説明

画像読取装置及び画像形成装置

【課題】バッファーの記憶容量を有効に利用し、原稿の読み取りの間歇動作の頻度を軽減する。
【解決手段】2つのバッファーを交互に切り替えて原稿が読み取られた画像データを記憶するとともに当該記憶先とは他方のバッファーから画像データを転送する転送部と、記憶先のバッファーが切り替えられる場合に切り替え先のバッファーからの転送が終了していないときはメモリーフル状態であると判断し、当該メモリーフル状態後に前記転送が終了したときはメモリーレディー状態であると判断する状態判断部と、駆動クロック信号に同期したライン周期で原稿を1ラインずつ読み取らせ、メモリーフル状態になると読取位置を記憶するとともに原稿の読み取りを停止させ、当該停止後にメモリーレディー状態になると駆動モーターを回転駆動させて前記記憶された読取位置から原稿の読み取りを再開させる読取制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の画像を読み取る画像読取装置及び当該画像読取装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スキャナー等の画像読取装置が原稿を読み取ることで生成した原稿の画像データを処理する画像形成装置が用いられており、例えば、スキャナー自身や、スキャナーによって読み取られた原稿の画像データを処理する複写機、ファクシミリ及びこれらの複合機等が用いられている。
【0003】
原稿を読み取った画像データは、例えば、画像読取装置に備えられた液晶ディスプレイに表示される、記録媒体に印刷される、或いは、当該画像読取装置に接続されたパーソナルコンピュータに転送される等、画像読取装置に備えられた各部や当該画像読取装置に接続された外部装置の入力データとして転送される。
【0004】
このとき、原稿を読み取る速度に比して、当該原稿を読み取った画像データを各部に転送する速度が遅くなることに備えて、原稿を読み取った画像データを一時的にバッファーメモリーに記憶してから、当該バッファーメモリーに記憶された画像データを各部に転送するバッファー転送技術が従来から採用されてきた。
【0005】
また、このようなバッファーメモリーを節約して利用するために、例えば、下記特許文献1乃至特許文献4には、バッファーメモリーに画像データを記憶可能な残りの記憶容量が予め定められた閾値よりも小さくなるニアフル状態になると原稿の読み取りを一時停止して、バッファーメモリーから各部への画像データの転送のみを進行させ、その後、ニアフル状態が解消されると原稿の読み取りを再開する、原稿の読み取りを間歇動作する技術が記載されている。
【0006】
下記特許文献4には、更に、読み取った画像データの転送先となるホストコンピュータに搭載されたCPUの動作クロックを当該ホストコンピュータとの交信によってチェックし、当該チェックしたCPUの動作クロックに応じて走行体の移動速度を設定し、当該走行体の移動速度に同期した読み取り周期で原稿を読み取ることによって、間歇動作の発生頻度を少なくする技術も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−141523号公報
【特許文献2】特開2001−186311号公報
【特許文献3】特開平08−228267号公報
【特許文献4】特開平10−285345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の従来技術では、バッファーメモリー(バッファー)に画像データを記憶可能な残りの記憶容量が予め定められた閾値よりも小さくなるニアフル状態になると原稿の読み取りが一時停止されるため、バッファーにおける予め定められた閾値分の記憶容量は、画像データの読み取り速度と転送速度との差が想定以上に大きくなって、原稿の読み取りの停止が間に合わずに画像データをバッファーに記憶できなくなることに対処するための備えとして利用されるものであり、画像データを記憶するための記憶領域として有効に利用されていなかった。
【0009】
また、上記特許文献4に記載の技術では、例えば、ホストコンピューターに備えられた画像データを受信するために用いられるインターフェイス回路におけるデータ受信速度が遅い等の、CPU以外のデータ通信に関わるインターフェイス部のスペックが低いことに起因して画像データの転送速度が遅くなり、ホストコンピューターのCPUの動作クロックに応じて原稿の読み取り速度を向上したにもかかわらず、かえって頻繁に間歇動作を行わなければならなくなる虞があった。
【0010】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、バッファーの記憶容量を有効に利用し、原稿の読み取りの間歇動作の頻度を軽減することができる画像読取装置及び当該画像読取装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、原稿に対して副走査方向に相対的に移動しながら主走査方向1ライン分ずつ原稿を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部を原稿に対して副走査方向に相対的に移動させる駆動モーターと、
前記駆動モーターを回転駆動させる駆動制御部と、
前記駆動モーターが所定角度回転したことを示す駆動クロック信号を用いて、原稿の副走査方向における読取位置を検出する読取位置検出部と、
前記読取位置検出部で検出された読取位置を記憶する位置情報記憶部と、
2つのバッファーを備え、記憶先のバッファーを交互に切り替えて、前記画像読取部によって原稿が読み取られた画像データを記憶するとともに、当該記憶先のバッファーとは他方のバッファーに記憶された画像データを当該画像読取装置の各部又は当該画像読取装置に接続された外部装置に転送する転送部と、
前記転送部によって画像データの記憶先のバッファーが切り替えられる場合に、当該切り替え先のバッファーからの画像データの転送が終了していないときは、画像データを記憶することができないメモリーフル状態であると判断し、当該メモリーフル状態であると判断した後に、前記切り替え先のバッファーからの画像データの転送が終了したときは、画像データを記憶することができるメモリーレディー状態にあるものと判断する状態判断部と、
前記駆動クロック信号に同期した予め定められたライン周期で、主走査方向1ライン分ずつ前記画像読取部に原稿を読み取らせる読取制御部と、
を備え、
前記読取制御部は、前記状態判断部によって前記メモリーフル状態にあるものと判断されると、前記読取位置検出部で検出された読取位置を前記位置情報記憶部に記憶するとともに、前記画像読取部に原稿を読み取らせることを停止させ、当該停止させた後に前記状態判断部によってメモリーレディー状態にあるものと判断されると、前記駆動制御部に前記駆動モーターを回転駆動させて前記位置情報記憶部に記憶された前記読取位置に前記画像読取部を移動させた後、前記画像読取部に原稿の読み取りを再開させる画像読取装置である。
【0012】
この発明では、メモリーフルの状態にない場合は、画像読取部で読み取られた画像データを記憶する、又は、既に記憶されている画像データを転送する、の何れか一方の目的で、2つのバッファーが同時に利用されるため、バッファーの記憶容量を有効に利用することができる。
【0013】
また、当該2つのバッファーの記憶容量の2倍の記憶容量を持つハイスペックなバッファーを1つ備えて、当該バッファーに画像データを記憶可能な残りの記憶容量が予め定められた閾値よりも小さくなるニアフル状態になると、原稿の読み取りを停止させる、従来からの原稿の読み取りの間歇動作に比して、バッファーの記憶領域のうちの予め定められた閾値分の記憶容量も画像データの記憶領域として有効に利用するため、バッファーに記憶される画像データの量を相対的に多くして、原稿の読み取りの間歇動作が行われる回数を軽減することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像読取装置であって、前記読取制御部は、前記画像読取部に原稿を読み取らせることを停止させたときに、前記位置情報記憶部に記憶された読取位置から原稿の読み取り方向とは逆方向の予め定められた距離分離れた待機位置に前記画像読取部を移動させるように前記駆動制御部に前記駆動モーターを回転駆動させ、
前記画像読取部に原稿の読み取りを再開させるときに、前記画像読取部の移動速度が前記ライン周期に応じた一定速度になるまで、前記待機位置から予め定められた加速度で前記画像読取部を加速して移動させ、更に、前記画像読取部を前記一定速度で予め定められた助走距離分移動させた後、前記画像読取部が前記位置情報記憶部に記憶された前記読取位置に移動するように前記駆動制御部に前記駆動モーターを回転駆動させる。
【0015】
この発明では、画像読取部に原稿を読み取らせることを停止させたときに、位置情報記憶部に記憶された読取位置から、原稿の読み取り方向とは逆の副走査方向に予め定められた距離分離れた待機位置に画像読取部を移動させ、その後に原稿の読み取りを再開する場合に、当該待機位置から位置情報記憶部に記憶された位置まで画像読取部を助走させる。
【0016】
そして、原稿の読み取りを再開する場合は、当該助走期間で画像読取部の移動速度を予め定められた加速度で加速してライン周期に応じた一定速度にした後、位置情報記憶部に記憶された読取位置までの予め定められた助走距離分、画像読取部を当該一定速度で安定して移動させるため、当該読取位置に画像読取部が移動した時点で、画像読取部に与えられる振動、又は、原稿に与えられる振動を軽減することができる。これにより、原稿の読み取り動作を再開する場合に読み取り位置にずれが生じる機会を軽減して、読み取られた画像データの画質が劣化することを回避することができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像読取装置であって、前記読取制御部は、前記転送部によって前記バッファーに記憶された画像データが当該画像読取装置の各部又は当該画像読取装置に接続された外部装置に転送されるのに要する時間に比して、画像データを前記バッファーに記憶するのに要する時間が大きくなるように、前記駆動クロック信号の出力間隔を大きくする回転速度で前記駆動制御部に前記駆動モーターを回転駆動させる。
【0018】
この発明では、バッファーから画像データを転送するのに要する時間が、画像データをバッファーに記憶するのに要する時間よりも小さくなるため、画像データをバッファーに記憶することを転送するよりも先に終了させて、記憶先のバンドバッファーを切り替えることができないメモリーフル状態にすることを回避することができ、原稿の読み取りの間歇動作が行われる回数を軽減することができる。これにより、原稿の読み取りの間歇動作における原稿の読み取り再開時に読み取り位置にずれが生じる機会を軽減して、読み取られた画像データの画質が劣化することを回避することができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れかに記載の画像読取装置であって、前記読取制御部は、前記ライン周期が予め定められた周期閾値よりも短く設定されている場合は、前記画像読取部に原稿の読み取りを開始させるときに、前記画像読取部の移動速度が前記ライン周期に応じた一定速度になるまで、前記画像読取部の待機位置から予め定められた加速度で前記画像読取部を加速して移動させ、更に、前記画像読取部を前記一定速度で予め定められた助走距離分移動させた後、前記画像読取部が読取開始位置に移動するように前記駆動制御部に前記駆動モーターを回転駆動させる。
【0020】
この発明では、ライン周期が予め定められた周期閾値よりも短く設定され、画像読取部を高速に移動して原稿を読み取らせるときは、画像読取部の移動速度を予め定められた加速度で加速してライン周期に応じた一定速度にした後、読取開始位置までの予め定められた助走距離分、画像読取部を当該一定速度で安定して移動させるため、当該読取開始位置に画像読取部が移動した時点で、画像読取部に与えられる振動、又は、原稿に与えられる振動を軽減することができる。これにより、例えば読取開始位置を読み取った画像に歪みが生じる等、読み取られた画像データの画質が劣化することを回避することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れかに記載の画像読取装置であって、前記駆動モーターはステッピングモーターで構成され、
前記駆動クロック信号は、前記駆動制御部によって当該ステッピングモーターを回転駆動させるために用いる駆動電圧が示すパルス信号である。
【0022】
この発明では、読取位置検出部は、ステッピングモーターを回転駆動させるために用いられる駆動電圧が示すパルス信号を用いて、原稿の副走査方向における読取位置を検出することができるとともに、請求項1から4の何れかに記載の発明の効果を奏することができる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から4の何れかに記載の画像読取装置であって、前記駆動モーターは、当該駆動モーターが所定回転角度回転する度にパルス信号を出力する回転角度センサーを備えたDCサーボモーターで構成され、
前記駆動クロック信号は、前記回転角度センサーから出力されるパルス信号である。
【0024】
この発明では、読取位置検出部は、回転角度センサーが出力するパルス信号を用いて、原稿の副走査方向における読取位置を検出することができるとともに、請求項1から4の何れかに記載の発明の効果を奏することができる。
【0025】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から6の何れかに記載の画像読取装置と、
前記画像読取部によって画像形成対象の原稿が読み取られた画像データを用いて、当該画像データが示す画像を記録媒体に形成する記録部と、
を備えた画像形成装置である。
【0026】
この発明によれば、画像読取部によって画像形成対象の原稿が読み取られた画像データを用いて、当該画像データが示す画像を記録媒体に形成することができるとともに、請求項1から6の何れかに記載の発明における効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、バッファーの記憶容量を有効に利用し、原稿の読み取りの間歇動作の頻度を軽減することができる画像読取装置及び当該画像読取装置を備えた画像形成装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る画像読取装置及び画像形成装置の一例としての複合機の概略構成図。
【図2】複合機の電気的な構成を示すブロック図。
【図3】転送部によって画像データを記憶する及び転送する動作の一例を示す説明図。
【図4】原稿の読み取り動作の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る画像読取装置及び画像形成装置について図面を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、本発明に係る画像読取装置及び画像形成装置の一例を、カラーコピー、スキャナー、ファクシミリ、プリンタ等の機能を備えた複合機に集約した形態を例に説明する。
【0030】
図1に示すように、複合機1は、画像読取装置20と装置本体30とを備えている。画像読取装置20は、原稿搬送部21と画像読取部22を備えている。
【0031】
原稿搬送部21は、ADF(Automatic Document Feeder:自動給紙装置)を実現するものであり、原稿載置台241、給紙ローラ232、搬送ドラム233、排紙ローラ234及び排紙トレイ235を備えている。原稿載置台241は、原稿が載置される場所であり、原稿載置台241に載置された原稿は1枚ずつ給紙ローラ232によって取り込まれて搬送ドラム233へ搬送される。搬送ドラム233を経由した原稿は排紙ローラ234によって排紙トレイ235へ排出される。
【0032】
画像読取部22は、装置本体30に設けられ、原稿の画像を光学的に読み取って画像データを生成する。画像読取部22は、コンタクトガラス221、光源222、第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225、第1キャリッジ226、第2キャリッジ227、結像レンズ228、CCD(Charge Coupled Device)229を備えている。尚、光源222及び第1ミラー223は、第1キャリッジ226によって支持され、第2ミラー224及び第3ミラー225は第2キャリッジ227によって支持されている。
【0033】
画像読取部22は、光源222として例えば白色LED等の白色蛍光ランプが用いられ、上記第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225、第1キャリッジ226、第2キャリッジ227及び結像レンズ228により、光源222から原稿に向けて光が照射された際に、原稿から反射される反射光をCCD229に導くものである。
【0034】
画像読取装置20の原稿読取方法としては、コンタクトガラス221上に載置された原稿を画像読取部22が読み取るフラットベッド読取モードと、原稿をADFによって取り込み、その搬送途中で原稿を読み取るADF読取モードがある。
【0035】
フラットベッド読取モードでは、光源222がコンタクトガラス221上に載置された原稿を照射し、主走査方向1ライン分の反射光が第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225の順に反射して、結像レンズ228に入射する。結像レンズ228に入射した光は、CCD229の受光面で結像される。
【0036】
尚、CCD229は、一次元のイメージセンサであり、原稿の主走査方向1ライン分の反射光を受光すると、当該受光した反射光を光電変換して原稿の主走査方向1ライン分の画像データを出力する。
【0037】
このようにして、原稿の主走査方向1ライン分の読み取りが終了すると、後述するキャリッジ駆動モーター252によって回転駆動されるドラムに張設されたワイヤーに連結された第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227が、主走査方向と直交する方向(副走査方向、矢印Y方向)に、キャリッジ駆動モーター252の回転駆動によって移動され、次のラインの読み取りが行われる。
【0038】
ADF読取モードでは、原稿載置台241に載置された原稿が給紙ローラ232によって1枚ずつ取り込まれ、後述する搬送ドラム駆動モーター251の回転駆動によって搬送ドラム233が回転駆動され、搬送ドラム233から排紙トレイ235への搬送経路に設けられた読取位置230上を原稿が通過するとき、光源222が原稿を照射し、主走査方向1ライン分の反射光が第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225の順に反射して、結像レンズ228に入射する。結像レンズ228に入射した光はCCD229の受光面で結像される。続いて、原稿は搬送ドラム233の回転駆動によって副走査方向に搬送され、次のラインが読み取られる。
【0039】
このように、画像読取部22は、フラットベッド読取モード又はADF読取モードによって、コンタクトガラス221に載置された原稿に対して相対的に副走査方向に移動しながら当該原稿を読み取る画像読取処理を行う。尚、以下の説明において、特に記載のないものについては、フラットベッド読取モードによって原稿の読み取りを行うことを前提に説明を行う。
【0040】
装置本体30は、複数の給紙カセット461と、給紙カセット461から用紙(記録媒体)を1枚ずつ繰り出して記録部40へ搬送する給紙ローラ462と、給紙カセット461から搬送されてきた用紙に画像を形成する記録部40と、左方に配設されたスタックトレイ60と、を備える。
【0041】
装置本体30は、更に、手差しトレイ471を備え、この手差しトレイ471からは何れの給紙カセットにも収納されていないサイズの用紙や、既に一方の面に画像形成がなされている用紙(裏紙)、OHPシートのような任意の記録媒体が載置可能であり、給紙ローラ472によって1枚ずつ装置本体30内に給紙される。
【0042】
記録部40は、感光体ドラム43の表面から残留電荷を除電する除電装置421と、除電後の感光体ドラム43の表面を帯電させる帯電装置422と、画像読取部22で取得された画像データに基づいて、レーザ光を出力して感光体ドラム43表面を露光し、感光体ドラム43の表面に静電潜像を形成する露光装置423と、上記静電潜像に基づいて感光体ドラム43上に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色のトナー像を形成する現像装置44C、44M、44Y、44Kと、感光体ドラム43に形成された各色のトナー画像が転写されて重ね合わせされる転写ドラム49と、転写ドラム49上のトナー像を用紙に転写させる転写装置41と、トナー像が転写された用紙を加熱してトナー像を用紙に定着させる定着装置45とを備えている。
【0043】
尚、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色に対するトナーの供給は、不図示のトナー供給容器(トナーカートリッジ)から行われる。また、記録部40を通過した用紙をスタックトレイ60又は排出トレイ48まで搬送する搬送ローラ463及び464等が設けられている。
【0044】
装置本体30の前方には、操作部50が備えられている。操作部50は、LCD(Liquid Crystal Display)等からなる表示部51と、操作者から操作指示が入力される操作キー部52を備える。
【0045】
操作キー部52は、テンキー、スタートキー、及び機能切換キー部等を備える。尚、スタートキーは、コピー動作やスキャン動作等の各動作を開始させる指示を操作者から受け付けるキーである。テンキーは、コピー部数等の各種機能動作の実行条件を操作者から受け付けるキーである。機能切換キー部は、スキャナー機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能、コピー機能及び後述する画像調整機能等を相互に切り替える機能切換指示を操作者から受け付けるキーである。
【0046】
表示部51は、LCD(Liquid Crystal Display)等からなり、タッチパネル機能を組み合わせたタッチパネルユニット等を備えている。表示部51には、複合機1で実行可能な各種機能動作の実行条件を設定入力するための設定画面が表示される。
【0047】
尚、操作者が表示部51に表示されている設定画面(表示されている操作キー)をタッチ操作する、或いは、操作キー部52を操作することによって、各種機能動作の実行条件が設定入力される。
【0048】
次に、複合機1の電気的構成の一例について説明する。図2に示すように、複合機1は、上記の原稿搬送部21と画像読取部22と記録部40と操作部50と、駆動部25と、制御部10と、組込制御部70と、インターフェイス部80と、を備えている。
【0049】
駆動部25は、画像読取部22に備えられた第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227を駆動させるために回転駆動されるキャリッジ駆動モーター252と、原稿搬送部21に備えられた搬送ドラム233を回転駆動させる搬送ドラム駆動モーター251と、を備えている。
【0050】
尚、搬送ドラム駆動モーター251及びキャリッジ駆動モーター252は、ステッピングモーター、又は、例えば、モーターエンコーダー等の所定回転角度回転する度にパルス信号を出力する回転角度センサーを備えたDCサーボモーターで構成され、後述する駆動制御部11によって入力される駆動電圧に応じて回転駆動する。
【0051】
制御部10は、制御プログラムや複合機1の各種設定情報を記憶するためのフラッシュメモリー等の不揮発性メモリーや一時的にデータを記憶するためのRAM(Random Access Memory)等のメモリーや、制御プログラムをメモリーから読み出して実行するCPU等が内蔵されたマイクロコンピュータからなり、CPUによって制御プログラムを実行することによって、複合機1全体の動作制御を司る。特に、制御部10は、CPUによって制御プログラムを実行することによって、駆動制御部11として動作する。
【0052】
駆動制御部11は、駆動部25に備えられた搬送ドラム駆動モーター251及びキャリッジ駆動モーター252のそれぞれに駆動電圧を印加し、搬送ドラム駆動モーター251及びキャリッジ駆動モーター252を回転駆動させる。
【0053】
ここで、搬送ドラム駆動モーター251及びキャリッジ駆動モーター252に引加される駆動電圧は、例えば、電圧レベルの正負(プラスマイナス)によって時計回りか反時計周りかの回転方向を示し、オンオフの比率(デューティ比)によって回転角度を調整するパルス状の信号波形を示す。ただし、搬送ドラム駆動モーター251及びキャリッジ駆動モーター252に引加される駆動電圧をこれに限定する趣旨ではない。
【0054】
つまり、搬送ドラム駆動モーター251及びキャリッジ駆動モーター252が、ステッピングモーターで構成されている場合には、印加される駆動電圧が示すパルス信号のパルス数をカウントすることによって回転角度を検出することができる。一方、搬送ドラム駆動モーター251及びキャリッジ駆動モーター252が、モーターエンコーダー等の所定回転角度回転する度にパルス信号を出力する回転角度センサーを備えたDCサーボモーターで構成されている場合は、回転角度センサーから出力される示すパルス信号をカウントすることによって回転角度を検出することができる。
【0055】
組込制御部70は、ASIC(Application Specific Integrated Circuits;エーシック;特定用途向け集積回路)等の専用ハードウェアで高速処理可能に構成され、画像読取部22を制御するための各種処理を実行する。
【0056】
特に、組込制御部70は、読取位置検出部71と、転送部73と、状態判断部74と、読取制御部75と、画像処理部76と、して動作し、また、専用ハードウェアに備えられたフラッシュメモリーやRAM等のメモリーによって位置情報記憶部72として機能する。
【0057】
読取位置検出部71は、搬送ドラム駆動モーター251又はキャリッジ駆動モーター252が所定角度回転したことを示す駆動クロック信号を用いて、原稿の副走査方向における読取位置を検出する。
【0058】
ここで、駆動クロック信号は、搬送ドラム駆動モーター251及びキャリッジ駆動モーター252がステッピングモーターで構成されている場合、上記のように、駆動制御部11によって当該ステッピングモーターを回転駆動させるために印加される駆動電圧が示すパルス信号を示す。一方、搬送ドラム駆動モーター251及びキャリッジ駆動モーター252が所定回転角度回転する度にパルス信号を出力する回転角度センサーを備えたDCサーボモーターで構成されている場合は、駆動クロック信号は、当該回転角度センサーから出力されるパルス信号を示す。
【0059】
つまり、読取位置検出部71は、画像読取部22によってフラットベッド読取モードで原稿を読み取る場合は、上記のように駆動クロック信号のパルス数をカウントすることでキャリッジ駆動モーター252の回転角度を検出し、当該検出した回転角度を用いて第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227の移動距離と移動方向とを算出し、現在の原稿の副走査方向における読取位置を検出する。
【0060】
一方、読取位置検出部71は、画像読取部22によってADF読取モードで原稿を読み取る場合は、上記のように駆動クロック信号のパルス数をカウントすることで搬送ドラム駆動モーター251の回転角度を検出し、当該検出した回転角度を用いて原稿の副走査方向への搬送距離を算出し、現在の原稿の副走査方向における読取位置を検出する。
【0061】
位置情報記憶部72は、読取位置検出部71で検出された読取位置を記憶する記憶領域である。
【0062】
転送部73は、予め定められた記憶容量を有する第一バンドバッファー731と、第一バンドバッファー731と同一の記憶容量を有する第二バンドバッファー732と、を備えて構成されている。
【0063】
転送部73は、所謂DMA(Direct Memory Access)コントローラーであり、画像読取部22によって原稿が読み取られた画像データ又は当該原稿が読み取られた画像データが後述する画像処理部76で所定の画像補正処理が施された後の画像データが入力されると、第一バンドバッファー731と第二バンドバッファー732との間で記憶先のバンドバッファーを交互に切り替えて、入力された画像データを第一バンドバッファー731又は第二バンドバッファー732の予め定められた記憶容量分ずつ記憶するとともに、第一バンドバッファー731と第二バンドバッファー732との間で転送元のバンドバッファーを交互に切り替えて、当該記憶先のバンドバッファーとは他方のバンドバッファーに記憶された予め定められた記憶容量分の画像データを後述するインターフェイス部80に転送する。
【0064】
例えば、図3(b)に示すように、転送部73は、時刻T1から、入力された画像データを予め定められた記憶容量分第一バンドバッファー731に記憶し始め、時刻T2で予め定められた記憶容量分の画像データの第一バンドバッファー731への記憶が完了すると、図3(a)の実線部にも示すように、記憶先のバンドバッファーを第二バンドバッファー732に切り替えて、入力された画像データを予め定められた記憶容量分第二バンドバッファー732に記憶するとともに、第一バンドバッファー731に記憶済みの予め定められた記憶容量分の画像データをインターフェイス部80に転送する。
【0065】
そして、転送部73は、時刻T3で第一バンドバッファー731に記憶済みの予め定められた記憶容量分の画像データの転送を終了した後も、入力された画像データを第二バンドバッファー732に記憶し続け、時刻T4で予め定められた記憶容量分の画像データの第二バンドバッファー732への記憶が完了すると、図3(a)の点線部にも示すように、記憶先のバンドバッファーを第一バンドバッファー731に切り替えて、入力された画像データを予め定められた記憶容量分第一バンドバッファー731に記憶するとともに、第二バンドバッファー732に記憶済みの予め定められた記憶容量分の画像データをインターフェイス部80に転送する。
【0066】
図2に戻り、状態判断部74は、転送部73によって画像データの記憶先のバンドバッファーが切り替えられる場合に、当該切り替え先のバンドバッファーに記憶された予め定められた記憶容量分の画像データの転送が終了していないときは、当該切り替え先のバンドバッファーに画像データを記憶することができないメモリーフル状態にあるものと判断して、当該メモリーフル状態を示す状態検出信号を出力する。
【0067】
また、状態判断部74は、当該メモリーフル状態であると判断した後に、切り替え先のバンドバッファーに記憶された予め定められた記憶容量分の画像データの転送が終了したときは、切り替え先のバンドバッファーに画像データを記憶することができるメモリーレディー状態にあるものと判断して、当該メモリーレディー状態を示す状態検出信号を出力する。
【0068】
例えば、図3(c)に示すように、転送部73は、時刻T6から、入力された画像データを予め定められた記憶容量分第一バンドバッファー731に記憶し始め、時刻T7で予め定められた記憶容量分の画像データの第一バンドバッファー731への記憶が完了すると、記憶先のバンドバッファーを第二バンドバッファー732に切り替えて、入力された画像データを予め定められた記憶容量分第二バンドバッファー732に記憶するとともに、第一バンドバッファー731に記憶済みの予め定められた記憶容量分の画像データをインターフェイス部80に転送する。
【0069】
しかし、時刻T8で第二バンドバッファー732への画像データの記憶が完了し、続いて入力される画像データの記憶先のバンドバッファーが転送部73によって第一バンドバッファー731に切り替えられる場合に、第一バンドバッファー731に記憶済みの予め定められた記憶容量分の画像データの転送が終了していないため、状態判断部74は、当該切り替え先の第一バンドバッファー731に画像データを記憶することができないメモリーフル状態にあるものと判断して、当該メモリーフル状態を示す状態検出信号を出力する。
【0070】
その後、時刻T9で、第一バンドバッファー731に記憶済みの予め定められた記憶容量分の画像データの転送が終了すると、状態判断部74は、第一バンドバッファー731に画像データを記憶することができるメモリーレディー状態にあるものと判断して、当該メモリーレディー状態を示す状態検出信号を出力する。
【0071】
図2に戻り、読取制御部75は、駆動部25に備えられた搬送ドラム駆動モーター251又はキャリッジ駆動モーター252の駆動クロック信号に同期した予め定められたライン周期で、主走査方向1ライン分ずつ画像読取部22に原稿を読み取らせる。
【0072】
また、読取制御部75は、状態判断部74によってメモリーフル状態を示す状態検出信号が出力されると、読取位置検出部71で検出された読取位置を位置情報記憶部72に記憶するとともに、画像読取部22に原稿を読み取らせることを停止させる。
【0073】
また、読取制御部75は、当該原稿を読み取らせることを停止させた後に状態判断部74によってメモリーレディー状態を示す状態検出信号が出力されると、駆動制御部11に駆動部25に備えられたキャリッジ駆動モーター252又は搬送ドラム駆動モーター251を回転駆動させて、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227又は原稿を位置情報記憶部72に記憶された読取位置に移動させた後、画像読取部22に原稿の読み取りを再開させる。尚、読取制御部75による画像読取部22に原稿を読み取らせる動作の詳細については後述する。
【0074】
画像処理部76は、画像読取部22で原稿が読み取られて生成された画像データに対して、シェーディング補正や、レベル補正、ガンマ補正等の補正処理、画像データの圧縮又は伸長処理、拡大又は縮小処理などの画像補正処理を行う。
【0075】
画像処理部76は、例えば、ユーザーによる操作部50の操作によって画像補正処理の実行指示が入力され、当該実行指示が制御部10で受け付けられた場合に、制御部10から画像処理部76に入力される実行指示に応じて画像補正処理を行うように構成されている。ただし、画像処理部76の構成をこれに限定する趣旨ではなく、例えば、画像読取部22で原稿が読み取られて生成された画像データに対して常に画像補正処理を行うように構成してもよい。
【0076】
図2に戻り、インターフェイス部80は、例えば、複合機1内部のデータバスを介して接続された記録部40との間でデータの送受信を実行するためのインターフェイス回路や、100/1000Base−T等の通信規格に従ってネットワークNWに接続されたパーソナルコンピュータ等の外部装置9との間でデータの送受信を実行するための通信インターフェイス回路で構成され、複合機1の各部やネットワークNWに接続された外部装置9との間で、データバスやネットワークNWを介してデータの送受信を行う。
【0077】
具体的には、インターフェイス部80は、転送部73から転送された画像データを、ユーザーによる操作部50の操作によって指定された、記録部40やネットワークNWに接続された外部装置9等の出力先にデータバスやネットワークNWを介して転送する。
【0078】
以下では、読取制御部75による画像読取部22に原稿を読み取らせる動作の詳細について、図4を用いて説明する。尚、以下の説明において、特に記載のないものについては、フラットベッド読取モードによって原稿の読み取りを行うことを前提に説明を行う。
【0079】
時刻t0で、ユーザーによる操作部50の操作によって原稿を読み取る指示が入力され、制御部10によって当該指示が受け付けられた場合に、制御部10から組込制御部70に当該指示を受け付けたことを示す制御信号が入力されると、読取位置検出部71は、現在の読取位置が第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227の待機位置であるホームポジションHPに存在しているものとして、以降、キャリッジ駆動モーター252の駆動クロック信号のパルス数をカウントすることによって、ホームポジションHPからの相対位置として原稿の読取位置を検出する。
【0080】
また、読取制御部75は、ユーザーによる操作部50の操作によって原稿を高速に読み取る指示が入力される等して、ライン周期が予め定められた周期閾値よりも短く設定された場合は、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227を加速して移動した直後に高速に移動させることによって、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227に強い振動が与えられることを回避するために、先ず、時刻t1まで予め定められた加速度でキャリッジ駆動モーター252を加速して回転駆動させるように駆動制御部11に指示を送出する。
【0081】
そして、読取制御部75は、時刻t1で、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227の移動速度がライン周期に応じた一定速度にまで加速されると、当該一定速度でキャリッジ駆動モーター252を回転駆動させるように駆動制御部11に指示を送出し、当該キャリッジ駆動モーター252の回転駆動によって第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227を一定速度で少なくとも予め定められた助走距離分移動させる。尚、当該予め定められた助走距離は、製品出荷前の試験運転等の実験値に基づいて予め定められ、組込制御部70に備えられたフラッシュメモリーに記憶されている。
【0082】
次に、時刻t2で、読取位置検出部71によって、現在の読取位置が組込制御部70に備えられたフラッシュメモリーに予め記憶されている読取開始位置SPであることが検出されると、読取制御部75は、画像読取部22に原稿を読み取らせることを示す制御信号(オンの読取指示信号)を送出して、原稿の読み取りを開始させる。これ以降、画像読取部22によって、副走査方向に移動しながら原稿が読み取られた画像データが転送部73を介してインターフェイス部80に転送される。
【0083】
このように、読取制御部75は、ライン周期が予め定められた周期閾値よりも短く設定され、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227を高速に移動して原稿を読み取らせる場合は、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227の移動速度を予め定められた加速度で加速してライン周期に応じた一定速度にした後、予め定められた助走距離分第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227を当該一定速度で安定して移動させるため、読取開始位置SPに第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227が移動した時点で、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227に与えられる振動、又は、原稿に与えられる振動を軽減することができる。これにより、例えば読取開始位置を読み取った画像に歪みが生じる等、読み取られた画像データの画質が劣化することを回避することができる。
【0084】
尚、これとは反対に、ライン周期が予め定められた周期閾値よりも長く設定され、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227を低速に移動して原稿を読み取らせる場合は、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227を低速に移動させるため、当該ライン周期に応じた一定速度まで加速した直後であっても、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227に強い振動が与えられることは回避されているものと考えられるので、当該ライン周期に応じた低速の一定速度にまで加速された第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227を、当該一定速度で予め定められた助走距離分移動させなくてもよい。
【0085】
図4に戻り、次に、例えば、時刻t3で、状態判断部74によってメモリーフル状態を示す状態検出信号が出力されると、読取制御部75は、キャリッジ駆動モーター252の駆動クロック信号に同期する時刻t4で、読取位置検出部71によって現在の読取位置Pnを検出させ、当該読取位置Pnを位置情報記憶部72に記憶するとともに、画像読取部22に読取指示の停止を示すオフの読取指示信号を送出して、原稿の読み取りを停止させる。
【0086】
そして、読取制御部75は、状態判断部74によってメモリーフル状態を示す状態検出信号が出力された時点における読取位置Pnまで第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227が移動して、読取位置検出部71によって現在の読取位置が読取位置Pnであることが検出されるまで、キャリッジ駆動モーター252の回転駆動速度を減速させ、当該回転駆動速度が0になると、更にキャリッジ駆動モーター252を逆方向に回転駆動させるように、駆動制御部11に指示を送出する。
【0087】
そして、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227が読取位置Pnにまで移動したことにより、時刻t5で、読取位置検出部71によって現在の読取位置が読取位置Pnであることが検出されると、これ以降に、読取位置Pnから原稿の読み取りを再開する場合に、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227が読取位置Pnで一定速度で安定して移動することができるように、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227を一定期間加速して助走させる距離を確保すべく、キャリッジ駆動モーター252を逆方向に回転駆動させるように駆動制御部11に指示を送出する。
【0088】
そして、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227が読取位置Pnから原稿の読み取り方向とは逆方向の予め定められた距離分離れた読取位置Pn−1にまで移動したことにより、時刻t6で、読取位置検出部71によって現在の読取位置が読取位置Pn−1であることが検出されると、読取制御部75は、キャリッジ駆動モーター252の回転駆動を停止するように駆動制御部11に指示を送出する。
【0089】
尚、読取位置Pn−1を示す、読取位置Pnから原稿の読み取り方向とは逆方向の予め定められた距離は、製品出荷前の試験運転等の実験値に基づいて予め定められ、読取位置検出部71により読み出し可能なように、組込制御部70に備えられたフラッシュメモリーに記憶されている。
【0090】
そして、時刻t7で、状態判断部74によってメモリーレディー状態を示す状態検出信号が出力されると、読取制御部75は、時刻t8まで予め定められた加速度でキャリッジ駆動モーター252を加速して回転駆動させるように駆動制御部11に指示を送出する。
【0091】
次に、時刻t8で、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227の移動速度がライン周期に応じた一定速度にまで加速されると、読取制御部75は、当該一定速度でキャリッジ駆動モーター252を回転駆動させるように駆動制御部11に指示を送出し、当該キャリッジ駆動モーター252の回転駆動によって第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227を一定速度で少なくとも予め定められた助走距離分移動させる。そして、時刻t9で、読取位置検出部71によって、現在の読取位置が位置情報記憶部72に記憶されている読取位置Pnであることが検出されると、読取制御部75は、画像読取部22にオンの読取指示信号を送出して、原稿の読み取りを再開させる。尚、当該予め定められた助走距離は、製品出荷前の試験運転等の実験値に基づいて予め定められ、組込制御部70に備えられたフラッシュメモリーに記憶されている。
【0092】
つまり、上記の読取位置Pn−1を示す、読取位置Pnから原稿の読み取り方向とは逆方向の予め定められた距離は、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227の移動速度を予め定められた加速度で加速してライン周期に応じた一定速度にするまでに移動する距離と、当該予め定められた助走距離と、の和で示される。
【0093】
以降、時刻t2からt9と同様に動作して、時刻t10で、読取位置検出部71によって、現在の読取位置が読取終了位置EPであることが検出されると、読取制御部75は、画像読取部22にオフの読取指示信号を送出して、原稿の読み取りを停止させる。
【0094】
その後、読取制御部75は、読取開始位置SPまで第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227が移動して、読取位置検出部71によって現在の読取位置が読取開始位置SPであることが検出されるまで、キャリッジ駆動モーター252の回転駆動速度を減速させ、当該回転駆動速度が0になると、更にキャリッジ駆動モーター252を逆方向に回転駆動させるように、駆動制御部11に指示を送出する。
【0095】
そして、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227が読取開始位置SPにまで移動したことにより、時刻t11で、読取位置検出部71によって現在の読取位置が読取開始位置SPであることが検出されると、読取制御部75は、読取位置検出部71によって現在の読取位置がホームポジションHPであることが検出され、つまり、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227がホームポジションHPにまで移動したことが検出されるまで、キャリッジ駆動モーター252の回転駆動速度を減速して回転駆動させる指示を駆動制御部11に送出する。
【0096】
そして、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227がホームポジションHPにまで移動したことにより、時刻t12で、読取位置検出部71によって現在の読取位置がホームポジションHPであることが検出されると、読取制御部75は、原稿の読み取りを終了する。
【0097】
本構成によれば、メモリーフルの状態にない場合は、画像読取部22で読み取られた画像データを記憶する、又は、既に記憶されている画像データを転送する、の何れか一方の目的で、第一バンドバッファー731及び第二バンドバッファー732の2つのバンドバッファーの全ての記憶容量が同時に利用されるため、バンドバッファーの記憶容量を有効に利用することができる。
【0098】
また、当該2つのバンドバッファーの記憶容量の2倍の記憶容量を持つハイスペックなバンドバッファーを1つ備えて、当該バンドバッファーに画像データを記憶可能な残りの記憶容量が予め定められた閾値よりも小さくなるニアフル状態になると、原稿の読み取りを停止させる、従来からの原稿の読み取りの間歇動作に比して、バンドバッファーの記憶領域のうちの予め定められた閾値分の記憶容量も画像データの記憶領域として有効に利用するため、バンドバッファーに記憶される画像データの量を相対的に多くして、原稿の読み取りの間歇動作が行われる回数を軽減することができる。
【0099】
尚、ADF読取モードによって原稿の読み取りを行う場合は、上記のフラッドベット読取モードによって原稿の読み取りを行う場合の時刻t4から時刻t9(図4)までの動作と同様に、読取制御部75が、状態判断部74によってメモリーフル状態を示す状態検出信号が出力され、画像読取部22に原稿の読み取りを停止させたときに、その後の原稿の読み取りを再開する際に原稿を加速して搬送した後にライン周期に応じた一定速度で予め定められた助走距離分搬送させる距離を確保するために、駆動制御部11に搬送ドラム駆動モーター251を逆方向に回転駆動させて、原稿を読み取り方向とは逆方向に搬送させたとしても、重量の軽い原稿を助走して搬送することでかえって読み取り位置にずれを生じさせ、読み取られた画像データの画質が劣化する虞が高まるものと考えられる。
【0100】
そこで、製品出荷前の試験運転等の実験値に基づいて、状態判断部74によってメモリーフル状態が検出される時点、つまり、転送部73によって画像データの記憶先のバンドバッファーが切り換えられる時点を、バンドバッファーの記憶容量分の画像データを読み取るのに要する時間、つまり、バンドバッファーの記憶容量分の画像データを生成するために必要な読み取りライン数にライン周期を乗じた時間として予め算出しておき、ADF読取モードによって原稿の読み取りを行う場合は、読取制御部75が、駆動制御部11に当該予め算出した時間単位で搬送ドラム駆動モーター251を急停止させるように構成して、原稿の読み取りの間歇動作によって生じる読取位置のずれを軽減するように構成してもよい。
【0101】
具体的には、当該予め算出した時間よりも予め定められた数ライン周期早い段階で、予め定められた数ライン分の転送データが切り換え先のバンドバッファーに残っているか否かによって、メモリーフル状態が発生するか否かを事前に判断させるように状態判断部74を構成し、これにより、状態判断部74によって当該算出した周期よりも予め定められた数ライン周期早い時点でメモリーフル状態が発生することが検出されるので、読取制御部75は、メモリーフル状態が事前に検出された時点から数ライン周期が経過するまでの間に、搬送ドラム駆動モーター251を予め定められた減速度で減速して回転駆動させるように駆動制御部11に指示を送出し、当該減速に合わせてライン周期を延長して、画像読取部22に数ライン分を読み取らせ、読取位置Pnにほぼ一致する位置で原稿を停止させるように駆動制御部11に指示を送出するように構成して実現することができる。
【0102】
そして、原稿の読み取りを再開するときは、読取制御部75は、再開当初の数ライン分の読み取りのライン周期を延長し、当該延長したライン周期に合わせて低速で搬送ドラム駆動モーター251を回転駆動させるように駆動制御部11に指示を送出し、原稿を低速で搬送しながら画像読取部22に原稿を読み取らせることによって、原稿に与えられる振動を抑えることができ、読み取られた画像データの画質が劣化することを軽減することができる。
【0103】
また、転送部73によって、第一バンドバッファー731又は第二バンドバッファー732に予め定められた記憶容量分の画像データが、インターフェイス部80を介して当該複合機1の各部又は当該複合機1に接続された外部装置9に転送されるのに要する時間(例えば、図3(b)における画像データ転送ステータスの網掛部)を、製品出荷前の試験運転等による実験値に基づいて予め算出しておき、読取制御部75は、予め定められた記憶容量分の画像データをバンドバッファーに記憶するのに要する時間(例えば、図3(b)における画像データ記憶ステータスの網掛部)が、当該予め算出しておいた時間に比して大きくなるように、駆動クロック信号の出力間隔を大きくする回転速度で駆動制御部11に搬送ドラム駆動モーター251又はキャリッジ駆動モーター252を回転駆動させて、読取位置の移動速度を遅くするように構成してもよい。
【0104】
本構成の場合、バンドバッファーから画像データを転送するのに要する時間が、画像データをバンドバッファーに記憶するのに要する時間よりも小さくなるため、画像データをバンドバッファーに記憶することを転送するよりも先に終了させて、記憶先のバンドバッファーを切り替えることができないメモリーフル状態にすることを回避することができ、原稿の読み取りの間歇動作が行われる回数を軽減することができる。これにより、原稿の読み取りの間歇動作における原稿の読み取り再開時に読み取り位置にずれが生じる機会を軽減して、読み取られた画像データの画質が劣化することを回避することができる。
【0105】
尚、上記実施形態において、本発明に係る画像形成装置の一例として複合機を例に説明したが、これに限定する趣旨ではなく、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る画像読取装置を備えたプリンタ、コピー機、スキャナー、又はFAX等の画像形成装置であってもよい。
【0106】
また、本発明は、上述の実施形態の構成に限られず種々の変形が可能である。前記図1乃至図4に示した構成及び処理は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を前記実施形態に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0107】
1 複合機
10 制御部
11 駆動制御部
20 画像読取装置
21 原稿搬送部
22 画像読取部
222 光源
229 CCD
230 読取位置
25 駆動部
251 搬送ドラム駆動モーター
252 キャリッジ駆動モーター
40 記録部
70 組込制御部
71 読取位置検出部
72 位置情報記憶部
73 転送部
731 第一バンドバッファー
732 第二バンドバッファー
74 状態判断部
75 読取制御部
76 画像処理部
80 インターフェイス部
9 外部装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に対して副走査方向に相対的に移動しながら主走査方向1ライン分ずつ原稿を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部を原稿に対して副走査方向に相対的に移動させる駆動モーターと、
前記駆動モーターを回転駆動させる駆動制御部と、
前記駆動モーターが所定角度回転したことを示す駆動クロック信号を用いて、原稿の副走査方向における読取位置を検出する読取位置検出部と、
前記読取位置検出部で検出された読取位置を記憶する位置情報記憶部と、
2つのバッファーを備え、記憶先のバッファーを交互に切り替えて、前記画像読取部によって原稿が読み取られた画像データを記憶するとともに、当該記憶先のバッファーとは他方のバッファーに記憶された画像データを当該画像読取装置の各部又は当該画像読取装置に接続された外部装置に転送する転送部と、
前記転送部によって画像データの記憶先のバッファーが切り替えられる場合に、当該切り替え先のバッファーからの画像データの転送が終了していないときは、画像データを記憶することができないメモリーフル状態であると判断し、当該メモリーフル状態であると判断した後に、前記切り替え先のバッファーからの画像データの転送が終了したときは、画像データを記憶することができるメモリーレディー状態にあるものと判断する状態判断部と、
前記駆動クロック信号に同期した予め定められたライン周期で、主走査方向1ライン分ずつ前記画像読取部に原稿を読み取らせる読取制御部と、
を備え、
前記読取制御部は、前記状態判断部によって前記メモリーフル状態にあるものと判断されると、前記読取位置検出部で検出された読取位置を前記位置情報記憶部に記憶するとともに、前記画像読取部に原稿を読み取らせることを停止させ、当該停止させた後に前記状態判断部によってメモリーレディー状態にあるものと判断されると、前記駆動制御部に前記駆動モーターを回転駆動させて前記位置情報記憶部に記憶された前記読取位置に前記画像読取部を移動させた後、前記画像読取部に原稿の読み取りを再開させる画像読取装置。
【請求項2】
前記読取制御部は、前記画像読取部に原稿を読み取らせることを停止させたときに、前記位置情報記憶部に記憶された読取位置から原稿の読み取り方向とは逆方向の予め定められた距離分離れた待機位置に前記画像読取部を移動させるように前記駆動制御部に前記駆動モーターを回転駆動させ、
前記画像読取部に原稿の読み取りを再開させるときに、前記画像読取部の移動速度が前記ライン周期に応じた一定速度になるまで、前記待機位置から予め定められた加速度で前記画像読取部を加速して移動させ、更に、前記画像読取部を前記一定速度で予め定められた助走距離分移動させた後、前記画像読取部が前記位置情報記憶部に記憶された前記読取位置に移動するように前記駆動制御部に前記駆動モーターを回転駆動させる請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記読取制御部は、前記転送部によって前記バッファーに記憶された画像データが当該画像読取装置の各部又は当該画像読取装置に接続された外部装置に転送されるのに要する時間に比して、画像データを前記バッファーに記憶するのに要する時間が大きくなるように、前記駆動クロック信号の出力間隔を大きくする回転速度で前記駆動制御部に前記駆動モーターを回転駆動させる請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記読取制御部は、前記ライン周期が予め定められた周期閾値よりも短く設定されている場合は、前記画像読取部に原稿の読み取りを開始させるときに、前記画像読取部の移動速度が前記ライン周期に応じた一定速度になるまで、前記画像読取部の待機位置から予め定められた加速度で前記画像読取部を加速して移動させ、更に、前記画像読取部を前記一定速度で予め定められた助走距離分移動させた後、前記画像読取部が読取開始位置に移動するように前記駆動制御部に前記駆動モーターを回転駆動させる請求項1から3の何れかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記駆動モーターはステッピングモーターで構成され、
前記駆動クロック信号は、前記駆動制御部によって当該ステッピングモーターを回転駆動させるために用いる駆動電圧が示すパルス信号である請求項1から4の何れかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記駆動モーターは、当該駆動モーターが所定回転角度回転する度にパルス信号を出力する回転角度センサーを備えたDCサーボモーターで構成され、
前記駆動クロック信号は、前記回転角度センサーから出力されるパルス信号である請求項1から4の何れかに記載の画像読取装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の画像読取装置と、
前記画像読取部によって画像形成対象の原稿が読み取られた画像データを用いて、当該画像データが示す画像を記録媒体に形成する記録部と、
を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−213079(P2012−213079A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78156(P2011−78156)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】