説明

畜糞堆肥化・無臭化・ガス化・発電システム

【課題】畜糞をコンポスト化するに際して発生するアンモニアを脱臭でき、しかも得られたコンポストで発電できる畜糞堆肥化・無臭化・ガス化・発電システムを提供する。
【解決手段】投入された畜糞11を好気性処理して発酵畜糞13とするコンポスト槽10と、コンポスト槽10からの臭気を含む空気で、投入された燃料と流動媒体を高速流動化して燃焼させると共に臭気成分を無害化させる流動層燃焼炉21と、該流動層燃焼炉21からの流動媒体と未燃燃料とを排ガスから分離するサイクロン23と、該サイクロン23で分離した固形分が導入され、流動媒体の持つ熱と水蒸気の存在下で、未燃燃料と投入される上記発酵畜糞とをガス化する流動層ガス化炉22とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜糞をコンポスト化する際に発生する臭気を処理しつつガス化しガスエンジンにて発電を行う畜糞堆肥化・無臭化・ガス化・発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜糞等の処理は、野積みが禁止されて以来、焼却処理していたが、焼却処理では、運転のための電気などの運転コストがかかるため、コンポスト化し肥料としたり、これを燃料として発電することが行われている(特許文献1〜3)。
【0003】
畜糞等のコンポスト化には、好気性微生物が活動しやすい環境にして好気性処理を施して堆肥とすることが行われているが、畜糞をコンポスト化する際に、アンモニアなどの臭気が大量に発生するため、これを処理する必要がある。
【0004】
従来、特許文献4〜6に示されるように発生したアンモニアガスを燃料と共に燃焼させて熱分解などにて脱臭している。
【0005】
【特許文献1】特開2004−76968号公報
【特許文献2】特開2003−253274号公報
【特許文献3】特開2002−174412号公報
【特許文献4】特開2003−148186号公報
【特許文献5】特開2002−174412号公報
【特許文献6】特開2003−170147号公報
【特許文献7】特開2005−41959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、畜糞の処理と共に発生するアンモニアガスを処理するための装置が別途必要となる問題がある。
【0007】
また、コンポスト化で得られた肥料を燃料として発電するに際しても外部からの動力を必要とし、特許文献7に示されるように、自己完結で運転できる発電システムは開発されていない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、畜糞をコンポスト化するに際して発生するアンモニアを脱臭でき、しかも得られたコンポストで発電できる畜糞堆肥化・無臭化・ガス化・発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、投入された畜糞を好気性処理して発酵畜糞とするコンポスト槽と、コンポスト槽からの臭気を含む空気で、投入された燃料と流動媒体を高速流動化して燃焼させると共に臭気成分を無臭化・無害化させる流動層燃焼炉と、該流動層燃焼炉からの流動媒体と未燃燃料とを排ガスから分離するサイクロンと、該サイクロンで分離した固形分が導入され、流動媒体の持つ熱と水蒸気の存在下で、未燃燃料と投入される上記発酵畜糞又は畜糞とをガス化する流動層ガス化炉とを備えたことを特徴とする畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システムである。
【0010】
請求項2の発明は、コンポスト槽からの臭気を含む空気を、上記流動層燃焼炉の上部に吹き込んで流動層燃焼炉で発生したNOxを脱硝させる請求項1記載の畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システムである。
【0011】
請求項3の発明は、投入された水分の多い有機物或いは水分が多く臭気を発する有機物を、間接加熱して乾燥物とする乾燥機と、該乾燥機からの臭気を含む空気で、投入された上記乾燥物と流動媒体を高速流動化して燃焼させると共に臭気成分を無害化させる流動層燃焼炉と、該流動層燃焼炉からの流動媒体と未燃燃料とを排ガスから分離するサイクロンと、該サイクロンで分離した固形分が導入され、流動媒体の持つ熱と水蒸気の存在下で、未燃燃料と投入される上記乾燥物及び/又は水分の多い有機物或いは水分が多く臭気を発する有機物とをガス化する流動層ガス化炉とを備えたことを特徴とする畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システムである。
【0012】
請求項4の発明は、乾燥機からの臭気成分を含む空気を上記流動層燃焼炉の上部に吹き込んで流動層燃焼炉で発生したNOxを脱硝させる請求項3記載の畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システムである。
【0013】
請求項5の発明は、投入された臭気を発するバイオマスを好気性発酵させて発酵物とする発酵装置と、該発酵装置からの臭気を含む空気で、投入された上記臭気を発するバイオマスと流動媒体を高速流動化して燃焼させると共に臭気成分を無害化させる流動層燃焼炉と、該流動層燃焼炉からの流動媒体と未燃燃料とを排ガスから分離するサイクロンと、該サイクロンで分離した固形分が導入され、流動媒体の持つ熱と水蒸気の存在下で、未燃燃料と投入される上記臭気を発するバイオマスとを、ガス化する流動層ガス化炉とを備えたことを特徴とする畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システムである。
【0014】
請求項6の発明は、発酵装置からの臭気成分を含む空気を、上記流動層燃焼炉の上部に吹き込んで流動層燃焼炉で発生したNOxを脱硝させる請求項5記載の畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システムである。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1〜6いずれかに記載の畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システムにおいて、流動層ガス化炉で生成したガス化ガスでガスエンジンを駆動し、そのガスエンジンで発電機を駆動することを特徴とする自己完結型畜糞堆肥化・無臭化・ガス化・発電システムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、畜糞等の水分を含んだり臭気のある有機物を堆肥化したり、これを燃料としてガス化して電気エネルギーとすることができると共に発生する臭気を無害化できるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1において、10は生畜糞11を堆肥化するコンポスト槽で、コンポスト槽10に、コンポスト槽10内の生畜糞11を好気性処理するための空気吹込手段12が接続される。コンポスト槽10内は、詳細は図示していないが攪拌機が設けられ、生畜糞11が、空気吹込手段12からの空気と接触して好気性微生物が活動する環境に維持される。
【0019】
コンポスト槽10で好気性処理された生畜糞11は、発酵畜糞13として排出され、一部は肥料14として出荷され、残りは燃料として後述するガス化装置20の流動層ガス化炉22に供給される。またコンポスト槽10から排気される空気には臭気15を含んでおり、この臭気15を含んだ空気がガス化装置20の流動層燃焼炉21に供給される。
【0020】
ガス化装置20は、特許文献7に開示したように流動層燃焼炉21と流動層ガス化炉22とサイクロン23とからなる。流動層燃焼炉21の底部にブロア24が接続され、臭気15を含んだ空気がライン16から、また一部外気が空気ライン17からブロア24を介して流動層燃焼炉21に吹き込まれる。
【0021】
流動層燃焼炉21は、流動層ガス化炉22からライン25を介して供給される砂およびチャーなどからなる流動媒体と、必要に応じて投入ライン26から供給される発酵畜糞とをブロア24からの空気で高速流動化して炉内を上昇させ、その間に、チャー(或いは発酵畜糞)を部分酸化させる。
【0022】
この部分酸化により流動媒体が高温に加熱され、またブロア24から吹き込まれた空気中の臭気成分であるアンモニアは、下式反応で燃焼脱臭される。
【0023】
4NH3 + 7O2 → 4NOx + 6H2
また発生したNOxは、アンモニアで下式の脱硝反応で窒素に還元される。
【0024】
6NOx + 8NH3 → 7N2 + 12H2
これらの反応により臭気成分は無害化される。
【0025】
流動層燃焼炉21を上昇した未燃燃料と流動媒体はライン27よりサイクロン23に導入され、そこで固−気分離され、排ガスが排気ライン28より排気され、流動媒体と未燃燃料は、ライン29より、流動層ガス化炉22に供給される。
【0026】
サイクロン23には、サイクロン23で分離された排ガスと主に熱交換する熱交換器31が設けられ、その熱交換器31に給水源32が接続され、熱交換器31で発生した蒸気33が後述するブロア30に供給される。
【0027】
流動層ガス化炉22では、ライン18より発酵畜糞13が投入され、ブロア30からの蒸気で、流動媒体、未燃燃料、発酵畜糞13が流動化され、流動媒体の持つ顕熱と水蒸気で、未燃燃料と発酵畜糞のガス化反応が行われて、H2 ,COのガス化ガスが生成される。
【0028】
生成したガス化ガスは、ライン34からガス精製塔35に供給され、そのガス精製塔35で精製された後、ガスエンジン36に供給されて、燃焼排ガスが排気ライン37から排気される。同時にガスエンジン36により発電機38が駆動されて、発電が行われる。
【0029】
発電機38で得られた電気エネルギーは、コンポスト槽10の攪拌機(図示せず)、ガス化装置20のブロア24,30の駆動に利用され、余剰分は売電40に回す。また装置の起動時には、市販電源41でブロア24,30等を駆動する。
【0030】
この図1の実施の形態においては、コンポスト槽10内でコンポスト化により発生する臭気15は、アンモニアなどの有機性のガスであり、一部は可燃性があり燃料として使用でき、またアンモニアなどの臭気15は、ガス化装置20の流動層燃焼炉21で酸化反応と還元反応にて無害化でき、また得られた発酵畜糞13を燃料とし、これをCO、H2 、CH4 などの炭化水素からなるガス化ガスに変換し、ガスエンジン36と発電機38にて電気エネルギーとすることができる。
【0031】
図2は、本発明の他の実施の形態を示したもので、水分の多い有機物を処理する例を示したものであり、基本的には図1と同じであるが、水分の多い有機物11Aを乾燥機10Aに投入し、乾燥機10Aで乾燥させるようにしたものである。
【0032】
図において、乾燥機10Aには、伝熱管やジャケット等からなる加熱器45が設けられ、その加熱器45に、排ガス供給ライン46と排気ライン47が接続される。排ガス供給ライン46にブロア48が接続され、ガス化装置20のサイクロン23とガスエンジン36の排気ライン28,37からの排ガスが、ブロア48、排ガス供給ライン46を介して加熱器45に供給される。
【0033】
乾燥機10Aに投入された水分の多い有機物11Aは、図示しない攪拌機で攪拌されつつ加熱器45で加熱されると共に空気供給手段12からの空気により好気性処理と乾燥がなされて乾燥物13Aとされ、投入ライン26よりガス化装置20の流動層燃焼炉21に投入されて燃焼される。
【0034】
乾燥機10Aからの臭気成分、水蒸気を含む空気はライン16から、空気ライン17の空気と共にブロア24にて循環式の流動層燃焼炉21に吹き込まれ、投入ライン26からの乾燥物13Aとライン25からの流動媒体とを流動化しながら乾燥物13Aを部分燃焼させる。またこの際、図1で説明したようにアンモニア等の臭気成分が無害化される。
【0035】
バブリング式の流動層ガス化炉22には、投入ライン26より水分の多い有機物11Aまたは乾燥物13A或いはこれらの混合物を投入してガス化反応を行う。
【0036】
本実施の形態では水分の多い有機物11Aを乾燥しつつ、これを燃料として発電に供することができる。
【0037】
図3は、本発明のさらに他の実施の形態を示したもので、基本的には図2の実施の形態と同じであるが、水分が多く臭気を発する有機物11Bを処理する例を示したものである。
【0038】
この図3の実施形態でも水分が多く臭気を発する有機物11Bを乾燥機10Bに投入し、加熱器45による間接加熱で加熱され、空気供給手段12からの空気で好気性処理がなされ、水分が水蒸気として、また臭気成分が空気と共にライン16、ブロア24にてガス化装置20の流動層燃焼炉21に吹き込まれる。
【0039】
またブロア24の吐出側のライン16より分岐して二段吹き込みライン50が接続され、その二段吹き込みライン50にて流動層燃焼炉21の上部にアンモニア等の臭気成分が空気と共に吹き込まれるようになっている。
【0040】
このように臭気成分を含む空気を流動層燃焼炉21の底部と上部で吹き込むことで、流動層燃焼炉21の下部では、
4NH3 + 7O2 → 4NOx + 6H2
の燃焼脱臭が支配的に生じ、上部では、
6NOx + 8NH3 → 7N2 + 12H2
の脱硝反応が支配的となる。
【0041】
この場合、二段吹き込みライン50から吹き込むアンモニア等の臭気成分を含む空気は、発生するNOxに応じてその吹き込み量を調整できるので、臭気成分のより完全な無害化が行える。
【0042】
また乾燥機10Bで生成した乾燥物13Bは、投入ライン26より流動層燃焼炉21に投入し、流動層ガス化炉22には、水分が多く臭気を発する有機物11Bまたは乾燥物13B、或いはこれらの混合物を投入ライン18より投入する。
【0043】
この図3の実施の形態では、臭気を発生する有機物11Bを処理するに当たって、流動層燃焼炉21で、二段燃焼させると共にアンモニア等の窒素系の臭気成分成分を二段で吹き込んで燃焼脱臭と脱硝とを行うことで、より臭気成分の無害化が達成できる。
【0044】
図4は、本発明のさらに他の実施の形態を示したもので、臭気を発するバイオマス11Cを処理する例を示したものである。
【0045】
本実施の形態においては、臭気を発するバイオマス11Cを処理する例を示し、臭気を発するバイオマス11Cを発酵装置10C内に投入し、その発酵装置10C内に空気供給手段12から空気を吹き込んで好気性発酵を行って発酵物13Cとし、また発酵装置10Cに吹き込んだ空気は、図3の実施の形態で説明したようにブロア24からライン16を介して流動層燃焼炉21の底部から吹き込み、残りをライン50を介して流動層燃焼炉21の上部に吹き込んで二段燃焼乃至二段吹き込みを行って臭気成分を燃焼脱臭と脱硝により無害化する。
【0046】
また臭気を発するバイオマス11Cは、投入ライン26から流動層燃焼炉21と投入ライン18から流動層ガス化炉22に投入して直接燃料として使用する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】本発明の他の実施の形態を示す図である。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態を示す図である。
【図4】本発明のさらに他の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10 コンポスト槽
11 生畜糞
13 発酵畜糞
21 流動層燃焼炉
22 流動層ガス化炉
23 サイクロン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された畜糞を好気性処理して発酵畜糞とするコンポスト槽と、コンポスト槽からの臭気を含む空気で、投入された燃料と流動媒体を高速流動化して燃焼させると共に臭気成分を無臭化・無害化させる流動層燃焼炉と、該流動層燃焼炉からの流動媒体と未燃燃料とを排ガスから分離するサイクロンと、該サイクロンで分離した固形分が導入され、流動媒体の持つ熱と水蒸気の存在下で、未燃燃料と投入される上記発酵畜糞又は畜糞とをガス化する流動層ガス化炉とを備えたことを特徴とする畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システム。
【請求項2】
コンポスト槽からの臭気を含む空気を、上記流動層燃焼炉の上部に吹き込んで流動層燃焼炉で発生したNOxを脱硝させる請求項1記載の畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システム。
【請求項3】
投入された水分の多い有機物或いは水分が多く臭気を発する有機物を、間接加熱して乾燥物とする乾燥機と、該乾燥機からの臭気を含む空気で、投入された上記乾燥物と流動媒体を高速流動化して燃焼させると共に臭気成分を無害化させる流動層燃焼炉と、該流動層燃焼炉からの流動媒体と未燃燃料とを排ガスから分離するサイクロンと、該サイクロンで分離した固形分が導入され、流動媒体の持つ熱と水蒸気の存在下で、未燃燃料と投入される上記乾燥物及び/又は水分の多い有機物或いは水分が多く臭気を発する有機物とをガス化する流動層ガス化炉とを備えたことを特徴とする畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システム。
【請求項4】
乾燥機からの臭気成分を含む空気を上記流動層燃焼炉の上部に吹き込んで流動層燃焼炉で発生したNOxを脱硝させる請求項3記載の畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システム。
【請求項5】
投入された臭気を発するバイオマスを好気性発酵させて発酵物とする発酵装置と、該発酵装置からの臭気を含む空気で、投入された上記臭気を発するバイオマスと流動媒体を高速流動化して燃焼させると共に臭気成分を無害化させる流動層燃焼炉と、該流動層燃焼炉からの流動媒体と未燃燃料とを排ガスから分離するサイクロンと、該サイクロンで分離した固形分が導入され、流動媒体の持つ熱と水蒸気の存在下で、未燃燃料と投入される上記臭気を発するバイオマスとを、ガス化する流動層ガス化炉とを備えたことを特徴とする畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システム。
【請求項6】
発酵装置からの臭気成分を含む空気を、上記流動層燃焼炉の上部に吹き込んで流動層燃焼炉で発生したNOxを脱硝させる請求項5記載の畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システム。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の畜糞堆肥化・無臭化・ガス化システムにおいて、流動層ガス化炉で生成したガス化ガスでガスエンジンを駆動し、そのガスエンジンで発電機を駆動することを特徴とする自己完結型畜糞堆肥化・無臭化・ガス化・発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−252975(P2007−252975A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76922(P2006−76922)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】