説明

画像表示装置

【課題】回折格子17により瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼12に投射して画像を表示する際に、表示画像に色ずれが生じて画像の品質が低下することを低減する。
【解決手段】瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼12に投射して、表示画像を視認させる画像表示部2と、利用者の頭部に装着して画像表示部2を利用者の眼12の前方に保持する装着部3と、画像表示部2と装着部3との間に構成し、装着部3に対して画像表示部2を利用者の眼の前後方向に移動して射出瞳の位置を調整可能とする位置調節部4と、を備え、画像表示部2から位置調整用の判定画像を投射し、この判定画像の視認状態に応じて、位置調節部4により射出瞳の位置調整を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置に関し、特に、瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼に導入して画像表示を行う画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、利用者の頭部に表示装置を装着して、利用者の眼に直接画像光を照射して、網膜上に表示画像を結像させて表示を行うヘッドマウント型表示装置が実用化されている。表示装置の場所をとらず、しかも眼前に映像を展開できるので、多方面に利用が検討されている。
【0003】
図9は、この種の表示装置の一例である網膜走査型の画像表示装置の構成を表すブロック図である(特許文献1の図1)。網膜走査型の画像表示装置の動作を以下に簡単に説明する。外部から入力した映像信号は信号処理回路60に入力される。信号処理回路60は、映像信号から同期信号及びR(赤)G(緑)B(青)の各色の輝度信号を抽出する。R、G、Bの各色のレーザドライバ70、72、74はR、G、Bの各色の輝度信号を入力してR、G、Bの各色の駆動信号を生成する。R、G、Bの各レーザ135、137、139が発光したRGBの光は、コリメータレンズ40、42、44、ダイクロイックミラー50、52、54及び結合光学系56を介して合成され、光ファイバー82に導入される。光ファイバー82を出射した合成光は、コリメータレンズ84、ビームスプリッタ92等を介して光走査部に出射される。
【0004】
光走査部は、光ファイバー82から出射された合成光を水平方向に走査する水平走査系100と垂直方向に走査する垂直走査系120から構成されている。光走査部が走査した走査光は、リレー光学系140を介して利用者の眼145の瞳孔146に導入され、網膜147上に結像する。利用者は、この網膜上に結像した画像を表示画像として認識する。
【0005】
図10は、図9の網膜走査型の画像表示装置の光路が簡略化して表されている(特許文献1の図6)。水平走査系100と垂直走査系120との間には第1リレー光学系112、回折格子116、第2光学系114が設置されている。また、垂直走査系120からの走査光は、第2リレー光学系142、144を介して利用者の眼145に投射される。ここで、回折格子116は、第2リレー光学系144から投射される射出瞳径を拡大させるために設けられており、水平走査系100からの走査光が結像して中間像を形成する位置に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−251126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図11は、網膜走査型の画像表示装置の本体200から利用者の眼145に投射される走査光を表す模式図である。図11(a)は、利用者の眼が正面を向いている状態を表し、図11(b)は、利用者の眼が表示画像の上端部を向いている状態を表す。図11(a)において、本体200から画像光が所定の画角θを持って利用者の眼145の瞳Piに投射される。図11(a)には、投射する画像の外周部の画像光G+θ/2と、中央部の画像光Gと、画像光G+θ/2とは反対側の外周部の画像光G−θ/2が描かれている。各画像光G+θ/2、G、G−θ/2は画像表示装置の射出瞳Pdに収束し、利用者の瞳孔Piを通して眼145に導入される。各画像光G+θ/2、G、G−θ/2は、回折格子116(図示しない)による0次回折光D、+1次回折光D+1及び−1次回折光D−1を含み、射出瞳Pdの径が拡大されている。また、画像装置の射出瞳Pdの位置は、利用者の瞳孔Piの位置にほぼ一致させる。これにより、利用者の眼145が正面を向いているとき、全画像光G+θ/2、G、G−θ/2が眼145に導入されるので、画像全体が見えている。
【0008】
通常、画像光の画角θは20°〜35°、例えば画角θ=25°に設定されている。しかし、眼145が外界の像を細かく認識でき、色に対して敏感な網膜上の錘体細胞は、網膜中心から見て高々2°〜3°の角度範囲に多く集中している。そのために、利用者が投射された表示画像を細かく見ようとしたときは、眼球150を頻繁に回転させることになる。
【0009】
図11(b)は、利用者が画像の外周部を注視している状態を表している。眼145は、画像光G+θ/2を正面にしているので、瞳Piも画像光G+θ/2側を向くことになる。この場合、画像光G+θ/2、G、G−θ/2の夫々の一部が瞳Piを通過して眼145に導入されているので、一応全体の画像は見えている。しかし、画像光G+θ/2、G、G−θ/2の夫々に含まれる±1次回折光D+1、D−1は、回折角の波長依存性に起因する色ずれが生じている。そのために、眼145に導入される画像光の0次回折光Dと±1次回折光D+1、D−1の割合が異なると、色むらとなって認識される。図11(b)に示すように、眼145が外周端部の画像光G+θ/2方向を注視すると、画像光G+θ/2の+1次回折光D+1周辺領域を中心に見ることになり、色ずれが顕著に認識されることになる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、画像光の外周部を注視した場合でも色ずれが許容限度内に抑制することができ、かつ、画像光により形成される画像に欠けが生じない画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するために以下の手段を講じた。
【0012】
請求項1に係る発明においては、回折素子により瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼に投射して、表示画像を視認させる画像表示部と、利用者の頭部に装着され、前記画像表示部を利用者の眼の前方に保持する装着部と、前記画像表示部と前記装着部との間に構成され、前記装着部に対して前記画像表示部を利用者の眼の前後方向に移動して、前記画像光による射出瞳の位置を調整可能とする位置調節部と、を備え、前記画像表示部は前記射出瞳の位置調整を行うための判定用の画像光を投射し、前記判定用の画像光に基づく判定画像の視認状態に応じて、前記位置調整部により前記射出瞳の位置調整を可能とする画像表示装置とした。
【0013】
請求項2に係る発明においては、前記画像表示部は、前記判定画像を投射するための画像データを記憶する判定画像記憶部と、前記判定画像記憶部から前記画像データを入力して、前記画像データに応じた判定用の画像光を投射する投射部と、前記投射された画像光に前記回折素子により瞳拡大処理を施す光回折部と、前記瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼に向けて投射する接眼レンズ部と、を備えていることとした。
【0014】
請求項3に係る発明においては、前記判定画像は、表示画像の周辺部に表示される周辺判定パターンを含むこととした。
【0015】
請求項4に係る発明においては、前記周辺判定パターンは、画角が2°〜3°の範囲の大きさを有する色判定パターンからなることとした。
【0016】
請求項5に係る発明においては、前記判定画像は、表示画像の中央部に表示され、前記色判定パターンに現れる色と比較するための色比較パターンを含むこととした。
【0017】
請求項6に係る発明においては、前記周辺判定パターンは、表示画像の周辺端部を表示する周辺端部パターンを含むこととした。
【0018】
請求項7に係る発明においては、前記位置調節部は、前記画像表示部の前後方向の位置を所定間隔のステップ状に移動可能とした。
【0019】
請求項8に係る発明においては、前記画像表示部は、前記装着部に対する前記画像表示部の位置を検出する位置検出部と、前記位置検出部が検出した前記画像表示部の過去の位置を記憶する位置記憶部と、前記位置検出部が検出した画像表示部の現在位置と、前記位置記憶部に記憶された過去の位置とを比較して、前記現在位置が前記過去の位置から所定距離以上に離間していることを検出して、前記画像表示部に警告表示を行う位置比較部と、を更に備えることとした。
【0020】
請求項9に係る発明においては、前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像表示装置の位置調整方法において、前記画像表示部が、表示画像の周辺端部に表示する周辺端部パターンからなる第一判定画像を投射する第一投射ステップと、前記外周端部パターンの最外周端部を注視した状態で、前記周辺端部パターンが欠け始める位置まで、前記画像表示部を利用者の眼の方向に近接させる第一移動ステップと、前記画像表示部が、前記表示画像の周辺部に色判定パターンと、前記表示画像の中央部に色比較パターンとを有する第二判定画像を投射する第二投射ステップと、前記色判定パターンに現れる色と前記色比較パターンに現れる色とが近似する位置まで、前記画像表示部を利用者の眼と反対方向に移動させる第二移動ステップと、を有することを特徴とする画像表示装置の位置調整方法とした。
【0021】
請求項10に係る発明においては、前記第二投射ステップにおいて、前記色比較パターンは、色見本を表す色見本パターンと色限度を表す色限度パターンを含み、前記第二移動ステップは、前記色判定パターンに現れる色と前記色限度パターンに現れる色とが近似する位置よりも、前記画像表示部を利用者の眼の方向に所定距離移動させて固定する、こととした。
【0022】
請求項11に係る発明においては、前記第一投射ステップ〜第二移動ステップまでを、前記画像表示装置の起動時に行うこととした。
【0023】
請求項12に係る発明においては、前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像表示装置の駆動方法において、前記画像表示部は、表示画像の周辺端部を表示する周辺端部パターンを有する第一判定画像を表示するための第一画像データと、表示画像の周辺部に色判定パターンと前記表示画像の中央部に色比較パターンとを有する第二判定画像を表示するための第二画像データとを記憶する判定画像記憶部と、前記判定画像記憶部から前記画像データを入力して判定用の画像光を投射する投射部と、前記位置調整部において前記画像表示部の位置調整がなされたことが入力される操作入力部とを備え、前記投射部が、前記判定画像記憶部から前記第一画像データを入力して、当該画像データに基づく画像光を投射する第一投射ステップと、前記操作入力部に、前記画像表示部が第一の位置に移動完了したことが入力される第一入力ステップと、前記投射部が、前記判定画像記憶部から前記第二画像データを入力して、当該画像データに基づく画像光を投射する第二投射ステップと、前記操作入力部に、前記画像表示部が第二の位置に移動完了したことが入力される第二入力ステップと、を有する画像表示装置の駆動方法とした。
【0024】
請求項13に係る発明においては、前記第一投射ステップ〜前記第二入力ステップまでを、前記画像表示装置の起動時に行うこととした。
【0025】
請求項14に係る発明においては、前記画像表示装置は、前記装着部に対する前記画像表示部の位置を検出する位置検出部と、前記検出された位置を記憶する位置記憶部と、位置比較部を更に備え、前記第二入力ステップは、前記位置検出部により前記第二の位置を検出して前記位置記憶部に記憶するステップを含み、更に、前記位置比較部が、前記位置検出部が検出した画像表示部の現在位置と、前記位置記憶部に記憶された前記第二の位置とを比較して、前記現在位置が前記第二の位置から所定距離以上に離間していることを検出して、前記画像表示部に警告表示を行う警告表示ステップを、有することとした。
【発明の効果】
【0026】
本発明に画像表示装置においては、回折素子により瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼に投射して、表示画像を視認させる画像表示部と、利用者の頭部に装着され、画像表示部を利用者の眼の前方に保持する装着部と、画像表示部と装着部との間に構成され、装着部に対して画像表示部を利用者の眼の前後方向に移動して、画像光による射出瞳の位置を調整可能とする位置調節部と、を備え、画像表示部は射出瞳の位置調整を行うための判定用の画像光を投射し、この判定用の画像光に基づく判定画像の視認状態に応じて、位置調整部により射出瞳の位置調整を可能とした。これにより、利用者が表示画像の周辺部を注視したときの色ずれを許容限度内に抑制し、かつ、この周辺部を注視している状態で、他の周辺部の表示画像に欠けが生じないように、画像表示部の位置調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る画像表示装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像表示部の機能を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像表示装置の位置決めの原理を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像表示装置の構成を説明するための模式図である。
【図5】本発明に実施形態に係る画像表示装置を模式的に表したブロック図である。
【図6】本発明の実施形態に係る画像表示装置の位置調整方法及び駆動方法を説明するためのフロー図である。
【図7】本発明の実施形態に係る判定画像の一例を表す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る画像表示装置の位置調整方法及び駆動方法を説明するためのフロー図である。
【図9】従来公知の網膜走査型の画像表示装置の構成を表すブロック図である。
【図10】従来公知の網膜走査型の画像表示装置の光路を表す模式図である。
【図11】網膜走査型の画像表示装置から走査光が眼に投射される状態を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について、図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
(第一実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る画像表示装置1の構成を説明するための模式図であす。なお以下の説明において、同一の部分又は同一の機能を表す部分には同一の符号を付している。
【0030】
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る画像表示装置1の斜視図である。画像表示装置1は、回折素子により瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼に投射する画像表示部2と、利用者の頭部に装着して、利用者の眼の前方に保持する装着部3と、画像表示部2と装着部3との間に構成され、装着部3に対して画像表示部2を利用者の眼の前後方向に移動可能とし、画像表示部から投射される画像光による射出瞳の位置を調整可能とする位置調節部4から構成されている。
【0031】
画像表示部2は、後に詳しく説明するが、本体14と本体14から投射される画像光を利用者の眼の方向へ導くハーフミラー11により構成されている。装着部3は眼鏡型フレームからなり、フロントフレーム5と、このフロントフレーム5に開閉可能に接続される左右のテンプル6を備えている。左側のテンプル6のフロントフレーム5側には、位置調節部4が構成されている。位置調節部4は、テンプル6のフロントフレーム5側に形成される柱状体7と、本体14の側面に固定される枠体8から構成されている。枠体8には貫通孔が形成され、この貫通孔に柱状体7を挿入して、柱状体7が枠体8を前後方向に移動可能に保持している。これにより、画像表示部2を装着部3に対して前後に移動して、射出瞳の位置調整を可能とする。
【0032】
図1(b)は、本体14を構成する筐体の側面に設置される枠体8及びストッパー9の分解斜視図である。枠体8は、前枠体8aと後枠体8bに分離し、本体14の側面に隙間を設けて固定されている。ストッパー9は、側面から見て転倒したL字形状を有し、L字形状の長手部分には貫通孔が形成され、L字形状の短手部分に段差が形成されている。ストッパー9は、L字形状の長手部分が前後の枠体8a、8bの隙間に挿入され、L字形状の短手部分が後枠体8bの上辺に露出している。L字形状の短手部分先端の段差部が後枠体8bの上面端部にビス止め固定される。ストッパー9は弾性部材により形成され、上部を指で下方に押圧することにより、L字形状の長手部分が下方に移動し、指を離すことにより元の位置に戻る。
【0033】
図1(c)は、位置調節部4の長手方向の模式的な縦断面図である。柱状体7は、断面が四角形を有し、底面には所定の間隔でV字状の溝10が形成されている。柱状体7は、後枠体8b、ストッパー9及び前枠体8aの各貫通孔に挿入される。ストッパー9の下部9bは柱状体7側に突条を有し、この突条が柱状体7の溝10に係合して、画像表示部2の位置を固定する。ストッパー9の上部9aを下方に押圧することにより係合が解除され、画像表示部2は前後に移動可能となる。また、画像表示部2を前方に引っ張る、又は後方に押すことにより、画像表示部2を溝10の1ステップずつ前後方向に移動させることができる。
【0034】
なお、上記装着部3や位置調節部4は本発明の一実施形態を示すものであり、この構造に限定されない。装着部3を眼鏡型フレームに代えてゴーグル型としてもよいし、位置調節部4は、テンプル6に凹部又は凸部を形成し、画像表示部2の側面に凹部又は凸部と噛み合う摺動部を形成して前後方向に移動可能としてもよいし、画像表示部2の側面にクリップ状の挟持部を形成し、テンプル6を挟持して、前後方向に移動可能としてもよい。要は、装着部3に画像表示部2を保持して利用者の眼の前後方向に移動可能とし、画像表示部2から投射される画像光の射出瞳の位置調整が可能であればよい。
【0035】
図2は、画像表示部2の機能を説明するためのブロック図である。図2に示すように、画像表示部2は、入力した画像信号Sに基づいて画像光を投射する投射部16、投射部16からの画像光を回折する瞳孔拡大処理を施す回折格子17と、瞳孔拡大処理が施された画像光を利用者の眼12に投射する接眼レンズ18と、画像表示部2の位置を調節するための判定画像を記憶する判定画像記憶部19と、装置の制御を行う制御部15を備えている。
【0036】
制御部15は、ROM21に記憶された処理プログラムをRAM22に読み出して実行することにより、各種の機能を実行する。制御部15は、画像信号入力I/F40を介して外部から画像信号Sを入力し、画像を構成する画素データを展開してVRAM23に記憶し、水平同期信号に同期して、VRAM23から順次画素データを読み出し、画像信号供給回路25へ出力する。
【0037】
投射部16は、画像信号Sを入力して画像光に変換して投射する。画像信号供給回路25は、画像信号Sを入力してRGBの各色の輝度信号を出力する。Rレーザドライバ26R、Gレーザドライバ26G、Bレーザドライバ26Bは、それぞれRGBの輝度信号を入力してRGBの画像信号を生成し、Rレーザ27R、Gレーザ27G、Bレーザ27Bへ供給する。各レーザ27R、27G、27Bは、その輝度信号に応じた発光強度を有するRGBのレーザ光を発光する。RGBの各レーザ光は、コリメータレンズ28、ダイクロイックミラー29及び結合光学系30を介して混合され、光ファイバー31に導入される。
【0038】
光ファイバー31により導かれた混色レーザ光は、コリメータレンズ32によりコリメートされて、水平光スキャナ34の揺動反射面に照射される。水平光スキャナ34は、水平同期信号を入力した水平駆動回路33から駆動信号を入力して、コリメートされたレーザ光を水平方向に走査する。水平方向に走査されたレーザ光はリレーレンズ35により垂直光スキャナ37の揺動反射面に導かれる。垂直光スキャナ37は、垂直同期信号を入力した垂直駆動回路36から駆動信号を入力して、水平方向に走査されたレーザ光を垂直方向に走査する。水平方向及び垂直方向に走査された走査光はリレー光学系38により回折格子17の回折面に入射される。
【0039】
回折格子17は、中間像が形成される位置に設置される。回折格子17は、入射した画像光を回折し、0次回折光及び±1次回折光を含む瞳径拡大処理を施す。接眼レンズ18は、回折格子17からの瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼に導入し、表示画像を形成する。投射される画像光の射出瞳EPは、利用者の瞳孔Piよりも網膜13側で位置調整が行われ、表示画像全体の画像光が利用者の眼12に導入されるとともに、色ずれを許容限度内に低減させる。
【0040】
判定画像記憶部19は、画像表示部2の位置調整を行うための判定画像の画像データを記憶する。位置調整は、判定画像記憶部19から読み出した画像データに基づいて判定画像を表示させ、この判定画像の視認状態に応じて、位置調節部4を操作して画像表示部2の射出瞳EPの位置を前後に調整する。
【0041】
記憶される判定画像は、表示画像の周辺部に表示される周辺判定パターンと表示画像の中央部に表示される色比較パターンを含んでいる。周辺判定パターンは、表示画像の周辺部に表示されるパターンからなり、周辺端部を表示する周辺端部パターンと、画角が2°〜3°の範囲の大きさを有する色判定パターンとを含む。周辺端部パターンは、外周端部パターンの最外周端部を注視した状態で、周辺端部パターンが欠けて見え始める画像表示部2の位置を特定するためのパターンである。色判定パターンは、表示画像の周辺部を注視したときの色ずれを判定するためのパターンである。色比較パターンは、上記色判定用パターンに現れる色と比較して、周辺部の色ずれが許容限度内となる画像表示部2の位置決め用に使用される。
【0042】
このように、周辺判定パターンを表示することにより、利用者の眼12を周辺部に容易に向けることができるとともに、周辺部の表示画像の欠けを容易に発見することができる。また、色判定パターンの画角を2°〜3°の範囲とすることにより、網膜上の色に対して敏感な垂体細胞の領域のみに画像光を投射することができるので、利用者の色識別精度が向上し、色ずれによる画像品質の低下を確実に防止することができる。また、表示画像の中央部に色比較パターンを表示するので、外周部の色判定パターンに現れる色との比較が容易となり、色判定精度を向上させることができる。
【0043】
なお、上記実施形態において、投射部16として光スキャナを用いてレーザ光を2次元走査する光走査型としたが、本発明はこれに限定されない。投射部16としてDMD(Digital Mirror Device)や液晶表示素子を使用することができる。DMDや液晶表示素子から投射される画像光を回折格子17により瞳拡大処理を施して画像表示を行うものであってもよい。
【0044】
図3は、本発明の画像表示装置1の位置決めの原理を説明するための図である。図3(a)は、画像表示部2から投射される画像光の射出瞳EPが利用者の瞳孔Piの位置に一致している場合であり、図3(b)は、画像光の射出瞳EPが利用者の瞳孔Piと眼球の回転中心との間に位置する場合であり、図3(c)は、画像光の射出瞳EPが利用者の眼球の回転中心に一致する場合である。各図の左側には、画像表示部2から利用者の眼12に画像光が投射される状態を表し、各図の右側には、判定画像記憶部19から読み出されて投射された判定画像48の、利用者から見える状態を表している。判定画像48の外周部には周辺端部パターン41が表示され、右上のコーナー部には色判定パターン42が表示されている。
【0045】
図3(a)において、利用者が正面を向いているときは、画像光の射出瞳EPと利用者の瞳孔Piがほぼ一致する。その結果、表示外周部からの画像光G+θ/2、G−θ/2と表示中央部の画像光Gの全てが利用者の眼球内に導かれる。そのため、各画像光に含まれる0次回折光Dと±1次回折光D+1、D−1の割合がずれることがなく、色ずれが生じない。また、表示外周部からの画像光G+θ/2、G−θ/2が眼球内に導入されるので、表示画像の周辺部まで視認することが出来る。
【0046】
次に、利用者は周辺端に表示される色判定パターン42を注視する。色判定パターン42は表示画像の周辺端に位置するので、利用者は眼球を回転させて画像光G+θ/2を正面に見る。すると、利用者の瞳孔Piは画像光の射出瞳EPに対して眼球回転方向に大きくずれて、各画像光G+θ/2、Go、−θ/2に含まれる−1次回折光D−1は眼球内に入射されない。そして、表示外周部からの画像光G+θ/2に含まれる+1次回折光D+1の上縁部を正面に見ることになる。
【0047】
+1次回折光D+1の上縁部の画像光は赤色側に波長がシフトしている。そのため、利用者には、画像表示部2から投射した白色の色判定パターン42が、赤みを帯びた色に着色されて見えることになる。また、利用者の瞳孔Piには、表示画像の下側の外周部から入射する画像光G−θ/2の0次回折光Dの一部、及び+1次回折光D+1が眼球内に入射される。そのため、右側の判定画像48に示されるように、利用者には周辺端部パターン41の全周囲が見えている。
【0048】
図3(b)は、画像表示部2を利用者の眼12の方向に移動させた状態であり、画像光の射出瞳EPは利用者の瞳孔Piと眼球の回転中心との間に位置する。利用者の眼12が正面を向いているときは、正面から入射する画像光Gのすべてが利用者の眼球内に導かれる。そのため、色ずれは生じない。
【0049】
次に、利用者は周辺端に表示される色判定パターン42を注視する。色判定パターン42は判定画像48の最周辺端に位置するので、利用者は眼球を回転させて画像光G+θ/2を正面に見る。この場合、画像光の射出瞳EPが眼球の回転中心側に移動しているので、利用者の瞳孔Piは画像光の射出瞳EPに対して眼球回転方向に大きくずれることがない。そのため、外周部からの画像光G+θ/2は、+1次回折光D+1と0次回折光Dの全て、−1次回折光D−1のほぼ全てが眼球内に入射する。その結果、右側の判定画像48に示されるように、色判定パターン42に現れる色は上記図3(a)の場合よりも薄くなり、色ずれが減少する。
【0050】
図3(c)は、画像表示部2が投射する画像光の射出瞳EPを利用者の眼球の回転中心の位置まで移動させた状態である。この場合は、判定画像48のどの領域を見る場合でも、見ている方向から入射する画像光に含まれる0次回折光Dと±1次回折光D+1、D−1が眼球内に導かれる。従って、判定画像48の周辺端に表示される色判定パターン42を注視した場合でも、色ずれは生じない。しかし、画像光の射出瞳EPが利用者の網膜13方向に移動するに従い、注視している周辺端の対角方向から入射する画像光D−θ/2は、利用者の瞳孔Piに入射し難くなる。その結果、図3(c)の右側の判定画像48に示されるように、画像光G−θ/2の方向の周辺端部パターン41が欠けて見える。注視している領域以外の領域に欠けが生ずると不自然な画像に見えてしまう。
【0051】
従って、利用者の眼12に対する画像表示部2の最適な位置は、利用者が表示画像の最外周部を注視したときに、周辺端部パターン41に欠けが生じていないことと、注視した最外周部に現れる色の色ずれが、許容限度内であることである。そこで、周辺端部パターン41と色判定パターン42を含む判定画像を表示し、周辺端部に表示している色判定パターン42を注視しながら、周辺端部パターン41に欠けが生じて見える位置まで画像表示部2を移動させた後に、色判定パターン42の色が許容限度を維持できる位置まで反対方向に移動させて固定する。
【0052】
これにより、表示画像のどの領域も色ずれが許容限度内に収まり、かつ、表示画像のどの部分を注視した場合でも、他の領域が欠けて見えることが無く、高品質の画像を表示させることができる。
【0053】
(第二実施形態)
図4は本発明の第二実施形態に係る画像表示装置1の構成を説明するための模式図である。第5図は、本第二実施形態に係る画像表示装置1の機能を説明するための機能ブロック図である。第一実施形態と異なる点は、画像表示部2と装着部3の間に構成された位置調節部4に、画像表示部2の現在位置を検出するための位置検出素子が設けられ、一旦決定された位置の位置情報が記憶部に記憶される点である。以下、具体的に説明する。
【0054】
図4(a)は、本発明の第二実施形態に係る画像表示装置1の斜視図である。画像表示装置1は、画像光を利用者の眼に向けて投射する画像表示部2と、画像表示部2を保持し、利用者の頭部に装着して固定するための装着部3と、画像表示部2を利用者の眼の方向に対して前後に移動可能とする位置調節部4とを備えている。
【0055】
図4(b)は、テンプル6の長手方向の縦断面図を表している。位置調節部4は、テンプル6のフロントフレーム5側に形成した断面が四角形の柱状体7と、画像表示部2のテンプル6側の側面に設置し、前記柱状体7を中央部に挿入した枠体8とから構成されている。
【0056】
枠体8は、前枠体8aと後枠体8bに分離し、本体14の側面に隙間を設けて固定されている。ストッパー9は、側面から見て転倒したL字形状を有し、L字形状の長手部分には貫通孔が形成され、L字形状の短手部分に段差が形成されている。ストッパー9は、L字形状の長手部分が前後の枠体8a、8bの隙間に挿入され、L字形状の短手部分が後枠体8bの上面に露出してビス止め固定される。ストッパー9は弾性部材により形成され、上部を指で下方に押圧することにより、L字形状の長手部分が下方に移動し、指を離すことにより元の位置に戻る。
【0057】
柱状体7は、下側から支持体50、その上面に貼り付けた抵抗層51、その上に設置した保護体52により構成されている。保護体52は、テンプル6の長手方向に沿って抵抗層51の一部表面が露出するように開口している。支持体50の底面には、所定の間隔で溝10が複数形成されている。ストッパー9の下部は、柱状体7の底面を押圧するように当接して、柱状体7の底面に形成した溝10に係合する。ストッパー9の上端部を押圧することにより係合が解除され、画像表示部2は前後に移動可能となる。
【0058】
更に、枠体8aの上辺下部には、抵抗層51の表面に接触するブラシ53が設置され、抵抗層51と電気的に接触している。ブラシ53と抵抗層51により位置検出素子が構成されている。ブラシ53は図示しない配線を介して画像表示部2に接続している。抵抗層51の端部は、図示しない配線を介して画像表示部2に接続している。装着部3に対して画像表示部2を前後方向に移動すると、柱状体7に対して枠体8が移動し、この移動により抵抗層51に対するブラシ53の位置が移動し、ブラシ53と抵抗層51の端部との間の抵抗値が変化する。即ち、この抵抗値を位置検出部により検出することにより、画像表示部2の位置を検出することができる。
【0059】
図5は、本発明の第二実施形態に係る画像表示装置1の構成を模式的に表したブロック図である。画像表示装置1は、画像表示部2と、図示しない装着部3と、画像表示部2と装着部3との間に構成した図示しない位置調節部4とを備えている。
【0060】
画像表示部2は、画像光を投射する投射部16と、投射された画像光の瞳拡大処理を施す回折格子17と、瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼12に投射するための接眼レンズ18と、接眼レンズ18からの画像光を眼12に反射させる図示しないハーフミラー11と、判定画像を記憶する判定画像記憶部19と、利用者が入力する操作入力部39と、画像表示装置1を制御するための制御部15と、位置調節部4に形成したブラシ53と抵抗層51の端部との間の抵抗値を検出する位置検出部45とを備えていえる。
【0061】
画像表示部2は、更に、位置検出部45により検出した画像表示部2の位置に関する位置情報を記憶する位置記憶部46と、当該位置記憶部46に記憶された過去に検出した位置と現在検出している位置とを比較し、現在位置が過去の位置から所定距離以上離間していることを判定して、投射部16に警告表示を表す画像光を投射させる位置比較部47とを備えている。従って、利用者が画像表示装置1を頭部に装着して表示画像を見る場合に、位置補正の警告表示が表示されたときだけ、装着部3に対して画像表示部2の位置補正を行えばよい。そのため、利用者は、通常の使用時に色ずれを意識する必要がない。
【0062】
なお、本実施形態においては、抵抗層51の抵抗値を検出して、装着部3に対する画像表示部2の位置を検出したが、これに限定されない。例えば、柱状体7に発光素子を設け、枠体8に受光素子を設け、発光素子が発光した光を受光した受光素子の位置により、装着部3に対する画像表示部2の位置を検出してもよいし、その他の位置検出方法を使用してもよい。
【0063】
また、上記第一実施形態及び第二実施形態において、装着部3に対する画像表示部2の位置を手動操作により移動したが、これに代えて、位置調節部4にステッピングモータ等の電動機構を組み込んで、装着部3の位置を電気的に制御するように構成してもよい。
【0064】
(第三実施形態)
図6は、本発明の第三実施形態に係る画像表示装置1の位置調整方法及び駆動方法を説明するためのフロー図である。
【0065】
利用者は画像表示装置1の操作入力部39を操作して起動する。制御部15のCPU20は、ROM21からメイン処理プログラムを読み出してRAM22に展開して、メイン処理プログラムを実行する。制御部15は、今回の起動が初回起動であると判定したときは(ステップS1のYes)、瞳位置設定モードを起動する(ステップS4)。制御部15は、今回起動が初回起動ではないと判定したときは(ステップS1のNo)、位置調節を行うかどうかの判断画面を投射部16から利用者の眼12に投射する(ステップS2)。制御部15は、利用者が操作入力部39から位置調整を行う旨が入力されたことを検出したときは(ステップS2のYes)、ステップS4の瞳位置設定モードを起動する。制御部15は、所定期間内に位置調整を行う旨の入力がなされない、又は、操作入力部39から位置調整を行わない旨の入力がされたことを検出したときは(ステップS2のNo)、画像・映像表示モードを起動する(ステップS3)。画像・映像表示モードを起動したときは、画像信号入力I/F40を介して入力した画像信号Sを投射部16の画像信号供給回路25に出力して、画像や映像の通常表示を行う。
【0066】
瞳位置設定モードが起動すると、制御部15は判定画像記憶部19から第一画像データを読み出して投射部16に供給し、投射部16は第一判定画像を投射して表示する(ステップS5)。これを第一投射ステップという。
【0067】
図7(a)は、第一判定画像を表す。第一判定画像には、表示画像の周辺端部に表示される周辺端部パターン41と、表示画像の最外周部に表示され、画角が2°〜3°の範囲の大きさを有する色判定パターン42が含まれる。第一判定画像の背景は黒色の画像データを用いて黒色に塗りつぶされている。周辺端部パターン41と色判定パターン42は白色の画像データを用いて表示されている。また、色判定パターン42に下部には、「円を注視し、枠がすべて見える位置まで本体を眼側に動かしてください。」という指示文が表示される。
【0068】
このとき、利用者は、最外周部に表示される色判定パターン42を注視した状態で位置調節部4を操作し、周辺端部パターン41の一部、例えば色判定パターン42の対角に表示される周辺端部パターン41が欠ける位置まで、画像表示部2を利用者の眼12の方向に近接させる(ステップS6)。
【0069】
次に、利用者は位置調節部4を操作して、画像表示部2を利用者の眼12に遠いほうに1step移動する(ステップS7)。利用者は、最外周部に表示される色判定パターン42を注視した状態で、周辺端部パターン41の全てが見えたときは(ステップS8のYes)、操作入力部39を操作して、画像表示部2が第一の位置に移動が完了し、第一移動ステップが完了したことを入力する(ステップS9)。この操作を第一入力ステップという。制御部15は、操作入力部39から第一入力ステップ完了の入力を検知すると、判定画像記憶部19から第二画像データを読み出して投射部16に出力し、投射部16は、第二判定画像を投射して表示する(ステップS10)。これを第二投射ステップという。
【0070】
図7(b)は、第二判定画像を表す。第二判定画像には、表示画面の最外周部に表示する色判定パターン42と、表示画像の中央部に表示する色限度パターン43と色見本パターン44が含まれている。色限度パターン43は、色限度を表示する画像データにより形成され、色ずれの限度を示している。つまり、色判定パターン42に見える色が、色限度パターン43に見える色の程度であれば、表示画面の最外周領域の色ずれが許容できる範囲であることを意味し、色判定パターン42が色限度パターン43の色よりも濃くなる場合は、色ずれが許容範囲を超えて画像品質が低下することを意味する。色見本パターン44は、色判定パターン42に現れる色との比較を容易にするためである。なお、色限度パターン43及び色見本パターン44の下部には、「画面左端の円と中心の2つの円の色を比較してください。右の円に近ければ本体を一段階眼側に動かし調整終了。左の円に近ければ本体を目から離す方向に動かしてください。」という指示文が表示されている。
【0071】
画像表示部2を眼12から離れる方向に移動すると、色判定パターン42は白色から赤みがかった色に変化する。図3を用いて説明したように、利用者の瞳孔Piが画像光の射出瞳EPからずれて、画像光G+θ/2に含まれる−1次回折光D−1は眼球内に入射されず、画像光G+θ/2に含まれる+1次回折光D+1の上縁部を正面に見るので、色判定パターン42は波長が赤色側にシフトする。
【0072】
利用者は、色判定パターン42を注視した状態で、色判定パターン42に現れる色と、色限度パターン43に表示される色と比較する(ステップS11)。利用者は、色判定パターン42に現れる色が色限度パターン43に表示される色に達していないと判断したときは(ステップS12のNo)、位置調節部4を操作して、画像表示部2を利用者の眼12に遠いほうに1step移動して(ステップS13)、色判定パターン42を注視する。色判定パターン42に現れる色が色限度パターン43に表示される色に近くなるまでこの操作を繰り返す。
【0073】
利用者は、色判定パターン42に現れる色が色限度パターン43に表示される色に近いと判断したときは(ステップS12のYes)、位置調節部4を操作して画像表示部2を眼12に近い方向に1step移動する(ステップS14)。利用者は、操作入力部39を操作して、画像表示部2が第二の位置に移動が完了し、第二移動ステップが完了したことを入力する(ステップS15)。この操作を第二入力ステップという。制御部15が、操作入力部39から第二入力ステップ完了の入力を検知して、瞳位置設定モードを終了する。
【0074】
なお、上記第二投射ステップにおいて、第二判定画像として色限度パターン43に並べて色見本パターン44を表示したが、色見本パターン44を省いてもよい。また、色判定パターン42に現れる色が色限度パターン43に表示される色に近いと判定した後に、上記ステップS14において、画像表示部2を1step眼12側に後退させたが、色限度パターン43に表示する色を許容限度内とすれば、後退するステップS13を省くこともできる。また、色判定パターン42の色として白の画像データを用いたが、本発明はこれに限定されず、他の色の画像データを用いることができる。この場合、色限度パターン43の表示色を、色判定パターン42の表示色から波長が赤色側にシフトした許容限度の色の画像データを用いる。
【0075】
(第四実施形態)
図8は、本発明の第四実施形態に係る画像表示装置1の位置調整方法及び駆動方法を表すフロー図である。第四実施形態では、第二実施形態の構成を備えた画像表示装置1の位置調整方法及び駆動方法である。
【0076】
利用者は画像表示装置1の操作入力部39を走査して起動する。制御部15は、今回の起動が初回起動であると判定したときは(ステップS1のYes)、瞳位置設定モードを起動する(第三実施形態のステップS4)。以下、ステップS4〜ステップS15までは、第三実施形態と同様なので、説明を省略する。制御部15が、今回起動が初回起動ではないと判定したときは(ステップS1のNo)、位置検出部45は、画像表示部2の位置を検出する(ステップS16)。
【0077】
位置比較部47は、位置検出部45から画像表示部2の現在の位置を表す位置情報と、位置記憶部46から過去の位置を表す位置情報を読み出してその差分を算出する(ステップS17)。位置比較部47が、その差分が色ずれの許容限度内である所定値の範囲内であると判定したときは(ステップS18のYes)、瞳位置設定を行う必要がないので、画像・映像表示モードを起動して(ステップS3)、通常の動作を行う。位置比較部47は、差分が所定値の範囲内でないと判定したときは(ステップS18のNo)、制御部15を介して投射部16に警告表示の画像データを供給し、画像表示部2の位置調整が必要である旨を表示する画像光を利用者の眼12に投射して、利用者に注意を喚起する(ステップS19)。
【0078】
次に、制御部15は、位置調節を行うかどうかの判断画面を投射部16から利用者の眼12に投射する(ステップS2)。制御部15は、利用者が操作入力部39から位置調整を行う旨の入力が行われたことを検出したときは(ステップS2のYes)、ステップS4の瞳位置設定モードを起動する。制御部15は、所定期間内に位置調整を行う旨が入力されない、又は、操作入力部39から位置調整を行わない旨が入力されたことを検出したときは(ステップS2のNo)、画像・映像表示モードを起動する(ステップS3)。画像・映像表示モードを起動したときは、画像信号入力I/F40を介して入力した画像信号Sを投射部16の画像信号供給回路25に出力して、画像や映像の通常表示を行う。
【0079】
瞳位置設定モードが起動され(第三実施形態のステップS4)、第二移動ステップが完了したことが入力された後(第三実施形態のステップS15)、位置検出部45は、画像表示部2に現在位置を検出して位置情報を生成し、制御部15は、この現在位置の位置情報を、位置記憶部46に記憶させる(ステップS20)。この記憶された位置情報が、画像表示部2に過去の位置を表す位置情報となる。その後、瞳位置設定モードを終了する。
【0080】
これにより、画像表示部2の現在位置が、位置ずれを起こす許容限度内のときは、瞳位置設定を行う必要がなく、利用者に位置調整の作業が要求されることが無い。
【0081】
本発明を上記した実施形態を通して説明してきたが、本実施形態によれば、以下の効果が奏することができる。
【0082】
(1)本発明に係る画像表示装置は、回折素子により瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼に投射して、表示画像を視認させる画像表示部と、利用者の頭部に装着され、画像表示部を利用者の眼の前方に保持する装着部と、画像表示部と装着部との間に構成され、装着部に対して画像表示部を利用者の眼の前後方向に移動して、画像光による射出瞳の位置を調整可能とする位置調節部と、を備え、画像表示部は射出瞳の位置調整を行うための判定用の画像光を投射し、判定用の画像光に基づく判定画像の視認状態に応じて、位置調整部により射出瞳の位置調整を可能とする構成とした。
【0083】
また、上記画像表示装置1の位置調整方法として、画像表示部が、表示画像の周辺端部に表示する周辺端部パターンからなる第一判定画像を投射する第一投射ステップと、外周端部パターンの最外周端部を注視した状態で、周辺端部パターンが欠け始める位置まで、画像表示部を利用者の眼の方向に近接させる第一移動ステップと、画像表示部が、表示画像の周辺部に色判定パターンと、表示画像の中央部に色比較パターンとを有する第二判定画像を投射する第二投射ステップと、色判定パターンに現れる色と色比較パターンに現れる色とが近似する位置まで、画像表示部を利用者の眼と反対方向に移動させる第二移動ステップと、を有することとした。
【0084】
また、上記画像表示装置の駆動方法として、画像表示部は、表示画像の周辺端部を表示する周辺端部パターンを有する第一判定画像を表示するための第一画像データと、表示画像の周辺部に色判定パターンと表示画像の中央部に色比較パターンとを有する第二判定画像を表示するための第二画像データとを記憶する判定画像記憶部と、判定画像記憶部から画像データを入力して判定用の画像光を投射する投射部と、位置調整部において画像表示部の位置調整がなされたことが入力される操作入力部とを備え、投射部が、判定画像記憶部から第一画像データを入力して、当該画像データに基づく画像光を投射する第一投射ステップと、操作入力部に、画像表示部が第一の位置に移動完了したことが入力される第一入力ステップと、投射部が、判定画像記憶部から第二画像データを入力して、当該画像データに基づく画像光を投射する第二投射ステップと、操作入力部に、画像表示部が第二の位置に移動完了したことが入力される第二入力ステップと、を有することとした。
【0085】
これにより、利用者が表示画像の周辺部を注視したときの色ずれを許容限度内に抑制し、かつ、この周辺部を注視している状態で、他の周辺部の表示画像に欠けが生じないように、画像表示部の位置調整を行うことができる。
【0086】
(2)画像表示部は、判定画像を投射するための画像データを記憶する判定画像記憶部と、判定画像記憶部から画像データを入力して、画像データに応じた判定用の画像光を投射する投射部と、投射された画像光に回折素子により瞳拡大処理を施す光回折部と、瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼に向けて投射する接眼レンズ部と、を備えていることとした。これにより、判定画像を容易に読み出すことができ、また、画像光の瞳拡大処理部の構成も簡素な構成とすることができる。
【0087】
(3)判定画像は、表示画像の周辺部に表示される周辺判定パターンを含むこととした。これにより、表示画像の周辺部を容易に注視できるので、利用者の眼球を外周部に向けることができる。
【0088】
(4)周辺判定パターンは、画角が2°〜3°の範囲の大きさを有する色判定パターンからなることとした。これにより、利用者の網膜の、色に対して敏感な細胞が集中する領域にのみ色判定パターン42を投射するので、利用者の色識別精度が向上し、色ずれによる画像品質の低下を高精度で防止することができる。
【0089】
(5)判定画像は、表示画像の中央部に表示され、色判定パターンに現れる色と比較するための色比較パターンを含むこととした。これにより、外周部に表示される色判定パターンと中心部に表示される色比較パターンを、視線を移動させて容易に比較できるので、色判定精度を向上させることができる。また、色比較パターンを表示画面の中央部としたので、設定した色の画像データにより色ずれを発生しない状態で表示させることができる。
【0090】
(6)周辺判定パターンは、表示画像の周辺端部を表示する周辺端部パターンを含むこととした。これにより、周辺端部の画像の欠けを容易に確認することができる。
【0091】
(7)位置調節部は、画像表示部の前後方向の位置を所定間隔のステップ状に移動可能とした。これにより、画像表示部2の位置決めを確実に前後に移動できるので、短時間で位置合わせを行うことができる。
【0092】
(8)画像表示部は、装着部に対する画像表示部の位置を検出する位置検出部と、位置検出部が検出した画像表示部の過去の位置を記憶する位置記憶部と、位置検出部が検出した画像表示部の現在位置と、位置記憶部に記憶された過去の位置とを比較して、現在位置が過去の位置から所定距離以上に離間していることを検出して、画像表示部に警告表示を行う位置比較部と、を更に備えることとした。
【0093】
また、画像表示装置は、装着部に対する画像表示部の位置を検出する位置検出部と、検出された位置を記憶する位置記憶部と、位置比較部を更に備え、第二入力ステップは、位置検出部により第二の位置を検出して位置記憶部に記憶するステップを含み、更に、位置比較部は、位置検出部が検出した画像表示部の現在位置と、位置記憶部に記憶された第二の位置とを比較して、現在位置が第二の位置から所定距離以上に離間していることを検出して、画像表示部に警告表示を行う警告表示ステップを、有することとした。
【0094】
これにより、画像表示部の現在位置が、位置ずれを起こす許容限度内のときは、瞳位置設定を行う必要がなく、利用者に位置調整の作業が要求されることも無い、という利便性を有する。
【0095】
(9)第二投射ステップにおいて、色比較パターンは、色見本を表す色見本パターンと色限度を表す色限度パターンを含み、第二移動ステップは、色判定パターンに現れる色と色限度パターンに現れる色とが近似する位置よりも、画像表示部を利用者の眼の方向に所定距離移動させて固定する、こととした。これにより、画像表示部を利用者の眼の方向に所定距離移動するので、色ずれを色ずれ限度内に低減できるので、高品質の画像を表示することができる。また、色比較パターンに色限度パターンと色見本パターンの両方が含まれるので、より高精度に色合わせを行うことができる。
【0096】
(10)第一投射ステップ〜第二移動ステップまでを、画像表示装置の起動時に行うこととした。これにより、画像表示部の位置設定処理を起動時に行うので、利用者が色ずれのある低品質の表示画像を気づかないで見続けることになるのを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 画像表示装置
2 画像表示部
3 装着部
4 位置調整部
5 フロントフレーム
6 テンプル
7 柱状体
8 枠体
9 ストッパー
10 溝
11 ハーフミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折素子により瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼に投射して、表示画像を視認させる画像表示部と、
利用者の頭部に装着され、前記画像表示部を利用者の眼の前方に保持する装着部と、
前記画像表示部と前記装着部との間に構成され、前記装着部に対して前記画像表示部を利用者の眼の前後方向に移動して、前記画像光による射出瞳の位置を調整可能とする位置調節部と、を備え、
前記画像表示部は前記射出瞳の位置調整を行うための判定用の画像光を投射し、前記判定用の画像光に基づく判定画像の視認状態に応じて、前記位置調整部により前記射出瞳の位置調整を可能とする画像表示装置。
【請求項2】
前記画像表示部は、前記判定画像を投射するための画像データを記憶する判定画像記憶部と、前記判定画像記憶部から前記画像データを入力して、前記画像データに応じた判定用の画像光を投射する投射部と、前記投射された画像光に前記回折素子により瞳拡大処理を施す光回折部と、前記瞳拡大処理が施された画像光を利用者の眼に向けて投射する接眼レンズ部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記判定画像は、表示画像の周辺部に表示される周辺判定パターンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記周辺判定パターンは、画角が2°〜3°の範囲の大きさを有する色判定パターンからなることを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記判定画像は、表示画像の中央部に表示され、前記色判定パターンに現れる色と比較するための色比較パターンを含むことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記周辺判定パターンは、表示画像の周辺端部を表示する周辺端部パターンを含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記位置調節部は、前記画像表示部の前後方向の位置を所定間隔のステップ状に移動可能とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記画像表示部は、
前記装着部に対する前記画像表示部の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部が検出した前記画像表示部の過去の位置を記憶する位置記憶部と、
前記位置検出部が検出した画像表示部の現在位置と、前記位置記憶部に記憶された過去の位置とを比較して、前記現在位置が前記過去の位置から所定距離以上に離間していることを検出して、前記画像表示部に警告表示を行う位置比較部と、を更に備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像表示装置の位置調整方法において、
前記画像表示部が、表示画像の周辺端部に表示する周辺端部パターンからなる第一判定画像を投射する第一投射ステップと、
前記外周端部パターンの最外周端部を注視した状態で、前記周辺端部パターンが欠け始める位置まで、前記画像表示部を利用者の眼の方向に近接させる第一移動ステップと、
前記画像表示部が、前記表示画像の周辺部に色判定パターンと、前記表示画像の中央部に色比較パターンとを有する第二判定画像を投射する第二投射ステップと、
前記色判定パターンに現れる色と前記色比較パターンに現れる色とが近似する位置まで、前記画像表示部を利用者の眼と反対方向に移動させる第二移動ステップと、を有することを特徴とする画像表示装置の位置調整方法。
【請求項10】
前記第二投射ステップにおいて、前記色比較パターンは、色見本を表す色見本パターンと色限度を表す色限度パターンを含み、
前記第二移動ステップは、前記色判定パターンに現れる色と前記色限度パターンに現れる色とが近似する位置よりも、前記画像表示部を利用者の眼の方向に所定距離移動させて固定する、ことを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置の位置調整方法。
【請求項11】
前記第一投射ステップ〜第二移動ステップまでを、前記画像表示装置の起動時に行うことを特徴とする請求項9又は10に記載の位置調整方法。
【請求項12】
前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像表示装置の駆動方法において、
前記画像表示部は、
表示画像の周辺端部を表示する周辺端部パターンを有する第一判定画像を表示するための第一画像データと、表示画像の周辺部に色判定パターンと前記表示画像の中央部に色比較パターンとを有する第二判定画像を表示するための第二画像データとを記憶する判定画像記憶部と、前記判定画像記憶部から前記画像データを入力して判定用の画像光を投射する投射部と、前記位置調整部において前記画像表示部の位置調整がなされたことが入力される操作入力部とを備え、
前記投射部が、前記判定画像記憶部から前記第一画像データを入力して、当該画像データに基づく画像光を投射する第一投射ステップと、
前記操作入力部に、前記画像表示部が第一の位置に移動完了したことが入力される第一入力ステップと、
前記投射部が、前記判定画像記憶部から前記第二画像データを入力して、当該画像データに基づく画像光を投射する第二投射ステップと、
前記操作入力部に、前記画像表示部が第二の位置に移動完了したことが入力される第二入力ステップと、を有する画像表示装置の駆動方法。
【請求項13】
前記第一投射ステップ〜前記第二入力ステップまでを、前記画像表示装置の起動時に行うことを特徴とする請求項12に記載の画像表示装置の駆動方法。
【請求項14】
前記画像表示装置は、前記装着部に対する前記画像表示部の位置を検出する位置検出部と、前記検出された位置を記憶する位置記憶部と、位置比較部を更に備え、
前記第二入力ステップは、前記位置検出部により前記第二の位置を検出して前記位置記憶部に記憶するステップを含み、
更に、前記位置比較部が、前記位置検出部が検出した画像表示部の現在位置と、前記位置記憶部に記憶された前記第二の位置とを比較して、前記現在位置が前記第二の位置から所定距離以上に離間していることを検出して、前記画像表示部に警告表示を行う警告表示ステップを、有することを特徴とする請求項12又は13に記載の画像表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−237308(P2010−237308A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83171(P2009−83171)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】