説明

画像記録装置

【課題】装置の大型化及びコストアップを伴わずに回転体の原点位置を決定することができる手段を提供する。
【解決手段】制御部100は、用紙検出センサ32が被検知部材90を検知し得る検知位置へキャリッジ41を移動させて、LFモータ85を駆動させることによって、伝達ギヤ77を介して被検知部材90を幅方向121へスライドさせ、このときの用紙検出センサ32の検出結果及びロータリーエンコーダ89の検出結果に基づいて、搬送ローラ60の回転位相の原点位置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラの原点位置を決定する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置は、記録用紙などの被記録媒体を搬送して画像記録を行う。この被記録媒体の搬送手段として搬送ローラが知られている。搬送ローラは、被記録媒体に接触した状態で回転されることによって被記録媒体を搬送する。高画質な画像記録が実現されるためには、被記録媒体が正確に搬送される必要がある。そのために、搬送ローラの回転量は正確に制御される。
【0003】
しかしながら、搬送ローラの1回転を1周期として、1周期以下の所定の回転量だけ搬送ローラを回転させても、搬送ローラの回転位相によって、被記録媒体が搬送される量が若干異なることがある。この搬送量の誤差の原因として、搬送ローラの回転量を検出するロータリーエンコーダなどの検出手段の組み付け誤差や、搬送ローラに対するギヤの組み付け誤差、搬送ローラ自体の偏心などが挙げられる。このため、1周期以下の所定の回転量毎に、搬送ローラを間欠して回転させると、各回転量による被記録媒体の搬送量が周期的に変動することがある。このような問題に対して、被記録媒体の搬送量の周期的な変動を検出して、被記録媒体の搬送量を補正する手段が提案されている(例えば特許文献1〜4参照。)。
【0004】
特許文献3に記載されたインクジェット記録装置においては、ロータリーエンコーダがローラの回転量を検出し、その検出結果に基づいてローラの回転量が補正されつつシートに画像が記録される。ローラの回転量が適切に補正されている場合には、濃度変化が小さいパターンがシートに記録される。ローラの回転量が適切に補正されていない場合には、濃度変化が大きいパターンがシートに記録される。このインクジェット記録装置では、ローラの回転量の補正量が変更されつつ複数のパターンがシートに記録される。これらのパターンの中で濃度むらが最小となるときのローラの回転量の補正値が取得され、当該補正値がメモリに記憶される。そして、この補正値に基づいてローラの回転量が補正される。
【0005】
特許文献1には、ロータリーエンコーダによって検出されたローラの回転速度からエンコーダディスクの偏心の影響を除去する手段が開示されている。この文献に記載された回転速度検出装置は、位相検出用回転円板及び光センサを備えている。位相検出用回転円板は、1個の光検出領域が設けられた円盤状のものであり、エンコーダディスクとともにローラの回転軸に固定されている。光センサは、この位相検出用回転円板の周縁を挟むように、発光素子及び受光素子が所定の間隔を隔てて対向して配置されたものである。ローラが1回転する毎に、光センサから1個のパルス信号が出力され、このパルス信号に基づいてローラの回転軸の原点位置が特定される。この原点位置に基づいてローラ1周分を1周期として発生するシートの搬送量の周期的変動が把握され、その周期的変動を相殺するようにローラの回転が制御される。
【0006】
特許文献2に記載された回転制御装置は、ロータリーエンコーダの回転を検出する3つの回転センサを備えている。回転センサは、発光素子及び受光素子が所定の空間を隔てて対向して配置されたものである。モータの出力軸には、ロータリーエンコーダのエンコーダディスクが固定されている。各回転センサは、上記空間内にエンコーダディスクの周縁が位置し、且つエンコーダディスクの周方向に互いに90°の角度で並ぶように配置されている。回転制御装置では、各回転センサからの出力信号に対して所定の演算処理を行うことによってモータの出力軸の回転速度が算出される。そして、この回転速度が目標回転速度と一致するようにモータの回転が制御される。
【0007】
特許文献4に記載された用紙搬送装置においては、演算によって得られた補正値に基づいて、搬送ローラの目標回転量が補正されることによって、搬送ローラの回転量の周期的なズレが相殺される。また、この用紙搬送装置では、搬送ローラの定速回転が終了したときの当該搬送ローラの位置を基準位置として、搬送ローラの現在の回転位相が決定される。そして、搬送ローラが回転されると、上記基準位置に対する搬送ローラの回転量に応じて、搬送ローラの現在の回転位相が更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−38902号公報
【特許文献2】特開2005−168280号公報
【特許文献3】特開2006−224380号公報
【特許文献4】特開2007−197186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3に記載された装置では、装置の電源が切られるとローラの原点位置が把握できない。したがって、電源が入れ直される毎に、シートにパターンを記録して補正値を取得する作業が必要となる。
【0010】
特許文献1に記載された装置は、電源を入れ直した際に光センサから出力されるパルス信号に基づいて、ローラの原点位置を検出する。特許文献2に記載された装置は、原点位置を検出する必要がないので、前述されたように、特許文献3に記載された装置における問題点がない。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、原点位置を検出するための位相検出用回転円板及び光センサが必要である。特許文献2に記載された装置では、3つの回転センサが必要である。したがって、これら部材の増加によって、装置が大型化するとともにコストが嵩むといった別の問題が生じる。また、特許文献2に記載された装置では、モータの出力軸の回転速度からロータリーエンコーダの中心位置のズレの影響が除去されるが、モータの出力軸の偏心など、その他の偏心については、原理的に補正することができない。
【0012】
特許文献4に記載された装置では、搬送ローラの現在の回転位相が演算によって取得される。したがって、搬送ローラの回転位相の原点位置を検出するための機構が不要なので、装置が安価に構成され得る。
【0013】
しかしながら、搬送ローラの現在の回転位相が演算によって取得されるので、シートに綺麗な画像が記録されるには、シートの搬送精度が十分であるとは言えない。
【0014】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置の大型化及びコストアップを伴わずに回転体の原点位置を決定することができる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1) 本発明に係る画像記録装置は、被記録媒体を搬送向きへ搬送する搬送ローラと、上記搬送ローラを回転させるための駆動力を付与する駆動源と、上記搬送ローラと同期して回転される同期軸の回転量を検出する第1検出手段と、上記搬送ローラによって搬送される被記録媒体に画像記録を行う記録ヘッドが搭載されており、上記搬送向きと交差する移動方向へ移動するキャリッジと、上記キャリッジに搭載されており、対象物の所定の物理量を検出する第2検出手段と、搬送される上記被記録媒体と対向したときの上記第2検出手段の検出結果に基づいて、当該被記録媒体を検出する被記録媒体検出手段と、上記第2検出手段と対向し得る位置に配置された被検知部材と、上記搬送ローラの回転に同期して、上記被検知部材を動作させる駆動伝達機構と、上記第2検出手段が上記被検知部材を検知し得る検知位置へ上記キャリッジを移動させて、上記駆動源を駆動させることによって上記駆動伝達機構を介して上記被検知部材を動作させ、このときの上記第1検出手段の検出結果及び上記第2検出手段の検出結果に基づいて、上記搬送ローラの原点位置を決定する原点決定手段と、を備える。
【0016】
キャリッジが検知位置へ移動されて駆動源が駆動されると、搬送ローラの回転に同期して被検知部材が動作される。この動作において、第2検出手段が被検知部材を検出する。原点決定手段は、第2検出手段が被検知部材の検出領域を検出した結果に基づいて、そのときの搬送ローラの回転位相を原点位置として決定する。
【0017】
(2) 本画像記録装置は、上記搬送ローラの上記原点位置からの回転量である回転位相と、当該搬送ローラの目標回転量の補正値との対応関係を記憶する記憶手段と、上記駆動源の駆動を制御して上記搬送ローラの回転量を補正する補正手段と、を備えるものであってもよい。上記補正手段は、上記原点決定手段によって検出された原点位置、上記第1検出手段の検出結果及び上記記憶手段に記憶されている上記対応関係に基づいて、上記駆動源の駆動を制御する。
【0018】
搬送ローラの目標回転量は、例えば、被記録媒体が一定の改行幅で間欠して搬送されるように、予め定められている。原点決定手段によって決定された原点位置に基づいて、原点位置に対する搬送ローラの現在の回転位相が判断される。記憶手段に記憶されている対応関係に基づいて、現在の回転位相に対する補正値が取得される。この補正値によって上記目標搬送量が補正され、シートが当該目標搬送量だけ搬送されるように、駆動源が制御される。これにより、被記録媒体の搬送量が周期的に変動することが抑制される。
【0019】
(3) 本画像記録装置において、上記記録ヘッドは、インクジェット方式により画像記録を行うものであり、上記キャリッジが上記検知位置へ移動されたときに上記記録ヘッドと対向する位置に、インク受け部が設けられ、上記原点決定手段が上記搬送ローラの回転位相の原点位置を検出している間に、上記記録ヘッドから上記インク受け部へインク滴の吐出を行わせる制御手段が設けられたものであってもよい。
【0020】
原点決定手段が搬送ローラの回転位相の原点位置を決定している間は、キャリッジが検知位置へ移動されて静止される。この間に、記録ヘッドのノズル付近が乾燥してインク詰まりが生じるおそれがあるが、記録ヘッドからインク受け部へインク滴が吐出されることによって、このようなインク詰まりが防止される。
【0021】
(4) 上記駆動伝達機構として、上記搬送ローラの所定の回転位置において、上記キャリッジに対して、上記被検知部材を移動させるものが挙げられる。
【0022】
(5) 上記被検知部材として、回転体が挙げられる。上記駆動伝達機構は、上記被検知部材を上記搬送ローラに同期させて回転させる。
【0023】
(6) 上記第2検出手段が検出する物理量として、反射率又は距離が挙げられる。
【0024】
(7) 上記第2検出手段として、上記対象物へ向けて光を照射する発光手段と、上記対象物からの反射光を受光して当該反射光量に応じた信号を出力する受光手段とを有するものが挙げられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、キャリッジと共に第2検出手段が検知位置へ移動され、その第2検出手段が、搬送ローラの回転に同期して動作される被検知部材を検出し、この検出結果に基づいて原点決定手段が搬送ローラの回転位相の原点位置を決定するので、画像記録装置が他の目的のために備える部材を有効活用して、装置の大型化及びコストアップを伴わずに回転体の原点位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を示す模式図である。
【図3】図3は、プリンタ部11の内部構成を示す部分平面図である。
【図4】図4は、プリンタ部11の内部構成を示す部分斜視図である。
【図5】図5は、伝達ギヤ77周辺の構成を示す部分斜視図である。
【図6】図6は、伝達ギヤ77周辺の構成を示す拡大斜視図である。
【図7】図7は、被検知部材90の構成を示す平面図である。
【図8】図8は、制御部100の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、記録用紙50の搬送量の周期的変動について説明するための図であり、(A)はエンコーダディスク71と光学センサ55の模式図であり、(B)はロータリーエンコーダ89から出力されるパルス信号あたりの記録用紙50の搬送量を例示するグラフである。
【図10】図10は、補正値関数A(θ)を取得する処理について説明するための図である。
【図11】図11は、補正値関数A(θ)を取得する処理について説明するための図である。
【図12】図12は、複合機10の電源が投入された際に複合機10で行われる処理の手順を例示するフローチャートである。
【図13】図13は、記録開始命令があったときに複合機10で行われる処理の手順を例示するフローチャートである。
【図14】図14は、第1変形例に係る被検知部材130の構成を示す平面図である。
【図15】図15は、第2変形例に係る被検知機構150の構成を示す平面図である。
【図16】図16は、図15におけるXVI-XVI切断線の断面構造を示す断面図である。
【図17】図17は、被検知機構150の動作を説明するための平面図である。
【図18】図18は、被検知機構150の動作を説明するための平面図である。
【図19】図19は、被検知機構150の動作を説明するための平面図である。
【図20】図20は、第3変形例に係るドラム170などの構成を示す平面図である。
【図21】図21は、図20におけるXXI-XXI切断線の断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、以下に述べる各実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態が適宜変更できることは言うまでもない。
【0028】
[複合機10の概略構成]
図1に示されるように、複合機10は、プリンタ部11とスキャナ部12とを一体的に備えており、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。プリンタ部11が本発明に係る画像記録装置に相当する。なお、複合機10は、必ずしもスキャナ部12を有している必要はなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明に係る画像記録装置が実施されてもよい。したがって、スキャナ部12の詳細な構成の説明は、ここでは省略される。
【0029】
複合機10の下部にプリンタ部11が設けられている。プリンタ部11の正面側に開口13が形成されている。プリンタ部11には、開口13を通じて給紙カセット21及び給紙カセット22が装着される。給紙カセット21,22には、定形の矩形の記録用紙50が載置される(図2参照)。プリンタ部11では、給紙カセット21又は給紙カセット22からプリンタ部11内へ記録用紙50が選択的に供給される。この記録用紙50は、記録部40(図2参照)によって画像が記録された後に給紙カセット22の上面23に排出される。上面23は、排紙トレイとして機能する。記録用紙50は、本発明における被記録媒体の一例である。
【0030】
複合機10は、主にコンピュータなどの外部情報機器(不図示)と接続された状態で使用される。プリンタ部11は、外部情報機器から受信した印刷データやスキャナ部12で読み取られた原稿の画像データに基づいて、記録用紙50に画像を記録する。
【0031】
複合機10の正面上部に操作パネル14が設けられている。操作パネル14には、各種情報を表示するディスプレイや情報の入力を受け付ける入力キーが設けられている。複合機10は、操作パネル14から入力された指示情報、又は外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどを通じて送信される指示情報に基づいて動作する。
【0032】
[プリンタ部11]
以下、図2〜図7が適宜参照されながら、プリンタ部11の構成が説明される。
【0033】
図2に示されるように、給紙カセット21と給紙カセット22とは、給紙カセット22を上側として上下二段に配置されている。給紙カセット21及び給紙カセット22は、いずれも画像記録が行われる記録用紙50を保持するものである。独立した2つの給紙カセット21及び給紙カセット22が設けられることによって、それぞれにサイズや紙種が異なる記録用紙50が保持され得る。
【0034】
給紙カセット21は、複合機10の背面側の一部が開口された容器形状のものであり、その内部空間に記録用紙50が積層状態で載置される。給紙カセット21には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙50が収容可能である。
【0035】
給紙カセット22は、複合機10の背面側(図2における右側)の一部が開口された容器形状のものであり、その内部空間に記録用紙50が積層状態で載置される。給紙カセット22には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙50が収容可能である。給紙カセット22の上面23は、複合機10の正面側(図2における左側)に設けられている。
【0036】
[第1供給部28]
給紙カセット22の傾斜板24の上側には、湾曲状に形成された搬送路18が設けられている。プリンタ部11に給紙カセット22が装着されると、傾斜板24が搬送路18の下方に配置され、且つ、給紙カセット22の上側に第1供給部28が配置される。第1供給部28は、給紙ローラ25、アーム26及び軸27を有している。給紙ローラ25は、アーム26の先端側に回転可能に設けられている。アーム26は、プリンタ部11の筐体に支持された軸27に回動可能に設けられている。アーム26は、自重によって或いはバネ等による弾性力を受けて給紙カセット22側へ回動付勢されている。
【0037】
[第2供給部38]
給紙カセット21の傾斜板34の上側には、湾曲状に形成された搬送路17が設けられている。プリンタ部11に給紙カセット21が装着されると、傾斜板34が搬送路17の下方に配置され、且つ、給紙カセット21の上側に第2供給部38が配置される。第2供給部38は、給紙ローラ35、アーム36及び軸37を有している。給紙ローラ35は、アーム36の先端側に回転可能に設けられている。アーム36は、プリンタ部11の筐体に支持された軸37に回動可能に設けられている。アーム36は、自重によって或いはバネ等による弾性力を受けて給紙カセット21側へ回動付勢されている。
【0038】
[搬送路17,18,19]
プリンタ部11の内部には、搬送路17及び搬送路18と連続する搬送路19が設けられている。搬送路19は、搬送路17又は搬送路18に沿って搬送された記録用紙50が搬送される経路であり、搬送路17と搬送路18とが合流する位置から複合機10の正面側へ向けて給紙カセット22の上面23の上方まで延出されている。
【0039】
[プラテン43]
搬送路19にプラテン43(図2及び図3参照)が設けられている。プラテン43は、搬送路19に沿って搬送される記録用紙50を下から支持するものである。このプラテン43の上側に記録部40が配置されている。この記録部40については後述される。プラテン43の上面は、記録用紙50の反射率と異なる反射率となるように着色されている。記録用紙50は、白色であることが通常なので、プラテン43の上面は、例えば黒色に着色される。
【0040】
図4及び図5に示されるように、プラテン43の幅方向121の一方端であって、後述される伝達ギヤ77(図3参照)が配置される側には、廃インクトレイ66が設けられている。廃インクトレイ66は、メンテナンスのために記録ヘッド42から噴出されるインク滴を受けるものである。廃インクトレイ66は、記録ヘッド42のノズル領域に対応するトレイ形状であり、その内部空間にインク吸収材が充填されている。インク吸収材は、記録ヘッド42から噴出されたインク滴を吸収して保持する。例えばパージが行われてワイパによってノズル領域のインクが拭い取られると、各ノズル口に、対応するインク色以外のインクが若干混入するおそれや、各ノズル口におけるインクのメニスカスが正常でない状態となるおそれがある。したがって、パージの後に記録ヘッド42の全ノズル口からインク滴を噴出することによって、混入したインクを排出したり、各ノズル口のメニスカスを正常な状態に復帰させる。本明細書において、このようなインク滴の噴出動作がフラッシングと称される。
【0041】
[搬送ローラ対59]
プラテン43よりも記録用紙50の搬送向き124の上流側に搬送ローラ対59が設けられている。搬送ローラ対59は、搬送ローラ60及びピンチローラ61からなる。搬送ローラ60は、搬送路19の上側に配置されており、LFモータ85(図6参照)からの駆動力を受けて回転する。ピンチローラ61は、搬送路19を挟んで搬送ローラ60の下側に回転自在に配置されており、搬送ローラ60へ向けてバネによって付勢されている。
【0042】
[排出ローラ対64]
プラテン43よりも記録用紙50の搬送向き124の下流側に排出ローラ対64が設けられている。排出ローラ対64は、排紙ローラ62及び拍車63からなる。排紙ローラ62は、搬送路19の下側に配置されており、LFモータ85(図6参照)からの駆動力を受けて回転する。拍車63は、搬送路19を挟んで排紙ローラ62の上側に回転自在に配置されており、排紙ローラ62へ向けてバネによって付勢されている。
【0043】
[エンコーダディスク71、光学センサ55]
図3から図6に示されるように、搬送ローラ60の軸76には、エンコーダディスク71が設けられている。エンコーダディスク71は、透明な円盤状のものであり、光を遮るマークが周方向に所定ピッチで記されている。このエンコーダディスク71は、搬送ローラ60の軸76に固定されており、搬送ローラ60と共に回転する。光学センサ55は、発光素子及び受光素子が幅方向121に所定の間隔を隔てられて対向して配置されたものである。光学センサ55は、発光素子と受光素子との間の空間にエンコーダディスク71の周縁が位置するように設けられている。光学センサ55の受光素子で光が受光されると、受光した光の輝度に応じたレベルの電気信号が光学センサ55で生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置している状態では、LOWレベルの電気信号が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置していない状態では、HIレベルの電気信号が生成される。すなわち、光学センサ55によってエンコーダディスク71のマークが検出される毎にパルス信号が生成される。このパルス信号は、制御部100へと出力される。このエンコーダディスク71及び光学センサ55によって、本発明における第1検出手段が実現されている。
【0044】
[記録部40]
図2から図4に示されるように、記録部40は、プラテン43の上側にプラテン43と所定間隔を隔てられて対向して配置されている。すなわち、記録部40は、搬送ローラ対59よりも搬送向き124の下流側に配置されている。記録部40は、インクジェット記録方式の記録ヘッド42と、キャリッジ41とを備えている。
【0045】
[キャリッジ41]
図4に示されるように、キャリッジ41は、直方体形状をなしている。記録ヘッド42は、このキャリッジ41に搭載されて、下面側へ露出されている。キャリッジ41は、後述されるガイドフレーム44,45に沿って幅方向121へ移動可能である。キャリッジ41において幅方向121に対向する両側面のうち、伝達ギヤ77(図3参照)と対向する側面に、幅方向121へ突出する当接部53が設けられている。この当接部53は、後述される被検知部材90の検出子91(図7参照)と当接し得る。
【0046】
[ガイドフレーム44,45]
図3及び図4に示されるように、搬送路19の上側において、搬送向き124に所定の間隔が隔てられて、一対のガイドフレーム44,45が設けられている。ガイドフレーム44,45は、幅方向121へ延設されている。ガイドフレーム44は、ガイドフレーム45よりも搬送向き124の上流側に設けられている。キャリッジ41は、ガイドフレーム44,45を跨ぐようにしてガイドフレーム44,45に載置されている。これにより、キャリッジ41は、搬送路19を挟んでプラテン43と対向して配置されている。なお、図2では、ガイドフレーム44,45は省略されている。
【0047】
キャリッジ41の搬送向き124の上流側の端部は、ガイドフレーム44の上面に摺動自在に支持されている。キャリッジ41の搬送向き124の下流側の端部は、ガイドレーム45の上面に摺動自在に支持されている。ガイドフレーム45の端部39は、ガイドフレーム45が上方へ向かって略直角に曲折されたものであり、幅方向121へ延出されている。キャリッジ41は、この端部39を不図示の高摺動性の樹脂部材等によって挟持している。これにより、キャリッジ41は、端部39を基準として幅方向121への移動が可能である。
【0048】
[ベルト駆動機構46]
図3及び図4に示されるように、ガイドフレーム45の上面にベルト駆動機構46が設けられている。ベルト駆動機構46は、駆動プーリ47、従動プーリ48、及びベルト49を有している。駆動プーリ47及び従動プーリ48は、幅方向121の両端付近にそれぞれ設けられている。ベルト49は、内側に歯が設けられた無端環状のものであり、駆動プーリ47と従動プーリ48との間に架け渡されている。
【0049】
駆動プーリ47の軸にCRモータ86(図4参照)が接続されている。駆動プーリ47は、CRモータ86の駆動力を受けて回転する。この駆動プーリ47の回転力によってベルト49が周運動する。キャリッジ41は、このベルト49に固定されているので、ベルト49が周運動することによって幅方向121へ移動する。
【0050】
[エンコーダストリップ51、光学センサ52]
図3及ぶ図4に示されるように、ガイドフレーム45には、エンコーダストリップ51が設けられている。エンコーダストリップ51は、キャリッジ41の幅方向121における移動範囲にわたって架設されている。エンコーダストリップ51は、透明な樹脂からなる帯状のものである。エンコーダストリップ51には、光を遮る遮光部と、光を透過させる透光部とが等ピッチで交互に並んだパターンが記されている。キャリッジ41には、このエンコーダストリップ51のパターンを検出するための光学センサ52が搭載されている。
【0051】
光学センサ52は、発光素子及び受光素子が奥行き方向123に所定の間隔が隔てられて対向して配置されたものである。光学センサ52は、発光素子と受光素子との間の空間にエンコーダストリップ51が位置するように設けられている。光学センサ52の受光素子で光が受光されると、受光した光の輝度に応じたレベルの電気信号が光学センサ52で生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置している状態では、LOWレベルの電気信号が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置していない状態では、HIレベルの電気信号が生成される。すなわち、光学センサ52によってエンコーダストリップ51のマークが検出される毎にパルス信号が生成される。このパルス信号は、制御部100へと出力される。
【0052】
[記録ヘッド42]
図2及び図4に示されるように、記録ヘッド42は、そのノズルがキャリッジ41の下面から露出されている。ノズルは、幅方向121及び奥行き方向123に多数並べられている。この記録ヘッド42には、プリンタ部11の内部に配置されたインクカートリッジ(不図示)からインクが供給される。搬送ローラ60及び排紙ローラ62が間欠して記録用紙50がプラテン43上で静止される毎に、キャリッジ41が幅方向121へ移動される。このキャリッジ41と共に記録ヘッド42も幅方向へ移動され、その移動の間に、記録ヘッド42のノズルから微小なインク滴がプラテン43上の記録用紙50へ向けて選択的に噴出される。そして、搬送ローラ対59及び排出ローラ対64によって所定の改行幅だけ記録用紙50が搬送向き124へ搬送される。このような記録用紙50の間欠搬送と、キャリッジ41の移動とが交互に繰り返されながら、記録ヘッド42によって記録用紙50に画像が記録される。
【0053】
図2に示されるように、キャリッジ41には用紙検出センサ32が設けられている。用紙検出センサ32は、キャリッジ41の下面に露出されており、記録ヘッド42より搬送向き124の上流側に配置されている。用紙検出センサ32は、反射型の光学センサである。同図には詳細に現れていないが、用紙検出センサ32は発光素子と受光素子とを有する。この発光素子から光が高さ方向122の下方へ照射され、用紙検出センサ32の高さ方向122からの反射光を受光素子が受光する。そして、用紙検出センサ32は、受光素子の受光レベルに対応した電気信号を出力する。用紙検出センサ32は、一定の強さの照射光の下で反射光の強さ、すなわち用紙検出センサ32に対向する領域の反射率に応じた電気信号を出力していることとなる。この反射率が、本発明における物理量に相当する。この用紙検出センサ32が、本発明における第2検出手段に相当する。
【0054】
[LFモータ85]
図6に示されるように、プリンタ部11には、LFモータ85が設けられている。LFモータ85は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62を回転制御しつつ回転させるものである。LFモータ85としては、例えばDCモータが挙げられる。このLFモータ85が、本発明における駆動源に相当する。
【0055】
LFモータ85の出力軸75は、その外周に平歯が形成されており、伝達ギヤ77と噛合している。伝達ギヤ77は、平歯ギヤであり、搬送ローラ60の軸76に同軸に連結されており、軸76と同期して回転する。伝達ギヤ77によって、LFモータ85の回転が搬送ローラ60の軸76に伝達される。この伝達ギヤ77が、本発明における駆動伝達機構に相当する。
【0056】
伝達ギヤ77は、伝達ギヤ78と噛合されている。この伝達ギヤ78には、不図示の伝達ギヤがさらに直列に連結されており、最終的に排紙ローラ62の軸に連結されている。これにより、LFモータ85の回転が、排紙ローラ62の軸にも伝達されて、搬送ローラ60と排紙ローラ62とが同期して回転される。
【0057】
搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、記録部40による画像記録が行われる際には、LFモータ85によって間欠駆動される。間欠駆動とは、所定の目標搬送量に相当する回転量だけ搬送ローラ60及び排紙ローラ62が回転するまでLFモータ85が連続して駆動され、目標搬送量に到達すると所定時間だけLFモータ85が停止され、これらを交互に繰り返す駆動方式である。
【0058】
搬送路19に供給された記録用紙50が搬送ローラ60及びピンチローラ61の間に到達すると、その記録用紙50は、搬送ローラ60とピンチローラ61とに挟持された状態で、搬送ローラ60の回転力を受けてプラテン43上へ送り出される。この記録用紙50が排紙ローラ62及び拍車63の間に到達すると、その記録用紙50は、排紙ローラ62と拍車63とに挟持された状態で、排紙ローラ62の回転力を受けて給紙カセット22の上方へ送り出される。
【0059】
このように、記録用紙50は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の少なくとも一方の回転力を受けてプラテン43上を搬送される。その際、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が間欠駆動されているので、記録用紙50は、搬送路19に沿って間欠搬送される。そして、間欠搬送において記録用紙50がプラテン43上に静止された間に、記録部40による画像記録が行われる。
【0060】
なお、記録部40による画像記録が行われていない間は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が間欠駆動される必要はない。したがって、記録ヘッド42による記録動作の開始前や記録動作が完了した後は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が連続して回転される。
【0061】
[伝達ギヤ77]
図5及び図6に示されるように、伝達ギヤ77において、キャリッジ41側を向く面79には、突部80が設けられている。この突部80は、伝達ギヤ77の所定の回転位相に配置されて、面79からキャリッジ41の移動方向である幅方向121へ突出されている。突部80は、面79に対して所定の傾斜角度をなす傾斜面81,82と、傾斜面81,82間に配置されて面79と平行な面83とを有する。この傾斜面81,82は、伝達ギヤ77の周方向に概ね沿って傾斜した面である。
【0062】
[被検知部材90]
図5に示されるように、プラテン43上における伝達ギヤ77が配置された端部付近に、被検知部材90が配置されている。この被検知部材90は、伝達ギヤ77の突部80によって動作されるものである。
【0063】
図7に示されるように、被検知部材90は、検出子91、レバー92、支持部材93及びコイルバネ94,95を主要な構成とする。支持部材93は、プラテン43の上面に固定されている。この支持部材93に、検出子91及びレバー92が幅方向121へスライド移動可能に組み付けられている。支持部材93は、幅方向121に離間された壁111,112を有する。検出子91及びレバー92は、これら壁111,112の間で幅方向121へスライド可能である。
【0064】
レバー92は、第1当接片96と第2当接片97とが軸98によって連結されてなる。第1当接片96と第2当接片97とは、幅方向121へ離間されて配置されており、軸98は幅方向121に沿って延びている。この軸98の両端に第1当接片96と第2当接片97とがそれぞれ連結されている。第1当接片96及び第2当接片97は、第2当接片97を伝達ギヤ77側として配置されている。レバー92が幅方向121へスライドされる範囲において、第1当接片96が支持部材93の壁111と当接し得る。第1当接片96が支持部材93の壁111と当接する位置が、第1当接片96が、幅方向121の中央側(図3及び図7における右側)へスライド可能な範囲の端である。第2当接片97と支持部材93の壁112との間には、コイルバネ94が設けられている。第2当接片97及び壁112は、コイルバネ94のバネ座として機能する。コイルバネ94は、第2当接片97と支持部材93の壁112との間に介設された状態において圧縮されている。このコイルバネ94によって、レバー92は、幅方向121の中央側へ付勢されている。
【0065】
検出子91は、レバー92の軸98に組み付けられて幅方向121へスライド可能である。詳細には、検出子91は、軸98に摺動自在に設けられる支持部113と、支持部113から幅方向121へ延出された検知部114とを有する平面視がT字形状の部材である。支持部113は、厚み方向(幅方向121)に貫通する貫通孔(不図示)が形成されている。この貫通孔に軸98が挿通されることによって、支持部113が軸98に摺動自在に組み付けられている。支持部113は、軸98から径方向へ突出されて、搬送向き124に沿った方向及び高さ方向122へ延びる平板形状である。
【0066】
支持部113の延出端に検知部114が連結されている。検知部114は、支持部113の延出端から幅方向121の両側へ突出されて、幅方向121及び高さ方向122へ延びる平板形状である。検知部114は、用紙検出センサ32が検知部114と対向しているときと、プラテン43の上面と対向しているときとで異なる電気信号を出力するよう、検知部114とプラテン43の上面との反射率が異なるように構成されている。これは、検知部114とプラテン43の上面との対比において表面粗さが異なっていたり、面の角度が異なっていたり、表面の材質が異なっていたりすることによって実現される。本実施形態では、検知部114とプラテン43の上面とが異なる色に着色されることによって反射率が変化されている。具体的には、プラテン43の上面が黒色に着色されており、検知部114は、白色に着色されている。
【0067】
レバー92の第1当接片96と検出子91の支持部113との間にコイルバネ95が介設されている。このコイルバネ95は、軸98に外嵌されている。第1当接片96及び支持部113は、コイルバネ95のバネ座として機能する。コイルバネ95は、第1当接片96と支持部113との間に介設された状態において圧縮されている。このコイルバネ95によって、検出子91は、幅方向121の外側(伝達ギヤ77側:図3及び図7における左側)へ付勢されている。
【0068】
図7(A)に示されるように、被検知部材90に何ら外力が付与されていない状態では、レバー92は、コイルバネ94に付勢されて幅方向121の中央側へスライドされて、第1当接片96が支持部材93の壁111と当接している。また、検出子91は、コイルバネ95に付勢されて幅方向121の外側へスライドされて、支持部113がレバー92の第2当接片97と当接している。また、この状態において、検出子91の検知部114とレバー92の第1当接片96との間には、隙間115が形成されている。
【0069】
図7(B)に示されるように、キャリッジ41がエンドポジション(図3に示される位置)へ位置されると、キャリッジ41の当接部53がレバー92の第1当接片96と当接して、コイルバネ94の付勢力に抗して第1当接片96を幅方向121の外側(図7における左側)へスライドさせる。このレバー92のスライドに伴って、検出子91もレバー92とともに幅方向121の外側へスライドされる。この状態において、隙間115を維持されており、エンドポジションに位置されたキャリッジ41において、そのキャリッジ41に搭載された用紙検出センサ32が検知する位置が隙間115に対応する。つまり、用紙検出センサ32は、隙間115を通じてプラテン43の上面によって反射された反射光を検知する。
【0070】
図7(C)に示されるように、伝達ギヤ77の突部80が検出子91の検知部114に当接すると、コイルバネ95の付勢力に抗して、突部80の傾斜面81に沿って検知部114がスライド方向121の中央側(図7における右側)へスライドされ、突部80の面83が検知部114に当接すると、隙間115が閉じられる。この状態において、エンドポジションに位置されたキャリッジ41において、そのキャリッジ41に搭載された用紙検出センサ32が検知する位置が検知部114に対応する。つまり、用紙検出センサ32は、検知部114によって反射された反射光を検知する。
【0071】
[制御部100]
図8に示される制御部100は、プリンタ部11のみならず、複合機10の全体動作を統括的に制御するものである。制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)109を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。この制御部100が本発明における被記録媒体検出手段、原点決定手段、補正手段、制御手段として機能する。なお、図8では、各モータ85,86,87からの駆動力の伝達経路が破線で示されている。
【0072】
ROM102には、CPU101がモータ85,86,87や複合機10を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又はデータ処理などの作業領域として使用される。このRAM103には、搬送ローラ60の現在の回転位相(以下、「現在位相θ」という。)が格納されている。この現在位相θは、搬送ローラ60が回転される毎に適宜更新される。EEPROM104は、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等を記憶する。このEEPROM104には、後述する補正値関数A(θ)が格納されている。補正値関数A(θ)は、搬送ローラ60の現在位相θと、搬送ローラ60の回転量あたりの記録用紙50の搬送量の補正値との対応関係を規定した関数である。補正関数A(θ)は、変数θを代入することによって一つの補正値を返すような対応関係である。これらの補正関数はテーブルの形で記憶されていてもよいし、多項式やその他の規則の形で記憶されていてもよい。多項式で記憶されている場合には、多項式の形がROM102に記憶されて、多項式の各項の係数のみがEEPROM104に記憶されていてもよい。本実施形態では、EEPROM104が本発明における記憶手段として機能する。
【0073】
ASIC109には、用紙検出センサ32、駆動回路72,73,74、リニアエンコーダ88、及びロータリーエンコーダ89が接続されている。なお、制御部100には、スキャナ部12や操作パネル14などが接続されているが、これらは本発明の趣旨には直接関係しないので、ここでは説明が省略される。
【0074】
駆動回路72は、LFモータ85を駆動させるものである。LFモータ85には、伝達ギヤ77,78などを介して搬送ローラ60の軸76及び排紙ローラ62の軸が連結されている。駆動回路72は、ASIC109からの出力信号を受けてLFモータ85を駆動させる。LFモータ85の駆動力は軸76などに伝達され、搬送ローラ60と排紙ローラ62とが同期して回転する。搬送路19に供給された記録用紙50は、搬送ローラ60又は排紙ローラ62の回転力を受けて搬送路19に沿って搬送された後、給紙カセット22の上面23に排出される。また、搬送ローラ60には、伝達ギヤ77を介して被検知部材90が連結されている。搬送ローラ60が回転されると、その回転に同期して被検知部材90の検出子91が幅方向121へスライドされる。
【0075】
駆動回路73は、ASIC109からの出力信号を受けてCRモータ86を駆動させる。CRモータ86の駆動力は、ベルト駆動機構46を介してキャリッジ41に伝達される。これにより、キャリッジ41が幅方向121へ移動する。
【0076】
駆動回路74は、ASFモータ87を駆動させるものである。ASFモータ87は、不図示の駆動伝達機構を介して、給紙ローラ25又は給紙ローラ35と連結される。駆動回路74は、ASIC109からの出力信号を受けてASFモータ87を回転させる。そして、駆動伝達機構が、ASFモータ87の駆動力を選択的に給紙ローラ25又は給紙ローラ35へ伝達する。給紙カセット21又は給紙カセット22内の最上位置の記録用紙50は、給紙ローラ25又は給紙ローラ35の回転力を受けて搬送路18,19へ供給される。
【0077】
用紙検出センサ32は、受光素子が受光した光量に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号)を出力する。制御部100は、用紙検出センサ32から出力された信号の電気的なレベル(電圧値又は電流値)が所定の閾値以上の場合にHIレベル信号と判定し、所定の閾値未満の場合にLOWレベル信号と判定する。本実施形態では、用紙検出センサ32から出力される信号は、白色の記録用紙50や検出子90の検知部114からの反射光を受光しているときにHIレベル信号と判定され、黒色のプラテン43の上面からの反射光を受光しているときにLOWレベル信号と判定される。
【0078】
リニアエンコーダ88は、エンコーダストリップ51のパターンを、キャリッジ41に搭載された光学センサ52により検出し、パルス信号を出力するものである。制御部100は、この出力されるパルス信号に基づいて、キャリッジ41の速度及び位置を判断し、CRモータ86の駆動を制御する。
【0079】
ロータリーエンコーダ89は、エンコーダディスク71のマークを光学センサ55により検出し、パルス信号を出力する。制御部100は、この出力されるパルス信号に基づいて搬送ローラ60の回転量を判断し、LFモータ85の駆動を制御する。
【0080】
ところで、プリンタ部11において記録用紙50が高精度に搬送されるためには、ロータリーエンコーダ89によって検出される搬送ローラ60の回転量と、搬送ローラ60による記録用紙50の実際の搬送量との間に線形性が成り立っていることが好ましい。搬送ローラ60と記録用紙50との間に滑りがなければ、記録用紙50の搬送量は搬送ローラ60の表面の移動量と一致するが、回転体の表面の移動量は回転半径と回転角度の積であるから、搬送ローラ60の回転半径がばらつけば、結果として記録用紙50の搬送量がばらついてしまう。これは排紙ローラ62についても同様である。
【0081】
図9(A)には、搬送ローラ60の軸76に偏心したエンコーダディスク71が取り付けられた状態が示されている。このようなエンコーダディスク71の偏心、搬送ローラ60の反りやコーティングの厚みムラ、搬送ローラ60の軸76に噛合された伝達ギヤ77の偏心などが原因で、ロータリーエンコーダ89によって検出される回転量あたりの搬送ローラ60による記録用紙50の搬送量は、搬送ローラ60の1周分を1周期として、周期的に変動する(図9(B)参照)。図9に示される例では、エンコーダディスク71の位置Bが検出されているときに、ロータリーエンコーダ89から出力されるパルス信号あたりの記録用紙50の搬送量が多い。逆に、エンコーダディスク71の位置Dが検出されているときに、ロータリーエンコーダ89から出力されるパルス信号あたりの記録用紙50の搬送量が少ない。このように、搬送ローラ60による記録用紙50の搬送量が周期的に変動する。
【0082】
このため、制御部100は、搬送ローラ60の搬送量の周期的変動を抑制するために、LFモータ85の駆動を制御して搬送ローラ60による記録用紙50の搬送量が一様となるように補正する。EEPROM104には、この回転量の補正処理に使用される補正値関数A(θ)が記憶されている。以下、この補正値関数A(θ)を取得する処理について説明する。なお、この補正値関数A(θ)は、複合機10の工場出荷前に取得されてEEPROM104に予め書き込まれる。ただし、補正値関数A(θ)は、ユーザが複合機10の使用開始時に、説明書や操作パネル14に表示される指示に従って所定操作を行うことによってEEPROM104に書き込まれてもよい。
【0083】
[補正値関数A(θ)の取得]
本実施形態では、搬送ローラ60が1周したときに記録用紙50が1.2インチ送られるように、搬送ローラ60が構成されている。また、記録ヘッド42のノズルの搬送向き124の密度は150dpi(dot per inch)である。これは、1/150インチの等間隔でノズルが並んでいることを表す。エンコーダディスク71が1回転すると、ロータリーエンコーダ89から8640個のパルス信号が出力されるものとする。
【0084】
制御部100は、ASFモータ87の駆動を制御して給紙カセット21又は給紙カセット22から記録用紙50を搬送路19に供給する。そして、制御部100は、記録部40の動作を制御して、記録用紙50の先端側に幅方向121に長い1本の線を記録部40によって記録させる(図10(A)参照)。具体的には、制御部100は、キャリッジ41を幅方向121の一端側から他端側へ第1距離だけ移動させつつ、記録ヘッド42の搬送向き124の最上流側のノズル(第1ノズル)からインクを噴出させる。このようにして記録用紙50の先端側に1本の長線が引かれると、制御部100は、LFモータ85の駆動を制御して、0.57インチに相当するパルス信号分だけ記録用紙50を搬送させる。具体的には、制御部100は、ロータリーエンコーダ89から4104(=8640/1.2×0.57)個のパルス信号が出力されるまでLFモータ85を駆動させて、搬送ローラ60に記録用紙50を搬送させる。LFモータ85は、ロータリーエンコーダ89から出力されたパルス信号数が4104個に到達した後に停止される。
【0085】
次に、制御部100は、記録用紙50に幅方向121に短い1本の短線を記録部40によって記録させる(図10(B)参照)。具体的には、制御部100は、キャリッジ41を幅方向121の一端側から他端側へ第1距離よりも短い第2距離だけ移動させつつ、記録ヘッド42の搬送向き124の最上流側から91番目のノズル(第91ノズル)からインクを噴出させる。記録ヘッド42の搬送向き124の密度が150dpiであるため、第1ノズルと第91ノズルとの搬送向き124の離間距離は、0.6(=(91−1)/150)インチである。このため、第91ノズルと上記長線とは、理想的には、搬送向き124に0.03(=0.6−0.57)インチ離間されている。
【0086】
制御部100は、記録部40に短線を引かせる動作と、LFモータ85に0.01インチに相当するパルス信号分(8640/1.2×0.01)だけ記録用紙50を搬送させる動作とを交互に繰り返す。これにより、記録用紙50に7本の短線が記録される(図10(C)参照)。なお、これらの7本の短線の幅方向121の位置が異なるように、記録ヘッド42による記録動作は、キャリッジ41の幅方向121の位置が変更されながら行われる。
【0087】
そして、制御部100は、前回記録した長線から0.1インチ進んだ位置に長線を記録させ、その長線に対して7本の短線を記録する処理を繰り返す(図10(D)参照)。このような1本の長線と7本の短線とを記録する処理が1パターンとして繰り返されることによって、合計12個のパターンが記録用紙50に記録される(図11(A)参照)。なお、記録用紙50を常に同じ方向のみに搬送してパターンを形成するには、各長線及び短線の記録の順番は、上記の説明に対して前後する場合がある。記録用紙50を常に同じ方向のみに搬送してパターンを形成する場合には、例えば1本目の長線から0.1インチ進んだ位置に記録される2本目の長線は、1本目の長線から0.57インチ進んだ位置に記録される1本目の長線付随の1本目の短線よりも先に記録される。後述の、記録用紙50の搬送量と搬送ローラ60の位相との関係を求める操作において、パターンが記録された順番は結果に影響を及ぼさない。記録された各線が所定の相対的位置関係になればよい。
【0088】
続いて、各パターンにおいて、長線に最もよく重なる短線が何本目の短線であるか、或いは短線の間であるかが判断される。具体的には、記録用紙50がスキャナ部12のコンタクトガラス上に載置されて、記録用紙50の画像読取をスキャナ部12に実行させる。そして、何本目の短線或いは短線の間が長線に最もよく重なるかを制御部100が判断する。この判断処理は、各パターンにおいてそれぞれ行われる。ここで、各長線に付随する短線に左から順に1,2,3,4,5,6,7と番号を与えると、図11(A)に示される記録用紙50であれば、図11(A)における上側の長線から順に、3,2.5,2,3,4,4,5,6,6.5,6,4,3.5と判断することができる。なお、長線が2本の短線の間である場合には、2本の短線の番号の平均値が用いられる。
【0089】
第1ノズルと第91ノズルとは、搬送向き124に0.6インチだけ離れている。このため、上記数値が4である場合には、0.6(=0.57+0.01×(4−1))インチの目標搬送量に対して、実際に記録用紙50が0.6インチ搬送されたことを示している。上記数値が3である場合には、0.59(=0.57+0.01×(3−1))インチの目標搬送量に対して、実際には記録用紙50が0.6インチ搬送されたことを示している。これは、図9(A)における位置B側の搬送ローラ60の周面によって記録用紙50が搬送されたことを表している。上記数値が5である場合には、0.61(=0.57+0.01×(5−1))インチの目標搬送量に対して、実際には記録用紙50が0.6インチ搬送されたことを示している。これは、図9(A)における位置D側の搬送ローラ60の周面によって記録用紙50が搬送されたことを表している。
【0090】
横軸に1/12周(720パルス)刻みでパルス数を割り当て、縦軸にパルス数当たりの搬送量を目標搬送量に対する割合で表せば、図9(B)に相当するグラフが得られる(図11(B)参照)。すなわち、搬送ローラ60が1周する間に、記録用紙50の搬送量が目標搬送量に対してどのようにずれるかを把握することができる。
【0091】
図11(A)に示されるパターンを記録用紙50に記録したときの最初の長線を記録したときのエンコーダディスク71の回転位相に対して、現在のエンコーダディスク71がどれだけ回転したかは、ロータリーエンコーダ89によって搬送ローラ60の回転を検出している限り把握することができる。したがって、記録用紙50の搬送命令が入力されたときに、前述のグラフから、現在の位置から搬送完了後の位置までの搬送ローラ60の搬送量の平均ズレを算出し、予めその影響を考慮して目標搬送量を補正すれば、記録用紙50の搬送量の周期的変動を抑制することができる。
【0092】
なお、最初の長線を記録したときのエンコーダディスク71の回転位相は、後述される搬送ローラ60の原点位置と一致しているか、または、原点位置から所定の位相差の位置に管理されている。本実施形態では、図11(B)に示されるグラフに基づいて記録用紙50の目標搬送量を補正するための補正値関数A(θ)が生成され、EEPROM104に記憶されている。このため、複合機10の電源が切られてから再投入された場合でも、搬送ローラ60の物理的な原点を検出することにより、搬送ローラ60の回転量を適切に補正することが可能である。
【0093】
[原点位置の決定]
以下、複合機10の電源が投入された際にプリンタ部11において行われる処理の手順が、図12のフローチャートが参照されながら説明される。なお、以下のフローチャートに基づいて説明する各処理は、ROM102に記憶されているプログラムに基づいて制御部100が発行する命令に従って行われる。
【0094】
制御部100は、操作パネル14の所定の入力キーの操作の有無に基づいて、複合機10の電源が投入されたか否かを判断する(S1)。複合機10の電源が投入されていないと制御部100が判断した場合(S1:NO)、待機状態となる。制御部100は、複合機10の電源が投入されたと判断した場合(S1:YES)、駆動回路73を制御してCRモータ86を駆動させる(S2)。なお、制御部100は、複合機10の電源がオフにされると、キャリッジ41をホームポジションへ移動させている。このホームポジションは、キャリッジ41の往復動範囲において、伝達ギヤ77と反対側の端である(図3における右側)。なお、伝達ギヤ77が配置されている側のキャリッジ41の往復動範囲の端が、エンドポジションと称される(図3における左側)。このエンドポジションが、本発明における検知位置に相当する。
【0095】
CRモータ86が駆動されると、ホームポジションに位置されていたキャリッジ41がエンドポジションへ向かって移動する。制御部100は、リニアエンコーダ88の検出結果に基づいて、キャリッジ41がエンドポジションに到達したか否かを判断する(S3)。キャリッジ41がエンドポジションへ到達するまでCRモータ86が駆動される。そして、キャリッジ41がエンドポジションへ到達すると(S3:YES)、制御部100は、CRモータ86を停止する(S4)。
【0096】
キャリッジ41がエンドポジションに位置されると、制御部100は、フラッシングを行う(S5)。このフラッシングは、必ずしも行われなくてもよいが、以下の動作においてエンドポジションにキャリッジ41が停止される時間が長ければ、その間において記録ヘッド42の乾燥やノズルの詰まりを防止すべく、必ず行われることが好ましい。
【0097】
キャリッジ41がエンドポジションに位置されると、図7(B)に示されるように、キャリッジ41の当接部53がレバー92の第1当接片96と当接してレバー92がスライドされ、キャリッジ41に搭載された用紙検出センサ32は、隙間115を通じてプラテン43の上面によって反射された反射光を検知可能となる。この位置において、制御部100は、用紙検出センサ32をオンにする(S6)。ただし、用紙検出センサ32は、この時点より前の他の時点で既にオンにされていても構わない。
【0098】
ところで、前述されたようにキャリッジ41がエンドポジションに位置されたときに(S3)、伝達ギヤ77の突部80の面83が被検知部材90の検出子91に当接することが起こり得る。このような場合、図7(C)に示されるように、被検知部材90において隙間115が形成されず、用紙検出センサ32は検知部114を検知することとなる。そうすると、用紙検出センサ32から出力された信号がHIであると判定される(S7:YES)。
【0099】
制御部100は、用紙検出センサ32から出力された信号をHIと判定すれば、LFモータ85を駆動させて搬送ローラ60を1周の1/N(Nは1以外の自然数)だけ回転させて(S8)、LFモータ85を停止するとともに(S9)、フラッシングを終了する(S10)。これにより、伝達ギヤ77は、突部80が被検知部材90の検出子91に接しない回転位置で停止される。搬送ローラ60を回転させる1周の1/Nの回転量は、1周期の整数倍以外であれば任意に設定されればよい。
【0100】
続いて、制御部100は、キャリッジ41を一端をホームポジションへ戻し(S11)、再びキャリッジ41をエンドポジションへ位置させる(S3)。これにより、伝達ギヤ77の突部80が被検知部材90の検出子91と当接しない状態で、キャリッジ41がエンドポジションに位置される。
【0101】
制御部100は、用紙検出センサ32から出力された信号をLOWと判定すれば(S7:NO)、LFモータ85を駆動させる(S12)。LFモータ85が駆動されると、伝達ギヤ77が回転し、搬送ローラ60及び排紙ローラ62も回転する。伝達ギヤ77が所定の回転位相となると、突部80が被検知部材90の検出子91に当接する。詳細には、突部80の傾斜面81,82のいずれかが検出子91の検知部114に当接し、伝達ギヤ77がさらに回転されることによって、その傾斜面81,82の一方から面83へ検出子91の検知部114が移動する。これにより、検知部114が、突部80によってホームポジション側へ押しやられるようにスライドされて隙間115が閉じられる(図7(C)参照)。このような突部80と被検知部材90の検出子91との当接は、伝達ギヤ77が1周回転される毎に1回生じる。
【0102】
制御部100は、LFモータ85が駆動されている間、用紙検出センサ32の出力の変化を監視する。前述されたように、伝達ギヤ77には1箇所の突部80があり、伝達ギヤ77が1回転すると、突部80が被検知部材90の検出子91に1回当接する。被検知部材90の検出子91がホームポジション側へ移動すると、隙間115が閉じられ、それまで隙間115を通じてプラテン43の上面からの反射光を受光していた用紙検出センサ32は、検出子91の検知部114から反射光を受光する。したがって、伝達ギヤ77が1回転する間に、用紙検出センサ32の出力の判定はLOWからHIへ、そして再びLOWへ変動する。
【0103】
制御部100は、用紙検出センサ32の出力の判定がLOWからHIに変化する所謂信号の「立ち上がり」を検出すると(S13:YES)、このときのロータリーエンコーダ89の現在位相θを0すなわち原点として、その後のこの位置からのロータリーエンコーダ89のを累積することで各時点での搬送ローラ60の現在位相θが定義される(S16)。この搬送ローラ60の原点位置を示す情報は、RAM103に格納される。なお、本実施形態では、信号の立ち上がり位置を原点とするように設定されているが、信号の立ち下がり位置や、立ち下がり位置と立ち上がり位置の中間点など、伝達ギヤ77が1回転される間に一度だけ現れる特徴点であれば、どのような特徴点を原点として用いても構わない。
【0104】
続いて、制御部100は、ロータリーエンコーダ89の検出結果とRAM103に格納されている原点位置を示す情報とに基づいて、搬送ローラ60の現在の現在位相θが原点位置となったか否かを判断する(S17)。搬送ローラ60の現在位相θが原点位置となっていないと制御部100が判断した場合(S17:NO)、制御部100は、搬送ローラ60の現在位相θが原点位置となるまで、LFモータ85を駆動する。制御部100は、搬送ローラ60の現在位相θが原点位置になったと判断した場合(S17:YES)、LFモータ85を停止し(S18)、フラッシングを終了する(S19)。
【0105】
制御部100は、用紙検出センサ32の出力をHIと判定することなく(S13:NO)、搬送ローラ60が1周回転されると、具体的には、制御部100がロータリーエンコーダ89から出力されたパルス信号数が8640個に達したと判断すると(S14:YES)、被検知部材90の検出子91が検出できなかったとして、操作パネル14のディスプレイにエラー表示を行って(S15)、LFモータ85を停止して(S18)、フラッシングを終了する(S19)。
【0106】
[記録用紙50の搬送動作]
以下、複合機10に対して記録開始命令が入力された場合に、プリンタ部11において行われる処理の手順が、図13のフローチャートが参照されながら説明される。
【0107】
制御部100は、記録開始命令があったか否かを判断する(S21)。具体的には、制御部100は、外部情報機器から記録開始を指示するコマンド及び印刷データを受信したか否か、或いは、操作パネル14において記録開始を指示する操作入力が行われたか否かを判断する。記録開始命令がないと制御部100が判断した場合(S21:NO)、待機状態となる。
【0108】
制御部100は、記録開始命令があったと判断した場合(S21:YES)、EEPROM104から補正値関数A(θ)を読み出す(S22)。制御部100は、RAM103から搬送ローラ60の現在位相θを読み出す(S23)。この現在位相θは、搬送ローラ60の原点位置からの回転向きの角度を示すものである。次に、制御部100は、記録用紙50を目標位置まで搬送させる間にロータリーエンコーダ89から出力されるパルス信号数である目標回転量Xmを取得する(S24)。そして、制御部100は、ステップS22で読み出した補正値関数A(θ)に現在位相θを代入して、パルス信号数を表す補正値Cを演算する(S25)。
【0109】
制御部100は、ステップS24の処理で取得した目標回転量Xmに補正値Cを加えて、目標回転量Xmを補正する(S26)。そして、制御部100は、補正された目標回転量Xmに基づいて、現在位相θを更新する(S27)。なお、現在位相θは搬送ローラ60の原点位置からの回転向きの角度であるから、その値が2πを超えた場合には、その値から2πが減算される。また、その値が負になった場合には、その値に2πが加算される。これにより、現在位相θが常に0≦θ≦2πの関係を満たすように、現在位相θの値が調整される。なお、ここでは、搬送ローラ60の位相を角度(ラジアン)で説明したが、角度に比例する別の単位で表現される形式で取り扱われても構わないのはもちろんである。
【0110】
次に、制御部100は、LFモータ85を駆動させる(S28)。そして、制御部100は、ロータリーエンコーダ89によって検出された搬送ローラ60の回転量が、ステップS26の処理によって補正された目標回転量Xmに達したか否かを判断する(S29)。具体的には、制御部100は、ロータリーエンコーダ89から出力されるパルス信号数が目標回転量Xmに達したか否かを判断する。搬送ローラ60の回転量が目標回転量Xmに達していないと制御部100が判断した場合(S29:NO)、処理がステップS28へ戻される。すなわち、搬送ローラ60の回転量が目標回転量Xmに達するまでLFモータ85が駆動される。
【0111】
搬送ローラ60が回転している間、ロータリーエンコーダ89によって検出される搬送ローラ60の回転量と、実際の搬送ローラ60の回転量との間には、搬送ローラ60の1周分を1周期とする周期的なズレが発生する。本実施形態では、複合機10の電源投入後に取得された搬送ローラ60の原点位置に基づいて搬送ローラ60の現在位相θが判断され、現在位相θに対応する補正値Cによって目標回転量Xmが補正されている。搬送ローラ60の回転量がこの補正後の目標回転量Xmに沿うようにLFモータ85の駆動が制御されるので、搬送ローラ60の回転量の周期的なズレが相殺され、記録用紙50は、目標とする位置まで精度良く搬送される。
【0112】
制御部100は、搬送ローラ60の回転量が目標回転量Xmに達したと判断した場合(S29:YES)、LFモータ85を停止させる(S30)。そして、制御部100は、記録部40に画像記録を実行させる(S31)。具体的には、制御部100は、キャリッジ41を幅方向121の一端側から他端側へ移動させつつ、記録ヘッド42からインクを噴出させる。
【0113】
制御部100は、記録用紙50の搬送動作が完了したか否かを判断する(S32)。記録用紙50の搬送動作が完了していないと制御部100が判断した場合(S32:NO)、処理がステップS24へ戻される。すなわち、ステップS24〜ステップ29の処理が繰り返される。これにより、搬送ローラ60を目標回転量Xmだけ回転させる処理と、記録用紙50に画像を記録する処理とが交互に繰り返されるので、記録用紙50に連続的な画像が記録される。記録用紙50の搬送動作が完了したと制御部100が判断した場合(S32:YES)、一連の処理が完了する。
【0114】
[本実施形態の作用効果]
以上に説明されたように、エンドポジションへ移動されたキャリッジ41に搭載された用紙検出センサ32が、搬送ローラ60の回転に同期してスライド移動される被検知部材90の検出子91を検出することによって、搬送ローラ60の原点位置が決定されるので、プリンタ部11が他の目的のために備える用紙検出センサ32や伝達ギヤ77などを有効活用して、装置の大型化及びコストアップを伴わずに搬送ローラ60の原点位置を決定することができる。
【0115】
また、本実施形態では、制御部100によって決定された原点位置を基準に求められた搬送ローラ60の現在位相θを、EEPROM104に記憶されている補正値関数A(θ)に適用して、搬送ローラ60の現在位相θに対応する補正値Cが取得される。この補正値Cによって目標回転量Xmが補正される。この補正後の目標回転量Xmだけ搬送ローラ60が回転されることによって記録用紙50の搬送量の周期的変動が抑制される。その結果、記録用紙50がほぼ一定の改行幅で間欠搬送されるので、乱れのない綺麗な画像を記録用紙50に記録することができる。
【0116】
また、本実施形態では、搬送ローラ60の原点位置が検出される間に、エンドポジションにおいて記録ヘッド42のフラッシングが行われるので、原点位置が検出される間に、記録ヘッド42のノズル付近が乾燥してインク詰まりが生じることが防止される。
【0117】
また、本実施形態では、キャリッジ41がエンドポジションへ移動されたときに、伝達ギヤ77の突部80が被検知部材90の検出子91と当接しているときには、つまり用紙検出センサ32が出力する信号がHIと判定されれば、搬送ローラ60を1周期の整数倍以外の回転量分だけ回転させ、キャリッジ41をホームポジションへ移動させてから再びエンドポジションへ移動させるので、伝達ギヤ77の突部80が被検知部材90の検出子91と当接していない状態にされる。これにより、確実に搬送ローラ60の原点位置が決定される。
【0118】
なお、本実施形態では、伝達ギヤ77に設けられた突部80によって被検知部材90の検出子91がスライドされる構成が開示されているが、本発明における駆動伝達機構は、ギヤやベルト、カムなどの公知の駆動伝達機構が採用されてもよい。
【0119】
また、本実施形態では、ロータリーエンコーダ89によって搬送ローラ60の回転量を検出する実施態様が説明されたが、ロータリーエンコーダ89に代えて例えば磁気センサを用いて搬送ローラ60の回転量が検出されてもよい。さらに、用紙検出センサ32が検出する物理量は、対向する領域の電場であったり、磁場であったりしてもよい。その場合、被検知部材90の検出子91は、他の部分に比べて異なる量に帯電していたり磁化されていたりすればよい。
【0120】
また、本実施形態では、用紙検出センサ32が出力する電気信号は、所定の閾値を境にHI−LOWの2値のいずれかに判定されて、その立ち上がり位置や立ち下がり位置を元にした特徴点に基づいて原点を決定する態様が説明されたが、用紙検出センサ32が出力する電気信号は、2値ではなく、例えば8ビット、16ビットなど複数ビットのデジタル値に変換されたり、アナログ値のまま扱われてもよく、また、信号の立ち上がりや立ち下がりではなく、最大値や最小値などその他の特徴点が用いられて原点が決定されても構わない。
【0121】
また、本実施形態では、LFモータ85がDCモータである実施態様が説明されたが、LFモータ85はステッピングモータであってもよい。この場合、ロータリーエンコーダ89は不要であり、制御部100におけるモータパルスカウントが、本発明における第1検出手段に相当する。
【0122】
また、本実施形態では、搬送ローラ60のみの目標回転量が補正されているが、記録用紙50が搬送ローラ60を抜けて排紙ローラ62のみによって搬送されるときには、搬送ローラ60の原点位置を基準として、搬送ローラ60の目標回転量の補正方法と同様に、排紙ローラ62の目標回転量を補正してもよい。、
【0123】
[第1変形例]
以下、上記実施形態の第1変形例が、図14が参照されつつ説明される。第1変形例は、上記実施形態における被検知部材90に代えて、別の構成の被検知部材130が採用されている点において、上記実施形態と異なる。その他の構成は、上記実施形態と同様であるので、ここでは、被検知部材130についてのみ詳細な構成が説明され、その他の構成についての詳細な説明が省略される。
【0124】
[被検知部材130]
各図には現れていないが、プラテン43上における伝達ギヤ77が配置された端部付近に、被検知部材130が配置されている。この被検知部材130は、伝達ギヤ77の突部80によって動作されるものである。
【0125】
図14に示されるように、被検知部材130は、検出子131、レバー132、支持部材133及びコイルバネ134,135を主要な構成とする。支持部材133は、プラテン43の上面に固定されている。この支持部材133に、検出子131及びレバー132が幅方向121へスライド移動可能に組み付けられている。支持部材133は、幅方向121に離間された壁128,129を有する。検出子131及びレバー132は、これら壁128,129の間で幅方向121へスライド可能である。
【0126】
レバー132は、第1当接片136と第2当接片137とが軸138によって連結されてなる。第1当接片136と第2当接片137とは、幅方向121へ離間されて配置されており、軸138は幅方向121に沿って延びている。この軸138の両端に第1当接片136と第2当接片137とがそれぞれ連結されている。第1当接片136及び第2当接片137は、第2当接片137を伝達ギヤ77側として配置されている。レバー132が幅方向121へスライドされる範囲において、第1当接片136が支持部材133の壁128と当接し得る。第1当接片136が支持部材133の壁128と当接する位置が、第1当接片136が、幅方向121の中央側(図14における右側)へスライド可能な範囲の端である。第2当接片137と支持部材133の壁129との間には、コイルバネ134が設けられている。第2当接片137及び壁129は、コイルバネ134のバネ座として機能する。コイルバネ134は、第2当接片137と支持部材133の壁129との間に介設された状態において圧縮されている。このコイルバネ134によって、レバー132は、幅方向121の中央側へ付勢されている。
【0127】
検出子131は、レバー132の軸138に組み付けられて回動方向125へ回動可能である。詳細には、検出子131は、支持部材133より搬送向き124の下流側に配置された軸139から支持部材133を超えるまで延出されており、かつ軸138に摺動自在に連結されている。検出子131の延出端は、幅方向122へ拡幅されており、伝達ギヤ77と対向する側に当接部140が形成されている。この当接部140は、伝達ギヤ77の突部80と当接し得る。検出子131とレバー132の軸138との連結構造は同図に現れていないが、検出子131には、その下方へ突出して幅方向121に貫通する貫通孔を有する連結部が形成されており、この連結部の貫通孔が軸138に挿通されることによって、検出子131が軸138に摺動自在に組み付けられている。
【0128】
検出子131は、用紙検出センサ32が検出子131と対向しているときと、プラテン43の上面と対向しているときとで異なる電気信号を出力するよう、検出子131とプラテン43の上面との反射率が異なるように構成されている。これは、検出子131とプラテン43の上面との対比において表面粗さが異なっていたり、面の角度が異なっていたり、表面の材質が異なっていたりすることによって実現される。本実施形態では、検出子131とプラテン43の上面とが異なる色に着色されることによって反射率が変化されている。具体的には、プラテン43の上面が黒色に着色されており、検出子131は、白色に着色されている。
【0129】
レバー132の第1当接片136と検出子131との間にコイルバネ135が介設されている。このコイルバネ135は、軸138に外嵌されている。第1当接片136及び検出子131は、コイルバネ135のバネ座として機能する。コイルバネ135は、第1当接片136と検出子131との間に介設された状態において圧縮されている。このコイルバネ135によって、検出子131は、幅方向121の外側(伝達ギヤ77側)へ回動するように付勢されている。
【0130】
図14(A)に示されるように、被検知部材130に何ら外力が付与されていない状態では、レバー132は、コイルバネ134に付勢されて幅方向121の中央側へスライドされて、第1当接片136が支持部材133の壁128と当接している。また、検出子131は、コイルバネ135に付勢されて第2当接片137に当接している。
【0131】
図14(B)に示されるように、キャリッジ41がエンドポジション(図3に示される位置)へ位置されると、キャリッジ41の当接部53がレバー132の第1当接片136と当接して、コイルバネ134の付勢力に抗して第1当接片136を幅方向121の外側(図14における左側)へスライドさせる。このレバー132のスライドに伴って、検出子131もレバー132とともに幅方向121の外側へ向かって回動される。この状態において、検出子131は、コイルバネ135に付勢されて第2当接片137に当接している。エンドポジションに位置されたキャリッジ41において、そのキャリッジ41に搭載された用紙検出センサ32が検知する位置は、前述された状態の検出子131より幅方向121の中央側の位置141である。つまり、用紙検出センサ32は、プラテン43の上面によって反射された反射光を検知する。
【0132】
図14(C)に示されるように、伝達ギヤ77の突部80が検出子131の当接部140に当接すると、コイルバネ135の付勢力に抗して、突部80の傾斜面81に沿って検出子131がスライド方向121の中央側(図14における右側)へ回動され、突部80の面83が検出子131に当接すると、検出子131が位置141の上側を覆う。これにより、エンドポジションに位置されたキャリッジ41に搭載された用紙検出センサ32は、検出子131によって反射された反射光を検知する。このような被検知部材130が採用されても、前述された実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0133】
[第2変形例]
以下、上記実施形態の第2変形例が説明される。第2変形例は、上記実施形態における被検知部材90に代えて、別の構成の被検知機構150が採用されており、また、伝達ギヤ77の突部80に代えて、搬送ローラ60の軸76にカム149が設けられている点において、上記実施形態と異なる。その他の構成は、上記実施形態と同様であるので、ここでは、被検知機構150及びカム149についてのみ詳細な構成が説明され、その他の構成についての詳細な説明が省略される。被検知機構150が、本発明における被検知部材に相当し、カム149が本発明における駆動伝達機構に相当する。
【0134】
[被検知機構150]
図15に示されるように、被検知機構150は、プラテン43の下側に配置されている。被検知機構150がプラテン43に対して幅方向121のいずれの位置に配置されるかについては特に限定されない。この被検知機構150は、キャリッジ41及びカム149によって動作されるものである。なお、図15においては、プラテン43及び窓33が破線で示されている。窓33は、プラテン43において幅方向121の両端のうち伝達ギヤ77側の端であって、搬送向き124に対して用紙検出センサ32に対応する位置に形成された貫通孔である。
【0135】
図15に示されるように、被検知機構150は、検出子151、リリースレバー152及びコイルバネ153,154を主要な構成とする。検出子151は、プラテン43の裏面側において幅方向121へスライド可能に支持されている。検出子151は、幅方向121に細長な平板形状であり、幅方向121の中央側(図15における右側)の端部が検知部155である。この検知部155は、用紙検出センサ32が検出子155と対向しているときと、検知部155以外の部分と対向しているときとで異なる電気信号を出力するよう、検知部155とそれ以外の部分との反射率が異なるように構成されている。本変形例では、検知部155が白色に着色されており、他の部分が黒色に着色されている。
【0136】
検出子151の幅方向121のほぼ中央において、搬送ローラ60の軸76側へ向かって突出する係合部156が形成されている。係合部156は、幅方向121の中央側(図15における右側)の面157が搬送向き124及び高さ方向122に沿った面である。一方、係合部156において、幅方向121の伝達ギヤ77側(図15における左側)の面158は、伝達ギヤ77側へ向くように傾斜されている。
【0137】
検出子151において搬送向き124の上流側の面は、係合部156に対して幅方向121の両側において搬送向き124に対する位置が異なる。係合部156より幅方向121の中央側の面147は、伝達ギヤ77側の面148より搬送向き124の下流側に配置されている。
【0138】
検出子151の幅方向121の伝達ギヤ77側の端には、プラテン43の上方へ突出する当接部159が設けられている。この当接部159は、プラテン43に形成された貫通孔31を通じて、プラテン43の上方へ突出されており、その突出端はキャリッジ43の側面に当接可能な位置に至っている。貫通孔31は、幅方向121へ幅広に形成されている。この貫通孔31の幅は、検出子151の幅方向121のスライドに伴って、当接部159が移動される領域を含むように設定されている。
【0139】
リリースレバー152は、3つの棒材160,161,162がZ形状に連結された部材である。棒材161は、プラテン43の下面から高さ方向122へ突出された軸163に回転自在に組み付けられている。棒材161の両端には、棒材160,162がそれぞれ連結されている。幅方向121において中央側(図15における右側)に連結された棒材160は、棒材161の一端からカム149へ向かって延出されている。この棒材160は、棒材161の回転に連動して、搬送向き124に沿ってカム149と接離する。幅方向121において伝達ギヤ77側(図15における左側)に連結された棒材162は、棒材161の他端から検出子151へ向かって延出されている。この棒材162は、棒材161の回転に連動して、搬送向き124に沿って検出子151と接離する。この棒材162の動作によって、リリースレバー152が、検出子151と係離する。
【0140】
検出子151における幅方向121の伝達ギヤ77側の端には、コイルバネ153の一端が連結されている。このコイルバネ153は、幅方向121に延出されて、その他端がプラテン43の下面から突出するバネ座164に連結されている。図15に示されるように、コイルバネ153は、自然長において、検出子151の検知部155をプラテン43の窓33より幅方向121の中央側へ位置させる。つまり、自然長のコイルバネ153によって、検知部155は窓33からずれた位置となる。このとき、当接部159は、貫通孔31における幅方向121の中央側に位置される。当接部159が貫通孔31における幅方向121の伝達ギヤ77側に位置されると、検知部155が窓33に合致する。つまり、プラテン43の上側から窓33を通じて検知部155が視認される。また、検出子151の係合部156がリリースレバー152と係合可能な位置となる。このとき、コイルバネ153は圧縮される。この圧縮されたコイルバネ153によって、検出子151が幅方向121の中央側へ弾性付勢される。
【0141】
リリースレバー152の棒材162における搬送向き124の下流側端には、コイルバネ154の一端が連結されている。このコイルバネ154は、搬送向き124に延出されて、その他端がプラテン43の下面から突出するバネ座165に連結されている。図15に示されるように、コイルバネ154は、棒材162を搬送向き124の下流側へ引っ張るように付勢する。これにより、棒材162の搬送向き124の下流側の端は、検出子151の上流側の面147又は面148と当接される。
【0142】
[カム149]
図16に示されるように、カム149は、搬送ローラ60の軸76から径方向外側へ突出する寸法が、軸76の回転位相によって異なる円盤形状であり、最も径方向外側へ突出する突部146が軸76の円周に対して1カ所形成されている。突部146以外の部分において、カム149は、リリースレバー152が後述されるいずれの姿勢にあっても、リリースレバー152の棒材160と当接しない。突部146は、リリースレバー152が後述されるロック姿勢となると、棒材160と当接して、リリースレバー152がリリース姿勢となるまで棒材160を搬送向き124へ移動させる寸法だけ径方向外側へ突出している。
【0143】
図15に示されるように、リリースレバー152は、通常の状態では、リリース姿勢にされている。カム149は、いずれの回転位相においても、リリース姿勢のリリースレバー152の棒材160に突部146が当接することがない。また、検出子151は、幅方向121の中央側にスライドされており、コイルバネ153は自然長である。また、検出子151の係合部156は、リリースレバー152の棒材162より幅方向121の中央側に位置しており、棒材162は、コイルバネ154に付勢されて検出子151の面148と当接している。
【0144】
図17に示されるように、キャリッジ41がエンドポジション(図3に示される位置)へ移動されると、キャリッジ41の側面が検出子151の当接部159と当接して、コイルバネ153を圧縮させながら、当接部159を貫通孔31に対して幅方向121の外側(図17における左側)へスライドさせる。この当接部159のスライドに伴って、検出子151が幅方向121の外側へスライドする。このスライド過程において、検出子151の係合部156がリリースレバー152の棒材162に当接する。詳細には、係合部156の面158が棒材162に当接し、棒材162は、面158によってコイルバネ154の付勢に抗して搬送向き124と反対向きへ押しやられる。そして、棒材162の搬送向き124の下流側の端が係合部156を超えると、コイルバネ154に付勢されて、棒材162が面147と当接するまで搬送向き124へ移動する。このような棒材162の移動に伴って、棒材160が一旦搬送向き124と反対向きへ移動した後に搬送向き124へ移動する。これにより、リリースレバー152がロック姿勢となる。ロック姿勢のリリースレバー152は、棒材162と係合部156とが係合することによって、コイルバネ153の付勢力に抗して、検出子151が幅方向121の中央側へ移動することを規制する。これにより、検出子151の検知部155が窓33に合致して、検知部155が窓33を通じてプラテン43の上側へ露出された状態が保持される。
【0145】
図18に示されるように、エンドポジションに位置されたキャリッジ41は、用紙検出センサ32を窓33の直上に位置させるように、ホームポジション側へ移動される。これにより、キャリッジ41が検出子151の当接部159から離れるが、前述されたように、ロック姿勢のリリースレバー152によって、検出子151は、窓33に検知部155を合致させた位置に保持される。そして、用紙検出センサ32がオンにされると、用紙検出センサ32が検知部155の反射光を検知する。このときの用紙検出センサ32の出力信号はHIと判定される。
【0146】
図19に示されるように、LFモータ85が駆動されて搬送ローラ60が回転されると、軸76に設けられたカム149も回転する。そして、カム149の突部146がリリースレバー152の棒材160に当接すると、コイルバネ154の付勢力に抗して、棒材160が搬送向き124へ移動される。これにより、リリースレバー152がロック姿勢からリリース姿勢に姿勢変化する。リリース姿勢のリリースレバー152において、棒材162の搬送向き124の下流側の端は、検出子151の係合部156より搬送向き124の上流側に位置される。つまり、棒材162と係合部156との係合が解除される。これにより、検出子151は、コイルバネ153の付勢力によって、幅方向121の中央側へスライドする。この検出子151のスライドによって、検知部155が窓33から外れて、窓33を通じて検出子151の検知部155以外の部分が露出される。窓33に対応する位置に停止されたキャリッジ41に搭載された用紙検出センサ32は、検出子151の検知部155以外の部分によって反射された反射光を検知する。このときの用紙検出センサ32の出力信号はLOWと判定される。
【0147】
制御部100は、前述されたように、搬送ローラ60の回転と同期して回転されるカム149によって、窓33を通じてプラテン43の上側に露出される検出子151の検知部155がスライドされ、用紙検出センサ32の出力信号の変化に基づいて搬送ローラ60の原点位置を検出することができる。このような被検知機構150が採用されても、前述された実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0148】
[第3変形例]
以下、上記実施形態の第3変形例が説明される。第3変形例は、上記実施形態における被検知部材90に代えて、ドラム170が採用されており、また、伝達ギヤ77の突部80に代えて、搬送ローラ60の軸76に平歯ギヤ171が形成され、この平歯ギヤ171と噛合する伝達ギヤ172が設けられている点において、上記実施形態と異なる。その他の構成は、上記実施形態と同様であるので、ここでは、被検知機構170、平歯ギヤ171及び伝達ギヤ172についてのみ詳細な構成が説明され、その他の構成についての詳細な説明が省略される。ドラム170が、本発明における被検知部材としての回転体に相当し、平歯ギヤ171及び伝達ギヤ172が、本発明における駆動伝達機構に相当する。なお、図20及び図21においては、ギヤの歯が省略されている。また、図20においては、キャリッジ41、プラテン43等が破線で示されている。
【0149】
[ドラム170]
図20及び図21に示されるように、ドラム170は、プラテン43の下側に配置されている。ドラム170は、円筒形状の部材であり、幅方向121を軸方向としてプラテン43の下面側に回転自在に支持されている。プラテン43の上面において、幅方向121の伝達ギヤ77側の一部が切り欠かれており、この位置に配置されたドラム170がプラテン43の上側に対して露出されている。ドラム170の搬送向き124に対する位置は、キャリッジ41に搭載された用紙検出センサ32に対応して配置されている。したがって、キャリッジ41が伝達ギヤ77付近に移動されると、ドラム170は、用紙検出センサ32に対向される。
【0150】
図21に示されるように、ドラム170の周面において、一部が着色されて検知部173が形成されている。この検知部173は、用紙検出センサ32が検知部173と対向しているときと、それ以外の部分と対向しているときとで異なる電気信号を出力するよう、検知部173とそれ以外の部分との反射率が異なるように構成されている。本実施形態では、検知部173が白色に着色されており、他の部分が黒色に着色されている。
【0151】
ドラム170の軸方向の一端側には、平歯ギヤ174が形成されている。また、搬送ローラ60の軸76には、平歯ギヤ171が設けられている。この平歯ギヤ171と平歯ギヤ174とは、搬送向き124に沿って一列に配置されている。この平歯ギヤ171と平歯ギヤ174とを連結するように伝達ギヤ172が設けられている。これにより、搬送ローラ60の軸76の回転がドラム170へ伝達される。平歯ギヤ171,174及び伝達ギヤ172により軸76からドラム170へ伝達される回転の比は、軸76がN周(Nは、自然数)する間にドラム170が1周するように設定されている。
【0152】
図20及び図21に示されるように、エンドポジションに位置されたキャリッジ41において、用紙検出センサ32がドラム170と対向される。そして、用紙検出センサ32がオンにされると、用紙検出センサ32がドラム170からの反射光を検知する。LFモータ85が駆動されて搬送ローラ60が回転されると、平歯ギヤ171、伝達ギヤ172、平歯ギヤ174を介して、軸76の回転がドラム170へ伝達される。前述されたように、軸76がN回転されるとドラム170が1回転する。ドラムが1回転する間に、検知部173が1回だけ用紙検出センサ32と対向される。用紙検出センサ32が検知部173以外の部分によって反射された反射光を検知するとき、用紙検出センサ32の出力信号はLOWと判定される。また、用紙検出センサ32が検知部173によって反射された反射光を検知するとき、用紙検出センサ32の出力信号はHIと判定される。この用紙検出センサ32の出力信号の変化に基づいて、制御部100が搬送ローラ60の原点位置を決定することができる。したがって、前述された実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0153】
なお、前述された実施形態及び各変形例において、用紙検出センサ32は反射率を検出するものとしたが、被検知対象までの距離を検出するセンサが用紙検出センサ32として用いられてもよい。その場合、例えば、検出子151の検知部155やドラム170の検知部173は、他の部分と用紙検出センサ32までの距離が異なるように凹凸されればよい。
【符号の説明】
【0154】
11・・・プリンタ部(画像記録装置)
17,18,19・・・搬送路
32・・・用紙検出センサ(第2検出手段)
41・・・キャリッジ
42・・・記録ヘッド
60・・・搬送ローラ
77・・・伝達ギヤ(駆動伝達機構)
85・・・LFモータ(駆動源)
89・・・ロータリーエンコーダ(第1検出手段)
90,130・・・被検知部材
100・・・制御部(被記録媒体検出手段、原点決定手段、補正手段、制御手段)
104・・・EEPROM(記憶手段)
149・・・カム(駆動伝達機構)
150・・・被検知機構(被検知部材)
170・・・ドラム(被検知部材、回転体)
171,174・・・平歯ギヤ(駆動伝達機構)
172・・・伝達ギヤ(駆動伝達機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を搬送向きへ搬送する搬送ローラと、
上記搬送ローラを回転させるための駆動力を付与する駆動源と、
上記搬送ローラと同期して回転される同期軸の回転量を検出する第1検出手段と、
上記搬送ローラによって搬送される被記録媒体に画像記録を行う記録ヘッドが搭載されており、上記搬送向きと交差する移動方向へ移動するキャリッジと、
上記キャリッジに搭載されており、対象物の所定の物理量を検出する第2検出手段と、
搬送される上記被記録媒体と対向したときの上記第2検出手段の検出結果に基づいて、当該被記録媒体を検出する被記録媒体検出手段と、
上記第2検出手段と対向し得る位置に配置された被検知部材と、
上記搬送ローラの回転に同期して、上記被検知部材を動作させる駆動伝達機構と、
上記第2検出手段が上記被検知部材を検知し得る検知位置へ上記キャリッジを移動させて、上記駆動源を駆動させることによって上記駆動伝達機構を介して上記被検知部材を動作させ、このときの上記第1検出手段の検出結果及び上記第2検出手段の検出結果に基づいて、上記搬送ローラの原点位置を決定する原点決定手段と、を備える画像記録装置。
【請求項2】
上記搬送ローラの上記原点位置からの回転量である回転位相と、当該搬送ローラの目標回転量の補正値との対応関係を記憶する記憶手段と、
上記駆動源の駆動を制御して上記搬送ローラの回転量を補正する補正手段と、を備え、
上記補正手段は、上記原点決定手段によって検出された原点位置、上記第1検出手段の検出結果及び上記記憶手段に記憶されている上記対応関係に基づいて、上記駆動源の駆動を制御する請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記記録ヘッドは、インクジェット方式により画像記録を行うものであり、
上記キャリッジが上記検知位置へ移動されたときに上記記録ヘッドと対向する位置に、インク受け部が設けられ、
上記原点決定手段が上記搬送ローラの回転位相の原点位置を検出している間に、上記記録ヘッドから上記インク受け部へインク滴の吐出を行わせる制御手段が設けられた請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記駆動伝達機構は、上記搬送ローラの所定の回転位置において、上記キャリッジに対して、上記被検知部材を移動させるものである請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記被検知部材は、回転体であり、
上記駆動伝達機構は、上記被検知部材を上記搬送ローラに同期させて回転させるものである請求項1から4のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記第2検出手段が検出する物理量は、反射率又は距離である請求項1から5のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記第2検出手段は、上記対象物へ向けて光を照射する発光手段と、上記対象物からの反射光を受光して当該反射光量に応じた信号を出力する受光手段とを有するものである請求項6に記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−51696(P2011−51696A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201005(P2009−201005)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】