異方導電性部材
【課題】接触安定化、高密度化および薄肉化のいずれについても高いレベルで達成し得る電気貫通部を備える異方導電性部材を提供する。
【解決手段】板状の弾性ソケットと、弾性ソケット内に個別に保持されて弾性ソケットの厚さ方向に電流を通過させる複数の電気貫通部とを備える異方導電性部材であって、電気貫通部は、電気的に接続しつつ弾性ソケットの厚さ方向に相対位置を変動可能な第一および第二の可動部材を備え、これらの可動部材が近接するように外力が付与されたときにこれらの可動部材を離間させる弾性復元力が弾性ソケットに生じるように、これらの可動部材は、少なくとも近接した状態では弾性ソケットの一部を圧縮可能に配置され、これらの可動部材の相対位置の変動を可能とする摺動接触構造は可動制限手段を備え、弾性ソケットにおける電極接触部側の主面に設けられた剛性材料からなる電極側板状部材を異方導電性部材はさらに備える。
【解決手段】板状の弾性ソケットと、弾性ソケット内に個別に保持されて弾性ソケットの厚さ方向に電流を通過させる複数の電気貫通部とを備える異方導電性部材であって、電気貫通部は、電気的に接続しつつ弾性ソケットの厚さ方向に相対位置を変動可能な第一および第二の可動部材を備え、これらの可動部材が近接するように外力が付与されたときにこれらの可動部材を離間させる弾性復元力が弾性ソケットに生じるように、これらの可動部材は、少なくとも近接した状態では弾性ソケットの一部を圧縮可能に配置され、これらの可動部材の相対位置の変動を可能とする摺動接触構造は可動制限手段を備え、弾性ソケットにおける電極接触部側の主面に設けられた剛性材料からなる電極側板状部材を異方導電性部材はさらに備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICの検査などに使用される異方導電性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の端子を備えるICを検査するときには、ICにおける隣接する端子同士での電気的接続を抑制しつつ、ICの各端子と、ICを検査するための検査装置(ICテスター)に接続された検査用基板における各端子に対応する電極とを電気的に接続するための、異方導電性部材が使用される。
【0003】
その異方導電性部材は、全体形状としてはおおむね板状であり、その主面の法線方向の導電性は十分に高いため電気信号を通過させるが、主面の面内方向には絶縁されていて電気を通さないという特性を有する。この特性に基づき、異方導電性部材は、主面の法線方向に電流を通過させる部分を検査対象のICの端子に対応して多数備える構造を有する。本発明において、ICの端子に対応してこの主面の法線方向に電流を通過させる部分を電気貫通部という。
【0004】
電気貫通部の具体的な構造は任意であり、異方導電性部材の双方の主面から露出するようにその部材に埋設された金属などの導電性細線を備える構造、双方の主面間に充填された一群の導電性微粒子を備える構造、両端が部分的に閉塞されつつ開口された管状体とこの管状体の内部に配置されたコイルスプリングとこのコイルスプリングに付勢されながら上記の部分的な閉塞部に係止された状態で管状体から部分的に突出する二つの接触部材とからなるプローブピンなどが例示される。
【0005】
使用時における電気貫通部では、ICの端子および検査用基板と異方導電性部材における電気貫通部の主面上の端部とが、これらの間の電気的接触を安定化させるために所定の圧力で接触している。上記の電気的接触の安定化を実現する程度に接触圧力が発生するように、多くの場合において、電気貫通部には弾性復元力を利用した接触圧力発生のための構造が設けられている。
【0006】
例えば、上記の導電性細線を用いる電気貫通部や一群の導電性微粒子を用いる電気貫通部は、これらの部材が弾性体内に埋設される構造を備えることによって、これらの部材とICの端子および検査用基板との接触圧力を発生させている。また、プローブピンでは、コイルスプリングが二つの接触部材を離間するように付勢することによって、これらの接触部材とICの端子および検査用基板との接触圧力を発生させている。
【0007】
上記の例以外に、特許文献1および2に開示されるような構造の電気貫通部が例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−291430号公報
【特許文献2】特開2008−21637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電気貫通部は、電流を可能な限り損失少なく通過させることという基本要求のほかに、電気貫通部の電気的接触状態を長期にわたり安定化すること(接触安定化)、隣接する電気貫通部の間隔を可能な限り狭めること(高密度化)、および上記の基本要求を満たすための具体的な手段の一つとして異方導電性部材の主面間の距離を可能な限り狭くすること(薄肉化)も求められている。
【0010】
しかしながら、前掲の従来技術に係る電気貫通部は、これらの要請の全てを満たすことができていない。
【0011】
すなわち、導電性細線や導電性微粒子を弾性体の内部に埋め込む形式の電気貫通部は、ICの端子と接触する部分が細線の断面や微粒子の表面であり、ICの端子に対する接触状態が安定化しにくい。また、製造上の理由により、高密度化への対応にも限界がある。
【0012】
プローブピンの場合には、コイルスプリングを内在することから、高密度化と薄肉化とが原理的にトレードオフの関係にある。
【0013】
特許文献1に開示される電気貫通部は、金属板材料からなる導電部材が圧縮力の印加と解除との繰り返しを受けるため、この部材が金属疲労しやすく、接触安定化の観点で大きな問題を抱えている。
【0014】
特許文献2に開示される電気貫通部は、主面上に金属回路を有し、さらにこの金属回路とは主面上別の位置にスルーホールを有するため、高密度化を実現することは不可能である。
【0015】
かかる技術背景を鑑み、本発明は、前述の接触安定化、高密度化および薄肉化のいずれについても高いレベルで達成し得る電気貫通部を備える異方導電性部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
(1)絶縁体からなり弾性を有する板状の弾性ソケットと、前記弾性ソケット内に個別に保持されて前記弾性ソケットの厚さ方向に電流を通過させる複数の電気貫通部とを備える異方導電性部材であって、前記電気貫通部は、電気的に接続しつつ前記弾性ソケットの厚さ方向に相対位置を変動可能な第一の可動部材および第二の可動部材を備え、前記第一の可動部材は、測定対象物に付設される電極と接触するための電極接触部を前記弾性ソケットの一方の主面側に備え、前記第二の可動部材は、測定装置の配線基板と接触するための基板接触部を前記弾性ソケットの他方の主面側に備え、前記電極接触部および前記基板接触部が前記弾性ソケットの厚さ方向に近接するように外力が付与されたときにこれらを離間させる弾性復元力が前記弾性ソケットに生じるように、前記第一および第二の可動部材は、少なくとも前記電極接触部と前記基板接触部とが近接した状態では前記弾性ソケットの一部を圧縮可能に配置され、前記電気貫通部は、前記第一または第二の可動部材の一方に設けられたすべり軸とこれらの部材の他方に設けられたすべり面とが前記弾性ソケットの厚さ方向に相互に摺動する摺動接触構造を備え、当該摺動接触構造によって、前記電極接触部と前記基板接触部との距離は、これらの接触部の電気的接続を維持したまま前記弾性ソケットの厚さ方向に変動可能であり、前記摺動接触構造は前記すべり軸が前記すべり面上を前記弾性ソケットの厚さ方向に摺動する範囲を制限する可動制限機構を備え、当該可動制限機構によって、前記電極接触部の前記基板接触部に対する可動範囲は上限を有し、前記可動制限機構は前記電極接触部と前記基板接触部との間の可動範囲を制限する脱離止めを含み、当該脱離止めは、前記すべり面から前記すべり軸側に突出するすべり面突出部、および当該すべり面突出部に接触することにより前記すべり軸の一方向への摺動を停止させるすべり軸係止部からなり、前記電極接触部および前記基板接触部の一方から前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに延設された第一の柱状体を前記第一および第二の可動部材の一方が備え、さらに前記電極接触部および前記基板接触部の他方から前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに延設された第二の柱状体を前記第一および第二の可動部材の他方が備え、前記第一の柱状体は、前記弾性ソケットの厚さ方向に連続して配置される太径部と細径部とを備え、前記すべり軸は前記太径部に設けられ、前記すべり軸係止部は前記太径部と前記細径部との連結部に設けられ、前記第二の柱状体は、内部が中空であって前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側の端部に開口を有し、前記すべり面は前記中空部の内側面に設けられ、前記開口を部分的に閉塞するように前記開口の縁部から内側に突出する部分閉塞部が前記すべり面突出部を構成し、前記太径部に設けられた前記すべり軸は前記中空部内に配置されて、前記中空部の内側面に設けられた前記すべり面と接触して前記摺動接触構造を構成し、前記部分閉塞部は前記太径部との接触により変形可能とされ、前記太径部は、前記部分閉塞部の当該変形により前記部分閉塞部を超えて前記第二の柱状体の中空部内へと挿設され、前記弾性ソケットにおける前記電極接触部が設けられている側の主面にその一方の主面が対向するように設けられた、剛性材料からなる電極側板状部材を前記異方導電性部材はさらに備え、当該電極側板状部材は前記電極接触部に対応した配置で貫通孔を有し、前記電極接触部の前記弾性ソケット側と反対側の端部が前記電極側板状部材における前記弾性ソケットの主面に対向する側と反対の主面から突出するように、前記第一の可動部材は前記電極側板状部材の貫通孔に貫装されることを特徴とする異方導電性部材。
【0017】
(2)前記部分閉塞部は、異方導電性部材が使用されて前記電極接触部と前記測定対象物に付設された電極との間に発生する密着力に相当する外力が前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きと反対向きに付与された場合でも前記すべり面突出部を構成する、上記(1)に記載の異方導電性部材。
【0018】
(3)前記太径部は金属系材料から構成され、前記部分閉塞部は樹脂系材料から構成される、上記(2)に記載の異方導電性部材。
【0019】
(4)前記第一および第二の可動部材は、前記第一および第二の柱状体が前記弾性ソケットに設けられた貫通孔内に挿設され、前記貫通孔は、径が細い細孔部および径が太い太孔部を前記弾性ソケットの厚さ方向に隣接して備え、前記細孔部内に前記第一の柱状体の細径部の少なくとも一部が配置され、前記太孔部内に前記第二の柱状体の少なくとも一部が配置される、上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0020】
(5)前記第二の柱状体は前記部分閉塞部を構成する部材と他の部材とから構成され、前記部分閉塞部を構成する部材は前記他の部材と別体であって、前記部分閉塞部を構成する部材は、前記太孔部および前記細孔部によって形成される段差と前記他の部材とに挟まれることにより、前記他の部材に対する位置変動が制限される、上記(4)に記載の異方導電性部材。
【0021】
(6)前記第二の柱状体を備える前記第一および第二の可動部材の他方は、いずれも内部が中空であるとともに前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側の端部に開口を有し同軸上に配置される、第一の柱状部材および第二の柱状部材を備え、前記第一の柱状部材は、その開口の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が前記第二の柱状部材の中空内に配置され、前記部分閉塞部は前記第二の柱状部材の開口に設けられている、上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0022】
(7)前記第二の柱状部材は前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側と反対側の端部に第二の開口を有し、当該第二の開口はその縁部から内側に突出する第二の部分閉塞部を備え、前記第一の柱状部材はその開口の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が前記部分閉塞部と前記第二の部分閉塞部とを両端とする前記第二の柱状部材の中空内に配置される、上記(6)に記載の異方導電性部材。
【0023】
(8)前記第一の柱状部材は金属系材料から構成され、前記第二の柱状部材は樹脂系材料から構成される、上記(6)または(7)に記載の異方導電性部材。
【0024】
(9)前記第一の柱状体が延設される前記電極接触部および前記基板接触部の一方は、導電性材料からなり前記測定対象物に付設される電極または前記測定装置の配線基板と直接接触する中心側の部材と、前記電極接触部および前記基板接触部の一方における最も外径が大きな部分を含む絶縁体からなるリング状の部材とからなり、当該リング状の部材における中央の中空部に前記中心側の部材がはめ込まれることにより前記電極接触部および前記基板接触部の一方は構成される、上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0025】
(10)前記第二の柱状体が延設される前記電極接触部および前記基板接触部の他方は、前記弾性ソケットの主面の面内方向に突出する突出部を備え、当該突出部が前記弾性ソケットの主面に接触するように、前記第二の柱状体は前記貫通孔内に挿設される、上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0026】
(11)前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材における当該貫通孔の内側面と対向する外側面と当該貫通孔の内側面とのクリアランスは、前記第一の可動部材の可動方向の前記弾性ソケットの厚さ方向に対する傾きの許容範囲に基づき設定されたものである、上記(1)から(10)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0027】
(12)前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材は、前記弾性ソケットにおける前記電極接触部が設けられている側の主面と前記電極側板状部材との間にその外側面の一部から外周方向に突出する係止突出部を有し、前記弾性ソケットの厚さ方向を法線とし前記係止突出部を含む面における前記第一の可動部材の断面形状の外接円の直径は、前記電極側板状部材の貫通孔の前記弾性ソケット側端部における開口径よりも大きい、上記(1)から(11)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0028】
(13)前記電極接触部が前記測定対象物に付設された電極と接触する前の状態において、前記電極側板状部材の貫通孔の前記弾性ソケットに対向する側の周縁部が前記係止突出部を前記弾性ソケットの厚さ方向中心側に押し込むことにより、前記電極接触部および前記基板接触部にはこの押し込みによる反発力が前記弾性ソケットから付与されている、上記(12)に記載の異方導電性部材。
【0029】
(14)前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材は、前記電極接触部における前記弾性ソケット側と反対側の端部および前記係止突出部の少なくとも一部を含むように構成された接触側部材と他の部材とから構成され、前記接触側部材は前記その他の部材とは別体であって、前記係止突出部の少なくとも一部によって、前記接触側部材は、前記弾性ソケットの厚さ方向中心向きと反対の向きへの移動が制限されるとともに、前記電極側板状部材の貫通孔から脱離しないように構成されている、上記(12)または(13)に記載の異方導電性部材。
【0030】
(15)前記第一の可動部材が前記第一の柱状体を備える、上記(1)から(14)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0031】
(16)前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備える、上記(1)から(14)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0032】
(17)前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備え、当該第二の柱状体が備える前記部分閉塞部および前記係止突出部の少なくとも一部が前記弾性ソケット内に埋設される、上記(12)から(14)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0033】
(18)前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備えるとともに、その全体が前記弾性ソケットから露出している、上記(12)から(14)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0034】
(19)前記電極接触部および前記基板接触部が前記弾性ソケットの厚さ方向に近接するように前記電極接触部に外力が付与されたときに、前記電極接触部および前記基板接触部の双方が前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに変動するように、前記弾性ソケットは、前記測定装置の配線基板に対して、前記弾性ソケットの厚さ方向に変動可能に取り付けられるものである、上記(17)または(18)に記載の異方導電性部材。
【0035】
(20)前記弾性ソケットと前記測定装置の配線基板との間に剛性材料からなる基板側板状部材を前記異方導電性部材はさらに備え、当該基板側板状部材は前記基板接触部に対応した配置で貫通孔を有し、前記基板接触部は、少なくともその一部が、当該基板側板状部材の貫通孔に挿設される、上記(19)に記載の異方導電性部材。
【0036】
(21)前記電極接触部および前記基板接触部の他方と前記第二の柱状体とは前記弾性ソケットの厚さ方向に重複する部分を有する、上記(1)から(20)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0037】
(22)前記弾性ソケットは、前記貫通孔における前記細孔部と前記太孔部との段差部分を含む面を分離面として、前記太孔部を有する第一の部分弾性ソケットと前記細孔部を有する第二の部分弾性ソケットとに分割され、前記第一の部分弾性ソケットは、前記太孔部における前記第二の部分弾性ソケット側の端部に、前記第一の部分弾性ソケットを構成する材料により構成されて、前記第一の部分弾性ソケットと一体に設けられた前記部分閉塞部を備える、上記(5)から(21)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る異方導電性部材は、電気的接触状態を維持しつつ弾性ソケットの厚さ方向に摺動し得る二つの可動部材を有し、これらの可動部材が離間する方向にこれらを付勢する力は、二つの可動部材間に配置される弾性ソケットの弾性復元力によりもたらされている。したがって、接触安定化、高密度化および薄肉化を高度にバランスすることが実現されている。しかも、ICの端子と電極接触部との間に高い接触圧力が発生し、このため電極接触部がICの端子に食い込むようなことがあっても、二つの可動部材は垂直方向の可動制限機構を有するため、検査が終了してICを異方導電性部材から離間させたときにICの端子に食い込んだ電極接触部を有する可動部材が異方導電性部材から脱離してしまうような事態が十分に抑制されている。しかも、本発明に係る異方導電性部材は電極側板状部材を有するため、電極接触部の弾性ソケットの厚さ方向に対する傾きは制限される。それゆえ、電極接触部とICの端子との接触が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図2】図1に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施例3−1に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図6】本発明の実施例3−1に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施例3−2に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図8】本発明の実施例3−2に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施例3−3に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図10】本発明の変形例1に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図11】本発明の変形例2に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図12】本発明の変形例3に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図13】本発明の変形例4に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図14】本発明の変形例5に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図15】本発明の変形例6に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図16】本発明の実施例4−1に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図17】本発明の実施例4−1の具体的な他の一例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図18】図17に示される異方導電性部材の使用状態を示す、当該部材の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図19】本発明の実施例4−2に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図20】本発明の実施例4−3に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図21】本発明の実施例4−2の具体的な他の一例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図22】本発明の実施例4−3の具体的な他の一例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図23】本発明の実施例4−3の具体的な別の一例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図24】本発明の実施例5に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図25】本発明の実施例5の具体的な他の一例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図26】本発明の各実施形態に係る異方導電性部材が備える第二の柱状体の具体的構造の一例について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図27】本発明の各実施形態に係る異方導電性部材が備える第二の柱状体の具体的構造の他の一例について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図28】本発明の実施例4−3の一変形例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る異方導電性部材を説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る異方導電性部材の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0041】
本実施形態に係る異方導電性部材100は、絶縁体からなり弾性を有する板状の弾性ソケット101と、弾性ソケット101内に個別に保持されて弾性ソケットの厚さ方向に電流を通過させる複数の電気貫通部102とを備える。弾性ソケットの材質は特に限定されない。その材質を例示すれば、シリコーンゴムやフッ素ゴム、あるいはアクリル系エラストマーなど弾性を有する絶縁材料が挙げられる。
【0042】
電気貫通部102は、電気的に接続しつつ弾性ソケットの厚さ方向に相対位置を変動可能な第一の可動部材103および第二の可動部材104を備える。第一の可動部材103は、測定対象物に付設される電極と接触するための電極接触部105を弾性ソケット101の一方の主面側に備える。第二の可動部材104は、測定装置の配線基板(検査用基板)と接触するための基板接触部106を弾性ソケット101の他方の主面側に備える。
【0043】
第一および第二の可動部材103,104は、少なくとも電極接触部105と基板接触部106とが近接した状態では弾性ソケット101の一部を圧縮可能に配置される。図1では、電極接触部105および基板接触部106における最も外径が大きな部分(以下、「鍔部分」ともいう。)107,108が、それぞれ、弾性ソケット101の主面における貫通孔109の周縁部110,111に接触するように配置されている。このため、電極接触部105と基板接触部106とが近接すると、これらの接触部の鍔部分107,108によって弾性ソケット101の主面における貫通孔109の周縁部110,111は圧縮される。このように配置されることにより、電極接触部105および基板接触部106が弾性ソケットの厚さ方向に近接するように外力が付与されたときにこれらを離間させる弾性復元力が弾性ソケット101に生じることが実現される。
【0044】
電気貫通部102は、第一または第二の可動部材103,104の一方、本実施形態では第一の可動部材103に設けられたすべり軸112と、これらの部材103,104の他方、本実施形態では第二の可動部材104に設けられたすべり面113とが弾性ソケットの厚さ方向に摺動する摺動接触構造114を備える。この摺動接触構造114によって、電極接触部105と基板接触部106との距離は、これらの接触部の電気的接続を維持したまま弾性ソケットの厚さ方向に変動可能である。
【0045】
摺動接触構造114はすべり軸112がすべり面113上を弾性ソケットの厚さ方向に摺動する範囲を制限する可動制限機構115を備える。この可動制限機構115によって、電極接触部105の基板接触部106に対する可動範囲は上限を有する。
【0046】
可動制限機構115は電極接触部105と基板接触部106との間の可動範囲を制限する脱離止めを含む。本実施形態では、可動制限機構115は脱離止めからなる。この脱離止め115は、すべり面113からすべり軸112側、本実施形態ではすべり軸112を備える第一の可動部材103の中心軸側に突出するすべり面突出部116、およびこのすべり面突出部116に接触することによりすべり軸112の一方向への摺動を停止させるすべり軸係止部117から構成される。
【0047】
本実施形態に係る電気貫通部102において、電極接触部105から弾性ソケットの厚さ方向の弾性ソケット101の中心向きに延設された第一の柱状体を第一の可動部材103が備える。以下、この第一の柱状体と電極接触部105とからなる第一の可動部材103をプランジャーともいう。プランジャー103において、弾性ソケット101の主面から突出する部分は電極接触部105に含まれる。したがって、第一の柱状体はその全体が弾性ソケット101の貫通孔109内部に配置される。本実施形態においては、電極接触部105は貫通孔109内部に部分的に埋設されており、その埋設された部分の外径は貫通孔109の孔径とほぼ同じである。この電極接触部105における部分的に埋設された部分は、プランジャー103がIC端子との接触によって軸倒れすることを防止するためのものである。
【0048】
また、基板接触部106から弾性ソケットの厚さ方向の弾性ソケット101の中心向きに延設された第二の柱状体を第二の可動部材104が備える。以下、この第二の柱状体と基板接触部106とからなる第二の可動部材104をバレルともいう。なお、本明細書において「延設」とは、基板接触部106と第二の柱状体とに弾性ソケットの厚さ方向に重複する部分を有する場合も含むものとする。すなわち、基板接触部106の機能は基板と電気的接触を維持することであるから、バレル104の外部構造によって特定されるべきものであり、一方、第二の柱状体は第一の柱状体と摺動接触構造を構成するためのものであるから、バレル104の内部構造によって特定されるべきものである。したがって、バレル104における弾性ソケットの厚さ方向の一部では、基板接触部としての外部構造を有しつつ第二の柱状体としての内部構造を有している場合もあり、この場合であっても、バレル104において、基板接触部106と第二の柱状体とは延設されているものとする。かかる構造の関係は、電極接触部に第二の柱状体が延設している場合も同様である。
【0049】
バレル104において、弾性ソケット101の主面から突出する部分は基板接触部106に含まれる。したがって、本実施形態においては、第二の柱状体はその全体が弾性ソケット101の貫通孔109内部に配置される。第二の柱状体はその内面側にすべり面113が設けられた部分であり、他の実施形態においては、第二の柱状体の一部が弾性ソケット101の貫通孔109より突出する場合もある。
【0050】
プランジャー103が備える第一の柱状体は、弾性ソケットの厚さ方向に連続して配置される太径部118と細径部119とを備え、すべり軸113は太径部118に設けられ、すべり軸係止部117は太径部118と細径部119との連結部に設けられる。
【0051】
バレル104が備える第二の柱状体は内部が中空であって弾性ソケットの厚さ方向で第一の柱状体側(すなわち、本実施形態においてはプランジャー103側)の端部に開口を有する。この開口の内部にある中空部の内側面にすべり面113は設けられ、この開口を部分的に閉塞するように開口の縁部から内側に突出する部分閉塞部がすべり面突出部116を構成する。この部分閉塞部の具体的形状は任意である。開口の縁部全周から内側に突出してリング状をなしていてもよいし、開口の縁部の一部から内側に突出していてもよい。
【0052】
太径部118に設けられたすべり軸112はバレル104の開口の内部にある中空部内に配置され、中空部の内側面に設けられたすべり面113と接触して摺動接触構造114を構成している。
【0053】
図2は、図1に示した本発明の第一の実施形態に係る異方導電性部材100が検査用基板201に取り付けられ、IC202と検査用基板201との間で圧縮され、IC202を検査可能な状態(本明細書において、「使用状態」ともいう。)を概念的に示す断面図である。
【0054】
異方導電性部材100全体が検査装置により対向するIC202と検査用基板201との間において圧縮されると、電極接触部の鍔部分203および基板接触部の鍔部分204の間で弾性ソケット205が圧縮され、双方の鍔部分203,204は弾性ソケット205から弾性復元力を受ける。この弾性復元力に基づく力が電極接触部206に伝達されることにより、電極接触部206はIC202の電極に所定の圧力で接触する。したがって、電極接触部206とIC202との電気的接触は安定化する。
【0055】
続いて、本発明の第一の実施形態に係る異方導電性部材におけるプランジャーおよびバレルの部分構造が具体的に特定された異方導電性部材を、本発明の第二の実施形態として、図3および4を用いて詳しく説明する。
【0056】
図3は、本発明の第二の実施形態に係る異方導電性部材の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
本発明の第二の実施形態に係る異方導電性部材300において、太径部301は金属系材料から構成され、部分閉塞部302は樹脂系材料から構成される。ここで、金属系材料とは、金属または合金から構成される材料であって、次に説明する樹脂系材料よりも十分に高い硬度を有することおよび導電性を有することが特性となる。一方、樹脂系材料は、樹脂を成分として有する材料であって、実質的に絶縁体であり、上記の金属系材料に比べて十分に低い弾性率を有し、それゆえ金属系材料と接触した場合には樹脂系材料が優先的に弾性変形する特性を有する。したがって、樹脂系材料は、ゴムからなる場合や、エラストマーからなる場合を含む。
【0057】
樹脂系材料を具体的に例示すれば、ナイロンやポリアセタールなど比較的軟質な樹脂が挙げられる。金属系材料を具体的に例示すれば、ステンレスや炭素鋼などの鉄系金属、あるいは黄銅、ベリリウム銅などの銅系金属が挙げられる。なお、金属系材料には摺動部分の接触抵抗を抑制するため金めっきが施されていることが望ましい。
【0058】
金属系材料および樹脂系材料はそれぞれ上記のような特性を有することから、部分閉塞部302は太径部301との接触により弾性的に変形可能である。このため、太径部301は、当初はバレル303の中空部304の外にあったものが、部分閉塞部302と接触し、部分閉塞部302の上記の変形により部分閉塞部302を超えてバレル303の中空部304内へと挿入されることにより設置されたものである。
【0059】
ここで、部分閉塞部302は、異方導電性部材300が使用されて電極接触部305と測定対象物であるICに付設された電極、具体例を挙げればはんだボールとの間に発生する密着力に相当する外力が弾性ソケットの厚さ方向の弾性ソケット306の中心向きと反対向き、つまりICが異方導電性部材300から離れる向きに付与された場合でも、すべり面突出部を構成し、プランジャー307がバレル303から分離してしまうことが抑制されている。
【0060】
バレル303は上記のように樹脂系材料で構成され、樹脂系材料は一般的には良導体ではない。一方、バレル303の中空部304の内側面にあるすべり面は、プランジャー307に対する電気的接触部であることから、良導体であることが必要である。そこで、本実施形態に係る異方導電性部材300のバレル303は、いずれも内部が中空であるとともに弾性ソケットの厚さ方向で第一の柱状体側(すなわち、本実施形態においてはプランジャー307側)の端部に開口を有し同軸上に配置される、金属系材料からなる第一の柱状部材308および樹脂系材料からなる第二の柱状部材309を備える。本実施形態では、第一の柱状部材308は一つの開口316を有し、第二の柱状部材309は弾性ソケットの厚さ方向で第一の柱状体側(すなわち、本実施形態においてはプランジャー307側)の端部に第一の開口317を有し、この第一の開口317が設けられた側と反対側の端部に第二の開口318を有している。
【0061】
第一の柱状部材308は、その開口の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が第二の柱状部材309の中空内に配置されている。すなわち、本実施形態に係るバレル303は、同軸上に配置された二重管構造を有する。以下、第一の柱状部材308をインナーバレル、第二の柱状部材309をアウターバレルともいう。そして、樹脂系材料からなる部分閉塞部302はアウターバレル309の第一の開口317に設けられている。また、インナーバレル308の開口316とは反対側の端部319はアウターバレル309の第二の開口318より突出し、基板接触部における基板と直接的に接触する部分を構成している。
【0062】
アウターバレル309は一体構造であってもよいし、複数の部材から構成されていてもよい。複数の部材から構成される場合の具体例として、アウターバレル309の中心軸を含む平面で分割することが挙げられる。
【0063】
このようにバレル303が二重管構造を有し、インナーバレル308は良導体であってアウターバレル309は絶縁体であることは、異方導電性部材の使用時に流れる電気信号が高周波信号である場合に、波形劣化が少なくなるという利点も有する。すなわち、高周波信号は表皮効果により導体の表面を流れるため、バレルの導体部分についてバレルの中心軸を含む断面で切断した断面の外側面の長さが短いことが、高周波信号の劣化を抑制する観点から好ましい。本実施形態に係るバレル303は、この外側面はインナーバレル308によって形成されるため、二重管構造を有さないバレルの上記外側面に比べて外側面の長さが短くなる。したがって、本実施形態に係るバレル303は通常の単管構造のバレルに比べて高周波信号を劣化させにくい。
【0064】
このような高周波信号における表皮効果を考慮する観点から、本実施形態に係る異方導電性部材300のプランジャー307の電極接触部305は、導電性材料、具体的には金属材料からなり電極と直接接触する中心側の部材311と、電極接触部305における最も外径が大きな部分(鍔部分)を含む絶縁体、具体的には樹脂系材料からなるリング状の部材(以下、「リング状絶縁部材」ともいう。)312とからなる。このリング状絶縁部材312における中央の中空部に中心側の部材311がはめ込まれることにより、電極接触部305は構成される。
【0065】
このような構造を有する電極接触部305は、そのような構造を有さないものに比べて、プランジャーの導体部分についてプランジャーの中心軸を含む断面で切断した断面の外側面の長さは、リング状絶縁部材312を含まない分短くなる。それゆえ、このような構造を有することにより高周波信号の劣化が抑制される。
【0066】
なお、中心側の部材311に対して弾性ソケット306を弾性ソケットの厚さ方向に圧縮するような力が付与されたときに、その力が電極接触部305の鍔部分に確実に伝達され、鍔部分において弾性ソケット306を圧縮できる構造を、中心側の部材311とリング状絶縁部材312とは有しているべきである。また、リング状絶縁部材312は段差構造を有し、弾性ソケット306における貫通孔314の内部にリング状絶縁部材312の一部分(本実施形態では段差部分)が挿入されていることが、使用状態またはその前後の使用時にプランジャーがバレルに対して傾きながら摺動することを抑制する観点から好ましい。
【0067】
本実施形態に係るアウターバレル309は前述のように二つの開口を有し、弾性ソケットの厚さ方向で第一の柱状体側(本実施形態においてはプランジャー307側)と反対側の端部に設けられた第二の開口318はその縁部から内側に突出する第二の部分閉塞部313を備える。そして、インナーバレル308は少なくともその一部、具体的には、インナーバレル308の開口316の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が部分閉塞部302と第二の部分閉塞部313とを両端とするアウターバレル309の中空内に配置される。第二の部分閉塞部313の具体的な構造は、部分閉塞部302同様任意である。
【0068】
このような構造を有することにより、アウターバレル309の内側面とインナーバレル308の外側面との間にクリアランスがあってアウターバレル309内でインナーバレル308が自由に動くことができる状態であっても、アウターバレル309からインナーバレル308が脱落することが防止される。
【0069】
なお、このような二つの部分閉塞部を有するアウターバレル309を、成形金型を用いて一体で作る場合には材料として軟質樹脂などを選定すればよい。一般的に無理抜きと言われる方法により、内側面から突出する部分があってもアウターバレル309を金型から取り出すことが可能である。そのような材料の具体例として、先に例示したナイロンやポリアセタールなどが挙げられる。
【0070】
以下、本実施形態に係る異方導電性部材の製造方法の一例について説明する。
まず、インナーバレル308は、アウターバレル309の第二の部分閉塞部313が設けられた第二の開口318側からその内部に圧入され、部分閉塞部302および第二の部分閉塞部313によってアウターバレル309内に保持される。
【0071】
次に、インナーバレル308とアウターバレル309とからなるバレル303を、弾性ソケット306における貫通孔314の一方の開口側から挿入する。すなわち、バレル303の部分閉塞部302を有する開口と反対側の端部の外側面から外側に突出する突出部である鍔部分315における弾性ソケット306の主面に対向する一方の面が、弾性ソケット306の主面における貫通孔314の周縁部に接触するように、バレル303を貫通孔314に部分的に挿入する。
【0072】
ここで、貫通孔314の内径はバレル303の筒状の外側面の直径とほぼ等しく設定されているため、貫通孔314の内側面によってバレル303は保持され、貫通孔314からバレル303は容易には抜け落ちない。
【0073】
なお、アウターバレル309が前述のように中心軸を含む平面で分割されている場合には、まず、アウターバレル309を貫通孔314に挿入し、その後インナーバレル308をアウターバレル309内に挿入してもよい。アウターバレル309は分割されているため、インナーバレル308の挿入は容易である。
【0074】
続いて、中心側の部材311とリング状絶縁部材312とを備えるプランジャー307を、弾性ソケット306における貫通孔314の他方の開口側から挿入する。プランジャー307を挿入することによってプランジャー307の太径部301がバレル303の部分閉塞部302に接したら、さらにプランジャー307を貫通孔314内に挿入するよう押し込んで、太径部301によって部分閉塞部302を変形させて、太径部301をバレル303の中空部304内に挿入する。太径部301が中空部304内に完全に挿入されると、部分閉塞部302は変形した状態から初期の状態に戻り、太径部301は中空部304内に保持される。
【0075】
こうして、プランジャー307とバレル303とからなる連結体(以下、「プローブピン」という場合もある。)は、弾性ソケット306の貫通孔314内に、容易には分離しない状態で保持される。
【0076】
図4は、本実施形態に係る異方導電性部材300の使用状態を概念的に示す断面図である。
【0077】
図5は、本発明の第三の実施形態に係る異方導電性部材の一例(本明細書において、「実施例3−1」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
図5に示される実施例3−1に係る異方導電性部材は、プローブピンが、弾性ソケットに設けられた貫通孔に部分的に挿設されることによって弾性ソケットに対して保持されている。
【0078】
実施例3−1に係る異方導電性部材のバレルの構造は第二の実施形態に係る異方導電性部材300のバレル303と同一の構造である。実施例3−1に係る異方導電性部材のプランジャーの構造も、ほとんど第二の実施形態に係る異方導電性部材300のプランジャー307と等しいが、実施例3−1に係る異方導電性部材では、第二の実施形態に係る異方導電性部材300の貫通孔314と異なり、貫通孔におけるプランジャー側の開口部を含む領域が狭まっている。つまり、実施例3−1の貫通孔は、径が細い細孔部および径が太い太孔部を弾性ソケットの厚さ方向に隣接して備え、この細孔部内にプランジャーの細径部が配置され、太孔部内にバレル303の少なくとも一部、具体的にいえば基板接触部以外の部分の少なくとも一部が配置されている。この構成に合わせて、実施例3−1のプランジャーにおけるリング状絶縁部材は、第二の実施形態のプランジャー307におけるリング状絶縁部材312に比べて、中央の中空部の直径が小さくなっている。また、この構造の場合には、使用状態またはその前後の使用時にプランジャーがバレルに対して傾きながら摺動することが貫通孔における細孔部の内側面によって抑制されるため、実施例3−1のリング状絶縁部材は段差構造を有していなくともよい。また、リング状絶縁部材の外径が小さい場合にこの部材が貫通孔の内部に入り込んでバレルとプランジャーとの摺動を阻害することも、貫通孔における細孔部の孔径が小さいことによって抑制されている。
【0079】
図6は、図5に示される実施例3−1に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
図6に示されるように、ICの端子(はんだボール)によりプランジャーが押し込まれることによって、プランジャーの太径部はバレルの中空部内の奥に移動し、これに伴い、貫通孔の太孔部の内部におけるバレルもプランジャーも存在しない空隙領域が圧縮される。図6に示される実施例3−1に係る異方導電性部材においては、弾性ソケットにおける細孔部と太孔部との段差部分がバレルに接触している。この空隙領域の有無や大きさは、貫通孔における細孔部および太孔部の弾性ソケットの厚さ方向の長さのバランスを変更することによって任意に設定可能であり、空隙領域が使用状態において消滅するようにしてもよいし、残留するようにしてもよい。
【0080】
図7は、第三の実施形態に係る異方導電性部材の他の一例(本明細書において、「実施例3−2」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
図7に示される実施例3−2に係る異方導電性部材では、上記の空隙領域は、使用状態の前の状態、つまり電極接触部および基板接触部を近接させる外力が付与されていない状態でも空隙が発生しないように構成されている。すなわち、本実施例では、バレルにおける弾性ソケットの厚さ方向の弾性ソケットの中心側の端部(以下、「バレルの電極側端部」ともいう。)は、貫通孔の太孔部と細孔部とが作る段差部分(以下、「貫通孔段差部」ともいう。)に接している。この構造の場合には、使用状態において電極接触部および基板接触部が弾性ソケットの厚さ方向に近接するように外力が付与されたときにこれらを離間させる弾性復元力が弾性ソケットに生じるように弾性ソケットの一部を圧縮する部分は、プランジャーではリング状絶縁部材であり、バレルではバレルの電極側端部である。したがって、本変形例に係るバレルは、第一の実施形態、第二の実施形態、および実施例3−1におけるバレルでは必須となっていた基板接触部の鍔部分が不要となっている。この基板接触部が鍔部分を有さないことはプローブピンの配置を狭ピッチ化することに有効である。
【0081】
図8は、図7に示される実施例3−2に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
図8に示されるように、ICの端子(はんだボール)によりプランジャーが押し込まれることによって、プランジャーの太径部はバレルの中空部内の奥に移動する。この移動に伴い貫通孔の細孔部の周辺をなす弾性ソケットが圧縮され、この圧縮された部分の弾性ソケットの弾性回復力に基づいて、プランジャーのリング状絶縁部材およびバレルの電極側端部に対して両者を離間させる力が付与される。
【0082】
図9は、第三の実施形態に係る異方導電性部材の別の他の一例(本明細書において、「実施例3−3」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
実施例3−3におけるプローブピンと貫通孔との関係は実施例3−2と同じであり、バレルの電極側端部は貫通孔段差部に接している。しかしながら、実施例3−3のバレルは、実施例3−2のバレルと異なり二重管構造を有していない。実施例3−3のバレルは、単管構造であるが、部分閉塞部を構成する部材が他の部材とは別体である。本明細書において別体とは、複数の部品が互いに相手の部材の分離を抑制する構造を有しておらず、例えば傾けるなどの状態変化によって容易に分離可能な状態にあることを意味する。本実施例において、部分閉塞部を構成する部材は樹脂系材料からなり、その他の部分は金属系材料からなる。そして、部分閉塞部を構成する部材は、貫通孔段差部分と金属系材料からなる他の部材とに挟まれることにより、他の部材に対する位置変動が制限されている。したがって、貫通孔段差部分と他の部材とを離間させれば、その間にある部分閉塞部は他の部材から容易に分離しうる状態にある。
【0083】
この構成では、実施例3−2のバレルに比べて、アウターバレルを有さない分、バレルの外径が小さい。このバレルが細いことは、貫通孔の最大内径を小さくすることができるため、プローブピンの配置を狭ピッチ化することに有効である。
【0084】
なお、実施例3−3では部分閉塞部を構成する部材は樹脂系材料からなるが、これに限定されない。例えば、部分閉塞部を構成する部材が複数の部材から構成されている場合には、この部材は金属系材料から構成されていてもよい。このような場合の具体例として、リング状の構造体がリングの中心軸を含む面で2分割された構成が挙げられる。この構成では、プランジャーの太径部と接触することによってこの部材はリング状の構造体が折れ曲がるように分離し、部分閉塞部としての機能を失って、太径部がバレルの内部に挿入されることが可能となる。一方、使用状態では、貫通孔段差部と金属系材料からなる他の部材とがこのリング状の構造体を圧縮するため、この構造体の分離は抑制される。したがって、使用状態において太径部がバレルから抜けてしまうことは十分に抑制されている。
【0085】
以下、これまで説明した第二の実施形態に係る異方導電性部材、および実施例3−1から3−3に係る異方導電性部材の変形例について列記する。
図10は第二の実施形態に係る異方導電性部材の一変形例(本明細書において、「変形例1」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
変形例1に係る異方導電性部材は、使用前の状態、すなわち弾性ソケットの貫通孔内にプローブピンが配置された状態で、電極接触部の鍔部分および基板接触部の鍔部分は弾性ソケットを圧縮している。このため、異方導電性部材の電極接触部とICの端子(はんだボール)との接触が開始された初期の段階から、プランジャーとICの端子、およびバレルと検査用基板の電極との間に接触圧力が発生し、電気的接触がより安定して好ましい。
【0086】
この変形例1の構成は、第二の実施形態に係る異方導電性部材、および実施例3−1から3−3に係る異方導電性部材のいずれにも適用することができる。
【0087】
図11は第二の実施形態に係る異方導電性部材の他の一変形例(本明細書において、「変形例2」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0088】
変形例2に係る異方導電性部材は、リング状絶縁部材とこれに対向する弾性ソケットの表面との間に接着層を有している。リング状絶縁部材が弾性ソケットの表面に接着剤などで固着されることにより、弾性ソケットが圧縮されたときにリング状絶縁部材が弾性ソケットの貫通孔内に潜り込む可能性を排除することができ、好ましい。この例では接着剤層によりリング状絶縁部材と弾性ソケットとを固着させたが、弾性ソケットがラバーからなる場合には、接着剤層に代えて、硬度の高い薄いリング状のラバーを挟んでもよい。ラバー同士の摩擦力は極めて大きいため、リング状絶縁部材の弾性ソケットに対するずれを安定的に抑制することができる。
【0089】
この変形例2の構成は、第二の実施形態に係る異方導電性部材、および実施例3−1から3−3に係る異方導電性部材のいずれにも適用することができる。
【0090】
図12は実施例3−1に係る異方導電性部材の一変形例(本明細書において、「変形例3」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0091】
変形例3に係る異方導電性部材は、プランジャーがリング状絶縁部材を有していない。このため、プランジャーの外径が小さくなっている。このプランジャーの最大外径部が細いことはプローブピンの配置を狭ピッチ化することに有効である。
この変形例3の構成は、実施例3−1から3−3に係る異方導電性部材のいずれにも適用することができる。
【0092】
図13は第二の実施形態に係る異方導電性部材の別の他の一変形例(本明細書において、「変形例4」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
変形例4に係る異方導電性部材は、インナーバレルがすべり面を構成する筒状の部材と基板接触部の一部を構成する部材とからなる。かかる構造を有することにより、筒状の部材の肉厚を薄くすることが可能となる。それゆえ、アウターバレルの外径を小さくすることができる。アウターバレルが細くなることは、貫通孔の最大内径を小さくすることができるため、プローブピンの配置を狭ピッチ化することに有効である。また、インナーバレルの製造が容易になるという利点もある。
【0093】
この変形例4の構成は、第二の実施形態に係る異方導電性部材、および実施例3−1から3−3に係る異方導電性部材のいずれにも適用することができる。
【0094】
図14は第二の実施形態に係る異方導電性部材のさらに別の一変形例(本明細書において、「変形例5」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0095】
変形例5に係る異方導電性部材は、基本構造が第二の実施形態に係る異方導電性部材と反対である。すなわち、すべり軸を備えるプランジャーが基板接触部を有し、すべり面を備えるバレルが電極接触部を有する。
【0096】
この変形例5の構成は、第二の実施形態に係る異方導電性部材、ならびに実施例3−1および3−2に係る異方導電性部材のいずれにも適用することができる。
【0097】
図15は第三の実施形態に係る異方導電性部材の一変形例(本明細書において、「変形例6」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0098】
変形例6に係る異方導電性部材は、弾性ソケットが貫通孔の細孔部と太孔部との段差部分において弾性ソケットの厚さ方向に2分割され、2分割された弾性ソケットのうち基板接触部側の部材における太孔部の電極接触部側開口に、その部材と一体に部分閉塞部が設けられている。かかる構造を有することにより、部分閉塞部を弾性ソケットと一体に製造することが可能となり、部分閉塞部の組立製造コストを削減することが可能となる。
【0099】
この変形例6の構成は、実施例3−3に係る異方導電性部材に適用することができる。
【0100】
以上の変形例1から6は、単独で適用してもよいし、複数の変形例に係る構成を組み合わせて適用してもよい。また、次に説明する第四、第五の実施形態に係る異方導電性部材においてこれらの変形例に係る構成を採用してもよい。
【0101】
図16は、本発明の第四の実施形態に係る異方導電性部材の一例(本明細書において、「実施例4−1」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0102】
図16に示される実施例4−1に係る異方導電性部材400は、弾性ソケット401における電極接触部402が設けられている側の主面401aにその一方の主面403aが対向するように設けられた、剛性材料からなる電極側板状部材403を有する。なお、本明細書において「剛性材料」とは、弾性を有する弾性ソケットに比べて剛性を有する、つまり外力が付与されても変形しにくい材料であることを意味する。この電極側板状部材403は電極接触部402に対応した配置で貫通孔404を有する。電極接触部402における弾性ソケット側と反対側の端部402aが電極側板状部材403における弾性ソケットの主面401aに対向する側と反対の主面403bから突出するように、電極接触部402を備える可動部材である第一の可動部材405は、電極側板状部材403の貫通孔404に貫装されている。
【0103】
図16に示される実施例4−1に係る異方導電性部材400は、すべり軸406を有する第一の柱状体407が第一の可動部材405の構成要素となっており、この第一の柱状体407のすべり軸406が第二の柱状体408のすべり面409に対して摺動する際に、その本来の摺動方向である弾性ソケットの厚さ方向から傾きながら摺動することがあっても、その傾きの程度は、電極側板状部材403の貫通孔404の開口内における電極接触部402のクリアランスにより制限される。このため、電極接触部402が過度に傾くことが抑制され、異方導電性部材400が使用中に破損する事態が生じにくい。この点を換言すれば、電極側板状部材403の貫通孔404に貫装された第一の可動部材405における貫通孔404の内側面と対向する外側面と、貫通孔404の内側面とのクリアランスは、第一の可動部材405の可動方向の弾性ソケットの厚さ方向に対する傾きの許容範囲に基づき設定されたものである。
【0104】
なお、測定対象に付設された電極がはんだボールであり、図16に例示されるように電極接触部402がはんだボールを内包するようなすり鉢状、具体的には円柱などの柱状体の端面をクロスカットして得られるナイフエッジ形状、をなしている場合には、はんだボールが製造上の公差の範囲で位置ずれしていても、第一の可動部材405が傾斜することにより、電極接触部402も傾斜し、電極接触部402がはんだボールを内包する状態を維持できるため好ましい。
【0105】
電極側板状部材403はある程度の剛性を有していれば、その材質は特に限定されない。電極接触部402が電極側板状部材403の貫通孔404の内壁や開口端部に接する可能性があることから、通常は絶縁性の材料で形成される。そのような材料の具体例として、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などを主成分とする樹脂系材料、ガラスやセラミックスを主成分とする無機系材料、樹脂系材料内にガラスフィラーなど無機成分が分散した複合材料が挙げられる。
【0106】
電極側板状部材403と弾性ソケット401との相対位置の関係は任意である。例えば、図16に示されるように、弾性ソケット401における電極接触部402が設けられている側の主面401aと、電極側板状部材403におけるこれに対向する側の主面で403aとが例えば接着剤によって固定されていてもよい。この場合には、電極接触部402がはんだボールなどの電極と接触して弾性ソケットの厚さ方向中心向きに移動すると、その移動に伴って電極側板状部材403も弾性ソケットの厚さ方向中心向きに移動することになる。
【0107】
あるいは、図17に示されるように、電極側板状部材403と弾性ソケット401とは弾性ソケットの厚さ方向の相対位置が変動可能とされていてもよい。この場合には、電極側板状部材403は図17では示されていない検査用基板に対して相対位置を固定しておいてもよい。その固定の方法は任意である。ここで、電極側板状部材403と弾性ソケット401との相対位置が変動しても電極接触部402と電極との接触状態が維持されるように、図17に係る第一の可動部材は、図16に係る第一の可動部材に比べて電極接触部402が突出している。このため、図18に示されるように、電極接触部402と電極410とが接触した状態で電極接触部402に弾性ソケットの厚さ方向中心向きの力が加わり、電極接触部402がその向きに移動しても、位置変動しない電極側板状部材403(電極410に対しては接近し、弾性ソケット401からは離間することになる。)が電極410と接触することは回避されている。
【0108】
図19は、本発明の第四の実施形態に係る異方導電性部材の他の一例(本明細書において、「実施例4−2」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0109】
図19に示される実施例4−2に係る異方導電性部材500は、電極側板状部材501の貫通孔502に貫装された第一の可動部材503は、弾性ソケット504における電極接触部505が設けられている側の主面504aと電極側板状部材501との間にその外側面の一部から外周方向に突出する係止突出部506を有する。そして、弾性ソケット504の厚さ方向を法線としこの係止突出部506を含む面における第一の可動部材503の断面形状の外接円の直径(本実施例においては係止突出部506の直径に等しい。)は、電極側板状部材501の貫通孔502の弾性ソケット側端部における開口径よりも大きい。なお、図19に示される実施例4−2では係止突出部506は鍔状に突出しており、第一の実施形態に係る異方導電性部材の鍔部分の機能も有する。
【0110】
かかる構成を備えることにより、電極接触部505が測定対象物に付設された電極(例えばはんだボール)と接触する前の状態において、電極側板状部材501の貫通孔502における弾性ソケット504に対向する側の周縁部507が係止突出部506を弾性ソケット503の厚さ方向中心側に押し込むことで、第一の可動部材503における電極接触部505および第二の可動部材508における基板接触部509に対して、この押し込みによる反発力を弾性ソケット504から付与することができる。その結果、基板接触部509と検査用基板510が常に一定以上の圧力で接触しているため、基板接触部509と検査用基板510の隙間に異物が入り込むことが防がれ、基板接触部509と検査用基板510の接触不良の発生が抑制される。以下、このように電極接触前の段階で弾性ソケットの厚さ方向中心向きに弾性ソケットを圧縮することをプリロードともいう。なお、第一の可動部材503の外側面における係止突出部506が設けられている位置は限定されない。また、係止突出部506が脱離止めの機能を果たしてもよい。
【0111】
図20は、本発明の第四の実施形態に係る異方導電性部材の別の一例(本明細書において、「実施例4−3」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0112】
図20に示される実施例4−3に係る異方導電性部材600は、実施例4−2に係る異方導電性部材500に対する相違点として、電極側板状部材601の貫通孔602に貫装された第一の可動部材603が電極接触部604における弾性ソケット605側と反対側の端部604aおよび係止突出部606の少なくとも一部を含むように構成された接触側部材607と他の部材608とから構成され、接触側部材607はその他の部材608とは別体である。図20に示される実施例4−3に係る異方導電性部材600では、接触側部材607と他の部材608との境界面は係止突出部606が設けられている部分に位置している。
【0113】
本実施例において、接触側部材607を構成する係止突出部606の少なくとも一部によって、接触側部材607は、弾性ソケットの厚さ方向中心向きと反対の向きへの移動が制限されるとともに、電極側板状部材601の貫通孔602から脱離しないように構成されている。
【0114】
本実施例4−3に係る異方導電性部材600において、電極側板状部材601における第一義的な機能は、別体である接触側部材607と他の部材608とが分離しないようにすることである。電極側板状部材601によって接触側部材607とその他の部材608とは異方導電性部材600が使用される前の状態においても離間することがなく、電気的に導通された状態が維持される。
【0115】
しかも、電極側板状部材601を弾性ソケット605から取り外した時に、第一の可動部材603におけるその他の部材608(当該その他の部材608は本実施例では第一の柱状体610を備えている。)は弾性ソケット605内部に埋設された状態を維持しつつ、接触側部材607を異方導電性部材600から取り外すことができる。接触側部材607の端部604aは、通常金属からなる電極と繰り返し接触を行うため、異方導電性部材600における他の構成要素に比べて摩耗しやすく、耐久性が相対的に低い。通常の異方導電性部材は、この端部604aに対応する部分である電極に接触する部分のみを交換可能な構成を有していないため、他の部分が使用可能な状態を維持していていも、この部分の耐久性によって異方導電性部材全体の寿命が決定されてしまう。これに対し、本実施例4−3に係る異方導電性部材600はこの端部604a含む接触側部材607を取り外して交換することができるため、接触側部材607以外の部分を長期にわたって使用することが可能である。
【0116】
なお、本実施例4−3に係る異方導電性部材600も、実施例4−2に係る異方導電性部材500と同じようにプリロードを行って、基板接触部609と検査用基板との間における接触不良の発生を抑制してもよい。また、実施例3−3と同様に、バレルは単管構造であってもよい。この場合、図28に示されるように、異方導電性部材が前述の変形例6に係る構成を備えていてもよい。すなわち、弾性ソケットが2分割され、2分割された弾性ソケットのうち基板接触部側の部材における太孔部の電極接触部側開口に、その部材と一体に部分閉塞部が設けられていてもよい。
【0117】
図16から20では、第一の可動部材が第一の柱状体を備える場合を具体例として示すことにより、実施例4−1から4−3について説明したが、第一の可動部材が第二の柱状体を備える構成であってもよい。
【0118】
図21から23は、実施例4−2および4−3に係る異方導電性部材において、第一の可動部材が第二の柱状体を備える場合の構成を概念的に示した、弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を示す図である。
【0119】
図21に示される異方導電性部材は実施例4−2に対応するものであって、第一の可動部材が係止突出部を有し、この係止突出部は弾性ソケット上に位置し、それゆえ、第一の可動部材は弾性ソケットからその全体が露出している。かかる構成の場合には、図17に示される異方導電性部材と対比すると明らかなように、使用前の状態における電気貫通部の長さが短くなっている。すなわち、使用状態において電極が電極側板状部材に接触してしまうことを回避することから、電極接触部の電極側板状部材からの突出長さはある程度確保する必要があるところ、図21に示される異方導電性部材では、この突出した電極接触部の内部にすべり面を有する第二の柱状体の構造を組み込んでいるため、図17に示される異方導電性部材との対比において第二の柱状体に相当する分だけ電気貫通部の全長を短縮することが実現されている。
【0120】
図22に示される異方導電性部材は実施例4−3に対応するものであって、第二の柱状体における部分閉塞部を構成する部材が、第一の可動部材における接触側部材以外の部分をなす部材(他の部材)を構成している。この場合には、部分閉塞部を構成する部材が第一の柱状体に係止された状態を維持しつつ、接触側部材を他の部材と別体とすることにより接触側部材が取り外し交換可能となる。
【0121】
なお、図21および図22に示される異方導電性部材における第二の柱状体は、いずれも弾性ソケットからその全体が露出しているが、図23に例示的に示されるように、第二の柱状体の一部、図23では具体的には部分閉塞部および係止突出部の少なくとも一部とされている、が弾性ソケットの内部に埋設されていてもよい。この場合には、使用状態においても第二の柱状体の位置ずれが発生しにくく、使用状態において第二の柱状体の係止突出部同士が接触する危険を回避することができる。
【0122】
図24は、本発明の第五の実施形態に係る異方導電性部材の一例(本明細書において、「実施例5」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0123】
図24に示される実施例5に係る異方導電性部材700は弾性ソケット701の測定装置の配線基板(検査用基板)に対する位置の固定方法に特徴を有する。すなわち、電極接触部702および基板接触部703が弾性ソケットの厚さ方向に近接するように電極接触部702に外力が付与されたとき、具体的には、電極(例えばはんだボール)が電極接触部702を弾性ソケット701の厚さ方向中心側に押し込んだときに、電極接触部702および基板接触部703の双方が弾性ソケットの厚さ方向の弾性ソケット701中心向きに変動するように、弾性ソケット701は、測定装置の配線基板(検査用基板)に対して、弾性ソケットの厚さ方向に変動可能に取り付けられている。かかる構成の場合には、弾性ソケット701の電極接触部側の主面701aと基板接触部側の主面701bとが同程度に圧縮されうる。
【0124】
弾性ソケット701を構成する材料であるゴムやエラストマーなどのラバーは、おおよそ弾性体の硬度に逆比例して、圧縮量と弾性とが比例して変化する圧縮量の範囲(以下、「線形領域」ともいう。)が決まっており、線形領域を超えて圧縮すると圧縮量と弾性は非線形に変化し、この圧縮量の範囲である非線形領域では圧縮量に対して弾性が急激に増加する。そのため、弾性ソケット701を非線形領域で使用すると、電極接触部702とこれに接触する測定対象の電極(例えばはんだボール)との間に加わる荷重が急激に増加し、最悪の場合には電極の損傷などの問題が発生する。
【0125】
本実施例5のように弾性ソケット701が両方の主面側から圧縮可能である場合には、一方の主面側からのみ圧縮可能な構成の場合に比べて、線形領域となる可動範囲を最大2倍に拡張することが実現される。このことは、一方の主面のみが圧縮される場合に比べて、本実施例5に係る異方導電性部材700は、弾性ソケット701の厚さを半分にしても同一の線形領域を確保しうることを意味する。
【0126】
なお、本実施例5に係る異方導電性部材700は基板接触部703側の主面においても弾性ソケット701は相当量圧縮されることから、基板接触部703の検査用基板に対する相対位置が不安定になることが懸念される場合もある。そこで、図25に示されるように、弾性ソケット701と測定装置の配線基板(検査用基板)704との間に剛性材料(ここでいう「剛性」とは電極側板状部材における剛性と同義である。)からなる基板側板状部材705を設けてもよい。この基板側板状部材705は基板接触部703に対応した配置で貫通孔706を有し、基板接触部703は、少なくともその一部が、基板側板状部材705の貫通孔706に挿設される。このため、基板接触部703の検査用基板704に対する位置ずれや傾きが生じにくくなる。なお、図25では基板側板状部材705は検査用基板704上に載置され、貫通孔706内には基板接触部703の端部が位置しているが、これは一例であって、基板側板状部材705は弾性ソケット701と検査用基板704との間の任意の位置に設けられてもよい。
【0127】
なお、本実施例5においてプリロードを行ってもよい。
【0128】
図26は、上記の各実施形態に係る異方導電性部材が備える第二の柱状体の具体的構造についての一例を概念的に示す断面図である。
第二の柱状体は、内部が中空の筒状をなし、内側面は第一の柱状体が備えるすべり軸と摺動接触するすべり面を備える。ここで第二の柱状体が備えるすべり面と第一の柱状体が備えるすべり軸は電気的に安定した摺動接触を得るために、金めっきなどが施されておることが望ましい。そのため、内側面にすべり面を備える第二の柱状体には、めっき液を還流するための貫通孔を設けることが望ましい。貫通孔は第二の柱状体の外側面に設けてもよいが、第二の柱状体が第二の可動部材に設けられていて、第二の柱状体に基板接触部が延設されている場合には、図26に示されるように、基板接触部の中心に貫通孔を設けてもよい。
【0129】
図27は、上記の各実施形態に係る異方導電性部材が備える第二の柱状体の具体的構造についての他の一例を概念的に示す断面図である。
第二の柱状体が第一の可動部材に設けられていて、第二の柱状体に電極接触部が延設されている場合には、電極接触部の中心に貫通孔があると微細な異物などが電気貫通部内に入り込むおそれがあるため、図27に示されるように、電極接触部における電極と接触する部分とその他の部分とは別体とし、それぞれをめっき後にカシメなどにより一体としてもよい。
【符号の説明】
【0130】
100 異方導電性部材
101 弾性ソケット
102 電気貫通部
103 第一の可動部材
104 第二の可動部材
105 電極接触部
106 基板接触部
112 すべり軸
113 すべり面
116 すべり面突出部
117 すべり軸係止部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICの検査などに使用される異方導電性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の端子を備えるICを検査するときには、ICにおける隣接する端子同士での電気的接続を抑制しつつ、ICの各端子と、ICを検査するための検査装置(ICテスター)に接続された検査用基板における各端子に対応する電極とを電気的に接続するための、異方導電性部材が使用される。
【0003】
その異方導電性部材は、全体形状としてはおおむね板状であり、その主面の法線方向の導電性は十分に高いため電気信号を通過させるが、主面の面内方向には絶縁されていて電気を通さないという特性を有する。この特性に基づき、異方導電性部材は、主面の法線方向に電流を通過させる部分を検査対象のICの端子に対応して多数備える構造を有する。本発明において、ICの端子に対応してこの主面の法線方向に電流を通過させる部分を電気貫通部という。
【0004】
電気貫通部の具体的な構造は任意であり、異方導電性部材の双方の主面から露出するようにその部材に埋設された金属などの導電性細線を備える構造、双方の主面間に充填された一群の導電性微粒子を備える構造、両端が部分的に閉塞されつつ開口された管状体とこの管状体の内部に配置されたコイルスプリングとこのコイルスプリングに付勢されながら上記の部分的な閉塞部に係止された状態で管状体から部分的に突出する二つの接触部材とからなるプローブピンなどが例示される。
【0005】
使用時における電気貫通部では、ICの端子および検査用基板と異方導電性部材における電気貫通部の主面上の端部とが、これらの間の電気的接触を安定化させるために所定の圧力で接触している。上記の電気的接触の安定化を実現する程度に接触圧力が発生するように、多くの場合において、電気貫通部には弾性復元力を利用した接触圧力発生のための構造が設けられている。
【0006】
例えば、上記の導電性細線を用いる電気貫通部や一群の導電性微粒子を用いる電気貫通部は、これらの部材が弾性体内に埋設される構造を備えることによって、これらの部材とICの端子および検査用基板との接触圧力を発生させている。また、プローブピンでは、コイルスプリングが二つの接触部材を離間するように付勢することによって、これらの接触部材とICの端子および検査用基板との接触圧力を発生させている。
【0007】
上記の例以外に、特許文献1および2に開示されるような構造の電気貫通部が例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−291430号公報
【特許文献2】特開2008−21637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電気貫通部は、電流を可能な限り損失少なく通過させることという基本要求のほかに、電気貫通部の電気的接触状態を長期にわたり安定化すること(接触安定化)、隣接する電気貫通部の間隔を可能な限り狭めること(高密度化)、および上記の基本要求を満たすための具体的な手段の一つとして異方導電性部材の主面間の距離を可能な限り狭くすること(薄肉化)も求められている。
【0010】
しかしながら、前掲の従来技術に係る電気貫通部は、これらの要請の全てを満たすことができていない。
【0011】
すなわち、導電性細線や導電性微粒子を弾性体の内部に埋め込む形式の電気貫通部は、ICの端子と接触する部分が細線の断面や微粒子の表面であり、ICの端子に対する接触状態が安定化しにくい。また、製造上の理由により、高密度化への対応にも限界がある。
【0012】
プローブピンの場合には、コイルスプリングを内在することから、高密度化と薄肉化とが原理的にトレードオフの関係にある。
【0013】
特許文献1に開示される電気貫通部は、金属板材料からなる導電部材が圧縮力の印加と解除との繰り返しを受けるため、この部材が金属疲労しやすく、接触安定化の観点で大きな問題を抱えている。
【0014】
特許文献2に開示される電気貫通部は、主面上に金属回路を有し、さらにこの金属回路とは主面上別の位置にスルーホールを有するため、高密度化を実現することは不可能である。
【0015】
かかる技術背景を鑑み、本発明は、前述の接触安定化、高密度化および薄肉化のいずれについても高いレベルで達成し得る電気貫通部を備える異方導電性部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
(1)絶縁体からなり弾性を有する板状の弾性ソケットと、前記弾性ソケット内に個別に保持されて前記弾性ソケットの厚さ方向に電流を通過させる複数の電気貫通部とを備える異方導電性部材であって、前記電気貫通部は、電気的に接続しつつ前記弾性ソケットの厚さ方向に相対位置を変動可能な第一の可動部材および第二の可動部材を備え、前記第一の可動部材は、測定対象物に付設される電極と接触するための電極接触部を前記弾性ソケットの一方の主面側に備え、前記第二の可動部材は、測定装置の配線基板と接触するための基板接触部を前記弾性ソケットの他方の主面側に備え、前記電極接触部および前記基板接触部が前記弾性ソケットの厚さ方向に近接するように外力が付与されたときにこれらを離間させる弾性復元力が前記弾性ソケットに生じるように、前記第一および第二の可動部材は、少なくとも前記電極接触部と前記基板接触部とが近接した状態では前記弾性ソケットの一部を圧縮可能に配置され、前記電気貫通部は、前記第一または第二の可動部材の一方に設けられたすべり軸とこれらの部材の他方に設けられたすべり面とが前記弾性ソケットの厚さ方向に相互に摺動する摺動接触構造を備え、当該摺動接触構造によって、前記電極接触部と前記基板接触部との距離は、これらの接触部の電気的接続を維持したまま前記弾性ソケットの厚さ方向に変動可能であり、前記摺動接触構造は前記すべり軸が前記すべり面上を前記弾性ソケットの厚さ方向に摺動する範囲を制限する可動制限機構を備え、当該可動制限機構によって、前記電極接触部の前記基板接触部に対する可動範囲は上限を有し、前記可動制限機構は前記電極接触部と前記基板接触部との間の可動範囲を制限する脱離止めを含み、当該脱離止めは、前記すべり面から前記すべり軸側に突出するすべり面突出部、および当該すべり面突出部に接触することにより前記すべり軸の一方向への摺動を停止させるすべり軸係止部からなり、前記電極接触部および前記基板接触部の一方から前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに延設された第一の柱状体を前記第一および第二の可動部材の一方が備え、さらに前記電極接触部および前記基板接触部の他方から前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに延設された第二の柱状体を前記第一および第二の可動部材の他方が備え、前記第一の柱状体は、前記弾性ソケットの厚さ方向に連続して配置される太径部と細径部とを備え、前記すべり軸は前記太径部に設けられ、前記すべり軸係止部は前記太径部と前記細径部との連結部に設けられ、前記第二の柱状体は、内部が中空であって前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側の端部に開口を有し、前記すべり面は前記中空部の内側面に設けられ、前記開口を部分的に閉塞するように前記開口の縁部から内側に突出する部分閉塞部が前記すべり面突出部を構成し、前記太径部に設けられた前記すべり軸は前記中空部内に配置されて、前記中空部の内側面に設けられた前記すべり面と接触して前記摺動接触構造を構成し、前記部分閉塞部は前記太径部との接触により変形可能とされ、前記太径部は、前記部分閉塞部の当該変形により前記部分閉塞部を超えて前記第二の柱状体の中空部内へと挿設され、前記弾性ソケットにおける前記電極接触部が設けられている側の主面にその一方の主面が対向するように設けられた、剛性材料からなる電極側板状部材を前記異方導電性部材はさらに備え、当該電極側板状部材は前記電極接触部に対応した配置で貫通孔を有し、前記電極接触部の前記弾性ソケット側と反対側の端部が前記電極側板状部材における前記弾性ソケットの主面に対向する側と反対の主面から突出するように、前記第一の可動部材は前記電極側板状部材の貫通孔に貫装されることを特徴とする異方導電性部材。
【0017】
(2)前記部分閉塞部は、異方導電性部材が使用されて前記電極接触部と前記測定対象物に付設された電極との間に発生する密着力に相当する外力が前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きと反対向きに付与された場合でも前記すべり面突出部を構成する、上記(1)に記載の異方導電性部材。
【0018】
(3)前記太径部は金属系材料から構成され、前記部分閉塞部は樹脂系材料から構成される、上記(2)に記載の異方導電性部材。
【0019】
(4)前記第一および第二の可動部材は、前記第一および第二の柱状体が前記弾性ソケットに設けられた貫通孔内に挿設され、前記貫通孔は、径が細い細孔部および径が太い太孔部を前記弾性ソケットの厚さ方向に隣接して備え、前記細孔部内に前記第一の柱状体の細径部の少なくとも一部が配置され、前記太孔部内に前記第二の柱状体の少なくとも一部が配置される、上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0020】
(5)前記第二の柱状体は前記部分閉塞部を構成する部材と他の部材とから構成され、前記部分閉塞部を構成する部材は前記他の部材と別体であって、前記部分閉塞部を構成する部材は、前記太孔部および前記細孔部によって形成される段差と前記他の部材とに挟まれることにより、前記他の部材に対する位置変動が制限される、上記(4)に記載の異方導電性部材。
【0021】
(6)前記第二の柱状体を備える前記第一および第二の可動部材の他方は、いずれも内部が中空であるとともに前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側の端部に開口を有し同軸上に配置される、第一の柱状部材および第二の柱状部材を備え、前記第一の柱状部材は、その開口の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が前記第二の柱状部材の中空内に配置され、前記部分閉塞部は前記第二の柱状部材の開口に設けられている、上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0022】
(7)前記第二の柱状部材は前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側と反対側の端部に第二の開口を有し、当該第二の開口はその縁部から内側に突出する第二の部分閉塞部を備え、前記第一の柱状部材はその開口の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が前記部分閉塞部と前記第二の部分閉塞部とを両端とする前記第二の柱状部材の中空内に配置される、上記(6)に記載の異方導電性部材。
【0023】
(8)前記第一の柱状部材は金属系材料から構成され、前記第二の柱状部材は樹脂系材料から構成される、上記(6)または(7)に記載の異方導電性部材。
【0024】
(9)前記第一の柱状体が延設される前記電極接触部および前記基板接触部の一方は、導電性材料からなり前記測定対象物に付設される電極または前記測定装置の配線基板と直接接触する中心側の部材と、前記電極接触部および前記基板接触部の一方における最も外径が大きな部分を含む絶縁体からなるリング状の部材とからなり、当該リング状の部材における中央の中空部に前記中心側の部材がはめ込まれることにより前記電極接触部および前記基板接触部の一方は構成される、上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0025】
(10)前記第二の柱状体が延設される前記電極接触部および前記基板接触部の他方は、前記弾性ソケットの主面の面内方向に突出する突出部を備え、当該突出部が前記弾性ソケットの主面に接触するように、前記第二の柱状体は前記貫通孔内に挿設される、上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0026】
(11)前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材における当該貫通孔の内側面と対向する外側面と当該貫通孔の内側面とのクリアランスは、前記第一の可動部材の可動方向の前記弾性ソケットの厚さ方向に対する傾きの許容範囲に基づき設定されたものである、上記(1)から(10)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0027】
(12)前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材は、前記弾性ソケットにおける前記電極接触部が設けられている側の主面と前記電極側板状部材との間にその外側面の一部から外周方向に突出する係止突出部を有し、前記弾性ソケットの厚さ方向を法線とし前記係止突出部を含む面における前記第一の可動部材の断面形状の外接円の直径は、前記電極側板状部材の貫通孔の前記弾性ソケット側端部における開口径よりも大きい、上記(1)から(11)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0028】
(13)前記電極接触部が前記測定対象物に付設された電極と接触する前の状態において、前記電極側板状部材の貫通孔の前記弾性ソケットに対向する側の周縁部が前記係止突出部を前記弾性ソケットの厚さ方向中心側に押し込むことにより、前記電極接触部および前記基板接触部にはこの押し込みによる反発力が前記弾性ソケットから付与されている、上記(12)に記載の異方導電性部材。
【0029】
(14)前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材は、前記電極接触部における前記弾性ソケット側と反対側の端部および前記係止突出部の少なくとも一部を含むように構成された接触側部材と他の部材とから構成され、前記接触側部材は前記その他の部材とは別体であって、前記係止突出部の少なくとも一部によって、前記接触側部材は、前記弾性ソケットの厚さ方向中心向きと反対の向きへの移動が制限されるとともに、前記電極側板状部材の貫通孔から脱離しないように構成されている、上記(12)または(13)に記載の異方導電性部材。
【0030】
(15)前記第一の可動部材が前記第一の柱状体を備える、上記(1)から(14)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0031】
(16)前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備える、上記(1)から(14)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0032】
(17)前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備え、当該第二の柱状体が備える前記部分閉塞部および前記係止突出部の少なくとも一部が前記弾性ソケット内に埋設される、上記(12)から(14)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0033】
(18)前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備えるとともに、その全体が前記弾性ソケットから露出している、上記(12)から(14)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0034】
(19)前記電極接触部および前記基板接触部が前記弾性ソケットの厚さ方向に近接するように前記電極接触部に外力が付与されたときに、前記電極接触部および前記基板接触部の双方が前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに変動するように、前記弾性ソケットは、前記測定装置の配線基板に対して、前記弾性ソケットの厚さ方向に変動可能に取り付けられるものである、上記(17)または(18)に記載の異方導電性部材。
【0035】
(20)前記弾性ソケットと前記測定装置の配線基板との間に剛性材料からなる基板側板状部材を前記異方導電性部材はさらに備え、当該基板側板状部材は前記基板接触部に対応した配置で貫通孔を有し、前記基板接触部は、少なくともその一部が、当該基板側板状部材の貫通孔に挿設される、上記(19)に記載の異方導電性部材。
【0036】
(21)前記電極接触部および前記基板接触部の他方と前記第二の柱状体とは前記弾性ソケットの厚さ方向に重複する部分を有する、上記(1)から(20)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【0037】
(22)前記弾性ソケットは、前記貫通孔における前記細孔部と前記太孔部との段差部分を含む面を分離面として、前記太孔部を有する第一の部分弾性ソケットと前記細孔部を有する第二の部分弾性ソケットとに分割され、前記第一の部分弾性ソケットは、前記太孔部における前記第二の部分弾性ソケット側の端部に、前記第一の部分弾性ソケットを構成する材料により構成されて、前記第一の部分弾性ソケットと一体に設けられた前記部分閉塞部を備える、上記(5)から(21)のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る異方導電性部材は、電気的接触状態を維持しつつ弾性ソケットの厚さ方向に摺動し得る二つの可動部材を有し、これらの可動部材が離間する方向にこれらを付勢する力は、二つの可動部材間に配置される弾性ソケットの弾性復元力によりもたらされている。したがって、接触安定化、高密度化および薄肉化を高度にバランスすることが実現されている。しかも、ICの端子と電極接触部との間に高い接触圧力が発生し、このため電極接触部がICの端子に食い込むようなことがあっても、二つの可動部材は垂直方向の可動制限機構を有するため、検査が終了してICを異方導電性部材から離間させたときにICの端子に食い込んだ電極接触部を有する可動部材が異方導電性部材から脱離してしまうような事態が十分に抑制されている。しかも、本発明に係る異方導電性部材は電極側板状部材を有するため、電極接触部の弾性ソケットの厚さ方向に対する傾きは制限される。それゆえ、電極接触部とICの端子との接触が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図2】図1に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施例3−1に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図6】本発明の実施例3−1に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施例3−2に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図8】本発明の実施例3−2に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施例3−3に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図10】本発明の変形例1に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図11】本発明の変形例2に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図12】本発明の変形例3に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図13】本発明の変形例4に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図14】本発明の変形例5に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図15】本発明の変形例6に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図16】本発明の実施例4−1に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図17】本発明の実施例4−1の具体的な他の一例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図18】図17に示される異方導電性部材の使用状態を示す、当該部材の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図19】本発明の実施例4−2に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図20】本発明の実施例4−3に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図21】本発明の実施例4−2の具体的な他の一例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図22】本発明の実施例4−3の具体的な他の一例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図23】本発明の実施例4−3の具体的な別の一例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図24】本発明の実施例5に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図25】本発明の実施例5の具体的な他の一例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図26】本発明の各実施形態に係る異方導電性部材が備える第二の柱状体の具体的構造の一例について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図27】本発明の各実施形態に係る異方導電性部材が備える第二の柱状体の具体的構造の他の一例について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【図28】本発明の実施例4−3の一変形例に係る異方導電性部材について弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る異方導電性部材を説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る異方導電性部材の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0041】
本実施形態に係る異方導電性部材100は、絶縁体からなり弾性を有する板状の弾性ソケット101と、弾性ソケット101内に個別に保持されて弾性ソケットの厚さ方向に電流を通過させる複数の電気貫通部102とを備える。弾性ソケットの材質は特に限定されない。その材質を例示すれば、シリコーンゴムやフッ素ゴム、あるいはアクリル系エラストマーなど弾性を有する絶縁材料が挙げられる。
【0042】
電気貫通部102は、電気的に接続しつつ弾性ソケットの厚さ方向に相対位置を変動可能な第一の可動部材103および第二の可動部材104を備える。第一の可動部材103は、測定対象物に付設される電極と接触するための電極接触部105を弾性ソケット101の一方の主面側に備える。第二の可動部材104は、測定装置の配線基板(検査用基板)と接触するための基板接触部106を弾性ソケット101の他方の主面側に備える。
【0043】
第一および第二の可動部材103,104は、少なくとも電極接触部105と基板接触部106とが近接した状態では弾性ソケット101の一部を圧縮可能に配置される。図1では、電極接触部105および基板接触部106における最も外径が大きな部分(以下、「鍔部分」ともいう。)107,108が、それぞれ、弾性ソケット101の主面における貫通孔109の周縁部110,111に接触するように配置されている。このため、電極接触部105と基板接触部106とが近接すると、これらの接触部の鍔部分107,108によって弾性ソケット101の主面における貫通孔109の周縁部110,111は圧縮される。このように配置されることにより、電極接触部105および基板接触部106が弾性ソケットの厚さ方向に近接するように外力が付与されたときにこれらを離間させる弾性復元力が弾性ソケット101に生じることが実現される。
【0044】
電気貫通部102は、第一または第二の可動部材103,104の一方、本実施形態では第一の可動部材103に設けられたすべり軸112と、これらの部材103,104の他方、本実施形態では第二の可動部材104に設けられたすべり面113とが弾性ソケットの厚さ方向に摺動する摺動接触構造114を備える。この摺動接触構造114によって、電極接触部105と基板接触部106との距離は、これらの接触部の電気的接続を維持したまま弾性ソケットの厚さ方向に変動可能である。
【0045】
摺動接触構造114はすべり軸112がすべり面113上を弾性ソケットの厚さ方向に摺動する範囲を制限する可動制限機構115を備える。この可動制限機構115によって、電極接触部105の基板接触部106に対する可動範囲は上限を有する。
【0046】
可動制限機構115は電極接触部105と基板接触部106との間の可動範囲を制限する脱離止めを含む。本実施形態では、可動制限機構115は脱離止めからなる。この脱離止め115は、すべり面113からすべり軸112側、本実施形態ではすべり軸112を備える第一の可動部材103の中心軸側に突出するすべり面突出部116、およびこのすべり面突出部116に接触することによりすべり軸112の一方向への摺動を停止させるすべり軸係止部117から構成される。
【0047】
本実施形態に係る電気貫通部102において、電極接触部105から弾性ソケットの厚さ方向の弾性ソケット101の中心向きに延設された第一の柱状体を第一の可動部材103が備える。以下、この第一の柱状体と電極接触部105とからなる第一の可動部材103をプランジャーともいう。プランジャー103において、弾性ソケット101の主面から突出する部分は電極接触部105に含まれる。したがって、第一の柱状体はその全体が弾性ソケット101の貫通孔109内部に配置される。本実施形態においては、電極接触部105は貫通孔109内部に部分的に埋設されており、その埋設された部分の外径は貫通孔109の孔径とほぼ同じである。この電極接触部105における部分的に埋設された部分は、プランジャー103がIC端子との接触によって軸倒れすることを防止するためのものである。
【0048】
また、基板接触部106から弾性ソケットの厚さ方向の弾性ソケット101の中心向きに延設された第二の柱状体を第二の可動部材104が備える。以下、この第二の柱状体と基板接触部106とからなる第二の可動部材104をバレルともいう。なお、本明細書において「延設」とは、基板接触部106と第二の柱状体とに弾性ソケットの厚さ方向に重複する部分を有する場合も含むものとする。すなわち、基板接触部106の機能は基板と電気的接触を維持することであるから、バレル104の外部構造によって特定されるべきものであり、一方、第二の柱状体は第一の柱状体と摺動接触構造を構成するためのものであるから、バレル104の内部構造によって特定されるべきものである。したがって、バレル104における弾性ソケットの厚さ方向の一部では、基板接触部としての外部構造を有しつつ第二の柱状体としての内部構造を有している場合もあり、この場合であっても、バレル104において、基板接触部106と第二の柱状体とは延設されているものとする。かかる構造の関係は、電極接触部に第二の柱状体が延設している場合も同様である。
【0049】
バレル104において、弾性ソケット101の主面から突出する部分は基板接触部106に含まれる。したがって、本実施形態においては、第二の柱状体はその全体が弾性ソケット101の貫通孔109内部に配置される。第二の柱状体はその内面側にすべり面113が設けられた部分であり、他の実施形態においては、第二の柱状体の一部が弾性ソケット101の貫通孔109より突出する場合もある。
【0050】
プランジャー103が備える第一の柱状体は、弾性ソケットの厚さ方向に連続して配置される太径部118と細径部119とを備え、すべり軸113は太径部118に設けられ、すべり軸係止部117は太径部118と細径部119との連結部に設けられる。
【0051】
バレル104が備える第二の柱状体は内部が中空であって弾性ソケットの厚さ方向で第一の柱状体側(すなわち、本実施形態においてはプランジャー103側)の端部に開口を有する。この開口の内部にある中空部の内側面にすべり面113は設けられ、この開口を部分的に閉塞するように開口の縁部から内側に突出する部分閉塞部がすべり面突出部116を構成する。この部分閉塞部の具体的形状は任意である。開口の縁部全周から内側に突出してリング状をなしていてもよいし、開口の縁部の一部から内側に突出していてもよい。
【0052】
太径部118に設けられたすべり軸112はバレル104の開口の内部にある中空部内に配置され、中空部の内側面に設けられたすべり面113と接触して摺動接触構造114を構成している。
【0053】
図2は、図1に示した本発明の第一の実施形態に係る異方導電性部材100が検査用基板201に取り付けられ、IC202と検査用基板201との間で圧縮され、IC202を検査可能な状態(本明細書において、「使用状態」ともいう。)を概念的に示す断面図である。
【0054】
異方導電性部材100全体が検査装置により対向するIC202と検査用基板201との間において圧縮されると、電極接触部の鍔部分203および基板接触部の鍔部分204の間で弾性ソケット205が圧縮され、双方の鍔部分203,204は弾性ソケット205から弾性復元力を受ける。この弾性復元力に基づく力が電極接触部206に伝達されることにより、電極接触部206はIC202の電極に所定の圧力で接触する。したがって、電極接触部206とIC202との電気的接触は安定化する。
【0055】
続いて、本発明の第一の実施形態に係る異方導電性部材におけるプランジャーおよびバレルの部分構造が具体的に特定された異方導電性部材を、本発明の第二の実施形態として、図3および4を用いて詳しく説明する。
【0056】
図3は、本発明の第二の実施形態に係る異方導電性部材の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
本発明の第二の実施形態に係る異方導電性部材300において、太径部301は金属系材料から構成され、部分閉塞部302は樹脂系材料から構成される。ここで、金属系材料とは、金属または合金から構成される材料であって、次に説明する樹脂系材料よりも十分に高い硬度を有することおよび導電性を有することが特性となる。一方、樹脂系材料は、樹脂を成分として有する材料であって、実質的に絶縁体であり、上記の金属系材料に比べて十分に低い弾性率を有し、それゆえ金属系材料と接触した場合には樹脂系材料が優先的に弾性変形する特性を有する。したがって、樹脂系材料は、ゴムからなる場合や、エラストマーからなる場合を含む。
【0057】
樹脂系材料を具体的に例示すれば、ナイロンやポリアセタールなど比較的軟質な樹脂が挙げられる。金属系材料を具体的に例示すれば、ステンレスや炭素鋼などの鉄系金属、あるいは黄銅、ベリリウム銅などの銅系金属が挙げられる。なお、金属系材料には摺動部分の接触抵抗を抑制するため金めっきが施されていることが望ましい。
【0058】
金属系材料および樹脂系材料はそれぞれ上記のような特性を有することから、部分閉塞部302は太径部301との接触により弾性的に変形可能である。このため、太径部301は、当初はバレル303の中空部304の外にあったものが、部分閉塞部302と接触し、部分閉塞部302の上記の変形により部分閉塞部302を超えてバレル303の中空部304内へと挿入されることにより設置されたものである。
【0059】
ここで、部分閉塞部302は、異方導電性部材300が使用されて電極接触部305と測定対象物であるICに付設された電極、具体例を挙げればはんだボールとの間に発生する密着力に相当する外力が弾性ソケットの厚さ方向の弾性ソケット306の中心向きと反対向き、つまりICが異方導電性部材300から離れる向きに付与された場合でも、すべり面突出部を構成し、プランジャー307がバレル303から分離してしまうことが抑制されている。
【0060】
バレル303は上記のように樹脂系材料で構成され、樹脂系材料は一般的には良導体ではない。一方、バレル303の中空部304の内側面にあるすべり面は、プランジャー307に対する電気的接触部であることから、良導体であることが必要である。そこで、本実施形態に係る異方導電性部材300のバレル303は、いずれも内部が中空であるとともに弾性ソケットの厚さ方向で第一の柱状体側(すなわち、本実施形態においてはプランジャー307側)の端部に開口を有し同軸上に配置される、金属系材料からなる第一の柱状部材308および樹脂系材料からなる第二の柱状部材309を備える。本実施形態では、第一の柱状部材308は一つの開口316を有し、第二の柱状部材309は弾性ソケットの厚さ方向で第一の柱状体側(すなわち、本実施形態においてはプランジャー307側)の端部に第一の開口317を有し、この第一の開口317が設けられた側と反対側の端部に第二の開口318を有している。
【0061】
第一の柱状部材308は、その開口の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が第二の柱状部材309の中空内に配置されている。すなわち、本実施形態に係るバレル303は、同軸上に配置された二重管構造を有する。以下、第一の柱状部材308をインナーバレル、第二の柱状部材309をアウターバレルともいう。そして、樹脂系材料からなる部分閉塞部302はアウターバレル309の第一の開口317に設けられている。また、インナーバレル308の開口316とは反対側の端部319はアウターバレル309の第二の開口318より突出し、基板接触部における基板と直接的に接触する部分を構成している。
【0062】
アウターバレル309は一体構造であってもよいし、複数の部材から構成されていてもよい。複数の部材から構成される場合の具体例として、アウターバレル309の中心軸を含む平面で分割することが挙げられる。
【0063】
このようにバレル303が二重管構造を有し、インナーバレル308は良導体であってアウターバレル309は絶縁体であることは、異方導電性部材の使用時に流れる電気信号が高周波信号である場合に、波形劣化が少なくなるという利点も有する。すなわち、高周波信号は表皮効果により導体の表面を流れるため、バレルの導体部分についてバレルの中心軸を含む断面で切断した断面の外側面の長さが短いことが、高周波信号の劣化を抑制する観点から好ましい。本実施形態に係るバレル303は、この外側面はインナーバレル308によって形成されるため、二重管構造を有さないバレルの上記外側面に比べて外側面の長さが短くなる。したがって、本実施形態に係るバレル303は通常の単管構造のバレルに比べて高周波信号を劣化させにくい。
【0064】
このような高周波信号における表皮効果を考慮する観点から、本実施形態に係る異方導電性部材300のプランジャー307の電極接触部305は、導電性材料、具体的には金属材料からなり電極と直接接触する中心側の部材311と、電極接触部305における最も外径が大きな部分(鍔部分)を含む絶縁体、具体的には樹脂系材料からなるリング状の部材(以下、「リング状絶縁部材」ともいう。)312とからなる。このリング状絶縁部材312における中央の中空部に中心側の部材311がはめ込まれることにより、電極接触部305は構成される。
【0065】
このような構造を有する電極接触部305は、そのような構造を有さないものに比べて、プランジャーの導体部分についてプランジャーの中心軸を含む断面で切断した断面の外側面の長さは、リング状絶縁部材312を含まない分短くなる。それゆえ、このような構造を有することにより高周波信号の劣化が抑制される。
【0066】
なお、中心側の部材311に対して弾性ソケット306を弾性ソケットの厚さ方向に圧縮するような力が付与されたときに、その力が電極接触部305の鍔部分に確実に伝達され、鍔部分において弾性ソケット306を圧縮できる構造を、中心側の部材311とリング状絶縁部材312とは有しているべきである。また、リング状絶縁部材312は段差構造を有し、弾性ソケット306における貫通孔314の内部にリング状絶縁部材312の一部分(本実施形態では段差部分)が挿入されていることが、使用状態またはその前後の使用時にプランジャーがバレルに対して傾きながら摺動することを抑制する観点から好ましい。
【0067】
本実施形態に係るアウターバレル309は前述のように二つの開口を有し、弾性ソケットの厚さ方向で第一の柱状体側(本実施形態においてはプランジャー307側)と反対側の端部に設けられた第二の開口318はその縁部から内側に突出する第二の部分閉塞部313を備える。そして、インナーバレル308は少なくともその一部、具体的には、インナーバレル308の開口316の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が部分閉塞部302と第二の部分閉塞部313とを両端とするアウターバレル309の中空内に配置される。第二の部分閉塞部313の具体的な構造は、部分閉塞部302同様任意である。
【0068】
このような構造を有することにより、アウターバレル309の内側面とインナーバレル308の外側面との間にクリアランスがあってアウターバレル309内でインナーバレル308が自由に動くことができる状態であっても、アウターバレル309からインナーバレル308が脱落することが防止される。
【0069】
なお、このような二つの部分閉塞部を有するアウターバレル309を、成形金型を用いて一体で作る場合には材料として軟質樹脂などを選定すればよい。一般的に無理抜きと言われる方法により、内側面から突出する部分があってもアウターバレル309を金型から取り出すことが可能である。そのような材料の具体例として、先に例示したナイロンやポリアセタールなどが挙げられる。
【0070】
以下、本実施形態に係る異方導電性部材の製造方法の一例について説明する。
まず、インナーバレル308は、アウターバレル309の第二の部分閉塞部313が設けられた第二の開口318側からその内部に圧入され、部分閉塞部302および第二の部分閉塞部313によってアウターバレル309内に保持される。
【0071】
次に、インナーバレル308とアウターバレル309とからなるバレル303を、弾性ソケット306における貫通孔314の一方の開口側から挿入する。すなわち、バレル303の部分閉塞部302を有する開口と反対側の端部の外側面から外側に突出する突出部である鍔部分315における弾性ソケット306の主面に対向する一方の面が、弾性ソケット306の主面における貫通孔314の周縁部に接触するように、バレル303を貫通孔314に部分的に挿入する。
【0072】
ここで、貫通孔314の内径はバレル303の筒状の外側面の直径とほぼ等しく設定されているため、貫通孔314の内側面によってバレル303は保持され、貫通孔314からバレル303は容易には抜け落ちない。
【0073】
なお、アウターバレル309が前述のように中心軸を含む平面で分割されている場合には、まず、アウターバレル309を貫通孔314に挿入し、その後インナーバレル308をアウターバレル309内に挿入してもよい。アウターバレル309は分割されているため、インナーバレル308の挿入は容易である。
【0074】
続いて、中心側の部材311とリング状絶縁部材312とを備えるプランジャー307を、弾性ソケット306における貫通孔314の他方の開口側から挿入する。プランジャー307を挿入することによってプランジャー307の太径部301がバレル303の部分閉塞部302に接したら、さらにプランジャー307を貫通孔314内に挿入するよう押し込んで、太径部301によって部分閉塞部302を変形させて、太径部301をバレル303の中空部304内に挿入する。太径部301が中空部304内に完全に挿入されると、部分閉塞部302は変形した状態から初期の状態に戻り、太径部301は中空部304内に保持される。
【0075】
こうして、プランジャー307とバレル303とからなる連結体(以下、「プローブピン」という場合もある。)は、弾性ソケット306の貫通孔314内に、容易には分離しない状態で保持される。
【0076】
図4は、本実施形態に係る異方導電性部材300の使用状態を概念的に示す断面図である。
【0077】
図5は、本発明の第三の実施形態に係る異方導電性部材の一例(本明細書において、「実施例3−1」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
図5に示される実施例3−1に係る異方導電性部材は、プローブピンが、弾性ソケットに設けられた貫通孔に部分的に挿設されることによって弾性ソケットに対して保持されている。
【0078】
実施例3−1に係る異方導電性部材のバレルの構造は第二の実施形態に係る異方導電性部材300のバレル303と同一の構造である。実施例3−1に係る異方導電性部材のプランジャーの構造も、ほとんど第二の実施形態に係る異方導電性部材300のプランジャー307と等しいが、実施例3−1に係る異方導電性部材では、第二の実施形態に係る異方導電性部材300の貫通孔314と異なり、貫通孔におけるプランジャー側の開口部を含む領域が狭まっている。つまり、実施例3−1の貫通孔は、径が細い細孔部および径が太い太孔部を弾性ソケットの厚さ方向に隣接して備え、この細孔部内にプランジャーの細径部が配置され、太孔部内にバレル303の少なくとも一部、具体的にいえば基板接触部以外の部分の少なくとも一部が配置されている。この構成に合わせて、実施例3−1のプランジャーにおけるリング状絶縁部材は、第二の実施形態のプランジャー307におけるリング状絶縁部材312に比べて、中央の中空部の直径が小さくなっている。また、この構造の場合には、使用状態またはその前後の使用時にプランジャーがバレルに対して傾きながら摺動することが貫通孔における細孔部の内側面によって抑制されるため、実施例3−1のリング状絶縁部材は段差構造を有していなくともよい。また、リング状絶縁部材の外径が小さい場合にこの部材が貫通孔の内部に入り込んでバレルとプランジャーとの摺動を阻害することも、貫通孔における細孔部の孔径が小さいことによって抑制されている。
【0079】
図6は、図5に示される実施例3−1に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
図6に示されるように、ICの端子(はんだボール)によりプランジャーが押し込まれることによって、プランジャーの太径部はバレルの中空部内の奥に移動し、これに伴い、貫通孔の太孔部の内部におけるバレルもプランジャーも存在しない空隙領域が圧縮される。図6に示される実施例3−1に係る異方導電性部材においては、弾性ソケットにおける細孔部と太孔部との段差部分がバレルに接触している。この空隙領域の有無や大きさは、貫通孔における細孔部および太孔部の弾性ソケットの厚さ方向の長さのバランスを変更することによって任意に設定可能であり、空隙領域が使用状態において消滅するようにしてもよいし、残留するようにしてもよい。
【0080】
図7は、第三の実施形態に係る異方導電性部材の他の一例(本明細書において、「実施例3−2」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
図7に示される実施例3−2に係る異方導電性部材では、上記の空隙領域は、使用状態の前の状態、つまり電極接触部および基板接触部を近接させる外力が付与されていない状態でも空隙が発生しないように構成されている。すなわち、本実施例では、バレルにおける弾性ソケットの厚さ方向の弾性ソケットの中心側の端部(以下、「バレルの電極側端部」ともいう。)は、貫通孔の太孔部と細孔部とが作る段差部分(以下、「貫通孔段差部」ともいう。)に接している。この構造の場合には、使用状態において電極接触部および基板接触部が弾性ソケットの厚さ方向に近接するように外力が付与されたときにこれらを離間させる弾性復元力が弾性ソケットに生じるように弾性ソケットの一部を圧縮する部分は、プランジャーではリング状絶縁部材であり、バレルではバレルの電極側端部である。したがって、本変形例に係るバレルは、第一の実施形態、第二の実施形態、および実施例3−1におけるバレルでは必須となっていた基板接触部の鍔部分が不要となっている。この基板接触部が鍔部分を有さないことはプローブピンの配置を狭ピッチ化することに有効である。
【0081】
図8は、図7に示される実施例3−2に係る異方導電性部材の使用状態を概念的に示す断面図である。
図8に示されるように、ICの端子(はんだボール)によりプランジャーが押し込まれることによって、プランジャーの太径部はバレルの中空部内の奥に移動する。この移動に伴い貫通孔の細孔部の周辺をなす弾性ソケットが圧縮され、この圧縮された部分の弾性ソケットの弾性回復力に基づいて、プランジャーのリング状絶縁部材およびバレルの電極側端部に対して両者を離間させる力が付与される。
【0082】
図9は、第三の実施形態に係る異方導電性部材の別の他の一例(本明細書において、「実施例3−3」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
実施例3−3におけるプローブピンと貫通孔との関係は実施例3−2と同じであり、バレルの電極側端部は貫通孔段差部に接している。しかしながら、実施例3−3のバレルは、実施例3−2のバレルと異なり二重管構造を有していない。実施例3−3のバレルは、単管構造であるが、部分閉塞部を構成する部材が他の部材とは別体である。本明細書において別体とは、複数の部品が互いに相手の部材の分離を抑制する構造を有しておらず、例えば傾けるなどの状態変化によって容易に分離可能な状態にあることを意味する。本実施例において、部分閉塞部を構成する部材は樹脂系材料からなり、その他の部分は金属系材料からなる。そして、部分閉塞部を構成する部材は、貫通孔段差部分と金属系材料からなる他の部材とに挟まれることにより、他の部材に対する位置変動が制限されている。したがって、貫通孔段差部分と他の部材とを離間させれば、その間にある部分閉塞部は他の部材から容易に分離しうる状態にある。
【0083】
この構成では、実施例3−2のバレルに比べて、アウターバレルを有さない分、バレルの外径が小さい。このバレルが細いことは、貫通孔の最大内径を小さくすることができるため、プローブピンの配置を狭ピッチ化することに有効である。
【0084】
なお、実施例3−3では部分閉塞部を構成する部材は樹脂系材料からなるが、これに限定されない。例えば、部分閉塞部を構成する部材が複数の部材から構成されている場合には、この部材は金属系材料から構成されていてもよい。このような場合の具体例として、リング状の構造体がリングの中心軸を含む面で2分割された構成が挙げられる。この構成では、プランジャーの太径部と接触することによってこの部材はリング状の構造体が折れ曲がるように分離し、部分閉塞部としての機能を失って、太径部がバレルの内部に挿入されることが可能となる。一方、使用状態では、貫通孔段差部と金属系材料からなる他の部材とがこのリング状の構造体を圧縮するため、この構造体の分離は抑制される。したがって、使用状態において太径部がバレルから抜けてしまうことは十分に抑制されている。
【0085】
以下、これまで説明した第二の実施形態に係る異方導電性部材、および実施例3−1から3−3に係る異方導電性部材の変形例について列記する。
図10は第二の実施形態に係る異方導電性部材の一変形例(本明細書において、「変形例1」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
変形例1に係る異方導電性部材は、使用前の状態、すなわち弾性ソケットの貫通孔内にプローブピンが配置された状態で、電極接触部の鍔部分および基板接触部の鍔部分は弾性ソケットを圧縮している。このため、異方導電性部材の電極接触部とICの端子(はんだボール)との接触が開始された初期の段階から、プランジャーとICの端子、およびバレルと検査用基板の電極との間に接触圧力が発生し、電気的接触がより安定して好ましい。
【0086】
この変形例1の構成は、第二の実施形態に係る異方導電性部材、および実施例3−1から3−3に係る異方導電性部材のいずれにも適用することができる。
【0087】
図11は第二の実施形態に係る異方導電性部材の他の一変形例(本明細書において、「変形例2」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0088】
変形例2に係る異方導電性部材は、リング状絶縁部材とこれに対向する弾性ソケットの表面との間に接着層を有している。リング状絶縁部材が弾性ソケットの表面に接着剤などで固着されることにより、弾性ソケットが圧縮されたときにリング状絶縁部材が弾性ソケットの貫通孔内に潜り込む可能性を排除することができ、好ましい。この例では接着剤層によりリング状絶縁部材と弾性ソケットとを固着させたが、弾性ソケットがラバーからなる場合には、接着剤層に代えて、硬度の高い薄いリング状のラバーを挟んでもよい。ラバー同士の摩擦力は極めて大きいため、リング状絶縁部材の弾性ソケットに対するずれを安定的に抑制することができる。
【0089】
この変形例2の構成は、第二の実施形態に係る異方導電性部材、および実施例3−1から3−3に係る異方導電性部材のいずれにも適用することができる。
【0090】
図12は実施例3−1に係る異方導電性部材の一変形例(本明細書において、「変形例3」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0091】
変形例3に係る異方導電性部材は、プランジャーがリング状絶縁部材を有していない。このため、プランジャーの外径が小さくなっている。このプランジャーの最大外径部が細いことはプローブピンの配置を狭ピッチ化することに有効である。
この変形例3の構成は、実施例3−1から3−3に係る異方導電性部材のいずれにも適用することができる。
【0092】
図13は第二の実施形態に係る異方導電性部材の別の他の一変形例(本明細書において、「変形例4」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
変形例4に係る異方導電性部材は、インナーバレルがすべり面を構成する筒状の部材と基板接触部の一部を構成する部材とからなる。かかる構造を有することにより、筒状の部材の肉厚を薄くすることが可能となる。それゆえ、アウターバレルの外径を小さくすることができる。アウターバレルが細くなることは、貫通孔の最大内径を小さくすることができるため、プローブピンの配置を狭ピッチ化することに有効である。また、インナーバレルの製造が容易になるという利点もある。
【0093】
この変形例4の構成は、第二の実施形態に係る異方導電性部材、および実施例3−1から3−3に係る異方導電性部材のいずれにも適用することができる。
【0094】
図14は第二の実施形態に係る異方導電性部材のさらに別の一変形例(本明細書において、「変形例5」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0095】
変形例5に係る異方導電性部材は、基本構造が第二の実施形態に係る異方導電性部材と反対である。すなわち、すべり軸を備えるプランジャーが基板接触部を有し、すべり面を備えるバレルが電極接触部を有する。
【0096】
この変形例5の構成は、第二の実施形態に係る異方導電性部材、ならびに実施例3−1および3−2に係る異方導電性部材のいずれにも適用することができる。
【0097】
図15は第三の実施形態に係る異方導電性部材の一変形例(本明細書において、「変形例6」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0098】
変形例6に係る異方導電性部材は、弾性ソケットが貫通孔の細孔部と太孔部との段差部分において弾性ソケットの厚さ方向に2分割され、2分割された弾性ソケットのうち基板接触部側の部材における太孔部の電極接触部側開口に、その部材と一体に部分閉塞部が設けられている。かかる構造を有することにより、部分閉塞部を弾性ソケットと一体に製造することが可能となり、部分閉塞部の組立製造コストを削減することが可能となる。
【0099】
この変形例6の構成は、実施例3−3に係る異方導電性部材に適用することができる。
【0100】
以上の変形例1から6は、単独で適用してもよいし、複数の変形例に係る構成を組み合わせて適用してもよい。また、次に説明する第四、第五の実施形態に係る異方導電性部材においてこれらの変形例に係る構成を採用してもよい。
【0101】
図16は、本発明の第四の実施形態に係る異方導電性部材の一例(本明細書において、「実施例4−1」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0102】
図16に示される実施例4−1に係る異方導電性部材400は、弾性ソケット401における電極接触部402が設けられている側の主面401aにその一方の主面403aが対向するように設けられた、剛性材料からなる電極側板状部材403を有する。なお、本明細書において「剛性材料」とは、弾性を有する弾性ソケットに比べて剛性を有する、つまり外力が付与されても変形しにくい材料であることを意味する。この電極側板状部材403は電極接触部402に対応した配置で貫通孔404を有する。電極接触部402における弾性ソケット側と反対側の端部402aが電極側板状部材403における弾性ソケットの主面401aに対向する側と反対の主面403bから突出するように、電極接触部402を備える可動部材である第一の可動部材405は、電極側板状部材403の貫通孔404に貫装されている。
【0103】
図16に示される実施例4−1に係る異方導電性部材400は、すべり軸406を有する第一の柱状体407が第一の可動部材405の構成要素となっており、この第一の柱状体407のすべり軸406が第二の柱状体408のすべり面409に対して摺動する際に、その本来の摺動方向である弾性ソケットの厚さ方向から傾きながら摺動することがあっても、その傾きの程度は、電極側板状部材403の貫通孔404の開口内における電極接触部402のクリアランスにより制限される。このため、電極接触部402が過度に傾くことが抑制され、異方導電性部材400が使用中に破損する事態が生じにくい。この点を換言すれば、電極側板状部材403の貫通孔404に貫装された第一の可動部材405における貫通孔404の内側面と対向する外側面と、貫通孔404の内側面とのクリアランスは、第一の可動部材405の可動方向の弾性ソケットの厚さ方向に対する傾きの許容範囲に基づき設定されたものである。
【0104】
なお、測定対象に付設された電極がはんだボールであり、図16に例示されるように電極接触部402がはんだボールを内包するようなすり鉢状、具体的には円柱などの柱状体の端面をクロスカットして得られるナイフエッジ形状、をなしている場合には、はんだボールが製造上の公差の範囲で位置ずれしていても、第一の可動部材405が傾斜することにより、電極接触部402も傾斜し、電極接触部402がはんだボールを内包する状態を維持できるため好ましい。
【0105】
電極側板状部材403はある程度の剛性を有していれば、その材質は特に限定されない。電極接触部402が電極側板状部材403の貫通孔404の内壁や開口端部に接する可能性があることから、通常は絶縁性の材料で形成される。そのような材料の具体例として、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などを主成分とする樹脂系材料、ガラスやセラミックスを主成分とする無機系材料、樹脂系材料内にガラスフィラーなど無機成分が分散した複合材料が挙げられる。
【0106】
電極側板状部材403と弾性ソケット401との相対位置の関係は任意である。例えば、図16に示されるように、弾性ソケット401における電極接触部402が設けられている側の主面401aと、電極側板状部材403におけるこれに対向する側の主面で403aとが例えば接着剤によって固定されていてもよい。この場合には、電極接触部402がはんだボールなどの電極と接触して弾性ソケットの厚さ方向中心向きに移動すると、その移動に伴って電極側板状部材403も弾性ソケットの厚さ方向中心向きに移動することになる。
【0107】
あるいは、図17に示されるように、電極側板状部材403と弾性ソケット401とは弾性ソケットの厚さ方向の相対位置が変動可能とされていてもよい。この場合には、電極側板状部材403は図17では示されていない検査用基板に対して相対位置を固定しておいてもよい。その固定の方法は任意である。ここで、電極側板状部材403と弾性ソケット401との相対位置が変動しても電極接触部402と電極との接触状態が維持されるように、図17に係る第一の可動部材は、図16に係る第一の可動部材に比べて電極接触部402が突出している。このため、図18に示されるように、電極接触部402と電極410とが接触した状態で電極接触部402に弾性ソケットの厚さ方向中心向きの力が加わり、電極接触部402がその向きに移動しても、位置変動しない電極側板状部材403(電極410に対しては接近し、弾性ソケット401からは離間することになる。)が電極410と接触することは回避されている。
【0108】
図19は、本発明の第四の実施形態に係る異方導電性部材の他の一例(本明細書において、「実施例4−2」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0109】
図19に示される実施例4−2に係る異方導電性部材500は、電極側板状部材501の貫通孔502に貫装された第一の可動部材503は、弾性ソケット504における電極接触部505が設けられている側の主面504aと電極側板状部材501との間にその外側面の一部から外周方向に突出する係止突出部506を有する。そして、弾性ソケット504の厚さ方向を法線としこの係止突出部506を含む面における第一の可動部材503の断面形状の外接円の直径(本実施例においては係止突出部506の直径に等しい。)は、電極側板状部材501の貫通孔502の弾性ソケット側端部における開口径よりも大きい。なお、図19に示される実施例4−2では係止突出部506は鍔状に突出しており、第一の実施形態に係る異方導電性部材の鍔部分の機能も有する。
【0110】
かかる構成を備えることにより、電極接触部505が測定対象物に付設された電極(例えばはんだボール)と接触する前の状態において、電極側板状部材501の貫通孔502における弾性ソケット504に対向する側の周縁部507が係止突出部506を弾性ソケット503の厚さ方向中心側に押し込むことで、第一の可動部材503における電極接触部505および第二の可動部材508における基板接触部509に対して、この押し込みによる反発力を弾性ソケット504から付与することができる。その結果、基板接触部509と検査用基板510が常に一定以上の圧力で接触しているため、基板接触部509と検査用基板510の隙間に異物が入り込むことが防がれ、基板接触部509と検査用基板510の接触不良の発生が抑制される。以下、このように電極接触前の段階で弾性ソケットの厚さ方向中心向きに弾性ソケットを圧縮することをプリロードともいう。なお、第一の可動部材503の外側面における係止突出部506が設けられている位置は限定されない。また、係止突出部506が脱離止めの機能を果たしてもよい。
【0111】
図20は、本発明の第四の実施形態に係る異方導電性部材の別の一例(本明細書において、「実施例4−3」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0112】
図20に示される実施例4−3に係る異方導電性部材600は、実施例4−2に係る異方導電性部材500に対する相違点として、電極側板状部材601の貫通孔602に貫装された第一の可動部材603が電極接触部604における弾性ソケット605側と反対側の端部604aおよび係止突出部606の少なくとも一部を含むように構成された接触側部材607と他の部材608とから構成され、接触側部材607はその他の部材608とは別体である。図20に示される実施例4−3に係る異方導電性部材600では、接触側部材607と他の部材608との境界面は係止突出部606が設けられている部分に位置している。
【0113】
本実施例において、接触側部材607を構成する係止突出部606の少なくとも一部によって、接触側部材607は、弾性ソケットの厚さ方向中心向きと反対の向きへの移動が制限されるとともに、電極側板状部材601の貫通孔602から脱離しないように構成されている。
【0114】
本実施例4−3に係る異方導電性部材600において、電極側板状部材601における第一義的な機能は、別体である接触側部材607と他の部材608とが分離しないようにすることである。電極側板状部材601によって接触側部材607とその他の部材608とは異方導電性部材600が使用される前の状態においても離間することがなく、電気的に導通された状態が維持される。
【0115】
しかも、電極側板状部材601を弾性ソケット605から取り外した時に、第一の可動部材603におけるその他の部材608(当該その他の部材608は本実施例では第一の柱状体610を備えている。)は弾性ソケット605内部に埋設された状態を維持しつつ、接触側部材607を異方導電性部材600から取り外すことができる。接触側部材607の端部604aは、通常金属からなる電極と繰り返し接触を行うため、異方導電性部材600における他の構成要素に比べて摩耗しやすく、耐久性が相対的に低い。通常の異方導電性部材は、この端部604aに対応する部分である電極に接触する部分のみを交換可能な構成を有していないため、他の部分が使用可能な状態を維持していていも、この部分の耐久性によって異方導電性部材全体の寿命が決定されてしまう。これに対し、本実施例4−3に係る異方導電性部材600はこの端部604a含む接触側部材607を取り外して交換することができるため、接触側部材607以外の部分を長期にわたって使用することが可能である。
【0116】
なお、本実施例4−3に係る異方導電性部材600も、実施例4−2に係る異方導電性部材500と同じようにプリロードを行って、基板接触部609と検査用基板との間における接触不良の発生を抑制してもよい。また、実施例3−3と同様に、バレルは単管構造であってもよい。この場合、図28に示されるように、異方導電性部材が前述の変形例6に係る構成を備えていてもよい。すなわち、弾性ソケットが2分割され、2分割された弾性ソケットのうち基板接触部側の部材における太孔部の電極接触部側開口に、その部材と一体に部分閉塞部が設けられていてもよい。
【0117】
図16から20では、第一の可動部材が第一の柱状体を備える場合を具体例として示すことにより、実施例4−1から4−3について説明したが、第一の可動部材が第二の柱状体を備える構成であってもよい。
【0118】
図21から23は、実施例4−2および4−3に係る異方導電性部材において、第一の可動部材が第二の柱状体を備える場合の構成を概念的に示した、弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を示す図である。
【0119】
図21に示される異方導電性部材は実施例4−2に対応するものであって、第一の可動部材が係止突出部を有し、この係止突出部は弾性ソケット上に位置し、それゆえ、第一の可動部材は弾性ソケットからその全体が露出している。かかる構成の場合には、図17に示される異方導電性部材と対比すると明らかなように、使用前の状態における電気貫通部の長さが短くなっている。すなわち、使用状態において電極が電極側板状部材に接触してしまうことを回避することから、電極接触部の電極側板状部材からの突出長さはある程度確保する必要があるところ、図21に示される異方導電性部材では、この突出した電極接触部の内部にすべり面を有する第二の柱状体の構造を組み込んでいるため、図17に示される異方導電性部材との対比において第二の柱状体に相当する分だけ電気貫通部の全長を短縮することが実現されている。
【0120】
図22に示される異方導電性部材は実施例4−3に対応するものであって、第二の柱状体における部分閉塞部を構成する部材が、第一の可動部材における接触側部材以外の部分をなす部材(他の部材)を構成している。この場合には、部分閉塞部を構成する部材が第一の柱状体に係止された状態を維持しつつ、接触側部材を他の部材と別体とすることにより接触側部材が取り外し交換可能となる。
【0121】
なお、図21および図22に示される異方導電性部材における第二の柱状体は、いずれも弾性ソケットからその全体が露出しているが、図23に例示的に示されるように、第二の柱状体の一部、図23では具体的には部分閉塞部および係止突出部の少なくとも一部とされている、が弾性ソケットの内部に埋設されていてもよい。この場合には、使用状態においても第二の柱状体の位置ずれが発生しにくく、使用状態において第二の柱状体の係止突出部同士が接触する危険を回避することができる。
【0122】
図24は、本発明の第五の実施形態に係る異方導電性部材の一例(本明細書において、「実施例5」ともいう。)の弾性ソケットの厚さ方向の断面の一部を概念的に示す図である。
【0123】
図24に示される実施例5に係る異方導電性部材700は弾性ソケット701の測定装置の配線基板(検査用基板)に対する位置の固定方法に特徴を有する。すなわち、電極接触部702および基板接触部703が弾性ソケットの厚さ方向に近接するように電極接触部702に外力が付与されたとき、具体的には、電極(例えばはんだボール)が電極接触部702を弾性ソケット701の厚さ方向中心側に押し込んだときに、電極接触部702および基板接触部703の双方が弾性ソケットの厚さ方向の弾性ソケット701中心向きに変動するように、弾性ソケット701は、測定装置の配線基板(検査用基板)に対して、弾性ソケットの厚さ方向に変動可能に取り付けられている。かかる構成の場合には、弾性ソケット701の電極接触部側の主面701aと基板接触部側の主面701bとが同程度に圧縮されうる。
【0124】
弾性ソケット701を構成する材料であるゴムやエラストマーなどのラバーは、おおよそ弾性体の硬度に逆比例して、圧縮量と弾性とが比例して変化する圧縮量の範囲(以下、「線形領域」ともいう。)が決まっており、線形領域を超えて圧縮すると圧縮量と弾性は非線形に変化し、この圧縮量の範囲である非線形領域では圧縮量に対して弾性が急激に増加する。そのため、弾性ソケット701を非線形領域で使用すると、電極接触部702とこれに接触する測定対象の電極(例えばはんだボール)との間に加わる荷重が急激に増加し、最悪の場合には電極の損傷などの問題が発生する。
【0125】
本実施例5のように弾性ソケット701が両方の主面側から圧縮可能である場合には、一方の主面側からのみ圧縮可能な構成の場合に比べて、線形領域となる可動範囲を最大2倍に拡張することが実現される。このことは、一方の主面のみが圧縮される場合に比べて、本実施例5に係る異方導電性部材700は、弾性ソケット701の厚さを半分にしても同一の線形領域を確保しうることを意味する。
【0126】
なお、本実施例5に係る異方導電性部材700は基板接触部703側の主面においても弾性ソケット701は相当量圧縮されることから、基板接触部703の検査用基板に対する相対位置が不安定になることが懸念される場合もある。そこで、図25に示されるように、弾性ソケット701と測定装置の配線基板(検査用基板)704との間に剛性材料(ここでいう「剛性」とは電極側板状部材における剛性と同義である。)からなる基板側板状部材705を設けてもよい。この基板側板状部材705は基板接触部703に対応した配置で貫通孔706を有し、基板接触部703は、少なくともその一部が、基板側板状部材705の貫通孔706に挿設される。このため、基板接触部703の検査用基板704に対する位置ずれや傾きが生じにくくなる。なお、図25では基板側板状部材705は検査用基板704上に載置され、貫通孔706内には基板接触部703の端部が位置しているが、これは一例であって、基板側板状部材705は弾性ソケット701と検査用基板704との間の任意の位置に設けられてもよい。
【0127】
なお、本実施例5においてプリロードを行ってもよい。
【0128】
図26は、上記の各実施形態に係る異方導電性部材が備える第二の柱状体の具体的構造についての一例を概念的に示す断面図である。
第二の柱状体は、内部が中空の筒状をなし、内側面は第一の柱状体が備えるすべり軸と摺動接触するすべり面を備える。ここで第二の柱状体が備えるすべり面と第一の柱状体が備えるすべり軸は電気的に安定した摺動接触を得るために、金めっきなどが施されておることが望ましい。そのため、内側面にすべり面を備える第二の柱状体には、めっき液を還流するための貫通孔を設けることが望ましい。貫通孔は第二の柱状体の外側面に設けてもよいが、第二の柱状体が第二の可動部材に設けられていて、第二の柱状体に基板接触部が延設されている場合には、図26に示されるように、基板接触部の中心に貫通孔を設けてもよい。
【0129】
図27は、上記の各実施形態に係る異方導電性部材が備える第二の柱状体の具体的構造についての他の一例を概念的に示す断面図である。
第二の柱状体が第一の可動部材に設けられていて、第二の柱状体に電極接触部が延設されている場合には、電極接触部の中心に貫通孔があると微細な異物などが電気貫通部内に入り込むおそれがあるため、図27に示されるように、電極接触部における電極と接触する部分とその他の部分とは別体とし、それぞれをめっき後にカシメなどにより一体としてもよい。
【符号の説明】
【0130】
100 異方導電性部材
101 弾性ソケット
102 電気貫通部
103 第一の可動部材
104 第二の可動部材
105 電極接触部
106 基板接触部
112 すべり軸
113 すべり面
116 すべり面突出部
117 すべり軸係止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体からなり弾性を有する板状の弾性ソケットと、前記弾性ソケット内に個別に保持されて前記弾性ソケットの厚さ方向に電流を通過させる複数の電気貫通部とを備える異方導電性部材であって、
前記電気貫通部は、電気的に接続しつつ前記弾性ソケットの厚さ方向に相対位置を変動可能な第一の可動部材および第二の可動部材を備え、
前記第一の可動部材は、測定対象物に付設される電極と接触するための電極接触部を前記弾性ソケットの一方の主面側に備え、
前記第二の可動部材は、測定装置の配線基板と接触するための基板接触部を前記弾性ソケットの他方の主面側に備え、
前記電極接触部および前記基板接触部が前記弾性ソケットの厚さ方向に近接するように外力が付与されたときにこれらを離間させる弾性復元力が前記弾性ソケットに生じるように、前記第一および第二の可動部材は、少なくとも前記電極接触部と前記基板接触部とが近接した状態では前記弾性ソケットの一部を圧縮可能に配置され、
前記電気貫通部は、前記第一または第二の可動部材の一方に設けられたすべり軸とこれらの部材の他方に設けられたすべり面とが前記弾性ソケットの厚さ方向に相互に摺動する摺動接触構造を備え、当該摺動接触構造によって、前記電極接触部と前記基板接触部との距離は、これらの接触部の電気的接続を維持したまま前記弾性ソケットの厚さ方向に変動可能であり、
前記摺動接触構造は前記すべり軸が前記すべり面上を前記弾性ソケットの厚さ方向に摺動する範囲を制限する可動制限機構を備え、当該可動制限機構によって、前記電極接触部の前記基板接触部に対する可動範囲は上限を有し、
前記可動制限機構は前記電極接触部と前記基板接触部との間の可動範囲を制限する脱離止めを含み、当該脱離止めは、前記すべり面から前記すべり軸側に突出するすべり面突出部、および当該すべり面突出部に接触することにより前記すべり軸の一方向への摺動を停止させるすべり軸係止部からなり、
前記電極接触部および前記基板接触部の一方から前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに延設された第一の柱状体を前記第一および第二の可動部材の一方が備え、さらに前記電極接触部および前記基板接触部の他方から前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに延設された第二の柱状体を前記第一および第二の可動部材の他方が備え、
前記第一の柱状体は、前記弾性ソケットの厚さ方向に連続して配置される太径部と細径部とを備え、前記すべり軸は前記太径部に設けられ、前記すべり軸係止部は前記太径部と前記細径部との連結部に設けられ、
前記第二の柱状体は、内部が中空であって前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側の端部に開口を有し、前記すべり面は前記中空部の内側面に設けられ、前記開口を部分的に閉塞するように前記開口の縁部から内側に突出する部分閉塞部が前記すべり面突出部を構成し、
前記太径部に設けられた前記すべり軸は前記中空部内に配置されて、前記中空部の内側面に設けられた前記すべり面と接触して前記摺動接触構造を構成し、
前記部分閉塞部は前記太径部との接触により変形可能とされ、前記太径部は、前記部分閉塞部の当該変形により前記部分閉塞部を超えて前記第二の柱状体の中空部内へと挿設され、
前記弾性ソケットにおける前記電極接触部が設けられている側の主面にその一方の主面が対向するように設けられた、剛性材料からなる電極側板状部材を前記異方導電性部材はさらに備え、当該電極側板状部材は前記電極接触部に対応した配置で貫通孔を有し、前記電極接触部の前記弾性ソケット側と反対側の端部が前記電極側板状部材における前記弾性ソケットの主面に対向する側と反対の主面から突出するように、前記第一の可動部材は前記電極側板状部材の貫通孔に貫装されることを特徴とする異方導電性部材。
【請求項2】
前記部分閉塞部は、異方導電性部材が使用されて前記電極接触部と前記測定対象物に付設された電極との間に発生する密着力に相当する外力が前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きと反対向きに付与された場合でも前記すべり面突出部を構成する、請求項1に記載の異方導電性部材。
【請求項3】
前記太径部は金属系材料から構成され、前記部分閉塞部は樹脂系材料から構成される、請求項2に記載の異方導電性部材。
【請求項4】
前記第一および第二の可動部材は、前記第一および第二の柱状体が前記弾性ソケットに設けられた貫通孔内に挿設され、
前記貫通孔は、径が細い細孔部および径が太い太孔部を前記弾性ソケットの厚さ方向に隣接して備え、
前記細孔部内に前記第一の柱状体の細径部の少なくとも一部が配置され、前記太孔部内に前記第二の柱状体の少なくとも一部が配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項5】
前記第二の柱状体は前記部分閉塞部を構成する部材と他の部材とから構成され、前記部分閉塞部を構成する部材は前記他の部材と別体であって、前記部分閉塞部を構成する部材は、前記太孔部および前記細孔部によって形成される段差と前記他の部材とに挟まれることにより、前記他の部材に対する位置変動が制限される、請求項4に記載の異方導電性部材。
【請求項6】
前記第二の柱状体を備える前記第一および第二の可動部材の他方は、いずれも内部が中空であるとともに前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側の端部に開口を有し同軸上に配置される、第一の柱状部材および第二の柱状部材を備え、
前記第一の柱状部材は、その開口の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が前記第二の柱状部材の中空内に配置され、
前記部分閉塞部は前記第二の柱状部材の開口に設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項7】
前記第二の柱状部材は前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側と反対側の端部に第二の開口を有し、当該第二の開口はその縁部から内側に突出する第二の部分閉塞部を備え、前記第一の柱状部材はその開口の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が前記部分閉塞部と前記第二の部分閉塞部とを両端とする前記第二の柱状部材の中空内に配置される、請求項6に記載の異方導電性部材。
【請求項8】
前記第一の柱状部材は金属系材料から構成され、前記第二の柱状部材は樹脂系材料から構成される、請求項6または7に記載の異方導電性部材。
【請求項9】
前記第一の柱状体が延設される前記電極接触部および前記基板接触部の一方は、導電性材料からなり前記測定対象物に付設される電極または前記測定装置の配線基板と直接接触する中心側の部材と、前記電極接触部および前記基板接触部の一方における最も外径が大きな部分を含む絶縁体からなるリング状の部材とからなり、当該リング状の部材における中央の中空部に前記中心側の部材がはめ込まれることにより前記電極接触部および前記基板接触部の一方は構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項10】
前記第二の柱状体が延設される前記電極接触部および前記基板接触部の他方は、前記弾性ソケットの主面の面内方向に突出する突出部を備え、当該突出部が前記弾性ソケットの主面に接触するように、前記第二の柱状体は前記貫通孔内に挿設される、請求項1から9のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項11】
前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材における当該貫通孔の内側面と対向する外側面と当該貫通孔の内側面とのクリアランスは、前記第一の可動部材の可動方向の前記弾性ソケットの厚さ方向に対する傾きの許容範囲に基づき設定されたものである、請求項1から10のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項12】
前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材は、前記弾性ソケットにおける前記電極接触部が設けられている側の主面と前記電極側板状部材との間にその外側面の一部から外周方向に突出する係止突出部を有し、前記弾性ソケットの厚さ方向を法線とし前記係止突出部を含む面における前記第一の可動部材の断面形状の外接円の直径は、前記電極側板状部材の貫通孔の前記弾性ソケット側端部における開口径よりも大きい、請求項1から11のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項13】
前記電極接触部が前記測定対象物に付設された電極と接触する前の状態において、前記電極側板状部材の貫通孔の前記弾性ソケットに対向する側の周縁部が前記係止突出部を前記弾性ソケットの厚さ方向中心側に押し込むことにより、前記電極接触部および前記基板接触部にはこの押し込みによる反発力が前記弾性ソケットから付与されている、請求項12に記載の異方導電性部材。
【請求項14】
前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材は、前記電極接触部における前記弾性ソケット側と反対側の端部および前記係止突出部の少なくとも一部を含むように構成された接触側部材と他の部材とから構成され、前記接触側部材は前記その他の部材とは別体であって、前記係止突出部の少なくとも一部によって、前記接触側部材は、前記弾性ソケットの厚さ方向中心向きと反対の向きへの移動が制限されるとともに、前記電極側板状部材の貫通孔から脱離しないように構成されている、請求項12または13に記載の異方導電性部材。
【請求項15】
前記第一の可動部材が前記第一の柱状体を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項16】
前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項17】
前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備え、当該第二の柱状体が備える前記部分閉塞部および前記係止突出部の少なくとも一部が前記弾性ソケット内に埋設される、請求項12から14のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項18】
前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備えるとともに、その全体が前記弾性ソケットから露出している、請求項12から14のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項19】
前記電極接触部および前記基板接触部が前記弾性ソケットの厚さ方向に近接するように前記電極接触部に外力が付与されたときに、前記電極接触部および前記基板接触部の双方が前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに変動するように、前記弾性ソケットは、前記測定装置の配線基板に対して、前記弾性ソケットの厚さ方向に変動可能に取り付けられるものである、請求項17または18に記載の異方導電性部材。
【請求項20】
前記弾性ソケットと前記測定装置の配線基板との間に剛性材料からなる基板側板状部材を前記異方導電性部材はさらに備え、当該基板側板状部材は前記基板接触部に対応した配置で貫通孔を有し、前記基板接触部は、少なくともその一部が、当該基板側板状部材の貫通孔に挿設される、請求項19に記載の異方導電性部材。
【請求項21】
前記電極接触部および前記基板接触部の他方と前記第二の柱状体とは前記弾性ソケットの厚さ方向に重複する部分を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項22】
前記弾性ソケットは、前記貫通孔における前記細孔部と前記太孔部との段差部分を含む面を分離面として、前記太孔部を有する第一の部分弾性ソケットと前記細孔部を有する第二の部分弾性ソケットとに分割され、前記第一の部分弾性ソケットは、前記太孔部における前記第二の部分弾性ソケット側の端部に、前記第一の部分弾性ソケットを構成する材料により構成されて、前記第一の部分弾性ソケットと一体に設けられた前記部分閉塞部を備える、請求項5から21のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項1】
絶縁体からなり弾性を有する板状の弾性ソケットと、前記弾性ソケット内に個別に保持されて前記弾性ソケットの厚さ方向に電流を通過させる複数の電気貫通部とを備える異方導電性部材であって、
前記電気貫通部は、電気的に接続しつつ前記弾性ソケットの厚さ方向に相対位置を変動可能な第一の可動部材および第二の可動部材を備え、
前記第一の可動部材は、測定対象物に付設される電極と接触するための電極接触部を前記弾性ソケットの一方の主面側に備え、
前記第二の可動部材は、測定装置の配線基板と接触するための基板接触部を前記弾性ソケットの他方の主面側に備え、
前記電極接触部および前記基板接触部が前記弾性ソケットの厚さ方向に近接するように外力が付与されたときにこれらを離間させる弾性復元力が前記弾性ソケットに生じるように、前記第一および第二の可動部材は、少なくとも前記電極接触部と前記基板接触部とが近接した状態では前記弾性ソケットの一部を圧縮可能に配置され、
前記電気貫通部は、前記第一または第二の可動部材の一方に設けられたすべり軸とこれらの部材の他方に設けられたすべり面とが前記弾性ソケットの厚さ方向に相互に摺動する摺動接触構造を備え、当該摺動接触構造によって、前記電極接触部と前記基板接触部との距離は、これらの接触部の電気的接続を維持したまま前記弾性ソケットの厚さ方向に変動可能であり、
前記摺動接触構造は前記すべり軸が前記すべり面上を前記弾性ソケットの厚さ方向に摺動する範囲を制限する可動制限機構を備え、当該可動制限機構によって、前記電極接触部の前記基板接触部に対する可動範囲は上限を有し、
前記可動制限機構は前記電極接触部と前記基板接触部との間の可動範囲を制限する脱離止めを含み、当該脱離止めは、前記すべり面から前記すべり軸側に突出するすべり面突出部、および当該すべり面突出部に接触することにより前記すべり軸の一方向への摺動を停止させるすべり軸係止部からなり、
前記電極接触部および前記基板接触部の一方から前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに延設された第一の柱状体を前記第一および第二の可動部材の一方が備え、さらに前記電極接触部および前記基板接触部の他方から前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに延設された第二の柱状体を前記第一および第二の可動部材の他方が備え、
前記第一の柱状体は、前記弾性ソケットの厚さ方向に連続して配置される太径部と細径部とを備え、前記すべり軸は前記太径部に設けられ、前記すべり軸係止部は前記太径部と前記細径部との連結部に設けられ、
前記第二の柱状体は、内部が中空であって前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側の端部に開口を有し、前記すべり面は前記中空部の内側面に設けられ、前記開口を部分的に閉塞するように前記開口の縁部から内側に突出する部分閉塞部が前記すべり面突出部を構成し、
前記太径部に設けられた前記すべり軸は前記中空部内に配置されて、前記中空部の内側面に設けられた前記すべり面と接触して前記摺動接触構造を構成し、
前記部分閉塞部は前記太径部との接触により変形可能とされ、前記太径部は、前記部分閉塞部の当該変形により前記部分閉塞部を超えて前記第二の柱状体の中空部内へと挿設され、
前記弾性ソケットにおける前記電極接触部が設けられている側の主面にその一方の主面が対向するように設けられた、剛性材料からなる電極側板状部材を前記異方導電性部材はさらに備え、当該電極側板状部材は前記電極接触部に対応した配置で貫通孔を有し、前記電極接触部の前記弾性ソケット側と反対側の端部が前記電極側板状部材における前記弾性ソケットの主面に対向する側と反対の主面から突出するように、前記第一の可動部材は前記電極側板状部材の貫通孔に貫装されることを特徴とする異方導電性部材。
【請求項2】
前記部分閉塞部は、異方導電性部材が使用されて前記電極接触部と前記測定対象物に付設された電極との間に発生する密着力に相当する外力が前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きと反対向きに付与された場合でも前記すべり面突出部を構成する、請求項1に記載の異方導電性部材。
【請求項3】
前記太径部は金属系材料から構成され、前記部分閉塞部は樹脂系材料から構成される、請求項2に記載の異方導電性部材。
【請求項4】
前記第一および第二の可動部材は、前記第一および第二の柱状体が前記弾性ソケットに設けられた貫通孔内に挿設され、
前記貫通孔は、径が細い細孔部および径が太い太孔部を前記弾性ソケットの厚さ方向に隣接して備え、
前記細孔部内に前記第一の柱状体の細径部の少なくとも一部が配置され、前記太孔部内に前記第二の柱状体の少なくとも一部が配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項5】
前記第二の柱状体は前記部分閉塞部を構成する部材と他の部材とから構成され、前記部分閉塞部を構成する部材は前記他の部材と別体であって、前記部分閉塞部を構成する部材は、前記太孔部および前記細孔部によって形成される段差と前記他の部材とに挟まれることにより、前記他の部材に対する位置変動が制限される、請求項4に記載の異方導電性部材。
【請求項6】
前記第二の柱状体を備える前記第一および第二の可動部材の他方は、いずれも内部が中空であるとともに前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側の端部に開口を有し同軸上に配置される、第一の柱状部材および第二の柱状部材を備え、
前記第一の柱状部材は、その開口の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が前記第二の柱状部材の中空内に配置され、
前記部分閉塞部は前記第二の柱状部材の開口に設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項7】
前記第二の柱状部材は前記弾性ソケットの厚さ方向で前記第一の柱状体側と反対側の端部に第二の開口を有し、当該第二の開口はその縁部から内側に突出する第二の部分閉塞部を備え、前記第一の柱状部材はその開口の周縁部およびこれに続く外側面の少なくとも一部が前記部分閉塞部と前記第二の部分閉塞部とを両端とする前記第二の柱状部材の中空内に配置される、請求項6に記載の異方導電性部材。
【請求項8】
前記第一の柱状部材は金属系材料から構成され、前記第二の柱状部材は樹脂系材料から構成される、請求項6または7に記載の異方導電性部材。
【請求項9】
前記第一の柱状体が延設される前記電極接触部および前記基板接触部の一方は、導電性材料からなり前記測定対象物に付設される電極または前記測定装置の配線基板と直接接触する中心側の部材と、前記電極接触部および前記基板接触部の一方における最も外径が大きな部分を含む絶縁体からなるリング状の部材とからなり、当該リング状の部材における中央の中空部に前記中心側の部材がはめ込まれることにより前記電極接触部および前記基板接触部の一方は構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項10】
前記第二の柱状体が延設される前記電極接触部および前記基板接触部の他方は、前記弾性ソケットの主面の面内方向に突出する突出部を備え、当該突出部が前記弾性ソケットの主面に接触するように、前記第二の柱状体は前記貫通孔内に挿設される、請求項1から9のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項11】
前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材における当該貫通孔の内側面と対向する外側面と当該貫通孔の内側面とのクリアランスは、前記第一の可動部材の可動方向の前記弾性ソケットの厚さ方向に対する傾きの許容範囲に基づき設定されたものである、請求項1から10のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項12】
前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材は、前記弾性ソケットにおける前記電極接触部が設けられている側の主面と前記電極側板状部材との間にその外側面の一部から外周方向に突出する係止突出部を有し、前記弾性ソケットの厚さ方向を法線とし前記係止突出部を含む面における前記第一の可動部材の断面形状の外接円の直径は、前記電極側板状部材の貫通孔の前記弾性ソケット側端部における開口径よりも大きい、請求項1から11のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項13】
前記電極接触部が前記測定対象物に付設された電極と接触する前の状態において、前記電極側板状部材の貫通孔の前記弾性ソケットに対向する側の周縁部が前記係止突出部を前記弾性ソケットの厚さ方向中心側に押し込むことにより、前記電極接触部および前記基板接触部にはこの押し込みによる反発力が前記弾性ソケットから付与されている、請求項12に記載の異方導電性部材。
【請求項14】
前記電極側板状部材の貫通孔に貫装された前記第一の可動部材は、前記電極接触部における前記弾性ソケット側と反対側の端部および前記係止突出部の少なくとも一部を含むように構成された接触側部材と他の部材とから構成され、前記接触側部材は前記その他の部材とは別体であって、前記係止突出部の少なくとも一部によって、前記接触側部材は、前記弾性ソケットの厚さ方向中心向きと反対の向きへの移動が制限されるとともに、前記電極側板状部材の貫通孔から脱離しないように構成されている、請求項12または13に記載の異方導電性部材。
【請求項15】
前記第一の可動部材が前記第一の柱状体を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項16】
前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項17】
前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備え、当該第二の柱状体が備える前記部分閉塞部および前記係止突出部の少なくとも一部が前記弾性ソケット内に埋設される、請求項12から14のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項18】
前記第一の可動部材が前記第二の柱状体を備えるとともに、その全体が前記弾性ソケットから露出している、請求項12から14のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項19】
前記電極接触部および前記基板接触部が前記弾性ソケットの厚さ方向に近接するように前記電極接触部に外力が付与されたときに、前記電極接触部および前記基板接触部の双方が前記弾性ソケットの厚さ方向の前記弾性ソケット中心向きに変動するように、前記弾性ソケットは、前記測定装置の配線基板に対して、前記弾性ソケットの厚さ方向に変動可能に取り付けられるものである、請求項17または18に記載の異方導電性部材。
【請求項20】
前記弾性ソケットと前記測定装置の配線基板との間に剛性材料からなる基板側板状部材を前記異方導電性部材はさらに備え、当該基板側板状部材は前記基板接触部に対応した配置で貫通孔を有し、前記基板接触部は、少なくともその一部が、当該基板側板状部材の貫通孔に挿設される、請求項19に記載の異方導電性部材。
【請求項21】
前記電極接触部および前記基板接触部の他方と前記第二の柱状体とは前記弾性ソケットの厚さ方向に重複する部分を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【請求項22】
前記弾性ソケットは、前記貫通孔における前記細孔部と前記太孔部との段差部分を含む面を分離面として、前記太孔部を有する第一の部分弾性ソケットと前記細孔部を有する第二の部分弾性ソケットとに分割され、前記第一の部分弾性ソケットは、前記太孔部における前記第二の部分弾性ソケット側の端部に、前記第一の部分弾性ソケットを構成する材料により構成されて、前記第一の部分弾性ソケットと一体に設けられた前記部分閉塞部を備える、請求項5から21のいずれか一項に記載の異方導電性部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
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【図23】
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【図27】
【図28】
【公開番号】特開2013−50436(P2013−50436A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21285(P2012−21285)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(511188749)株式会社クローバーテクノロジー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(511188749)株式会社クローバーテクノロジー (1)
【Fターム(参考)】
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