説明

画像記録装置及び該装置における制御方法

【課題】 インクジェット記録方式により画像を記録するファクシミリ装置、プリンタ等の画像記録装置において、回復動作により排出した廃インクに関するエラーの解除によって、装置の破損の発生を防ぐ。
【解決手段】 記録場所以外でインクの吐出等を行ってインクを強制的に排出して廃インク収容部材に収容するとともに、この部材に溜まった廃インクの量が所定量以上であると判定された場合に、廃インクエラーとしてその旨を使用者に通知する。そして、この廃インクエラーの際に操作部106のリカバーキーが押下されてもリカバーを禁止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクを吐出するインクジェットヘッドを用いて画像を記録する画像記録装置及び該装置の制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、カラー画像を取り扱う画像記録装置としてカラー複写装置、カラー記録装置やカラースキャナー装置などの普及が進展しており、さらに、カラー通信装置もITU−T勧告(旧CCITT勧告)として標準化が行われたため各社で開発が進められている。
【0003】一方、PCの普及に伴い周辺機器製品の多様化が進められ、複写機能、プリント機能、スキャナ機能、通信機能(ファクシミリ機能)等、多くの機能を備えたマルチファンクション製品の市場も拡大化されてきている。
【0004】上記のようなマルチファンクション装置においてもカラー化が進み、スキャナー機能、プリント機能、複写機能、及び、通信機能の全てにおいてカラー技術を包含したカラーマルチファンクション装置も多々製品化されている。
【0005】また、昨今の記録(プリント)系にはインクジェット方式が安価でカラー印字まで可能なため、その普及率が膨大となってきている。プリンタとしてこの記録系を利用している際は、動作時に使用者が判断して、全てのエラーを解除できるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のような従来の画像記録装置において、エラー発生時に記録動作を禁止するよう制御する構成を採用したものが知られており、また使用者の指示によって記録動作の禁止状態を解除するようにした構成も知られている。しかしながら、使用者の判断で全てのエラーを解除できるようにした場合、問題が生じていた。例えばファクシミリ装置では自動で受信を行い自動で記録を行う処理があるため、後述する限度使用エラーを解除してしまうと装置の破壊につながる可能性が高いという問題点があった。以下に、この問題点について詳しく説明する。
【0007】例えば、インクジェット方式ではノズルを使用しているため、定期的にノズル内のインクを強制的に排出して吐出状態を回復させる回復機構がとられている。また、その吸い出されたインクを処理するためスポンジ等の廃インク収容部材が装置内に用意されそこに廃インクとして収容される。
【0008】しかし、収容可能なインク量には限度があるためそのインク量を計測、もしくは検知してある量を超えると廃インクエラー(限度使用エラー)として使用者へ通知される。
【0009】ところが、プリンタで使用する際は使用者がまだ大丈夫か判断してリカバー処理によりその廃インクエラーを取り消し記録処理を行うことが可能だが、前述したようにファクシミリの場合は自動で記録処理が動作することがあり、リカバーにより廃インクエラーを取り消されると、廃インク収容部材に収容可能なインク量を超えてインクが溢れでるため、機械の破損となることが起きてくる。
【0010】本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、ノズル内のインクの廃処理による廃インクエラーの解除によって生ずる装置の破損を防ぐことができる画像記録装置及び該装置における制御方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明の画像記録装置は、インクジェットヘッドを用い、該インクジェットヘッドからインクを吐出して画像を記録する画像記録装置であって、使用者が指示を入力するための操作手段と、装置のエラー発生時に前記インクジェットヘッドによる記録動作を禁止する制御手段と、前記操作手段により、記録動作が禁止された状態を解除するための指示の入力に従って、記録動作の禁止状態を解除するリカバー手段と、を有し、前記装置のエラーが所定のエラーの場合においては、前記リカバー手段による記録動作の禁止状態の解除を行わないよう制御することを特徴とする。
【0012】また、上記目的を達成する本発明の画像記録装置の制御方法は、インクジェットヘッドを用い、該インクジェットヘッドからインクを吐出して画像を記録する画像記録装置における制御方法であって、装置のエラー発生時に前記インクジェットヘッドによる記録動作を禁止する工程と、前記エラーの種類を判定する判定工程と、使用者による、前記記録動作が禁止された状態を解除するための指示の入力に従い、前記記録動作が禁止された状態を解除するリカバー工程と、からなり、前記判定工程により判定されたエラーの種類が所定のエラーの場合に、前記リカバー工程による記録動作の禁止状態の解除を行わないよう制御することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例の画像記録装置の構成を示すブロック図である。
【0014】尚、以下に示す実施例では、画像記録装置としてファクシミリ装置を例に挙げて説明する。
【0015】図1において、101は装置全体のシステム制御を行うCPU、102はCPU101の制御プログラムを格納したROM、103はSRAM等で構成され、プログラム制御変数等を格納するためのワークメモリであるRAMである。また、オペレータが登録した設定値や装置の管理データ等や各種ワーク用バッファもRAM103に格納されるものである。104はDRAM等で構成され、画像データを蓄積する画像メモリである。
【0016】105は、エッジ強調、輝度/濃度変換、多値/2値変換等を行う画像処理部(画像編集手段)、106は、キーボード等で構成され、オペレータが各種入力操作を行う操作部、107は2値情報を記録用のネーティブコマンドへの変換を行う記録制御処理部である。
【0017】108はJPEG,JBIG等で構成され、MH,MR等画像データの変換を行う圧縮/伸長処理部、109はP1284規格準拠のBi−directry(Bi−centro)で構成された双方向インターフェース部110の制御を行い外部のホストコンピュータ118との情報の送受信制御を行うPC・インターフェース部である。
【0018】112はシートスキャナ(読取り手段)であり、CSまたはCCDイメージセンサ、原稿搬送機構等で構成され、原稿を光学的に読取って電気的な画像データに変換する。この画像データは、読取り制御処理部111によりガンマ処理、位置補正処理を施して高精細な画像データを出力するものである。なお、読取り制御処理部111は読取り時の光量やモーターの制御を行う。
【0019】113は画像データの転送制御を行う場合に使用するラインバッファである。
【0020】115はプリンタ(記録手段)であり、受信画像やファイルデータをインクジェット方式により普通紙に記録する。114はホストコンピュータ118からのファイルデータのプリントを行う際にプリンタ記述言語に変換するものである。
【0021】116は回線119を介して他の通信機(外部装置)と交信を行うモデムやネットワーク制御ユニット等で構成されファクシミリ通信を行うための通信部(通信手段)である。尚、主な回線としては電話回線が挙げられる。また、通信部は、受信と出力が可能とである。117は動作間隔等を計測する計時部であり、時計IC等で構成される。
【0022】図2は、上記の画像記録装置の操作部(操作手段)の構成を示す図である。
【0023】図2において、201,203はそれぞれ10キー,ワンタッチキーであり、電話の発呼や各種設定に使用される。202は各種操作を促したり、エラー(注意)情報を表示するLCD等で構成される表示部、204はコピー/通信/スキャナ等の動作を開始するスタートキー、205はカラー/モノクロ処理を切り替える切り替えキーである。
【0024】206はコピー/通信等の解像度を設定する解像度キー、207は回線を補足するために使用するオンフックキー、208は各種動作を停止させるストップキー、209は一つ前に発呼した電話番号を再発呼及びポーズするためのリダイヤル/ポーズキーである。
【0025】210は予めコードに電話番号を登録して発呼に使用する短縮キー、211は自動受信,手動受信,F/T切り替え等受信モード切り替えキー、212はコピー動作を指示するコピーキー、213は各種登録動作やテスト動作を指示するファンクションモードキーであり、LED素子による表示ランプで構成されている。
【0026】214は各種登録操作時に該当情報を決定するセットキー、215はプリンタ関連のエラーが起きた時にその解除(リカバー処理)を行わせるエラー解除キー(リカバー手段)、216はカラー/モノクロを選択した際に表示する色動作表示ランプ、217は本体の異常状態を通知するアラームランプ(通信手段)である。
【0027】上記構成において、ROM102は後述する記録系エラーを限度エラーとそれ以外のエラーに分ける指標を記憶する限度エラー指標記憶手段(以後、記憶部という)を構成している。
【0028】また、CPU101は後述する限度エラー時にエラー解除キー215によるリカバーを禁止するとともにその際に記録系以外で動作可能とさせる制御手段を構成している。
【0029】図3は、一実施例の記憶部内の記録系エラーの構成を示す図、図4〜図6は一実施例の各種処理動作を示すフローチャートであり、図3(処理説明図)、及び図4〜図6の制御フローチャートを用いて、上記構成による本実施例の動作説明を行う。なお、図4〜図6の動作はROM102に格納されているプログラムに基づいてCPU101の指示により実行される。
【0030】図4は記録や、ノズル掃除(ノズル内のインク除去)における回復処理等を行う際のインクの吐出処理時の処理動作を示すフローチャートである。
【0031】記録や回復時には、ノズルをスムーズにインクが通るようにインク除去するために吸引処理を行ったり、記録場所以外で吐出を行ったりする。この時に捨てられるインクを廃インクと呼び、それを吸い込む大きなスポンジのような多孔質体で構成された廃インク収容部材が用意されている。なお、この廃インク収容部材は、容器内に多孔質体を収納した構成であってもよい。
【0032】この処理は、各インク毎に行う。
【0033】図4のフローチャートにおいて、最初に黒インクの吐出を行う(ステップS101)。吐出を行うと前記廃インク収容部材にインクが溜まるため吐出したインク量を算出しておく(ステップS102)。そして、廃インクが一定量を超えていないかチェックを行う(ステップS103)。
【0034】続いて、マゼンダインクの吐出を行う(ステップS104)。吐出を行うと前記廃インク収容部材にインクが溜まるため吐出したインク量を算出しておく(ステップS105)。そして、廃インクが一定量を超えていないかチェックを行う(ステップS106)。
【0035】続いて、シアンインクの吐出を行う(ステップS107)。吐出を行うと前記廃インク収容部材にインクが溜まるため吐出したインク量を算出しておく(ステップS108)。そして、廃インクが一定量を超えていないかチェックを行う(ステップS109)。
【0036】最後に、イエローインクの吐出を行う(ステップS110)。吐出を行うと前記廃インク収容部材にインクが溜まるため吐出したインク量を算出しておく(ステップS111)。廃インクが一定量を超えていないかチェックを行う(ステップS112)。
【0037】どれかのインク吐出時に廃インクエラーを検出すると使用者にその旨を通知するため廃インクエラー表示を行う(ステップS113)。
【0038】図5は吐出量の更新時の処理動作を示すフローチャートである。
【0039】図5のフローチャートにおいて、廃インクを収容する廃インク収容部材に収容されるインク量を更新する(ステップS201)。更新された吐出量が一定値Xを超えているか判断する(ステップS202)。ここでXの値は収容可能なインク量に対応して設定される値であり、インクが溢れ出る直前のインク量に設定されることが好ましい。
【0040】一定値Xを超えていた時は、廃インクエラーとして記憶部の記録系エラー一覧内の廃インクエラーフラグを設定しておく(ステップS203)。
【0041】図6は待機時等から各動作が開始される際の処理動作を示すフローチャートである。
【0042】各動作はここに書かれた動作以外に多くの動作が実際には存在するが、ここではその一部について説明を行う。
【0043】最初に動作が何であるかを判断する(ステップS301)。読取り(スキャン)動作(ステップS305)、送信動作(ステップS306)、受信(ここでは受信画像をメモリに一度蓄えて受信処理を終え、受信画像の印字は記録(プリント)処理へ移行するものとする)動作(ステップS307)等記録系を動作させないものは、廃インクエラーが起きていても通常通り動作を行う。
【0044】記録系(ステップS302)は最初に廃インクエラーをチェック(ステップS303)し、廃インクエラーの状態でない時に記録(プリント)動作(ステップS304)を行う。
【0045】また、操作部のリカバーキー215が押下された時(ステップS308)は、限度エラーである廃インクエラー以外の記録系エラー、例えば、ジャムエラーやホームポジションエラーのフラグを解除する。もちろん、ジャムなどのエラーの際はジャムを起こしている紙を排除してからリカバーキー215を押さなければ解除されない。
【0046】前述したように、カラー通信等がITU−Tで勧告化されたため白黒通信に加え、カラー通信が普及されてくることから、カラー記録に大変有利なインクジェット記録方式が増大してくる。これにより、使用するインク量が増大し、インクの排出に伴う廃インクエラーの発生も生じやすくなる。
【0047】このため、本実施例では、これを本体の限度エラーとして自動受信記録等で動作させないようにしたことで、装置の破壊を防ぎ、さらに他の機能を動作可能とすることで、本体の寿命増大につながる。
【0048】尚、上述した実施例では、ファクシミリ装置を例に挙げて説明したが、インクジェット記録方式を採用したプリンタ、複写機等の画像記録装置についても本発明を適用することが可能である。また、ファクシミリ装置においては、電話回線のような通信回線を介して転送されたデータに基づいて自動的に記録動作を行うこともあり、廃インクに関するエラーが取り消されると廃インク収容部材からインクが溢れて装置の破損を引き起こすこととなる。従って、本発明はファクシミリ装置において絶大な効果を奏するものである。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、回復動作により排出したインク量が所定量を超えた際の廃インクエラーの解除によって生ずる装置の破損を防ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施例の画像記録装置の構成を示すブロック図
【図2】 一実施例の画像記録装置の操作部の構成を示すブロック図
【図3】 一実施例の記憶部内の各種記憶関係のエラー構成を示す図
【図4】 一実施例のインクの吐出処理動作を示すフローチャート
【図5】 一実施例のインク吐出量の更新時の処理動作を示すフローチャート
【図6】 一実施例の待機時等から各動作が開始される際の処理動作を示すフローチャート
【符号の説明】
101 CPU(制御手段)
102 ROM
103 RAM
104 画像メモリ
105 画像処理部(画像編集手段)
106 操作部
112 シートスキャナ(読取り手段)
115 プリンタ(記録手段)
116 通信部(通信手段)
119 回線
215 エラー解除キー(リカバー手段)
217 アラームランプ(通知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 インクジェットヘッドを用い、該インクジェットヘッドからインクを吐出して画像を記録する画像記録装置において、使用者が指示を入力するための操作手段と、装置のエラー発生時に前記インクジェットヘッドによる記録動作を禁止する制御手段と、前記操作手段により、記録動作が禁止された状態を解除するための指示の入力に従って、記録動作の禁止状態を解除するリカバー手段と、を有し、前記装置のエラーが所定のエラーの場合においては、前記リカバー手段による記録動作の禁止状態の解除を行わないよう制御することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】 前記インクジェットヘッドからインクを排出させて吐出状態を回復させる回復手段と、前記回復手段により前記インクジェットから排出されたインクを収容する廃インク収容部材と、前記廃インク収容部材に収容されたインクの量が所定量以上であるか否かを判定する判定手段と、をさらに有し、前記所定のエラーは、前記廃インク収容部材に収容されたインクの量が前記判定手段により所定量以上であると判定されたことに基づくエラーであることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】 前記所定のエラーが発生した場合に、記録動作以外の動作を可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】 前記エラー発生時に、使用者に対してエラーの通知を行う通知手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】 通信回線を介して記録される画像のデータを受信する受信手段をさらに有し、前記データに基づいて画像の記録を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項6】 原稿画像を読み取る読取手段と、前記読取手段によって読み取って得られたデータを前記通信回線を介して出力する出力手段と、をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の画像記録装置。
【請求項7】 インクジェットヘッドを用い、該インクジェットヘッドからインクを吐出して画像を記録する画像記録装置における制御方法において、装置のエラー発生時に前記インクジェットヘッドによる記録動作を禁止する工程と、前記エラーの種類を判定する判定工程と、使用者による、前記記録動作が禁止された状態を解除するための指示の入力に従い、前記記録動作が禁止された状態を解除するリカバー工程と、からなり、前記判定工程により判定されたエラーの種類が所定のエラーの場合に、前記リカバー工程による記録動作の禁止状態の解除を行わないよう制御することを特徴とする制御方法。
【請求項8】 前記インクジェットヘッドからインクを排出させて廃インク収容部材に収容し、前記インクジェットヘッドの吐出状態を回復させる回復工程と、前記廃インク収容部材に収容されたインクの量が所定量以上であるか否かを判定する判定工程と、をさらに有し、前記所定のエラーは、前記廃インク収容部材に収容されたインクの量が前記判定工程により所定量以上であると判定されたことに基づくエラーであることを特徴とする請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】 前記所定のエラーが発生した場合に、記録動作以外の動作を可能としたことを特徴とする請求項7または8に記載の制御方法。
【請求項10】 前記エラー発生時に、使用者に対してエラーの通知を行う通知工程をさらに有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の制御方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−63018(P2001−63018A)
【公開日】平成13年3月13日(2001.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−238325
【出願日】平成11年8月25日(1999.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】