説明

疾患の診断および予測のためのトリメチルアミン含有化合物

本発明は、対象、特に、ヒト対象が、心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)、またはNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)等の疾患を有するか、あるいは(例えば、翌1年、2年、および/または3年以内に)発生する危険性があるかを決定するためのマーカーおよび方法を提供する。本出願は、対象のそのような疾患の状態、またはそのような疾患を有する対象への治療薬の効果を監視するためのそのようなマーカーおよび方法の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本出願は、2009年5月28日に出願された米国仮出願シリアル番号第61/181,858号への優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、対象、特に、ヒト対象が、心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASH等の疾患もしくは障害を有するか、あるいは(例えば、翌1年、2年、および/または3年以内に)発生する危険性があるかを決定するためのマーカーおよび方法に関する。本出願は、対象のそのような疾患および障害の状態、またはそのような疾患および障害を有する対象への治療薬の効果を監視するためのそのようなマーカーおよび方法の使用にも関する。
【0003】
〔背景技術〕
心血管疾患(CVD)は、米国において、死の半数の割合を占めており、米国および大部分の欧州諸国における死因の第1位である。したがって、心血管疾患の予防は、主要な公衆衛生重要性の分野である。CVDを予防するために、低脂肪食および運動が推奨されている。加えて、医療専門家は、CVDを有する危険性があることが分かっている個人に、いくつかの治療薬を処方する場合もある。複数の薬物の投与または外科的介入等のより積極的な治療を、CVDを有する高い危険性がある個人に使う場合もある。CVD治療は、有害な副作用を有する場合もあるため、有害な心血管系イベントを経験する危険性がある個人、特に、近い将来、有害な心血管系イベントを経験する高い危険性がある個人を同定するための方法を有することが望ましい。
【0004】
現在、CVDを発生するか、あるいは有する個人の危険性を評価するため、かつ高い危険性がある個人を同定するために、いくつかの危険因子が医療専門家によって用いられている。心血管疾患における主要な危険因子は、年齢、高血圧症、早発性CVDの家族歴、喫煙、高総コレステロール、高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、肥満、および糖尿病を含む。CVDにおける主要な危険因子は、添加物であり、典型的には、CVDの治療から恩恵を受ける可能性が高い個人を標的化するために、医師によって危険予測アルゴリズムで用いられる。これらのアルゴリズムは、10年以内のCVDの危険性を予測するための高い感度および特異性を達成する。しかしながら、CVDを発生するよりも高い可能性を予測する本アルゴリズムの能力は、限定されている。現行の危険因子を1つも有さない外見上健常な成人の間でも、10年間のCVDを発生する危険性は、やはり考慮すべきであり、年齢に応じて、約2%以上である。加えて、現在既知の危険因子を用いて決定されるように、多数のCVD合併症が、低〜中程度の危険特性を有する個人に起こっている。したがって、CVDの危険性があるか、あるいはCVDに罹患しているより広い範囲の個人を同定するために、本心血管系危険アルゴリズムを拡大する必要性が存在する。
【0005】
心血管疾患の進行における特筆すべき要因は、アテローム性動脈硬化の存在である。しかしながら、アテローム性動脈硬化の機序は、よく理解されていない。過去10年の間、大量の臨床的、病理学的、生化学的、および遺伝子学的データは、アテローム性動脈硬化が、慢性炎症性障害であるという概念を支持している。急性反応物質(例えば、C反応性タンパク質、補体タンパク質)である、敏感であるが、非特異的な炎症のマーカーは、脂肪線条および後期のアテローム硬化性動脈硬化症において強化されている。近年の前向き臨床試験では、C反応性タンパク質のベースライン血漿レベルは、単独で、外見上健常な個人の最初の心筋梗塞および脳卒中の危険性を予測した。米国特許第6,040,147号は、個人の心血管障害を発生する危険性を特徴づけるために、C反応性タンパク質、サイトカイン、および細胞接着分子を用いる方法を説明している。有用ではあるが、CVD以外の原因の結果、これらのマーカーを、炎症を有する個人の血液中に見出すことができ、ひいては、これらのマーカーは、十分に特異的ではない場合もある。さらに、それらのレベルの調節は、CVDの罹患率または死亡率の減少を再現的に予測するように確立されていない。したがって、対象のCVDの危険性を評価するための追加のマーカーの必要性が存在する。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明は、対象、特に、ヒト対象が、心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)、またはNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)等の疾患もしくは障害を有するか、あるいは(例えば、翌1年、2年、および/または3年以内に)発生する危険性があるかを決定するためのマーカーおよび方法を提供する。本出願は、対象のそのような疾患の状態またはそのような疾患を有する対象への治療薬もしくは介入治療の効果を監視するためのそのようなマーカーおよび方法の使用にも関する。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明は、アテローム硬化性心血管疾患の合併症を経験する危険性のある対象を同定する方法を提供し、a)対象から得られる生体試料中のトリメチルアミン(TMA)含有化合物レベルを決定する(例えば、分析デバイスを用いて)ことであって、コリン関連TMA含有化合物は、コリン、クロトノベタイン(シスおよびトランス異性体の両方)、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、およびホスファチジルコリンから選択され、b)生体試料中のコリン関連TMA含有化合物のレベルを、対照値と比較することと、を含み、対照値と比較して、生体試料中のコリン関連TMA含有化合物のレベルが上昇する対象は、アテローム硬化性心血管疾患の合併症を経験する危険性がある。
【0008】
ある特定の実施形態において、方法は、アテローム硬化性心血管疾患の合併症を経験する対象の危険性を、TMA含有化合物のレベルが対照値よりも高い場合に、高いと見なし、かつTMA含有化合物のレベルが対照値よりも低い場合に、低いと見なすステップをさらに含む。他の実施形態において、合併症は、以下:非致死性心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、狭心症、一過性脳虚血発作、末梢動脈疾患、うっ血性心不全、心筋症(虚血性および非虚血性)、大動脈瘤、大動脈解離、血行再建の必要性(冠動脈バイパス術、冠動脈血管形成術、冠動脈ステント挿入)、ならびに死のうちの1つ以上である。さらなる実施形態では、危険性は、翌3年以上(例えば、4年、5年、6年、7年以上)の範囲内等の長期間にわたって、アテローム硬化性心血管疾患の合併症を経験する危険性である。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、心血管疾患を有するか、あるいは発生する対象の危険性を特徴づける方法を提供し、a)分析デバイスを用いて、対象から得られる生体試料中のコリン関連トリメチルアミン(TMA)含有化合物のレベルを決定することであって、コリン関連TMA含有化合物は、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、およびホスファチジルコリンから選択され、b)生体試料中のコリン関連TMA含有化合物のレベルを、対照値と比較することと、を含み、対照値と比較して、生体試料中のコリン関連TMA含有化合物のレベルが上昇する対象は、心血管疾患を有するか、あるいは発生する危険性がある。
【0010】
ある特定の実施形態において、方法、方法は、心血管疾患を有するか、あるいは発生する対象の危険性を、コリン関連TMA含有化合物のレベルが対照値よりも高い場合に、高いと見なし、かつコリン関連TMA含有化合物のレベルが対照値よりも低い場合に、低いと見なすステップをさらに含む。他の実施形態において、危険性は、翌3年以上の範囲内等の長期間にわたって、心血管疾患を有するか、あるいは発生する危険性である。
【0011】
さらなる実施形態では、本発明は、心血管疾患を有する対象における心血管疾患治療薬もしくは介入治療(例えば、デバイスの使用、または食餌療法の処方、あるいは運動プログラム)の効力を評価する方法を提供し、a)分析デバイスを用いて、治療薬の投与中もしくは投与後に、対象から得られる生体試料中のコリン関連トリメチルアミン(TMA)含有化合物のレベルを決定することであって、コリン関連TMA含有化合物は、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、およびホスファチジルコリンから選択され、b)生体試料中のコリン関連TMA含有化合物のレベルを、既定値と比較することと、c)コリン関連TMA含有化合物のレベルが既定値よりも低い場合に、治療薬もしくは介入治療が効果的であるかを決定することと、を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、対象を、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを有するか、あるいは発生する危険性があると同定する方法を提供し、a)分析デバイスを用いて、対象から得られる生体試料中のリン関連トリメチルアミン(TMA)含有化合物のレベルを決定することと、b)生体試料中のコリン関連TMA含有化合物のレベルを、対照値と比較することと、を含み、対照値と比較して、生体試料中のコリン関連TMA含有化合物のレベルが上昇する対象は、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを発生する危険性があるか、あるいはそれらを有する。
【0013】
さらなる実施形態では、本方法は、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを有するか、あるいは発生する対象の危険性を、コリン関連TMA含有化合物のレベルが対照値よりも高い場合に、高いと見なし、かつコリン関連TMA含有化合物のレベルが対照値よりも低い場合に、低いと見なすステップをさらに含む。他の実施形態において、コリン関連TMA含有化合物は、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、およびホスファチジルコリンから成る群から選択される。さらなる実施形態では、コリン関連TMA含有化合物は、トリメチルアミン−N−オキシド、コリン、またはベタインから成る群から選択される。他の実施形態において、危険性は、翌3年以内に、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを発生する危険性である。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHから選択される疾患を有する対象における治療薬もしくは介入治療の効力を評価する方法を提供し、a)分析デバイスを用いて、治療薬の投与中もしくは投与後に、対象から得られる生体試料中のコリン関連トリメチルアミン(TMA)含有化合物のレベルを決定することと、b)生体試料中のコリン関連TMA含有化合物のレベルを、既定値と比較することと、c)コリン関連TMA含有化合物のレベルが既定値よりも低い場合に、治療薬が真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを治療するのに効果的であるかを決定することと、を含む。
【0015】
ある特定の実施形態において、本発明は、状態を治療するか、あるいは状態の進行を予防する方法を提供し、対象におけるカルニチンからのトリメチルアミン、TMANO、クロトノベタイン、および/またはガンマブチロベタインの形成を減少させ、それによって、心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHから成る群から選択される状態を少なくとも部分的に治療するか、あるいは状態の進行を予防するように、対象に、プロバイオティクス、プレバイオティクス、および抗生物質を投与することを含む。特定の実施形態において、抗生物質は、7日以下(例えば、7、6、5、4、3、2、または1日)等の短期間にわたって、対象に投与される。ある特定の実施形態において、抗生物質は、メトロニダゾール、シプロフロキサシン、ネオマイシン、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、クロラムフェニコール、またはセファロスポリン、マクロライド、ベータラクタム、アミノグリコシド、テトラサイクリン、キノロン、スルホンアミド、もしくはスルホンの類の抗生物質から成る群から選択される、1つの抗生物質またはそれらの抗生物質の組み合わせである。さらなる実施形態では、対象は、トリメチルアミン尿症を有さない。
【0016】
特定の実施形態において、本発明は、状態を治療するか、あるいは状態の進行を予防する方法を提供し、対象におけるカルニチンからのトリメチルアミン、TMANO、クロトノベタイン、および/もしくはガンマブチロベタイン(または他のコリン関連TMA含有化合物)の形成を減少させ、それによって、心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHから成る群から選択される状態を少なくとも部分的に治療するか、あるいは状態の進行を予防するように、対象に、抗生物質を投与することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明は、候補阻害剤をスクリーニングする方法を提供し、a)i)コリン関連トリメチルアミン(TMA)含有化合物と、ii)トリメチルアミンを形成するために、コリン関連TMA含有化合物を切断することができる腸内細菌叢と、iii)候補阻害剤と、を混合することと、b)形成されるトリメチルアミン、あるいは形成される下流代謝産物トリメチルアミンオキシド、形成されるクロトノベタイン、または形成されるガンマブチロベタインのレベルを検出することによって、トリメチルアミンの形成を阻害する候補阻害剤の能力を決定することと、を含む。
【0018】
ある特定の実施形態において、コリン関連TMA含有化合物は、コリン、カルニチン、ベタイン、ホスホコリン、ホスファチジルコリン、グリセロホスホコリン、クロトノベタイン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、およびガンマブチロベタインから成る群から選択される。他の実施形態において、腸内細菌叢は、洗腸物質、腸の特定部分、盲腸ホモジネート、盲腸洗液、または糞便から得られる。さらなる実施形態では、形成されるトリメチルアミンのレベルの検出は、質量分析またはHPLCで実行される。さらなる実施形態では、コリン関連TMA含有化合物は、検出可能に標識化される(例えば、発色団または蛍光部分で)。いくつかの実施形態において、候補阻害剤は、抗生物質を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明は、状態を治療するか、あるいは状態の進行を予防する方法を提供し、対象におけるカルニチンからのトリメチルアミン、TMANO、クロトノベタイン、および/またはガンマブチロベタインの形成を減少させ、それによって、心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHから成る群から選択される状態を少なくとも部分的に治療するか、あるいは状態の進行を予防するように、対象に、阻害剤を投与することを含む。ある特定の実施形態において、TMA形成阻害剤は、ネオマイシン、アモキシシリン、メトロニダゾール、活性炭、または銅クロロフィリン、アモキシシリン/クラブラン酸、クロラムフェニコール、またはセファロスポリン、マクロライド、ベータラクタム、アミノグリコシド、テトラサイクリン、キノロン、スルホンアミド、もしくはスルホンの類の抗生物質から成る群から選択される。
【0020】
いくつかの実施形態において、心不全、心筋症(虚血性もしくは非虚血性)、心室収縮期不全、拡張期不全、大動脈解離、または大動脈瘤を有するか、あるいは発生する可能性の高い対象を同定するための方法が、本明細書に記載される。本方法は、対象からの試験試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを測定することを含む。
【0021】
本発明の一態様は、翌3年以内に、心不全、心筋症(虚血性もしくは非虚血性)、心室収縮期不全、拡張期不全、大動脈解離、または大動脈瘤を経験する危険性のある対象を同定する方法を提供し、分析デバイスを用いて、対象から得られる生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを決定することと、生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを、対照値と比較することと、翌3年以内に、心不全、大動脈解離、または大動脈瘤を経験する対象の危険性を、コリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルが対照値よりも高い場合に、高いと見なし、かつコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルが対照値よりも低い場合に、低いと見なすことと、を含む。
【0022】
本発明の別の態様は、心不全心筋症(虚血性もしくは非虚血性)、心室収縮期不全、拡張期不全を有する対象を診断する方法を提供し、分析デバイスを用いて、対象から得られる生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを決定することと、生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを、対照値と比較することと、コリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルが対照値よりも高い場合に、対象を、心不全を有する可能性がより高いと診断することと、を含む。
【0023】
本発明のさらに別の態様が、大動脈障害を有する対象を診断する方法を提供し、分析デバイスを用いて、対象から得られる生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを決定することと、生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを、対照値と比較することと、コリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルが対照値よりも高い場合に、対象を、大動脈障害を有する可能性がより高いと診断することと、を含む。本発明のいくつかの実施形態において、大動脈障害が、大動脈解離であるのに対して、他の実施形態では、大動脈障害は、大動脈瘤である。
【0024】
本発明のある特定の実施形態では、コリン関連トリメチルアミン含有化合物は、トリメチルアミン−N−オキシド、コリン、ベタイン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、またはカルニチンである。一実施形態において、コリン関連トリメチルアミン含有化合物は、トリメチルアミン−N−オキシドである。さらなる実施形態では、コリン関連トリメチルアミン含有化合物は、コリンまたはベタインである。本方法のさらなる実施形態では、生体試料中の複数のコリン関連トリメチルアミン含有化合物が決定される。
【0025】
本発明のさらなる実施形態では、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、脳脊髄液、または気管支肺胞洗浄である一方で、さらなる実施形態では、生体試料は、血液、血清、または血漿である。さらに別の実施形態では、分析デバイスは、質量分析計である。本方法のいくつかの実施形態において、対象は、心血管疾患のいかなる兆候または症状も有さない。
【0026】
〔図面の簡単な説明〕
<図1>(a−c)50〜100の範囲のm/zにおける陽イオンMS1モードで抽出されたイオンクロマトグラムのピーク面積を示すグラフを提供する。m/z=76を有する成分は、質量分析計に連結した逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってTMANO(トリメチルアミンN−オキシド)として同定された。
【0027】
<図2>(a−c)m/z=76において陽イオンMS1モードで抽出されたイオンクロマトグラムの結果を示すグラフを提供する。m/z=76を有する成分を、質量分析計に連結した逆相HPLCによって同定した。
【0028】
<図3>(パネルa)陽性MS1モードで抽出されたイオンクロマトグラムにおけるm/z=76のピークに対応する、衝突(エネルギー21eV)誘起解離(CID)質量スペクトルを提供する。パネル(b)は、76→58の親−娘遷移の陽イオン多重反応監視(MRM)モードで抽出されたイオンクロマトグラムを提供する。パネルcは、グリシンにおいて76→59を除いて、76→58の親−娘遷移の陽イオンMRMモードで抽出されたイオンクロマトグラムを提供する。
【0029】
<図4>パネル(a−c)は、TMANOの血漿濃度とアテローム硬化性CVDの有病率との間の関係を試験した、事例/対照研究の結果を提供する。血漿を、診断的心臓カテーテル法を受けたCVD(n=632)を有する逐次対象および対照対象(n=361)から単離した。パネル(a)は、(n=632)のアテローム硬化性CVDを有する対象および(n=361)のアテローム性CVDを有さない対象の血漿TMANOを示す。パネル(b)は、TMANOの四分位に従って、アテローム硬化性CVD、冠動脈疾患(CAD)、および末梢動脈疾患(PAD)の発生頻度を示す。示されるP値は、四分位にわたる傾向用である。パネル(c)は、マルチロジスティック回帰後の、CVD、CAD、PAD、およびCAD+PAD危険性の予測の判断材料としての、TMANOレベルに対するオッズ比および95%の信頼区間を示す。モデルは、フラミンガム危険因子スコア、MDRD式によって決定された推定の糸球体濾過率、C反応性タンパク質(CRP)およびTMANOレベルから成った。
【0030】
<図5>(a−c)TMANOの血漿存在量と主要な有害心イベント(MACE、以下の状態:非致死性MI、脳卒中、血行再建の必要性(血行再建)、または死のうちの1つ以上)において予想される危険性との間の関係を試験した、事例/対照研究の結果を提供する。パネル(a)は、その後の臨床事象を経験した対象(n=374)および経験しなかった対象(n=619)の血漿TMANOを示す。パネル(b)は、TMANO存在量の四分位に従って、臨床事象(血行再建、MIもしくは脳卒中、死、および複合のMACE)の発生頻度を示す。示されるP値は、四分位にわたる傾向用である。パネル(c)は、マルチロジスティック回帰後の、臨床事象(血行再建の必要性、非致死性MIもしくは脳卒中、死、または複合のMACE)の偶発的危険に対するTMANO四分位に対してのオッズ比および95%の信頼区間を示す。モデルは、フラミンガム危険因子スコア、MDRD式による推定の糸球体濾過率、C反応性タンパク質(CRP)およびTMANOから成った。
【0031】
<図6>実施例7に説明されるコホートの心不全予測における血漿中のTMANOの予後値を示す。
【0032】
<図7>実施例8に説明されるクロトノベタイン(7a)、ガンマブチロベタイン(7B)、およびカルニチン(7C)の三分位のカプランマイヤープロットを示す。
【0033】
<図8>D3−カルニチン(8Aに示される)が、腸内菌叢依存的経路において、アテローム生成促進的トリメチルアミン(TMA)(8B)およびトリメチルアミンオキシド(TMANO)(8C)に代謝されることを示す。
【0034】
<図9>カルニチンが、腸内菌叢依存的過程によって、クロトノベタイン(9A)およびガンマブチロベタイン(9B)にも代謝されることを示す。
【0035】
<図10>本発明において有用なある特定のコリン関連トリメチルアミン含有化合物の化学式を示す。
〔発明を実施するための形態〕
本発明は、対象、特に、ヒト対象が、(例えば、翌1年、2年、および/または3年以上の範囲内に)心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)、またはNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)等の疾患を有するか、あるいは発生する危険性があるかを決定するためのマーカーおよび方法を提供する。本出願は、対象のそのような疾患もしくは障害の状態またはそのような疾患を有する対象への治療薬もしくは介入治療の効果を監視するためのそのようなマーカーおよび方法の使用にも関する。
【0036】
一実施形態において、本発明は、対象、特に、ヒト対象の心血管疾患、特に、アテローム硬化性心血管疾患を有する危険性を特徴づけるための方法およびマーカーを提供する。心血管疾患の例には、心不全、大動脈解離、および大動脈瘤が挙げられる。別の実施形態において、本発明は、対象の心血管疾患を発生する危険性を特徴づける方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、翌1年、2年、または3年以内に、心血管系(CVD)イベントを経験する対象の危険性を特徴づけるための方法を提供する。本方法は、非常に侵攻性のCVD治療または介入治療を必要とする対象、ならびにCVDまたはCVDの合併症を阻害もしくは予防することを標的とする治療または介入治療を必要としない対象を同定するのに有用である。
【0037】
本明細書で使用される「心血管疾患」(CVD)または「心血管障害」という用語は、身体の心臓、心臓弁、および脈管構造(例えば、静脈および動脈)に影響を及ぼす多数の状態を分類するために使用される用語であり、動脈硬化、アテローム性動脈硬化、心筋梗塞、急性冠症候群、狭心症、うっ血性心不全、大動脈瘤、大動脈解離、腸骨または大腿動脈瘤、肺塞栓、原発性高血圧症、心房細動、脳卒中、一過性脳虚血発作、収縮期機能障害、拡張期不全、心筋炎、心房性頻脈、心室細動、心内膜炎、動脈症、脈管炎、アテローム硬化性プラーク、不安定プラーク、急性冠症候群、急性虚血性発作、突然心臓死、末梢血管疾患、冠動脈疾患(CAD)、末梢動脈疾患(PAD)、ならびに脳血管疾患を含むが、それらに限定されない疾患および状態を包含する。
【0038】
本明細書で使用される「アテローム硬化性心血管疾患」もしくは「障害」という用語は、循環器疾患の特定の種類に対する成分または前駆物質として、アテローム性心血管疾患を含む心血管疾患のサブセットを指し、制限なく、CAD、PAD、脳血管疾患を含む。アテローム性動脈硬化は、動脈血管の壁に起こる慢性炎症反応である。それは、動脈の狭小化(「狭窄」)につながり得るアテローム性プラークの形成を伴い、最終的には、動脈開口部の部分的もしくは完全閉鎖および/またはプラーク破裂につながり得る。したがって、アテローム硬化性疾患または障害は、制限なく、動脈狭窄もしくは狭小化、心不全、大動脈瘤、大動脈解離を含む動脈瘤形成、ならびに心筋梗塞および脳卒中等の虚血イベントを含む、アテローム性プラーク形成および破裂の結果を含む。
【0039】
本明細書で使用される、心血管系イベントは、心筋梗塞、不安定狭心症、動脈瘤、または脳卒中を含むが、それらに限定されない、突然心臓死等の心血管疾患または急性冠症候群によって引き起こされる対象の有害な病態の兆候を指す。「心血管系イベント」という用語を、本明細書で、心血管系の合併症という用語と交換可能に用いることができる。心血管系イベントが急性病態であり得る一方で、以前に発見された動脈瘤の拡大または命にかかわるレベルまでの高血圧症の増加等の、それが対象の健康に多大な脅威に相当する程度まで、以前に検出された状態の悪化も表し得る。
【0040】
本明細書で使用される「診断」という用語は、対象の疾患の本質を決定することと、疾患の重症度および予想される結果ならびに疾患の発症および/または回復の見込み(予後)を決定することとを包含し得る。「診断」は、合理療法の文脈において、治療の最初の選択、治療の修正(例えば、用量および/もしくは用法用量の調整または生活様式の変化の推奨)等を含む治療を導く診断も包含し得る。
【0041】
「個人」、「宿主」、「対象」、および「患者」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、概して、サルおよびヒトを含む霊長類、ウマ科の動物(例えば、ウマ)、犬科の動物(例えば、イヌ)、猫科の動物、様々な家畜類(例えば、ブタ(swine)、ブタ(pig)、ヤギ、ヒツジ等の有蹄動物)、ならびに飼い慣らされたペットおよび動物園で飼育される動物を含むが、それらに限定されない哺乳動物を指す。いくつかの実施形態において、対象は、具体的には、ヒト対象である。
【0042】
本発明がさらに説明される前に、そのような実施形態は、言うまでもなく変化するため、本発明は、説明される特定の実施形態に限定されないことを理解すべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲が、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定的であることを意図しないことも理解すべきである。
【0043】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限値および下限値と提示される任意の他の上限値および下限値との間の各介在値、または提示される範囲の介在値は、本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらの小範囲の上限値および下限値を、独立して小範囲内に包括することができ、かつ提示される範囲の任意の具体的に除外される境界に従って、本発明の範囲内にも包含する。提示される範囲が、境界の1つまたは両方を包括する場合、それらの包括される境界の一方または両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0044】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるように、同一の意味を有する。本明細書に説明されるそれらと同様もしくは同等の任意の方法および物質を、本発明の実践または試験において使用することもできるが、好ましい方法および物質がこれから説明される。本明細書に言及される全ての刊行物は、刊行物が引用されるものに関連して、方法および/または物質を開示ならびに説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される、単数形「ある(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」は、別途文脈が明確に示さない限り、複数の参照対象を含むことに留意すべきである。したがって、例えば、「ある試料」への言及は、複数のそのような試料を含み、特定の酵素(例えば、アルギナーゼ)への言及は、1つ以上のアルギナーゼポリペプチドおよび当業者に既知のその同等物への言及を含む。
【0046】
別途示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される、成分の量、分子量等の特性、および反応条件等を表す全ての数は、「約」という用語によって、全ての例において修正されるとして理解すべきである。したがって、別途示されない限り、以下の明細書および特許請求の範囲に記載される数値的特性は、本発明の実施形態において得られる所望の特性によって変わり得る近似値である。本発明の広範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、本質的には、それらの各々の測定において見出される誤差に必然的起因するいくらかの誤差を含有する。
【0047】
一実施形態において、本方法は、生体試料(例えば、対象から得られる体液)中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを決定することを含む。コリン関連トリメチルアミン含有化合物には、ベタイン、トリメチルアミン−N−オキシド(TMANO)、コリン、アセチルコリン、カルバコールアセチルカルニチン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、およびホスファチジルコリンが含まれる。さらなる実施形態では、本方法は、3つの化合物、TMANO、コリン、およびベタインのうちの1つ以上のレベルを決定することを含む。さらなる実施形態では、本方法は、生体試料中のTMANOのレベルを決定することを含む。別の実施形態において、本方法は対象由来の生体試料中のコリン、ベタイン、または両方のレベルを決定することを含む。
【0048】
ある特定の実施形態において、対象由来の生体試料中のトリメチルアミン−N−オキシド(TMANO)、コリン、ベタイン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、またはそれらの任意の組み合わせのレベルは、対応する対照値、あるいは参照コホートから得られる同程度の生体試料中のTMANO、コリン、ベタイン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、またはそれらの任意の組み合わせの測定から得られる値と比較される。本明細書で使用される対応する値は、対象において決定されるTMANOレベルとの比較用の対照値として使用するために、TMANOの参照集団レベルを決定すること等の、所与の化合物に対する適切な対照の使用を指す。あるいは、対象から得られる生体試料中のTMANO、コリン、ベタイン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン(レシチンとも呼ばれる)、またはそれらの任意の組み合わせのレベルを、対象から得られる生体試料中の内部標準物質のレベルと比較することができる。当業者には既知であるように、内部標準物質は、典型的には、重同位体標識標準物質等の標的検体に類似した多種多様の化合物であり得る。内部標準物質は、既知量の試料に添加することができる化合物であり、かつ試料中の検体を定量化する助けとなる。例えば、コリンを定量化するために使用することができる内部標準物質には、重同位体標識コリン、またはアセチル−β−メチルコリンおよびブチリルコリン等の構造的に関連する化合物を含む。ある特定の実施形態において、生体試料は、尿もしくは血液、または血液から得られる流体、例えば、血清もしくは血漿である。
【0049】
一実施形態において、比較は、CVDを診断するために標準のプロトコルを用いて決定されるように、CVDを有する対象の危険性を特徴づける。さらなる実施形態は、アテローム硬化性CVDを有する現在の危険性を特徴づけることを対象とする。さらに、対象のTMANO、コリン、クロトノベタイン(シスおよびトランス)、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインレベルと対照値との間の差異の程度は、危険性の程度を特徴づけ、それによって、どの対象が、ある特定の治療もしくは介入治療から最も大きな恩恵を受けるかを決定するのにも有用である。より具体的には、レベルの大きな差異が多大な危険性に相当するように、危険性の差異と程度との間に正相関も存在し得る。
【0050】
別の実施形態において、比較は、将来的にCVD、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを発生する対象の危険性を特徴づける。本明細書の実施例2に示されるように、コリン関連トリメチルアミン含有化合物は、対象がCVDを発生する可能性を同定するために、予後有用性を有する。理論によって縛られることを意図しない一方で、コリン代謝と、コリン代謝に関与する腸内菌叢と、CVD、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、もしくはNASHを発生する、および/または有意な心血管系イベントを経験する、および/または心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHの有意な合併症を経験する危険性との間に関連性があるように見られる。真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドロームの有意な合併症には、アテローム硬化性心臓疾患、微小血管疾患、網膜症、腎症、神経障害、および脂質異常症が含まれる。NAFLDおよび/またはNASHの有意な合併症には、肝癌、肝硬変症、肝不全、肝性脳症が含まれる。
【0051】
例えば、対照値との対象中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物の量の比較を、翌3年以内、またはある特定の実施形態において、翌2年以内、またはある特定の実施形態において、翌1年以内(もしくはそれらの間の任意の期間)に、心血管系イベントを経験する対象の危険性を特徴づけるために使用することができる。本方法を、胸痛を呈する対象が、近い将来心筋梗塞、再梗塞、血行再建の必要性、および/または死等の心血管系イベントを経験する危険性があるかを決定するために使用することもできる。この文脈において、「近い将来」という用語は、対象が、胸痛を呈した翌日、3ヶ月、6ヶ月、または1年後以内を意味する。
【0052】
対象のCVD、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHの状態を長期にわたって監視する方法も本明細書に提供される。さらなる実施形態は、アテローム硬化性CVDの状態を長期にわたって監視することを対象とする。一実施形態において、本方法は、初回に対象から採取された生体試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベル、ならびにその後に対象から採取された対応する生体試料中のそれらのレベルを決定することを含む。その後に採取された生体試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルの増加は、初回と比較して、CVD、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを有する対象の危険性が増加したことを示す。TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルの減少は、CVD、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを有する対象の危険性が減少したことを示す。心筋梗塞または虚血性脳卒中等の心血管系イベントをすでに経験した対象において、そのような方法は、その後の心血管系イベントを経験する対象の危険性を評価するのにも有用である。そのような対象における、TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルの増加は、対象が、その後の有害な心血管系イベントを経験する高い危険性があることを示す。対象の長期にわたるTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルの減少は、その後の有害な心血管系イベントを経験する対象の危険性が減少したことを示す。
【0053】
本発明の本方法は、特定の心血管疾患または心血管系イベントに関して、対象を検出、監視、または診断することも対象とし得る。例えば、本発明の本方法は、心不全または大動脈瘤もしくは大動脈解離等の大動脈障害を発生する危険性のある対象を同定することを対象とし得る。
【0054】
心不全は、心室収縮期もしくは拡張期機能不全、または両方を特徴とする、心臓の構造もしくは機能が、身体の要求を満たすのに十分な血流量を供給する能力を損なう障害の状態である心血管疾患の形態である。心不全は、単に乏しい組織内灌流の症状例えば、疲労、乏しい運動耐性、および/または錯乱)または乏しい組織内灌流の症状および血管床のうっ血(例えば、呼吸困難、低下した腎機能、心腎症候群、胸水、肺水腫、膨張した頸静脈、うっ血した肝臓、および/または末梢浮腫)の両方から明らかになる場合もある。うっ血性心不全は、高心拍出量性心臓麻痺と対照的に、心拍出量が低い心不全の形態を示し、酸素および栄養素に対する身体の要求が増加し、要求は心臓が提供することができるものを上回る。
【0055】
心不全は、1つ以上の要因の結果として起こり得る。主要な要因は、心発作等の1つ以上の虚血イベントが心臓に虚血性傷害をもたらし、かつ機能を低下させる、二次アテローム硬化性疾患である。この種類の心不全は、心機能異常の要因が虚血性傷害に続発したため、虚血性心不全と称される。虚血性心不全は、虚血性心筋症と呼ばれる場合もあり、血流量を制限するアテローム性心血管疾患等の虚血性傷害につながる他の心血管状態にも起因し得る。
【0056】
心不全は、虚血以外の要因の結果として起こる場合もあり、心不全のそのような形態は、非虚血性心不全と称される。非虚血性心不全の例には、ウイルス感染に起因する心筋炎、心臓組織のアミロイドーシス、不整脈、遺伝子欠陥の兆候、アルコール、薬物、またはタバコの乱用による損傷、細菌もしくは寄生虫による感染等の心臓組織への損傷の他の原因、またはビタミン欠乏が挙げられる。
【0057】
大動脈解離は、血液が大動脈壁の層の間を流動することを引き起こし、かつ層が分離することを強制する大動脈壁の断裂である。大動脈解離において、血液は、大動脈の最内層である内膜に浸透し、中膜層に進入する。高血圧は、中膜の内部2/3および外部1/3を裂きながら、積層面に沿って中膜の組織を引き裂く。これは、可変距離に対して大動脈の長さに沿って前後に伝播する。腸骨分岐点に向かって伝播する解離(血流とともに)は、順行性解離と呼ばれ、大動脈起始部に向かって伝播する解離(血流の反対)は、逆行性解離と呼ばれる。最初の断裂は、逆行性解離が、容易に心膜を傷つけ、ヘモカーディアム(hemocardium)をもたらし得るように、通常、大動脈弁の100mm以内である。大動脈解離は、医学的緊急事態であり、最適治療をもってしても、即座に死につながり得る。
【0058】
大動脈解離の症状は、当業者に既知であり、事実上引き裂くような痛み、または性質上突き刺すような痛みもしくは鋭い痛みと表現される場合もある、突然発症を有する激痛を含む。一部の個人は、解離が大動脈下方に拡張するにつれて、痛みが移動すると報告している。痛みを心筋梗塞の痛みと錯覚し得る一方で、大動脈解離は、通常、心不全を含む心筋梗塞を示唆する他の兆候およびECG上の変化と関連しない。大動脈解離を経験する個人は、通常、発汗(多量の発汗)を呈しない。慢性解離を伴う個人は、痛みの存在を示さない場合もある。大動脈弁閉鎖不全も典型的に見られる。大動脈解離の家系において見ることができる他のあまり一般的ではない症状には、うっ血性心不全(7%)、気絶(9%)、脳血管障害(3〜6%)、虚血性末梢神経障害、対麻痺、心拍停止、および突然死が含まれる。好ましくは、この診断は、ヨード造影剤を有する胸部のCTスキャンおよび経食道心エコー図等の診断的画像検査上での内膜皮弁の可視化によって行われる。
【0059】
大動脈瘤は、その一方で、大動脈の腫脹を特徴とする心血管障害であり、通常、その位置における大動脈壁の根本的な衰弱に起因する。大動脈瘤は、それらが大動脈上のどこで起こるかで分類される。これから先、腹部大動脈瘤はAAAと称され、大動脈瘤の最も一般的な種類であり、概して、破裂前は無症状性である。他の要因がそれらの形成に関与するが、AAAは、主にアテローム性動脈硬化に起因する。AAAは、永久に無症状性のままであり得る。いくつかのAAAは、破裂前に直径15cm超まで膨張し得るが、いったん大きさが5cmに達すると、破裂する大きな危険性がある。手術前および手術後の高い死亡率の理由から、10〜25%の患者のみが破裂に耐え抜く。
【0060】
大動脈瘤の症状は、不安症もしくはストレス感、嘔気嘔吐、ベトベトした肌、頻脈を含み得る。しかしながら、無傷の大動脈瘤は、症状を引き起こさない場合もある。それらが拡張する時、腹痛および背痛等の症状が発生し得る。神経根の圧迫は、下肢痛または無感覚を引き起こし得る。拡張の速度は特定の個人にとって予測不可能であるが、治療を受けていない動脈瘤は、次第に大きくなる傾向がある。いくつかの事例において、大部分の大動脈瘤を並べる血餅は、決裂して、塞栓をもたらし得る。好ましくは、大動脈瘤の診断を確認するために、医学的画像を用いる。
【0061】
本発明は、CVD(例えば、アテローム硬化性CVD等)、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを安定化または退行させることを目的とする治療への対象の応答を特徴づけるための方法も提供する。本方法は、治療前に対象から採取された生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物(例えば、TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタイン)のレベルを決定することと、治療中もしくは治療後に対象から採取された対応する生体試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルを決定することを含む。治療前に採取された試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルと比較して、治療前または治療中に採取された試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルの減少は、治療を受ける対象の心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHへの治療の好ましい効果を示す。
【0062】
別の実施形態において、本発明は、試験対象から得られる生体試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルを評価するための試薬を含むキットに関する。ある特定の実施形態において、キットは、本方法の実践に関する取扱説明書等の印刷物、あるいは試験対象のCVD、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHの危険性を評価するのに有用な情報も含む。そのような情報の例には、カットオフ値、特定のカットオフ値での感度、ならびにアッセイの結果に基づいて危険性を特徴づけるための他の印刷物が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、そのようなキットは、対照試薬、例えば、TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインの既知量も含み得る。
【0063】
ある特定の実施形態において、試験対象の生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベル(例えば、TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタイン)は、対照対象の同程度の生体試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルから算出される対照値と比較される。ある代替実施形態において、試験対象の生体試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルを、次に、対象の生体試料中の他の生体分子のレベルに基づいて、内部標準物質と比較することができる。TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルが対照値を上回るか、あるいは対照値より高い範囲にある試験対象は、TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、および/またはベタインのレベルが対照値であるか対照値を下回っているか、あるいは対照値より低い範囲にある試験対象よりも、心血管疾患(例えば、うっ血性心不全、大動脈瘤等)、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを有するか、あるいは発生する危険性が非常に高い。さらに、対象のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタイのレベルと対照値との間の差異の程度は、危険性の程度を特徴づけ、それによって、どの対象がある特定の治療から最も恩恵を受けるかを決定するのに有用でもある。
【0064】
ある特定の実施形態において、CVD、真性糖尿病、前糖尿病、耐糖能障害、空腹時血中ブドウ糖不良、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHにおける対象の危険特性は、対象の生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物(例えば、TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタイン)のレベルを、対照集団中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルと比較することによって得られる第1の危険値と、1つ以上のさらなる危険値を合わせることによって決定される。そのようなさらなる危険値を、対象の血圧を決定すること、ストレス試験への対象の応答を評価すること、対象由来の身体試料中のミエロペルオキシダーゼ、ホモシトルリン、ニトロチロシン、C反応性タンパク質、フィブリノゲンおよびPAI−1、ホモシステイン、非対称ジメチルアルギニン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、低密度リポタンパク質、またはコレステロールのレベルを決定すること、または対象のアテローム硬化性プラーク負担を評価することを含むが、それらに限定されない手順によって得ることができる。
【0065】
一実施形態において、本方法は、心血管疾患、とりわけ、アテローム硬化性心血管疾患を有する試験対象の危険性を評価するために使用される。心血管疾患の一形態は、冠動脈疾患である。ヒト対象が冠動脈疾患を有するか、あるいは冠動脈疾患の合併症を経験する危険性があるかを決定するための医療処置は、冠動脈造影、冠動脈血管内超音波法(IVUS)、ストレス試験(画像有および画像無)、頸動脈内膜内側肥厚の評価、仮想組織学の技法の実施有無の頸動脈超音波研究、冠動脈電子ビームコンピューター断層撮影法(EBTC)、心臓コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、CT血管造影法、心磁気共鳴映像法(MRI)、および磁気共鳴血管造影法(MRA)を含むが、それらに限定されない。心血管疾患は、典型的には、対象の脈管構造の1つの領域に限定されないので、冠動脈疾患を有するか、あるいは冠動脈疾患を有する危険性があると診断される対象は、脳血管疾患、大動脈腸骨疾患、および末梢動脈疾患等のCVDの他の形成を発生するか、あるいは有する危険性があるとも見なされる。心血管疾患を有する危険性のある対象は、異常なストレス試験または異常な心臓カテーテル法を有する危険性がある。CVDを有する危険性のある対象は、増大した頸動脈内膜内側肥厚および冠動脈石灰化を呈する危険性もあり、特性を、断層撮影技術を用いて評価することができる。CVDを有する危険性のある対象は、増加したアテローム硬化性プラーク負担を有する危険性もあり、特性を、血管内超音波法を用いて試験することができる。
【0066】
別の実施形態において、本方法は、将来的に、心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを発生する対象の危険性を評価するために用いられる。一実施形態において、対象は、外見上健常な個人である。別の実施形態において、対象は、その他の点では、心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを有する高い危険性はない。
【0067】
本方法の実施形態を用いて、翌3年、2年、または1年以内に、心血管系イベントを経験する試験対象の危険性を評価することができる。別の実施形態において、本方法は、胸痛を呈する対象が、近い将来の心筋梗塞、再梗塞、血行再建の必要性、または死等の心発作もしくは他の心血管系イベントを経験する危険性があるかを決定するために用いられる。この文脈で用いられる「近い将来」という用語は、1年以内を意味する。したがって、近い将来危険性がある対象は、胸痛を呈した翌日、3ヶ月、または6ヶ月後以内に心血管系イベントを経験する危険性があり得る。
【0068】
本発明は、CVDを有すると診断された対象のCVDの状態を、長期にわたって監視するための方法も提供する。この文脈において、本方法は、CVDを有する対象のアテローム硬化の進行または退行の危険性を監視するのにも有用である。一実施形態において、本方法は、初回に対象から採取された生体試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベル、ならびにその後に対象から採取された対応する生体試料中のそれらのレベルを決定することを含む。その後に採取された生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベル(例えば、TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタイン)の増加は、初回と比較して、対象のCVDが進行または悪化したことを示す。TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルの減少は、CVDが改善または退行したことを示す。心筋梗塞または虚血性脳卒中等の心血管系イベントをすでに経験した対象において、そのような方法を、その後の心血管系イベントを有する対象の危険性を評価するために使用することもできる。対象の長期にわたるTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルの増加は、その後の有害な心血管系イベントを経験する対象の危険性が増加したことを示す。対象の長期にわたるTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルの減少は、その後の有害な心血管系イベントを経験する対象の危険性が減少したことを示す。
【0069】
別の実施形態において、本発明は、心血管疾患を有する疑いがあるか、あるいは心血管疾患を有すると診断された対象の治療を評価するための方法を提供する。本方法は、治療前に対象から採取される生体試料中の1つ以上のコリン関連トリメチルアミン含有化合物(例えば、TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、および/またはベタイン)のレベルを決定することと、治療中もしくは治療後に対象から採取される対応する生体試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルを決定することを含む。治療前または治療中に採取される試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルの減少は、治療前に採取された試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルと比較して、治療を受ける対象の心血管疾患への治療の好ましい効果を示す。
【0070】
生体試料
生体試料は、血液関連試料(例えば、全血、血清、血漿、および他の血液由来試料)、尿、脳脊髄液、気管支肺胞洗浄等の体液を含むが、必ずしもそれらに限定されない。生体試料の別の例として、組織試料が挙げられる。TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルを、量的もしくは質的のいずれか、通常、量的に評価することができる。コリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを、生体内または生体外のいずれかで決定することができる。
【0071】
生体試料は、新鮮であるか、あるいは保存される場合もある(例えば、血液バンクに保存される血液または血液分画)。生体試料は、本発明のアッセイのために得られた体液であり得るか、あるいは本発明のアッセイのために二次試料をとる場合もある、別の目的のために得られた体液であり得る。
【0072】
一実施形態において、本生体試料は、全血である。全血を、標準の臨床手順を用いて、対象から得ることができる。別の実施形態において、本生体試料は、血漿である。血漿を、抗凝固処理血液の遠心分離によって、全血試料から得ることができる。そのような手順は、白血球成分のバフィーコートおよび血漿の上清を提供する。別の実施形態において、本生体試料は、血清である。血清を、抗凝固剤を含んでいない管中に収集された全血試料の遠心分離によって得ることができる。血液を、遠心分離前に凝固することが許可される。遠心分離によって得られる赤黄色がかった流体は、血清である。別の実施形態において、本試料は、尿である。
【0073】
本試料を、所望の場合、ヘパリン化され、濃縮された適切な緩衝溶液中での希釈によって、必要に応じて事前処理することができるか、あるいは超遠心分離、高速液体クロマトグラフィー(FPLC)による分画、もしくはタンパク質を含有するアポリポタンパク質Bの硫酸デキストランとの沈殿、または他の方法を含むが、それらに限定されない任意の数の方法で分画することができる。リン酸塩、トリス等の生理学的pHのいくつかの標準の緩衝水溶液のうちのいずれかを用いることができる。
【0074】
対象
対象は、CVD(例えば、うっ血性心不全、大動脈瘤もしくは大動脈解離)、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHのその危険性を特徴づけるために試験される任意のヒトまたは他の動物である。ある特定の実施形態において、対象は、さもなければ有害な心血管系イベントの高い危険性を有さない。心血管系イベントを経験する高い危険性を有する対象には、心血管疾患、高脂質、喫煙者、従前の急性心血管系イベント等の家族歴を有する対象が含まれる(例えば、Harrison’s Principles of Experimental Medicine,15th Edition,McGraw−Hill,Inc.,N.Y.−−hereinafter“Harrison’s”を参照のこと)。
【0075】
ある特定の実施形態において、対象は、外見上健常である。本明細書で使用される「外見上健常」とは、CVD、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHのいかなる兆候もしくは症状も有さないか、あるいは狭心症等のアテローム性動脈硬化の存在を示す任意の兆候もしくは症状、心筋梗塞もしくは脳卒中等の心血管系イベントの病歴、または冠動脈造影を含むが、それに限定されない診断的画像法によって、アテローム性動脈硬化の兆候を有すると診断されていない対象を描写する。外見上健常な対象は、心不全または大動脈障害を有するいかなる兆候もしくは症状も有さない。
【0076】
他の実施形態において、対象は、心血管疾患の症状をすでに呈している。例えば、対象は、心不全または大動脈解離もしくは大動脈瘤等の大動脈障害の症状を呈し得る。心血管疾患をすでに経験している対象において、コリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを、さらなる心血管系イベントの可能性または進行中の心血管疾患の結果を予測するために用いることができる。
【0077】
ある特定の実施形態において、対象は、非喫煙者である。「非喫煙者」とは、評価時に、喫煙者ではない個人を描写する。これには、一度も喫煙したことがない個人、ならびに喫煙していたが、過去1年以内にタバコ製品を使用していない個人が含まれる。ある特定の実施形態において、対象は、喫煙者である。
【0078】
いくつかの実施形態において、対象は、非脂質異常症の対象である。「非脂質異常症の」とは、非高コレステロール血症のおよび/または高トリグリセリド血症の対象である対象を描写する。「非高コレステロール血症の」対象は、高コレステロール血症の対象向けに制定された現在の規準に該当しない対象である。高トリグリセリド血症の対象は、高トリグリセリド血症の対象向けに制定された現在の規準に該当しない対象である(例えば、Harrison’s Principles of Experimental Medicine,15th Edition,McGraw−Hill、Inc.,N.Y.−−hereinafter“Harrison’s”を参照のこと)。高コレステロール血症の対象および高トリグリセリド血症の対象は、早発性冠状動脈性心臓疾患の発生率増加と関連している。高コレステロール血症の対象は、160mg/dL超、または超130mg/dL超のLDLレベル、ならびに男性、早発性冠状動脈性心臓疾患、タバコ喫煙(1日当たり10本超)、高血圧症、低HDL(35mg/dL未満)、真性糖尿病、高インスリン血、腹部肥満、高リポタンパク質(a)の家族歴、および脳血管疾患または閉塞性末梢血管疾患の個人の病歴から成る群から選択される少なくとも2つの危険因子を有する。高トリグリセリド血症の対象は、250mg/dL超のトリグリセリド(TG)レベルを有する。したがって、非脂質異常症の対象は、コレステロールおよびトリグリセリドレベルが、高コレステロール血症の対象および高トリグリセリド血症の対象の両方において説明されるように設定した境界を下回る対象と定義される。
【0079】
コリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを測定するための方法
コリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを、当分野で既知の標準の方法を含む任意の好適な分析法を用いて測定することができる。例えば、対象中のTMANO、コリン、クロトノベタイン(トランスおよびシス)、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、およびベタインのレベルを、コリン関連トリメチルアミン含有化合物等の有機小分子を同定することができる検出器を含む機械である分析デバイスを用いて測定することができる。分析デバイスは、質量分析計、紫外分光計、または核磁気共鳴分光計等の分光デバイスであり得る。分光計は、生体試料(例えば、体液)等の媒体中の特定の種の濃度または量を評価するために分光技術を用いるデバイスである。コリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを測定するために用いられる分析デバイスは、携帯型デバイスまたは固定デバイスのいずれかであり得る。コリン関連トリメチルアミン含有化合物を検出するために用いられる機器を含むことに加えて、分析デバイスは、分析前に検体の物理的分離をもたらすために追加の機器も含み得る。例えば、検体検出器が質量分析計である場合、それは、それらの検出前に、質量分析によってコリン関連トリメチルアミン含有化合を精製するために、高速液体クロマトグラフ(HPLC)またはガスクロマトグラフ(GC)も含み得る。
【0080】
本明細書に示される、質量分析に基づく方法を、生体試料注のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインを評価するために用いることができる。質量分析計には、電離源(例えば、エレクトロスプレーイオン化)、イオン化源で形成されるイオンをそれらの質量対電荷(m/z)比に従って分離するための分析器、および荷電イオンの検出器が含まれる。タンデム質量分析において、2つ以上の分析器が含まれる。そのような方法は、当分野において標準であり、例えば、オンラインエレクトロスプレーイオン化(ESI)を伴うHPLCおよびタンデム質量分析を含む。
【0081】
他の分光方法を、コリン関連トリメチルアミン含有化合物を検出するために用いることができる。例えば、コリン関連トリメチルアミン含有化合物を、(誘導体化形態の)UVもしくはVisを含むが、それらに限定されない多種多様の検出器を用いたHPLC、質量分析、またはGC/MSによって測定することができる。コリン関連トリメチルアミン含有化合物を同定するために用いることができる別の方法は、核磁気共鳴(NMR)である。NMRの例には、プロトンNMRおよび炭素13NMRが挙げられる。
【0082】
いったんコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルが決定されると、それらを、多種多様の方法で示すことができる。例えば、コリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを、数値もしくは比例バー(すなわち、棒グラフ)としてディスプレイ上でグラフを用いて、または当業者に既知の任意の他の表示方法で示すことができる。グラフ表示は、評価される生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物(例えば、TMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、またはベタイン)の量の視覚表示を提供することができる。加えて、いくつかの実施形態において、分析デバイスを、対象の体液中のTMANOのレベルと、参照コホート由来の同程度の体液のTMANOのレベルに基づく対照値との比較を示すよう構成することもできる。
【0083】
対照値
ある特定の実施形態において、試験対象から得られた生体試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルを、対照値と比較することができる。対照値は、検体の既知の量または典型的な量を表す検体の濃度である。例えば、対照値は、参照コホートから得られた同程度の試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルに基づき得る。ある特定の実施形態において、参照コホートは、一般集団である。ある特定の実施形態において、参照コホートは、ヒト対象の選択集団である。ある特定の実施形態において、参照コホートには、狭心症等のアテローム性動脈硬化の存在を示すいかなる兆候もしくは症状、心筋梗塞もしくは脳卒中等の心血管系イベントの病歴、冠動脈造影を含むが、それに限定されない診断的画像法によるアテローム性動脈硬化の兆候を以前に有していない個人が含まれる。ある特定の実施形態において、参照コホートは、医療専門家によって検査された場合に、疾患(例えば、心血管疾患)の症状がないと見なされるであろう個人を含む。別の実施例では、参照コホートは、非喫煙者(すなわち、タバコまたは葉巻等の関連品目を喫煙しない個人)である個人であり得る。非喫煙者コホートは、喫煙集団もしくは一般集団とは異なる正常範囲のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインを有し得る。したがって、選択される対照値は、試験対象が分類されるカテゴリーを考慮し得る。当業者は、単なる日常的な実験を用いて、適切なカテゴリーを選択することができる。
【0084】
対照値は、試験対象から得られたTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルを特徴づけるために使用される同一の単位を用いて測定される。したがって、TMANOのレベルが、血液1mL当たりのTMANO、コリン、および/またはベタインの単位等の絶対値である場合に、対照値は、ヒト対象の一般集団もしくは選択集団における個人の、血液1mL当たりのTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインの単位にも基づく。
【0085】
対照値は、多種多様の形態をとることができる。対照値は、中央値または平均値等の単一カットオフ値であり得る。対照値を、1つの規定集団の危険性が、別の規定集団の危険性の2倍である場合等の、比較集団に基づいて確立することができる。対照値を、低危険性群、中程度の危険性群、および高危険性群等の群に、あるいは象限に、平等に(または不平等に)分けることができ、最も低い象限象限は、最も低い危険性を有する個人であり、最も高い象限は、最も高い危険性を有する個人であり、CVDを有する試験対象の危険性は、どの群に彼または彼女の試験値が収まるかに基づき得る。平均レベル、中央値レベル、または「カットオフ」レベル等の得られた生体試料中のTMANの対照値は、一般集団もしくは選択集団における個人の大試料をアッセイすることによって、ならびに参照により本明細書に明確に組み込まれる、Knapp,R.G.,and Miller,M.C.(1992). Clinical Epidemiology and Biostatistics. William and Wilkins,Harual Publishing Co.Malvern,Pa.で説明される最適特異性(最も高い真陰性率)および感度(最も高い真陽性率)を規定する陽性基準または受信者動作特性曲線を選択するための予測値法等の統計モデルを用いることによって確立される。「カットオフ」値を、アッセイされる各々の危険予測の判断材料において決定することができる。
【0086】
対象から得られたコリン関連トリメチルアミン含有化合物と対照値との比較
対象の生体試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルを、単一対照値または様々な対照値と比較することができる。試験対象の生体試料中の本危険予測の判断材料のレベルが対照値より大きいか、対照値を超えるか、あるいは対照値の上限範囲である場合に、試験対象は、対照値と同程度、または対照値より低いか、あるいは対照値の下限範囲のレベルを有する個人よりも、翌1年、2年、および/または3年以内に、CVD(または真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、もしくはNASH)を発生または有するか、あるいは心血管系イベントを経験するより高い危険性がある。対照的に、試験対象の生体試料中の本危険予測の判断材料のレベルが、対照値を下回るか、あるいは対照値の下限範囲である場合に、試験対象は、レベルが、対照値と同程度、または対照値を上回るか、あるいは対照値の上限範囲を超えるか、上限範囲である個人よりも、翌1年、2年、および/または3年以内に、CVD(または真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、もしくはNASH)を発生または有するか、あるいは心血管系イベントを経験するより低い危険性がある。試験対象の危険予測の判断材料レベルと対照値との間の差異の程度は、危険性の程度を特徴づけ、それによって、どの個人が、ある特定の積極的治療から最も大きな恩恵を受けるかを決定するのにも有用である。それらの事例において、対照値範囲が、高い危険性、平均の危険性、および低い危険性の個人に対する対照値範囲等の複数の群に分けられる場合、比較は、関連性のある危険予測の判断材料の試験対象のレベルがどの群に分類されるかを決定することを含む。
【0087】
対照値の別の種類は、試料中の内部標準物質である。内部標準物質は、参照の役割を果たす検体とともに測定することができる試料中にもたらすことができる別の化合物の既知量である。本明細書に記載の診断的方法を、対象の生体試料中のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインのレベルを決定し、それらを内部標準物質の量と比較することによって実行することもできる。
【0088】
治療薬の評価
CVD、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを有するか、それらを発生する危険性があると診断された個人への、CVD、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASH治療薬の効果を評価するための方法も提供される。そのような治療薬には、抗生物質、抗炎症薬、インスリン感作物質、血圧降下薬、抗血栓薬、抗血小板薬、線維素溶解薬、脂質還元剤、直接トロンビン阻害剤、ACAT阻害剤、CDTP阻害剤チオグリタゾン、糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害剤、アポA−IミラノもしくはCETP阻害剤等のHDL代謝を上昇もしくは変化させることを目的とした作用物質(例えば、トルセトラピブ)、または人工HDLとしての役割を果たすよう設計された作用物質が含まれるが、それらに限定されない。したがって、本明細書で使用されるCVD治療薬は、様々な心血管関連状態を治療することができる作用物質の広範囲を指し、伝統に基づいて定義された種類の心血管作用薬よりも化合物を包含し得る。
【0089】
CVD、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASH治療薬の効力の評価は、生体試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物もしくは化合物の既定値を得ること、および治療薬の投与後に対象から採取された対応する生体液中の1つ以上のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルを決定することを含み得る。治療薬の投与前に採取された試料中の選択された危険マーカーのレベルと比較して、治療薬の投与後に採取された試料中のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のうちの1つ以上のレベルの減少は、治療を受ける対象の心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHへの治療薬の好ましい効果を示す。
【0090】
既定値は、治療薬の投与前に対象から採取された生体試料中の1つ以上のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルに基づき得る。別の実施形態において、既定値は、本明細書で定義される外見上健常である対照対象から採取された同程度の生体試料中の1つ以上のコリン関連トリメチルアミン含有化合物のレベルに基づく。
【0091】
本明細書に記載の方法の実施形態は、CVD(または真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、もしくはNASH)を予防するか、あるいはCVDの進行を遅延することを標的とした治療薬が、個人に処方されるべきか、あるいは処方されるべきではないか、およびいつ処方されるべきか、あるいは処方されるべきではないかを決定するのにも有用であり得る。例えば、ある特定のカットオフ値を上回るか、あるいは「正常範囲」の三分位もしくは四分位よりも高い値のTMANO、コリン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタインを有する個人を、脂質低下薬、インスリン、生活様式の変化等を伴うより積極的な介入治療を必要とする個人と同定してもよい。
【0092】
薬物スクリーニングおよび治療薬
いくつかの実施形態において、本発明は、(例えば、TMA形成阻害剤薬物をクリーニングするための)薬物スクリーニングアッセイを提供する。本発明のスクリーニング方法は、トリメチルアミンを形成するためにコリン関連TMA含有化合物を切断することができる腸内細菌叢とインキュベートされる前駆物質(例えば、TMANO、コリン、クロトノベタイン(シスおよびトランス)、ガンマブチロベタイン、カルニチン、4−トリメチルアンモニウムブチルアルデヒド、デヒドロカルニチン、3−ヒドロキシ−N6−トリメチルリジン、N6−トリメチルリジン、トリメチルアンモニウムアセトン、デカルボキシカルニチン、ホスホコリン、ベタインアルデヒド、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、および/またはベタイン)を含有するトリメチルアミンを活用する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、TMAを形成するために、前駆物質を含有するTMAを切断する細菌叢の能力を阻害する化合物をスクリーニングする方法を提供する。いくつかの実施形態において、候補化合物は、抗生物質化合物である。他の実施形態において、候補化合物は、(例えば、小分子ライブラリからの)小分子である。
【0093】
1つのスクリーニング方法において、候補化合物を、候補化合物を、細菌叢を含有する試料および前駆物質を含有するTMAと接触させ、次に、TMA形成への候補化合物の効果をアッセイすることによって、細菌叢によるTMA形成を阻害するそれらの能力において評価する。いくつかの実施形態において、TMA形成への候補化合物の効果は、形成されるTMAのレベルを検出することによってアッセイされる。
【0094】
具体的には、本発明は、腸内細菌叢が前駆物質であるTMA含有分子からTMAを形成するのを防ぐ調節物質、すなわち、候補もしくは試験化合物または作用物質(例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、ペプトイド、小分子、抗生物質、または他の薬物)を同定するためのスクリーニング方法を提供する。腸内細菌叢によるTMAの形成を阻害する化合物は、心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHの治療において有用である。
【0095】
本発明の試験化合物を、生物学的ライブラリ、ペプトイドライブラリ(酵素分解に耐性があるにもかかわらず生物活性のままである、ペプチドの機能性を有するが、新規の非ペプチド骨格を有する分子のライブラリ、例えば、Zuckennann et al.,J.Med.Chem.37: 2678−85(1994)を参照のこと)、空間的にアドレス指定可能な並列固相もしくは溶液相ライブラリ、逆重畳を必要とする合成ライブラリ法、「1ビーズ1化合物」ライブラリ法、ならびに親和性クロマトグラフィー選択を用いた合成ライブラリ法を含む、当分野で既知の組み合わせライブラリ法における多数のアプローチのうちのいずれかを用いて得ることができる。生物学的ライブラリおよびペプトイドライブラリアプローチが、ペプチドライブラリとの使用に好ましい一方で、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリに適用可能である(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
【0096】
ある特定の実施形態において、試験化合物は、抗生物質である。抗生物質の任意の種類を、スクリーニングすることができる。そのような抗生物質の例には、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリンインダニル、メズロシリン、ピペラシリン、チカルシリン、アモキシシリンクラブラン酸、アンピシリンスルバクタム、ベンジルペニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリンタゾバクタム、チカルシリンクラブラン酸、ナフシリン、第I世代セファロスポリン、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファクロル、セファマンドール、セフォニシド、セフォテタン、セフォキシチン、セフプロジル、セフメタゾール、セフロキシム、ロラカルベフ、セフジニル、セフチブテン、セフォペラゾン、セフィキシム、セフォタキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、リンコマイシン、トロレアンドマイシン、シノキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、グレパフロキサシン、レポフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン、オキソリン酸、ゲミフロキサシン、ペフロキサシン、イミペネムシラスタチンメロペネム、アズトレオナム、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、テイコプラニン、バンコマイシン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、マフェニド、スルファジアジン銀、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリムスルファメトキサゾール、スルファメチゾール、リファブチン、リファンピン、リファペンチン、リネゾリド、ストレプトグラミン、キヌプリスチンダルホプリスチン、バシトラシン、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、イソニアジド、メテナミン、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン、ノボビオシン、ポリミキシン、スペクチノマイシン、トリメトプリム、コリスチン、サイクロセリン、カプレオマイシン、エチオナミド、ピラジンアミド、パラアミノサリチル酸、およびエチルコハク酸エリスロマイシンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0097】
分子ライブラリの合成のための方法の例を、当分野、例えば、 DeWitt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909(1993)、Erb et al.,Proc.Nad.Acad.Sci.USA91:11422(1994)、Zuckermann et al.,J.Med.Chem.37:2678(1994)、Cho et al.,Science261:1303(1993)、Carrell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33.2059(1994)、Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061(1994)、およびGallop et al.,J.Med.Chem.37:1233(1994)で見出すことができる。
【0098】
化合物のライブラリを、溶液中(例えば、Houghten,Bio技法s13:412−421(1992))、またはビーズ上(Lam,Nature354:82−84(1991))、チップ上(Fodor,Nature364:555−556(1993))、細菌もしくは胞子上(米国特許第5,223,409号、参照により本明細書に組み込まれる)、プラスミド上(Cull et al.,Proc.Nad.Acad.Sci.USA89:18651869(1992))、もしくはファージ上(Scott and Smith,Science249:386−390(1990)、Devlin Science249:404−406(1990)、Cwirla et al.,Proc.NatI.Acad.Sci.87:6378−6382(1990)、Felici,J.Mol.Biol.222:301(1991))に呈することができる。
【0099】
腸内細菌叢によるTMA形成を阻害する試験化合物の能力を、TMA含有前駆物質化合物のTMA部分を検出可能に標識化することによって監視することができる。そのような検出可能な標識には、例えば、放射性同位体、発色団、蛍光色素分子、または酵素標識が含まれる。例えば、TMA含有前駆物質を、直接的もしくは間接的のいずれかで、125I、35S、14C、もしくはHで標識化することができ、放射性同位体を、放射線放出の直接計数またはシンチレーション計数によって検出することができる。あるいは、TMA含有前駆物質を、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、または発光酵素で酵素的に標識化することができ、酵素標識を、適切な基質の生成物への変換の決定によって検出することができる。
【0100】
一実施形態において、TMA含有前駆物質または試験物質は、固相上に係留される。固相上に係留されたTMA含有前駆物質を、反応の最後に検出することができる。
【0101】
ある特定の実施形態において、無細胞アッセイを、液相中で行うことができる。そのようなアッセイにおいて、反応生成物は、分画遠心分離(例えば、Rivas and Minton,Trends Biochem Sci18:284−7(1993)を参照のこと)、クロマトグラフィー(ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー)、電気泳動(例えば、Ausubel et al.,eds. Current Protocols in Molecular Biology1999,J.Wiley: New Yorkを参照のこと)、および免疫沈降(例えば、Ausubel et al.,eds. Current Protocols in Molecular Biology1999,J.Wiley: New Yorkを参照のこと)を含むが、それらに限定されない、いくつかの標準の技法のうちのいずれかによって、未反応成分から分離される。そのような樹脂法およびクロマトグラフ法は、当業者に既知である(例えば、Heegaard J.Mol.Recognit11:141−8(1998)、Hageand Tweed J.Chromatogr.Biomed.Sci.App1 699:499−525(1997)を参照のこと)。
【0102】
本発明は、上述のスクリーニングアッセイによって同定される作用物質にさらに関連する。したがって、そのような作用物質との治療の効力、毒性、副作用、または作用機序を決定するために、適切な動物モデルにおいて、本明細書に説明されるように同定される作用物質をさらに用いることは、本発明の範囲内である。さらに、上述のスクリーニングアッセイによって同定される新規の作用物質を、本明細書に記載の治療のために用いることができる。
〔実施例〕
以下の実施例は、図解の目的のみであり、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0103】
実施例1
以下の研究に基づいて、生体試料(例えば、血漿、血清、全血、または尿)中のTMANO(トリメチルアミン−N−オキシド)と呼ばれる化合物のレベルが、胸痛を呈する患者の評価、近い将来の評価等の短期の有害転帰、および地域密着型スクリーニングで得られる集団、または血管造影法、心臓CT、ストレス試験、または心筋灌流検査等の選択的診断的心血管処置を受ける対象等の低い危険性の集団の長期の転帰の両方において、心血管疾患の危険性の予測の判断材料の役割をし得ることが決定された。
【0104】
TMANOレベルは、冠動脈疾患(CAD)および/または末梢動脈疾患(PAD)等のCVDを有する危険性、ならびに非致死性心筋梗塞(MI)、脳卒中、血行再建の必要性、または死を含むCVD由来の有害なイベントを発生する危険性を予測する。
【0105】
TMANOレベルを、CVD治療ならびに抗炎症薬および他の心血管系危険低減介入治療への応答を監視するために用いることもできる。
【0106】
TMANOは、一連のメタボロミクス研究を経て発見された。それらのレベルが心血管疾患(CVD)を予測する、血漿、血清、血液、または尿中の低分子量検体を定義するために労力が注がれた。事例が、非致死性MI、脳卒中、血行再建イベント(CABG、血管形成、ステント)、または死を経験する等の、翌3年の期間内に心血管系イベントを経験する対象によって、ならびにそのようなイベントを欠いた個人である対照によって定義された、50%対照に対する50%事例の「学習セット」を用いた。検査された最初の対象は、選択的診断的心臓カテーテル法を受けた逐次対象および転帰データが使用可能であった対象の大規模の臨床リポジトリからであった。
【0107】
初めに、タンパク質を、血漿から除去し、低分子量成分(1000未満)を、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)で分析した。1000未満を溶出する分子量を有する各検体を、保持時間およびm/z、ならびにイオン化のシグナルに関して留意した。次に、本事例から得られた結果を、対照から得られた結果と比較した。
【0108】
m/z50〜100で監視された検体のみのプロットが、図1に示される。上のパネル(a)は、シグナルの規模を示す。事例と対照を識別することができた血漿中の検体を同定することに関心があり、それにおいて、大きなシグナルが見られた。中央のパネル(b)は、このm/zの範囲の各検体における、第4四分位対第1四分位のレベルの−ログP値を示す。これらを、CVD危険性を予測した検体を同定するために評価し、ひいては、有意なP値(すなわち、P0.05未満に相当する、1.3超の−ログP)を有した。下のパネル(c)は、各検体の第4四分位対第1四分位レベルに対するこのm/zの範囲の検体におけるオッズ比(95%信頼区間)を示す。高いオッズ比(OR)および信頼区間(CI)をもたらした検体が有意である。図1は、事例および対照から選択するのに好適である可能性のあったいくつかの検体を示す。検体が、高シグナル、対照からの事例の有意な分離、および心血管系イベントの予測に対する大きなオッズ比を示したため、m/z76を呈する検体の同定を探求した。
【0109】
図1に提供されるデータを、陽性ESI−MSイオンモードにおいて、Ionics EP 10+アップグレード(Concord)を有するAPI365三連四重極質量分析計(Applied Biosystems,Foster,CA)に連結する逆相HPLCで得た。80%メタノールで沈殿させた後の血漿上清(20μL)を、0.8mL/分の流速で、Phenylカラム(4.6×250mm、5pm Rexchrom Phenyl)(Regis)上に注入した。分離を、0.5分間にわたる10mmギ酸アンモニウムから、次いで、3分間にわたる5mmギ酸アンモニウム、25%メタノール、および0.1%ギ酸までの勾配を用いて実行し、8分間保持し、その後、100%メタノールおよび水で、それぞれ3分間洗浄した。HPLCカラムからの最初の4分間の溶出液を切り捨て、4〜11分間の溶出液のみを、質量分析計によるデータ収集に適用した。パネル(b)に関しては、診断的心臓カテーテル法を受け、研究登録後の翌3年を超えて主要な有害心イベントを経験しなかった50対照と、研究登録後3年以内に主要な有害心イベント(MACE、非致死性MIの複合、脳卒中、血行再建の必要性、または死)を経験した50事例との間の抽出イオンにおける差異の著しいレベルである。パネル(c)に関しては、抽出イオンピーク面積に準じた、MACE、血行再建(Revasc)、非致死性MI、または脳卒中、死に対する見込まれる危険性のオッズ比である。オッズ比(OR)および信頼区間(CI)を、最高四分位から最低四分位の危険性を比較しながら、ロジスティック回帰モデルを用いて計算した。
【0110】
3つの別々のカラム/移動相の組み合わせにおいて、TMANOと同様のクロマトグラフ特性を有する心疾患危険性を追跡する血漿中のm/z76の検体を示し、1つのピークを有することから証明されるように、検体が一種であるように見えるクロマトグラフが、図2に示される。
【0111】
図2に提供されるデータを、陽性ESI−MSイオンモードにおいて、Ionics EP 10+アップグレード(Concord)を有するAPI365三連四重極質量分析計(Applied Biosystems,Foster,CA)に連結する逆相HPLCで得た。80%メタノールまたは20μLトリメチルアミンN−オキシド(TMANO)で沈殿させた後の血漿上清(20μL)を、0.8mL/分の流速(a〜b)で、Phenylカラム(4.6×250mm、5pm Rexchrom Phenyl)(Regis)上に、または0.2mL/分の流速(c)で、Prodigy 5u ODS(2)カラム(150×2.00mm、5ミクロン)上に注入した。パネルaの分離を、0.5分間にわたる10mmギ酸アンモニウムから、次いで、3分間にわたる5mmギ酸アンモニウム、25%メタノール、および0.1%ギ酸までの勾配を用いて実行し、8分間保持し、その後、100%メタノールおよび水で、それぞれ3分間洗浄した。パネルbの分離を、2分間にわたる0.1%ギ酸から、次いで、18分間にわたる0.1%ギ酸を有する18%アセトニトリルまでの勾配を用いて実行し、その後、100%アセトニトリルおよび水で、3分間ずつ洗浄し、2分間にわたる0.1%ギ酸から、次いで、18分間にわたる0.1%ギ酸を有する18%アセトニトリルまでの勾配を用いて実行し、その後、100%アセトニトリルおよび水で、それぞれ6分間洗浄した。パネルcの分離を、0.1%ギ酸から、0.1%ギ酸を有する50%アセトニトリルまでの18分間にわたる勾配を用いて実行し、その後、100%アセトニトリルおよび水で、3分間ずつ洗浄し、2分間にわたる0.1%ギ酸から、次いで、18分間にわたる0.1%ギ酸を有する18%アセトニトリルまでの勾配を用いて実行し、その後、100%アセトニトリルおよび水で、それぞれ3分間洗浄した。
【0112】
表1aは、偶発的CVD危険性を追跡する血漿から単離した成分が、TMANOであり、同一の分子量および元素組成物を有する別の異性体ではない確証を提供する。TMANOのみが、CVD危険性を予測する血漿から単離した検体と同程度の3つの異なる溶媒系において、保持時間を有する同一の親−娘イオンを示すことに留意する。
【0113】
【表1a】

【0114】
系1:Regis RexChrom Phenyl HPLCカラム(25cm×4.6mm、5ミクロン、100A)。分離を、0〜0.5分間の10mmギ酸アンモニウム、0.5〜3.5分間の直線的に変化した5mmギ酸アンモニウムを有する25%メタノールおよび0.1%ギ酸、8分間保持、11.5〜14分間の直線的に変化した10mmギ酸アンモニウムを有する100%メタノール、3分間保持、17〜20分間の水中の10mmギ酸アンモニウムの勾配を用いて実行した。流速は、0.8mL/分である。
【0115】
系2:Regis RexChrom Phenyl HPLCカラム(25cm×4.6mm、5ミクロン、100A)。分離を、2分間にわたる0.1%ギ酸から、次いで、18分間にわたる0.1%ギ酸を有する18%アセトニトリルまでの勾配を用いて実行し、その後、100%アセトニトリルおよび水で、3分間ずつ洗浄し、2分間にわたる0.1%ギ酸から、次いで、18分間にわたる0.1%ギ酸を有する18%アセトニトリルまでの勾配を用いて実行し、その後、100%アセトニトリルおよび水で、それぞれ6分間洗浄した。流速は、0.8mL/分である。
【0116】
系3:Prodigy 5u ODS(2)カラム(150×2.00mm、5ミクロン)。分離を、0.1%ギ酸から、0.1%ギ酸を有する50%アセトニトリルまでの18分間にわたる勾配を用いて実行し、その後、100%アセトニトリルおよび水で、3分間ずつ洗浄し、2分間にわたる0.1%ギ酸から、次いで、18分間にわたる0.1%ギ酸を有する18%アセトニトリルまでの勾配を用いて実行し、その後、100%アセトニトリルおよび水で、3分間ずつ洗浄した。流速は、0.2mL/分であった。
【0117】
表1bは、偶発的CVD危険性を追跡する血漿から単離した成分が、TMANOであって、同一の分子量および元素組成物を有する別の異性体ではない、さらに独立した確証を提供する。TMANOのみが、CVD危険性を予測する血漿から単離する時に、保持時間を有する同一の親−娘イオンを示すことに留意する。単離した血漿成分および同一の分子量および元素組成物を有する異性体を示す構造を、2つのはっきり異なる誘導体化戦略の後に、GC MSで分析した。表1aおよび1bの結果は、TMANOとしての偶発的CVD危険性を予測する単離した血漿成分を明らかに同定する。
【0118】
【表1b】

【0119】
系1、成分を、HMDS、TMCS、ピリジンを含有するSylon HTPキット(Supelco,LB44596)と90℃で9時間反応させた。TMS誘導体のGC−MS分析を、試薬ガスとしてメタンを有する化学イオン化モードの陽イオンを用いて、Hewlett Packard6890ガスクロマトグラフに連結するHewlett Packard(Palo Alto,CA)5973質量分析計上で実行した。源温度を250℃に設定した。TMS誘導体を、J&W Scientific(Folsom,CA)DB−1カラム(20.0m、0.18mm内径、0.18pm膜厚)上で分離した。注入器温度および移送ライン温度を、320℃で維持した。GCオーブンを、60℃で2分間維持し、20℃/分の速度で300℃まで上昇させた。
【0120】
系2、成分を、塩化チタニウム(III)と、次に、トリクロロエチルクロロギ酸エステル(TCECF)と反応させた。生成物を、トルエン中に溶解した。TMS誘導体のGC−MS分析を、試薬ガスとしてメタンを有する化学イオン化モードの陽イオンを用いて、Hewlett Packard 6890ガスクロマトグラフに連結するHewlett Packard(Palo Alto、CA)5973質量分析計上で実行した。源温度を250℃に設定した。TMS誘導体を、Agilent HP−1 Methyl Siloxaneカラム(12.0m、0.20mm内径、0.33ttm膜厚)上で分離した。注入器温度および移送ライン温度を、250℃で維持した。GCオーブンを、70℃で2分間維持し、25℃/分の速度で170℃まで上昇させた。
【0121】
図3は、TMANOが、偶発的CVD危険性を予測するm/z76の血漿成分と同一であることを確証する図解データを提供する。パネルaは、血漿成分とTMANOのCIDスペクトルが同一であることを示す。パネルbおよびcは、血漿成分における特徴的な親−娘イオン遷移の保持時間が、2つのはっきり異なるHPLCクロマトグラフシステムにおいて、TMANOと同一であり、同一の分子量を有する血漿中の他の種を、TMANOと識別することができ、かつ単離した血漿成分と全ての特性を共有しないことを示す。
【0122】
図3(a)に提供されるデータを、血漿上清の陽性MS1モードおよびTMANO基準において、抽出されたイオンクロマトグラムにおけるm/z=76のピークに相当する衝突(エネルギー21eV)誘起解離(CID)質量スペクトルを用いて得た。図3(b)に提供されるデータを、76→58の親−娘遷移を有する陽イオン多重反応監視(MRM)モードにおいて、抽出されたイオンクロマトグラムで得た。試料(20μL)を、0.8mL/分の流速で、Phenylカラム(4.6×250mm、5pm Rexchrom Phenyl)(Regis)上に注入した。分離を、0.5分間にわたる10mmギ酸アンモニウムから、次いで、3分間にわたる5mmギ酸アンモニウム、25%メタノール、および0.1%ギ酸までの勾配を用いて実行し、8分間保持し、その後、100%メタノールおよび水で、3分間ずつ洗浄した。図3(c)に提供されるデータを、76→59のグリシンを除いて、76→58の親−娘遷移を有する陽性MRMモードにおいて、抽出されたイオンクロマトグラムで得た。試料(20μL)を、0.8mL/分の流速で、Phenylカラム(4.6×250mm、5Rexchrom Phenyl)(Regis)上に注入した。分離を、2分間にわたる0.1%ギ酸から、次いで、18分間にわたる0.1%ギ酸を有する18%アセトニトリルまでの勾配を用いて実行し、その後、100%アセトニトリルおよび水で、6分間ずつ洗浄した。
【0123】
診断的心臓カテーテル法を受けた約500名の逐次男性および500名の逐次女性における、TMANOが、CVD、CAD、PAD、またはCADおよびPADの組み合わせを有する危険性を予測することを示すための、最初の独立した臨床評価研究の結果が、図4ならびに表2aおよび2bに示される。表2aは、心血管疾患の臨床的証拠または血管造影による証拠を有さない対象と対比した、CVDを有する対象の患者の特性および人口動態を示す。図4aは、研究コホート中のCVDを有さない対象と対比した、CVDを有する対象におけるTMANOのレベルのボックスウィスカープロットである。図4bは、集団においてCVD、CAD、PAD、またはCAD+PADを有する可能性と対比した、全集団の四分位によって階層化されたTMANOレベルの発生頻度プロットを示す。TMANOのレベルの増加は、CVD、CAD、PAD、またはCAD+PADを有する可能性の増加と強く関連することに留意する。図4cおよび表2bは、伝統的な心疾患危険因子調整後の、CVD、CAD、PAD、またはCAD+PADを有する可能性と対比した、TMANOレベルのオッズ比および95%信頼区間を示す。これらの結果は、CVD、CAD、PAD、またはCAD+PADを有する危険性を有する個人を同定する大規模な臨床研究におけるTMANOレベルの測定を示す。
【0124】
【表2a】

【0125】
【表2b】

【0126】
非致死性MIもしくは脳卒中、血行再建イベント、死、または複合(MACE、主要な有害心イベント)を経験する3年間の偶発的危険を予測するTMANOレベルを示す第2の臨床評価研究の結果が、図5ならびに表3aおよび3bに示される。表3aは、MACEを有さない対象と対比した、登録後の翌3年間にわたってMACEを経験する対象によって階層化された対象の患者特性および人口動態を示す。図5aは、研究コホート中のMACEを経験しない対象と対比した、将来的にMACEを経験する対象におけるTMANOのレベルのボックスウィスカープロットである。図5bは、全集団において偶発的非致死性MIもしくは脳卒中、血行再建イベント(CABG、血管形成、またはステント)、死、または複合(MACE)を経験する可能性と対比した、全集団の四分位によって階層化されたTMANOレベルの発生頻度プロットを示す。TMANOのレベルの増加は、非致死性MIもしくは脳卒中、血行再建イベント(CABG、血管形成、またはステント)、死、または複合(MACE)の3年間の偶発的危険を強く予測することに留意する。図5cおよび表3bは、伝統的な心疾患危険因子調整後の、非致死性MIもしくは脳卒中、血行再建イベント(CABG、血管形成、またはステント)、死、または複合(MACE)の3年間の偶発的危険と対比した、TMANOレベルのオッズ比および95%信頼区間を示す。これらの結果は、非致死性MIもしくは脳卒中、血行再建イベント(CABG、血管形成、またはステント)、死、または複合(MACE)の3年間の偶発的危険の強力かつ独立した予測の判断材料の役割を果たす、TMANOレベル測定を示す。
【0127】
【表3a】

【0128】
【表3b】

【0129】
ζ モデルは、フラミンガム危険因子スコア、MDRD、CRP、およびTMANOから成った。
【0130】
図5に示されるデータを得るために、血漿を、診断的心臓カテーテル法を受け、かつ研究登録後3年以内にMACEを経験した事例対象(n=374)からのTMANO含有物において分析した。平行分析も、診断的心臓カテーテル法を受け、かつ研究登録後3年間でMACEを経験しなかった対照対象(n=619)からの血漿上で実行した。
【0131】
実施例2
逐次事例:対照設計を用いて、メタボロミクス分析(すなわち、特定の細胞過程によって置き去りにされた独特な化学的指紋の組織的研究)を、LC/MSで実行し、翌3年間にわたってMACEの危険性のある対象を同定する血漿中の小分子を同定した。13個の検体のみが、学習コホートと確認コホートの両方における危険性を区別する合格基準を満たした。これらの代謝産物のうち、3個の検体(76、104、および118の質量対電荷比(m/z)を有する)を明らかにした回帰分析は、(P0.0001未満)に強く相関しており、一般的な経路を介するそれらの関係を示唆する。LC/MS/MS、化学的誘導体化、GC/MS、様々なコリン同位体異性体でのマウスの給餌を用いて、m/z=76、104、および118を有する種を、それぞれ、トリメチルアミンN−オキシド(TMANO)、コリン、およびベタインと同定した。3年間のMACE危険性の予測における血漿TMANO、コリン、およびベタインレベルの予後有用性が、診断的左心カテーテル法を受けた1,020名の逐次同意対象において確認された。最も低い四分位と比較して、TMANO、コリン、またはベタインのうちのいずれかの高(第4四分位)レベルを有する対象は、フラミンガム危険因子およびCRPから独立して、CADを有する可能性が3倍超であり、PADを有する可能性が5.0倍超であり、翌3年間にわたってMACEを経験する可能性が2倍超である。
【0132】
実施例3
トリメチルアミン−N−オキシド(TMANO)の血漿レベルが、慢性うっ血性心不全と診断された患者において上昇することが示される場合もある。心不全(HF)および安定した状態の既知診断を有する患者、ならびに心不全または心機能異常(非HF)の実証された兆候もしくは症状を有さない対照患者から、血液試料を得る。対照患者は、真性糖尿病、高血圧症、および慢性閉塞性肺疾患等の他の状態を有し得る。左室駆出分画を、シンプソン公式を用いて、経胸壁心エコー検査によって決定する。
【0133】
試料を、エチレンジアミン四酢酸血漿Vacutainer(Becton Dickinson and Company,Franklin Lakes,New Jersey)を用いて収集し、処理し、分析時まで−80℃で凍結させた。血漿TMANOレベルを、実施例1で説明されるように決定する。血漿B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルを、実験室に基づくアッセイ(AxSYM BNP,Abbott Diagnostics,Inc.,Abbott Park,Illinois)で決定することもできる。クラスカルワリス(順位和)検定を用いて、HFコホートに従って、かつNew York Heart Association(NYHA)クラスにわたって分類されたTMANOとBNPの差異を比較する。コクランアーミテージ検定が、TMANO四分位にわたって、HF、虚血性要因を有する患者または男性の患者の割合における傾向を検出するのに対して、分散試験の分析は、TMANO四分位にわたって、連続した臨床的変数における差異を評価する。自然対数変換を、スピアマン相関係数を決定するために適用する。HFを有する患者のオッズ比を、第1の四分位(オッズ比1.0)に対して、TMANOの第2、第3、および第4の四分位にわたって、多変量ロジスティック回帰から計算する。年齢およびBNPレベルの調整を行うことができる。受信者動作特性分析は、HFを予測するために、最適なTMANOカットオフを計算する。0.05未満のP値を、統計的に有意であると見なす。統計分析を、JMP5.1(SAS Institute Inc.,Cary,North Carolina)を用いて実行する。
【0134】
結果は、TMANOレベルの四分位の増加が、HFのより高い有病率と関連することを示すと予想される。
【0135】
HFコホートにおける平均血漿TMANOレベルは、対照患者と比較して、著しく上昇すると予想される。さらに、平均血漿TMANOレベルは、NYHAクラスの増加に並行して増加すると予想される。
【0136】
本研究は、血漿TMANOレベルが、HFを有する患者において上昇することを実証し、増加したレベルが、NYHAクラスの悪化に関連する。
【0137】
実施例4
TMANOの血漿レベルは、慢性心不全を有する患者の評価における予後値を有することを示す場合もある。本研究の主目的は、慢性収縮期HFを有する患者の血漿TMANOレベルと心内構造、収縮および拡張能力、および全般的な予後との間の関係を決定することである。
【0138】
ADEPT(予後および治療におけるドップラー心エコー検査の評価)研究の神経ホルモン副研究が以前に説明された。Troughton et al.,J.Am.Coll.Cardiol.43,416−22(2004)を参照されたい。安定した慢性収縮期心不全(HF)(左室駆出分画[LVEF]35%未満、New York Heart Association機能クラスII〜IV)を有する患者は、収縮および拡張能力の心エコー評価、ならびに血漿試料収集を受ける。臨床事象(原因を問わない死亡率、心臓移植、またはHFでの入院)を、定期的な電話でのフォローアップによって追跡し、Troughton et al.(Am.J.Cardiol 96,257−62(2005))によって説明されるようなカルテ審査によって認証する。クレアチニンクリアランスを、クレアチニン、年齢、および体重に基づくコッククロフトゴールト式を用いて計算することもできる。血漿B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルを、クライストチャーチBNPアッセイで分析することができる。
【0139】
エチレンジアミン四酢酸血漿管を用いて試料を収集し、処理し、分析時まで−80℃で凍結させた。血漿TMANOレベルを、実施例1で説明されるように決定する。実験室分析を、臨床転帰に左右されない研究者同伴で実行するべきである。
【0140】
包括的経胸壁心エコー検査を、市販のHDI5000(Phillips Medical Systems,Bothell,Washington)およびAcuson Sequoia(Siemens Medical Solutions USA,Inc.,Malvern,Pennsylvania)機械を用いて実行することができる。二次元およびカラードップラー画像を、標準の傍胸骨および尖端審査において実行することができる。拡張期指標(パルス波ドップラー、カラーMモード、および組織ドップラー画像を含む)を、先に説明された技法を用いて、50cm/秒〜100cm/秒の掃引速度で、10回の連続拍動にわたって得る。拡張期段階の分類を、以下のように決定する:第I段階(弛緩障害)は、1未満の僧帽弁E/A、220分超の減速時間、1超の肺静脈S/D、35cm/秒未満の心房逆転(AR)から成り、第II段階(偽正常型)は、1〜2の僧帽弁E/A、1未満の肺静脈S/D、220分未満減速時間、35cm/秒のAR?を示し、第III段階(拘束性)は、僧帽弁E/Vp比をもたらす。LVEFおよび心臓容積を、シンプソン二方向法を用いて測定する。測定を、3周期(心房細動においては5周期)にわたって平均化し、神経ホルモンデータを把握していない2名の経験を積んだ個人は、全ての測定を行う。
【0141】
血漿TMANOレベルを異常に分配し、ノンパラメトリック変数(中央値および四分位範囲[IQR]として表される)として扱うことができる。分割表分析を、TMANO三分位にわたって、臨床的割合における差異を評価するために実行するのに対して、分散分析またはクラスカルワリス検定を用いて、分配が正常であるか否かに準じて、TMANO三分位にわたって、連続した臨床的変数における差異を評価する。正規性を、シャピロウイルクW検定によって評価する。スピアマン順位相関法を、血漿TMANOレベルと全ての臨床的変数との間の相関における関連のノンパラメトリック測定として用いる。変化した収縮または拡張能力を有するオッズ比を、第1の三分位(オッズ比=1.0)に対して、TMANOの第1、第2、および第3の三分位にわたって、多変量ロジスティック回帰多変量ロジスティック回帰から計算する。年齢およびBNPレベルの調整を行うことができる。カプランマイヤー生存プロットを、平均33ヶ月のフォローアップにわたる、原因を問わない死亡率、心臓移植、またはHFでの入院の期間に対するベースラインから計算することができる。全ての単変量および多変量コックス比例危険分析も、原因を問わない死亡率、心臓移植、または結果的なHFでの入院、ならびに血漿TMANOの最も低い三分位に対して、上位2つの三分位内の患者の結果におけるカテゴリー変数モデル差異として扱われる血漿TMANOレベルを用いて計算する。受信者動作特性曲線分析を実行して、BNPを有するTMANOの増分予後値を決定することができる。0.05未満のP値は、統計的に有意であると見なされる。統計分析を、SASバージョン9.1およびJMPバージョン5.1(SAS Institute Inc.,Cary,North Carolina)を用いて実行する。
【0142】
血漿TMANOレベルの増加は、右室収縮期不全の高い割合と関連することが予想される。対数変換血漿TMANOレベルとの統計的に有意な相関を示す変数を用いた、多変数段階的ロジスティック回帰分析において、組織ドップラー画像に由来する中隔Aa波のみが、TMANOレベルとの独立した関連を示すことが予想される。
【0143】
1つ以上のコリン関連トリメチルアミン含有化合物の上昇したレベルを有する患者が、心血管系イベント、死、または心臓移植を経験すると予想することができる。
【0144】
実施例5
健常な高齢対象のTMANOレベルを用いて、心不全を発生する危険性を予測することができる。本研究の目標は、偶発的HFの危険性を評価することであり、したがって、蔓延しているHF、蔓延している心筋梗塞(MI)、蔓延している脳卒中を有したか、あるいは初診の前に死亡した患者を除外する。初回検査中に評価される要素は、年齢、人種、性別、糖尿病、高血圧症、喫煙、無症候性血管疾患、アルコール使用、習慣的薬物、身長、体重、血圧、ならびに検査室測定(TMANOおよび脂質)を含む場合もあり、かつ多変量分析において共変量として含まれる。蔓延している心不全の診断において、健康診断によって、または必要ならば、治療医師の調査もしくは医療記録の審査を含む検証プロトコルによって、自己報告を確認する。偶発的心不全の診断において、心不全の医師の診断は、その後に、参加者の医療記録の審査が続く。次に、心不全の発生率は、医師の診断、ならびに症状の検討、兆候、胸部X線所見、および心不全の治療(利尿薬およびジキタリスまたは血管拡張剤のいずれかの現在の処方)に基づいて、委員会によって決定される。収縮期および拡張期血圧を、座位での2つの連続した測定値の平均から計算する。喫煙を、習慣的喫煙対そうでない喫煙として定義する。低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールを、フリードワルド式で計算することができる。実証された無症候性心血管疾患(CVD)は、超音波によって監視されるような頸動脈内膜内側肥厚異常、足首上腕指数、心電図記録による上昇した左室重量、および主要な心電図異常を含み得る。イベント(MIおよび脳卒中を含む)に関するフォローアップ面談は、6ヶ月毎、および対面で毎年行う場合もある。
【0145】
トリメチルアミン−N−オキシド(TMANO)を、初回検査時に収集した凍結試料から測定する。血漿TMANOレベルを、実施例1に記載の方法を用いて決定する。
【0146】
四分位に基づく分析、ならびに四分位群にわたって人口動態特性および伝統的な心血管危険因子の分布から構成される比較を含む、事前に指定した統計分析計画を、実行する。ベースライン特性の差異を、連続型変数においてコクランアーミテッジ傾向検定、ならびにカテゴリー変数においてカイ二乗検定を用いて比較する。TMANOとHFとの間の関連を、多変量コックス比例ハザード回帰モデルで決定する。危険性のマーカーとしてのTMANO四分位の寄与を評価するために、モデルを未調整のまま段階的に作り出し、 次に、人口動態および心血管危険因子に応じて調整する。MI発症を有する参加者を審査するベースライン特性の関連への本介在するイベントを制御する効果を強化するために、分析を、モデルに付加された偶発的MIに関して、時間依存変数で実行する。
【0147】
より高いレベルのTMANOが、より高い偶発的HF発症と関連することが予想される。
【0148】
本発明者は、血液中のTMANOレベルと心疾患危険因子と心筋梗塞との間の相互関係を調査するために用いることができる2つの多変量モデルを開発した。モデル1において、本発明者は、時間依存共変量としてMIを治療する。時間依存共変量として、年齢、性別、収縮期血圧(SBP)、喫煙、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール、真性糖尿病、任意の無症候性心血管疾患およびMIを調整した後、上昇したTMANOレベルが、偶発的HFを発生する危険性が高まった対象を予測することが予想される。
【0149】
実施例6
患者のTMANOレベルを用いて、大動脈解離または大動脈瘤等の大動脈障害を発生する危険性を予測することができる。大動脈解離または大動脈瘤等の大動脈障害を以前に呈した患者を除外する。初回検査中に評価することができる他の要素は、年齢、人種、性別、糖尿病、高血圧症、喫煙、無症候性血管疾患、アルコール使用、習慣的薬物、身長、体重、血圧、ならびに検査室測定(TMANOおよび脂質)を含み、多変量分析において共変量として含まれる。大動脈解離もしくは大動脈瘤等の大動脈障害の診断において、健康診断または医療記録の審査によって報告を確認する。好ましくは、大動脈障害を、診断的画像技術を用いて確認する。大動脈障害(大動脈解離および/もしくは大動脈瘤を含む)に関するフォローアップ面談または検査は、3ヶ月毎、6ヶ月毎、毎年、あるいは他の計画を用いて行う場合もある。
【0150】
トリメチルアミン−N−オキシド(TMANO)レベルと大動脈障害の進行を相関させるために、最初に、TMANOのレベルを、初回検査で収集した凍結試料から測定する。血漿TMANOレベルを、実施例1に記載の方法を用いて決定する。次に、大動脈障害を経験したか、あるいは経験している患者の数を同定するために、患者を、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後、または2年もしくは3年等の別の間隔で評価する。大動脈解離および大動脈瘤の数を、別々に表にすることができる。
【0151】
四分位に基づく分析、ならびに四分位群にわたって人口動態特性および伝統的な心血管危険因子の分布から構成される比較を含む、事前に指定した統計分析計画を、実行する。ベースライン特性の差異を、連続型変数においてコクランアーミテッジ傾向検定、ならびにカテゴリー変数においてカイ二乗検定を用いて比較する。TMANOと大動脈障害との間の関連を、多変量コックス比例ハザード回帰モデルで決定する。危険性のマーカーとしてのTMANO四分位の寄与を評価するために、モデルを未調整のまま段階的に作り出し、 次に、人口動態および心血管危険因子に応じて調整する。
【0152】
より高いレベルのTMANOが、大動脈解離および大動脈瘤等の大動脈障害のより高い発生率と関連することが予想される。加えて、多変量モデルを用いて、血液中のTMANOレベルと伝統的な心疾患危険因子との間の相互関係を調査することができる。多変量モデルにおいて、時間依存共変量として、年齢、性別、収縮期血圧(SBP)、喫煙、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール、真性糖尿病、任意の無症候性心血管疾患およびMIを調整した後、上昇したTMANOレベルが、大動脈解離および/または大動脈瘤等の大動脈障害を発生する危険性が高まった対象を予測することが予想される。
【0153】
実施例7
本実施例は、トリメチルアミン種TMANO、コリン、およびベタインの予後値を説明する。分析に含まれる対象を、収縮期または拡張期心不全を有する対象における長期結果を検査したADEPT試験に登録した。下の表4に示される結果は、TMANO、コリン、およびベタインが、死および心臓移植後の死の危険性と関連し、コリンおよびベタインにおいては、心不全のための予定外の入院の危険性と関連することを示す。TMANOは、連続型変数と同一方向に傾くが、本実施例における不十分な試料数のため、有意性に至らないことに留意されたい。TMANOの第1の四分位レベルに対する第4の四分位レベルを見ると、同様に、予定外の入院との高いTMANOレベルの有意な(P0.05未満)関連性がある。
【0154】
【表4】

【0155】
血漿TMANOレベルを、心機能評価を受けた逐次対象(n=2983)(GeneBankコホート)において検査した。全体的に見て、左室収縮期不全(LVSD)を有する患者は、より高いTMANOのレベルを有し(P0.001未満)、HF(心不全)およびLVSDに対するマーカーとしてのTMANOレベルと一致する。図6では、本コホートの心不全の予測におけるTMANOの予後値を見る。監視したコホートのうち、大部分がCHF(n=2446)の病歴を有さなかった一方で、約18%が、うっ血性心不全(CHF、n=537)の病歴を有した。TMANOのレベルは、CHFよりも高かった(P0.001未満)。CHFを有する患者の間で、TMANOの上昇したレベルは、非致死性MI、脳卒中の進行、または死の危険性が高まった患者において観察された(中央値5.21対3.54、HR1.22、1.09〜1.35、p=0.001)。同様の結果が、代替のトリメチルアミン種で見られた。例えば、上昇したコリンは、CHF対象の間で、非致死性MI、脳卒中、または死と有意に関連した(11.8対10、HR1.18、1.06〜1.3、p=0.004)。CHF対象のみの間の血漿TMANOの中央値超対中央値未満の関係におけるカプランマイヤー(KM)生存プロットが、以下に示される(本群内で5.21の中央値にわたって階層化された)。その後の分析は、血漿TMANO(r=0.24、P0.001未満)およびコリン(r=0.23、P0.001未満)が、血漿BNPで監視されるような無症候性心筋伸張および機能不全の指数と適度の相関することも示した。
【0156】
実施例8
本実施例は、心血管疾患、脳卒中、血行再建の必要性、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、および非アルコール性メタボリックシンドローム(NASH)におけるクロトノベタイン(シスおよびトランス異性体の両方)、ガンマブチロベタイン、およびカルニチンの予後値および診断値を示す結果を提供する。
【0157】
心機能評価を受けた対象は、採血に同意し、血漿を単離し、分析時まで−80℃で凍結させた。対象を、心筋梗塞(MI)、脳卒中、血行再建の必要性、または死を含む主要な有害心イベントの進行において、翌4年間監視した。血漿を、示されたトリメチルアミン含有種において、安定同位体希釈LC/MS/MSで分析した。死、非致死性MIもしくは脳卒中、または血行再建の必要性の複合の危険性に対する、示されたトリメチルアミン含有検体における(三分位に階層化された)カプランマイヤー生存曲線が、図7に示される。とりわけ、図7Aは、クロトノベタインに関する本データを示し、図7Bは、ガンマブチロベタインに関する本データを示し、図7Cは、カルニチンに関する本データを示す。
【0158】
さらなる研究において、マウスを、D3−カルニチンでチューブ栄養補給し、D3−TMAおよびTMANOの時間依存性出現を、血漿中で定量化した。図8で示されるように、マウスを、腸内細菌叢を抑制するために、広域抗生物質カクテルで3週間事前処理した。TMAおよびTMANOの両方が、カルニチン摂取の代謝産物として作り出され、腸内菌叢の抑制は、それらの生成を劇的に減少させることに留意する。D3−カルニチン、D3−TMA、およびD3−TMANOの重水素(D3)標識代謝産物の血漿レベルを、安定同位体希釈LC/MS/MS分析によって、血漿中で定量化した。D3−カルニチンは、t=0でのマウスへのチューブ栄養補給によってもたらされた。結果を図8に示し、TMA生成が図8Bに示され、TMANO生成が図8Cに示される。
【0159】
さらなる研究において、マウスを、D3−カルニチンでチューブ栄養補給し、D3−クロトノベタインおよびガンマブチロベタインの時間依存性出現を、血漿中で定量化した。図9で示されるように、マウスを、腸内細菌叢を抑制するために、広域抗生物質カクテルで3週間事前処理した。両方の化合物が、カルニチン摂取の代謝産物として作り出され、腸内菌叢の抑制は、それらの生成を劇的に減少させることに留意する。D3−クロトノベタインおよびD3−ガンマブチロベタインを、LC/MS/MS分析によって、血漿中で定量化し、D3−カルニチンのチューブ栄養補給後に、示された時間に単離した。結果を図9に示し、クロトノベタイン生成が図9Aに示され、ガンマブチロベタイン生成が図9Bに示される。
【0160】
さらなる研究において、心機能評価を受けた対象は、採血に同意し、血漿を単離して、分析時まで−80℃で凍結させた。対象を、心筋梗塞MI、脳卒中、血行再建の必要性、または死を含む主要な有害心イベントの進行において、翌4年間監視した。血漿を、示されたトリメチルアミン含有種において、安定同位体希釈LC/MS/MSによって分析した。示されたトリメチルアミン種の血漿レベルと、死、非致死性MIもしくは脳卒中、または血行再建の必要性の複合終点を経験する相対危険性および95%信頼区間との間の関係が、表5に示される。伝統的な心疾患危険因子の調整を実行したマルチロジスティック回帰モデルにおける各検体のために調整された相対危険性(95%信頼区間)も示される。
【0161】
【表5】

【0162】
同一のコホート内で、糖尿病を有する危険性を予測するためのクロトノベタインの予後値を評価した。クロトノベタインの高い(上位の三分位)血漿レベルを有する個人は、下位の三分位の血漿レベルを有する対象に比べて、2型糖尿病を有する危険性が劇的に高まった。本関連性は、年齢、性別、総コレステロール、高血圧症、脂質異常症、冠動脈疾患、喫煙歴、およびBMIを含む複数の危険因子の調整後でも真正のままである。これらの結果が、表6に示される。
【0163】
【表6】

【0164】
同一の臨床コホートにおいて、空腹時インスリンおよびグルコースの血漿レベルを決定し、グルコース/インスリン比で監視しながら、クロトノベタインの血漿レベルのインスリン耐性を予測する能力を検査した。クロトノベタインは、複数の危険因子におけるマルチロジスティック回帰分析後でさえも、インスリン耐性の強力かつ独立した予測の判断材料の役割を果たす。これらの結果が、表7に示される。
【0165】
【表7】

【0166】
同一の臨床コホートにおいて、空腹時インスリンの血漿レベルおよび包括的代謝パネルを決定し、HOMA式で監視しながら、クロトノベタインの血漿レベルのインスリン耐性を予測する能力を検査した。クロトノベタインは、複数の危険因子におけるマルチロジスティック回帰分析後でさえも、インスリン耐性の強力かつ独立した予測の判断材料の役割を果たす。これらの結果が、表8に示される。
【0167】
【表8】

【0168】
同一の臨床コホートにおいて、対象がメタボリックシンドロームを有する可能性を予測する、クロトノベタインの血漿レベルの能力を検査した。クロトノベタインは、複数の危険因子におけるマルチロジスティック回帰分析後でさえも、メタボリックシンドロームの強力かつ独立した予測の判断材料の役割を果たす。これらの結果が、表9に示される。
【0169】
【表9】

【0170】
医療記録に基づいてNAFLDまたはNASHと診断された対象(n=50)を、(選択的診断的心臓カテーテル法を受けた逐次対象から成る)GeneBankコホート内で同定し、NAFLDまたはNASHの既知の病歴を有さない年齢および性別が合致した対象を、対照(n=50)として用いた。クロトノベタインの空腹時血漿レベルを、安定同位体希釈LC/MS/MS分析で決定した。対象がNAFLDまたはNASHを有する可能性を予測する、クロトノベタインの空腹時血漿レベルの能力を検査した。複数の危険因子におけるマルチロジスティック回帰分析後でさえも、NAFLDおよびNASHの両方の強力かつ独立した予測の判断材料の役割を果たすクロトノベタインが観察される。これらの結果が、表10に示される。
【0171】
【表10】

【0172】
少数の例示的実施形態のみを詳細に説明したが、当業者は、新規の教示および本開示の利点から実質的に逸脱せず、例示的実施形態において、多くの修正が可能であることを容易に理解する。したがって、全てのそのような修正および代替物は、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内に含まれるものとする。当業者は、そのような修正および同等の構成または方法が、本開示の精神および範囲から逸脱せず、かつそれらが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書で様々な変更、置き換え、ならびに改変を行うことができることも理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】(a−c)50〜100の範囲のm/zにおける陽イオンMS1モードで抽出されたイオンクロマトグラムのピーク面積を示すグラフを提供する。m/z=76を有する成分は、質量分析計に連結した逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってTMANO(トリメチルアミンN−オキシド)として同定された。
【図2】(a−c)m/z=76において陽イオンMS1モードで抽出されたイオンクロマトグラムの結果を示すグラフを提供する。m/z=76を有する成分を、質量分析計に連結した逆相HPLCによって同定した。
【図3】(パネルa)陽性MS1モードで抽出されたイオンクロマトグラムにおけるm/z=76のピークに対応する、衝突(エネルギー21eV)誘起解離(CID)質量スペクトルを提供する。パネル(b)は、76→58の親−娘遷移の陽イオン多重反応監視(MRM)モードで抽出されたイオンクロマトグラムを提供する。パネルcは、グリシンにおいて76→59を除いて、76→58の親−娘遷移の陽イオンMRMモードで抽出されたイオンクロマトグラムを提供する。
【図4】パネル(a−c)は、TMANOの血漿濃度とアテローム硬化性CVDの有病率との間の関係を試験した、事例/対照研究の結果を提供する。血漿を、診断的心臓カテーテル法を受けたCVD(n=632)を有する逐次対象および対照対象(n=361)から単離した。パネル(a)は、(n=632)のアテローム硬化性CVDを有する対象および(n=361)のアテローム性CVDを有さない対象の血漿TMANOを示す。パネル(b)は、TMANOの四分位に従って、アテローム硬化性CVD、冠動脈疾患(CAD)、および末梢動脈疾患(PAD)の発生頻度を示す。示されるP値は、四分位にわたる傾向用である。パネル(c)は、マルチロジスティック回帰後の、CVD、CAD、PAD、およびCAD+PAD危険性の予測の判断材料としての、TMANOレベルに対するオッズ比および95%の信頼区間を示す。モデルは、フラミンガム危険因子スコア、MDRD式によって決定された推定の糸球体濾過率、C反応性タンパク質(CRP)およびTMANOレベルから成った。
【図5】(a−c)TMANOの血漿存在量と主要な有害心イベント(MACE、以下の状態:非致死性MI、脳卒中、血行再建の必要性(血行再建)、または死のうちの1つ以上)において予想される危険性との間の関係を試験した、事例/対照研究の結果を提供する。パネル(a)は、その後の臨床事象を経験した対象(n=374)および経験しなかった対象(n=619)の血漿TMANOを示す。パネル(b)は、TMANO存在量の四分位に従って、臨床事象(血行再建、MIもしくは脳卒中、死、および複合のMACE)の発生頻度を示す。示されるP値は、四分位にわたる傾向用である。パネル(c)は、マルチロジスティック回帰後の、臨床事象(血行再建の必要性、非致死性MIもしくは脳卒中、死、または複合のMACE)の偶発的危険に対するTMANO四分位に対してのオッズ比および95%の信頼区間を示す。モデルは、フラミンガム危険因子スコア、MDRD式による推定の糸球体濾過率、C反応性タンパク質(CRP)およびTMANOから成った。
【図6】実施例7に説明されるコホートの心不全予測における血漿中のTMANOの予後値を示す。
【図7】実施例8に説明されるクロトノベタイン(7a)、ガンマブチロベタイン(7B)、およびカルニチン(7C)の三分位のカプランマイヤープロットを示す。
【図8】D3−カルニチン(8Aに示される)が、腸内菌叢依存的経路において、アテローム生成促進的トリメチルアミン(TMA)(8B)およびトリメチルアミンオキシド(TMANO)(8C)に代謝されることを示す。
【図9】カルニチンが、腸内菌叢依存的過程によって、クロトノベタイン(9A)およびガンマブチロベタイン(9B)にも代謝されることを示す。
【図10】本発明において有用なある特定のコリン関連トリメチルアミン含有化合物の化学式を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アテローム硬化性心血管疾患の合併症を経験する危険性のある対象を同定する方法であって、
a)トリメチルアミン(TMA)含有化合物が、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、またはカルニチンから選択される、前記対象から得られる生体試料中の前記TMA含有化合物のレベルを決定することと、
b) 前記生体試料の前記TMA含有化合物のレベルを、対照値と比較することと、を含み、
前記対照値と比較して、前記生体試料中の前記TMA含有化合物のレベルが上昇する対象は、アテローム硬化性心血管疾患の合併症を経験する危険性がある、方法。
【請求項2】
アテローム硬化性心血管疾患の合併症を経験する対象の危険性を、前記TMA含有化合物のレベルが前記対照値よりも高い場合に、高いと見なし、かつ前記TMA含有化合物のレベルが前記対照値よりも低い場合に、低いと見なすステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体試料は、全血、血清、血漿、尿、脳脊髄液、または気管支肺胞洗浄を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記合併症は、以下、非致死性心筋梗塞、脳卒中、狭心症、一過性脳虚血発作、うっ血性心不全、大動脈瘤、大動脈解離、および死のうちの1つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記危険性は、翌3年以内に、アテローム硬化性心血管疾患の合併症を経験する危険性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
心血管疾患を有するか、あるいは発生する対象の危険性を特徴づける方法であって、
a)トリメチルアミン(TMA)含有化合物が、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、またはカルニチンから選択される、前記対象から得られる生体試料中の前記TMA含有化合物のレベルを決定することと、
b) 前記生体試料の前記TMA含有化合物のレベルを、対照値と比較することと、を含み、
前記対照値と比較して、前記生体試料中の前記TMA含有化合物のレベルが上昇する対象は、心血管疾患を有するか、あるいは発生する危険性がある、方法。
【請求項7】
心血管疾患を有するか、あるいは発生する対象の危険性を、前記TMA含有化合物のレベルが前記対照値よりも高い場合に、高いと見なし、かつ前記TMA含有化合物のレベルが前記対照値よりも低い場合に、低いと見なすステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生体試料は、全血、血清、血漿、尿、脳脊髄液、または気管支肺胞洗浄を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記危険性は、心血管疾患を有するか、あるいは翌3年以内に発生する危険性である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
心血管疾患を有する対象における心血管疾患治療薬の効力を評価する方法であって、
a)トリメチルアミン(TMA)含有化合物が、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、またはカルニチンから選択される、前記治療薬の投与中もしくは投与後に、前記対象から得られる生体試料中の前記TMA含有化合物のレベルを決定することと、
b) 前記生体試料の前記TMA含有化合物のレベルを、既定値と比較することと、
c) 前記TMA含有化合物のレベルが前記既定値よりも低い場合に、前記治療薬は効果的であると決定することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記生体試料は、全血、血清、血漿、尿、脳脊髄液、または気管支肺胞洗浄を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
対象を、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを有するか、あるいは発生する危険性があると同定する方法であって、
a)前記対象から得られる生体試料中のトリメチルアミン(TMA)含有化合物のレベルを決定することと、
b)前記生体試料中の前記TMA含有化合物のレベルを、対照値と比較することと、を含み、
前記対照値と比較して、前記生体試料中の前記TMA含有化合物のレベルが上昇する対象は、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを発生する危険性があるか、あるいは有する、方法。
【請求項13】
真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを有するか、あるいは発生する前記対象の危険性を、TMA含有化合物のレベルが前記対照値よりも高い場合に、高いと見なし、かつTMA含有化合物のレベルが前記対照値よりも低い場合に、低いと見なすステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記TMA含有化合物は、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、またはカルニチンから成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記生体試料は、全血、血清、血漿、尿、脳脊髄液、または気管支肺胞洗浄を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記TMA含有化合物は、トリメチルアミン−N−オキシド、コリン、またはベタインから成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記危険性は、翌3年以内に、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを発生する危険性である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHから選択される疾患を有する対象における治療薬の効力を評価する方法であって、
a)前記治療薬の投与中もしくは投与後に、前記対象から得られる生体試料中のトリメチルアミン(TMA)含有化合物のレベルを決定することと、
b)前記生体試料中の前記TMA含有化合物のレベルを比較することと、
c)前記TMA含有化合物のレベルが前記既定値よりも低い場合に、前記治療薬が、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHを治療するのに効果的であるかを決定することと、を含む、方法。
【請求項19】
状態を治療するか、あるいは状態の進行を予防する方法であって、対象におけるカルニチンからのトリメチルアミン、TMANO、クロトノベタイン、および/またはガンマブチロベタインの形成を減少させ、それによって、心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHから成る群から選択される状態を、少なくとも部分的に治療するか、あるいは状態の進行を予防するように、前記対象に、プロバイオティクスおよび抗生物質を投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記抗生物質は、7日以下の短期間にわたって、前記対象に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗生物質は、メトロニダゾール、シプロフロキサシン、ネオマイシン、およびアモキシシリンから成る群から選択される、1つの抗生物質またはそれらの抗生物質の組み合わせである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記対象は、トリメチルアミン尿症を有さない、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
状態を治療するか、あるいは状態の進行を予防する方法であって、対象におけるカルニチンからのトリメチルアミン、TMANO、クロトノベタイン、および/またはガンマブチロベタインの形成を減少させ、それによって、心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHから成る群から選択される状態を、少なくとも部分的に治療するか、あるいは状態の進行を予防するように、前記対象に、抗生物質を投与することを含む、方法。
【請求項24】
前記抗生物質は、7日以下の短期間にわたって、前記対象に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗生物質は、メトロニダゾール、シプロフロキサシン、ネオマイシン、およびアモキシシリンから成る群から選択される、1つの抗生物質またはそれらの抗生物質の組み合わせである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記対象は、トリメチルアミン尿症を有さない、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
候補阻害剤をスクリーニングする方法であって、
a)i)トリメチルアミン(TMA)含有化合物と、ii)トリメチルアミンを形成するために、前記TMA含有化合物を切断することができる腸内細菌叢と、iii)候補阻害剤と、を混合することと、
b)形成される前記トリメチルアミンのレベルを検出することによって、前記トリメチルアミンの形成を阻害する、前記候補阻害剤の能力を決定することと、を含む、方法。
【請求項28】
前記TMA含有化合物は、コリン、カルニチン、ベタイン、ホスホコリン、ホスファチジルコリン、グリセロホスホコリン、クロトノベタイン、およびガンマブチロベタインから成る群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記腸内細菌叢は、盲腸ホモジネート、盲腸洗液、または糞便から得られる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記トリメチルアミンのレベルを前記検出することは、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記TMA含有化合物は、検出可能に標識化される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記候補阻害剤は、抗生物質を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
状態を治療するか、あるいは状態の進行を予防する方法であって、対象におけるカルニチンからのトリメチルアミン、TMANO、クロトノベタイン、および/またはガンマブチロベタインの形成を減少させ、それによって、 心血管疾患、真性糖尿病、インスリン耐性、メタボリックシンドローム、NAFLD、またはNASHから成る群から選択される状態を、少なくとも部分的に治療するか、あるいは状態の進行を予防するように、前記対象に、阻害剤を投与することを含む、方法。
【請求項34】
前記TMA形成阻害剤は、ネオマイシン、アモキシシリン、メトロニダゾール、活性炭、または銅クロロフィリンから成る群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項35】
大動脈解離を経験する危険性のある対象を同定する方法であって、
分析デバイスを用いて、前記対象から得られる生体試料中のトリメチルアミン(TMA)含有化合物のレベルを決定することと、
前記生体試料中の前記TMA含有化合物のレベルを、対照値と比較することと、
大動脈解離を経験する前記対象の危険性を、前記トリメチルアミン含有化合物のレベルが前記対照値よりも高い場合に、高いと見なし、前記トリメチルアミン含有化合物のレベルが前記対照値よりも低い場合に、低いと見なすことと、を含む、方法。
【請求項36】
前記トリメチルアミン含有化合物は、トリメチルアミン−N−オキシド、コリン、ベタイン、クロトノベタイン、ガンマブチロベタイン、またはカルニチンである、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−528340(P2012−528340A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513326(P2012−513326)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036705
【国際公開番号】WO2010/138899
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(595033056)ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション (14)
【氏名又は名称原語表記】The Cleveland ClinicFoundation
【住所又は居所原語表記】9500 Euclid Avenue,Cleveland,Ohio,United States of America
【Fターム(参考)】