説明

異状検査装置

【課題】測定光による検査対象物の損傷等を抑制しながら高い精度で異状検査を行う。
【解決手段】異状検査装置1では、ベルトコンベア2が動くことにより、製造ラインに沿った載置面2b上に載置された検査対象物3が製造ラインに沿って輸送される。検査対象物3が進行方向2aに進むと同時に、検出ユニット20の視野領域L1上に載置された検査対象物3に対してSC(スーパーコンティニューム)光源11から出射された近赤外光L1を照射部12から照射し、検査対象物3からの拡散反射光L2を分光器22で分光し受光部23において検出し、分析部30において分析を行うことにより、検査対象物3の異状検査が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の検査対象物に近赤外光を照射して得られる拡散反射光を測定し、その結果に基づいて検査対象物の検査を行う異状検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の製造工程における異物や異状の検査は品質管理上重要なものとなっている。このため、異物や異状を検出する方法が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、搬送コンベアに載置された検査対象物に対して遮光室内で光を照射し、検査対象物の大きさや糖度等の測定を行う方法が示されている。また、特許文献2では、可視光や近赤外光を検査対象物に照射し、その反射光のスペクトルを測定することにより異物を検出する方法が示されている。また、特許文献3では、線状の光源により検査対象物に対して光を照射することにより検査対象物のスペクトルを測定することにより検査対象物の品質検査を行う方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−56298号公報
【特許文献2】特開2004−301690号公報
【特許文献3】特開2006−170669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、食品や医薬品等は品質に対する消費者の目が厳しい商品であるため、品質検査を特に精度よく行う必要がある。しかしながら、これらの検査対象物は光によるダメージを特に受けやすい。したがって、検査対象物に対する光の照射量をできるだけ減少させることが望まれる。
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、測定光による検査対象物の損傷等を抑制しながら高い精度で検査対象物の異状検査を行うことができる異状検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る異状検査装置は、製造ラインに沿った載置面上に載置され当該製造ラインに沿って輸送される検査対象物の検査を行う異状検査装置であって、近赤外光を出力するスーパーコンティニューム光源と、製造ライン上を移動する検査対象物の移動方向に対して略垂直に延在するライン状の照射領域に対してスーパーコンティニューム光源から出力された近赤外光を照射する照射手段と、照射手段から出力された近赤外光のうち検査対象物により拡散反射した拡散反射光を、照射領域の延在方向に対して垂直な方向に分光する分光器と、複数の受光素子が受光面上に2次元配列され、分光器によって分光された光を受光する受光器と、受光器によって受光された光に基づいて検査対象物の異状の有無を分析する分析部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記の異状検査装置では、スーパーコンティニューム光源から出射される近赤外光を照射手段によってライン状の照射領域に対して照射する。そして、検査対象物による拡散反射光を分光器によって分光した後、2次元配列された受光素子により受光して分析を行う。このように、上記の異状検査装置では、検査対象物の測定のための近赤外光を出射する光源としてスーパーコンティニューム光源を用いることにより、検査対象物の検査に適切な波長帯域の光が検査対象物に対して照射される。したがって、検査対象物に対する検査に不要な光の照射を低減することができるため、測定光による検査対象物の損傷を抑制した状態で検査対象物の検査を精度よく行うことができる。
【0009】
ここで、照射領域の延在方向に垂直な方向における照射領域の幅は10mm以下である態様であることが好ましい。このように照射領域の延在方向に垂直な方向における照射領域の幅を10mm以下とすることにより、ライン状の照射領域に対して集中して光が照射されるため、スーパーコンティニューム光源から出力する近赤外光の光量を低減させることができ、検査対象物における測定光による損傷をさらに低減させることができる。
【0010】
また、スーパーコンティニューム光源は波長1000nm〜2500nmの範囲の光を出力する態様とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測定光による検査対象物の損傷等を抑制しながら高い精度で検査対象物の異状検査を行うことができる異状検査装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る異状検査装置の構成を説明する図である。
【図2】異状検査装置における近赤外光の照射領域を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
本発明に係る異状検査装置1について図1、図2を用いて説明する。本実施形態に係る異状検査装置1は、ベルトコンベア2上に分散載置された検査対象物3(図1では検査対象物の載置位置を示す)に混入した異物や検査対象物3の変質等の異状の有無を検査する装置である。本実施形態に係る異状検査装置1の検査対象物3としては、食品や医薬品等の原材料や製品等が挙げられる。そしてこれらの検査対象物3に付着する異物としては、毛髪等の生体由来物や、製造装置等に由来する金属や、夾雑物等が挙げられる。また、検査対象物3の変質等の異状は、検査対象物3に含まれる水分や糖分の量などを測定することにより検出することができる。異状検査装置1は、近赤外光を検査対象物3に対して照射することにより得られる拡散反射光のスペクトルを測定し、そのスペクトルに基づいて検査対象物に付着した異物や変質等の異状を検出する。このため、異状検査装置1は、光源ユニット10、検出ユニット20、及び分析部30を備える。
【0015】
光源ユニット10は、一定の波長帯域を有する近赤外光を、ベルトコンベア2上における所定の照射領域S1へ向けて照射する。光源ユニット10が照射する近赤外光は、波長範囲が800nm〜2500nmの光である。本実施形態では、1000nm〜2500nmの波長範囲で測定を行うことが好ましいが、この波長範囲は用途に応じて適宜変更することができる。また、照射領域S1とは、検査対象物を載置するベルトコンベア2の表面(載置面2b)の一部の領域である。この照射領域S1は、載置面2bの進行方向2a(図1のy軸方向)と垂直な幅方向(x軸方向)に広がり、載置面2bの一方の端から他方の端までを覆うライン状に延びる領域である。そして、照射領域S1の延在方向に垂直な方向(y軸方向)における照射領域S1の幅(図2におけるW)は10mm以下とされる。
【0016】
光源ユニット10は、SC光源11と、照射部(照射手段)12と、SC光源11と照射部12とを接続する光ファイバ13と、を備える。SC光源11は、近赤外光としてスーパーコンティニューム(SC)光を発生させる。SC光源11は、種光源及び非線形媒質を備え、種光源から出射される光を非線形媒質に入力し、非線形媒質中における非線形光学効果によりスペクトルを広帯域に広げてSC光を出力する。
【0017】
SC光源11により発生された近赤外光(SC光)は、光ファイバ13の一方の端面へ入射される。この近赤外光は、光ファイバ13のコア領域を導波し、もう一方の端面から照射部12に対して出射される。
【0018】
照射部12は、光ファイバ13の端面から出射される近赤外光(SC光)を検査対象物3が載置される照射領域S1に対して照射する。照射部12は、光ファイバ13から出射される近赤外光を入射して、照射領域S1に対応した1次元のライン状に出射するため、照射部12としてシリンドリカルレンズが好適に用いられる。このように照射部12においてライン状に整形された近赤外光L1が、照射部12から照射領域S1に対して照射される。
【0019】
光源ユニット10から出力された近赤外光L1は、照射領域S1上に載置された検査対象物3により拡散反射される。そして、その一部が、拡散反射光L2として検出ユニット20に入射する。
【0020】
検出ユニット20は、スリット21と、分光器22と、受光部23と、を備える。この検出ユニット20は、その視野領域20sがベルトコンベア2の進行方向2aと垂直な方向(x軸方向)に延びている。検出ユニット20の視野領域20sは、載置面2bの照射領域S1に含まれるライン状の領域であって、スリット21を通過した拡散反射光L2が受光部23上に像を結ぶ領域である。
【0021】
スリット21は、照射領域S1の延在方向(x軸方向)と平行な方向に開口が設けられる。検出ユニット20のスリット21に入射した拡散反射光L2は、分光器22へ入射する。
【0022】
分光器22は、スリット21の長手方向、すなわち照射領域S1の延在方向に垂直な方向(y軸方向)に拡散反射光L2を分光する。分光器22により分光された光は、受光部23によって受光される。
【0023】
受光部23は、複数の受光素子が2次元に配列された受光面を備え、各受光素子が光を受光する。これにより、受光部23がベルトコンベア2上の幅方向(x軸方向)に沿った各位置で反射した拡散反射光L2の各波長の光をそれぞれ受光することとなる。各受光素子は、受光した光の強度に応じた信号を位置情報と波長情報とからなる二次元情報として出力する。この信号は、受光ユニット20から分析部30に送られる。
【0024】
分析部30は、入力された信号により拡散反射光L2のスペクトルを得て、この得られたスペクトルに基づいて検査を行う。検査対象物3に含まれる異物を検出する場合は、次のような原理で検査を行う。異物は、SC光源11から出力される近赤外光の波長範囲の近赤外光において吸収帯域を有する。そこで、検査対象物3により拡散反射した拡散反射光L2のスペクトルにおいて、異物に由来する特定の吸収ピークを検出することにより、異物を検出する。
【0025】
検査対象物3に含まれる水分や糖分の量を測定する場合は、次のような原理で検査を行う。例えば、糖分は波長1500nm付近と波長2100nm付近に吸収ピークを有するので、検査対象物3中に糖分が含まれる場合は、これらの波長の前後少なくとも100nmの範囲の近赤外光を照射し、拡散反射光L2のスペクトルを分析することで、食品中の糖分に由来するピークを検出することができる。糖分に由来するピークの位置や強度から、糖分の種類やその含有量を求めることができ、検査対象物の異常を検出したり、品質を評価したりすることができる。
【0026】
また、例えば検査対象物3に含まれる水分については、波長1450nm付近に水の吸収ピークを有するので、検査対象物3へ波長1450nmの前後少なくとも100nmの範囲の近赤外光を照射して拡散反射光を測定し、その結果に含まれる波長1450nm付近のピークの高さから水分量を算出することができる。
【0027】
このような原理で分析を行うので、載置面2bは、SC光源11から照射する近赤外光を吸収する材料からなることが好ましい。また、検出ユニット20が、正反射光の光路に対して20°以上の角度を有する光路を進む拡散反射光L2を入射するような角度で、光源ユニット10の照射部12から近赤外光L1を載置面2bに照射することが好ましい。これにより、正反射光が検出ユニット20に入射することを防止して、適切に拡散反射光L2を入射することができる。
【0028】
以上説明した異状検査装置1では、ベルトコンベア2が動くことにより、製造ラインに沿った載置面2b上に載置された検査対象物3が製造ラインに沿って輸送される。検査対象物3が進行方向2aに進むと同時に、検出ユニット20の視野領域L1上に載置された検査対象物3の検査が行われる。
【0029】
このように、本実施形態の異状検査装置1によれば、検査対象物3の測定のための近赤外光L1を出射する光源としてスーパーコンティニューム光源(SC光源)を用いることによって、検査対象物3の検査に適切な波長帯域の光が検査対象物3に対して照射される。したがって、検査対象物3に対する検査に不要な光の照射を低減することができるため、測定光による検査対象物3の損傷を抑制した状態で検査対象物3の検査を精度よく行うことができる。
【0030】
また、本実施形態の異状検査装置1の光源ユニット10の照射部13から照射領域S1に対して照射される近赤外光は、光ファイバ13の端面から出射される光であるため、集光特性に優れる。また、照射部13によりライン状の照射領域S1に対して照射する場合にも当該照射領域S1における光の強度を均一にすることができる。
【0031】
また、本実施形態の異状検査装置1では、照射領域S1の延在方向に垂直な方向における照射領域S1の幅Wが10mm以下とされる。これにより、照射領域S1に対してSC光源11から出射される近赤外光を集中して照射することができるため、SC光源11から出力する近赤外光の光量を低減させることができ、検査対象物3における測定光による損傷をさらに低減させることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0033】
1…異状検査装置、2…ベルトコンベア、3…検査対象物、10…光源ユニット、11…SC光源、12…照射部、13…光ファイバ、20…検出ユニット、21…スリット、22…分光器、23…受光部、30…分析部、L1…近赤外光、L2…拡散反射光、S1…照射領域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインに沿った載置面上に載置され当該製造ラインに沿って輸送される検査対象物の検査を行う異状検査装置であって、
近赤外光を出力するスーパーコンティニューム光源と、
前記製造ライン上を移動する前記検査対象物の移動方向に対して略垂直に延在するライン状の照射領域に対して前記スーパーコンティニューム光源から出力された近赤外光を照射する照射手段と、
前記照射手段から出力された近赤外光のうち前記検査対象物により拡散反射した拡散反射光を、前記照射領域の延在方向に対して垂直な方向に分光する分光器と、
複数の受光素子が受光面上に2次元配列され、前記分光器によって分光された光を受光する受光器と、
前記受光器によって受光された光に基づいて前記検査対象物の異状の有無を分析する分析部と、
を備えることを特徴とする異状検査装置。
【請求項2】
前記照射領域の延在方向に垂直な方向における前記照射領域の幅は10mm以下である
ことを特徴とする請求項1記載の異状検査装置。
【請求項3】
前記スーパーコンティニューム光源は波長1000nm〜2500nmの範囲の光を出力する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の異状検査装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−276361(P2010−276361A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126521(P2009−126521)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(503092180)学校法人関西学院 (71)
【Fターム(参考)】