説明

画像読取装置

【課題】
原稿台が昇降する画像読取装置では、枚数の少ない原稿を読み取る場合、読み取り開始時に原稿台が上昇するのに必要な時間が無駄な待ち時間になってしまう。
【解決手段】
原稿束の読取を開始した際に上昇した原稿台の位置を記憶しておき、原稿台上の全ての原稿を読み取った後にその記憶した位置に戻り、そこを原稿台の待機位置とすることで、次の原稿束を載置して原稿読取を開始した際の、原稿台が上昇するのに要する時間を短縮し、無駄な待ち時間を削減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿台に積載した原稿を一枚づつ搬送しながら画像を読み取る従来の画像読取装置は、読取開始を指示すると、まず給紙部に原稿が接するまで原稿台を上昇させ、原稿が給紙部のピックアップローラに接すると、給紙部において原稿の分離および給紙を行う。しかし、高速な画像読み取り装置においては、原稿台が大量の原稿を積載できるよう原稿台の昇降できる範囲を広くした構造となっている。
【0003】
このような原稿台の昇降範囲が広い画像読取装置で少量の原稿を読み取ろうとする場合、原稿の積載時に下限位置にあった原稿台が読取開始指示により上限位置にだいたい等しい位置にまで上昇すると、ようやく原稿がピックアップローラに接し給紙部による分離と給紙の動作が始まる。すなわち、原稿がピックアップローラに接するまでの原稿台上昇に、長い時間を必要とする。
【0004】
この時間は原稿台の上昇を待つだけの無駄時間であり、読取速度の速い画像読取装置ほど原稿の積載可能枚数が多く、原稿台の上昇の待ち時間が長いという皮肉な傾向にある。原稿台の上昇の待ち時間を削減する方法のひとつに、特許文献1の方法がある。この方法は、使用頻度の高い読取原稿枚数に対応した位置で原稿台を待機させることで、原稿台の上昇にかかる時間の短縮を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−36385号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような方法を利用する場合、読み取り装置を最初に使い始めてからしばらくは、ユーザがどのような原稿枚数で使用する頻度が高いかについての情報が全くないため、適切な原稿台の待機位置を画像読取装置は認識することができない。また、読み取り対象となる原稿の種類が変わる場合や、別のユーザが使用する場合などは、読取時に使用する頻度の高い原稿枚数が以前と全く変わってしまう場合がある。このような場合、使用頻度の高い原稿枚数を適切に判断できるだけのの情報を蓄積できるまで、原稿台の待機位置が適切でない状態で使用し続けなければならず、かえって手間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために考案されたものであり、原稿を搬送しながら原稿の画像読取を行う画像読取装置において、読み取る対象である原稿を積載する原稿台と、前記原稿台を昇降させる昇降手段と、前記昇降手段により上昇した前記原稿台から、該原稿台に積載された原稿を給紙する給紙部と、前記原稿台の上昇によって、前記給紙部での給紙が可能な位置へ前記原稿台上の原稿が到達したことを検出する原稿検出手段と、前記原稿検出手段が画像読取開始時に原稿の到達を検出したときの原稿台位置を記憶する原稿台位置記憶手段と、前記原稿台上の原稿をすべて給紙した後は、前記原稿台位置記憶手段に記憶された前記原稿台位置又はその近傍まで前記原稿台を移動するように、前記昇降手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上の処理を行うことにより、原稿積載時に、ほぼ同じ原稿積載枚数である可能性の高い、既に読取が終わっている最後の原稿束の画像読取開始に際して、原稿検出手段が検出するまで原稿台を上昇させたときの高さにほぼ等しい高さにて原稿台を待機させることができる。このため、原稿台の上昇を待つための無駄な待ち時間を削減することができる。さらに、原稿台の待機位置を強制的に下降させる手段を設けた場合は、通常の読取作業より枚数の多い原稿の読み取りを行うという、使用頻度が低い状況が発生した場合でも、原稿の積載をスムーズに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の画像読取装置を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明の画像読取装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図1を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用した画像読取装置の一態様の概略の構造を例示する側断面図である。図1において、
4は原稿などの読取対象の原稿Tを積載収納する原稿台である。原稿台4は、初期の待機状態では最も低い下限位置にあるが、画像読取開始時には昇降手段の一例である原稿台モータ5によって原稿台4を上昇させる。29は画像読取処理を終えた原稿Tを積載収納する排出積載部である。ピックアップローラ6は、原稿台4に積載された原稿Tを装置内部に向けて給紙する給紙部の給紙手段の一例である。原稿台4の上昇によってピックアップローラ6に原稿Tが接したことを原稿検知センサ8が検出すると、給紙モータ7によって回転力を与えられたピックアップローラが回転し原稿Tの給紙が行われる。なお、このとき現在の原稿台の位置を、後述する原稿台の待機位置として制御部40の不図示の不揮発性メモリ等に記憶する。このように不図示の不揮発性メモリは、原稿台位置を記憶する原稿台位置記憶手段の一例である。
【0012】
図1において、 11は送りローラ、12は送りローラ11を回転させる送りモータ、13は分離ローラ、14は分離ローラを回転させる分離モータであり、送りローラ11は原稿Tを搬送路Hに送る方向に回転する。一方、分離ローラ13は原稿Tを原稿台に戻す方向に回転可能に駆動することで、原稿Tを1枚づつ分離して搬送しながら読み取りを行うことができるようになっている。原稿Tは1枚に分離された後、搬送モータ30に動力を与えられた搬送ローラ17、21、22、23、24と、それらに従動する従動ローラ18、25、26、27、28によって搬送路Hの中を搬送される。クラッチ19を用いて、搬送ローラ17への駆動力の伝達を断続するような制御が実行されている。
【0013】
レジストセンサとして16と20が設置されており、レジストセンサ16が原稿Tを検出した時に、例えば排紙センサ37が先に読み取りを行った先行原稿を検出していた場合は、クラッチ19をオフ状態にして搬送ローラ17への駆動力の伝達を停止させることで原稿Tを一時停止させる。また、先行原稿が通過し終わっている状況等においては、レジストセンサ16が原稿Tを検出した時に排紙センサ37が先行原稿を検出していない状態となるので、クラッチ19をオン状態にして、搬送ローラ17に駆動力を伝達することにより原稿Tの搬送を続ける。
【0014】
また、搬送された原稿Tの先端の通過をレジストセンサ20で検出し画像読取のタイミングを決定し、そのタイミングに従って、表面用の画像読取センサ31および裏面用の画像読取センサ32を制御して画像を読み取る。画像を読み取られた原稿Tはさらに搬送を続けられ、搬送ローラ24と従動ローラ28によって、排出積載部29に排出される。
【0015】
また、原稿台から次々に原稿Tの搬送を行っていくと、原稿台4に積載されている原稿束の厚みが少しずつ薄くなる。原稿検知センサ8が原稿Tを検出できなくなったとき、ピックアップローラ6も原稿から離れてしまい給紙できなくなるため、原稿検知センサ8が原稿Tを再び検出するまで原稿台4を上昇させるよう原稿台モータを駆動する。このようにして、残っている原稿Tとピックアップローラ6が再び接触し、再び給紙が可能となる。上記のような原稿Tの搬送、原稿台4の上昇、原稿検知センサ8の原稿検出、ピックアップローラ6の原稿給紙が繰り返されることで、複数枚の原稿を連続的に読み取ることが可能となる。原稿台4に積載された原稿Tの全ての搬送が終わったときには、原稿台4を上限位置まで上昇させても原稿検知センサ8により原稿Tは検出されなくなるため、原稿Tがないと判断し、原稿台4を上述の待機位置まで下降させ、一連の読み取り動作を終了する。
【0016】
本発明の第一の実施形態における画像読取装置の制御部40による制御を、図2を使用して説明する。不図示の電源スイッチ監視部がユーザによる電源スイッチ等の押下を検出した際に、図2の処理が開始されるものとする。まずは制御部40の不図示のCPUがステップS21において画像読取装置の各部分に電源を投入する。電源投入後、ステップS22においてその前の電源切断を行った時点ですでに記憶されていた、読取開始時にて原稿台を上昇させ原稿を給送可能な位置に到達させた際の原稿台の位置である待機位置の情報を、制御部40の不図示の不揮発性メモリ等から読み出す。そして、当該待機位置に原稿台を移動する。ただし、電源投入時は例えば朝の始業時である可能性が高く、当該画像読取装置のユーザが変わったり、使用目的等が変わったりするため、使用頻度の高い原稿積載枚数がその前の読取時から大きく変化する場合も多い。したがって、電源投入時については原稿台の位置を上述の待機位置ではなく、原稿を最も多く積載できる下限位置としてもよい。
【0017】
なお、上述の待機位置は制御部40に記憶するのではなく、画像読取装置を制御するPC等のホスト装置に記憶してもよい。また、原稿台の待機位置は記憶されていた読取開始時に上昇させた原稿台の位置ではなく、その位置の下側の近傍位置にすることが原稿束の積載を給紙部への接触を避けてスムーズに行うために好適である。例えば読取開始時に上昇させた原稿台の位置よりも、10mm程度までの範囲内で低めに待機位置を設定することは、その位置からの原稿台の上昇にかかる時間がさほど問題にならないので、好適である。
【0018】
次に、ステップS23にて、ユーザ操作による原稿台の強制下降指示の有無を確認する。この強制下降指示は、その時点での原稿台の位置では読み取る対象である原稿を積載しきれない場合に、積載可能な枚数を増加させるために原稿台を下降させるためユーザが入力する指示である。強制下降指示を画像読取装置に搭載された操作部やタッチパネル付きのディスプレイ等からユーザが行う他に、画像読取装置を接続するホストコンピュータから通信手段の一例であるインターフェースを介して、強制下降指示を受信するようにしてもよい。強制下降指示があったときは、常に下限位置へ移動してもよいし、1回の強制下降指示で所定の下降量だけ低い位置に移動するようにし、必要な回数だけユーザ操作で強制下降指示を出すようにしてもよい。また、操作部の操作等で指示を出している時間だけ原稿台が下降し続け、指示を終了した時点で下降を終了するようにしてもよい。また、操作部やタッチパネルやホストコンピュータからの強制下降指示により指定した位置まで下降するようにしてもよい。なお、原稿台への原稿の積載を所定時間行わなかった場合に強制下降を行うようにしてもよく、本発明に含まれる。
【0019】
次に、ステップS25にて読取開始指示の有無を確認する。この指示が来るまでの間はステップS23に戻るため、強制下降指示を入力すれば原稿台を下降させることができる。制御部40の不図示のCPUは読取開始指示を受けると、ステップS26にて原稿検知センサ8が原稿を検出する位置、すなわちピックアップローラが原稿を給紙可能となる位置まで原稿台を上昇させる。また、このとき上昇が完了した原稿台の位置を記憶する。この記憶した位置は、次回にステップS22における原稿台の移動処理を実行する際の移動先とする。その後、ステップS27で通常通り原稿の画像を読み取る処理を行う。
【0020】
そしてステップS28で原稿台に積載された全ての原稿に対する読み取りが終了したか否かを調べるために、原稿台の原稿の有無を判断する。この判断には、原稿台上に積載された原稿を検出する積載原稿検出手段の一例である不図示のセンサを利用してもよく、また、原稿台を上限位置に移動しても原稿検知センサ8が原稿を検知しないことで、原稿無しと判断してもよい。原稿なしと判断すると、ステップS22に戻り、読取を開始した時にステップS26で記憶した原稿台の位置(待機位置)へ原稿台を移動させる。この時の原稿台の移動先となる待機位置を、前述したように以前に読み取り開始時に上昇した位置より少し低い位置(近傍位置)としてもよく、多少の積載枚数の増減に対応できるようになり、好適である。また、この原稿台の待機位置は、読取開始時に上昇した原稿台の位置やその近傍と、原稿積載枚数が最大となる下限位置とを、自由にユーザが選択可能としてもよく、また設定変更によりこのようなモードになるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
4 原稿台
5 原稿台モータ
6 ピックアップローラ
7 給紙モータ
8 原稿検知センサ
11 送りローラ
12 送りモータ
13 分離ローラ
14 分離モータ
19 クラッチ
29 排出積載部
30 搬送モータ
31 画像読取センサ
32 画像読取センサ
37 排紙センサ
T 原稿
H 搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送しながら原稿の画像読取を行う画像読取装置において、
読み取る対象である原稿を積載する原稿台と、
前記原稿台を昇降させる昇降手段と、
前記昇降手段により上昇した前記原稿台から、該原稿台に積載された原稿を給紙する給紙部と、
前記原稿台の上昇によって、前記給紙部での給紙が可能な位置へ前記原稿台上の原稿が到達したことを検出する原稿検出手段と、
前記原稿検出手段が画像読取開始時に原稿の到達を検出したときの原稿台位置を記憶する原稿台位置記憶手段と、
前記原稿台上の原稿をすべて給紙した後は、前記原稿台位置記憶手段に記憶された前記原稿台位置又はその近傍まで前記原稿台を移動するように、前記昇降手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記制御手段は、電源投入時に前記原稿台を下限位置まで下降させるよう、前記昇降手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記画像読取装置は操作部を有し、前記操作部へのユーザ操作が所定の時間なかった場合、前記制御手段は、前記原稿台を下限位置まで下降させるよう前記昇降手段を制御することを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記画像読取装置は操作部を有し、前記操作部への所定のユーザ操作に基づいて、前記制御手段は、前記原稿台の下限位置までの強制下降及び、前記原稿台の決められた下降量の強制下降のうち少なくとも一方を実行するよう、前記昇降手段を制御することを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記画像読取装置は該画像読取装置に接続されたコンピュータからの指示を受信する通信手段を有し、前記コンピュータからの指示の受信が所定の時間なかった場合、前記制御手段は、前記原稿台を下限位置まで下降させるよう前記昇降手段を制御することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記画像読取装置は、前記原稿台へ積載された原稿を検出する積載原稿検出手段を有し、
前記積載原稿検出手段の検出結果により、原稿の積載を所定時間行わなかったと前記制御手段が判断した場合は、前記制御手段は、前記原稿台を下限位置まで下降させるよう前記昇降手段を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−199553(P2011−199553A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63606(P2010−63606)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】