説明

画像表示装置

【課題】中間色、特に視感度が高い赤色と緑色の組み合わせで表示される中間色の色相ズレを低減することができるようにする。
【解決手段】赤色、緑色および青色の各色レーザ光をそれぞれ出力する赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置と、これらの各レーザ光源装置から時分割で順次出力されるレーザ光を映像信号に基づいて変調する空間光変調素子と、1フレームを構成する複数の点灯区間ごとにレーザ光源装置の点灯を制御するとともに、空間光変調素子での各色レーザ光の出力を制御する制御部と、を備え、緑色レーザ光源装置は、CIExy色度図上において標準緑色よりも高いy値を有する緑色レーザ光を出力し、制御部は、1フレーム内に緑色および赤色の順序で点灯するGR点灯パターンを含む点灯順序でレーザ光源装置を点灯させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源として半導体レーザを用いたレーザ光源装置を備えた時分割表示方式の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スクリーン上に画面を投写する投写式の画像表示装置の光源に半導体レーザを用いる技術が注目されている。この半導体レーザは、従来から画像表示装置に多用されてきた水銀ランプに比較して、色再現性がよい点、瞬時点灯が可能である点、長寿命である点、高効率で消費電力を低減することができる点、及び小型化が容易である点など種々の利点を有している。
【0003】
このような半導体レーザを用いた画像表示装置においては、カラー画像を形成するために、赤色、緑色および青色の3つのレーザ光源装置と、1つの液晶表示素子からなる空間光変調素子を用い、各レーザ光源装置から出射される各色のレーザ光を空間光変調素子に順次入射させる時分割表示方式(フィールドシーケンシャル方式)による技術が知られている(特許文献1参照)。この時分割表示方式は、スクリーン上に投写された各色の画像を視覚の残像効果によってカラー画像として認識させるようにしたものであり、空間光変調素子が1つで済むため、装置の小型化を図る上で都合が良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−91927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、このような時分割表示方式では、1フレームを複数の点灯区間(サブフレーム)に分割し、その点灯区間ごとに赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置を点灯させ、この点灯タイミングに同期して空間光変調素子にて各色レーザ光の出力を制御する。特に中間色を表示させるには、赤色、緑色および青色のうち、中間色の色相を表現するために必要となる色のレーザ光を空間光変調素子にて出力させればよく、例えば黄色を表示させる場合には、赤色および緑色のレーザ光を出力させることになる。
【0006】
ところが、空間光変調素子に用いられる液晶表示素子は、立ち上がりの際の応答性が低く、制御電圧の印加に応じて透過率が徐々に高くなる特性を有している。このため、前記のように中間色を表示させる場合には、点灯順序が先になる色の出力が小さくなり、これが原因で色ズレが発生する。例えば赤色、緑色および青色の順序でレーザ光源装置を点灯する構成で、黄色を表示させる場合には、点灯順序が先になる赤色の出力が緑色に比較して小さくなるため、緑色側にずれた黄緑色に表示される。特に赤色と緑色は視感度が高く、赤色と緑色の組み合わせで表示される中間色で色ズレが目立つという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、中間色、特に視感度が高い赤色と緑色の組み合わせで表示される中間色の色相ズレを低減することができるように構成された画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像表示装置は、赤色、緑色および青色の各色レーザ光をそれぞれ出力する赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置と、これらの各レーザ光源装置から時分割で順次出力される各色レーザ光を映像信号に基づいて変調する空間光変調素子と、1フレームを構成する複数の点灯区間ごとに前記レーザ光源装置の点灯を制御するとともに、前記空間光変調素子での各色レーザ光の出力を制御する制御部と、を備え、前記緑色レーザ光源装置は、CIExy色度図上において標準緑色よりも高いy値を有する緑色レーザ光を出力し、前記制御部は、1フレーム内に緑色および赤色の順序で点灯するGR点灯パターンを含む点灯順序で前記レーザ光源装置を点灯させる構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、赤色と緑色の組み合わせで表示される中間色を表示する場合に、空間光変調素子の立ち上がり応答性により点灯順序が先になる緑色の出力が小さくなるが、この緑色の出力不足は、緑色レーザ光源装置が発する緑色レーザ光自体の色相ズレを相殺するように作用するため、表示される中間色の色相ズレを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る画像表示装置1を内蔵したノート型の情報処理装置2を示す斜視図
【図2】図1に示した光学エンジンユニット13に内蔵される光学エンジン部21の概略構成図
【図3】図2に示した緑色レーザ光源装置22におけるレーザ光の状況を示す模式図
【図4】図1に示した画像表示装置1の機能ブロック図
【図5】図1に示した赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置22〜24が発する各色のレーザ光の色相を示すCIExy色度図
【図6】図1に示した赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置22〜24を点灯させる順番と、空間光変調素子25の極性を示す図
【図7】図6(A)に示した従来例により黄色を表示させる場合の各制御信号、空間光変調素子25の動作、および出力波形の状況を示す図
【図8】図6(B)に示した第1の実施形態により黄色を表示させる場合の各制御信号、空間光変調素子25の動作、および出力波形の状況を示す図
【図9】図6(C)に示した第2の実施形態により黄色を表示させる場合の各制御信号、空間光変調素子25の動作、および出力波形の状況を示す図
【図10】図6(D)に示した第3の実施形態により黄色を表示させる場合の各制御信号、空間光変調素子25の動作、および出力波形の状況を示す図
【図11】図6(D)に示した第3の実施形態によりシアンを表示させる場合の各制御信号、空間光変調素子25の動作、および出力波形の状況を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、赤色、緑色および青色の各色レーザ光をそれぞれ出力する赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置と、これらの各レーザ光源装置から時分割で順次出力される各色レーザ光を映像信号に基づいて変調する空間光変調素子と、1フレームを構成する複数の点灯区間ごとに前記レーザ光源装置の点灯を制御するとともに、前記空間光変調素子での各色レーザ光の出力を制御する制御部と、を備え、前記緑色レーザ光源装置は、CIExy色度図上において標準緑色よりも高いy値を有する緑色レーザ光を出力し、前記制御部は、1フレーム内に緑色および赤色の順序で点灯するGR点灯パターンを含む点灯順序で前記レーザ光源装置を点灯させる構成とする。
【0012】
これによると、赤色と緑色の組み合わせで表示される中間色を表示する場合に、空間光変調素子の立ち上がり応答性により点灯順序が先になる緑色の出力が小さくなるが、この緑色の出力不足は、緑色レーザ光源装置が発する緑色レーザ光自体の色相ズレを相殺するように作用するため、表示される中間色の色相ズレを低減することができる。
【0013】
この場合、赤色および緑色の順序で点灯するRG点灯パターンとGR点灯パターンとが1フレーム内に混在する構成も可能であるが、赤色と緑色の組み合わせで表示される中間色の色ズレを低減するには、1フレーム内にGR点灯パターンがRG点灯パターンと同じ回数かそれよりも多い回数存在する構成とするとよい。
【0014】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記制御部は、1フレーム内の赤色および緑色の点灯回数が青色の点灯回数より多くなるように前記レーザ光源装置を点灯させる構成とする。
【0015】
これによると、視感度の高い赤色と緑色の点灯回数が青色の点灯回数よりも多くなるため、各光源の切り替え速度や空間光変調素子の応答速度が高くなくても、カラーブレーキング(虹現象)を効率的に低減することができる。
【0016】
また、第3の発明は、前記第1若しくは第2の発明において、前記制御部は、1フレーム内に緑色、青色および緑色の順序で点灯するGBG点灯パターンを有する点灯順序で前記レーザ光源装置を点灯させる構成とする。
【0017】
これによると、緑色と青色の組み合わせで表示される中間色を表示する場合に、空間光変調素子の立ち上がり応答性により点灯順序の最初の緑色の出力が小さくなり、一方、点灯順序の2番目の青色と3番目の緑色は出力が大きく、その出力の大きさは略同一となるため、点灯順序の最初の緑色の出力が小さくなることで緑色の出力が青色より小さくなり、緑色レーザ光源装置が発する緑色レーザ光自体の色相ズレを相殺するように作用するため、表示される中間色の色相ズレを低減することができる。
【0018】
また、第4の発明は、前記第1乃至第3の発明において、前記制御部は、1フレームを構成する点灯区間が奇数個となる場合に、前記空間光変調素子の極性を、点灯区間ごとに反転させ且つ隣接するフレームにおいて対応する点灯区間が互いに逆の極性となるように切り換える構成とする。
【0019】
これによると、1フレームを超えて点灯区間ごとに空間光変調素子の極性が反転する状態となるため、空間光変調素子に発生する残留電荷を点灯区間ごとに確実に打ち消すことができ、これにより空間光変調素子の焼き付きを防止することができる。
【0020】
また、第5の発明は、前記第1乃至第4の発明において、前記緑色レーザ光源装置は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、この半導体レーザから出力された励起用レーザ光により励起されて赤外レーザ光を出力する固体レーザ素子と、この固体レーザ素子から出力された赤外レーザ光の波長を変換して緑色レーザ光を出力する波長変換素子と、を備えた構成とする。
【0021】
これによると、高出力の緑色レーザ光を出力することができる。この場合、標準緑色に比較してy値が高い緑色レーザ光が出力されるため、本発明が有効である。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明による画像表示装置1を携帯型情報処理装置2に内蔵した例を示す斜視図である。携帯型情報処理装置2の本体3には、光ディスク装置などの周辺機器が取り替え可能に収容される収容スペース、いわゆるドライブベイが、キーボード4の裏面側に形成されており、このドライブベイに画像表示装置1が取り付けられている。
【0024】
画像表示装置1は、筐体11と、筐体11に対して出し入れ可能に設けられた可動体12と、を有している。可動体12は、レーザ光をスクリーンSに投写するための光学部品が収容された光学エンジンユニット13と、この光学エンジンユニット13内の光学部品を制御するための基板などが収容された制御ユニット14とで構成され、光学エンジンユニット13が上下方向に回動可能に制御ユニット14に支持されている。
【0025】
この画像表示装置1は、不使用時に可動体12が筐体11内に格納され、使用時には可動体12が筐体11から引き出され、光学エンジンユニット13を回動させて、光学エンジンユニット13からのレーザ光の投写角度を調整することで、レーザ光をスクリーンS上に適切に投写させることができる。
【0026】
図2は、図1に示した光学エンジンユニット13に内蔵される光学エンジン部21の概略構成図である。この光学エンジン部21は、緑色レーザ光を出力する緑色レーザ光源装置22と、赤色レーザ光を出力する赤色レーザ光源装置23と、青色レーザ光を出力する青色レーザ光源装置24と、映像信号に応じて各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光の変調を行う空間光変調素子25と、各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光を反射させて空間光変調素子25に照射させるとともに空間光変調素子25から出射された変調レーザ光を透過させる偏光ビームスプリッタ26と、各レーザ光源装置22〜24から出射されるレーザ光を偏光ビームスプリッタ26に導くリレー光学系27と、偏光ビームスプリッタ26を透過した変調レーザ光をスクリーンSに投射する投射光学系28と、を備えている。
【0027】
この光学エンジン部21は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式でカラー画像を表示するものであり、各レーザ光源装置22〜24から各色のレーザ光が時分割で順次出力され、各色のレーザ光による画像が視覚の残像効果によってカラー画像として認識される。
【0028】
リレー光学系27は、各レーザ光源装置22〜24から出射される各色のレーザ光を平行ビームに変換するコリメータレンズ31〜33と、コリメータレンズ31〜33を通過した各色のレーザ光を所要の方向に導く第1および第2のダイクロイックミラー34,35と、ダイクロイックミラー34,35により導かれたレーザ光を拡散させる拡散板36と、拡散板36を通過したレーザ光を収束レーザに変換するフィールドレンズ37と、を備えている。
【0029】
投射光学系28からスクリーンSに向けてレーザ光が出射される側を前側とすると、青色レーザ光源装置24から青色レーザ光が後方に向けて出射され、この青色レーザ光の光軸に対して緑色レーザ光の光軸および赤色レーザ光の光軸が互いに直交するように、緑色レーザ光源装置22および赤色レーザ光源装置23から緑色レーザ光および赤色レーザ光が出射され、この青色レーザ光、赤色レーザ光、および緑色レーザ光が、2つのダイクロイックミラー34,35で同一の光路に導かれる。すなわち、青色レーザ光と緑色レーザ光が第1のダイクロイックミラー34で同一の光路に導かれ、青色レーザ光および緑色レーザ光と赤色レーザ光が第2のダイクロイックミラー35で同一の光路に導かれる。
【0030】
第1および第2のダイクロイックミラー34,35は、表面に所定の波長のレーザ光を透過および反射させるための膜が形成されたものであり、第1のダイクロイックミラー34は、青色レーザ光を透過するとともに緑色レーザ光を反射させる。第2のダイクロイックミラー35は、赤色レーザ光を透過するとともに青色レーザ光および緑色レーザ光を反射させる。
【0031】
これらの各光学部材は、筐体41に支持されている。この筐体41は、各レーザ光源装置22〜24で発生した熱を放熱する放熱体として機能し、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0032】
緑色レーザ光源装置22は、側方に向けて突出した状態で筐体41に形成された取付部42に取り付けられている。この取付部42は、リレー光学系27の収容スペースの前方と側方にそれぞれ位置する前壁部43と側壁部44とが交わる角部から側壁部44に直交する向きに突出した状態で設けられている。赤色レーザ光源装置23は、ホルダ45に保持された状態で側壁部44の外面側に取り付けられている。青色レーザ光源装置24は、ホルダ46に保持された状態で前壁部43の外面側に取り付けられている。
【0033】
赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、いわゆるCANパッケージで構成され、レーザ光を出力するレーザチップが、ステムに支持された状態で缶状の外装部の中心軸上に光軸が位置するように配置されたものであり、外装部の開口に設けられたガラス窓からレーザ光が出射される。この赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、ホルダ45,46に開設された取付孔47,48に圧入するなどしてホルダ45,46に対して固定される。青色レーザ光源装置24および赤色レーザ光源装置23のレーザチップの発熱は、ホルダ45,46を介して筐体41に伝達されて放熱され、各ホルダ45,46は、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で形成されている。
【0034】
緑色レーザ光源装置22は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザ51と、半導体レーザ51から出力された励起用レーザ光を集光する集光レンズであるFAC(Fast-Axis Collimator)レンズ52およびロッドレンズ53と、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光(赤外レーザ光)を出力する固体レーザ素子54と、基本レーザ光の波長を変換して半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力する波長変換素子55と、固体レーザ素子54とともに共振器を構成する凹面ミラー56と、励起用レーザ光および基本波長レーザ光の漏洩を阻止するガラスカバー57と、各部を支持する基台58と、各部を覆うカバー体59と、を備えている。
【0035】
この緑色レーザ光源装置22は、基台58を筐体41の取付部42に取り付けて固定され、緑色レーザ光源装置22と筐体41の側壁部44との間に所要の幅(例えば0.5mm以下)の間隙が形成される。これにより、緑色レーザ光源装置22の熱が赤色レーザ光源装置23に伝わりにくくなり、赤色レーザ光源装置23の昇温を抑制して、温度特性の悪い赤色レーザ光源装置23を安定的に動作させることができる。また、赤色レーザ光源装置23の所要の光軸調整代(例えば0.3mm程度)を確保するため、緑色レーザ光源装置22と赤色レーザ光源装置23との間に所要の幅(例えば0.3mm以上)の間隙が設けられている。
【0036】
図3は、図2に示した緑色レーザ光源装置22におけるレーザ光の状況を示す模式図である。半導体レーザ51のレーザチップ61は、波長808nmの励起用レーザ光を出力する。FACレンズ52は、レーザ光のファースト軸(光軸方向に対して直交し且つ図の紙面に沿う方向)の拡がりを低減する。ロッドレンズ53は、レーザ光のスロー軸(図の紙面に対して直交する方向)の拡がりを低減する。
【0037】
固体レーザ素子54は、いわゆる固体レーザ結晶であり、ロッドレンズ53を通過した波長808nmの励起用レーザ光により励起されて波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)を出力する。この固体レーザ素子54は、Y(イットリウム)VO(バナデート)からなる無機光学活性物質(結晶)にNd(ネオジウム)をドーピングしたものであり、より具体的には、母材であるYVOのYに蛍光を発する元素であるNd+3に置換してドーピングしたものである。
【0038】
固体レーザ素子54におけるロッドレンズ53に対向する側には、波長808nmの励起用レーザ光に対する反射防止と、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜62が形成されている。固体レーザ素子54における波長変換素子55に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜63が形成されている。
【0039】
波長変換素子55は、いわゆるSHG(Second Harmonics Generation)素子であり、固体レーザ素子54から出力される波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)の波長を変換して波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を生成する。この波長変換素子55は、強誘電体結晶に、分極が反転した領域とそのままの領域を交互に形成した、周期的な分極反転構造を備えたものであり、分極反転周期方向(分極反転領域の配列方向)に基本波長レーザ光を入射させる。なお、強誘電体結晶には、例えばLN(ニオブ酸リチウム)にMgOを添加したものが用いられる。
【0040】
波長変換素子55における固体レーザ素子54に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する反射防止と、波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜64が形成されている。波長変換素子55における凹面ミラー56に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜65が形成されている。
【0041】
凹面ミラー56は、波長変換素子55に対向する側に凹面を有し、この凹面には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する高反射と、波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜66が形成されている。これにより、固体レーザ素子54の膜62と凹面ミラー56の膜66との間で、波長1064nmの基本波長レーザ光が共振して増幅される。
【0042】
波長変換素子55では、固体レーザ素子54から入射した波長1064nmの基本波長レーザ光の一部が波長532nmの半波長レーザ光に変換され、変換されずに波長変換素子55を通過した波長1064nmの基本波長レーザ光は、凹面ミラー56で反射されて波長変換素子55に再度入射し、波長532nmの半波長レーザ光に変換される。この波長532nmの半波長レーザ光は、波長変換素子55の膜64で反射されて波長変換素子55から出射される。
【0043】
ここで、固体レーザ素子54から波長変換素子55に入射して波長変換素子55で波長変換されて波長変換素子55から出射されるレーザ光のビームB1と、凹面ミラー56で一旦反射されて波長変換素子55に入射して膜64で反射されて波長変換素子55から出射されるレーザ光のビームB2とが互いに重なり合う状態では、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こして出力が低下する。
【0044】
そこでここでは、波長変換素子55を光軸方向に対して傾斜させて、入射面および出射面での屈折作用により、レーザ光のビームB1、B2が互いに重なり合わないようにして、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光との干渉を防ぐようにしており、これにより出力低下を避けることができる。
【0045】
なお、図2に示したガラスカバー57には、波長808nmの励起用レーザ光および波長1064nmの基本波長レーザ光が外部に漏洩することを防止するため、これらのレーザ光を透過しない膜が形成されている。
【0046】
図4は、図1に示した画像表示装置1の機能ブロック図である。制御ユニット14には、各色のレーザ光源装置22〜24を制御するレーザ光源制御部71と、携帯型情報処理装置2から入力される映像信号を変換する映像信号変換部72およびその出力信号に基づいて空間光変調素子25を制御する空間光変調素子制御部73を備えた画像表示制御部74と、携帯型情報処理装置2から供給される電力をレーザ光源制御部71および画像表示制御部74に供給する電源部75と、各部を総括的に制御する主制御部76と、を有している。
【0047】
主制御部76は、画像表示制御部74から入力される画像表示信号に基づき、各色のレーザ光源装置22〜24の点灯を制御する制御信号として、各レーザ光源装置22〜24の点灯を許可する点灯許可信号(LD ON)と、赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置22〜24をそれぞれ点灯させる赤色点灯信号(LD RON)、緑色点灯信号(LD GON)および青色点灯信号(LD BON)を生成して、これらの制御信号をレーザ光源制御部71に出力する。
【0048】
レーザ光源制御部71は、主制御部76から入力される制御信号に基づき、各レーザ光源装置22〜24に対する駆動電流の印加を制御するための駆動制御信号(Ig、Ir、及びIb)を各レーザ光源装置22〜24に出力する。
【0049】
空間光変調素子制御部73は、映像信号変換部72から出力される映像信号に基づき、空間光変調素子25の動作を制御する制御信号として、基準電圧信号(LCOS VCOM)および画素電圧信号(LCOS ΔV)を生成して、これらの制御信号を空間光変調素子25に出力する。画素電圧信号(LCOS ΔV)は、実際には、空間光変調素子25が有する画素数分の信号数が存在するが、本実施の形態においては便宜上、空間光変調素子25が有するn番目の画素の画素電圧信号を「LCOS ΔV」として説明する。
【0050】
空間光変調素子25は、反射型の液晶表示素子、いわゆるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)であり、シリコン基板上に形成した液晶層を透過したレーザ光をシリコン基板上の反射層で反射させて出射させる構成のものである。この空間光変調素子25では、空間光変調素子制御部73から入力される画素電圧信号(LCOS ΔV)に応じてレーザ光の出力(輝度)が増減し、各色のレーザ光源装置22〜24から時分割で入力される各色のレーザ光の出力を増減することで、所要の色相を表示させることができる。
【0051】
また、この空間光変調素子25は、空間光変調素子制御部73から入力される基準電圧信号(LCOS VCOM)に基づいて極性(pおよびn)が制御され、画素電圧信号(LCOS ΔV)は、基準電圧信号(LCOS VCOM)に応じて正負が反転する。
【0052】
図5は、赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置22〜24が発する各色のレーザ光の色相を示すCIExy色度図である。なお、ここでは、後述する従来例および第1〜第3の実施形態の各々で中間色(黄色およびシアン)を表示させた場合の表示色の色相も示す。
【0053】
赤色レーザ光源装置23が発する赤色レーザ光(x=0.719,y=0.281)、緑色レーザ光源装置22の発光色(x=0.170,y=0.796)、および青色レーザ光源装置24が発する青色レーザ光(x=0.161,y=0.014)はそれぞれ標準赤色(x=0.640,y=0.330)、標準緑色(x=0.300,y=0.600)、および標準青色(x=0.150,y=0.060)からずれた色相となるが、特に緑色レーザ光源装置22が発する緑色レーザ光は標準緑色より大きくずれている。
【0054】
図6は、赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置22〜24を点灯させる順番と、空間光変調素子25の極性を示す図であり、(A)に従来例による場合を、(B)に第1の実施形態による場合を、(C)に第2の実施形態による場合を、(D)に第3の実施形態による場合を、それぞれ示す。
【0055】
図6(A)に示す従来例では、1フレームが6つの点灯区間(サブフレーム)に分割され、1フレームで緑色、赤色および青色をそれぞれ2回点灯させる2倍速表示となっており、1フレームにおいて赤色、緑色および青色の順序で点灯するRGB点灯パターンが2回繰り返される。
【0056】
図6(B)に示す第1の実施形態では、図6(A)に示す従来例と同様に、1フレームが6つの点灯区間に分割され、1フレームで緑色、赤色および青色をそれぞれ2回点灯させる2倍速表示となっているが、ここでは、図6(A)に示す従来例における赤色および緑色の点灯順序を逆にして、緑色および赤色の順序で点灯するGR点灯パターンが1フレーム内に2回存在する。
【0057】
図6(C)に示す第2の実施形態では、図6(B)に示す第1の実施形態と同様に、1フレーム内に緑色および赤色の順序で点灯するGR点灯パターンが2回存在するが、ここでは、1フレームが5つの点灯区間に分割され、図6(B)に示す第1の実施形態における青色を点灯させる最後(6番目)の点灯区間が削除されており、1フレームにおいて赤色および緑色の点灯回数がそれぞれ2回となるのに対して、青色の点灯回数は1回となっている。
【0058】
このように第2の実施形態では、視感度の高い赤色および緑色の点灯回数が青色の点灯回数よりも多くなるため、カラーブレーキング(虹現象)を低減することができる。
【0059】
また、この第2の実施形態では、1フレームを構成する点灯区間が奇数個となっているため、各フレームの点灯区間ごとに空間光変調素子25の極性を反転させるとともに、各点灯区間での空間光変調素子25の極性を各フレームで同一とすると、フレームの最後の点灯区間と次のフレームの最初の点灯区間とが同一の極性となり、空間光変調素子25に発生する残留電荷を点灯区間ごとに確実に打ち消すことができない。
【0060】
そこで、ここでは、空間光変調素子25の極性を、点灯区間ごとに反転させ且つ隣接するフレームにおいて対応する点灯区間が互いに逆の極性となるように切り換えるようにしている。これにより、1フレームを超えて点灯区間ごとに空間光変調素子25の極性が反転する状態となるため、空間光変調素子25に発生する残留電荷を点灯区間ごとに確実に打ち消すことができ、これにより空間光変調素子25の焼き付きを防止することができる。
【0061】
図6(D)に示す第3の実施形態では、図6(C)に示す第2の実施形態と同様に、1フレームが5つの点灯区間に分割されているが、ここでは、図6(C)に示す第2の実施形態におけるフレームの先頭にあるGR点灯パターンが、赤色および緑色の順序で点灯するRG点灯パターンに置き換えられており、1フレーム内にRG点灯パターンとGR点灯パターンが1回ずつ存在する。また、この第3の実施形態では、1フレーム内に緑色、青色および緑色の順序で点灯するGBG点灯パターンが存在する。
【0062】
この第3の実施形態では、図6(C)に示した第2の実施形態と同様に、視感度の高い赤色および緑色の点灯回数が青色の点灯回数よりも多くなるため、カラーブレーキング(虹現象)を低減することができる。
【0063】
また、この第3の実施形態では、図6(C)に示した第2の実施形態と同様に、1フレームを構成する点灯区間が奇数個となっているため、空間光変調素子25の極性を、点灯区間ごとに反転させ且つ隣接するフレームにおいて対応する点灯区間が互いに逆の極性となるように切り換えるようにしており、これにより1フレームを超えて点灯区間ごとに空間光変調素子25の極性が反転する状態となるため、空間光変調素子25に発生する残留電荷を点灯区間ごとに確実に打ち消して、空間光変調素子25の焼き付きを防止することができる。
【0064】
図7は、図6(A)に示した従来例により黄色を表示させる場合の各制御信号、空間光変調素子25の動作、および出力波形の状況を示す図である。
【0065】
前記のように(図4を併せて参照されたい)、点灯許可信号(LD ON)と、赤色点灯信号(LD RON)、緑色点灯信号(LD GON)および青色点灯信号(LD BON)とが主制御部74からレーザ光源制御部71に出力され、点灯許可信号(LD ON)がオンとなると、赤色点灯信号(LD RON)、緑色点灯信号(LD GON)および青色点灯信号(LD BON)に応じて、赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置22〜24が点灯する。
【0066】
また、基準電圧信号(LCOS VCOM)および画素電圧信号(LCOS ΔV)が空間光変調素子制御部73から空間光変調素子25に出力され、基準電圧信号(LCOS VCOM)に応じて空間光変調素子25の極性が切り換えられ、画素電圧信号(LCOS ΔV)に応じて空間光変調素子25の透過率が変化して各色レーザ光の出力(輝度)が調整される。
【0067】
ここで、黄色(255,255,0(RGB8ビット、以下同様))を表示する場合、空間光変調素子25で赤色および緑色を出力させればよく、画素電圧信号の絶対値(LCOS |ΔV|)は、赤色および緑色の点灯区間で最低電圧となり、出力(輝度)は最大レベル(255)となる。またここでは、赤色、緑色および青色の順序で点灯するRGB点灯パターンを採用しているため、空間光変調素子25において赤色および緑色の順序でレーザ光が出力される。
【0068】
一方、空間光変調素子25は、出力(輝度)の立ち上がりの際の応答性が低い。空間光変調素子25では出力(輝度)を上げるとき、制御電圧を下げるが、このとき透過率が徐徐に高くなる特性を有している(図7のLC動作)。このため、黄色を表示する場合には、点灯順序が先になる赤色の点灯区間で透過率が徐々に高くなる過渡状態となるため、赤色の出力が制限され、緑色に比較して赤色の出力が小さくなる(図7の出力波形)。
【0069】
一方、前記のように、緑色レーザ光源装置22が発する緑色レーザ光(x=0.170,y=0.796)は、標準緑色(x=0.300,y=0.600)に比較してy値が高い。この緑色レーザ光の色相ズレは、表示色の色相を緑色側にずらすように作用し、空間光変調素子25の立ち上がり応答性に起因する赤色の出力不足との相乗作用により、図5に示したように、標準黄色(x=0.470,y=0.465)から緑色側に大きくずれた黄緑色に表示される。
【0070】
図8は、図6(B)に示した第1の実施形態により黄色を表示させる場合の各制御信号、空間光変調素子25の動作、および出力波形の状況を示す図である。
【0071】
この第1の実施形態では、1フレーム内に緑色および赤色の順序で点灯する複数のGR点灯パターンが存在する。RG点灯パターンは含まれていない。つまり、1フレーム内にGR点灯パターンがRG点灯パターンよりも多い回数存在することになる。このため、黄色(255,255,0)を表示する場合、空間光変調素子25では緑色および赤色の順序でレーザ光が出力される。このとき、空間光変調素子25の立ち上がり応答性により、点灯順序が先になる緑色の出力が制限され、緑色の出力が赤色に比較して小さくなる。
【0072】
一方、前記のように、緑色レーザ光源装置22が発する緑色レーザ光(x=0.170,y=0.796)は、標準緑色(x=0.300,y=0.600)に比較してy値が高く、この緑色レーザ光自体の色相ズレは、空間光変調素子25の立ち上がり応答性に起因する緑色の出力不足を相殺するように作用する。このため、表示される黄色の色相ズレを低減することができ、図5に示したように、表示色の色相を標準黄色に近づけることができる。
【0073】
図9は、図6(C)に示した第2の実施形態により黄色を表示させる場合の各制御信号、空間光変調素子25の動作、および出力波形の状況を示す図である。
【0074】
この第2の実施形態では、図8に示した第1の実施形態と同様に、1フレーム内に緑色および赤色の順序で出力する複数のGR点灯パターンが存在する。RG点灯パターンは含まれていない。つまり、1フレーム内にGR点灯パターンがRG点灯パターンよりも多い回数存在しており、各フレーム内において、視感度の高い赤色および緑色の点灯回数が、青色の点灯回数より多くなっている。これにより、各光源の切り替え速度や空間光変調素子25の応答速度が高くなくても、カラーブレーキング(虹現象)を効率的に低減することができる。
【0075】
また、複数のフレームに渡って連続して黄色を表示する場合、点灯開始から2つ目以降の各フレーム、すなわち、フレームB以降の先頭にあるGR点灯パターンは、直前のフレームの後尾にあるGR点灯パターンに連続している。そのため、点灯開始から2つ目以降の各フレームの先頭にあるGR点灯パターンの最初の赤色の点灯区間では空間光変調素子25での立ち上がり時の出力低下がなく、赤色の出力が小さくならない。したがって、黄色(255,255,0)を表示する場合、空間光変調素子25の立ち上がり応答性による緑色の出力不足と、緑色レーザ光源装置22が発する緑色レーザ光自体の色相ズレとが相殺されることで、図5に示したように、表示色を標準黄色に近づけることができる。
【0076】
さらに、1フレームを構成する点灯区間が奇数個であり、空間光変調素子25の極性を、点灯区間ごとに反転させ且つ隣接するフレームにおいて対応する点灯区間が互いに逆の極性となるように切り換える構成としている。これにより、1フレームを超えて点灯区間ごとに空間光変調素子25の極性が反転する状態となるため、空間光変調素子25に発生する残留電荷を点灯区間ごとに確実に打ち消すことができ、空間光変調素子25の焼き付きを防止することができる。
【0077】
図10は、図6(D)に示した第3の実施形態により黄色を表示させる場合の各制御信号、空間光変調素子25の動作、および出力波形の状況を示す図である。
【0078】
この第3の実施形態では、図8,図9に示した第1,第2の実施形態と同様に、1フレーム内に緑色および赤色の順序で点灯するGR点灯パターンが存在する。このため、黄色(255,255,0)を表示する場合、空間光変調素子25の立ち上がり応答性による緑色の出力不足と、緑色レーザ光源装置22が発する緑色レーザ光自体の色相ズレとが相殺されることで、図5に示したように、表示色を標準黄色に近づけることができる。
【0079】
一方、この第3の実施形態では、第2の実施形態におけるフレームの先頭にあるGR点灯パターンをRG点灯パターンに置き換えているため、第2の実施形態と比較して、GR点灯パターンが1回少なくなっている。つまり、1フレーム内にGR点灯パターンがRG点灯パターンと同じ回数存在している。しかしながら、複数のフレームに渡って連続して黄色を表示する場合、点灯開始から2つ目以降の各フレーム、すなわち、フレームB以降の先頭にあるRG点灯パターンは、直前のフレームの後尾にあるGR点灯パターンに連続しているため、RG点灯パターンの最初の赤色の点灯区間では空間光変調素子25での立ち上がり時の出力低下がなく、赤色の出力が小さくならない。このため、この第3の実施形態でも、第2の実施形態と同程度に表示色を標準黄色に近付けることができる。
【0080】
また、各フレーム内において、視感度の高い赤色および緑色の点灯回数が、青色の点灯回数より多くなっている。これにより、各光源の切り替え速度や空間光変調素子25の応答速度が高くなくても、カラーブレーキング(虹現象)を効率的に低減することができる。
【0081】
さらに、1フレームを構成する点灯区間が奇数個であり、空間光変調素子25の極性を、点灯区間ごとに反転させ且つ隣接するフレームにおいて対応する点灯区間が互いに逆の極性となるように切り換える構成としている。これにより、1フレームを超えて点灯区間ごとに空間光変調素子25の極性が反転する状態となるため、空間光変調素子25に発生する残留電荷を点灯区間ごとに確実に打ち消すことができ、空間光変調素子25の焼き付きを防止することができる。
【0082】
図11は、図6(D)に示した第3の実施形態によりシアンを表示させる場合の各制御信号、空間光変調素子25の動作、および出力波形の状況を示す図である。
【0083】
前記のように、青色レーザ光源装置24が発する青色レーザ光(x=0.161,y=0.014)は、CIExy色度図上における標準青色(x=0.150,y=0.060)よりも低いy値を有する。この青色レーザ光自体の色相ズレは、表示色の色相を藍色側にずらすように作用する。
【0084】
一方、第3の実施形態では、1フレーム内に緑色、青色および緑色の順序で点灯するGBG点灯パターンが存在する。このため、空間光変調素子25の立ち上がり応答性により、点灯順序の最初の緑色は出力が小さくなる。一方、点灯順序の2番目の青色と3番目の緑色は出力が大きく、その出力の大きさは略同一となる。
【0085】
このため、点灯順序の最初の緑色の出力分だけ緑色の出力が青色より小さくなった状態となり、緑色レーザ光(x=0.170,y=0.796)のy値が高いために生じる色相ズレを相殺するように作用する。このため、表示されるシアンの色相ズレを低減することができ、図5に示したように、標準のシアン(x=0.225,y=0.330)に近付けることができる。すなわち、図6(D)、図10および図11に示す第3の実施形態は、視感度の高い赤色および緑色によって表示される黄色に加え、青色と緑色によって表示されるシアンも標準色に近付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明にかかる画像表示装置は、中間色、特に視感度が高い赤色と緑色の組み合わせで表示される中間色の色相ズレを低減することができる効果を有し、光源として半導体レーザを用いたレーザ光源装置を備えた時分割表示方式の画像表示装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 画像表示装置
22 緑色レーザ光源装置
23 赤色レーザ光源装置
24 青色レーザ光源装置
25 空間光変調素子
54 固体レーザ素子
55 波長変換素子
71 レーザ光源制御部
72 映像信号変換部
73 空間光変調素子制御部
74 画像表示制御部
76 主制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色、緑色および青色の各色レーザ光をそれぞれ出力する赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置と、
これらの各レーザ光源装置から時分割で順次出力される各色レーザ光を映像信号に基づいて変調する空間光変調素子と、
1フレームを構成する複数の点灯区間ごとに前記レーザ光源装置の点灯を制御するとともに、前記空間光変調素子での各色レーザ光の出力を制御する制御部と、を備え、
前記緑色レーザ光源装置は、CIExy色度図上において標準緑色よりも高いy値を有する緑色レーザ光を出力し、
前記制御部は、1フレーム内に緑色および赤色の順序で点灯するGR点灯パターンを含む点灯順序で前記レーザ光源装置を点灯させることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、1フレーム内の赤色および緑色の点灯回数が青色の点灯回数より多くなるように前記レーザ光源装置を点灯させることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、1フレーム内に緑色、青色および緑色の順序で点灯するGBG点灯パターンを有する点灯順序で前記レーザ光源装置を点灯させることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、1フレームを構成する点灯区間が奇数個となる場合に、前記空間光変調素子の極性を、点灯区間ごとに反転させ且つ隣接するフレームにおいて対応する点灯区間が互いに逆の極性となるように切り換えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記緑色レーザ光源装置は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、この半導体レーザから出力された励起用レーザ光により励起されて赤外レーザ光を出力する固体レーザ素子と、この固体レーザ素子から出力された赤外レーザ光の波長を変換して緑色レーザ光を出力する波長変換素子と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−145684(P2012−145684A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2875(P2011−2875)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【特許番号】特許第4719322号(P4719322)
【特許公報発行日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】