説明

異方性回折層を備えた導波体

本発明は、直線偏光を出力結合するスラント型異方性ホログラム層を備えたエッジライト型スラブ導波体に関する。さらに本発明は、本発明による導波体に使用するのに好適な新規なスラント型異方性ホログラム層、このような層を調製するための方法、および本発明による導波体を含む素子に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)に使用するのに好適な新規な導波体に関する。さらに本発明は、導波体上で使用するのに好適な新規な層、その導波体および層を作製するための方法、ならびに本発明による導波体を備えた素子に関する。
【0002】
LCDには照射系が使用されており、これがエネルギーを大量に消費する。このような照射系のエネルギー効率を高めることが必要とされている。例えば、LCDを備えた携帯機器の場合、照射系の効率は機器のバッテリー寿命および/またはディスプレイの輝度に大きく影響する。
【0003】
LCDの照射系としては、2種類の異なる形式:バックライトおよびフロントライトが知られている。
【0004】
従来、バックライト系は、透過型および/または半透過型ディスプレイに用いられている。この場合、光源からくる光が導波体に入力結合し、観察者に向けて放出される(この出力結合には、ドットパターンまたは表面レリーフ構造に基づく散乱拡散板が最も一般的に用いられている)。次いでこの光は、例えば、偏光子、カラーフィルタ、補償層、電気光学セル等の様々な光学層を通過する。典型的な半透過型ディスプレイには、外光を反射しバックライトからの光を透過させるハーフミラー(半透過板)が使用されている。外光が明るい場合は照射系の電源がオフになり、外光でディスプレイが視認できるようになる。周囲が暗い場合はバックライト系の電源がオンになり、ディスプレイが照射される。半透過型ディスプレイは透過型ディスプレイよりも光効率が高い。しかしながら、このような従来のLCDの光効率は、例えば、様々な光学層(偏光子、カラーフィルタ)が光吸収性を有することから、依然として低いものである。
【0005】
フロントライト系は、典型的には、反射型LCDに組み込まれている。反射型LCDは、全反射ミラー(反射板)を存在させることによって、外光をディスプレイの照射に非常に有効に利用している。こうすることによって、外光に関する光の管理がより効率的に行われるようになり、輝度および/またはバッテリー寿命が向上する。しかしながら、現行のフロントライトに備えられている光出力結合構造は、LCDからの画像に乱れを生じさせるものである。さらに、このようなフロントライトはLCDに無偏光(白色)を放出し、したがって、吸収型の偏光子およびカラーフィルタが依然として必要となることから、結果として光効率が低下する。
【0006】
周知の構造に関する主な課題は、LCDの電力消費量を抑えると同時に優れた表示特性(例えば画質に関する)が得られるように、光の管理を改善することである。エネルギー節減のための一つの選択肢は、偏光子および場合により吸収型カラーフィルタの1つをより光効率の高い等価物に替えることである。
【0007】
ジャグト(Jagt)らによる米国特許第6,750,996号明細書には、代替的な出力結合系としてホログラム層を使用することが開示されている。この方法は、色分離された偏光が一方向に放出されるように(図1)、透明材料の導波体の上部にスラント型透過型体積ホログラムを形成することを開示している。
【0008】
さらに、このスラント型位相回折格子は直接見ただけでは(ほとんど)視認できないので、光をそのまま観察者に向けることができる。換言すれば、(さらなる)光出力結合構造を省略することができ、それによってディスプレイの視認性が改善される。
【0009】
このようなホログラムでは、ホログラムがいわゆる導波モード(waveguiding mode)(ホログラフィー機構の1本のレーザー光束の伝搬方向がホログラム感応層に対し垂直である一方で、もう1本の光束の伝搬方向が感応層面内にあり、第1の光束と干渉する)で記録されると大きなスラント角を得ることができ、高い偏光比を得ることができる(図2b)。偏光比とは、フィルムに対し垂直に近い状態で測定される、pおよびs偏光として出力結合されるそれぞれの光の強度の比率として定義される。角度が垂直から離れると偏光比は急速に低下する(図2b)ことも示されており、これが、このようなホログラムの深刻な限界である。
【0010】
導波モードの記録には実施上の難点も幾つかある。そのため、透過モード(transmission mode)で記録された偏光比の高いスラント型ホログラムについても研究が行われた。
【0011】
米国特許第6,750,996号明細書にはさらに、透過モードの場合は、非常に簡素で標準的な透過ホログラフィー配置(図3)で記録が行える方法でUVレーザー光束(例えば351nm)を用いて回折格子を記録することが好ましいことが開示されている。この機構の動作および直線偏光の生成は、(nhigh−nlow)(d/λ)の積(ここで、nhighおよびnlowは、それぞれスラント型ホログラムの高および低屈折率領域の屈折率値であり、dは、ホログラム層の厚みであり、λは動作波長である)に非常に大きく依存する。この積が十分に大きい場合、透過型ホログラムは、1つの直線偏光の回折が大きい一方でそれと直交する偏光の回折がゼロに近くなるように「過変調」にすることができる。この方法の欠点は、薄層の使用が可能となるような、屈折率差(nhigh−nlow)が十分に高い高品質のホログラフィー材料が見つかりにくいことにある。例えば、幾分一般的な記録材料をホログラフィーに使用すると、積(nhigh−nlow)(d/λ)が非常に低くなるため、偏光比が劣るという結果になる(図4)。さらに、ここに開示されているホログラムの偏光比は、本質的に、ディスプレイの照射に用いた光の波長(色)にも依存する。例えば、ディスプレイの照射に白色光を使用すると、青、緑、および赤色光に対し得られる偏光比が異なってくる。
【0012】
本発明の一つの目的は、より高いエネルギー効率で高い偏光比が得られる代替的な解決策を提供することにあった。
【0013】
意外なことに、この目的は、直線偏光を出力結合するスラント型異方性ホログラム層を備えたエッジライト型スラブ導波体によって達成される。
【0014】
このような層により、比較的高い、通常は少なくとも3以上、好ましくは少なくとも5以上の偏光比を得ることができることが見出された。好適な偏光比は導波体の用途に応じて異なる。携帯電話の場合、偏光比は通常は約15〜20で十分であり、一方、TV用途には少なくとも200が必要である。除去(clean−up)(偏光)フィルタを併用すると、本発明の導波体により、光の強度を著しく損なうことなく少なくとも200という偏光比を容易に達成することができることが見出された。さらに、異方性ホログラム層を使用すると、使用した層の厚みに対する層の特性の依存度が小さくなり、それによって薄層の使用が可能となることが見出されており、これが本発明による導波体の他の利点となる。
【0015】
さらなる利点は、波長(色)に依存しない偏光比が達成できることにある。
【0016】
他のさらなる利点は、このようなホログラム層が透過モードで記録できることにある。当業者らは、このような層をホログラフィー技術だけでなくリソグラフィー技術、すなわち、干渉を利用したり位相マスクを利用するのではなく、高解像度の遮光マスクを利用して露光することによって調製する方法も周知している。したがって、本明細書においてホログラフィーが用いられる場合は、リソグラフィー技術も同様に適用可能である。
【0017】
スラント型異方性ホログラム層は、導波体に直接被覆されていても、好適な基板、例えばフィルムに被覆されていても、いずれであってもよい。導波体は様々な形態をとることができる。これは、体積ホログラムが別個の層として積層された導波基板を備えていてもよく、あるいは体積ホログラムは基板の一体部分であってもよい。体積ホログラムは、基板のディスプレイ側の面またはディスプレイと反対側の面上に配されていても、さらには導波基板内に組み込まれていてもよい。導波体は、導波基板上にそれぞれ積層されているかまたは導波基板と一体成形された2つ以上の互いに分離されたホログラムを備えていてもよい。導波体は、導波基板の反対側に設けられていても、あるいは互いに重ねられていてもよい。導波体は、単一の入射側面またはそれを超える入射側面を有していてもよい。側面が1を超える場合は、体積ホログラムは、どの入射面から入力結合された導波光も回折するような構成になっている。入射測面が1つの場合は、導波体は、出力結合された光が表面全体に均一に分配されるように楔形をしていてもよい。
【0018】
基板に好適な材料としては、ガラスおよび透明セラミックスが挙げられる。しかしながら、好ましくは、基板は、熱硬化性または熱可塑性であってもよい透明ポリマーから作製される。好適なポリマーは、(半)結晶性または非晶性のものであろう。例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、COC(環状オレフィンコポリマー)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PES(ポリエーテルスルホン)に加えて、架橋アクリレート、エポキシ、ウレタン、およびシリコーンゴムが挙げられる。次いで、この基板は、これに続く加工工程において導波体と一体化される。導波体が光学的に異質の部材や層などの集合体であり、第1部材の境界面と第2部材の境界面とが接するところに接合部が形成される場合、このような第1および第2部材の境界面を接合させるために接着層を使用することが必要であろう。これにより、導波体に機械的な一体性が得られ、かつ/またはスプリアス反射の発生および光学的な不均一性(例えば接合部に形成された空間に閉じ込められた空気による)が回避される。この種の接着層およびこのような接着剤を使用するのに適切な条件および環境の例は当業者に周知である。したがって、本発明の文脈においては、2つの別々の光学部材が接合されて接合部を形成する場合、このような接着層もこの接合部に含まれるものと理解される。
【0019】
本発明における導波体という表現は、光がスラブ導波体の端部に入力結合(エッジライト)して面(phase)(側面(side))から出力結合する、照射素子として意図された素子のみを包含するものと定義する。
【0020】
導波体に好適な材料は、一般に、導波体により放出される光に対し透明なものである。導波体に好適な材料としては、ガラスおよび透明なセラミックスが挙げられる。しかしながら、好ましくは、導波体は、熱硬化性または熱可塑性であってもよい透明ポリマーから作製される。好適なポリマーとしては、(半)結晶性または非晶性であってもよい熱硬化性および熱可塑性ポリマーが挙げられる。その例として、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、COC(環式オレフィンコポリマー)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PES(ポリエーテルスルホン)に加えて、架橋アクリレート、エポキシ、ウレタン、およびシリコーンゴムが挙げられる。
【0021】
本発明の別の実施形態においては、本発明による導波体は、異なる波長の直線偏光を異なる角度で出力結合することができる。これにより、カラーフィルタと置き換えることが可能となるか、あるいは赤−緑−青(RGB)画素に空間的に分離する好適なマイクロレンズアレイを用いて色を生成させる効率を向上させることが可能となり、それによって、この導波体がより一層エネルギー効率の高いものとなる。
【0022】
本発明の別の実施形態においては、導波体は、出力結合されなかった光を再利用することができる。これは、当業者に周知の方法、例えば米国特許第6,750,996号明細書により達成することができる。この実施形態においては、最初は偏光方向が適切でなかった光も他の(所望の)偏光方向に変調し、次いでこれを出力結合させる(偏光変調)ことが可能であるため、光効率がより一層高くなるであろう。別法として、最初は波長(色)が適切でなかった光を別の画素に再び偏向させることができ、次いでこれを出力結合させることができる(色変調)。一つの実施形態において偏光変調と色変調とを組み合わせることも可能である。
【0023】
本発明の別の実施形態においては、導波体は、少なくとも1種の反応性モノマーおよび少なくとも1種のメソゲン(重合後のメソゲンは整列状態にある)をベースとするスラント型異方性ホログラム層を備えている。モノマーは、1種類の化合物であっても化合物の混合物であってもよい。メソゲンは、1種類の化合物であっても化合物の混合物であってもよい。好ましくは、メソゲンは、少なくとも1種の反応性メソゲンを含み、これは、少なくとも1種の反応基を含む化合物である。
【0024】
本発明のさらなる実施形態においては、エッジライト型スラブ導波体は、直線偏光を出力結合するスラント型異方性ホログラム層を備えており、この層は、少なくとも1種の反応性モノマーおよびメソゲンの混合物の重合により得られるものであり、かつこのメソゲンは整列状態にある。好ましくは、このモノマーは、少なくとも多官能性アクリレートまたはメタクリレート化合物を含む。好ましくは、このメソゲンは、重合性基を有する少なくとも1種の化合物を含む。より好ましくは、このメソゲンは、カチオン重合性基を有する少なくとも1種の化合物を含む。よりさらに好ましくは、このメソゲンは、エポキシ、オキセタン、またはビニルエーテル基を有する少なくとも1種の化合物を含む。
【0025】
直線偏光を出力結合できるこのような層は新規なものであり、これも本発明の主題である。米国特許第6,750,996号明細書には異方性層が開示されており、また、ボイコ(Boiko)ら(Optics Letters、2002年、第27巻、第19号、pp.1717〜1719)によるスラント型異方性ホログラフィック回折格子が周知である。しかしながら後者は光の透過にのみ適しており、偏光の出力結合には適していない。さらに、エッジライト型スラブ導波体にこのような層を用いることに関しては述べられていない。意外なことに、少なくとも1種の反応性モノマーおよび少なくとも1種のメソゲンをベースとし、このメソゲンが重合後に整列状態にあるスラント型異方性ホログラム層が、直線偏光を出力結合できることが見出された。これは、例えば、光効率を向上させ、したがって使用電力を低減することを目的として、エッジライト型スラブ導波体に使用することができる。
【0026】
「反応性モノマー」という用語は、自発的に、または好適な(重合)開始剤と組み合わせることにより、もしくは好適な放射線と組み合わせることにより重合する任意の化合物を包含する。ラジカル開始剤またはカチオン開始剤が好ましい場合が多い。好ましくは、モノマーは、以下の種類の反応基を含む分子である:ビニル、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル、チオールエン、またはヒドロキシ。
【0027】
この反応性モノマーは、1分子当たり1個またはそれ以上の反応基を有していてもよい。この反応基は、同一であっても異なっていてもよい。好ましい実施形態においては、1個を超える反応基を有する少なくとも1種の多官能性モノマーが使用される。これは、重合に際しポリマー網が形成されるので有利である。これは、層の材料特性に関し有利な効果がある(例えば、耐擦傷性、弾性率、破断伸び、アイゾッド、および可撓性)。1個を超える反応基を有する反応性モノマーが存在すると、重合速度も向上し、それにより、ホログラムの記録時間が短縮される。
【0028】
1分子当たり少なくとも2個の反応基を有する反応性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、リン酸モノ−およびジ(メタ)アクリレート、C〜C20アルキルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を含むモノマー、および前述の任意のモノマーのアルコキシ化、好ましくはエトキシ化および/またはプロポキシ化形態、さらにはビスフェノールAのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート付加物であるエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキル化ビスフェノールAのジアクリレート、ならびにトリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルアクリレート、イソホロンジイソシアネート、およびヒドロキシエチルアクリレートの付加物(HIH)、ヒドロキシエチルアクリレート、トルエンジイソシアネート、およびヒドロキシエチルアクリレートの付加物(HTH)、ならびにアミドエステルアクリレートが挙げられる。
【0029】
1分子当たり1個のみ反応基を有する好適なモノマーとしては、例えば、ビニル基を含むモノマー(N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等)、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、カプロラクトンアクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ベータ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルカルバミルエチル(メタ)アクリレート、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミドフッ化(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテルが挙げられる。さらには、以下の式(I)、
CH=C(R)−COO(RO)−R (I)
(式中、
は、水素原子またはメチル基であり、Rは、2〜8個、好ましくは2〜5個の炭素原子を有するアルキレン基であり、mは、0〜12、好ましくは1〜8の整数であり、Rは、水素原子または1〜12個、好ましくは1〜9個の炭素原子を有するアルキル基であるか、または、Rは、1〜2個の炭素原子を有する1種またはそれ以上のアルキル基で場合により置換された4〜20個の炭素原子を有するアルキル基を含むテトラヒドロフラン基であるか、またはRは、メチル基で場合により置換された4〜20個の炭素原子を有するアルキル基を含むジオキサン基であるか、またはRは、1種もしくはそれ以上のC〜C12アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基で場合により置換された芳香族基である)で表される化合物およびアルコキシ化された脂肪族単官能性モノマー(エトキシ化イソデシル(メタ)アクリレート、エトキシ化ラウリル(メタ)アクリレート等)も含まれる。
【0030】
オリゴマーも反応性モノマーに使用するのに好適な可能性がある。このようなオリゴマーとしては、例えば、芳香族または脂肪族ウレタンアクリレートまたはフェノール樹脂をベースとするオリゴマー(例えば、ビスフェノールエポキシジアクリレート)、および上述の任意のオリゴマーをエトキシ化物で連鎖延長したものが挙げられる。ウレタンオリゴマーは、例えばポリオール骨格、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオールをベースとするものであってもよい。これらのポリオールは、別々に使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのポリオールの構造単位の重合方法に特別な制限はない。ランダム重合、ブロック重合、またはグラフト重合のいずれも許容可能である。ウレタンオリゴマーを形成するための好適なポリオール、ポリイソシアネート、およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの例が国際公開第00/18696号パンフレットに開示されており、これを参照により本明細書に援用する。
【0031】
反応性モノマーとして使用できる可能性のあるさらなる化合物は、湿気硬化性イソシアネート、湿気硬化性アルコキシ/アシルオキシ−シラン混合物、アルコキシチタネート、アルコキシジルコネート、または尿素−、尿素/メラミン−、メラミン−ホルムアルデヒド、またはフェノール−ホルムアルデヒド(レゾール、ノボラック型)、またはラジカル硬化性(過酸化物−または光開始型)エチレン性不飽和単−および多官能性モノマーおよびポリマー、例えば、アクリレート、メタクリレート、マレエート/ビニルエーテル)、またはラジカル硬化性(過酸化物−または光開始型)不飽和化合物、例えば、スチレン中および/またはメタクリレート中のマレイン酸またはフマル酸ポリエステルである。
【0032】
上述の任意の物質の組合せも使用してもよい。一緒にすると結果として架橋相を形成する可能性があり、したがって、組み合わせて反応性モノマーとして使用するのが好適な化合物の組合せは、例えば、カルボン酸および/または無水カルボン酸とエポキシドとの組合せ、酸とヒドロキシ化合物、特に2−ヒドロキシアルキルアミドとの組合せ、アミンとイソシアネート、例えばブロックイソシアネート、ウレトジオン、またはカルボジイミドとの組合せ、エポキシとアミンまたはジシアンジアミドとの組合せ、ヒドラジンアミドとイソシアネートとの組合せ、ヒドロキシ化合物とイソシアネート、例えばブロックイソシアネート、ウレトジオン、またはカルボジイミドとの組合せ、ヒドロキシ化合物と無水物との組合せ、ヒドロキシ化合物と(エーテル化)メチロールアミドとの組合せ(「アミノ樹脂」)、チオールとイソシアネートとの組合せ、チオールとアクリレートまたは他のビニル性化学種(場合によりラジカル開始型)との組合せ、アセトアセテートとアクリレートとの組合せである。カチオン架橋が用いられる場合、エポキシを有するエポキシ化合物またはヒドロキシ化合物が好適である。
【0033】
好ましい実施形態においては、反応性モノマーは、アクリレートまたはメタクリレート官能基を有する化合物を含む。このような反応性モノマーの例としては、高反応性(メタ)アクリレートまたは高分子分散型液晶(PDLC)の調製用として市販されている混合物が挙げられる。この種の好ましい混合物の例として、メルク(Merck)のPN393(登録商標)等のモノ−およびトリアクリレートの混合物が挙げられる。
【0034】
「液晶」または「メソゲン」という用語は、1種またはそれ以上の(半)硬質の棒状、バナナ状、板状、または円盤状のメソゲン基、すなわち、液晶相挙動を誘起できる基を含む物質または化合物を意味するために使用される。棒状または板状の液晶化合物群は、当該技術分野において、「カラミティック」液晶としても周知である。円盤状の液晶化合物群は、当該技術分野において、「ディスコティック」液晶としても周知である。特に断りのない限り、以下、「液晶」または「メソゲン」という用語を互換的に使用する。メソゲン基を含む化合物または物質は、必ずしもそれ自体が液晶相を呈する必要はない。この層に使用される他の化合物との混合物中においてのみ、または導波体上に存在する本発明による一定の層に重合させた後に液晶相挙動を示すことも可能である。
【0035】
メソゲンは、反応性メソゲンであっても非反応性メソゲンであってもよい。好適な非反応性メソゲンとしては、例えば、メルクから入手可能なもの、例えば同社の製品フォルダである電気光学ディスプレイ用液晶混合物リクリスタル((Licristal(登録商標)Liquid Crystal Mixtures for Electro−Optic Displays)(2002年5月)に記載されているものが挙げられる。その非反応性メソゲンに関する内容を参照により本明細書に援用する。好ましくは、PDLCに関し使用されるもの、例えばハロゲン化メソゲン(例えばTL205(ダームシュタット(Darmstadt)のメルク)等)またはシアノビフェニル(例えばE7(ダームシュタットのメルク)等)が使用される。同じく非反応性メソゲンの混合物も使用することができる。
【0036】
好適な反応性メソゲンとしては、例えば、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、オキセタン、ビニル−エーテル、スチレン、ヒドロキシ、およびチオール−エン基を含むものが挙げられる。好適な例が、例えば国際公開第04/025337号パンフレットに記載されている。国際公開第04/025337号パンフレット中に重合性メソゲン化合物および重合性液晶材料として参照される反応性メソゲンに関する内容を参照により本明細書に援用する。
【0037】
特に有用な一−および二反応性(mono−and direactive)重合性メソゲン化合物の代表例を以下の化合物リストに示す。しかしながら、これらは単に例示的なものであり、本発明を説明するものであって、本発明を限定する意図がないことを理解されたい。
【化1】

【化2】

【0038】
上の式において、Pは、重合性基、好ましくは、アクリル、メタクリル、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、またはスチリル基であり、xおよびyは、それぞれ独立に、1〜12であり、Aは、場合によりLで一、二、もしくは三置換された1,4−フェニレンであるかまたは1,4−シクロヘキシレンであり、vは、0または1であり、Zは、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−C≡C−、または単結合であり、Yは、極性基であり、Rは、無極性アルキルまたはアルコキシ基であり、LおよびLは、それぞれ独立に、H、F、Cl、CN、または場合によりハロゲン化された、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、またはアルコキシカルボニルオキシ基である。
【0039】
この文脈における「極性基」という用語は、F、Cl、CN、NO、OH、OCH、OCN、SCN、4個までのC原子を有する場合によりフッ素化されたカルボニルもしくはカルボキシル基、または1〜4個のC原子を有する一−、低(oligo)−、または多フッ化アルキルもしくはアルコキシ基から選択される基を意味する。「無極性基」という用語は、1個もしくはそれ以上、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキル基、または2個以上、好ましくは2〜12個のC原子を有するアルコキシ基を意味する。
【0040】
重合性LC材料の重合は、例えばこれを熱または化学放射線に曝露することによって達成することができる。化学放射線とは、UV光、IR光、可視光等の光を用いた照射、X線もしくはガンマ線を用いた照射、またはイオンや電子等の高エネルギー粒子を用いた照射を意味する。好ましくは、重合は、UV照射によって実施される。反応性メソゲンの混合物も使用してもよい(メルク反応性メソゲン(Merck Reactive Mesogens)、ブライター・クリアラー・コミュニケーション(Brighter clearer communication)、2004年)。好ましくは、反応性メソゲンは、少なくともカチオン重合性基を有する化合物を含む。
【0041】
反応性および非反応性メソゲンの混合物も使用してもよい。混合物の場合、使用されるメソゲンの実質的にすべてが最終層において好ましくは整列状態にある。好ましくは、最終層内において80%を超えるメソゲンが整列している。
【0042】
モノマーおよびメソゲンの好適な組合せの例として、PN393およびTL205(いずれもダームシュタットのメルクから)が挙げられる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態においては、メソゲンの常光屈折率(no,m)とポリマーの等方的な屈折率(niso,p)との差が0.01未満、よりさらに好ましくは0.005未満である。最も好ましくは、出力結合される偏光状態において、no,mはniso,pに一致する。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態においては、メソゲンの異常光屈折率(ne,m)とポリマーの等方的な屈折率(niso,p)との差が0.01未満、よりさらに好ましくは0.005未満である。最も好ましくは、出力結合される偏光状態において、no,mはniso,pに一致する。
【0045】
本発明の一実施形態においては、この層は、少なくとも1種の反応性モノマーおよび少なくとも1種の反応性メソゲンをベースとする。この種の層は従来技術においては知られていない。少なくとも1種の反応性メソゲンを含むことの利点は、層の機械的安定性が向上することにある。
【0046】
本発明の別の実施形態においては、この層は、少なくとも1種の反応性モノマーおよび少なくとも1種の非反応性メソゲンをベースとし、非反応性メソゲンの配向を外部場によって切り替えることができる。メソゲンの配向の切り替えは、様々な方法、例えば、電場、磁場、および/または光を用いることによって達成することができる。光が使用される場合は、好ましくはフォトクロミック剤が添加される。本発明による層を備えた導波体は、例えば、電気アドレスを行うための層(アクティブまたはパッシブマトリックス)を備えてる場合もある。この特定の実施形態においては、応答時間を向上させることを目的として、非反応性および反応性メソゲンを含むメソゲン混合物を使用することが好ましい場合もある。これは、ノート型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータ、テレビ等の特定の用途において重要となり得る。
【0047】
少なくとも1種の非反応性メソゲン(非反応性メソゲンのみまたは反応性メソゲンとの組合せのいずれか)を使用する場合、本発明による層を備えた導波体は、切り替えが可能となるであろう。好ましくは、この導波体は、光を出力結合する(明)状態と光を出力結合しない(暗)状態との間で切り替えが可能である。好ましい実施形態においては、光を出力結合する(明)状態と光を出力結合しない(暗)状態との間で高い強度比(垂直に近い角度で測定される、明状態および暗状態にあるディスプレイより透過される強度の比率である)が得られ、明状態の偏光比は少なくとも3、好ましくは少なくとも5である。一般に、強度比が高いとは、その比が少なくとも5、より好ましくは少なくとも20、よりさらに好ましくは少なくとも100であることを指す。
【0048】
本発明による切り替え可能な導波体は、例えば、切り替え可能なバックおよびフロントライトに使用することができ、これにより、さらなるエネルギー効率が獲得される。この導波体が、パターン電極を用いて局所的に光を出力結合するように作製されている場合、例えば、モーションアーチファクトを低減するとともにダイナミックコントラストを向上させることを目的としてダイナミックバックライト(dynamic backlight)に使用することができる。液晶ディスプレイの情報をリフレッシュする方法に関係する、いわゆるサンプル・アンド・ホールドの問題に基づくモーションアーチファクトの低減を行うためには、ストライプ状の電極パターンが必要であり、光出力結合構造は、液晶ディスプレイのリフレッシュ速度と類似の周波数、すなわち、例えば50、80、または100Hzでスクリーン上を走査する。実際は光が局所的にしか出力結合されないが、それでも依然として明るい画像を生成させることができる。その理由は、(1)導波体に入力結合したランプ系(例えば、冷陰極蛍光ランプまたは発光ダイオード)からの光はすべて、低強度で全面に分配されるのではなく高強度で局所的に出力結合され、また(2)光は偏光となっているので、ディスプレイの偏光フィルタで損失する光がより少ないためである。導波体の走査は、光源が時間的に連続していると観察者が感じる周波数で行われる。このような動画表示のさらなる利点は、バックまたはフロントライトの輝度が表面全体にわたって一様であるので、光を均等に分配させるために散乱特性に勾配をかけたり楔型導波体を用いるなどのさらなる手段を必要としないことにある。ディスプレイのダイナミックコントラストは、回折格子構造の上下に直交したストライプ電極を有する電極マトリックスを用いることによって改善することができる。複数の回折格子を使用して光が局所的に出力結合される状態にすることにより、例えば、ディスプレイの明るい領域(太陽、空等)を表す部分を際立たせるとともに画像のより暗い部分の光を遮るようにすることができる。もちろん、走査によるモーションアーチファクトの改善およびダイナミックコントラストの改善を組み合わせることができる。
【0049】
スラント型異方性ホログラム層は、反応性モノマーおよびメソゲンの重合により作製することができる。
【0050】
反応性モノマーの重合に際し相分離が起こり、ポリマーに富む相とメソゲンに富む相とを含む多相系が形成される。意外なことに、この相分離によって、メソゲンを整列させることが可能となる。ある相から他の相への突出部を含む相も(例えばポリマーの突出部がメソゲンに富む相を貫通するような、他の相を貫通してその次の類似相への橋架けが起こっている場合さえも)これに含まれる。この突出部は、繊維状、帯状、またはテープ状の幾何学形状を有してもよい。写真1はこの種の幾何学形状のSEM写真の例である。
【0051】
さらに本発明は、本発明によるスラント型異方性ホログラム層を重合によって調製する新規な方法に関する。好適な重合方法としては、例えば、熱、電子線、電磁放射線(UV、可視、および近IR)、または光重合が挙げられる。光重合は、可視またはUV光のいずれかによって誘起することができる。UV光は、透過モードでの記録および可視波長領域の光の出力結合を可能にするので、ホログラムの記録に好ましく使用される(ジャグトらによる米国特許第6,750,996号明細書参照)。UV重合は、ラジカル機構、カチオン機構、またはこれらのいずれかの組合せによって起こるものであってもよい。光重合の場合、好ましくは、好適な光開始剤を反応混合物中に存在させる。
【0052】
本発明による方法には任意の周知の光開始剤を使用してもよい。この層は、反応性モノマーおよび場合により反応性メソゲンを同一または異なる重合方法を用いて重合させることによって製造することができる。
【0053】
反応性メソゲンが存在する場合、好ましくは、異なる重合方法、機構、または異なる反応性末端基が用いられる。その利点は、異なる化合物が異なる時点で重合し得るため、より良好な相分離を達成することができることにある。
【0054】
好ましくは、本発明による方法は、少なくとも1種の反応性モノマーおよび少なくとも1種の反応性メソゲンを含む混合物を調製するステップを含み、それにより、反応性モノマーがある重合方法を用いることによって重合され、メソゲンが他の重合方法を用いることによって重合される。より好ましくは、少なくとも1種の重合は光重合である。
【0055】
反応性モノマーは、反応性メソゲンを重合する前または後に重合させることができる。好ましくは、反応性メソゲンを重合させる前に反応性モノマーを重合させる。より強固な回折格子構造が既に確立されているところに反応性メソゲンを整列させるこの方法を適応させることができる。
【0056】
本発明の一実施形態においては、反応性モノマーは、UVまたは可視光を用いて反応される一方で、反応性メソゲンは、これとは別に、例えば熱的に重合される。第2の実施形態においては、2種類の異なるUV(それぞれラジカルおよびカチオン)重合機構が用いられる。例えば、(メタ)アクリレートをベースとする反応性モノマーが、(高速の)ラジカル開始剤を用いてまず重合され、エポキシ系反応性メソゲンの重合に(低速の)カチオンUV開始剤が用いられ、その後、全面光(均一)照射が行われる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態においては、モノマーの重合は光開始剤を用いることによって誘起され、その後、さらなる結合素子を必要としない構成においてUV光を用いてホログラムが記録される。
【0058】
本発明の他の実施形態においては、反応性メソゲンがUVまたは可視光を用いて反応される一方で、反応性モノマーは、それとは異なる方法で重合される。
【0059】
スラント型異方性ホログラム層を作製する好ましい方法は、
a)少なくとも1種の反応性モノマーおよび反応性メソゲンの混合物を提供するステップと、
b)この混合物の層を作製するステップと、
c)UV放射を適用することによりこの反応性モノマーの少なくとも一部を重合させてスラント型透過型回折格子とするステップと、
d)続いて熱またはUV曝露を適用することにより反応性メソゲンおよび(任意の)残りの未反応のモノマーをさらに重合させるステップと、
を含む。
【0060】
好ましくは、ステップcのUV放射は、2本の光束に分離するレーザーを用いて透過モード配置で適用される。好ましくは、反応性モノマーは、少なくとも多官能性アクリレートまたはメタクリレート化合物を含む。好ましくは、反応性メソゲンは、少なくともカチオン重合性基を有する化合物を含む。好ましくは、この混合物の層は、所定の厚みを有する1またはそれ以上のスペーサを備えたセルに混合物を充填することによって調製される。
【0061】
本発明による方法により得ることができる異方性層は、先行技術により知られている方法によって得られる異方性層とは異なる特性を有しているので、この層も同じく本発明の一部である。
【0062】
本発明はさらに、本発明による導波体を備えたフロントライト、バックライト、ディスプレイ、または光学素子に関する。
【0063】
本発明による導波体は、偏光子を別個に使用することを不要とし、それによりディスプレイの設計が簡素化され、また、効率が高くなることから電力が節減される。あるいは、従来のディスプレイに使用されるのと同じ電力量でディスプレイの輝度を向上させるために導波体上の層を使用することができる。特定の装置においては、本発明の導波体に除去偏光子を組み合わせることによってコントラスト比をさらに向上させることができる。
【0064】
以下に示す非限定的な好適な実施形態および比較実験の例により本発明が明らかになる。
【0065】
比較実験A
シクロヘキシルメタクリレートを49.5重量%と、ポリスチレン(Mw=45000g/mol)を49.5重量%と、UV開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を1重量%との混合物を、150μmの間隙を有する2枚のガラス基板の間に被覆した。この基板を、ジャグトにより記載されているように、導波モードによる記録を用いてUV光束で露光した(CCFLから導波された光をほぼ垂直に出力結合するホログラムフィルムが生成するように、角度を18.4および32.8°とした)。出力結合された光の輝度をCCD分光器(オートロニック(Autronic)、CCD−spect−2)を用いて測定した。図2aに、角度に応じた両偏光の輝度を示す。図2bに、フィルムの偏光比を示す。偏光比は垂直付近で最大80であり、垂直から離れると急速に低下する。
【0066】
比較実験B
シクロヘキシルメタクリレートを49.5重量%と、ポリスチレン(Mw=45000g/mol)を49.5重量%と、UV開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を1重量%との混合物を、50μmの間隙を有する2枚のガラス基板の間に被覆した。この基板を、二光束透過モード記録配置を用いて、Arイオンレーザーの351nm線(各光束25mW/cm)に露光させた(図3)。ピッチが371.2nm、スラント角が43°の回折格子が記録された。出力結合された光の輝度をCCD分光器(オートロニック、CCD−spect−2)を用いて測定した。結果として得られた偏光の輝度角度分布(図4)は、両方の偏光方向の回折効率に顕著な差がないことを示している。最も強度が高い領域の最大偏光比は1.25である。偏光比が低いのは、回折格子の層の厚みと屈折率差(nhigh−nlow)とが合っていないためである。
【0067】
実施例1
PN393プレポリマー(メルクからの、UV感応性光開始剤を含む2−エチルヘキシルアクリレートモノマーおよびトリメチロールプロパントリアクリレート架橋剤)と、TL205ネマチックLC(メルクからの、2〜5個の炭素長の脂肪族末端を有するハロゲン化ビ−およびターフェニルの混合物、20℃、589nmにおける(n,n)=(1.527,1.745))と、さらなる架橋剤であるトリメチロールプロパントリメタクリレート(アルドリッチ(Aldrich))との混合物を、それぞれの重量百分率比を40/50/10として調製した。
【0068】
7μmのスペーサを有するセルにこの混合物を充填し、二光束透過モード記録配置を用いて、Arイオンレーザーの351nm線に角度+71.5および+13.4°で露光させた(各光束25mW/cm)。これに続き、365nmで均一露光を30分間行うことにより残りのアクリレートの重合を完了させた。このようにして、間隔Λ≒450nm、スラント角φ=23°のスラント型透過型回折格子を厚さd=7μmのフィルムに記録した。CCFLから出力結合された光の輝度をCCD分光器(オートロニック、CCD−spect−2)を用いて測定した。垂直に近い角度で得られる赤色(611nm)、緑色(546nm)、および青色(436nm)光の偏光比は、それぞれ13、12、および8である(図5a)。比較実験Aに記載したフィルムとは反対に、広い波長範囲で高い偏光比が得られる。図5bからは、放出される光の一方向性が非常に高いことが示され、これが、フロントライト用途における主要な利点となる。図5cにおいては、角度がわずかに異なると異なる色の光が放出されることが示される。この現象は、カラーフィルタの効率を高めるために使用することができる(ジャグトらによる米国特許第6,750,966号明細書参照)。
【0069】
実施例2
PN393プレポリマー(メルクからの、UV感応性光開始剤を含む2−エチルヘキシルアクリレートモノマーおよびトリメチロールプロパントリアクリレート架橋剤)と、液晶性ジエポキシドである4−[(2,3−エポキシプロペニル)オキシ]安息香酸4−[(2,3−エポキシ−プロペニル)オキシ]フェニルにカチオン性ジアリールヨードニウム塩1重量%を加えたものと、さらなる架橋剤であるトリメチロールプロパントリメタクリレート(アルドリッチ)との混合物を、それぞれの重量百分率比を40/50/10として調製した。
【0070】
18μmのスペーサを備えたセルにこの混合物を充填し、二光束透過配置を用いて、Arイオンレーザーの351nm線に角度+42.5および−42.5°で露光させた(各光束25mW/cm)。これに続き、365nmで均一露光を60分間行い、残りのアクリレートの重合を完了させ、液晶性ジエポキシドを重合させた。このようにして、間隔∧≒450nmのスラント型回折格子を有する完全に重合されたフィルムが形成された。反応性モノマー(アクリレート)と反応性メソゲン(液晶性ジエポキシド)とが相分離を示す屈折率の変調度が高い(約0.005)固体フィルムが得られた。このポリマー回折格子はガラス基板から剥離することができ、完全に重合された可撓性フィルムを得た。さらに、このフィルムの偏光比は546nmで7であった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】ジャグトら(米国特許第6,750,996号明細書)による、ホログラムを備えたバックライトまたはフロントライトの動作である。無偏光を導波体スラブの端面から入力結合し、回折格子フィルムを用いることによって、色分離された偏光をバックライトに垂直な一方向に放出する。
【図2】(a)は、比較実験Aに記載された回折格子から放出されるpおよびs偏光の角度分布の測定値である。CCFLから放射された光の赤色(R)、黄色(Y)、緑色(G)、および青色(B)の色分離を示す。(b)は、比較実験Aに記載された回折格子の角度分布の測定値から得られた、角度に応じた偏光比である。
【図3】2本の光束を用いた透過モード記録配置である。結果として得られる回折格子および格子ベクトルK(回折格子方向と垂直)を示してある。
【図4】比較実験Bに記載された回折格子のp、s、および無偏光の角度分布の測定値である。
【図5】(a)は、赤色(611nm)、緑色(546nm)、および青色(436nm)波長のsおよびp偏光の角度分布の測定値であり、平行光化および角度分散が際立っている。(b)は、前方および後方に放出された赤色光の角度分布である。(c)は、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)波長のpおよびs偏光の角度分布である。
【図6】突出部は、繊維状、帯状、またはテープ状の幾何学形状を有してもよい。写真1はこの種の幾何学形状のSEM写真の例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光を出力結合するスラント型異方性ホログラム層を備えたエッジライト型スラブ導波体。
【請求項2】
偏光比が少なくとも3である、請求項1に記載の導波体。
【請求項3】
波長(色)の異なる光が異なる角度で出力結合される、請求項1または2に記載の導波体。
【請求項4】
すべての可視波長において偏光度が少なくとも3である、請求項3に記載の導波体。
【請求項5】
出力結合されなかった光を再利用することが可能である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導波体。
【請求項6】
光重合材料および少なくとも1種のメソゲンをベースとし、重合後に前記メソゲンが整列状態にある、スラント型異方性ホログラム層。
【請求項7】
前記層が、少なくとも1種の反応性モノマーおよび少なくとも1種の非反応性メソゲンをベースとし、前記モノマーの重合後に前記メソゲンが整列状態にある、請求項6に記載の層。
【請求項8】
前記層が、少なくとも1種の反応性モノマーおよび少なくとも1種の反応性メソゲンをベースとし、重合後に前記メソゲンが整列状態にある、請求項6に記載の層。
【請求項9】
前記層が、少なくとも1種の反応性モノマーならびに重合後に整列状態にある少なくとも1種の反応性および少なくとも1種の非反応性メソゲンの混合物を含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載の層。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の層を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の導波体。
【請求項11】
直線偏光を出力結合するスラント型異方性ホログラム層を備えたエッジライト型スラブ導波体であって、前記層が、少なくとも1種の反応性モノマーおよびメソゲンの混合物の重合によって得られ、かつ前記メソゲンが整列状態にある、導波体。
【請求項12】
前記メソゲンが、重合性基を有する少なくとも1種の化合物を含む、請求項11に記載の導波体。
【請求項13】
前記反応性モノマーが、少なくとも多官能性アクリレートまたはメタクリレート化合物を含む、請求項11または12に記載の導波体。
【請求項14】
前記メソゲンが、カチオン重合性基を有する少なくとも1種の化合物を含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の導波体。
【請求項15】
前記メソゲンが、エポキシ、オキセタン、またはビニルエーテル基を有する少なくとも1種の化合物を含む、請求項14に記載の導波体。
【請求項16】
前記メソゲンの常光屈折率(no,m)と前記ポリマーの等方的な屈折率(niso,p)との差が、出力結合される偏光状態において0.03未満であるか、または前記メソゲンの異常光屈折率(ne,m)と前記ポリマーの等方的な屈折率(niso,p)との差が、出力結合される偏光状態において0.03未満である、請求項1〜5または10〜15のいずれか一項に記載の導波体。
【請求項17】
少なくとも1種の非反応性メソゲンを含み、前記被覆または層が、光が出力結合される(明)状態と光が出力結合されない(暗)状態との間で切り替え可能である、請求項1〜5または10〜16のいずれか一項に記載の導波体。
【請求項18】
異なる重合方法を用いることによって重合される少なくとも1種の反応性モノマーおよび少なくとも1種の反応性メソゲンをベースとする、スラント型異方性ホログラム層の製造方法。
【請求項19】
前記モノマーの前記重合が、光開始剤およびUV光を用いることによって誘起され、かつ前記ホログラムが透過モードで記録される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項18または19に記載の方法によって得ることができる、スラント型異方性ホログラム層。
【請求項21】
請求項20に記載のスラント型異方性ホログラム層を含む、エッジライト型スラブ導波体。
【請求項22】
請求項1〜5、10〜16、または21のいずれか一項に記載の導波体を含む、フロントライト。
【請求項23】
請求項1〜5、10〜16、または21のいずれか一項に記載の導波体を含む、バックライト。
【請求項24】
請求項1〜5、10〜16、または21のいずれか一項に記載の導波体を含む、ディスプレイ。
【請求項25】
請求項1〜5、10〜16、または21のいずれか一項に記載の導波体を含む、光学素子。
【請求項26】
スラント型異方性ホログラム層の作製方法であって、
a)少なくとも1種の反応性モノマーおよび反応性メソゲンの混合物を提供するステップと、
b)前記混合物の層を作製するステップと、
c)UV放射を適用することにより前記反応性モノマーの少なくとも一部を重合させてスラント型透過型回折格子とするステップと、
d)続いて熱またはUV曝露を適用することにより前記反応性メソゲンおよび(任意の)残りの未反応のモノマーをさらに重合させるステップと、
を含む、方法。
【請求項27】
ステップcの前記UV放射が、2光束に分離するレーザー光束を用いた透過モード配置で適用される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記反応性モノマーが、少なくとも多官能性アクリレートまたはメタクリレート化合物を含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記反応性メソゲンが、少なくともカチオン重合性基を有する化合物を含む、請求項26〜28のいずれか一項に記載に記載の方法。
【請求項30】
前記混合物の前記層が、定められた厚みの1個またはそれ以上のスペーサを有するセルに前記混合物を充填することによって調製される、請求項26〜29のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−517323(P2008−517323A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536635(P2007−536635)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000742
【国際公開番号】WO2006/041291
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(505307806)スティッチング ダッチ ポリマー インスティテュート (18)
【Fターム(参考)】