説明

異種タンパク質化合物をディスプレイするバクテリア細胞を含んでなる医薬組成物

本発明は、制御された量のタンパク質またはタンパク質化合物が表面結合された、生きたまたは死んだバクテリアを含んでなる薬剤の製造のための組成物、および該組成物を調製するための方法に関する。バクテリアは、多価の異種タンパク質ディスプレイ媒介物を提供し、これは粘膜を介した送達のためのワクチンまたは薬剤の製造に使用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
近年、i)免疫系の機構に対する新たな洞察、およびii)大多数の病原体の感染経路を擬態する理論的根拠のために、またiii)新たに出現した疾患に対して容易に投与され且つ効果的であるワクチンの必要性のために、粘膜ワクチン接種に対する注目が増大している。更に、地球規模でのバイオテロの脅威は、容易に製造でき、且つ訓練された人物がいなくても迅速に投与できる効果的なワクチンを必要としている。
【0002】
粘膜免疫系は、粘膜の一つの部位での誘導が該粘膜免疫系全体に亘って特定の応答をもたらすので、効果的な免疫応答を得るためには理想的であるように思える。粘膜部位での誘導はまた、最も頻繁には、全身性の免疫応答をもたらす(Huang J. et al., 2004 Vaccine 6:794-801; Verdonck F. et al., 2004 Vaccine 31-32:4291-9)。殆どの病原体は、粘膜表面を介して宿主に感染する。この事実によって、該感染経路の初期段階でその効果を働かせるワクチンの作製が有利となる。結局、病原体に対して特異的なワクチン成分を送達できる、非病原性または弱毒化された病原性微生物の開発に努力が集中されてきた。
【0003】
最近の数10年間に、組換え微生物を用いて異種タンパク質を表面ディスプレイするための方法の開発において顕著な進歩がなされた。異種タンパク質の表面ディスプレイは、組換えDNA技術を使用して、サルモネラ(Arnold H. et al. 2004 Infect Immun. 11:6546-53)のような弱毒化された病原性バクテリア、およびスタフィロコッカス(Wernerus H. et al. 2002 Biotechnol J. 1:67-78)またはラクトバチルス(Grangette C. et al. 2004 Infect Immun. 5:2731-7)のような非病原性バクテリアの両方において示されてきた。異種タンパク質は組換え細胞によって産生され、次いで、該タンパク質は細胞表面に向けられる。微生物中において分泌されたタンパク質を表面に固定するための、幾つかの方法が記載されている。スタフィロコッカスにおいて示された一つのアプローチは、アミノ酸を固定する一続きの細胞壁を、一続きのタンパク質の中に導入することである。このキメラタンパク質は、その分泌の際に細胞壁の中に組み込まれ、ここで、それは一続きの固定アミノ酸を介して細胞壁に結合される(Wernerus H. et al. 2002 Biotechnol J. 1:67-78)。別のアプローチでは、細胞溶解によって産生されたバクテリアゴーストが、抗体または治療的に有効なポリペプチド等の活性物質のためのキャリアまたはターゲッティング媒介物として用いられてきた(CA 2,370,714)。溶解性遺伝子、例えばバクテリオファージ遺伝子Eを含有する適切なバクテリア株は、空のゴーストを形成するために、細胞溶解を受けるように誘導される。次いで、望ましい活性物質がこの空のゴーストの中に運ばれ、そこで内側細胞膜表面に固定されることができる。この場合、活性物質は細胞表面に露出されるのではなく、細胞ゴーストの内部に封入される。
【0004】
幾つかの刊行物は、ワクチン送達技術のために、生きたバクテリアの表面ディスプレイ能力を使用することの顕著な生物学的可能性を記載している(Wernerus H. et al. 2004 Biotechnol Appl Biochem. 40 (3): 209-28)。しかし、これらのアプローチは組換え微生物に依拠しており、遺伝子的に改変された微生物を使用し且つ送達することのリスク、および一般的な反対意見が、ヒトおよび動物において該生ワクチン送達技術を適用することに対する障害になっていた。組換えDNAを含む死滅したバクテリアもまた、それらが結局は環境中で広がり得る組換えDNAを担持するので、リスクとみなされる。例えばバイオテロリストの攻撃下のような一定の環境下では、GMOに基づく技術の使用は許容可能なリスクとみなされかもしれない。
【0005】
遺伝子改変されたバクテリア株に依存しない抗原ディスプレイ媒介物
を提供するためには、非常に僅かな試みしか行われてこなかった。米国特許出願US2003/0180816A1は、非GMグラム陽性菌から、AcmA細胞壁結合ドメインに融合されるタンパク質を結合するための能力が改善された細胞壁材料を得るための方法を開示している(WO99/25836)。この開示された方法に従えば、グラム陽性菌を酸性溶液で処理して、タンパク質、リポタイコ酸(lipoteichoic acid)および糖鎖を含む細胞壁成分を除去する。こうして、得られた細胞壁材料は天然のタンパク質を大部分はストリップされるが、外部環境に対する障壁が残留されて、ゴーストと称される。AcmAドメインタンパク質を含んでなるキメラタンパク質は、非共有結合でこれらゴーストに結合することができる。
【0006】
アレルギーに罹患した患者および感染症に罹患した患者の両者に対する治療を提供するために設計されるワクチン接種法の必要性を満たすためには、改善された抗原およびアレルゲン提示モードが必要とされる。ワクチン接種の概念は、免疫系の二つの基本的な特徴、即ち、特異性および記憶に基づいている。ワクチン接種はレシピエントの免疫系をプライミングし、同じタンパク質に繰返し露出されるときに、該免疫系は、例えば微生物感染の攻撃に対して更に活発に反応する地位にあるであろう。ワクチンは、レシピエントにおいて防御的免疫反応を生じさせるために、ワクチン接種に使用することを目的としたタンパク質混合物である。この防御は、ワクチンの中に存在する成分および相同的抗原のみからなるであろう。
【0007】
他のタイプのワクチン接種に比較して、アレルギーワクチン接種は、アレルギー患者において進行中の免疫反応の存在によって複雑化される。この免疫反応は、アレルゲンに露出される際のアレルギー症状の放出を媒介する、アレルゲン特異的IgEの存在によって特徴付けられる。従って、天然の供給源に由来するアレルゲンを使用したアレルギーワクチン接種は副作用の固有のリスクを有しており、この副作用の最大の結果は患者の生命を脅かすものである。
【0008】
この問題を回避するためのアプローチは、三つのカテゴリーに分類される。実際には、2以上のカテゴリーに属する手段が組合されることが多い。第一のカテゴリーの手段は、実質的な累積投与量に達するまで、長時間に亘って小量の投与量を数回投与することを含んでいる。第二のカテゴリーの手段は、アレルゲンを水酸化アルミニウム等のゲル物質の中に組み込むことによる、アレルゲンの物理的修飾を含んでいる。水酸化アルミニウム製剤は、アジュバント効果と、活性なアレルゲン成分の組織濃度を低下させる遅いアレルゲン放出のデポー効果を有している。第三のカテゴリーの手段には、アレルゲン性、即ち、IgE結合性を低下させる目的での、アレルゲンの化学的修飾が含まれる。
【0009】
従来の特異的なアレルギーワクチン接種は、アレルギー疾患のための原因療法である。それは基本的な免疫学的機構に干渉して、患者の免疫状態の持続的な改善をもたらす。従って、特異的なアレルギーワクチン接種の保護効果は、対症薬物治療とは対照的に、治療期間を越えて延長される。この治療を受けている幾人かの患者は治癒し、加えて、殆どの患者は疾患の重篤度および経験した症状の軽減、或いは少なくとも疾患の悪化の停止を経験する。従って、特異的アレルギーのワクチン接種は、喘息を発症する枯草熱のリスクを低減し、新たな感受性を生じるリスクを低減する保護効果を有している。
【0010】
成功したアレルギーワクチン接種の根底にある免疫学的機構は、詳細には知られていない。特定の病原体に対する抗体の産生のような特異的免疫応答は、適応性免疫応答として知られている。この応答は、病原体に対する非特異的反応である先天的免疫応答から区別することができる。アレルギーワクチンは、適合性免疫応答に対処するようになっており、これは抗原特異性を備えた細胞および分子、例えばT細胞および抗原産生B細胞含んでいる。B細胞は、対応した特異性のT細胞からの補助なしに、抗体産生細胞に成熟することはできない。アレルギー性免疫応答の刺激に関与するT細胞は、主にTh2型のものである。Th1細胞とTh2細胞との間での新たなバランスの確立は、特異的アレルギーワクチン接種の免疫学的機構にとって有益であり、且つ中心的であることが提案されてきた。これがTh2細胞の減少、Th2細胞からTh1細胞へのシフト、またはTh1細胞のアップレギュレーションの何れによってもたらされるかは議論の分かれるところである。最近、調節性のT細胞はアレルギーワクチン接種の機構にとって重要であることが提案されている。このモデルに従えば、調節性T細胞、即ちTh3またはTr1細胞が、対応した抗原特異性のTh1細胞およびTh2細胞の両方をダウンレギュレートする。これらの曖昧さにもかかわらず、活性なワクチンは、アレルゲン特異的T細胞(好ましくはTH1細胞)を刺激する能力をもたなければならないと一般に信じられている。
【0011】
特異的アレルギーワクチン接種は、その長所にもかかわらず、広範に使用されるに至っていない。一つの理由は、反復したワクチン接種、特に数ヶ月にも亘る注射を含んでなる伝統的なワクチン接種プログラムに伴う不便さである。更に重要な他の理由は、アレルギー性副作用のリスクである。感染性物質に対する通常のワクチン接種は、1回または数回の高投与量免疫感作を使用して効果的に行われる。しかし、アレルギ性ワクチン接種については、病的免疫応答が既に進行中なので、この戦略を使用することはできない。
【0012】
従って、従来の特異的アレルギーワクチン接種は、長期間に亘って適用される複数回の皮下免疫感作を使用して行われる。この過程は二つの段階、即ち、投与量増加段階および維持段階に分けられる。投与量増加段階においては、典型的には16週に亘り、微量から出発して徐々に増大する投与量が適用される。推奨される維持投与量に達したときに、この投与量は、維持段階の間、典型的には6週毎の注射で適用される。各回の注射の後、極めて稀ではあるが、原理的には生命を脅かし得るアナフィラキシー副作用のリスクに起因して、患者は30分間の医療的看護の下に置かれなければならない。加えて、診療所は、救急救命治療をサポートするための設備を設置すべきである。異なる投与経路に基づくワクチンは、現在の皮下注射に基づくワクチンに固有のアレルギー副作用を排除または低減するであろうし、またより広範な使用を促進し、更には、おそらく家庭での自己ワクチン接種を可能にするであろうことに疑いはない。
【0013】
特異的アレルギーワクチン接種のためのワクチンを改善する試みが、30年以上に亘って行われてきており、これには種々雑多なアプローチが含まれている。幾つかのアプローチは、IgE反応性の修飾を介してアレルゲン自体を扱ってきた。他のアプローチは、投与経路を取扱ってきた。
【0014】
免疫系は口腔を介してアクセス可能であり、アレルゲンの舌下投与は既知の投与経路である。投与は、ワクチン製剤を舌下に配置して、短時間、例えば30〜60秒だけそこに残留させることによって実行されてよい。
【0015】
口腔粘膜経路を使用する従来のアレルギーワクチンは、アレルゲン溶液を毎日投与することからなっている。比較において、与えられた治療的(累積的)維持投与量は、比較し得る皮下の維持投与量を5〜500倍越えた。
【0016】
ワクチンを製造するために、選択されたタンパク質化合物(例えばアレルゲンまたは抗原)を提示できる改善された生物学的媒介物についての必要性が存在している。
【0017】
発明の概要
本発明は、1以上の異種タンパク質化合物(proteinaceous compound)を表面ディスプレイする生物学的媒介物(biological vehicle)を含有してなる薬剤として使用するための医薬組成物であって:
a)1以上の非病原性バクテリア株の細胞と、
b)二官能性架橋剤(bi-functional cross-linker)によって、前記細胞の表面上のアクセス可能な化学的物質(accessible chemical entity)に共有結合された1以上のタンパク質化合物と
を含んでなり、前記細胞は、前記1以上のタンパク質化合物をコードするトランスジェニック核酸分子を含まず、また前記二官能性架橋剤はシッフ塩基を介して前記細胞のアミノ基に結合され、また前記タンパク質化合物および前記架橋剤は前記細胞に対して異種起源である医薬組成物に向けられている。好ましくは、前記薬剤は、動物もしくはヒト患者の治療または予防的処置のためのものである。
好ましい実施形態において、前記二官能性架橋剤は、グルタルアルデヒド、ポリアゼチジンおよびパラホルムアルデヒドからなる群から選択される。
【0018】
更に、当該組成物の生物学的媒介物は、遺伝子的に修飾されたバクテリア株、もしくは遺伝子的に修飾されていないバクテリア株、またはそれらの組み合せの細胞を含んでなるものでよい。好ましい実施形態において、当該組成物のバクテリア株は、ラクトコッカス(Lactococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、N族ストレプトコッカス(Group N Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、非病原性のスタフィロコッカス(Staphylococcus)、および非病原性のバチルス(Bacillus)から選択されるバクテリア属のメンバーである。
【0019】
一つの実施形態において、前記1以上のタンパク質化合物は、動物もしくはヒトの病原体に由来する抗原またはその変異体である。或いは、前記1以上のタンパク質化合物は、アレルゲン、動物もしくはヒトの癌抗原、または動物もしくはヒト起源の自己抗原、またはそれらの変異体である。
【0020】
本発明による組成物は、更に、二官能性架橋剤および/またはスペーサー化合物を含んでよい。当該組成物において、二官能性架橋剤またはスペーサーを含んでなる結合したタンパク質化合物分子の細胞当りの数は、1〜約100,000であってよい。スペーサーの不存在において、細胞当りの結合したタンパク質化合物分子の数は、1〜約10,000の範囲である。当該組成物は更に、封入された製剤の中に含まれてよい。
【0021】
当該組成物は、薬剤として使用されてよい。特に、当該組成物は、動物またはヒトの患者における感染性疾患、癌、アレルギー、および自己免疫疾患からなる群から選択される疾患を予防および/または治療するための薬剤製造のために使用されてよい。従って、本発明の組成物は、動物またはヒトの患者の疾患またはアレルギーの予防および/または治療に使用されてよく、その際、患者は有効投与量の当該組成物を投与される。
【0022】
本発明は更に、1以上の異種タンパク質化合物を表面ディスプレイする生物学的媒介物を含有してなる本発明の医薬組成物を調製する方法であって、
i)1以上のバクテリア株の細胞、ii)1以上の異種タンパク質化合物、およびiii)異種二官能性架橋剤を含有する混合物を調製する工程と;該混合物をインキュベートして、前記二官能性架橋剤がシッフ塩基を介して前記細胞のアミノ基に結合された前記生物学的媒介物を形成する工程と;該生物学的媒介物を前記混合物から分離する工程とを含んでなり、前記細胞は、前記1以上のタンパク質化合物をコードするトランスジェニック核酸分子を含まない方法を提供する。好ましい実施形態において、前記混合物は0℃以下の温度、好ましくは−1℃〜−30℃の温度、最も好ましくは−20℃でインキュベートされる。
【0023】
本発明の方法によれば、前記生物学的媒介物は、遺伝子的に修飾されていないバクテリア株、または遺伝子的に修飾されたバクテリア株の細胞を含んでよい。更に、本発明はラクトコッカス、ラクトバチルス、ロイコノストック、N族ストレプトコッカス、エンテロコッカス、ビフィドバクテリウム、非病原性スタフィロコッカス、および非病原性バチルスから選択されるバクテリア属のメンバーであるバクテリア株を用いて実施される。
【0024】
本発明の方法に従えば、前記1以上のタンパク質化合物は、動物もしくはヒトの病原体に由来する抗原またはその変異体であってよい。別の実施形態において、前記1以上のタンパク質化合物は、アレルゲンまたはその変異体であってよく;或いは、前記1以上の化合物は動物もしくはヒトの癌抗原およびその変異体、または自己抗原およびその変異体であってよい。
【0025】
本発明の方法の更なる実施形態において、前記混合物は更に、二官能性架橋剤および/またはスペーサー化合物を含有してよい。該方法は、更に、前記生物学的媒介物を含有する組成物を封入する工程を含んでよい。
【0026】
発明の説明
I.図面の簡単な説明
図1.1μg/mLまたは2μg/mLのβ−ガラクトシダーゼを使用した、ラクトバチルスに対する化学的架橋結合。1010細胞を含有する架橋反応混合物の細胞画分または上清画分において検出された、β−ガラクトシダーゼ活性の量。
【0027】
図2. ラクトバチルスに対するアラビノースイソメラーゼの化学的架橋結合。1010細胞を含有する架橋反応混合物の細胞画分または上清画分において検出された、アラビノースイソメラーゼ活性の量。表面架橋結合された酵素は三角形の記号で描かれ、酵素の合計量は四角形の記号で描かれている。
【0028】
図3. エンハンサ分子としてキトサンを使用した、ラクトバチルスに対するβ−ガラクトシダーゼの化学的架橋。
【0029】
図4. 実施例11に記載された、グルタルアルデヒドを使用したラクトバチルス細胞に対するBetv1タンパク質の化学的架橋結合。パネルAは、グルタルアルデヒドを使用して架橋結合されたペレット材料の位相差写真を示している。パネルBは、グルタルアルデヒドを添加しなかった場合の、Betv1タンパク質およびラクトバチルス細胞の混合物からの細胞を示している。各パネルの右側の写真は、左側の写真で分析された物質から選択された細胞を更に高倍率で示している。
【0030】
図5. グルタルアルデヒドを使用してラクトバチルス細胞に架橋結合されたBetv1の表面分布。パネルAおよびBは、実施例12に記載した通りに調製されたペレット材料中の細胞の写真を示している。パネルAは、Betv1タンパク質が存在する架橋反応から誘導された細胞を示している;一方、Bは、Betv1タンパク質を省略したネガティブ対照反応から誘導された細胞を示している。Betv1タンパク質の検出は、実施例12に記載したように、ウサギ由来の一次抗Betv1抗体およびCy−3標識された二次抗ウサギ抗体を使用して行われた。左側の写真は位相差画像であり、右側の写真は蛍光画像(励起光および発行のためのフィルター限界は、それぞれ545〜575nmおよび610〜680nm)であり、これらは顕微鏡およびカメラ共に同一の設定を使用した同じ細胞の写真である。
【0031】
図6. SLIT処理、免疫感作およびその後のインビトロでの再刺激後の脾臓細胞増殖。四群のマウスが、3週間、毎日1回次の投与を受けた:BetV−Lb:L.アシドフィルスX37に結合されたBetV1を含むワクチン複合体; Lb:未処理のL.アシドフィルスX37; BetV1 2.5μg:1日当り精製BetV1タンパク質2.5μg; BetV1 5μg:1日当り精製BetV1タンパク質5μg; 緩衝液:ネガティブ対照群は緩衝液の投与を受ける。
【0032】
図7. 未処理のラクトバチルス、LacS結合したラクトバチルス、またはLacSタンパク質単独を使用したインビトロでの樹状細胞刺激。LX37:未処理のL.acidophilus X37; LX37+lacS+glut:グルタルアルデヒドを使用してラクトバチルスに表面結合されたβ−ガラクトシダーゼ; LacS:タンパク質LacS単独。
【0033】
II.用語の定義
アレルゲン: 過敏性反応またはアレルギー反応を誘起する抗原である。
抗原: 免疫応答を誘導できる何れかのタンパク質物質。
抗原変異体: 天然の抗原からアミノ酸組成が変化した何れかの抗原。
API: 有効な医薬成分。
架橋剤: 二つの反応基を含み、それによって二つの標的基を共有結合させる手段を提供する化学試薬。ホモ二官能性架橋剤では前記反応基は同一であり、同様の基の間に共有結合を形成する。ヘテロ二官能性架橋剤では、前記反応基は異なる化学性を有し、異なる官能基の間での架橋の形成を可能にする。異種の二官能性架橋剤とは、それが結合される細胞とは異なる起源を有する(即ち生来のものではない)化学試薬として定義される。
DC: 樹状細胞。
FDA: 食品医薬品局。
GM: 遺伝子的に修飾された。
GMO: 遺伝子的に修飾された生物。
GLA: グルタルアルデヒド。
【0034】
異種タンパク質化合物: それが共有結合または非共融結合によって表面結合または架橋結合される細胞とは異なる起源を有する(即ち生来のものではない)タンパク質含有化合物として定義される。
M9緩衝液: 0.6%のNa2HPO4、0.3%のKH2PO4、0.5%のNaCl、0.025%のMgSO4を含有する水溶液。
MRS: ラクトバチルスの培養に適した培地。
ONPG: オルト−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド
PCR: ポリメラーゼ連鎖反応
スペーサー: 架橋反応を高める複数の反応器を備えた分子。細胞表面と標的タンパク質との間のブリッジとして使用される。
標的タンパク質: バクテリア細胞表面上にディスプレイされるべきタンパク質化合物。
【0035】
トランスジェニック核酸分子: ホスト起源のゲノム(プラスミドDNA、エピソームDNAおよび染色体DNAの両方を含む)の中に導入されて、安定に組込まれる核酸分子である。ここで前記DNAはタンパク質をコードする配列を含んでなり、また前記トランスジェニック核酸分子は天然のホスト生物には存在せず、遺伝子修飾技術によってホスト細胞の中に導入される。
室温: 15〜25℃、好ましくは18℃である。
【0036】
III.詳細な説明
本発明は、1以上のタンパク質化合物の表面ディスプレイを特徴とし、その性質がワクチン送達、全細胞バイオ吸収材、バイオフィルタ、微小バイオ触媒、および診断ツールの領域において特別な用途を有する生物学的媒介物を提供する。本発明は、治療的に有効で安全な公的に許容可能なワクチンは、以下の成分および特性を備えるべきであるとの認識に基づいている:
a)好ましくは、動物もしくはヒト(患者)の粘膜における免疫担当細胞を探し当て、これに一時的に結合できる生物学的な非病原性媒介物、
b)前記媒介物は、免疫担当細胞に抗原提示して特異的免疫応答を導くことができる1以上の異種抗原の表面ディスプレイを提供し、
c)またアジュバントまたは免疫モジュレータとして、免疫細胞を刺激し、それによって好ましくは前記患者のホスト細胞を含む全体の免疫系を刺激して、所望のサイトカインを分泌することができ、
d)1以上の表面ディスプレイされた異種抗原を含んでなる前記ワクチンは、安価で且つ製造が容易であり、複雑な架橋剤、例えばバクテリア壁ムレイン前駆体を合成する必要性を回避する。
【0037】
非病原性バクテリアは、a)およびc)の性質を提供し、それによってこれらバクテリア表面に存在する特定のタンパク質は、それらが粘膜中の標的細胞を探し当てて、これに結合することとを可能にし、バクテリア−細胞のクロストークによって種々の応答、例えばサイトカインおよびムチンの産生を開始する(Christensen H.R. et al. 2002, J Immunology 168:171-8, Mack D.R. et al. 2003 Gut 52:827-33)。バクテリア細胞の粘膜への局在化は、Adlerberth I. et al., 1996 Appl Environ Microbiol 7:2244-51によって既述されたように、哺乳類細胞へのマンノース感受性結合によって媒介され得る。従って、本発明はその表面成分が未だ存在する非病原性バクテリア株を用い、それによって表面に局在する抗原の効果的な提示を支持することができる。本発明は、1以上の異種タンパク質化合物が表面結合される非病原性バクテリア細胞を提供することによって、b)の要件を満たす。該異種化合物は、当該バクテリア細胞の表面に親和性結合または吸着されてよく、またはカップリング剤を用いて共有結合されてもよい。天然の供給源から単離され、化学的に合成され、または組換えDNA技術を使用して産生されたタンパク質化合物が、本発明のバクテリア表面に結合されてよい。本発明のバクテリア表面に結合およびディスプレイされる異種タンパク質化合物は、該バクテリア細胞自身によって合成および分泌され得る化合物に限定されない。前記異種タンパク質化合物は、その合成が本発明のバクテリアには存在しない触媒工程に依拠した、翻訳後修飾を含むことができる。ここに本発明の一つの顕著な利点が存在し、前記バクテリア表面にディスプレイされた異種タンパク質化合物は、それが表面にディスプレイされるバクテリア細胞の生合成能力の範囲内にある化合物に限定されることなく、その組成および構造を特定の用途のために加工し得る化合物であってよい。本発明の方法は、タンパク質化合物の高密度パッキングされた表面ディスプレイを提供することができ、これは抗原提示の再のそれらの免疫原性を向上させるように働く。本発明の所定のバクテリアサンプルにおける表面結合されたタンパク質化合物の量は、正確に決定することができるので、治療製剤としての抗原投与量の正確な制御を容易にし、これが本発明のもう一つの顕著な利点である。
【0038】
既知の技術とは対照的に、GMバクテリアによる異種抗原タンパク質の表面ディスプレイに基づけば、本発明の一実施形態における非病原性バクテリア株は、当該表面ディスプレイされた異種タンパク質化合物が該細胞自身によって組換え発現されないので、遺伝子的に修飾されたものとして分類されるものではない。別の実施形態において、1以上の異種タンパク質化合物が結合される前記非病原性バクテリア株は、それ自身が遺伝子的に修飾される。
【0039】
本発明の実施するために適した非病原性バクテリア株には、グラム陽性バクテリア株、好ましくは、ラクトコッカス、ラクトバチルス、ロイコノストック、N族ストレプトコッカス、エンテロコッカス、ビフィドバクテリウム、非病原性スタフィロコッカス、非病原性バチルスからなるバクテリア属の群由来の種から選択される。より好ましくは、前記非病原性バチルス株は、ラクトコッカス、ラクトバチルス、ロイコノストック、N族ストレプトコッカス、エンテロコッカス、ビフィドバクテリウム、非病原性スタフィロコッカスからなるバクテリア属からなる群から選択される種から選択される。更に好ましくは、前記非病原性バクテリア株は、ラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムからなるバクテリア属の群から選択される種から選択される。
更に詳細に言えば、前記好ましい非病原性バクテリア株は、ラクトバチルス・アセトトレランス(Lactobacillus acetotolerans)、ラクトバチルス・アシジピシチス(Lactobacillus acidipiscis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・アギリス(Lactobacillus agilis)、ラクトバチルス・アルギドゥス(Lactobacillus algidus)、ラクトバチルス・アリメタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス・アミロリティクス(Lactobacillus amylolyticus)、ラクトバチルス・アミロフィルス(Lactobacillus amylophilus)、ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバチルス・アリゾネンシス(Lactobacillus arizonensis)、ラクトバチルス・アビアリウス(Lactobacillus aviarius)、ラクトバチルス・ビフェルメンタンス(Lactobacillus bifermentans)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・コエロホミニス(Lactobacillus coelohominis)、ラクトバチルス・コリノイデス(Lactobacillus collinoides)、ラクトバチルス・コリニホルミス・亜種コリニホルミス(Lactobacillus coryniformis subsp. Coryniformis)、ラクトバチルス・コリニホルミス亜種トルケンス(Lactobacillus coryniformis subsp. Torquens)、ラクトバチルス・クリスパツス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・クルバツス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・サイプリカセイ Lactobacillus cypricasei)、ラクトバチルス・デルブルエッキイ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. Bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルエッキイ亜種デルブルエッキイ(Lactobacillus delbrueckii subsp delbrueckii)、ラクトバチルス・デルブルエッキイ亜種ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp. Lactis)、ラクトバチルス・ドゥリアヌス(Lactobacillus durianus)、ラクトバチルス・エクイ(Lactobacillus equi)、ラクトバチルス・ファルチミニス(Lactobacillus farciminis)、ラクトバチルス・フェリントシェンシス(Lactobacillus ferintoshensis)、ラクトバチルス・フェルメントゥム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・フォルニカリリス(Lactobacillus fornicalis)、ラクトバチルス・フルクチボランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバチルス・フルメンティ(Lactobacillus frumenti)、ラクトバチルス・フクエンシス(Lactobacillus fuchuensis)、ラクトバチルス・ガリナルム(Lactobacillus gallinarum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・グラミニス(Lactobacillus graminis)、ラクトバチルス・ハムステリ(Lactobacillus hamsteri)、ラクトバチルス・ヘルベチクス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ヘルベチクス亜種ジュグルチ(Lactobacillus helveticus subsp. Jugurti)、ラクトバチルス・ヘテロヒオッキイ(Lactobacillus heterohiochii)、ラクトバチルス・ヒルガルディイ(Lactobacillus hilgardii)、ラクトバチルス・ホモヒオッキイ(Lactobacillus homohiochii)、ラクトバチルス・インテスチナリス(Lactobacillus intestinalis)、ラクトバチルス・ジャポニクス(Lactobacillus japonicus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsoniiI,ラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)、ラクトバチルス・キムチイ(Lactobacillus kimchii)、ラクトバチルス・クンケエイ(Lactobacillus kunkeei)、ラクトバチルス・レイヒマンニイ(Lactobacillus leichmannii)、ラクトバチルス・レティバジ(Lactobacillus letivazi)、ラクトバチルス・リンドネリ(Lactobacillus lindneri)、ラクトバチルス・マレフェルメンタンス(Lactobacillus malefermentans)、ラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)、ラクトバチルス・マルタロミクス(Lactobacillus maltaromicus)、ラクトバチルス・マニホチボランス(Lactobacillus manihotivorans)、ラクトバチルス・ミンデンシス(Lactobacillus mindensis)、ラクトバチルス・ムコサエ(Lactobacillus mucosae)、ラクトバチルス・ムリヌス(Lactobacillus murinus)、ラクトバチルス・ナゲリイ(Lactobacillus nagelii)、ラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)、ラクトバチルス・パニス(Lactobacillus panis)、ラクトバチルス・パンテリ(Lactobacillus pantheri)、ラクトバチルス・パラブフネリ(Lactobacillus parabuchneri)、ラクトバチルス・パラカセイ亜種パラカセイ(Lactobacillus paracasei subsp. Paracasei)、ラクトバチルス・パラカセイ亜種シュードプランタルム(Lactobacillus paracasei subsp Pseudoplantarum)、ラクトバチルス・パラカセイ亜種トレランス(Lactobacillus paracasei subsp. Tolerans)、ラクトバチルス・パラケフィリ(Lactobacillus parakefiri)、ラクトバチルス・パラリメンタリウス(Lactobacillus paralimentarius)、ラクトバチルス・パラプランタルム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバチルス・ペントスス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・ペロレンス(Lactobacillus perolens)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ポンチス(Lactobacillus pontis)、ラクトバチルス・プシタチ(Lactobacillus psittaci)、ラクトバチルス・リューテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノスス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ルミニス(Lactobacillus ruminis)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サリバリウス亜種サリチニウス(Lactobacillus salivarius subsp. Salicinius)、ラクトバチルス・サリバリウス亜種サリバリウス(Lactobacillus salivarius subsp. Salivarius)、ラクトバチルス・サンフランシセンシス(Lactobacillus sanfranciscensis)、ラクトバチルス・シャルペアエ(Lactobacillus sharpeae)、ラクトバチルス・スエビクス(Lactobacillus suebicus)、ラクトバチルス・テルモフィルス(Lactobacillus thermophilus)、ラクトバチルス・テルモトレランス(Lactobacillus thermotolerans)、ラクトバチルス・ワクチノステルクス(Lactobacillus vaccinostercus)、ラクトバチルス・バギナリス(Lactobacillus vaginalis)、ラクトバチルス・ベルスモルデンシス(Lactobacillus versmoldensis)、ラクトバチルス・ビツリヌス(Lactobacillus vitulinus)、ラクトバチルス・ベルミホルメ(Lactobacillus vermiforme)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンチス(Bifidobacterium adolescentis)、 ビフィドバクテリウム・アエロフィルム(Bifidobacterium aerophilum)、ビフィドバクテリウム・アンギュラツム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・アステロイデス(Bifidobacterium asteroides)、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ボウム(Bifidobacterium boum)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)、 ビフィドバクテリウム・カテヌラツム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・コエリヌム(Bifidobacterium choerinum)、ビフィドバクテリウム・コリネフォルメ(Bifidobacterium coryneforme)、ビフィドバクテリウム・クニクリ(Bifidobacterium cuniculi)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(Bifidobacterium dentium)、ビフィドバクテリウム・ガリクム(Bifidobacterium gallicum)、ビフィドバクテリウム・ガリナルム(Bifidobacterium gallinarum)、ビフィドバクテリウム・インディクム(Bifidobacterium indicum)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ロングム亜種ロングム(Bifidobacterium longum subsp. Longum)、ビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. Infantis)、ビフィドバクテリウム・ロングム亜種スイス(Bifidobacterium longum subsp. Suis)、ビフィドバクテリウム・マグヌム(Bifidobacterium magnum)、ビフィドバクテリウム・メリチクム(Bifidobacterium merycicum)、ビフィドバクテリウム・ミニマム(Bifidobacterium minimum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラツム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードロングム(Bifidobacterium pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・シュードロングム亜種グロボスム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. Globosum)、ビフィドバクテリウム・シュードロングム亜種シュードロングム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. Pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・プシクロアエロフィルム(Bifidobacterium psychroaerophilum)、ビフィドバクテリウム・プロルム(Bifidobacterium pullorum)、ビフィドバクテリウム・ルミナンティウム(Bifidobacterium ruminantium)、ビフィドバクテリウム・サエキュラレ(Bifidobacterium saeculare)、ビフィドバクテリウム・スカルドビイ(Bifidobacterium scardovii)、ビフィドバクテリウム・スブティレ(Bifidobacterium subtile)、ビフィドバクテリウム・テルモアシドフィルム(Bifidobacterium thermoacidophilum)、ビフィドバクテリウム・テルモアシドフィルム亜種スイス(Bifidobacterium thermoacidophilum subsp. Suis)、ビフィドバクテリウム・テルモフィルム(Bifidobacterium thermophilum)、ビフィドバクテリウム・ウリナリス(Bifidobacterium urinalis)からなるバクテリア種の群から選択される種から選択される。
【0040】
前記非病原性バクテリアの表面に結合され且つディスプレイされる1以上のタンパク質化合物は、広範な種類の化合物から選択されてよく、該タンパク質は更に、糖鎖、脂質または他の翻訳後付加された修飾を含んでもよい。好ましくは、該化合物は、置換(翻訳後修飾を意味する)または非置換のタンパク質もしくはペプチドであり、ここでの前記化合物は動物またはヒトにおいて液性または細胞性応答の発生を誘導することができ、例えば抗原、アレルゲン、アレルゴイド、ペプチド、タンパク質、ハプテン、糖タンパク質、ペプチド核酸(PNAs、合成遺伝子擬似物の一種)、およびウイルス性またはバクテリア性物質、ならびにそれらのアナログまたは誘導体である。このような修飾は、化学的修飾または合成的修飾、例えば1以上のアミノ酸のPEG化(PEG=ポリエチレングリコール)、ビオチニル化、脱アミノ化、マレイン化、置換によって、架橋によって、グリコシル化によって、または他の組み合え技術または合成技術によって行なうことができる。こ
の用語はまた、天然に生じる突然変異、アイソフォームおよびレトロインバースアナログを含むものである。
【0041】
更に好ましくは、前記化合物は、動物またはヒトにおいて特異的抗体の発生および/または特異的T細胞応答を誘導することができる。或いは、前記化合物は、動物もしくはヒトにおいて細胞障害性T細胞応答の発生を誘導することができ、または前記化合物はアレルギー応答の発生を誘導することができる。更に、前記化合物は予め存在する抗体またはT細胞と反応できてよく、或いは、肥満細胞上のIgE抗体に結合できまたは先に感作された哺乳類におけるI型アレルギー反応を媒介できる化合物であってよい。好ましい実施形態において、前記タンパク質化合物は動物またはヒトにおいて、1以上の感染性物質またはアレルゲンに対する免疫の発生を誘導することができる。或いは、前記タンパク質化合物は、動物またはヒトにおいて、自己免疫疾患に対する免疫の発生を誘導することができる。更なる実施形態において、タンパク質化合物またはその変異体は、動物またはヒトにおける癌抗原として働くものである。
【0042】
動物またはヒトにおいて免疫の発生を誘導する前記タンパク質化合物は、例えば以下の群から選択されるバクテリア、ウイルス、真菌、プロトゾア、およびプリオンの1以上を起源とするもの、またはそれらの変異体であってよい:
<抗原供給源>
ポックスウイルス科、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、パルボウイルス科、パポバウイルス科、ヘパドナウイルス科、ピコルナウイルス科、カルシウイルス科、レオウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、アレナウイルス科、レトロウイルス科、ブンヤウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科、アルボウイルス、オンコウイルス、未分類ウイルス(例えば選択された肝炎ウイルス、アストロウイルス、およびトロウイルス)、バチルス、マイコバクテリウム、プラスモジウム、プリオン(例えばクロイッツフェルト−ヤコブ病または変異体)、コレラ、シゲラ、大腸菌、サルモネラ、コリネバクテリウム、ボレリア、ヘモフィルス、オンコセルカ、ボルデテラ、ニューモコッカス、住血吸虫(Schistosoma)、クロストリジウム、クラミジア、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、カンピロバクター、レジオネラ、トキソプラスモス、リステリア、ビブリオ、ノカルジア、クロストリジウム、ナイセリア、カンジダ、トリコモナス、ガルドネレラ、トレポネマ、ヘモフィルス、クレブシエラ、エンテロバクター、プロテウス、シュードモナス、セラチア、レプトスピラ、表皮糸状菌属(Epidermophyton)、小胞子菌属(Microsporum)、白癬菌属(Trichophyton)、アクレモニウム、アスペルギルス、カンジダ、 フサリウム、スコプラリオプシス属、オニココラ(Onychocola)、シタリジウム(Scytalidium)、ヒストプラズマ、クリプトコッカス、ブラストマイセス、コクシジオイデス、パラコクシジオイデス、接合菌(Zygomycetes)、スポロトリクス、ボルデテラ、ブルセラ、パスツレラ、リケッチア、バルトネラ、エルジニア、ジアルジア、ロドコッカス、エルジニア、およびトキソプラズマ。
【0043】
アレルギーの治療もしくは緩和、または治療的若しくは予防的アレルギーワクチン接種のためのタンパク質化合物は、下記の供給源の1以上を起源とするものであってよい:
<アレルゲン供給源>
「アレルゲン」の用語は、アレルギー、即ち、個体が反復露出されたときにIgE媒介性反応を誘導することが報告されている天然に存在するタンパク質、またはタンパク質の混合物を意味する。本発明の目的にとって、アレルゲンは、植物、ペット、家畜、昆虫、蛛形類の動物、および食品に由来するものであってよく、カバノキおよび分類学的に関連した樹木由来の花粉、日本の杉樹、オリーブ樹、ブタクサ、雑草(weed)、草(grass)、刺すもの、昆虫、蚊/蚋、ゴキブリ、塵ダニ、屋内カビ、屋外カビ、ウシ、ネコ、イヌ、ウマ、齧歯類、ピーナッツ、ナッツ、果実、ミルク、大豆、小麦、卵、魚、および甲殻類が含まれる。特に、適切には、アレルゲンは中でも、樹木、草、ハーブ、真菌、ハウスダストダニ、貯蔵物ダニ、ゴキブリ、動物の毛、およびフケを起源とする吸入性アレルゲンであってよい。樹木、草およびハーブに由来する重要な花粉アレルゲンは、中でもカバノキ(Betula)、ハンノキ(Alnus)、ハシバミ(Corylus)、クマシデ(Carpinus)、およびオリーブ(Olea)が含まれる分類学上の目であるファガレス(Fagales)、オレアレス(Oleales)およびピナレス(Pinales)、中でもロリウム(Lolium)、フレウム(Phleum)、ポア(Poa)、シノドン(Cynodon)、ダクチリス(Dactylis)およびセカーレ(Secale)の属を含むポアレス(Poales)目、中でもアムブロシア(Ambrosia)、アルテミシア(Artemisia)およびパリエタリア(Parietaria)属のハーブを含むアステラレス(Asterales)およびロサレス(Rosales)、ウルチカレス(Urticales)の目を起源とするものである。真菌由来の重要な吸入性アレルゲンは、中でも、アルテルナリア(Alternaria)属およびクラドスポリウム(Cladosporium)属を起源とするものである。他の重要な吸入性アレルゲンは、デルマトファゴイデス属のハウスダストダニ、およびブロミア属(Blomia)、ユーログリフス属(Euroglyphus)およびレピドグリフス属(Lepidoglyphus)の貯蔵ダニに由来するもの、ゴキブリ由来のもの、並びにネコ、イヌ、ウマ、およびマウス、ラット、モルモットおよびウサギのような齧歯類等の動物由来ものである。更に、本発明による組換えアレルゲンは、刺したり噛んだりする昆虫、例えばミツハチ(アピダエ上科)、スズメバチ(ベスピデア上科)およびアリ(フォルミコイダエ上科)を含む分類学状の膜翅目(Hymenoptera)由来のものを含む毒液アレルゲンであってもよい。
【0044】
特定のアレルゲン成分には、例えば、ファガレス(Fagales)目のBet v 1(B. verrucosa、カバノキ)、Aln g 1(Alnus glutinosa、ハンノキ)、Cor a 1(Corylus avelana、ハシバミ)、およびCar b 1(Carpinus betulus、クマシデ)が含まれる。他は、Cry j 1(Pinales)、Amb a 1および2、Art v 1(Asterales)、Par j 1(Urticales)、Ole e 1(Oleales)、Ave e 1、Cyn d 1、Dac g 1、Fes p 1、Hol l 1、Lol p 1および5、Pas n 1、Phl p 1および5、Poa p 1、2および5、Sec c 1および5、Sor h 1(種々の草の花粉)、Alt a 1およびCla h 1(真菌)、Der f 1および2、Der p 1および2、Der m 1(それぞれハウスダストダニ、D. farinae、D. pteronyssinus およびD. microceras)、Lep d 1および2、並びにBlo t 1および2、Eur m 1および2、Gly d 1および2(Lepidoglyphus destructor; Blomia Tropicalis and Glyphagus domesticus storage mite and Euroglyphus maynei)、Bla g 1および2、Per a 1(それぞれゴキブリ、Blatella germanicaおよびPeriplaneta americana)、Fel d 1(ネコ)、Can f 1(イヌ)、Equ c 1, 2および3(ウマ)、Apis m 1および2(ミツバチ)、Ves v 1, 2および5、Pol a 1, 2および5(全てスズメバチ)、並びにSol i 1, 2, 3および4(フシアリ)である。
【0045】
該アレルゲンは、アレルゲン抽出物、単離された精製アレルゲン、およびその変異体または断片の形態であってよい。該アレルゲンはまた、組換え遺伝子発現技術によって得られたもの、即ち、組換えアレルゲンおよびその変異体もしくは断片、またはその突然変異体および断片であってよい。例えば、該組換えアレルゲンは、組換えBetv1、Fel d1、Phl p1もしくは5、Lol p1もしくは5、Sor h1、Cyn d1、Dag g1および5、Der fまたはp1もしくは2、Amb a1および2、Cry j1および2、Ves v1、2および5、またはDol m1、2および5、Api m1、またはゴキブリBla g1および2、Per a1であってよい。 その組成が修飾されるBet v1の突然変異体、またアミノ酸を含む置換に潜在的に適するBet v1のアミノ酸が、例えばWO99/47680、WO02040676、WO03/096869に記載されている。
【0046】
ここで使用される「アレルゲン抽出物」の表現は、「アレルゲン抽出物」(H. Ipsen et al, chapter 20 in Allergy, principle and practise (Ed. S. Manning) 1993, Mosby-Year Book, St. Louis)に記載されたように、生物学的アレルゲン供給材料の抽出によって得られた抽出物を意味する。このような抽出物は、水溶性材料の水抽出に続き、濾過等の精製ステップで溶液、即ち抽出物を得ることによって得ることができる。次いで、該抽出得物は更なる精製および/または凍結乾燥等の処理を受けて、実質的に全ての水を除去されてよい。一般に、アレルゲン抽出物は、タンパク質および他の分子の混合物を含んでいる。アレルゲンタンパク質は屡々、主アレルゲン、中間アレルゲン、副アレルゲン、または分類なしとして分類される。アレルゲン抽出物は、一般的に、主アレルゲンおよび副アレルゲンの両方を含有する。主アレルゲンは、一般的には平均アレルゲン抽出物の約5〜15%をなしており、より頻繁には約10%をなしている。ここで言うアレルゲン抽出物の量は、このようなアレルゲン抽出物の乾燥分含量を意味する。
【0047】
好ましくは、該乾燥材料の水含量は10重量%、より好ましくは5重量%を越えない。
生物学的アレルゲン供給源材料は、汚染材料、例えば外来花粉、ならびにアレルゲン花粉源材料のための植物および花の破片を含んでよい。
汚染の程度は、最小化されるべきである。好ましくは、汚染物の含量は生物学的供給源材料の10%(w/w)を越えるべきではない。
【0048】
通常、アレルゲン抽出物は、BCAまたはロウリー(Lowry)のような標準のタンパク質アッセイで測定したときに、アレルゲン抽出物の乾燥分含量の少なくとも10%のタンパク質を含有し、残部は他の「非タンパク質材料」からなっていて、これらは生物学的アレルゲン供給源を起源とする脂質、炭水化物、または結合水であってよい。
【0049】
アレルゲン抽出物は、液体アレルゲン抽出物を800ミクロバール未満の圧力で、且つ100時間以下の時間で凍結乾燥し、水を除去することによって得られる凍結乾燥材料の形態で製剤化および貯蔵されてよい。アレルギー抽出物の分野において、国際的に許容される標準化方法は存在しない。抽出物強度、即ち、生物的能力の多くの異なる単位が存在する。用いられる方法および使用される単位は、通常、アレルゲン含量および生物学的活性を評価する。ここでの例は、SQ単位(標準化された品質単位)、BAU(生物学的アレルゲン単位)、BU(生物学的単位)、UM(質量の単位)、IU(国際単位)、およびIR(反応性の指数)である。従って、ここに開示される以外の起源の抽出物が使用されるのであれば、それらは、SQ単位または上記で述べた何れかの単位で能力を決定するために、ここに開示された抽出物に対して標準化される必要がある。この主題は、文献[“Allergenic extracts”, H. Ipsen et al, chapter 20 in Allergy, principle and practise (Ed. S. Manning) 1993, Mosby-Year Book, St. Louis and Lowenstein H. (1980) Arb Paul Ehrlich Inst 75:122]の中で取り扱われている。与えられた抽出物のバイオ能力、即ち、インビボでのアレルゲン活性は多くの因子に依存し、最も重要なのは、該抽出物中の主アレルゲンの含量であり、これは生物学低供給源材料の組成と共に変化する。
望ましいバイオ能力を得るために使用されるアレルゲンのグラムでの量は、問題の抽出物の種類と共に変化し、所定の種類の抽出物について、アレルゲン抽出物の量は、当該抽出物の実際のバイオ能力と共に一つのバッチからもう一つのバッチへとバッチ毎に変化する。
【0050】
与えられた抽出物のバッチについて、望ましいバイオ能力を得るために使用されるアレルゲン抽出物のグラムでの量は、以下の手順を使用して決定されてよい:
a)1以上の免疫学的インビボ試験を使用して、種々の量の参照抽出物のバイオ能力が決定され、バイオ能力と参照抽出物の量との間の関係が樹立される。前記免疫学的インビボ試験の例は、皮膚穿刺試験(SPT)、結膜吸入誘発試験(CPT)、アレルゲンでの気管支刺激(BCA)、および1以上のアレルギー症候群がモニターされる種々の臨床試験である(例えば、Haugaard et al., J Allergy Clin Immunol, Vol. 91, No. 3, pp 709-722, March 1993参照)。
b)上記のバイオ能力と参照抽出物との間の確立された関係に基づいて、i)アレルギー症候群を治療または緩和する効果、ii)免疫学的インビボ試験において記録された副作用、およびiii)個体間における上記i)およびii)の変動といった要素のバランスを充分に考慮した上で、本発明の製剤に使用するための1以上の関連投与量が選択される。このバランス考量は、許容し得ないレベルの副作用を生じることなく、最大の充分な治療的効果を得るように行われる。これら要素のバランスを考量する方法は、当業者に周知である。見出された1以上の関連投与量のバイオ能力は、SQ単位、BAU、IR単位、IU(上記参照)のような利用可能なバイオ能力単位で表現されてよい。
【0051】
c)該参照抽出物から1以上のバイオ能力参照標準抽出物が調製され、もし使用されるときは、該参照標準抽出物のバイオ能力単位値が1以上の関連投与量に割当てられたバイオ能力単位値に基づいて計算される(例えば、このようなBAUのための標準は以下に示すようにFDAから入手することができる)。
d)各抽出物タイプの参照標準抽出物について、抽出物のバイオ能力を評価するための多くのパラメータが選択される。このような評価パラメータの例は、全アレルゲン活性、定義された主アレルゲンの量、および該抽出物の全体の分子組成である。全アレルゲン活性は、標準方法を使用して得られた抽出物に対して生じた標準化された抗体混合物、例えば、マウスまたはウサギにおいて発生された抗体またはアレルギー患者血清のプールを使用して、ELISAおよびMagicLite(登録商標)蛍光免疫アッセイ(LIA)のような、インビトロでの競合免疫アッセイを使用して測定されてよい。主アレルゲンの含量は、例えば、ロケット免疫電気泳動(RIE)によって定量され、参照標準と比較されてよい。全体の分子組成は、例えば、交差免疫電気泳動(CIE)およびドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を使用して試験すればよい。
【0052】
e)バイオ能力が未知の与えられた抽出物バッチ(試験抽出物)について、望ましいバイオ能力レベルを得るために使用される抽出物の量は、次のようにして決定されてよい。選択された各評価パラメータについて、試験抽出物は、上記で述べた関連の測定方法を使用して参照標準抽出物と比較され、この測定結果に基づいて、望ましいバイオ能力を有する抽出物の量が計算される。
【0053】
アレルギー治療、または治療的もしくは予防的アレルギーワクチン接種のためのアレルゲンの有効投与量とは、1回だけ、または一定投与量もしくは増大する投与量で反復して摂取したときに、例えば適応性免疫応答を生じ、従ってアレルギー患者を脱感作する手段として作用する量を意味するべきである。好ましくは、この用語は、治療計画に従う固体投与量形態の反復投与(ある期間に亘って数回の適用から数ヶ月に亘って少なくとも毎日1回まで)の後に、適応性免疫応答を誘導するために必要な、各投与量形態におけるアレルゲンの量を意味するべきである。好ましくは、脱感作には、該投与量を投与したときのアレルギー症候群の緩和が含まれる。臨床的アレルギー症候群には、鼻炎、結膜炎、喘息、蕁麻疹、湿疹が含まれ、これは目および鼻の発赤および痒み、鼻の痒みおよび鼻水、コーチング(coaching)、ウィージング(weezing)、浅い呼吸、組織の痒みおよび浮腫みのような共通の症状を伴った皮膚、目、鼻、上部および下部気道における反応を含むが含まれる。
【0054】
ある実施形態において、アレルゲンの投与量は、約0.15μg〜10mg/用量のアレルゲン抽出物含量、より好ましくは約0.5μg〜5mg/用量のアレルゲン抽出物含量、より好ましくは約0.5μg〜3.75mg/用量のアレルゲン抽出物含量、より好ましくは約2.5μg〜3.75mg/用量のアレルゲン抽出物含量、より好ましくは約2.5μg〜2.5mg/用量のアレルゲン抽出物含量、より好ましくは約25μg〜2.5mg/用量のアレルゲン抽出物含量、より好ましくは約25μg〜1.25mg/用量、更により好ましくは約25μg〜1mg/用量、最も好ましくは約25μg〜0.75mg/用量である。
【0055】
更なる実施形態において、アレルゲン投与量は、約0.015μg〜1mg/用量、より好ましくは約0.05μg〜500μg/用量、より好ましくは約0.05μg〜375μg/用量、より好ましくは約0.25μg〜375μg/用量、より好ましくは約0.25μg〜250μg/用量、より好ましくは約2.5μg〜250μg/用量、より好ましくは約2.5μg〜125μg/用量、更により好ましくは約2.5μg〜100μg/用量、最も好ましくは約2.5μg〜75μg/用量の単一のアレルゲン含有量を有する。
【0056】
更なる実施形態において、アレルゲン投与量は、約0.015μg〜1mg/投与量形態、より好ましくは約0.05μg〜500μg/投与量形態、より好ましくは約0.05μg〜375μg/投与量形態、より好ましくは約0.25μg〜375μg/投与量形態、より好ましくは約0.25μg〜250μg/投与量形態、より好ましくは約2.5μg〜250μg/投与量形態、より好ましくは約2.5μg〜125μg/投与量形態、更により好ましくは約2.5μg〜100μg/投与量形態、最も好ましくは約2.5μg〜75μg/投与量形態の単一のアレルゲン含有量を有する。
【0057】
<本発明の生物学的媒介物へのタンパク質の表面結合>
1以上のタンパク質化合物が、非供給結合または共有結合によって非病原性バクテリアの表面に結合される。本発明は更に、共有結合によって二以上の分子を一緒に結合できる化学的架橋剤を用いて、前記1以上のタンパク質化合物を非病原性バクテリア細胞に結合するための方法を開示する。一般に、化学的架橋剤は、特異的官能基(最も頻繁にはタンパク質もしくは他の分子上のアミンまたはスルフヒドリル基)に対する、反応性末端を含んでいる。本発明を実施するために適した架橋剤の例には、グルタルアルデヒド、ポリアゼチジン、およびパラホルムアルデヒドが含まれる。タンパク質β−ガラクトシダーゼをラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)の細胞表面に化学的に架橋するための、二官能性架橋剤であるグルタルアルデヒドの使用が、実施例1,2,6および7に開示されている。
【0058】
或いは、1以上のタンパク質化合物と非病原性バクテリア表面との間の共有結合は、トランスフェラーゼ、例えばトランスグルタミナーゼ[該酵素は国際性化学および分子生物学連合の推奨(1992年)に従う酵素分類番号E.C.2の下に分類される]、オキシドレダクターゼ、例えばラッカーゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ(該酵素は酵素分類番号E.C.1の下に分類される)、ペプチドリガーゼ(該酵素は酵素分類番号E.C.6の下に分類される)、またはヒドロラーゼ、例えばトランスペプチダーゼもしくはエンドペプチダーゼ(該酵素は酵素分類番号E.C.3の下に分類される)から選択される触媒を用いて酵素的に触媒される。タンパク質β−ガラクトシダーゼをラクトバチルス・プランタルムの細胞表面に共有結合させるためのトランスグルタミナーゼの使用は、実施例5に開示される。
或いは、1以上のタンパク質化合物は、実施例4に例示されるように弱い非特異的結合によって、非病原性バクテリアの表面に非共有結合的に結合されてもよい。
【0059】
化学的または触媒的架橋結合、または1以上のタンパク質化合物の非病原性バクテリア表面への結合のための反応条件は、例えば結合されるべき細胞およびタンパク質の比率、pH、緩衝液のイオン強度、および反応混合物の温度を変化させることによって、細胞当りの結合されたタンパク質化合物の分子数を変化させるために調節されてよい。従って、本発明の一実施形態において、架橋反応は低温で、好ましくは0℃以下の温度、より好ましくは−1℃〜−20℃、例えば−20℃の温度で行われ、驚くべきことに、ここでの低温はより多くのタンパク質分子のバクテリア細胞表面への共有結合をもたらすことが示されている(実施例9〜12参照)。
結合されるタンパク質化合物の分子の数はまた、実施例3および8に開示したように、反応混合物の中にスペーサー分子を含めることによっても向上され得る。本発明の特別な利点の一つは、本発明のバクテリア細胞の表面に結合およびディスプレイされ得るタンパク質化合物分子の数および密度に関する。実施例1および3に示したように、タンパク質化合物分子は、バクテリア表面上の化学的実態に直接に、または多価スペーサーを介して間接的に架橋結合されてよく、それにより、結合される分子の数はバクテリア細胞がインビボでその細胞表面に結合している天然のタンパク質分子の数に限定されない。
【0060】
異種タンパク質化合物を本発明の非病原性バクテリア細胞の表面に架橋結合させる結合は、一方ではバクテリア細胞の表面におけるアクセス可能な化学的物質と、他方ではタンパク質化合物の末端もしくは内部置換基との間の共有結合である。異種タンパク質化合物と前記アクセス可能な物質との間の架橋は、更に、異種の二官能性架橋剤を含んでなるものであってよく、その際に、前記架橋は架橋された生成物の一体的な成分である。本発明のバクテリア細胞は、化学的にアクセス可能で且つ異種タンパク質化合物が架橋結合され得る壁を含んでなる外側表面を有している。より詳細に言えば、本発明のバクテリア細胞上の表面における化学的にアクセス可能な物質は、細胞壁または外側細胞膜を含んでなるバクテリア細胞エンベロープの成分であり、前記物質は前記細胞の外部環境中に存在する化合物に直接露出される。
【0061】
異種タンパク質化合物が非共有結合的にバクテリア細胞の表面に結合される本発明の一実施形態において、バクテリア細胞当りに結合される化合物の分子の数は、少なくとも100である。
【0062】
本発明のワクチンの調製および試験:
本発明は、実施例17に例示したようにワクチンの製造に用いられ、更に動物またはヒトにおいて試験され且つ治療的に使用されてよい、1以上のタンパク質化合物が表面結合された非病原性バクテリアを調製するための方法を提供する。第一の工程においては、タンパク質化合物(例えば抗原)が細胞表面に共有結合された非病原性バクテリアが、例えば実施例1または9に記載したような化学的架橋技術によって製造される。或いは、バクテリアおよび抗原の複合体が、実施例5に記載したような架橋性酵素を使用して、または実施例4に記載したような非特異的結合を使用して製造される。こうして、例えば、バクテリア細胞は表面結合したタンパク質化合物と共に製造され、ここでの結合した化合物は、ヒト病原性結核菌(Mycobacterium tuberculosis)もしくはインフルエンザウイルスの特異的抗原、または動物の病原体である大腸菌(E.coli)の表面抗原である。表面結合した大腸菌抗原を有するバクテリア細胞は、特に子ブタの下痢を予防または治療するために、家畜のブタに使用する獣医学的ワクチンの製造に使用される。結核菌、インフルエンザウイルスまたは獣医学的大腸菌によって生じる病気の治療に使用するための、特定の抗原が表面結合されたバクテリア細胞を含んでなるワクチンの製造における工程は類似しており、以下に説明する通りである。
【0063】
1.表面結合された抗原提示のための、非病原性バクテリア株の選別
レシピエント宿主に一時的に感染することが記載されている多くのバクテリア株を、更なる分析のために選別する。これらの株は、文献(Christensen H.R. et al. 2002, J Immunology 168:171-8)および実施例18に記載されているようにして、インビトロ樹状細胞モデルにおいて分析される。好ましい株は、IL1、IL2、IL6、IL12、TNFα、および/またはTGFβを含む炎症性サイトカインの誘導を特徴とするものである。
【0064】
2.非病原性バクテリア上での表面結合された提示のための抗原製造
結核菌抗原、例えばESAT6(Sorensen A.L. et al. 1999 Infect Immun. 63:1710-17)は、発現系、例えばP170発現系(Madsen S. et al. 1999 Mol Microbiol. 32:75-87)を使用して、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)において組換え的に製造される。該抗原をコードする遺伝子が発現ベクター、例えば、pAMJ297の中に挿入されてL.ラクチス株の中に形質転換され、これは引続き、先に記載されたように発酵装置中の増殖培地において培養される(Madsen S. et al. 1999 supra)。当該抗原は、前記形質転換されたL.ラクチス細胞によって、発酵の際に合成および分泌される。次いで、例えば交差流濾過を使用して、L.ラクチス細胞培養液から上清が分離される。この上清の中に存在する結核菌抗原は、例えばゲル濾過を含む従来のタンパク質精製法を使用して精製される。この精製された抗原は適切な緩衝液、例えば実施例1に記載したM9の中に溶解される。インフルエンザ抗原は、組換え遺伝子発現によって、または文献[Tree J.A. et al. 2001 Vaccine 19(25-26): 3444-50]に記載されたように、完全なウイルスからの抗原の精製によって製造される。
【0065】
3.バクテリア上での表面結合された抗原提示に使用するための、非病原性バクテリア細胞の製造
工程1において選別された株を、増殖培地[複合培地、例えば動物実験および獣医学的用途のためのワクチンを調製する場合にはMRS(Oxoid)]中において培養する。動物起源の増殖培地成分に存在し得るウイルスおよびプリオンのような感染性物質の危険の故に、ヒトに使用するためのワクチンを調製するときには、株の培養のためには合成成分のみに基づく増殖培地が使用される。更に、選択される株増殖培地は、例えばFDAによって発行されたヒトでの治療的使用のための安全性ガイドラインに合致するものである。発酵槽の中での培養の後に、バクテリア細胞は、例えば遠心分離または交差流濾過によって増殖培地から分離される。このバクテリア細胞は、新鮮な増殖培地またはM9緩衝液のような適切な緩衝液の中に再懸濁される。これらの細胞は、等容積の50%オートクレーブ処理されたグリセロールを添加した後、−80℃において少なくとも1年保存することができる。
【0066】
4.架橋反応および製剤
工程3で製造されたバクテリア、および工程2で製造された抗原は、実施例1、および3〜12に記載した1以上の方法を使用して表面結合される。表面結合された抗原を有する得られた非病原性バクテリアは、次の試験で評価される:バクテリア細胞に表面結合された抗原の量は、免疫検出技術、例えば結合された抗原に対して特異的な蛍光標識抗体を用いたELISA試験、または結合された抗原に対して特異的な抗体を用いたバクテリア細胞抽出物のウエスタンブロット分析を使用して決定される。加えて、バクテリア表面での抗原の分布が、顕微鏡に基づく分析において同じ抗体を使用して分析される。表面結合された抗原を含む細胞は、工程3に記載したように、適切な緩衝液、例えばM9緩衝液の中に懸濁され、グリセロール中において−80℃で保存される。該細胞はそのまま使用してもよい。しかし、ワクチンはまた、新規な方法または周知の方法を使用して封入されてもよい。この封入は、保存の際、また胃液のような敵対的環境の中に移行する際に、当該ワクチンが元の性質を維持することを保証しなければならない。更に、この封入は、当該ワクチンが望ましい粘膜部位で放出されることを保証すべきである。生きた、または死滅した微生物を保存するための種々の封入方法が記載されており、また商業的に入手可能である。例えば、http://www.encapdrugdelivery.com(Encap Drug Delivery, UK)参照。
【0067】
5.動物モデルにおける製品の試験
工程4に従って調製および処方された、抗原が表面結合されたバクテリアを含んでなる試験ワクチンを、約108〜約1011細胞を含有するアリコートに分割する。各々が10匹のマウスを含んでなる四つの動物群を、次のようにして試験ワクチンまたは対照ワクチンでワクチン接種した:二つの群は、異なる投与量で試験ワクチンの接種を受けた;一つの群は、表面結合された抗原を伴わないバクテリア細胞を含んでなる対照ワクチンを受ける;また一つの群は精製抗原を受ける。ワクチンは、経口もしくは鼻投与されるか、または鼻空腸チューブによって投与される。ワクチン接種計画は次の通りである。投与量は、第1、2、3、14、15、16、42、43および44日に与えられた。血液サンプルおよび粘膜サンプルが第0日から開始して毎週採取され、ここでの最初の血液サンプルおよび粘膜サンプルは免疫感作前の血清からなっている。最終の血液サンプルおよび粘膜サンプルは第63日に採取され、これらのマウスは屠殺された後に、脾臓および任意にリンパ節を除去される。この血液および粘膜は、標準の技術、例えばELISA技術を使用して、抗原特異的抗体について分析される。脾臓は、例えばクロム放出アッセイを使用して、抗原特異的な細胞障害性T細胞の存在について分析される。
【0068】
前述の動物ワクチン接種試験に従う有用な試験用ワクチンは、次の性質を示す:
・表面結合した抗原の存在しない本発明のバクテリア細胞を含んでなる対照ワクチンで処理されたマウスにおいては、検出可能な抗原特異的抗体または抗原特異的細胞障害性T細胞応答はなく、また
・試験ワクチンで処理されたマウスにおける抗原特異的抗体および/または抗原特異的細胞障害性T細胞応答のレベルは、少なくとも高い投与量においては、精製された抗原で処理されたマウスにおいて検出されるレベルよりも大きく、その差は統計的に有意である。
【0069】
抗原の濃度を調節することによって、細胞当り約1分子の抗原を結合させることができる。単細胞を含んでなる1回の投与量は下限投与量を定義する。架橋条件の最適化(実施例13)は、細胞当り少なくとも10,000の表面結合された分子を生じることが予想される。もし、架橋反応が標的タンパク質の一つの分子を架橋するとすれば、1012細胞の1回の投与量は、83ngの架橋結合された標的タンパク質を含有するであろう。従って、本発明に従う充分な化学的架橋結合は、細胞当り10,000分子の標的タンパク質を架橋して、1012細胞の投与量当り約1mgの架橋されたタンパク質を与えるであろう。二官能性架橋剤またはスペーサーの使用、より好ましくはそれらの組み合せの使用は、単細胞に結合され得る標的タンパク質の分子数を、約100,000にまで更に増大することを可能にする。単一投与量中の細胞の数もまた最適化でき、それによって単一投与量中の抗原の合計量を増大させることができるであろう。この細胞の数および表面結合された分子の数は上限投与量を定義する。
【0070】
本発明のワクチンの製剤および投与:
本発明の一つの実施形態は、1以上の異種タンパク質化合物を表面ディスプレイする生物学的媒介物を含有してなる薬剤を製造するための医薬組成物であって:
a)1以上の非病原性バクテリア株の細胞と、
b)二官能性架橋剤によって、前記細胞の表面上のアクセス可能な化学的物質に共有結合された1以上のタンパク質化合物と
を含んでなり、前記細胞は、前記1以上のタンパク質化合物をコードするトランスジェニック核酸分子を含まず、また前記二官能性架橋剤はシッフ塩基を介して前記細胞のアミノ基に結合され、また前記タンパク質化合物および前記架橋剤は前記細胞に対して異種起源である医薬組成物を提供する。前記表面ディスプレイされるタンパク質化合物は抗原であり、また前記生物学的媒介物が生きた、または死滅したバクテリアである場合、当該組成物はそれ自身が、口粘膜、経口、鼻、舌下、膣または肛門投与を含む何れかの粘膜投与のためのワクチンとして使用されてよい。
【0071】
「口粘膜投与」の用語は、活性成分の局部的または全身的効果を得るために活性成分が患者の口腔または咽頭の粘膜と接触することを可能にするように、本発明の医薬組成物が、舌下または口腔内のどこかに置かれる投与経路を意味する。口粘膜投与経路の一例は、舌下投与である。
【0072】
「舌下投与」の用語は、活性成分の局部的または全身的効果を得るために、製剤が舌の下に配置される投与経路を意味する。この使用のために、ワクチンは、ワクチンの元の性質を保存し且つ最適な保存寿命を与える適切な材料と共に、溶液または結晶化された乾燥もしくは凍結乾燥された物質として製剤化される。しかし、ワクチンはまた、新規なまたは周知の方法を使用してカプセル封入されてもよい。このカプセル封入は、保存の際および胃液のような敵対的環境内での移動の際に元の性質を維持することを保証しなければならない。更に、カプセル封入は、当該ワクチンが望ましい粘膜場所において放出されることを保証すべきである。生きたまたは死滅した微生物を保存するための種々の封入方法が記載されており、また商業的に入手可能である。例えば、http://www.encapdrugdelivery.com参照。
各微生物細胞上に表面結合された抗原の平均量、および各ワクチン投与量における非病原性バクテリアの数は、実施例13に記載した方法に従って計算されてよい。
【0073】
粘膜投与に加えて更に、皮膚または皮下投与が有利であるかもしれない。また、非経腸的投与も、選択された疾患に対するワクチン接種またはこれを治療するために有用であり得る。表面結合された抗原を含む非病原性バクテリアのエクスビボでの腫瘍細胞、樹状細胞または他の哺乳類細胞に対する提示は、移植または再移植の前に有用である可能性がある。
【0074】
製剤化されたワクチンは、液体、エアロゾル、粉末、結晶および錠剤のような多くの形態で投与されてよい。製剤化されたワクチンはまた、ワクチンの活性を調節し、または追加の特性を与える活性物質を含有してもよい。この活性物質は、インターロイキンまたは他の活性な医薬成分(API)のような、複雑または単純な免疫調節化合物であることができるであろう。該APIは、同時に投与されたときに当該ワクチンの治療的効果を高め、または当該ワクチンから有用な性質を誘導する1以上の新規または周知の薬物であってよい。
【0075】
各特異的ワクチンンの成分である適切な株を同定すること、および本発明のワクチンの予備分析:
ワクチンは、通常はアジュバントおよび特異的ワクチン成分からなる。アジュバントの役割は、免疫系を刺激して特異的病原体または抗原の効果を高めることである。ワクチンにおける微生物細胞の重要な性質は、粘膜アジュバントとして、および/または特定の抗原に対して応答することに加えて、望ましい方法で応答するように免疫系に指令する複合体成分として作用することである。幾つかの側面においては、ワクチンに対する適切な免疫応答は液性であるが、他の側面においては、それは細胞性または両者の組み合せであってよい。更に、該応答は、所謂Th1またはTh2応答に偏向されてよく、或いは炎症性応答もしくは抗炎症性応答に向けて偏向されてよく、または耐性を誘導するように偏向されてもよい。適切な株を用いることによって、結合されたタンパク質に向う免疫偏向は制御することができる。
【0076】
粘膜の免疫系は全体の免疫系の一部であり、結局、粘膜における免疫応答は全身に反映される。それは組織、リンパ系および非リンパ系細胞、並びに抗体およびサイトカインのようなエフェクター分子の一体的なネットワークからなっている。抗原提示細胞、Tリンパ球およびサイトカインの間の相互作用は、正しい特異的免疫応答を提供することに対する鍵である。免疫系の細胞と感染性物質もしくは抗原との間の適合は、インターロイキンの産生をもたらす。インターロイキンは、感染性物質もしくは抗原に対して如何に挙動するかを、残りの免疫系に対して指令するメディエータ分子である。本質的に、インターロイキンは、炎症促進性または炎症抑制性の何れかの免疫応答を指令する二つの分類に分けられる。しかし、20を越えるインターロイキンが知られており、しかも異なる感染に対する各々の応答が異なるレベルの各インターロイキンを生じるから、莫大な数の副分類が存在するはずである。
【0077】
種々のバクテリアに対する免疫応答を分析する方法が、エクスビボで確立されている(Christensen H.R. et al. 2002, J Immunology 168:171-8)。該方法は、免疫系のキーモジュレータとして認識される樹状細胞(DC)に基づいている。DCは、外来細胞もしくは抗原に遭遇したときに、成熟免疫担当細胞へと発達する。この遭遇の際に、DCはサイトカインを分泌して自己刺激を行うと共に、免疫系の他の細胞を刺激する。このエクスビボ方法において、DCからのサイトカインは、不活性化されたまたは生きた微生物への露出の後に定性的および定量的に測定される。異なる微生物がこのような方法を使用して試験されており、その結果は、同じ属のメンバーの間および更には同じ種の間での変動をも含む、異なるバクテリアの間での有意な変動を示す。従って、適切な候補はサイトカイン放出プロファイルによって示される望ましい免疫応答を指令するものであるから、DC法は、所定のワクチンについてのバクテリア候補を同定するために有用である。この候補はまた、同時に特異的抗原を提示しながら、望ましい免疫応答を指令するべきである。従って、外来抗原がそれらの細胞表面に結合されているバクテリア候補はまた、実施例18に示したように、DC法を使用して試験されてもよい。
【0078】
獣医学的目的での本発明のワクチンの動物実験および適用:
ワクチンは、例えば開示された実施例に記載の方法を使用することにより、設計および製造されてよい。ワクチンは、例えば、抗原供給源およびアレルゲン供給源としてそれぞれ列記された感染性物質およびアレルゲンの群から選択される病原体に対する、ワクチンとして有用な成分を含有してよい。それはまた、例えば感染病、癌、アレルギーおよび自己免疫疾患の群から選択される他の疾患に対するワクチンとして有用な成分を含有してもよい。
【0079】
該ワクチンは、実施例から選択される製剤化方法を使用して、動物実験において試験されてよい。試験動物は、如何なる動物種のものであってもよい。ワクチンは、該動物に摂食させてもよく、または飲み水に混合されてもよい。該ワクチンはまた、膣または肛門から投与されてよく、または該ワクチンは胃および胃液を通過する装置を通して、例えば鼻空腸チューブを使用することによって小腸に直接投与されてもよい。ワクチンは、口−鼻領域または鰓領域で動物に直接噴霧することによって、または該ワクチンを動物小屋に簡単に噴霧することによって投与されてよい。ワクチンはまた、魚類および他の水生動物が生きている水に添加されてもよい。この投与は、1回だけ実施されてもよく、またはワクチン接種のブーストおよび免疫記憶の維持を確実にするために、規則的にフォローアップされてもよい。この実験は、病原体での抗原刺激または問題の疾患に似た病気の誘導の前後において、ワクチン接種またはプラセボ治療を用いて実行されてよい。実験の終点には、生存動物および健康な動物の数 v.s. 死亡動物または病気の動物の数の分析が含まれてよいが、これに限定されない。生存動物の間での病気の重篤度もまた、重要なパラメータである可能性がある。治療された動物からの生検および特異的抗体の力価もまた、ワクチン接種の効果を示す可能性がある。生検からの細胞はまた、問題の抗原に対する特異的応答を含む免疫アッセイにおいて試験されてよい。
【0080】
動物実験は、下記のものを同定するために設計されてよい:
・特定のワクチンに使用するための多くの候補の正しい非病原性バクテリア、
・理想的平均数の抗原が表面結合された非病原性バクテリアの理想的投与量、
・最適な投与経路、
・ワクチンの効果を高める物質、および
・ワクチン接種の頻度およびワクチン接種の期間。
この動物実験の結果は、家庭内動物、ペット、家畜、牧畜、飼育動物、または野生動物のワクチン接種のための計画を設定するために有用であろう。
【0081】
幾つかの側面において、動物での結果は、ヒトのワクチン試験の設計のために有用であり得る。また、動物試験は、前臨床試験においてヒトワクチンを試験するために有用であり得る。
【0082】
ヒトを目的としたワクチンのヒトでの試験および適用:
先の例で述べたように、ワクチンは、例えば上記で説明した方法を使用することによって設計および製造されてよい。該ワクチンは、病原体または上記アレルゲン供給源の下に列記された何等かのアレルギーに対するワクチンとして有用な成分を含有してよい。また、それは癌もしくは自己免疫疾患、または上記アレルゲン供給源の下に列記された他の病気に対するワクチンとしても有用である。該ワクチンは、獣医学的ワクチンについて述べたように、前臨床試験の完了後の臨床試験において試験されてよい。製剤化方法は、実施例において記載した何れか一つから選択されてよい。健康な人々および/または病気の人々が、臨床試験に含められてよい。該ワクチンは、錠剤として、食物の一部として、または飲料水として摂取されてよい。該ワクチンは、舌下で投与されてよく、または口および鼻の領域にスプレーされてもよい。該ワクチンはまた、膣もしくは肛門に投与されてよく、或いは、例えば鼻空調チューブを使用することにより、該ワクチンは胃および胃液を越える装置を介して小腸に直接投与されてもよい。この投与は、1回だけ実施されてもよく、またはワクチン接種のブーストおよび免疫記憶の維持を確実にするために、規則的にフォローアップされてもよい。このワクチン接種は、ワクチンおよび/またはプラセボを用いて実施されて良く、またランダム化された二重盲検アプローチを使用してもよい。実験の終点には、生存者および健康なヒトの数 v.s. 死亡したまたは病気のヒトの数の分析が含まれてよいが、これに限定されない。生存者の間での病気の重篤度もまた、重要なパラメータである可能性がある。治療された生存者、治療された健康なヒトおよび病気のヒトからの生検は、臨床試験からの結果を分析するために使用されてよい。また、特異的抗体の力価は、ワクチン接種の効果を示す可能性がある。生検からの細胞はまた、問題の抗原に対する特異的応答を含む免疫アッセイにおいて試験されてよい。
【0083】
臨床試験は、下記のものを同定および選択するために設計されてよい:
・特定のワクチンに使用するための多くの候補からの非病原性バクテリア、
・最適平均数の抗原が表面結合された非病原性バクテリアの最適投与量、
・最適な投与経路、
・ワクチンの効果を高める物質、および
・ワクチン接種の頻度およびワクチン接種の期間。
この臨床試験の結果は、ヒトのワクチン接種計画を設定するために有用であり、その点において、該ワクチンはヒトのワクチン接種の目的ために有用であろう。
【0084】
癌等の疾患に関連した表面結合された抗原を含有するワクチンにエクスビボで露出されたDCはまた、該疾患の治療のためにも有用であり得る。エクスビボでの露出は、DCの患者への再移植の前に行ってよい。更に、同じタイプの抗原が生きたまたは死滅した非病原性バクテリアに表面面結合されているワクチンは、癌ワクチンのようなワクチンに対して適正なアジュバント効果を与えるために、非経腸的に使用されてよい。
【0085】
本発明の方法はまた、バイオテロ攻撃における病原体に対する、効率的で且つ投与が容易なワクチンを製造するために有用であり得る。例えば、現存のライセンスされた炭素菌ワクチンは、経腸的に投与されなければならず、且つ防御的免疫を誘導するためには複数回の投与を必要とする(Flick-Smith H.C. et al. 2002, Infection and Immunity, 70:2022)。これは、訓練された人を必要とし、また粘膜免疫応答を刺激するための最適な経路ではない。また、この投与は、非常に短時間に莫大な数の人々にワクチン接種するためには理想的なものではない。
【0086】
III.実施例
実施例1.グルタルアルデヒドによるβ−ガラクトシダーゼのラクトバチルスへの化学的架橋
この実施例は、5炭素ジアルデヒドの二官能性架橋剤であるグルタルアルデヒド(GLA)を使用した、スルホロブス・ソルファタリクス(Sulfolobus solfataricus)由来のタンパク質であるβ−ガラクトシダーゼ(Pisani F.M. et al. 1990 Eur J Biochem., 187:321-8)の、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)UP1の細胞表面への化学的架橋を実証するものである。GLAは、タンパク質のアミノ基とシッフ塩基(−H=N−)を形成することによって、架橋剤として作用する。従って、GLAに媒介されたβ−ガラクトシダーゼのバクテリア表面への架橋は、β−ガラクトシダーゼタンパク質に存在するリジンもしくはアルギニン残基と、前記バクテリアの細胞表面またはその近傍にあるアクセス可能なリジンまたはアルギニン残基との間で生じると思われる。
【0087】
架橋研究のためのβ−ガラクトシダーゼは、pET−3aベクター系(インビトロゲン社、CA)を使用した大腸菌における組換え発現により得られた。簡単に言えば、β−ガラクトシダーゼをコードするLacS遺伝子を、S.ソルファタリクスのゲノムDNAから標準PCR技術によって増幅し、pGET−3aベクターの中にクローン化し、大腸菌の中に形質転換した。β−ガラクトシダーゼを細胞内で発現させ、次いで、該大腸菌細胞を溶解した。前記溶解物を80℃で30分加熱することにより、溶解物の中に放出されたβ−ガラクトシダーゼを熱的沈殿によって部分的に精製した。L.プランタルムUP1を、通気を伴わずに、MRS(Oxoid、Hampshire UK)中において34℃で24時間増殖させた。この細胞を遠心分離により回収し、M9緩衝液(0.6%Na2HPO4、0.3%KH2PO4、0.5%NaCl、0.025%MgSO4)の中に再懸濁させ、細胞密度を1mL当り1010細胞に調節した。L.プランタルム細胞の固定された量(1010)を、異なる量のβ−ガラクトシダーゼおよび0.2%GLA(Sigma-Aldrich、St. Lois MO)と共に室温で50分間インキュベートした。GLA処理された細胞の生存を、該細胞混合物をMRS寒天上に広げることによって試験した。生存コロニーは生成されず、GLA処理によって殆どの細胞が死滅したことを示した。GAL処理に続き、該細胞混合物を遠心分離にかけ、細胞画分および上清を得た。単離された細胞をM9緩衝液で2回、完全に洗浄した。GLAに媒介されたβ−ガラクトシダーゼのL.プランタルム細胞への架橋をモニターするために、文献(Sambrook J et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Press, Plainview, NY)に記載のONPG法を用いたβ−ガラクトシダーゼ酵素活性によって、上清および細胞画分の間におけるβ−ガラクトシダーゼの分布を決定した。細胞の反復M9洗浄に起因して、細胞画分における未結合β−ガラクトシダーゼの量は無視できた。従って、細胞画分において測定された酵素活性は、L.プランタルム細胞の表面に結合された酵素の量に対応すると解釈される。1g/mLおよび2g/mLのβ−ガラクトシダーゼおよびmL当り1010細胞を使用した架橋は、それぞれ、酵素の合計量の33%および40%(検出可能な酵素活性の単位に基づく)の細胞表面への結合を生じた(図1)に対して、GLAを伴わない対照反応における表面結合は5%未満しか表面結合されなかった(データは示さず)。1g/mLおよび2g/mLのβ−ガラクトシダーゼとのGLA架橋後に得られた細胞画分は、480Uおよび610Uの酵素活性を有していたが、その各々は、細胞当り600および800分子のβ−ガラクトシダーゼに対応する。結論として、この実施例は、GLAが酵素的に活性なタンパク質をラクトバチルス細胞の表面に架橋できることを示している。細胞表面に架橋された酵素は、その酵素活性を保持し、GLAに媒介された細胞表面へのタンパク質の架橋は、該タンパク質の機能を損なわないことを示している。
【0088】
実施例2.グルタルアルデヒドによるアラビノースイソメラーゼのラクトバチルスへの化学的架橋
タンパク質のバクテリア細胞表面への化学的架橋がβ−ガラクトシダーゼに限定されないことを立証するために、我々は、好熱性テルモアナエロバクター・マスラニ(thermophilic Thermoanaerobacter mathrani)由来のアラビノースイソメラーゼ酵素の、バクテリア細胞への架橋を示す。アラビノースイソメラーゼは、D−ガラクトースをD−タガトースへと変換するものであり、Jorgensenおよび協同研究者が記載したように、大腸菌での組換え細胞内発現よって得られた(Jorgensen F et al. 2004, Appl Microbiol Biotechnol 64:816-22)。組換え大腸菌における増殖および発現の後に、フレンチプレスを使用して細胞を溶解刺せた。この溶解混合物を遠心分離し、アラビノースイソメラーゼを含有するその上清を、その後の架橋実験のために使用した。実施例1に記載したようにして、ラクトバチルス・プランタルムUP1を増殖させ、洗浄した。この洗浄された細胞(1010細胞)を、アラビノースイソメラーゼを含有する異なる量の溶解物、および最終濃度0.1%のGLAと共にインキュベートした。この架橋反応は、37℃で60分間実行された。その後、実施例1に記載したようにして該細胞を回収および洗浄した。細胞画分および上清の両方における酵素活性を、先に記載されたようにして分析した(Jorgensen F et al. 2004, Appl Microbiol Biotechnol 64:816-22)。図2は、アラビノースイソメラーゼが、濃度に依存して、ラクトバチルスの細胞表面に架橋結合されることを示している。アラビノースイソメラーゼ酵素はGLA処理によって阻害されないから(データは示さず)、細胞画分および上清画分における検出可能な全触媒活性は、GAL処理に先立ってL.プランタルム細胞に添加された酵素の量に対応する。図2は、細胞画分におけるアラビノースイソメラーゼ活性と、細胞および上清画分における酵素活性の合計量との比較に基づけば、三つの全ての架橋条件の下で、アラビノースイソメラーゼの50%超がL.プランタルム細胞の表面に結合されたことを示している。結論として、この実施例は、GLAが架橋活性のアラビノースイソメラーゼを効率的にラクトバチルス細胞の表面に架橋結合させることを示している。
【0089】
実施例3.スペーサー分子としてのキトサンは、グルタルアルデヒドによりラクトバチルスに架橋結合されるβ−ガラクトシダーゼのレベルを向上する:
キトサンは複数の反応性基を含む天然に存在する分子であり、これは化学的架橋結合により、バクテリア細胞表面に結合されるタンパク質の量を増大させるためのスペーサー分子として使用することができる。L.プランタルム細胞を実施例1に記載したようにして増殖および洗浄し、1mL当り1010細胞の濃度でM9緩衝液の中に懸濁させ、これに0.5%w/vのキトサン500kDA(Cognis Deutschland GmbH, Germany)および0.2%GLAを、1g/mLまたは2g/mLのβ−ガラクトシダーゼと共に添加した。細胞に対するβ−ガラクトシダーゼの架橋結合に対するキトサンの効果を、キトサンを伴わない対照架橋反応と比較した。L.プランタルム細胞を実施例1に記載したようにして回収および洗浄し、この洗浄した細胞画分および架橋反応混合物の上清におけるβ−ガラクトシダーゼ触媒活性を測定した。図3は、キトサンが架橋反応を向上させることを立証している。何故なら、合計のβ−ガラクトシダーゼ活性の90%超が細胞画分に結合されているのに対して、キトサンの不存在下では、35%のβ−ガラクトシダーゼ活性しか細胞画分に結合されていないからである。この実施例は、分子スペーサーとしてキトサンを使用することが架橋結合反応を向上させ、結合されたβ−ガラクトシダーゼの量を、細胞当り800分子から細胞当り約2000分子へと増大させることを示している。
【0090】
実施例4.ラクトバチルスの表面へのタンパク質の非共有結合
架橋剤を用いたラクトバチルスの化学的処理は、非生細胞を生じる。この実施例は、未処理の生きたバクテリアが、非共有結合でβ−ガラクトシダーゼを結合できることを示す。理論に拘束されるものではないが、細胞表面とタンパク質との間の相互作用は、イオン性、疎水性、またはβ−ガラクトシダーゼと細胞表面上の糖部分との間のものである。
【0091】
ラクトバチルス・プランタルムUP1を、実施例1に記載したようにして増殖および洗浄した。細胞(1010)を、2μg/mLのβ−ガラクトシダーゼと共に37℃で60分間インキュベートした。この細胞を遠心分離し、500μLのM9緩衝液で2回洗浄した。架橋反応混合物から得られた、洗浄された細胞画分および上清におけるβ−ガラクトシダーゼ触媒活性を分析した。細胞画分では538Uが検出された一方、上清には5455Uが測定されたが、これは全β−ガラクトシダーゼの9%が細胞表面に結合したことに対応する。この実施例は、架橋媒体を使用することなく、ラクトバチルスがその細胞表面にβ−ガラクトシダーゼを結合できることを示している。しかし、前記非共有架橋結合によっては、添加されたβ−ガラクトシダーゼの9%だけしか結合されないのに対して、実施例1に記載したように、GLA試薬および同量のβ−ガラクトシダーゼを使用すると、添加されたβ−ガラクトシダーゼの40%が結合された。従って、この非共有結合法は、GLA法を使用した共有結合法に比較して、効率が4倍低い。結合したβ−galにおける減少(40%から9%)は、細胞当り800分子から180分子へのβ−ガラクトシダーゼの減少に対応する。この反応は、より高い量の結合タンパク質を得るように最適化されてよい。最適化は、緩衝液のpH、イオン強度温度、または他のパラメータを制御することによって達成されてよい。
【0092】
実施例5.β−ガラクトシダーゼの酵素触媒によるラクトバチルスへの架橋結合
トランスグルタミナーゼ(TG)酵素は、タンパク質の中および間において、分子間架橋および分子内架橋を形成することができる。従って、TGは外部から添加されたタンパク質とバクテリアの細胞壁成分の中のアミノ酸残基との間の架橋結合を触媒することができる。アシル転位反応を介して、TGは、アシルドナーとしてのペプチドもしくはタンパク質−結合グルタミン残基のγ−カルボキシアミド基と、アシルアクセプタとしての幾つかの一級アミン(ペプチドもしくはタンパク質−結合リジン残基のεアミノ基を含む)との間の架橋を触媒する。タンパク質−結合したリジン残基がアシルアクセプタとして作用するときに、この反応は、ε−(γ−グルタミル)リジンイソペプチドの形態の架橋の形成を導く。この反応は、バクテリア細胞を標的タンパク質(例えば抗原またはアレルゲン)およびTGと混合することによって行われ、ここでは架橋が時間と共に漸進的に増大する。反応条件は、好ましくは約6.5〜約8.0のpHにおいて緩衝され、また架橋反応を最適化するために、≧10mMのCaCl2を含有する。 更に、90℃以下の温度での標的タンパク質の熱処理、および20mMジチオスレイトールの添加は、架橋結合を高める可能性がある。ミルクタンパク質中のTG阻害剤物質が報告されているので(Boenisch et al. 2004, Jour Food Science 69(8))、ミルク由来のバクテリア細胞の熱処理 は、架橋反応の前に実施されてよい。更に、架橋すべき標的タンパク質は、N末端またはC末端において、TG基質として機能し且つ架橋反応を向上させることができる複数の反応性残基を含んだアミノ酸で延長されてよい。TGに媒介された標的タンパク質のバクテリア細胞表面への架橋は、その機能的活性(例えば触媒活性)を測定することによって、または酵素、抗原またはアレルゲンのような標的タンパク質に対して特異的な抗体を使用する免疫化学的技術によって、洗浄された細胞画分および上清を標的タンパク質について分析することにより検出することができる。
【0093】
実施例6.グルタルアルデヒドを使用することによる、β−ラクトグロブリンのラクトバチルスへの架橋
β−ラクトグロブリン(BLG)は、アレルギーを生じるホエー画分のミルクタンパク質である。経口投与後に粘膜免疫応答を誘発できるGLGを含有した組成物の調製は、このようなアレルギーに罹患している患者におけるBLGアレルギーの治療に用いられてよい。次の成分が、ラクトバチルス細胞へのGLGの架橋結合を立証するために行われるアッセイに含められた。
ラクトバチルス細胞:ラクトバチルス・プランタルムの培養物(299v)をMRSブロス(Flukka 69966)中において30℃で一晩増殖させた。1mLの一晩(o/n)培養物のアリコートを遠心分離し、得られたペレットを1mLのM9緩衝液で洗浄した後、それを後で使用するために−20℃で凍結した。使用する前に、該凍結ペレットを解凍し、M9緩衝液の中に再懸濁させた(500mLのM9緩衝液中に再懸濁された1mL・o/n培養物からのペレット)。
BLG: 滅菌蒸留水中に調製されたBLGの1%溶液(L 6879, Sigma-Aldrich)
グルタルアルデヒド(GLA): グルタルアルデヒド(1.04239, Merck)の水中の25%溶液。グルタルアルデヒドは、5炭素のジアルデヒドであり、一級アミノ基(タンパク質の場合は殆どがリジン)とシッフ塩基(>C=N−)を形成することによって、架橋剤として作用する。
表1に示した容積中にラクトバチルス細胞、BGLタンパク質およびグルタルアルデヒドを含むサンプルを混合し、室温で60分間、周期的混合しながらインキュベートした。
【表1】

【0094】
60分のインキュベーションの後、サンプルを遠心分離し、細胞ペレットを500μLのM9緩衝液(M9緩衝液:7.3グラムのNa2HPO4、2.9グラムのKH2PO4、および2.0グラムのNH4Clを、水に溶解して全容積を1リットルしたもの)で2回洗浄した。
ペレット中における架橋されたBLGの量は、ウシβ−ラクトグロブリンELISA定量キット(Catalog nr. E10-125, Bethyl Laboratories)を幾らかの変更を伴って使用し、またキット製造業者が記載した溶液を用いて測定された。検出すべきBLGタンパク質がラクトバチルス細胞の表面に架橋されたので、ELIZAキット法を変更して、抗体に基づく測定のために懸濁液中において全細胞を使用することを可能にした。簡単に言えば、検出は、HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)に結合させたウサギ抗BGL抗体を使用して行った。ペレットを100μLのブロッキング溶液中に再懸濁させ、100μLの検出溶液(1mLの希釈緩衝液+0.1μLのHRP抗体)と混合し、室温で60分間、規則的に混合しながらインキュベートした。次いで、細胞を遠心分離し、200μLの洗浄溶液で3回洗浄した後、100μLの希釈緩衝液中に再懸濁させた。最後に、マイクロタイタープレート中の50μL容積の逐次希釈された材料に100μLのTMB試薬(T 0440, Sigma Aldrich)を添加することによって、TMB(テトラメチルベンジジン)発色反応を行った。このマイクロタイタープレートを室温で5〜30分間インキュベートした後、100μLの2M H2SO4を添加することにより反応を停止させ、プレートリーダー中において450nmでの吸光度を測定した。キットマニュアルに記載された通り、OD450の値とBGL濃度とをリンクさせる標準曲線が、マイクロタイタープレート設定に含められた。
【0095】
【表2】

【0096】
表2の計算されたBLGは、標準曲線を使用することにより、測定されたOD420値から誘導されたタンパク質濃度である。バックグラウンド値の450nm吸光度が、反応チューブへのBGL添加の不存在下で決定されたが、これはおそらく、HRP抗体の非特異的結合を反映している。BLGタンパク質のラクトバチルス細胞への非特異的付着は、おそらく、グルタルアルデヒドが省略されたサンプル3におけるBLGのレベルを説明している。
【0097】
実施例7.グルタルアルデヒドを使用することによる、S.アウレウスヌクレアーゼのラクトバチルスへの架橋結合
スタフィロコッカス・アウレウスは重要なバクテリア病原体であり、この場合の治療は、多剤耐性バクテリア株の発生に起因して特に困難である。候補ワクチン成分は、スタフィロコッカス・アウレウスから分泌されたヌクレアーゼ(Nuc)であり、これはラクトコッカス・ラクチスにおける異種タンパク質発現によって製造されたものである(Poquet I. et al. 1998 J Bact., 180:1904-1912)。以下の成分が、ラクトバチルス細胞へのNucタンパク質の架橋結合を立証するために行われるアッセイに含められた。
ラクトバチルス細胞: 実施例6に記載のようにして増殖および調製されたラクトバチルス・アシドフィルス(X37)の培養物。
Nucタンパク質(A):精製されたNucタンパク質(1 mg/mL、Calbiochem)。
Nucタンパク質(B):ラクトコッカス・ラクチスにおいて産生された組換えNucタンパク質(187 μg/mL)。
M9緩衝液およびグルタルアルデヒド(GLA)は、実施例に記載したとおりである。
表えに示した容積の中にラクトバチルス細胞、M9緩衝液、Nucタンパク質およびグルタルアルデヒドを含有するサンプルを混合し、室温で60分間、周期的に混合しながらインキュベートした。
【表3】

【0098】
60分のインキュベーションの後、サンプルを遠心分離し、ペレットを1mLのM9緩衝液で2回洗浄した。ペレット材料中のNucタンパク質濃度は、実施例1に記載した溶液を用い、一次Nuc抗体(ウサギ抗Nuc抗体)および二次AP結合抗ウサギ抗体(リン酸標識され且つアフィニティー精製されたヤギにおいて産生されたウサギIgGに対する抗体、 Catalog nr. 075-1506, KPL)を用いた抗体に基づくアッセイを使用して決定された。簡単に言えば、ペレットを100μLのブロッキング溶液中に再懸濁させ、100μLの検出溶液(1mLの希釈緩衝液+1μLのNuc抗体)と混合し、室温で60分間、規則的に混合しながらインキュベートした。次いで、細胞を遠心分離し、500μLの洗浄溶液で2回洗浄した後、100μLの希釈緩衝液中に再懸濁させた。次に、100μLの検出溶液(4mLの希釈緩衝液+1μLのAP抗体)を添加し、該サンプルを規則的に混合しながら室温で60分間インキュベートした。次いで、サンプルを遠心分離し、500μLの洗浄溶液で3回洗浄し、100μLの希釈緩衝液中に再懸濁させた。最後に、マイクロタイタープレート中の50μL容積の逐次希釈された材料に100μLのBluePhosマイクロウエルホスファターゼ基質系(50-88-02、KPL)を添加することによって、AP(アルカリホスファターゼ)発色反応を行った。このマイクロタイタープレートを室温で10〜30分間インキュベートした後、100μLの2。5%EDTAを添加することにより反応を停止させ、プレートリーダー中において5950nmでの吸光度を測定した。同じ実験設定を別々に使用して、OD450の値とNuc濃度とをリンクさせる標準曲線を発生させた。
【0099】
【表4】

表4に与えられた計算されたNuc値は、バックグラウンド値を差引いた後に標準曲線を使用することにより、測定されたOD595値から誘導されたタンパク質濃度である。ラクトバチルス・アシドフィルス細胞へのNucタンパク質の架橋結合が立証され、また結合されたNucの量は、当該アッセイ中に存在するNucタンパク質および細胞の量に比例する。
【0100】
実施例8.グルタルアルデヒドおよびキトサンを使用することによる、ラクトバチルスへのlacS・β−ガラクトシダーゼの架橋結合
キトサンは複数のアミノ基を含む天然に存在する分子であり、これはグルタルアルデヒド架橋反応に関与することができる。所謂スペーサー分子は、結果を改善するために、架橋反応混合物屡々添加される。
キトサンを介してのβ−ガラクトシダーゼのラクトバチルスへの架橋結合を立証するために行われたアッセイに、以下の成分が用いられた。
β−ガラクトシダーゼは、スルホロブス・ソルファタリクス由来のlacS遺伝子(Pisani F.M. et al. 1990 Eur J Biochem., 187:321-8)の、pET−3aベクター系(Invitrogen, CA)を使用した大腸菌での組換え発現によって得られた。簡単に言えば、β−ガラクトシダーゼをコードするPCR断片が、標準のPCR技術を使用して増幅され、pET−3aベクターの中にクローニングされ、β−ガラクトシダーゼの細胞内発現のために大腸菌の中に形質転換された。発現されたlacSタンパク質の製剤は、前記大腸菌細胞を溶解させた後の部分的精製(熱沈殿)によって得られ、ここでは溶解物が80℃で30分間加熱され、遠心分離されて前記溶解物中の他のタンパク質の殆どが除去される(lacS・β−ガラクトシダーゼは熱的に安定な酵素である)。lacS・β−ガラクトシダーゼタンパク質の濃度は、クーマシー染色されたゲル中で検出可能なタンパク質に基づいて、約400μg/mLと見積もられた。
ラクトバチルス細胞: ラクトバチルス・プランタルム(299v)の培養物は、実施例6に記載したようにして増殖および調製された。
1%のキトサン溶液を、7.3mgのキトサン(500kDa)(Cognis Deutschland GmbH, Germany)、730μLのH2Oおよび20μLの2N・HClを混合することによって調製した。
M9緩衝液およびグルタルアルデヒド(GLA)は実施例6に記載した通りである。
表5に示した容積の中にラクトバチルス細胞、M9緩衝液およびキトサンを含有するサンプルを混合し、室温で5分間インキュベートした。次いで、表5に示した容積で、lacS・β−ガラクトシダーゼおよびグルタルアルデヒドを添加し、サンプルを室温で15分間混合した。
【表5】

【0101】
15分のインキュベーションの後、サンプルを遠心分離し、ペレットを100μLのM9緩衝液中に再懸濁させた。lacSタンパク質分布を決定するために、ペレットおよび上清溶液に対して、65℃で、ONGP法を用いたβ−ガラクトシダーゼ酵素活性のための標準アッセイ(Sambrook J et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Press, Plainview, NY)を実施した。得られたβ−ガラクトシダーゼ酵素の相対的な量が表6に示されており、ここでの表に纏められた値は酵素活性(mL当りの単位)×溶液の容積(mL)として計算される。






【表6】

架橋率は、測定されたペレットおよび全lacS・β−ガラクトシダーゼ活性の間の比である。
この実施例は、スペーサーとしてキトサンを含めることが架橋物質の収率を有意に増大させることを示している。
【0102】
実施例9.グルタルアルデヒドによるアゾカゼインのラクトバチルスへの冷間架橋結合
我々は驚くべきことに、グルタルアルデヒドによる架橋結合が、凍結プロトコール(冷間架橋)を使用して行うことができ、またこのプロトコールを使用して高収率の架橋されたタンパク質を得ることができることを見出した。
以下の成分が、ラクトバチルスへのアゾカゼインの架橋結合を立証するために実施されるアッセイに含められた:
アゾカゼイン: 一般的なプロテアーゼ基質として周知である。それは、定量的な分光学的測定のために使用できるアゾ色素に結合されたカゼインからなっている。架橋実験のために、滅菌蒸留水中に溶解されたアゾカゼイン(A 2765, Sigma-Aldrich)の1%溶液を調製した。
ラクトバチルス細胞: ラクトバチルス・プランタルム(299v)の培養物を、実施例6に記載したようにして増殖および調製した。
M9緩衝液およびグルタルアルデヒド(GLA)は、実施例6に記載した通りである。
表7に示した容積中にラクトバチルス細胞、アゾカゼイン、M9緩衝液およびグルタルアルデヒドを含有するサンプルを混合し、直ちに液体窒素を使用して凍結した後、−20℃の冷凍器の中に配置し、そこでサンプルを3日間維持した。
【表7】



【0103】
架橋を評価するために、サンプルを回答し、遠心分離し、420nmでのアゾ基吸収を件主付することによって上清のアゾカゼイン含量を測定した。表7に与えられた回収値は、対照(初期濃度に類似した水中の純粋なアゾカゼイン)に比較したときの上清中に残存するアゾ染色のパーセンテージとして計算された。2.5mg/mLおよび5.0mg/mLのアゾカゼインの溶液は両者とも、上記の冷間プロトコールに従い、0.25%のグルタルアルデヒドを使用して効率的に架橋されることが分かった。遠心分離は固いペレットを生じ、これは再懸濁が不可能であった。このことは、高度の架橋が生じたことを示している。ラクトバチルス細胞の添加を伴った、および該添加を伴わない架橋の結果は、非常に類似している。インキュベーションン間の細胞の位置が固定される凍結プロトコールに起因して、冷間架橋は、均一に凝集塊へと結合した細胞およびアゾカゼインを生じる。
【0104】
実施例10
グルタルアルデヒドによるβ−ガラクトシダーゼのラクトバチルスへの冷間架橋
タンパク質のラクトバチルス表面へのグルタルアルデヒドに媒介された架橋のための凍結プロトコール(冷間架橋)もまた、ラクトバチルスに架橋されたβ−ガラクトシダーゼ(lacS)の更に高い収率を与える。
以下の成分が、凍結プロトコールを使用したlacSのラクトバチルス細胞への架橋結合を立証するために行われるアッセイに含められた:
ラクトバチルス細胞:ラクトバチルス・アシドフィルス(X37)を、実施例6に記載したようにして増殖および調製した。
lacSは、実施例8に記載したようにして調製した。
M9緩衝液およびグルタルアルデヒド(GLA)は、実施例6に記載したようにして調製した。
ラクトバチルス細胞、lacS・β−ガラクトシダーゼタンパク質溶液、M9緩衝液およびグルタルアルデヒドを含有するサンプルを表8に示した容積で混合し、直ちに液体窒素を使用して凍結した後、−20℃の冷凍器の中に配置し、そこでサンプルを3日間維持した。
【表8】

【0105】
架橋を評価するために、サンプルを解凍し、遠心分離し、ペレットを200μLのM9緩衝液で1回洗浄した。最後に、ペレットを100μLのM9緩衝液中に再懸濁させた。
65℃でのONPGアッセイを使用して、実施例7に記載した通りにβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。得られたβ−ガラクトシダーゼ活性の相対的量を表9に示す。この表に纏められた値は、酵素活性(mL当りの単位)×溶液の容積(mL)として計算される。











【表9】

【0106】
回収は、合体されたペレット+上清+洗浄溶液における、架橋後に検出された添加されたlacS活性の画分である。グルタルアルデヒド処理は酵素の不活性化を導き、該不活性化は、回収可能な全活性において観察される喪失を最もよく説明する。X37細胞の添加は、恐らくはグルタルアルデヒド反応に提示されるより多くの標的に起因して、回収を改善する
架橋の値は、全lacS・β−ガラクトシダーゼ活性のパーセンテージとして表された、ペレットのβ−ガラクトシダーゼ活性である。一般に、添加されたlacS・β−ガラクトシダーゼタンパク質の殆どは架橋され、殆どの酵素活性は、299v細胞が含められるか否かに関係なくペレット画分中に見られる。より高いタンパク質濃度については、回収は100%に近い。
ペレット画分の顕微鏡検査は、GLAなしのサンプル(チューブ番号5)について正常なX37単細胞を示した。細胞の添加なしで(チューブ番号6〜8)で架橋が行われたときは小さな凝集が観察され、これはバクテリア細胞と同じサイズであった。細胞およびタンパク質材料の両者からなる混合された凝集が、細胞およびlacS・β−ガラクトシダーゼタンパク質の両方が添加された実験(チューブ2〜4)について観察された。lacSを添加せずにインキュベートされた細胞もまた、架橋された細胞の小さい塊を示した(チューブ番号1)。
【0107】
実施例11.室温での架橋と比較した、グルタルアルデヒドによるBetv1のラクトバチルスへの冷間架橋
カバノキ(Betula verrucosa)からの主要な花粉抗原であるBetv1は、17kdのタンパク質であり(Breiteneder H. et al. 1989 EMBO J., 8:1935-1938)、I型アレルギー反応(アレルギー性気管支喘息)の主原因の一つである。
次の成分が、Betv1のラクトバチルス細胞への冷間架橋の効率を決定するために行ったアッセイに含められた:
精製された組換えBetv1タンパク質は、文献[Spangfort et al. (1996) Prot. Exp. Purification, 8, 365-373]に記載された方法に従って得られた。
放射能でラベルされたBetv1タンパク質は、インビトロのタンパク質合成系を使用して製造された(RTS 100 E.coli HY Kit, Roche Applied Science)。簡単に言えば、Betv1リーディングフレームを含むPCR断片を、その増幅のために使用したPCRプライマーに添加されたNde1およびSal1制限部位によって、pIVEX2.3dベクター(Roche社)の中にクローニングした。得られたクローンから精製されたプラスミドDNAのうち、配列解析によってエラーのないBetv1コーディング配列を含むことが分かったものを、インビトロタンパク質合成のためのDNA鋳型として使用した。L−[35S]メチオニン(SJ235, Amersham Biosciences)を使用し、製造業者が記載したようにして放射能ラベリングを行った。Betv1タンパク質を保持できる遠心分離30Kフィルタ(Ultrafree, Amicon Bioseparations, Millipore)を使用して、インビトロ合成されたタンパク質から低分子量タンパク質を洗い流した。35S−標識されたBetv1タンパク質がこの工程で精製され、SDS・PAGE上で単一の優勢な放射活性バンドを与えた。最後に、この35S−標識されたBetv1タンパク質は、放射能ラベリング実験に使用される混合物(10μLの35S標識されたBetv1タンパク質、490μLのM9緩衝液、550μLのキャリアBetv1)を製造するために、M9緩衝液および非放射活性キャリアBetv1(40μg/mL)と混合された。
ラクトバチルス細胞:実施例6に記載したようにして、ラクトバチルス・アシドフィルスの培養物(X37)を増殖および調製した。
Betv1: 50%グリセロールを含有するリン酸ナトリウム緩衝液中の1.32mg/mL
M9緩衝液およびグルタルアルデヒド(GLA)は、実施例6に記載した通りに調製した。
ラクトバチルス細胞、Betv1タンパク質溶液、およびグルタルアルデヒドを表10に示した容積で混合し、直ちに液体窒素を使用して凍結した後、−20℃の冷凍器中に配置した。
【表10】

【0108】
−20℃で3日後に、サンプルを解凍および遠心分離した。そのペレットを200μLのM9緩衝液で洗浄し、100μLのM9緩衝液中に再懸濁させた。該ペレット、上清および洗浄溶液中の35S−放射能の測定が、5μLの液滴を非吸収性紙表面上に置き、該液滴を50℃で乾燥し、フィルムカセットの中で該乾燥された液滴を覆って超高感度の保存燐スクリーン(Storage Phosphor Screen:Pachard Instrument Company)を配置することによって行われた。露出された保存燐スクリーンを走査し(Cyclone, Pachard Instrument Company)、全ての分析スポットについて同じ直径を有する円形領域について検出された光単位(DLU)信号を積算した。その結果が表11に示されており(相対単位)、ここで表に纏められた値は、走査結果(DLU/mL)×溶液容積(mL)として計算された。
【表11】

【0109】
回収は、ペレット+上清+洗浄溶液中における、添加された35S−Betv1活性の架橋後に検出された画分である。架橋は、ペレット中に検出された全35S−Betv1活性のパーセンテージである。35S−Betv1溶液の希釈を使用して、添加された全放射能を測定し、またサンプルが局在されていない非吸収性紙の面積を、測定されたDLU値からバックグラウンドを差引くために使用した。
【0110】
ペレット化区分の顕微鏡検査は、GLAなしのサンプルについて正常なX37単細胞を示したのに対して、GLAか今日は、Betv1タンパク質物質で装飾された小さい凝集物の細胞を生じた(図4)。ペレット画分の中に見られるBetv1タンパク質の大部分は合体された細胞であることが分かったが、大きなタンパク質凝集物および小さい凝集物は、細胞洗浄の反復工程の間に除去されたであろう。
グルタルアルデヒドは、広範に使用されるタンパク質架橋剤である(Migneault I. et al. 2004 BioTechniques, 37:790-802)。比較実感において、室温のグルタルアルデヒドは、Betv1を二つの異なるタイプのラクトバチルス細胞に架橋させるために使用された。
【0111】
以下の成分が、ラクトバチルス細胞へのBetv1の室温架橋の効率を決定するために行ったアッセイに含められた。
ラクトバチルス細胞(A):ラクトバチルス・アシドフィルス(X37)の培養物は、実施例6に記載したようにして増殖および調製された。
ラクトバチルス細胞(B):ラクトバチルス・アシドフィルス(616)の培養物は、実施例6に記載したようにして増殖および調製された。
Betv1: 50%グリセロールを含有するリン酸ナトリウム緩衝液中の1.32mg/mL
35S−Betv1は、上記の通りに調製された。
M9緩衝液およびグルタルアルデヒド(GLA)は、実施例6に記載した通りに調製した。
ラクトバチルス細胞、Betv1タンパク質溶液、およびグルタルアルデヒドを表12に示した容積に従って混合し、室温で60分間、周期的に混合しながらインキュベートした。
【表12】

【0112】
室温でのインキュベーションの後、サンプルを遠心分離し、そのペレットを100μLのM9緩衝液で3回洗浄し、50μLのM9緩衝液中に再懸濁させた。該ペレット、上清および洗浄溶液中の35S−放射能の測定が、5μLの液滴を非吸収性紙表面上に置き、上記で述べたように処理することによって行われた。その結果が表13に示されており(相対単位)、ここでの表に纏められた値は、走査結果(DLU/mL)×溶液容積(mL)として計算された。


【表13】

【0113】
回収および架橋について表に纏めたものは、上記で述べたようにして計算された。ペレット材料は顕微鏡で試験され、両ラクトバチルスの株の細胞は、架橋の結果として幾分大きな細胞凝集物を生じるが、同様の実験において、M9緩衝液を使用して細胞濃度を希釈したときには、細胞凝集は減少する(データは示さず)ことが分かった。
ラクトバチルス細胞と共に架橋されたBetv1タンパク質の小さい凝集物の生成は、室温で行われたときには1〜3%であるのに対して、冷間架橋法を使用すると11%の平均架橋にまで増大したが、これは架橋レベルの有意で且つ予測されない改善である。
上記二つの架橋法に従って調製されたBetv1を表面結合させたラクトバチルス接合体は、100倍に濃縮されてよい。各濃度の5μLのアリコートは、実施例15に従うS.L.I.T型実験においてマウスに投与されたときに、それぞれ冷間架橋または室温架橋に従って調製された、ラクトバチルス細胞に結合された0.330mgまたは0.075mgのBetv1タンパク質を含有する投与量を与えるであろう。
【0114】
実施例12.グルタルアルデヒドによってラクトバチルスに架橋結合されたBetv1の表面分布
グルタルアルデヒドによってラクトバチルスに架橋結合されたBetv1の表面分布が、抗体に基づく検出法を用いて試験された。以下の容積を混合し、直ちに液体窒素を使用して凍結した後、−20℃の冷凍器の中に配置した:100μLのラクトバチルス・アシドフィルス(X37)細胞、5μLのBetv1タンパク質および2μLのGLA。全ての溶液は、実施例8に記載した通りである。架橋混合物からBetv1を省いたネガティブ対照を、当該実験の他のサンプルと同じ方法で処理した。
−20℃で3日後、該混合物を解凍し、遠心分離し、そのペレットをM9緩衝液で洗浄した。残留グルタルアルデヒドからの自己蛍光を回避するために、当該ペレットを先ず500μLの40mMエタノールアミン中に再懸濁させ。室温で2時間インキュベートした。次いで、各サンプルを遠心分離し、次いでそのペレットを、2mLのNaBH4溶液(PBS緩衝液中の1mg/mL、pH8.0)の中に室温で10分間再懸濁させた。最後に、該ペレット物質を500μLのM9緩衝液で3回洗浄した。
ウサギ抗Betv1抗体(ALK-Abello A/S)を二次Cy−3標識抗ウサギ抗体(PA43004, Amersham Biosciences)と組み合せて使用することにより、Betv1の存在を視覚化させた。簡単に言えば、1μLの一次抗体(ウサギ抗Betv1)と共に該ペレットを500μLのTBS(50 mM Tris, 0.9% NaCl, pH 7.6)中に再懸濁させ、室温で60分間インキュベートした。次いで、このサンプルを遠心分離し、500μLのTBS緩衝液で3回洗浄し、該ペレットを、1μLの二次交代(Cy−3抗ウサギ)と共に500μLのTBS中に再懸濁させ、暗所において室温で60分間インキュベートした。最後に、該ペレットを500μLのPBSで3回洗浄し、500μLのPBS中に最懸濁させ、CCDカメラ(Princeton Instuments)を備えた蛍光顕微鏡(Axioskop 2, Zeiss)によって分析したが、ここでの写真はMetaMorphソフトウエア(Universal Imaging Company)を使用することにより作成された。
同一の設定を用いた顕微鏡およびカメラの下でサンプルを見るときに、明瞭な蛍光信号がラクトバチルス細胞の表面に局在化された。これは、Betv1タンパク質がラクトバチルス細胞の表面に架橋結合され得ること、および該架橋結合されたタンパク質(betv1)がその抗体認識特性を維持することを実証している。
【0115】
実施例13.タンパク質化合物の非病原性バクテリア表面への化学的架橋の最適化および制御
化標的タンパク質化合物とバクテリア細胞の細胞表面との間の化学的架橋の形成速度、および細胞当りの結合された標的タンパク質の量は、架橋反応条件によって調節することができる。例えば、インキュベーション時間および温度は、必要な架橋度を得るように設定される。化学的架橋剤濃度、および標的タンパクの対細胞比は、1012細胞当り約1ng〜少なくとも約1mgの架橋された標的タンパク質架橋密度を生じるように、架橋反応において調節される。更に、反応プロセスの際の試薬の混合は、試薬間の効率的接触、バクテリア細胞の外表面でのタンパク質の均一な分布の両方を保証するために、また細胞凝集物の形成を防止するために定義される。バクテリア細胞に結合された標的タンパク質化合物の量、密度および分布は、免疫化学的方法および顕微鏡によって分析される。或いは、架橋のための別の二官能性化学試薬および架橋のための別のスペーサーが試験されてよい。本発明の開示された方法は、外表面に制御された量の架橋されたタンパク質を含んだ1以上のバクテリア細胞の製造を可能にする。
【0116】
実施例14.非病原性バクテリアに架橋された標的タンパク質化合物の投与量評価
バクテリア細胞に架橋された、またはワクチンとして処方された標的タンパク質化合物(例えば酵素、抗原またはアレルゲン)の投与量は、次のようにして計算される。
架橋されたタンパク質の投与量=N×M×CFU/A
ここで、Nは細胞当りの架橋されたタンパク質分子の数、Mは分子量、CFUは1回投与量中のコロニー形成単位の数、Aはアボガドロ数の6.02×1023/molである。
【0117】
実施例1において、表面結合されたβ−ガラクトシダーゼ分子の数は、バクテリア表面上のβ−ガラクトシダーゼ酵素活性に基づいて、細胞当り約600〜800分子と見積もられた。この見積りは、バクテリア細胞への抗原分子の結合が完了した後に、酵素活性が保存されることを仮定している。しかし、例えばGLA処理および/または全ての架橋されたβ−ガラクトシダーゼに対する基質分子の不完全なアクセスに起因して、酵素活性は有意に低下し得る。従って、表面結合された分子の数は、見積もられた600〜800よりも高い可能性がある。もし、GLA処理によって酵素活性が2倍〜3倍低下するとすれば、細胞当りの分子の数は1,200〜2,400かもしれない。表面結合された分子の正しい数は、例えば同位体ラベルされた抗原または免疫に基づく技術を使用して、正確に決定することができる。
【0118】
実施例1および2において、結合反応における増大する量の抗原の添加は表面結合される抗原の量を増大させることが示されたから(図1および2)、抗原分子をバクテリア表面に結合するためのプロトコールは飽和性ではない。表面結合された抗原の量は、実施例7に詳述したように、架橋反応条件(GLA濃度、温度および/またはインキュベーション時間を含む)を調節することによって更に増大させることができる。
【0119】
実施例6において、架橋結合されたBLGタンパク質の量は約46ng/mLであった。BGLタンパク質は約18,300の分子量を有している。ラクトバチルス培養物の一晩の増殖について2×109細胞/mLを仮定すれば、これは、使用される反応容積について1×109細胞当り4.6ngのBLGタンパク質、または細胞当り151の架橋された分子に相当する。
【0120】
実施例7において、架橋結合されたNucタンパク質の量は、使用した最大のNuc濃度について約22μg/mLであった。Nucタンパク質の分子量は約18kdである。ラクトバチルス培養物の一晩の増殖について2×109細胞/mLを仮定すれば、これは、使用される反応容積について4×108細胞当り2.2μgのNucタンパク質、または細胞当り184×103の架橋された分子に相当する。
【0121】
実施例8において、架橋結合されたlacS分子の数は、使用したキトサンの量に依存して、6〜50%であることが分かった。該lacS・β−ガラクトシダーゼは、57kdのタンパク質である。ラクトバチルス培養物の一晩の増殖について2×109細胞/mLを仮定すれば、これは、2×108細胞当り0.48〜4.0μgのlacSタンパク質、または細胞当り25×103〜211×103の架橋された分子に相当する。
【0122】
実施例9において、架橋結合されたアゾカゼイン分子の数は、添加された材料の約90%であることが分かった。これは、使用した100μLの細胞溶液当り450μgに相当する。カゼインは、20〜25kdの範囲の分子量をもった幾つかの異なる形態で見出される。ラクトバチルス培養物の一晩の増殖について2×109細胞/mLを仮定すれば、これは、4×108細胞当り450μgのカゼイン、または細胞当り約27×108の架橋された分子に相当する。
【0123】
実施例10において、架橋結合されたlacS分子の数は、80〜90%であることが分かった。これは、使用した最大のlacS容積について100μLの細胞溶液当り18μgに相当する。ラクトバチルス培養物の一晩の増殖について2×109細胞/mLを仮定すれば、これは、4×108細胞当り18μgのlacS、または細胞当り約475×103の架橋された分子に相当する。
【0124】
実施例11において、冷間法を使用して架橋結合されたBetv1分子の数は、添加された材料の約10%であることが分かった。これは、使用した100μLの細胞溶液当り0.66μgに相当する。Betv1は、17kdのタンパク質である。ラクトバチルス培養物の一晩の増殖について2×109細胞/mLを仮定すれば、これは、4×108細胞当り0.66μgのBetv1、または細胞当り約58×103の架橋された分子に相当する。
実施例11において、室温法を使用して架橋結合されたBetv1分子の数は、1〜2%の範囲であることが分かった。これは、最大のBetv1容積について100μLの細胞溶液当り0.2μgに相当する。ラクトバチルス培養物の一晩の増殖について2×109細胞/mLを仮定すれば、これは、4×108細胞当り0.2μgのBetv1、または細胞当り約18×103の架橋された分子に相当する。
【0125】
実施例1において、バクテリア細胞の表面に架橋結合された標的タンパク質(β−ガラクトシダーゼ)は、約50kDaの質量を有している。従って、1012細胞を含み且つ細胞当り約1,000の標的タンパク質分子が架橋結合された、1回投与量中の標的タンパク質の量は次の通りである:
投与量架橋結合された標的タンパク質
=1,000×50,000g×mol-1×1012/6.02×1023mol-1
=83μg
【0126】
実施例15.動物モデルにおけるアレルギーの舌下投与による治療のための薬剤としての、表面結合されたカバノキ花粉アレルゲンBetv1を含有するラクトバチルス接合体の使用
15.1 方法
動物: 雌、6〜10週齢のBalb/cjマウスを自社で繁殖させ、12時間の明サイクルおよび12時間の暗サイクル下での病原体を含まない特定の環境に収容した。ここに記載した全ての実験は、デンマーク法制に従って実施された。
15.2 BetV1・L.アシドフィルスX37接合体の製造
共有結合されたL.アシドフィルスX37/BetV1アレルゲン接合体は、下記に記載したような、反復されたグルタルアルデヒド反応によって調製された:
ビオニールA/S国内株コレクション(Bioneer A/S internal strain collection)から入手したL.アシドフィルスX37を、30℃のMRS培地250mLの中で、通気することなく2日間増殖させた。細胞を回収し、100mLのM9緩衝液中で洗浄し、得られた細胞ペレットを、使用するまで−20℃で維持した。この細胞ペレットを125mLのM9緩衝液中に溶解し、12本の50mLのNuncチューブの中に分けた。この細胞懸濁液および各チューブに対して、10mLのM9緩衝液、150μLの25%グルタルアルデヒド(1.04239, Merck)、および150μLのBetV1(2.56mg/mLのの濃度)を混合し、室温で60分間インキュベートし、頻繁に混合した。該混合物を4000RPMで遠心分離し、上清を保持し、後での使用のために−20℃で保存した。得られた細胞ペレットを10mLのM9緩衝液で洗浄し、5mLのM9の中に再懸濁させ、プールし、次いで遠心分離し(4000RPM)、得られた細胞ペレットを最小容積のM9緩衝液の中に溶解させた。2.5mLの細胞懸濁液が得られ、これを−80℃で一晩維持した。この細胞懸濁液は、最初の架橋反応から保持された上清液を使用して、反復した架橋反応を受けた。この細胞懸濁液を、4本の50mL・Nuncチューブの中に分け、各チューブに対して、25mLのBetV1(保持された上清)、10mLのアセトン、および50μLの25%グルタルアルデヒドを添加した。この反応は室温で60分間行われ、頻繁に混合された。遠心分離により細胞を回収し、10mLのM9緩衝液中で洗浄し、最小量のM9の中に溶解させた。1.5mLの細胞懸濁液が得られ、これは免疫療法治療剤として使用するまで、−80℃で保持された。
【0127】
15.3 舌下免疫療法(SLIT)治療
マウスを、3週間にわたって週に5日だけ、実施例15.2に記載した室温架橋法によって製造された、ラクトバチルス・アシドフィルスX−37の表面に結合されたBetV1(投与量当り2.5μgのBetV1および2.5×109個のバクテリア)を含有する薬剤;またはa)未処理のラクトバチルス・アシドフィルスX−37(2.5×109個のバクテリア)、b)二つの異なる濃度(投与量当り2.5μgおよび5.0μg)、またはc)緩衝液を含んでなる対照組成物で治療した。SLIT治療の2週間後、これらのマウスはAlumに吸着された10μgのBetV1で免疫感作され、また治療の3週間後に再度免疫感作された。最後の免疫感作の11日後に、これらマウスを屠殺し、脾臓を摘出し、脾臓細胞を下記に記載するようにインビトロで再刺激した。
【0128】
15.4 T細胞増殖およびサイトカイン産生
治療されたマウスから誘導された脾臓組織を、単細胞懸濁液中で細かく切断し、RPMI−1640(BioWhittaker, Belgium)の中で洗浄した。細胞をカウントし、50μg/mLのゲンタマイシン(Gibco, UK)、1%のヌトリドーマ(Roche, Germany)および1.5mMのモノチオグリセロール(Sigma, USA)を含有するrpmi−1640の中の1.67×106細胞/mLに調節した。96穴の平底培養プレート(Nunc, Denmark)の各ウエルに3×105細胞を添加し、該細胞をBetv1(0、5および40μg/mL)により刺激した。この細胞を、37℃で6日間、5%CO2の雰囲気中において培養した。培養器官の最後の18時間に0.5μCiの3H−チミジンを各ウエルに添加し、続いてTomtecの96ウエルプレート収穫器(Tomtec, USA)上に細胞を回収し、Wallac・Microbeta・1450液体シンチレーションカウンタ(Wallac, Finland)を使用して取り込まれた放射能ラベルをカウントすることによって、増殖を測定した。
【0129】
15.5 結果:
共有結合されたカバノキ花粉アレルゲンBetV1を含むラクトバチルス接合体または対照組成物で治療を受けたマウスから単離した脾臓細胞の、Betv1でインビトロ再刺激したときの増殖を測定することによって、T細胞応答を評価した。図6は、Betv1ラクトバチルスアシドフィルスX−37接合体での前処理が、脾臓増殖の顕著な現象をもたらした個とを示しており、これはアレルゲン反応性T細胞の抑制と、それによるアレルギー反応の抑制を示している。ラクトバチルス・アシドフィルスX−37単独、またはBetv1単独でマウスを前処理した場合には、そうではなかった。
【0130】
実施例16.動物モデルにおけるバクテリア感染を治療するための薬剤としての、表面結合されたS.アウレウスヌクレアーゼを含んだラクトバチルス接合体に基づくスタフィロコッカス・アウレウスワクチンの使用
本発明に使用するためのS.アウレウス抗原ヌクレアーゼは、L.ラクチス発現系(Madsen et al., 1999 Mol Microbiol. 32:75-87)および実施例7に記載した方法を使用して製造することができる。ワクチン接合体は、実施例7に記載され通りに調製され、または実施例11に記載したような最適化されたプロトコールを使用して調製された。使用したラクトバチルス株はL.アシドフィルスX37であったが、高いアジュバント効果を示す他の株も試験される。異なる株のアジュバント効果は、実施例18に記載の樹状細胞モデルにおいて試験される。
選択されたラクトバチルス株に表面結合されたヌクレアーゼを含むワクチン接合体が、マウス実験における経口ワクチンとして試験される。未処置のマウスを四つのグループに分ける。グループ1は、1mL当り108〜1012バクテリアの300μLの経口投与を受ける; グループ2は、同じ濃度の未処理のバクテリアの投与を受ける;グループ3は、前記接合体の濃度に対応する濃度で、ヌクレアーゼタンパク質を単独で受ける;グループ4は、リン酸緩衝液を単独で受ける。種々の治療剤が、3週間に亘って1日1回経口投与される。血液サンプルが採取され、ELISA法を使用して前記ヌクレアーゼに特異的な抗体が分析される。更に、例えば5週間に亘る1週間に1回の免疫感作、または経口投与の代りに鼻投与が使用される他のワクチン接種計画および戦略が試験される。
【0131】
実施例17.本発明の方法によるアレルギーワクチンの製造、および動物モデルにおける該ワクチンの投与
実施例11に記載の最適化された化学的架橋技術を使用して、細胞表面にアレルゲンが共有結合された非病原性バクテリアを製造した。この実施例は、ピーナッツ由来のアレルゲン、またはミルクアレルゲンであるB−ラクトグロブリン由来のアレルゲンを用いたワクチンの製造に焦点が当てられている。このアレルギーワクチンの製造には、以下の工程が用いられる
【0132】
17.1.株の選別
多くのバクテリア株が、実施例18および文献(Christensen H.R. et al. 2002, J Immunology 168:171-8)に記載されたような、インビトロ樹状細胞モデルにおいて分析される。好ましい株は、Th1偏向免疫応答の顕著な誘導またはディスプレイされたアレルゲンに対する耐性の誘導を特徴とするものである。
【0133】
17.2.アレルゲンの製造
ピーナッツアレルゲンAraH2が、遺伝子発現系を使用して大腸菌の中で産生された。このアレルゲンをコードする遺伝子は、適合性発現ベクターであるpAMJ297に挿入され、L.ラクチス株の中に導入され、次いで文献(Madsen S. et al. 1999 Mol Microbiol. 32:75-87.)に記載のように、発酵槽の増殖培地の中で培養される。該アレルゲンは、発酵増殖の際に、組換えL.ラクチスによって合成および分泌される次いで、例えば交差流濾過を使用して、細胞培養物から上清を分離する。この上清中の組換えアレルゲンは、従来のタンパク質精製法、例えばゲル濾過を使用して精製される。得られたアレルゲンは、適切な緩衝液、例えばM9緩衝液中に溶解される。β−ラクトグロブリンアレルゲンは、実施例1に記載したようにして得られる。
【0134】
17.3.非病原性バクテリア細胞バイオマスの製造
工程1において選択された株は、複合培地、例えば動物実験および獣医学的使用のためのワクチンの調製のためのMRS(Oxoid)を用いた、適切な増殖培地の中で培養される。ヒトに使用するワクチンを調製するための株培養については、動物起源の増殖培地成分中の感染性物質、例えばウイルスおよびプリオンの危険に起因して、合成成分のみに基づく増殖培地が用いられる。ヒトに使用するワクチンの調製に使用される増殖培地はまた、例えばFDAにより制定された安全性ガイドラインに合致すべきである。発酵装置における培養の後、バクテリア細胞は、例えば交差流濾過を使用して増殖培地から分離される。このバクテリア細胞は、新鮮な増殖培地または適切な緩衝液、例えばM9緩衝液中に再懸濁される。オートクレーブ処理された等容積の50%グリセロールを添加することにより、該細胞は−80℃で少なくとも1年間保存することができる。
【0135】
17.4.架橋反応および製剤
工程3で製造されたバクテリア、および工程2で製造されたアレルゲンは、実施例6に記載した方法を使用して架橋される。こうして得られたアレルゲンが表面に結合されたバクテリアは、次の試験において評価される。表面結合されたアレルゲンの量は、免疫技術を使用して、例えばELISA試験においてアレルゲン特異的な蛍光ラベルされた抗体を適用することによって測定される。或いは、架橋反応からの細胞抽出物中に存在する表面結合したアレルゲンの量は、放射能ラベルされたアレルゲンを使用して、実施例6における方法で決定される。加えて、バクテリア表面におけるアレルゲンの分布は、同じ抗体を顕微鏡分析に使用して分析される。この表面結合されたアレルゲンを含む細胞は、緩衝液、例えばM9緩衝液中に懸濁され、工程3に記載したようにして、グリセロール中において−80℃で保存される。
【0136】
17.5.抗原が表面結合されたバクテリアの動物アレルギーモデルにおける試験
工程4からの表面結合されたアレルゲンを含んだ細胞が試験ワクチンを構成し、これは108〜1011の細胞を含むアリコートに分割される。各々が10匹のマウスを含む四つのグループが、以下のプロトコールに従って、試験ワクチンでまたは対照ワクチンでワクチン接種される:二つのグループは異なる量の医師権ワクチンを受ける;一つのグループは、表面結合されたアレルゲンを伴わないバクテリア細胞を含む対照ワクチンを受け、残りのグループは精製されたアレルゲンからなる対照ワクチンを受ける。このワクチンは、文献(Repa et al. 2004 Clin Exp Immunol. 1:12-8)に記載の動物モデルを使用して、蛍光投与または鼻投与される。或いは、アレルギーモデルが使用され、ここではアレルゲンに対して動物を感作するために、最初にコレラ毒素アジュバントと組み合わせた5μg/mLのアレルゲンでマウスを免疫感作する。その後、当該応答を脱感作するために、該マウスは前記ワクチン接合体で傾向的に治療される。これは、実施例15に記載した脾臓細胞活性化アッセイおよびIgE抗体の評価によって評価される。ピーナッツアレルギーについてのアレルギーモデルは、文献(Xiu-Min Li et al J allergy Clin Immunol 2000 106:1)に記載されており、またβ−ラクトグロブリンについては文献(Xiu-Min Li et al J allergy Clin Immunol 2001 107:4)に記載されている。これらのプロトコールは、本発明の試験において使用された。
【0137】
実施例18.未処理バクテリアおよび接合体の免疫刺激効果
樹状細胞(DC)は、Th1、Th2およびTh3細胞バランスにおいて重要な免疫調節的役割を果たし、動物またはヒトの粘膜表面の全体に亘って存在している。従って、DCは当該ワクチン接合体による調節の標的であり得る。本実施例において、我々は、インビトロでのDCに対する本発明のワクチン接合体の免疫刺激効果を分析した。該DCモデルを使用して、望ましい免疫応答を刺激するバクテリア株を選択した。従って、伝統的な病原体ワクチンの場合、高いアジュバント効果を備えたバクテリア株が好ましい。しかし、免疫系をTh1型応答に向けて偏向させるバクテリア株は、アレルギーワクチンのためには望ましい可能性がある一方、強いCD8+細胞障害性T細胞応答を好むバクテリア株は、癌ワクチンの開発において好ましい可能性がある。同ように、耐性または抗炎症性を誘導するバクテリア株は、自己免疫疾患の治療のためのワクチン接合体の設計において好ましいかも知れない。
【0138】
18.1.ワクチン接合体
L.アシドフィルスX37に表面結合されたβ−ガラクトシダーゼを含むワクチン接合体を、実施例10に記載したようにして調製した。骨髄細胞を、文献(Lutz et al. J. Immunol. Methods 1999 223:77)の記載方法を僅かに変更した方法で単離し、培養した。簡単に言えば、8から12週齢の2匹の雌C57BL/6マウス(Charles River Breeding Laboratories, Portage, MI)からの大腿骨および脛骨を除去し、筋肉および腱を剥がした。これらの骨を70%エタノールの中に2分間浸漬し、PBS中で濯いだ後、両端を鋏で切除し、27ゲージの針を使用して骨髄をPBSでフラッシュした。細胞クラスターを反復ぴペッティングにより解離させた。得られた細胞懸濁液を10分間300×gで遠心分離し、PBS中で1回洗浄した。細胞を、4mMのL−グルタミン、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、50μMの2−ME、10%(v/v)の熱不活性化されたFBS(Atlanta Biologicals, Norcross, GA)、および15ng/mLのマウスGM−CSFを補充したRPMI1640(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)の中に際懸濁させた。GM−CSFは、GM−CSF産生細胞株(GM−CSFトランスフェクトされたAg8.653ミエローマ細胞株:Zal et al. 1994 J. Immunol. Methods 223:77)から回収された5〜10%(v/v)培養上清として添加した。この製造されたGM−CSFを、特異的ELISAキット(BD PharMingen, San Diego, CA)を使用して定量した。DCを富化させるために、3×106個の白血球を含む10mLの細胞懸濁液を、100mmの細菌学的ペトリ皿に播種し(第0日)、5%のCO2雰囲気中において37℃で8日間インキュベートした。第3日に、新鮮な調製された追加の培地10mLを各プレートに添加した。第6日に、各プレートから9mLを300×gで5分間遠心分離し、得られた細胞ペレットを10mLの新鮮な培地中に再懸濁させ、該再懸濁液を皿に戻した。第8日に、下記に説明するように、細胞を使用して、サイトカイン放出および表面マーカーの発現に対するラクトバチルスの効果を評価した。
【0139】
18.2.サイトカイン放出の誘導
8日齢のDC富化された培養物を含むペトリ皿から、非付着製細胞を穏やかにピペッティングした。集められた細胞を300×gで5分間遠心分離し、10ng/mLのGM−CSFだけを補充した培地中に再懸濁させた。細胞を、48ウエルの組織培養プレートに108/500μL/ウエルの密度で播種し、次いで各ウエルに次の溶液のうちの一つを添加した(100μL/ウエル)。a)表意面結合されたLacSを備えた接合されたL.アシドフィルスX37(1〜1000μg/mL)溶液、b)未処理のL.アシドフィルスX37(1〜1000μg/mL)溶液、c)精製されたLacS・β−ガラクトシダーゼ(LacS接合体と同様のLacS濃度で、実施例3に記載した通りに調製した)、d)LPS(大腸菌O26:B6;Sigma−Aldrich)が、ポジティブ対照として1μg/mLで幾つかの培養物に添加された。培地のみ、または2μmのラテックスビーズ(Polysciences, Warrington, PA)を含む培地を、それぞれ未刺激の対照およびネガティブ対照として使用した。5%CO2における37℃で15時間の刺激時間の後、培養上清を回収し、サイトカイン分析を行うまで−80℃で保存した。
【0140】
18.3. 培養上清におけるサイトカインの定量
商業的に入手可能なELISAキット(BD PharMingen)を、製造業者の指示に従って使用することにより、IL−12およびTNF−αが分析された。BD・PharMingenから購入した適合性Ab対を使用して、IL−10およびIL6が同ように分析された。
【0141】
18.4.結果
ワクチン接合体で刺激された樹状細胞は、IL−12誘導を示した(図7)。更に、IL−12の誘導は、接合体濃度を増大させるに伴って増大した。当該ワクチン接合体は、未処理のL.足フィル巣度のそれと同様のIL−12誘導を示し、バクテリアのアジュバント成分がワクチン接合体において保存されることを示した。接合に使用されたタンパク質(LacS)は、単独では免疫誘導を示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、1μg/mLまたは2μg/mLのβ−ガラクトシダーゼを使用した、ラクトバチルスに対する化学的架橋結合を示すグラフである。
【図2】図2は、ラクトバチルスに対するアラビノースイソメラーゼの化学的架橋結合を示すグラフである。
【図3】図3は、エンハンサ分子としてキトサンを使用した、ラクトバチルスに対するβ−ガラクトシダーゼの化学的架橋を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例11に記載された、グルタルアルデヒドを使用したラクトバチルス細胞に対するBetv1タンパク質の化学的架橋結合を示す写真である。
【図5】図5は、グルタルアルデヒドを使用してラクトバチルス細胞に架橋結合されたBetv1の表面分布を示す写真である.
【図6】図6は、SLIT処理、免疫感作およびその後のインビトロでの再刺激後の脾臓細胞の増殖を示すグラフである。
【図7】図6は、未処理のラクトバチルス、LacS結合したラクトバチルス、またはLacSタンパク質単独を使用したインビトロでの樹状細胞刺激を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の異種タンパク質化合物を表面ディスプレイする生物学的媒介物を含有してなる、薬剤として使用するための医薬組成物であって:
a)1以上の非病原性バクテリア株の細胞と、
b)二官能性架橋剤によって、前記細胞の表面上のアクセス可能な化学的物質に結合された1以上のタンパク質化合物と
を含んでなり、
前記細胞は、前記1以上のタンパク質化合物をコードするトランスジェニック核酸分子を含まず、また前記二官能性架橋剤はシッフ塩基を介して前記細胞のアミノ基に共有結合され、また前記タンパク質化合物および前記架橋剤は前記細胞に対して起源において異種である医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記二官能性架橋剤は、グルタルアルデヒド、ポリアゼチジンおよびパラホルムアルデヒドからなる群から選択される組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物であって、前記生物学的媒介物は、遺伝子的に修飾されていないバクテリア株もしくは遺伝子的に修飾されたバクテリア株、またはそれらの組み合せの細胞を含んでなる組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物であって、前記バクテリア株は、ラクトコッカス、ラクトバチルス、ロイコノストック、N族ストレプトコッカス、エンテロコッカス、ビフィドバクテリウム、非病原性のスタフィロコッカス、および非病原性のバチルスからなる群から選択されるバクテリア属のメンバーである組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の組成物であって、前記株は、ラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムからなる群から選択されるバクテリア属のメンバーである組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の組成物であって、前記株は、ラクトバチルス・アセトトレランス、ラクトバチルス・アシジピシチス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アギリス、ラクトバチルス・アルギドゥス、ラクトバチルス・アリメタリウス、ラクトバチルス・アミロリティクス、ラクトバチルス・アミロフィルス、ラクトバチルス・アミロボルス、ラクトバチルス・アニマリス、ラクトバチルス・アリゾネンシス、ラクトバチルス・アビアリウス、ラクトバチルス・ビフェルメンタンス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・コエロホミニス、ラクトバチルス・コリノイデス、ラクトバチルス・コリニホルミス・亜種コリニホルミス、ラクトバチルス・コリニホルミス亜種トルケンス、ラクトバチルス・クリスパツス、ラクトバチルス・クルバツス、ラクトバチルス・サイプリカセイ、ラクトバチルス・デルブルエッキイ亜種ブルガリクス、ラクトバチルス・デルブルエッキイ亜種デルブルエッキイ、ラクトバチルス・デルブルエッキイ亜種ラクチス、ラクトバチルス・ドゥリアヌス、ラクトバチルス・エクイ、ラクトバチルス・ファルチミニス、ラクトバチルス・フェリントシェンシス、ラクトバチルス・フェルメントゥム、ラクトバチルス・フォルニカリリス、ラクトバチルス・フルクチボランス、ラクトバチルス・フルメンティ、ラクトバチルス・フクエンシス、ラクトバチルス・ガリナルム、ラクトバチルス・ガッセリ、ラクトバチルス・グラミニス、ラクトバチルス・ハムステリ、ラクトバチルス・ヘルベチクス、ラクトバチルス・ヘルベチクス亜種ジュグルチ、ラクトバチルス・ヘテロヒオッキイ、ラクトバチルス・ヒルガルディイ、ラクトバチルス・ホモヒオッキイ、ラクトバチルス・インテスチナリス、ラクトバチルス・ジャポニクス、ラクトバチルス・ジェンセニイ、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・ケフィリ、ラクトバチルス・キムチイ、ラクトバチルス・クンケエイ、ラクトバチルス・レイヒマンニイ、ラクトバチルス・レティバジ、ラクトバチルス・リンドネリ、ラクトバチルス・マレフェルメンタンス、ラクトバチルス・マリ、ラクトバチルス・マルタロミクス、ラクトバチルス・マニホチボランス、ラクトバチルス・ミンデンシス、ラクトバチルス・ムコサエ、ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・ナゲリイ、ラクトバチルス・オリス、ラクトバチルス・パニス、ラクトバチルス・パンテリ、ラクトバチルス・パラブフネリ、ラクトバチルス・パラカセイ亜種パラカセイ、ラクトバチルス・パラカセイ亜種シュードプランタルム、ラクトバチルス・パラカセイ亜種トレランス、ラクトバチルス・パラケフィリ、ラクトバチルス・パラリメンタリウス、ラクトバチルス・パラプランタルム、ラクトバチルス・ペントスス、ラクトバチルス・ペロレンス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ポンチス、ラクトバチルス・プシタチ、ラクトバチルス・リューテリ、ラクトバチルス・ラムノスス、ラクトバチルス・ルミニス、ラクトバチルス・サケイ、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・サリバリウス亜種サリチニウス、ラクトバチルス・サリバリウス亜種サリバリウス、ラクトバチルス・サンフランシセンシス、ラクトバチルス・シャルペアエ、ラクトバチルス・スエビクス、ラクトバチルス・テルモフィルス、ラクトバチルス・テルモトレランス、ラクトバチルス・ワクチノステルクス、ラクトバチルス・バギナリス、ラクトバチルス・ベルスモルデンシス、ラクトバチルス・ビツリヌス、ラクトバチルス・ベルミホルメ、ラクトバチルス・ゼアエ、ビフィドバクテリウム・アドレッセンチス、 ビフィドバクテリウム・アエロフィルム、ビフィドバクテリウム・アンギュラツム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・アステロイデス、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム、ビフィドバクテリウム・ボウム、ビフィドバクテリウム・ブレベ、 ビフィドバクテリウム・カテヌラツム、ビフィドバクテリウム・コエリヌム、ビフィドバクテリウム・コリネフォルメ、ビフィドバクテリウム・クニクリ、ビフィドバクテリウム・デンティウム、ビフィドバクテリウム・ガリクム、ビフィドバクテリウム・ガリナルム、ビフィドバクテリウム・インディクム、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・ロングム bv ロングム、ビフィドバクテリウム・ロングム bv インファンティス、ビフィドバクテリウム・ロングム bv スイス、ビフィドバクテリウム・マグヌム、ビフィドバクテリウム・メリチクム、ビフィドバクテリウム・ミニマム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラツム、ビフィドバクテリウム・シュードロングム、ビフィドバクテリウム・シュードロングム亜種グロボスム、ビフィドバクテリウム・シュードロングム亜種シュードロングム、ビフィドバクテリウム・プシクロアエロフィルム、ビフィドバクテリウム・プロルム、ビフィドバクテリウム・ルミナンティウム、ビフィドバクテリウム・サエキュラレ、ビフィドバクテリウム・スカルドビイ、ビフィドバクテリウム・スブティレ、ビフィドバクテリウム・テルモアシドフィルム、ビフィドバクテリウム・テルモアシドフィルム亜種スイス、ビフィドバクテリウム・テルモフィルム、ビフィドバクテリウム・ウリナリスから選択されるバクテリア属のメンバーである組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の組成物であって、前記1以上のタンパク質化合物は、動物もしくはヒトの病原体に由来する抗原、またはその変異体である組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物であって、前記動物もしくはヒトの病原体が、ポックスウイルス科、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、パルボウイルス科、パポバウイルス科、ヘパドナウイルス科、ピコルナウイルス科、カルシウイルス科、レオウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、アレナウイルス科、レトロウイルス科、ブンヤウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科、アルボウイルス、オンコウイルス、未分類ウイルス(肝炎ウイルス、アストロウイルス、およびトロウイルスから選択される)、バチルス、マイコバクテリウム、プラスモジウム、プリオン(例えばクロイッツフェルト−ヤコブ病を生じるものまたは変異体)、コレラ、シゲラ、大腸菌、サルモネラ、コリネバクテリウム、ボレリア、ヘモフィルス、オンコセルカ、ボルデテラ、ニューモコッカス、住血吸虫、クロストリジウム、クラミジア、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、カンピロバクター、レジオネラ、トキソプラスモス、リステリア、ビブリオ、ノカルジア、クロストリジウム、ナイセリア、カンジダ、トリコモナス、ガルドネレラ、トレポネマ、ヘモフィルス、クレブシエラ、エンテロバクター、プロテウス、シュードモナス、セラチア、レプトスピラ、表皮糸状菌属、小胞子菌属、白癬菌属、アクレモニウム、アスペルギルス、カンジダ、 フサリウム、スコプラリオプシス属、オニココラ、シタリジウム、ヒストプラズマ、クリプトコッカス、ブラストマイセス、コクシジオイデス、パラコクシジオイデス、接合菌、スポロトリクス、ボルデテラ、ブルセラ、パスツレラ、リケッチア、バルトネラ、エルジニア、ジアルジア、ロドコッカス、エルジニア、およびトキソプラズマからなる群から選択される組成物。
【請求項9】
請求項1〜6の何れか1項に記載の組成物であって、前記1以上のタンパク質化合物は、抽出物、精製物、組換え体、突然変異体もしくはペプチド供給源、またはそれらの変種のアレルゲンを含んでなる組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物であって、前記アレルゲンの供給源は、カバノキ、ネコ、杉樹、オリーブ樹、ブタクサ、他の雑草、刺す昆虫、蚊/蚋、ゴキブリ、ウシ、イヌ、塵ダニ、草、屋外カビ、屋内カビ、齧歯類、ウマ、ナッツ、ミルク、大豆、小麦、卵、甲殻類および魚からなる群から選択される組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の組成物であって、前記アレルゲンの供給源が、カバノキ花粉(Bet v)、草花粉(Phl p、Lol p、Cyn dまたはSor h)、ハウスダストダニ(Der pまたはDer f)、ダニ(Eur m 、Blo t 、Gly m、Lep d)、ブタクサ花粉(Amb a)、杉樹花粉(Cry j)、ネコ(Fel d)、スズメバチ(Ves vまたはDol m)、ミツバチ(Api m)およびゴキブリ(Bla gおよびPer a)からなる群から選択される組成物。
【請求項12】
請求項9に記載の組成物であって、前記アレルゲンが、Betv1、Betv2、Phl p1もしくはPhl 5、Lol p1、Lol p5、Cyn d1、Sor h1、Der p1、Der p2、Der f1、Der f2、Eur m1、Blo t1、Gly m1、Lep d1、Amb a1、Cry j1、Fel d1、Ves v1、2または5、Dol m1、Dol m2、Dol m5、Api m1、Bla g1、およびPer a1からなる群から選択されるタンパク質またはペプチドである組成物。
【請求項13】
請求項1〜6の何れか1項に記載の組成物であって、前記1以上のタンパク質化合物は、動物またはヒトの癌抗原またはその変異体である組成物。
【請求項14】
請求項1〜6の何れか1項に記載の組成物であって、前記1以上のタンパク質化合物は、動物またはヒトを起源とする自己抗原またはその変異体である組成物。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか1項に記載の組成物であって、更に、スペーサー化合物を含有する組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物であって、前記スペーサーがキトサンである組成物。
【請求項17】
請求項1〜16の何れか1項に記載の組成物であって、細胞当りの前記結合されたタンパク質化合物の分子数が1〜約100,000の範囲である組成物
【請求項18】
請求項1〜16の何れか1項に記載の組成物であって、細胞当りの前記結合されたタンパク質化合物の分子数が1〜約10,000の範囲である組成物。
【請求項19】
請求項1〜18の何れか1項に記載の組成物を含有してなる封入された製剤。
【請求項20】
請求項1〜19の何れか1項に記載の組成物の使用であって、動物またはヒト患者における感染性疾患、癌、アレルギー、および自己免疫疾患からなる群から選択される疾患を予防および/または治療するための薬剤を製造するための使用。
【請求項21】
請求項9〜11の何れか1項に記載の組成物の使用であって、動物またはヒト患者におけるアレルギーを予防および/または治療するための薬剤を製造するための使用。
【請求項22】
請求項20に記載の組成物の使用であって、前記感染性疾患は、ポックスウイルス科、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、パルボウイルス科、パポバウイルス科、ヘパドナウイルス科、ピコルナウイルス科、カルシウイルス科、レオウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、アレナウイルス科、レトロウイルス科、ブンヤウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科、アルボウイルス、オンコウイルス、未分類ウイルス(肝炎ウイルス、アストロウイルス、およびトロウイルスから選択される)、バチルス、マイコバクテリウム、プラスモジウム、プリオン(例えばクロイッツフェルト−ヤコブ病を生じるものまたは変異体)、コレラ、シゲラ、大腸菌、サルモネラ、コリネバクテリウム、ボレリア、ヘモフィルス、オンコセルカ、ボルデテラ、ニューモコッカス、住血吸虫、クロストリジウム、クラミジア、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、カンピロバクター、レジオネラ、トキソプラスモス、リステリア、ビブリオ、ノカルジア、クロストリジウム、ナイセリア、カンジダ、トリコモナス、ガルドネレラ、トレポネマ、ヘモフィルス、クレブシエラ、エンテロバクター、プロテウス、シュードモナス、セラチア、レプトスピラ、表皮糸状菌属、小胞子菌属、白癬菌属、アクレモニウム、アスペルギルス、カンジダ、 フサリウム、スコプラリオプシス属、オニココラ、シタリジウム、ヒストプラズマ、クリプトコッカス、ブラストマイセス、コクシジオイデス、パラコクシジオイデス、接合菌、スポロトリクス、ボルデテラ、ブルセラ、パスツレラ、リケッチア、バルトネラ、エルジニア、ジアルジア、ロドコッカス、エルジニア、およびトキソプラズマからなる群から選択される動物またはヒトの病原体によって生じる使用。
【請求項23】
動物またはヒト患者の疾患またはアレルギーを予防および/または治療するための方法であって、前記患者に、請求項1〜22の何れか1項に記載の組成物の有効投与量を投与する方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記疾患は、感染性疾患、癌、アレルギーおよび自己免疫疾患からなる群から選択される方法。
【請求項25】
1以上の異種タンパク質化合物を表面ディスプレイする生物学的媒介物を含有してなる請求項1の医薬組成物を製造する方法であって:
a.下記を含有する混合物を調製することと;
i)1以上のバクテリア株の細胞、
ii)1以上の異種タンパク質化合物、および
iii)異種二官能性架橋剤
b.該混合物をインキュベートして、前記二官能性架橋剤がシッフ塩基を介して前記細胞のアミノ基に共有結合された前記生物学的媒介物を形成する工程と;
c.該生物学的媒介物を前記混合物から分離する工程と
を含んでなり、
前記細胞は、前記1以上のタンパク質化合物をコードするトランスジェニック核酸分子を含まない方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記二官能性架橋剤が、グルタルアルデヒド、ポリアゼチジンおよびパラホルムアルデヒドからならる群から選択される方法。
【請求項27】
請求項25または26に記載の方法であって、前記工程(b)における混合物が0℃以下の温度でインキュベートされる方法。
【請求項28】
請求項25または26に記載の方法であって、前記温度が、−1℃〜−30℃である方法。
【請求項29】
請求項25〜28の何れか1項に記載の方法であって、前記生物学的媒介物が、遺伝子修飾されていないバクテリア株または遺伝子修飾されたバクテリア株を含んでなる方法。
【請求項30】
請求項25〜29の何れか1項に記載の方法であって、前記バクテリア株は、ラクトコッカス、ラクトバチルス、ロイコノストック、N族ストレプトコッカス、エンテロコッカス、ビフィドバクテリウム、非病原性のスタフィロコッカス、および非病原性のバチルスからなる群から選択されるバクテリア属のメンバーである方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記バクテリア株は、ラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムからなる群から選択されるバクテリア属のメンバーである方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記バクテリア株は、ラクトバチルス・アセトトレランス、ラクトバチルス・アシジピシチス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アギリス、ラクトバチルス・アルギドゥス、ラクトバチルス・アリメタリウス、ラクトバチルス・アミロリティクス、ラクトバチルス・アミロフィルス、ラクトバチルス・アミロボルス、ラクトバチルス・アニマリス、ラクトバチルス・アリゾネンシス、ラクトバチルス・アビアリウス、ラクトバチルス・ビフェルメンタンス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・コエロホミニス、ラクトバチルス・コリノイデス、ラクトバチルス・コリニホルミス・亜種コリニホルミス、ラクトバチルス・コリニホルミス亜種トルケンス、ラクトバチルス・クリスパツス、ラクトバチルス・クルバツス、ラクトバチルス・サイプリカセイ、ラクトバチルス・デルブルエッキイ亜種ブルガリクス、ラクトバチルス・デルブルエッキイ亜種デルブルエッキイ、ラクトバチルス・デルブルエッキイ亜種ラクチス、ラクトバチルス・ドゥリアヌス、ラクトバチルス・エクイ、ラクトバチルス・ファルチミニス、ラクトバチルス・フェリントシェンシス、ラクトバチルス・フェルメントゥム、ラクトバチルス・フォルニカリリス、ラクトバチルス・フルクチボランス、ラクトバチルス・フルメンティ、ラクトバチルス・フクエンシス、ラクトバチルス・ガリナルム、ラクトバチルス・ガッセリ、ラクトバチルス・グラミニス、ラクトバチルス・ハムステリ、ラクトバチルス・ヘルベチクス、ラクトバチルス・ヘルベチクス亜種ジュグルチ、ラクトバチルス・ヘテロヒオッキイ、ラクトバチルス・ヒルガルディイ、ラクトバチルス・ホモヒオッキイ、ラクトバチルス・インテスチナリス、ラクトバチルス・ジャポニクス、ラクトバチルス・ジェンセニイ、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・ケフィリ、ラクトバチルス・キムチイ、ラクトバチルス・クンケエイ、ラクトバチルス・レイヒマンニイ、ラクトバチルス・レティバジ、ラクトバチルス・リンドネリ、ラクトバチルス・マレフェルメンタンス、ラクトバチルス・マリ、ラクトバチルス・マルタロミクス、ラクトバチルス・マニホチボランス、ラクトバチルス・ミンデンシス、ラクトバチルス・ムコサエ、ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・ナゲリイ、ラクトバチルス・オリス、ラクトバチルス・パニス、ラクトバチルス・パンテリ、ラクトバチルス・パラブフネリ、ラクトバチルス・パラカセイ亜種パラカセイ、ラクトバチルス・パラカセイ亜種シュードプランタルム、ラクトバチルス・パラカセイ亜種トレランス、ラクトバチルス・パラケフィリ、ラクトバチルス・パラリメンタリウス、ラクトバチルス・パラプランタルム、ラクトバチルス・ペントスス、ラクトバチルス・ペロレンス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ポンチス、ラクトバチルス・プシタチ、ラクトバチルス・リューテリ、ラクトバチルス・ラムノスス、ラクトバチルス・ルミニス、ラクトバチルス・サケイ、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・サリバリウス亜種サリチニウス、ラクトバチルス・サリバリウス亜種サリバリウス、ラクトバチルス・サンフランシセンシス、ラクトバチルス・シャルペアエ、ラクトバチルス・スエビクス、ラクトバチルス・テルモフィルス、ラクトバチルス・テルモトレランス、ラクトバチルス・ワクチノステルクス、ラクトバチルス・バギナリス、ラクトバチルス・ベルスモルデンシス、ラクトバチルス・ビツリヌス、ラクトバチルス・ベルミホルメ、ラクトバチルス・ゼアエ、ビフィドバクテリウム・アドレッセンチス、 ビフィドバクテリウム・アエロフィルム、ビフィドバクテリウム・アンギュラツム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・アステロイデス、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム、ビフィドバクテリウム・ボウム、ビフィドバクテリウム・ブレベ、 ビフィドバクテリウム・カテヌラツム、ビフィドバクテリウム・コエリヌム、ビフィドバクテリウム・コリネフォルメ、ビフィドバクテリウム・クニクリ、ビフィドバクテリウム・デンティウム、ビフィドバクテリウム・ガリクム、ビフィドバクテリウム・ガリナルム、ビフィドバクテリウム・インディクム、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・ロングム bv ロングム、ビフィドバクテリウム・ロングム bv インファンティス、ビフィドバクテリウム・ロングム bv スイス、ビフィドバクテリウム・マグヌム、ビフィドバクテリウム・メリチクム、ビフィドバクテリウム・ミニマム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラツム、ビフィドバクテリウム・シュードロングム、ビフィドバクテリウム・シュードロングム亜種グロボスム、ビフィドバクテリウム・シュードロングム亜種シュードロングム、ビフィドバクテリウム・プシクロアエロフィルム、ビフィドバクテリウム・プロルム、ビフィドバクテリウム・ルミナンティウム、ビフィドバクテリウム・サエキュラレ、ビフィドバクテリウム・スカルドビイ、ビフィドバクテリウム・スブティレ、ビフィドバクテリウム・テルモアシドフィルム、ビフィドバクテリウム・テルモアシドフィルム亜種スイス、ビフィドバクテリウム・テルモフィルム、ビフィドバクテリウム・ウリナリスから選択されるバクテリア種のメンバーである方法。
【請求項33】
請求項25〜32の何れか1項に記載の方法であって、前記1以上のタンパク質化合物は、動物もしくはヒトの病原体に由来する抗原、またはその変異体である方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、前記動物もしくはヒトの病原体が、ポックスウイルス科、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、パルボウイルス科、パポバウイルス科、ヘパドナウイルス科、ピコルナウイルス科、カルシウイルス科、レオウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、アレナウイルス科、レトロウイルス科、ブンヤウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科、アルボウイルス、オンコウイルス、未分類ウイルス(肝炎ウイルス、アストロウイルス、およびトロウイルスから選択される)、バチルス、マイコバクテリウム、プラスモジウム、プリオン(例えばクロイッツフェルト−ヤコブ病を生じるものまたは変異体)、コレラ、シゲラ、大腸菌、サルモネラ、コリネバクテリウム、ボレリア、ヘモフィルス、オンコセルカ、ボルデテラ、ニューモコッカス、住血吸虫、クロストリジウム、クラミジア、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、カンピロバクター、レジオネラ、トキソプラスモス、リステリア、ビブリオ、ノカルジア、クロストリジウム、ナイセリア、カンジダ、トリコモナス、ガルドネレラ、トレポネマ、ヘモフィルス、クレブシエラ、エンテロバクター、プロテウス、シュードモナス、セラチア、レプトスピラ、表皮糸状菌属、小胞子菌属、白癬菌属、アクレモニウム、アスペルギルス、カンジダ、 フサリウム、スコプラリオプシス属、オニココラ、シタリジウム、ヒストプラズマ、クリプトコッカス、ブラストマイセス、コクシジオイデス、パラコクシジオイデス、接合菌、スポロトリクス、ボルデテラ、ブルセラ、パスツレラ、リケッチア、バルトネラ、エルジニア、ジアルジア、ロドコッカス、エルジニア、およびトキソプラズマからなる群から選択される方法。
【請求項35】
請求項25〜34の何れか1項に記載の方法であって、前記1以上のタンパク質化合物が、抽出物、精製物、組換え体、突然変異体もしくはペプチド供給源、またはそれらの変種のアレルゲンである方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法であって、前記アレルゲンの供給源が、カバノキ、ネコ、杉樹、オリーブ樹、ブタクサ、他の雑草、刺す昆虫、蚊/蚋、ゴキブリ、ウシ、イヌ、塵ダニ、草、屋外カビ、屋内カビ、齧歯類、ウマ、ナッツ、ミルク、大豆、小麦、卵、甲殻類および魚からなる群から選択される方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法であって、前記アレルゲンの供給源が、カバノキ花粉(Bet v)、草花粉(Phl p、Lol p、Cyn dまたはSor h)、ハウスダストダニ(Der pまたはDer f)、ダニ(Eur m 、Blo t 、Gly m、Lep d)、ブタクサ花粉(Amb a)、杉樹花粉(Cry j)、ネコ(Fel d)、スズメバチ(Ves vまたはDol m)、ミツバチ(Api m)およびゴキブリ(Bla gおよびPer a)からなる群から選択される法。
【請求項38】
請求項35に記載の方法であって、前記アレルゲンが、Betv1、Betv2、Phl p1もしくはPhl 5、Lol p1、Lol p5、Cyn d1、Sor h1、Der p1、Der p2、Der f1、Der f2、Eur m1、Blo t1、Gly m1、Lep d1、Amb a1、Cry j1、Fel d1、Ves v1、2または5、Dol m1、Dol m2、Dol m5、Api m1、Bla g1、およびPer a1からなる群から選択されるタンパク質またはペプチドである方法。
【請求項39】
請求項25〜32の何れか1項に記載の方法であって、前記1以上のタンパク質化合物が、動物またはヒトの癌抗原またはその変種である方法。
【請求項40】
請求項25〜34の何れか1項に記載の方法であって、前記1以上のタンパク質化合物が、動物またはヒトを起源とする自己抗原またはその変異体である方法。
【請求項41】
請求項25〜40の何れか1項に記載の方法であって、前記混合物が、更にスペーサー化合物を含有する方法。
【請求項42】
請求項37に記載の方法であって、前記スペーサーがキトサンである方法。
【請求項43】
請求項23〜38の何れか1項に記載の方法であって、前記結合されたタンパク質化合物の細胞当りの分子数が1〜約100,000の範囲である方法。
【請求項44】
請求項23〜38の何れか1項に記載の方法であって、前記結合されたタンパク質化合物の細胞当りの分子数が1〜約10,000の範囲である方法
【請求項45】
請求項23〜40の何れか1項に記載の方法であって、更に、前記生物学的媒介物を封入する工程を含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−523116(P2008−523116A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545837(P2007−545837)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000792
【国際公開番号】WO2006/063592
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(503055934)
【Fターム(参考)】