異物除去装置及び液体噴射装置
【課題】キャップの開口縁に付着した異物を確実に除去することができる異物除去装置及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズル形成面に形成されたノズルの開口からインクを噴射する記録ヘッドに対してノズルの開口を囲うように環状をなすシール部44が当接可能とされたキャップ42を備えたプリンターに設けられ、シール部44を払拭することによりシール部44から異物を除去する異物除去装置であって、シール部44に沿う方向に変位する過程で、シール部44に対して摺接する下端面73aがシール部44に対する摺接状態を維持することによりシール部44を払拭可能な払拭部材73を備え、払拭部材73は、下端面73aが払拭時の変位方向と交差する方向に沿って延びるように形成されている。
【解決手段】ノズル形成面に形成されたノズルの開口からインクを噴射する記録ヘッドに対してノズルの開口を囲うように環状をなすシール部44が当接可能とされたキャップ42を備えたプリンターに設けられ、シール部44を払拭することによりシール部44から異物を除去する異物除去装置であって、シール部44に沿う方向に変位する過程で、シール部44に対して摺接する下端面73aがシール部44に対する摺接状態を維持することによりシール部44を払拭可能な払拭部材73を備え、払拭部材73は、下端面73aが払拭時の変位方向と交差する方向に沿って延びるように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップの開口縁に付着した異物を除去する異物除去装置、及び該異物除去装置を備える液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射ヘッドからターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、「プリンター」と言う)が広く知られている。こうしたプリンターでは、液体噴射ヘッドのノズル形成面にノズル開口を囲うようにキャップの開口縁を当接させた状態で、ノズル形成面とキャップで形成される空間内を負圧状態にすることにより、ノズル開口を介して液体噴射ヘッド内から増粘したインクや気泡を強制的に吸引して排出させるクリーニング動作が実行される。
【0003】
ところで、クリーニング動作時やフラッシング動作時には、ノズル開口からキャップ内に向けて排出されたインクがキャップの開口縁に付着することがあり得る。そして、キャップの開口縁にインクが付着した状態を放置した場合、そのインクはキャップの開口縁に付着したまま固化してしまう。すると、クリーニング動作時に、液体噴射ヘッドのノズル形成面にキャップの開口縁を当接させたとしても、ノズル形成面とキャップで形成される空間の密封性が損なわれる。そのため、この空間内に十分な負圧を蓄圧することができず、ノズル開口を介して液体噴射ヘッド内から増粘したインクや気泡を吸引する際の吸引力が低下するという問題があった。そこで、通常、プリンターには、キャップの開口縁に付着したインク等の異物を除去するための機構が設けられている(特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、特許文献1に記載のインクジェット式記録装置は、キャップを覆うように配置されるカバーの内部に、キャップに向けて延びる多数本の可撓性針状材を有するブラシを備えている。可撓性針状材は、カバーがキャップを覆うように配置された場合に、先端部がキャップの環状突起(開口縁)に当接するように構成されている。そして、ブラシは、キャップの上方を横切るように往復移動する過程で、可撓性針状材の先端部がキャップの環状突起に摺接することにより、環状突起に付着しているインク等の異物を払拭して除去するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−253591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のインクジェット式記録装置では、ブラシにおいてキャップの環状突起に摺接して払拭機能を発揮する払拭部材が、キャップの環状突起に向けて細長く延びる可撓性針状材により構成されている。そのため、ブラシは、キャップの環状突起に付着したインクが相対的に高い粘性を有する場合には、そのインクを払拭する際の摺接抵抗により可撓性針状材の先端部が大きく撓み変形してキャップの環状突起から離間してしまい、粘性の高いインク等の異物を確実に払拭して除去することができない虞があった。
【0007】
その一方、キャップの環状突起に付着したインクが相対的に低い粘性を有する場合には、こうした粘性の低いインクは流動性が高いために、払拭時にインクが束状をなす各可撓性針状材間の微小な隙間を通過してキャップの環状突起上に残ってしまい、粘性の低いインク等の異物を確実に払拭して除去することができない虞があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、キャップの開口縁に付着した異物を確実に除去することができる異物除去装置及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の異物除去装置は、ノズル形成面に形成されたノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドに対して前記ノズル開口を囲うように環状をなす開口縁が当接可能とされたキャップを備えた液体噴射装置に設けられ、前記開口縁を払拭することにより該開口縁から異物を除去する異物除去装置であって、前記開口縁に沿う方向に変位する過程で、前記開口縁に対する摺接部が前記開口縁に対する摺接状態を維持することにより前記開口縁を払拭可能な払拭部材を備え、該払拭部材は、前記摺接部が払拭時の変位方向と交差する方向に沿って延びるように形成されている。
【0010】
上記構成によれば、払拭部材は、開口縁に付着した異物が相対的に高い粘性を有する場合であっても、そのような高粘性の異物を摺接部が開口縁に対する摺接状態を維持しつつ変位することにより払拭する。また、払拭部材は、開口縁に対する摺接部が払拭時の変位方向と交差する方向に延びるように形成されているため、開口縁に付着した異物が相対的に低い粘性を有する場合であっても、そのような流動性の高い低粘性の異物に対する払拭漏れが抑制される。したがって、払拭部材は、異物の粘性の大きさによることなく、開口縁に付着した異物を確実に払拭して除去することができる。
【0011】
また、本発明の異物除去装置は、前記払拭部材に対して該払拭部材を前記開口縁に沿う方向に変位させる駆動力を伝達する駆動機構を更に備え、前記駆動機構は、前記キャップが前記ノズル形成面から離間する方向に変位することに連動して、前記払拭部材に対して前記駆動力を伝達可能に連結される。
【0012】
上記構成によれば、キャップが液体噴射ヘッドのノズル形成面から離間する方向へ変位することに連動して、駆動機構は、払拭部材に対して該払拭部材を開口縁に沿う方向に変位させるための駆動力を伝達する。そのため、キャップの開口縁が払拭部材によって払拭可能な位置にあるか否かを識別するために、キャップの位置を検知するための機構を設けることが不要となる。
【0013】
また、本発明の異物除去装置において、前記駆動機構は、前記開口縁に沿う複数方向に前記払拭部材を変位可能に構成され、前記払拭部材は、前記開口縁の払拭時に該開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力が該払拭部材の変位方向毎に互いに異なるように構成されている。
【0014】
上記構成によれば、払拭部材は、開口縁に沿うように変位する方向が変更されることに伴って、開口縁と摺接部との間で発生する摩擦力の大きさを変化させて、開口縁に対する払拭力の大きさを変化させることができる。
【0015】
また、本発明の異物除去装置において、前記駆動機構は、前記開口縁の払拭時に該開口縁に沿う方向に前記払拭部材を往復移動可能に構成され、前記払拭部材は、往動時に前記開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力が、復動時に前記開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力よりも小さくなるように構成されている。
【0016】
上記構成によれば、払拭部材は、開口縁に沿う方向に往動する過程で、開口縁と摺接部との間で発生する摩擦力が比較的大きくなるように構成されている。そのため、払拭部材は、開口縁に沿う方向に往動する際には、開口縁に付着した異物を強く払拭して確実に除去することができる。一方、払拭部材の復動時には、開口縁は、払拭部材の往動によって異物が既にほとんど払拭された状態となっている。そのため、払拭部材は、復動時には、往動時のように開口縁に対して大きな払拭力を作用させることが不要となる。この点、上記構成によれば、払拭部材は、開口縁に沿う方向に復動する過程で開口縁と摺接部との間で発生する摩擦力が比較的小さくなるように構成されている。そのため、払拭部材は、復動時には、開口縁に対して必要以上に過大な払拭力を作用させることがないため、開口縁が払拭部材の払拭によって摩耗することが抑制される。
【0017】
また、本発明の異物除去装置は、前記払拭部材を保持する保持部材と、前記保持部材に対して接点を介して接触した状態で前記保持部材を前記接点を中心に回動可能に支持する支持機構と、を更に備え、前記保持部材は、前記駆動機構に対して前記駆動力を伝達可能に連結される連結部を有し、前記連結部は、前記駆動機構に対して当接可能な当接領域が前記接点との距離が互いに異なる複数の位置に設定され、前記払拭部材の変位方向に応じて前記当接領域の位置が切り替わるように構成されている。
【0018】
上記構成によれば、保持部材には、駆動手段から連結部の当接領域を介して作用する駆動力が、支持機構との接点を支点として、払拭部材を開口縁に対して押圧する方向に回動させる力として作用する。ここで、保持部材は、駆動手段から駆動力が作用する力点として機能する当接領域が、払拭部材の変位方向に応じて、上記の接点との距離が切り替わる。すると、保持部材は、梃子の原理に基づき、払拭部材を開口縁に対して押圧するように作用させる力の大きさが、払拭部材の変位方向に応じて変化することになる。したがって、払拭部材の変位方向を変更することによって、払拭部材が開口縁を払拭する払拭力を変化させることができる。
【0019】
また、本発明の異物除去装置は、前記開口縁の汚染の程度を示す指標値に基づき、前記駆動機構に前記駆動力を前記払拭部材に対して伝達させるか否かを制御する制御手段を更に備えた。
【0020】
上記構成によれば、制御手段は、キャップの開口縁の汚染の程度に応じて、開口縁に付着した異物を払拭部材によって適宜除去させるため、開口縁に異物が堆積することを抑制できる。
【0021】
また、本発明の異物除去装置において、前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドのクリーニング動作が実行された場合、又は、前記液体噴射ヘッドの印刷動作が完了した場合において、前記開口縁を前記液体噴射ヘッドに対して当接させるキャッピング動作時に、前記駆動機構に前記駆動力を前記払拭部材に対して伝達させるか否かを制御する。
【0022】
上記構成によれば、制御手段は、キャップの開口縁が液体噴射ヘッドのノズル形成面に対して当接するキャッピング動作時のうち、キャップの開口縁が汚染されていると想定される場合、即ち、液体噴射ヘッドのクリーニング動作が実行された場合、又は、液体噴射ヘッドの印刷動作が完了した場合に、払拭部材による払拭動作が実行される。そのため、払拭部材が、必要以上の頻度で払拭動作を行うことはなく、キャップの開口縁が払拭部材の払拭によって摩耗することが抑制される。
【0023】
また、本発明の液体噴射装置は、ノズル形成面に形成されたノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドと、上記構成の異物除去装置と、を備えた。
上記構成によれば、上記異物除去装置の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態のプリンターの平面図。
【図2】記録ヘッドの下面図。
【図3】メンテナンスユニットの斜視図。
【図4】クリーニング装置の正面図。
【図5】クリーニング装置の右側面図。
【図6】クリーニング装置の左側面図。
【図7】支持フレームの斜視図。
【図8】(a)は払拭部の正面図、(b)は払拭部の左側面図、(c)は払拭部の右側面図。
【図9】(a)はキャップが降下する前のクリーニング装置の左側面図、(b)はキャップが降下した後のクリーニング装置の左側面図。
【図10】(a)はキャップが降下する前のクリーニング装置の右側面図、(b)はキャップが降下した後のクリーニング装置の右側面図。
【図11】(a)はクリーニング装置が往動時におけるクリーニング動作を開始した直後の状態を示す作用図、(b)はクリーニング装置が往動時におけるクリーニング動作を完了した直後の状態を示す作用図、(c)はクリーニング装置が変位方向を切り替える途中の状態を示す作用図、(d)はクリーニング装置が復動時におけるクリーニング動作を開始した直後の状態を示す作用図、(e)はクリーニング装置が復動時におけるクリーニング動作を完了した直後の状態を示す作用図。
【図12】クリーニング処理ルーチンを示すフローチャート。
【図13】(a)(b)は、別の実施形態の払拭部の左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、プリンターという。)に具体化した一実施形態を図1〜図12に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「上下方向」、「左右方向」をいう場合は図中に矢印で示す方向をそれぞれ示すものとする。
【0026】
図1に示すように、プリンター11のフレーム12内にはプラテン13が架設されている。プラテン13上には、図示しない紙送りモーターを有する紙送り機構により図示しない記録用紙が給送されるようになっている。また、フレーム12内には、プラテン13の長手方向と平行に、棒状のガイド部材14が架設されている。
【0027】
ガイド部材14には、キャリッジ15が、該ガイド部材14の軸線方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ15は、フレーム12内に設けられた一対のプーリー16a,16b間に張設されたタイミングベルト16を介してキャリッジモーター17に連結されている。そして、キャリッジ15は、キャリッジモーター17の駆動により、ガイド部材14に沿って往復移動されるようになっている。
【0028】
キャリッジ15のプラテン13に対向する面には、記録用紙に向けてインク(流体)を噴射する液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド20が搭載されている。この記録ヘッド20の下面にて構成されるノズル形成面20aには、図2に示すように、前後方向に沿う複数のノズル列B,C,M,YEが、左右方向において隣り合う他のノズル列との間に所定の間隔をおくようにして平行に形成されている。なお、図2においては、左側から右側へ、ブラックインクノズル列B、シアンインクノズル列C、マゼンタインクノズル列M、及びイエローインクノズル列YEが順次に形成されている。
【0029】
これらの各ノズル列B,C,M,YEは、各色のインクを噴射(吐出)する場合の噴射口(吐出口)となる多数のノズル21の開口(ノズル開口)にて形成されている。また、記録ヘッド20内には図示しない圧電素子が各ノズル21と個別対応するように配設されている。そして、各圧電素子が駆動制御されることにより、記録ヘッド20の下方に至った記録用紙に向けて、各ノズル21からインクが噴射されるようになっている。
【0030】
また、図1に示すように、キャリッジ15上には、一時貯留したインクを記録ヘッド20に供給するバルブユニット22が、プリンター11において使用されるインクの色(種類)に対応して複数個(本実施形態では4個)備えられている。
【0031】
フレーム12の一端部(右端部)には、カートリッジホルダー23が設けられている。このカートリッジホルダー23には、インクカートリッジ24が着脱可能に複数個(本実施形態では4個)装着されている。また、カートリッジホルダー23には、一端がキャリッジ15上の各バルブユニット22とそれぞれ接続された複数本(本実施形態では4本)のインク供給チューブ35の他端がそれぞれ接続されている。
【0032】
カートリッジホルダー23の上側には、加圧ポンプ36が設けられているとともに、該加圧ポンプ36は、複数本(本実施形態では4本)の空気供給チューブ39を介してカートリッジホルダー23に接続されている。なお、カートリッジホルダー23に各インクカートリッジ24を装着した状態では、各インクカートリッジ24は、各インク供給チューブ35及び各空気供給チューブ39とそれぞれ接続されるようになっている。
【0033】
そして、加圧ポンプ36を駆動すると、各空気供給チューブ39を介して各インクカートリッジ24内に空気がそれぞれ圧送される。すると、圧送された空気により各インクカートリッジ24内のインクがそれぞれ加圧され、該各インクが各インク供給チューブ35を介して各バルブユニット22に加圧供給されるようになっている。
【0034】
カートリッジホルダー23とプラテン13との間は、プリンター11の電源オフ時や記録ヘッド20をメンテナンスする場合にキャリッジ15の待機場所となるホームポジションHPになっている。また、キャリッジ15がホームポジションHPに配置されたときの下方となる位置には、記録ヘッド20のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット40が備えられている。
【0035】
ホームポジションHPの前方には、キャリッジ15の移動経路上から外れた位置に、クリーニング装置41が設けられている。そして、クリーニング装置41は、メンテナンスユニット40の上方を横切るように前後方向に往復移動する過程で、メンテナンスユニット40に付着したインク等の異物を払拭して除去する異物除去手段として機能する。
【0036】
次に、本発明のメンテナンスユニット40の構成について、図3に従って説明する。
図3に示すように、メンテナンスユニット40は、矩形箱状をなすキャップ42を備えている。キャップ42は、記録ヘッド20がホームポジションHPに位置した場合に、記録ヘッド20のノズル形成面20aに対向する上面42aに、複数のキャップ小室43a,43b,43c,43dが凹み形成されている。これらのキャップ小室43a,43b,43c,43dは、前後方向に沿って長溝状をなすように形成されており、左右方向において隣り合う他のキャップ小室との間に所定の間隔をおいて並列して配置されている。なお、これらの各キャップ小室43a,43b,43c,43dは、記録ヘッド20の各ノズル列B,C,M,YEと個別対応するものである。そして、各キャップ小室43a,43b,43c,43dは、対応するノズル列を形成する各ノズル21から吐出された廃インクを受容可能なように、各々が所定の深さを有するように開口形成されている。また、キャップ42の上面42aにおいて、各キャップ小室43a,43b,43c,43dの開口縁には、可撓性材料(例えば、ゴム)からなる四角環状をなすシール部44が個別に設けられている。
【0037】
また、キャップ42の下面42bには、鉛直下方に突出した凸条45が設けられている。この凸条45は、キャップ42の下面42bの略中央部に、キャリッジ15の移動方向となる左右方向に沿うように、キャップ42の下面42bの左右方向全域に亘って延設されている。また、凸条45は、左右方向からの側面視三角形状をなしており、前面が後ろ下がり勾配の傾斜面45aとして構成されると共に、後面が垂直面45bとして構成されている。
【0038】
次に、本発明のクリーニング装置41の構成について、図4〜図8に従って説明する。
図4に示すように、クリーニング装置41は、駆動部46(駆動機構)と払拭部47とから構成されている。そして、払拭部47は、駆動部46から伝達される駆動力に基づいて、キャップ42の上方を横切る前後方向に往復移動可能に構成されている。
【0039】
まず、駆動部46の構成について説明する。
図4に示すように、駆動部46は、駆動力を生成して出力するための駆動モーター48と、該駆動モーター48から出力される駆動力を払拭部47に伝達するためのギア機構49とを備えている。ギア機構49は、複数(本実施形態では6つ)のギア50,51,52,53,54,55から構成され、これらのギア50,51,52,53,54,55は、駆動モーター48から払拭部47に至る動力伝達経路上に並列して配置されている。なお、各ギア50,51,52,53,54,55は、多数の外歯が外周面上に等間隔に形成されており、これらの外歯が互いに係合することにより動力伝達可能に連結されるようになっている。
【0040】
図4及び図5に示すように、駆動モーター48は、キャップ42の前方に、略同一の高さで前後方向に対向するように配置されている。また、駆動モーター48は、左右方向に略水平に延びる出力軸48aを有しており、該出力軸48aには第1ギア50が連結されている。
【0041】
なお、駆動モーター48は、例えばデジタルコンピュータ等を含んで構成される制御手段としての制御部25の制御により駆動制御されるようになっている。また、制御部25は、キャップ42を昇降させる昇降機構26を駆動制御するようになっている。
【0042】
第1ギア50の鉛直下方には、該第1ギア50よりも小径の第2ギア51が配置されている。第2ギア51は、第1ギア50の回転軸線、即ち、駆動モーター48の出力軸48aの軸線方向と平行に延びる回転軸線を中心に回動自在に軸支されている。また、第2ギア51は、常には、第1ギア50に対して動力伝達可能に連結されている。
【0043】
第2ギア51の後方斜め下方には、第2ギア51とほぼ同径の第3ギア52が、その一部が第2ギア51と上下方向で重畳するように配置されている。また、第3ギア52は、支持部材56から第2ギア51の回転軸線と平行に延びる回動軸57によって回動自在に軸支されている。なお、回動軸57は、支持部材56を左右方向に貫通するように挿通されており、支持部材56によって回動自在に軸支されている。また、支持部材56は、その後端面の上部が、キャップ42の凸条45と上下方向で対向した状態で、凸条45の傾斜面45aと略同一の勾配となる後ろ下がり勾配の傾斜面56aとして構成されている。さらに、支持部材56は、常には、コイルスプリング58によって後方に付勢されており、第3ギア52を第2ギア51に対して後方に離間させる構成となっている。
【0044】
図4及び図6に示すように、回動軸57には、支持部材56を挟んで第3ギア52とは左右方向で反対側となる位置に、第3ギア52とほぼ同径の第4ギア53が連結されている。また、第4ギア53の前方斜め上方には、第4ギア53とほぼ同径の第5ギア54が、その一部が第4ギア53と上下方向で重畳するように配置されている。また、第5ギア54は、第4ギア53の回転軸線、即ち、回動軸57の軸線方向と平行に延びる回転軸線を中心に回動自在に軸支されている。なお、上記のように、支持部材56は、常には、第4ギア53を回動軸57を介して軸支した状態でコイルスプリング58によって後方に付勢されており、第4ギア53を第5ギア54に対して後方に離間させる構成となっている。
【0045】
また、第5ギア54の鉛直上方には、該第5ギア54よりも大径の第6ギア55が配置されている。第6ギア55は、第5ギア54の回転軸線と平行に延びる回動軸59の一端が嵌挿されており、この回動軸59によって回動自在に軸支されている。また、第6ギア55は、常には、第5ギア54に対して動力伝達可能に連結されている。また、第6ギア55を軸支する回動軸59の他端には、駆動ローラー60が連結されている。
【0046】
駆動ローラー60の後方には、該駆動ローラー60と略同一の回転径を有する従動ローラー61が、駆動ローラー60に対して略同一の高さで前後方向に対向するように回動自在に設けられている。そして、各ローラー60,61には、該各ローラー60,61を囲むように、無端状の搬送ベルト62が前後方向に略水平に巻き掛けられている。また、搬送ベルト62の外周面上には、左右方向に略水平に延びる棒状のレバー部材63が固定されている。
【0047】
次に、払拭部47の構成について説明する。
図7及び図8(a)に示すように、払拭部47は、正面視略L字状をなす保持部材としての支持フレーム64を備えている。支持フレーム64は、左右方向に略水平に延びる底壁部65と、該底壁部65の右端から鉛直上方に立設された側壁部66と、該側壁部66の上端から底壁部65側となる左方に略水平に延設された上壁部67とから構成されている。
【0048】
図7及び図8(b)に示すように、底壁部65は、その左端寄りの位置から鉛直上方に延びるように第1の延設部68が延設されており、該第1の延設部68は、その上面における前後方向の中途から後方が鉛直上方に張り出した段差状をなすように構成されている。
【0049】
上壁部67は、第1の延設部68と上下方向で対向する位置に、鉛直下方に延びるように第2の延設部69が延設されており、該第2の延設部69は、その下面における前後方向の中途から前方が鉛直下方に張り出した段差状をなすように構成されている。
【0050】
図7及び図8(c)に示すように、側壁部66の略中央部には、矩形状の長孔70が上下方向に長く延びるように貫通形成されている。長孔70は、その上下方向の寸法が、第1の延設部68の段差面68aの下端から第2の延設部69の段差面69aの上端に至る上下方向の寸法と略同一となるように設定されている。また、長孔70は、その前後方向の寸法が、第1の延設部68の段差面68aと第2の延設部69の段差面69aとの間の前後方向の寸法と略同一となるように設定されている。
【0051】
なお、図4に示すように、支持フレーム64には、各延設部68,69によって左右に仕切られる二つの空間域71,72が形成される。そして、支持フレーム64は、これらの空間域71,72のうち、側壁部66側とは反対側となる左方の空間域71が、上壁部67及び各延設部68,69によって上方及び右方から包囲される構成となっている。そして、支持フレーム64は、この空間域71が、メンテナンスユニット40及び駆動部46を構成する各ギア50,51,52,53,54,55に対して前後方向で対向する配置構成となっている。
【0052】
一方、支持フレーム64は、これらの空間域71,72のうち、側壁部66側となる右方の空間域72が、底壁部65、側壁部66、上壁部67、及び各延設部68,69によって上下方向及び左右方向に包囲される構成となっている。そして、支持フレーム64は、この空間域72が、駆動部46を構成する各ローラー60,61、該各ローラー60,61に巻き掛けられる搬送ベルト62、及び該搬送ベルト62に固定されるレバー部材63に対して前後方向で対向する配置構成となっている。なお、この空間域72は、その左右方向の寸法が、各ローラー60,61及び搬送ベルト62の同方向の幅寸法よりも大きく、且つ、レバー部材63の長手方向の寸法とほぼ同程度となるように設定されている。
【0053】
また、各延設部68,69は、上下方向に隙間を介して離間した構成となっており、この隙間と略同一の高さで前後方向に対向する位置には、駆動ローラー60と第6ギア55との間を略水平に延びる回動軸59が配置されている。また、各延設部68,69の段差面68a,69aは、搬送ベルト62の周回時におけるレバー部材63の移動経路上に配置されており、レバー部材63の前後方向の幅寸法よりも若干大きな距離を隔てて前後方向に互いに離間した配置構成となっている。そして、レバー部材63は、その長手方向の一端側が、両延設部68,69のうち、一方の延設部の段差面によって前方もしくは後方から係止された状態で、その長手方向の他端側が側壁部66に形成された長孔70に対して左右方向に貫通するように挿通されている。すなわち、両延設部68,69は、駆動部46を構成するレバー部材63に対して、駆動モーター48からの駆動力を伝達可能に連結される連結部として機能する。
【0054】
また、上壁部67は、その下面がキャップ42上のシール部44と上下方向で対向する面となっており、この下面に多孔質材料からなる矩形板状の払拭部材73を固定している。そして、上壁部67がキャップ42の鉛直上方に位置した状態では、払拭部材73は、その下端面73aがキャップ42上においてキャップ小室43a〜43dの開口縁に沿うように形成されたシール部44に当接するように構成されている。すなわち、本実施形態では、払拭部材73の下端面73aがキャップ42の開口縁となるシール部44に対して摺接する摺接部として機能する。
【0055】
なお、払拭部材73は、その下端面73aがキャップ42のシール部44を払拭する際の変位方向と直交する左右方向に延びるように形成されている。そして、払拭部材73は、キャップ42のシール部44を払拭する過程で、シール部44上に付着したインク等の異物の粘性抵抗に抗して、シール部44に対する摺接状態を維持できる程度の剛性を有する構成となっている。
【0056】
また、クリーニング装置41には、図6にて二点鎖線で示すように、支持機構としてのガイド機構74が、支持フレーム64の変位方向となる前後方向に沿うように設けられている。ガイド機構74は、支持フレーム64の側壁部66に対して、長孔70よりも下方となる位置で接点75を介して接触しており、支持フレーム64を接点75を介して回動自在に支持した状態で前後方向にガイドするようになっている。
【0057】
そこで次に、以上のように構成されたプリンター11の作用について、特にクリーニング装置41の駆動部46及び払拭部47がキャップ42の昇降に連動して動力伝達可能に連結される際の作用に着目して以下説明する。
【0058】
まず、前提として、図9(a)に示す状態では、キャップ42は、各キャップ小室43a〜43dの開口縁となるシール部44を記録ヘッド20のノズル形成面20aに対して対応するノズル21を囲うように当接させた状態で記録ヘッド20のメンテナンス動作を実行した直後にあるものとする。
【0059】
さて、このように図9(a)及び図10(a)に示す状態から、クリーニング装置41がクリーニング動作を実行する場合には、まず、昇降機構26を駆動して、シール部44が記録ヘッド20のノズル形成面20aから離間するようにキャップ42を下降させる。
【0060】
このとき、キャップ42は、その下面42bに設けられた凸条45が、支持部材56を鉛直下方に押圧するように変位する。すると、キャップ42の凸条45は、支持部材56に対する当接面となる傾斜面45aを介して、該傾斜面45aと直交する前方斜め下方に支持部材56を押圧する。このとき、支持部材56は、キャップ42の凸条45から作用する押圧力の鉛直方向成分に抗して、水平方向に沿う姿勢を維持する一方、その押圧力の水平方向成分に従って、傾斜面56aがキャップ42の凸条45の傾斜面45aの下端から上端に向けて摺動する過程で、コイルスプリング58の付勢力に抗して前方に水平移動する。
【0061】
その結果、図9(b)に示すように、第3ギア52は、回動軸57に軸支された状態で、支持部材56と共に、前方に水平移動して、第2ギア51に対して動力伝達可能に連結される。また同様に、図10(b)に示すように、第4ギア53は、回動軸57に軸支された状態で、支持部材56と共に、前方に水平移動して、第5ギア54に対して動力伝達可能に連結される。
【0062】
すなわち、クリーニング装置41は、キャップ42が記録ヘッド20のノズル形成面20aから離間する方向に降下することに連動して、駆動モーター48が各ギア50,51,52,53,54,55を介して駆動ローラー60に対して動力伝達可能に連結される。そして、この状態で、駆動ローラー60が駆動モーター48の駆動に従って回転駆動すると、搬送ベルト62が、駆動ローラー60に巻き掛けられた状態で周回移動するようになっている。
【0063】
次に、クリーニング装置41が、駆動モーター48と駆動ローラー60がギア機構49を介して動力伝達可能に連結された状態で、キャップ42上の開口縁となるシール部44を払拭する際の作用に着目して以下説明する。
【0064】
さて、図11(a)に示すように、レバー部材63は、第2の延設部69の段差面69aに対して後方から面接触した状態で、従動ローラー61の近傍に配置されているとする。ここで、駆動モーター48が駆動すると、搬送ベルト62が左方から見て左回転方向に周回移動を開始する。そして、レバー部材63は、搬送ベルト62の外周面上に固定された状態で、搬送ベルト62と共に周回移動する。すると、レバー部材63は、側壁部66の長孔70の開口縁、及び、第2の延設部69の段差面69aを前方に押圧して、支持フレーム64を前方に変位させる。このとき、支持フレーム64は、レバー部材63から作用する押圧力に従って、ガイド機構74にガイドされながらキャップ42のシール部44を前後方向に横切る過程で、払拭部材73の下端面73aがキャップ42の開口縁となるシール部44を払拭するようになっている(図11(b)参照)。なお、払拭部材73は、キャップ42のシール部44を払拭する過程で、シール部44に対する摺接状態が、その払拭方向と直交する左右方向の全域で維持される。
【0065】
また、支持フレーム64は、その前方移動時には、レバー部材63から側壁部66の長孔70の開口縁、及び第2の延設部69の段差面69aに対して前方への押圧力が作用する。このとき、ガイド機構74との接点75を支点とする梃子の原理によって、払拭部材73の前端部には、キャップ42の開口縁となるシール部44側に沈み込む力が作用する。そのため、支持フレーム64の往動時には、払拭部材73は、その前端部がキャップ42のシール部44に対して圧接した状態で、キャップ42のシール部44に付着したインク等の異物を払拭する。
【0066】
また、搬送ベルト62が更に周回移動すると、レバー部材63は、駆動ローラー60の外周面上に到達する。そして、図11(c)に示すように、レバー部材63は、側壁部66の長孔70の開口縁を前方に押圧しつつ、駆動ローラー60の外周面を乗り超えるように下方に転回する。すると、レバー部材63は、側壁部66の長孔70の開口縁、及び、第1の延設部68の段差面68aに対して前方から面接触した状態となる。
【0067】
そして、搬送ベルト62が更に周回移動すると、レバー部材63は、側壁部66の長孔70の開口縁、及び、第1の延設部68の段差面68aを後方に押圧して、支持フレーム64を後方に変位させる。このとき、支持フレーム64は、レバー部材63から作用する押圧力に従って、ガイド機構74にガイドされながらキャップ42のシール部44の前端部に当接する位置まで後方に変位する(図11(d)参照)。
【0068】
そして、支持フレーム64は、図11(d)に示す状態から、レバー部材63から作用する押圧力に従って、ガイド機構74にガイドされながらキャップ42のシール部44を前後方向に横切る過程で、払拭部材73がシール部44の上面を再度払拭するようになっている。
【0069】
また、支持フレーム64は、その後方移動時には、レバー部材63から側壁部66の長孔70の開口縁、及び第1の延設部68の段差面68aに対して後方への押圧力が作用する。このとき、ガイド機構74との接点75を支点とする梃子の原理によって、払拭部材73の後端部には、キャップ42の開口縁となるシール部44側に沈み込む力が作用する。そのため、支持フレーム64の復動時には、払拭部材73は、その前端部がキャップ42のシール部44に対して圧接した状態で、キャップ42のシール部44に付着したインク等の異物を払拭する。
【0070】
なお、支持フレーム64は、レバー部材63によって第2の延設部69の段差面69aに対して前方への付勢力が付与される位置(力点)と支点となる接点75との間の距離の方が、レバー部材63によって第1の延設部68の段差面68aに対して後方への付勢力が付与される位置(力点)と支点となる接点75との間の距離よりも大きくなるように設定されている。そのため、支持フレーム64は、その往動時(前方移動時)には、払拭部材73をキャップ42のシール部44に対して比較的強く圧接させて、キャップ42のシール部44に付着したインク等の異物を確実に払拭して除去する。一方、支持フレーム64は、その復動時(後方移動時)には、払拭部材73をキャップ42のシール部44に対して比較的弱く圧接させて、支持フレーム64の往動時に払拭部材73によって払拭されることなくキャップ42のシール部44に残存したインク等の異物を確実に払拭するようになっている。
【0071】
すなわち、本実施形態のクリーニング装置41では、第1の延設部68の段差面68a及び第2の延設部69の段差面69aが、駆動モーター48からの駆動力を伝達可能に連結されるように、駆動部46を構成するレバー部材63に対して当接する当接領域となっている。また、これらの当接領域は、ガイド機構74との接点75との距離が互いに異なるように設定されている。そして、クリーニング装置41は、支持フレーム64がキャップ42のシール部44に沿う前後方向に往復移動する際の移動方向に応じて、これらの当接領域が適宜切り替わるように構成されている。
【0072】
次に、本実施形態のプリンター11の制御部25が、キャップ42のシール部44が記録ヘッド20のノズル形成面20aに対してノズル21を囲うように当接するキャッピング動作に際して実行するクリーニング処理ルーチンについて図12に基づき以下説明する。
【0073】
さて、クリーニング処理ルーチンが開始すると、制御部25は、まず、ステップS11において、キャップ42が記録ヘッド20のノズル形成面20aに対してノズル21を囲うようにシール部44を当接させた状態で、記録ヘッド20のノズル21から増粘したインクや気泡を強制的に吸引して排出させる記録ヘッド20のクリーニング動作が実行された直後であるか否かを判別する。
【0074】
そして、制御部25は、先のステップS11において、記録ヘッド20のクリーニング動作が実行された直後であると判別した場合には、キャップ42のシール部44が記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクが飛散して汚染されている虞があると判断し、その処理をステップS12に移行する。
【0075】
一方、制御部25は、先のステップS11において、記録ヘッド20のクリーニング動作が実行された直後ではないと判別した場合には、ステップS13において、記録ヘッド20が記録用紙に対する一連の印刷処理が完了したか否かを判別する。
【0076】
そして、制御部25は、先のステップS13において、記録ヘッド20が記録用紙に対する一連の印刷処理を完了したと判別した場合には、記録ヘッド20のノズル21内を保湿するために、キャップ42が記録ヘッド20のノズル形成面20aに対してノズル21を囲うようにシール部44を長期間に亘って当接させる必要があると判断する。そして、この場合、制御部25は、キャップ42と記録ヘッド20のノズル形成面20aとの間に形成される空間の密封性を確保するために、キャップ42の開口縁となるシール部44に付着したインク等の異物を確実に除去することが好ましいと判断し、その処理をステップS12に移行する。
【0077】
一方、制御部25は、先のステップS13において、記録ヘッド20が記録用紙に対する一連の印刷処理を実行中であると判別した場合には、キャップ42によるキャッピング動作が、記録ヘッド20のノズル21内を保湿する場合のように長期間に亘るものではないと判断する。そして、この場合、制御部25は、キャップ42のシール部44に付着したインク等の異物が少量であれば、そのような異物を除去することは不要である判断し、その処理をステップS19に移行する。
【0078】
そして次に、制御部25は、ステップS12において、記録ヘッド20のクリーニング動作に際して、キャップ42が記録ヘッド20のノズル形成面20aに対してノズル21を囲うようにシール部44を当接させるキャッピング回数が所定の閾値を上回るか否かを判別する。
【0079】
そして、制御部25は、先のステップS12において、記録ヘッド20に対するキャッピング回数が所定の閾値を上回ると判別した場合には、記録ヘッド20のクリーニング動作の実行頻度が高いため、記録ヘッド20のクリーニング動作に際して、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクがキャップ42のシール部44に飛散して汚染されている可能性が高いと判断し、その処理をステップS15に移行する。
【0080】
一方、制御部25は、先のステップS12において、記録ヘッド20に対するキャッピング回数が所定の閾値以下であると判別した場合には、記録ヘッド20のクリーニング動作の実行頻度があまり高くないため、記録ヘッド20のクリーニング動作に際して、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクがキャップ42のシール部44に飛散して汚染されている可能性が低いと判断し、その処理をステップS14に移行する。
【0081】
そして、制御部25は、ステップS14において、記録ヘッド20のフラッシング動作又はクリーニング動作に際して、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクの消費量が所定の閾値を上回るか否かを判別する。
【0082】
そして、制御部25は、先のステップS14において、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクの消費量が所定の閾値を上回ると判別した場合には、記録ヘッド20のフラッシング動作やクリーニング動作に際して、多量のインクがノズル21から吐出されているため、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクがキャップ42のシール部44に飛散して汚染されている可能性が高いと判断し、その処理をステップS15に移行する。
【0083】
一方、制御部25は、先のステップS14において、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクの消費量が所定の閾値以下であると判別した場合には、記録ヘッド20のフラッシング動作やクリーニング動作に際して、ノズル21から吐出されたインクが少量であるため、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクがキャップ42のシール部44に飛散して汚染されている可能性が低いと判断する。そして、この場合、制御部25は、記録ヘッド20のクリーニング動作の実行頻度があまり高くないのであれば、キャップ42のシール部44に対するクリーニング動作は不要である判断し、その処理をステップS19に移行する。
【0084】
そして次に、制御部25は、ステップS15において、昇降機構26を駆動して、キャップ42を記録ヘッド20のノズル形成面20aから離間する方向に降下させる。すると、キャップ42の下降に伴って、クリーニング装置41の駆動部46は、駆動モーター48がギア機構49を介して駆動ローラー60に対して動力伝達可能に連結されるようになる。
【0085】
続いて、制御部25は、ステップS16において、駆動モーター48と駆動ローラー60が連結された状態で駆動モーター48を駆動する。すると、駆動モーター48の駆動力が駆動ローラー60に伝達されることにより、駆動ローラー60に巻き掛けられた搬送ベルト62が周回移動を開始する。そして、レバー部材63は、搬送ベルト62の外周面上に固定された状態で、搬送ベルト62と共に周回移動するようになる。このとき、クリーニング装置41の払拭部47では、支持フレーム64が、レバー部材63の周回移動経路上に配置された両延設部68,69のうち、一方の延設部の段差面を介してレバー部材63によって前後方向に押圧される。その結果、支持フレーム64は、キャップ42の上方を横切るように前後方向に往復移動するようになり、この往復移動の過程で、払拭部材73がキャップ42の開口縁となるシール部44を払拭するクリーニング動作を実行する。
【0086】
そして次に、制御部25は、ステップS17及びステップS18において、クリーニング装置41がクリーニング動作を実行するか否かを判断する際の判断基準となるキャッピング回数及びインクの消費量をリセットする。そして、制御部25は、先のステップS16において、クリーニング装置41がキャップ42のシール部44に対するクリーニング動作を実行した後、キャップ42のシール部44の汚染の程度を示す指標値となるキャッピング回数及びインクの消費量のカウントを再度開始する。
【0087】
その後、制御部25は、ステップS19において、昇降機構26を駆動して、キャップ42を記録ヘッド20のノズル形成面20aに近接する方向に上昇させる。そして、キャップ42は、シール部44が記録ヘッド20のノズル21を囲うようにノズル形成面20aに当接させてキャッピング動作が完了する。なお、この場合、キャップ42のシール部44は、インク等の異物の付着がほとんどない状態となっているため、キャップ42と記録ヘッド20のノズル形成面20aとの間に形成される空間の密閉性が確保されるようになっている。
【0088】
本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、払拭部材73は、キャップ42の開口縁となるシール部44に付着したインク等の異物が相対的に高い粘性を有する場合であっても、そのような高粘性の異物をその下端面73aがシール部44に対する摺接状態を維持しつつ変位することにより払拭する。また、払拭部材73は、シール部44に対して摺接する下端面73aが払拭時の変位方向と交差する方向に延びるように形成されているため、シール部44に付着したインク等の異物が相対的に低い粘性を有する場合であっても、そのような流動性の高い低粘性の異物に対する払拭漏れが抑制される。したがって、払拭部材73は、異物の粘性の大きさによることなく、シール部44に付着した異物を払拭して確実に除去することができる。
【0089】
(2)本実施形態では、キャップ42が記録ヘッド20のノズル形成面20aから離間することに連動して、クリーニング装置41では、駆動部46が払拭部47に対して該払拭部47をシール部44に沿う方向に変位させるための駆動力を伝達する。そのため、キャップ42のシール部44が払拭部材73によって払拭可能な位置にあるか否かを識別するために、キャップ42の位置を検知するための機構を設けることが不要となる。
【0090】
(3)本実施形態では、支持フレーム64には、駆動部46から各延設部68,69の段差面68a,69aを介して作用する駆動力が、ガイド機構74との接点75を支点として、払拭部材73をキャップ42のシール部44に対して押圧する方向に回動させる力として作用する。ここで、支持フレーム64は、駆動部46から駆動力が作用する力点として機能する段差面68a,69aが、払拭部材73の変位方向に応じて、上記の接点75との距離が切り替わる。すると、支持フレーム64は、梃子の原理に基づき、払拭部材73をキャップ42のシール部44に対して押圧するように作用させる力の大きさが、払拭部材73の変位方向に応じて変化することになる。したがって、払拭部材73の変位方向を変更することによって、払拭部材73がキャップ42のシール部44を払拭する払拭力を変化させることができる。
【0091】
(4)本実施形態では、制御部25は、キャップ42のシール部44の汚染の程度に応じて、キャップ42のシール部44に付着したインク等の異物を払拭部材73によって適宜除去させるため、キャップ42のシール部44にインク等の異物が堆積することを抑制できる。
【0092】
(5)本実施形態では、制御部25は、キャップ42のシール部44が記録ヘッド20のノズル形成面20aに対して当接するキャッピング動作時のうち、キャップ42のシール部44が汚染されていると想定される場合、即ち、記録ヘッド20のクリーニング動作が実行された場合、又は、記録ヘッド20の印刷動作が完了した場合に、払拭部材73による払拭動作が実行される。そのため、払拭部材73が、必要以上の頻度で払拭動作を行うことはなく、キャップ42のシール部44が払拭部材73の払拭によって摩耗することが抑制される。
【0093】
なお、本実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、図13(a)に示すように、払拭部材73は、平板状の弾性体76と、該弾性体76の上端部に対して後方から面接触した状態で支持する支持体77とにより構成してもよい。
【0094】
この構成によれば、弾性体76は、図13(a)において二点鎖線で示すように、キャップ42の開口縁となるシール部44に沿って前方に往動する過程で、シール部44と摺接部(この場合、弾性体76の下端部)との間で発生する摩擦力によって後方に撓み変形する際には、該弾性体76の上端部の撓み変形が支持体77によって規制されるため、撓み変形する際の自由端が短くなる。一方、弾性体76は、図13(a)において二点鎖線で示すように、キャップ42のシール部44に沿って後方に復動する過程で、シール部44と摺接部(弾性体76の下端部)との間で発生する摩擦力によって前方に撓み変形する際には、弾性体76の撓み変形が支持体77によって規制されることはなく、撓み変形する際の自由端が弾性体76の往動時と比較して長くなる。
【0095】
すなわち、払拭部材73は、キャップ42のシール部44に沿って前方に往動する過程で、シール部44と摺接部(弾性体76の下端部)との間で発生する摩擦力が比較的大きくなるように構成されている。そのため、払拭部材73は、キャップ42のシール部44に沿って前方に往動する際には、シール部44に付着したインク等の異物を強く払拭して確実に除去することができる。一方、払拭部材73の復動時には、キャップ42のシール部44は、払拭部材73の往動時における払拭動作によってインク等の異物が既にほとんど払拭された状態となっている。そのため、払拭部材73は、復動時には、往動時のようにキャップ42のシール部44に対して大きな払拭力を作用させることが不要となる。この点、この構成によれば、払拭部材73は、キャップ42のシール部44に沿って後方に復動する過程でシール部44と摺接部(弾性体76の下端部)との間で発生する摩擦力が比較的小さくなるように構成されている。そのため、払拭部材73は、復動時には、キャップ42のシール部44に対して必要以上に過大な払拭力を作用させることがないため、キャップ42のシール部44が払拭部材73の払拭によって摩耗することが抑制される。
【0096】
また、図13(b)に示すように、払拭部材73は、支持フレーム64の上壁部67の下面から前方斜め下方に延びる側面視略三角形状の樹脂体により構成してもよい。この構成によれば、上記構成と同様に、払拭部材73が、キャップ42のシール部44に沿って前方に往動する場合に、キャップ42のシール部44に沿って後方に復動する場合よりも、シール部44と摺接部(払拭部材73の先端部)との間で発生する摩擦力を比較的大きくする構成を簡便に実現することができる。
【0097】
・上記実施形態において、支持フレーム64は、レバー部材63に対する当接面となる、側壁部66の長孔70の開口縁、及び各延設部68,69の段差面68a,69aを湾曲面状に構成してもよい。この構成によれば、支持フレーム64の移動方向を変更する際に、レバー部材63がこれらの当接面上を摺動して円滑に転回することが可能となる。
【0098】
・上記実施形態において、クリーニング装置41では、支持フレーム64は、駆動部46を構成するレバー部材63に対して動力伝達可能に当接する当接領域を単一の箇所に設ける構成としてもよい。この場合、制御部25は、駆動モーター48を正逆双方向に回転駆動することにより、支持フレーム64がキャップ42のシール部44に沿う方向に往復移動させる構成を実現することができる。
【0099】
・上記実施形態において、クリーニング装置41は、駆動部46と払拭部47とが常に動力伝達可能に連結されるように構成してもよい。この場合、制御部25は、駆動モーター48を必要に応じて駆動することにより、キャップ42の上方を横切るように払拭部47を往復移動させる構成を実現することができる。
【0100】
・上記実施形態において、クリーニング装置41において、キャップ42のシール部44に対して接離する方向に払拭部材73を昇降させるため昇降機構を更に設ける構成としてもよい。この構成によれば、クリーニング装置41は、払拭部材73の往動時には、払拭部材73をキャップ42のシール部44に対して接近する方向に降下させてキャップ42のシール部44に対して強く圧接させることにより、シール部44に付着したインク等の異物を強く払拭して確実に除去することができる。一方、クリーニング装置41は、払拭部材73の復動時には、払拭部材73をキャップ42のシール部44から離間する方向に上昇させてキャップ42のシール部44に対して弱く圧接させることにより、キャップ42のシール部44が払拭部材73の払拭によって摩耗することを抑制できる。
【0101】
・なお、本明細書における「液体」には、インク以外の他の液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体も含むものとする。そして、こうした「液体」を噴射したり吐出したりする液体噴射装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
11…液体噴射装置としてのプリンター、20…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、20a…ノズル形成面、25…制御手段としての制御部、41…異物除去手段としてのクリーニング装置、42…キャップ、44…開口縁としてのシール部、46…駆動機構としての駆動部、64…保持部材としての支持フレーム、68…連結部としての第1の延設部、68a…当接領域としての段差面、69…連結部としての第2の延設部、69a…当接領域としての段差面、73…払拭部材、73a…摺接部としての下端面、74…支持機構としてのガイド機構、75…接点。
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップの開口縁に付着した異物を除去する異物除去装置、及び該異物除去装置を備える液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射ヘッドからターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、「プリンター」と言う)が広く知られている。こうしたプリンターでは、液体噴射ヘッドのノズル形成面にノズル開口を囲うようにキャップの開口縁を当接させた状態で、ノズル形成面とキャップで形成される空間内を負圧状態にすることにより、ノズル開口を介して液体噴射ヘッド内から増粘したインクや気泡を強制的に吸引して排出させるクリーニング動作が実行される。
【0003】
ところで、クリーニング動作時やフラッシング動作時には、ノズル開口からキャップ内に向けて排出されたインクがキャップの開口縁に付着することがあり得る。そして、キャップの開口縁にインクが付着した状態を放置した場合、そのインクはキャップの開口縁に付着したまま固化してしまう。すると、クリーニング動作時に、液体噴射ヘッドのノズル形成面にキャップの開口縁を当接させたとしても、ノズル形成面とキャップで形成される空間の密封性が損なわれる。そのため、この空間内に十分な負圧を蓄圧することができず、ノズル開口を介して液体噴射ヘッド内から増粘したインクや気泡を吸引する際の吸引力が低下するという問題があった。そこで、通常、プリンターには、キャップの開口縁に付着したインク等の異物を除去するための機構が設けられている(特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、特許文献1に記載のインクジェット式記録装置は、キャップを覆うように配置されるカバーの内部に、キャップに向けて延びる多数本の可撓性針状材を有するブラシを備えている。可撓性針状材は、カバーがキャップを覆うように配置された場合に、先端部がキャップの環状突起(開口縁)に当接するように構成されている。そして、ブラシは、キャップの上方を横切るように往復移動する過程で、可撓性針状材の先端部がキャップの環状突起に摺接することにより、環状突起に付着しているインク等の異物を払拭して除去するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−253591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のインクジェット式記録装置では、ブラシにおいてキャップの環状突起に摺接して払拭機能を発揮する払拭部材が、キャップの環状突起に向けて細長く延びる可撓性針状材により構成されている。そのため、ブラシは、キャップの環状突起に付着したインクが相対的に高い粘性を有する場合には、そのインクを払拭する際の摺接抵抗により可撓性針状材の先端部が大きく撓み変形してキャップの環状突起から離間してしまい、粘性の高いインク等の異物を確実に払拭して除去することができない虞があった。
【0007】
その一方、キャップの環状突起に付着したインクが相対的に低い粘性を有する場合には、こうした粘性の低いインクは流動性が高いために、払拭時にインクが束状をなす各可撓性針状材間の微小な隙間を通過してキャップの環状突起上に残ってしまい、粘性の低いインク等の異物を確実に払拭して除去することができない虞があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、キャップの開口縁に付着した異物を確実に除去することができる異物除去装置及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の異物除去装置は、ノズル形成面に形成されたノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドに対して前記ノズル開口を囲うように環状をなす開口縁が当接可能とされたキャップを備えた液体噴射装置に設けられ、前記開口縁を払拭することにより該開口縁から異物を除去する異物除去装置であって、前記開口縁に沿う方向に変位する過程で、前記開口縁に対する摺接部が前記開口縁に対する摺接状態を維持することにより前記開口縁を払拭可能な払拭部材を備え、該払拭部材は、前記摺接部が払拭時の変位方向と交差する方向に沿って延びるように形成されている。
【0010】
上記構成によれば、払拭部材は、開口縁に付着した異物が相対的に高い粘性を有する場合であっても、そのような高粘性の異物を摺接部が開口縁に対する摺接状態を維持しつつ変位することにより払拭する。また、払拭部材は、開口縁に対する摺接部が払拭時の変位方向と交差する方向に延びるように形成されているため、開口縁に付着した異物が相対的に低い粘性を有する場合であっても、そのような流動性の高い低粘性の異物に対する払拭漏れが抑制される。したがって、払拭部材は、異物の粘性の大きさによることなく、開口縁に付着した異物を確実に払拭して除去することができる。
【0011】
また、本発明の異物除去装置は、前記払拭部材に対して該払拭部材を前記開口縁に沿う方向に変位させる駆動力を伝達する駆動機構を更に備え、前記駆動機構は、前記キャップが前記ノズル形成面から離間する方向に変位することに連動して、前記払拭部材に対して前記駆動力を伝達可能に連結される。
【0012】
上記構成によれば、キャップが液体噴射ヘッドのノズル形成面から離間する方向へ変位することに連動して、駆動機構は、払拭部材に対して該払拭部材を開口縁に沿う方向に変位させるための駆動力を伝達する。そのため、キャップの開口縁が払拭部材によって払拭可能な位置にあるか否かを識別するために、キャップの位置を検知するための機構を設けることが不要となる。
【0013】
また、本発明の異物除去装置において、前記駆動機構は、前記開口縁に沿う複数方向に前記払拭部材を変位可能に構成され、前記払拭部材は、前記開口縁の払拭時に該開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力が該払拭部材の変位方向毎に互いに異なるように構成されている。
【0014】
上記構成によれば、払拭部材は、開口縁に沿うように変位する方向が変更されることに伴って、開口縁と摺接部との間で発生する摩擦力の大きさを変化させて、開口縁に対する払拭力の大きさを変化させることができる。
【0015】
また、本発明の異物除去装置において、前記駆動機構は、前記開口縁の払拭時に該開口縁に沿う方向に前記払拭部材を往復移動可能に構成され、前記払拭部材は、往動時に前記開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力が、復動時に前記開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力よりも小さくなるように構成されている。
【0016】
上記構成によれば、払拭部材は、開口縁に沿う方向に往動する過程で、開口縁と摺接部との間で発生する摩擦力が比較的大きくなるように構成されている。そのため、払拭部材は、開口縁に沿う方向に往動する際には、開口縁に付着した異物を強く払拭して確実に除去することができる。一方、払拭部材の復動時には、開口縁は、払拭部材の往動によって異物が既にほとんど払拭された状態となっている。そのため、払拭部材は、復動時には、往動時のように開口縁に対して大きな払拭力を作用させることが不要となる。この点、上記構成によれば、払拭部材は、開口縁に沿う方向に復動する過程で開口縁と摺接部との間で発生する摩擦力が比較的小さくなるように構成されている。そのため、払拭部材は、復動時には、開口縁に対して必要以上に過大な払拭力を作用させることがないため、開口縁が払拭部材の払拭によって摩耗することが抑制される。
【0017】
また、本発明の異物除去装置は、前記払拭部材を保持する保持部材と、前記保持部材に対して接点を介して接触した状態で前記保持部材を前記接点を中心に回動可能に支持する支持機構と、を更に備え、前記保持部材は、前記駆動機構に対して前記駆動力を伝達可能に連結される連結部を有し、前記連結部は、前記駆動機構に対して当接可能な当接領域が前記接点との距離が互いに異なる複数の位置に設定され、前記払拭部材の変位方向に応じて前記当接領域の位置が切り替わるように構成されている。
【0018】
上記構成によれば、保持部材には、駆動手段から連結部の当接領域を介して作用する駆動力が、支持機構との接点を支点として、払拭部材を開口縁に対して押圧する方向に回動させる力として作用する。ここで、保持部材は、駆動手段から駆動力が作用する力点として機能する当接領域が、払拭部材の変位方向に応じて、上記の接点との距離が切り替わる。すると、保持部材は、梃子の原理に基づき、払拭部材を開口縁に対して押圧するように作用させる力の大きさが、払拭部材の変位方向に応じて変化することになる。したがって、払拭部材の変位方向を変更することによって、払拭部材が開口縁を払拭する払拭力を変化させることができる。
【0019】
また、本発明の異物除去装置は、前記開口縁の汚染の程度を示す指標値に基づき、前記駆動機構に前記駆動力を前記払拭部材に対して伝達させるか否かを制御する制御手段を更に備えた。
【0020】
上記構成によれば、制御手段は、キャップの開口縁の汚染の程度に応じて、開口縁に付着した異物を払拭部材によって適宜除去させるため、開口縁に異物が堆積することを抑制できる。
【0021】
また、本発明の異物除去装置において、前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドのクリーニング動作が実行された場合、又は、前記液体噴射ヘッドの印刷動作が完了した場合において、前記開口縁を前記液体噴射ヘッドに対して当接させるキャッピング動作時に、前記駆動機構に前記駆動力を前記払拭部材に対して伝達させるか否かを制御する。
【0022】
上記構成によれば、制御手段は、キャップの開口縁が液体噴射ヘッドのノズル形成面に対して当接するキャッピング動作時のうち、キャップの開口縁が汚染されていると想定される場合、即ち、液体噴射ヘッドのクリーニング動作が実行された場合、又は、液体噴射ヘッドの印刷動作が完了した場合に、払拭部材による払拭動作が実行される。そのため、払拭部材が、必要以上の頻度で払拭動作を行うことはなく、キャップの開口縁が払拭部材の払拭によって摩耗することが抑制される。
【0023】
また、本発明の液体噴射装置は、ノズル形成面に形成されたノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドと、上記構成の異物除去装置と、を備えた。
上記構成によれば、上記異物除去装置の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態のプリンターの平面図。
【図2】記録ヘッドの下面図。
【図3】メンテナンスユニットの斜視図。
【図4】クリーニング装置の正面図。
【図5】クリーニング装置の右側面図。
【図6】クリーニング装置の左側面図。
【図7】支持フレームの斜視図。
【図8】(a)は払拭部の正面図、(b)は払拭部の左側面図、(c)は払拭部の右側面図。
【図9】(a)はキャップが降下する前のクリーニング装置の左側面図、(b)はキャップが降下した後のクリーニング装置の左側面図。
【図10】(a)はキャップが降下する前のクリーニング装置の右側面図、(b)はキャップが降下した後のクリーニング装置の右側面図。
【図11】(a)はクリーニング装置が往動時におけるクリーニング動作を開始した直後の状態を示す作用図、(b)はクリーニング装置が往動時におけるクリーニング動作を完了した直後の状態を示す作用図、(c)はクリーニング装置が変位方向を切り替える途中の状態を示す作用図、(d)はクリーニング装置が復動時におけるクリーニング動作を開始した直後の状態を示す作用図、(e)はクリーニング装置が復動時におけるクリーニング動作を完了した直後の状態を示す作用図。
【図12】クリーニング処理ルーチンを示すフローチャート。
【図13】(a)(b)は、別の実施形態の払拭部の左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、プリンターという。)に具体化した一実施形態を図1〜図12に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「上下方向」、「左右方向」をいう場合は図中に矢印で示す方向をそれぞれ示すものとする。
【0026】
図1に示すように、プリンター11のフレーム12内にはプラテン13が架設されている。プラテン13上には、図示しない紙送りモーターを有する紙送り機構により図示しない記録用紙が給送されるようになっている。また、フレーム12内には、プラテン13の長手方向と平行に、棒状のガイド部材14が架設されている。
【0027】
ガイド部材14には、キャリッジ15が、該ガイド部材14の軸線方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ15は、フレーム12内に設けられた一対のプーリー16a,16b間に張設されたタイミングベルト16を介してキャリッジモーター17に連結されている。そして、キャリッジ15は、キャリッジモーター17の駆動により、ガイド部材14に沿って往復移動されるようになっている。
【0028】
キャリッジ15のプラテン13に対向する面には、記録用紙に向けてインク(流体)を噴射する液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド20が搭載されている。この記録ヘッド20の下面にて構成されるノズル形成面20aには、図2に示すように、前後方向に沿う複数のノズル列B,C,M,YEが、左右方向において隣り合う他のノズル列との間に所定の間隔をおくようにして平行に形成されている。なお、図2においては、左側から右側へ、ブラックインクノズル列B、シアンインクノズル列C、マゼンタインクノズル列M、及びイエローインクノズル列YEが順次に形成されている。
【0029】
これらの各ノズル列B,C,M,YEは、各色のインクを噴射(吐出)する場合の噴射口(吐出口)となる多数のノズル21の開口(ノズル開口)にて形成されている。また、記録ヘッド20内には図示しない圧電素子が各ノズル21と個別対応するように配設されている。そして、各圧電素子が駆動制御されることにより、記録ヘッド20の下方に至った記録用紙に向けて、各ノズル21からインクが噴射されるようになっている。
【0030】
また、図1に示すように、キャリッジ15上には、一時貯留したインクを記録ヘッド20に供給するバルブユニット22が、プリンター11において使用されるインクの色(種類)に対応して複数個(本実施形態では4個)備えられている。
【0031】
フレーム12の一端部(右端部)には、カートリッジホルダー23が設けられている。このカートリッジホルダー23には、インクカートリッジ24が着脱可能に複数個(本実施形態では4個)装着されている。また、カートリッジホルダー23には、一端がキャリッジ15上の各バルブユニット22とそれぞれ接続された複数本(本実施形態では4本)のインク供給チューブ35の他端がそれぞれ接続されている。
【0032】
カートリッジホルダー23の上側には、加圧ポンプ36が設けられているとともに、該加圧ポンプ36は、複数本(本実施形態では4本)の空気供給チューブ39を介してカートリッジホルダー23に接続されている。なお、カートリッジホルダー23に各インクカートリッジ24を装着した状態では、各インクカートリッジ24は、各インク供給チューブ35及び各空気供給チューブ39とそれぞれ接続されるようになっている。
【0033】
そして、加圧ポンプ36を駆動すると、各空気供給チューブ39を介して各インクカートリッジ24内に空気がそれぞれ圧送される。すると、圧送された空気により各インクカートリッジ24内のインクがそれぞれ加圧され、該各インクが各インク供給チューブ35を介して各バルブユニット22に加圧供給されるようになっている。
【0034】
カートリッジホルダー23とプラテン13との間は、プリンター11の電源オフ時や記録ヘッド20をメンテナンスする場合にキャリッジ15の待機場所となるホームポジションHPになっている。また、キャリッジ15がホームポジションHPに配置されたときの下方となる位置には、記録ヘッド20のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット40が備えられている。
【0035】
ホームポジションHPの前方には、キャリッジ15の移動経路上から外れた位置に、クリーニング装置41が設けられている。そして、クリーニング装置41は、メンテナンスユニット40の上方を横切るように前後方向に往復移動する過程で、メンテナンスユニット40に付着したインク等の異物を払拭して除去する異物除去手段として機能する。
【0036】
次に、本発明のメンテナンスユニット40の構成について、図3に従って説明する。
図3に示すように、メンテナンスユニット40は、矩形箱状をなすキャップ42を備えている。キャップ42は、記録ヘッド20がホームポジションHPに位置した場合に、記録ヘッド20のノズル形成面20aに対向する上面42aに、複数のキャップ小室43a,43b,43c,43dが凹み形成されている。これらのキャップ小室43a,43b,43c,43dは、前後方向に沿って長溝状をなすように形成されており、左右方向において隣り合う他のキャップ小室との間に所定の間隔をおいて並列して配置されている。なお、これらの各キャップ小室43a,43b,43c,43dは、記録ヘッド20の各ノズル列B,C,M,YEと個別対応するものである。そして、各キャップ小室43a,43b,43c,43dは、対応するノズル列を形成する各ノズル21から吐出された廃インクを受容可能なように、各々が所定の深さを有するように開口形成されている。また、キャップ42の上面42aにおいて、各キャップ小室43a,43b,43c,43dの開口縁には、可撓性材料(例えば、ゴム)からなる四角環状をなすシール部44が個別に設けられている。
【0037】
また、キャップ42の下面42bには、鉛直下方に突出した凸条45が設けられている。この凸条45は、キャップ42の下面42bの略中央部に、キャリッジ15の移動方向となる左右方向に沿うように、キャップ42の下面42bの左右方向全域に亘って延設されている。また、凸条45は、左右方向からの側面視三角形状をなしており、前面が後ろ下がり勾配の傾斜面45aとして構成されると共に、後面が垂直面45bとして構成されている。
【0038】
次に、本発明のクリーニング装置41の構成について、図4〜図8に従って説明する。
図4に示すように、クリーニング装置41は、駆動部46(駆動機構)と払拭部47とから構成されている。そして、払拭部47は、駆動部46から伝達される駆動力に基づいて、キャップ42の上方を横切る前後方向に往復移動可能に構成されている。
【0039】
まず、駆動部46の構成について説明する。
図4に示すように、駆動部46は、駆動力を生成して出力するための駆動モーター48と、該駆動モーター48から出力される駆動力を払拭部47に伝達するためのギア機構49とを備えている。ギア機構49は、複数(本実施形態では6つ)のギア50,51,52,53,54,55から構成され、これらのギア50,51,52,53,54,55は、駆動モーター48から払拭部47に至る動力伝達経路上に並列して配置されている。なお、各ギア50,51,52,53,54,55は、多数の外歯が外周面上に等間隔に形成されており、これらの外歯が互いに係合することにより動力伝達可能に連結されるようになっている。
【0040】
図4及び図5に示すように、駆動モーター48は、キャップ42の前方に、略同一の高さで前後方向に対向するように配置されている。また、駆動モーター48は、左右方向に略水平に延びる出力軸48aを有しており、該出力軸48aには第1ギア50が連結されている。
【0041】
なお、駆動モーター48は、例えばデジタルコンピュータ等を含んで構成される制御手段としての制御部25の制御により駆動制御されるようになっている。また、制御部25は、キャップ42を昇降させる昇降機構26を駆動制御するようになっている。
【0042】
第1ギア50の鉛直下方には、該第1ギア50よりも小径の第2ギア51が配置されている。第2ギア51は、第1ギア50の回転軸線、即ち、駆動モーター48の出力軸48aの軸線方向と平行に延びる回転軸線を中心に回動自在に軸支されている。また、第2ギア51は、常には、第1ギア50に対して動力伝達可能に連結されている。
【0043】
第2ギア51の後方斜め下方には、第2ギア51とほぼ同径の第3ギア52が、その一部が第2ギア51と上下方向で重畳するように配置されている。また、第3ギア52は、支持部材56から第2ギア51の回転軸線と平行に延びる回動軸57によって回動自在に軸支されている。なお、回動軸57は、支持部材56を左右方向に貫通するように挿通されており、支持部材56によって回動自在に軸支されている。また、支持部材56は、その後端面の上部が、キャップ42の凸条45と上下方向で対向した状態で、凸条45の傾斜面45aと略同一の勾配となる後ろ下がり勾配の傾斜面56aとして構成されている。さらに、支持部材56は、常には、コイルスプリング58によって後方に付勢されており、第3ギア52を第2ギア51に対して後方に離間させる構成となっている。
【0044】
図4及び図6に示すように、回動軸57には、支持部材56を挟んで第3ギア52とは左右方向で反対側となる位置に、第3ギア52とほぼ同径の第4ギア53が連結されている。また、第4ギア53の前方斜め上方には、第4ギア53とほぼ同径の第5ギア54が、その一部が第4ギア53と上下方向で重畳するように配置されている。また、第5ギア54は、第4ギア53の回転軸線、即ち、回動軸57の軸線方向と平行に延びる回転軸線を中心に回動自在に軸支されている。なお、上記のように、支持部材56は、常には、第4ギア53を回動軸57を介して軸支した状態でコイルスプリング58によって後方に付勢されており、第4ギア53を第5ギア54に対して後方に離間させる構成となっている。
【0045】
また、第5ギア54の鉛直上方には、該第5ギア54よりも大径の第6ギア55が配置されている。第6ギア55は、第5ギア54の回転軸線と平行に延びる回動軸59の一端が嵌挿されており、この回動軸59によって回動自在に軸支されている。また、第6ギア55は、常には、第5ギア54に対して動力伝達可能に連結されている。また、第6ギア55を軸支する回動軸59の他端には、駆動ローラー60が連結されている。
【0046】
駆動ローラー60の後方には、該駆動ローラー60と略同一の回転径を有する従動ローラー61が、駆動ローラー60に対して略同一の高さで前後方向に対向するように回動自在に設けられている。そして、各ローラー60,61には、該各ローラー60,61を囲むように、無端状の搬送ベルト62が前後方向に略水平に巻き掛けられている。また、搬送ベルト62の外周面上には、左右方向に略水平に延びる棒状のレバー部材63が固定されている。
【0047】
次に、払拭部47の構成について説明する。
図7及び図8(a)に示すように、払拭部47は、正面視略L字状をなす保持部材としての支持フレーム64を備えている。支持フレーム64は、左右方向に略水平に延びる底壁部65と、該底壁部65の右端から鉛直上方に立設された側壁部66と、該側壁部66の上端から底壁部65側となる左方に略水平に延設された上壁部67とから構成されている。
【0048】
図7及び図8(b)に示すように、底壁部65は、その左端寄りの位置から鉛直上方に延びるように第1の延設部68が延設されており、該第1の延設部68は、その上面における前後方向の中途から後方が鉛直上方に張り出した段差状をなすように構成されている。
【0049】
上壁部67は、第1の延設部68と上下方向で対向する位置に、鉛直下方に延びるように第2の延設部69が延設されており、該第2の延設部69は、その下面における前後方向の中途から前方が鉛直下方に張り出した段差状をなすように構成されている。
【0050】
図7及び図8(c)に示すように、側壁部66の略中央部には、矩形状の長孔70が上下方向に長く延びるように貫通形成されている。長孔70は、その上下方向の寸法が、第1の延設部68の段差面68aの下端から第2の延設部69の段差面69aの上端に至る上下方向の寸法と略同一となるように設定されている。また、長孔70は、その前後方向の寸法が、第1の延設部68の段差面68aと第2の延設部69の段差面69aとの間の前後方向の寸法と略同一となるように設定されている。
【0051】
なお、図4に示すように、支持フレーム64には、各延設部68,69によって左右に仕切られる二つの空間域71,72が形成される。そして、支持フレーム64は、これらの空間域71,72のうち、側壁部66側とは反対側となる左方の空間域71が、上壁部67及び各延設部68,69によって上方及び右方から包囲される構成となっている。そして、支持フレーム64は、この空間域71が、メンテナンスユニット40及び駆動部46を構成する各ギア50,51,52,53,54,55に対して前後方向で対向する配置構成となっている。
【0052】
一方、支持フレーム64は、これらの空間域71,72のうち、側壁部66側となる右方の空間域72が、底壁部65、側壁部66、上壁部67、及び各延設部68,69によって上下方向及び左右方向に包囲される構成となっている。そして、支持フレーム64は、この空間域72が、駆動部46を構成する各ローラー60,61、該各ローラー60,61に巻き掛けられる搬送ベルト62、及び該搬送ベルト62に固定されるレバー部材63に対して前後方向で対向する配置構成となっている。なお、この空間域72は、その左右方向の寸法が、各ローラー60,61及び搬送ベルト62の同方向の幅寸法よりも大きく、且つ、レバー部材63の長手方向の寸法とほぼ同程度となるように設定されている。
【0053】
また、各延設部68,69は、上下方向に隙間を介して離間した構成となっており、この隙間と略同一の高さで前後方向に対向する位置には、駆動ローラー60と第6ギア55との間を略水平に延びる回動軸59が配置されている。また、各延設部68,69の段差面68a,69aは、搬送ベルト62の周回時におけるレバー部材63の移動経路上に配置されており、レバー部材63の前後方向の幅寸法よりも若干大きな距離を隔てて前後方向に互いに離間した配置構成となっている。そして、レバー部材63は、その長手方向の一端側が、両延設部68,69のうち、一方の延設部の段差面によって前方もしくは後方から係止された状態で、その長手方向の他端側が側壁部66に形成された長孔70に対して左右方向に貫通するように挿通されている。すなわち、両延設部68,69は、駆動部46を構成するレバー部材63に対して、駆動モーター48からの駆動力を伝達可能に連結される連結部として機能する。
【0054】
また、上壁部67は、その下面がキャップ42上のシール部44と上下方向で対向する面となっており、この下面に多孔質材料からなる矩形板状の払拭部材73を固定している。そして、上壁部67がキャップ42の鉛直上方に位置した状態では、払拭部材73は、その下端面73aがキャップ42上においてキャップ小室43a〜43dの開口縁に沿うように形成されたシール部44に当接するように構成されている。すなわち、本実施形態では、払拭部材73の下端面73aがキャップ42の開口縁となるシール部44に対して摺接する摺接部として機能する。
【0055】
なお、払拭部材73は、その下端面73aがキャップ42のシール部44を払拭する際の変位方向と直交する左右方向に延びるように形成されている。そして、払拭部材73は、キャップ42のシール部44を払拭する過程で、シール部44上に付着したインク等の異物の粘性抵抗に抗して、シール部44に対する摺接状態を維持できる程度の剛性を有する構成となっている。
【0056】
また、クリーニング装置41には、図6にて二点鎖線で示すように、支持機構としてのガイド機構74が、支持フレーム64の変位方向となる前後方向に沿うように設けられている。ガイド機構74は、支持フレーム64の側壁部66に対して、長孔70よりも下方となる位置で接点75を介して接触しており、支持フレーム64を接点75を介して回動自在に支持した状態で前後方向にガイドするようになっている。
【0057】
そこで次に、以上のように構成されたプリンター11の作用について、特にクリーニング装置41の駆動部46及び払拭部47がキャップ42の昇降に連動して動力伝達可能に連結される際の作用に着目して以下説明する。
【0058】
まず、前提として、図9(a)に示す状態では、キャップ42は、各キャップ小室43a〜43dの開口縁となるシール部44を記録ヘッド20のノズル形成面20aに対して対応するノズル21を囲うように当接させた状態で記録ヘッド20のメンテナンス動作を実行した直後にあるものとする。
【0059】
さて、このように図9(a)及び図10(a)に示す状態から、クリーニング装置41がクリーニング動作を実行する場合には、まず、昇降機構26を駆動して、シール部44が記録ヘッド20のノズル形成面20aから離間するようにキャップ42を下降させる。
【0060】
このとき、キャップ42は、その下面42bに設けられた凸条45が、支持部材56を鉛直下方に押圧するように変位する。すると、キャップ42の凸条45は、支持部材56に対する当接面となる傾斜面45aを介して、該傾斜面45aと直交する前方斜め下方に支持部材56を押圧する。このとき、支持部材56は、キャップ42の凸条45から作用する押圧力の鉛直方向成分に抗して、水平方向に沿う姿勢を維持する一方、その押圧力の水平方向成分に従って、傾斜面56aがキャップ42の凸条45の傾斜面45aの下端から上端に向けて摺動する過程で、コイルスプリング58の付勢力に抗して前方に水平移動する。
【0061】
その結果、図9(b)に示すように、第3ギア52は、回動軸57に軸支された状態で、支持部材56と共に、前方に水平移動して、第2ギア51に対して動力伝達可能に連結される。また同様に、図10(b)に示すように、第4ギア53は、回動軸57に軸支された状態で、支持部材56と共に、前方に水平移動して、第5ギア54に対して動力伝達可能に連結される。
【0062】
すなわち、クリーニング装置41は、キャップ42が記録ヘッド20のノズル形成面20aから離間する方向に降下することに連動して、駆動モーター48が各ギア50,51,52,53,54,55を介して駆動ローラー60に対して動力伝達可能に連結される。そして、この状態で、駆動ローラー60が駆動モーター48の駆動に従って回転駆動すると、搬送ベルト62が、駆動ローラー60に巻き掛けられた状態で周回移動するようになっている。
【0063】
次に、クリーニング装置41が、駆動モーター48と駆動ローラー60がギア機構49を介して動力伝達可能に連結された状態で、キャップ42上の開口縁となるシール部44を払拭する際の作用に着目して以下説明する。
【0064】
さて、図11(a)に示すように、レバー部材63は、第2の延設部69の段差面69aに対して後方から面接触した状態で、従動ローラー61の近傍に配置されているとする。ここで、駆動モーター48が駆動すると、搬送ベルト62が左方から見て左回転方向に周回移動を開始する。そして、レバー部材63は、搬送ベルト62の外周面上に固定された状態で、搬送ベルト62と共に周回移動する。すると、レバー部材63は、側壁部66の長孔70の開口縁、及び、第2の延設部69の段差面69aを前方に押圧して、支持フレーム64を前方に変位させる。このとき、支持フレーム64は、レバー部材63から作用する押圧力に従って、ガイド機構74にガイドされながらキャップ42のシール部44を前後方向に横切る過程で、払拭部材73の下端面73aがキャップ42の開口縁となるシール部44を払拭するようになっている(図11(b)参照)。なお、払拭部材73は、キャップ42のシール部44を払拭する過程で、シール部44に対する摺接状態が、その払拭方向と直交する左右方向の全域で維持される。
【0065】
また、支持フレーム64は、その前方移動時には、レバー部材63から側壁部66の長孔70の開口縁、及び第2の延設部69の段差面69aに対して前方への押圧力が作用する。このとき、ガイド機構74との接点75を支点とする梃子の原理によって、払拭部材73の前端部には、キャップ42の開口縁となるシール部44側に沈み込む力が作用する。そのため、支持フレーム64の往動時には、払拭部材73は、その前端部がキャップ42のシール部44に対して圧接した状態で、キャップ42のシール部44に付着したインク等の異物を払拭する。
【0066】
また、搬送ベルト62が更に周回移動すると、レバー部材63は、駆動ローラー60の外周面上に到達する。そして、図11(c)に示すように、レバー部材63は、側壁部66の長孔70の開口縁を前方に押圧しつつ、駆動ローラー60の外周面を乗り超えるように下方に転回する。すると、レバー部材63は、側壁部66の長孔70の開口縁、及び、第1の延設部68の段差面68aに対して前方から面接触した状態となる。
【0067】
そして、搬送ベルト62が更に周回移動すると、レバー部材63は、側壁部66の長孔70の開口縁、及び、第1の延設部68の段差面68aを後方に押圧して、支持フレーム64を後方に変位させる。このとき、支持フレーム64は、レバー部材63から作用する押圧力に従って、ガイド機構74にガイドされながらキャップ42のシール部44の前端部に当接する位置まで後方に変位する(図11(d)参照)。
【0068】
そして、支持フレーム64は、図11(d)に示す状態から、レバー部材63から作用する押圧力に従って、ガイド機構74にガイドされながらキャップ42のシール部44を前後方向に横切る過程で、払拭部材73がシール部44の上面を再度払拭するようになっている。
【0069】
また、支持フレーム64は、その後方移動時には、レバー部材63から側壁部66の長孔70の開口縁、及び第1の延設部68の段差面68aに対して後方への押圧力が作用する。このとき、ガイド機構74との接点75を支点とする梃子の原理によって、払拭部材73の後端部には、キャップ42の開口縁となるシール部44側に沈み込む力が作用する。そのため、支持フレーム64の復動時には、払拭部材73は、その前端部がキャップ42のシール部44に対して圧接した状態で、キャップ42のシール部44に付着したインク等の異物を払拭する。
【0070】
なお、支持フレーム64は、レバー部材63によって第2の延設部69の段差面69aに対して前方への付勢力が付与される位置(力点)と支点となる接点75との間の距離の方が、レバー部材63によって第1の延設部68の段差面68aに対して後方への付勢力が付与される位置(力点)と支点となる接点75との間の距離よりも大きくなるように設定されている。そのため、支持フレーム64は、その往動時(前方移動時)には、払拭部材73をキャップ42のシール部44に対して比較的強く圧接させて、キャップ42のシール部44に付着したインク等の異物を確実に払拭して除去する。一方、支持フレーム64は、その復動時(後方移動時)には、払拭部材73をキャップ42のシール部44に対して比較的弱く圧接させて、支持フレーム64の往動時に払拭部材73によって払拭されることなくキャップ42のシール部44に残存したインク等の異物を確実に払拭するようになっている。
【0071】
すなわち、本実施形態のクリーニング装置41では、第1の延設部68の段差面68a及び第2の延設部69の段差面69aが、駆動モーター48からの駆動力を伝達可能に連結されるように、駆動部46を構成するレバー部材63に対して当接する当接領域となっている。また、これらの当接領域は、ガイド機構74との接点75との距離が互いに異なるように設定されている。そして、クリーニング装置41は、支持フレーム64がキャップ42のシール部44に沿う前後方向に往復移動する際の移動方向に応じて、これらの当接領域が適宜切り替わるように構成されている。
【0072】
次に、本実施形態のプリンター11の制御部25が、キャップ42のシール部44が記録ヘッド20のノズル形成面20aに対してノズル21を囲うように当接するキャッピング動作に際して実行するクリーニング処理ルーチンについて図12に基づき以下説明する。
【0073】
さて、クリーニング処理ルーチンが開始すると、制御部25は、まず、ステップS11において、キャップ42が記録ヘッド20のノズル形成面20aに対してノズル21を囲うようにシール部44を当接させた状態で、記録ヘッド20のノズル21から増粘したインクや気泡を強制的に吸引して排出させる記録ヘッド20のクリーニング動作が実行された直後であるか否かを判別する。
【0074】
そして、制御部25は、先のステップS11において、記録ヘッド20のクリーニング動作が実行された直後であると判別した場合には、キャップ42のシール部44が記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクが飛散して汚染されている虞があると判断し、その処理をステップS12に移行する。
【0075】
一方、制御部25は、先のステップS11において、記録ヘッド20のクリーニング動作が実行された直後ではないと判別した場合には、ステップS13において、記録ヘッド20が記録用紙に対する一連の印刷処理が完了したか否かを判別する。
【0076】
そして、制御部25は、先のステップS13において、記録ヘッド20が記録用紙に対する一連の印刷処理を完了したと判別した場合には、記録ヘッド20のノズル21内を保湿するために、キャップ42が記録ヘッド20のノズル形成面20aに対してノズル21を囲うようにシール部44を長期間に亘って当接させる必要があると判断する。そして、この場合、制御部25は、キャップ42と記録ヘッド20のノズル形成面20aとの間に形成される空間の密封性を確保するために、キャップ42の開口縁となるシール部44に付着したインク等の異物を確実に除去することが好ましいと判断し、その処理をステップS12に移行する。
【0077】
一方、制御部25は、先のステップS13において、記録ヘッド20が記録用紙に対する一連の印刷処理を実行中であると判別した場合には、キャップ42によるキャッピング動作が、記録ヘッド20のノズル21内を保湿する場合のように長期間に亘るものではないと判断する。そして、この場合、制御部25は、キャップ42のシール部44に付着したインク等の異物が少量であれば、そのような異物を除去することは不要である判断し、その処理をステップS19に移行する。
【0078】
そして次に、制御部25は、ステップS12において、記録ヘッド20のクリーニング動作に際して、キャップ42が記録ヘッド20のノズル形成面20aに対してノズル21を囲うようにシール部44を当接させるキャッピング回数が所定の閾値を上回るか否かを判別する。
【0079】
そして、制御部25は、先のステップS12において、記録ヘッド20に対するキャッピング回数が所定の閾値を上回ると判別した場合には、記録ヘッド20のクリーニング動作の実行頻度が高いため、記録ヘッド20のクリーニング動作に際して、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクがキャップ42のシール部44に飛散して汚染されている可能性が高いと判断し、その処理をステップS15に移行する。
【0080】
一方、制御部25は、先のステップS12において、記録ヘッド20に対するキャッピング回数が所定の閾値以下であると判別した場合には、記録ヘッド20のクリーニング動作の実行頻度があまり高くないため、記録ヘッド20のクリーニング動作に際して、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクがキャップ42のシール部44に飛散して汚染されている可能性が低いと判断し、その処理をステップS14に移行する。
【0081】
そして、制御部25は、ステップS14において、記録ヘッド20のフラッシング動作又はクリーニング動作に際して、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクの消費量が所定の閾値を上回るか否かを判別する。
【0082】
そして、制御部25は、先のステップS14において、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクの消費量が所定の閾値を上回ると判別した場合には、記録ヘッド20のフラッシング動作やクリーニング動作に際して、多量のインクがノズル21から吐出されているため、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクがキャップ42のシール部44に飛散して汚染されている可能性が高いと判断し、その処理をステップS15に移行する。
【0083】
一方、制御部25は、先のステップS14において、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクの消費量が所定の閾値以下であると判別した場合には、記録ヘッド20のフラッシング動作やクリーニング動作に際して、ノズル21から吐出されたインクが少量であるため、記録ヘッド20のノズル21から吐出されたインクがキャップ42のシール部44に飛散して汚染されている可能性が低いと判断する。そして、この場合、制御部25は、記録ヘッド20のクリーニング動作の実行頻度があまり高くないのであれば、キャップ42のシール部44に対するクリーニング動作は不要である判断し、その処理をステップS19に移行する。
【0084】
そして次に、制御部25は、ステップS15において、昇降機構26を駆動して、キャップ42を記録ヘッド20のノズル形成面20aから離間する方向に降下させる。すると、キャップ42の下降に伴って、クリーニング装置41の駆動部46は、駆動モーター48がギア機構49を介して駆動ローラー60に対して動力伝達可能に連結されるようになる。
【0085】
続いて、制御部25は、ステップS16において、駆動モーター48と駆動ローラー60が連結された状態で駆動モーター48を駆動する。すると、駆動モーター48の駆動力が駆動ローラー60に伝達されることにより、駆動ローラー60に巻き掛けられた搬送ベルト62が周回移動を開始する。そして、レバー部材63は、搬送ベルト62の外周面上に固定された状態で、搬送ベルト62と共に周回移動するようになる。このとき、クリーニング装置41の払拭部47では、支持フレーム64が、レバー部材63の周回移動経路上に配置された両延設部68,69のうち、一方の延設部の段差面を介してレバー部材63によって前後方向に押圧される。その結果、支持フレーム64は、キャップ42の上方を横切るように前後方向に往復移動するようになり、この往復移動の過程で、払拭部材73がキャップ42の開口縁となるシール部44を払拭するクリーニング動作を実行する。
【0086】
そして次に、制御部25は、ステップS17及びステップS18において、クリーニング装置41がクリーニング動作を実行するか否かを判断する際の判断基準となるキャッピング回数及びインクの消費量をリセットする。そして、制御部25は、先のステップS16において、クリーニング装置41がキャップ42のシール部44に対するクリーニング動作を実行した後、キャップ42のシール部44の汚染の程度を示す指標値となるキャッピング回数及びインクの消費量のカウントを再度開始する。
【0087】
その後、制御部25は、ステップS19において、昇降機構26を駆動して、キャップ42を記録ヘッド20のノズル形成面20aに近接する方向に上昇させる。そして、キャップ42は、シール部44が記録ヘッド20のノズル21を囲うようにノズル形成面20aに当接させてキャッピング動作が完了する。なお、この場合、キャップ42のシール部44は、インク等の異物の付着がほとんどない状態となっているため、キャップ42と記録ヘッド20のノズル形成面20aとの間に形成される空間の密閉性が確保されるようになっている。
【0088】
本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、払拭部材73は、キャップ42の開口縁となるシール部44に付着したインク等の異物が相対的に高い粘性を有する場合であっても、そのような高粘性の異物をその下端面73aがシール部44に対する摺接状態を維持しつつ変位することにより払拭する。また、払拭部材73は、シール部44に対して摺接する下端面73aが払拭時の変位方向と交差する方向に延びるように形成されているため、シール部44に付着したインク等の異物が相対的に低い粘性を有する場合であっても、そのような流動性の高い低粘性の異物に対する払拭漏れが抑制される。したがって、払拭部材73は、異物の粘性の大きさによることなく、シール部44に付着した異物を払拭して確実に除去することができる。
【0089】
(2)本実施形態では、キャップ42が記録ヘッド20のノズル形成面20aから離間することに連動して、クリーニング装置41では、駆動部46が払拭部47に対して該払拭部47をシール部44に沿う方向に変位させるための駆動力を伝達する。そのため、キャップ42のシール部44が払拭部材73によって払拭可能な位置にあるか否かを識別するために、キャップ42の位置を検知するための機構を設けることが不要となる。
【0090】
(3)本実施形態では、支持フレーム64には、駆動部46から各延設部68,69の段差面68a,69aを介して作用する駆動力が、ガイド機構74との接点75を支点として、払拭部材73をキャップ42のシール部44に対して押圧する方向に回動させる力として作用する。ここで、支持フレーム64は、駆動部46から駆動力が作用する力点として機能する段差面68a,69aが、払拭部材73の変位方向に応じて、上記の接点75との距離が切り替わる。すると、支持フレーム64は、梃子の原理に基づき、払拭部材73をキャップ42のシール部44に対して押圧するように作用させる力の大きさが、払拭部材73の変位方向に応じて変化することになる。したがって、払拭部材73の変位方向を変更することによって、払拭部材73がキャップ42のシール部44を払拭する払拭力を変化させることができる。
【0091】
(4)本実施形態では、制御部25は、キャップ42のシール部44の汚染の程度に応じて、キャップ42のシール部44に付着したインク等の異物を払拭部材73によって適宜除去させるため、キャップ42のシール部44にインク等の異物が堆積することを抑制できる。
【0092】
(5)本実施形態では、制御部25は、キャップ42のシール部44が記録ヘッド20のノズル形成面20aに対して当接するキャッピング動作時のうち、キャップ42のシール部44が汚染されていると想定される場合、即ち、記録ヘッド20のクリーニング動作が実行された場合、又は、記録ヘッド20の印刷動作が完了した場合に、払拭部材73による払拭動作が実行される。そのため、払拭部材73が、必要以上の頻度で払拭動作を行うことはなく、キャップ42のシール部44が払拭部材73の払拭によって摩耗することが抑制される。
【0093】
なお、本実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、図13(a)に示すように、払拭部材73は、平板状の弾性体76と、該弾性体76の上端部に対して後方から面接触した状態で支持する支持体77とにより構成してもよい。
【0094】
この構成によれば、弾性体76は、図13(a)において二点鎖線で示すように、キャップ42の開口縁となるシール部44に沿って前方に往動する過程で、シール部44と摺接部(この場合、弾性体76の下端部)との間で発生する摩擦力によって後方に撓み変形する際には、該弾性体76の上端部の撓み変形が支持体77によって規制されるため、撓み変形する際の自由端が短くなる。一方、弾性体76は、図13(a)において二点鎖線で示すように、キャップ42のシール部44に沿って後方に復動する過程で、シール部44と摺接部(弾性体76の下端部)との間で発生する摩擦力によって前方に撓み変形する際には、弾性体76の撓み変形が支持体77によって規制されることはなく、撓み変形する際の自由端が弾性体76の往動時と比較して長くなる。
【0095】
すなわち、払拭部材73は、キャップ42のシール部44に沿って前方に往動する過程で、シール部44と摺接部(弾性体76の下端部)との間で発生する摩擦力が比較的大きくなるように構成されている。そのため、払拭部材73は、キャップ42のシール部44に沿って前方に往動する際には、シール部44に付着したインク等の異物を強く払拭して確実に除去することができる。一方、払拭部材73の復動時には、キャップ42のシール部44は、払拭部材73の往動時における払拭動作によってインク等の異物が既にほとんど払拭された状態となっている。そのため、払拭部材73は、復動時には、往動時のようにキャップ42のシール部44に対して大きな払拭力を作用させることが不要となる。この点、この構成によれば、払拭部材73は、キャップ42のシール部44に沿って後方に復動する過程でシール部44と摺接部(弾性体76の下端部)との間で発生する摩擦力が比較的小さくなるように構成されている。そのため、払拭部材73は、復動時には、キャップ42のシール部44に対して必要以上に過大な払拭力を作用させることがないため、キャップ42のシール部44が払拭部材73の払拭によって摩耗することが抑制される。
【0096】
また、図13(b)に示すように、払拭部材73は、支持フレーム64の上壁部67の下面から前方斜め下方に延びる側面視略三角形状の樹脂体により構成してもよい。この構成によれば、上記構成と同様に、払拭部材73が、キャップ42のシール部44に沿って前方に往動する場合に、キャップ42のシール部44に沿って後方に復動する場合よりも、シール部44と摺接部(払拭部材73の先端部)との間で発生する摩擦力を比較的大きくする構成を簡便に実現することができる。
【0097】
・上記実施形態において、支持フレーム64は、レバー部材63に対する当接面となる、側壁部66の長孔70の開口縁、及び各延設部68,69の段差面68a,69aを湾曲面状に構成してもよい。この構成によれば、支持フレーム64の移動方向を変更する際に、レバー部材63がこれらの当接面上を摺動して円滑に転回することが可能となる。
【0098】
・上記実施形態において、クリーニング装置41では、支持フレーム64は、駆動部46を構成するレバー部材63に対して動力伝達可能に当接する当接領域を単一の箇所に設ける構成としてもよい。この場合、制御部25は、駆動モーター48を正逆双方向に回転駆動することにより、支持フレーム64がキャップ42のシール部44に沿う方向に往復移動させる構成を実現することができる。
【0099】
・上記実施形態において、クリーニング装置41は、駆動部46と払拭部47とが常に動力伝達可能に連結されるように構成してもよい。この場合、制御部25は、駆動モーター48を必要に応じて駆動することにより、キャップ42の上方を横切るように払拭部47を往復移動させる構成を実現することができる。
【0100】
・上記実施形態において、クリーニング装置41において、キャップ42のシール部44に対して接離する方向に払拭部材73を昇降させるため昇降機構を更に設ける構成としてもよい。この構成によれば、クリーニング装置41は、払拭部材73の往動時には、払拭部材73をキャップ42のシール部44に対して接近する方向に降下させてキャップ42のシール部44に対して強く圧接させることにより、シール部44に付着したインク等の異物を強く払拭して確実に除去することができる。一方、クリーニング装置41は、払拭部材73の復動時には、払拭部材73をキャップ42のシール部44から離間する方向に上昇させてキャップ42のシール部44に対して弱く圧接させることにより、キャップ42のシール部44が払拭部材73の払拭によって摩耗することを抑制できる。
【0101】
・なお、本明細書における「液体」には、インク以外の他の液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体も含むものとする。そして、こうした「液体」を噴射したり吐出したりする液体噴射装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
11…液体噴射装置としてのプリンター、20…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、20a…ノズル形成面、25…制御手段としての制御部、41…異物除去手段としてのクリーニング装置、42…キャップ、44…開口縁としてのシール部、46…駆動機構としての駆動部、64…保持部材としての支持フレーム、68…連結部としての第1の延設部、68a…当接領域としての段差面、69…連結部としての第2の延設部、69a…当接領域としての段差面、73…払拭部材、73a…摺接部としての下端面、74…支持機構としてのガイド機構、75…接点。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル形成面に形成されたノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドに対して前記ノズル開口を囲うように環状をなす開口縁が当接可能とされたキャップを備えた液体噴射装置に設けられ、前記開口縁を払拭することにより該開口縁から異物を除去する異物除去装置であって、
前記開口縁に沿う方向に変位する過程で、前記開口縁に対する摺接部が前記開口縁に対する摺接状態を維持することにより前記開口縁を払拭可能な払拭部材を備え、
該払拭部材は、前記摺接部が払拭時の変位方向と交差する方向に沿って延びるように形成されていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異物除去装置において、
前記払拭部材に対して該払拭部材を前記開口縁に沿う方向に変位させる駆動力を伝達する駆動機構を更に備え、
前記駆動機構は、前記キャップが前記ノズル形成面から離間する方向に変位することに連動して、前記払拭部材に対して前記駆動力を伝達可能に連結されることを特徴とする異物除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載の異物除去装置において、
前記駆動機構は、前記開口縁に沿う複数方向に前記払拭部材を変位可能に構成され、
前記払拭部材は、前記開口縁の払拭時に該開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力が該払拭部材の変位方向毎に互いに異なるように構成されていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項4】
請求項3に記載の異物除去装置において、
前記駆動機構は、前記開口縁の払拭時に該開口縁に沿う方向に前記払拭部材を往復移動可能に構成され、
前記払拭部材は、往動時に前記開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力が、復動時に前記開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のうち何れか一項に記載の異物除去装置において、
前記払拭部材を保持する保持部材と、
前記保持部材に対して接点を介して接触した状態で前記保持部材を前記接点を中心に回動可能に支持する支持機構と、
を更に備え、
前記保持部材は、前記駆動機構に対して前記駆動力を伝達可能に連結される連結部を有し、
前記連結部は、前記駆動機構に対して当接可能な当接領域が前記接点との距離が互いに異なる複数の位置に設定され、前記払拭部材の変位方向に応じて前記当接領域の位置が切り替わるように構成されていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のうち何れか一項に記載の異物除去装置において、
前記開口縁の汚染の程度を示す指標値に基づき、前記駆動機構に前記駆動力を前記払拭部材に対して伝達させるか否かを制御する制御手段を更に備えたことを特徴とする異物除去装置。
【請求項7】
請求項6に記載の異物除去装置において、
前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドのクリーニング動作が実行された場合、又は、前記液体噴射ヘッドの印刷動作が完了した場合において、前記開口縁を前記液体噴射ヘッドに対して当接させるキャッピング動作時に、前記駆動機構に前記駆動力を前記払拭部材に対して伝達させるか否かを制御することを特徴とする異物除去装置。
【請求項8】
ノズル形成面に形成されたノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載の異物除去装置と、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項1】
ノズル形成面に形成されたノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドに対して前記ノズル開口を囲うように環状をなす開口縁が当接可能とされたキャップを備えた液体噴射装置に設けられ、前記開口縁を払拭することにより該開口縁から異物を除去する異物除去装置であって、
前記開口縁に沿う方向に変位する過程で、前記開口縁に対する摺接部が前記開口縁に対する摺接状態を維持することにより前記開口縁を払拭可能な払拭部材を備え、
該払拭部材は、前記摺接部が払拭時の変位方向と交差する方向に沿って延びるように形成されていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異物除去装置において、
前記払拭部材に対して該払拭部材を前記開口縁に沿う方向に変位させる駆動力を伝達する駆動機構を更に備え、
前記駆動機構は、前記キャップが前記ノズル形成面から離間する方向に変位することに連動して、前記払拭部材に対して前記駆動力を伝達可能に連結されることを特徴とする異物除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載の異物除去装置において、
前記駆動機構は、前記開口縁に沿う複数方向に前記払拭部材を変位可能に構成され、
前記払拭部材は、前記開口縁の払拭時に該開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力が該払拭部材の変位方向毎に互いに異なるように構成されていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項4】
請求項3に記載の異物除去装置において、
前記駆動機構は、前記開口縁の払拭時に該開口縁に沿う方向に前記払拭部材を往復移動可能に構成され、
前記払拭部材は、往動時に前記開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力が、復動時に前記開口縁と前記摺接部との間で発生する摩擦力よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のうち何れか一項に記載の異物除去装置において、
前記払拭部材を保持する保持部材と、
前記保持部材に対して接点を介して接触した状態で前記保持部材を前記接点を中心に回動可能に支持する支持機構と、
を更に備え、
前記保持部材は、前記駆動機構に対して前記駆動力を伝達可能に連結される連結部を有し、
前記連結部は、前記駆動機構に対して当接可能な当接領域が前記接点との距離が互いに異なる複数の位置に設定され、前記払拭部材の変位方向に応じて前記当接領域の位置が切り替わるように構成されていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のうち何れか一項に記載の異物除去装置において、
前記開口縁の汚染の程度を示す指標値に基づき、前記駆動機構に前記駆動力を前記払拭部材に対して伝達させるか否かを制御する制御手段を更に備えたことを特徴とする異物除去装置。
【請求項7】
請求項6に記載の異物除去装置において、
前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドのクリーニング動作が実行された場合、又は、前記液体噴射ヘッドの印刷動作が完了した場合において、前記開口縁を前記液体噴射ヘッドに対して当接させるキャッピング動作時に、前記駆動機構に前記駆動力を前記払拭部材に対して伝達させるか否かを制御することを特徴とする異物除去装置。
【請求項8】
ノズル形成面に形成されたノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載の異物除去装置と、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−269460(P2010−269460A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120972(P2009−120972)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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