説明

画像読取装置

【課題】ADF搬送読取領域とFBS読取領域とを共通化することにより幅方向に装置を小型化することが可能な画像読取装置を提供する。
【解決手段】スキャナ部3には、ADF7を有する原稿押さえカバー8が設けられている。読取載置台6の原稿押さえカバー8と対向する面にプラテンガラス20が設けられている。プラテンガラス20の表面全域は、FBS読取領域18に設定されており、その一部がADF搬送読取領域17に設定されている。プラテンガラス20の表面には、FBS読取領域18とADF搬送読取領域17とを物理的に区分する部材は設けられていない。プラテンガラス20のADF7側の一端側にすくい上げ部材40が設けられ、その一端側と相対する他方端側に位置決め部材41が設けられている。この位置決め部材41の下側が画像読取ユニット21のホームポジションに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ADF搬送読取領域に対向させつつ搬送される原稿の画像を読み取る機能(自動搬送原稿読取機能)と、FBS読取領域に載置された静止原稿の画像を読み取る機能(静止原稿読取機能)とを備えた画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CIS(Contact Image Sensor)やCCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサによって原稿の画像データを読み取る画像読取装置が知られている。この種の画像読取装置としては、原稿搬送手段によってプラテンガラス上に定められたADF搬送読取領域に原稿を搬送させる搬送過程において当該原稿の画像を読み取る自動搬送原稿読取機能と、プラテンガラス上に定められたFBS読取領域に載置された静止原稿を読み取る静止原稿読取機能とを兼ね備えたものが公知である(特許文献1及び2参照)。
【0003】
図7に、上記原稿搬送手段の一例である原稿搬送装置110の概略構成を模式化して示す。同図に示すように、原稿搬送装置110は、大別して、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿搬送機構)90と給紙装置91とを備える。
【0004】
給紙装置91は、原稿を載置するための給紙トレイ92に連続して吸入シュート部93が形成され、該吸入シュート部93に、吸入ローラ94、吸入ニップ片95、分離ローラ96及び分離ニップ片97が配設されてなる。
【0005】
吸入ローラ94は、吸入シュート部93の下側のガイド面に回転可能に配設されている。該吸入ローラ94の対向位置となる吸入シュート部93の上側のガイド面には、吸入ニップ片95が吸入ローラ94に接離可能に配設されており、不図示のバネ材により付勢されて吸入ローラ94と圧接している。給紙トレイ92にセットされた原稿は、吸入ニップ片95により吸入ローラ94側へ付勢され、吸入ローラ94と圧接する最下位置の原稿が、吸入ローラ94の回転を受けて給紙方向へ送り出される。
【0006】
分離ローラ96は、上記吸入ローラ94から給紙方向へ隔てて、吸入シュート部93の下側のガイド面に回転可能に配設されている。該分離ローラ96の対向位置となる吸入シュート部93の上側のガイド面には、分離ニップ片97が分離ローラ96に接離可能に配設されており、不図示のバネ材により付勢されて分離ローラ96と圧接している。吸入ローラ94により送り出された原稿は、分離ローラ96と分離ニップ片97によりニップされ、分離ローラ96の回転を受けて搬送路98へ送り出される。
【0007】
ADF90は、図7に示すように、搬送ローラ99と、その周囲に配設されたピンチローラ100a,100b,100cと、搬送路98とを備えてなる。搬送路98は、上記吸入シュート部93から下流側に形成されており、断面視で略U字形状に形成されている。この搬送路98に沿って、搬送ローラ99を囲むようにピンチローラ100a,100b,100cが上流側から適宜の間隔で配設されている。
【0008】
プラテンガラス102の上面には、装置の奥行き方向に延びる位置決め部材105が設けられている。この位置決め部材105によって、プラテンガラス102の上面がADF搬送読取領域106とFBS読取領域107とに区画されている。また、ADF搬送読取領域106の搬送方向下流側には、搬送された原稿の先端を上方へすくい上げるためのすくい上げ部材108が設けられている。
【0009】
このような原稿搬送装置110を用いて自動搬送原稿読取機能による画像読取を行う場合は、まず、図8(a),(b)に示すように、画像読取ユニット103が、位置決め部材105の下方側に設定されたホームポジションP1からADF搬送読取領域106の下側に設定されたポジションP2に移動され、当該ポジションP2で待機する。
【0010】
給紙装置91によって給紙トレイ92から給送された原稿が搬送路98に送り出されると、当該原稿は搬送ローラ99及びピンチローラ100aによって搬送される。搬送された原稿は、ADF搬送読取領域106の上方に設けられたガイド部材101と位置決め部材105のガイド面105aとによって当該原稿の先端が案内されて、ADF搬送読取領域106上へ搬送される。その搬送過程において、該ADF搬送読取領域106の下側のポジションP2(図8参照)で待機する画像読取ユニット103により、ADF搬送読取領域106上を通過する原稿の画像が読み取られる。
【0011】
読取り後の原稿は、その先端がすくい上げ部材108のガイド面108aによって上方の搬送ローラ99側へ案内されて搬送路98に戻される。そして、搬送ローラ99とピンチローラ100b及びピンチローラ100cとによって搬送路98に沿って当該原稿はUターン搬送され、最終的に、給紙トレイ92の上方に配置された排紙トレイ104に排出される。なお、画像読取ユニット103は、原稿の画像の読取終了後にホームポジションP1(図8参照)に戻される。
【0012】
一方、静止原稿読取機能を用いて原稿の画像を読み取らせる場合は、画像読取ユニット103は、図8(c)に示すように、ホームポジションP1から上記ポジションP2とは反対の方向へ向かってFBS読取領域107の下面に沿って水平に移動する。このとき、画像読取ユニット103はFBS読取領域107に対して露光しながら移動する。これにより、原稿の読取面が走査されて静止原稿の画像が読み取られる。なお、この場合も、画像読取ユニット103は、原稿の画像の読取終了後にホームポジションP1に戻される。
【0013】
【特許文献1】特開平6−141143号公報
【特許文献2】特開平10−56541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、画像読取装置の幅は、上記したADF搬送読取領域106及びFBS読取領域107の幅に依存する。これら2つの読取領域106,107を図7に示すように独立して別個に設けた構成を採用した場合は、読取領域106,107それぞれの幅を勘案して画像読取装置の幅が決定される。また、読取領域106,107それぞれの間に上述した位置決め部材105が介在している場合はその幅をも考慮して画像読取装置の幅を決定しなければならない。そうすると、画像読取装置の幅は、ADF搬送読取領域106、FBS読取領域107及び位置決め部材105が配列された幅方向に必然的に大型化するという問題が生じる。
【0015】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ADF搬送読取領域とFBS読取領域とを共通化することにより幅方向に装置を小型化することが可能な画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明は、原稿の画像を読み取る画像読取装置に係り、ADF搬送読取領域とFBS読取領域とを有するプラテンガラスと、上記ADF搬送読取領域に原稿を対向させつつ該プラテンガラスの副走査方向の一方端へ向けて原稿を搬送する原稿搬送手段と、上記原稿搬送手段により搬送される原稿の画像を上記ADF搬送読取領域の下方で静止した状態で読み取ると共に、上記FBS読取領域に載置された静止原稿の画像を該FBS読取領域の下方を移動しながら読み取る画像読取手段と、プラテンガラスの上記一方端に設けられ、上記ADF搬送読取領域を通過した原稿をすくい上げるガイド部材と、プラテンガラスの上記一方端と相対する他方端に設けられ、上記FBS読取領域における上記静止原稿の載置位置を決める位置決め部材と、を具備するものである。ここで、副走査方向とは、画像読取手段が原稿を走査しながら移動する方向のことである。
【0017】
本発明の画像読取装置は、上記した自動搬送原稿読取機能と静止原稿読取機能とを有する。いずれの機能も上記画像読取手段によって画像が読み取られることにより実現される。上記自動搬送原稿読取機能を用いて原稿の画像を読み取らせる場合は、上記原稿搬送手段に原稿を搬送させる。このとき原稿は、プラテンガラス上に定められたADF搬送読取領域に当該原稿の読取面が対向するように搬送される。かかる搬送によって、原稿はプラテンガラスの副走査方向の一方端へ向けて移動される。プラテンガラスの上記一方端には、ガイド部材が設けられている。従って、上記原稿搬送手段により上記一方端に搬送された原稿は、その先端が上記ガイド部材によって上方へすくい上げられて原稿搬送手段に案内される。
【0018】
また、プラテンガラスには位置決め部材が設けられている。この位置決め部材は、静止原稿読取機能を用いて原稿の画像を読み取らせる際に、原稿の載置位置を決定する際の目安として用いられる。上記位置決め部材は、上記一方端と相対する他方端に設けられている。
【0019】
このように、プラテンガラスの副走査方向の一方端に上記ガイド部材が設けられ、他方端に上記位置決め部材が設けられているため、プラテンガラスの全域が静止原稿の読取面であるFBS読取領域として用られ、且つ、その一部が上記ADF搬送読取領域として兼用され得る。しかも、上記位置決め部材が設けられているため、静止原稿の位置決めが容易に行われ得る。
【0020】
(2)上記位置決め部材の下方には、シェーディング補正基準部材が主走査方向に延設されている。このように、位置決め部材によって隠蔽された箇所にシェーディング補正基準部材を設けることで、外光が遮断され、補正精度が向上される。なお、シェーディング補正基準部材とは、画像読取手段による読取性能を向上させるシェーディング補正に用いられるものであり、画像読取手段により読み取られる面に予め定められた基準色が付されている。
【0021】
(3)上記位置決め部材は上記プラテンガラスの上面に設けられ、上記シェーディング補正基準部材は上記位置決め部材の下面と上記プラテンガラスの上面との間に設けられていることが好ましい。これにより、シェーディング補正板への直接的な汚れの付着が防止される。
【0022】
(4)また、上記画像読取手段のホームポジションが、上記位置決め部材の下側に設定されていることが望ましい。ここで、ホームポジションとは、画像読取指示の無い場合に画像読取手段が待機する位置のことを意味する。上記ホームポジションが上記位置決め部材の下方に設定されているため、プラテンガラス上に載置された静止原稿を読み取る際の初動が迅速に行われ得る。
【発明の効果】
【0023】
本画像読取装置によれば、プラテンガラスの副走査方向の一方端に上記ガイド部材が設けられ、他方端に上記位置決め部材が設けられているため、プラテンガラスの全域が静止原稿の読取面であるFBS読取領域として用られ、且つ、その一部が上記ADF搬送読取領域として兼用され得る。これにより、ADF搬送読取領域およびFBS読取領域を個々に設けた場合に比べて装置を幅方向に小型化することができる。また、上記位置決め部材が設けられているため、静止原稿の位置決めが容易に行われ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0025】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る複合機1の外観構成を示す斜視図であり、図1は原稿押さえカバー8が閉じられた状態を示し、図2は原稿押さえカバー8が開けられた状態を示す。本複合機1は、下部にプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。複合機1のうちスキャナ部3が本発明に係る画像読取装置に相当する。したがって、スキャナ機能以外の機能は任意のものであり、例えば、プリンタ部2がなく、プリンタ機能やコピー機能、ファクシミリ機能を有しない単機能のスキャナとして本発明に係る画像読取装置が実施されてもよい。
【0026】
複合機1は、主に不図示のコンピュータと接続されて、該コンピュータから送信された画像データや文書データを含む記録データに基づいて、プリンタ部2において画像や文書を記録用紙に記録する処理(プリンタ機能)を行う。また、スキャナ部3により読み取られた画像データを電話回線などを通じて接続された通信機器へ転送する処理(ファクシミリ機能)や、ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置や上記コンピュータへ転送する処理(スキャナ機能)を行う。また、コンピュータとの間でデータの送受信をすることなく、スキャナ部3により読み取られた原稿の画像をプリンタ部2において記録用紙に記録する、いわゆる原稿のコピー処理(コピー機能)を行うことも可能である。
【0027】
図1に示すように、複合機1の外観形状は、高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の直方体に概ね形成されている。複合機1の下部のプリンタ部2は、正面に開口10が形成されている。給紙トレイ11及び排紙トレイ12は、開口10の内側に上下2段に設けられている。給紙トレイ11には、例えば、B5サイズやはがきサイズなどのA4サイズ以下の記録用紙が収容される。給紙トレイ11は、必要に応じてスライドトレイ13を引き出すことによりトレイ面が拡大され、例えば、リーガルサイズの記録用紙が収容できるようになる。給紙トレイ11に収容された記録用紙がプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ12へ排出される。
【0028】
プリンタ部2は、インクジェット記録装置として構成されている。即ち、プリンタ部2は、給紙トレイ11から給紙された記録用紙に対して、インクジェット方式によってにインク滴を吐出することで読取画像や印刷データに応じた画像を上記記録用紙に記録するものである。画像の記録中は、インクジェット記録ヘッドが記録用紙の幅方向にスライド移動し、このスライド移動にタイミングを合わせて記録用紙が間欠搬送される。なお、プリンタ部2は本発明を実現するうえで直接に関係するものではないため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0029】
なお、プリンタ部2としては、インクジェット記録装置として構成されたものに限られず、例えば、レーザ光を用いて感光体上に形成された静電潜像にトナーを付着させ、更にそのトナーを記録用紙に転写させるレーザプリンタや、アナログ電子写真方式の画像形成装置として構成されていてもよく、また、感光用紙を熱処理して変色させることによって印字するサーマル方式の画像形成装置(所謂サーマルプリンタ)として構成されていてもよい。
【0030】
複合機1の上面の前方側であって、スキャナ部3の正面側の上面には、プリンタ部2やスキャナ部3を動作させるための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機1は、操作パネル4からの操作指示に基づいて動作する。複合機1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機1は動作する。
【0031】
また、複合機1の正面の左上部には、スロット部5が設けられている。スロット部5には、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能である。操作パネル4において所定の操作を行うことにより、スロット部5に装填された小型メモリカードに記憶された画像データが読み出される。読み出された画像データに関する情報は、操作パネル4の液晶表示部に表示される。ユーザは、該液晶表示部に表示された情報に基づいて、任意の画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させることができる。
【0032】
複合機1の上部はスキャナ部3である。図1及び図2に示すように、スキャナ部3は、FBS(Flatbed Scanner)として機能する読取載置台6に対して、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿搬送装置)7を備えた原稿押さえカバー8が、背面側の蝶番15を介して開閉自在に取り付けられてなる。読取載置台6は、複合機1の筐体として構成されており、原稿押さえカバー8と対向する上面にプラテンガラス20が配設されている。従って原稿押さえカバー8が開かれることによりプラテンガラス20が読取載置台6の上面として露出され、原稿押さえカバー8が閉じられることによりプラテンガラス20が覆われる。
【0033】
また、該プラテンガラス20に対向するようにして、読取載置台6の内部に画像読取ユニット21(図6参照)が内蔵されている。スキャナ部3をFBSとして使用する場合には、画像読取ユニット21がプラテンガラス20の下方を走査されることにより、該プラテンガラス20上に載置された原稿の画像が読み取られる。一方、ADF7を使用する場合には、該ADF7による原稿の搬送過程において、原稿は後述するADF搬送読取領域17(図2及び図4参照)を通過され、該ADF搬送読取領域17の下方で待機する画像読取ユニット21によって当該原稿の画像が読み取られる。なお、スキャナ部3の構成及び該スキャナ部3による原稿画像の読取動作については、後段において詳細に説明する。
【0034】
図3は、複合機1の制御部45の構成を示している。該制御部45は、スキャナ部3のみでなくプリンタ部2も含む複合機1の全体動作を制御するものである。しかしながら、本実施形態の説明においては、プリンタ部2の構成要素を詳述する必要がないので、図3ではプリンタ部2の構成要素は省略されている。制御部45は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)46、ROM(Read Only Memory)47、RAM(Random Access Memory)48、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)49を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス50を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)51に接続されている。
【0035】
ROM47には、複合機1の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。また、EEPROM49には、上記プログラムに従った処理に用いられる各種データが格納されている。RAM48は、CPU46が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又はデータやプログラムの展開領域として使用される。
【0036】
CPU46は、制御部45を構成する周辺デバイス、或いは制御部45により制御される被制御機器を統括的に制御するものである。このCPU46によって、ROM47に格納されたプログラムや、RAM48またはEEPROM49に格納されたデータが読み出され、上記プログラムに従った演算が行われる。
【0037】
ASIC51には駆動回路53,55が接続されている。ASIC51は、CPU46からの指令に従い、スキャナ部3の搬送モータ52およびキャリッジモータ55それぞれに通電する相励磁信号等を生成して、該信号を搬送モータ52およびキャリッジモータ55それぞれの駆動回路53,55に付与する。駆動回路53,55を介して駆動信号が搬送モータ52およびキャリッジモータ54に通電されることにより、各モータの回転制御が行われる。なお、上記搬送モータ52およびキャリッジモータ55が回転制御されることにより、これらのモータの制御対象である搬送ローラ38やキャリッジ44が駆動されるが、搬送ローラ38およびキャリッジ44の動作については後述する。
【0038】
また、ASIC51には、搬送路26において原稿を検出するためのリードセンサ56が接続されている。
【0039】
さらに、ASIC51には、搬送路26を搬送される原稿の画像読取りを行うCIS43が接続されており、また、複合機1の操作指示を行うための操作パネル4や各種小型メモリカードが挿入されるスロット部5がパネルインターフェース4aやスロットインターフェース5aを介して接続されている。さらにまた、パソコン等の外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース59及びUSBインタフェース60等が接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)61やMODEM62も接続されている。
【0040】
以下、スキャナ部3の構成および該スキャナ部3による画像の読取動作について詳細に説明する。
【0041】
図1に示すように、スキャナ部3の上部にADF7を有する原稿押さえカバー8が設けられている。原稿押さえカバー8の上面は、同図に示すように、給紙トレイ22及び排紙トレイ23が上下二段に構成されている。ADF7は、給紙トレイ22から後述する搬送路26を経て排紙トレイ23へ原稿を連続して搬送する。この原稿の搬送過程において、原稿の画像が読み取られる。
【0042】
給紙トレイ22は、原稿押さえカバー8の上面と一体に形成されている。ADF7により画像読取りを行う原稿は、複数枚が積層された状態で、給紙方向の先端をADF7に挿入するようにして、給紙トレイ22上に載置される。また、給紙トレイ22には、複合機1の奥行き方向に隔てて一対の原稿ガイド24が、奥行き方向へスライド移動可能に設けられている。該原稿ガイド24は、給紙トレイ22から起立して、給紙トレイ22に載置される原稿の幅方向の位置を規制するものであり、周知の連動機構により、一対のいずれか一方の原稿ガイド24をスライド移動させると、他方の原稿ガイド24も連動して相反する方向へスライド移動する。
【0043】
上記した一対の原稿ガイド24には、給紙トレイ22の上方向に隔てられた排紙トレイ23が一体的に形成されている。ADF7から排紙された原稿は、その両側を排紙トレイ23に担持されて、給紙トレイ22上の原稿と分離した状態で保持される。排紙トレイ23は、排紙方向の長さが原稿の長さより短いので、原稿の排紙方向先端側は、排紙トレイ23から垂れ下がるようにして、給紙トレイ22上に保持される。したがって、給紙トレイ22上の原稿の給紙方向後端部分の上に、排紙トレイ23上の原稿の排紙方向先端部分が重なるが、給紙トレイ22上の原稿の給紙方向先端部分と、排紙トレイ23上の原稿の排紙方向後端部分とは、排紙トレイ23により上下二段に保持されているので、これら原稿が混同することはない。また、排紙トレイ23を短くすることにより、原稿押さえカバー8上に必要な空間を小さくして、複合機1を薄型且つ小型にすることができる。
【0044】
給紙トレイ22からADF7の内部に至る箇所には吸入シュート部29が形成されている(図4参照)。ADF7を用いて原稿の画像を読み取る場合は、当該原稿は、給紙方向の先端を吸入シュート部29に挿入するようにして、給紙トレイ22上に載置される。
【0045】
また、図1に示すように、給紙トレイ22のADF7が設けられていない側の端部には、給紙トレイ22の上面から起立する起立姿勢と、給紙トレイ22の上面と一体に倒伏する倒伏姿勢とに姿勢変化する原稿ストッパ25が設けられている。原稿ストッパ25を起立姿勢とすることにより、例えば、給紙トレイ22と同程度の大きさの原稿がADF7から排出された際に、該原稿が原稿ストッパ25により制止され、給紙トレイ22から滑り落ちることが防止される。このように、排出された原稿を原稿ストッパ25で受け止めることにより、給紙トレイ22の面積を小さくすることができ、給紙トレイ22が一体的に形成された原稿押さえカバー8を小型化できる。また、原稿ストッパ25が不要な場合には、図1に示すように倒伏姿勢とすることにより、原稿押さえカバー8から突出せず、梱包時や保管時の複合機1のサイズをコンパクトにできる。
【0046】
図4は、ADF7の内部構成を示す部分断面図である。また、図5は、スキャナ部3の内部構成を示す断面図である。図4に示すように、ADF7の内部には、上記給紙トレイ22と排紙トレイ23とを連結するようにして、断面視で略U字形状に形成された搬送路26が設けられている。搬送路26は、原稿押さえカバー8に一体に形成されたADF本体27と、該ADF本体27に開閉自在に設けられたADFカバー28とによって構成されている。ADF7の吸入シュート部29は、上記給紙トレイ22が延長されるようにしてADF本体27と一体的に形成されたガイド板30と、ADFカバー28の内側に配設された区画板31とによって挟まれた上下方向に所定幅の間隙を有する通路として構成されている。
【0047】
また、湾曲部32及び排紙シュート部33も、ADF本体27、ADFカバー28、区画板31等によって挟まれた所定幅の間隙を有する通路として形成されている。
【0048】
上記搬送路26には、原稿を搬送するための搬送手段が配設されている。詳細には、図4に示すように、吸入ローラ34とこれに圧接する吸入ニップ片35、分離ローラ36とこれに圧接する分離ニップ片37、及び搬送ローラ38とこれに圧接するピンチローラ39によって搬送手段が構成されている。なお、搬送手段を構成する各ローラやニップ片の構成は一例であり、ローラの数や配置を変更したり、各ニップ片に代えてピンチローラを用いる等、その他の公知の搬送手段に変更できることは勿論である。
【0049】
図4に示すように、吸入ローラ34は、吸入シュート部29の略中央に、そのローラ面の一部をガイド板30の上面から露出するようにして回転可能に設けられている。また、分離ローラ36は、該吸入ローラ34から給紙方向下流側へ隔てた位置に、同様に、そのローラ面の一部をガイド板30の上面から露出するようにして回転可能に設けられている。これら吸入ローラ34及び分離ローラ36には搬送モータ52(図3参照)が連結されており、該搬送モータ52からの駆動力が伝達されて回転駆動される。また、吸入ローラ34及び分離ローラ36は同径であり、同じ周速度で回転される。
【0050】
吸入ニップ片35は、上記区画板31の吸入ローラ34の対向位置に、吸入ローラ34と接離する方向へ揺動可能に設けられている。吸入ニップ片35は、吸入ローラ34の軸方向のローラ幅より若干狭い幅のパッド状のものである。吸入ニップ片35の給紙方向上流側の両側それぞれに回動軸35aが形成されており、この回動軸が区画板31の下面に形成された軸支部35bに軸支されることにより、給紙方向下流側の端部35cが吸入ローラ34のローラ面に接触可能に進退する。また、吸入ニップ片35は、不図示のバネ部材により下方へ弾性付勢されており、原稿をニップしない状態で常時吸入ローラ34に接触されている。なお、パッド状の吸入ニップ片35に代えてローラを用いてもよいが、パッド状の当接部材とすることにより、当接部材を簡易且つ省スペースで実現することができ、また、当接部材に付与する弾性付勢力の調整が容易である。
【0051】
分離ニップ片37は、上記区画板31の分離ローラ36の対向位置に、分離ローラ36と接離する方向へ揺動可能に設けられている。分離ニップ片37は、分離ローラ36の軸方向のローラ幅より若干狭い幅のパッド状のものであり、その給紙方向上流側を回動軸として、給紙方向下流側の端部37aが分離ローラ36のローラ面に接触可能に進退する。該分離ニップ片37は、不図示のバネ部材により下方へ弾性付勢されており、原稿をニップしない状態で常時分離ローラ36のローラ面に圧接されている。なお、パッド状の分離ニップ片37に代えてローラを分離ローラ36に当接させることとしてもよいが、パッド状の当接部材とすることにより、当接部材を簡易且つ省スペースで実現することができ、また、当接部材に付与する弾性付勢力の調整が容易である。
【0052】
搬送ローラ38は、搬送路26の湾曲部32に配設されている。搬送ローラ38は、そのローラ面が湾曲部32の一部をなす程度の外径のものである。搬送ローラ38は、上記吸入ローラ34及び分離ローラ36と同様に、搬送モータ52(図3参照)からの駆動力が伝達されて回転駆動される。
【0053】
搬送ローラ38の周囲には、図4に示すように、ピンチローラ39が3箇所に設けられている。各ピンチローラ39は、その軸がバネ片に弾性付勢されてADF本体27又はADFカバー28に回転自在に支持されて、搬送ローラ38のローラ面に圧接している。したがって、搬送ローラ38が回転すれば、これに従動してピンチローラ39も回転する。これらピンチローラ39により、原稿が搬送ローラ38に圧接されて、搬送ローラ38の回転力が原稿に伝達される。
【0054】
原稿押さえカバー8の下面、即ち、プラテンガラス20と対向する面には押さえ部材19が設けられている。この押さえ部材19は、プラテンガラス20上に載置された原稿を押さえて固定するためのものであり、スポンジ及び板部材などで構成されている。この押さえ部材19は、原稿から安定した反射光を得るために、全域に亘って白色などの単一色とされている。原稿押さえカバー8の下面の端部であって、搬送ローラ38の鉛直下方付近には開口16(図2及び図4参照)が形成されている。この開口16は搬送路26に連通している。開口16は、ADF7を用いて原稿の画像を読み取る際に、原稿を搬送路26からプラテンガラス20上のADF搬送読取領域17(図2及び図4参照)に露出させ、該ADF搬送読取領域17において原稿の画像が読み取られた後に当該原稿を再び搬送路26に戻し入れるためのものである。
【0055】
搬送ローラ38の給紙方向の最下流側には、排紙シュート部33が形成されている。排紙シュート部33は、ADFカバー28の内面と搬送ローラ38とで構成された搬送路26の湾曲部32と連続するようにして、ADFカバー28と区画板31との間に形成されている。したがって、給紙トレイ22から搬送路26へ供給された原稿は、吸入シュート部29、開口16、湾曲部32、排紙シュート部33を順次経て、排紙トレイ23に排出される。
【0056】
スキャナ部3は読取載置台6を備える。この読取載置台6は、複合機1の筐体として構成されている。読取載置台6の本体フレーム63は、図4及び図5に示すように、上面が開放された容器状の下フレーム67と、上面に開口を有する上カバー68とを備えており、下フレーム67の上に上カバー68が嵌め合わされることにより、本体フレーム63が構成されている。上述したプラテンガラス20は上記開口に露出するように、上カバー68に取り付けられている。
【0057】
プラテンガラス20の表面全域18は、スキャナ部3をFBSとして使用する場合に原稿が載置される載置面を構成する。即ち、プラテンガラス20の表面全域18は、FBSにより原稿の画像を読み取る際に画像読取ユニット21が走査可能な範囲であり、言い換えれば、画像読取ユニット21によってプラテンガラス20上に載置された原稿の画像が読み取られる範囲である。この表面全域18が本発明のFBS読取領域に相当する。以下、プラテンガラス20の表面全域をFBS読取領域18と称する。
【0058】
プラテンガラス20のADF7が設けられている側の一端側は、図2、図4、図5に示すように、搬送ローラ38の下方まで延設されている。該搬送ローラ38の下方に対応する装置奥行き方向(図4の紙面に垂直な方向)に延びるプラテンガラス20上の領域、即ち、図2において破線で矩形状に囲まれた領域が、ADF7を用いて画像読取りを行う際の読取領域(以下「ADF搬送読取領域」と称する)17である。このADF搬送読取領域17は、ADF7を用いて原稿を搬送させながら該原稿の画像を読み取るときの読取位置を構成するものである。ADF搬送読取領域17は、図2に示すように、画像読取ユニット21の主走査方向の長さに対応して、複合機1の奥行き方向(図4の紙面に垂直な方向)に延設されている。
【0059】
本複合機1においては、上述したように、ADF搬送読取領域17とFBS読取領域18とがプラテンガラス20の表面上に設定されているものの、これらは物理的な部材によって区分されていない。即ち、プラテンガラス20上においてADF搬送読取領域17とFBS読取領域18とは同一面上に設けられており、FBS読取領域18の一部の領域がADF搬送読取領域17として用いられる。したがって、従来装置のようにADF搬送読取領域17とFBS読取領域18とを区画する部材が設けられていない分だけ、装置の幅方向の規模を縮小することができる。
【0060】
図4及び図5に示すように、プラテンガラス20の幅方向(副走査方向)の一方端の外側、つまり、プラテンガラス20のADF7が設けられている側の端部外側には、すくい上げ部材40(ガイド部材に相当)が設けられている。このすくい上げ部材40は、ADF搬送読取領域17を通過した原稿をすくい上げて上記開口16を介して搬送路26に原稿を案内する役目を担う。すくい上げ部材40は、合成樹脂などによって本体フレーム63の上カバー68と一体に形成されている。このすくい上げ部材40には、プラテンガラス20の端部の外側上方に向けて傾斜する傾斜面40aが設けられている。すくい上げ部材は、プラテンガラス20との接合点において傾斜面40aの下端がプラテンガラス20の上面より若干低くなるように位置決めされている。したがってADF搬送読取領域17を通過した原稿の先端は引っ掛かり無く円滑に傾斜面40aに導かれ、上方に位置する開口16へ案内される。
【0061】
また、図2及び図5に示すように、プラテンガラス20のADF7が設けられていない側の一端側、即ち、上記すくい上げ部材40が設けられた一端側と相対する他方端側に、位置決め部材41が介設されている。この位置決め部材41は、複合機1の奥行き方向に延設された長尺の平板状の部材であって、プラテンガラス20の上面に設けられている。
位置決め部材41の上面には、原稿がプラテンガラス20のFBS読取領域18に載置された場合に原稿の主走査方向のサイズをユーザが容易に把握できるように、A4(210×297mm)、B5(182×257mm)などの各種サイズの端点を示す表示が位置決め部材41の中央点を基準にして表記されている。この位置決め部材41に原稿の一端を突き当てることによって、FBS読取領域18に載置された原稿の一端が画されて、該原稿の主走査方向の載置位置が決められる。なお、原稿の副走査方向の位置決めは、原稿の一端が位置決め部材41に突き当てつつ、その幅方向両端を該位置決め部材41に示された端点に合わせることにより行われる。
【0062】
本実施形態では、位置決め部材41は読取載置台6の本体フレーム63の上カバー68と一体的に形成されており、位置決め部材41が上カバー68の一部を構成している。なお、変形例として、位置決め部材41が上カバー68とは別部材として構成されており、接着或いは嵌め込みなどによって位置決め部材41が上カバー68の上面に取り付けられるように構成されていてもよい。
【0063】
位置決め部材41の下方には、図5に示すように、画像信号のシェーディング補正に用いられる基準色部材42(シェーディング補正基準部材に相当)が設けられている。具体的には、位置決め部材41の下面とプラテンガラス20の上面との間に、上記基準色部材42が介設されている。即ち、基準色部材42は、位置決め部材41とプラテンガラス20とによって挟まれるように設けられている。基準色部材42としては、薄肉で所定色が着色された細長帯状のものであって、例えば、上記所定色に着色されたテープ状或いは薄板状のものがその典型である。或いは、位置決め部材41の下面に上記所定色が直に着色されていてもよい。この場合は、所定色が着色された領域が、本発明のシェーディング補正基準部材に相当する。
【0064】
基準色部材42は、黒色に着色された黒基準領域と、白色に着色された白基準領域とを有する。これらの基準領域は、複合機1の奥行き方向、即ち、位置決め部材41による原稿の位置決め方向に平行な帯状のものである。具体的には、黒基準領域と白基準領域とが原稿の位置決め方向に直交する方向に隣接して設けられている。したがって、基準色部材42は、黒基準領域と白基準領域とによって原稿の位置決め方向に延びる黒と白のストライプ状に配色されていることになる。上記黒基準領域は上記白基準領域よりもプラテンガラス20の中央側に設定されている。なお、これら基準領域は、黒色及び白色に限られず、赤、青、緑の色の三原色や、明度の異なる中間階調色など、種々の色彩を適用することができる。もちろん、基準領域の配色数も白と黒の2つに限定されることはない。また、単色の基準領域だけに限られず、網掛け、縞模様といった複数の図柄が付された基準領域を採用してもよい。要するに、基準領域は、画像読取ユニット21のCIS43の出力信号から原稿と基準領域との境界位置を判別することができるような色彩、図柄であれば如何なるものであってもかまわない。
【0065】
本実施形態では、上記した位置決め部材41の下側に画像読取ユニット21のホームポジッションが設定されている。このホームポジションとは、画像読取動作を行わないときに画像読取ユニット21が待機する位置のことを意味する。上記ホームポジションが位置決め部材41の下側に設定されているため、プラテンガラス20上に載置された原稿を読み取る際の初動が迅速に行われ得る。なお、上記ホームポジションは、位置決め部材41の真下である必要はなく、位置決め部材41の真下から所定距離ずれた位置であってもよい。
【0066】
読取載置台6の内部には、図4から図6に示すように、プラテンガラス20に対向するようにして、画像読取ユニット21が、複合機1の幅方向(図5及び図6の左右方向)に往復動可能に設けられている。ここに、図6は、読取載置台6の内部構成を示す平面図である。なお、説明の便宜上、図6中において、上カバー68および原稿押さえカバー8を省略している。
【0067】
読取載置台6の筐体である本体フレーム63は合成樹脂製のものである。図6に示すように、この本体フレーム63の下フレーム67内に、画像読取ユニット21が配設されている。下フレーム67は底板を構成するベース部64と、ベース部64の周囲から起立した側壁65と、画像読取ユニット21が配設される部分と操作パネル4の基板等が配設される部分とを仕切る仕切板66とが一体的に成形されたものである。また、下フレーム67には、プラテンガラス20を支持するための支持リブや、各種部材をネジ止めするためのボス部、電気配線等のための貫通孔等が設けられているが、これらは読取載置台6の実施態様に応じて適宜設計されるものなので、詳細な説明は省略する。
【0068】
画像読取ユニット21は、CIS(Contact Image Sensor)43とキャリッジ44とを有して構成されている。CIS43は、複合機1の奥行き方向(図6の上下方向)を主走査方向とするラインイメージセンサである。詳細には、CIS43は、原稿が載置されるプラテンガラス20に対して光源を発光させて光を照射し、原稿や押さえ部材19、基準色部材42などからの反射光をレンズにより受光素子(光電変換素子)に導き、該受光素子が反射光の強度(輝度や光量)に応じた電気信号を出力するいわゆる密着型のラインイメージセンサである。なお、この主走査方向に直交し、且つ、プラテンガラス20に平行な方向が副走査方向である
【0069】
CIS43は、キャリッジ44に搭載されて、プラテンガラス20の下方を往復移動される。キャリッジ44は、下フレーム67の幅方向、即ち複合機1の幅方向に渡って架設されたガイドシャフト69と嵌合し、ベルト駆動機構70により駆動されて、ガイドシャフト69上を摺動するように移動される。キャリッジ44がCIS43をプラテンガラス20に密着させるように搭載してガイドシャフト69上を移動することにより、CIS43がプラテンガラス20と平行に移動される。
【0070】
ベルト駆動機構70は、装置の幅方向の両端にそれぞれ設けられた駆動プーリ72と従動プーリ73との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト71が張架されてなるものである。上記駆動プーリ72の軸にはキャリッジモータ54(図3参照)から駆動力が入力される。駆動プーリ72の回転により、タイミングベルト71が周運動する。キャリッジモータ54にはステッピングモータが用いられる。従って、ベルト駆動機構70による画像読取ユニット21の搬送距離および搬送位置は、キャリッジモータ54のステップ数を監視することにより測定される。なお、タイミングベルト71は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ44に固着するものを用いてもよい。
【0071】
なお、本実施形態では、CIS43を含んで構成される画像読取ユニット21がスキャナ部3に適用される例について説明するが、例えば、CCD(Charge Coupled Device,電荷結合素子)或いはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor,相補型金属酸化膜半導体)等のイメージセンサから構成されてなる画像読取ユニットや、他の公知の画像読取ユニットをスキャナ部3に適用することも可能である。
【0072】
このように構成されたスキャナ部3をFBSとして使用する場合は、原稿押さえカバー8を開いてプラテンガラス20のFBS読取領域18に原稿を載置し、そして、原稿押さえカバー8を閉じて該原稿をプラテンガラス20上に固定する。このとき、読取指示が入力されていない状態では、画像読取ユニット21は、位置決め部材41の下側に設定されたホームポジションで待機している。
【0073】
操作パネル4のスタートボタンが押下されるなどして読取指示が入力されると、原稿の画像読取りを開始する前に、光源の光量の不均一やレンズの欠陥、受光素子の精度誤差などによるCIS43の出力値の不均等を補正するためにシェーディング補正が行われる。具体的には、まず、ベルト駆動機構70が作動されて、画像読取ユニット21が上記白基準領域の画像の読取位置まで移動される。そして、当該位置において、十分に小さい光量からスタートして徐々に光源の発光量を上げていき、基準色部材42の上記白基準領域からの反射光量が予め定められた基準光量に達したときの光源の光量を光量調整値としてRAM48等に記憶する。
【0074】
光量の調整が終わると、調整後の光量で上記白基準領域からの反射光を取得して白レベルデータとしてRAM48に記憶する。さらにまた、上記黒基準領域からの反射光を取得して黒レベルデータとしてRAM48に記憶する。このとき、画像読取ユニット21は、上記白基準領域と上記黒基準領域との境界を跨ぐように反射光を受光しながら移動される。この際に、基準色部材42からの反射光量の変化に基づいて、上記境界位置が検出される。画像読取ユニット21の移動距離及び移動位置は、上記検出された境界位置を基準にしてカウントされるキャリッジモータ54のステップ数に基づいて計測される。
【0075】
上記白レベルデータと黒レベルデータは、CIS43の主走査方向全域に亘って取得される。しかしながら、CIS43から画像データとして出力される出力値は、上述したように、光源の光量の不均一やレンズの欠陥、受光素子の精度誤差などによって不均等となる。この不均等な出力値は、CIS43の出力値の偏差(平均値との差分)が除去或いは加算されることによって平滑化される。かかる平滑化処理は、制御部45のCPU46などによって実行される処理であって、シェーディング補正処理と称される。なお、言うまでもないが、シェーディング補正の手法としては上述した手法以外の種々の手法を適用することが可能である。
【0076】
上述したシェーディング補正がなされると、画像読取ユニット21は、位置決め部材41の下側に設定されたホームポジションに一端戻される。その後、原稿の画像を読み取るべく、ガイドシャフト69上を摺動するようにして、ホームポジションから画像読取ユニット21がプラテンガラス20の下方を移動される。このとき、画像読取ユニット21のCIS43は、移動しながらプラテンガラス20上に載置された原稿に光を照射すると共に、該原稿からの反射光を受光し、受光した光を電気信号に変換する。このように変換された電気信号が、原稿の画像データとして読み取られることになる。
【0077】
画像読取ユニット21が所定距離移動されると画像読取りが終了したと判断される。このとき、画像読取ユニット21は上記ホームポジションに戻される。もちろん、画像読取ユニット21を上記ホームポジションに戻すタイミングは適宜設定することができる。したがって、画像読取りが終了した直後でなく、次の画像読取りの支持が入力されたタイミング或いは、画像読取終了から所定時間が経過したタイミングで画像読取ユニット21を上記ホームポジションに戻すようにしてもよい。
【0078】
一方、ADF7を使用して原稿の画像を読み取る場合は、操作パネル4のスタートボタンが押下されるなどして読取指示が入力されると、画像読取ユニット21は、上述したシェーディング補正がなされた後に、上記ホームポジションから、ADF搬送読取領域17の下側の読取ポジション(図4参照)に移動され、その位置で静止する。また、画像読取ユニット21の移動動作と並行して、吸入ローラ34及び分離ローラ36によって給紙トレイ22に載置された原稿が搬送路26に送り出される。搬送路26に送り出された原稿は、搬送ローラ38とニップローラ39とによって狭持されつつ給紙方向下流側へ向けて搬送される。
【0079】
搬送ローラ38によって原稿が搬送される過程において、原稿は、原稿押さえカバー8の下面に設けられた開口16から搬送路26外に一旦排出されて、プラテンガラス20上のADF搬送読取領域17に向けて搬送される。このとき、ADF搬送読取領域17上を通過する原稿は、その下方で待機する画像読取ユニット21によって画像が読み取られる。ADF搬送読取領域17上を通過して、プラテンガラス20の端部に向けて搬送された原稿は、すくい上げ部材40の傾斜面40aに原稿先端が当接して、該原稿先端の向きが上方へ変更される。これにより、原稿は再び開口16を経て搬送路26に戻される。搬送路26に戻された原稿は、湾曲部32によって上方へ曲げられるようにして搬送され、排紙シュート部33を経て、給紙トレイ22の上方に配置された排紙トレイ23に排出される。なお、ADF7を使用した画像読取りが終了すると画像読取ユニット21は上記ホームポジションに戻されるが、この戻されるタイミングは任意に設定される。
【0080】
上述したように、本実施形態の複合機1においては、プラテンガラス20の副走査方向の一方端にすくい上げ部材40が設けられ、その他方端に位置決め部材41が設けられているため、プラテンガラス20の全域が原稿の読取面であるFBS読取領域18として用られ、且つ、その一部がADF搬送読取領域17として兼用され得る。更にまた、スキャナ部3には位置決め部材41が設けられているため、FBS読取領域18に載置された原稿の位置決めを容易に行うことが可能である。
【0081】
なお、上述の実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態に係る複合機1の外観構成を示す斜視図であり、原稿押さえカバー8が閉じられた状態を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る複合機1の外観構成を示す斜視図であり、原稿押さえカバー8が開けられた状態を示す図。
【図3】複合機1の制御部45の構成を示すブロック図。
【図4】ADF7の内部構成を示す部分断面図。
【図5】スキャナ部3の内部構成を示す断面図。
【図6】読取載置台6の内部構成を示す平面図。
【図7】従来の原稿搬送装置110の概略構成を示す模式図。
【図8】画像読取ユニット103の動作を説明する模式図。
【符号の説明】
【0083】
1・・・複合機
2・・・プリンタ部
3・・・スキャナ部(画像読取装置)
4・・・操作パネル
5・・・スロット部
6・・・読取載置台
7・・・ADF
8・・・原稿押さえカバー
16・・・開口
17・・・ADF搬送読取領域
18・・・FBS読取領域
20・・・プラテンガラス
21・・・画像読取ユニット(画像読取手段)
40・・・すくい上げ部材(ガイド部材)
41・・・位置決め部材
42・・・基準色部材(シェーディング補正基準部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADF搬送読取領域とFBS読取領域とを有するプラテンガラスと、
上記ADF搬送読取領域に原稿を対向させつつ該プラテンガラスの副走査方向の一方端へ向けて原稿を搬送する原稿搬送手段と、
上記原稿搬送手段により搬送される原稿の画像を上記ADF搬送読取領域の下方で静止した状態で読み取ると共に、上記FBS読取領域に載置された静止原稿の画像を該FBS読取領域の下方を移動しながら読み取る画像読取手段と、
プラテンガラスの上記一方端に設けられ、上記ADF搬送読取領域を通過した原稿をすくい上げるガイド部材と、
プラテンガラスの上記一方端と相対する他方端に設けられ、上記FBS読取領域における上記静止原稿の載置位置を決める位置決め部材と、を具備する画像読取装置。
【請求項2】
上記位置決め部材の下方に、シェーディング補正基準部材が主走査方向に延設されている請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
上記位置決め部材は上記プラテンガラスの上面に設けられ、上記シェーディング補正基準部材は上記位置決め部材の下面と上記プラテンガラスの上面との間に設けられている請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
上記画像読取手段のホームポジションが、上記位置決め部材の下側に設定されている請求項1から3のいずれかに記載の画像読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−259129(P2007−259129A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81516(P2006−81516)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】