。ここで、ボクセル値を不透明度に変換する関数は区分連続関数を用いることが出来る(ボクセル値と不透明度との関係を不透明度区分連続関数と称する)。横軸はボクセル値を示し、図4において右側へ行くほどボクセル値が大きくなっている(この場合はCT値)。
【0063】
図4では各部位ごとに不透明度を設定している。通常組織(ボクセル値は0〜120程度)の不透明度を1に設定(不透明度1は不透明(光がすべて反射される)であることを示す)し、骨(ボクセル値は1000前後)の不透明度を0〜1の中間値に設定(不透明度0〜1は半透明(入射光の一部が反射され、その他は透過する)であることを示す)し、その他の組織等の部位を不透明度0と設定(不透明度0は透明(入射光の全てが透過する)であることを示す)されている。
【0064】
従って、図4では組織が不透明になり、骨が半透明な状態で可視化されることになる。不透明度はオパシティ値とも呼ばれるが、次にオパシティ値とボクセル値との対応関係によって、ユーザが所望する部位を可視化する方法について更に具体的に説明する。
【0065】
以上述べてきたように、確認したい臓器等を含むボクセル値の範囲のオパシティ値(不透明度)を1に近づけ、画像として表示させる必要のない臓器等を含むボクセル値の範囲のオパシティ値(不透明度)を0に近づけることによって、ユーザは所望の臓器等の部位画像を鮮明に観察することが可能になる。
[4.レイキャスト法の説明]
次に、レイキャスト法について説明する。ボリュームレンダリングの一種にレイキャスト法がある。レイキャスト法とは、図5に示すように、観察する側(フレームFR側)から仮想の光の経路を考えるもので、フレームFR側のピクセルPXから光線(仮想光線R) を飛ばし、一定距離を進むごとにその位置での反射光を計算する( 図5 では「… 、V1、V2、V3、…」の符号が各到達位置のボクセルに対応している)。
【0066】
視線方向からボクセルデータに1本の仮想光線Rを照射すると、仮想光線Rは第1 ボクセルデータVD1に当たって一部反射しながら第1ボクセルデータVD1を構成するボクセルを順次透過して進むことになる。そして、ボクセル毎に光の吸収・反射の離散的な計算をし、その反射光を合計することでフレームFRに投影される画像のピクセル値(画素値)を求めて2次元画像を生成する。
【0067】
図5において、投影位置Xn(仮想光線到達位置の現在位置)が格子上になかったとすると、まず、その投影位置Xn(仮想光線到達位置の現在位置)の周りのボクセルのボクセル値から補間処理を行ってその位置でのボクセル値Dnを計算する。
【0068】
補間処理が行なわれたボクセル値は補間ボクセル値と呼ばれる。補間ボクセル値を求める演算は、一例として、近傍のボクセル値からの加重平均値を演算することにより求められる。
【0069】
図5において光Iがボクセルへ入射してきた場合、投影位置Xnでの勾配を求めたい。勾配を利用してボリュームデータに含まれる臓器などの表面に陰影を付けて描画するためである。投影位置Xnの近傍にあるボクセル値をいくつか使用して投影位置Xnの勾配(グラジエント)Gが演算される。
【0070】
次に、光に対する特性パラメータ( 以下、光パラメータPという)を決定する。
【0071】
光パラメータPとは、不透明度情報としての不透明度(オパシティ(opacity)値)αn およびシェーディング係数βn、色情報としての色γnであって、それぞれ独立した光学的特性を表す情報である。ここで、不透明度αnは、0≦αn≦1を満たす数値で表され、値(1−α n)は透明度(transparency)を示す。不透明度αn=1は不透明、αn=0は透明、0<αn<1は半透明にそれぞれ対応する。なお、前述の通り各ボクセル値に対して不透明度αnとの関係付けが予めなされており、その関係付け情報に基づきボクセル値から不透明度αnを得ている。例えば、前述したように骨のボリュームレンダリング画像を得たい場合、骨に対応したボクセル値には不透明度“1”を対応付け、他のボクセル値には不透明度“0”を対応付けることで、骨を表示することができる。このようにある値に対応する別の値に導く変換は区分連続関数で一般化されるが、実用上はLUT(Look Up Table)関数を用いることが多い。
【0072】
シェーディング係数β nは、ボクセルデータの表面の凹凸(陰影)を表すパラメータであり、勾配(グラジエント)Gと光の進行方向ベクトルの内積が用いられる。
【0073】
そして、色γnは、不透明度αnと同様に区分連続関数で表現することが出来、ボクセルデータの組織情報、すなわち、ボクセルデータが骨、血液、内臓、あるいは腫瘍であるかの情報を色で表すようにしている。これによって、色情報を含まない濃淡情報にすぎないボクセル値に対して、仮想的に色を与えることによって、ユーザが認識しやすい画像を提供することが出来る。また、客観性を優先させたい場合には色情報を与えずに白色のみを用いて描画することもある。また、図12にて後述するように、臓器抽出アルゴリズムなどにより領域抽出を行い、抽出された領域を描画領域として、描画領域毎にそれぞれ異なる区分連続関数を用いて組織を描画することが可能である。
【0074】
レイキャスト法による計算方法について図6を用いて説明する。
【0075】
ステップS1において、投影開始点O(x、y、z)、および投影開始点からの光の進行方向における計算ステップΔS(x、y、z)を設定する。
【0076】
ステップS2において、反射光E、残存光I、現在計算位置Xを初期設定する。すなわち、投影開始点において反射する光はないので反射光E=0であり、また投影開始点においては減少している光はないので残存光は1となる(1で正規化されている)。また、現在計算位置Xを投影開始点とし、現在計算位置X=Oに設定し初期化する。
【0077】
ステップS3において、投影開始点から計算ステップΔS進んだ位置を現在計算位置Xとして、周囲のボクセルデータ(周囲のボクセル値)より現在計算位置Xの補間ボクセル値Vを求める。これは、ボクセル値が存在する位置は格子状に配置されるのに対して、光はこの格子状の頂点間をも自由に通過するので、現在計算位置Xは必ずしもCT等から得られた格子状の頂点にはないからである。補間ボクセル値Vは3次元的に現在計算位置Xの周囲にあるボクセル値からの平均値、加重平均値およびその他の方法により演算によって求めることができる。
【0078】
ステップS4において、ステップS3において求められた補間ボクセル値Vから、補間ボクセル値Vに対応する不透明度αを求める。不透明度αとボクセル値との関係は前述した通りであるが、ユーザが画像として見ることを所望する臓器等の部位に対応するボクセル値近辺を不透明度1とすることによって、ユーザが所望する部位を明瞭に画像として観察することができる。
【0079】
この補間ボクセル値Vと不透明度との関係は、区分連続関数を用いてボクセル値ごとに演算する。通常は効率のために補間ボクセル値に対応する不透明度を表(ルックアップテーブル:Look Up Table(LUT))として予め用意して、表(LUT)を参照して補間ボクセル値から不透明度を抽出することによって高速に不透明度を求めることができる。以下、この不透明度を求める関数をオパシティLUTと呼ぶ。
【0080】
ステップS5において、補間ボクセル値に対応するカラー値Cを得る(ボクセル値又は補間ボクセル値と、色又はカラー値、との対応関係を色の区分連続関数又は新たな色の区分連続関数と称する)。カラー値Cは色相、彩度、明度から成り立っているが、一例としてカラー値Cは白黒でもよい。また他の一例として、彩度、明度を予め定められた値としておき、色相のみを変化させるようにしてもよい。また、固定された一色であっても良い。以下、このカラー値を求める関数をカラーLUTと呼ぶ。
【0081】
ステップS6において、現在計算位置Xの周辺のボクセルデータ(ボクセル値)から現在計算位置XのグラジエントGを求める。演算されたグラジエントGと光の進行方向(O−X(光の開始点Oから現在計算位置Xの方向)とからシェーディング係数βを演算する。シェーディング係数は光の進行方向O−XとグラジエントGとの角度から演算する(内積)。しかし、内積に限定されるわけはなく光の進行方向O−XとグラジエントGとの任意の関数として任意の値を設定することができる。
【0082】
ステップS7において、現在計算位置Xの減衰光Dおよび部分反射光Fを演算する。減衰光Dは残存光Iに該当する入射光が現在計算位置Xにおいてどれだけ反射するか(現在計算位置Xを透過する透過光に対してどれだけ減衰するか)を示す光の量であるから、減衰光Dは、残存光I(現在計算位置Xに入射する光)に不透明度αを乗算した値になる(減衰光D=残存光I×不透明度α)。
【0083】
ここで、減衰光Dの全てが、光の進行方向O−Xに対して戻り光となる訳ではなく、ステップS6において演算された現在計算位置Xにおけるシェーディング係数βによって、減衰光の内で、光の進行方向O−Xに対する戻り光となる割合が決まる。従って、光の進行方向O−Xに対する戻り光を部分反射光Fとすると、部分反射光Fはシェーディング係数βと減衰光Dを乗算した値に、カラー(色)の割合であるカラー値Cを乗算した値(部分反射光F=シェーディング係数β×減衰光D×カラー値C)となる。
【0084】
ステップS8において、光の進行方向O−Xに計算ステップΔSだけ進んだ位置におけるステップS3からステップS7の演算を行なうために、反射光E、残存光I、および現在計算位置Xを更新する。すなわち、新たな反射光E-=E+F、新たな残存光I=I−D、新たな現在計算位置X=X+ΔSとする。
【0085】
ステップS9において、現在計算位置Xが予め演算を終了させるべき位置になったか、或いは、残存光Iが0になったか(残存光Iが0になると先に進むべき光がなくなる。)を判断し、現在計算位置Xが予め演算を終了させるべき位置になったか、或いは、残存光Iが0になった場合(ステップS9:YES)には、ステップS10に進み、現在計算位置Xが予め演算を終了させるべき位置になった場合、或いは、残存光Iが0になった場合(ステップS9:NO)には、ステップS3に進む。
【0086】
ステップS10において、全ての現在計算位置Xにおける反射光の和となっている反射光Eを投影開始点Oにおける演算されたピクセル(画面中の画素に対応)のピクセル値として描画される。
[5.第1実施形態の概要]
第1実施形態として、CT値などのボクセル値が異なる臓器に対してそれぞれ異なる不透明度設定、色相、色彩、明度等を設定することによって区別して描画する時に、それぞれの臓器に対応するカラーLUTをそれぞれ動的に作成する場合を説明する。
図7(A)は、オパシティLUTとして、骨を表現するボクセル値を不透明とするオパシティLUTを用いて人体のボクセルデータから肋骨周辺の骨を描画した図である。また、図7(B)は、オパシティLUTとして、空気(肺)を表現するボクセル値を不透明とするオパシティLUTを用いて人体のボクセルデータから左右の肺を描画した図である。図7(A)において描画された骨および図7(B)における肺は、白黒画像で描画されている。
【0087】
ここで、上記2のオパシティLUTを合成すれば、図7(A)において描画された骨および図7(B)における肺を同時に同一画面上に描画することができる。この場合、従来はオペレータが特別な操作(マウス、キーボード等のヒューマンインターフェースによる操作)をしない場合には、図7(C)において描画されるように、白黒の部位として骨および肺が同時に表示された。
【0088】
このように、異なる部位をユーザが識別して観察しようとしても図7(C)に描画されるように異なる部位が同じ色(若しくは同系統(近似)の識別が難しい色)で描画されると的確な部位の識別ができず、ユーザである医師等の医療関係者および患者にとって不都合な表示であった(ユーザフレンドリーではない表示)。
【0089】
そこで、一例として、図8に本願の一実施形態を図示する。
【0090】
図8(A)は、図7(A)と同様に、オパシティLUTとして、骨を表現するボクセル値を不透明とするオパシティLUTを用いて人体のボクセルデータから肋骨周辺の骨を白黒で描画した図である。肋骨周辺の骨のみを観察する場合には、白黒描画によって描画すれば、ユーザは該当部位を十分に観察することができる。
【0091】
また、図8(B)は、図7(B)と同様に、オパシティLUTとして、空気(肺)を表現するボクセル値を不透明とするオパシティLUTを用いて人体のボクセルデータから左右の肺を白黒で描画した図である。左右の肺のみを観察する場合には、白黒描画によって描画すれば、ユーザは充分に該当部位を観察することができる。
【0092】
しかし、白黒描画で肋骨周辺の骨および左右の肺を同時に描画(表示)したのでは、ユーザにとって部位ごとに(肋骨周辺の骨を一つの部位とし、左右の肺を他の一つの部位とする)明瞭にユーザが観察することが困難になる。従って、肋骨周辺の骨および左右の肺を同時に描画(表示)した本願の一実施形態である図8(C)では、肋骨周辺の骨を白(色)で表示し、左右の肺を赤(色)し、背景色を水色に変更し、それぞれの部位を表示している。この表示の変更は、図6におけるステップS5におけるカラーLUTを描画しようとする部位ごとにそれぞれ作成することにより実現される。
【0093】
また、図8においては、描画される各部位のみならず、背景色も変更されている。しかし背景色の変更がなくとも、各部位が近接または重なった部分は、赤色と白色との色分けにより良好に識別できるので、ユーザにとっては各部位を容易に識別しやすいようになっている。
[5−1.第1実施形態の概要を示す動作フロー]
図9は、本実施形態の一例である図8における動作を示すフローチャートである。
【0094】
図9の動作フローについてステップ毎に説明する。
【0095】
ステップS11において、CPU14はボリュームデータを取得する。
【0096】
ステップS12において、CPU14は組織1(例えば図8における肋骨周辺の骨)の観察に適したボクセル値とオパシティ値(不透明度)との対応付けを表にしたオパシティLUT1、およびボクセル値とカラー値との対応付けを表にしたカラーLUT1を作成する。
【0097】
ステップS13において、CPU14は組織1のボクセル値からステップS12において作成されたオパシティLUT1、およびカラーLUT1を使用して、モニタ4に組織1を描画する(表示する)。そして必要に応じてユーザはモニタ4に描画された組織1を観察して診断、治療等の医療行為を行なう。
【0098】
ステップS14において、CPU14は組織2(例えば図8における左右の肺)の観察に適したボクセル値とオパシティ値(不透明度)との対応付けを表にしたオパシティLUT2、およびボクセル値とカラー値との対応付けを表にしたカラーLUT2を作成する。
【0099】
ステップS15において、CPU14は組織2のボクセル値からステップS12において作成されたオパシティLUT2、およびカラーLUT2を使用して、モニタ4に組織2を描画する(表示する)。そして必要に応じてユーザはモニタ4に描画された組織2を観察して診断、治療等の医療行為を行なう。
【0100】
次に、ユーザはキーボード5 、マウス6等のユーザインターフェースを操作し、モニタ4に組織1と組織2との両方を同時に描画するようにCPU14に対して描画命令(表示命令)を与える。
【0101】
すると、ステップS16において、CPU14は、組織1と組織2とがモニタ4において明瞭に区別できるように、組織1に対応する新たなカラーLUT1−2、および組織2に対応する新たなカラーLUT2−2を作成する。カラーLUT1−2とカラーLUT2−2とは色の色相、彩度、明度のうち少なくとも一つ以上異なるように設定される。
【0102】
例えば、彩度、明度は同一で、CPU14は組織1(図8における肋骨周辺の骨)には色相として白(色)のカラーLUT1−2を割り当て、組織2(左右の肺)には色相として赤(色)のカラーLUT2−2を割り当てる。
【0103】
ステップS17において、CPU14は、組織1に対しては、オパシティLUT1およびカラーLUT1−2を使用してまた、組織2に対しては、オパシティLUT2およびカラーLUT2−2を使用して、組織1と組織2をそれぞれ区別できる形で画像を描画しモニタ4に表示する。描画方法の詳細は図12を用いて後述する。
[5−2.新たな複数のカラーLUTの作成方法]
次に図9における本実施形態の概要を示す動作フローの一部であるステップ16におけるカラーLUTの作成方法ついて図10および図11を用いて詳細に場合を分けて説明する。
【0104】
このアルゴリズムは、組織1のカラーLUT1と組織2のカラーLUT2とがそれぞれユーザによって予め明示的に定義されているか否かによって動作が異なる。ユーザが明示的に行った操作を尊重するためである。
【0105】
まずCPU14はカラーLUT1とカラーLUT2とが予めユーザが明示的に定めたLUTであるか否かを判断する。カラーLUT1とカラーLUT2とがいずれもユーザが定めたLUTでない場合には、A1における処理をCPU14は実行する。
【0106】
A1において、カラーLUT1とカラーLUT2とを使用して描画される画素が互いに識別容易な色か否かを判断する。識別の容易性は、色の色相(hue)、彩度(saturation)、明度(value)で評価する。カラーLUT1とカラーLUT2とを使用して描画される画素が互いに識別容易な色でない場合には、例えば、CPU14は赤色と青色とを描画される画素の色として選択する(赤色と青色とは互いに識別容易な色である)。また、例えば、互いに補色を選択する。そして、CPU14はカラーLUT1を、一方(例えば、青色)を色相の基調としたカラーマップが割り当てられたカラーLUT1−2に変更する。また、CPU14はカラーLUT2を、他方(例えば、赤色)を色相の基調としたカラーマップが割り当てられたカラーLUT2−2に変更する。
【0107】
このようにCPU14は、組織1に対しては、オパシティLUT1およびカラーLUT1−2を使用してまた、組織2に対しては、オパシティLUT2およびカラーLUT2−2を使用して、画像を描画し、モニタ4に表示する。
【0108】
従って、モニタ4に同時に表示されている赤色の左右の肺と青色の肋骨周辺の骨とをユーザは明確に区別することが可能になる。
【0109】
次に、カラーLUT1のみがユーザによって予め定義されている場合について説明する(A2)。
【0110】
CPU14は、ユーザによって予め定義されているカラーLUT1に使用されている全ての色相を取り込む。そして、カラーLUT1において使用されている全ての色相と識別容易な他の一つの色相を比較演算等の演算によって算出する。例えば、識別容易な他の一つの色相が緑色である場合には、CPU14はカラーLUT2を、緑色を色相の基調としたカラーマップが割り当てられたカラーLUT2−2に変更する。
【0111】
そして、CPU14はカラーLUT1−2の内容をカラーLUT1の内容とする(カラーLUT1−2とカラーLUT1とは同一の内容となる)。
【0112】
従って、CPU14がカラーLUT1−2とカラーLUT2−2を用いて描画される画像の画素は、ユーザによって予め定義(選択)された緑色を色相の基礎とした画素と、算出された緑色と識別が容易な色相を基礎とした画素と、であるのでユーザは明確に2つの組織(部位)を区別することが可能になる。
【0113】
次に、カラーLUT2のみがユーザによって予め定義されている場合について説明する(A3)。
【0114】
CPU14は、ユーザによって予め定義されているカラーLUT2に使用されている全ての色相を取り込む。そして、カラーLUT2において使用されている全ての色相と識別容易な他の一つの色相を比較演算等の演算によって算出する。例えば、識別容易な他の一つの色相が緑色である場合には、CPU14はカラーLUT1を、緑色を色相の基調としたカラーマップが割り当てられたカラーLUT1−2に変更する。
【0115】
そして、CPU14はカラーLUT2−2の内容をカラーLUT2の内容とする(カラーLUT2−2とカラーLUT2とは同一の内容となる)。
【0116】
従って、CPU14がカラーLUT1−2とカラーLUT2−2を用いて描画される画像の画素は、ユーザによって予め定義(選択)された緑色を色相の基礎とした画素と、算出された緑色と識別が容易な色相を基礎とした画素と、であるのでユーザは明確に2つの組織(部位)を区別することが可能になる。
【0117】
次に、図11を用いて、カラーLUT1およびカラーLUT2の両方がユーザによって予め定義されている場合について説明する。
【0118】
最初にCPU14は、ユーザによって予め定義されているカラーLUT1及びカラーLUT2に使用されている全ての色相を取り込む。そして、カラーLUT1とカラーLUT2とに同一の色相が全部又は一部に含まれているか否かを判断する。同一の色相が全部又は一部に含まれている場合には、CPU14がカラーLUT1およびカラーLUT2を用いて異なる組織(部位)をモニタ4に表示した場合には、図7において、異なる組織(部位)をユーザが識別することが困難になる可能性が高いのでいずれかのカラーLUTを変更する必要がある。
【0119】
以下の説明では、CPU14は、カラーLUT2を変更する場合について説明するが、CPU14はカラーLUT2を変更せずに、以下の説明のようにカラーLUT1を変更することも可能である。
【0120】
次にCPU14は、カラーLUT1において使用されている全ての色相と識別容易な他の一つの色相を比較演算等の演算によって算出する。例えば、識別容易な他の一つの色相が緑色である場合には、CPU14はカラーLUT2を、緑色を色相の基調としたカラーマップが割り当てられたカラーLUT2−2に変更する(ユーザが予め定めたカラーLUT2の内容を反映しない。)。
【0121】
そして、CPU14はカラーLUT1−2の内容をカラーLUT1の内容とする(カラーLUT1−2とカラーLUT1とは同一の内容とし、ユーザが予め定めたカラーLUT1の内容をそのまま反映する。)。
【0122】
すると、CPU14がカラーLUT1−2とカラーLUT2−2を用いて描画される画像の画素によって表示された組織(部位)は、ユーザによって予め定義(選択)された緑色を色相の基礎とした画素と、算出された緑色と識別が容易な色相を基礎とした画素と、によって表示されるのでユーザは明確に2つの組織(部位)を区別することが可能になる。
[6.第1実施形態における描画手法]
図12は、本実施形態の一例である図9における動作を含む描画動作を示すフローチャートである。このアルゴリズムにより一つのボリュームデータに対して複数のカラーLUTを用いたレンダリングが可能である。
【0123】
図12の動作フローについてステップ毎に説明する。
【0124】
ステップS20において、CPU14はボリュームデータV1における投影開始点O、およびサンプリング間隔(投影開始点からの光の進行方向における演算間隔)を設定する。
【0125】
ステップS21において、CPU14は反射光E、残存光I、現在計算位置Xを初期設定する。投影開始点において反射する光はないので反射光E=0であり、また投影開始点においては減少している光はないので残存光は1となる(1で正規化されている)。また、現在計算位置Xを投影開始点とし、現在計算位置X=Oに設定し初期化する。
【0126】
ステップS22において、投影開始点から最初にボリュームデータV1における演算すべき位置を現在計算位置Xとして、周囲のボクセルデータ(周囲のボクセル値)から現在計算位置Xの補間ボクセル値Vを求める。これは、現在計算位置Xは必ずしもCT等から得られた格子状の頂点にはないからである。
【0127】
また、CPU14は、現在計算位置Xの周辺のボクセルデータ(ボクセル値)から現在計算位置Xのグラジエント(勾配)gを求める。
【0128】
ステップS23において、ステップS22において演算された補間ボクセル値Vから、予め演算されたオパシティLUT1(オパシティLUT1は、ボリュームデータV1から、組織(部位)1を単独で表示する場合に予め定められている(一例として図8(A)における肋骨および周辺の骨を単独で表示する場合である。))および図9乃至図11を用いて説明したカラーLUT1−2から、現在計算位置Xにおける組織(部位)1に対応する不透明度α1とカラー値C1とを演算する。
【0129】
ステップS24において、ステップS22において演算された補間ボクセル値Vから、予め演算されたオパシティLUT2(オパシティLUT2は、ボリュームデータV1から、組織(部位)2を単独で表示する場合に予め定められている(一例として図8(B)における左右の肺を単独で表示する場合である。))および図9乃至図11を用いて説明した予め演算されたカラーLUT2−2から、現在計算位置Xにおける組織(部位)2に対応する不透明度α2とカラー値C2とを演算する。
【0130】
ステップS25において、ステップS22において演算された勾配gからシェーディング係数βを演算する。
【0131】
ステップS26において、ステップS23において演算された不透明度α1と、ステップS24において演算された不透明度α2とから現在計算位置Xにおける組織(部位)1と組織(部位)2とを同時に表示する場合の新たな不透明度αを演算する。新たな不透明度αは、不透明度α1および不透明度α2のうち大きい方の値とする。
【0132】
すなわち、不透明度α1>不透明度α2の場合には新たな不透明度α=不透明度α1となり、不透明度α1<不透明度α2の場合には新たな不透明度α=不透明度α2となり、不透明度α1=不透明度α2の場合には新たな不透明度α=不透明度α1=不透明度α2となる。
【0133】
さらに、ステップS23において演算された不透明度α1並びにカラー値C1、およびステップS24において演算された不透明度α2並びにカラー値C2とから現在計算位置Xにおける組織(部位)1と組織(部位)2とを同時に表示する場合の新たなカラー値Cを演算する(カラー値Cは一例として式(1)によって演算される)。
(数1)
C=(α1×C1+α2×C2)/(α1+α2) ・・・ (式1)
ステップS27において、現在計算位置Xの減衰光Dおよび部分反射光Fを演算し、光の進行方向O−Xにサンプリング間隔ΔSだけ進んだ位置におけるステップS22からステップS26の演算を行なうために、反射光E、および残存光Iを更新する。
【0134】
ここで、減衰光Dは残存光Iに該当する入射光が現在計算位置Xにおいてどれだけ反射するか(現在計算位置Xから透過する透過光に対してどれだけ減衰するか)を示す光の量であるから、減衰光Dは、残存光I(現在計算位置Xに入射する光)に不透明度αを乗算した値になる(減衰光D=残存光I×不透明度α)。
【0135】
また、減衰光Dの全てが、光の進行方向O−Xに対して戻り光となる訳ではなく、ステップS25において演算された現在計算位置Xにおけるシェーディング係数βによって、減衰光の内で、光の進行方向O−Xに対する戻り光となる割合が決まる。従って、光の進行方向O−Xに対する戻り光を部分反射光Fとすると、部分反射光Fはシェーディング係数βと減衰光Dを乗算した値に、カラー(色)の割合であるカラー値Cを乗算した値(部分反射光F=シェーディング係数β×減衰光D×カラー値C)となる。
【0136】
さらに、新たな反射光E=E+F、新たな残存光I=I−D、と設定する。
【0137】
ステップS28において、現在計算位置Xをサンプリング間隔ΔSだけ更新する。すなわち、X=X+ΔSと設定する。
【0138】
ステップS29において、現在計算位置Xが予め演算を終了させるべき位置になったか、或いは、残存光Iが0になったか(残存光Iが0になると先に進むべき光がなくなる。)を判断し、現在計算位置Xが予め演算を終了させるべき位置になったか、或いは、残存光Iが0になった場合(ステップS29:NO)には、ステップS22に進み、現在計算位置Xが予め演算を終了させるべき位置になった場合、或いは、残存光Iが0になった場合(ステップS9:YES)には、ステップS30に進む。
【0139】
ステップS30において、全ての現在計算位置Xにおける反射光の和となっている反射光Eを投影開始点Oにおいて演算されたピクセル(画面中の画素に対応)のピクセル値として描画する。
【0140】
これにより、新たなカラーLUTを作成することによって複数の観察対象が存在する場合に容易にそれぞれを区別して描画することできる。特に、それぞれの観察対象を表現する場合にオパシティLUTの不透明部分に重複する箇所がある場合には、複数のカラーLUTを用いることによって、単一のカラーLUTに複雑な設定を行う事無く、複数の観察対象を区別して描画することできる。また、いずれかの観察対象のオパシティLUT、カラーLUTに行った変更を即座に、複数の観察対象を表示する画像に反映させることが出来る。
[7.第2実施形態]
第2実施形態としてCT値などのボクセル値が共通する臓器に対しては臓器抽出アルゴリズムなどにより領域抽出を行い、抽出された領域を描画領域として、描画領域毎にそれぞれ異なる不透明度設定、色相、色彩、明度等を設定することによって区別して描画する場合に、それぞれの臓器に対応するカラーLUTをそれぞれ動的に作成する場合について図13乃至図16を用いて説明する。
【0141】
図13は、人体のボリュームデータから臓器抽出アルゴリズムなどにより領域抽出を行い腎臓および腎臓に結合する血管30の外形を白黒画像(又はカラー色)を用いてモニタ4に表示した図である。
【0142】
図14は、図13における人体のボリュームデータから臓器抽出アルゴリズムなどにより領域抽出を行い腎臓および肝臓周辺の太い血管32の外形を白黒画像((又は図13と同一カラー色)(色相、彩度、明度が同一であることを意味する))を用いてモニタ4に表示した図である。
【0143】
図15は、図13における人体のボリュームデータから臓器抽出アルゴリズムなどにより領域抽出を行い肝臓および肝臓に結合する血管31の外形を白黒画像((又は図13と同一カラー色(色相、彩度、明度が同一であることを意味する))を用いてモニタ4に表示した図である。
【0144】
臓器抽出アルゴリズムなどにより領域抽出を行っているのは、腎臓および腎臓に結合する血管30、肝臓および肝臓に結合する血管31、および腎臓および肝臓周辺の太い血管32は近いCT値を有するのでCT値のみによる単純な区分けは出来ない。その為に臓器抽出アルゴリズムなどにより領域抽出を行いそれぞれの組織の領域を取得している。また、取得された領域をマスクとし、マスクされた領域のみを描画することによって、それぞれの組織の画像を作成する。
【0145】
また、図13、14、および15に表示された腎臓および腎臓に結合する血管30の外形、肝臓および肝臓に結合する血管31の外形、および腎臓および肝臓周辺の太い血管32の外形を白黒画像((又は図13と同一カラー色)(色相、彩度、明度が同一であることを意味する))を用いて同時に表示した場合には、ユーザは腎臓および腎臓に結合する血管30、肝臓および肝臓に結合する血管31、および腎臓および肝臓周辺の太い血管32を相互に区別して認識することは難しい。
【0146】
また、腎臓および腎臓に結合する血管30、肝臓および肝臓に結合する血管31、および腎臓および肝臓周辺の太い血管32の相互位置関係(どの部分が視点位置から前にあるのか後ろにあるのかという位置関係を含む。)をユーザが認識することが難しく、ユーザが適切な医療行為を実施することが困難になる場合、また、ユーザが画像の識別性を向上するために煩雑な操作を行うことに伴って、円滑かつ的確な医療行為を実施することが困難になる場合がある。
【0147】
一方で、それぞれの組織は近いCT値を有するので単一のカラーLUTでは組織を区別して描画することが出来ない。
【0148】
しかし、図16に示すように、腎臓および腎臓に結合する血管30の外形、肝臓および肝臓に結合する血管31の外形、および腎臓および肝臓周辺の太い血管32の外形を少なくとも色相、彩度、明度のいずれか一つを異なるように(望ましくは色相が相互に類似しない色相を基調として各部位を同時に表示する)同時に表示した場合には、ユーザは腎臓および腎臓に結合する血管30、肝臓および肝臓に結合する血管31、および腎臓および肝臓周辺の太い血管32を相互に区別して認識するが容易になり、ユーザは腎臓および腎臓に結合する血管30、肝臓および肝臓に結合する血管31、および腎臓および肝臓周辺の太い血管32の人体内の空間的な位置関係を容易に認識することが可能となる(視点からの各部位の前後関係も容易に識別することが可能になる)。
【0149】
また、実施形態2では、腎臓および腎臓に結合する血管30、肝臓および肝臓に結合する血管31、および腎臓および肝臓周辺の太い血管32のそれぞれの外形を表示するように説明したが、本願はこれに限定されるわけではなく、例えば、腎臓および腎臓に結合する血管30、肝臓および肝臓に結合する血管31、および腎臓および肝臓周辺の太い血管32の形状をマスクとして使用し、腎臓および腎臓に結合する血管30、肝臓および肝臓に結合する血管31、および腎臓および肝臓周辺の太い血管32で囲まれる部分の内側の部位(組織)を同時に表示することも可能である。
【0150】
マスク(領域抽出を行いそれぞれの組織の領域) を用いてレイキャスト法によって描画するには、図12のアルゴリズムのステップS23、S24において、不透明度α1α2を求めるときに、その位置Xがマスクに含まれない場合(組織に含まれない場合)に、その含まれない方の不透明度を0とすることで描画できる。
【0151】
これによって単一のカラーLUTでは組織を区別して描画することが出来ない場合であったとしても、ユーザが複数のカラーLUTを明示的に作成させる事無く描画できる。
[8.その他の実施形態]
図9または図16で説明したように、2つの組織(部位)または3つの組織(部位)を同時に表示する場合を説明したが、同時に表示される組織(部位)に制限があるわけではなく組織(部位)は任意の数まで同時に表示されることが可能であり、それぞれの組織(部位)に対応したカラーLUTが生成される。
【0152】
また、図9では、2つの組織(部位)が同時に表示される状態で説明が終了しているが、本願においては、2つの組織(部位)が同時に表示された後に、再び各組織(部位)を別々に表示する場合には、新たに生成されたカラーLUT1−2およびカラーLUT2−2を継続して使用するようにしてもよい。
【0153】
また、図9では、2つの組織(部位)が同時に表示される状態で説明が終了しているが、本願においては、2つの組織(部位)が同時に表示された後に、再び各組織(部位)を別々に表示する場合に、新たに生成されたカラーLUT1−2およびカラーLUT2−2を継続して使用するよりも、各組織(部位)を別々に表示する場合に使用されていたカラーLUT1およびカラーLUT2を使用することをユーザが所望する場合には、カラーLUT1およびカラーLUT2を使用するようにしてもよい。このようにすることによって、それぞれの組織を単独で観察するときには客観性の高い描画を行いつつ、2つの組織を同時に観察するときには識別性の高い描画を行うことが簡単にできる。
【0154】
また、図9において、カラーLUT1−2はカラーLUT1と異なるように設定したが、カラーLUT1−2をカラーLUT1と同じにしてもよい。または、カラーLUT2−2をカラーLUT2と同じにしてもよい。
【0155】
また、各組織(部位)の色の設定はLUTを用いて行なっているが、本願はこれに限定されるわけではなく、各組織(部位)の色の設定を任意の関数等の他の手法を用いて設定するようにしてもよい。
【0156】
また、各組織(部位)の色の設定はLUTを用いて行なっているが、本願はこれに限定されるわけではなく、各組織(部位)の色は一定色であっても良い。これは本願ではそれぞれの組織に対して色を決定するために、ボクセル値に応じた色を設定する必要がないからである。このようにした場合はカラーLUT変換処理が省略できるので描画速度が向上する。
【0157】
また、新たなカラーLUTを生成する場合には、一つのカラーLUTに複数の色相を設定し、複数の色相を含むカラーLUTを少なくとも一つ以上用いて、複数の組織(部位)を表示するようにしてもよい。
【0158】
また、図12では典型的なレイキャスト法のアルゴリズムを示したが、レイキャスト法は勾配Gを使用しない形態、並列実行させる形態、カラーLUTを用いず色が固定値である形態、副光源が設定してある形態、透視投影法によって描画する形態などの多種多様な形態がある。すなわち、ボクセルの不透明度を利用することと、ボリュームデータからの反射光を用いて画像の画素を決定する方法であればレイキャスト法とする。
【0159】
また、図12では典型的なレイキャスト法のアルゴリズムとして、ボクセルの不透明度はボクセル値から算出したが、ボクセルにあらかじめ不透明度が割り当てられていても良い。マスクの実装方法の一つだからである。
【0160】
なお、図6、および図9乃至図12における動作手順を、ハードディスク等の記録媒体に予め記録しておき、或いはインターネット等のネットワークを介して予め記録しておき、これを汎用のマイクロコンピュータ等により読み出して実行することにより、当該汎用のマイクロコンピュータ等を実施形態に係わるCPUとして機能させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】(A)本実施形態におけるシステム構成の一例を示す図である。(B)本実施形態におけるハードウェア構成の一例を示す図である。
【図2】本実施形態における画像撮像システムの一例である。
【図3】ボリュームデータとボクセルとを説明する図である。
【図4】ボクセル値と不透明度との関係を説明する図である。
【図5】ボリュームレンダリングを説明する図である。
【図6】本実施形態におけるレイキャスト法の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】従来における一実施例の画面を示す図である。
【図8】本実施形態における一実施例を示す画面を示す図である。
【図9】第1実施形態における動作の一例の概要を示すフローチャートである。
【図10】第1実施形態における複数のLUTの作成方法を説明する図である。
【図11】第1実施形態における複数のLUTの作成方法を説明する図である。
【図12】第1実施形態における動作の一例を示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態における組織(部位)の一部を表示した画面を示す図である。
【図14】第2実施形態における組織(部位)の一部を表示した画面を示す図である。
【図15】第2実施形態における組織(部位)の一部を表示した画面を示す図である。
【図16】第2実施形態における組織(部位)を同時描画した画面を示す図である。
【符号の説明】
【0162】
1 ・・・ 画像表示装置
2 ・・・ データベース
3・・・ 計算機
4 ・・・ モニタ
5 ・・・ キーボード
6 ・・・ マウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レイキャスト法により少なくとも一つのボリュームデータを可視化する医療画像表示装置において、
前記ボリュームデータの一つに含まれるボクセルについて可視化する時の色を与える、少なくとも2以上の色取得関数による色取得手段と、
前記色取得関数の少なくとも一つについて、その前記色取得関数に対応する新たな前記色取得関数を演算する色取得手段演算手段と、を備え、
少なくとも1つ以上の新たな前記色取得関数を用いて、前記レイキャスト法によって前記少なくとも一つのボリュームデータを可視化する可視化手段と、
を備えることを特徴とする医療画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療画像表示装置において、
前記色取得手段演算手段は、前記2以上の色取得関数が与える色が互いに近似する場合には、前記可視化手段が用いる前記色取得関数及び前記新たな前記色取得関数が与える色の色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように、少なくとも一つ以上の当該新たな前記色取得関数を演算させることを特徴とする医療画像表示装置。
【請求項3】
請求項1乃至2の何れかに記載の医療画像表示装置において、
前記色取得手段演算手段は、ユーザによって予め定められた前記色取得関数が有る場合には、前記色取得手段演算手段は、ユーザによって予め定められた前記色取得関数でない他の前記色取得関数に対応する前記新たな前記色取得関数を演算することを特徴とする医療画像表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の医療画像表示装置において、
前記色取得手段演算手段は、前記ユーザによって予め定められた前記色取得関数が与える色と前記新たな前記色取得関数が与える色とが、色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように演算することを特徴とする医療画像表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の医療画像表示装置は更に、
それぞれの前記色取得関数に対応するマスクを取得するマスク取得手段を有し、
前記可視化手段は前記マスクを用い、前記レイキャスト法によって前記一つのボリュームデータを可視化することを特徴とする医療画像表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の医療画像表示装置において、
前記色取得関数は区分連続関数によって実現されることを特徴とする医療画像表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の医療画像表示装置において、
前記色取得関数に係る区分連続関数はルックアップテーブル(Look Up Table(L.U.T.))によって実現されることを特徴とする医療画像表示装置。
【請求項8】
レイキャスト法により少なくとも一つのボリュームデータを可視化する医療画像表示装置の制御方法において、
前記ボリュームデータの一つに含まれるボクセルについて可視化する時の色を与える、少なくとも2以上の色取得関数による色取得工程と、
前記色取得関数の少なくとも一つについて、その前記色取得関数に対応する新たな前記色取得関数を演算する色取得工程演算工程と、を備え、
少なくとも1つ以上の新たな前記色取得関数を用いて、前記レイキャスト法によって前記少なくとも一つのボリュームデータを可視化する可視化工程と、
を備えることを特徴とする医療画像表示装置の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の医療画像表示装置の制御方法において、
前記色取得工程演算工程は、前記2以上の色取得関数が与える色が互いに近似する場合には、前記可視化工程において用いられる前記色取得関数及び前記新たな前記色取得関数が与える色の色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように、少なくとも一つ以上の当該新たな前記色取得関数を演算させることを特徴とする医療画像表示装置の制御方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の医療画像表示装置の制御方法において、
前記色取得工程演算工程において、ユーザによって予め定められた前記色取得関数が有る場合には、前記色取得工程演算工程は、ユーザによって予め定められた前記色取得関数ではない他の前記色取得関数に対応する前記新たな前記色取得関数を演算することを特徴とする医療画像表示装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の医療画像表示装置の制御方法において、
前記色取得工程演算工程は、前記ユーザによって予め定められた前記色取得関数が与える色と前記新たな前記色取得関数が与える色とが、色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように演算することを特徴とする医療画像表示装置の制御方法。
【請求項12】
請求項8乃至11の何れか一項に記載の医療画像表示装置の制御方法は更に、
それぞれの前記色取得関数に対応するマスクを取得するマスク取得工程を有し、
前記可視化工程において前記マスクを用い、前記レイキャスト法によって前記一つのボリュームデータを可視化することを特徴とする医療画像表示装置の制御方法。
【請求項13】
請求項8乃至12の何れか一項に記載の医療画像表示装置の制御方法において、
前記色取得関数は区分連続関数によって実現されることを特徴とする医療画像表示装置の制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の医療画像表示装置の制御方法において、
前記色取得関数に係る区分連続関数はルックアップテーブル(Look Up Table(L.U.T.))によって実現されることを特徴とする医療画像表示装置の制御方法。
【請求項15】
レイキャスト法により少なくとも一つのボリュームデータを可視化する医療画像表示装置に含まれるコンピュータを、
前記ボリュームデータの一つに含まれるボクセルについて可視化する時の色を与える、少なくとも2以上の色取得関数による色取得手段、
前記色取得関数の少なくとも一つについて、その前記色取得関数に対応する新たな前記色取得関数を演算する色取得手段演算手段、として機能させ、
少なくとも1つ以上の新たな前記色取得関数を用いて、前記レイキャスト法によって前記少なくとも一つのボリュームデータを可視化する可視化手段、として機能させることを特徴とする医療画像表示装置の制御プログラム。
【請求項16】
請求項15に記載の医療画像表示装置の制御プログラムにおいて、
前記色取得手段演算手段は、前記2以上の色取得関数が与える色が互いに近似する場合には、前記可視化手段が用いる前記色取得関数及び前記新たな前記色取得関数が与える色の色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように、少なくとも一つ以上の当該新たな前記色取得関数を演算することを特徴とする医療画像表示装置の制御プログラム。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の医療画像表示装置の制御プログラムにおいて、
前記色取得手段演算手段は、ユーザによって予め定められた前記色取得関数が有る場合には、前記色取得手段演算手段は、ユーザによって予め定められた前記色取得関数でない他の前記色取得関数に対応する前記新たな前記色取得関数を演算することを特徴とする医療画像表示装置の制御プログラム。
【請求項18】
請求項17に記載の医療画像表示装置の制御プログラムにおいて、
前記色取得手段演算手段は、前記ユーザによって予め定められた前記色取得関数が与える色と前記新たな前記色取得関数が与える色とが、色相、彩度、および明度の少なくとも何れか一つが相互に異なるように演算することを特徴とする医療画像表示装置の制御プログラム。
【請求項19】
請求項15乃至18の何れか一項に記載の医療画像表示装置の制御プログラムは更に、
それぞれの前記色取得関数に対応するマスクを取得するように機能させるマスク取得手段を有し、
前記可視化手段は前記マスクを用い、前記レイキャスト法によって前記一つのボリュームデータを可視化することを特徴とする医療画像表示装置の制御プログラム。
【請求項20】
請求項15乃至19の何れか一項に記載の医療画像表示装置の制御プログラムにおいて、
前記色取得関数は区分連続関数によって実現されることを特徴とする医療画像表示装置の制御プログラム。
【請求項21】
請求項15に記載の医療画像表示装置の制御プログラムにおいて、
前記色取得関数に係る区分連続関数はルックアップテーブル(Look Up Table(L.U.T.))によって実現されることを特徴とする医療画像表示装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−160306(P2009−160306A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2365(P2008−2365)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(500109320)ザイオソフト株式会社 (59)
【Fターム(参考)】