界磁子及び界磁子の製造方法
【課題】固定子と磁石支持部材との固定を毀損することなく界磁磁石を抜き出すことができる界磁子を提供する。
【解決手段】界磁磁石部20は磁石格納部12において外周側へと同じ極性の磁極面を向けつつ配置方向D2で並んで格納される複数の磁石201〜203を備えている。磁石支持部材30は、少なくとも、磁石201〜203の各々のうち、隣り合う磁石によって磁気的な反発力が軸方向D1の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、軸方向D1について一方側で対向するストッパ部材321〜323と、磁石201〜203のうち配置方向D2の一方の端に位置する磁石201が反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で磁石201が軸方向D1で挿通可能に設けられた磁石挿通孔34を有し、ストッパ部材321〜323と連結されて界磁子コア10と固定される連結部材36とを備える。
【解決手段】界磁磁石部20は磁石格納部12において外周側へと同じ極性の磁極面を向けつつ配置方向D2で並んで格納される複数の磁石201〜203を備えている。磁石支持部材30は、少なくとも、磁石201〜203の各々のうち、隣り合う磁石によって磁気的な反発力が軸方向D1の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、軸方向D1について一方側で対向するストッパ部材321〜323と、磁石201〜203のうち配置方向D2の一方の端に位置する磁石201が反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で磁石201が軸方向D1で挿通可能に設けられた磁石挿通孔34を有し、ストッパ部材321〜323と連結されて界磁子コア10と固定される連結部材36とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は界磁子及び界磁子の製造方法に関し、特に界磁磁石を再利用可能な界磁子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には回転子が記載されている。かかる回転子はラジアルギャップ型の回転子である。回転子は回転子コアと永久磁石と端板とを備えている。永久磁石は回転子コアに格納されている。端板は軸方向の両側から回転子コアに固定されている。端板はリベットを用いて固定されている。端板を設けることで永久磁石が回転子コアから抜け出すことを防止している。
【0003】
なお本発明に関連する技術として特許文献2,3が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−181254号公報
【特許文献2】特開2007−174776号公報
【特許文献3】特開2007−174822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、永久磁石を回転子から取り出してこれを再利用する場合、端板と固定子コアとの間の固定を取り除いてから永久磁石を取り出す必要があった。特に端板と固定子コアとの固定が強固なリベットを用いている場合では、固定を取り除くことが困難である。
【0006】
なお永久磁石として希土類磁石を採用した場合には、その希少価値により永久磁石の再利用が望まれている。特に減磁を抑制するために用いられる重希土類はその稀少価値が非常に高く、今後更なる要求が高まる可能性がある。
【0007】
そこで、磁石以外の界磁子の構成要素を毀損することなく界磁磁石を取り出すことができる界磁子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる界磁子の第1の態様は、所定の軸(P)の周りで環状に配置される複数の磁石格納部(12)を有する界磁子コア(10)と、前記複数の磁石格納部にそれぞれ格納される複数の界磁磁石部(20)と、前記界磁子コアに対して前記軸に沿う軸方向(D1)の一方側に設けられる磁石支持部材(30)とを備え、一の前記複数の界磁磁石部は、一の前記複数の磁石格納部において、前記軸とは反対側へと同じ極性の磁極面を向けつつ前記軸に垂直な配置方向(D2)で並んで格納される複数の磁石(201〜204)を備え、前記磁石支持部材(30)は、少なくとも、前記複数の磁石の各々のうち、隣り合う前記磁石によって磁気的な反発力が前記軸方向(D1)の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向(D1)について一方側で対向する少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)と、前記複数の磁石のうち前記配置方向の一方の端に位置する第1磁石(201)が前記反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で前記第1磁石が前記軸方向で挿通可能に設けられた磁石挿通孔(34)を有し、前記少なくとも一つのストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される連結部材(36)とを備える。
【0009】
本発明にかかる界磁子の第2の態様は、第1の態様にかかる界磁子であって、前記第1磁石(201)には、前記複数の磁石のうち前記第1磁石に隣り合う磁石によって、前記反発力が前記軸方向(D1)及び前記第1磁石における前記配置方向(D2)のいずれにも垂直な垂直方向の一方側に作用する。
【0010】
本発明にかかる界磁子の第3の態様は、第2の態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)のうち、前記第1磁石(201)に対するストッパ部材(321)は、前記垂直方向の前記一方側のみに設けられる。
【0011】
本発明にかかる界磁子の第4の態様は、第1乃至第3の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は非磁性である。
【0012】
本発明にかかる界磁子の第5の態様は、第1,第4の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記配置方向(D2)及び前記軸方向(D1)のいずれにも垂直な垂直方向(D3)における一方側のみで対向する。
【0013】
本発明にかかる界磁子の第6の態様は、第5の態様にかかる界磁子であって、前記界磁子は前記軸(P)の周りで回転する回転子であって、前記垂直方向(D3)における前記一方側とは前記軸と反対側である。
【0014】
本発明にかかる界磁子の第7の態様は、第1乃至第4の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記垂直方向の長さよりも、自身に対応する前記磁石における前記配置方向(D2)の長さが短い薄肉形状を有している。
【0015】
本発明にかかる界磁子の第8の態様は、第7の態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記垂直方向(D3)の両側で前記連結部材(36)と連結される。
【0016】
本発明にかかる界磁子の第9の態様は、第1乃至第8の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321)は少なくとも2面で前記連結部材(36)と連結され、前記2面の法線方向はいずれも前記軸方向(D1)に垂直であってかつ相互に異なる。
【0017】
本発明にかかる界磁子の第10の態様は、第1乃至第9の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記第1磁石(201)は前記配置方向(D2)の一方側へと向かうに従って前記配置方向及び前記軸方向(D1)に対して垂直な方向(D3)の寸法が小さくなる傾斜形状を有し、前記一の前記複数の磁石格納部(12)は前記第1磁石が格納される位置で前記傾斜形状に沿った傾斜形状を有している。
【0018】
本発明にかかる界磁子の第11の態様は、第1乃至第10のいずれか一つの態様にかかる界磁子であって、一の前記複数の磁石格納部(12)は一つの孔である。
【0019】
本発明にかかる界磁子の第12の態様は、第1乃至第10の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、一の前記複数の磁石格納部(12)は、前記複数の磁石がそれぞれ分配されて格納され、互いに分離された複数の孔を有する。
【0020】
本発明にかかる界磁子の第13の態様は、第1乃至第12の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記複数の磁石は2つの磁石(201,202)である。
【0021】
本発明にかかる界磁子の第14の態様は、第1乃至第13の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、一の前記複数の磁石(202)には、前記軸方向(D1)の他方側へと前記反発力が作用し、前記一の前記複数の磁石に対しては前記ストッパ部材が設けられない。
【0022】
本発明にかかる界磁子の第15の態様は、第1乃至第14の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、一の前記複数の磁石格納部(12)に格納された前記複数の磁石(201〜203)のいずれについても、その前記軸方向(D1)に垂直な断面の輪郭が、前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記磁石挿通孔(34)の前記軸方向に垂直な断面の輪郭よりも小さい。
【0023】
本発明にかかる界磁子の第16の態様は、第1乃至第15の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記複数の磁石(201〜204)のうち、前記軸方向(D1)の一方側へと前記反発力が作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向の他方側から対向する少なくとも一つの他方側ストッパ部材(422,423)と、前記複数の磁石のうち前記配置方向(D2)の一方又は他方の端に位置する磁石が前記反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で、当該磁石が前記軸方向で挿通可能に設けられた他方側磁石挿通孔(44)を有し、前記少なくとも一つの他方側ストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される他方側連結部材(46)とを備える他方側磁石支持部材(40)を備える。
【0024】
本発明にかかる界磁子の第17の態様は、第16の態様にかかる界磁子であって、前記複数の磁石の少なくとも一つ(203)には前記軸方向(D1)の他方側へと前記反発力が作用し、前記複数の磁石の少なくとも一つに対しては前記ストッパ部材が設けられず、前記複数の磁石の他の少なくとも一つ(201,204)は、前記軸方向(D1)の一方側へと前記反発力が作用し、前記複数の磁石の他の少なくとも一つに対しては前記他方側ストッパ部材が設けられない。
【0025】
本発明にかかる界磁子の第18の態様は、第14又は第15の態様にかかる界磁子であって、一の前記複数の磁石格納部(12)に格納された前記複数の磁石(201〜203)のいずれについても、その前記軸方向(D1)に垂直な断面の輪郭が、前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記磁石挿通孔の前記軸方向に垂直な断面の輪郭若しくは前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記他方側磁石挿通孔の前記軸方向に垂直な断面の輪郭よりも小さい。
【0026】
本発明にかかる界磁子の製造方法の第1の態様は、所定の軸(P)の周りで環状に配置される複数の磁石格納部(12)を有する界磁子コア(10)と、前記複数の磁石格納部にそれぞれ格納される複数の界磁磁石部(20)と、前記界磁子コアに対して前記軸に沿う軸方向(D1)の一方側に設けられる磁石支持部材(30)とを備え、一の前記複数の界磁磁石部は、一の前記複数の磁石格納部において、前記軸とは反対側へと同じ極性の磁極面を向けつつ前記軸に垂直な配置方向(D2)で並んで格納される複数の磁石(201〜204)を備え、前記複数の磁石の各々は前記配置方向(D2)における両側で一対の端面(201a,201b)を有し、前記磁石支持部材(30)は、少なくとも、前記複数の磁石の各々のうち、隣り合う前記磁石によって磁気的な反発力が前記軸方向の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向について一方側で対向する少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)と、前記複数の磁石のうち前記配置方向(D2)の一方の端に位置する第1磁石(201)が前記反発力に抗う方向へと所定量、移動した状態で前記第1磁石が記軸方向で挿通可能に設けられた磁石挿通孔(34)を有し、前記少なくとも一つのストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される連結部材(36)とを備える、界磁子の製造方法であって、前記磁石支持部材と前記界磁子コアとを固定する第1工程(S1)と、着磁してそれぞれ前記複数の磁石となる複数の硬磁性体を、前記界磁子としての磁力よりも低い磁力を発揮するように仮着磁する第2工程(S2)と、前記第1及び第2工程の実行後に仮着磁された複数の硬磁性体を前記磁石挿通孔から磁石格納部へと配置する第3工程(S3)とを実行する。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる界磁子の第1の態様によれば、軸方向の他方側に反発力が作用されない磁石についてはストッパ部材が設けられるので、これらの磁石が軸方向の一方側から抜け出すことを防止できる。軸方向の他方側に反発力が作用する磁石については、当該反発力によって軸方向の一方側から抜け出すことを防止できる。
【0028】
磁石挿通孔は、第1磁石が所定量移動した状態で、軸方向で挿通可能に設けられている。第1磁石は隣り合う磁石によって配置方向の一方側へと反発力が作用するので、界磁子としては第1磁石が磁石挿通孔から抜け出すこともない。
【0029】
よって、複数の界磁磁石について軸方向の一方側から抜け出すことを防止できる。
【0030】
また例えば磁石を脱磁した上で、脱磁後の第1磁石を配置方向の他方側へと所定量、移動させ、磁石挿通孔を介して脱磁後の第1磁石を抜き出すことができる。よって、磁石が軸方向の一方側から抜け出すことを防止しつつも、磁石以外の界磁子の構成要素を壊すことなく脱磁後の第1磁石を抜き出すことができる。そして、この脱磁後の第1磁石を着磁することで再び磁石として利用することができる。
【0031】
本発明にかかる界磁子の第2の態様によれば、第1磁石について、垂直方向におけるガタを抑制できる。
【0032】
本発明にかかる界磁子の第3の態様によれば、反発力によって第1磁石が付勢される側のみにストッパ部材を設けているので、部材の使用量を低減できる。
【0033】
本発明にかかる界磁子の第4の態様によれば、磁石による軸とは反対側に呈する磁極面と、軸側に呈する磁極面とがストッパ部材によってそれぞれ構造的に連結されていたとしても、ストッパ部材によるこれらの磁極面同士の短絡を抑制できる。
【0034】
本発明にかかる界磁子の第5の態様によれば、ストッパ部材は軸とは反対側に呈する磁極面と軸側に呈する磁極面とをそれぞれ構造的に連結しないので、ストッパ部材によるこれらの一対の磁極面同士の短絡を抑制できる。
【0035】
本発明にかかる界磁子の第6の態様によれば、遠心力によって磁石が付勢される側のみにストッパ部材を設けることができる。よってストッパ部材の垂直方向における長さを低減でき、材料費を低減できる。
【0036】
本発明にかかる界磁子の第7の態様によれば、ストッパ部材には垂直方向(D3)に磁束が通りにくい。よって、たとえ軸とは反対側に呈する磁極面と軸側に呈する磁極面とがストッパ部材によって構造的に連結されていたとしても、ストッパ部材によるこれらの磁極面同士の短絡を抑制できる。
【0037】
本発明にかかる界磁子の第8の態様によれば、垂直方向の両側で連結部材と連結されるので、ストッパ部材の強度を向上できる。
【0038】
本発明にかかる界磁子の第9の態様によれば、ストッパ部材の強度を向上できる。
【0039】
本発明にかかる界磁子の第10の態様によれば、第1磁石が配置方向の一方側へと付勢されることによって、この第1磁石と界磁子コアとを密着させることができる。よって第1磁石のがたつきを抑制することができる。
【0040】
本発明にかかる界磁子の第11の態様によれば、一の磁石格納部が複数の孔を有する場合に比べて界磁子コアに穿つ孔の数を低減できる。よって加工が容易である。
【0041】
本発明にかかる界磁子の第12の態様によれば、一の磁石格納部が一つの孔である場合に比べて、一つあたりの孔の大きさを低減できるので界磁子コアの強度を向上できる。
【0042】
本発明にかかる界磁子の第13の態様によれば、2つの磁石は配置方向の反対方向へと互いに磁力を及ぼすので、この2つの磁石は配置方向でがたつかない。
【0043】
本発明にかかる界磁子の第14の態様によれば、不要なストッパ部材を設けないことで、磁石支持部材に使用される材料の量を低減できる。
【0044】
本発明にかかる界磁子の第15の態様によれば、磁石挿通孔を介して脱磁した複数の磁石の全てを順次に取り出すことができる。
【0045】
本発明にかかる界磁子の第16の態様によれば、軸方向の両側において脱磁後の磁石を磁石格納部から抜き出すことができるので、作業性を向上できる。
【0046】
本発明にかかる界磁子の第17の態様によれば、不要なストッパ部材及び他方側ストッパ部材を設けないことで、磁石支持部材及び他方側磁石支持部材の材料費を低減できる。
【0047】
本発明にかかる界磁子の第18の態様によれば、磁石挿通孔若しくは他方側磁石挿通孔を介して複数の磁石の全てを順次に取り出すことができる。
【0048】
本発明にかかる界磁子の第19の態様によれば、仮着磁した硬磁性体は界磁コアと引力を作用する。よって、界磁子コアに対して磁石支持部材が下側に配置されたとしても、重力によって硬磁性体が磁石格納部から磁石挿通孔を介して抜け落ちることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】界磁子の概念的な構成を例示する斜視図である。
【図2】界磁子コアを通る断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図3】界磁子コアを通る断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図4】界磁子コアを通る断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図5】軸方向に沿う断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図6】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図7】界磁磁石を取り出す様子を示す図である。
【図8】界磁磁石を取り出す様子を示す図である。
【図9】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図10】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図11】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図12】界磁子の概念的な構成を例示する斜視図である。
【図13】界磁子の概念的な構成を例示する斜視図である。
【図14】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図15】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図16】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図17】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図18】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図19】界磁子コアを通る断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図20】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図21】界磁子の概念的な構成を例示する斜視図である。
【図22】界磁子の概念的な構成を例示する斜視図である。
【図23】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図24】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図25】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図26】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図27】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図28】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図29】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図30】界磁子コアを通る断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図31】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図32】軸方向に沿う断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図33】界磁子の製造方法を示すフローチャートである。
【図34】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図35】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図36】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図37】界磁磁石の概念的な構成を例示する図である。
【図38】界磁磁石の概念的な構成を例示する図である。
【図39】界磁磁石の概念的な構成を例示する図である。
【図40】軸方向に沿う断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図41】軸方向に沿う断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
第1の実施の形態.
<界磁子の基本構成>
図1,2に示すように、界磁子は、界磁子コア10と複数の界磁磁石部20と磁石支持部材30,40とを備えている。なお図1では、複数の界磁磁石部20の1つのみが界磁子コア10から飛び出して示され、磁石支持部材30が回転軸Pに沿って界磁子コア10と分離して示されている。実際には、界磁磁石部20は界磁子コア10の内部に格納され、磁石支持部材30は界磁子コア10に固定される。また図2では、一の磁石格納部12に相当する部分のみが示されている。以下、回転軸Pに垂直な界磁子の断面図および回転軸Pに沿って見た界磁子の構成図においても同様に描画している。
【0051】
界磁子コア10は軟磁性体(例えば鉄)で形成され、例えば回転軸Pを中心とした略円柱状の形状を有している。界磁子コア10には複数の磁石格納部12が設けられている。複数の磁石格納部12は回転軸Pの周りで環状に配置されている。図1の例示では、各磁石格納部12は一つの孔によって構成され、4つの磁石格納部12が示されている。
【0052】
複数の磁石格納部12にはそれぞれ複数の界磁磁石部20が格納される。各界磁磁石部20は複数の界磁磁石、例えば3つの界磁磁石201〜203を備えている。複数の界磁磁石201〜203は例えば希土類磁石(例えばネオジム、鉄、ホウ素を主成分とした希土類磁石)である。磁石の減磁耐性を向上すべく、重希土類(例えばジスプロシウム)を含有していてもよい。図1,2の例示では、界磁磁石201〜203はそれぞれ直方体の板状形状を有している。界磁磁石201〜203は、その厚み方向が、磁石格納部12の周方向の中央における径方向に沿う姿勢で配置されている。
【0053】
界磁磁石201〜203は磁石格納部12の内部において回転軸Pに垂直な配置方向D2に沿って並んで格納される。図1,2の例示では、各磁石格納部12の上記中央での回転軸Pを中心とした円の接線方向(=配置方向D2)に、3つの界磁磁石201〜203が並んで配置されている。磁石格納部12について言及すると、各磁石格納部12はそれぞれ配置方向D2に平行な一対の表面12a,12bを有し、表面12a,12bの間で界磁磁石201〜203が並んで格納される。
【0054】
一つの磁石格納部12に格納される界磁磁石201〜203は、回転軸Pとは反対側(外周側)へと同じ極性の磁極面を呈している。これによって、一つの磁石格納部12は一つの界磁磁極として機能する。そして一つの磁石格納部12に格納される界磁磁石201〜203が外周側へと呈する磁極面の極性は、回転軸Pを中心とした周方向で隣り合う磁石格納部12に格納される界磁磁石201〜203が外周側へと呈する磁極面の極性と互いに異なっている。
【0055】
図1,2の例示では、磁石格納部12は界磁磁石部20の配置方向D2における両側から径方向に沿って外周へと延在する空隙121を有している。この空隙121は必須要件ではないものの、界磁磁石部20の配置方向D2における両側にて、外周側へと呈する磁極面と内周側へと呈する磁極面との間で磁束が短絡することを抑制できる。
【0056】
また図3に示すように、空隙121は磁石格納部12と離間して設けられていてもよい。この場合、空隙121と磁石格納部12との間に界磁子コア10が介在するので界磁子コア10の強度を向上できる。
【0057】
なお界磁子コア10は例えば回転軸Pに沿う軸方向D1において積層された電磁鋼板、または圧粉磁心によって構成されることが望ましい。これによって界磁子コア10に生じる渦電流を低減できるからである。
【0058】
界磁子コア10が電磁鋼板で構成される場合には、複数の電磁鋼板の相互間の固定は任意の方法で実現されるが、例えば次のいずれかの方法で固定されるとよい。例えば軸方向D1における電磁鋼板の一対の表面にそれぞれ凹凸を設け、複数の電磁鋼板の間でこれらの凹凸を嵌合させて固定するとよい。かかる固定はいわゆるカラマセと呼ばれる。この凹凸は例えば周方向における磁石格納部12同士の間に設けられるとよい。磁束の流れを阻害しにくいからである。かかる凹凸の位置が図1において符号50で示されている。
【0059】
また例えば界磁子コア10の外周側あるいは内周側から電磁鋼板の相互間をレーザ溶接してもよい。また例えば電磁鋼板同士を接着により固定してもよい。かかる接着は、電着塗装により電磁鋼板の相互間を接着してもよく、ワニスを塗布して接着してもよく、表面に接着層が設けられた接着鋼板を用いて接着してもよい。
【0060】
磁石支持部材30,40は軸方向D1において互いに反対側から界磁子コア10に固定される。磁石支持部材30,40は界磁磁石部20と軸方向D1で対向し、界磁磁石部20が軸方向D1に沿って界磁子コア10から抜け出すことを防止する。
【0061】
このような界磁子に対して外周側から間隙を介して電機子(図示しない)を配置することで回転電機を構成できる。界磁子は界磁磁石部20によって電機子へと界磁磁束を供給する。
【0062】
このような界磁子において、界磁磁石201が磁石支持部材30によって軸方向D1で支持されるのにも関わらず、磁石支持部材30を介して界磁磁石201を界磁子コア10から抜き出すことができる構成の例について以下に詳述する。
【0063】
<磁石格納部及び磁石支持部材>
各磁石格納部12は自身に格納される界磁磁石201〜203が配置方向D2で移動可能な形状を有している。かかる形状は格納される界磁磁石201〜203の形状及びその配置方向D2に応じて適宜に設計される。以下図1〜図3を例にとって具体的に説明する。
【0064】
各磁石格納部12の配置方向D2における長さは3つの界磁磁石201〜203の配置方向D2における長さの合計よりも長い。なお磁石格納部12の配置方向D2における長さは例えば2つの端部14によって規定される。2つの端部14は界磁磁石部20の配置方向D2における両側に位置している。端部14は界磁子コア10の一部を構成しつつ、磁石格納部12の輪郭の一部を形成している。
【0065】
図2の例示では、端部14は磁石格納部12のうち界磁磁石部20が格納される部分と空隙121との間で段差を形成している。具体的には、端部14は磁石格納部12の内周側の表面12bから、軸方向D1および配置方向D2に垂直な垂直方向D3に沿って外周側に突出して段差をなしている。
【0066】
図3の例示では、端部14は磁石格納部12と空隙121との間に介在している。具体的には、端部14は内周側の表面12bから垂直方向D3に沿って延在して外周側の表面12aに至るブリッジ形状を有している。磁石格納部12は端部14と表面12a,12bによって形成されて例えば長尺状の形状を呈している。
【0067】
また図4に示すように、端部14は界磁磁石部20が格納される部分と空隙121との境界における屈曲として把握される。
【0068】
端部14によって規定される磁石格納部12の配置方向D2における長さは、界磁磁石201〜203の配置方向D2における長さの合計よりも長いので、3つの界磁磁石201〜203は磁石格納部12の内部で配置方向D2に沿って移動可能である。なお端部14は界磁磁石201〜203に対する配置方向D2のストッパとして機能し、界磁磁石201〜203の配置方向D2における移動を所定範囲に制限している。
【0069】
界磁磁石201〜203は配置方向D2で移動可能であるものの、配置方向D2の両側に位置する界磁磁石201,203は磁石格納部12の配置方向D2における両端で、その配置方向D2における位置が固定される。これは以下の理由に因る。磁石格納部12の内部において、界磁磁石201〜203は外周側へと同じ極性の磁極面を向けて配置されている。よって、界磁磁石201〜203は互いに反発する磁力を及ぼし合う。よって配置方向D2の両側に位置する界磁磁石201,203は、それぞれ界磁磁石202とは反対側に付勢される。従って、界磁磁石201,203は、その配置方向D2における位置が端部14によって支持される位置(即ち配置方向D2における両端)で固定される。
【0070】
一方、2つの界磁磁石201,203の間に位置する界磁磁石202には、界磁磁石201,203によって配置方向D2の互いに反対の2方向に磁力が作用する。よって界磁磁石202は界磁磁石201,203の間で配置方向D2に沿って移動され得る。従って界磁磁石202の配置方向D2における位置は必ずしも固定されない。
【0071】
各界磁磁石部20は軸方向D1で互いに反対側から磁石支持部材30,40によって支持される。磁石支持部材30,40は例えばリベットやボルトを用いて界磁子コア10と固定される、いわゆる端板であってもよい。また磁石支持部材30,40が界磁子コア10と一体で形成されてもよく、界磁子コア10が積層された電磁鋼板で構成される場合は、その一部を形成する電磁鋼板であってもよい。この場合、端板を不要にすることができ、ひいてはコストを低下でき、また端板の取り付け工程を削除できる。この点は以下で後述する第2および第3の実施の形態であっても同様である。
【0072】
なお磁石支持部材30,40が電磁鋼板で構成される場合、磁石支持部材30は1枚または複数枚の電磁鋼板で構成されるとよい。複数枚の電磁鋼板の相互間の固定は上述した電磁鋼板で構成された界磁子コア10の固定を適用することができる。また磁石支持部材30と界磁子コア10との固定についても同様である。
【0073】
界磁子コア10を構成する電磁鋼板は、例えば所定の電磁鋼板に対して第1の金型(打ち抜き部材)を用いて磁石格納部20を形成し、続けて第2の金型を用いて界磁子10の内周を形成し、続けて第3の金型を用いて外周を形成することで製造される。このように形成された電磁鋼板の複数が順次に積層される。また磁石支持部材30を構成する電磁鋼板については、第1の金型を第4の金型に取り替えて磁石挿通孔34を形成し、続けて、第2及び第3の金型を用いてそれぞれ磁石支持部材30の内周及び外周を形成することで製造することができる。したがって金型の一部を途中で変更することで連続的に打抜、積層が可能である。
【0074】
磁石支持部材30は例えば円盤状かつ板状の形状を有している。磁石支持部材30は界磁子コア10に対して軸方向D1の一方側から重ね合わせ状に取り付けられる。磁石支持部材30については磁石支持部材40の説明後に詳述する。
【0075】
磁石支持部材40は例えば円盤状かつ板状の形状を有している。磁石支持部材40は界磁子コア10に対して軸方向D1の他方側から重ね合わせ状に取り付けられる。かかる磁石支持部材40は各磁石格納部12を軸方向D1で覆う。よって、界磁磁石201〜203が磁石格納部12の内部でどの位置に在っても、これらの界磁磁石201〜203を軸方向D1の他方側で支持できる。
【0076】
磁石支持部材30には、軸方向D1に垂直な断面における界磁磁石201の輪郭よりも大きい輪郭を有する磁石挿通孔34が穿たれている。磁石挿通孔34は磁石支持部材30を軸方向で貫通し、磁石格納部12と軸方向D1で連続する。図1の例示では、界磁磁石201の形状に合わせて長方形状の形状を有している。磁石支持部材30は、磁石挿通孔34が穿たれつつも、界磁磁石201が配置方向D2の一方の端に位置した状態で、界磁磁石201〜203をそれぞれ軸方向D1で支持することができる。以下、具体的に、磁石支持部材30をいくつかの部材に分けて説明する。
【0077】
図1,5〜7に示すように、磁石支持部材30はストッパ部材321〜323と連結部材36とを備えている。なお図6においては磁石挿通孔34を太線で示している。磁石格納部12との区別を明瞭にするためである。以下で説明する各図においても適宜に太線で示す。
【0078】
ストッパ部材321は磁石格納部12の内部で界磁磁石201が配置方向D2の一方側の端に位置する状態(即ち一方側の端部14に接した状態)で、界磁磁石201と軸方向D1の一方側で対向する。換言すると、界磁磁石201が配置方向D2の一方側の端部14から所定量、他方側へと移動した状態では、ストッパ部材321は界磁磁石201と軸方向D1で対向しない(図7参照)。
【0079】
具体的な形状の一例について説明する。ここで図5に示すように、磁石格納部12の配置方向D2における長さを長さL12と、界磁磁石201〜203の配置方向D2における長さを長さL201〜L203と、それぞれ定義する。また磁石格納部12の配置方向D2における一方側の端(界磁磁石201側の端)と、ストッパ部材321の配置方向D2における他方側の一端(界磁磁石203側の端)との間の、配置方向D2における長さを長さL321と定義する。
【0080】
界磁磁石201を移動させる所定量は、長さL12から、長さL201〜L203の総和を減算した値以下であり、また長さL321は所定量以下である。これにより、構造的には、外部からの付勢によって、3つの界磁磁石201〜203が磁石格納部12に格納された状態で界磁磁石201はストッパ部材321と対向しない位置まで移動できる(図7参照)。ただし、上述したように界磁磁石201は界磁磁石202によってこのような移動は防がれ、界磁磁石201はストッパ部材321と軸方向D1で対向する。なおこの磁石挿通孔34及びストッパ部材321,322の幾何学的な関係は、後述する他の磁石挿通孔34とストッパ部材321,322においても適用可能である。
【0081】
ストッパ部材322は界磁磁石202と軸方向D1で対向する。界磁磁石202は界磁磁石201,203の間で配置方向D2に移動し得るところ、ストッパ部材322は界磁磁石202が配置方向D2の移動可能な範囲のいずれに位置していても、界磁磁石202と軸方向D1で対向する。
【0082】
磁石挿通孔34はストッパ部材321,322の間に形成されている。換言するとストッパ部材321,322はそれぞれ磁石挿通孔34の配置方向D2における両側の輪郭を形成している。
【0083】
ストッパ部材323は、少なくとも界磁磁石203が配置方向D2の他方側の端、即ち他方側の端部14に接した状態で界磁磁石203と軸方向D1で対向する。
【0084】
連結部材36はストッパ部材321〜323を互いに連結し、界磁子コア10と固定される。これによって、ストッパ部材321〜323は軸方向D1の位置が固定され、それぞれ界磁磁石201〜203が界磁子コア10から軸方向D1の一方側へと抜け出すことを防止できる。
【0085】
なお、磁石挿通孔34は連結部材36に設けられていると把握してもよい。また磁石挿通孔34は、配置方向D2の一方の端に位置する界磁磁石201が反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で界磁磁石201が挿通可能に設けられている、とも把握できる。
【0086】
<界磁磁石の再利用(リサイクル)>
上述した界磁子において、例えば加熱により界磁磁石201〜203を脱磁して残留磁束が小さな硬磁性体へと変化させる。これにより、脱磁後の界磁磁石201〜203(以下、硬磁性体201〜203と呼ぶ)の相互間、及び硬磁性体201〜203と界磁子コア10との間にはほとんど磁力が作用しない。よって、硬磁性体201〜203は各磁石格納部12の内部で配置方向D2に沿って小さい外力で移動する。
【0087】
そして、図7に示すように磁石格納部12の内部において硬磁性体201〜203を配置方向D2の最も他方側に移動させる。換言すれば、硬磁性体201を配置方向D2に沿って他方側へと所定量、移動させる。これは例えば界磁子を傾けて硬磁性体201〜203に作用する重力を配置方向D2へも作用させることで実現すればよい。
【0088】
かかる状態で、図8に示すように、磁石挿通孔34を介して硬磁性体201を磁石格納部12から抜き出す。かかる抜き出しも例えば重力を利用して実現できる。そして抜き出した硬磁性体201を着磁することで再び界磁磁石201として利用することができる。
【0089】
以上のように、本界磁子によれば、界磁子コア10と磁石支持部材30,40との固定を毀損することなく、界磁磁石201を取り出して再利用することができる。
【0090】
また界磁磁石202,203の軸方向D1に垂直な断面の輪郭が磁石挿通孔34の断面の輪郭より小さいことが望ましい。図1〜8の例示では、界磁磁石202,203も磁石挿通孔34と対向する位置まで移動できるので、硬磁性体202,203も磁石挿通孔34を介して取り出すことができるからである。
【0091】
界磁子を組み立てる場合には、上記手順と逆の手順を実行してもよい。例えば界磁子コア10と磁石支持部材30,40とを固定する。そして、磁石挿通孔34を介して(脱磁された、あるいは着磁前の)硬磁性体203,202,201をこの順で磁石格納部12に格納する。そして、硬磁性体201〜203を公知の技術によって着磁する。これにより、界磁磁石201〜203には磁気的な反発力が作用し、両側の界磁磁石201,203はそれぞれ磁石格納部12の両端で固定される。
【0092】
なお、上記手順での組み立てに限らず、界磁磁石201〜203を磁石格納部12に格納した上で、磁石支持部材30を界磁子コア10に固定しても構わない。
【0093】
以下、本界磁子の変形例について適宜に図を参照して説明する。なお、冗長を避けるべく、重畳する説明は避ける。また、この磁石挿通孔34及びストッパ部材321,322の幾何学的な関係は、後述する他の磁石挿通孔34とストッパ部材321,322においても適用可能である。
【0094】
<界磁磁石部が有する界磁磁石の個数>
図9に示すように、各界磁磁石部20が有する界磁磁石の個数は2つであってもよい。例えば一の界磁磁石部20が2つの界磁磁石201,202を備えている場合、磁気的な反発力によって界磁磁石201,202の一方は他方へと反対側に付勢される。よって、界磁磁石201,202は磁石格納部12の内部において配置方向D2の両端で固定される。界磁子は配置方向D2で移動自由な界磁磁石(図1乃至8の界磁子における界磁磁石202)を有さないので、界磁磁石部20の配置方向D2におけるがたつきを抑制できる。
【0095】
なお以下に説明する界磁子においては、界磁磁石部20が有する界磁磁石の個数として2個或いは3個を例示して説明する。但し、界磁磁石20は複数の界磁磁石を有していればよく、2個であれば界磁磁石のがたつきを抑制できる。また2個であれば、磁石支持部材30にはストッパ部材321,322が設けられ、当然ストッパ部材323は設けられない。磁石挿通孔34は図1〜8と同様にストッパ部材321,322の間に設けられる。これらの点は、説明の重畳を避けるため、以下では言及しない。
【0096】
<ストッパ部材の材質>
ストッパ部材321〜323は非磁性体であってもよい。これにより、界磁磁石201〜203の外周側の磁極面と内周側の磁極面とを結ぶ経路であって、ストッパ部材321〜323を介した経路の磁気抵抗を高めることができる。よって、ストッパ部材321〜323を介した外周側の磁極面と内周側の磁極面との間で磁束が短絡することを抑制できる。同様に、連結部材36も非磁性体であれば、連結部材36を介した上記磁束の短絡も抑制できる。
【0097】
<ストッパ部材の形状>
図10の例示では、ストッパ部材321〜323は垂直方向D3において一方側のみ(ここでは外周側)でそれぞれ界磁磁石201〜203とそれぞれ対向している。換言すると、ストッパ部材321〜323はそれぞれ垂直方向D3の他方側(ここでは内周側)の連結部材36と空隙を介して対向している、とも把握できる。
【0098】
図10の例示では、ストッパ部材321は界磁磁石201の配置方向D2の一方側かつ垂直方向D3の一方側の角に位置して、四角形状の形状を有している。ストッパ部材322,323は配置方向D2で相互に連結され、界磁磁石202,203の垂直方向D3における一方側に位置して、長方形状の形状を有している。
【0099】
ストッパ部材321〜323が垂直方向D3の一方側のみに設けられているので、界磁磁石201〜203の外周側の磁極面と内周側の磁極面とを結ぶ経路であって、ストッパ部材321〜323を介した経路における磁気抵抗を高めることができる。なぜなら当該経路において非磁性たる空隙が介在するからである。よって、各界磁磁石201〜203の磁極面同士の短絡を抑制することができる。
【0100】
また図10の例示では、ストッパ部材321〜323は垂直方向D3において外周側のみでそれぞれ界磁磁石201〜203と対向している。本界磁子が回転軸Pの周りで回転する回転子として機能すれば、遠心力によって界磁磁石201〜203は外周側へと付勢される。よって、外周側のみにストッパ部材321〜323を設けることで、ストッパ部材321〜323の配置方向D2における長さを低減してもよく、これにより磁石支持部材30の材料費を低減できる。
【0101】
図11の例示では、ストッパ部材322はストッパ部材323とも配置方向D2で離間している。ストッパ部材322は配置方向D2における長さが垂直方向D3における長さよりも短い薄肉形状を有している。ストッパ部材322は垂直方向D3における両端で連結部材36と連結されている。ここで薄肉形状とは、垂直方向D3に流れる磁束に起因してストッパ部材322が容易に磁気飽和する程度に、配置方向D2における長さが短い形状をいう。これにより、ストッパ部材322を介した界磁磁石202の磁極面同士の短絡を抑制できる。また、ストッパ部材322は垂直方向D3の両端で連結部材36と連結しているので、ストッパ部材322の強度を向上できる。
【0102】
また図11の例示では、界磁子コア10が有する空隙121と軸方向D1で連続する空隙341が磁石支持部材30に穿たれている。空隙341は例えば空隙121と同じ形状を有している。空隙341が穿たれるべき位置に空隙341が穿たれず、当該位置に磁性体の連結部材36が存する場合であれば、かかる領域を介して界磁磁石201,203各々の外周側の磁極面と内周側の磁極面との間で磁束が短絡し得る。空隙341によってかかる磁束の短絡を抑制できる。
【0103】
また図11の例示では、ストッパ部材323は界磁磁石203の配置方向D2における他方側の端に設けられている。そして、ストッパ部材322,323の間にも孔が介在する。界磁磁石203が配置方向D2の一方側へと所定量、移動した状態で界磁磁石203が軸方向D1に沿って当該孔を挿通可能であってもよい。これにより、脱磁した界磁磁石203を当該孔から抜き出すことができる。
【0104】
図12,13の例示では、界磁磁石部20が2つの界磁磁石201,202を備えている。なお図12では、一の界磁磁石部20のみを、界磁子コア10から飛び出して示している。磁石支持部材30はストッパ部材321,322を備えている。
【0105】
ストッパ部材321は界磁磁石201の配置方向D2における一方側の端に設けられ、ストッパ部材322は界磁磁石202の配置方向D2における他方側の端に設けられている。そして、軸方向から見た磁石挿通孔34の輪郭は、配置方向D2に沿って互いに接して並べた界磁磁石201,202の一組の輪郭よりも広い。
【0106】
これにより、例えば磁石挿通孔34を介して硬磁性体201,202を同時に磁石格納部12に格納できる。よって、界磁子の組み立ての作業性を向上できる。
【0107】
図14の例示では、2つのストッパ部材321が界磁磁石201と軸方向D1で対向する。2つのストッパ部材321は例えば界磁磁石201の配置方向D2における一方の端に設けられている。2つのストッパ部材321は垂直方向D3で相互に離間している。外周側のストッパ部材321は外周側の連結部材36と連結され、内周側のストッパ部材322は内周側の連結部材36と連結される。
【0108】
この2つのストッパ部材321の間には空隙が介在するので、この2つのストッパ部材321を介した界磁磁石201の一対の磁極面同士の磁束の短絡を抑制できる。また、垂直方向D3の一方側でのみ1つのストッパ部材321が界磁磁石201と対向する場合に比べて、界磁磁石201を支持する力を向上できる。
【0109】
図14の例示では、2つのストッパ部材322が界磁磁石202と軸方向D1で対向する。2つのストッパ部材322の構成、相互の配置関係についてもストッパ部材321と同様であるので説明を省略する。
【0110】
図15の例示では、ストッパ部材321,322は図11のストッパ部材322と同様に、配置方向D2における長さが垂直方向D3における長さよりも短い薄肉形状を有している。また図11のストッパ部材322と同様に、垂直方向D3におけるストッパ部材321の両端でストッパ部材321と連結部材36とが相互に連結され、同じく垂直方向D3におけるストッパ部材322の両端でストッパ部材322と連結部材36とが相互に連結される。奏功する効果は図11のストッパ部材322と同様である。なお図15のストッパ部材321,322は図14の2つストッパ部材321及び2つのストッパ部材322をそれぞれ垂直方向D3で繋げたものとみることもできる。磁石支持部材30は非磁性体であることが望ましい。または、磁石支持部材30が磁性体である場合は、ストッパ部材321,322の幅は容易に磁気飽和する程度の小さいことが望ましい。ストッパ部材321,322を磁束が短絡しないようにするためである。
【0111】
図16の例示では、図15のストッパ部材321,322の形状と同様の薄肉形状を有した部分が示されているが、これは界磁磁石201,202と軸方向D1で対向していない部分である。上記部分は空隙341と磁石挿通孔34との間の連結部材36であって、これにより磁石支持部材30の強度向上を企図している。もちろん、かかる部分を界磁磁石201,202と軸方向D1で対向させてストッパ部材321,322として機能させてもよく、かかる一例が後述する図17に示される。
【0112】
図16の例示では、ストッパ部材321は界磁磁石201の配置方向D2の一方側かつ垂直方向D3の一方側の角で対向する略三角形状の形状を有している。かかるストッパ部材321,322は例えば磁石挿通孔34をC面取りすることで形成できる。ストッパ部材322はストッパ部材321と同様の形状を有し界磁磁石202と対向する。換言すれば、ストッパ部材321,322は配置方向D2及び垂直方向D3を法線とする2面(軸方向D1に沿って見た平面視上では二辺)で連結部材36に連結される。よって、ストッパ部材321,322が一面(上記平面視上では一辺)で連結部材36と連結される構造(後述する図18を参照)に比してストッパ部材321,322の強度を向上できる。なお、形状や二面で連結部材36に連結される点は図10,11などのストッパ部材321,322についても同様である。
【0113】
図17の例示では、空隙341と磁石挿通孔34との間に介在する部分の一部がストッパ部材321,322として機能する。当該部分は図15のストッパ部材321,322をそれぞれ磁石挿通孔34とは反対側に広げたものとみることができる。この広げた部分は界磁磁石201,202とは対向しないので、連結部材36として把握される。かかる構造であれば、界磁磁石201,202とそれぞれ対抗するストッパ部材321,322は、垂直方向D3における両端のみならず、配置方向D2の一端においても連結部材36に連結されるので強度を向上できる。
【0114】
図18の例示では、ストッパ部材321,322がそれぞれ垂直方向D3の一端のみで連結部材36に連結されている。また例えばストッパ部材321,322は四角形状を有し、そのうちの1面(上記平面視上では一辺)のみで連結部材36と連結されている。かかる場合であっても、界磁磁石201,202の外周側の磁極面と内周側の磁極面とがストッパ部材321,322を介して短絡することを抑制できる。
【0115】
なお、上述した各図では、界磁子コア10として図2〜4の界磁子コア10のいずれかが示されているが、各図で例示される磁石支持部材30と界磁子コア10との組み合わせはこれに限らず任意である。
【0116】
<界磁磁石の形状、配置と磁石支持部材>
図19の例示では、界磁子コア10及び界磁磁石201,202の形状が上述した態様と相違している。界磁磁石201,202の各々は配置方向D2の両端において内周側へと突出する突部形状を有している。換言すれば、界磁磁石201,202の各々は、軸方向D1に沿って見て、例えば回転軸P側に開口する凹形状を有している。界磁磁石201,202について、突出していない部分(外周側に凹んだ部分)の内周側の表面をそれぞれ表面2011,2012と呼ぶ。
【0117】
磁石格納部12は界磁磁石201,202の形状に合わせて内周側で開口する2つの凹部122,123を有している。凹部122,123はそれぞれ連結部材36の突出によって形成される。
【0118】
凹部122,123の配置方向D2における長さは、それぞれ表面2011,2012の配置方向D2における長さに比べて短い。かかる幾何学的な関係により、凹部122,123はそれぞれ界磁磁石201,202の配置方向D2における移動を制限するストッパとして機能することができる。例えば界磁磁石201の配置方向D2における移動は、配置方向D2の一端側で突出する突部が凹部122に接する状態から他端側で突出する突部が凹部122に接する状態までの範囲内に制限される。界磁磁石202についても同様に移動が制限される。従って、界磁磁石部20の両端に設けられる端部14は必ずしも必要ではない。但し図19においては端部14も示されている。
【0119】
図20の例示では、磁石支持部材30はストッパ部材321,322を除いて図19の界磁子コア10と略同一形状を有している。ストッパ部材321,322はそれぞれ図11のストッパ部材321,322と同じ形状であって同じ位置に設けられている。もちろん図14乃至図17のストッパ部材321,322と同じ形状であって同じ位置に設けられていてもよい。
【0120】
なお、図19を参照して、界磁磁石201,202の移動可能範囲は互いに重複していない。よって図6の磁石支持部材30を図19の界磁磁石201,202が格納された界磁子コア10に取り付けた場合、脱磁後の界磁磁石201のみを抜き出すことができる。界磁磁石201,202の両方を磁石挿通孔34から抜き出すためには、磁石挿通孔34は、界磁磁石202を界磁磁石201側に所定量、移動させた状態で界磁磁石202が挿通可能であるとよい。即ち、界磁磁石201,202を互いに最も近づく位置に移動させた状態で、軸方向D1に沿って見たこれらの一組の輪郭よりも、磁石挿通孔34の輪郭が広ければよい。またこの状態で軸方向D1に沿ってみた界磁磁石201,202の各々の輪郭よりも広い輪郭を有する別個の磁石挿通孔34が設けられてもよい。
【0121】
図21,22の例示では、界磁磁石201は、配置方向D2の一方側(界磁磁石202とは反対側)へと向かうに従って垂直方向D3の寸法が小さくなる傾斜形状を有している。同様に界磁磁石202も配置方向D2の他方側へと向かうに従って垂直方向D3の寸法が小さくなる傾斜形状を有している。磁石格納部12は界磁磁石201,202が格納される位置でそれぞれ上記傾斜形状に沿った傾斜形状を有している。
【0122】
界磁磁石201,202には磁気的な反発力が作用するので界磁磁石201,202はそれぞれ互いに反対側へと付勢される。よって、界磁磁石201,202はそれぞれ傾斜面にて磁石格納部12に押し付けられるので、界磁磁石201,202を界磁子コア10に密着させることができる。よって、界磁磁石201,202の磁極面と界磁子コア10との間の間隙を低減でき、ひいては界磁磁束の低下を抑制できる。またかかる密着によって回転軸Pに垂直な面における界磁磁石201,202の位置を固定できる。換言すれば、磁石格納部12の傾斜面が界磁磁石201,202の配置方向D2における移動を制限する。よって、例えば図22に示された段差形状の端部14は必ずしも必要ではない。
【0123】
また磁石格納部12の配置方向D2における中央から両端までの長さは、それぞれ界磁磁石201,202の配置方向D2における長さよりも長い。よって、界磁磁石201,202は配置方向D2で所定量、移動可能である。
【0124】
図21,22の例示では、磁石支持部材30はストッパ部材321,322を除いて界磁子コア10と略同一形状を有している。ストッパ部材321,322はそれぞれ図11のストッパ部材321,322と同じ形状であって同じ位置に設けられている。もちろん図14乃至図17のストッパ部材321,322と同じ形状であって同じ位置に設けられていてもよい。
【0125】
なお、磁石格納部12の垂直方向D3における寸法は、配置方向D2における中央から両側に向かうに従って小さくなるので、界磁磁石202は磁石格納部12の中央から一方側にはあまり移動できない。図21,22の例示では、軸方向D1に沿って見た磁石挿通孔34の輪郭は、界磁磁石201,202を互いに最も近づけた状態での界磁磁石201,202の一組の輪郭より大きい。これにより、脱磁後の界磁磁石201,202の両方を抜き出すことができる。なお、界磁磁石201,202の各々に対応する個別の磁石挿通孔34が設けられてもよい。
【0126】
図23の例示では、界磁磁石201,202の形状が図1乃至図18で説明した界磁磁石の形状と同一であるものの、これらの配置が異なっている。軸方向D1に沿って見て界磁磁石201,202は外周側に広がる略V字形状に配置される。即ち配置方向D2もV字状に折れ曲がっているものと把握される。換言すれば配置方向D2は2つの方向D21,D22を含んでいる。方向D21は界磁磁石201における配置方向であって、方向D22は界磁磁石202における配置方向である。
【0127】
磁石格納部12は界磁磁石201,202の配置に合わせてV字形状を有している。界磁磁石201が格納される部分の方向D21における長さは界磁磁石201の方向D21における長さよりも長い。同様に界磁磁石202が格納される部分の方向D22における長さは界磁磁石202の方向D22における長さよりも長い。よって、磁石格納部12は界磁磁石201,202がそれぞれ方向D21,D22に沿って移動可能な形状を有している。かかる界磁子においても、界磁磁石201,202は反発し合うので、界磁磁石201は方向D21の外周側の端で、界磁磁石202は方向D22の外周側の端でそれぞれ方向D21,D22における位置が固定される。
【0128】
図23の例示では、磁石支持部材30は、ストッパ部材321,322を除いて界磁子コア10と同じ形状を有している。ストッパ部材321,322は図16のストッパ部材321,322と同一形状を有しているが、図14乃至図15、図17及び図18のいずれかのストッパ部材321,322であってよい。またストッパ部材321,322は界磁磁石201,202の外周側の端でそれぞれ界磁磁石201,202と対向する。
【0129】
磁石挿通孔34は磁石格納部12と略同一形状を有しているがこれに限らず、要するに次の要件を満たせばよい。即ち、軸方向D1から見た磁石挿通孔34の輪郭が、軸方向D1から見た界磁磁石201の輪郭よりも広い。そして、磁石挿通孔34は界磁磁石201が方向D21に沿って磁石格納部12の中央へと所定量、移動した状態で、界磁磁石201が挿通可能な位置に設けられる。所定量はストッパ部材321の方向D21における長さよりも長い。これにより、磁石挿通孔34を介して脱磁した界磁磁石201を抜き出すことができる。
【0130】
また、磁石格納部12もV次形状を有していることから、界磁磁石202は磁石格納部12内を移動して界磁磁石201側へと移動することはできない。図23の例示では、軸方向D1に沿って見た磁石挿通孔34の輪郭は、界磁磁石201,202を互いに最も近い位置に移動させた状態でのこれらの一組の輪郭よりも大きい。よって、界磁磁石201と同様に脱磁後の界磁磁石202も抜き出すことができる。なお、界磁磁石201,202を互いに最も近い位置に移動させた状態で軸方向D1に沿って見た界磁磁石201,202の各々の輪郭よりも大きい輪郭を有する、互いに分離された一対の磁石挿通孔34が設けられてもよい。このような磁石挿通孔の輪郭と界磁磁石の輪郭との関係は、後述する他のV次形状であっても同様である。
【0131】
図24の例示では、界磁磁石201,202が内周側に広がるV字状に配置されている点で図23の界磁子とは相違する。またストッパ部材321,322が図11のストッパ部材321,322と同様の形状が示されているものの、上述した他のストッパ部材であってもよい。
【0132】
図25の例示では、界磁磁石201,202は湾曲している。具体的には、軸方向D1から見て帯状かつ弧状の形状を有しており、これが軸方向D1に延在した形状を有している。そして界磁磁石201,202は外周側で広がるように弧状に並んで配置される。磁石格納部12も界磁磁石201,202の形状及び配置に合わせて弧状に設けられている。
【0133】
図25の例示では、磁石支持部材30はストッパ部材321,322を除いて界磁子コア10と同一である。ストッパ部材321,322は図9或いは図17のストッパ部材321に相当する形状を有している。もちろん、上述した他のストッパ部材に相当するものであってもよい。
【0134】
なおここでは、界磁磁石201の円弧と界磁磁石202の円弧とが所定の一つの円上に沿うように配置されている。よって、界磁磁石201,202についての配置方向D2とは当該一つの円に沿う周方向である。かかる構造では、界磁磁石201が格納されていない状態で、界磁磁石202は磁石格納部12の配置方向D2における端から端へと移動できる。従って、ストッパ部材321,322として例えば図6,9,10に示したストッパ部材に相当するものを採用しても、脱磁後の界磁磁石201,202の両方を磁石挿通孔34から抜き出すことができる。
【0135】
図26の界磁子は、界磁磁石201,202が内周側に広がるように弧状に並んで配置されている点を除いて図25の界磁子と同じである。
【0136】
図27の例示では、電機子の外周側に配置されるタイプの界磁子が示されている。かかる界磁子が回転子として機能する場合、いわゆるアウターロータと呼ばれるものである。なお、これまでに述べた界磁子は電機子の内周側に配置されるタイプの界磁子であって、界磁子が回転子として機能する場合、いわゆるインナーロータと呼ばれるものである。
【0137】
図27の界磁子コア10は、空隙121の形状と界磁子コア10の内径及び外径のサイズを除いて図1の界磁子コア10と同一である。界磁子の内周側に電機子が配されるため、その空間を確保すべく、界磁子コア10の内径及び外径は比較的大きく形成される。空隙121は界磁磁石部20の配置方向D2における両端から周方向で界磁磁石部20とは反対側に延在し、続けて径方向に沿って内周側へと延在している。
【0138】
図27の例示では、磁石支持部材30はストッパ部材321,322を除いて界磁子コア10と同じ形状を有している。但し、ストッパ部材321,322は上述した他のストッパ部材のいずれに相当するものが採用されてもよい。界磁磁石201が格納されていない状態で界磁磁石202は磁石格納部12の配置方向D2における端から端へと移動できるので、ストッパ部材321,322として例えば図6,9,10に示したストッパ部材に相当するものを採用しても、脱磁後の界磁磁石201,202の両方を磁石挿通孔34から抜き出すことができる。
【0139】
図28の例示では、電機子が内周側に配置されるタイプの界磁子であって、界磁磁石201,202がV字状に配置された界磁子が示されている。かかる界磁子は図24の界磁子と、その内径及び外径のサイズを除いて同一であり、ストッパ部材についてのバリエーションも同様である。
【0140】
図29の例示では、電機子が内周側に配置されるタイプの界磁子であって、界磁磁石201,202が弧状に配置された界磁子が示されている。かかる界磁子はその内径及び外径のサイズと界磁磁石201,202の位置とを除いて図26の界磁子と同一である。図32の界磁子においては、界磁磁石201,202がより内周側に配置される。ストッパ部材についてのバリエーションも同様である。
【0141】
<磁石格納部12>
図30の界磁子コア10は図1の界磁子コア10に比して1つの磁石格納部12が2つの孔125,126を有している。孔125,126の間には界磁子コア10の一部が介在している。換言すると、界磁子コア10には一つの磁石格納部12として互いに離間した孔125,126が穿たれている。これにより、界磁子コア10の強度を向上できる。特に、高速回転するモータに適用される。
【0142】
孔125,126にはそれぞれ界磁磁石201,202が格納されている。孔125の配置方向D2における長さは界磁磁石201の配置方向D2における長さよりも長い。同様に、孔126の配置方向D2における長さは界磁磁石202の配置方向D2における長さよりも長い。よって界磁磁石201,202はそれぞれ孔125,126の内部で配置方向D2に沿って移動可能である。但し、孔125,126は互いに離間しているので、界磁磁石201,202はそれぞれ孔126,125へと移動することはできない。換言すれば、界磁磁石201,202の移動範囲は互いに重複しない。
【0143】
界磁磁石201,202が外周側へと呈する磁極面の極性は互いに同一であるので、たとえ界磁磁石201,202の間に界磁子コア10が介在していても、これらには反発力が作用する。よって、界磁磁石201,202は互いに反対側に付勢されて、その配置方向D2における位置がそれぞれ孔125,126の端で固定される。
【0144】
図31の例示では、磁石支持部材30は図14の磁石支持部材30と比して、磁石挿通孔34が2つの孔34a,34bを有している点で相違する。孔34a,34bの間には連結部材36の一部が介在している。換言すれば、磁石支持部材30には互いに離間した孔34a,34bが穿たれている。軸方向D1から見た孔34a,34bの輪郭は、それぞれ軸方向D1から見た界磁磁石201,202の輪郭よりも広い。孔34aは、界磁磁石201を配置方向D2に沿って界磁磁石202側へと所定量、移動した状態で、界磁磁石201が挿通可能な位置に設けられる。孔34bは界磁磁石202を配置方向D2に沿って界磁磁石201側へと所定量、移動した状態で、界磁磁石202が挿通可能な位置に設けられる。
【0145】
これにより、それぞれ孔34a,34bを介して脱磁した界磁磁石201,202を抜き出すことができる。以上のように、かかる界磁子であっても、界磁磁石201,202の両方を抜き出すことができる。
【0146】
なお孔34a,34bは互いに離間している必要はなく、例えば図14の磁石支持部材30をそのまま使用してもよい。但し、孔34a,34bの間に連結部材36が介在していれば磁石支持部材30の強度を向上できる。
【0147】
ストッパ部材321,322は図31の例示に限らず、他のストッパ部材であっても構わない。また界磁磁石201,202の個数、形状、配置は上述したいずれであってもよい。
【0148】
<磁石支持部材40>
図32の例示では、磁石支持部材40にも磁石挿通孔44が穿たれている。磁石支持部材40はストッパ部材421,422と連結部材46とを備えており、これらの相互の位置関係はストッパ部材322,321及び連結部材36と同様である。図32の例示では、例えば図11の磁石支持部材30が界磁子コア10に固定され、磁石支持部材40としても図11の磁石支持部材30と同様の構成が採用されている。
【0149】
磁石挿通孔44は界磁磁石201が配置方向D2に沿って所定量、移動した状態で、界磁磁石201が挿通可能であるので、磁石支持部材30,40のいずれからも脱磁後の界磁磁石201,202を抜き出すことができ、作業性を向上できる。なお、磁石支持部材30として上述した磁石支持部材30のいずれを採用してもよく、磁石支持部材40としても上述した磁石支持部材30のいずれを採用してもよく、その組み合わせも任意である。
【0150】
図32の例示では、軸方向D1に沿って界磁磁石201,202が磁石支持部材30、界磁子コア10、磁石支持部材40を通り抜けることができる。かかる界磁子において、磁石支持部材30,40を界磁子コア10に固定した後に硬磁性体201,202を磁石格納部12に格納しようとすると、硬磁性体201,202が磁石挿通孔34,44から抜け落ちてしまう可能性がある。
【0151】
そこで、図33に示すように界磁子を組み立ててもよい。まずステップS1にて、磁石支持部材30,40を界磁子コア10に固定する。次にステップS2にて、硬磁性体201,202を、界磁子としての磁力よりも低い磁力を発揮するように着磁する。かかる着磁を仮着磁と呼び、仮着磁後の硬磁性体201,202を磁石201,202と呼ぶ。次にステップS3にて、磁石201,202を磁石挿通孔34或いは磁石挿通孔44を介して磁石格納部12へと配置する。仮着磁された磁石201,202はその磁力が弱いものの、界磁子コア10との間で吸着力が生じる。よって、仮着磁された磁石201,202を磁石格納部12に格納するに際して、これらが磁石挿通孔34,44から抜け落ちるのを防止できる。次に、ステップS4にて、磁石201,202を再び着磁して界磁子としての磁力を発揮させて界磁磁石201,202を形成する。
【0152】
なお仮着磁された磁力は弱いので、界磁磁石201,202の間で生じる反発力は、界磁磁石201,202を磁石格納部12へと格納するに際してその格納を阻害しにくい。なお、仮着磁された磁石201,202は例えば外周側へと同じ磁極を向ける必要はなく、これらの磁極は任意である。ステップS4にて、外周側へと同じ磁極を向くように磁石201,202を着磁して界磁磁石201,202を形成すればよい。
【0153】
なお第1の実施の形態で述べた界磁子の変形例は後述する第2及び第3の実施の形態においても適用可能である。
【0154】
第2の実施の形態.
第2の実施の形態では、界磁磁石に作用する磁気的な反発力が垂直方向D3の一方側にも作用する。例えば図34には、かかる界磁磁石201,202が示されている。
【0155】
例えば界磁磁石201の界磁磁石202側の端面201bと、界磁磁石202の界磁磁石201側の端面202aとは、垂直方向D3に対して同じ側に傾斜している。図34の例示では、界磁磁石201,202は軸方向D1に沿って見て台形形状を有している。界磁磁石201はその下底を外周側に向けて、界磁磁石202はその上底を外周側に向けてそれぞれ配置されている。これにより、界磁磁石201は垂直方向D3の外周側にも反発力が作用し、界磁磁石202は垂直方向D3の内周側にも反発力が作用する。
【0156】
従って、界磁磁石201,202はそれぞれ垂直方向D3で磁石格納部12(界磁子コア10)に押し付けられるため、垂直方向D3における界磁磁石201,202のがたつきを抑制できる。なお、界磁磁石201,202と界磁子コア10との間の垂直方向D3における間隙は、通常、磁石厚み(垂直方向D3における厚み)とコアの打抜き寸法(垂直方向D3における磁石格納部20の寸法)の公差を吸収できる程度に設定されるため、実際はきわめて小さく、図面ではデフォルメして描かれている。
【0157】
また図34の例示では、ストッパ部材321,322は垂直方向D3において、それぞれ界磁磁石201,202が付勢される方向のみに設けられている。具体的には、ストッパ部材321は垂直方向D3において外周側のみ、ストッパ部材322は垂直方向D3における内周側のみにそれぞれ設けられている。このようにストッパ部材321,322は界磁磁石201,202が付勢されて界磁子コア10と接触する側に設けられる。よって、垂直方向D3における長さを短くしても、ストッパ部材321,322は界磁磁石201,202と軸方向D1で確実に対向する。従って、磁石支持部材30の材料費を低減できる。ただし、界磁子が回転子として機能する場合、遠心力は外周側へと働くので内周側に付勢される界磁磁石202に対向するストッパ部材322については、垂直方向D3における寸法を、ストッパ部材321と比べて大きく採ることが望ましい。
【0158】
また磁石挿通孔34は、界磁磁石201が垂直方向D3の内周側に所定量、移動した状態で、界磁磁石201が軸方向D1に挿通可能な位置に設けられてもよい。以下、図34を参照してその一例について述べる。
【0159】
まず、ストッパ部材321は垂直方向D3において界磁磁石201が付勢される側のみに設けられる。そして、磁石格納部12の垂直方向D3における長さは、界磁磁石201の垂直方向D3における長さとストッパ部材321の垂直方向D3における長さとの和よりも長い。
【0160】
軸方向D1に沿って見た磁石挿通孔34の輪郭は、軸方向D1に沿って見た界磁磁石201の輪郭よりも大きい。磁石挿通孔34は、界磁磁石201が垂直方向D3に沿って内周側へと所定量、移動した状態で軸方向D1に沿って見て界磁磁石201を内部に含む位置に設けられている。この所定量はストッパ部材321の垂直方向D3における長さよりも長い。図34の例示では、軸方向D1に沿って見た磁石挿通孔34の輪郭は、ストッパ部材321,322を除いて磁石格納部12と同一形状を有している。
【0161】
かかる界磁子によっても、界磁子コア10と磁石支持部材30との固定を毀損せずに界磁磁石201を次のように抜き出すことができる。まず界磁磁石201,202を脱磁して硬磁性体201,202とする。次に、図35に示すように、硬磁性体201を垂直方向D3における内周側へと所定量、移動させる。次に、磁石挿通孔34を介して硬磁性体201を抜き出す(図36)。そして、硬磁性体201を再び着磁することによって、硬磁性体201を界磁磁石201として再利用することができる。
【0162】
図34の例示では、磁石挿通孔34は界磁磁石202が垂直方向D3の外周側へと所定量(ストッパ部材321の垂直方向D3の長さよりも長い)、移動した状態で、界磁磁石202が挿通可能である。この場合、図36に示すように、脱磁した界磁磁石202を垂直方向D3の外周側へと所定量、移動させ、磁石挿通孔34を介して脱磁した界磁磁石202を抜き出すことができる。これにより、界磁磁石201,202の両方を抜き出すことができる。またかかる界磁子によれば、界磁磁石202は界磁磁石201を抜き出す領域へと移動させる必要がないので、例えば図19乃至図24、図28に示すように、界磁磁石201,202の移動可能範囲が重複しない、あるいは重複する領域が小さい場合であっても、脱磁後の界磁磁石201,202の両方を抜き出すことができる。
【0163】
なお、図34の例示では界磁磁石202が界磁磁石201側へと移動可能であるので、脱磁した界磁磁石201を抜き出す位置と同じ位置で脱磁した界磁磁石202を磁石挿通孔34から抜き出すことができる。よって、磁石挿通孔34の輪郭は界磁磁石201の輪郭よりもわずかに大きい程度で足りる。
【0164】
また、第2の実施の形態においては要するに界磁磁石201,202に作用する反発力を垂直方向D3にも生じさせていればよく、界磁磁石201,202の形状及び配置は図34に示す形状及び配置に限らない。
【0165】
例えば図37に示すように、界磁磁石201の端面201bが垂直方向D3に沿っており、界磁磁石202の端面202aが垂直方向D3に対して傾斜していてもよい。図37の例示では、垂直方向D3の内周側に向かうに従って界磁磁石201,202の間の距離が短くなるように端面201bのみが傾斜している。この場合であっても、界磁磁石201には垂直方向D3の外周側にも反発力が生じ、界磁磁石202には垂直方向D3の内周側にも反発力が生じる。
【0166】
また例えば図38及び図39に示すように、端面201b,202aが垂直方向D3を軸として互いに反対側で互いに異なる角度、傾斜していてもよい。図38の例示では、垂直方向D3に対する端面201bの傾斜角(但し90度未満)が端面202aの傾斜角に比べて小さい。換言すると、界磁磁石202は界磁磁石201に比べて尖っている。図39の例示では、垂直方向D3に対する端面201bの傾斜角が端面202aの傾斜角に比べて大きい。換言すると、界磁磁石201は界磁磁石202に比べて尖っている。これらの場合であっても、界磁磁石201には垂直方向D3の外周側にも反発力が生じ、界磁磁石202には垂直方向D3の内周側にも反発力が生じる。
【0167】
図34〜図39に示した界磁磁石201,202の形状と、その反発力が作用する方向について以下のように纏めることができる。すなわち、軸方向D1から見て、端面201b,202aで挟まれる角xの二等分線に略垂直で相互に反対の方向に界磁磁石201,202がそれぞれ付勢される。よって、かかる二等分線が垂直方向D3と傾斜していれば界磁磁石201,202に作用する反発力は垂直方向D3にも生じる。なお図34〜図39においてはかかる二等分線が二点鎖線で示されている。
【0168】
第3の実施の形態.
第3の実施の形態では、界磁磁石に作用する磁気的な反発力が軸方向D1の一方側にも作用する。
【0169】
例えば図40に示すように、端面201b,端面202aは軸方向D1に対して同じ方向に傾斜している。界磁磁石201,202は垂直方向D3に沿って見て台形形状を有している。界磁磁石201はその下底を磁石支持部材30側に向けて、界磁磁石202はその下底を磁石支持部材40側に向けてそれぞれ配置されている。これにより、界磁磁石201には磁石支持部材30側にも反発力が生じ、界磁磁石202には磁石支持部材40側にも反発力が作用する。
【0170】
よって、界磁磁石202は磁石支持部材30側でストッパ部材と対向していなくても、界磁磁石202が抜け出すことが抑制される。これに従い、磁石支持部材30にはストッパ部材322が設けられていない。換言すると、磁石支持部材30には界磁磁石202と対向する領域に孔が穿たれている。
【0171】
一方、磁石支持部材30側に付勢される界磁磁石201に対してはストッパ部材321が設けられている。
【0172】
このような磁石支持部材30としては例えば図11の磁石支持部材30のうちストッパ部材322を取り除いたものが採用される。
【0173】
以上のように、磁石支持部材30には、磁石支持部材30側に付勢される界磁磁石201についてのみストッパ部材321が設けられる。よって、磁石支持部材30の材料費を低減することができる。
【0174】
なお界磁磁石201,202の形状は図40に示す形状に限らない。図37〜図39を参照して説明したように、端面201b,202aで挟まれる角の二等分線が軸方向D1に対して傾斜していればよい。
【0175】
磁石支持部材40としては第1の実施の形態で説明した磁石支持部材40であってもよい。但し、図40の例示では、磁石支持部材40は磁石支持部材30と同様に磁石挿通孔44とストッパ部材422とを備えている。磁石挿通孔44と連結部材46とストッパ部材422の構成及び相互の配置関係は磁石挿通孔34と連結部材36とストッパ部材322の構成及び相互の配置関係と同様であるので詳細な説明を省略する。但し、界磁磁石201は軸方向D1において磁石支持部材30側へと付勢されるので、磁石支持部材40には界磁磁石201に対するストッパ部材は設けられていない。かかる磁石支持部材40は例えば図11の磁石支持部材30のうちストッパ部材321を取り除いたものが採用される。よって、磁石支持部材40の材料費を低減することができる。
【0176】
また、磁石挿通孔44は界磁磁石202を配置方向D2に沿って界磁磁石201側に所定量、移動させた状態で、界磁磁石202を挿通可能である。よって、界磁磁石202について磁石挿通孔44を介して抜き出すことができる。よって、磁石支持部材30,40のいずれからも脱磁後の界磁磁石201,202を抜き出すことができ、作業性を向上できる。
【0177】
図41には界磁磁石部20が4つの界磁磁石201〜204を備えた界磁子が例示されている。
【0178】
界磁磁石201〜204は配置方向D2に沿って一方側から他方側へとこの順で配置されている。
【0179】
界磁磁石202の端面202aと、界磁磁石202に隣り合う界磁磁石201の端面201bとが垂直方向D3から見た側面視上で形成する角の二等分線は軸方向D1に対して一方側(ここでは紙面右側)に傾斜している。界磁磁石202の端面202と、隣り合う界磁磁石203の端面203との二等分線は軸方向D1に対して他方側(ここでは紙面左側)に傾斜している。よって、界磁磁石202には界磁磁石201による反発力が軸方向D1の一方側(ここでは紙面上側)へも作用し、界磁磁石203による反発力も軸方向D1の一方側に作用する。したがって、界磁子コア10に対して軸方向D1の一方側に配置される磁石支持部材30には、界磁磁石202に対するストッパ部材322が設けられる。一方、磁石支持部材40には界磁磁石202に対するストッパ部材は設けられなくてもよい。
【0180】
端面202a,203bが垂直方向D3から見た側面視上で形成する角の二等分線が軸方向D1に対して他方側に傾斜しているので界磁磁石203には界磁磁石202による反発力が軸方向D1の一方側にも作用する。また界磁磁石203の端面203aと、界磁磁石203に隣り合う界磁磁石204の端面204bとが垂直方向D3から見た側面視上で形成する角の二等分線は軸方向D1に対して他方側に傾斜している。よって界磁磁石203には界磁磁石204による反発力が軸方向D1の他方側にも作用する。以上のように、界磁磁石203には隣り合う界磁磁石202,204によって軸方向D1の互いに反対方向に反発力が作用する。従って、磁石支持部材30,40には界磁磁石203に対するストッパ部材323,423がそれぞれ設けられる。
【0181】
界磁磁石201,204については説明の重複になるため省略する。
【0182】
なお、第1乃至第3の実施の形態に鑑みて、ストッパ部材は、少なくとも、複数の界磁磁石の各々のうち、隣り合う界磁磁石によって磁気的な反発力が軸方向D1の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、軸方向D1について一方側で対向する、と把握できる。また、磁石挿通孔は、複数の界磁磁石のうち配置方向の一方の端に位置する界磁磁石201が反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で界磁磁石201が軸方向D1で挿通可能に設けられている、と把握できる。
【符号の説明】
【0183】
10 界磁子
12 磁石格納部
20 界磁磁石部
201〜204 界磁磁石
30,40 磁石支持部材
36 連結部
321〜324,421〜424 ストッパ部材
【技術分野】
【0001】
本発明は界磁子及び界磁子の製造方法に関し、特に界磁磁石を再利用可能な界磁子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には回転子が記載されている。かかる回転子はラジアルギャップ型の回転子である。回転子は回転子コアと永久磁石と端板とを備えている。永久磁石は回転子コアに格納されている。端板は軸方向の両側から回転子コアに固定されている。端板はリベットを用いて固定されている。端板を設けることで永久磁石が回転子コアから抜け出すことを防止している。
【0003】
なお本発明に関連する技術として特許文献2,3が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−181254号公報
【特許文献2】特開2007−174776号公報
【特許文献3】特開2007−174822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、永久磁石を回転子から取り出してこれを再利用する場合、端板と固定子コアとの間の固定を取り除いてから永久磁石を取り出す必要があった。特に端板と固定子コアとの固定が強固なリベットを用いている場合では、固定を取り除くことが困難である。
【0006】
なお永久磁石として希土類磁石を採用した場合には、その希少価値により永久磁石の再利用が望まれている。特に減磁を抑制するために用いられる重希土類はその稀少価値が非常に高く、今後更なる要求が高まる可能性がある。
【0007】
そこで、磁石以外の界磁子の構成要素を毀損することなく界磁磁石を取り出すことができる界磁子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる界磁子の第1の態様は、所定の軸(P)の周りで環状に配置される複数の磁石格納部(12)を有する界磁子コア(10)と、前記複数の磁石格納部にそれぞれ格納される複数の界磁磁石部(20)と、前記界磁子コアに対して前記軸に沿う軸方向(D1)の一方側に設けられる磁石支持部材(30)とを備え、一の前記複数の界磁磁石部は、一の前記複数の磁石格納部において、前記軸とは反対側へと同じ極性の磁極面を向けつつ前記軸に垂直な配置方向(D2)で並んで格納される複数の磁石(201〜204)を備え、前記磁石支持部材(30)は、少なくとも、前記複数の磁石の各々のうち、隣り合う前記磁石によって磁気的な反発力が前記軸方向(D1)の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向(D1)について一方側で対向する少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)と、前記複数の磁石のうち前記配置方向の一方の端に位置する第1磁石(201)が前記反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で前記第1磁石が前記軸方向で挿通可能に設けられた磁石挿通孔(34)を有し、前記少なくとも一つのストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される連結部材(36)とを備える。
【0009】
本発明にかかる界磁子の第2の態様は、第1の態様にかかる界磁子であって、前記第1磁石(201)には、前記複数の磁石のうち前記第1磁石に隣り合う磁石によって、前記反発力が前記軸方向(D1)及び前記第1磁石における前記配置方向(D2)のいずれにも垂直な垂直方向の一方側に作用する。
【0010】
本発明にかかる界磁子の第3の態様は、第2の態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)のうち、前記第1磁石(201)に対するストッパ部材(321)は、前記垂直方向の前記一方側のみに設けられる。
【0011】
本発明にかかる界磁子の第4の態様は、第1乃至第3の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は非磁性である。
【0012】
本発明にかかる界磁子の第5の態様は、第1,第4の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記配置方向(D2)及び前記軸方向(D1)のいずれにも垂直な垂直方向(D3)における一方側のみで対向する。
【0013】
本発明にかかる界磁子の第6の態様は、第5の態様にかかる界磁子であって、前記界磁子は前記軸(P)の周りで回転する回転子であって、前記垂直方向(D3)における前記一方側とは前記軸と反対側である。
【0014】
本発明にかかる界磁子の第7の態様は、第1乃至第4の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記垂直方向の長さよりも、自身に対応する前記磁石における前記配置方向(D2)の長さが短い薄肉形状を有している。
【0015】
本発明にかかる界磁子の第8の態様は、第7の態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記垂直方向(D3)の両側で前記連結部材(36)と連結される。
【0016】
本発明にかかる界磁子の第9の態様は、第1乃至第8の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記少なくとも一つのストッパ部材(321)は少なくとも2面で前記連結部材(36)と連結され、前記2面の法線方向はいずれも前記軸方向(D1)に垂直であってかつ相互に異なる。
【0017】
本発明にかかる界磁子の第10の態様は、第1乃至第9の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記第1磁石(201)は前記配置方向(D2)の一方側へと向かうに従って前記配置方向及び前記軸方向(D1)に対して垂直な方向(D3)の寸法が小さくなる傾斜形状を有し、前記一の前記複数の磁石格納部(12)は前記第1磁石が格納される位置で前記傾斜形状に沿った傾斜形状を有している。
【0018】
本発明にかかる界磁子の第11の態様は、第1乃至第10のいずれか一つの態様にかかる界磁子であって、一の前記複数の磁石格納部(12)は一つの孔である。
【0019】
本発明にかかる界磁子の第12の態様は、第1乃至第10の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、一の前記複数の磁石格納部(12)は、前記複数の磁石がそれぞれ分配されて格納され、互いに分離された複数の孔を有する。
【0020】
本発明にかかる界磁子の第13の態様は、第1乃至第12の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記複数の磁石は2つの磁石(201,202)である。
【0021】
本発明にかかる界磁子の第14の態様は、第1乃至第13の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、一の前記複数の磁石(202)には、前記軸方向(D1)の他方側へと前記反発力が作用し、前記一の前記複数の磁石に対しては前記ストッパ部材が設けられない。
【0022】
本発明にかかる界磁子の第15の態様は、第1乃至第14の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、一の前記複数の磁石格納部(12)に格納された前記複数の磁石(201〜203)のいずれについても、その前記軸方向(D1)に垂直な断面の輪郭が、前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記磁石挿通孔(34)の前記軸方向に垂直な断面の輪郭よりも小さい。
【0023】
本発明にかかる界磁子の第16の態様は、第1乃至第15の何れか一つの態様にかかる界磁子であって、前記複数の磁石(201〜204)のうち、前記軸方向(D1)の一方側へと前記反発力が作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向の他方側から対向する少なくとも一つの他方側ストッパ部材(422,423)と、前記複数の磁石のうち前記配置方向(D2)の一方又は他方の端に位置する磁石が前記反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で、当該磁石が前記軸方向で挿通可能に設けられた他方側磁石挿通孔(44)を有し、前記少なくとも一つの他方側ストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される他方側連結部材(46)とを備える他方側磁石支持部材(40)を備える。
【0024】
本発明にかかる界磁子の第17の態様は、第16の態様にかかる界磁子であって、前記複数の磁石の少なくとも一つ(203)には前記軸方向(D1)の他方側へと前記反発力が作用し、前記複数の磁石の少なくとも一つに対しては前記ストッパ部材が設けられず、前記複数の磁石の他の少なくとも一つ(201,204)は、前記軸方向(D1)の一方側へと前記反発力が作用し、前記複数の磁石の他の少なくとも一つに対しては前記他方側ストッパ部材が設けられない。
【0025】
本発明にかかる界磁子の第18の態様は、第14又は第15の態様にかかる界磁子であって、一の前記複数の磁石格納部(12)に格納された前記複数の磁石(201〜203)のいずれについても、その前記軸方向(D1)に垂直な断面の輪郭が、前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記磁石挿通孔の前記軸方向に垂直な断面の輪郭若しくは前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記他方側磁石挿通孔の前記軸方向に垂直な断面の輪郭よりも小さい。
【0026】
本発明にかかる界磁子の製造方法の第1の態様は、所定の軸(P)の周りで環状に配置される複数の磁石格納部(12)を有する界磁子コア(10)と、前記複数の磁石格納部にそれぞれ格納される複数の界磁磁石部(20)と、前記界磁子コアに対して前記軸に沿う軸方向(D1)の一方側に設けられる磁石支持部材(30)とを備え、一の前記複数の界磁磁石部は、一の前記複数の磁石格納部において、前記軸とは反対側へと同じ極性の磁極面を向けつつ前記軸に垂直な配置方向(D2)で並んで格納される複数の磁石(201〜204)を備え、前記複数の磁石の各々は前記配置方向(D2)における両側で一対の端面(201a,201b)を有し、前記磁石支持部材(30)は、少なくとも、前記複数の磁石の各々のうち、隣り合う前記磁石によって磁気的な反発力が前記軸方向の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向について一方側で対向する少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)と、前記複数の磁石のうち前記配置方向(D2)の一方の端に位置する第1磁石(201)が前記反発力に抗う方向へと所定量、移動した状態で前記第1磁石が記軸方向で挿通可能に設けられた磁石挿通孔(34)を有し、前記少なくとも一つのストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される連結部材(36)とを備える、界磁子の製造方法であって、前記磁石支持部材と前記界磁子コアとを固定する第1工程(S1)と、着磁してそれぞれ前記複数の磁石となる複数の硬磁性体を、前記界磁子としての磁力よりも低い磁力を発揮するように仮着磁する第2工程(S2)と、前記第1及び第2工程の実行後に仮着磁された複数の硬磁性体を前記磁石挿通孔から磁石格納部へと配置する第3工程(S3)とを実行する。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる界磁子の第1の態様によれば、軸方向の他方側に反発力が作用されない磁石についてはストッパ部材が設けられるので、これらの磁石が軸方向の一方側から抜け出すことを防止できる。軸方向の他方側に反発力が作用する磁石については、当該反発力によって軸方向の一方側から抜け出すことを防止できる。
【0028】
磁石挿通孔は、第1磁石が所定量移動した状態で、軸方向で挿通可能に設けられている。第1磁石は隣り合う磁石によって配置方向の一方側へと反発力が作用するので、界磁子としては第1磁石が磁石挿通孔から抜け出すこともない。
【0029】
よって、複数の界磁磁石について軸方向の一方側から抜け出すことを防止できる。
【0030】
また例えば磁石を脱磁した上で、脱磁後の第1磁石を配置方向の他方側へと所定量、移動させ、磁石挿通孔を介して脱磁後の第1磁石を抜き出すことができる。よって、磁石が軸方向の一方側から抜け出すことを防止しつつも、磁石以外の界磁子の構成要素を壊すことなく脱磁後の第1磁石を抜き出すことができる。そして、この脱磁後の第1磁石を着磁することで再び磁石として利用することができる。
【0031】
本発明にかかる界磁子の第2の態様によれば、第1磁石について、垂直方向におけるガタを抑制できる。
【0032】
本発明にかかる界磁子の第3の態様によれば、反発力によって第1磁石が付勢される側のみにストッパ部材を設けているので、部材の使用量を低減できる。
【0033】
本発明にかかる界磁子の第4の態様によれば、磁石による軸とは反対側に呈する磁極面と、軸側に呈する磁極面とがストッパ部材によってそれぞれ構造的に連結されていたとしても、ストッパ部材によるこれらの磁極面同士の短絡を抑制できる。
【0034】
本発明にかかる界磁子の第5の態様によれば、ストッパ部材は軸とは反対側に呈する磁極面と軸側に呈する磁極面とをそれぞれ構造的に連結しないので、ストッパ部材によるこれらの一対の磁極面同士の短絡を抑制できる。
【0035】
本発明にかかる界磁子の第6の態様によれば、遠心力によって磁石が付勢される側のみにストッパ部材を設けることができる。よってストッパ部材の垂直方向における長さを低減でき、材料費を低減できる。
【0036】
本発明にかかる界磁子の第7の態様によれば、ストッパ部材には垂直方向(D3)に磁束が通りにくい。よって、たとえ軸とは反対側に呈する磁極面と軸側に呈する磁極面とがストッパ部材によって構造的に連結されていたとしても、ストッパ部材によるこれらの磁極面同士の短絡を抑制できる。
【0037】
本発明にかかる界磁子の第8の態様によれば、垂直方向の両側で連結部材と連結されるので、ストッパ部材の強度を向上できる。
【0038】
本発明にかかる界磁子の第9の態様によれば、ストッパ部材の強度を向上できる。
【0039】
本発明にかかる界磁子の第10の態様によれば、第1磁石が配置方向の一方側へと付勢されることによって、この第1磁石と界磁子コアとを密着させることができる。よって第1磁石のがたつきを抑制することができる。
【0040】
本発明にかかる界磁子の第11の態様によれば、一の磁石格納部が複数の孔を有する場合に比べて界磁子コアに穿つ孔の数を低減できる。よって加工が容易である。
【0041】
本発明にかかる界磁子の第12の態様によれば、一の磁石格納部が一つの孔である場合に比べて、一つあたりの孔の大きさを低減できるので界磁子コアの強度を向上できる。
【0042】
本発明にかかる界磁子の第13の態様によれば、2つの磁石は配置方向の反対方向へと互いに磁力を及ぼすので、この2つの磁石は配置方向でがたつかない。
【0043】
本発明にかかる界磁子の第14の態様によれば、不要なストッパ部材を設けないことで、磁石支持部材に使用される材料の量を低減できる。
【0044】
本発明にかかる界磁子の第15の態様によれば、磁石挿通孔を介して脱磁した複数の磁石の全てを順次に取り出すことができる。
【0045】
本発明にかかる界磁子の第16の態様によれば、軸方向の両側において脱磁後の磁石を磁石格納部から抜き出すことができるので、作業性を向上できる。
【0046】
本発明にかかる界磁子の第17の態様によれば、不要なストッパ部材及び他方側ストッパ部材を設けないことで、磁石支持部材及び他方側磁石支持部材の材料費を低減できる。
【0047】
本発明にかかる界磁子の第18の態様によれば、磁石挿通孔若しくは他方側磁石挿通孔を介して複数の磁石の全てを順次に取り出すことができる。
【0048】
本発明にかかる界磁子の第19の態様によれば、仮着磁した硬磁性体は界磁コアと引力を作用する。よって、界磁子コアに対して磁石支持部材が下側に配置されたとしても、重力によって硬磁性体が磁石格納部から磁石挿通孔を介して抜け落ちることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】界磁子の概念的な構成を例示する斜視図である。
【図2】界磁子コアを通る断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図3】界磁子コアを通る断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図4】界磁子コアを通る断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図5】軸方向に沿う断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図6】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図7】界磁磁石を取り出す様子を示す図である。
【図8】界磁磁石を取り出す様子を示す図である。
【図9】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図10】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図11】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図12】界磁子の概念的な構成を例示する斜視図である。
【図13】界磁子の概念的な構成を例示する斜視図である。
【図14】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図15】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図16】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図17】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図18】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図19】界磁子コアを通る断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図20】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図21】界磁子の概念的な構成を例示する斜視図である。
【図22】界磁子の概念的な構成を例示する斜視図である。
【図23】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図24】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図25】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図26】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図27】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図28】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図29】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図30】界磁子コアを通る断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図31】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図32】軸方向に沿う断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図33】界磁子の製造方法を示すフローチャートである。
【図34】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図35】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図36】界磁子の概念的な構成を例示する上面図である。
【図37】界磁磁石の概念的な構成を例示する図である。
【図38】界磁磁石の概念的な構成を例示する図である。
【図39】界磁磁石の概念的な構成を例示する図である。
【図40】軸方向に沿う断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【図41】軸方向に沿う断面における界磁子の概念的な構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
第1の実施の形態.
<界磁子の基本構成>
図1,2に示すように、界磁子は、界磁子コア10と複数の界磁磁石部20と磁石支持部材30,40とを備えている。なお図1では、複数の界磁磁石部20の1つのみが界磁子コア10から飛び出して示され、磁石支持部材30が回転軸Pに沿って界磁子コア10と分離して示されている。実際には、界磁磁石部20は界磁子コア10の内部に格納され、磁石支持部材30は界磁子コア10に固定される。また図2では、一の磁石格納部12に相当する部分のみが示されている。以下、回転軸Pに垂直な界磁子の断面図および回転軸Pに沿って見た界磁子の構成図においても同様に描画している。
【0051】
界磁子コア10は軟磁性体(例えば鉄)で形成され、例えば回転軸Pを中心とした略円柱状の形状を有している。界磁子コア10には複数の磁石格納部12が設けられている。複数の磁石格納部12は回転軸Pの周りで環状に配置されている。図1の例示では、各磁石格納部12は一つの孔によって構成され、4つの磁石格納部12が示されている。
【0052】
複数の磁石格納部12にはそれぞれ複数の界磁磁石部20が格納される。各界磁磁石部20は複数の界磁磁石、例えば3つの界磁磁石201〜203を備えている。複数の界磁磁石201〜203は例えば希土類磁石(例えばネオジム、鉄、ホウ素を主成分とした希土類磁石)である。磁石の減磁耐性を向上すべく、重希土類(例えばジスプロシウム)を含有していてもよい。図1,2の例示では、界磁磁石201〜203はそれぞれ直方体の板状形状を有している。界磁磁石201〜203は、その厚み方向が、磁石格納部12の周方向の中央における径方向に沿う姿勢で配置されている。
【0053】
界磁磁石201〜203は磁石格納部12の内部において回転軸Pに垂直な配置方向D2に沿って並んで格納される。図1,2の例示では、各磁石格納部12の上記中央での回転軸Pを中心とした円の接線方向(=配置方向D2)に、3つの界磁磁石201〜203が並んで配置されている。磁石格納部12について言及すると、各磁石格納部12はそれぞれ配置方向D2に平行な一対の表面12a,12bを有し、表面12a,12bの間で界磁磁石201〜203が並んで格納される。
【0054】
一つの磁石格納部12に格納される界磁磁石201〜203は、回転軸Pとは反対側(外周側)へと同じ極性の磁極面を呈している。これによって、一つの磁石格納部12は一つの界磁磁極として機能する。そして一つの磁石格納部12に格納される界磁磁石201〜203が外周側へと呈する磁極面の極性は、回転軸Pを中心とした周方向で隣り合う磁石格納部12に格納される界磁磁石201〜203が外周側へと呈する磁極面の極性と互いに異なっている。
【0055】
図1,2の例示では、磁石格納部12は界磁磁石部20の配置方向D2における両側から径方向に沿って外周へと延在する空隙121を有している。この空隙121は必須要件ではないものの、界磁磁石部20の配置方向D2における両側にて、外周側へと呈する磁極面と内周側へと呈する磁極面との間で磁束が短絡することを抑制できる。
【0056】
また図3に示すように、空隙121は磁石格納部12と離間して設けられていてもよい。この場合、空隙121と磁石格納部12との間に界磁子コア10が介在するので界磁子コア10の強度を向上できる。
【0057】
なお界磁子コア10は例えば回転軸Pに沿う軸方向D1において積層された電磁鋼板、または圧粉磁心によって構成されることが望ましい。これによって界磁子コア10に生じる渦電流を低減できるからである。
【0058】
界磁子コア10が電磁鋼板で構成される場合には、複数の電磁鋼板の相互間の固定は任意の方法で実現されるが、例えば次のいずれかの方法で固定されるとよい。例えば軸方向D1における電磁鋼板の一対の表面にそれぞれ凹凸を設け、複数の電磁鋼板の間でこれらの凹凸を嵌合させて固定するとよい。かかる固定はいわゆるカラマセと呼ばれる。この凹凸は例えば周方向における磁石格納部12同士の間に設けられるとよい。磁束の流れを阻害しにくいからである。かかる凹凸の位置が図1において符号50で示されている。
【0059】
また例えば界磁子コア10の外周側あるいは内周側から電磁鋼板の相互間をレーザ溶接してもよい。また例えば電磁鋼板同士を接着により固定してもよい。かかる接着は、電着塗装により電磁鋼板の相互間を接着してもよく、ワニスを塗布して接着してもよく、表面に接着層が設けられた接着鋼板を用いて接着してもよい。
【0060】
磁石支持部材30,40は軸方向D1において互いに反対側から界磁子コア10に固定される。磁石支持部材30,40は界磁磁石部20と軸方向D1で対向し、界磁磁石部20が軸方向D1に沿って界磁子コア10から抜け出すことを防止する。
【0061】
このような界磁子に対して外周側から間隙を介して電機子(図示しない)を配置することで回転電機を構成できる。界磁子は界磁磁石部20によって電機子へと界磁磁束を供給する。
【0062】
このような界磁子において、界磁磁石201が磁石支持部材30によって軸方向D1で支持されるのにも関わらず、磁石支持部材30を介して界磁磁石201を界磁子コア10から抜き出すことができる構成の例について以下に詳述する。
【0063】
<磁石格納部及び磁石支持部材>
各磁石格納部12は自身に格納される界磁磁石201〜203が配置方向D2で移動可能な形状を有している。かかる形状は格納される界磁磁石201〜203の形状及びその配置方向D2に応じて適宜に設計される。以下図1〜図3を例にとって具体的に説明する。
【0064】
各磁石格納部12の配置方向D2における長さは3つの界磁磁石201〜203の配置方向D2における長さの合計よりも長い。なお磁石格納部12の配置方向D2における長さは例えば2つの端部14によって規定される。2つの端部14は界磁磁石部20の配置方向D2における両側に位置している。端部14は界磁子コア10の一部を構成しつつ、磁石格納部12の輪郭の一部を形成している。
【0065】
図2の例示では、端部14は磁石格納部12のうち界磁磁石部20が格納される部分と空隙121との間で段差を形成している。具体的には、端部14は磁石格納部12の内周側の表面12bから、軸方向D1および配置方向D2に垂直な垂直方向D3に沿って外周側に突出して段差をなしている。
【0066】
図3の例示では、端部14は磁石格納部12と空隙121との間に介在している。具体的には、端部14は内周側の表面12bから垂直方向D3に沿って延在して外周側の表面12aに至るブリッジ形状を有している。磁石格納部12は端部14と表面12a,12bによって形成されて例えば長尺状の形状を呈している。
【0067】
また図4に示すように、端部14は界磁磁石部20が格納される部分と空隙121との境界における屈曲として把握される。
【0068】
端部14によって規定される磁石格納部12の配置方向D2における長さは、界磁磁石201〜203の配置方向D2における長さの合計よりも長いので、3つの界磁磁石201〜203は磁石格納部12の内部で配置方向D2に沿って移動可能である。なお端部14は界磁磁石201〜203に対する配置方向D2のストッパとして機能し、界磁磁石201〜203の配置方向D2における移動を所定範囲に制限している。
【0069】
界磁磁石201〜203は配置方向D2で移動可能であるものの、配置方向D2の両側に位置する界磁磁石201,203は磁石格納部12の配置方向D2における両端で、その配置方向D2における位置が固定される。これは以下の理由に因る。磁石格納部12の内部において、界磁磁石201〜203は外周側へと同じ極性の磁極面を向けて配置されている。よって、界磁磁石201〜203は互いに反発する磁力を及ぼし合う。よって配置方向D2の両側に位置する界磁磁石201,203は、それぞれ界磁磁石202とは反対側に付勢される。従って、界磁磁石201,203は、その配置方向D2における位置が端部14によって支持される位置(即ち配置方向D2における両端)で固定される。
【0070】
一方、2つの界磁磁石201,203の間に位置する界磁磁石202には、界磁磁石201,203によって配置方向D2の互いに反対の2方向に磁力が作用する。よって界磁磁石202は界磁磁石201,203の間で配置方向D2に沿って移動され得る。従って界磁磁石202の配置方向D2における位置は必ずしも固定されない。
【0071】
各界磁磁石部20は軸方向D1で互いに反対側から磁石支持部材30,40によって支持される。磁石支持部材30,40は例えばリベットやボルトを用いて界磁子コア10と固定される、いわゆる端板であってもよい。また磁石支持部材30,40が界磁子コア10と一体で形成されてもよく、界磁子コア10が積層された電磁鋼板で構成される場合は、その一部を形成する電磁鋼板であってもよい。この場合、端板を不要にすることができ、ひいてはコストを低下でき、また端板の取り付け工程を削除できる。この点は以下で後述する第2および第3の実施の形態であっても同様である。
【0072】
なお磁石支持部材30,40が電磁鋼板で構成される場合、磁石支持部材30は1枚または複数枚の電磁鋼板で構成されるとよい。複数枚の電磁鋼板の相互間の固定は上述した電磁鋼板で構成された界磁子コア10の固定を適用することができる。また磁石支持部材30と界磁子コア10との固定についても同様である。
【0073】
界磁子コア10を構成する電磁鋼板は、例えば所定の電磁鋼板に対して第1の金型(打ち抜き部材)を用いて磁石格納部20を形成し、続けて第2の金型を用いて界磁子10の内周を形成し、続けて第3の金型を用いて外周を形成することで製造される。このように形成された電磁鋼板の複数が順次に積層される。また磁石支持部材30を構成する電磁鋼板については、第1の金型を第4の金型に取り替えて磁石挿通孔34を形成し、続けて、第2及び第3の金型を用いてそれぞれ磁石支持部材30の内周及び外周を形成することで製造することができる。したがって金型の一部を途中で変更することで連続的に打抜、積層が可能である。
【0074】
磁石支持部材30は例えば円盤状かつ板状の形状を有している。磁石支持部材30は界磁子コア10に対して軸方向D1の一方側から重ね合わせ状に取り付けられる。磁石支持部材30については磁石支持部材40の説明後に詳述する。
【0075】
磁石支持部材40は例えば円盤状かつ板状の形状を有している。磁石支持部材40は界磁子コア10に対して軸方向D1の他方側から重ね合わせ状に取り付けられる。かかる磁石支持部材40は各磁石格納部12を軸方向D1で覆う。よって、界磁磁石201〜203が磁石格納部12の内部でどの位置に在っても、これらの界磁磁石201〜203を軸方向D1の他方側で支持できる。
【0076】
磁石支持部材30には、軸方向D1に垂直な断面における界磁磁石201の輪郭よりも大きい輪郭を有する磁石挿通孔34が穿たれている。磁石挿通孔34は磁石支持部材30を軸方向で貫通し、磁石格納部12と軸方向D1で連続する。図1の例示では、界磁磁石201の形状に合わせて長方形状の形状を有している。磁石支持部材30は、磁石挿通孔34が穿たれつつも、界磁磁石201が配置方向D2の一方の端に位置した状態で、界磁磁石201〜203をそれぞれ軸方向D1で支持することができる。以下、具体的に、磁石支持部材30をいくつかの部材に分けて説明する。
【0077】
図1,5〜7に示すように、磁石支持部材30はストッパ部材321〜323と連結部材36とを備えている。なお図6においては磁石挿通孔34を太線で示している。磁石格納部12との区別を明瞭にするためである。以下で説明する各図においても適宜に太線で示す。
【0078】
ストッパ部材321は磁石格納部12の内部で界磁磁石201が配置方向D2の一方側の端に位置する状態(即ち一方側の端部14に接した状態)で、界磁磁石201と軸方向D1の一方側で対向する。換言すると、界磁磁石201が配置方向D2の一方側の端部14から所定量、他方側へと移動した状態では、ストッパ部材321は界磁磁石201と軸方向D1で対向しない(図7参照)。
【0079】
具体的な形状の一例について説明する。ここで図5に示すように、磁石格納部12の配置方向D2における長さを長さL12と、界磁磁石201〜203の配置方向D2における長さを長さL201〜L203と、それぞれ定義する。また磁石格納部12の配置方向D2における一方側の端(界磁磁石201側の端)と、ストッパ部材321の配置方向D2における他方側の一端(界磁磁石203側の端)との間の、配置方向D2における長さを長さL321と定義する。
【0080】
界磁磁石201を移動させる所定量は、長さL12から、長さL201〜L203の総和を減算した値以下であり、また長さL321は所定量以下である。これにより、構造的には、外部からの付勢によって、3つの界磁磁石201〜203が磁石格納部12に格納された状態で界磁磁石201はストッパ部材321と対向しない位置まで移動できる(図7参照)。ただし、上述したように界磁磁石201は界磁磁石202によってこのような移動は防がれ、界磁磁石201はストッパ部材321と軸方向D1で対向する。なおこの磁石挿通孔34及びストッパ部材321,322の幾何学的な関係は、後述する他の磁石挿通孔34とストッパ部材321,322においても適用可能である。
【0081】
ストッパ部材322は界磁磁石202と軸方向D1で対向する。界磁磁石202は界磁磁石201,203の間で配置方向D2に移動し得るところ、ストッパ部材322は界磁磁石202が配置方向D2の移動可能な範囲のいずれに位置していても、界磁磁石202と軸方向D1で対向する。
【0082】
磁石挿通孔34はストッパ部材321,322の間に形成されている。換言するとストッパ部材321,322はそれぞれ磁石挿通孔34の配置方向D2における両側の輪郭を形成している。
【0083】
ストッパ部材323は、少なくとも界磁磁石203が配置方向D2の他方側の端、即ち他方側の端部14に接した状態で界磁磁石203と軸方向D1で対向する。
【0084】
連結部材36はストッパ部材321〜323を互いに連結し、界磁子コア10と固定される。これによって、ストッパ部材321〜323は軸方向D1の位置が固定され、それぞれ界磁磁石201〜203が界磁子コア10から軸方向D1の一方側へと抜け出すことを防止できる。
【0085】
なお、磁石挿通孔34は連結部材36に設けられていると把握してもよい。また磁石挿通孔34は、配置方向D2の一方の端に位置する界磁磁石201が反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で界磁磁石201が挿通可能に設けられている、とも把握できる。
【0086】
<界磁磁石の再利用(リサイクル)>
上述した界磁子において、例えば加熱により界磁磁石201〜203を脱磁して残留磁束が小さな硬磁性体へと変化させる。これにより、脱磁後の界磁磁石201〜203(以下、硬磁性体201〜203と呼ぶ)の相互間、及び硬磁性体201〜203と界磁子コア10との間にはほとんど磁力が作用しない。よって、硬磁性体201〜203は各磁石格納部12の内部で配置方向D2に沿って小さい外力で移動する。
【0087】
そして、図7に示すように磁石格納部12の内部において硬磁性体201〜203を配置方向D2の最も他方側に移動させる。換言すれば、硬磁性体201を配置方向D2に沿って他方側へと所定量、移動させる。これは例えば界磁子を傾けて硬磁性体201〜203に作用する重力を配置方向D2へも作用させることで実現すればよい。
【0088】
かかる状態で、図8に示すように、磁石挿通孔34を介して硬磁性体201を磁石格納部12から抜き出す。かかる抜き出しも例えば重力を利用して実現できる。そして抜き出した硬磁性体201を着磁することで再び界磁磁石201として利用することができる。
【0089】
以上のように、本界磁子によれば、界磁子コア10と磁石支持部材30,40との固定を毀損することなく、界磁磁石201を取り出して再利用することができる。
【0090】
また界磁磁石202,203の軸方向D1に垂直な断面の輪郭が磁石挿通孔34の断面の輪郭より小さいことが望ましい。図1〜8の例示では、界磁磁石202,203も磁石挿通孔34と対向する位置まで移動できるので、硬磁性体202,203も磁石挿通孔34を介して取り出すことができるからである。
【0091】
界磁子を組み立てる場合には、上記手順と逆の手順を実行してもよい。例えば界磁子コア10と磁石支持部材30,40とを固定する。そして、磁石挿通孔34を介して(脱磁された、あるいは着磁前の)硬磁性体203,202,201をこの順で磁石格納部12に格納する。そして、硬磁性体201〜203を公知の技術によって着磁する。これにより、界磁磁石201〜203には磁気的な反発力が作用し、両側の界磁磁石201,203はそれぞれ磁石格納部12の両端で固定される。
【0092】
なお、上記手順での組み立てに限らず、界磁磁石201〜203を磁石格納部12に格納した上で、磁石支持部材30を界磁子コア10に固定しても構わない。
【0093】
以下、本界磁子の変形例について適宜に図を参照して説明する。なお、冗長を避けるべく、重畳する説明は避ける。また、この磁石挿通孔34及びストッパ部材321,322の幾何学的な関係は、後述する他の磁石挿通孔34とストッパ部材321,322においても適用可能である。
【0094】
<界磁磁石部が有する界磁磁石の個数>
図9に示すように、各界磁磁石部20が有する界磁磁石の個数は2つであってもよい。例えば一の界磁磁石部20が2つの界磁磁石201,202を備えている場合、磁気的な反発力によって界磁磁石201,202の一方は他方へと反対側に付勢される。よって、界磁磁石201,202は磁石格納部12の内部において配置方向D2の両端で固定される。界磁子は配置方向D2で移動自由な界磁磁石(図1乃至8の界磁子における界磁磁石202)を有さないので、界磁磁石部20の配置方向D2におけるがたつきを抑制できる。
【0095】
なお以下に説明する界磁子においては、界磁磁石部20が有する界磁磁石の個数として2個或いは3個を例示して説明する。但し、界磁磁石20は複数の界磁磁石を有していればよく、2個であれば界磁磁石のがたつきを抑制できる。また2個であれば、磁石支持部材30にはストッパ部材321,322が設けられ、当然ストッパ部材323は設けられない。磁石挿通孔34は図1〜8と同様にストッパ部材321,322の間に設けられる。これらの点は、説明の重畳を避けるため、以下では言及しない。
【0096】
<ストッパ部材の材質>
ストッパ部材321〜323は非磁性体であってもよい。これにより、界磁磁石201〜203の外周側の磁極面と内周側の磁極面とを結ぶ経路であって、ストッパ部材321〜323を介した経路の磁気抵抗を高めることができる。よって、ストッパ部材321〜323を介した外周側の磁極面と内周側の磁極面との間で磁束が短絡することを抑制できる。同様に、連結部材36も非磁性体であれば、連結部材36を介した上記磁束の短絡も抑制できる。
【0097】
<ストッパ部材の形状>
図10の例示では、ストッパ部材321〜323は垂直方向D3において一方側のみ(ここでは外周側)でそれぞれ界磁磁石201〜203とそれぞれ対向している。換言すると、ストッパ部材321〜323はそれぞれ垂直方向D3の他方側(ここでは内周側)の連結部材36と空隙を介して対向している、とも把握できる。
【0098】
図10の例示では、ストッパ部材321は界磁磁石201の配置方向D2の一方側かつ垂直方向D3の一方側の角に位置して、四角形状の形状を有している。ストッパ部材322,323は配置方向D2で相互に連結され、界磁磁石202,203の垂直方向D3における一方側に位置して、長方形状の形状を有している。
【0099】
ストッパ部材321〜323が垂直方向D3の一方側のみに設けられているので、界磁磁石201〜203の外周側の磁極面と内周側の磁極面とを結ぶ経路であって、ストッパ部材321〜323を介した経路における磁気抵抗を高めることができる。なぜなら当該経路において非磁性たる空隙が介在するからである。よって、各界磁磁石201〜203の磁極面同士の短絡を抑制することができる。
【0100】
また図10の例示では、ストッパ部材321〜323は垂直方向D3において外周側のみでそれぞれ界磁磁石201〜203と対向している。本界磁子が回転軸Pの周りで回転する回転子として機能すれば、遠心力によって界磁磁石201〜203は外周側へと付勢される。よって、外周側のみにストッパ部材321〜323を設けることで、ストッパ部材321〜323の配置方向D2における長さを低減してもよく、これにより磁石支持部材30の材料費を低減できる。
【0101】
図11の例示では、ストッパ部材322はストッパ部材323とも配置方向D2で離間している。ストッパ部材322は配置方向D2における長さが垂直方向D3における長さよりも短い薄肉形状を有している。ストッパ部材322は垂直方向D3における両端で連結部材36と連結されている。ここで薄肉形状とは、垂直方向D3に流れる磁束に起因してストッパ部材322が容易に磁気飽和する程度に、配置方向D2における長さが短い形状をいう。これにより、ストッパ部材322を介した界磁磁石202の磁極面同士の短絡を抑制できる。また、ストッパ部材322は垂直方向D3の両端で連結部材36と連結しているので、ストッパ部材322の強度を向上できる。
【0102】
また図11の例示では、界磁子コア10が有する空隙121と軸方向D1で連続する空隙341が磁石支持部材30に穿たれている。空隙341は例えば空隙121と同じ形状を有している。空隙341が穿たれるべき位置に空隙341が穿たれず、当該位置に磁性体の連結部材36が存する場合であれば、かかる領域を介して界磁磁石201,203各々の外周側の磁極面と内周側の磁極面との間で磁束が短絡し得る。空隙341によってかかる磁束の短絡を抑制できる。
【0103】
また図11の例示では、ストッパ部材323は界磁磁石203の配置方向D2における他方側の端に設けられている。そして、ストッパ部材322,323の間にも孔が介在する。界磁磁石203が配置方向D2の一方側へと所定量、移動した状態で界磁磁石203が軸方向D1に沿って当該孔を挿通可能であってもよい。これにより、脱磁した界磁磁石203を当該孔から抜き出すことができる。
【0104】
図12,13の例示では、界磁磁石部20が2つの界磁磁石201,202を備えている。なお図12では、一の界磁磁石部20のみを、界磁子コア10から飛び出して示している。磁石支持部材30はストッパ部材321,322を備えている。
【0105】
ストッパ部材321は界磁磁石201の配置方向D2における一方側の端に設けられ、ストッパ部材322は界磁磁石202の配置方向D2における他方側の端に設けられている。そして、軸方向から見た磁石挿通孔34の輪郭は、配置方向D2に沿って互いに接して並べた界磁磁石201,202の一組の輪郭よりも広い。
【0106】
これにより、例えば磁石挿通孔34を介して硬磁性体201,202を同時に磁石格納部12に格納できる。よって、界磁子の組み立ての作業性を向上できる。
【0107】
図14の例示では、2つのストッパ部材321が界磁磁石201と軸方向D1で対向する。2つのストッパ部材321は例えば界磁磁石201の配置方向D2における一方の端に設けられている。2つのストッパ部材321は垂直方向D3で相互に離間している。外周側のストッパ部材321は外周側の連結部材36と連結され、内周側のストッパ部材322は内周側の連結部材36と連結される。
【0108】
この2つのストッパ部材321の間には空隙が介在するので、この2つのストッパ部材321を介した界磁磁石201の一対の磁極面同士の磁束の短絡を抑制できる。また、垂直方向D3の一方側でのみ1つのストッパ部材321が界磁磁石201と対向する場合に比べて、界磁磁石201を支持する力を向上できる。
【0109】
図14の例示では、2つのストッパ部材322が界磁磁石202と軸方向D1で対向する。2つのストッパ部材322の構成、相互の配置関係についてもストッパ部材321と同様であるので説明を省略する。
【0110】
図15の例示では、ストッパ部材321,322は図11のストッパ部材322と同様に、配置方向D2における長さが垂直方向D3における長さよりも短い薄肉形状を有している。また図11のストッパ部材322と同様に、垂直方向D3におけるストッパ部材321の両端でストッパ部材321と連結部材36とが相互に連結され、同じく垂直方向D3におけるストッパ部材322の両端でストッパ部材322と連結部材36とが相互に連結される。奏功する効果は図11のストッパ部材322と同様である。なお図15のストッパ部材321,322は図14の2つストッパ部材321及び2つのストッパ部材322をそれぞれ垂直方向D3で繋げたものとみることもできる。磁石支持部材30は非磁性体であることが望ましい。または、磁石支持部材30が磁性体である場合は、ストッパ部材321,322の幅は容易に磁気飽和する程度の小さいことが望ましい。ストッパ部材321,322を磁束が短絡しないようにするためである。
【0111】
図16の例示では、図15のストッパ部材321,322の形状と同様の薄肉形状を有した部分が示されているが、これは界磁磁石201,202と軸方向D1で対向していない部分である。上記部分は空隙341と磁石挿通孔34との間の連結部材36であって、これにより磁石支持部材30の強度向上を企図している。もちろん、かかる部分を界磁磁石201,202と軸方向D1で対向させてストッパ部材321,322として機能させてもよく、かかる一例が後述する図17に示される。
【0112】
図16の例示では、ストッパ部材321は界磁磁石201の配置方向D2の一方側かつ垂直方向D3の一方側の角で対向する略三角形状の形状を有している。かかるストッパ部材321,322は例えば磁石挿通孔34をC面取りすることで形成できる。ストッパ部材322はストッパ部材321と同様の形状を有し界磁磁石202と対向する。換言すれば、ストッパ部材321,322は配置方向D2及び垂直方向D3を法線とする2面(軸方向D1に沿って見た平面視上では二辺)で連結部材36に連結される。よって、ストッパ部材321,322が一面(上記平面視上では一辺)で連結部材36と連結される構造(後述する図18を参照)に比してストッパ部材321,322の強度を向上できる。なお、形状や二面で連結部材36に連結される点は図10,11などのストッパ部材321,322についても同様である。
【0113】
図17の例示では、空隙341と磁石挿通孔34との間に介在する部分の一部がストッパ部材321,322として機能する。当該部分は図15のストッパ部材321,322をそれぞれ磁石挿通孔34とは反対側に広げたものとみることができる。この広げた部分は界磁磁石201,202とは対向しないので、連結部材36として把握される。かかる構造であれば、界磁磁石201,202とそれぞれ対抗するストッパ部材321,322は、垂直方向D3における両端のみならず、配置方向D2の一端においても連結部材36に連結されるので強度を向上できる。
【0114】
図18の例示では、ストッパ部材321,322がそれぞれ垂直方向D3の一端のみで連結部材36に連結されている。また例えばストッパ部材321,322は四角形状を有し、そのうちの1面(上記平面視上では一辺)のみで連結部材36と連結されている。かかる場合であっても、界磁磁石201,202の外周側の磁極面と内周側の磁極面とがストッパ部材321,322を介して短絡することを抑制できる。
【0115】
なお、上述した各図では、界磁子コア10として図2〜4の界磁子コア10のいずれかが示されているが、各図で例示される磁石支持部材30と界磁子コア10との組み合わせはこれに限らず任意である。
【0116】
<界磁磁石の形状、配置と磁石支持部材>
図19の例示では、界磁子コア10及び界磁磁石201,202の形状が上述した態様と相違している。界磁磁石201,202の各々は配置方向D2の両端において内周側へと突出する突部形状を有している。換言すれば、界磁磁石201,202の各々は、軸方向D1に沿って見て、例えば回転軸P側に開口する凹形状を有している。界磁磁石201,202について、突出していない部分(外周側に凹んだ部分)の内周側の表面をそれぞれ表面2011,2012と呼ぶ。
【0117】
磁石格納部12は界磁磁石201,202の形状に合わせて内周側で開口する2つの凹部122,123を有している。凹部122,123はそれぞれ連結部材36の突出によって形成される。
【0118】
凹部122,123の配置方向D2における長さは、それぞれ表面2011,2012の配置方向D2における長さに比べて短い。かかる幾何学的な関係により、凹部122,123はそれぞれ界磁磁石201,202の配置方向D2における移動を制限するストッパとして機能することができる。例えば界磁磁石201の配置方向D2における移動は、配置方向D2の一端側で突出する突部が凹部122に接する状態から他端側で突出する突部が凹部122に接する状態までの範囲内に制限される。界磁磁石202についても同様に移動が制限される。従って、界磁磁石部20の両端に設けられる端部14は必ずしも必要ではない。但し図19においては端部14も示されている。
【0119】
図20の例示では、磁石支持部材30はストッパ部材321,322を除いて図19の界磁子コア10と略同一形状を有している。ストッパ部材321,322はそれぞれ図11のストッパ部材321,322と同じ形状であって同じ位置に設けられている。もちろん図14乃至図17のストッパ部材321,322と同じ形状であって同じ位置に設けられていてもよい。
【0120】
なお、図19を参照して、界磁磁石201,202の移動可能範囲は互いに重複していない。よって図6の磁石支持部材30を図19の界磁磁石201,202が格納された界磁子コア10に取り付けた場合、脱磁後の界磁磁石201のみを抜き出すことができる。界磁磁石201,202の両方を磁石挿通孔34から抜き出すためには、磁石挿通孔34は、界磁磁石202を界磁磁石201側に所定量、移動させた状態で界磁磁石202が挿通可能であるとよい。即ち、界磁磁石201,202を互いに最も近づく位置に移動させた状態で、軸方向D1に沿って見たこれらの一組の輪郭よりも、磁石挿通孔34の輪郭が広ければよい。またこの状態で軸方向D1に沿ってみた界磁磁石201,202の各々の輪郭よりも広い輪郭を有する別個の磁石挿通孔34が設けられてもよい。
【0121】
図21,22の例示では、界磁磁石201は、配置方向D2の一方側(界磁磁石202とは反対側)へと向かうに従って垂直方向D3の寸法が小さくなる傾斜形状を有している。同様に界磁磁石202も配置方向D2の他方側へと向かうに従って垂直方向D3の寸法が小さくなる傾斜形状を有している。磁石格納部12は界磁磁石201,202が格納される位置でそれぞれ上記傾斜形状に沿った傾斜形状を有している。
【0122】
界磁磁石201,202には磁気的な反発力が作用するので界磁磁石201,202はそれぞれ互いに反対側へと付勢される。よって、界磁磁石201,202はそれぞれ傾斜面にて磁石格納部12に押し付けられるので、界磁磁石201,202を界磁子コア10に密着させることができる。よって、界磁磁石201,202の磁極面と界磁子コア10との間の間隙を低減でき、ひいては界磁磁束の低下を抑制できる。またかかる密着によって回転軸Pに垂直な面における界磁磁石201,202の位置を固定できる。換言すれば、磁石格納部12の傾斜面が界磁磁石201,202の配置方向D2における移動を制限する。よって、例えば図22に示された段差形状の端部14は必ずしも必要ではない。
【0123】
また磁石格納部12の配置方向D2における中央から両端までの長さは、それぞれ界磁磁石201,202の配置方向D2における長さよりも長い。よって、界磁磁石201,202は配置方向D2で所定量、移動可能である。
【0124】
図21,22の例示では、磁石支持部材30はストッパ部材321,322を除いて界磁子コア10と略同一形状を有している。ストッパ部材321,322はそれぞれ図11のストッパ部材321,322と同じ形状であって同じ位置に設けられている。もちろん図14乃至図17のストッパ部材321,322と同じ形状であって同じ位置に設けられていてもよい。
【0125】
なお、磁石格納部12の垂直方向D3における寸法は、配置方向D2における中央から両側に向かうに従って小さくなるので、界磁磁石202は磁石格納部12の中央から一方側にはあまり移動できない。図21,22の例示では、軸方向D1に沿って見た磁石挿通孔34の輪郭は、界磁磁石201,202を互いに最も近づけた状態での界磁磁石201,202の一組の輪郭より大きい。これにより、脱磁後の界磁磁石201,202の両方を抜き出すことができる。なお、界磁磁石201,202の各々に対応する個別の磁石挿通孔34が設けられてもよい。
【0126】
図23の例示では、界磁磁石201,202の形状が図1乃至図18で説明した界磁磁石の形状と同一であるものの、これらの配置が異なっている。軸方向D1に沿って見て界磁磁石201,202は外周側に広がる略V字形状に配置される。即ち配置方向D2もV字状に折れ曲がっているものと把握される。換言すれば配置方向D2は2つの方向D21,D22を含んでいる。方向D21は界磁磁石201における配置方向であって、方向D22は界磁磁石202における配置方向である。
【0127】
磁石格納部12は界磁磁石201,202の配置に合わせてV字形状を有している。界磁磁石201が格納される部分の方向D21における長さは界磁磁石201の方向D21における長さよりも長い。同様に界磁磁石202が格納される部分の方向D22における長さは界磁磁石202の方向D22における長さよりも長い。よって、磁石格納部12は界磁磁石201,202がそれぞれ方向D21,D22に沿って移動可能な形状を有している。かかる界磁子においても、界磁磁石201,202は反発し合うので、界磁磁石201は方向D21の外周側の端で、界磁磁石202は方向D22の外周側の端でそれぞれ方向D21,D22における位置が固定される。
【0128】
図23の例示では、磁石支持部材30は、ストッパ部材321,322を除いて界磁子コア10と同じ形状を有している。ストッパ部材321,322は図16のストッパ部材321,322と同一形状を有しているが、図14乃至図15、図17及び図18のいずれかのストッパ部材321,322であってよい。またストッパ部材321,322は界磁磁石201,202の外周側の端でそれぞれ界磁磁石201,202と対向する。
【0129】
磁石挿通孔34は磁石格納部12と略同一形状を有しているがこれに限らず、要するに次の要件を満たせばよい。即ち、軸方向D1から見た磁石挿通孔34の輪郭が、軸方向D1から見た界磁磁石201の輪郭よりも広い。そして、磁石挿通孔34は界磁磁石201が方向D21に沿って磁石格納部12の中央へと所定量、移動した状態で、界磁磁石201が挿通可能な位置に設けられる。所定量はストッパ部材321の方向D21における長さよりも長い。これにより、磁石挿通孔34を介して脱磁した界磁磁石201を抜き出すことができる。
【0130】
また、磁石格納部12もV次形状を有していることから、界磁磁石202は磁石格納部12内を移動して界磁磁石201側へと移動することはできない。図23の例示では、軸方向D1に沿って見た磁石挿通孔34の輪郭は、界磁磁石201,202を互いに最も近い位置に移動させた状態でのこれらの一組の輪郭よりも大きい。よって、界磁磁石201と同様に脱磁後の界磁磁石202も抜き出すことができる。なお、界磁磁石201,202を互いに最も近い位置に移動させた状態で軸方向D1に沿って見た界磁磁石201,202の各々の輪郭よりも大きい輪郭を有する、互いに分離された一対の磁石挿通孔34が設けられてもよい。このような磁石挿通孔の輪郭と界磁磁石の輪郭との関係は、後述する他のV次形状であっても同様である。
【0131】
図24の例示では、界磁磁石201,202が内周側に広がるV字状に配置されている点で図23の界磁子とは相違する。またストッパ部材321,322が図11のストッパ部材321,322と同様の形状が示されているものの、上述した他のストッパ部材であってもよい。
【0132】
図25の例示では、界磁磁石201,202は湾曲している。具体的には、軸方向D1から見て帯状かつ弧状の形状を有しており、これが軸方向D1に延在した形状を有している。そして界磁磁石201,202は外周側で広がるように弧状に並んで配置される。磁石格納部12も界磁磁石201,202の形状及び配置に合わせて弧状に設けられている。
【0133】
図25の例示では、磁石支持部材30はストッパ部材321,322を除いて界磁子コア10と同一である。ストッパ部材321,322は図9或いは図17のストッパ部材321に相当する形状を有している。もちろん、上述した他のストッパ部材に相当するものであってもよい。
【0134】
なおここでは、界磁磁石201の円弧と界磁磁石202の円弧とが所定の一つの円上に沿うように配置されている。よって、界磁磁石201,202についての配置方向D2とは当該一つの円に沿う周方向である。かかる構造では、界磁磁石201が格納されていない状態で、界磁磁石202は磁石格納部12の配置方向D2における端から端へと移動できる。従って、ストッパ部材321,322として例えば図6,9,10に示したストッパ部材に相当するものを採用しても、脱磁後の界磁磁石201,202の両方を磁石挿通孔34から抜き出すことができる。
【0135】
図26の界磁子は、界磁磁石201,202が内周側に広がるように弧状に並んで配置されている点を除いて図25の界磁子と同じである。
【0136】
図27の例示では、電機子の外周側に配置されるタイプの界磁子が示されている。かかる界磁子が回転子として機能する場合、いわゆるアウターロータと呼ばれるものである。なお、これまでに述べた界磁子は電機子の内周側に配置されるタイプの界磁子であって、界磁子が回転子として機能する場合、いわゆるインナーロータと呼ばれるものである。
【0137】
図27の界磁子コア10は、空隙121の形状と界磁子コア10の内径及び外径のサイズを除いて図1の界磁子コア10と同一である。界磁子の内周側に電機子が配されるため、その空間を確保すべく、界磁子コア10の内径及び外径は比較的大きく形成される。空隙121は界磁磁石部20の配置方向D2における両端から周方向で界磁磁石部20とは反対側に延在し、続けて径方向に沿って内周側へと延在している。
【0138】
図27の例示では、磁石支持部材30はストッパ部材321,322を除いて界磁子コア10と同じ形状を有している。但し、ストッパ部材321,322は上述した他のストッパ部材のいずれに相当するものが採用されてもよい。界磁磁石201が格納されていない状態で界磁磁石202は磁石格納部12の配置方向D2における端から端へと移動できるので、ストッパ部材321,322として例えば図6,9,10に示したストッパ部材に相当するものを採用しても、脱磁後の界磁磁石201,202の両方を磁石挿通孔34から抜き出すことができる。
【0139】
図28の例示では、電機子が内周側に配置されるタイプの界磁子であって、界磁磁石201,202がV字状に配置された界磁子が示されている。かかる界磁子は図24の界磁子と、その内径及び外径のサイズを除いて同一であり、ストッパ部材についてのバリエーションも同様である。
【0140】
図29の例示では、電機子が内周側に配置されるタイプの界磁子であって、界磁磁石201,202が弧状に配置された界磁子が示されている。かかる界磁子はその内径及び外径のサイズと界磁磁石201,202の位置とを除いて図26の界磁子と同一である。図32の界磁子においては、界磁磁石201,202がより内周側に配置される。ストッパ部材についてのバリエーションも同様である。
【0141】
<磁石格納部12>
図30の界磁子コア10は図1の界磁子コア10に比して1つの磁石格納部12が2つの孔125,126を有している。孔125,126の間には界磁子コア10の一部が介在している。換言すると、界磁子コア10には一つの磁石格納部12として互いに離間した孔125,126が穿たれている。これにより、界磁子コア10の強度を向上できる。特に、高速回転するモータに適用される。
【0142】
孔125,126にはそれぞれ界磁磁石201,202が格納されている。孔125の配置方向D2における長さは界磁磁石201の配置方向D2における長さよりも長い。同様に、孔126の配置方向D2における長さは界磁磁石202の配置方向D2における長さよりも長い。よって界磁磁石201,202はそれぞれ孔125,126の内部で配置方向D2に沿って移動可能である。但し、孔125,126は互いに離間しているので、界磁磁石201,202はそれぞれ孔126,125へと移動することはできない。換言すれば、界磁磁石201,202の移動範囲は互いに重複しない。
【0143】
界磁磁石201,202が外周側へと呈する磁極面の極性は互いに同一であるので、たとえ界磁磁石201,202の間に界磁子コア10が介在していても、これらには反発力が作用する。よって、界磁磁石201,202は互いに反対側に付勢されて、その配置方向D2における位置がそれぞれ孔125,126の端で固定される。
【0144】
図31の例示では、磁石支持部材30は図14の磁石支持部材30と比して、磁石挿通孔34が2つの孔34a,34bを有している点で相違する。孔34a,34bの間には連結部材36の一部が介在している。換言すれば、磁石支持部材30には互いに離間した孔34a,34bが穿たれている。軸方向D1から見た孔34a,34bの輪郭は、それぞれ軸方向D1から見た界磁磁石201,202の輪郭よりも広い。孔34aは、界磁磁石201を配置方向D2に沿って界磁磁石202側へと所定量、移動した状態で、界磁磁石201が挿通可能な位置に設けられる。孔34bは界磁磁石202を配置方向D2に沿って界磁磁石201側へと所定量、移動した状態で、界磁磁石202が挿通可能な位置に設けられる。
【0145】
これにより、それぞれ孔34a,34bを介して脱磁した界磁磁石201,202を抜き出すことができる。以上のように、かかる界磁子であっても、界磁磁石201,202の両方を抜き出すことができる。
【0146】
なお孔34a,34bは互いに離間している必要はなく、例えば図14の磁石支持部材30をそのまま使用してもよい。但し、孔34a,34bの間に連結部材36が介在していれば磁石支持部材30の強度を向上できる。
【0147】
ストッパ部材321,322は図31の例示に限らず、他のストッパ部材であっても構わない。また界磁磁石201,202の個数、形状、配置は上述したいずれであってもよい。
【0148】
<磁石支持部材40>
図32の例示では、磁石支持部材40にも磁石挿通孔44が穿たれている。磁石支持部材40はストッパ部材421,422と連結部材46とを備えており、これらの相互の位置関係はストッパ部材322,321及び連結部材36と同様である。図32の例示では、例えば図11の磁石支持部材30が界磁子コア10に固定され、磁石支持部材40としても図11の磁石支持部材30と同様の構成が採用されている。
【0149】
磁石挿通孔44は界磁磁石201が配置方向D2に沿って所定量、移動した状態で、界磁磁石201が挿通可能であるので、磁石支持部材30,40のいずれからも脱磁後の界磁磁石201,202を抜き出すことができ、作業性を向上できる。なお、磁石支持部材30として上述した磁石支持部材30のいずれを採用してもよく、磁石支持部材40としても上述した磁石支持部材30のいずれを採用してもよく、その組み合わせも任意である。
【0150】
図32の例示では、軸方向D1に沿って界磁磁石201,202が磁石支持部材30、界磁子コア10、磁石支持部材40を通り抜けることができる。かかる界磁子において、磁石支持部材30,40を界磁子コア10に固定した後に硬磁性体201,202を磁石格納部12に格納しようとすると、硬磁性体201,202が磁石挿通孔34,44から抜け落ちてしまう可能性がある。
【0151】
そこで、図33に示すように界磁子を組み立ててもよい。まずステップS1にて、磁石支持部材30,40を界磁子コア10に固定する。次にステップS2にて、硬磁性体201,202を、界磁子としての磁力よりも低い磁力を発揮するように着磁する。かかる着磁を仮着磁と呼び、仮着磁後の硬磁性体201,202を磁石201,202と呼ぶ。次にステップS3にて、磁石201,202を磁石挿通孔34或いは磁石挿通孔44を介して磁石格納部12へと配置する。仮着磁された磁石201,202はその磁力が弱いものの、界磁子コア10との間で吸着力が生じる。よって、仮着磁された磁石201,202を磁石格納部12に格納するに際して、これらが磁石挿通孔34,44から抜け落ちるのを防止できる。次に、ステップS4にて、磁石201,202を再び着磁して界磁子としての磁力を発揮させて界磁磁石201,202を形成する。
【0152】
なお仮着磁された磁力は弱いので、界磁磁石201,202の間で生じる反発力は、界磁磁石201,202を磁石格納部12へと格納するに際してその格納を阻害しにくい。なお、仮着磁された磁石201,202は例えば外周側へと同じ磁極を向ける必要はなく、これらの磁極は任意である。ステップS4にて、外周側へと同じ磁極を向くように磁石201,202を着磁して界磁磁石201,202を形成すればよい。
【0153】
なお第1の実施の形態で述べた界磁子の変形例は後述する第2及び第3の実施の形態においても適用可能である。
【0154】
第2の実施の形態.
第2の実施の形態では、界磁磁石に作用する磁気的な反発力が垂直方向D3の一方側にも作用する。例えば図34には、かかる界磁磁石201,202が示されている。
【0155】
例えば界磁磁石201の界磁磁石202側の端面201bと、界磁磁石202の界磁磁石201側の端面202aとは、垂直方向D3に対して同じ側に傾斜している。図34の例示では、界磁磁石201,202は軸方向D1に沿って見て台形形状を有している。界磁磁石201はその下底を外周側に向けて、界磁磁石202はその上底を外周側に向けてそれぞれ配置されている。これにより、界磁磁石201は垂直方向D3の外周側にも反発力が作用し、界磁磁石202は垂直方向D3の内周側にも反発力が作用する。
【0156】
従って、界磁磁石201,202はそれぞれ垂直方向D3で磁石格納部12(界磁子コア10)に押し付けられるため、垂直方向D3における界磁磁石201,202のがたつきを抑制できる。なお、界磁磁石201,202と界磁子コア10との間の垂直方向D3における間隙は、通常、磁石厚み(垂直方向D3における厚み)とコアの打抜き寸法(垂直方向D3における磁石格納部20の寸法)の公差を吸収できる程度に設定されるため、実際はきわめて小さく、図面ではデフォルメして描かれている。
【0157】
また図34の例示では、ストッパ部材321,322は垂直方向D3において、それぞれ界磁磁石201,202が付勢される方向のみに設けられている。具体的には、ストッパ部材321は垂直方向D3において外周側のみ、ストッパ部材322は垂直方向D3における内周側のみにそれぞれ設けられている。このようにストッパ部材321,322は界磁磁石201,202が付勢されて界磁子コア10と接触する側に設けられる。よって、垂直方向D3における長さを短くしても、ストッパ部材321,322は界磁磁石201,202と軸方向D1で確実に対向する。従って、磁石支持部材30の材料費を低減できる。ただし、界磁子が回転子として機能する場合、遠心力は外周側へと働くので内周側に付勢される界磁磁石202に対向するストッパ部材322については、垂直方向D3における寸法を、ストッパ部材321と比べて大きく採ることが望ましい。
【0158】
また磁石挿通孔34は、界磁磁石201が垂直方向D3の内周側に所定量、移動した状態で、界磁磁石201が軸方向D1に挿通可能な位置に設けられてもよい。以下、図34を参照してその一例について述べる。
【0159】
まず、ストッパ部材321は垂直方向D3において界磁磁石201が付勢される側のみに設けられる。そして、磁石格納部12の垂直方向D3における長さは、界磁磁石201の垂直方向D3における長さとストッパ部材321の垂直方向D3における長さとの和よりも長い。
【0160】
軸方向D1に沿って見た磁石挿通孔34の輪郭は、軸方向D1に沿って見た界磁磁石201の輪郭よりも大きい。磁石挿通孔34は、界磁磁石201が垂直方向D3に沿って内周側へと所定量、移動した状態で軸方向D1に沿って見て界磁磁石201を内部に含む位置に設けられている。この所定量はストッパ部材321の垂直方向D3における長さよりも長い。図34の例示では、軸方向D1に沿って見た磁石挿通孔34の輪郭は、ストッパ部材321,322を除いて磁石格納部12と同一形状を有している。
【0161】
かかる界磁子によっても、界磁子コア10と磁石支持部材30との固定を毀損せずに界磁磁石201を次のように抜き出すことができる。まず界磁磁石201,202を脱磁して硬磁性体201,202とする。次に、図35に示すように、硬磁性体201を垂直方向D3における内周側へと所定量、移動させる。次に、磁石挿通孔34を介して硬磁性体201を抜き出す(図36)。そして、硬磁性体201を再び着磁することによって、硬磁性体201を界磁磁石201として再利用することができる。
【0162】
図34の例示では、磁石挿通孔34は界磁磁石202が垂直方向D3の外周側へと所定量(ストッパ部材321の垂直方向D3の長さよりも長い)、移動した状態で、界磁磁石202が挿通可能である。この場合、図36に示すように、脱磁した界磁磁石202を垂直方向D3の外周側へと所定量、移動させ、磁石挿通孔34を介して脱磁した界磁磁石202を抜き出すことができる。これにより、界磁磁石201,202の両方を抜き出すことができる。またかかる界磁子によれば、界磁磁石202は界磁磁石201を抜き出す領域へと移動させる必要がないので、例えば図19乃至図24、図28に示すように、界磁磁石201,202の移動可能範囲が重複しない、あるいは重複する領域が小さい場合であっても、脱磁後の界磁磁石201,202の両方を抜き出すことができる。
【0163】
なお、図34の例示では界磁磁石202が界磁磁石201側へと移動可能であるので、脱磁した界磁磁石201を抜き出す位置と同じ位置で脱磁した界磁磁石202を磁石挿通孔34から抜き出すことができる。よって、磁石挿通孔34の輪郭は界磁磁石201の輪郭よりもわずかに大きい程度で足りる。
【0164】
また、第2の実施の形態においては要するに界磁磁石201,202に作用する反発力を垂直方向D3にも生じさせていればよく、界磁磁石201,202の形状及び配置は図34に示す形状及び配置に限らない。
【0165】
例えば図37に示すように、界磁磁石201の端面201bが垂直方向D3に沿っており、界磁磁石202の端面202aが垂直方向D3に対して傾斜していてもよい。図37の例示では、垂直方向D3の内周側に向かうに従って界磁磁石201,202の間の距離が短くなるように端面201bのみが傾斜している。この場合であっても、界磁磁石201には垂直方向D3の外周側にも反発力が生じ、界磁磁石202には垂直方向D3の内周側にも反発力が生じる。
【0166】
また例えば図38及び図39に示すように、端面201b,202aが垂直方向D3を軸として互いに反対側で互いに異なる角度、傾斜していてもよい。図38の例示では、垂直方向D3に対する端面201bの傾斜角(但し90度未満)が端面202aの傾斜角に比べて小さい。換言すると、界磁磁石202は界磁磁石201に比べて尖っている。図39の例示では、垂直方向D3に対する端面201bの傾斜角が端面202aの傾斜角に比べて大きい。換言すると、界磁磁石201は界磁磁石202に比べて尖っている。これらの場合であっても、界磁磁石201には垂直方向D3の外周側にも反発力が生じ、界磁磁石202には垂直方向D3の内周側にも反発力が生じる。
【0167】
図34〜図39に示した界磁磁石201,202の形状と、その反発力が作用する方向について以下のように纏めることができる。すなわち、軸方向D1から見て、端面201b,202aで挟まれる角xの二等分線に略垂直で相互に反対の方向に界磁磁石201,202がそれぞれ付勢される。よって、かかる二等分線が垂直方向D3と傾斜していれば界磁磁石201,202に作用する反発力は垂直方向D3にも生じる。なお図34〜図39においてはかかる二等分線が二点鎖線で示されている。
【0168】
第3の実施の形態.
第3の実施の形態では、界磁磁石に作用する磁気的な反発力が軸方向D1の一方側にも作用する。
【0169】
例えば図40に示すように、端面201b,端面202aは軸方向D1に対して同じ方向に傾斜している。界磁磁石201,202は垂直方向D3に沿って見て台形形状を有している。界磁磁石201はその下底を磁石支持部材30側に向けて、界磁磁石202はその下底を磁石支持部材40側に向けてそれぞれ配置されている。これにより、界磁磁石201には磁石支持部材30側にも反発力が生じ、界磁磁石202には磁石支持部材40側にも反発力が作用する。
【0170】
よって、界磁磁石202は磁石支持部材30側でストッパ部材と対向していなくても、界磁磁石202が抜け出すことが抑制される。これに従い、磁石支持部材30にはストッパ部材322が設けられていない。換言すると、磁石支持部材30には界磁磁石202と対向する領域に孔が穿たれている。
【0171】
一方、磁石支持部材30側に付勢される界磁磁石201に対してはストッパ部材321が設けられている。
【0172】
このような磁石支持部材30としては例えば図11の磁石支持部材30のうちストッパ部材322を取り除いたものが採用される。
【0173】
以上のように、磁石支持部材30には、磁石支持部材30側に付勢される界磁磁石201についてのみストッパ部材321が設けられる。よって、磁石支持部材30の材料費を低減することができる。
【0174】
なお界磁磁石201,202の形状は図40に示す形状に限らない。図37〜図39を参照して説明したように、端面201b,202aで挟まれる角の二等分線が軸方向D1に対して傾斜していればよい。
【0175】
磁石支持部材40としては第1の実施の形態で説明した磁石支持部材40であってもよい。但し、図40の例示では、磁石支持部材40は磁石支持部材30と同様に磁石挿通孔44とストッパ部材422とを備えている。磁石挿通孔44と連結部材46とストッパ部材422の構成及び相互の配置関係は磁石挿通孔34と連結部材36とストッパ部材322の構成及び相互の配置関係と同様であるので詳細な説明を省略する。但し、界磁磁石201は軸方向D1において磁石支持部材30側へと付勢されるので、磁石支持部材40には界磁磁石201に対するストッパ部材は設けられていない。かかる磁石支持部材40は例えば図11の磁石支持部材30のうちストッパ部材321を取り除いたものが採用される。よって、磁石支持部材40の材料費を低減することができる。
【0176】
また、磁石挿通孔44は界磁磁石202を配置方向D2に沿って界磁磁石201側に所定量、移動させた状態で、界磁磁石202を挿通可能である。よって、界磁磁石202について磁石挿通孔44を介して抜き出すことができる。よって、磁石支持部材30,40のいずれからも脱磁後の界磁磁石201,202を抜き出すことができ、作業性を向上できる。
【0177】
図41には界磁磁石部20が4つの界磁磁石201〜204を備えた界磁子が例示されている。
【0178】
界磁磁石201〜204は配置方向D2に沿って一方側から他方側へとこの順で配置されている。
【0179】
界磁磁石202の端面202aと、界磁磁石202に隣り合う界磁磁石201の端面201bとが垂直方向D3から見た側面視上で形成する角の二等分線は軸方向D1に対して一方側(ここでは紙面右側)に傾斜している。界磁磁石202の端面202と、隣り合う界磁磁石203の端面203との二等分線は軸方向D1に対して他方側(ここでは紙面左側)に傾斜している。よって、界磁磁石202には界磁磁石201による反発力が軸方向D1の一方側(ここでは紙面上側)へも作用し、界磁磁石203による反発力も軸方向D1の一方側に作用する。したがって、界磁子コア10に対して軸方向D1の一方側に配置される磁石支持部材30には、界磁磁石202に対するストッパ部材322が設けられる。一方、磁石支持部材40には界磁磁石202に対するストッパ部材は設けられなくてもよい。
【0180】
端面202a,203bが垂直方向D3から見た側面視上で形成する角の二等分線が軸方向D1に対して他方側に傾斜しているので界磁磁石203には界磁磁石202による反発力が軸方向D1の一方側にも作用する。また界磁磁石203の端面203aと、界磁磁石203に隣り合う界磁磁石204の端面204bとが垂直方向D3から見た側面視上で形成する角の二等分線は軸方向D1に対して他方側に傾斜している。よって界磁磁石203には界磁磁石204による反発力が軸方向D1の他方側にも作用する。以上のように、界磁磁石203には隣り合う界磁磁石202,204によって軸方向D1の互いに反対方向に反発力が作用する。従って、磁石支持部材30,40には界磁磁石203に対するストッパ部材323,423がそれぞれ設けられる。
【0181】
界磁磁石201,204については説明の重複になるため省略する。
【0182】
なお、第1乃至第3の実施の形態に鑑みて、ストッパ部材は、少なくとも、複数の界磁磁石の各々のうち、隣り合う界磁磁石によって磁気的な反発力が軸方向D1の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、軸方向D1について一方側で対向する、と把握できる。また、磁石挿通孔は、複数の界磁磁石のうち配置方向の一方の端に位置する界磁磁石201が反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で界磁磁石201が軸方向D1で挿通可能に設けられている、と把握できる。
【符号の説明】
【0183】
10 界磁子
12 磁石格納部
20 界磁磁石部
201〜204 界磁磁石
30,40 磁石支持部材
36 連結部
321〜324,421〜424 ストッパ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸(P)の周りで環状に配置される複数の磁石格納部(12)を有する界磁子コア(10)と、
前記複数の磁石格納部にそれぞれ格納される複数の界磁磁石部(20)と、
前記界磁子コアに対して前記軸に沿う軸方向(D1)の一方側に設けられる磁石支持部材(30)と
を備え、
一の前記複数の界磁磁石部は、一の前記複数の磁石格納部において、前記軸とは反対側へと同じ極性の磁極面を向けつつ前記軸に垂直な配置方向(D2)で並んで格納される複数の磁石(201〜204)を備え、
前記磁石支持部材(30)は、
少なくとも、前記複数の磁石の各々のうち、隣り合う前記磁石によって磁気的な反発力が前記軸方向(D1)の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向(D1)について一方側で対向する少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)と、
前記複数の磁石のうち前記配置方向の一方の端に位置する第1磁石(201)が前記反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で前記第1磁石が前記軸方向で挿通可能に設けられた磁石挿通孔(34)を有し、前記少なくとも一つのストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される連結部材(36)と
を備える、界磁子。
【請求項2】
前記第1磁石(201)には、前記複数の磁石のうち前記第1磁石に隣り合う磁石によって、前記反発力が前記軸方向(D1)及び前記第1磁石における前記配置方向(D2)のいずれにも垂直な垂直方向の一方側に作用する、請求項1に記載の界磁子。
【請求項3】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)のうち、前記第1磁石(201)に対するストッパ部材(321)は、前記垂直方向の前記一方側のみに設けられる、請求項2に記載の界磁子。
【請求項4】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は非磁性である、請求項1乃至3の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項5】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記配置方向(D2)及び前記軸方向(D1)のいずれにも垂直な垂直方向(D3)における一方側のみで対向する、請求項1,4の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項6】
前記界磁子は前記軸(P)の周りで回転する回転子であって、前記垂直方向(D3)における前記一方側とは前記軸と反対側である、請求項5に記載の界磁子。
【請求項7】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記垂直方向の長さよりも、自身に対応する前記磁石における前記配置方向(D2)の長さが短い薄肉形状を有している、請求項1乃至4の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項8】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記垂直方向(D3)の両側で前記連結部材(36)と連結される、請求項7に記載の界磁子。
【請求項9】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321)は少なくとも2面で前記連結部材(36)と連結され、
前記2面の法線方向はいずれも前記軸方向(D1)に垂直であってかつ相互に異なる、請求項1乃至8の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項10】
前記第1磁石(201)は前記配置方向(D2)の一方側へと向かうに従って前記配置方向及び前記軸方向(D1)に対して垂直な方向(D3)の寸法が小さくなる傾斜形状を有し、
前記一の前記複数の磁石格納部(12)は前記第1磁石が格納される位置で前記傾斜形状に沿った傾斜形状を有している、請求項1乃至9の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項11】
一の前記複数の磁石格納部(12)は一つの孔である、請求項1乃至10のいずれか一つに記載の界磁子。
【請求項12】
一の前記複数の磁石格納部(12)は、前記複数の磁石がそれぞれ分配されて格納され、互いに分離された複数の孔を有する、請求項1乃至10の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項13】
前記複数の磁石は2つの磁石(201,202)である、請求項1乃至12の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項14】
一の前記複数の磁石(202)には、前記軸方向(D1)の他方側へと前記反発力が作用し、前記一の前記複数の磁石に対しては前記ストッパ部材が設けられない、請求項1乃至13の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項15】
一の前記複数の磁石格納部(12)に格納された前記複数の磁石(201〜203)のいずれについても、その前記軸方向(D1)に垂直な断面の輪郭が、前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記磁石挿通孔(34)の前記軸方向に垂直な断面の輪郭よりも小さい、請求項1乃至14の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項16】
前記複数の磁石(201〜204)のうち、前記軸方向(D1)の一方側へと前記反発力が作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向の他方側から対向する少なくとも一つの他方側ストッパ部材(422,423)と、
前記複数の磁石のうち前記配置方向(D2)の一方又は他方の端に位置する磁石が前記反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で、当該磁石が前記軸方向で挿通可能に設けられた他方側磁石挿通孔(44)を有し、前記少なくとも一つの他方側ストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される他方側連結部材(46)と
を備える他方側磁石支持部材(40)
を備える、請求項1乃至15の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項17】
前記複数の磁石の少なくとも一つ(203)には前記軸方向(D1)の他方側へと前記反発力が作用し、前記複数の磁石の少なくとも一つに対しては前記ストッパ部材が設けられず、
前記複数の磁石の他の少なくとも一つ(201,204)は、前記軸方向(D1)の一方側へと前記反発力が作用し、前記複数の磁石の他の少なくとも一つに対しては前記他方側ストッパ部材が設けられない、請求項16に記載の界磁子。
【請求項18】
一の前記複数の磁石格納部(12)に格納された前記複数の磁石(201〜203)のいずれについても、その前記軸方向(D1)に垂直な断面の輪郭が、前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記磁石挿通孔の前記軸方向に垂直な断面の輪郭若しくは前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記他方側磁石挿通孔の前記軸方向に垂直な断面の輪郭よりも小さい、請求項14又は15記載の界磁子。
【請求項19】
所定の軸(P)の周りで環状に配置される複数の磁石格納部(12)を有する界磁子コア(10)と、
前記複数の磁石格納部にそれぞれ格納される複数の界磁磁石部(20)と
前記界磁子コアに対して前記軸に沿う軸方向(D1)の一方側に設けられる磁石支持部材(30)と
を備え、
一の前記複数の界磁磁石部は、一の前記複数の磁石格納部において、前記軸とは反対側へと同じ極性の磁極面を向けつつ前記軸に垂直な配置方向(D2)で並んで格納される複数の磁石(201〜204)を備え、
前記複数の磁石の各々は前記配置方向(D2)における両側で一対の端面(201a,201b)を有し、
前記磁石支持部材(30)は、
少なくとも、前記複数の磁石の各々のうち、隣り合う前記磁石によって磁気的な反発力が前記軸方向の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向について一方側で対向する少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)と、
前記複数の磁石のうち前記配置方向(D2)の一方の端に位置する第1磁石(201)が前記反発力に抗う方向へと所定量、移動した状態で前記第1磁石が記軸方向で挿通可能に設けられた磁石挿通孔(34)を有し、前記少なくとも一つのストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される連結部材(36)と
を備える、界磁子の製造方法であって、
前記磁石支持部材と前記界磁子コアとを固定する第1工程(S1)と、
着磁してそれぞれ前記複数の磁石となる複数の硬磁性体を、前記界磁子としての磁力よりも低い磁力を発揮するように仮着磁する第2工程(S2)と、
前記第1及び第2工程の実行後に仮着磁された複数の硬磁性体を前記磁石挿通孔から磁石格納部へと配置する第3工程(S3)と
を実行する、界磁子の製造方法。
【請求項1】
所定の軸(P)の周りで環状に配置される複数の磁石格納部(12)を有する界磁子コア(10)と、
前記複数の磁石格納部にそれぞれ格納される複数の界磁磁石部(20)と、
前記界磁子コアに対して前記軸に沿う軸方向(D1)の一方側に設けられる磁石支持部材(30)と
を備え、
一の前記複数の界磁磁石部は、一の前記複数の磁石格納部において、前記軸とは反対側へと同じ極性の磁極面を向けつつ前記軸に垂直な配置方向(D2)で並んで格納される複数の磁石(201〜204)を備え、
前記磁石支持部材(30)は、
少なくとも、前記複数の磁石の各々のうち、隣り合う前記磁石によって磁気的な反発力が前記軸方向(D1)の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向(D1)について一方側で対向する少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)と、
前記複数の磁石のうち前記配置方向の一方の端に位置する第1磁石(201)が前記反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で前記第1磁石が前記軸方向で挿通可能に設けられた磁石挿通孔(34)を有し、前記少なくとも一つのストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される連結部材(36)と
を備える、界磁子。
【請求項2】
前記第1磁石(201)には、前記複数の磁石のうち前記第1磁石に隣り合う磁石によって、前記反発力が前記軸方向(D1)及び前記第1磁石における前記配置方向(D2)のいずれにも垂直な垂直方向の一方側に作用する、請求項1に記載の界磁子。
【請求項3】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)のうち、前記第1磁石(201)に対するストッパ部材(321)は、前記垂直方向の前記一方側のみに設けられる、請求項2に記載の界磁子。
【請求項4】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は非磁性である、請求項1乃至3の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項5】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記配置方向(D2)及び前記軸方向(D1)のいずれにも垂直な垂直方向(D3)における一方側のみで対向する、請求項1,4の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項6】
前記界磁子は前記軸(P)の周りで回転する回転子であって、前記垂直方向(D3)における前記一方側とは前記軸と反対側である、請求項5に記載の界磁子。
【請求項7】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記垂直方向の長さよりも、自身に対応する前記磁石における前記配置方向(D2)の長さが短い薄肉形状を有している、請求項1乃至4の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項8】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)は、自身に対応する前記磁石における前記垂直方向(D3)の両側で前記連結部材(36)と連結される、請求項7に記載の界磁子。
【請求項9】
前記少なくとも一つのストッパ部材(321)は少なくとも2面で前記連結部材(36)と連結され、
前記2面の法線方向はいずれも前記軸方向(D1)に垂直であってかつ相互に異なる、請求項1乃至8の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項10】
前記第1磁石(201)は前記配置方向(D2)の一方側へと向かうに従って前記配置方向及び前記軸方向(D1)に対して垂直な方向(D3)の寸法が小さくなる傾斜形状を有し、
前記一の前記複数の磁石格納部(12)は前記第1磁石が格納される位置で前記傾斜形状に沿った傾斜形状を有している、請求項1乃至9の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項11】
一の前記複数の磁石格納部(12)は一つの孔である、請求項1乃至10のいずれか一つに記載の界磁子。
【請求項12】
一の前記複数の磁石格納部(12)は、前記複数の磁石がそれぞれ分配されて格納され、互いに分離された複数の孔を有する、請求項1乃至10の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項13】
前記複数の磁石は2つの磁石(201,202)である、請求項1乃至12の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項14】
一の前記複数の磁石(202)には、前記軸方向(D1)の他方側へと前記反発力が作用し、前記一の前記複数の磁石に対しては前記ストッパ部材が設けられない、請求項1乃至13の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項15】
一の前記複数の磁石格納部(12)に格納された前記複数の磁石(201〜203)のいずれについても、その前記軸方向(D1)に垂直な断面の輪郭が、前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記磁石挿通孔(34)の前記軸方向に垂直な断面の輪郭よりも小さい、請求項1乃至14の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項16】
前記複数の磁石(201〜204)のうち、前記軸方向(D1)の一方側へと前記反発力が作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向の他方側から対向する少なくとも一つの他方側ストッパ部材(422,423)と、
前記複数の磁石のうち前記配置方向(D2)の一方又は他方の端に位置する磁石が前記反発力に抗う方向に所定量、移動した状態で、当該磁石が前記軸方向で挿通可能に設けられた他方側磁石挿通孔(44)を有し、前記少なくとも一つの他方側ストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される他方側連結部材(46)と
を備える他方側磁石支持部材(40)
を備える、請求項1乃至15の何れか一つに記載の界磁子。
【請求項17】
前記複数の磁石の少なくとも一つ(203)には前記軸方向(D1)の他方側へと前記反発力が作用し、前記複数の磁石の少なくとも一つに対しては前記ストッパ部材が設けられず、
前記複数の磁石の他の少なくとも一つ(201,204)は、前記軸方向(D1)の一方側へと前記反発力が作用し、前記複数の磁石の他の少なくとも一つに対しては前記他方側ストッパ部材が設けられない、請求項16に記載の界磁子。
【請求項18】
一の前記複数の磁石格納部(12)に格納された前記複数の磁石(201〜203)のいずれについても、その前記軸方向(D1)に垂直な断面の輪郭が、前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記磁石挿通孔の前記軸方向に垂直な断面の輪郭若しくは前記一の前記複数の磁石格納部に対応する前記他方側磁石挿通孔の前記軸方向に垂直な断面の輪郭よりも小さい、請求項14又は15記載の界磁子。
【請求項19】
所定の軸(P)の周りで環状に配置される複数の磁石格納部(12)を有する界磁子コア(10)と、
前記複数の磁石格納部にそれぞれ格納される複数の界磁磁石部(20)と
前記界磁子コアに対して前記軸に沿う軸方向(D1)の一方側に設けられる磁石支持部材(30)と
を備え、
一の前記複数の界磁磁石部は、一の前記複数の磁石格納部において、前記軸とは反対側へと同じ極性の磁極面を向けつつ前記軸に垂直な配置方向(D2)で並んで格納される複数の磁石(201〜204)を備え、
前記複数の磁石の各々は前記配置方向(D2)における両側で一対の端面(201a,201b)を有し、
前記磁石支持部材(30)は、
少なくとも、前記複数の磁石の各々のうち、隣り合う前記磁石によって磁気的な反発力が前記軸方向の他方側へと作用する磁石以外の磁石に対して、前記軸方向について一方側で対向する少なくとも一つのストッパ部材(321〜323)と、
前記複数の磁石のうち前記配置方向(D2)の一方の端に位置する第1磁石(201)が前記反発力に抗う方向へと所定量、移動した状態で前記第1磁石が記軸方向で挿通可能に設けられた磁石挿通孔(34)を有し、前記少なくとも一つのストッパ部材と連結されて前記界磁子コアと固定される連結部材(36)と
を備える、界磁子の製造方法であって、
前記磁石支持部材と前記界磁子コアとを固定する第1工程(S1)と、
着磁してそれぞれ前記複数の磁石となる複数の硬磁性体を、前記界磁子としての磁力よりも低い磁力を発揮するように仮着磁する第2工程(S2)と、
前記第1及び第2工程の実行後に仮着磁された複数の硬磁性体を前記磁石挿通孔から磁石格納部へと配置する第3工程(S3)と
を実行する、界磁子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【公開番号】特開2010−284062(P2010−284062A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137337(P2009−137337)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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