説明

疎水基で官能基化されたコポリヒドロキシアルキルグルタミン、および特に治療におけるその使用

【課題】本発明は、改質ポリアミノ酸に基づき、および活性主成分(AP)の可送達化に使用することができる新規の生分解性材料に関する。本発明はまた、前記ポリアミノ酸に基づく新規の薬剤用、化粧品用、食事療法用または植物検疫用組成物にも関する。本発明の目的は、活性主成分の可送達化に使用することができ、および前記分野で必要とされるすべての仕様、すなわち、生体適合性、生分解性および多くの活性主成分と容易に会合する、または前記成分を可溶化し同成分を生体内で放出する能力を最適に満たすことができる新規のポリマー原材料を提供することである。
【解決手段】前記目的は、グルタミン単位と、任意選択でグルタメート単位とを含み、および炭素原子を8〜30個含む疎水基を有する新規のコポリヒドロキシアルキルグルタミンにより実現される。前記コポリヒドロキシアルキルグルタミンは両親媒性であり、活性主成分の可送達化用の粒子に容易にまた経済的に変形することができ、それにより前記粒子は安定な水性コロイド懸濁液を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に活性主成分(AP)の可送達化(ベクトル化)に有用なコポリアミノ酸に基づく新規の生分解性材料に関する。
【0002】
本発明はまた、これらの改質ポリアミノ酸に基づく新規の薬剤用、化粧品用、誘電体用または植物保護用組成物にも関する。これらの組成物は、APの可送達化を可能にし、好ましくはエマルション、ミセル、粒子、ゲル、インプラントまたは被膜の形であるタイプの組成物でよい。
【背景技術】
【0003】
検討中のAPは、有利には、人体または動物体に経口投与、非経口投与、経鼻投与、膣内投与、眼球投与、皮下投与、静脈投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、脳内投与、口腔投与等することができる生物活性化合物である。
【0004】
本発明がより詳細に関連するAPは、これらに限らないが、タンパク質類、糖タンパク質類、ペプチド類、多糖類、リポ糖類、オリゴヌクレオチド類、ポリヌクレオチド類および有機分子である。しかしながら、これらのAPは、化粧製品、または除草剤、殺虫剤、殺菌剤などの植物保護製品でもよい。
【0005】
活性主成分、特に医薬活性主成分の可送達化の分野では、多くの場合、
・活性主成分がその作用部位に到達するまで、分解(加水分解、その場沈殿、酵素消化等)から活性主成分を保護する、
・および/または定められた期間にわたって治療レベルが維持されるように活性主成分の放出速度を制御する、
・および/または活性主成分を(保護しながら)作用部位まで運搬する必要がある。
【0006】
これらの目的のために、いくつかのタイプのポリマーが研究されてきており、一部のポリマーは市販もされている。言及することができる例には、ポリ乳酸、ポリ乳酸−グリコール酸、ポリオキシエチレン−オキシプロピレン、ポリアミノ酸または多糖型のポリマーが含まれる。これらのポリマーは、例えば、バルクインプラント、微粒子、ナノ粒子、ベシクル、ミセルまたはゲルを作製するための出発原料を構成する。これらのポリマーは、このような系の作製に適するべきであると共に、生体適合性で、毒性がなく、非免疫原性で、および経済的であるべきであり、また人体から容易に取り除くことができるおよび/または生分解性となることができるべきである。この最後の態様に関しては、人体内での生分解により無毒性の生成物が生成されることがさらに不可欠である。
【0007】
会合性ポリマーの開発においてやはり重要である別の態様は、その水溶性である。大量のポリマーを溶解させる可能性により、所望の放出プロファイルに適したポリマー/活性主成分比を提供することが可能となる。
【0008】
AP可送達化系を調製するための出発材料として使用されるポリマーに関する先行技術の例として、様々な特許または特許出願または科学論文について以下に述べる。
【0009】
米国特許第4652441号(特許文献1)には、ホルモンLH−RHをカプセル化するポリラクチドマイクロカプセルが記載されている。これらのマイクロカプセルは、ホルモンと前記ホルモン固定する物質(ゼラチン)とを含む内側水層と、ポリラクチドの油層と、また外側水層(ポリビニルアルコール)とを含む水/油/水エマルションを調製することによって生成される。APの放出は、皮下注射の後2週間よりも長い期間にわたって行うことができる。
【0010】
米国特許第6153193号(特許文献2)には、アドリアマイシンなどの抗癌剤の可送達化用の両親媒性ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシエチレン)ミセルに基づく組成物が記載されている。
【0011】
Akiyoshiら(J.Controlled Release 1998、54、313〜320;非特許文献1)には、その上にコレステロールをグラフト化することによって疎水性となり、および水中でナノ粒子を形成するプルランが記載されている。インスリンと可逆的に錯体を形成することができるこれらのナノ粒子は、安定なコロイド懸濁液を形成する。
【0012】
米国特許第4351337号(特許文献3)には、ロイシンおよびグルタメートに基づく両親媒性コポリアミノ酸が記載されており、これらの両親媒性コポリアミノ酸は、活性主成分の制御放出用にインプラントまたは微粒子の形で使用することができる。これらの活性主成分の放出は、ポリマーの分解速度によっては非常に長い期間にわたって行うことができる。
【0013】
米国特許第4888398号(特許文献4)には、ポリグルタメートまたはポリアスパルテートと、任意選択でポイロイシンとに基づく、アルキルオキシカルボニルメチル型の側鎖基がポリアミノ酸鎖上にランダムに配列されているポリマーが記載されている。側基、例えば、メトキシカルボニルメチルでグラフト化されたこれらのポリアミノ酸は、持続放出APを含む生分解性インプラントの形で使用することができる。
【0014】
米国特許第5904936号(特許文献5)には、ポリロイシン−ポリグルタメートブロックポリマーから得られるナノ粒子が記載されている。これらのナノ粒子は、安定なコロイド懸濁液を形成することができ、また生物活性タンパク質を変性させることなくそれら生物活性タンパク質と自発的に結合できる。次いで前記タンパク質を、長期間にわたって、制御して生体内で放出することができる。
【0015】
米国特許第5449513号(特許文献6)には、ポリオキシエチレンブロックおよびポリアミノ酸ブロック、例えば、ポリ(ベータ−ベンジル L−アスパルテート)を含む両親媒性ブロックコポリマーが記載されている。これらのポリオキシエチレン−ポリベンジルアスパルテートポリマーは、アドリアマイシンやインドメタシンなどの疎水性活性分子をカプセル化することができるミセルを形成する。
【0016】
特許出願国際公開第99/61512号(特許文献7)には、疎水基(ポリリシンまたはオルニチンと結合しているパルミチン酸)および親水基(ポリオキシエチレン)で官能化されたポリリシンおよびポリオルニチンが記載されている。これらのポリマー、例えば、ポリオキシエチレンおよびパルミトイル鎖でグラフト化されたポリリシンは、コレステロールの存在下で、ドキソルビシンまたはDNAをカプセル化することができるベシクルを形成する。これらポリリシンをベースとするポリマーは、生理的媒体中でカチオン性である。
【0017】
本出願人による米国特許第6630171号(特許文献8)には、安定なコロイド懸濁液を形成することができ、また生物活性タンパク質を変性させることなくそれら生物活性タンパク質と自発的に結合できるポリ(グルタミン酸ナトリウム)−ポリ(グルタミン酸メチル、エチル、ヘキサデシルまたはドデシル)ブロックまたはランダムポリマーが記載されている。次いでこれらのタンパク質を、長期間にわたって、制御して生体内で放出することができる。これらの両親媒性線状コポリアミノ酸は、疎水性アルキル側鎖の存在によって改質される。これらのアルキル基は、エステル官能基を介してポリマー上に共有結合的にグラフト化される。これらのポリマーは、生理的媒体中でアニオン性である。
【0018】
この同じ分野において、関連する概念のポリグルタメートをベースとするポリマー(アニオン性)が、本出願人によりいくつかの特許出願に記載されている。
【0019】
特許出願国際公開第03/104303号(特許文献9)には、アルファトコフェロールで官能化されたアニオン性ポリアミノ酸が記載されている。
【0020】
特許出願国際公開第2004/013206号(特許文献10)には、疎水基を含むアニオン性ポリアミノ酸であって、これらの基がアミド官能基を2つ含む結合基を介して、より具体的にはリシンまたはオルニチン型のスペーサを介してポリマーと結合していることを特徴とするアニオン性ポリアミノ酸が記載されている。
【0021】
特許出願国際公開第2004/060968号(特許文献11)には、ロイシンおよび/またはイソロイシンおよび/またはバリンおよび/またはフェニルアラニンに基づく少なくとも1つのオリゴアミノ酸基で官能化されたポリアミノ酸が記載されている。
【0022】
特許出願国際公開第87/03891号(特許文献12)には、枝分かれしたまたは星型の線状両親媒性ポリマーが記載されており、それらポリマーの末端にのみ少なくとも2つの疎水基が結合している。前記特許出願は、前記特許の実施例のすべてからわかるように、基本的にはポリエチレングリコールに基づく中性の親水性ポリマーに関する。しかしながら、このタイプのポリマーは生分解性ではなく、このことは大きな欠点となる。
【0023】
特許出願国際公開第02/098951号(特許文献13)および国際公開第02/098952号(特許文献14)には、ポリマーの一方の末端に疎水基を1つまたは2つ有するポリアルキルグルタミンが記載されている。これらのポリマーは、リポソームを形成することができ、また水溶性小分子(活性主成分)をカプセル化することができる。
【0024】
特許出願国際公開第03/002096号(特許文献15)には、ポリマーの一方の末端にポリエチレングリコール鎖、および側鎖疎水基の両方を含むポリヒドロキシエチルアスパルトアミドが記載されている。これらのポリマーはナノ粒子を形成することができ、また活性主成分をカプセル化することができる。
【0025】
特許出願国際公開第02/28521号(特許文献16)には、活性主成分(AP)を可送達化(VP)するための生体適合性粒子の懸濁液が記載されている。これらのVPは、中性の親水性ポリアミノ酸(polyNIAA)/中性の疎水性ポリアミノ酸(polyNOAA)ジブロックコポリマー、例えば、ポリ[(ロイシン)−ブロック−(グルタミン−N−ヒドロキシエチル)]に基づいている。これらのpolyNIAA/polyNOAA粒子は、コロイド懸濁液中、溶解されていない形で少なくとも1つのAPを組み合わせることができ、また特に生体内で少なくとも1つのAPを持続的におよび/または遅延して放出することができる。この発明は、VPが由来する粉体にも関し、またこの粉体の調製およびこのpolyNIAA/polyNOAAをベースとするVPの懸濁液の調製にも関する。これら新規のVPは、自発的に、また界面活性剤または有機溶媒の助けを借りずに安定な水性懸濁液を形成する。この発明は、乾燥状態にあるVP、VPを調製するための方法、また活性主成分と組み合わせたこれらのVPを含む薬剤用組成物(乾燥状態または懸濁状態にある)にも関する。
【0026】
したがって、医薬活性主成分の可送達化用に非常多くの技術的解決法が先行技術において開発され提案されているが、これらの要件すべてに対する解決策を得ることは困難であり、依然として改善されていない。より具体的には、本発明は、活性主成分と可逆的に結合できるコロイド状可送達化ナノ粒子または微粒子に変換することができる公知の生分解性ポリアミノ酸に関する。
【特許文献1】米国特許第4652441号
【特許文献2】米国特許第6153193号
【特許文献3】米国特許第4351337号
【特許文献4】米国特許第4888398号
【特許文献5】米国特許第5904936号
【特許文献6】米国特許第5449513号
【特許文献7】特許出願国際公開第99/61512号
【特許文献8】米国特許第6630171号
【特許文献9】特許出願国際公開第03/104303号
【特許文献10】特許出願国際公開第2004/013206号
【特許文献11】特許出願国際公開第2004/060968号
【特許文献12】特許出願国際公開第87/03891号
【特許文献13】特許出願国際公開第02/098951号
【特許文献14】国際公開第02/098952号
【特許文献15】特許出願国際公開第03/002096号
【特許文献16】特許出願国際公開第02/28521号
【非特許文献1】Akiyoshiら、J.Controlled Release 1998、54、313〜320
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
この状況において、本発明の本質的な目的の1つは、広範囲のpHにわたって可溶性である、新規の線状または枝分かれした基本的に中性の両親媒性コポリアミノ酸を提供することである。これらのポリマーは、上記特許または特許出願に記載されているポリマーと比較すると、治療用タンパク質などの活性主成分の可送達化の点で向上を示す。
【0028】
本発明の別の本質的な目的は、これらのポリマーがAPの可送達化に使用することが可能であるべきであること、およびこれらのポリマーにより仕様事項のすべて、すなわち、特に、
・能力:
・安定な水性コロイド懸濁液を容易にまた経済的に形成する能力、
・多くの活性主成分と容易に結合する能力、および
・これらの活性主成分を生体内で放出する能力、
・生体適合性、
・生分解性、
・加水分解に対する安定性
が最適に満たされることが可能となるべきであることである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
中でもこの目的は、本発明によって実現される。本発明はまず、複数の側鎖で同一または異なる疎水基(HG)を含むコポリヒドロキシアルキルグルタミンに関する。
【0030】
本発明の目的としては、用語「複数」は、コポリヒドロキシアルキルグルタミンが1分子当たり平均して少なくとも2つの側鎖HGを含むことを意味する。本発明に従って、このコポリヒドロキシアルキルグルタミンが、これらの側鎖HGに加えて、コポリマー鎖の末端の少なくとも1つに付着しているHGを含むことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の好ましい一実施形態によれば、このコポリヒドロキシアルキルグルタミンは、コポリマー鎖当たり平均して少なくとも3つの疎水基(HG)を含む。
【0032】
このコポリヒドロキシアルキルグルタミンは、ヒドロキシ−アルキルアミン基も有する。これらのヒドロキシアルキルアミン基は、好ましくはアミン結合を介してコポリマーと結合している。
【0033】
本出願人は、その評価に対して、複数の疎水基で官能化され、安定なコロイド系を形成することができる「基本的に中性の」ポリヒドロキシアルキルグルタミンをベースとするコポリマーの新規の群を開発した。コロイドの表面上のアニオン電荷数を修正する能力により、これらコポリマーのタンパク質および/または生細胞との相互作用を修正することが特に可能となり、したがってこれらポリマーのバイオアベイラビリティ(bioavailability)を変更することが可能となる(例えば、Furumotoらによる論文、J.Controlled Release 2004、97、133〜141を参照のこと)。
【0034】
これらの新規のポリマーは、タンパク質類の可送達化に特に適していることがわかっている。さらに、これらのポリマーは、酵素の存在下で、毒性のない異化代謝産物/代謝産物(アミノ酸)に容易に分解される。
【0035】
本発明の目的としては、また本明細書を通じて、1つまたは複数の活性主成分とコポリヒドロキシアルキルグルタミンとの関係を修飾するために使用する用語「会合(association)」および「会合させる(associate)」は、活性主成分が特に疎水性相互作用を介してコポリヒドロキシアルキルグルタミンと結合し、および/またはコポリヒドロキシアルキルグルタミンによってカプセル化されていることを特に意味する。
【0036】
コポリヒドロキシアルキルグルタミンのグルタメート単位を官能化するために使用することができるヒドロキシアルキルアミン基は、同一または異なるもので、例えば以下の基、2−ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、2,3−ジ−ヒドロキシプロピルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび6−ヒドロキシヘキシルアミンから選択される。
【0037】
有利には、疎水基HGの少なくとも1つが、コポリグルタメート鎖(例えば、骨格コポリグルタメート主鎖)に疎水基HGを結合するためのスペーサ結合基(または単位)(「スペーサ」)を少なくとも1つ含む疎水性グラフトに含まれる。この結合基は、例えば、少なくとも1つの直接共有結合および/または少なくとも1つのアミド結合および/または少なくとも1つのエステル結合を含むことができる。例えば、この結合基は、コポリグルタメートの構成単量体単位以外の「アミノ酸」単位、アミノアルコール誘導体、ポリアミン誘導体(例えば、ジアミン類)、ポリオール誘導体(例えば、ジオール類)およびヒドロキシ酸誘導体を特に含む群に属するタイプの結合基でよい。
【0038】
これらHGのコポリグルタメートまたはポリアルキルグルタミン鎖へのグラフト化は、コポリグルタメートまたはコポリヒドロキシアルキルグルタミン鎖に結合することができるHG前駆体を使用することによって行うことができる。
【0039】
これらHG前駆体は、実際には、アルコール類およびアミン類を含む群からこれに限定されることなく選択される。というのも、これらの化合物は、当業者が容易に官能化することができるからである。HGのグラフト化は、本発明による改質ポリアミノ酸を生成する方法についての説明においてより詳細に以下で説明する。
【0040】
好ましい一特性によれば、疎水性グラフトの疎水基HGは炭素原子を8〜30個含む。
【0041】
これらの疎水基HGは、
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子を場合によっては含むC8〜C30の直鎖または分岐アルキル類
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子を場合によっては含むC8〜C30のアルキルアリール類またはアリールアルキル類、および
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子を場合によっては含むC8〜C30の(多)環状物質
を含む群から有利に、また賢明に選択される。
【0042】
HGと共に疎水性グラフトを形成する結合基は、二価、三価または四価でよい(または五価以上であってもよい)。二価の結合基の場合、疎水性グラフトはHG基を1つだけ含み、一方三価の結合基は、疎水性グラフトに二分性を与える、すなわちグラフトが2本のHGの「脚」を有する。言及することができる三価の結合基の例には、とりわけ、「アミノ酸」単位、例えば「グルタミン酸」、またはポリオール残基、例えばグリセロールが含まれる。したがって、二分HGを含む疎水性グラフトの有利ではあるが非限定的な例は、ジアルキルグリセロール類およびジアルキルグルタメートである。
【0043】
これらの疎水基HGは、例えば、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロールまたはコレステロールを含む群から選択される基から誘導することができる。
【0044】
好ましくは、本発明によるコポリグルタメートの骨格は、アルファ−L−グルタメート単位および/またはアルファ−L−グルタミック単位を含む。
【0045】
さらにより好ましくは、本発明によるコポリヒドロキシアルキルグルタメートは、以下の一般式(I)の1つに対応する。
【0046】
【化1】

式中、
・Aは独立して、
−RがH、C2〜C10の直鎖アルキルまたはC3〜C10の分岐アルキル、またはベンジルを示す基NHR
−窒素と、それぞれNHRおよびORの定義に対応するアミンまたはアルコールで任意選択で改質された酸官能基とを介して結合している末端アミノ酸単位を示し、
・Bは、以下の基、−O−、−NH−、−N−(C1〜C5)アルキル−、アミノ酸残基(好ましくは、天然アミノ酸の)、ジオール、トリオール、ジアミン、トリアミン、アミノアルコールまたは炭素原子を1〜6個含むヒドロキシ酸から好ましくは選択される二価、三価または四価の結合基であり、
・Cは、モノヒドロキシ、ジヒドロキシまたはトリヒドロキシ(C1〜C6)アルキル基、好ましくはヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルまたはトリヒドロキシメチルメタンであり、
・Dは、H、C2〜C10の直鎖アルキルまたはC3〜C10の分岐アシル基、またはピログルタメートであり、
・疎水基HGは互いに独立して、
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)を場合によっては含むC8〜C30の直鎖または分岐アルキル類、
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)を場合によっては含むC8〜C30のアルキルアリール類またはアリールアルキル類、
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)を場合によっては含むC8〜C30の(多)環状物質から選択される基を示し、
・Rは、H、または
−ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムを含む部分群から有利に選択される金属カチオン類、
−・アミンをベースとするカチオン類、
・オリゴアミンをベースとするカチオン類、
・ポリアミンをベースとするカチオン類(ポリエチレンイミンが特に好ましい)、
・リシンまたはアルギニンをベースとするカチオン類を含むクラスから有利に選択されるアミノ酸をベースとするカチオン類を含む部分群から有利に選択される有機カチオン、
−またはポリリシンまたはオリゴリシンを含む部分群から有利に選択されるカチオン性ポリアミノ酸類を含む群から好ましくは選択されるカチオン種を示し、
・m、nおよびqは自然数であり、
・(m)/(m+q+n)は、疎水基HGのグラフト化のモル度と定義され、各コポリマー鎖は平均して少なくとも3つの疎水性グラフトを含むという条件で0.5から90モル%までの範囲であり、
・(m+q+n)は10〜1000、好ましくは30〜500の範囲であり、
・(q)/(m+q+n)は、0〜60モル%の範囲であり、
・pは1〜3の範囲に及ぶ整数である。
【0047】
好ましくは、疎水基HGはランダムに分布している。
【0048】
本発明によるコポリヒドロキシアルキルグルタミンの疎水性単位によるグラフト化のモル度は、各ポリマー鎖が平均して少なくとも3つの疎水性グラフトを含むという条件で2%〜100%、好ましくは5%〜50%であることがさらに好ましい。
【0049】
本発明によるコポリヒドロキシアルキルグルタミンの比率(q)/(m+q+n)は、コポリヒドロキシアルキルグルタミンが0〜約60モル%のカルボン酸官能基またはカルボキシレート官能基を含むことができることを意味する。
【0050】
本発明の別の注目に値する特性によれば、本発明によるポリマーは、2000〜200000g/モル、好ましくは5000〜100000g/モルのモル質量を有する。
【0051】
一変形形態では、本発明によるコポリヒドロキシアルキルグルタミンが、グルタメート単位と結合しているポリアルキレン(好ましくはエチレン)グリコール型のグラフトを少なくとも1つ有する。
【0052】
当然ながら、本発明は、上で定義したように改質したポリアミノ酸の混合物も網羅する。
【0053】
極めて注目すべきことに、本発明のコポリヒドロキシアルキルグルタミンは、疎水基の性質およびコポリグルタメートの重合度に応じて、いくつかのやり方で使用することができる。本発明が対象とする様々な形の活性主成分のカプセル化用にポリマーを形成するための方法は、当業者に公知である。さらなる詳細については、例えば、これらの特に関連する選択された参考文献について言及することができる。
【0054】
「Microspheres,Microcapsules and Liposomes;vol 1.Preparation and chemical applications」、Ed.R.Arshady、Citus Books 1999。ISBN:0−9532187−1−6。
【0055】
「Sustained−Release Injectable Products」、Ed.J.SeniorおよびM.Radomsky、Interpharm Press 2000。ISBN:1−57491−101−5。
【0056】
「Colloidal Drug Delivery Systems」、Ed.J.Kreuter、Marcel Dekker,Inc.1994。ISBN:0−8247−9214−9。
【0057】
「Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology」、Ed.D.L.Wise,Marcel Dekker,Inc.2000。ISBN:0−8247−0369−3。
【0058】
これらのコポリヒドロキシアルキルグルタミンは、コポリマーの長さ(重合度)および疎水基の性質によっては、pH7.4(例えば、リン酸緩衝液により)の水に分散して、コポリマーの濃度に応じてコロイド溶液または懸濁液または構造または非構造ゲルを与えるため、極めて有利でもある。さらに、これらのコポリヒドロキシアルキルグルタミン(粒子状または他の形の)は、タンパク質類、ペプチド類、小分子などの活性主成分と容易にカプセル化するまたは結合することができる。好ましい形成作業は、本出願人による米国特許第6630171号に記載されている作業であり、コポリマーを水に分散させること、およびその溶液を活性主成分(AP)の存在下でインキュベートすることにある。次いで、本発明によるコポリヒドロキシアルキルグルタミンで構成される可送達化粒子のこのコロイド溶液を、0.2μmのフィルタを通してろ過し、その後患者に直接注射することができる。
【0059】
親水性/疎水性の比が低下すると、コポリマーは、APを会合させるまたはカプセル化することができる微粒子を形成することができる。この状況において、微粒子の形成は、APおよびポリマーを適切な有機溶解に共に溶解させ、次いでこの混合物を水中で沈殿させることによって行うことができる。次いで、これらの粒子をろ過によって回収し、その後経口投与に(ゲルカプセルの形で、圧縮しおよび/またはコーティングした形で、または油に分散させた形で)、または水に再分散させた後、非経口投与で使用することができる。
【0060】
一変形形態によれば、N−メチルピロリドンなどの生体適合性溶媒、エタノールまたはMyglyol(登録商標)などの適切な油にコポリマーを溶解させ、次いで筋肉注射するまたは皮下注射するまたは腫瘍に注射することができる。溶媒または油の拡散により、注射部位にコポリマーの沈殿がもたらされ、したがって堆積物が形成される。次いで、これらの堆積物を、コポリマーの拡散および/または浸食および/または加水分解もしくは酵素分解によって制御放出する。
【0061】
本発明によるポリマーの微粒子形が好ましいこととは関係なく、中性のまたはイオン化された形の本発明のコポリマーが水性または有機媒体中単独で、または液体、固体またゲル組成物でより一般的に使用される。
【0062】
コポリグルタミンをベースとするコポリマーは、pHおよび組成に応じて中性(COOHの形)またはイオン化された(COOアニオン)残存カルボキシリック官能基を含むことを理解されたい。水溶液では、対カチオンは、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどの金属カチオン、またはトリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ポリエチレンイミンなどのポリアミンなどの有機カチオンでよい。
【0063】
本発明のコポリマーは、例えば、当業者に公知の方法に従って得られる。まず、アルファ型のポリアミノ酸を得ることを思い起こす。最も一般的な技法は、例えば、論文「Biopolymers」、1976、15、1869に、またH.R.Kricheldorfによる書籍「alpha−Aminoacid−N−carboxy Anhydride and related Heterocycles」Springer Verlag(1987)に記載されているN−カルボキシアミノ酸(NCA)無水物の重合に基づく。このNCA誘導体は、好ましくはNCA−Glu−O−Bz(Bz=ベンジル)である。というのもこのベンジル基を、ホモポリマーのまたは疎水基の他の化学官能基に影響を及ぼすことなく選択的に加水分解することができるからである。
【0064】
本発明に従って使用することができる一定数のポリマー、例えば、可変質量のポリ(アルファ−L−グルタミック)、ポリ(アルファ−D−グルタミック)、ポリ(アルファ−D,L−グルタメート)およびポリ(ガンマ−L−グルタミック)型のポリマーが市販されている。
【0065】
好ましくは、本発明のコポリマーは、2つのルートに従って合成される。第1に、ヒドロキシアルキルアミン(例えば、エタノールアミン)基および基B−HG(例えば、ドデシルアミン)を、まずポリ(L−グルタミン酸)上に同時にまたは順次グラフト化する。この反応は、以下のスキームに従ってDMF、DMSO、NMPなどの溶媒中で行うことができる。
【0066】
【化2】

このポリ(L−グルタミン酸)は、フランス特許出願第2801226号に記載されているルートに従って合成することができる。基HB−HGがエステル官能基を介して結合されると、アルキルアミンをグラフト化する前にカルボジイミド基を用いた標準的なカップリング反応により基B−HGをグラフト化することがまずより容易になる。
【0067】
【化3】

第2に、まずポリ(アルキル−L−グルタミン)を、まず文献(例えば、国際公開第02/098951号を参照のこと)に記載されているルートに従って調製し、このポリマーのアルキルアミドのOH基に疎水基HGをグラフト化する。
【0068】
重合化学およびこれらの基のカップリング反応は標準的で、当業者には周知である(例えば、先に述べた本出願人による特許および特許出願を参照のこと)。これらの方法は、実施例の説明を通してより明確に理解されるであろう。
【0069】
重合度は、モノマーのモル比に対する開始剤のモル比と定義されることに留意されたい。
【0070】
ポリマーの酸官能基を用いる疎水性グラフトHGのカップリングは、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)など適切な溶媒中、カップリング剤としてのカルボジイミド、および任意選択で4−ジメチルアミノピリジンなどの触媒の存在下、ポリアミノ酸を反応させることによって容易に行われる。カルボジイミドは、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたはジイソプロピルカルボジイミドである。クロロギ酸エステルなどのカップリング試薬を、アミド結合の形成に使用することもできる(例えば、Bodanszkyによる書籍「Principles of Peptide Synthesis」Springer Verlag 1984を、例えばカップリング剤について参照のこと)。グラフト化度は、構成成分および試薬の化学量論または反応時間によって化学的に制御される。ポリマーのアミノ酸以外のアミノ酸で官能化された疎水性グラフトは、標準的なペプチドカップリングによって、または直接酸触媒縮合によって得られる。これらの技法は、当業者には周知である。
【0071】
その別の態様によれば、本発明は、上で定義したコポリヒドロキシアルキルグルタミンを少なくとも1つと、任意選択で活性主成分を少なくとも1つ含む薬剤用、化粧品用、誘電体用または植物保護用組成物を対象とする。この活性主成分は、治療用、化粧品用、誘電体用または植物保護用活性主成分でよい。
【0072】
本発明の有利な構成によれば、活性主成分を、1つ(または複数の)共有化学結合以外の1つまたは複数の結合で改質されたポリアミノ酸と組み合わせる。
【0073】
1つまたは複数のAPを本発明による改質ポリアミノ酸と組み合わせるための技法は、特に米国特許第6630171号に記載されている。これらの技法は、1つまたは複数の活性主成分APを含むまたはAPと組み合わせた可送達化粒子(VP)のコロイド懸濁液が得られるように、VPを含む液体媒体に少なくとも1つの活性主成分を組み込むことにある。VPがAPを捕捉することになるこの混入は以下のように行うことができる。
【0074】
・APを水溶液に溶解させ、その後、コロイド懸濁液の形で、または孤立したVP(lyophilizateまたは沈殿)の形でVPを添加する。
【0075】
・または、水など適切な溶媒に乾燥VPを分散させることによって任意選択であらかじめ調製したVP粒子のコロイド懸濁液に、APを溶液として、APだけを、または配合した形のAPを添加する。
【0076】
好ましくは、活性主成分は、タンパク質、糖タンパク質、1つまたは複数のポリアルキレングリコール鎖と結合しているタンパク質(好ましくはポリエチレングリコール(PEG):「タンパク質−PEGylated」)、多糖、リポ糖、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはペプチドである。
【0077】
一変形形態によれば、活性主成分は、疎水性、親水性または両親媒性の有機「小」分子である。
【0078】
本明細書の目的としては、「小」分子は、特に非タンパク質小分子である。
【0079】
本発明によるポリアミノ酸と組み合わせることができるAPの例として、(ナノまたはマイクロ)粒子の形であるかどうかにかかわらず、
・インスリン、インターフェロン、成長ホルモン、インターロイキン、エリスロポイエチン、サイトカインなどのタンパク質類、
・ロイプロリドやシクロスポリンなどのペプチド類、
・アントラサイクリン類、タキソイド類またはカンプトセシン類の群に属するものなどの小分子、
・およびこれらの混合物を言及することができる。
【0080】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、ゲル、溶液、懸濁液、エマルション、ミセル、ナノ粒子、微粒子、インプラント、粉末または被膜の形である。
【0081】
その特に好ましい形の1つによれば、活性主成分を含むまたは含まないこの組成物は、水相中におけるポリアミノ酸ミセルおよび/または微粒子および/またはナノ粒子の安定なコロイド懸濁液である。
【0082】
別の実施形態によれば、本発明の組成物は生体適合性溶媒中で溶液の形であり、皮下注射する、筋肉注射するまたは腫瘍に注射することができる。
【0083】
本発明による組成物は、薬剤用である場合、経口投与、非経口投与、経鼻投与、膣内投与、眼球投与、皮下投与、静脈投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、脳内投与または口腔投与することができる。
【0084】
この組成物が、生体適合性溶媒または溶媒混合物中で溶液の形であり、皮下注射する、筋肉注射するまたは腫瘍に注射することができることも想定することができる。
【0085】
別の実施形態によれば、この組成物は、pHおよび/または浸透圧を調整するために、および/または安定性(抗酸化)を向上させるために、および/または抗菌剤として賦形剤を任意選択で含むことができる。これらの賦形剤は、当業者には周知である(書籍、Injectable Drug Development、P.K.Guptaら、Interpharm Press、デンバー市、コロラド州、1999を参照のこと)。
【0086】
別の変形形態によれば、本発明による組成物は、注射部位に堆積物を形成することができるように調合される。この堆積物は、例えば、生体内に存在する生理的タンパク質によって少なくとも部分的にもたらされることがある。
【0087】
また本発明は、本発明によるポリアミノ酸および活性主成分を含む組成物であって、
・薬剤、特に、経口投与、経鼻投与、膣内投与、眼球投与、皮下投与、静脈投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与または脳内投与用の薬剤において、これらの薬剤の活性主成分が、場合によっては、特にタンパク質類、糖タンパク質類、1つまたは複数のポリアルキレングリコール鎖と結合しているタンパク質類{例えば、ポリエチレングリコール(PEG)であり、この場合「PEGylated」タンパク質と称される}、ペプチド類、多糖類、リポ糖類、オリゴヌクレオチド類、ポリヌクレオチド類、疎水性、親水性または両親媒性の有機小分子である薬剤、
・および/または栄養素、
・および/または化粧製品または植物保護製品の調製に使用することができる組成物も対象とする。
【0088】
そのさらに別の態様によれば、本発明は、
・薬剤、特に、経口投与、経鼻投与、膣内投与、眼球投与、皮下投与、静脈投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与または脳内投与用の薬剤において、これらの薬剤の活性主成分が、場合によっては、特にタンパク質類、糖タンパク質類、1つまたは複数のポリアルキレングリコール鎖と結合しているタンパク質類{例えば、ポリエチレングリコール(PEG)であり、この場合「PEGylated」タンパク質と称される}、ペプチド類、多糖類、リポ糖類、オリゴヌクレオチド類、ポリヌクレオチド類、疎水性、親水性または両親媒性の有機小分子である薬剤、
・および/または栄養素、
・および/または化粧製品または植物保護製品を調製する方法を対象とし、
この方法は、本質的に、上で定義した少なくとも1つのホモポリアミノ酸および/またはやはり上で定義した組成物を使用することにあることを特徴とする。
【0089】
本発明は、本質的に、本明細書中に記載されている組成物を、経口投与、非経口投与、経鼻投与、膣内投与、眼球投与、皮下投与、静脈投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、脳内投与または口腔投与することにある治療方法にも関する。
【0090】
本発明の特定の一変形形態によれば、この治療方法は、本質的に、生体適合性溶媒中で溶液の形である上述の組成物を用意し、次いで好ましくは注射部位に堆積物が形成されるようにこの組成物を皮下注射する、筋肉注射するまたは腫瘍に注射することにある。
【0091】
本発明のポリマーの合成、それらポリマーのAP可送達化系(安定な水性コロイド懸濁液)への変換、およびタンパク質と組み合わさって薬剤用組成物を形成するこのような系の能力の実証を説明する以下の実施例から、本発明がより明確に理解され、その利点および変形実施形態がより明らかになるであろう。
【実施例】
【0092】
<実施例1:ポリマー(1)、pHEG C12の合成>
【0093】
【化4】

指数および基:m=102、n=18、L=COC1123(ラウロイル)
重合度(DP)が120のポリ(グルタミン酸)5gを、250mlの三口丸底フラスコ中のDMF77mlに、80℃に加熱することによって溶解させる。−15℃まで冷却したこの溶液に、クロロギ酸イソブチル6.35gと、次いでN−メチルモルホリン5.33gとを添加する。この反応媒質を、0℃への温度上昇を可能にしながら15分間撹拌する。反応媒質を再び−15℃まで冷却し、その後、2−ラウリン酸アミノエチルのトシル塩のDMF溶液(25ml中2.58g)を添加する。この反応媒質を、0℃への温度上昇を可能にしながら30分間撹拌する。反応媒質を再び−15℃まで冷却し、その後、エタノールアミンを9.5g添加する。1.5時間かけて温度が室温まで上昇する。この後、反応媒質を水920ml中で希釈し、次いで5体積の塩水(0.9%NaCl)および8体積の水に対してダイアフィルトレーション(diafiltration)を行う。次いで、このポリマー溶液を凍結させ、凍結乾燥させる。ポリマー(2)が5.2g、すなわち68%の収率が得られる。TFA−dにおけるH NMRによって決定されるC12グラフトの百分率は、14.4%である。TFA−dにおけるH NMRによって決定されるヒドロキヒエチルグルタミンの百分率は、86.0%である。Mn(GPC NMPによって決定される)は、PMMA当量で22.7kg/モルである。
【0094】
<実施例2:ポリマー(2)、pHEG Tの合成>
【0095】
【化5】

指数および基:m=211、n=9、T=D,L−アルファ−トコフェロール(T)
合成アルファ−トコフェロール(国際公開第03/104303号に記載されている手順に従って得られる)で4モル%がランダムにグラフト化され、重合度(DP)が220のポリ(グルタミン酸)5gを、250mlの三口丸底フラスコ中のDMF77mlに、80℃に加熱することによって溶解させる。0℃まで冷却したこの溶液に、クロロギ酸イソブチル5.3mlと、N−メチルモルホリン4.5mlとを添加する。この反応媒質を15分間撹拌し、その後エタノールアミンを8.3ml添加する。0℃で5分間維持した温度が、その後室温まで上昇し、媒体を2時間撹拌する。この後、反応媒質を1NのHCl2mlで急冷し、次いで水600ml中で希釈し、その後、1体積の塩水(0.9%NaCl)および3体積の水に対して透析(1kDチューブ)を行う。次いで、このポリマー溶液を凍結させ、凍結乾燥させる。ポリマー(3)が6.1g、すなわち96%の収率が得られる。TFA−dにおけるH NMRによって決定されるトコフェロールの百分率は、4.5%である。TFA−dにおけるH NMRによって決定されるヒドロキヒエチルグルタミンの百分率は、95%である。Mn(GPC NMPによって決定される)は、PMMA当量で116kg/モルである。
【0096】
<実施例3:ポリマーC1、PHEG−ジステアリルアミンの合成>
比較ポリマーC1を特許出願国際公開第02/098952号の実施例4に従って合成した。このポリマーは、40個のポリヒドロキシエチルグルタミン単位で構成される鎖の末端にジステアリルアミン基を含む。
【0097】
<実施例4:インスリンとの組合せの研究>
pH7.4で1ミリリットル当たりポリマーを10mg含み、200IUのインスリン(7.4mg)を含む水溶液を調製する。この水溶液を室温で2時間インキュベートし、限外ろ過(100KDaで閾値、18℃、10000×Gで15分)によって会合インスリンから遊離インスリンを分離する。次いで、ろ過で回収した遊離インスリンを、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)によって分析し、会合インスリンの量を推定する。結果を以下の表1に示す。
【0098】
【表1】

これらの結果により、本発明のポリマーはインスリンを強く会合させて寸法が100KDaよりも大きいコロイド懸濁液を与えることができ、またインスリンとの会合度が非常に高いことが実証される。鎖の末端にジステアリル疎水基を有するポリマーC1は、より効率が悪い。これらのポリマーの会合能により、これらのポリマーが可送達化剤としての使用に適したものとなる。
【0099】
<実施例5:pHの関数としてポリマーの溶解度>
ポリマー2の溶解度を、参照ポリマー、すなわち特許出願国際公開第03/104303号に記載されているように合成した、約5モル%のアルファ−トコフェロールでグラフト化されたポリグルタミン酸ナトリウム(ポリマーC2)の溶解度と比較した。結果は以下のとおりである。
【0100】
【表2】

ポリマー2の溶解度は、広範囲のpHに及んでいるようである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖で同一または異なる疎水基(HG)を複数含むことを特徴とする、コポリヒドロキシアルキルグルタミン。
【請求項2】
コポリマー鎖当たり平均して少なくとも3つの疎水基(HG)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコポリヒドロキシアルキルグルタミン。
【請求項3】
同一または異なるヒドロキシアルキルアミン基を含み、好ましくは、以下の基:2−ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、2,3−ジヒドロキシプロピルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび6−ヒドロキシヘキシルアミンから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のコポリヒドロキシアルキルグルタミン。
【請求項4】
前記疎水基(HG)は炭素原子を8〜30個含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載のコポリヒドロキシアルキルグルタミン。
【請求項5】
前記疎水基HGは、
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよいC8〜C30の直鎖または分岐アルキル類と、
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよいC8〜C30のアルキルアリール類またはアリールアルキル類と、
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよいC8〜C30の(多)環状物質と
を含む群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載のコポリヒドロキシアルキルグルタミン。
【請求項6】
前記疎水基HGの少なくとも1つは、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロールまたはコレステロールを含む群から選択される前駆体より出発し、グラフト化によって得られることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載のコポリヒドロキシアルキルグルタミン。
【請求項7】
アルファ−L−グルタメート単位および/またはアルファ−L−グルタミック単位を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載のコポリヒドロキシアルキルグルタミン。
【請求項8】
以下の一般式(I)の1つに対応することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載のコポリヒドロキシアルキルグルタミン。
【化1】

(式中、
・Aは独立して、
−RがH、C2〜C10の直鎖またはC3〜C10の分岐アルキルまたはベンジルを示す基NHRと、
−窒素と、それぞれNHRおよびORの定義に対応するアミンまたはアルコールで改変されていてもよい酸官能基とを介して結合されている末端アミノ酸単位と
を示し;
・Bは、2価、3価または4価の結合基であり、好ましくは、以下の基:−O−、−NH−、−N−(C1〜C5)アルキル−、アミノ酸残基(好ましくは、天然アミノ酸の)、ジオール、トリオール、ジアミン、トリアミン、アミノアルコールまたは炭素原子を1〜6個含むヒドロキシ酸から選択され;
・Cは、モノ−、ジまたはトリヒドロキシ(C1〜C6)アルキル基であり、好ましくはヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルまたはトリヒドロキシメチルメタンであり;
・Dは、H、C2〜C10の直鎖またはC3〜C10の分岐アシル基またはピログルタメートであり;
・前記疎水基HGは、互いに独立して、
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくは、Oおよび/またはNおよび/またはS)を含んでもよい直鎖または分岐のC8〜C30のアルキル類、または
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくは、Oおよび/またはNおよび/またはS)を含んでもよいC8〜C30のアルキルアリール類またはアリールアルキル類、または
・少なくとも1つの不飽和および/または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくは、Oおよび/またはNおよび/またはS)を含んでもよいC8〜C30の(多)環状物質
から選択される基を示し;
・Rは、Hまたはカチオン種を示し、好ましくは、
−金属カチオン類と、有利には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムを含む補助群から選択され;
−有機カチオン類と、有利には、
・アミン系カチオン類と、
・オリゴアミン系カチオン類と、
・ポリアミン系カチオン類(ポリエチレンイミンが特に好ましい)と、
・アミノ酸系カチオン類と、有利には、リシンまたはアルギニン系カチオン類を含む類から選択される、
を含む補助群から選択され、
−または、カチオン性ポリアミノ酸類と、有利には、ポリリシンまたはオリゴリシンを含む補助群から選択され
を含む群から選択され;
・m、nおよびqは、正の整数であり;
・(m)/(m+q+n)は前記疎水基HGのグラフト化のモル度と定義され、各コポリマー鎖は平均して少なくとも3つの疎水性グラフトを含むという条件で0.5から90モル%までの範囲であり;
・(m+q+n)は10〜1000、好ましくは30〜500の範囲であり;
・(q)/(m+q+n)は、0〜60モル%の範囲であり;
・pは、1〜3の範囲である整数である。)
【請求項9】
前記疎水基HGがランダムに分布していることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載のコポリヒドロキシアルキルグルタミン。
【請求項10】
そのモル質量は2000〜200000g/モル、好ましくは5000〜100000g/モルであることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載のコポリヒドロキシアルキルグルタミン。
【請求項11】
グルタメート単位と結合しているポリアルキレン(好ましくは、エチレン)グリコール型のグラフトを少なくとも1つ有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載のコポリヒドロキシアルキルグルタミン。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載のコポリヒドロキシアルキルグルタミンを少なくとも1種類含む、薬剤用、化粧品用、誘電体用または植物保護用組成物。
【請求項13】
少なくとも1種類の活性主成分を含むことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記活性主成分は、1つ(または複数)の共有化学結合以外の1つまたは複数の結合を介して前記コポリヒドロキシアルキルグルタミンと組み合わせられていることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記活性主成分は、タンパク質、糖タンパク質、1つまたは複数のポリアルキレングリコール鎖と結合しているタンパク質、多糖、リポ糖、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはペプチドであることを特徴とする、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
前記活性主成分は、疎水性、親水性または両親媒性の有機小分子であることを特徴とする、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項17】
経口投与、非経口投与、経鼻投与、膣内投与、眼球投与、皮下投与、静脈投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、脳内投与または口腔投与することができることを特徴とする、請求項12ないし16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
ゲル、溶液、エマルション、ミセル、ナノ粒子、微粒子、粉末または被膜の形であることを特徴とする、請求項12ないし17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
水相中のコポリヒドロキシアルキルグルタミンのナノ粒子および/または微粒子および/またはミセルのコロイド懸濁液であることを特徴とする、請求項12ないし18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
生体適合性溶媒中で溶液の形であり、皮下注射する、筋肉注射するまたは腫瘍に注射することが可能であることを特徴とする、請求項12ないし19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
注射部位に堆積物を形成することができることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
薬剤、特に、経口投与、経鼻投与、膣内投与、眼球投与、皮下投与、静脈投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与または脳内投与用の薬剤において、これらの薬剤の活性主成分が、特にタンパク質類、糖タンパク質類、1つまたは複数のポリアルキレングリコール鎖と結合していてもよいタンパク質類、ペプチド類、多糖類、リポ糖類、オリゴヌクレオチド類、ポリヌクレオチド類、疎水性、親水性または両親媒性の有機小分子である薬剤;
および/または栄養素;
および/または化粧製品または植物保護製品を調製する方法であって;
本質的に、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の少なくとも1種類のコポリヒドロキシアルキルグルタミンおよび/または請求項12ないし21のいずれか一項に記載の組成物を使用することからなることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2008−528543(P2008−528543A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552626(P2007−552626)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050369
【国際公開番号】WO2006/079614
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(593125160)フラメル・テクノロジー (22)
【氏名又は名称原語表記】FLAMEL TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】