説明

画像評価装置及び画像評価装置の校正方法

【課題】校正作業を簡易に行うことができる画像評価装置及び画像評価装置の校正方法を提供する。
【解決手段】照明装置22より記録用紙12に照射された光の透過光又は反射光の光量をNDフィルタ70により所定の割合だけ変化させ、当該変化させる前後において当該受光した光の光量に応じたレベルの信号に基づいて導出される画質を評価するための評価値の変化量がHDD52に予め記憶されている変化量となるようにCCDラインセンサ24より出力される信号のレベルを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像評価装置及び画像評価装置の校正方法に係り、特に、評価対象物に照射された光の透過光又は反射光の光量に基づいて画質を評価するための評価値を導出する画像評価装置及び当該画像評価装置の校正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録媒体に形成された画像の品質を評価する画像評価装置が各種提案されている。例えば、特許文献1には、取得した画像データに対して人間の視覚の空間周波数特性に対応した補正を行った後に評価値を導出する技術が開示されており、この技術によれば、画像評価値として濃度(明度)情報だけでなく色彩情報である彩度情報、色相情報も導出することができる。
【0003】
また、特許文献2には、汎用のカラースキャナやモノクロスキャナを用いて、画像に含まれるノイズに関する評価値を人間の視覚的な感覚と相関良く導出する技術が開示されている。
【0004】
ところで、近年、プリンタや複写機等の画像形成装置は、形成する画像の高精細化、高画質化が進んでおり、高精細な画像の評価が可能な画像評価装置の開発も進められている。しかし、画像評価装置は、経時的な変化などによって導出した評価値に誤差が含まれている場合があり、評価精度を保つために校正作業の重要性が増してきている。
【0005】
この校正作業では、導出された評価値の精度(値の正しさ)を確認するため、一般的に、より精度の高い上位の評価装置を用いて画像評価装置の調整を行われる。この精度の高い上位の評価装置はさらに精度的に上位の装置により調整されて、最終的には国家標準レベルにまで繋がっていることが望ましい。これにより、画像評価装置の評価精度がある許容範囲内にあることが保証されることとなり、いわゆるトレーサビリティを確立することが可能となる。
【特許文献1】特開平5−284260号公報
【特許文献2】特開平10−23191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この技術では、別の評価装置を用いなければ校正を行うことができないため、校正作業が煩雑である、という問題点があった。
【0007】
特に、画像評価装置が数百dpi以上の高解像の画像の線濃度を評価するものである場合、測定領域が100μm単位の微小領域となり、このような微小領域の濃度を精度良く校正するためには、精度が保証されたミクロ濃度計などの更に高性能かつ高額な評価分析装置が必要となり、コストなどの点で画像評価装置を維持管理するための負担が顕著であった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、校正作業を簡易に行うことができる画像評価装置及び画像評価装置の校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、光源より評価対象物に照射された光の透過光又は反射光を受光して当該受光した光の光量に応じたレベルの信号を出力する受光手段と、前記受光手段より出力された信号に基づいて画質を評価するための評価値を導出する導出手段と、前記受光手段で受光される光の光量を所定の割合だけ変化させる光量変化手段と、前記受光手段で受光される光の光量を前記所定の割合だけ変化させた場合の前記評価値の変化量を予め記憶した記憶手段と、前記光量変化手段により前記光量を変化させる前後において前記導出手段により導出される評価値の変化量が前記記憶手段に記憶されている前記変化量となるように前記受光手段より出力される信号のレベルを補正する補正手段と、を備えている。
【0010】
請求項1記載の発明によれば、受光手段により、光源より評価対象物に照射された光の透過光又は反射光が受光されて当該受光した光の光量に応じたレベルの信号が出力され、導出手段により、受光手段より出力された信号に基づいて画質を評価するための評価値が導出される。
【0011】
そして、本発明では、受光手段で受光される光の光量を所定の割合だけ変化させた場合の評価値の変化量が予め記憶手段に記憶されており、受光手段で受光される光の光量を所定の割合だけ変化させる光量変化手段により光量を変化させる前後において導出手段により導出される評価値の変化量が記憶手段に記憶されている変化量となるように受光手段より出力される信号のレベルが補正される。なお、上記記憶手段には、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、コンパクトフラッシュ(登録商標)、xDピクチャーカード(登録商標)等の可搬型メモリ、ハードディスク等の固定記憶装置、或いはネットワークに接続されたサーバ・コンピュータ等に設けられた外部記憶装置が含まれる。また、上記光量変化手段には、光学フィルタや、液晶パネルなどが含まれる。
【0012】
このように、請求項1記載の発明によれば、光源より評価対象物に照射された光の透過光又は反射光の光量を光量変化手段により所定の割合だけ変化させ、当該変化させる前後において当該受光した光の光量に応じたレベルの信号に基づいて導出される画質を評価するための評価値の変化量が記憶手段に予め記憶されている変化量となるように信号のレベルを補正しているので、評価精度の校正作業を簡易に行うことができる。
【0013】
また、請求項1記載の発明によれば、別の評価装置を用いることなく評価精度の校正を行うことができるので、特に、測定領域が1mm以下である画像評価装置に適用した場合、当該画像評価装置を維持管理するための負担を軽減させることができる。
【0014】
なお、本発明は、請求項2記載の発明のように、前記記憶手段は、濃度の異なる複数の評価対象物に対する前記評価値の変化量の平均値が予め記憶されており、前記補正手段は、前記導出手段により導出される評価値の変化量が前記記憶手段に記憶された前記平均値となるように前記受光手段より出力される信号のレベルを補正してもよい。
【0015】
また、本発明は、請求項3記載の発明のように、前記光量変化手段は、前記光源と前記評価対象物との間に介在された光学的フィルターであることが好ましい。なお、この光学的フィルタには、ニュートラル・デンシティ・フィルタなどが含まれる。
【0016】
また、本発明は、請求項4記載の発明のように、前記評価値を、前記評価対象物に形成された線の濃度としてもよい。
【0017】
一方、上記目的を達成するため、請求項5記載の発明は、光源より評価対象物に照射された光の透過光又は反射光の光量を光量変化手段により所定の割合だけ変化させ、当該変化させる前後において当該受光した光の光量に応じたレベルの信号に基づいて導出される画質を評価するための評価値の変化量が記憶手段に予め記憶されている変化量となるように前記信号のレベルを補正している。
【0018】
よって、請求項5に記載の発明は、請求項1記載の発明と同様に作用するので、請求項1記載の発明と同様に、別の評価装置を用いることなく、校正作業を簡易に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、光源より評価対象物に照射された光の透過光又は反射光の光量を光量変化手段により所定の割合だけ変化させ、当該変化させる前後において当該受光した光の光量に応じたレベルの信号に基づいて導出される画質を評価するための評価値の変化量が記憶手段に予め記憶されている変化量となるように前記信号のレベルを補正しているので、評価精度の校正作業を簡易に行うことができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、評価対象物に形成された線の濃度の評価を行う画像評価装置に適用した場合について説明する。
【0021】
図1には、本実施の形態に係る画像評価装置10の概略構成が示されている。
【0022】
同図に示されるように、画像評価装置10は、一端部に白色基準板16が設けられると共に、評価対象となる線が形成されている記録用紙12が載置されるステージ14と、ステージ14に載置された記録用紙12の前記線を含む画像を読み取る画像読取部20と、を備えている。
【0023】
なお、ステージ14上の白色基準板16の配設位置は、画像読取部20による画像読み取り時における初期位置(ホームポジション)とされており、画像読取部20は、上記初期位置とステージ14の他端部との間で、モータ54(図1では省略、図2参照。)の駆動力により所定速度でステージ14の表面に対して平行に移動することができる。
【0024】
本実施の形態に係る画像読取部20は、ステージ14の表面に対して画像読取部20の移動方向と直交する直交方向に沿って平行に配設された一対の照明装置22と、当該一対の照明装置22の間に直交方向に沿って配設されたCCD(Charge Coupled Devices)ラインセンサ24と、CCDラインセンサ24のステージ14側に配置され、照明装置22から照射されて記録用紙12により反射された反射光をCCDラインセンサ上に結像させるレンズ26と、を備えている。
【0025】
CCDラインセンサ24は、ライン状に設けられている各受光素子毎にレンズ26を介して結像された反射光の光量に応じた大きさのアナログ信号を出力する。
【0026】
なお、本実施の形態では照明装置22としてハロゲンランプを用いているが、これに限らず蛍光ランプや、希ガスランプ等の他の照明用の光源を用いてもよい。
【0027】
図2には、本実施の形態に係る画像評価装置10の電気系の構成が示されている。
【0028】
同図に示されるように、画像評価装置10は、全体の動作を司るCPU(中央処理装置)40と、装置全体を制御する制御プログラムや後述する校正処理プログラムを含む各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM42と、各種データ等を一時的に記憶するRAM44と、各種情報を表示するディスプレイ46と、ディスプレイ46に対する各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ48と、キーボードなどの入力装置50と、を備えている。
【0029】
さらに、画像評価装置10は、各種情報が記憶されるハードディスク・ドライブ(以下、「HDD」という。)52と、画像読取部20を移動させるモータ54への駆動信号を制御する駆動制御部56と、照明装置22への電力の供給を制御する照明制御部58と、CCDラインセンサ24による画像データの読み取りを制御する読取制御部60と、を備えている。
【0030】
これらCPU40、ROM42、RAM44、ディスプレイドライバ48、入力装置50、HDD52、駆動制御部56、照明制御部58、及び読取制御部60は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU40は、ROM42、RAM44、HDD52へのアクセスと、ディスプレイドライバ48を介したディスプレイ46への各種情報の表示と、入力装置50に対する作業者による操作内容の把握と、駆動制御部56を介したモータ54の駆動を制御による画像読取部20の移動の制御と、照明制御部58を介した照明装置22の点灯の制御と、読取制御部60を介したCCDラインセンサ24による画像の読み取りの制御と、を各々行うことができる。
【0031】
図3には、読取制御部60の詳細な構成が示されている。
【0032】
読取制御部60は、CCDラインセンサ24より入力されるアナログ信号に対して各種のアナログ信号処理を行うアナログ信号処理部62と、アナログ信号をデジタルデータに変換するアナログ/デジタル変換器(以下、「ADC」という。)64と、デジタルデータに対して各種のデジタル信号処理を行うデジタル信号処理部66と、を備えている。
【0033】
なお、アナログ信号処理部62は、入力されるアナログ信号を増幅するアンプを備えており、CPU40からの制御により増幅率(ゲイン)が調整可能とされている。
【0034】
また、デジタル信号処理部66は、所定容量のラインバッファを内蔵しており、入力されたデジタルデータをRAM48の所定領域に直接記憶させる制御も行う。
【0035】
CCDラインセンサ24の出力端はアナログ信号処理部62の入力端に、アナログ信号処理部62の出力端はADC64の入力端に、ADC64の出力端はデジタル信号処理部66の入力端に、各々接続されている。従って、CCD24から出力された被写体像を示すアナログ信号はアナログ信号処理部62によって所定の増幅率で増幅され、ADC64によってデジタルデータに変換された後にデジタル信号処理部66に入力され、デジタル信号処理部66によって所定のデジタル信号処理が施された後にRAM48の所定領域に記憶される。
【0036】
CPU40は、RAM48に記憶されたデジタルの画像データに基づいて画像に含まれる線の濃度を導出する。
【0037】
ところで、画像評価装置10により導出される線濃度には、装置の経時的な変化などによって誤差を含まれている場合がある。
【0038】
そこで、本実施の形態に係る画像評価装置10は、透過型の中性濃度フィルタ(本実施の形態では、ニュートラル・デンシティ・フィルタ)(以下、「NDフィルタ」という。)を用いて評価精度の校正を行っている。なお、このNDフィルタは、分光透過特性が波長的な偏りを持たない無彩色のフィルタであり、波長的な影響を及ぼすことなく透過光量のみを制御する場合に用いられる。
【0039】
このNDフィルタは、入射した光の光量を所定の割合だけ減衰させることができる。よって、評価対象物にNDフィルタを重ねた場合、導出される濃度値が線形的に増加する。
【0040】
そこで、本実施の形態に係る画像評価装置10では、画像評価装置10が所定の評価精度である場合に入射する光量が所定の割合だけ減衰した場合の濃度値の増加量を予め記憶しておき、実際にNDフィルタを重ねて光量を変化させる前後において導出される評価値の増加量を予め記憶した増加量と比較して線濃度の線形的な関係性を評価することによって評価精度の確認及び修正を行っている。
【0041】
以下、光量が所定の割合だけ減衰した場合の濃度値の増加量を記憶させる手順を説明する。
【0042】
まず、例えば、図4に示すように、光量の減衰率が既知であるNDフィルタ70を用意する。なお、本実施の形態では、減衰率が異なる3種類のNDフィルタ70(70A、70B、70C)を用意している。そして、各NDフィルタ70をシート72にそれぞれ個別に重ねた場合の濃度の変化量を測定する。すなわち、シート72上の各NDフィルタ70を個別に重ねた状態でそれぞれ測定される反射濃度値から、何れのNDフィルタ70も重ねていないシート72のみの状態で測定される反射濃度値を差し引くことにより各NDフィルタ70による濃度の変化量を求める。なお、ここで用いる反射濃度計としては、特に微小エリアの濃度を測定するためのものである必要はなく、直径10mm前後のエリアを測定するための一般的な濃度計を用いればよい。ただし、濃度計は精度が保証されたものが必要である。なお、シート72とNDフィルタ70との間の面での不要な影響を取り除くため、濃度の異なる複数のシート72を用意し、NDフィルタ70毎に各濃度のシート72を用いてそれぞれ測定した濃度の変化量から平均値を求めて当該平均値を変化量として用いることが好ましい。これにより、評価対象物の濃度の違いよる評価値の誤差を小さくすることができる。また、複数のフィルタを重ねて1種類のフィルタとしてもよい。濃度値は加法性を有しているため、複数のフィルタを重ねた場合の濃度の変化量は各フィルタによる変化量を加算した値となる。
【0043】
そして、ユーザーは、NDフィルタ70による濃度の変化量を当該NDフィルタ70を識別する識別情報と共に入力装置50より入力する。画像評価装置10は、入力された変化量を識別情報と対応付けてHDD52に校正情報として記憶する。なお、本実施の形態では、ユーザはNDフィルタ70A、70B、70Cの順に変化量を入力するものとし、入力された順に変化量にはフィルタの識別情報としてA、B、Cが対応付けられるものとする。なお、校正に用いるNDフィルタ70の減衰率が予め決まっている場合は、画像評価装置10の製造時にROM42やHDD52に当該減衰率のNDフィルタ70による濃度の変化量を予め記憶させておいてもよい。
【0044】
次に、図5を参照しつつ、評価精度の校正を行う際の画像評価装置10の作用を説明する。なお、図5は、この際にCPU40によって実行される校正処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。当該校正処理プログラムは、ユーザーによって入力装置50に対して評価精度の校正作業の実行を指示する所定操作が行われた場合に実行される。
【0045】
同図のステップ100では、何れのNDフィルタ70も重ね無いで濃度の測定開始の指示を促すメッセージをディスプレイ46に表示する。次のステップ102では、入力装置50に対して測定開始を指示する所定操作が行なわれたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ104へ移行し、否定判定となった場合は再度ステップ102へ移行してユーザからの測定開始の指示待ちを行う。
【0046】
ユーザは、ディスプレイ46にメッセージが表示されると、例えば、図6に示すように、評価対象とする線が形成された記録用紙12をステージ14に載置し、入力装置50に対して測定開始を指示する所定操作を行う。
【0047】
次のステップ104では、照明装置22を点灯させると共にモータ54を駆動させて画像読取部20を初期位置に移動させてCCDラインセンサ24により白色基準板16からの反射光を受光して光量を検出する。そして、検出したCCDラインセンサ24の各受光素子の受光した光量に基づいてCCDラインセンサ24の各受光素子の感度ばらつきを補正するシェーディング補正のためのシェーディング補正データを作成する。作成されたシェーディング補正データは、デジタル信号処理部66に記憶される。
【0048】
次のステップ106では、照明装置22を点灯させた状態でモータ54を駆動させて画像読取部20をステージ14に対して所定速度で移動させ、ステージ14に載置された記録用紙12からの反射光をCCDラインセンサ24の各受光素子によって受光して形成された線を含む記録用紙12の画像を示す画像データを取得する。そして、画像読取部20がステージ14の他端部へ到達すると、照明装置22を消灯すると共にモータ54を駆動させて画像読取部20を初期位置に移動させる。この画像を読み取る際に、CCDラインセンサ24から出力されたアナログ信号は、アナログ信号処理部62によって所定の増幅率で増幅され、ADC64によってデジタルデータに変換された後に、デジタル信号処理部66によってシェーディング補正データに基づいてシェーディング補正が施される。
【0049】
次のステップ108では、取得した画像データにより示される各画素毎の受光した光量に基づいて形成された線毎の線濃度D1を導出する。なお、本実施形態では、この線濃度の導出方法として、画像全体の濃度の平均よりも所定値以上濃度の濃い部分を線とみなし、画像の線部分の最大濃度値と最小濃度値の差を線濃度とする方法を用いている。なお、線濃度の導出方法として画像の線部分の濃度平均を線濃度とする方法を用いてもよく、その他の方法を用いてもよい。そして、導出した線毎の線濃度D1をRAM44に記憶させる。
【0050】
次にステップ110では、NDフィルタ70を重ねて測定開始の指示を促すメッセージをディスプレイ46に表示する。なお、本実施の形態では、フィルタの識別情報の順に(A、B、Cの順)に重ねるNDフィルタ70を指定するメッセージを表示する。次のステップ112では、入力装置50に測定開始を指示する所定操作が行なわれた否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ114へ移行し、否定判定となった場合は再度ステップ112へ移行してユーザからの測定開始の指示待ちを行う。
【0051】
ユーザは、ディスプレイ46にメッセージが表示されると、載置されている記録用紙12に、例えば、図7(A)に示すように、該当するNDフィルタ70を重ねた後に、入力装置50に対して測定開始を指示する所定操作を行う。
【0052】
次のステップ114では、上記ステップ106と同様に、照明装置22を点灯させると共にモータ54を駆動させて画像読取部20をステージ14に対して所定速度で移動させ、ステージ14に載置された記録用紙12からの反射光をCCDラインセンサ24の各受光素子によって受光して形成された線を含む記録用紙12の画像を示す画像データを取得する。そして、画像読取部20がステージ14の他端部へ到達すると、照明装置22を消灯させると共にモータ54を駆動させて画像読取部20を初期位置に移動させる。
【0053】
次のステップ116では、上記ステップ108と同様に、取得した画像データにより示される各画素毎の光量に基づいて線毎の線濃度D2を導出する。
【0054】
次のステップ118では、対応する線毎に、上記ステップ116において導出した線濃度D2からRAM44に記憶されている線濃度D1を減算することにより指定したNDフィルタ70による線濃度の変化量を算出する。
【0055】
次のステップ120では、全てのNDフィルタ70において線濃度の測定が行なわれたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ122へ移行し、否定判定となった場合はステップ110へ移行して未測定のNDフィルタ70を記録用紙12に重ねるフィルタと指定して測定開始の指示を促すメッセージを表示する。これにより、本実施の形態では、図7(A)〜(C)に示すように、記録用紙12にNDフィルタ70A〜70Cがそれぞれ重ねられて線濃度の測定が行なわれる。
【0056】
次のステップ122では、HDD52に校正情報として記憶されている各NDフィルタ70の変化量と、上記ステップ118で算出した各NDフィルタ70による線濃度の変化量に基づいて画像評価装置10により導出される線濃度の評価精度が所定範囲内か否かを判定する。
【0057】
ここで、画像評価装置10は、評価精度が保たれていた場合、各NDフィルタ70の校正情報より求まる変化量と上記ステップ118で算出した変化量との関係が1:1となる。
【0058】
すなわち、測定精度が保たれていた場合は、図8に示されるように、横軸を校正情報より求まる変化量とし、縦軸を上記ステップ118で算出した線濃度の変化量とすると、各NDフィルタ70に対応する点は傾きが「1」の直線L1上の点となる。
【0059】
そこで、本ステップ122では、各NDフィルタ70の校正情報より求まる変化量と線濃度の変化量から最小二乗法を用いて近似した直線L2を求め、当該直線L2の傾きを示す値が「1」を中心とする所定範囲内であるか否か判定することにより、評価精度が所定範囲内か否かを判定する。本ステップ122では、肯定判定となった場合は本校正処理プログラムの処理は終了となり、否定判定となった場合はステップ124へ移行する。
【0060】
ステップ124では、上記ステップ122において求めた直線L2の傾きを示す値が「1」となるように、アナログ信号処理部62によるアナログ信号の増幅率を調整し、本校正処理プログラムの処理は終了となる。これにより、CCD24から出力された被写体像を示すアナログ信号はアナログ信号処理部62により正常な評価精度のレベルに補正される。
【0061】
このように、本実施の形態に係る画像評価装置10は、安価なNDフィルタ70を数種類を用いることによって、微細画像である線濃度値評価を簡易的かつ低コストで校正することが可能となる。また、画像評価装置10は、校正作業において、NDフィルタ70を重ねて同一画像の同一個所の濃度の変化量を測定しているため、微小領域測定する際に問題となる測定した濃度値に対する画像ムラの影響を排除することもできる。
【0062】
さらに、この校正方法を積極的に活用する例として、フィルタを重ねることにより濃度の変化量を加法的に付与してより広い濃度範囲での校正が可能となるため、測定可能な濃度範囲を広げることができる。
【0063】
以上のように本実施の形態によれば、受光手段(ここでは、CCDラインセンサ24)により、光源(ここでは、照明装置22)より評価対象物(ここでは、記録用紙12)に照射された光の透過光又は反射光を受光して当該受光した光の光量に応じたレベルの信号を出力し、導出手段(ここでは、CPU40)により、受光手段より出力された信号に基づいて画質を評価するための評価値を導出しており、受光手段で受光される光の光量を所定の割合だけ変化させた場合の評価値の変化量を予め記憶手段(ここでは、HDD52)に記憶している。
【0064】
そして、本実施の形態によれば、補正手段(ここでは、アナログ信号処理部62)により、受光手段で受光される光の光量を所定の割合だけ変化させる光量変化手段(ここでは、NDフィルタ70)により光量を変化させる前後において導出手段により導出される評価値の変化量が記憶手段に記憶されている変化量となるように受光手段より出力される信号のレベルを補正しているので、別の評価装置を用いることなく、校正作業を簡易に行うことができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、光量変化手段は、光源と評価対象物との間に介在された光学的フィルターであるので、画像評価装置の製造コストのアップを抑えることができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、画像評価装置は評価値として光量に基づいて線の濃度を導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、評価値として画像の濃度、彩度、色相や、受光した光量、ノイズ量など他の評価値を導出するものとしてもよい。この場合も、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0067】
また、本実施の形態では、ユーザが手動で記録用紙12にNDフィルタ70を重ねる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、照明装置22からステージ14へ光が出射される出射口やCCDラインセンサ24へ反射光が入射する入射口にNDフィルタ70を移動させる移動機構を設けて、CPU40からの制御により光路上にNDフィルタ70を挿入又は退避させるものとしてもよい。また、出射口や入射口に液晶パネルを設けてCPU40からの制御により光の透過率を制御するものとしてもよい。
【0068】
また、本実施の形態では、アナログ信号処理部62によるアナログ信号の増幅率を調整して評価精度を補正する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、デジタル信号処理部66に入力データに対する増幅率の異なる複数のルックアップテーブルを記憶させておき、上記ステップ122において求めた直線L2の傾きを示す値に応じて適切な増幅率のルックアップテーブルを用いて評価精度を補正するものとしてもよい。この場合も、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0069】
また、本実施の形態では、照射された光の記録用紙12からの反射光の光量に基づいて評価値(線濃度)を導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録用紙12を透過した透過光に基づいて評価値を導出するものとしてもよい。この場合も、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0070】
その他、本実施の形態で説明した画像評価装置10の構成(図1、図2、図3参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0071】
また、本実施の形態で説明した校正処理プログラムの処理の流れ(図5参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施の形態に係る画像評価装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】実施の形態に係る画像評価装置の電気的な要部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係る読取制御部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係るNDフィルタの一例を示す図である。
【図5】実施の形態に係る校正処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係る評価対象とする線が形成された記録用紙の一例を示す図である。
【図7】実施の形態に係る記録用紙に重ねられたNDフィルタの一例を示す図である。
【図8】実施の形態に係る各NDフィルタの校正情報より求まる変化量とステップ118において算出した線濃度の変化量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10 画像評価装置
12 記録用紙
22 照明装置
24 CCDラインセンサ
40 CPU
52 HDD
62 アナログ信号処理部
70 NDフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源より評価対象物に照射された光の透過光又は反射光を受光して当該受光した光の光量に応じたレベルの信号を出力する受光手段と、
前記受光手段より出力された信号に基づいて画質を評価するための評価値を導出する導出手段と、
前記受光手段で受光される光の光量を所定の割合だけ変化させる光量変化手段と、
前記受光手段で受光される光の光量を前記所定の割合だけ変化させた場合の前記評価値の変化量を予め記憶した記憶手段と、
前記光量変化手段により前記光量を変化させる前後において前記導出手段により導出される評価値の変化量が前記記憶手段に記憶されている前記変化量となるように前記受光手段より出力される信号のレベルを補正する補正手段と、
を備えた画像評価装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、濃度の異なる複数の評価対象物に対する前記評価値の変化量の平均値が予め記憶されており、
前記補正手段は、前記導出手段により導出される評価値の変化量が前記記憶手段に記憶された前記平均値となるように前記受光手段より出力される信号のレベルを補正する
請求項1記載の画像評価装置。
【請求項3】
前記光量変化手段は、前記光源と前記評価対象物との間に介在された光学的フィルターである
請求項1又は請求項2記載の画像評価装置。
【請求項4】
前記評価値を、前記評価対象物に形成された線の濃度とする
請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の画像評価装置。
【請求項5】
光源より評価対象物に照射された光の透過光又は反射光の光量を光量変化手段により所定の割合だけ変化させ、
当該変化させる前後において当該受光した光の光量に応じたレベルの信号に基づいて導出される画質を評価するための評価値の変化量が記憶手段に予め記憶されている変化量となるように前記信号のレベルを補正する
画像評価装置の校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−235208(P2007−235208A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50677(P2006−50677)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】