説明

画像読取装置、画像形成装置

【課題】LED光源のように温度変化に伴う光量変化の小さい光源と光電変換素子とを用いた画像読取処理を前記光源の光量に応じて適宜高速化すると共に、そのための処理負荷を極力軽減することのできる画像読取装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】画像読取装置の電源投入時及びスリープモード解除時のいずれかにおいて(S1のYes側)、光電変換素子で白色基準部材から白色基準データを読み取り(S3)、その白色基準データの読み取り時における光電変換素子の出力レベルに応じて第1周期を設定し(S4)、その設定された第1周期を周期記憶手段に記憶させる(S5)。そして、前記画像読取装置では、その後、前記周期記憶手段に記憶された第1周期で1ラインごとの画像データの読み取りが実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿に光を照射したときの反射光から画像データを読み取る画像読取装置及びこれを備えてなる画像形成装置に関し、特に、原稿に光を照射する光源としてLED光源のように温度変化に伴う光量変化の小さい光源を用いた画像読取装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、原稿に光を照射したときの反射光をCCD等の光電変換素子で受光して電気信号に変換することにより原稿から画像データを読み取る画像読取装置が知られている。
この種の画像読取装置では、予め設定された周期で発生する水平同期信号に従って光源が原稿に対して副走査方向に移動される。そして、その光源の移動中に、光電変換素子により前記水平同期信号に従って1ラインごとの画像データの読み取りが行われる。
このとき、読み取られた画像データのS/Nを高めて十分な画質を確保するためには、1ラインごとに光電変換素子に十分な光量が蓄積される必要がある。そのため、前記水平同期信号の周期は、1ラインごとに光電変換素子に十分な光量が蓄積されるように光源の光量に応じて予め設定される。
【0003】
ところで、従来から、画像読取装置の光源としてCCFL(冷陰極蛍光ランプ)が用いられている。このCCFLは温度変化に伴う光量変化が大きいことが知られている。そして、CCFLの光量が変化すると、光電変換素子に単位時間あたりに蓄積される光量も変化することになる。そのため、前記水平同期信号の周期が一定値に固定されていると、1ラインごとに光電変換素子に蓄積される光量が温度変化に伴って変化することとなる。
そこで、例えば特許文献1では、温度変化に伴う光源の光量変化を考慮して光電変換素子の蓄積時間を設定する技術が提案されている。具体的には、画像読取処理の開始ごとに白色基準板の画像データが読み取られ、その画像データの出力レベルに応じて光電変換素子の蓄積時間が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−188942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年では、CCFLに代えてLED光源が画像読取装置の光源として用いられることが多くなっている。このLED光源は、CCFLに比べて温度変化に伴う光量変化は小さい。そのため、LED光源のように温度変化に伴う光量変化の小さい光源を用いた画像読取装置において、前記特許文献1に開示されているように画像読取処理ごとに白色基準板の読み取りや光電変換素子の蓄積時間の設定を行うことは、画像読取処理の所要時間を無駄に長くするという問題を招来する。
一方、LED光源のように温度変化に伴う光量変化の小さい光源を用いた画像読取装置において、従来通り光電変換素子の蓄積時間を常に一定に設定しておくことも考えられる。しかしながら、温度変化に伴う光量変化の小さい光源を用いた画像読取装置であっても、急激な温度変化などの環境変化が生じた場合には、やはり光源の光量が変化する。そのため、光電変換素子の蓄積時間を一定に設定しつつ所定の画質を確保するためには、光源から照射される光量が少ない場合を想定して光電変換素子の蓄積時間を長めに設定しておく必要がある。そのため、光源の光量が十分である場合には、光電変換素子の蓄積時間に余力が残り、画像読取処理の所要時間が無駄に長くなることが問題となる。
従って、本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、LED光源のように温度変化に伴う光量変化の小さい光源と光電変換素子とを用いた画像読取処理を前記光源の光量に応じて適宜高速化すると共に、そのための処理負荷を極力軽減することのできる画像読取装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明は、原稿に光を照射する光源と、前記光源及び前記原稿を相対的に移動させる移動手段と、前記原稿から反射した光を受光して1ラインごとに画像データを読み取る光電変換素子と、前記移動手段による1ライン分の移動及び前記光電変換素子による1ライン分の画像データの読み取りを予め設定された周期で実行させる周期制御手段と、を備えてなる画像読取装置に適用されるものである。また、前記画像読取装置は、前記画像読取装置の電源投入時及びスリープモード解除時のいずれか一方又は両方において前記光電変換素子で白色基準部材から白色基準データを読み取る白色基準読取手段と、前記白色基準読取手段による前記白色基準データの読み取り時における前記光電変換素子の出力レベルに応じて第1周期を設定する周期設定手段と、前記周期設定手段により設定された前記第1周期を記憶する第1周期記憶手段と、を備えている。そして、前記周期制御手段は、前記第1周期記憶手段に記憶された前記第1周期で前記移動手段による1ライン分の移動及び前記光電変換素子による1ライン分の画像データの読み取りを実行させるものである。具体的に、前記光源はLED光源である。
本発明によれば、前記第1周期の設定が画像読取処理の度に行われるのではなく、前記画像読取装置の電源投入時及びスリープモード解除時のいずれか一方又は両方においてのみ前記第1周期が設定される。従って、前記画像読取装置では、画像読取処理を前記光源の光量に応じて適宜高速化すると共に、そのための処理負荷を極力軽減することが可能である。なお、前記光源として、温度変化に伴う光量変化が小さいLED光源などを用いれば、前記画像読取装置の電源投入時やスリープモード解除時のみに前記第1周期を設定しても画質低下の問題は生じない。
【0007】
また、前記光源の光量が最小である状況において前記光電変換素子の出力レベルが前記画像データについて予め設定された画質が得られる値になる周期として予め設定された第2周期が記憶された第2周期記憶手段と、前記第1周期記憶手段に記憶された前記第1周期及び前記第2周期記憶手段に記憶された前記第2周期のいずれかを選択する周期選択手段と、を更に備えてなる構成が考えられる。この場合、前記周期制御手段は、前記周期選択手段により選択された前記第1周期又は前記第2周期で前記移動手段による1ライン分の移動及び前記光電変換素子による1ライン分の画像データの読み取りを実行させるものである。これにより、例えば前記画像読取装置における画像データの読み取りについて速度を優先するか画質を優先するかを前記周期選択手段で選択することによって任意に切り替えることが可能となる。
ここに、前記周期制御手段は、前記第1周期又は前記第2周期で発生する水平同期信号を前記移動手段及び前記光電変換素子に入力することにより、前記第1周期又は前記第2周期で前記移動手段による1ライン分の移動及び前記光電変換素子による1ライン分の画像データの読み取りを実行させるものであることが考えられる。これにより、前記移動手段による1ライン分の移動及び前記光電変換素子による1ライン分の画像データの読み取りの周期を容易に変更することが可能である。
また、本発明のより具体的な構成としては、前記光電変換素子が、受光量の増加に伴って出力レベルが低下するものであり、前記白色基準読取手段が、前記第2周期の間に前記光電変換素子で前記白色基準部材から前記白色基準データを読み取るものであることが考えられる。この場合、前記周期設定手段は、前記第2周期の間における前記光電変換素子の出力レベルの最小値が低いほど前記第1周期を短く設定し、前記第2周期の間における前記光電変換素子の出力レベルの最小値が高いほど前記第1周期を長く設定するものであることが考えられる。これにより、前記画像読取装置における画像読取処理を前記光源の光量に応じて適宜高速化することができる。
ところで、本発明は前記画像読取装置を備えてなる画像形成装置の発明として捉えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記第1周期の設定が画像読取処理の度に行われるのではなく、前記画像読取装置の電源投入時及びスリープモード解除時のいずれか一方又は両方においてのみ前記第1周期が設定されるため、画像読取処理を前記光源の光量に応じて適宜高速化すると共に、そのための処理負荷を極力軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るスキャナーXの概略構成を示す模式図。
【図2】本発明の実施例に係るスキャナーXの制御部50の概略構成を示すブロック図。
【図3】本発明の実施の形態に係るスキャナーXで実行される周期設定処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【図4】周期設定処理における周期設定手法の一例を説明するための図。
【図5】本発明の実施の形態に係るスキャナーXで実行される画像読取処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るスキャナーX(画像読取装置の一例)の概略構成について説明する。
図1に示すように、前記スキャナーXは、大別すると装置本体1及び前記装置本体1の上方に配置されたADF(自動原稿送り装置)2を備えている。ところで、本発明は、前記スキャナーXを備えた、或いは前記スキャナーXと同様の画像読取機能を有する複写機、ファクシミリ装置、プリンター、及び複合機などの画像形成装置にも適用することができる。また、前記ADF2を有さない所謂フラットベッドスキャナーと称される画像読取装置も本発明に係る画像読取装置の一例である。
【0011】
前記装置本体1は、コンタクトガラス21、読取ユニット23、ミラー43、44、光学レンズ45、CCD(Charge Coupled Device)46、及び制御部50などを備えている。
前記コンタクトガラス21は、前記装置本体1の上面に設けられており、前記スキャナーXの画像読取対象となる原稿Pが載置される透明な原稿台である。
前記読取ユニット23は、LED光源41(光源の一例)及びミラー42を備えており、ステッピングモーター等の駆動モーター25(図2参照)によって図1における左右方向(以下「副走査方向」という)へ移動可能に構成されている。ここに、前記LED光源41は、温度変化に伴う光量変化の小さい光源の一例に過ぎず、前記LED光源41に代えて温度変化に伴う光量変化の小さい他の光源を用いてもよい。なお、前記読取ユニット23の移動機構は従来周知の構造を採用すればよいためここでは説明を省略する。
【0012】
前記LED光源41は、図1において奥行き方向(以下「主走査方向」という)に沿って配列された多数の白色LEDを備えており、前記コンタクトガラス21上の読取位置22にある原稿P又は後述の原稿押さえ15に1ライン分の白色光を照射する。前記読取位置22は、前記読取ユニット23が副走査方向に移動することにより副走査方向に移動することになる。
前記ミラー42は、前記LED光源41から前記読取位置22にある原稿P又は後述の原稿押さえ15に光を照射したときの反射光を前記ミラー43に向けて反射させる。そして、前記ミラー42で反射した光は、前記ミラー43、44によって前記光学レンズ45に導かれる。前記光学レンズ45は、入射した光を集光して前記CCD46に入射させる。
前記CCD46は、受光した光をその光量に応じた電気信号(電圧)に変換する光電変換素子(撮像素子)であり、前記原稿Pなどから反射した光を受光して1ラインごとに画像データを読み取る。前記CCD46で読み取られた画像データは前記制御部50に入力される。なお、本実施の形態では、光電変換素子として前記CCD46を用いた例について説明するが、前記CCD46よりも焦点距離の短い密着型のイメージセンサー(CIS:Contact Image Sensor)を用いてもよい。
【0013】
一方、前記ADF2は、原稿セット部13、複数の搬送ローラー14、原稿押さえ15、及び排紙部16などを備えている。前記ADF2は、前記搬送ローラー14各々を不図示のモーターで駆動させることにより、前記原稿セット部13にセットされた原稿Pを前記コンタクトガラス21上の読取位置22を通過させて前記排紙部16まで搬送させる。
前記原稿押さえ15は、前記コンタクトガラス21上の読取位置22の上方に原稿Pが通過できる間隔を隔てた位置に設けられている。前記原稿押さえ15は、主走査方向に長尺状を成しており、その下面(コンタクトガラス21側の面)には白色のシート(白基準部材の一例)が貼り付けられている。前記スキャナーXでは、前記白色のシートの画像データが白色基準データとして読み取られる。そして、前記白色基準データは、周知のシェーディング補正や後述の周期設定処理(図3参照)などで用いられる。
【0014】
続いて、図2のブロック図を参照しつつ、前記制御部50について説明する。
図2に示すように、前記制御部50は、CPU51、ROM52、RAM53、EEPROM54、クロックジェネレーター55、CDS56、AGC57、ADC58、DSP59、及び画像メモリー60などを備えている。前記制御部50は、集積回路(ASIC)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
前記ROM52には、所定の制御プログラム及び各種パラメーターが記憶されている。前記CPU51は、前記ROM52に格納された所定の制御プログラムに従った処理を実行することにより前記スキャナーXを統括的に制御する。具体的に、前記CPU51は、後述の周期設定処理(図3参照)や画像読取処理(図5参照)を実行する。前記RAM53は、前記CPU51で実行される各種の処理の一次記憶領域(作業領域)として利用される。前記EEPROM54は、前記CPU51による各種データの読み書きが可能な不揮発性の記憶手段である。
【0015】
前記クロックジェネレーター55は、前記CPU51からの制御指示により設定された周期Tに従って水平同期信号を生成する。そして、前記クロックジェネレーター55は、前記水平同期信号をモータードライバー24、前記CCD46、前記CDS56、前記AGC57、前記ADC58、前記DSP59などに入力する。
ここに、前記スキャナーXは、画像読取処理について通常モード及び高速読取モードを有している。そして、前記通常モードでは、前記LED光源41の光量が最小である状況において前記CCD46の出力レベルが画像データについて予め設定された画質が得られる値になる通常周期T0(第2周期の一例)の水平同期信号が前記クロックジェネレーター55で生成される。例えば、前記LED光源41の光量が最小である状況とは、通常想定される使用環境の影響を受けて前記LED光源41の光量が最も低下した点灯状態である。なお、前記通常周期T0は、前記ROM52(第2周期記憶手段の一例)に予め記憶されている。
また、前記高速読取モードでは、後述の周期設定処理(図3参照)で設定される高速周期T1(第1周期の一例)の水平同期信号が前記クロックジェネレーター55で生成される。なお、前記高速周期T1は、後述の周期設定処理で設定されて前記EEPROM54に記憶される。
【0016】
前記モータードライバー24は、前記クロックジェネレーター55から入力される前記水平同期信号に従って前記駆動モーター25の駆動を制御することにより、前記読取ユニット23を副走査方向に移動させる。これにより、前記読取ユニット23のLED光源41が原稿Pに対して相対的に移動することになる。ここに、前記モータードライバー24及び前記駆動モーター25が移動手段の一例である。
具体的に、前記モータードライバー24は、前記水平同期信号の周期Tの間に前記光源ユニット23が1ライン分だけ移動するように前記駆動モーター25を制御する。即ち、前記読取ユニット23の1ライン分の移動時間は前記水平同期信号の周期Tによって定まる。
【0017】
一方、前記CCD46は、前記クロックジェネレーター55から入力される前記水平同期信号に従って1ライン分の画像データの読み取りを実行する。具体的に、前記CCD46は、前記水平同期信号の周期Tの間に蓄積された光量に応じて1ライン分の画像データを出力する。そのため、前記CCD46における前記1ライン分の画像データに対応する光量の蓄積時間は前記水平同期信号の周期Tにより定まる。
前記CDS56は、前記CCD46から入力される画像データについて、相関二重サンプリング法などに基づくノイズ除去処理を実行する電気回路である。前記CDS56でノイズが除去された画像データは、前記AGC57に入力される。
前記AGC57は、前記CDS56から入力された画像データを予め設定された増幅率(ゲイン)に従って増幅させるゲインコントロールアンプである。前記AGC57による増幅後の画像データは前記ADC58に入力される。
前記ADC58は、前記AGC57から入力されたアナログ信号の画像データをデジタル信号に変換するADコンバーターである。前記ADC58でデジタル化された画像データは前記DSP59に入力される。
【0018】
前記DSP59は、前記ADC58から入力された画像データに対して各種の画像処理を施す信号処理プロセッサーである。例えば、前記DSP59は、前記ADC58から入力されたRGBデータをYUVデータに変換する信号変換処理を実行する。前記DSP59で信号処理が施された後の画像データは、前記画像メモリー60に記憶される。
前記画像メモリー60は、前記スキャナーXで読み取られる画像データを蓄積記憶するハードディスクや半導体メモリーなどの記憶手段である。前記画像メモリー60に記憶された画像データは、例えばネットワーク接続された不図示のパーソナルコンピューター等の外部装置に転送され、或いは電話回線を通じてファクシミリ送信される。また、前記スキャナーXが複写機又は複合機などの画像形成装置に搭載される場合には、前記画像メモリー60に記憶された画像データに基づく画像形成処理が実行される。
【0019】
<周期設定処理>
次に、図3のフローチャートを参照しつつ、前記高速読取モードで使用される前記高速周期T1を設定するために前記CPU51によって実行される周期設定処理の手順の一例について説明する。ここに、前記周期設定処理を実行して前記高速周期T1を設定するときの前記CPU51が周期設定手段に相当する。なお、S1、S2、・・・は処理手順(ステップ)番号を表している。
【0020】
(ステップS1〜S2)
まず、ステップS1において、前記CPU51は、前記スキャナーXの電源投入時又はスリープモード解除時の到来を待ち受ける(S1のNo側)。なお、前記スリープモードとは、一般に省エネモードや待機モードとも称される動作モードであり、前記スキャナーXが一部の機能を除いて停止した状態である。
ここで、前記スキャナーXの電源投入時又は前記スリープモード解除時のいずれかが到来したと判断すると(S1のYes側)、処理はステップS2に移行する。なお、前記ステップS1において、前記CPU51が前記スキャナーXの電源投入時又はスリープモード解除時のいずれか一方だけを監視することも他の実施例として考えられる。
ステップS2において、前記CPU51は、前記AGC57における増幅率を1倍(等倍)に設定する。これにより、前記AGC57では、前記CCD46からの画像データの出力レベルが増幅されず、前記画像データがそのままの出力レベルで前記ADC58に入力される。
【0021】
(ステップS3)
次に、ステップS3において、前記CPU51は、前記原稿押さえ15に貼付された白色のシートの画像データを白色基準データとして取得する。具体的に、前記CPU51は、前記通常周期T0の間に前記LED光源41の光を前記原稿押さえ15に照射したときの反射光を前記CCD46で受光することにより前記白色基準データを読み取る。このとき、前記AGC57における増幅率が1倍に設定されているため、前記ADC58には、前記CCD46からの画像データの出力レベルがそのまま入力される。このように、前記スキャナーXの電源投入時やスリープモード解除時において前記白色基準データを読み取るための処理を実行するときの前記CPU51が白色基準読取手段に相当する。
【0022】
(ステップS4)
そして、ステップS4において、前記CPU51は、前記ステップS3による前記白色基準データの読み取り時における前記CCD46の出力レベルに応じて、前記高速読取モードで使用する前記高速周期T1を設定する。
【0023】
ここに、図4は、前記ステップS4における前記高速周期T1の設定手法の一例を説明するための図である。なお、図4において、(a)は前記通常モードにおける水平同期信号、(b)は前記通常モードにおける前記CCD46の出力レベル(出力電圧)を示すものである。一方、図4において、(c)は前記高速読取モードにおける水平同期信号、(b)は前記高速読取モードにおける前記CCD46の出力レベル(出力電圧)を示すものである。
また、図4における出力電圧V0は、前記CCD46の受光前の初期出力電圧(黒色に相当)であり、出力電圧V1は、前記CCD46で読み取られる画像データについて所定の画質が得られる最低限の白色基準データの値である。
【0024】
図4(a)、(b)に示すように、前記ステップS3により前記白色基準データが取得される際、前記CCD46の出力レベルは、前記通常周期T0の間に前記LED光源41からの光を受光することにより前記出力電圧V0から徐々に低下する。即ち、前記CCD46は、前記LED光源41からの光の受光量が増加するに連れて出力レベルが低下するものである。
このとき、前記LED光源41の光強度が強く前記CCD46の単位時間あたりの受光量が多ければ、図4(b)に実線で示すように前記CCD46の出力レベルが前記出力電圧V1(時間t1の時点)を超えて出力電圧V2(時間t2の時点)まで急激に低下する。なお、この場合、前記CCD46の出力レベルの最大変動量はV2−V0である。
一方、前記LED光源41の光強度が弱く単位時間あたりの前記CCD46の受光量が少なければ、図4(b)に破線で示すように前記CCD46の出力レベルは前記出力電圧V1(時間t2の時点)まで緩やかに低下する。なお、この場合、前記CCD46の出力レベルの最大変動量はV2−V1である。
そのため、前記出力電圧V0から前記出力電圧V1に達するまでの時間は、前記LED光源41の光強度が強いほど早い。従って、前記LED光源41の光強度が強い場合には、前記LED光源41の光強度が弱い場合と同様の前記通常周期T0で画像読取処理が実行されると、その画像読取処理の所要時間が無駄に長くなる。
【0025】
そこで、前記CPU51は、前記通常周期T0の間における前記CCD46の出力レベルの変動量に応じて、画像読取処理の所要時間の無駄を省くことのできる前記高速周期T1を算出する。具体的に、前記CPU51は、以下の(1)式に従って前記高速周期T1を算出する。
T1=T0×L0/L1 ・・・(1)
ここに、L0は、前記通常周期T0の水平同期信号に従って前記CCD46で前記白色基準データを取得したときに得られる1ライン分の出力レベルの最大変化量である(図4(b)参照)。また、L1は、前記ステップS3で前記白色基準データが取得されたときの前記CCD46の1ライン分の出力レベルの最大変化量である(図4(b)参照)。
従って、上記(1)式に基づいて前記高速周期T1を算出すると、前記ステップS3で前記通常周期T0の間に前記白色基準データが取得されたときの前記CCD46の出力レベルの最小値が低いほど(最大変化量が大きいほど)前記高速周期T1が短く設定され、前記CCD46の出力レベルの最小値が高いほど(最大変化量が小さいほど)前記高速周期T1が長く設定されることになる。
また、例えば前記高速周期T1の下限値を予め設定しておき、前記(1)式の算出結果が前記下限値未満となった場合には前記高速周期T1をその下限値に設定することが望ましい。これにより、前記高速周期T1が短くなりすぎて読取精度が低下しすぎることを防止することができる。
なお、前記(1)式に従った前記高速周期T1の算出は、前記CCD46の出力レベルが前記出力電圧V0から前記出力電圧V1に到達する時間を、前記通常周期T0の間における前記CCD46の出力レベルの最大変動量の大きさから推測するものである。一方、前記CCD46の出力レベルが前記出力電圧V1に到達したことを検出することができれば、前記CCD46の出力レベルが前記最大電圧V0から前記出力電圧V1に到達するまでの時間を測定し、その時間に応じて前記高速周期T1を設定すればよい。
【0026】
(ステップS5)
その後、ステップS5において、前記CPU51は、前記ステップS4で算出された前記高速周期T1を前記EEPROM54に記憶させる。ここに、係る記憶処理を実行するときの前記CPU51が第1周期記憶手段に相当する。
このように、前記周期設定処理では、前記スキャナーXの電源投入時又はスリープモード解除時においてのみ(S1のYes側)、前記高速周期T1が設定されて前記EEPROM54に記憶される(S2〜S5)。そのため、前記スキャナーXでは、画像読取処理が実行される度に前記白色基準データの取得や前記高速周期T1の設定を行う構成に比べて処理負荷が少なく、結果的に画像読取処理の高速化を実現することができる。なお、前記LED光源41は温度変化に伴う光量変化が小さいため、前記スキャナーXの電源投入時又はスリープモード解除時のみに前記高速周期T1を更新することで画質低下の問題は生じない。
【0027】
<画像読取処理>
以下、図5のフローチャートを参照しつつ、前記スキャナーXにおいて前記CPU51で実行される画像読取処理について説明する。ここに、S11、S12、・・・は処理手順(ステップ)番号を表している。
【0028】
(ステップS11〜S12)
まず、ステップS11において、前記CPU51は、画像読取処理の開始要求を待ち受ける(S11のNo側)。そして、ユーザーによる画像読取処理の要求操作が不図示の操作表示部などに対してなされた場合、前記CPU51は、画像読取処理の開始要求があったと判断し(S11のYes側)、処理をステップS12に移行させる。
ステップS12において、前記CPU51は、要求された画像読取処理について前記高速読取モードが選択されているか否かを判断する。前記通常モード又は前記高速読取モードの選択は、前記画像読取処理の開始要求時に前記操作表示部(不図示)などへのユーザーによる操作入力に応じて前記CPU51が行う。ここに、前記通常モード又は前記高速読取モードのいずれかを選択することにより、画像読取処理で使用する前記水平同期信号の周期Tとして前記高速周期T1又は前記通常周期T0のいずれかを選択するときの前記CPU51が周期選択手段に相当する。
ここで、前記高速読取モードが選択されていると判断されると(S12のYes側)、処理はステップS121に移行する。一方、前記高速読取モードが選択されていない(通常モードが選択されている)と判断されると、処理はステップS13に移行する。
【0029】
(ステップS13〜S14、通常モード)
前記通常モードが選択された場合、続くステップS13において、前記CPU51は、前記ROM52から前記通常周期T0を読み出す。
次に、ステップS14において、前記CPU51は、前記通常周期T0を前記クロックジェネレーター55で生成される前記水平同期信号の周期Tとして設定する。これにより、前記クロックジェネレーター55では、前記通常周期T0の水平同期信号が生成される。従って、前記駆動モーター25による前記読取ユニット23の1ライン分の移動及び前記CCD46による1ライン分の画像データの読み取りは、前記通常周期T0の水平同期信号に従って実行されることとなる。
【0030】
(ステップS121〜S122、高速読取モード)
前記高速読取モードが選択された場合、続くステップS121において、前記CPU51は、前記EEPROM54から前記高速周期T1を読み出す。
そして、ステップS122において、前記CPU51は、前記高速周期T1を前記クロックジェネレーター55で生成される前記水平同期信号の周期Tとして設定する。これにより、前記クロックジェネレーター55では、前記高速周期T1の水平同期信号が生成される。従って、前記駆動モーター25による前記読取ユニット23の1ライン分の移動及び前記CCD46による1ライン分の画像データの読み取りは、前記高速周期T1の水平同期信号に従って実行されることとなる。なお、前記高速読取モードにおける前記読取ユニット23の移動速度は、前記通常モードにおける前記駆動モーター24による前記読取ユニット23の移動速度の概ね(通常周期T0/高速周期T1)倍となる。
このように、前記駆動モーター25による1ライン分の前記読取ユニット23の移動及び前記CCD46による1ライン分の画像データの読み取りを予め設定された前記通常周期T0又は前記高速周期T1で実行させるときの前記CPU51が周期制御手段に相当する。
そして、処理はステップS15に移行する。
【0031】
(ステップS15〜S16)
その後、ステップS15において、前記CPU51は、前記ステップS14又は前記ステップS122で前記水平同期信号の周期Tとして設定された前記通常周期T0又は前記高速周期T1に従って前記白色基準データを取得するための画像読取を実行する。
次に、ステップS16において、前記CPU51は、前記ステップS15で前記CCD46により前記白色基準データが読み取られたときの前記AGC56の出力レベルが予め設定された所定レベルに達しているか否かに応じて処理を分岐する。前記所定レベルは、前記ADC58におけるアナログ−デジタル変換に最低限必要な入力信号の振幅が確保されるように予め仕様により定められた値である。
ここで、前記白色基準データの出力レベルが前記所定レベルに達していると判断されると(S16のYes側)、処理はステップS17に移行し、前記白色基準データの出力レベルが前記所定レベルに達していないと判断されると(S16のNo側)、処理はステップS20に移行する。
【0032】
(ステップS20)
ステップ20において、前記CPU51は、現在の前記AGC57の増幅率αを既定値だけ増加させたときの前記白色基準データの出力レベルを算出する。即ち、前記ステップS16及び前記ステップS20において、前記白色基準データの出力レベルが、前記所定レベルに達するまで前記増幅率αが徐々に増加されることとなる。そして、前記白色基準データの出力レベルが前記所定レベルに達すると(S16のYes側)、処理はステップS17に移行する。
【0033】
(ステップS17〜S19)
ステップS17において、前記CPU51は、前記ステップS16で前記白色基準データの最小値が前記所定レベルに達していると判断されたときの前記増幅率αを固定情報として前記EEPROM54に記憶する。
そして、ステップS18において、前記CPU51は、前記ステップS17で前記EEPROM54に記憶された前記増幅率αを前記AGC57の増幅率として設定する。
その後、ステップS19において、前記CPU51は、前記ステップS12で選択された前記通常モード又は前記高速読取モードに対応する前記通常周期T0又は前記高速周期T1で、前記駆動モーター25による前記読取ユニット23の1ライン分の移動及び前記CCD46による1ライン分の画像データの読み取りを実行させる。
具体的に、前記CPU51は、前記クロックジェネレーター55で生成される前記水平同期信号の周期Tを前記通常周期T0又は前記高速周期T1に設定し、前記クロックジェネレーター55から前記通常周期T0又は前記高速周期T1の水平同期信号を前記モータードライバー24及び前記CCD46に入力させる。これにより、前記駆動モーター25による前記読取ユニット23の1ライン分の移動及び前記CCD46による1ライン分の画像データの読み取りは、前記ステップS12で選択された前記通常モード又は前記高速読取モードに対応する前記通常周期T0又は前記高速周期T1で実行される。
【0034】
以上説明したように、前記スキャナーXの電源投入時又はスリープモード解除時のみにおいて前記高速周期T1を設定し、その後、前記高速読取モードが選択された場合に、前記高速周期T1の水平同期信号に従って画像読取処理が実行される。そのため、前記スキャナーXにおいて画像読取処理が開始される度に前記高速周期T1を設定する必要がなく、処理手順を簡素化することができる。これにより、前記スキャナーXにおける前記高速読取モードの画像読取処理は前記LED光源41の光量に応じて適宜高速化される。
なお、本実施の形態では、前記スキャナーXが前記通常モード及び前記高速読取モードのいずれかで画像読取処理を実行する場合を例に挙げて説明した。一方、前記スキャナーXが一つの動作モードのみで画像読取処理を実行する構成も考えられる。この場合、その動作モードで用いる水平同期信号の周期が前記高速周期T1と同様に設定される。
また、本実施の形態では、前記読取ユニット23を前記駆動モーター25で移動させることにより、前記LED光源41と前記原稿Pとを相対的に移動させる場合を例に挙げて説明した。一方、例えば前記ADF2により前記原稿Pを搬送することにより、前記原稿Pと前記LED光源41とを相対的に移動させる場合にも同様に適用可能である。この場合には、前記搬送ローラー14を駆動するモーター(不図示)の駆動が前記高速周期T1の水平同期信号で制御されることとなる。
【符号の説明】
【0035】
1 :装置本体
13:原稿セット部
14:搬送ローラー
15:原稿押さえ
16:排紙部
2 :ADF
21:コンタクトガラス
22:読取位置
23:読取ユニット
24:モータードライバー
25:駆動モーター
41:LED光源
42〜44:ミラー
45:光学レンズ
46:CCD(光電変換素子の一例)
50:制御部
51:CPU
52:ROM
53:RAM
54:EEPROM
X :スキャナー(画像読取装置の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に光を照射する光源と、前記光源及び前記原稿を相対的に移動させる移動手段と、前記原稿から反射した光を受光して1ラインごとに画像データを読み取る光電変換素子と、前記移動手段による1ライン分の移動及び前記光電変換素子による1ライン分の画像データの読み取りを予め設定された周期で実行させる周期制御手段と、を備えてなる画像読取装置であって、
前記画像読取装置の電源投入時及びスリープモード解除時のいずれか一方又は両方において前記光電変換素子で白色基準部材から白色基準データを読み取る白色基準読取手段と、前記白色基準読取手段による前記白色基準データの読み取り時における前記光電変換素子の出力レベルに応じて第1周期を設定する周期設定手段と、前記周期設定手段により設定された前記第1周期を記憶する第1周期記憶手段と、を備えてなり、
前記周期制御手段は、前記第1周期記憶手段に記憶された前記第1周期で前記移動手段による1ライン分の移動及び前記光電変換素子による1ライン分の画像データの読み取りを実行させるものであることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記光源がLED光源である請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記光源の光量が最小である状況において前記光電変換素子の出力レベルが前記画像データについて予め設定された画質が得られる値になる周期として予め設定された第2周期が記憶された第2周期記憶手段と、前記第1周期記憶手段に記憶された前記第1周期及び前記第2周期記憶手段に記憶された前記第2周期のいずれかを選択する周期選択手段と、を更に備えてなり、
前記周期制御手段は、前記周期選択手段により選択された前記第1周期又は前記第2周期で前記移動手段による1ライン分の移動及び前記光電変換素子による1ライン分の画像データの読み取りを実行させるものである請求項1又は2のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記周期制御手段は、前記第1周期又は前記第2周期で発生する水平同期信号を前記移動手段及び前記光電変換素子に入力することにより、前記第1周期又は前記第2周期で前記移動手段による1ライン分の移動及び前記光電変換素子による1ライン分の画像データの読み取りを実行させるものである請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記光電変換素子が、受光量の増加に伴って出力レベルが低下するものであり、
前記白色基準読取手段が、前記第2周期の間に前記光電変換素子で前記白色基準部材から前記白色基準データを読み取るものであって、
前記周期設定手段が、前記第2周期の間における前記光電変換素子の出力レベルの最小値が低いほど前記第1周期を短く設定し、前記第2周期の間における前記光電変換素子の出力レベルの最小値が高いほど前記第1周期を長く設定するものである請求項3又は4のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の画像読取装置を備えてなる画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−85199(P2013−85199A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225289(P2011−225289)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】