説明

異材検出システム

【課題】 データが安定し、異材の判定が簡単かつ精度よく行うことができ、信頼性の高い異材検出システムを提供すること。
【解決手段】 被検査材の材質に応じて適正な励磁電流の周波数で導電率と透磁率を測定し、その測定した導電率と透磁率に基づいて異材を検出するシステムであって、測定に際し、被検査材の長さ方向の一端部を一定長さの範囲、もしくは両端部の一定長さを除く範囲で、かつ一定時間停止させて該被検査材の導電率と透磁率を測定する成分識別装置11と、同一成分で同一製造工程で製造される被検査材ロットの異材混入判定に先立って、当該ロットの先頭の被検査材の長さ方向複数の位置で前記成分識別装置により測定した導電率と透磁率のデータを統計処理して標準偏差の3σ値で設定した閾値と、2本目以降の被検査材に対して同様に前記成分識別装置により測定した導電率と透磁率のデータとを順次比較することで異材を判定する制御装置12と、を具えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磨き棒鋼などの被検査材の異材検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からよく知られているこの種の異材検出システムは、一般的に火花検査であるが、この火花検査は特殊なスキルとそのスキルを維持する訓練が不可欠である。しかし、火花検査員の養成は半年以上の訓練が必要であり、かつ火花検査員としての適性可否もあり、要員の確保は至難な状況である。また、火花検査のエラー率はヒューマンエラーも起こり易いことから統計的には70〜80%と言われ、完全な異材検出とは言い難い。
【0003】
前述のような事情に鑑み、特許文献1に開示されているような異材判定方法及び装置が提案されている。この技術は、同一成分で同一圧延チャンスの被検材ロットの異材判定に先立って、当該ロット初期の少なくとも1つの被検材のインピーダンスを測定して、その測定インピーダンスの平均値を中心とする平均値の大きさに比例した正常値範囲を設定し、その後、他の被検材に対してその測定インピーダンスと前記正常値範囲との比較に基づいて異材を判定するものであり、これにより操作性及びメンテナンス性を向上できるとともに、経時変化、周囲温度変化、ロット間での被検材のサイズや成分のばらつき等に影響されることなく異材を常に簡単かつ確実に判定することができる、というものである。
【0004】
しかしながら、この特許文献1の技術は、インピーダンスの測定に際して搬送ラインを送られる被検材を、その長さ方向一端部から他端部にいたるまで全部に亘って検出コイルを通過させながら測定するので、測定データにバラツキが生じて安定したデータを得るのが難しく、特に磨き棒鋼に対してはデータの信頼性がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−147217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、前記従来の装置がもつ問題点を解決し、データが安定し、異材の判定が簡単かつ精度よく行うことができ、信頼性の高い異材検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被検査材の導電率と透磁率を測定し、その測定した導電率と透磁率に基づいて異材を検出するシステムであって、測定に際し、被検査材の長さ方向の一端部を一定長さの範囲で、かつ一定時間停止させて該被検査材の導電率と透磁率を測定する成分識別装置と、同一成分で同一製造工程で製造される被検査材ロットの異材混入判定に先立って、当該ロットの先頭の被検査材の長さ方向複数の位置で前記成分識別装置により測定した導電率と透磁率のデータを統計処理して標準偏差の3σ値で設定した閾値と、2本目以降の被検査材に対して同様に前記成分識別装置により測定した導電率と透磁率のデータとを順次比較することで異材を判定する制御装置と、を具えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、既設の被検査材の表面傷等を検出するEC検出ラインと、該ラインにインラインで組み込んで異材を検出する異材検出ラインとを有し、これら両ラインの上流側から順に被検査材ロットを集積する給材テーブルと、該給材テーブルから1本づつ送られる被検査材を受け入れる入側搬送装置と、被検査材の表面傷等を検出するECセンサー部と、前記入側搬送装置からECセンサー部を経て送られる前記被検査材を受け入れる出側搬送装置と、前記ECセンサー部で許容値を越える表面傷等があると検出された被検査材をリジェクトするEC用NGポケットと、前記出側搬送装置からEC用NGポケットを経て送られる前記被検査材を受け入れてロットとして集積する集材テーブルと、を具えた異材検出システムであって、前記給材テーブルと入側搬送装置の間に設置された被検査材挿入装置と、該被検査材挿入装置の給材方向に対して交叉する一方の側に設置されて被検査材挿入装置で保持された被検査材の一端部を一定長さの範囲で、かつ一定時間停止させて該被検査材の導電率と透磁率を測定する成分識別装置と、同一成分で同一製造工程で製造される被検査材ロットの異材混入判定に先立って、当該ロットの先頭の被検査材の長さ方向複数の位置で前記成分識別装置により測定した導電率と透磁率のデータを統計処理して標準偏差の3σ値で設定した閾値と、2本目以降の被検査材に対して同様に前記成分識別装置により一箇所のみ測定した導電率と透磁率のデータとを順次比較することで異材を判定する制御装置と、前記出側搬送装置と集材テーブルの間に設置された異材ポケットと、前記制御装置で異材と判定された該異材を前記異材ポケットにリジェクトするように制御する異材判定制御装置と、を具えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の被検査材の異材検出システムにおいて、成分識別装置は、励磁コイルと測定コイルを有し、被検査材の一端部を挿入する検出コイルと、被検査材に渦電流を発生させるべく前記励磁コイルに励磁電流を供給する発振器と、前記測定コイルに誘起される誘導電流を前記励磁電流に基づいて同期検波し被検査材の導電率と透磁率を測定する同期検波手段と、を有し、制御装置は、前記同期検波手段による先頭の被検査材の測定導電率と透磁率からデータを統計処理し、標準偏差の3σ値で閾値を設定する閾値設定手段と、該閾値設定手段に設定された先頭の被検査材の閾値と前記同期検波手段による2本目以降の被検査材の測定導電率と透磁率のデータとの比較に基づいて異材を判定する判定手段と、同一成分で同一製造工程で製造される被検査材ロットの異材混入判定に先立って、当該ロットの先頭の被検査材の長さ方向複数の位置で導電率と透磁率を測定し、その測定した導電率と透磁率のデータを統計処理し、標準偏差の3σ値で閾値を前記閾値設定手段に設定し、2本目以降の被検査材に対しては前記判定手段においてその測定した導電率と透磁率のデータと、前記先頭の被検査材の閾値とを順次比較することで異材を判定するように制御する制御手段と、を有し、発振器から供給する励磁電流の周波数の範囲を、被検査材が磁性材の場合は16Hz〜32Hz、非磁性材の場合は32KHz〜64KHzとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、前記のようであって、請求項1に記載の発明は、測定に際し、被検査材の長さ方向の一端部を一定長さの範囲で、かつ一定時間停止させて該被検査材の導電率と透磁率を測定する成分識別装置と、同一成分で同一製造工程で製造される被検査材ロットの異材混入判定に先立って、当該ロットの先頭の被検査材の長さ方向複数の位置で前記成分識別装置により測定した導電率と透磁率のデータを統計処理して標準偏差の3σ値で設定した閾値と、2本目以降の被検査材に対して同様に前記成分識別装置により測定した導電率と透磁率のデータとを順次比較することで異材を判定する制御装置と、を具えているので、従来の被検査材の全体を検出コイルを通過させるものよりも測定データが安定し、異材の判定が簡単かつ精度よく行うことができる。データの安定性は被検査材が磨き棒鋼の場合、特に顕著である。しかも、一般的に行われている火花検査に対して火花検査員の確保も不要となり、大幅なコストダウンが可能となるとともに、火花検査に比べその異材検出精度は向上し、ユーザーへの信頼性が向上するという優れた効果がある。
【0011】
請求項2に記載の発明は、上流側から順に給材テーブル、入側搬送装置、ECセンサー部、出側搬送装置、EC用NGポケット、集材テーブルと、を具えた既設の設備である表面傷検出システムに、被検査材保持挿入装置、成分識別装置、制御装置、異材ポケット、及び異材判定制御装置を新たに具え、既設のEC検出ラインに対する異材検出ラインのインライン化が可能となる。そのため、異材の判定結果をタイムリーに既設の設備へフィードバックでき、異材のリジェクトが可能となる。また、タイムリーに結果が判明することにより原因調査が容易となり、的確な対策が取り易くなる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、成分識別装置の発振器から供給する励磁電流の周波数の範囲を、被検査材が磁性材の場合と非磁性材の場合とで好ましい値に設定することにより、全ての材質の識別の精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施の形態を示す、EC検出ラインに異材検出ラインをインライン化した異材検出システムの全体概略平面図である。
【図2】同上の成分識別装置とその制御盤等の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】測定波形を示す部分図である。
【図4】測定波形の信号を示すグラフである。
【図5】インピーダンスマップを示すグラフである。
【図6】測定した閾値を示すグラフである。
【図7】被検査材の一端部を検出コイルに挿入して測定する部分図である。
【図8】導電率と透磁率について、(A)は磁性材の端部影響を受けない長さの確認、(B)は非磁性材の端部影響を受けない長さの確認、を表すグラフである。
【図9】識別判定できる停止時間とバラツキの範囲について、(A)は磁性材、(B)は非磁性材、を表すグラフである。
【図10】別の実施の形態を示す異材検出システムの全体概略平面図である。
【図11】被検査材を検出コイルに通過させながら測定する部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る異材検出システムについて、詳しく説明する。
【0015】
図1は、既設のEC検出ラインに異材検出ラインをインラインで組み入れた全体システムの概要図を示す。同図において、1は異材検出システムであり、磨き棒鋼等の被検査材Wのライン上流側から順に被検査材ロットを集積する給材テーブル2、被検査材挿入装置3、給材テーブル2から被検査材挿入装置3を経て1本づつ送られる被検査材Wを受け入れる入側搬送装置4、被検査材の表面傷等を検出するECセンサー部5、入側搬送装置4からECセンサー部5を経て1本づつ送られる被検査材Wを受け入れる出側搬送装置6、異材ポケット7、EC用NGポケット8、出側搬送装置6から異材ポケット7及びEC用NGポケット8を経て1本づつ送られる被検査材Wを受け入れロットとして集積する集材テーブル9が配設されている。本システムでは被検査材Wとして磨き棒鋼を例示している。被検査材挿入装置3の給材方向に対して直交する一方の側には成分識別装置11が設置され、被検査材挿入装置3から矢印で示すように給材方向に対して直交方向となる横に送られてくる被検査材Wの一端部を受け入れて可能となっている。また、成分識別装置11と接続して成分識別装置制御盤12が設置されているとともに、成分識別装置制御盤12と接続して異材判定制御装置13が設置されている。異材判定制御装置13は、成分識別装置制御盤12からの信号を受けて被検査材挿入装置3、異材ポケット7を制御する。
【0016】
成分識別装置11は、導電率と透磁率の相違を分析する電磁誘導法を基本原理とするものであるが、図2に示すように構成されている。すなわち、被検査材Wの成分を識別するために導電率と透磁率を測定する検出コイル16は、図示しない一次コイルとしての励磁コイルと二次コイルとしての測定コイルを有し、その中心孔に被検査材Wの一端部を挿入可能にしている(図7参照)。成分識別装置11は、そのほかに発振器17、増幅器18、同期検波器19を有し、発振器17から前記励磁コイルに励磁電流を供給して検出コイル16に挿入される被検査材Wに渦電流を生じさせ、それによって前記測定コイルに誘起される誘導電流を増幅器18で増幅して同期検波器19に供給する。同期検波器19には発振器17からの出力、すなわち前記励磁コイルに供給される励磁電流と同相の信号も供給し、これにより増幅器18の出力、すなわち前記測定コイルに誘起される誘導電流を同期検波して被検査材Wの導電率と透磁率を測定する。
【0017】
一方、成分識別装置制御盤12は、成分識別装置11の同期検波器19と接続されたスイッチ回路22、その一方の端子側に接続された閾値設定回路23、他方の端子側に接続された判定回路24、該判定回路からの信号を受けてスイッチ回路22の切替えを制御する制御回路25を有し、成分識別装置11からの測定導電率と透磁率を、制御回路25による制御によってスイッチ回路22を介して閾値設定回路23又は判定回路24に選択的に供給する。
【0018】
閾値設定回路23には閾値が設定されている。前記のように本システムでは被検査材ロットの先頭の被検査材Wを基準被検査材とし、その基準被検査材の複数の位置(軸方向の6ヶ所)でデータを採取し、そのデータを統計処理し、標準偏差の3σ値で閾値を設定している。すなわち、閾値の設定のためのデータ測定に際しては、前記励磁コイルに交流電流を与える。すると、被検査材の表面に渦電流が発生し、発生した渦電流が前記測定コイルの中を貫くこととなり、該測定コイルには電流が発生する。
【0019】
発生した電流の前記励磁コイルに誘導した交流電流を示した励磁波形(正弦波)に対して、図3に太線で示すように前記測定コイルに発生した交流波形が測定波形となる。この図では、測定波形の波高値V1の値は被検査材Wの導電率に影響され、励磁波形に対して測定波形の位相の差φ1は被検査材Wの透磁率に影響されることを示している。
【0020】
そして、図3に示す測定波形を平面図に示したのが図4の測定波形の信号となる。波形aは、ある材料を検出コイル16に挿入したときに発生した測定波形であり、それを平面図に示すと図4のV1(φ1)となる。図4のV2(φ2)は別の材料を同様に検出コイル16に挿入した場合の測定波形を平面図に表したものである。このV1(φ1)の測定波形の頂点、及びV2(φ2)の測定波形の頂点をポイントとしてプロットしたのが図5のインピーダンスマップとなる。そして、先頭の被検査材Wについては前記のように軸方向の6ヶ所でデータを採取するので、図6に6ヶ所がポイントとしてプロットされ、これらプロットされたデータを統計処理して、標準偏差の3σ(確率99.7%)値として円で囲んだ範囲を閾値として設定する。図6において円で囲んだ閾値の範囲にある白丸印はOK材、範囲外にある黒丸印は異材(NG材)であることを表している。
【0021】
前記のようにして先頭の被検査材Wに基づき閾値設定回路23に設定される閾値は、図2に示すように閾値設定回路23から判定回路24に供給され、スイッチ回路22を経て供給される2本目以降の被検査材Wの測定導電率と透磁率と比較され、測定導電率と透磁率が閾値の範囲内にあるときは判定回路24で正規の被検査材W(OK材)と判定される一方、閾値の範囲から外れているときは異材(NG材)と判定されて、その判定結果が制御回路25を経て図1の異材判定制御装置13に送られる。
【0022】
前記のように2本目以降の被検査材Wを順次先頭の被検査材W(基準被検査材)と比較することで異材を検出するのであるが、その検出に際しては、従来のように被検査材Wの全体を検出コイルに通すのではなく、図7に示すように被検査材挿入装置3により保持された被検査材Wを成分識別装置11のある側に横送りし、その長さ方向一端部を一定の長さの範囲で検出コイル16に通し、しかも一定時間停止した状態で行うが、その最適挿入量と最適停止時間は試験に基づき次のようにして設定している。
【0023】
すなわち、最適挿入量Xとは、図7に示すように検出コイル16の一方の端(図で左端)から突出した量で示し、この最適挿入量Xについては、そのサンプルの設定条件としてコイルの種類がLF(低域励磁周波数)で、コイル内径が20mm、試験周波数が16Hzの磁性材と、コイルの種類がHF(高域励磁周波数)で、コイル内径が10mm、試験周波数が32KHzの非磁性材に分け、それぞれの端末の影響を縦軸に導電率、横軸に透磁率をとって検証したところ、磁性材については図8(A)、非磁性材については図8(B)に示すような結果を得た。
【0024】
これによると、サンプル明細が磁性材(SUS430F相当)、φ17.12については端末の影響を受けない最適挿入量Xの長さは300mmが好ましいことが判明し、サンプル明細が非磁性材(SUS303)、φ6.0については端末の影響を受けない最適挿入量Xの長さは100mmが好ましいことが判明した。そこで、本システムでは、その端部が300mm(先端から検出コイル16の一方の端までの長さ)のところを挿入量Xとしている。
【0025】
また、測定に際しての最適停止時間について検証したところ、LFコイル・10mmの磁性材については図9(A)、HFコイル・10mmの非磁性材については図9(B)に示すような結果を得た。これによると、磁性材については検出コイル16内での停止(静止)時間が0.5秒間に満たない時間の場合には時折エラーが表示されが、1秒以上の場合はエラーが表示されないことが判明し、非磁性材については0秒間としてもエラーは表示されないが、0.5秒以下は1秒以上に比べてバラツキが大きくなることが判明した。そこで、本システムでは磁性材、非磁性材とも材料を静止させる停止時間を1秒としている。勿論、停止時間を1.5秒、あるいは2秒としてもよい。
【0026】
そして、前記のように本システムで採用した被検査材Wの磁性材及び非磁性材の材種別の最適挿入量Xと最適停止時間は、異材判定制御装置13に設定され、この異材判定制御装置13からの制御により、前記被検査材Wが設定した最適挿入量と最適停止時間となるように被検査材挿入装置3を作動する。
【0027】
なお、発振器17から励磁コイルに供給される励磁電流の周波数の範囲としては、被検査材が磁性材の場合は前記16Hzの他に16Hz〜32Hzの範囲とすることが可能であり、非磁性材の場合は32KHzの他に32KHz〜64KHzの範囲とすることが可能であることが試験の結果、判明した。
【0028】
次に、前記のようにして材種別に被検査材Wの一端部の最適挿入量と最適停止時間を設定して行う2本目以降の被検査材Wに対する作用について説明する。まず、2本目の被検査材Wが給材テーブル2から被検査材挿入装置3に送られてくると、該被検査材は異材判定制御装置13からの制御を受ける被検査材挿入装置3によりその一端部が検出コイル16の挿入量X位置となるまで横に送られて停止される。そして、停止時間1秒の間にその導電率と透磁率が測定される。
【0029】
検出コイル16で測定された導電率と透磁率のデータは、増幅器18で増幅されて同期検波器19へ送られる。そして、発信器17から同期検波器19へ送られる同相信号と同期検波器19で同期が取られたうえ、成分識別装置制御盤12のスイッチ回路22へ送られる。スイッチ回路22へ送られた導電率と透磁率のデータは、さらに制御回路25による切替え制御により判定回路24へ送られる。そして、判定回路24ではこのスイッチ回路22から送られてくる導電率と透磁率の測定データと、閾値設定回路23から送られてくる閾値との比較がされる。そして、判定回路24でデータが図6に円で囲んだ範囲にプロットされると同じ材料と判定(OK材)され、円から外れた位置にプロットされると異材と判定される。
【0030】
OK材と判定された被検査材Wは、前述したようにその後、給材ラインに沿って入側搬送装置4、ECセンサー部5、出側搬送装置6へと送られ、さらに出側搬送装置6から集材テーブル9へ送られ、ロットとして集材テーブル9上に集積される。一方、異材(NG材)と判定された被検査材Wは、出側搬送装置6からの搬送途中で異材ポケット7へリジェクト(分別)される。リジェクトの方法としては例えば給材ラインを形成する搬送板(図示せず)を異材判定制御装置13の制御により傾斜させてその下方の凹所に落下させる方法がある。なお、本システムはEC検出ライン内に異材検出ラインをインラインで組み込んだシステムであり、前記EC検出ラインではECセンサー部5で被検査材Wの表面傷等の検出が行われ、表面傷等が検出されると、その傷が検出された被検査材は、EC用NGポケット8へリジェクト(分別)される。
【0031】
前記のように励磁電流の周波数の範囲は、被検査材Wが磁性材の場合は16Hz〜32Hz、非磁性材の場合は32KHz〜64KHzとするのが好ましいが、被検査材Wの材質に応じて適正な誘導周波数を選択することにより、磁性材及び非磁性材の区別なく同原理で検出が可能である。また、このときのデータを蓄積することにより、被検査材Wの材質特定が可能となるうえ、仮に異材が検出された場合はその材質を特定することで相手材が特定することが容易となり、原因究明も容易となることから適切な対策が可能となる。
【0032】
前記のようであって本システムによれば、給材テーブル2から1本づつ送られる被検査材Wが被検査材挿入装置3において成分識別装置11側に送られてその一端部が検出コイル16に挿入されて成分が識別され、それに基づき成分識別装置制御盤12で異材と判定される。そのため、従来のように被検査材の全体を検出コイルに通さなくともよく、しかも測定に際して一旦停止させ静止した状態で行うので、安定した測定データを得ることができ、異材の判定が簡単かつ精度のよいものとなる。そして、この異材は異材判定制御装置13からの制御により、OK材はその後に集材テーブル9まで送られてロットとして集材されるのに対して、送られる過程で異材ポケット7へリジェクトされる。そのため、異材をラインから確実に除去することが可能となり、集材テーブル9でOK材と混在することがない。また、本システムではECセンサー部5で表面傷等が検出された被検査材Wは、同様に異材判定制御装置13からの制御によりEC用NGポケット8へリジェクトされるが、この従来からある設備ともインライン化を進めることができ、システムの価値評価を高めることができる。
【0033】
図10は、別の実施の形態の異材検出システムである。主要な構成は前記実施の形態と同じであるので、同一構成には同一符号を付して説明を省略する。この実施の形態で特徴的なのは、前記に示した実施の形態では被検査材の端部の一定長さを異材検出センサー部に挿入して、一定時間静止させたが、図10に示すように被検査材を異材検出センサー部を通過させる途中で図11に示すとおり両端部から一定の長さを差し引いた任意の位置で一定時間静止させている点である。図11に示す最適挿入量Xも段落0022の記載と同意で、図10の場合は非測定位置を示す。
【0034】
尚、前記各実施の形態は、あくまでも好ましい一例を挙げたにすぎず、特に成分識別装置11や成分識別装置制御盤12の具体的な構成については、その実施に際して、特許請求の範囲に記載の範囲内で適宜に変更、修正することが可能である。また、実施の形態では、被検査材を保持し成分識別装置に挿入する被検査材挿入装置3を設け、該装置を介して被検査材をその軸に送ってその一端部を成分識別装置11の検出コイル16の中に挿入するようにしたが、これとは逆に検出コイル16のある成分識別装置11を横に送って被検査材の一端部に挿入するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 異材検出システム
2 給材テーブル
3 被検査材挿入装置
4 入側搬送装置
5 ECセンサー部
6 出側搬送装置
7 異材ポケット
8 EC用NGポケット
9 集材テーブル
11 成分識別装置
12 成分識別装置制御盤(制御装置)
13 異材判定制御装置
16 検出コイル
17 発振器
18 増幅器
19 同期検波器(同期検波手段)
22 スイッチ回路
23 閾値設定回路(閾値設定手段)
24 判定回路(判定手段)
25 制御回路(制御手段)
W 被検査材(磨き棒鋼)
X 最適挿入量(但し、図10の場合は非測定位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査材の導電率と透磁率を測定し、その測定した導電率と透磁率に基づいて異材を検出するシステムであって、
測定に際し、被検査材の長さ方向の一端部を一定長さの範囲で、かつ一定時間停止させて該被検査材の導電率と透磁率を測定する成分識別装置と、
同一成分で同一製造工程で製造される被検査材ロットの異材混入判定に先立って、当該ロットの先頭の被検査材の長さ方向複数の位置で前記成分識別装置により測定した導電率と透磁率のデータを統計処理して標準偏差の3σ値で設定した閾値と、2本目以降の被検査材に対して同様に前記成分識別装置により測定した導電率と透磁率のデータとを順次比較することで異材を判定する制御装置と、
を具えたことを特徴とする被検査材の異材検出システム。
【請求項2】
既設の被検査材の表面傷等を検出するEC検出ラインと、該ラインにインラインで組み込んで異材を検出する異材検出ラインとを有し、これら両ラインの上流側から順に被検査材ロットを集積する給材テーブルと、該給材テーブルから1本づつ送られる被検査材を受け入れる入側搬送装置と、被検査材の表面傷等を検出するECセンサー部と、前記入側搬送装置からECセンサー部を経て送られる前記被検査材を受け入れる出側搬送装置と、前記ECセンサー部で許容値を越える表面傷等があると検出された被検査材をリジェクトするEC用NGポケットと、前記出側搬送装置からEC用NGポケットを経て送られる前記被検査材を受け入れてロットとして集積する集材テーブルと、を具えた異材検出システムであって、
前記給材テーブルと入側搬送装置の間に設置された被検査材挿入装置と、
該被検査材挿入装置の給材方向に対して交叉する一方の側に設置されて被検査材挿入装置で保持された被検査材の一端部を一定長さの範囲で、かつ一定時間停止させて該被検査材の導電率と透磁率を測定する成分識別装置、又は入側搬送装置と出側搬送装置の間に設置された成分識別装置内に被検査材の両端部の一定長さを除く範囲内で、且つ一定時間停止させて該被検査材の導電率と透磁率を測定する成分識別装置と、
同一成分で同一製造工程で製造される被検査材ロットの異材混入判定に先立って、当該ロットの先頭の被検査材の長さ方向複数の位置で前記成分識別装置により測定した導電率と透磁率のデータを統計処理して標準偏差の3σ値で設定した閾値と、2本目以降の被検査材に対して同様に前記成分識別装置により一箇所のみ測定した導電率と透磁率のデータとを順次比較することで異材を判定する制御装置と、
前記出側搬送装置と集材テーブルの間に設置された異材ポケットと、
前記制御装置で異材と判定された該異材を前記異材ポケットにリジェクトするように制御する異材判定制御装置と、
を具えたことを特徴とする異材検出システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の被検査材の異材検出システムにおいて、
成分識別装置は、励磁コイルと測定コイルを有し、被検査材の一端部を挿入する検出コイルと、被検査材に渦電流を発生させるべく前記励磁コイルに励磁電流を供給する発振器と、前記測定コイルに誘起される誘導電流を前記励磁電流に基づいて同期検波し被検査材の導電率と透磁率を測定する同期検波手段と、を有し、
制御装置は、前記同期検波手段による先頭の被検査材の測定導電率と透磁率からデータを統計処理し、標準偏差の3σ値で閾値を設定する閾値設定手段と、
該閾値設定手段に設定された先頭の被検査材の閾値と前記同期検波手段による2本目以降の被検査材の測定導電率と透磁率のデータとの比較に基づいて異材を判定する判定手段と、同一成分で同一製造工程で製造される被検査材ロットの異材混入判定に先立って、当該ロットの先頭の被検査材の長さ方向複数の位置で導電率と透磁率を測定し、その測定した導電率と透磁率のデータを統計処理し、標準偏差の3σ値で閾値を前記閾値設定手段に設定し、2本目以降の被検査材に対しては前記判定手段においてその測定した導電率と透磁率のデータと、前記先頭の被検査材の閾値とを順次比較することで異材を判定するように制御する制御手段と、を有し、
発振器から供給する励磁電流の周波数の範囲を、被検査材が磁性材の場合は16Hz〜32Hz、非磁性材の場合は32KHz〜64KHzとすることを特徴とする被検査材の異材検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−83247(P2012−83247A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230348(P2010−230348)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(591072020)下村特殊精工株式会社 (5)
【Fターム(参考)】