説明

疲労軽減機能付き自動車用シート

【課題】座者の局部的な押圧動作により、座者の血流を増加する体動促進手段が駆動中に、過度な横加速度が印加すると、体動促進手段を駆動停止させるよう構成する。
【解決手段】車両の右又は左横方向に加わる加速度を検出する横加速度センサー8と、横加速度センサー8により検出された加速度が所定値域にあるとき、体動促進手段6を駆動可能状態に保ち、該加速度が所定値域よりも過度値になったとき、体動促進手段6を一時駆動停止し、該加速度が過度値より所定値域に向けて降下したとき、体動促進手段6を駆動可能状態に戻す加速度の判別制御回路7をシートバック1の内部に付設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長時間の着座時における座者の血流を改善することから疲労軽減を図る疲労軽減機能付き自動車用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
既に、座者の第3腰椎を10mmより大きく20以下のストローク量で、連続的に3回以上7回以下の回数押圧及び解除する反復動作で、間欠的に5分以上10分以下の間隔で繰返し押圧及び解除する体動促進手段をシートバックの内部に備える疲労軽減機能付き自動車用シートが提案されている(特許文献1)。
【0003】
その体動促進手段は、上述した条件下で専ら座者の局部的な押圧動作を行うものとして備え付けられている。然し、運転者にあっては局部が体動促進手段で反復押圧されている状況下で、車両の横方向に加わる過度な加速度(以下、「横加速度」という。)が加わると、体動促進手段による反復押圧と共に、横加速度も作用することから、上体が不安定になって着座フィーリングが損なわれることが懸念される。
【0004】
従来、過度な横加速度に対応しては、座者の側方支持を高めるようサイドエアバックの形状,硬さ等を横加速度センサーで制御する姿勢保持手段を備える自動車用シートは知られている(特許文献2,3)。
【特許文献1】WO2007/094492公開公報
【特許文献2】特開平9−240399号公報
【特許文献3】特開平11−278129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、座者の局部的な押圧動作により、座者の血流を増加する体動促進手段が駆動中に、過度な横加速度が印加すると、体動促進手段を駆動停止させるよう制御する疲労軽減機能付き自動車用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1に係る発明は、車両の右又は左横方向に加わる加速度を検出する横加速度センサーと、横加速度センサーにより検出された加速度が所定値域にあるとき、体動促進手段を駆動可能状態に保ち、該加速度が所定値域よりも過度値になったとき、体動促進手段を一時駆動停止し、該加速度が過度値より所定値域に向けて降下したとき、体動促進手段を駆動可能状態に戻す加速度の判別制御回路をシートバックの内部に付設したことを特徴とする。
【0007】
本願の請求項2に係る発明は、横加速度センサーにより検出された加速度に基づいて車両の右又は左横方向に加わる加速度をいずれも電圧値の変動で判定する加速度の判別制御回路を備えたことを特徴とする。
【0008】
本願の請求項3に係る発明は、横加速度センサーを座者の第9胸椎部に相応させて配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願の請求項1に係る発明の疲労軽減機能付き自動車用シートによれば、座者の局部が体動促進手段で反復押圧されている状況下で、過度の横加速度が加わると、体動促進手段を一時駆動停止させることから、運転者にあっては上体の安定した着座フィーリングを保てる。また、体動促進手段と共に、シートバックの内部に備える横加速度センサーにより横加速度を検出するため、体動促進手段を簡素な制御システムで駆動制御することができる。
【0010】
本願の請求項2に係る発明の疲労軽減機能付き自動車用シートによれば、車両の右又は左横方向に加わる加速度をいずれも電圧値の変動で判定する加速度の判別制御回路を備えることから、車両の右又は左横方向に加わる加速度を個別に判別する必要がなく、体動促進手段を更に簡素な制御システムで駆動制御することができる。
【0011】
本願の請求項3に係る発明の疲労軽減機能付き自動車用シートによれば、横加速度検出手段を車両の右又は左横方向に加わる加速度に応じて傾き易い座者の第9胸椎部に相応させて配置することから、座者の挙動を精度よく検出するようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、疲労低減機構を組み付けたドライバーシートを示す。図中、符号1はシートバック、2はシートクッション、3は操作ハンドル、4は計器パネルを示す。このドライバーシートにおいては、座者の骨盤角度の変動量を検出する加速度センサー5a,5bと、座者を局部的に反復押圧する体動促進手段6がシートバック1の内部に備えられている。
【0013】
体動促進手段6は、気体の供給又は排気により膨張又は収縮可能な第3腰椎の反復押圧手段としてのエアバッグを有し、駆動制御ユニット7を介してエアポンプ6a,電磁弁6bをエアバッグに接続することにより構成されている。エアバッグは、バックパッドを介して座者の第3腰椎を反復押圧するよう座者の第3腰椎に相応させて配置されている。
【0014】
体動促進手段6は、駆動制御ユニット7を介して接続する横加速度センサー8でも駆動制御するよう構成されている。横加速度センサー8としては、横加速度の印加により、薄板に取り付けられた重りが移動し、このときの薄板の抵抗変化を検出することから電圧値として出力するものが備え付けられる。その横加速度センサー8は、座者の挙動を精度よく検出し得るよう、骨盤角度変動量検出用の加速度センサー5aと同じ座者の第9胸椎部に相応させてシートバック1の内部に配置されている。
【0015】
駆動制御ユニット7は、加速度センサー5a,5bによる骨盤角度の変動量を計算するプログラム回路と、長時間運転に伴う座者の体動による骨盤角度が模擬設定値に達したことを加速度センサー5a,5bで検知すると、加速度センサー5a,5bの検出値に基づく指令をシーケンサーに入力し、シーケンサーがエアポンプ6aを作動し、エアバッグに対する空気の供給,排出を電磁弁6bで制御する体動促進手段6の駆動制御回路を備えている。
【0016】
それと共に、横加速度センサー8により検出された加速度が所定値域にあるとき、角度センサー8よりの指令に応じて体動促進手段を駆動可能状態に保ち、体動促進手段の苦闘中に、横加速度が所定値域よりも過度値になったとき、体動促進手段を一時駆動停止し、横加速度が過度値より所定値域に向けて降下したとき、体動促進手段を駆動可能状態に戻す横加速度の判別制御回路を備えている。この横加速度の判別制御回路を含み、ユニット全体はバックフレームのサイド部に取り付けるようにできる。
【0017】
加速度の判別制御回路としては、図2,図3で示すように横加速度センサー8により検出された加速度に基づいて車両の右又は左横方向に加わる加速度をいずれも電圧値の変動で判定するものが備えられている。また、右加速度を+の電圧値とし、左加速度を−の電圧値として設定することから、車両の右又は左横方向に加わる加速度をいずれも判定可能なものが備えられている。
【0018】
例えば、右横加速度で説明すると、図2で示すように通常の加速度(Cvi)に応じた出力を電圧値2.4〜2.6Vの所定値域に設定した場合、電圧値が2.4〜2.6Vの所定値域にあるときは体動促進手段6を駆動可能状態に保ち、電圧値が2.6Vを越えたら体動促進手段6を一時駆動停止し、電圧値が2.55Vに下がったときは体動促進手段6を駆動可能状態に戻すよう体動促進手段6を制御可能に設定できる。
【0019】
右横加速,左加速度は、図3で示すように電圧値2.5Vを0加速度(±0G)とし、電圧値3.0Vを+1.0加速度(右1.0G)とし、電圧値2.0Vを−1.0加速度(左1.0G)として設定することから、横加速度センサー8よりの出力による電圧の大小に基づいて判定するようにできる。この横加速度センサー8よりの検出情報は、加速度の判別制御回路にリアルタイムで取り込まれている。
【0020】
図2並びに図4を参照し、上述した駆動制御システムをフローチャートに基づいて説明すると、作動スイッチをONすると、加速度センサー5a,5bが角度測定を開始すると同時に、横加速度センサー8が横加速度(Cvi)測定を開始する。加速度センサー5a,5bによる角度測定に応じては、骨盤角度(Pi)を計算し、該骨盤角度(Pi)を300sec(5min)間取り込み、300sec(5min)間取り込んだ骨盤角度(Pi)に基づいて骨盤角度の変動量(Pm)を計算する。
【0021】
骨盤角度の変動量(Pm)が所定値に達しているか否かを判別し、例えば設定値=10とすると、レベル10に達しない(Pm<10)ときは、骨盤角度の変動量(Pm)を300sec毎に加算し、蓄積疲労データとして骨盤角度の計算にフィードバックする。
【0022】
一方、骨盤角度の変動量(Pm)がレベル10に達した(10≦Pm)と判定したときは、当該指令を横加速度の測定側に送信し、現時点での横加速度が所定値域にあるか否かを判別した上、体動促進手段6を駆動乃至は駆動停止するか否かの決定を行う。
【0023】
当該時点での右横加速度、並びに、左横加速度が所定値域にあると判定したときは、体動促進手段6のエアポンプ6a,電磁弁6bを繰返し作動させてエアバッグによる体動モードに設定する。この体動モードの所定時間経過後、当該骨盤角度の変動量(Pm)をリセットさせて初期骨盤角度の計算に戻る。
【0024】
これに対し、エアバッグによる体動モード中に、右横加速度または左横加速度が所定値域を越えたと判定したときは、エアバッグによる体動モードを一旦停止する。図示のチャートでは、まず、右横加速度が所定値域を越えている(Cvi<A)と判定したときは、エアバッグによる体動モードを直ちに一旦停止する。その右横加速度が過度の電圧値Aから所定値域に向う電圧値Bに下降(Cvi<B<A)したならば、エアバッグによる体動モードを再開可能に設定する。
【0025】
右横加速度が所定値域にあっても、左横加速度が所定値域を越えている(Cvi<C)と判定したときは、上述したと同様に、エアバッグによる体動モードを直ちに一旦停止し、当該左横加速度が過度の電圧値Cから所定値域に向う電圧値Dに下降(Cvi<D<C)したならば、エアバッグによる体動モードを再開可能に設定する。なお、上述した右,左の順は左,右のいずれであってもよい。
【0026】
このように構成する疲労低減機能付き自動車用シートでは、座者の局部がエアバッグによる体動モードで反復押圧されている状況下にあって、過度の横加速度が加わると、エアバッグによる体動モードを一時駆動停止させることから、運転者にあっては上体の安定した着座フィーリングを保てる。
【0027】
上述した実施の形態においては、座者の疲労度として骨盤角度の変動量を検出する加速度センサー5a,5bを備える場合で説明したが、運転者のハンドルを握る手に生ずる汗により座者の疲労度を測定するような疲労度の検出手段としては適宜手段に代替設計するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る疲労低減機能付き自動車用シートを示す説明図である。
【図2】図1の自動車用シートに備える体動促進手段の制御に適用する横加速度の電圧値による判別システムを説明するグラフである。
【図3】図2と同様に、右又は左横加速度の電圧値による判別システムを説明するグラフである。
【図4】図1の自動車用シートに備える体動促進手段の駆動制御システムを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 シートバック
6 体動促進手段
7 体動促進手段の駆動制御ユニット
8 横加速度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座者の局部的な押圧動作により、座者の血流を増加する体動促進手段をシートバックの内部に備える疲労軽減機能付き自動車用シートにおいて、
車両の右又は左横方向に加わる加速度を検出する横加速度センサーと、横加速度センサーにより検出された加速度が所定値域にあるとき、体動促進手段を駆動可能状態に保ち、該加速度が所定値域よりも過度値になったとき、体動促進手段を一時駆動停止し、該加速度が過度値より所定値域に向けて降下したとき、体動促進手段を駆動可能状態に戻す加速度の判別制御回路をシートバックの内部に付設したことを特徴とする疲労軽減機能付き自動車用シート。
【請求項2】
横加速度センサーにより検出された加速度に基づいて車両の右又は左横方向に加わる加速度をいずれも電圧値の変動で判定する加速度の判別制御回路を備えたことを特徴とする請求項1に記載の疲労軽減機能付き自動車用シート。
【請求項3】
横加速度センサーを座者の第9胸椎部に相応させて配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の疲労軽減機能付き自動車用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−119181(P2009−119181A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299194(P2007−299194)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】