説明

異物の判別方法

【課題】成形用原料樹脂や樹脂成形品の内部に混入又はその表面に付着した異物が生体組織由来の異物であることを判別する方法を提供する。
【解決手段】成形用原料樹脂若しくは樹脂成形品の内部に混入又はその表面に付着した異物が生体組織由来か否かを判別する異物の判別方法であって、透過法又は反射法による異物への顕微赤外吸収スペクトル分析を実施したときに、得られる赤外吸収スペクトルの波数3,000〜650cm−1の範囲において、波数1,700〜1,600cm−1の範囲に最も強い吸収のピーク(A)が観測され、且つ、波数1,600〜1,500cm−1の範囲にピーク(A)に次ぐ強い吸収のピーク(B)が観測される異物について元素分析により酸素、硫黄、ナトリウム、カリウム及び塩素を検出する異物の判別方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異物の判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形用原料樹脂を溶融成形して得られる製品は、容器類、筐体類、被覆部品類、導光体類等といった、日用品用途から工業用用途に至るまでのさまざまな用途に幅広く使用されている。
【0003】
それらの樹脂成形品には、多くの場合、成形用原料樹脂を製造する段階や成形用原料樹脂を成形する段階で種々の異物が成形用原料樹脂若しくは樹脂成形品の内部に混入又は成形用原料樹脂若しくは樹脂成形品の表面に付着している。
【0004】
上記の異物の種類としては、成形用原料樹脂の成形方法や成形条件、又は樹脂成形品を加工する環境によって異なるが、例えば、製造ラインに構造部材として使用されている各種金属材料や樹脂材料の破片類、作業者の衣類に由来する各種繊維類や作業者に由来する皮膚等の生体組織、紙製品等の生産活動に不可欠な材料の一部等が挙げられる。
【0005】
それら異物の混入や付着の頻度の許容範囲は、樹脂成形品の用途によって大きく異なるが、例えば、ノートパソコン等のディスプレイ画面に用いられる液晶表示装置用の導光体等では、視認できるレベルの異物は一製品中に一つも許されないほどの厳しい品質管理が求められる場合がある。
【0006】
それらの異物を低減するためには、異物の種類を特定することが不可欠である。
【0007】
成形用原料樹脂や樹脂成形品の内部に混入又はその表面に付着した異物は数十μm以下の大きさしかないものも稀ではないため、それらを定性分析する手段が限定されることも少なくないが、有効なものとして顕微赤外吸収スペクトル分析がある。
【0008】
しかしながら、上記の異物には、分子構造の異なる物質でありながら顕微赤外吸収スペクトルが類似していて、異物の同定が困難なものがある。
【0009】
同定できない異物に対しては、異物の発生源を特定することができないため、異物低減対策を効率的に実施することができず、成形用原料樹脂や樹脂成形品の内部への異物の混入又はその表面への付着を低減することが難しい。
【0010】
異物の発生源を特定する方法の1つとして、生体組織のタンパク質の判別方法に赤外吸収スペクトルを利用したものが挙げられる。
【0011】
例えば、特許文献1には、リサイクルプラスチックの表面に付着した異物の全反射赤外吸収スペクトル分析を実施し、波数1,654〜1,646cm−1の範囲と波数1,541〜1,549cm−1の範囲にピークを有するか否かでその異物がタンパク質であるかどうかを識別する方法が提案されている。
【0012】
しかしながら、皮膚等の生体組織のようなタンパク質の赤外吸収スペクトルは、植物性タンパク質やタンパク質以外のポリアミド化合物等の分子骨格にCO結合やNH結合を有する合成物質の赤外吸収スペクトルと類似していることから、赤外吸収スペクトル分析のみによってそれらの異物が生体組織由来のタンパク質であると断定することは難しい。
【特許文献1】特開2003−227793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、成形用原料樹脂や樹脂成形品の内部に混入又はその表面に付着した異物が生体組織由来の異物であることを判別する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の要旨とするところは、成形用原料樹脂若しくは樹脂成形品の内部に混入又はその表面に付着した異物が生体組織由来か否かを判別する異物の判別方法であって、透過法又は反射法による異物への顕微赤外吸収スペクトル分析を実施したときに、得られる顕微赤外吸収スペクトルの波数3,000〜650cm−1の範囲において、波数1,700〜1,600cm−1の範囲に最も強い吸収のピーク(A)が観測され、且つ、波数1,600〜1,500cm−1の範囲にピーク(A)に次ぐ強い吸収のピーク(B)が観測される異物について元素分析により酸素、硫黄、ナトリウム、カリウム及び塩素を検出する異物の判別方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、成形用原料樹脂や樹脂成形品の内部に混入又はその表面に付着した異物が生体組織由来の異物であると判別できるため、作業者や作業環境の防塵対策を効率的に実施でき、液晶表示装置用の導光体のような高いクリーン度が求められる製品の品質を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(成形用原料樹脂および樹脂成形品)
本発明で使用される成形用原料樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート等の単独重合体、それらの単量体単位を含む共重合体及びそれらのブレンド体が挙げられる。
【0017】
本発明において、樹脂成形品としては、例えば、成形用原料樹脂を金型射出法、シート押出法、溶融紡糸法等によって得られる成形品が挙げられる。この成形品の好適な用途として液晶表示装置に用いられる導光体が挙げられ、これに本発明を適用することは、成形用原料樹脂の製造、あるいは樹脂成形品の製造に際し、作業者や作業環境の防塵対策を効果的に実施できる点で有用である。この導光体に用いる成形用原料樹脂としては、例えば透明性に優れるポリメチルメタクリレートの単独重合体及びメチルメタクリレート単量体単位を含む共重合体が挙げられる。
【0018】
なお、上記の液晶表示装置としては、例えば、ノートパソコン等のディスプレイ画面に用いられるものが挙げられる。液晶表示装置の構成例としては、反射シート、導光体、プリズムシート、拡散シート、液晶パネル等からなるユニットが挙げられる。
【0019】
(異物)
本発明における異物は生体組織由来の異物が対象となる。生体組織由来の異物は、上記の成形用原料樹脂を製造する段階又は樹脂成形品を製造する段階で成形用原料樹脂若しくは樹脂成形品の内部に混入又は成形用原料樹脂若しくは樹脂成形品の表面に付着した、生体を構成する物質の一部からなる異物が挙げられる。
【0020】
上記の生体を構成する物質としては、例えば、皮膚、爪及び毛髪が挙げられる。
【0021】
上記の生体組織由来の異物の成分としては、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、フェニルアラニン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等のアミノ酸から構成されるタンパク質が挙げられる。更に、生体組織由来の異物としては、上記の皮膚等の生体組織に汗や唾液等の体液の成分を含むものも挙げられる。
【0022】
(顕微IRスペクトル分析)
本発明においては、成形用原料樹脂や樹脂成形品の内部に混入又はその表面に付着した異物は顕微赤外吸収スペクトル分析(以下、「顕微IRスペクトル分析」という。)により分析される。
【0023】
成形用原料樹脂や樹脂成形品の表面に付着した異物は、成形用原料樹脂や樹脂成形品から分離して異物単独の顕微赤外吸収スペクトル(以下、「顕微IRスペクトル分析」という。)を得ることが好ましい。
【0024】
異物を成形用原料樹脂や樹脂成形品から分離する方法は、特に限定されないが、検査対象となる成形用原料樹脂や樹脂成形品を光学顕微鏡で確認しながら針やピンセットを用いて、手作業で採取してもよいし、市販のマニュピレータ付き顕微鏡を利用してもよい。
【0025】
成形用原料樹脂や樹脂成形品の内部から異物を分離する方法の1つとして、成形用原料樹脂や樹脂成形品を溶解する溶剤中に成形用原料樹脂や樹脂成形品を浸漬して溶解することにより異物を分離する方法が挙げられる。
【0026】
成形用原料樹脂や樹脂成形品を溶解する溶剤としては、異物を溶解するものでなければ特に限定されず、例えば、クロロホルム及びアセトンが挙げられる。
【0027】
異物が成形用原料樹脂や樹脂成形品の内部にあり、成形用原料樹脂や樹脂成形品を溶解する適当な溶剤がない場合は、例えば、ミクロトーム装置を用いて異物が成形用原料樹脂や樹脂成形品の表面に露出するまで成形用原料樹脂や樹脂成形品を削り出し、樹脂のマトリックス中に異物が存在するような薄片状の試験体を用いて顕微IRスペクトル分析を行うことができる。
【0028】
本発明においては、上記で得られた異物を顕微IRスペクトル分析し、波数4,000〜650cm−1の範囲の顕微IRスペクトルを得る。
【0029】
顕微IRスペクトルを得る際には、別途スペクトルの補正が不必要であること等の理由から、透過法による測定が好ましい。
【0030】
顕微IRスペクトルを得るための測定装置としては、特に限定はされず、市販の装置を使用することができる。
【0031】
通常、皮膚等の生体組織のタンパク質についての顕微IRスペクトルは、波数3,000〜650cm−1の範囲において、波数1,700〜1,600cm−1の範囲に最も強く観測されるアミドIと呼ばれる吸収のピーク及び波数1,600〜1,500cm−1の範囲にアミドIのピークに次いで強く観測されるアミドIIと呼ばれる吸収のピークを有する。
【0032】
従って、異物の顕微IRスペクトルに、上記の波数1,700〜1,600cm−1の範囲に最も強い吸収のピーク(A)が、波数1,600〜1,500cm−1の範囲に前記ピーク(A)に次いで強い吸収のピーク(B)が認められれば、それらは、アミドI並びにアミドIIのピークである可能性が、すなわち、異物がタンパク質である可能性があるといえる。
【0033】
顕微IRスペクトル分析での測定は4000〜650cm−1の範囲で行うが、本発明の異物の判別は3000cm−1〜650cm−1の範囲で行う。
【0034】
尚、上記のピークの強さは、顕微IRスペクトルのチャート上における波数4,000cm−1の位置を示す縦軸の罫線と顕微IRスペクトルが交差する点と、波数650cm−1の位置を示す縦軸の罫線と顕微IRスペクトルが交差する点とを結んだ直線をベースラインとした場合の吸光度の大きさで比較することができる。
【0035】
(元素分析)
上記の波数1,700〜1,600cm−1の範囲及び波数1,600〜1,500cm−1の範囲に認められる吸収のピークは生体組織由来のタンパク質だけでなく、例えば、ポリアミド化合物等の分子骨格にCO結合やNH結合を有する合成物質の顕微IRスペクトルでも検出される場合が多いことから、異物の顕微IRスペクトルに上記の2種類のピークが認められただけでは、対象となる異物が生体組織由来の異物であると断定することはできない。
【0036】
本発明においては、上記の顕微IRスペクトル分析によって波数1,700〜1,600cm−1の範囲及び波数1,600〜1,500cm−1の範囲に吸収のピークが認められる異物について、更に元素分析を行い、硫黄の検出量並びにナトリウム、カリウム及び塩素の合計検出量を測定することにより、その異物が生体組織由来のものであるか否かを判別することができる。
【0037】
人の皮膚、爪、毛髪等のタンパク質を構成するアミノ酸の1つであるシステインあるいはメチオニンには硫黄が含まれる。従って、上記の生体組織を元素分析すると必ず硫黄が検出される。
【0038】
硫黄の検出量は組織の部位によっても異なるが、原子数において、同時に検出される酸素に対し、1〜5%である。
【0039】
一方、ポリアミド化合物等の合成物質やシステインやメチオニン以外のアミノ酸から構成されるタンパク質には硫黄は含まれない。
【0040】
従って、上記の顕微IRスペクトル分析で波数1,700〜1,600cm−1の範囲及び波数1,600〜1,500cm−1の範囲に吸収のピークが認められる異物について、更に元素分析を行って硫黄が上記の検出量の範囲で認められれば、その異物が生体組織由来の異物である可能性が示唆される。
【0041】
しかしながら、植物性タンパク質や生体組織以外の食品等の動物性タンパク質にもシステインやメチオニンを含むアミノ酸から構成されるものがあるため、硫黄が検出されただけではそれらの異物が生体組織由来の異物であると判別するには不十分である。
【0042】
そこで、本発明においては、元素分析で硫黄が検出された異物について、更にナトリウム、カリウム及び塩素の3元素が同時に検出されるか否かを分析する。
【0043】
生体組織の一部を元素分析すると、組織の部位にもよるが、ナトリウム、カリウム及び塩素が同時に検出される場合が多く、皮膚の場合はこれら3元素がほぼ確実に検出される。上記の元素はいずれも体液の成分に由来するものである。
【0044】
ナトリウム、カリウム及び塩素の検出量の総和は組織の部位やそれらに含まれる体液成分等によって異なるが、原子数において、同時に検出される酸素に対し、1〜15%である。
【0045】
以上のことから、顕微IRスペクトル分析で波数1,700〜1,600cm−1の範囲及び波数1,600〜1,500cm−1の範囲に吸収のピークが認められる異物について、更に元素分析を行って前記の検出量の範囲の硫黄が検出され、且つ上記の検出量の範囲でナトリウム、カリウム及び塩素が同時に検出された異物は基本的に生体組織由来の異物であるといえる。
【0046】
従って、成形用原料樹脂を製造する段階又は樹脂成形品を製造する段階で人以外の動物が存在しなければ、それらの異物は生体組織由来の異物であると判別することができる。
【0047】
本発明において、異物の元素分析の方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。異物の元素分析の方法としては、微小な物質の元素を比較的精度よく分析することができる点で、例えば、X線マイクロアナライザー分析法及び蛍光X線分析法が好ましい。
【0048】
これらの分析法によりサンプル中に含まれる元素が検出され、これら検出された元素の相対的な原子数の割合を求めることができる。
【0049】
また、X線マイクロアナライザー分析法や蛍光X線分析法で用いる検出器はエネルギー分散型又は波長分散型のいずれのタイプであってもよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を具体例により説明する。
【0051】
顕微IRスペクトル分析は、顕微FT−IR装置(日本分光(株)製FT/IR420赤外分光光度計付属のMICRO20顕微赤外分光光度計)を用いて、異物等のサンプルを顕微IRスペクトル測定専用のダイヤモンドセル(住友電工(株)製Diamond EX’Press(商品名))で、得られる顕微IRスペクトルが飽和しないような適度な厚さまでつぶして透過法により測定した。
【0052】
測定条件は、測定範囲を波数4,000〜650cm−1、積算回数を256回、分解を8cm−1とした。また、アパーチャーはサンプル全体をカバーできる任意の大きさとした。
【0053】
顕微IRスペクトル分析を行ったサンプルを、ダイヤモンドセル上から走査型電子顕微鏡観察用又はX線マイクロアナライザー分析用のカーボン試料台上に貼り付けたカーボンテープ上に移し、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー装置((株)日立ハイテクノロジーズ製S−3400N走査型電子顕微鏡付属の(株)堀場製作所製EX−350特性X線検出器)を用いて元素分析を行った。
【0054】
測定条件は、加速電圧を15kV、及びワークディスタンス(WD)を10mmとした。
【0055】
図1は生体組織である人の皮膚の一部をサンプルとして透過法により測定した波数4,000〜650cm−1の範囲における顕微IRスペクトルである(縦軸は吸光度を示す。)。
【0056】
また、図2は樹脂成形品(ポリメチルメタクリレート系導光体)に付着していた異物(異物a)、図3は上記と同様の樹脂成形品をクロロホルムにより溶解し、樹脂成形品の内部から分離採取した異物(異物b)についてそれぞれ透過法により波数4,000〜650cm−1の範囲で顕微IRスペクトル分析して得られた顕微IRスペクトルである(いずれの図も縦軸は吸光度を示す。)。
【0057】
図1の皮膚の一部における顕微IRスペクトルは、波数3,000〜650cm−1の範囲において、最も吸収の強いピークが波数1,700〜1,600cm−1の範囲に観測され、それに次ぐ強い吸収のピークが波数1,600〜1,500cm−1の範囲に観測された。
【0058】
また、図2の異物a及び図3の異物bの顕微IRスペクトルも、図1と同様に、最も吸収の強いピークが波数1,700〜1,600cm−1の範囲に観測され、それに次ぐ強い吸収のピークが波数1,600〜1,500cm−1の範囲に観測された。
【0059】
図4は図1の場合と同じ皮膚の一部のX線マイクロアナライザースペクトルを示す。
【0060】
また、図5は図2の場合と同じ異物aのX線マイクロアナライザースペクトルを示し、図6は図3の場合と同じ異物bのX線マイクロアナライザースペクトルを示す。
【0061】
上記X線マイクロアナライザースペクトルから得られた皮膚の一部、異物a及び異物bの元素分析結果を表1に示す。
【表1】

【0062】
皮膚の一部からは、アミノ酸の1つであるシステインあるいはメチオニン由来の硫黄(S)が認められ、原子数において、同時に検出される酸素(O)に対し、1.4%検出された。更に、ナトリウム(Na)、カリウム(K)及び塩素(Cl)の3種類の元素が揃って検出され、その総和は、原子数において、同時に検出される酸素(O)の11.2%であった。
【0063】
一方、異物aからは、皮膚の一部と同様にシステインやメチオニン等の硫黄を含むアミノ酸から構成されるタンパク質を示唆する硫黄が原子数において、同時に検出される酸素(O)に対し、1.1%検出された。更に、異物aが体液の成分を含んでいることを示唆するナトリウム、カリウム及び塩素が認められ、それらの総和が、原子数において、同時に検出される酸素(O)に対し、5.3%検出された。
【0064】
しかしながら、異物bからは、硫黄、ナトリウム、カリウム及び塩素の元素が全く検出されなかった。
【0065】
以上の結果から明らかなように、顕微IRスペクトルだけでは異物a及び異物bが生体組織由来のタンパク質か否かの判別は困難であるが、元素分析による検出元素の特徴から、樹脂成形品を製造する過程において人以外の動物が存在しなければ、異物aは生体組織由来の異物であると判別でき、異物bは生体組織由来の異物ではないと判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】生体組織である皮膚の一部の波数4,000〜650cm−1の範囲における顕微IRスペクトル。
【図2】異物aの波数4,000〜650cm−1の範囲における顕微IRスペクトル。
【図3】異物bの波数4,000〜650cm−1の範囲における顕微IRスペクトル。
【図4】生体組織である皮膚の一部のX線マイクロアナライザースペクトル。
【図5】異物aのX線マイクロアナライザースペクトル。
【図6】異物bのX線マイクロアナライザースペクトル。
【符号の説明】
【0067】
1 波数1,700〜1,600cm−1の範囲に観測される吸収のピーク
2 波数1,600〜1,500cm−1の範囲に観測される吸収のピーク
3 波数1,700〜1,600cm−1の範囲に観測される吸収のピーク
4 波数1,600〜1,500cm−1の範囲に観測される吸収のピーク
5 波数1,700〜1,600cm−1の範囲に観測される吸収のピーク
6 波数1,600〜1,500cm−1の範囲に観測される吸収のピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用原料樹脂若しくは樹脂成形品の内部に混入又はその表面に付着した異物が生体組織由来か否かを判別する異物の判別方法であって、透過法又は反射法による異物への顕微赤外吸収スペクトル分析を実施したときに、得られる赤外吸収スペクトルの波数3,000〜650cm−1の範囲において、波数1,700〜1,600cm−1の範囲に最も強い吸収のピーク(A)が観測され、且つ、波数1,600〜1,500cm−1の範囲にピーク(A)に次ぐ強い吸収のピーク(B)が観測される異物について元素分析により酸素、硫黄、ナトリウム、カリウム及び塩素を検出する異物の判別方法。
【請求項2】
元素分析の方法がX線マイクロアナライザー分析法又は蛍光X線分析法である請求項1に記載の異物の判別方法。
【請求項3】
樹脂成形品が液晶表示装置用の導光体である請求項1または2に記載の異物の判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−156764(P2009−156764A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336810(P2007−336810)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】