説明

画素形成方法及びカラーフィルタ

【課題】塗膜が、使用した塗布装置に固有な塗膜の膜厚分布の傾向を有しても、その膜厚分布の傾向が是正され基板の全面にわたり均一な膜厚の画素を形成する画素形成方法、及び該画素形成方法を用いて製造したカラーフィルタを提供する。
【解決手段】基板1上にネガ型フォトレジストの塗膜2を設け、フォトマスクを介した露光L、及び現像処理により画素を形成する画素形成方法において、フォトマスクPM2が、用いた塗布装置に固有な塗膜の膜厚分布の内、膜厚の厚い部分に対応したフォトマスク上の部分にハーフートーン4部を有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素形成方法に関するものであり、特に、塗布装置に固有な塗膜の厚薄を是正し、均一な厚さを有する画素の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置やPDPなどの表示装置において、カラー表示、反射率の低減、コントラストの改善、分光特性制御などの目的にカラーフィルタを用いることは有用な手段となっている。
この表示装置に用いるカラーフィルタは、多くの場合、画素として形成されて使用されるものである。表示装置用カラーフィルタの画素を形成する方法として、これまで実用されてきた方法には、フォトリソグラフィー法、印刷法などがあげられる。
【0003】
例えば、図3は、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの一例を模式的に示した平面図である。また、図4は、図3に示すカラーフィルタのX−X’線における断面図である。
図3、及び図4に示すように、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、ガラス基板(50)上にブラックマトリックス(51)、着色画素(52)が順次に形成されたものである。
図3、及び図4はカラーフィルタを模式的に示したもので、着色画素(52)は12個表されているが、実際のカラーフィルタにおいては、例えば、対角17インチの画面に数百μm程度の着色画素が多数個配列されている。
【0004】
ブラックマトリックス(51)は、遮光性を有するマトリックス状のものであり、着色画素(52)は、例えば、赤色、緑色、青色のフィルタ機能を有するものである。
ブラックマトリックスは、カラーフィルタの着色画素の位置を定め、大きさを均一なものとし、また、表示装置に用いられた際に、好ましくない光を遮蔽し、表示装置の画像をムラのない均一な、且つコントラストを向上させた画像にする機能を有している。
【0005】
このブラックマトリックス(51)は、ガラス基板(50)上にブラックマトリックスの材料として樹脂を用いた例である。
このブラックマトリックス(51)は、ガラス基板(50)上に、例えば、ブラックマトリックス形成用の黒色フォトレジストを用いてフォトリソグラフィ法によって形成されたものであり、樹脂を用いて形成されたブラックマトリックスを樹脂ブラックマトリックス(51)と称している。
【0006】
また、着色画素(52)は、この樹脂ブラックマトリックス(51)が形成されたガラス基板(50)上に、例えば、顔料などの色素を分散させたネガ型の着色フォトレジストを用いたフォトリソグラフィ法によって、すなわち、着色フォトレジストの塗膜へのフォトマスクを介した露光、現像処理によって着色画素として形成されたものである。赤色、緑色、青色の着色画素は順次に形成されている。
【0007】
従来、液晶表示装置の製造プロセスにおいて、フォトレジストなどの塗布装置としては、ノズルからガラス基板の中央部に塗布液を滴下した後、ガラス基板を回転させ塗布液を延展させ塗膜を形成するスピンコータが多く用いられてきた。
図1(a)は、スピンコータによってガラス基板(1)上に形成された塗膜(2)の状態を説明する平面図である。また、図1(b)は、(a)のA−A線での断面図である。図1(a)、(b)に示すように、スピンコータによってガラス基板(1)上に形成された
塗膜(2)の膜厚は、ガラス基板(1)の中央部が薄く、周縁部が厚いといった膜厚分布の傾向がある。
尚、図1(a)の平面図においては、説明上、塗膜の厚薄を斜線の疎密で表している。
【0008】
また、スリットコータは、ガラス基板を載置した定盤、或いは塗布ヘッドを水平移動させながらスリットノズルから塗布液をガラス基板に塗布する方法であり、主に、ガラス基板が、例えば、1m×1.3m以上といった大サイズの場合に適用されている塗布装置である。
図2(a)は、スリットコータによってガラス基板(1)上に形成された塗膜(2)の状態を説明する平面図である。また、図2(b)は、図2(a)のA−A線での断面図である。図1(a)と同様に、塗膜の厚薄を実線の疎密で表している。
【0009】
図1(a)、(b)に示すように、スリットコータによってガラス基板(1)上に形成された塗膜(2)の膜厚は、ガラス基板(1)への塗布開始箇所の膜厚が厚いといった膜厚分布の傾向がある。尚、白太矢印は、塗布液の塗布方向を表している。
この現象は、塗布開始前の待機中にスリットノズルの先端部が空気と接触していると、先端部内の塗布液の一部分の濃度が高くなるためである。
【0010】
また、スリットコータにおいては、逆な現象となるが、ガラス基板(1)への塗布開始箇所の膜厚が薄いといった膜厚分布の傾向を示すことがある(図示せず)。この現象は、例えば、塗布開始前の待機中にスリットノズルの先端部の乾燥を防ぐために、洗浄液を貯えた槽に浸漬することにより先端部内の塗布液の一部分の濃度が低くなるためである。
【0011】
上記のように、ガラス基板上に形成された塗膜の膜厚に厚薄の分布があると、形成された画素には、その厚薄の分布の傾向が反映され、例えば、上記着色画素で構成されるカラーフィルタでは表示装置の品位を損なうこととなる。
【0012】
図5は、塗膜の厚薄の分布傾向が、画素の膜厚の厚薄に反映される例の説明図である。図5(a)に示すように、スピンコータによってガラス基板(1)上に形成されたネガ型フォトレジストの塗膜(2)へ、フォトマスク(PM1)を介した露光(5)を与え、現像処理を行うと、図5(b)に示すように、ガラス基板(1)の中央部が薄く、周縁部が厚いといった膜厚分布を反映した画素(3)が形成される。
【特許文献1】特開平10−206622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、基板上に塗布されたフォトレジストの塗膜が、使用した塗布装置に固有な、塗膜の膜厚分布の傾向を有していても、その膜厚分布の傾向が是正され基板の全面にわたり均一な膜厚の画素を形成することのできる画素形成方法を提供することを課題とするものである。
また、上記画素形成方法を用いて製造したカラーフィルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、基板上に塗布装置を用いてネガ型フォトレジストの塗膜を設け、フォトマスクを介した露光、及び現像処理により画素を形成する画素形成方法において、該フォトマスクが、用いた塗布装置に固有な塗膜の膜厚分布の内、膜厚の厚い部分に対応したフォトマスク上の部分にハーフートーン部を有することを特徴とする画素形成方法である。
【0015】
また、本発明は、上記発明による画素形成方法において、前記ハーフートーン部が、画
素を形成する系の解像度以下のピッチをもったラインアンドスペースパターンであることを特徴とする画素形成方法である。
【0016】
また、本発明は、請求項1又は請求項2記載の画素形成方法を用いて製造したことを特徴とするカラーフィルタである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、基板上に塗布装置を用いてネガ型フォトレジストの塗膜を設け、フォトマスクを介した露光、及び現像処理により画素を形成する画素形成方法において、該フォトマスクが、用いた塗布装置に固有な塗膜の膜厚分布の内、膜厚の厚い部分に対応したフォトマスク上の部分にハーフートーン部を有するので、基板上に塗布されたフォトレジストの塗膜が、使用した塗布装置に固有な、塗膜の膜厚分布の傾向を有していても、その膜厚分布の傾向が是正され基板の全面にわたり均一な膜厚の画素を形成することのできる画素形成方法となる。
【0018】
また、本発明は、上記画素形成方法を用いて製造したカラーフィルタであるので、膜厚分布の傾向が是正され基板の全面にわたり均一な膜厚の画素を有するカラーフィルタとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図6は、本発明による画素形成方法の一例を模式的に示す説明図である。図6(a)は、スピンコータによってガラス基板(1)上に形成されたネガ型フォトレジストの、スピンコータに固有な膜厚分布をした塗膜(2)が設けられ、その塗膜(2)に、本発明におけるフォトマスク(PM2)を介した露光(5)を与えている状態を示したものである。
【0020】
フォトマスク(PM2)には、ガラス基板(1)上の塗膜の膜厚分布の内、膜厚の厚い部分に対応したフォトマスク(PM2)上の部分、すなわち、フォトマスク(PM2)の周縁部にハーフートーン部(4)を有している。ハーフートーン部(4)は、フォトマスク(PM2)の周縁部の光透過部に設けられている。
従って、現像処理後に得られる画素(3’)は、図6(b)に示すように、ガラス基板(1)の周縁部の塗膜の残膜率は低く、すなわち、周縁部の画素の膜厚は低減して膜厚分布の傾向が是正され、ガラス基板の全面にわたり均一な膜厚の画素が形成される。
【0021】
フォトマスク(PM2)の周縁部のハーフートーン部(4)の濃度は、ガラス基板上の周縁部に形成される画素の膜厚が、ガラス基板の中央部に形成される画素の膜厚と同一になるように、ガラス基板(1)上の塗膜の膜厚に準じ、設定する。
ハーフートーン部(4)としては、紫外線を減衰させる薄膜、例えば、ITOなどの金属酸化物膜からなるハーフートーン部、或いは、フォトマスクを製造する際に成膜したクロム膜をフォトエチングしたハーフートーン部などがあげられる。
【0022】
しかし、ガラス基板(1)上の塗膜の膜厚分布は、例えば、ガラス基板の中央部から周縁部へと次第に膜厚が厚くなる傾斜をしていることからして、ハーフートーン部(4)としては、画素を形成する系の解像度以下のピッチをもったラインアンドスペースパターンであることが好ましい。
このラインアンドスペースパターンは、系の解像度以下のピッチで、且つ中央部から周縁部へと濃度の勾配を有したものとなる。
【0023】
図7(a)は、ラインアンドスペースパターンの一部分を拡大して示す平面図である。また、図7(b)は、図7(a)におけるX−X’線の断面図である。
図7(a)、(b)に示すように、このハラインアンドスペースパターンは光を遮光するライン(L)と光を透過するスペース(S)で構成される。
本発明におけるラインアンドスペースパターンは、用いるフォトリソグラフィー法の系の解像度以下となっている。
フォトリソグラフィー法の系とは、例えば、画素を形成する際の光学系、フォトマスク、着色フォトレジスト、現像処理などのプロセス全体を指し、得られる画素のパターンの解像度は、この系の解像度によって定まる。
【0024】
例えば、露光光の位相のそろい度合い、フォトマスクを縮小投影して用いる場合と、原寸にて用いる場合、或いはフォトマスクの構造形式によりフォトマスクの実効解像度の相違、原寸露光におけるプロキシミティ量、或いは着色フォトレジストの解像度、現像処理条件などによって系の解像度が定まる。
本発明においては、1枚のフォトマスクを介した露光によって、ガラス基板上の塗膜の膜厚分布の内、膜厚の正常な部分に形成される画素の膜厚と、膜厚の厚い部分に形成される画素の膜厚を同時に均一に形成するために、フォトマスク上のハーフトーン部(4)のラインアンドスペースパターンを、着色フォトレジストへの露光時において、そのフォトリソグラフィー法の系の解像度以下とする。
【0025】
図8は、図7(b)に示すラインアンドスペースパターンの断面を拡大して示すものであり、ラインアンドスペースパターンのスペース(S)(透明部分(開口部))を透過した光の、着色フォトレジスト上での強度分布を模式的に表したものある。図8(a)に示すように、ラインアンドスペースパターンのピッチ(Pw)、及びラインの巾(Lw)が十分に大きければ、開口部を透過した光はフォトマスク上の像を形成する。しかし、図8(b)に示すように、例えば、ラインの巾(Lw)が狭くなると、隣り合った開口部からの光による回折によって像が分離できなくなる。ついには、開口部を透過した光は一様な強度分布に平均化されてしまう。
【0026】
すなわち、本発明においては、ラインアンドスペースパターンをフォトリソグラフィー法の系の解像度以下とすることによって、フォトマスク上のハーフトーン部(4)のラインアンドスペースパターンをラインアンドスペースの像を形成させるパターンとして機能させるのではなく、均一な光学濃度のハーフトーン部として機能させるものである。
【0027】
ハーフトーン部としての実効の光学濃度は、単位面積に占めるラインとスペースの割合で表される。また、ラインアンドスペースのライン(L)は光を遮光する濃度(例えば、OD>2.5以上)を有し、スペース(S)は光を透過し、濃度は略ゼロである。従って、ラインの割合を調節することによって任意に実効の光学濃度を有する半遮光部を精度よく得ることができる。
【0028】
ラインアンドスペースパターンとフォトリソグラフィー法の系の解像度との関係には、図8に示すラインアンドスペースパターンのピッチ(Pw)、及びラインアンドスペースパターンのラインの巾(Lw)とスペースの巾(Sw)の比が関与するが、顔料分散法によって液晶表示装置用カラーフィルタの着色画素を形成する場合に用いられる着色フォトレジストの解像度は6μm程度のものであるので、6μm程度が目安となる。
具体的には、例えば、ラインの巾(Lw):スペースの巾(Sw)=1:1においては、ピッチ(Pw)が略8μm以下になるとラインとスペースの分離ができなくなる。また、例えば、ラインの巾(Lw):スペースの巾(Sw)=1:5においては、ラインの巾(Lw)が略3μm以下になるとラインとスペースの分離ができなくなる。
【0029】
また、本発明におけるラインアンドスペースパターンは、フォトリソグラフィー法の系の解像度以下のラインアンドスペースパターンであって、単位面積に占めるラインの割合
で光学濃度を表すパターンであれば、特に限定されるものではない。例えば、市松模様、波状、円形などがあげられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は、スピンコータによってガラス基板上に形成された塗膜の状態を説明する平面図である。(b)は、(a)のA−A線での断面図である。
【図2】(a)は、スリットコータによってガラス基板上に形成された塗膜の状態を説明する平面図である。(b)は、図2(a)のA−A線での断面図である。
【図3】液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの一例を模式的に示した平面図である。
【図4】図3に示すカラーフィルタのX−X’線における断面図である。
【図5】塗膜の分布傾向が、画素の膜厚の厚薄に反映される例の説明図である。
【図6】本発明による画素形成方法の一例を模式的に示す説明図である。
【図7】(a)は、図6に示すハーフトーン部を拡大して示す平面図である。(b)は、図7(a)におけるX−X’線の断面図である。
【図8】図7(b)に示すハーフトーン部の断面を拡大して示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1、50・・・ガラス基板
2・・・塗膜
3・・・膜厚分布を反映した画素
3’・・・本発明における画素
4・・・ハーフートーン部
5・・・露光
51・・・ブラックマトリックス
52・・・着色画素
L・・・光を遮光するライン
Lw・・・ラインの巾
PM1・・・フォトマスク
PM2・・・本発明におけるフォトマスク
Pw・・・ラインアンドスペースパターンのピッチ
S・・・光を透過するスペース
Sw・・・スペースの巾

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に塗布装置を用いてネガ型フォトレジストの塗膜を設け、フォトマスクを介した露光、及び現像処理により画素を形成する画素形成方法において、該フォトマスクが、用いた塗布装置に固有な塗膜の膜厚分布の内、膜厚の厚い部分に対応したフォトマスク上の部分にハーフートーン部を有することを特徴とする画素形成方法。
【請求項2】
前記ハーフートーン部が、画素を形成する系の解像度以下のピッチをもったラインアンドスペースパターンであることを特徴とする請求項1記載の画素形成方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の画素形成方法を用いて製造したことを特徴とするカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−10845(P2007−10845A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189586(P2005−189586)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】