説明

画像読取装置

【課題】読取手段やAD変換手段の放射する赤外線を第一の検出手段や第二の検出手段で検出することにより動作中の温度を監視して、検出結果に相当する動作温度に応じて画像データの読み取り濃度値の誤差を小さくすることができる画像読取装置の提供。
【解決手段】原稿画像をCCD上に結像して画像情報を読み取り電気信号として出力する撮像部S1と、撮像部S1が放射する赤外線を検出するサーモパイルS2と、撮像部S1が出力する電気信号を増幅する増幅器S3と、増幅器S3により増幅された電気信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するAD変換器S4と、AD変換器S4により変換された出力信号に所定の演算を行い補正するデータ補正部S9とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関し、特に、複写機、ファクシミリ、スキャナー等の画像入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCDなどの光電変換素子、増幅器、及びAD変換器を内部に有し、原稿画像を読み取る画像読取装置があった(例えば、特許文献1参照)。従来の画像読取装置では、CCDや、増幅器、AD変換器の半導体素子の温度変化による動作誤差は、AD変換器の分解能に対して問題にならないくらい十分小さかった。そのため、温度変化による誤差を生じるアナログ回路部の温度補償は不要であった。
【特許文献1】特開平6−78150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年画像読取装置に対する読み取り精度の要求が高くなってきている。すなわち、読み取り分解能の向上や動作速度の向上が要求されている。また、半導体デバイスの小型化も進んで、今までより温度変化の影響を受けやすくなっている。そのため、CCD等の光電変換素子の動作誤差範囲を補償して出力値の分解能を向上する必要がある。また、光電変換素子の出力はAD変換器への入力のダイナミックレンジを大きく取るために増幅しており、その分、誤差も大きくなってしまう。このため、アナログ回路部である増幅器やAD変換器も、CCD等の光電変換素子と同様に所定以上の精度が要求されている。
【0004】
本発明は、以上の点に着目して成されたもので、読取手段の光電変換素子やAD変換手段の赤外線放射の検出結果に応じて画像データの読み取り濃度値の誤差を小さくすることができる画像読取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の画像読取装置は、以下の構成を備える。
【0006】
(1)原稿台に戴置した原稿の原稿画像を読み取る画像読取装置であって、前記原稿画像を光電変換素子上に結像して画像情報を読み取り電気信号として出力する読取手段と、前記読取手段が放射する赤外線を検出する第一の検出手段と、前記読取手段が出力する電気信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段により増幅された電気信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するAD変換手段と、前記AD変換手段により変換された出力信号に所定の演算を行い補正する補正手段とを備えることを特徴とする画像読取装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、読取手段やAD変換手段の放射する赤外線を第一の検出手段や第二の検出手段で検出することにより動作中の温度を監視して、検出結果に相当する動作温度に応じて画像データの読み取り濃度値の誤差を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0009】
本発明の実施例1の構成を図1に示す。図1は、本発明の画像読取装置の基本構成を示すブロック図である。
【0010】
S1は画像読取装置の原稿台上に戴置した原稿の原稿画像を、光学系の装置を用いて光電変換素子上に結像して画像データ(画像情報)を電気信号として出力する撮像部(読取手段)である。光学系は原稿画像をライン状に区分して、光電変換素子であるCCD上に結像することにより光電変換を行い電気信号として1ラインの画像データを出力する。そして、原稿画像の読み取り位置を、結像されるラインに対して垂直方向に移動することで、次のライン状の領域を読み取る。これを繰り返して、画像の全領域をラスターイメージデータとして順次出力する。しかし、環境温度やCCDの動作による自己発熱による昇温により、次第にCCDの動作温度が高くなるため発熱による誤差が生じ、第一ラインの読み取り時と最終ラインの読み取り時とでは出力される電気信号が大きく異なっている。
【0011】
S2は、画像読取手段であるS1の光電交換素子CCDの発する(放射する)赤外線(図中、波線矢印で示す)を受光するように設置されているサーモパイル(第一の検出手段)である。サーモパイルS2は、サーモパイル受光部の赤外線フィルターにより赤外線のみを受光して、対象となる撮像部S1のCCD表面から発する赤外光の光量を測定する。一般的に物質表面からはその物質の温度に応じて赤外線の放射量が変化することが知られている。そのためサーモパイルで赤外線放射を検出し、測定した赤外線光量から撮像部S1のCCDの温度が特定できる。また、非接触のため撮像部S1のCCDに影響を及ぼすことなく温度測定が可能で、さらに温度変化に対する反応速度が十数msで速いという特徴がある。
【0012】
S3は、画像読取手段である撮像部S1の出力信号を増幅してS4のAD変換器の入力のダイナミックレンジを大きくするアナログの増幅器(増幅手段)であるが、通常ゲイン設定が変更可能のものを使用して、AD変換器S4への入力を調整する。
【0013】
S4はアナログ電気信号(アナログ信号)をディジタルデータ(ディジタル信号)に変換する変換器(AD変換器)(AD変換手段)で、増幅器S3が出力するアナログの画像信号をAD変換してディジタルの画像データとして出力する。
【0014】
S5はS2と同様のサーモパイルによる温度測定部で(第二の検出手段)、S4のAD変換器から発せられる赤外線を受光するように設置されていて、S2と同様にAD変換器S4の発する赤外線光量から温度を特定する。
【0015】
S6はデータ補正係数生成部(以下、補正係数生成部とする)で、撮像部S1のCCDの温度とそれに対応する補正係数をルックアップテーブル0(図中、LUT0と記す)S7に予め設定する。この時CCDの温度に対応するアドレスに補正係数値をルックアップテーブルに設定する。またS4のAD変換器の温度とそれに対応する補正係数値をルックアップテーブル1(図中、LUT1と記す)S8に予め設定する。
【0016】
S7、S8はそれぞれ撮像部S1のCCDとAD変換器S4の温度誤差補正係数を記憶しているルックアップテーブル(以下、LUTと記す)で、LUTの設定値は製品毎、また固体差に応じて最適なテーブルデータを予め設定する。テーブルデータの設定後は、撮像部S1のCCDの温度情報(検出結果)とAD変換器S4の温度情報(検出結果)を受信して、それぞれLUT0 S7とLUT1 S8の対応する補正係数データ(データ補正量)を読み出す。
【0017】
S9はAD変換器S4から出力されたディジタル画像データに補正係数生成部S6から指定される2つの補正係数を乗算(演算)することでデータ補正を行うデータ補正部(補正手段)である。
【0018】
次に図2のフローチャートで本発明の動作を説明する。
【0019】
ステップA1(以下、単にA1等と記す)において、本発明の画像読取装置の電源を入れる(電源ON)。A2では、撮像部S1の測定温度に対応する補正係数をS7のルックアップテーブル0に設定し、同様にAD変換器S4の測定温度に対応する補正係数をS8のルックアップテーブル1に設定する(LUT設定)。
【0020】
A3で、画像読取装置の原稿台上に原稿画像が置かれて、画像読み取りのスタートボタンが押されるのを待つ。またはパーソナルコンピュータなどからの画像読み取りの指示を待つ。A3で読み取り指示があったら(A3 有)、A4において、撮像部S1で原稿画像を光電変換素子であるCCD上に結像することにより電気信号に変換する(撮像)。この時CCDの温度は読み取り開始から少しずつ自己発熱により昇温していき、それに伴い出力信号にも誤差が付加されている。S2のサーモパイルにより撮像部S1のCCDの昇温は常に監視されていて、CCDの温度に対応する補正係数がS7のLUT0から読み出される。LUT0 S7からの読み出しはサーモパイルの動作速度の十数ms周期で行われる。
【0021】
A5では、撮像部S1で電気信号に変換された画像データがS3の増幅器で振幅を調整しAD変換器S4に入力されて、一定のサンプリング間隔でディジタルデータに変換される。この時AD変換器S4の温度は、撮像部S1のCCDと同様に画像信号の入力から徐々に自己発熱により昇温していき、それに伴いAD変換の結果に誤差が生じてくる。S5のサーモパイルによりS4のAD変換器の昇温は常に監視されていて、AD変換器S4の温度に対応する補正係数がS8のLUTから読み出される。
【0022】
A6では、AD変換器S4の出力画像データ値に補正係数生成部S6で読み出された2つの補正係数を乗算することで補正された画像データを生成して出力する。例えばA3サイズの原稿を600DPIで1分間に15枚読み取る場合、4秒で1枚、1枚に1400〜5000ラインの読み取りを行っている。すなわち、1ライン当たりでは約300μsで読み取ることになる。すなわち、サーモパイルS2、S5の動作周期では約50ラインの読み取りで補正係数を変更していることになる。これは、画像では200μm、すなわち1mmの1/5の距離で補正値を更新していることになる。
【0023】
以上のように、撮像部S1のCCDとAD変換器S4の動作中の温度特性を補正することで、画像データの読み取り濃度値の誤差を小さくすることができ、より高画質の画像読取装置を提供することができる。
【0024】
なお、本実施例では、撮像部S1のCCDとAD変換器S4の放射する赤外線をサーモパイルS2、S5で検出したが、さらにサーモパイル(第三の検出手段)を備え、増幅器S3の動作温度を検出してデータ補正部S9で補正する構成としてもよい。
【0025】
また、サーモパイルS2、S5で測定した赤外線光量に対応する温度が、予め定めた検出範囲外になった場合、例えば、LUT0 S7、LUT1 S4にない温度になった場合、撮像部S1は原稿画像の読み取りおよび電気信号の出力を停止するようにしてもよい。増幅器S3の動作温度を検出する構成でも同様である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の画像読取装置の基本構成を示すブロック図
【図2】実施例1に係る動作を説明するフローチャート
【符号の説明】
【0027】
S1 撮像部(読取手段)
S2 サーモパイル(第一の検出手段)
S3 増幅器(増幅手段)
S4 AD変換器(AD変換手段)
S5 サーモパイル(第二の検出手段)
S6 補正係数生成部
S7 ルックアップテーブル0
S8 ルックアップテーブル1
S9 データ補正部(補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台に戴置した原稿の原稿画像を読み取る画像読取装置であって、
前記原稿画像を光電変換素子上に結像して画像情報を読み取り電気信号として出力する読取手段と、
前記読取手段が放射する赤外線を検出する第一の検出手段と、
前記読取手段が出力する電気信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段により増幅された電気信号をアナログ信号からディジタル信号に変換するAD変換手段と、
前記AD変換手段により変換された出力信号に所定の演算を行い補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置において、
前記第一の検出手段は、温度変化に応じて変化する赤外線放射を検出するサーモパイルであることを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像読取装置において、
前記補正手段は、前記第一の検出手段の検出結果に基づき、データ補正量を変化させて補正することを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像読取装置において、
前記AD変換手段が放射する赤外線を検出する第二の検出手段を備え、
前記補正手段は、前記第二の検出手段による検出結果に基づき、データ補正量を変化させて補正することを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像読取装置において、
前記増幅手段が放射する赤外線を検出する第三の検出手段を備え、
前記補正手段は、前記第三の検出手段による検出結果に基づき、データ補正量を変化させて補正することを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載の画像読取装置において、
前記検出結果に対応した補正係数を記憶するルックアップテーブルを備え、
前記補正手段は、前記検出結果に基づき、対応する補正係数を前記ルックアップテーブルから読み出してデータ補正することを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれかに記載の画像読取装置において、
前記読取手段は、前記検出結果が予め定めた検出範囲外になった場合、前記原稿画像の読み取りおよび前記電気信号の出力を停止することを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−301041(P2008−301041A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143279(P2007−143279)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】