説明

畜舎汚水の浄化処理方法

【課題】 凝集沈殿、生分解、微細気泡発生、濾過などの処理技術による畜産汚水の浄化、再資源化処理システムを提供する。
【解決手段】 畜舎より排出される汚水を、浄化処理して再資源化するシステムであり、汚水を分離したのち処理水を生分解洗浄剤、微細気泡、濾過で浄化処理する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜舎より排出される洗浄排水、糞尿、廃棄乳の分解浄化方法及びその処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーン農業の気運が高まっている中、畜産農家において100頭から150頭ほどの乳牛に使用される搾乳装置を洗浄する洗浄液の排出は、毎日約3000mにもなる。
本排水は、搾乳室より排出される糞尿、廃棄乳も含み言わば雑排水である。
大農場においては、大型の曝気槽を数台設備し微生物活性汚泥法による順次槽内曝気を行い貯留槽へと送水し、その後 農地へ散布しているのが現状である。
しかし、中小畜産農家にとってこのような設備は、高額で設備投資の対象としては現実的ではない。
【0003】
牛舎より排出される洗浄排水には、酸性 アルカリ性の他、殺菌剤も含むため微生物による活性汚泥法のみの処理システムでは短時間処理は困難である。
この排水は、排出量も糞尿の約3倍と多いため遠方への運搬も困難を伴う。
以上の理由から、本排水の処理設備は、大型で高額になっている。
中小畜産農家では、この排水を少量ずつ河川放流、あるいは地下浸透しているのが現状である。そのため、この排水は、環境汚染の原因の一つになっている。
【0004】
従来の技術では、活性汚泥法による処理、オゾンによる殺菌、脱色脱臭処理、分離膜処理などを施したものがある。
【特許文献1】特開2000−225398
【特許文献2】特開2002−239567
【特許文献3】特開2003−205298
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、従来の汚水処理設備が大型で長時間処理のため高額である。本発明は、新しい浄化処理方法を提供することにより、高能率で低コストな汚水処理技術による浄化処理システムの構築を目標とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために構成された請求項1に係る本発明の手段は、畜舎より排出される排水を、給粉装置で天然鉱物を主原料とする粉末無機系凝集剤により凝集分離した沈降浮遊物と脱色された処理水を分離処理することを特徴とする。
【0007】
さらに、凝集分離された処理水は、廃棄乳の脂肪分も多く含まれるため生分解性の洗浄剤を注入し、処理水に含まれる微生物を利用し、曝気することにより処理能力を加速し脂肪蛋白質分の酵素分解を行なう。
【0008】
また、酵素分解させた処理水は、若干の色素、異臭、窒素、燐、その他の汚濁物質などを含んでいるため、微小空隙を有する粒状活性炭により脱臭、脱色し 又、ホタテ及び牡蠣貝殻を投入することにより貝殼に内包したカルシウムに燐を結合させ、さらに微細気泡を発生させることにより窒素、燐、大腸菌などの除去を行なう。
【0009】
さらに、処理された処理水を、多大な比表面積を有する粒状花崗岩で濾過させることにより、処理水内の浮遊物の吸着及び除去を行なう。
【0010】
最終処理水は、濾過槽より排出されることになるが、この浄化処理された排水は、畜舎の洗浄水など多目的に再利用する。
【発明の効果】
【0011】
以上 記述した如く本発明は、汚水分離システム、脂肪蛋白質分分解システム、微細気泡浄化システム、濾過システムを組み合わせた汚水の浄化再資源化処理に関するものである。
(1) 汚水を自然界に存在する天然鉱物を使用して凝集分離し処理水は、放流水質基準をクリアーするレベルまで浄化できる。
(2) 植物系洗浄剤を使用し自然界に存在する微生物により、今まで困難だった脂肪及び蛋白質分の酵素分解を短時間で可能にした。
(3) 微細気泡発生装置の導入で微生物活性汚泥法による浄化処理が短時間で可能になった。
(4) 自然界に存在する天然鉱物を使用して濾過し、浮遊物を除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
自然界に存在する物質を利用し、小型で高能率、低額な汚水処理技術の供給を実現する。
【実施例】
【0013】
次に本発明の実施例を図面に基づき詳述する。
図において汚水分離槽1は攪拌機7凝集剤タンク5給粉装置11から構成される。畜舎汚水Aが流入され、レベルセンサーにより満水が検知されると攪拌機が作動し同時に給粉装置が働いて、円筒状の凝集剤タンクより凝集剤が投入される。本凝集剤は、粉末無機質系凝集剤で水温やphに殆ど影響を受けないため事前の汚水処理が必要なく多孔質の天然鉱物を主原料としているため少量(1Lに0.04g程度)で、かなりの凝集効果がみられる。SSの除去、BOD COD 大腸菌の低減、窒素 燐の吸着など短時間処理が可能になる。
【0014】
本発明は、凝集された汚泥を分離後、処理水に含まれる成分に応じて浄化処理システムを構築した点に特徴をもっている。曝気槽2は生分解洗浄剤タンク6洗浄剤注入ポンプ14曝気装置10エアーポンプ16加熱ヒーター8より構成されているが、汚水分離槽1から排出された処理水には、廃棄乳の脂肪蛋白質分が少なからず残留していることから、排水及び再利用水としての転用には、脂肪蛋白質分分解処理を行なうものとした。この点曝気槽内2において少量の生分解洗浄剤を投入し微生物において脂肪分分解処理を行なう。微生物活性化の手段として曝気装置を設置し、水温低下防止対策として過熱ヒーターを設置した。この生分解洗浄剤は、ヤシ脂肪誘導体、過炭酸塩などを主成分とし、脂肪蛋白質分を二酸化炭素、酸素及び水に分解し酵素の働きでイオン化現象を生じさせるものである。それにより処理水及び空気中の微生物の働きにより酵素分解する洗浄剤である。
【0015】
曝気槽2より流入した処理水は、バブル槽3内で更に浄化処理を行なう。本発明で使用される旋回式微細気泡発生装置9は、マイクロサイズの泡を発生させる技術で、活性炭18ホタテ及び牡蠣貝殻19と併用する点で浄化処理能力を高めることになる。
微小空隙を有する多孔質の活性炭18を透過することにより異臭、色素を吸着させ又、処理水内にカルシウム分を有するホタテ及び牡蠣貝殻19を投入させる事により、カルシウム分と燐を結合し除去の促進をはかる。微細気泡の特性は、BOD、COD,窒素、燐、大腸菌の除去に有効である。これは、微細気泡が、処理水内の微生物を活性化させるため、浄化処理が促進されアンモニアなどの異臭の除去にも効果を発揮する。
【0016】
バブル槽3より流入した処理水は、濾過槽4で濾過処理を行なう。濾過槽内の花崗岩17は、比表面積が大きいスメクタイト等の粘土鉱物を内包した機能性岩石で、粒状の花崗岩を濾過槽4内に敷き詰める。バブル槽3より流入した処理水は、花崗岩18を透過することにより浮遊物が吸着、除去される。最終処理された排水Bは、再利用水として畜舎の洗浄水など様々な利用価値を生み出す。
【0017】
汚水分離槽1と曝気槽2間の処理水送水は、攪拌終了後のタイマー運転信号で圧送ポンプ13による送水を行ない、曝気槽2とバブル槽3間の処理水送水もタイマー運転信号で圧送ポンプ15による送水を行なう。汚水分離槽1に残留した汚泥Cは、タイマー運転信号で汚泥ポンプ17により設備外部に排出される。曝気槽2よりバブル槽3へ送水された処理水は、バブル槽3内を常に微生物の培養を目的とする処理水で充満状態を維持させるためオーバーフロー方式とする。
濾過槽は、透過方式とする。
【0018】
本発明の実施により、汚水処理したデータについて以下に示す。
1日の処理排水量は、1000mである。処理時間は、約24時間である。

【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、畜舎排水の浄化のみに留まらず工業排水の浄化技術にも利用の可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 処理工程を示したフローチャート図である。
【図2】 バブル槽内の構造図である。
【符号の説明】
【0021】
1 汚水分離槽
2 曝気槽
3 バブル槽
4 濾過槽
5 凝集剤タンク
6 生分解洗浄剤タンク
7 攪拌機
8 加熱ヒーター
9 微細気泡発生装置
10 曝気装置
11 給粉装置
12 循環ポンプ
13 圧送ポンプ
14 洗浄剤注入ポンプ
15 圧送ポンプ
16 エアーポンプ
17 粒状花崗岩
18 活性炭
19 ホタテ牡蠣貝殻
20 網棚
21 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
要素 凝集分離、脂肪蛋白質分生分解、微細気泡浄化及び濾過から構成され、前記凝集分離、脂肪蛋白質分生分解、微細気泡浄化、濾過が、それぞれ凝集装置、生分解洗浄装置、微細気泡発生装置、濾過装置により畜舎より排出される汚水を浄化、再資源化する処理方法。
【請求項2】
上記汚水を、給粉装置で天然鉱物を主原料とする粉末無機系凝集剤を投与し、攪拌機で攪拌後分離する手段を具備した汚水分離槽に投入して、液体と固形分を含む汚泥に分離し、液体の色素、異臭、窒素、燐、大腸菌群などを除去することを特徴とした浄化処理方法。
【請求項3】
請求項2により分離された脂肪及び蛋白質分を含む処理水を、ヤシ脂肪酸誘導体を主成分とする生分解洗浄剤を投与し、脂肪及び蛋白質分の分解を短時間処理するために曝気装置による曝気処理及び加熱ヒーターによる水温維持する手段を具備した第2の曝気槽に投入し、微生物により脂肪及び蛋白質分を分解する汚水浄化処理方法。
【請求項4】
請求項3により処理された処理水を、微小空隙を有する活性炭を透過し色素及び異臭を吸着させ、ホタテ及び牡蠣貝殻を透過することにより貝殻に内包したカルシウム分に燐を結合させ、旋回式微細気泡発生装置により微細気泡を発生させる手段を具備した第3のバブル槽に投入して、処理水内及び空気中の微生物を増加活性化させ処理水内の色素、異臭、窒素、アンモニア、燐、大腸菌などを除去する浄化処理方法。
【請求項5】
請求項3により分離された処理水を、加熱ヒーターで加熱することにより請求項4の複合的浄化方法で、さらに浄化能力を高める手段を具備した浄化処理方法。
【請求項6】
請求項4により処理された処理水を、多大比表面積を有する花崗岩を第4の濾過槽に投入し、濾過処理をする浄化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−183931(P2009−183931A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56982(P2008−56982)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(506296684)
【出願人】(506296695)
【Fターム(参考)】