説明

画像送信装置、画像送信方法、及びプログラム

【課題】 本発明は、撮像方向を変更可能なネットワークカメラにおいて、カメラが撮像方向を特定するための基準方向の探索中も被写体のプライバシーを保護することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、変更部が撮像方向の変更を開始してから撮像方向が基準方向に達したことを検出部が検出するまでに撮像された撮像画像を、表示制約領域の表示が制約されない撮像画像を閲覧する権限を有する第1のクライアントには表示させ、権限を有さない第2のクライアントには表示を制限させる制御部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラが撮像した撮像画像をネットワークを介して送信する画像送信装置、画像送信方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体のプライバシー保護のため、カメラが撮像した撮像画像にマスク画像を重畳するマスク機能を持つカメラが知られている。また、マスク機能を持つカメラのうち撮像方向を変化させることができるカメラでは、カメラが撮像可能な撮像領域においてマスク画像を重畳する領域を予め設定できるものが知られている。このようなカメラが、撮像画像にマスク画像を重畳するには、現在の撮像方向で撮像された撮像画像におけるマスク画像の重畳領域を確定させるため、カメラの正確な撮像方向を知ることが必要となる。
カメラの正確な撮像方向を求める方法として、カメラの起動時等の所定のタイミングに、センサ等を用いてパン・チルトの基準位置を検出し、基準位置からのパン・チルト駆動量に基づいて撮像方向を算出する方法が知られている。しかし、この方法ではパン・チルトの各基準位置を検出するために、それぞれパン駆動・チルト駆動を行って基準位置を探索する必要がある。このため、基準位置探索のためにパン駆動・チルト駆動が開始されてから基準位置を検出するまでに時間を要する。パン駆動・チルト駆動を開始してからカメラの撮像方向が特定されるまでの間は、正確な撮像方向を特定できないため、マスク画像が撮像画像上の正しい位置に重畳することができない。従って、この期間は、被写体のプライバシーの保護を十分に行うことができない。
そこで、従来パン・チルト駆動を行う駆動部が所定の基準位置に達したことを検知するまでの期間は対象物に対してぼかし処理を施すことにより、基準位置を探索する間の被写体のプライバシーの保護を行うカメラが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−135683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のカメラでは、カメラの撮像方向が所定の基準方向に達するまでは、撮像画像を確認することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、撮像手段が撮像した撮像画像をネットワークを介してクライアントに送信する画像送信装置であって、前記撮像手段の撮像方向を変更する変更手段により変更された前記撮像方向が基準方向に達したことを検出する検出手段と、前記基準方向から前記変更手段が前記撮像方向を変更した変更量に基づいて前記変更後の撮像方向を特定する特定手段と、前記撮像手段が撮像可能な撮像領域のうち表示を制約すべき制約領域を示す領域情報を保持する保持手段と、前記保持手段が保持した前記領域情報と前記特定手段が特定した前記撮像方向とに基づいて前記制約領域の表示を制約する制約手段と、前記撮像画像の全部または一部の領域の表示を制限する制限手段と、前記変更手段が前記変更を開始してから前記撮像方向が前記基準方向に達したことを前記検出手段が検出するまでの検出期間に撮像された前記撮像画像を前記制約領域の表示が制約されない撮像画像を閲覧する権限を有する第1のクライアントには表示させ、前記権限を有さない第2のクライアントには前記検出期間に撮像された前記撮像画像の全部または一部の領域の表示を前記制限手段に制限させる第1の制御と、前記撮像方向が前記基準方向に達したことを前記検出手段が検出した後に撮像された前記撮像画像において前記制約手段が前記制約領域の表示を制約した画像を少なくとも前記第2のクライアントに送信する第2の制御を行う制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カメラが撮像方向を特定するための基準方向を探索する間も被写体のプライバシーを保護しつつ撮像画像の送信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1又は実施例2に係るカメラの構成図。
【図2】本発明の実施例1に係るカメラの動作を表すシーケンス図。
【図3】本発明の実施例1又は実施例2におけるマスク画像の重畳を説明するための図。
【図4】本発明の実施例1におけるCPU010の動作を表す動作フロー図。
【図5】本発明の実施例1におけるカメラ制御部009の動作を表す動作フロー図。
【図6】本発明の実施例2に係るカメラの動作を表すシーケンス図。
【図7】本発明の実施例1又は実施例1に係る画像送信システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<実施例1>
本実施例に係る画像送信システムでは、図7に示すように、カメラ100がネットワーク013を介して複数のクライアント200に接続される。ネットワーク013は、例えばEthernet(登録商標)等の通信規格を満足する複数のルータ、スイッチ、ケーブル等から構成される。本発明においては各サーバ・クライアント間の通信を行うことができるものであればその通信規格、規模、構成を問わない。インターネットやLAN(Local Area Network)等を用いてもよい。カメラ100は被写体の撮像を行い、ネットワーク013を介して撮像画像をクライアント200に配信する。
【0010】
クライアント200は、カメラ100に対して画像送信要求や設定要求などの要求を行う。本実施例にかかる画像送信システムでは、カメラ100に対して、第1のクライアントとして管理者権限を有するクライアント200−1(以下、管理者クライアント)がネットワーク013を介して接続されている。さらに、同じカメラ100に対し、第2のクライアントとして一般者権限を有するクライアント200−2(以下、一般クライアント)(以下、管理者クライアント及び一般クライアントを総称してクライアント200)がネットワーク013を介して接続されている。
【0011】
管理者クライアントはカメラ100の設定を変更するための設定アプリケーション(以下、設定ツール)を実行することができる。管理者クライアントは設定ツールを用いてカメラ100に対し設定要求を行い、カメラ100の設定を変更する。管理者クライアントは設定ツールを用いて、例えば、マスク設定、可視範囲設定、プリセット位置設定等の設定の変更をカメラ100に対して行うことができる。上記は設定内容の一例であり、設定ツールによって設定することができる内容は上記のものに限られない。また、設定ツールによって上述の設定内容の全てを設定可能である必要はない。
【0012】
管理者クライアントは、また、カメラ100に対し画像送信要求を行い、カメラ100が撮像した撮像画像をクライアント200に配信するように要求することができる。管理者クライアントは、さらに、管理者用のビューワ(以下、管理者ビューワ)を用いて、カメラ100から映像配信を受ける際に、マスク設定、可視範囲設定、プリセット位置設定などによる制限を受けない撮像画像を受信することができる。すなわち、管理者クライアントは管理者ビューワを用いて、マスクが重畳されていない撮像画像を閲覧することができる。また、管理者クライアントは、カメラ100の撮像方向をプリセット位置に限定されたり、所定の可動領域に制限されたりすることなく、カメラ100の撮像方向を変更して撮像画像を閲覧することができる。
【0013】
管理者ビューワを用いて映像配信を受ける場合、初めはマスク設定により設定されたマスクが重畳され、可視範囲設定等によって指定された範囲の撮像画像が表示される。しかし、管理者クライアントは管理者ビューワを用いて映像配信を受ける場合、カメラのパン、チルト操作を行うことにより、可視範囲設定された範囲の外の映像を閲覧することも可能である。また、管理者クライアントは、設定ツールを用いて変更する際に、既に設定されている設定内容に制限されない撮像画像を管理者ビューワを用いて閲覧することができる。
【0014】
一般クライアントはカメラ100に対し画像送信要求を行い、カメラ100が撮像した撮像画像をクライアント200に配信するように要求する。一般クライアントは、カメラ100から映像配信を受ける際にマスク設定、可視範囲設定、プリセット位置設定などによる制限を受けた撮像画像を受信する一般者権限を有する。一般クライアントでは設定ツールを用いることができない。従って、一般クライアントはカメラ100に対し設定要求を行い、カメラ100の設定を変更することができない。
【0015】
次に、本実施例に係るカメラ100の構成を図1(a)を用いて説明する。レンズ部001は、後述の撮像部002に被写体の像を結像する。本実施例において、レンズ部001は後述のレンズ制御部006の制御によりズームや絞りの調整を行うことができる。
【0016】
撮像部002は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子などによって構成され、レンズ部001によって結像された像を画像信号に変換する。
【0017】
画像処理部003は、撮像部002から出力された画像信号を取り込み、現像処理や現像された撮像画像へのマスク画像の重畳を行う。マスク画像の重畳以外にも、モザイク処理やぼかし処理を行ったり、OSD(On−Screen Display)による文字や記号等の重畳を行ったりしてもよい。
【0018】
符号化部004は、画像処理部003の出力データを、JPEG(Joint Photographic Experts Group)やMPEG−4(Moving Picture Experts Group phase 4)、H.264等の符号化形式を用いて符号化する。通信制御部005は、符号化部004で符号化された画像データをネットワーク013に送信する。
【0019】
レンズ制御部006は、適正な画像を取り込むためにレンズ部001のズームや絞り等を制御する。レンズ制御部006は、ズーム調整のためのステッパモータとステッパモータに駆動用のパルスを出力するモータドライバとを有する。またレンズ制御部006は、絞り調整のためのステッパモータ及びモータドライバを有する。
【0020】
駆動制御部007は、後述の駆動部008の制御を行う。駆動部008は、カメラ100の撮像方向を変更する。駆動制御部007及び駆動部008について図1(b)を用いて説明する。パンモータ020、チルトモータ023は、カメラ100の撮像方向をそれぞれパン方向、チルト方向に駆動させる。エンコーダ021、024はそれぞれパンモータ020、チルトモータ023の回転数を検出する。モータドライバ022は、エンコーダ021の検出結果をもとにパンモータ020を駆動させる。モータドライバ025は、エンコーダ024の検出結果をもとにチルトモータ023を駆動させる。
【0021】
基準位置センサ030、基準位置センサ031は、それぞれパン駆動、チルト駆動を行うための基準位置を検出する。駆動制御部007は基準位置センサ030、基準位置センサ031が基準位置を検出した時点でカメラが撮像している撮像方向を基準方向とする。駆動制御部007は基準位置からの駆動部008の駆動量と基準方向とに基づいてカメラの撮像方向を特定する。ここで、基準位置からの駆動部008の駆動量は、基準方向から駆動部008が撮像方向を変更した変更量に対応する。駆動制御部007は特定したカメラの撮像方向についての情報をカメラ制御部009及びCPU010に出力する。撮像方向の特定については詳細を後述する。
【0022】
基準位置センサとして、例えばホール素子を用いることができる。この場合、基準位置センサ030、基準位置センサ031はそれぞれパン、チルトの基準位置に配置された磁石の磁界に感応すると検知信号を検出部032に出力する。検出部032は基準位置センサ030、基準位置センサ031の検知信号をもとにパン、チルトの基準位置を検出する。検出部032がパンの基準位置を検出することにより、撮像方向がパン方向の基準方向を向いていることを検出する。同様に、検出部032がチルトの基準位置を検出することにより、撮像方向がチルト方向の基準方向を向いていることを検出する。こうして、検出部032は駆動部008の駆動に伴ってパン方向・チルト方向それぞれについて所定の基準方向を探索してカメラ100の撮像方向が各基準方向に達したことを検出する。駆動制御部007は検出部032の検出結果をもとにモータドライバ022、モータドライバ025を制御する。
【0023】
カメラ制御部009は撮像部002、レンズ制御部006及び画像処理部003の制御を行う。カメラ制御部009はレンズ部001でのズーム量を規定するステッパモータの回転量や電子ズーム倍率を管理してレンズ制御部006を制御する。ステッパモータの回転量はステッパモータに出力されるパルス数によって決まる。また、カメラ制御部009は、画像処理部003が画像処理を行った撮像画像を符号化部004へ出力させる制御を行う。また、カメラ制御部009は、撮像部002において撮像が完了し、撮像画像がネットワーク013へ出力可能となった旨の通知を後述のCPU010に通知する。さらにカメラ制御部009は、画像処理部003によって撮像画像にマスク画像が重畳されると、マスク画像の重畳が完了した旨をCPU10に通知する。
【0024】
CPU010は、カメラ制御部009、符号化部004、通信制御部005の制御を行う。また、本実施例においてCPU010は、カメラ100に対して画像送信要求を行ったクライアントが有する権限を判断する。そしてCPU010は、クライアントの権限に応じてマスクを重畳する領域の閲覧を制限した映像を配信したり、閲覧が制限されない映像を配信したりする。例えば、CPU010は、上述の管理者ビューワを用いて画像送信要求が行われた場合には、クライアントは管理者権限を有すると判断する。そして、管理者ビューワを用いて画像送信要求を行ったクライアントに対して、閲覧が制限されない映像を配信する。一方、管理者ビューワ以外から画像送信要求が行われた場合には、クライアントは管理者権限を有していないと判断する。そして、そのクライアントに対して閲覧を制限した映像を配信する。あるいは、カメラ100は、ネットワークを介して接続された各クライアントの権限を示す権限情報をROM011又はRAM012に予め記憶しておくことができる。そして、CPU010は、この権限情報を参照して、画像送信要求を行ったクライアントが管理者権限を有するか否か判断することができる。CPU010が、クライアントの有する権限を判断する方法はこれらに限られない。
【0025】
また、本実施例においては、CPU010は駆動部008が基準方向の探索のために駆動を開始してから駆動制御部007から撮像方向についての情報を受信するまでは、画像処理部003から出力される撮像画像が一般クライアントに出力されないように制御する。ここで駆動制御部007は、上述の通り、カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出した後、検出された基準方向に基づいてカメラの撮像方向を特定して、CPU010に撮像方向についての情報を出力する。従ってCPU010は、カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出した後に撮像された撮像画像について、撮像方向の情報を受信することができる。
【0026】
このように、検出部032が基準方向を検出する前に撮像された撮像画像は一般クライアントに送出されない。CPU010は、基準方向の探索のために駆動部008が駆動を開始してからカメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出するまでに撮像された撮像画像が一般クライアントに送信されないようにする。
【0027】
ROM011はCPU010に実行させるためのプログラムを格納する。ROM11は例えばフラッシュメモリーによって構成される。ROM011は電源を遮断してもデータを保持するので、ストレージとしての役目も兼用する。RAM012はプログラム、及びデータを格納する。上述の各ブロックは図1(a)、(b)に示すように、相互に専用バスあるいは共通バスにより接続されている。
【0028】
以下、カメラ100の電源投入時の画像送信制御について図2を用いて説明する。まず、電源が投入されるとCPU010はカメラ制御部009のリセットを解除する(S201)。また、CPU010は駆動制御部007のリセットを解除する(S202)。
【0029】
続いてCPU010は、カメラ制御部009に対して初期設定を行う(S2031〜S2033)。本実施例では、CPU010はROM011から初期設定の設定値を読み出してカメラ009に対する初期設定を行う。また本実施例では、初期設定値の設定値は予め管理者クライアントによって設定ツールを用いて設定されているものとする。初期設定には、カメラが撮像可能な撮像領域のうち画像処理部003がカメラ制御部009の制御を受けてマスク画像を重畳すべき領域(以下、重畳領域という。)についての設定が含まれる。
【0030】
本実施例では、撮像画像にマスク画像を重畳することにより撮像画像中の所定の領域がクライアントに表示されないように制約する場合について説明するが、制約の方法はこれに限られない。例えば、カメラが撮像可能な撮像領域のうち、クライアントに表示されないように制約する制約領域の表示をぼかし処理等によって制約することとしてもよい。マスク画像の重畳以外にも、モザイク処理を行ったり、OSD(On−Screen Display)による文字や記号等を撮像画像に重畳したりする場合には、それらの処理についての初期設定をさらに行うこととしてもよい。重畳領域についての初期設定値である重畳領域情報はROM11に保持される。
【0031】
マスク画像の重畳領域は、例えば図3に示すように、カメラ100の位置200を中心としたカメラ視野におけるマスク画像Mの頂点の座標(HLx,HLy)、(LLx,LLy)、(HRx,HRy)、(LRx,LRy)により設定することができる。マスク画像が矩形である場合は4点全ての頂点について頂点座標を求める必要はなく、対角となる2頂点の座標を求めればマスク画像の重畳領域を特定することができる。あるいはマスク画像の左下頂点やマスク画像の中心などマスク画像上のいずれか一点の座標と、マスク画像の高さ、幅の大きさによって重畳領域を設定することができる。初期設定においては、複数のマスク領域をカメラ視野範囲上に設定することができる。
【0032】
CPU010は初期設定として、マスク画像の重畳領域についての設定に加え、例えば、測光方式の設定やシャッタースピードの設定、逆光補正の有無についての設定などをカメラ制御部009に対して行う。初期設定はこれらの設定に限定されない。CPU010は、ROM011に記憶されている初期設定を電源投入時に読み出してカメラ制御部009に対して設定することができる。
【0033】
またCPU10は、電源が投入されると駆動制御部007に対して初期化指示を送信する(S204)。図2に示すように、CPU10はカメラ制御部009に対して順次初期設定を行っている間に、駆動制御部007に対して初期化指示を行うことができる。CPU10による、カメラ制御部009に対する初期設定と駆動制御部007に対する初期化指示の順序は特に限定しない。
【0034】
駆動制御部007はCPU10からの初期化指示を受信すると、駆動部008を駆動させてパン・チルトそれぞれの基準方向の探索を実行する(S205)。ここで、駆動制御部007の制御による基準方向の探索について説明する。基準方向の探索は、パン、チルトの基準位置を探索することにより行われる。まずパン動作について、駆動部008によるパン駆動に伴って、パンモータ020の回転を検出するエンコーダ021の出力パルスが駆動制御部007に伝えられる。また、基準位置センサ030によるパンの基準位置の検出時点が、検出部032を通じて駆動制御部007に伝えられる。駆動制御部007は、基準位置センサ030がパンの基準位置を検出した時点でのカメラ100の撮像方向をパンについての基準方向とする。
【0035】
駆動制御部007は、基準位置センサ030の検知信号をもとに検出部032がパンの基準位置を検出してからエンコーダ021が出力したパルス数mをカウントする。そして駆動制御部007は下記式1により、基準位置からのパン角度Piを算出する。算出された現在のパン角度PiはRAM012で保持される。
(式1)Pi=m×360/p
但し、pはカメラ100の撮像方向を360°パン回転させた場合にエンコーダ021から出力されるパルス数を表す。チルト角度についてもパン角度の算出と同様にして求めることができる。
【0036】
このようにして、駆動制御部007は基準位置からの駆動部008の駆動量を求める。駆動制御部007は、基準方向と、求めた駆動量とに基づいて現在のカメラ100の撮像方向を特定する。駆動制御部007は、カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出すると基準方向を探索するための駆動開始時の撮像方向にカメラ100の撮像方向を変更するようにしてもよい。この場合駆動制御部007は、基準方向の探索を開始してから基準方向を検出するまでのパンモータ020及びチルトモータ023の駆動量を示すパルス数をカウントして記憶しておくことができる。こうして、駆動制御部007は、カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出した時点で式1を用いて探索開始時の撮像方向を特定することができる。
【0037】
基準方向の探索が完了し、パン・チルトの位置が確定する(S206)と、駆動制御部007はカメラ制御部009に確定したパン・チルト位置情報を送信し(S209)、続いてCPU010にも確定したパン・チルト位置情報を送信する(S210)。
【0038】
カメラ制御部009は順次初期値を受信し、撮像画像を出力できる状態になると撮像画像が出力可能である旨をCPU010に通知する(S2071〜S2073)。ここで、CPU010は駆動制御部007から確定したパン・チルト位置についての情報を受信するまでに上記の通知(S2071、S2072)を受けた撮像画像を一般クライアントには出力しないように通信制御部005を制御する。
【0039】
駆動制御部007はカメラ100の撮像方向が基準位置に達したことを検出部032が検出した後、検出された基準方向に基づいてカメラのパン・チルト位置を確定する。従って、駆動制御部007は基準方向の検出時以降に撮像された撮像画像について、確定したパン・チルト位置についての情報を出力することができる。このようにして、CPU010は、基準方向の探索のために駆動部008が駆動を開始してからカメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出するまでに撮像された撮像画像の画像データが一般クライアントに送信されないように制御する。CPU010は、例えば、クライアントからの画像配信要求が管理者ビューワを用いて行われた要求でない場合、一般クライアントからの画像配信要求であると判断する。あるいは、例えば、予めカメラに記憶された各クライアントの権限情報に基づいて、画像配信要求を行ったクライアントが管理者権限を有するクライアントであるか否かを判断する。CPU010が、クライアントの有する権限を判断する方法はこれらに限られない。
【0040】
一般クライアントに対して撮像画像の画像データが送信されないようにする方法として、一般クライアントからの画像配信要求に対し、CPU010はその実行を拒否する応答をするように通信制御部005に指示することができる。例えば、クライアントとの通信プロトコルとしてHTTP(Hypertext Transfer Protocol)が用いられている場合、CPU010は「403Forbidden」のステータスコードを応答させて画像送信要求の実行を拒否できる。
【0041】
または、一般クライアントからの画像配信要求を受け入れるが、撮像画像の画像データが送信可能となるまで一般クライアントへの画像データを行わず一般クライアントを待たせてもよい。例えば、通信プロトコルとしてHTTPが用いられている場合にはCPU010は「200 OK」のステータスコードを通信制御部005に応答させ、撮像画像の画像データが送信可能となったら、要求を行った一般クライアントに画像を配信させる。
【0042】
一方、CPU010はステップS2071、ステップS2072における通知を受けた撮像画像を管理者クライアントには符号化部004で符号化して出力するように制御する(S2081〜S2082)。
【0043】
カメラ制御部009はステップS209においてパン・チルト位置についての情報を受信すると、受信したパン・チルト位置とカメラ制御部009が保持しているズーム位置に基づいて、図3に示したカメラ視野における現在の撮像画像の位置を計算する。そして、カメラ制御部009は計算した撮像画像の位置と、初期設定において設定されたマスクの重畳領域についての情報とを用いて、撮像画像にマスク画像を重畳する位置を決定する。
【0044】
例えば、図3において現在の撮像方向での撮像画像(不図示)の左下の頂点Oの座標が(LLX,LLY)で表されるとき、マスク画像Mの左下頂点の撮像画像における位置は、頂点Oを原点(0,0)として(LLx−LLX,LLy−LLY)として表される。同様にして、撮像画像の頂点Oを原点とした場合の、マスク画像のその他の頂点の位置を求めることができる。このようにして、撮像画像にマスク画像を重畳する位置を決定することができる。上記の方法は一例に過ぎず、撮像画像上にマスク画像を重畳する位置を決定できる方法であればよい。上記の例では原点を頂点Oとしたが、頂点の位置は撮像画像上の任意の点を原点とすることができる。
【0045】
そしてカメラ制御部009は、撮像画像上の計算した位置にマスク画像を重畳するように画像処理部003を制御する。画像処理部003は、カメラ制御部009の制御により、駆動制御部007が特定した撮像方向に応じた撮像画像上の領域にマスク画像を重畳する。
【0046】
マスク画像を重畳した画像を出力できる状態になったら、カメラ制御部009はマスク設定完了通知をCPU010に送信する(S211)。CPU010はステップS2073以降の画像はネットワーク013に送信するために符号化部004を制御して画像を符号化し、通信制御部005を制御してネットワーク013を介して各クライアントに画像データを送信する(S2083)。画像データの送信は、一般クライアントに対しても、管理者クライアントに対しても行われる。
【0047】
本実施例において、画像データの送信はネットワーク013に接続されたクライアント200から受信した画像送信要求に応じて行うようにすることができる。または、画像データの送信は、クライアント200からの画像送信要求によらずに行うこととしてもよい。この場合、CPU010はカメラ制御部009から撮像画像の出力通知を受けると、通知を受けた撮像画像を管理者クライアント、一般クライアントにそれぞれ配信できるかを判断して撮像画像の送信制御を行うこととしてもよい。
【0048】
本シーケンスでは、CPU010は、駆動制御部007からパン・チルト位置についての情報を受信した撮像画像にマスク画像を重畳してネットワーク013に送出させる。しかし、撮像画像の送出を開始するタイミングはこれに限られず、カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出した以後であればよい。例えば、撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出した後であって、駆動部008が所定の撮像方向にカメラ100を駆動させた後に撮像画像の送出を開始させることとしてもよい。所定の撮像方向としては、例えば、駆動部008が基準方向の探索のために駆動を開始した時点(図2のS205)の撮像方向とすることができる。
【0049】
また、本シーケンスは電源投入時に関して説明したが、ネットワーク013を経由する等、外部からの指示によりパン・チルトの基準方向探索を実行する場合にも同様のシーケンスでマスク画像が設定されるまで画像データの送信を制限することができる。
【0050】
次に、本シーケンスにおけるCPU010の動作を図4のフロー図を用いて説明する。図4の処理フローは、図4に示される手順をCPU010に実行させるためのプログラムを示す。CPU010はROM011からこのプログラムを読み出して実行する。あるいは、図4の処理フローはハードウェアにより実行されることとしてもよい。
【0051】
CPU010は電源が投入されると、カメラ制御部009及び駆動制御部007に対してリセット解除を指示する(S400)。そして、CPU010は駆動制御部007に対する初期化指示(S401)を行う。また、CPU010はカメラ制御部009に対する初期設定(S402)を行う。CPU010はカメラ制御部009に対して複数の初期設定を行うことができる。図4のフロー図では初期化指示の後に初期設定を行う場合について示したが、1以上の初期設定を行った後にカメラ制御部009に対して初期化指示を行うこととしてもよい。
【0052】
続いてCPU010は、撮像画像が出力可能になった通知をカメラ制御部009から受信する(S403)と、クライアント200から画像配信要求を待つ(S404)。クライアント200から画像配信要求を受信すると(S404でYesの場合)、CPU010はマスク設定完了通知を既にカメラ制御部009から受信したか判断する(S405)。既にマスク設定完了通知を受信している場合(S405でYesの場合)、CPU010はステップS403において通知を受信した撮像画像を符号化部004で符号化してネットワーク013に送信するように通信制御部005に指示する(S406)。
【0053】
一方、マスク設定完了通知を受信していない場合には(S405でNoの場合)、CPU010は画像送信要求を行ったクライアントが管理者クライアントであるか一般クライアントであるか判断を行う(S407)。管理者クライアントが管理者ビューワを用いて画像送信要求を行った場合(S407でYesの場合)、CPU010は画像処理部003にマスクを重畳しない撮像画像を符号化部004で符号化してネットワーク013に送信するように通信制御部005に指示する(S408)。
【0054】
一方、管理者ビューワを用いない一般者クライアントが画像送信要求を行った場合、(S407でNoの場合)、CPU010は符号化部004で撮像画像を符号化させないようにして、ネットワーク013に撮像画像が送信されないようにする(S409)。このようにして、CPU010は撮像画像の全部を制限領域として、その表示を制限する。ステップS408又はステップS409の処理を行った後、CPU010はステップS404及びS405の処理を繰り返す。
【0055】
本実施例では、画像配信要求に応じてCPU010が画像配信を行う場合について説明したが、画像配信要求にかかわりなく画像配信を行うこととしてもよい。この場合には、CPU010はステップS403において撮像画像の出力通知を受信するとステップS405の処理に進む。CPU010はマスク設定完了通知を受信していない場合(S405でNoの場合)、管理者クライアントには通知を受けた撮像画像を送信するが、一般クライアントには通知を受けた撮像画像を送信しないようにする。そして、CPU010はS403、S405の処理を繰り返す。
【0056】
ステップS406において撮像画像送信指示を行った後、CPU010はカメラ100の電源を遮断する指示がなされたか判断する(S410)。ネットワーク013を介して、あるいは、ユーザにより直接カメラ100に対して電源を遮断する指示されている場合(S410でYesの場合)、CPU010はカメラ制御部009等、CPU010に接続された各ブロックに動作終了指示を行う(S411)。そしてCPU010は動作を終了する(S412)。一方、電源を遮断する指示が為されていない場合(S410でNoの場合)、CPU010はステップS406からステップS410の処理を繰り返す。
【0057】
次に、図2に示したシーケンスにおけるカメラ制御部009の動作について、図5を用いて説明する。カメラ制御部009の機能がプロセッサ及びメモリを用いて実現される場合には、図5の処理フローは、図5に示される手順をこのプロセッサに実行させるためのプログラムを示す。このプロセッサは、コンピュータであり、メモリから読み出したプログラムを実行する。メモリは、プロセッサが読み出すことができるようにこのプログラムを記録した記録媒体である。CPU010がカメラ制御部009の動作を制御する形態では、図5の処理フローは、図5に示される手順をCPU010に実行させるためのプログラムを示す。CPU010はROM011からこのプログラムを読み出して実行し、カメラ制御部009を制御する。あるいは図5の処理フローはハードウェアにより実行されることとしてもよい。
【0058】
まず、カメラ制御部009は、CPU010からリセット解除指示を受信すると、リセットの解除を行う(S500)。そしてカメラ制御部009はCPU010から初期設定を受信し(S501)、初期設定に応じてカメラ制御部009が制御する各ブロックに対する設定を行う。初期設定に基づいて撮像部002において被写体の撮像がなされ、撮像画像の出力が可能になると、カメラ制御部009はCPU010に対して撮像画像出力通知を行う(S502)。
【0059】
ここでカメラ制御部009は、駆動制御部007から撮像方向についての情報(パン・チルト位置情報)受信した場合(S503でYesの場合)、画像処理部003に受信した撮像方向についての情報に基づいてマスク画像の重畳を行わせる(S504)。画像処理部003においてマスク設定が完了すると(S505においてYesの場合)、カメラ制御部009はマスク設定完了通知をCPU010に対して行う(S506)。そして、カメラ制御部009は画像処理部003においてマスク画像が重畳された撮像画像を符号化部004へ出力させる。
【0060】
カメラ制御部009はCPU010から終了指示を受信すると(S508でYesの場合)、動作を終了する(S509)。終了指示を受信していない場合は(S508でNoの場合)、カメラ制御部009はステップS502からステップS508の処理を繰り返す。
【0061】
以上説明したように、本実施例は、基準方向の探索のために駆動部008が駆動を開始してから、撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出するまでに撮像された撮像画像が一般クライアントに送信されないようにする。カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことが検出された後に撮像された撮像画像については、基準方向からの駆動部008の駆動量に基づいて正確な撮像方向を特定することができる。従って、画像処理部003は設定された重畳領域に正確にマスク画像を重畳することができる。
【0062】
本実施例は、重畳領域に正確にマスク画像を重畳できるようになるまでは一般クライアントに撮像画像が送信されないようにする。従って、カメラが撮像方向を特定するための基準方向を探索する間も被写体のプライバシーを保護した撮像画像を送信できる。また本実施例は、カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032検出した後に撮像された撮像画像については、正確な位置にマスク画像を重畳して送信できる。
【0063】
また上記の実施例では、CPU010はカメラ制御部009からのマスク設定完了通知を受信するまでは撮像画像を一般クライアントに出力しないこととしたが、出力しない撮像画像の替わりにカラーバーチャートなどの代替画像を出力することとしてもよい。この場合、CPU010はマスク設定完了通知を受信する前に撮像画像を受信すると、受信した撮像画像を使用せずにROM011から符号化済みの代替画像データを読み出し、通信制御部005を制御してネットワーク013にデータを送出する。
【0064】
または、上記の実施例では、CPU010はカメラ制御部009からのマスク設定完了通知を受信するまでは撮像画像を一般クライアントに送信しない。この際、送信しない撮像画像の替わりに、ROM011に記憶された過去に撮影された撮像画像を出力することとしてもよい。この場合CPU010は、図4に示したフローのステップS412において動作を終了する前に符号化部004からネットワーク013に出力された符号化済みの撮像画像をROM011に記憶して、動作を終了する。ここでROM011に記憶される撮像画像は設定に従い適切にマスクが重畳された撮像画像である。
【0065】
そして、再度カメラ100に電源が投入された場合、CPU010はマスク設定完了通知を受信する前に撮像画像出力通知を受信すると(図4のS405でNoの場合)、ROM011から過去に撮影された符号化済みの撮像画像を読み出す。そして、CPU010は通信制御部005を制御して一般クライアントに読み出した過去に撮影された撮像画像の画像データを送出する。
【0066】
代替画像や過去に撮像した撮像画像を出力してCPU010は、基準方向の探索のため駆動部008が駆動を開始してから撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出するまでの検出期間に撮像された撮像画像の表示を一般クライアントに対して制限する。こうして、CPU010は検出期間に撮像された撮像画像の全部の表示を制限することができる。このようにして、カメラが撮像方向を特定するための基準方向を探索する間も被写体のプライバシーを保護した撮像画像の送信を行うことができる。また、すでに符号化されている画像を代替画像として出力するので、符号化の必要がなく、CPU010の処理が簡単になり、省電力動作が可能となる。さらに、マスク設定が完了しているかどうかにかかわらず一般クライアントに対して画像配信が可能であるため、カメラが正常に動作している事が起動直後からわかるので、一般クライアントのユーザに対して安心感を与えることができる効果がある。
【0067】
また、CPU010は図2のステップS2071、ステップS2072において撮像画像出力通知を受信した撮像画像に対して、画像品質を低下させて符号化を行って一般クライアントに出力することとしてもよい。
【0068】
CPU010はステップS2071、ステップS2072において撮像画像を受信すると、ネットワーク013に送信するために符号化部004を制御して画像を符号化し、通信制御部005を制御してネットワーク013に画像データを送出する。この時、CPU010は画像品質を低下させるように符号化させる。ここで、画像品質が低いとは基準とする画像と比較して画像に含まれる情報量が少ないことをいう。情報量とは、例えば、画像の輝度や色差についての情報の量のことをいう。
【0069】
CPU010は、例えば、符号化処理における量子化に用いる量子化スケールを変更して画像品質を変更することができる。ここで量子化スケールとはいわゆるQ値であり、符号化処理における量子化のための割り算の分母となる値のことをいう。量子化スケールの値を大きくすることにより画質品質は低下する。CPU010は、マスク設定完了通知を受信するまでは、マスク設定通知受信後よりも量子化スケールの値を大きくして符号化させることで画像品質を低下させて符号化させることができる。CPU010が画像品質の変更を行うための方法は上述の方法に限られず任意の方法を用いることができる。こうして、CPU010は検出期間に撮像された撮像画像の全部の表示を制限することができる。
【0070】
CPU010はステップS211においてマスク設定完了通知を受信すると、初期設定等によって予め設定されている符号化品質を適用して撮像画像を符号化させ、通信制御部005を制御してネットワーク013にデータを送出する。
【0071】
こうして、CPU010は、基準方向の探索のために駆動部008が駆動を開始してからカメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出するまでに撮像された撮像画像の一般クライアントにおける表示を制限する。このようにして、カメラが撮像方向を特定するための基準方向を探索する間も被写体のプライバシーを保護した撮像画像の送信を行うことができる。また、マスク設定が完了しているかどうかに関わらず画像配信が可能であるため、カメラが正常に動作している事が起動直後からわかり、ユーザに対して安心感を与えることができる。
【0072】
<実施例2>
本実施例では、CPU010がマスク設定完了通知を受信する前であっても、カメラ制御部009から所定の代替画像あるいは撮像画像を加工した画像を受信して一般クライアントに出力させる場合について説明する。
【0073】
まず本実施例の構成について、実施例1と異なる構成について説明する。本実施例において、カメラ制御部009は、カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出し、駆動制御部007から撮像方向についての情報を受信するまでは、撮像部002が撮像した撮像画像に替えて代替画像をCPU010に出力する。
【0074】
また、本実施例に係るCPU010は、カメラ制御部009からマスク設定完了通知を受信する前であっても、図4のステップS409においてカメラ制御部009から受信した代替画像を符号化して一般クライアントに送出する。その他の構成は実施例1と同じ構成なので説明を省略する。
【0075】
続いて、本実施例の電源投入時の動作について図6を用いて説明する。実施例1において説明した動作と同じ処理については同じ符号を付して説明を省略し、実施例1と異なる処理を行う点について以下説明する。
【0076】
電源投入後、カメラ制御部009はCPU010から順次初期設定を受信し、画像を出力できる状態になると画像が出力された旨をCPU010に通知する。ここで、カメラ制御部009は、マスク設定が完了する前までは一般クライアント配信用として、撮像部002から出力された画像の替わりに代替画像として例えばカラーバーチャートの画像を出力するように画像処理部003を制御する(S6071〜S6072)。代替画像はROM011に予め記憶されている画像をカメラ制御部009が読み出して用いることができる。また、カメラ制御部009は、一般クライアント配信用の画像とは別に、管理者クライアント配信用の撮像画像も出力させる(S2071〜S2072)。
【0077】
CPU010はステップS6071、ステップS6072において代替画像を受信すると、符号化部004を制御して画像を符号化し、通信制御部005を制御して一般クライアントにデータを送信する(S6081、S6082)。また、実施例1と同様に、CPU010は符号化した撮像画像を管理者クライアントに送信する。
【0078】
カメラ制御部009は、ステップS209においてパン・チルト情報を受信すると、初期設定により設定された重畳領域にマスク画像を重畳した撮像画像を出力するように画像処理部003に指示する。駆動制御部007は、カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出した後、検出された基準方向に基づいてカメラのパン・チルト位置を特定して、カメラ制御部009にパン・チルト位置についての情報を出力する。従ってカメラ制御部009は、カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出した後に撮像された撮像画像について、パン・チルト位置についての情報を受信することができる。カメラ制御部009は、パン・チルト位置についての情報を受信した撮像画像に、重畳領域にマスク画像を重畳して画像処理部003から符号化部004へ出力させる。CPU010はカメラ制御部009から撮像画像が出力された旨の通知を受信すると、撮像画像を符号化して管理者クライアント及び一般クライアントに送信する(S2083)。
【0079】
すなわち、カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出するまでに撮像された撮像画像はカラーバーチャートの画像に代替されて一般クライアントに送出される(S6081、S6082)。一方、カメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出した後に撮像された撮像画像は、画像処理部003においてマスク画像の重畳処理が行われた後に管理者クライアント及び一般クライアントに送信される(S2083)。このようにして、本実施例に係るカメラ100は、基準方向の探索のために駆動部008が駆動を開始してからカメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出するまでに撮像された撮像画像の表示を制御する。
【0080】
画像処理部003におけるマスク画像の重畳については実施例1において説明した処理と同様であるので、説明を省略する。なお画像データの送信は、例えば、ネットワーク013に接続されたクライアントから受信した画像送信要求に応じて行うことができる。
【0081】
本実施例においては、CPU010は実施例1において図4を用いて説明したステップS409において、一般クライアントへ送信するための代替画像を送信させる。こうして、CPU010は検出期間に撮像された撮像画像の全部の表示を制限する。
【0082】
また本実施例では、カメラ制御部009は実施例1において図5を用いて説明したステップS503においてパン・チルト情報を未受信の場合、ROM011から代替画像を読み出して一般クライアント用の画像として符号化部004に出力する。
【0083】
このようにして、CPU010は、基準方向の探索のために駆動部008が駆動を開始してからカメラ100の撮像方向が基準方向に達したことを検出部032が検出するまでに撮像された撮像画像が一般クライアントに送信されないように制御する。
【0084】
こうして、本実施例は、カメラ100が撮像方向を特定するための基準方向を探索する間も被写体のプライバシーを保護した撮像画像の送信を行うことができる。また、本実施例によれば、パン・チルト位置情報が確定しているかどうかにかかわらず画像配信が可能であるため、カメラが正常に動作している事が起動直後からわかるのでユーザに対して安心感を与えることができる。
【0085】
本実施例では、カメラ制御部009はステップS3071、ステップS3072においてカラーバーチャートを代替画像として出力するが、これ以外にも撮像部002が撮像した撮像画像の全体に画像処理部003がマスク画像を重畳した画像を出力してもよい。または、撮像部002において撮像された撮像画像の全体に画像処理部003がぼかし処理やモザイク処理を行った画像を出力してもよい。この場合、カメラ電源が投入されてからカメラ制御部009がパン・チルト情報を受信するまでは、カメラ制御部009は撮像画像全面にマスク画像を重畳し、または撮像画像全面にぼかし処理やモザイク処理を行う。
【0086】
マスク画像の重畳、ぼかし処理、または、モザイク処理は、必ずしも画面全体である必要はなく、撮像画像の内容が閲覧者に認識されないようになされればよい。たとえば撮像画像の一部の表示を制限領域として、その表示を制限することとしてもよい。このようにして、CPU010は検出期間に撮像された撮像画像の全部または一部の表示を制限する。
【0087】
そしてCPU010は、ステップS209においてパン・チルト情報を受信すると、画像処理部003に対して初期設定により設定された位置にマスク画像を重畳した撮像画像を出力するように指示する。
【0088】
このようにすれば、新たな画像処理の資源を必要とせずに、画像処理部003のマスク画像を重畳する機能あるいはぼかし処理機能、モザイク処理を行う機能をそのまま利用して代替画像を生成することができる。
【0089】
またカメラ制御部009は、上述のカラーバーチャート、マスク画像を重畳した撮像画像、モザイク処理を行った撮像画像等の代替画像を出力する際に、ユーザに対して注意を喚起させるメッセージを画像に重畳できる。例えば、ステップS6071、ステップS6072においてモザイク処理を行った撮像画像を出力する場合に、「カメラ初期化中のためモザイク画像を配信しています」などのメッセージを画像に重畳することができる。
【0090】
メッセージの重畳を行うために、CPU010は電源投入後カメラ制御部009に対してOSDの設定を行う。設定内容はメッセージの文言、配色、フォント、サイズ、表示位置などである。カメラ制御部009はCPU010からOSDの設定を受信すると、画像処理部003を制御して、ユーザへの注意喚起文言を出力画像に重畳させる。
【0091】
CPU010はステップS211においてマスク設定完了通知を受信したら、メッセージの重畳を終了させるためのOSD設定解除通知をカメラ制御部009に送信する。カメラ制御部009はOSD設定解除通知を受信すると、出力する画像にメッセージの重畳を行わないように制御する。その結果、ユーザへの注意喚起メッセージが以後の画像に重畳されなくなる。
【0092】
このようにすることで、カメラがマスク画像設定中であるために代替画像が配信されていることが文字情報によってわかり、ユーザに対して安心感を与えることができる。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0094】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク013又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0095】
100 カメラ
003 画像処理部
004 符号化部
005 通信制御部
006 レンズ制御部
007 駆動制御部
008 駆動部
009 カメラ制御部
010 CPU
013 ネットワーク
032 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段が撮像した撮像画像をネットワークを介してクライアントに送信する画像送信装置であって、
前記撮像手段の撮像方向を変更する変更手段により変更された前記撮像方向が基準方向に達したことを検出する検出手段と、
前記基準方向から前記変更手段が前記撮像方向を変更した変更量に基づいて前記変更後の撮像方向を特定する特定手段と、
前記撮像手段が撮像可能な撮像領域のうち表示を制約すべき制約領域を示す領域情報を保持する保持手段と、
前記保持手段が保持した前記領域情報と前記特定手段が特定した前記撮像方向とに基づいて前記制約領域の表示を制約する制約手段と、
前記撮像画像の全部または一部の領域の表示を制限する制限手段と、
前記変更手段が前記変更を開始してから前記撮像方向が前記基準方向に達したことを前記検出手段が検出するまでの検出期間に撮像された前記撮像画像を前記制約領域の表示が制約されない撮像画像を閲覧する権限を有する第1のクライアントには表示させ、前記権限を有さない第2のクライアントには前記検出期間に撮像された前記撮像画像の全部または一部の領域の表示を前記制限手段に制限させる第1の制御と、
前記撮像方向が前記基準方向に達したことを前記検出手段が検出した後に撮像された前記撮像画像において前記制約手段が前記制約領域の表示を制約した画像を少なくとも前記第2のクライアントに送信する第2の制御を行う制御手段とを有することを特徴とする画像送信装置。
【請求項2】
前記制限手段は、前記撮像画像における前記制約領域より大きく前記制約領域を含む所定の制限領域の表示を制限することを特徴とする請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項3】
前記制限手段は、前記検出期間に撮像された前記撮像画像の代わりに所定の画像を前記第2のクライアントに送信するようにして前記撮像画像の表示を制限することを特徴とする請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項4】
前記制限手段は、前記所定の画像として前記撮像手段が過去に撮像した撮像画像を前記第2のクライアントに送信するようにして前記撮像画像の表示を制限することを特徴とする請求項3に記載の画像送信装置。
【請求項5】
前記制限手段は、前記検出期間に撮像された前記撮像画像にマスク画像を重畳した画像、又は、該撮像画像にモザイク処理を施した画像を前記第2のクライアントに出力するようにして前記撮像画像の表示を制限することを特徴とする請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項6】
前記撮像画像を符号化する符号化手段を有し、
前記制限手段は、前記検出期間に撮像された前記撮像画像を符号化した画像に含まれる情報量が、前記撮像方向が前記基準方向に達したことを前記検出手段が検出した後に撮像される前記撮像画像を符号化した画像に含まれる情報量よりも少なくなるように前記符号化手段を制御して、前記符号化手段により符号化された前記撮像画像を前記第2のクライアントに送信するようにして前記撮像画像の表示を制限することを特徴とする請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項7】
前記制限手段は、前記検出期間に撮像された前記撮像画像の前記または一部の領域の表示を制限した画像を前記第2のクライアントに送信するようにして前記撮像画像の表示を制限する際に、前記撮像画像に前記変更手段の初期化中である旨のメッセージを表示させることを特徴とする請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項8】
検出手段が、撮像手段の撮像方向を変更する変更手段により変更された前記撮像方向が基準方向に達したことを検出する検出ステップと、
特定手段が、前記基準方向から前記変更手段が前記撮像方向を変更した変更量に基づいて前記変更後の撮像方向を特定する特定ステップと、
保持手段が、前記撮像手段が撮像可能な撮像領域のうち表示を制約すべき制約領域を示す領域情報を保持する保持ステップと、
制約手段が、前記領域情報と前記特定ステップにおいて特定した前記撮像方向とに基づいて前記制約領域の表示を制約する制約ステップと、
制限手段が、前記撮像手段が撮像した撮像画像の全部または一部の領域の表示を制限する制限ステップと、
制御手段が、前記撮像画像をネットワークを介してクライアントに送信する制御を行う制御ステップとを有する画像送信方法であって、
前記制御手段が、前記変更手段が前記変更を開始してから前記撮像方向が前記基準方向に達したことを前記検出ステップにおいて検出するまでの検出期間に撮像された前記撮像画像を、前記制約領域の表示が制約されない撮像画像を閲覧する権限を有する第1のクライアントには表示させ、前記権限を有さない第2のクライアントには前記検出期間に撮像された前記撮像画像の全部または一部の領域の表示を前記制限ステップにおいて制限させる第1の制御ステップと、
前記制御手段が、前記撮像方向が前記基準方向に達したことを前記検出ステップにおいて検出した後に撮像された前記撮像画像に前記制約ステップにおいて前記制約領域の表示を制約した画像を少なくとも前記第2のクライアントに送信する第2の制御ステップとを前記制御ステップとして有することを特徴とする画像送信方法。
【請求項9】
撮像手段の撮像方向を変更する変更手段により変更された前記撮像方向が前記基準方向に達したことを検出する検出手順と、
前記基準方向から前記変更手段が前記撮像方向を変更した変更量に基づいて前記変更後の撮像方向を特定する特定手順と、
前記撮像手段が撮像可能な撮像領域のうち表示を制約すべき制約領域を示す領域情報を保持する保持手順と、
前記領域情報と前記特定手順において特定した前記撮像方向とに基づいて前記制約領域の表示を制約する制約手順と、
前記撮像手段が撮像した撮像画像の全部または一部の領域の表示を制限する制限手順と、
前記撮像画像をネットワークを介してクライアントに送信する制御を行う制御手順とを実行するコンピュータに、
前記変更手段が前記変更を開始してから前記撮像方向が前記基準方向に達したことを前記検出手順において検出するまでの検出期間に撮像された前記撮像画像を、前記制約領域の表示が制約されない撮像画像を閲覧する権限を有する第1のクライアントには表示させ、前記権限を有さない第2のクライアントには前記検出期間に撮像された前記撮像画像の全部または一部の領域の表示を前記制限手順において制限させる第1の制御手順と、
前記撮像方向が前記基準方向に達したことを前記検出手順において検出した後に撮像された前記撮像画像に前記制約手順において前記制約領域の表示を制約した画像を少なくとも前記第2のクライアントに送信する第2の制御手順とを前記制御手順において実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−244300(P2012−244300A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110642(P2011−110642)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】