説明

疾患危険因子を同定する方法

対象となる病態(例えばアルツハイマー病)の発症に関連する遺伝的変異を同定する方法、及びそのようにして同定された遺伝的変異が本明細書中で提供される。本明細書で記載の遺伝的変異を検出した際、活性剤による(例えば特定の活性剤による、及び/又はより低年齢での)治療方法も提供される。幾つかの実施の形態では、遺伝的変異はTOMM40遺伝子の欠失/挿入多型(DIP)である。被験体の後発性アルツハイマー病を発症する危険性が増大しているか否かを決定するキットも提供される。被験体が活性剤による対象となる病態の治療に対して応答性であるか否かを決定するキットがさらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノム分析及びDNA配列変異の研究を含む、ゲノミクス、遺伝学、薬理遺伝学及びバイオインフォマティクスの分野に関する。本発明はDNA配列の変異と、特定の疾患、障害又は病態に対する個体の感受性、及び/又は特定の薬物又は治療に対する応答性の予測との間の関連性の研究にも関する。
【0002】
[関連出願]
本願は2008年8月12日に出願された米国仮特許出願第61/088,203号、2009年6月12日に出願された米国仮特許出願第61/186,673号、及び2009年7月10日に出願された米国仮特許出願第61/224,647号(それらの開示はそれぞれその全体が参照により本明細書中に援用される)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
複合疾患に関連する遺伝子マーカーの探求が続いている。SNPアレイによるゲノムワイドスキャニング研究は、アルツハイマー病の研究における調査に最も重要な区域としてApoE領域に注目し続けている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0004】
以前からApoE 4アイソフォームは後発性アルツハイマー病を発症する危険性の増大に強く関連しているとされてきた(非特許文献3、非特許文献4、Roses, et al.に対する特許文献1、Roses et al.に対する特許文献2)。その関連性は用量依存的である(非特許文献5、非特許文献6)。すなわち、2つのApoE 4対立遺伝子の保因者は1つだけのApoE 4対立遺伝子の保因者よりも、また低年齢で後発性アルツハイマー病(LOAD)を発症しやすい(非特許文献7)。
【0005】
それにもかかわらず、E4対立遺伝子は遺伝性アルツハイマー病のおおよそ50%を占めているにすぎない。1つの説明としてはApoE 4が近隣の連鎖不平衡における何らかのものに対する代理マーカーとして働いているにすぎないことである。代替的に、近年のミトコンドリア毒性におけるApoE 4の機構上の役割の発見を考慮すると、ApoE 4の負の効果は近隣でコードされる別の遺伝子産物によって無効になるか、又は悪化する可能性がある(非特許文献8)。
【0006】
ApoE状態は冠動脈疾患の危険性にも関連し、他の疾患及び障害のホストとも考えられるので、ApoE領域の研究の意図するところはアルツハイマー病に限定されず、潜在的に広範囲に及ぶ(非特許文献9)。より広範には、複合疾患プロセスに関与することが知られている他の遺伝領域と連鎖不平衡にある遺伝子周辺のプロセス又は経路に関する配列の試験により、これらの疾患の機構を解明するのに役立つ情報が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,027,896号明細書
【特許文献2】米国特許第5,716,828号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Coon et al., J. Clin. Psychiatry 68: 613-8 (2007)
【非特許文献2】Li et al., Arch. Neurol. 65: 45-53 (2007)
【非特許文献3】Pericak-Vance et al., Am. J. Hum. Genet. 48, 1034-50 (1991)
【非特許文献4】Martin et al., 2000
【非特許文献5】Yoshizawa et al., 1994
【非特許文献6】Schellenberg, 1995
【非特許文献7】Corder et al., Science 261, 921-3 (1993)
【非特許文献8】Chang et al., 2005
【非特許文献9】Mahley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103: 5644-51 (2006)
【発明の概要】
【0009】
対象となる病態の発症(例えば対象となる疾患の早期又は後期の発病)に関連する遺伝的変異を同定する方法であって、
(a)DNAを含有する生体試料から対象となる遺伝子座で複数の個々のヒト被験体により保有されるヌクレオチド配列を決定することであって、該被験体が(i)前記対象となる病態に罹患した被験体、及び(ii)該対象となる病態に罹患していない被験体の両方を含む、決定すること、
(b)(例えば複合配列アラインメント分析を行って)前記遺伝子座での遺伝的変異を前記複数のヒト被験体で観察されるヌクレオチド配列から同定すること、
(c)前記被験体の前記ヌクレオチド配列の系統樹を構築することにより、前記遺伝的変異をマッピングすることであって、前記系統樹が前記被験体間の変異差(例えば同じシストロン上での変異差)を同定するブランチを含む、マッピングすること、
(d)前記系統樹でブランチとして表される前記遺伝的変異を試験すると共に、罹患した被験体と罹患していない被験体との比を決定し、罹患した被験体と罹患していない被験体との比の変化をもたらす該遺伝的変異の変化を同定すること(好ましくは開始点は最大数の被験体を表す遺伝的変異である)、及びそれから
(e)罹患した被験体と罹患していない被験体との前記比が前記系統樹上の1つ又は複数の隣接変異と実質的に異なる(例えば少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%異なる)遺伝的変異又は変異群(ハプロタイプ)を同定すること、
を含み、それにより前記対象となる病態の発症に関連する遺伝的変異を同定する、方法が本明細書で提供される。
【0010】
幾つかの実施の形態において、全ての被験体が前記対象となる病態に関して同じ既知の多型を保有する。
【0011】
幾つかの実施の形態では、前記対象となる病態が神経変性疾患、代謝性疾患(例えば脂質異常症)、心臓血管疾患、精神障害又は癌である。幾つかの実施の形態では、前記対象となる疾患がApoE及び/又はTOMM40が病因にかかわる疾患である。
【0012】
幾つかの実施の形態では、前記対象となる病態がミトコンドリア機能障害の増大又は低減に関連する。幾つかの実施の形態では、前記対象となる病態が統合失調症である。幾つかの実施の形態では、前記対象となる病態が冠動脈疾患である。幾つかの実施の形態では、前記対象となる病態が2型糖尿病である。幾つかの実施の形態では、前記対象となる病態がパーキンソン病である。幾つかの実施の形態では、前記対象となる病態がアルツハイマー病である。
【0013】
幾つかの実施の形態では、既知の多型危険因子がアポリポタンパク質E対立遺伝子(例えばApoE 2、ApoE 3又はApoE 4)である。
【0014】
幾つかの実施の形態では、前記対象となる遺伝子座が前記既知の多型と連鎖不平衡にある。幾つかの実施の形態では、前記対象となる遺伝子座が同じ染色体上にあり、かつ前記既知の多型と10キロベース、20キロベース、30キロベース、40キロベース、又は50キロベース未満しか離れていない。幾つかの実施の形態では、前記遺伝子座がTOMM40である。
【0015】
対象となる病態の発症に関する危険性の増大を決定する方法であって、
(a)DNAを含有する生体試料から、個々の被験体により保有される、前段落のいずれかの方法により同定された遺伝的変異を決定すること、及びそれから
(b)前記遺伝的変異が存在する場合、前記被験体の前記対象となる病態の発症に関する危険性が増大していることを決定すること、
を含む、方法も提供される。
【0016】
被験体(例えば少なくとも1つのApo E3対立遺伝子を保有する被験体)においてアルツハイマー病の発症に関する危険性の増大を決定する方法であって、
(a)前記被験体から採取したDNAを含有する生体試料からアルツハイマー病の危険性の増大又は低減に関連する前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異の有無を検出すること、及び
(b)前記遺伝的変異が存在している又は非存在である場合、前記被験体のアルツハイマー病の危険性が増大又は低減していることを決定すること、
を含む、方法がさらに提供される。
【0017】
幾つかの実施の形態では、前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを決定する。幾つかの実施の形態では、前記被験体がApo E3/E3又はE3/E4被験体であるか否かを決定する。
【0018】
幾つかの実施の形態では、該方法は(c)前記被験体のアルツハイマー病の危険性が増大していることが決定された場合、抗アルツハイマー病活性剤を治療に効果的な量で前記被験体に投与する工程をさらに含む。
【0019】
幾つかの実施の形態では、前記遺伝的変異が存在しないすなわち非存在である被験体と比較して、該遺伝的変異の有無により該被験体の危険性が増大していることが決定された場合、より低年齢(例えばApoE 4/4被験体では、55歳以上で始めるのではなく、45歳、46歳、47歳、48歳、49歳、50歳、51歳、52歳又は53歳で始め、その後毎年連続的に投与し;ApoE 4/3被験体では、60歳以上で始めるのではなく、50歳、51歳、52歳、53歳、54歳、55歳、56歳、57歳又は58歳で始め、その後毎年連続的に投与し;ApoE 3/3被験体では、65歳以上で始めるのではなく、55歳、56歳、57歳、58歳、59歳、60歳、61歳、62歳又は63歳で始め、その後毎年連続的に投与し;ApoE 2/3被験体では、70歳以上で始めるのではなく、60歳、61歳、62歳、63歳、64歳、65歳、66歳、67歳又は68歳で始め、その後毎年連続的に投与する)で該被験体において前記投与する工程を行う。
【0020】
幾つかの実施の形態では、前記活性剤がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体アンタゴニスト、PPARアゴニスト又はモジュレータ(例えばチアゾリジンジオン系又はグリタザール(glitazar)系の薬物)、抗体、融合タンパク質、治療用RNA分子、及びそれらの組合せから成る群から選択される。幾つかの実施の形態では、前記活性剤がロシグリタゾン又はその薬学的に許容される塩である。
【0021】
幾つかの実施の形態では、前記TOMM40の遺伝的変異が以下に記載の表1で列挙される変異である。
【0022】
アルツハイマー病の被験体(例えば少なくとも1つのApoE 3対立遺伝子を有する被験体)を、抗アルツハイマー病活性剤を治療的に有効な量で該被験体に投与することにより治療する方法であって、その改良点が
前記被験体が、アルツハイマー病の危険性の増大に関連する前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異を保有していない対応する被験体と比較して、該遺伝的変異を保有する場合、より低年齢(例えばApoE 4/4被験体では、55歳以上で始めるのではなく、45歳、46歳、47歳、48歳、49歳、50歳、51歳、52歳又は53歳で始め、その後毎年連続的に投与し;ApoE 4/3被験体では、60歳以上で始めるのではなく、50歳、51歳、52歳、53歳、54歳、55歳、56歳、57歳又は58歳で始め、その後毎年連続的に投与し;ApoE 3/3被験体では、65歳以上で始めるのではなく、55歳、56歳、57歳、58歳、59歳、60歳、61歳、62歳又は63歳で始め、その後毎年連続的に投与し;ApoE 2/3被験体では、70歳以上で始めるのではなく、60歳、61歳、62歳、63歳、64歳、65歳、66歳、67歳又は68歳で始め、その後毎年連続的に投与する)で該活性剤を該被験体に投与することを含む、方法も提供される。
【0023】
幾つかの実施の形態では、前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、E4/E4被験体である。幾つかの実施の形態では、前記被験体がApo E3/E3又はE3/E4被験体である。
【0024】
幾つかの実施の形態では、前記活性剤がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体アンタゴニスト、PPARアゴニスト又はモジュレータ(例えばチアゾリジンジオン系又はグリタザール系の薬物)、抗体、融合タンパク質、治療用RNA分子、及びそれらの組合せから成る群から選択される。幾つかの実施の形態では、前記活性剤がロシグリタゾン又はその薬学的に許容される塩である。
【0025】
幾つかの実施の形態では、前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異が欠失/挿入多型(DIP)である。幾つかの実施の形態では、前記DIPが挿入多型である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがポリT欠失/挿入多型(例えば5bp〜100bp、又は10bp〜80bp、又は20bp〜50bpのポリT)である。
【0026】
幾つかの実施の形態では、前記TOMM40の遺伝的変異が以下に記載の表1で列挙される変異である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523、rs10602329、又はDIP3である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523である。
【0027】
対象となる病態を治療する方法であって、それを必要とする患者に関して該対象となる病態がApoE及び/又はTOMM40に関連し、該方法が
(a)個々の被験体により保有される、第1段落〜第12段落の方法により同定された遺伝的変異の有無を決定し、前記患者の遺伝子プロファイルを作製する、決定する工程、及びそれから
前記プロファイルが前記患者が活性剤に対して応答性であることを示している場合、(b)前記活性剤を治療に効果的な量で前記被験体に投与し、前記対象となる病態を治療する、投与する工程、
を含む、方法がさらに提供される。
【0028】
幾つかの実施の形態では、前記活性剤がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体アンタゴニスト、PPARアゴニスト又はモジュレータ(例えばチアゾリジンジオン系又はグリタザール系の薬物)、抗体、融合タンパク質、治療用RNA分子、及びそれらの組合せから成る群から選択される。幾つかの実施の形態では、前記活性剤がロシグリタゾン又はその薬学的に許容される塩である。
【0029】
幾つかの実施の形態では、前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異が欠失/挿入多型(DIP)である。幾つかの実施の形態では、前記DIPが挿入多型である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがポリT欠失/挿入多型(例えば5bp〜100bp、又は10bp〜80bp、又は20bp〜50bpのポリT挿入)である。
【0030】
幾つかの実施の形態では、前記TOMM40の遺伝的変異が以下に記載の表1で列挙されるTOMM40の変異である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523、rs10602329、又はDIP3である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523である。
【0031】
被験体においてアルツハイマー病を治療する方法であって、
(a)前記被験体から採取したDNAを含有する生体試料から活性剤に対する応答性に関連するTOMM40遺伝子の遺伝的変異の有無を検出すること、及び
前記遺伝的変異が存在する場合、(b)前記活性剤を治療に効果的な量で前記被験体に投与し、前記アルツハイマー病を治療すること、
を含む、方法も提供される。
【0032】
幾つかの実施の形態では、前記被験体がApoE 3対立遺伝子を少なくとも1つ保有する。幾つかの実施の形態では、前記被験体がApo E3/E3又はE3/E4被験体である。
【0033】
幾つかの実施の形態では、前記活性剤がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体アンタゴニスト、PPARアゴニスト又はモジュレータ(例えばチアゾリジンジオン系又はグリタザール系の薬物)、抗体、融合タンパク質、治療用RNA分子、及びそれらの組合せから成る群から選択される。幾つかの実施の形態では、前記活性剤がロシグリタゾン又はその薬学的に許容される塩である。
【0034】
幾つかの実施の形態では、前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異が欠失/挿入多型(DIP)である。幾つかの実施の形態では、前記DIPが挿入多型である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがポリT欠失/挿入多型(例えば5bp〜100bp、又は10bp〜80bp、又は20bp〜50bpのポリT)である。
【0035】
幾つかの実施の形態では、前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異が以下に記載の表1で列挙される変異である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523、rs10602329、又はDIP3である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523である。
【0036】
上記の段落に従ってアルツハイマー病を治療する方法を行うための薬剤の調製のための抗アルツハイマー病活性剤の使用がさらに提供される。アルツハイマー病を治療する方法を行うための抗アルツハイマー病活性剤の使用も提供される。
【0037】
患者プロファイルを得ることを含む、アルツハイマー病を発症する危険がある患者の予後を決定する方法であって、該患者プロファイルを得ることは、
前記患者の生体試料において少なくとも1つのApoE対立遺伝子の有無を検出すること、
前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を検出すること、及びそれから
前記患者プロファイルを前記予後へと変換すること、
を含み、前記ApoE対立遺伝子の存在、及び前記少なくとも1つのTOMM40 DIP多型の存在により、前記患者がアルツハイマー病を発症する危険性がある患者として同定される、方法が提供される。
【0038】
幾つかの実施の形態では、前記DIPが挿入多型である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがポリT欠失/挿入多型(例えば5bp〜100bp、又は10bp〜80bp、又は20bp〜50bpのポリT)である。
【0039】
幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523、rs10602329、又はDIP3である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523である。
【0040】
幾つかの実施の形態では、該方法は前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、E4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む。幾つかの実施の形態では、前記被験体がApo E3/E3又はE3/E4被験体である。
【0041】
被験体をアルツハイマー病の治療のための治療法の臨床試験のサブグループに階層化する方法であって、
前記患者の生体試料において少なくとも1つのApoE対立遺伝子の有無を検出すること、及び
前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を検出すること、
を含み、前記少なくとも1つのApoE対立遺伝子及び/又はTOMM40 DIP対立遺伝子の有無に基づいて、前記治療法の前記臨床試験のために前記被験体を前記サブグループに階層化する、方法も提供される。
【0042】
幾つかの実施の形態では、前記DIPが挿入多型である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがポリT挿入多型(例えば5bp〜100bp、又は10bp〜80bp、又は20bp〜50bpのポリT挿入)である。
【0043】
幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523、rs10602329又はDIP3である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523である。
【0044】
幾つかの実施の形態では、該方法は前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、E4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む。幾つかの実施の形態では、前記被験体がApo E3/E3又はE3/E4被験体である。
【0045】
アルツハイマー病の治療の臨床試験において患者を同定する方法であって、
a)アルツハイマー病と診断された患者を同定すること、及び
b)患者プロファイルを得ることを含む、アルツハイマー病と診断された前記患者の予後を決定することであって、前記患者プロファイルが、
i)前記患者の生体試料において少なくとも1つのApoE対立遺伝子の有無を検出すること、
ii)前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を検出すること、及び
iii)前記患者プロファイルを前記予後に変換すること、
を含み、前記予後が、前記患者がアルツハイマー病の前記治療の前記臨床試験の候補であるか否かを予測することを含む、方法がさらに提供される。
【0046】
幾つかの実施の形態では、前記DIPが挿入多型である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがポリT欠失/挿入多型(例えば5bp〜100bp、又は10bp〜80bp、又は20bp〜50bpのポリT)である。
【0047】
幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523、rs10602329又はDIP3である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523である。
【0048】
幾つかの実施の形態では、該方法は前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む。幾つかの実施の形態では、前記被験体がApo E3/E3又はE3/E4被験体である。
【0049】
被験体の後発性アルツハイマー病を発症する危険性が増大しているか否かを決定するキットであって、
(A)ApoE 3、ApoE 4又はApoE 2と選択的に結合する抗体、及びこれをコードするDNAと選択的に結合するオリゴヌクレオチドプローブから成る群から選択される、ApoE 3、ApoE 4、又はApoE 2を特異的に検出する少なくとも1つの試薬、
(B)前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を特異的に検出する少なくとも1つの試薬、並びに
(C)取扱説明書であって、
(i)前記少なくとも1つの試薬を用いて前記被験体においてApoEアイソフォームの有無を検出すること、
(ii)前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を検出すること、及び
(iii)ApoEアイソフォーム、及び前記TOMM40 DIPの存在が前記少なくとも1つの試薬で検出されるか又は検出されないかを観察することにより前記被験体の後発性アルツハイマー病を発症する危険性が増大しているか否かを観察することによって、該被験体の後発性アルツハイマー病を発症する危険性が増大していることを決定するための取扱説明書を含み、ApoEアイソフォーム及び前記TOMM40 DIPの存在により、前記被験体の後発性アルツハイマー病を発症する危険性が増大していることが示される、キットが提供される。
【0050】
幾つかの実施の形態では、前記少なくとも1つの試薬及び前記取扱説明書が単一容器に封入されている。
【0051】
幾つかの実施の形態では、前記DIPが挿入多型である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがポリT欠失/挿入多型(例えば5bp〜100bp、又は10bp〜80bp、又は20bp〜50bpのポリT)である。
【0052】
幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523、rs10602329又はDIP3である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523である。
【0053】
幾つかの実施の形態では、前記決定する工程が、前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む。幾つかの実施の形態では、前記被験体がApo E3/E3又はE3/E4被験体である。
【0054】
被験体が、ApoE及び/又はTOMM40に関連する対象となる病態の活性剤による治療に対して応答性であるか否かを決定するキットであって、
(A)ApoE 3、ApoE 4、又はApoE 2と選択的に結合する抗体、及びこれをコードするDNAと選択的に結合するオリゴヌクレオチドプローブから成る群から選択される、ApoE 3、ApoE 4、又はApoE 2を特異的に検出する少なくとも1つの試薬、
(B)前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を特異的に検出する少なくとも1つの試薬、並びに
(C)取扱説明書であって、
(i)前記少なくとも1つの試薬を用いて前記被験体においてApoEアイソフォームの有無を検出すること、
(ii)前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を検出すること、及び
(iii)ApoEアイソフォーム、及び前記TOMM40 DIPの存在が前記少なくとも1つの試薬で検出されるか又は検出されないかを観察することにより前記被験体が治療に応答性であるか否かを観察することによって、該被験体が前記対象となる活性剤による前記対象となる病態の治療に対して応答性であることを決定するための取扱説明書を含み、ApoE 3及び前記TOMM40 DIPの存在により、前記被験体が前記活性剤による前記治療に対して応答性であることが示される、キットが提供される。
【0055】
幾つかの実施の形態では、前記少なくとも1つの試薬及び前記取扱説明書が単一容器に封入されている。
【0056】
幾つかの実施の形態では、前記DIPが挿入多型である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがポリT欠失/挿入多型(例えば5bp〜100bp、又は10bp〜80bp、又は20bp〜50bpのポリT)である。
【0057】
幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523、rs10602329又はDIP3である。幾つかの実施の形態では、前記DIPがrs10524523である。
【0058】
幾つかの実施の形態では、前記決定する工程が、前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む。幾つかの実施の形態では、前記被験体がApo E3/E3又はE3/E4被験体である。
【0059】
上述の実施形態は全てどのような方法及び/又は組合せで組合せてもよいことが理解されるであろう。本発明の上述の及び他の目的及び態様は本明細書と共に与えられる図面及び以下に記載の明細書でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】幾つかの実施形態による対象となる病態に関連し得る、対象となる遺伝子座におけるゲノム配列の所定の領域の遺伝的変異を同定するための概略的なフローチャートを示す。
【図2】5つの一般的なApoE遺伝子型の遺伝的形質に応じたアルツハイマー病の発病の平均年齢のグラフを示す。ApoE 4はアルツハイマー病の危険因子として表される(1993)。
【図3】例示的な対象となる遺伝子座である染色体19上の領域A、領域B及び領域Cを示す図である。TOMM40遺伝子はApoE遺伝子に極めて接近しており、ミトコンドリア外膜に指向性を有する40kDのタンパク質をコードする。TOMM40はミトコンドリアタンパク質輸送の調節においてApoEと直接的に相互作用し、本発明の仮説は特定のTOMM40変異(複数可)の存在がApoE 3対立遺伝子の用量依存的な存在に関連するアルツハイマー病の危険性の増大を悪化させるというものである。
【図4】本明細書で詳述される幾つかの実施形態に従って作製された図3で示された領域Bの進化マップを概略的に示す図である。横長の楕円(horizontal oval)はそれぞれ観察される配列変異(例えばヌクレオチド変化)を表し、楕円の大きさはその頻度を表す。それぞれの変異は系統樹においてノードと呼ばれ、或るノードと別のノードとのブランチによる結び付きは個々の被験体がシス位に2つの変異を保有するという観察結果を表す。
【図5】TOMM40に関して構築された領域Bに基づく系統樹の概略図であり、この領域でのTOMM40変異の2つの主なグループ(grouping)又はクレードにおけるApoE表現型のパーセントを示す。
【図6】ハプロタイプブロックと、予備試験においてプライマリシークエンシングを受ける領域(R1)(23Kb)及び確認試験においてプライマリシークエンシングを受ける領域(R2)(10Kb)(NCBI Build 36.3)とを示すLDプロットを含むTOMM40−ApoE遺伝子座の概略図である。LDプロットはハップマップデータ(CEU分析パネル)、ソリッドスピンハプロタイプブロック規定、異なる線特性により表されるD’/LODカラースキームを有するr値で示される。
【図7A】変異の分離による系統樹の説明を示す図である。7A:SNP変異、クレードA対クレードB、E6〜E10はTOMM40エキソンを表し、縦線はSNPのおおよその位置を示す。2つの主なブランチの分離には強いブートストラップサポートがある(973/1000)。
【図7B】変異の分離による系統樹の説明を示す図である。7B:rs10524523長多型。記述統計により、それぞれのグループの長多型が与えられる。系統樹又は非常に小さいクレードにおいて個々の外グループを形成した長いハプロタイプの幾つかは「残り(Remainder)」として同定されたグループ内にある。
【図8A】ApoE遺伝子型3/3で階層化したrs10524523長多型の長さのヒストグラムである。N=210ハプロタイプ(ASコホート)。
【図8B】ApoE遺伝子型3/4で階層化したrs10524523長多型の長さのヒストグラムである。N=210ハプロタイプ(ASコホート)。
【図8C】ApoE遺伝子型4/4で階層化したrs10524523長多型の長さのヒストグラムである。N=210ハプロタイプ(ASコホート)。
【図9】60歳〜86歳で発病するAD患者に関するAD発病年齢とrs10524523多型の長さとの関連性を示す図である。ボックスプロットは95%範囲(縦線)、中央値(ボックスの中の横線)及び四分位範囲(ボックス)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明を以下でより詳細に説明する。本明細書は本発明を実施することができる全ての様々な方法、又は本発明に加えることができる全ての特徴の詳細な一覧であるとは意図されない。例えば一実施形態に関して示された特徴は他の実施形態に組み込んでもよく、特定の実施形態に関して示された特徴をその実施形態から削除してもよい。さらに、本明細書で示唆される様々な実施形態に対する多くの変更及び追加は、本開示を鑑みれば当業者にとって明らかであり、本発明から逸脱しない。したがって以下の明細書は本発明の幾つかの特定の実施形態を示しているが、それらの全ての置換(permutations)、組合せ及び変更を網羅的に明示しているものではないことが意図される。
【0062】
本発明の説明及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形(singular forms "a", "an", and "the")は文脈が別途はっきりと示していなければ、複数形も含むことが意図される。また本明細書で使用されるように、「及び/又は」は1つ又は複数の列挙される項目のありとあらゆる可能な組合せと、代替的に解釈する場合には組合せの欠如(「又は」)を表すと共に包含する。
【0063】
本発明は複合疾患及び障害に関して特に対象となる領域における遺伝的変異を明らかにする方法に関する。本発明は表現型情報との関連性に基づく最も有益な(informative)遺伝子マーカーの発見にも関する。一実施形態では、特定の疾患、障害又は病態に対する感受性に関連する遺伝子マーカーを見つけるのに本発明を用いることができる。別の実施形態では、候補治療又は薬物に対する被験体の応答性に関するデータはその治療又は薬物に対する有益な応答性に関連する遺伝子マーカーの位置に関する系統発生分析(すなわち薬理遺伝学(pharmacogenetics))に含まれ得る。該方法は特定の遺伝子座の遺伝的変異のいずれのデータセットにも適用することができる。本発明による遺伝的危険因子を発見するアプローチのフローチャートに関しては図1を参照されたい。
【0064】
一態様において、遺伝的変異の分析は変異配列データに基づいている。第2の態様では、二倍体遺伝子型データを使用するとこの構造が明らかになり、そのため実験的に又はコンピュータを用いて構成要素であるハプロタイプを推測する必要がなくなる(例えばRoses et al.に対する特許文献1を参照されたい)。別の態様では、本方法は、配列変異が存在するという記録は与えるが、実際には全配列は与えない実験手順により、標的となる核酸に対する疑問(interrogation)に起因する特徴付けられていない対立遺伝子変異に適用することができる。遺伝的変異の基本的な構造は二倍体遺伝子型データから構成要素であるハプロタイプを導くのにも有用である。
【0065】
本明細書に記載の方法は、疾患又は障害を有する被験体(例えばミトコンドリア機能障害(例えばアルツハイマー病又は他の神経変性疾患)を伴うと考えられている被験体)の評価、又はこのような疾患を発症する危険性があると疑われる被験体の評価に使用される当該技術分野で既知の又は説明されている他の臨床的な診断情報と併せて使用されることが好ましく、またそのように意図されている。本発明は他の複合疾患、障害又は病態に関する遺伝的危険因子の発見にも適用可能である。
【0066】
本明細書で言及される全ての米国特許文献の開示はその全体が参照により本明細書中に援用される。
【0067】
1.定義
以下の定義を本明細書で使用する:
「対象となる病態」は系統発生研究、及び/又はその後の診断又は予後診断に関して指定される特定の病態、疾患又は障害を表す。本明細書で使用される「病態」としてはApoE及び/又はTOMM40に関連する状態、及び/又はミトコンドリア機能障害、例えば神経変性疾患、代謝性疾患、精神障害及び癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
ApoE及び/又はTOMM40がかかわっている病態の例としては、心臓血管疾患;代謝性疾患;神経変性疾患;神経的外傷(neurological trauma)又は疾患;自己免疫疾患(例えば多発性硬化症(Pinholt M, et al. Apo E in multiple sclerosis and optic neuritis: the apo E-epsilon4 allele is associated with progression of multiple sclerosis. Mult Scler. 11:511-5 (2005)、Masterman, T. & Hillert, J. The telltale scan: APOE ε4 in multiple sclerosis. Lancet Neurol. 3: 331 (2004)、全身性エリテマトーデス神経精神病(neuropsychiatric systemic lupus erythematosus:中枢神経系ループス血管炎)(Pullmann Jr. R, et al. Apolipoprotein E polymorphism in patents with neuropsychiatric SLE. Clin Rheumatol. 23: 97-101 (2004))等));ウイルス感染(例えばC型肝炎感染に関連する肝疾患(Wozniak MA, et al. Apolipoprotein E-ε4 protects against severe liver disease caused by hepatitis C virus. Hepatol. 36: 456-463 (2004))、HIV疾患(Burt TD, et al. Apolipoprotein(apo) E4 enhances HIV-1 cell entry in vitro, and the APOE epsilon4/epsilon4 genotype accelerates HIV disease progression. Proc Natl Acad Sci U S A. 105:8718-23 (2008))等));股関節骨折/骨粗鬆症(Pluijm SM, et al. Effects of gender and age on the association of apolipoprotein E epsilon4 with bone mineral density, bone turnover and the risk of fractures in older people. Osteoporos Int. 13: 701-9 (2002));ミトコンドリア病(Chang S, et al. Lipid- and receptor-binding regions of apolipoprotein E4 fragments act in concert to cause mitochondrial dysfunction and neurotoxicity. Proc Natl Acad Sci U S A. 102:18694-9 (2005));老化(Schachter F, et al. Genetic associations with human longevity at the APOE and ACE loci. Nat Genet. 6:29-32 (1994)、Rea IM, et al., Apolipoprotein E alleles in nonagenarian subjects in the Belfast Elderly Longitudinal Free-living Ageing Study (BELFAST). Mech. Aging and Develop. 122: 1367-1372 (2001));炎症(Li L, et al., Infection induces a positive acute phase apolipoprotein E response from a negative acute phase gene: role of hepatic LDL receptors. J Lipid Res. 49:1782-93 (2008));及び記憶機能障害(Caselli RJ, et al. Longitudinal modeling of age-related memory decline and the APOE epsilon4 effect. N Engl J Med. 361:255-63 (2009))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用される「心臓血管疾患」は心臓及び/又は血管に関する疾患を表し、これには以下に限定されないが、冠動脈疾患(Song Y, et al. Meta-analysis: apolipoprotein E genotypes and risk for coronary heart disease. Ann Intern Med. 141:137-47 (2004)、Bennet AM, et al., Association of apolipoprotein E genotypes with lipid levels and coronary risk. JAMA 298:1300-11 (2007))、アテローム性動脈硬化症(Norata GD, et al. Effects of PCSK9 variants on common carotid artery intima media thickness and relation to ApoE alleles. Atherosclerosis (2009) Jun 27. [Epub ahead of print], doi:10.1016/j.atherosclerosis 2009.06.023、Paternoster L, et al. Association Between Apolipoprotein E Genotype and Carotid Intima-Media Thickness May Suggest a Specific Effect on Large Artery Atherothrombotic Stroke. Stroke 39:48-54 (2008))、虚血性心疾患(Schmitz F, et al., Robust association of the APOE 4 allele with premature myocardial infarction especially in patients without hypercholesterolaemia: the Aachen study. Eur. J. Clin. Investigation 37: 106-108 (2007))、虚血性脳卒中等の血管疾患(Peck G, et al. The genetics of primary haemorrhagic stroke, subarachnoid haemorrhage and ruptured intracranial aneurysms in adults. PLoS One. 3:e3691 (2008)、Paternoster L, et al. Association Between Apolipoprotein E Genotype and Carotid Intima-Media Thickness May Suggest a Specific Effect on Large Artery Atherothrombotic Stroke. Stroke 39:48-54 (2008))、血管性認知症(Bang OY, et al. Important link between dementia subtype and apolipoprotein E: a meta-analysis. Yonsei Med J. 44:401-13 (2003)、Baum L, et al. Apolipoprotein E epsilon4 allele is associated with vascular dementia. Dement Geriatr Cogn Disord. 22:301-5 (2006))等が含まれる。
【0070】
本明細書で使用される「神経変性疾患」はアルツハイマー病(Corder EH, et al. Gene dose of apolipoprotein E type 4 allele and the risk of Alzheimer's disease in late onset families. Science 261:921-3 (1993)、Corder EH, et al. There is a pathologic relationship between ApoE-epsilon 4 and Alzheimer's disease. Arch Neurol. 52:650-1 (1995))、パーキンソン病(Huang X, et al. Apolipoprotein E and dementia in Parkinson disease: a meta-analysis. Arch Neurol. 63:189-93 (2006)、Huang X et al. APOE-[epsilon]2 allele associated with higher prevalence of sporadic Parkinson disease. Neurology 62:2198-202 (2004)、Martinez, M. et al. Apolipoprotein E4 is probably responsible for the chromosome 19 linkage peak for Parkinson's disease. Am. J. Med. Genet. B Neuropsychiatr. Genet. 136B, 172-174 (2005))、ハンチントン病、並びにニューロンの衰退を引き起こすあまり一般的ではない複数の疾患及び障害、例えば加齢黄斑変性症(Thakkinstian A, et al. Association between apolipoprotein E polymorphisms and age-related macular degeneration: A HuGE review and meta-analysis. Am J Epidemiol. 164:813-22 (2006)、Bojanowski CM, et al. An apolipoprotein E variant may protect against age-related macular degeneration through cytokine regulation. Environ Mol Mutagen. 47:594-602 (2006))を表す。
【0071】
「神経的外傷又は疾患」としては頭部損傷後の転帰(Zhou W, et al. Meta-analysis of APOE4 allele and outcome after traumatic brain injury. J Neurotrauma. 25:279-90 (2008)、Lo TY, et al. Modulating effect of apolipoprotein E polymorphisms on secondary brain insult and outcome after childhood brain trauma. Childs Nerv Syst. 25:47-54 (2009))、偏頭痛(Gupta R, et al. Polymorphism in apolipoprotein E among migraineurs and tension-type headache subjects. J Headache Pain. 10:115-20 (2009))、血管原性浮腫(James ML, et al. Apolipoprotein E modifies neurological outcome by affecting cerebral edema but not hematoma size after intracerebral hemorrhage in humans. J Stroke Cerebrovasc Dis. 18:144-9 (2009)、James ML, et al. Pharmacogenomic effects of apolipoprotein e on intracerebral hemorrhage. Stroke 40:632-9 (2009))等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書で使用される「代謝性疾患」としては、脂質異常症(Willer CJ, et al. Newly identified loci that influence lipid concentrations and risk of coronary artery disease. Nat Genet. 40:161-9 (2008)、Bennet AM, et al., Association of apolipoprotein E genotypes with lipid levels and coronary risk.JAMA 298:1300-11 (2007))、末期腎不全(Oda H, et al. Apolipoprotein E polymorphism and renal disease. Kidney Int Suppl. 71:S25-7 (1999)、Hubacek JA, et al. Apolipoprotein E Polymorphism in Hemodialyzed Patients and Healthy Controls. Biochem Genet. (2009) Jun 30. [Epub ahead of print] DOI 10.1007/s10528-009-9266-y.)、慢性腎疾患(Yoshida T, et al. Association of a polymorphism of the apolipoprotein E gene with chronic kidney disease in Japanese individuals with metabolic syndrome. Genomics 93:221-6 (2009)、Leiva E, et al. Relationship between Apolipoprotein E polymorphism and nephropathy in type-2 diabetic patients. Diabetes Res Clin Pract. 78:196-201 (2007))、胆嚢疾患(Boland LL,et al. Apolipoprotein E genotype and gallbladder disease risk in a large population-based cohort. Ann Epidemiol. 16:763-9 (2006)、Andreotti G, et al. Polymorphisms of genes in the lipid metabolism pathway and risk of biliary tract cancers and stones: a population-based case-control study in Shanghai, China. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 17:525-34 (2008))、糖尿病(2型)(Elosua R, et al. Obesity Modulates the Association among APOE Genotype, Insulin, and Glucose in Men. Obes Res. 11:1502-1508 (2003)、Moreno JA, et al. The Apolipoprotein E Gene Promoter (-219G/T) Polymorphism Determines Insulin Sensitivity in Response to Dietary Fat in Healthy Young Adults. J. Nutr. 135:2535-2540 (2005))、メタボリックシンドローム、胆石症(Abu Abeid S, et al. Apolipoprotein-E genotype and the risk of developing cholelithiasis following bariatric surgery: a clue to prevention of routine prophylactic cholecystectomy. Obes Surg. 12:354-7 (2002))等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書で使用される「精神障害」は統合失調症(Kampman O, et al. Apolipoprotein E polymorphism is associated with age of onset in schizophrenia. J Hum Genet. 49:355-9 (2004)、Dean B. et al., Plasma apolipoprotein E is decreased in schizophrenia spectrum and bipolar disorder. Psychiatry Res. 158:75-78 (2008))、強迫性障害(OCD)、常習行為(喫煙中毒、アルコール中毒等)、双極性障害(Dean B. et al., Plasma apolipoprotein E is decreased in schizophrenia spectrum and bipolar disorder. Psychiatry Res. 158:75-78 (2008))、精神医学的性質の他の疾患、障害又は病態を表す。
【0074】
本明細書で使用される「病態の発症」は疾患、障害若しくは他の医学的病態の初期診断、又は被験体が既に診断されている既存の疾患、障害若しくは他の医学的病態の悪化のいずれかを表す。
【0075】
本明細書で使用される「診断」又は「予後診断」は共通のヌクレオチド配列を共有する複数の個体との比較、症状、兆候、家族歴、又は患者の健康状態の判断に関する他のデータに基づき、最も起こり得る転帰、時間枠、及び/又は所与の疾患、障害又は病態の特定の治療に対する応答性を予測するための情報(例えば遺伝情報、又は生体試料に対する他の分子試験、兆候及び症状、身体検査所見、認知能力の結果のデータ等)の使用に関する。
【0076】
本明細書で使用される「生体試料」は対象となる核酸を含有すると考えられる材料を表す。DNAを含有する生体試料には、毛、皮膚、口腔粘膜、及び血液、血清、血漿、唾液、リンパ液、精液、膣粘液、排泄物、尿、髄液のような体液等が含まれる。このような試料からのDNAの単離方法は当業者にとって既知である。
【0077】
幾つかの実施形態による「被験体」は遺伝子型(複数可)又はハプロタイプ(複数可)が個体の病態(すなわち疾患又は障害の状態)及び/又は候補薬物又は治療に対する応答性と併せて、決定及び記録される個体である。系統樹を構築するのには、複数の被験体由来のヌクレオチド配列が用いられ、それから個々の被験体由来の類似のヌクレオチド配列を診断又は予後診断目的で系統樹上のヌクレオチド配列と比較することができる。
【0078】
本明細書で使用される「遺伝子」はRNA産物の生合成の調節に関する全ての情報を含有するDNAのセグメントを意味し、プロモータ、エキソン、イントロン、及び発現を制御する他の非翻訳領域を含む。
【0079】
本明細書で使用される「遺伝子座("Genetic locus" or "locus")」は染色体又はDNA分子上の位置を意味し、遺伝子又は身体的若しくは表現型の特徴に、又は特定のヌクレオチド若しくはヌクレオチドのストレッチに対応することが多い。遺伝子座(Loci)は遺伝子座(locus)の複数形である。
【0080】
本明細書において核酸に適用される「増幅」は核酸の1つ又は複数のコピーの形成をもたらす任意の方法を表し、この場合増幅は指数関数的であるのが好ましい。DNAの特異的配列の酵素増幅に関するこのような方法の1つとしては、Saiki et al., 1986, Science 230:1350-1354に記載のようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が知られている。PCRに使用されるプライマーは通常、約10〜50以上のヌクレオチド長と様々であり、典型的には十分な特異性を確保するために少なくとも約15ヌクレオチドとなるように選択される。産生される二本鎖断片は「単位複製配列」と呼ばれ、わずか約30から20000以上のヌクレオチド長と様々であり得る。
【0081】
本明細書で使用される「マーカー」又は「遺伝子マーカー」は特定の遺伝子座でのDNA配列の既知の変異である。変異は突然変異又は遺伝的形質により個体で存在し得る。遺伝子マーカーは短いDNA配列、例えば単一塩基対の変化(一塩基多型(single nucleotide polymorphism)、SNP)の周囲の配列、又はミニサテライトのような長いDNA配列であってもよい。遺伝性疾患とその遺伝的要因(例えば欠陥タンパク質又はそうでなければ望ましくない形態のタンパク質をもたらす遺伝子の特定の突然変異)との間の関係性を研究するのにマーカーを使用することができる。
【0082】
本明細書で使用される「遺伝的危険因子」は病態、疾患又は障害に対する感受性の増大に関連する遺伝子マーカーを意味する。また遺伝的危険因子は対象となる選択薬物又は治療に対する特定の応答性に関連する遺伝子マーカーも表し得る。
【0083】
本明細書で使用される「に関連する(Associated with)」は単に偶然として期待されるよりも頻繁に2つ以上の特性を同時に発生させることを意味する。関連性の一例には、HLAと呼ばれる白血球の表面上の特徴が含まれる(HLAはヒト白血球抗原を表す)。特定のHLA型であるHLA型B−27は強直性脊椎炎を含む多くの疾患の危険性の増大に関連している。強直性脊椎炎は一般集団よりも87倍以上HLA B−27の人々で起こりやすい。
【0084】
遺伝的危険因子により「病態を発症する危険性が増大している」被験体は、病態に罹りやすい、病態に対する遺伝的感受性を有する、及び/又は遺伝的危険因子が非存在である被験体よりも病態を発症しやすい被験体である。例えば、1つ又は2つのApoE 4対立遺伝子の存在により「アルツハイマー病を発症する危険性が増大している」被験体はApoE 4対立遺伝子を保有していない被験体よりもアルツハイマー病を発症しやすい。
【0085】
本明細書で使用される「多型」はゲノムのDNAにおける特定の遺伝子座で2つ以上の異なるヌクレオチド配列が存在することを表す。多型は遺伝子マーカーとして働くことができ、遺伝的変異とも称され得る。多型はヌクレオチド置換、挿入、欠失及びマイクロサテライトを含み、遺伝子発現又はタンパク質機能において検出可能な差異をもたらしてもよいが、必ずしももたらす必要はない。多型部位はヌクレオチド配列が集団の中の少なくとも一個体において参照配列と異なる遺伝子座内のヌクレオチド位置である。
【0086】
本明細書で使用される「欠失/挿入多型」すなわち「DIP」は、或るバージョンの配列における別のバージョンの配列に比べた1つ又は複数のヌクレオチドの挿入である。どちらの対立遺伝子がマイナー対立遺伝子を表すかが分かっていれば、マイナー対立遺伝子がヌクレオチドの欠失である場合に「欠失」という用語が用いられ、マイナー対立遺伝子がヌクレオチドの付加である場合に「挿入」という用語が用いられる。「欠失/挿入多型」という用語は複数の形態又は長さが存在し、かつマイナー対立遺伝子が明らかではない場合にも用いられる。例えば本明細書に記載のポリT多型では、多様な長さの多型が観察される。
【0087】
本明細書で使用される「多型データ」は、特異的遺伝子での以下の1つ又は複数に関する情報を意味する:多型部位の位置;これらの部位での配列変異;1つ又は複数の集団における多型の頻度;遺伝子に対して決定される様々な遺伝子型及び/又はハプロタイプ;1つ又は複数の集団における1つ又は複数のこれらの遺伝子型及び/又はハプロタイプの頻度;並びに遺伝子に対する形質と遺伝子型又はハプロタイプとの間の任意の既知の関連性(複数可)。
【0088】
本明細書で使用される「ハプロタイプ」は個体における少なくとも1つの染色体上で保有される遺伝的変異又は変異の組合せを表す。ハプロタイプには複数の隣接多型遺伝子座が含まれることが多い。本明細書で使用される全てのハプロタイプの部分が同じコピーの染色体又は半数性DNA分子上で発生する。反証がなければ、ハプロタイプは減数分裂中に同時に伝播しやすい複数の遺伝子座の組合せを表すと推定される。それぞれのヒトが、2人の親から相同染色体上で受け継いだ配列から成る、任意の所与の遺伝子座に関して一対のハプロタイプを保有している。これらのハプロタイプは所与の遺伝子座に関して同一であっても、又は2つの異なる遺伝的変異を表していてもよい。ハプロタイプ決定(Haplotyping)は個体において1つ又は複数のハプロタイプを決定するプロセスである。ハプロタイプ決定は家系図、分子技法及び/又は統計的推論の使用を含んでいてもよい。
【0089】
本明細書で使用される「変異(variant)」、「変動(variance)」、又は「遺伝的変異(genetic variant)」は集団におけるハプロタイプの特異的なアイソフォームを表し、この特異的な形態は遺伝子の配列内での少なくとも1つ、多くは2つ以上の変異部位又はヌクレオチドの配列の点で同じハプロタイプの他の形態とは異なっている。遺伝子の異なる対立遺伝子間で異なるこれらの変異部位での配列は「遺伝子配列変異」、「対立遺伝子」、「変動(variance)」又は「変異(variant)」と呼ばれる。「代替形態」という用語は遺伝子配列内に少なくとも1つ、多くは2つ以上の変異部位を有することにより他の対立遺伝子と区別することができる対立遺伝子を表す。「変動(variance)」又は「変異(variant)」と同義であると当該技術分野で知られている他の用語には突然変異及び一塩基多型(SNP)が含まれる。変動(variance)(単数又は複数)の存在への言及は特定の変動(variance)、すなわち遺伝子における任意の変動(variance)の存在だけではなく、特定の多型部位での特定のヌクレオチドを意味する。
【0090】
本明細書で使用される「アイソフォーム」は、遺伝子、mRNA、cDNA又はそれらによりコードされるタンパク質の特定の形態を意味し、その特定の配列及び/又は構造により他の形態とは区別される。例えば、アポリポタンパク質EのApoE 4アイソフォームはApoE 2又はApoE 3アイソフォームとは別のものである。
【0091】
本明細書で使用される「シストロン」は、単一ポリペプチドに関する遺伝子コードを含有すると共に、遺伝性単位として機能する、単一染色体上に見られるDNA部分を意味する。シストロンには、エキソン、イントロン及び単一の機能単位(すなわち遺伝子)に関連する調節要素が含まれる。この用語は遺伝要素が同じDNA分子上に位置しているかにかかわらず(「トランス」相補性)、又は遺伝要素が同じDNA分子上に位置している場合にのみ(「シス」作用要素)、遺伝要素が機能的に相互作用することができるか否かを決定するための従来のシス−トランス試験から派生したものである。
【0092】
本発明の文脈では「遺伝子型」という用語は特定の対立形態の遺伝子を表し、特定の部位(複数可)での核酸配列に存在する特定のヌクレオチド(複数可)によって規定することができる。また遺伝子型は1つ又は複数の多型遺伝子座に存在する対立遺伝子対も示し得る。二倍体生物、例えばヒトでは、2つのハプロタイプが1つの遺伝子型を構成する。遺伝子型決定(Genotyping)は、例えば核酸増幅、抗体結合又は他の化学分析により、個体の遺伝子型を決定するための任意のプロセスである。得られる遺伝子型は段階的なものでなくてもよく、これは見られる配列が片方の親の染色体に由来するか又はもう一方の親の染色体に由来するかが分からないことを意味する。
【0093】
本明細書で使用される「連鎖不平衡」は2つ以上の遺伝子座での対立遺伝子の非ランダムな関連性を意味する。連鎖不平衡は対立遺伝子又は遺伝子マーカーの幾つかの組合せが集団においてその頻度に基づき対立遺伝子由来のハプロタイプのランダム形成から予測されるよりも高い頻度で又は低い頻度で発生する状況を説明している。異なる遺伝子座での多型間の非ランダムな関連性は連鎖不平衡の程度により測定される。
【0094】
本明細書で使用される「多重配列アラインメント」すなわち「MSA」は配列間の相同性及び非相同性を決定するための複数の個体から得られたゲノムDNA由来の3つ以上のヌクレオチド配列のアラインメントを意味する。概して、クエリ配列の入力セットは系統を共有する進化的関係性を有すると推測され、共通の祖先から枝分かれしている。ほとんどの場合、アラインメントした配列の分析を行うのにはコンピュータアルゴリズムが用いられる。
【0095】
本発明の幾つかの実施形態は方法を例示するブロック図(例えば図1)を参照して説明しており、この方法はコンピュータ及び/又はコンピュータプログラム製品によって実施される工程を含み得る。ブロック図のブロック及び/又は操作の説明のそれぞれ、及びブロック図のブロック及び/又は操作の説明の組合せは、アナログ及び/又はデジタルのハードウェア、及び/又はコンピュータプログラム命令により実施することができると理解される。コンピュータ及び/又は他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令がブロック図及び/又は操作の説明で明記された機能/作用を実施するための手段を生じるように、これらのコンピュータプログラム命令を汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ASIC及び/又は他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに与えることができる。したがって、ブロック図及び操作の説明は装置、方法及びコンピュータプログラム製品をサポートすると理解される。
【0096】
他のソフトウェア、例えばオペレーティングシステムも含まれ得る。個別のハードウェアコンポーネント、1つ又は複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、及び/又は1つ又は複数の専用デジタルプロセッサ及び/又はコンピュータを使用して、複合配列アラインメントモジュール、マッピングモジュール及び/又は本明細書に記載の他のモジュールの機能性を少なくとも一部具現することができるとさらに理解されるであろう。
【0097】
本明細書で使用される「マッピング」は、観察された新たなヌクレオチド配列変異それぞれにノードを割り当て、そのノードと、同じ染色体又はシストロン上で同じ個体により保有された既知の配列を表す別のノードと結び付け、それぞれのノードで表されるそれぞれのタイプの被験体の数を数えることにより系統樹を作製することを意味する。このようにして展開した系統樹の例に関しては図4を参照されたい。
【0098】
「系統発生的」は種内の生物又は個体の様々なグループ間の進化的結び付きの研究に関することを意味する。遺伝情報は容易に利用することができる前は、系統発生はほとんどが表現型観察に基づいていた。本明細書で使用される「系統発生マッピング」は、進化的結び付き及び分岐のクロノロジー(chronology)を決定するために複数の個体により保有される関連の配列変異を結び付けるのにDNA配列データを使用することを意味する。「系統樹」は変異間の結び付きをマッピングした結果である。
【0099】
本明細書で使用される「ノード」は少なくとも1つの被験体によって保有される実際の変異配列を表す系統樹上の多型データ点を意味する。ノードはブランチにより、同じ染色体上で及び同じシストロンにおいて、ただしシストロン内の異なる遺伝子座で同じ個体によって保有される変異配列を表す別のノードと結び付く。ノードの存在により、少なくとも1つの被験体が該ノードで示される配列とブランチにより結び付く隣接したノードによって表される配列との両方を保有することが示される。
【0100】
本明細書で使用される「ブランチ」は2つの異なる変異配列又はハプロタイプを表す2つのノード間の結び付きを意味し、ここでは2つの変異が個々の被験体由来の同じ染色体上に及び同じシストロンに位置する。「分岐点」は3つ以上のブランチが伸びる任意のノードを意味するが、本明細書では特に、3つ以上のノードが伸びるルートノード(root node)を表すのに使用される。「ルートノード」は共通の進化的祖先の遺伝的配列を表し、そこから遺伝的分岐により、結び付いたノードによって表される近隣の配列変異の多様化が起こる。
【0101】
本明細書で使用される「反復的に」はそれぞれの形質に関する値の一連の反復計算を表す。例えば、系統樹上のそれぞれのノードを分析し、対象となる病態(例えばアルツハイマー病)に罹患した被験体の数と対照の罹患していない被験体の数との比を計算する。この比を結び付いたノードの比と比較して、対象となる疾患、障害又は病態を発症する危険性の増大又は低減との相関関係を決める。或るノードとその隣のノードとの間のこの比の実質的な変化は、早期疾患発病の危険性が増大している又は低減している変異の存在を示す。「遺伝的変異を反復的に試験する」とは最大数の個々の被験体によって共有された配列を表すノードを用いて分析を始め、続いてそのノードから伸びるブランチによって結び付くノード、その後第2レベルのノード(以降同様に続く)を分析することを意味する。それから分析を系統樹のルートから系統樹の外側のブランチ及びノードに向かって全体的に移行させる。
【0102】
本明細書で使用される「治療」には、任意の薬物、処置、ライフサイクルの変化、又は被験体の特定の健康面の変化に(すなわち特定の疾患、障害又は病態に関して)影響を与えるために導入される他の調整が含まれる。
【0103】
本明細書で使用される「薬物」は疾患又は病態を治療又は予防又は制御するのにヒトに投与される、化学物質、又は生物学的製剤、又は化学物質若しくは生物学的製剤の組合せを表す。本明細書で使用される「薬物」という用語は「薬」、「薬剤」、「治療的介入」又は「医薬品」という用語と同義である。薬物は少なくとも1つの特定の疾患又は病態の治療に関して政府機関によって認可されているのが最も好ましい。
【0104】
「疾患」、「障害」及び「病態」は当該技術分野で共通して認識され、かつ異常である及び/又は望ましくないと一般的に認識されている個体又は患者における兆候及び/又は症状の存在を指す。疾患又は病態は病理変化に基づき診断及び分類するとこができる。疾患又は病態はHarrison's Principles of Internal Medicine, 1997、又はRobbins Pathologic Basis of Disease, 1998のような標準テキストに列挙されたタイプの疾患から選択され得る。
【0105】
本明細書で使用される「ミトコンドリア機能障害」は細胞(単数又は複数)内のミトコンドリアの任意の有害異常を意味する。現在では当該技術分野においてミトコンドリア機能障害に関連することが知られている幾つかの疾患、障害又は病態には、アルツハイマー病、パーキンソン病、他の神経変性疾患、脳卒中及び心臓発作による虚血再かん流傷害、癲癇、糖尿病、並びに老化が含まれる。当該技術分野において多くの他の疾患、障害及び病態がミトコンドリア機能障害に関連している。実際、ミトコンドリアはほとんどの細胞型の適切な機能に必須であり、ミトコンドリア数の低下により度々、細胞死が起こる。このミトコンドリア機能障害は、ATP産生を損い、カルシウム恒常性を破壊し、酸化ストレスが増大することにより細胞破壊及び細胞死を引き起こす。さらに、ミトコンドリア損傷は、シトクロムc及び他のアポトーシス促進因子を細胞質に放出させることによりアポトーシス細胞死を引き起こす可能性がある(参考としてWallace, 1999、Schapira, 2006を参照されたい)。本明細書で見られる具体的な例に関しては、ApoE 3及びApoE 4アイソフォームがTOMM40との相互作用を介してミトコンドリア機能障害を引き起こすと仮定している。幾つかのTOMM40変異はApoE 3アイソフォームと相乗的に作用し、ミトコンドリア数の低下を促進させ得る。このミトコンドリア機構は多くの複合遺伝的疾患、障害及び病態に寄与すると考えられる。
【0106】
本明細書で使用される「被験体」はヒト被験体が好ましいが、これに限定されない。被験体は雄又は雌であってもよく、白人、アフリカ系アメリカ人、アフリカ人、東洋人、スペイン系アメリカ人、インディアン(Indian)等を含む(がこれらに限定されない)任意の人種又は民族であってもよい。被験体は新生児、乳児、幼児、小児、青少年、成人及び高齢者を含む任意の年齢のものであってもよい。被験体には、獣医学又は調合薬の開発目的でスクリーニングされる動物被験体、特にイヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、齧歯類(例えばラット及びマウス)、ウサギ、霊長類(非ヒト霊長類を含む)等の哺乳動物被験体も含まれ得る。
【0107】
本明細書で使用される「治療("Treat," "treating," or "treatment")」は疾患を患う患者に利益、例えば患者の病態(例えば1つ又は複数の症状)の改善、疾患の発病又は進行の遅延等を与える、任意のタイプの手段を表す。
【0108】
本明細書で使用される「後発性アルツハイマー病」すなわち「LOAD」は当該技術分野で既知であり、65歳を超えてアルツハイマー病が発病した、又はアルツハイマー病と診断された場合に用いられる分類である。LOADは最も一般的な形態のアルツハイマー病である。
【0109】
2.遺伝的変異を同定する方法
ゲノムワイドスキャンで得られる関連性のリストは有効であるが、概してそのリストは疾患の複雑性を説明するには不十分である。遺伝子のファミリー、経路及び相互作用が特異性を与え得る。高分解能の変異マッピングにより、複雑な遺伝的相互作用に対する答えが明らかになると考えられる。この高分解能の変異マッピングは、1つの既知の遺伝的危険因子(それ自体は対象となる疾患、障害又は病態との関連性を完全には説明しない)がより詳細な調査に優れた候補遺伝子座を提示することができる場合に特に適用することができる。さらに薬理遺伝学は薬物開発には有用であるが、生物学的関連性にまで拡大適用することもできる。集団における個体間の遺伝子配列の変異を発見するための多数の個体からの配列データの分析により、集団において全ての変異のより大きい断片が検出される。
【0110】
本発明の方法によって分析される初期配列情報は複数の被験体のゲノムDNAから得られる。生物は多様な配列が利用可能な任意の生物であってもよいが、好ましくはヒト由来である。新たな変異を同定する際には、特定の変異はこのようなグループ間で頻度が異なり得るため、人種、民族、性別及び/又は地理的起源に基づき異なる集団グループをスクリーニングすることが有用であることが多い。最も好ましくは、複数の遺伝子がかかわっている(multigenic)と考えられる疾患又は障害(遺伝的複合疾患/障害)では、被験体集団によって表される表現型は極端なスペクトルに由来するものである。DNAを含有する生体試料は血液、精液、口腔粘膜等であり得る。このような試料からのDNAの単離方法は当該技術分野において既知である。
【0111】
幾つかの実施形態では、本発明は所与の疾患、障害又は病態(遺伝的又はそれ以外)に関する少なくとも1つの既知の危険因子を有する複数の被験体からのヌクレオチド配列データの分析に関する。ヌクレオチド配列を分析し、ハプロタイプデータを作製して、それからハプロタイプ又は遺伝的変異を系統樹上にマッピングして、表される配列の進化を明らかにする。この系統樹と複数の被験体に関する表現型データとを比較することにより、系統樹上で観察されたハプロタイプを保有する個々の被験体に関して予後診断又は診断が可能になる。
【0112】
他の実施形態では、本発明は薬理遺伝学及び薬理ゲノミクス分野、並びに疾患に対する個体の感受性、及び/又は特定の薬物(単数又は複数)に対する個体の応答性を予測するための遺伝的ハプロタイプ情報の使用に関し、これにより集団グループの遺伝的差異に合わせた薬物を開発し、及び/又は適切な遺伝子プロファイルを有する個体に投与することができる。
【0113】
ヌクレオチド配列情報はゲノムDNAから得られる。使用されるゲノム配列データは臨床動物若しくは非ヒト動物又は培養細胞又は単離組織の試験から得ることができる。生物は多様な配列が利用可能な任意の生物であってもよいが、好ましくはヒト由来である。新たな変異を同定する際には、特定の変異はこのようなグループ間で頻度が異なり得るため、人種、民族、性別及び/又は地理的起源に基づき異なる集団グループをスクリーニングすることが有用であることが多い。複数の遺伝子がかかわっていると考えられる疾患又は障害(遺伝的複合疾患/障害)では、被験体集団によって表される表現型が対極であるのが最も好ましい。
【0114】
DNAを含有する生体試料は血液、精液、口腔粘膜等であり得る。このような試料からのDNAの単離方法は当業者にとって既知である。対象となる特定の遺伝子座でDNA配列を決定する方法も当該技術分野で既知である。現在では自動シークエンシングが広く利用可能であり、これには単離DNA試料と、対象となる遺伝子座内にある又は極めて接近している高度に保存された配列を認識するように具体的に設計された少なくとも1つのプライマーとだけが必要となる。
【0115】
幾つかの実施形態によれば、規定の遺伝領域又は対象となる遺伝子座(例えばフォワード及びリバースPCRプライマーのセットにより規定された)を特定の障害に関して十分特徴付けられた患者を含めた人々のコホートから慎重にシークエンシングする。
【0116】
コンセンサス配列を決定し、所与の遺伝子座で観察された全ての配列変異をリストにまとめる。最大数の観察された変異を有する遺伝子座は共通の祖先からの進化的分岐を表す。このため、これらの遺伝子座は1つだけ又はほんのわずかしか観察された変異を有しない遺伝子座とシス位で結び付いている。少なくとも調査の初期段階では、集団を同様の祖先を表す共通の一般表現型を共有する被験体グループへと分類するのが好ましい。そうでなければ、系統樹の構築によるこれらのデータの分析には、非常に多くの被験体が必要となる。
【0117】
3.複合配列アラインメント
様々な方法で集団における遺伝子又は遺伝子領域の特定の変異(単数又は複数)の存在を決定することができ、その方法は全て高度に保存されていることが分かっている対象となる領域内の配列を標的とすることにより、特定の遺伝子座を決めることを含む。当該技術分野で既知の多くの技法の1つにより、高度に保存された遺伝子座から隣接配列が容易に得られる。
【0118】
複数の被験体から並行したDNA配列を分析する際の第1の工程は複合配列アラインメント(「MSA」)である。MSAは典型的には、保存された区域(areas)及び変異配列を示す遺伝子又は遺伝子領域内に多型差異を有する相同試料からの配列アラインメントを提示するのに使用される。対象となる遺伝子座で得られた配列情報のMSAは1つ又は複数の様々な既知の技法及び公開されているソフトウェアを使用して構築することができ、インターネットを含む多くのソースから公開されている。当該技術分野で既知の複合配列アラインメントを分析する方法には、例えばSjolanderに対する米国特許第6,128,587号、Schork et al.に対する米国特許第6,291,182号、及びStanton et al.に対する米国特許第6,401,043号に記載のものが含まれる。
【0119】
4.系統樹及び分析
「系統樹」を構築する様々な方法が当該技術分野で既知である(例えばSanderson, 2008を参照されたい)。Sun et al.は「ハプロタイプブロック」分析法を用いて、Toll様受容体(TLR)変異と前立腺癌との間の関連性を研究し(2005年)、Bardel et al.は分岐分析アプローチを用いて、CARD15遺伝子変異とクローン病との間の関連性を調査した(2005年)。しかしながら、両者とも連鎖を調査するためにその疾患に以前に関連付けられた遺伝子座を利用しなかった。
【0120】
一部の実施形態による系統樹は、研究対象の個々のヒト被験体において観察されるハプロタイプ配列変異が、系統樹上のノード(データ中に観察される各々の配列を表す)を形成するトポロジーを用いて構築され得る。ノードを他のノードと結んでもよく、共通の祖先は系統樹の分枝部位、共通のルート又はルートノードに見られる。系統樹はデータを分析する遺伝子座間の進化的関係性を反映する(Sanderson, 2008;Tzeng, 2005;Seltman, 2003を参照されたい)。図4は図3に示す遺伝子座の領域Bについて構築した詳細な系統樹を示す。
【0121】
系統樹推定の開始点は概してMSAである(上記を参照されたい)。複数のソフトウェアアプリケーションが配列データを基に系統樹を構築するのに利用可能である。例えば、Brocklebank, et al.に対する米国特許第7,127,466号及び米国特許第6,532,467号を参照されたい。多くの変異を示す遺伝子座を、シス位で結ばれたこれらの変異によって表すことが大前提である。多型は関連する配列又はハプロタイプのグループを規定する系統樹中の分岐点(ノード)を生じる。
【0122】
系統樹は、非罹患対照被験体に対する、病態に罹患している被験体の比を反復試験することによって情報に利用される。計算は、最大数の被験体において観察されるノードから始められ、系統樹の周辺部、より少数の被験体において観察されるノードへと移動する。非罹患対照被験体に対する、対象となる病態に罹患している被験体の比に実質的な変化がある分岐点、ブランチ又はノードを位置付けることが目標である。このような分岐点は、危険性が低い被験体からの危険性が高い被験体の進化的分岐(又は逆もまた同様)を表す。
【0123】
作製した系統樹の統計分析は、当該技術分野で既知の方法に従って行うことができる。当該技術分野において承認されている一方法は、ブートストラップ信頼レベルの計算である(Efron et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 13429-13434 (1996)を参照されたい)。
【0124】
5.患者評価
特定の遺伝子座に関して系統樹を作製すれば、個々の被験体を、そのDNA配列と系統樹を構成する配列とを比較することによって評価することができる。対象となる病態の発生率が高い(すなわち、非罹患対照被験体に対する、疾患又は障害に罹患している被験体の比が高い)被験体を表す系統樹の領域と一致するハプロタイプ又は配列変異の存在は、個々の被験体も危険性が増大していることを意味する。反対に、実質的に低い比は、対象となる病態を発症する危険性の低さに相当する。
【0125】
系統樹はまた、一部の実施形態による対象となる活性剤又は治療方法での治療に対する対象となる病態の応答性に基づいて分析することができる。
【0126】
6.APOE及びTOMM40
ApoE表現型及び遺伝子型は当該技術分野で既知である。ApoEに関する確立された命名方式並びにその表現型及び遺伝子型は、例えばZannis et al., 1982(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
【0127】
TOMM40(ミトコンドリア外膜チャネルサブユニット、40kDa)表現型及び遺伝子型も既知である。TOMM40は、ミトコンドリアへのタンパク質輸送に必須である、ミトコンドリア膜中に見られるトランスロカーゼのチャネル形成サブユニットとして機能する。
【0128】
アルツハイマー病患者の研究からのゲノムワイド関連性スキャニングデータによって、アポリポタンパク質E(ApoE)遺伝子を含有する連鎖不平衡領域が明確に同定された。ApoE 4変異は、1993年の最初の公表(例えばCorder et al.を参照されたい)から、確認済みの感受性遺伝子として広く複製されている。しかしながら、このゲノムワイド関連性スキャニングデータは、ミトコンドリア外膜へのApoEとTOMM40との共局在化に対する細胞生物学研究において観察される驚くべき「一致」をもたらした。この他の遺伝子であるTOMM40は、1998年にApoE周辺の連鎖不平衡をモデル化する研究中に初めて発見された。多型は小さな連鎖不平衡領域内にApoEに隣接して位置するものであった。
【0129】
ApoEはミトコンドリア外膜に共局在化し、アルツハイマー病発現における初期段階としてのApoE誘導ミトコンドリアアポトーシスの潜在的な役割につながるアイソフォーム特異的相互作用を示す。生物学的データによって、神経細胞培養物中の可動(mobile)ミトコンドリアの割合、並びにそれらが移動する速度及びそれらが横断する距離がミトコンドリアアポトーシスの増大に影響を与える因子であることが実証された。系統学的データによって、TOMM40に関するアルツハイマー病の発症に対する独立した遺伝的影響が示唆される。
【0130】
ApoEはヒト神経培養物中でミトコンドリアに特異的に結合し(Chang, 2005)、TOMM40の遺伝的変異進化のマッピングと組み合わせた、数百人のアルツハイマー病患者及び対応対照におけるこの連鎖不平衡領域のシークエンシングによって、図3に示すような、ApoE−TOMM40相互作用について特に興味深い領域が規定される。これらの進化的データはApoEとTOMM40との遺伝的関連性をさらに支持し、ミトコンドリア機能障害が長年にわたってゆっくり起こる神経細胞死に関与し得ることを示唆している。アルツハイマー病の発病年齢分布(例えば、Roses et al.に対する米国特許第6,027,896号を参照されたい)は、疾患の臨床的発現を引き起こす2つの生化学的に相互作用するタンパク質の密接に関連した変異の遺伝を反映し得る。
【0131】
本明細書中に詳述するように、TOMM40変異の複数のハプロタイプとApoE対立遺伝子との間の相互作用は、アルツハイマー病の病因に関与する。特に、ApoEのE 3対立遺伝子と連鎖したTOMM40のハプロタイプは疾患の病因に関与する。TOMM40遺伝子変異の幾つかは、ApoE 3にシス連結してのみ進化した(同様に、特異的TOMM40変異は、ApoE 4又はApoE 2にシス連結して進化した可能性がある)。したがって、TOMM40変異の任意の付加的な遺伝的影響は、ApoE 4とは別に分かれたが、この2つの変異タンパク質産物はトランス位で機能的に相互作用して、所与の観察可能な表現型又は形質をもたらし得る。したがって、TOMM40変異の任意の付加的な遺伝的影響はApoE 4とは別に分かれる。隣接する相互作用遺伝子のこの「一致」は、アルツハイマー病ゲノムワイド関連性スキャニング研究の全てにおいて見られる極めて有意な統計的関連性データの説明となり得る。興味深いことには、初期の市販のゲノムワイド関連性スキャニングプラットフォームはいかなるApoE多型も含有しなかったが、TOMM40及びApoC1 SNPによって同定された(ただし、この領域は事実上常に「ApoE領域」と称されている)。
【0132】
疾患の遺伝学と病因の推定分子機構を総合したものであるこれらのデータは、薬理遺伝学の関連の中で考えることもできる。ApoE 4対立遺伝子を遺伝することの強い遺伝的影響のために、ApoE 4は10年以上にわたって複合感受性遺伝子と称されてきた。ApoE遺伝子型に応じた発病年齢分布の一貫した反復(replications)によって、ApoE 3遺伝の役割は完全に無害なものではないが、より遅い疾患発病速度で観察される危険性が低い因子であることが確認される。連鎖不平衡領域中にApoE 3を含有するDNA鎖上にのみ位置し(Roses et al.、未発表のデータ)、したがってゲノムワイド関連性パネルにおけるSNPに必要であったようにハーディ・ワインベルグ平衡にないTOMM40の遺伝的変異が存在する。ApoE 3にのみシス連結するTOMM40配列における進化的変化は、ApoE 3と関連するアルツハイマー病の危険性を増大させるように作用するが、ApoE 3にシス連結するTOMM40の他の変異は、ApoE 3と関連する危険性を減少させる。独立した遺伝的試験によって、アルツハイマー病とあまり関連しないこれらのTOMM40多型は、ApoE 3含有遺伝子型[ApoE 3/3又はApoE 4/3]に対する発病年齢分布プロットのより遅い年齢で分かれるか否かが決定され得る。
【0133】
被験体におけるApoE 2、3若しくは4、及び/又はTOMM40ハプロタイプ、又はそれをコードするDNAの有無(一部の実施形態では、それぞれの対立遺伝子の数を含む)の検出は、任意の好適な手段によって直接的又は間接的に行うことができる。様々な技法が当業者に既知である。全てが概して、DNA又はタンパク質のいずれかを含有する生体材料の試料を被験体から採取する工程、及び次いで被験体が対象となるハプロタイプを保有するか否かを検出する工程を含む。例えば、ApoEに関して検出する工程は、ApoE試料を被験体から(例えば脳脊髄液、又はApoEを含有する任意の他の体液若しくは組織から)採取すること、及び次いでApoE試料中のApoE 2、3又は4アイソフォームの有無を(例えば等電点電気泳動法又は免疫測定法により)決定することによって行うことができる。
【0134】
ApoE及び/又はTOMM40アイソフォームをコードするDNAの有無の決定は、好適な検出可能な基で標識したオリゴヌクレオチドプローブを用いた、及び/又はポリメラーゼ連鎖反応若しくはリガーゼ連鎖反応等の増幅反応による(この増幅反応の産物をその後標識したオリゴヌクレオチドプローブ又は多くの他の技法によって検出してもよい)対象となるゲノムDNA領域の直接シークエンシングによって行うことができる。さらに、検出する工程は、被験体がApoE及び/又はTOMM40ハプロタイプをコードする遺伝子についてヘテロ接合であるか、又はホモ接合であるかを検出する工程を含み得る。本発明を実施するために利用することができる多数の異なるオリゴヌクレオチドプローブアッセイフォーマットが既知である。例えば、Wahl et al.に対する米国特許第4,302,204号;Falkow et al.に対する米国特許第4,358,535号;Ranki et al.に対する米国特許第4,563,419号;及びStavrianopoulos et al.に対する米国特許第4,994,373号を参照されたい(本出願人は特に、本明細書中で引用される全ての米国特許参照文献の開示が参照により本明細書中に援用されることを意図する)。
【0135】
一部の実施形態では、検出はDNAの多重増幅(例えば、対立遺伝子特異的蛍光PCR)を含み得る。一部の実施形態では、検出はマイクロアレイ(チップ、ビーズ等)へのハイブリダイゼーションを含み得る。一部の実施形態では、検出は、検出対象のハプロタイプを含有する遺伝子の適切な部分のシークエンシングを含み得る。一部の実施形態では、1つ又は複数のエンドヌクレアーゼ制限酵素による消化に対する感受性を変化させるハプロタイプが検出に使用され得る。例えば、様々な制限酵素をDNAに適用した場合に消化パターンを示す制限断片長多型(RFLP)を使用してもよい。一部の実施形態では、1つ又は複数のハプロタイプの存在は対立遺伝子特異的増幅によって決定することができる。一部の実施形態では、ハプロタイプの存在はプライマー伸長によって決定することができる。一部の実施形態では、ハプロタイプの存在はオリゴヌクレオチドライゲーションによって決定することができる。一部の実施形態では、ハプロタイプの存在は、検出可能に標識したプローブとのハイブリダイゼーションによって決定することができる。例えば、Sun et al.に対する米国特許出願公開第2008/0153088号;Kobler et al., Identification of an 11T allele in the polypyrimidine tract of intron 8 of the CFTR gene, Genetics in Medicine 8(2):125-8 (2006);Costa et al., Multiplex Allele-Specific Fluorescent PCR for Haplotyping the IVS8 (TG)m(T)n Locus in the CFTR Gene, Clin. Chem., 54:1564-1567 (2008);Johnson et al., A Comparative Study of Five Technologically Diverse CFTR Testing Platforms, J. Mol. Diagnostics, 9(3) (2007);Pratt et al., Development of Genomic Reference Materials for Cystic Fibrosis Genetic Testing, J. Mol. Diagnostics, 11:186-193 (2009)を参照されたい。
【0136】
選択された又は標的の核酸配列の増幅は、生体試料から単離されたDNAに対する任意の好適な手段によって行うことができる。概して、D. Kwoh and T. Kwoh, 1990を参照されたい。好適な増幅法の例としては、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅(概して、Walker et al., 1992a;Walker et al., 1992bを参照されたい)、転写ベースの増幅(Kwoh et al., 1989を参照されたい)、自律的配列複製(すなわち「3SR」)(Guatelli et al., 1990を参照されたい)、Qβレプリカーゼシステム(Lizardi et al., 1988を参照されたい)、核酸配列ベースの増幅(すなわち「NASBA」)(Lewis, 1992を参照されたい)、修復連鎖反応(すなわち「RCR」)(Lewis(上掲)を参照されたい)、及びブーメランDNA増幅(すなわち「BDA」)(Lewis(上掲)を参照されたい)。ポリメラーゼ連鎖反応が現在は好ましい。
【0137】
上記のようなDNA増幅法は、ApoE 4をコードするDNAに特異的に結合するが、同じハイブリダイゼーション条件下でApoE 2又はApoE 3をコードするDNAには結合せず、増幅反応においてApoE 4のDNA又はその一部の増幅のためのプライマー(単数又は複数)として働くプローブ、1対のプローブ、又は2対のプローブの使用を含み得る。同様に、ApoE 2をコードするDNAに特異的に結合するが、同じハイブリダイゼーション条件下でApoE 3又はApoE 4をコードするDNAには結合せず、増幅反応においてApoE 2のDNA又はその一部の増幅のためのプライマー(単数又は複数)として働くプローブ、1対のプローブ、又は2対のプローブを使用してもよく、ApoE 3をコードするDNAに特異的に結合するが、同じハイブリダイゼーション条件下でApoE 2又はApoE 4をコードするDNAには結合せず、増幅反応においてApoE 3のDNA又はその一部の増幅のためのプライマー(単数又は複数)として働くプローブ、1対のプローブ、又は2対のプローブを使用してもよい。
【0138】
同様に、対象となるTOMM40ハプロタイプをコードするDNAに特異的に結合するが、同じハイブリダイゼーション条件下で他のTOMM40ハプロタイプには結合せず、増幅反応においてTOMM40のDNA又はその一部の増幅のためのプライマー(単数又は複数)として働くプローブ、1対のプローブ、又は2対のプローブを使用してもよい。
【0139】
概して、ApoE及び/又はTOMM40ハプロタイプをコードするDNAを検出するのに使用されるオリゴヌクレオチドプローブは、対象となるハプロタイプをコードするDNAと結合するが、同じハイブリダイゼーション条件下で他のハプロタイプをコードするDNAとは結合しないオリゴヌクレオチドプローブである。オリゴヌクレオチドプローブは、抗体との関連で下記に記載されるような検出可能な好適な基で標識される。
【0140】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は既知の技法に従って行うことができる。例えば、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;同第4,800,159号;及び同第4,965,188号を参照されたい。概して、PCRは、初めに核酸試料を(例えば、熱安定性DNAポリメラーゼの存在下で)、検出対象の特異的配列の各々の鎖に対する1つのオリゴヌクレオチドプライマーでハイブリダイズ条件下で処理して、各々の核酸鎖に相補的な各々のプライマーの伸長産物を合成すること(プライマーは特異的配列の各々の鎖と十分に相補的であり、それとハイブリダイズするため、各々のプライマーから合成される伸長産物は、その相補体から分離されている場合、他のプライマーの伸長産物の合成の鋳型として働くことができる)、及び次いで試料を変性条件下で処理して、検出対象の配列(単数又は複数)が存在する場合、プライマー伸長産物をその鋳型から分離することを含む。これらの工程を所望の増幅度が得られるまで周期的に繰り返す。増幅された配列の検出は、ハイブリダイズすることが可能なオリゴヌクレオチドプローブ(例えば本発明のオリゴヌクレオチドプローブ)を反応産物に添加すること(プローブは検出可能な標識を保有する)、及び次いで既知の技法に従って、又はゲル上での直接可視化により標識を検出することによって行うことができる。
【0141】
PCR条件が全てのApoE対立遺伝子型の増幅を可能にする場合、その型は対立遺伝子特異的プローブとのハイブリダイゼーション、制限エンドヌクレアーゼ消化、変性勾配ゲル上での電気泳動、又は他の技法によって区別することができる。ApoE遺伝子型を決定するためのPCRプロトコルは、Wenham et al. (1991)(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。ApoEアイソフォームの増幅及び同定に効果的なプライマーの例はその中に記載されている。ApoE多型領域(ApoE 4、E3又はE2のいずれか)に特異的なプライマーを用いることができる。Wenhamでは例えば、ApoE多型部位(ヌクレオチド3745及び3883を含有するコドン112及び158)にまたがるDNAの227bp領域を増幅するPCRプライマーが利用される。増幅された断片を次に、電気泳動ゲル上で認識可能であり得る6つの可能性のあるApoE遺伝子型から異なる制限断片をもたらす制限エンドヌクレアーゼCfoIに付す。さらなる方法については、Hixon et al. (1990);Houlston et al. (1989);Wenham et al. (1991)及びKonrula et al. (1990)(全て参照により本明細書中に援用される)も参照されたい。
【0142】
アルツハイマー病の他に、本発明の方法が既存の分析法に優る利点をもたらす幾つかの他の遺伝的複合疾患及び障害が存在する。例えば、複数の2型糖尿病の遺伝学研究のデータによって、ゲノムワイド関連性研究によって規定される遺伝子座についての統計的有意性を得るには非常に多くの臨床症例/対照系列が必要となるという見解が支持される。
【0143】
7.活性剤、組成物及び治療
上述のように、本明細書中に詳述する方法を用いて作製される系統樹は、一部の実施形態による対象となる活性剤又は治療方法による治療に対する、対象となる病態の応答性に基づいて分析してもよく、被験体又は患者に対する治療決定は同定された特異的遺伝的変異に基づくものであってもよい。
【0144】
活性剤。活性剤は対象となる病態の治療に関して既知の活性剤を含み、抗アルツハイマー病活性剤(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体アンタゴニストを含むが、これらに限定されない)及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト又はモジュレータ(チアゾリジンジオン系又はグリタザール系の薬物を含むが、これらに限定されない)が含まれる。活性剤は生物医薬品、例えば抗体(例えば、ドメイン抗体(商標)、バピネオズマブ等といったモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体の誘導体若しくは修飾抗体)、融合タンパク質又は治療用RNA分子であってもよい。活性剤はこれらの製品のいずれかの組み合わせであってもよい。
【0145】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の例としては、ドネペジル(ARICEPTとして市販されている)、ガランタミン(RAZADYNEとして市販されている)及びリバスチグミン(EXELONとして市販されている)、並びにそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例としては、米国特許第6,303,633号;同第5,965,569号;同第5,595,883号;同第5,574,046号;及び同第5,171,750号(本明細書中で引用される全ての米国特許参照文献は、その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
NMDA受容体アンタゴニストの例としては、メマンチン(AKATINOL、AXURA、EBIXIA/ABIXIA、MEMOX及びNAMENDAとして市販されている)及びその薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例としては、米国特許第6,956,055号;同第6,828,462号;同第6,642,267号;同第6,432,985号;及び同第5,990,126号に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0147】
チアゾリジンジオンの例としては、ロシグリタゾン(AVANDIAとして市販されている)及びその薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例としては、5−(4−[2−(N−メチル−N−(2−ベンゾチアゾリル)アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−(2−ベンゾチアゾリル)アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−(2−ベンゾオキサゾリル)アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−(2−ベンゾオキサゾリル)アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリミジニル)アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリミジニル)アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−(2−(N−メチル−N−[2−(4,5−ジメチルチアゾリル)]アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−[2−(4,5−ジメチルチアゾリル)]アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−(2−チアゾリル)アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−(2−チアゾリル)アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−(2−(N−メチル−N−(2−(4−フェニルチアゾリル))アミノ)エトキシ)ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−(2−(4−フェニルチアゾリル))アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−[2−(4−フェニル−5−メチルチアゾリル)]アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−[2−(4−フェニル−5−メチルチアゾリル)]アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−[2−(4−メチル−5−フェニルチアゾリル)]アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−[2−(4−メチル−5−フェニルチアゾリル)]アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−[2−(4−メチルチアゾリル)]アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−[2−(4−メチルチアゾリル)]アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−(2−(N−メチル−N−[2−(5−フェニルオキサゾリル)]アミノ)エトキシ)ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−[2−(5−フェニルオキサゾリル)]アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−[2−(4,5−ジメチルオキサゾリル)]アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−[2−(4,5−ジメチルオキサゾリル)]アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−(2−(2−ピリミジニルアミノ)エトキシ)ベンジル]−2,4−チアゾリジンジオン;5−[4−(2−(2−ピリミジニルアミノ)エトキシ)ベンジリデン]−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−アセチル−N−(2−ピリミジニル)アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−(2−(N−(2−ベンゾチアゾリル)−N−ベンジルアミノ)エトキシ)ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−(2−(N−(2−ベンゾチアゾリル)−N−ベンジルアミノ)エトキシ)ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[3−(N−メチル−N−(2−ベンゾオキサゾリル)アミノ)プロポキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[3−(N−メチル−N−(2−ベンゾオキサゾリル)アミノ)プロポキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4[2−(N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノ)エトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[4−(N−メチル−N−(2−ベンゾオキサゾリル)アミノ)ブトキシ]ベンジリデン)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[4−(N−メチル−N−(2−ベンゾオキサゾリル)アミノ)ブトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−(2−ベンゾオキサゾリル)アミノ)エトキシ]ベンジリデン)2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−(2−ベンゾオキサゾリル)アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン;5−(4−[2−(N−イソプロピル−N−(2−ベンゾオキサゾリル)アミノ)エトキシ]ベンジル)−2,4−チアゾリジンジオン及びそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第5,002,953号を参照されたい。
【0148】
本明細書中に開示される活性剤は、上述のように、その薬学的に許容される塩の形態で調製され得る。薬学的に許容される塩とは、親化合物の所望の生物活性を保持し、望ましくない毒性効果を与えない塩である。このような塩の例は、(a)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等を用いて形成された酸付加塩;及び有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等を用いて形成された塩、(b)塩素、臭素及びヨウ素等の元素アニオンから形成された塩、並びに(c)塩基から得られる塩、例えばアンモニウム塩、ナトリウム及びカリウムの塩等のアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウムの塩等のアルカリ土類金属塩並びにジシクロヘキシルアミン及びN−メチル−D−グルカミン等の有機塩基による塩である。
【0149】
活性剤はプロドラッグとして投与することができる。「プロドラッグ」とは、本明細書中で使用される場合、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答等なしにヒト及び下等動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、妥当な危険性対効果比に見合い、その使用目的に有効な本発明の化合物、並びに可能な場合、本発明の化合物の双性イオン形態のプロドラッグを指す。「プロドラッグ」という用語は、例えば血中での加水分解によって、in vivoで急速に変形して、上記式の親化合物を生じる化合物を指す。徹底的な議論はT. Higuchi and V. Stella, Prodrugs as Novel delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series及びEdward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987(どちらも参照により本明細書中に援用される)に与えられている。米国特許第6,680,299号も参照されたい。例としては、in vivoで被験体によって、本明細書中に記載される活性化合物の活性を有する活性薬物まで代謝されるプロドラッグが挙げられ、ここでプロドラッグは、米国特許第6,680,324号及び米国特許第6,680,322号に記載されるように、アルコール基若しくはカルボン酸基(このような基が化合物中に存在する場合)のエステル;アルコール基(このような基が化合物中に存在する場合)のアセタール若しくはケタール;アミン基(このような基が化合物中に存在する場合)のN−マンニッヒ塩基若しくはイミン;又はカルボニル基(このような基が化合物中に存在する場合)のシッフ塩基、オキシム、アセタール、エノールエステル、オキサゾリジン若しくはチアゾリジンである。
【0150】
組成物。上記の活性剤は、既知の技法に従って医薬担体に入れて投与するように配合することができる。例えば、Remington, The Science And Practice of Pharmacy (9th Ed. 1995)を参照されたい。本発明による医薬配合物の製造において、活性化合物(その生理学的に許容される塩を含む)は典型的には、とりわけ許容される担体と混合される。担体は当然ながら、配合物中の任意の他の成分と相溶性があるという意味で許容可能でなくてはならず、患者にとって有害なものであってはならない。担体は固体若しくは液体、又はその両方であってもよく、好ましくは化合物と共に、0.01重量%又は0.5重量%〜95重量%又は99重量%の活性化合物を含有し得る単位用量(unit-dose)配合物、例えば錠剤として配合される。1つ又は複数の活性化合物が本発明の配合物中に組み込まれていてもよく、配合物は、任意で1つ又は複数の副成分を含む成分を混合することを含む、調剤学の任意の既知の技法によって調製することができる。
【0151】
本発明の配合物は、経口投与、直腸投与、局所投与、口腔投与(例えば舌下投与)、膣内投与、非経口投与(例えば皮下投与、筋肉内投与、皮内投与又は静脈内投与)、局所投与(すなわち、気道表面を含む皮膚表面及び粘膜表面の両方)及び経皮投与に好適な配合物を含むが、任意の所与の症例に最も好適な経路は、治療される病態の性質及び重症度、並びに使用される特定の活性化合物の性質によって決まる。
【0152】
経口投与に好適な配合物は、各々が所定量の活性化合物を含有するカプセル剤、カシェ剤、舐剤又は錠剤等の個別単位で;粉末又は顆粒として;水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として;又は水中油型若しくは油中水型エマルジョンとして与えられ得る。このような配合物は、活性化合物と好適な担体(上述のように1つ又は複数の副成分を含有し得る)とを混合する(bringing into association)工程を含む調剤学の任意の好適な方法で調製することができる。概して、本発明の配合物は、活性化合物を液体担体若しくは微粉化固体担体、又はその両方と均一かつ密接に混合した後、必要に応じて得られる混合物を成形することによって調製される。例えば、錠剤は任意で1つ又は複数の副成分と共に、活性化合物を含有する粉末又は顆粒を圧縮又は成型することによって調製することができる。圧縮錠は、任意で結合剤、滑剤、不活性希釈剤及び/又は界面活性剤/分散剤(複数可)と混合した、粉末又は顆粒といった易流動性の形態の化合物を、好適な機械において圧縮することによって調製され得る。成型(Molded)錠は、不活性液体結合剤で湿らせた粉末状化合物を、好適な機械において成型することによって製造され得る。
【0153】
口腔(舌下)投与に好適な配合物は、風味付けした基剤、通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガカントゴム中に活性化合物を含む舐剤;並びにゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアラビアゴム等の不活性基剤中に化合物を含むトローチを含む。
【0154】
非経口投与に好適な本発明の配合物は、活性化合物(複数可)の水性及び非水性の滅菌注射液を含み、この調製物は好ましくは意図されるレシピエントの血液と等張である。これらの調製物は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び配合物を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る。水性及び非水性の滅菌懸濁液は、懸濁剤及び増粘剤を含み得る。配合物は、単位用量(unit/dose)又は複数回用量の容器、例えば密閉アンプル及びバイアル中で与えられ、使用の直前に滅菌液体担体、例えば生理食塩水又は注射用蒸留水を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管され得る。即時調合(Extemporaneous)注射液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒及び先に記載した種類の錠剤から調製され得る。例えば本発明の一態様では、密閉容器中の単位投与形態での、活性剤(複数可)又はその塩を含む注射可能な、安定な滅菌組成物が提供される。化合物又は塩は、好適な薬学的に許容される担体によって再構成して、被験体へのその注射に好適な液体組成物を形成することが可能な凍結乾燥物の形態で提供される。単位投与形態は典型的には、約10mg〜約10gの化合物又は塩を含む。化合物又は塩が実質的に不水溶性である場合、十分な量の生理学的に許容される乳化剤を十分量用いて、化合物又は塩を水性担体中に乳化させることができる。このような有用な乳化剤の一つはホスファチジルコリンである。
【0155】
皮膚への局所適用に好適な配合物は、好ましくは軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ジェル、スプレー、エアロゾル又はオイルの形態をとる。使用され得る担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮促進剤(transdermal enhancers)及びそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0156】
経皮投与に好適な配合物は、長期間レシピエントの表皮に密接に接触してとどまるのに適した個別パッチとして与えられ得る。経皮投与に好適な配合物は、イオン導入によって送達してもよく(例えば、Pharmaceutical Research 3 (6):318 (1986)を参照されたい)、典型的には任意で緩衝化した活性化合物の水溶液の形態をとる。好適な配合物は、クエン酸又はBis−Tris緩衝剤(pH6)又はエタノール/水を含み、0.1M〜0.2Mの活性成分を含有する。
【0157】
医薬組成物は、活性化合物(複数可)に加えて、pH調節添加剤等の他の添加剤を含有し得る。特に、有用なpH調節剤としては、塩酸等の酸、塩基又は緩衝剤、例えば乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム若しくはグルコン酸ナトリウムが挙げられる。さらに、組成物は抗菌性(microbial)保存剤を含有し得る。有用な抗菌性保存剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン及びベンジルアルコールが挙げられる。抗菌性保存剤は典型的には、配合物を複数回用量の使用のために設計されたバイアルに入れる場合に利用される。当然ながら、示されるように、本発明の医薬組成物は当該技術分野で既知の技法を用いて凍結乾燥してもよい。
【0158】
投与量。任意の特定の活性剤(その使用は本発明の範囲内にある)の治療的に有効な投与量は、化合物によって、及び患者によって幾らか異なり、患者の病態及び送達経路によって決まる。経口投与については、1mg、2mg又は3mg、最大で30mg、40mg又は50mgの一日総投与量(単回の日用量として与えられるか、又は2回若しくは3回の日用量に分割される)が用いられ得る。
【0159】
治療。本明細書中に記載されるか、又は本明細書中に教示される方法を用いて発見される遺伝的変異を用いて、例えば投与する活性剤及び/又は治療方針を遺伝的変異(単数又は複数)の有無に基づいて決定することによって、病態(例えば、ApoE及び/又はTOMM40と関連する病態)を患っている患者の治療方針を決定することができる。遺伝的変異の有無は、例えば患者に対する活性剤及び/又は治療方針の効力を示し、病態の発病年齢を予測し、好ましい用法を示す可能性がある。患者について遺伝子プロファイルを作製することができ、プロファイルを調べて、その患者が、特定の活性剤に応答する可能性が高い患者の群に入るか否かを決定することができる。
【0160】
取扱説明書は、遺伝的変異の有無に基づいて治療、治療時期、用法等に関する推奨を示して活性剤と共に包装されるか、又はそれと別の形で結び付けられ得る。
【0161】
8.疾患危険性の予測又は予後を決定する方法
本発明の一部の実施形態によって、症状のない個体の疾患危険性の予測又は予後(疾患の通常の経過又は症例の特殊性から予想される病気又は疾患の経過の見通し)を決定するために、患者の診断結果又は病歴(medical hisotry)及び患者の遺伝子型(例えば、ApoE及び/又はTOMM40遺伝子型)等の遺伝的データを含む診断データを処理して、治療選択及び転帰予測を提供することができる。処理は、年齢及び性別を含む患者の病歴の収集等の「患者プロファイル」の入手、対象となる遺伝子座の遺伝子型決定(例えば、適切に設計されたプライマーを用い、RT−PCR若しくはPCR増幅工程、及び/又は例えば抗体媒介方法若しくは酵素試験を用いた表現型分析を用いる)、並びにこの生データを予後に変換する統計分析法又は他の分析法を含み得る。予後診断は患者の疾患発病年齢、薬物療法に対する応答、治療時期、治療効果等を含み得る。一部の実施形態では、患者データ又はプロファイルを予後に変換するために、予後診断は患者データを分析し、関係データベースに対する統計的照合を行うコンピュータソフトウェアプログラムの使用を含み得る。
【0162】
「患者プロファイル」は、予測分析及び/又は予後分析を行う患者に関するデータ及び/又は材料を含む。データは患者の診断結果、年齢、性別及び/又は遺伝子型についての情報を含み得る。患者プロファイルは、血液、血清タンパク質試料、脳脊髄液、又は精製RNA若しくはDNA等の患者に由来する材料も含み得る。
【0163】
9.臨床試験における遺伝子型の階層化
本明細書中に教示されるか、又は本明細書中の方法を用いて決定される遺伝子型の検出は、例えば米国特許第6,573,049号、同第6,368,797号及び同第6,291,175号に記載されているように、他の遺伝子型情報を用いて臨床試験を行う場合と同様の方法で臨床試験を行う際に用いることができる。
【0164】
一部の実施形態では、このような方法は、(例えば、集団を1つ又は複数のサブグループに分割することによって)患者集団を有利に階層化するか、又はその精選を可能にし、特に特定の遺伝子型を有する特定の患者の亜集団に関して、特定の治療計画の利点をより正確に検出することができる。一部の実施形態では、このような方法は、複数の被験体に試験活性剤を投与すること又は試験療法を施すこと(対照又はプラシーボ療法を典型的には、別個ではあるが、同様の特徴を有する複数の被験体に施す)、複数の被験体において上記の遺伝子型(例えば、ApoE及び/又はTOMM40)の有無を検出することを含む。遺伝子型は、試験療法を施す工程の前、後又はそれと同時に検出することができる。次いで、試験療法に対する1つ又は複数の検出される対立遺伝子の影響を、任意の好適なパラメータ又は潜在的な治療転帰又は結果(上記療法の効力、療法の副作用の欠如等を含むが、これらに限定されない)について決定することができる。
【0165】
臨床試験は、疾患と診断されているか、又は疾患を発症する危険性を有する被験体に対して、特定の遺伝子型が関連することが決定された様々な疾患を治療する試験化合物の効力を試験するように設定することができる。被験体を臨床試験終了後に遺伝子型決定する場合、分析法は依然として、疾患の治療と、効力について評価される対立遺伝子との関係を決定することを目的とするものであり得る。代替的には、症状のある被験体又は無症状の被験体が未だ疾患と診断されていないが、疾患を発症する危険性があると決定されている場合、上記の臨床試験と同様の臨床試験を行うことができる。
【0166】
根底にある生物学的機構は治療群を設計する場合にも検討され得る。例えば、ApoE 4(1−272)断片はミトコンドリアに結合し、ApoE 3(1−272)よりもミトコンドリア細胞動力学を減少させ、シナプス形成を減少させる。アルツハイマー病の治療に対する薬物候補であるロシグリタゾンは、ApoE断片の結合の影響とは相反して、ApoE 4よりもApoE 3について有糸分裂誘発を増大させ、シナプス形成を増大させる。したがって、薬物又は治療候補(例えばロシグリタゾン)は、階層化に使用される遺伝子マーカー(例えばApoE 2、ApoE 3、ApoE 4及び/又はTOMM40変異)に関連するため、根底にある作用機構に基づいて選択され得る。
【0167】
試験に選択された薬物の効力の評価は、一定期間にわたって被験体をモニタリングすること、並びに疾患の発病の遅延及び発病時の疾患の強度を分析すること、並びに疾患と関連する症状の発病を測定することを含み得る。臨床試験において、疾患の発病を排除若しくは遅延させるか、又は疾患の症状を低減する薬物は、疾患と診断されているか、又は疾患を発症する危険性がある患者に使用するのに有益な薬物であり得る。このような試験に使用され得る試験化合物は、以前に臨床用途が認可されているもの、及び未だ使用が認可されていないか、又は特定の疾患の治療に認可された新たな化合物を含む上記の薬剤を含む。したがって、一部の実施形態では、臨床試験は投与量、投与のタイミング、毒性又は副作用、投与経路及び治療の効力を含む薬物投与を最適化することを含み得る。
【0168】
10.対象となる遺伝子座での遺伝子型変異の検出に有用なキット
被験体の疾患を発症する、より低い発病年齢で疾患を発症する危険性が増大しているか否か、及び/又は特定の治療の候補を決定するための有用なキットであって、疾患がApoE及び/又はTOMM40と関連する(例えば遅発性アルツハイマー病)、キットが本明細書中で提供される。キットは、本明細書中に記載されるようなApoE及び/又はTOMM40変異の有無を検出するのに特異的な少なくとも1つの試薬を含み、被験体の疾患を発症する危険性が増大しているか否かを決定するのを助ける取扱説明書を含み得る。キットは任意で、ApoE遺伝子(例えばApoE 2、ApoE 3及び/又はApoE 4)を検出するための核酸、又はApoE遺伝子型を検出する等電点電気泳動法のための取扱説明書;及び/又は本明細書中に記載されるようなTOMM40変異の検出のための核酸を含み得る。一部の実施形態では、キットは任意で、ApoE 2、ApoE 3、ApoE 4又はTOMM40のアイソフォームに結合する1つ又は複数の抗体を含み得る。試験キットは任意の好適な方法で、典型的には全ての要素が試験を行うための印刷された取扱説明書のシートと共に単一の容器内に入れられて包装され得る。
【0169】
一部の実施形態では、キットは任意で、緩衝剤、酵素、及びプライマー指向性増幅によってゲノム核酸を増幅するための試薬を含有し得る。キットは、増幅核酸における特定のハプロタイプの有無を検出するための1つ又は複数の装置も含み得る。このような装置は、米国特許第6,355,429号に記載されるもののいずれかのような、バイオチップ又はマイクロアレイ装置に結合し得る、ハプロタイプ核酸にハイブリダイズする1つ又は複数のプローブを含み得る。バイオチップ又はマイクロアレイ装置は任意で、ハプロタイプ配列にハイブリダイズし得る表面に結合する少なくとも1つの捕捉プローブを有する。好ましい実施形態では、バイオチップ又はマイクロアレイは複数のプローブを含有し、最も好ましくは、存在する場合、一連の隣接プライマーによって増幅され得るハプロタイプ配列に対する少なくとも1つのプローブを含有する。例えば、5対の隣接プライマーを増幅に使用する場合、装置は各々の増幅産物に対する少なくとも1つのハプロタイププローブ、又は少なくとも5つのプローブを含有し得る。キットはまた、キットの構成要素を使用するための取扱説明書を含むのが好ましい。
【0170】
本発明は、以下の非限定的な実施例においてより詳細に説明される。
【実施例】
【0171】
実施例1:系統樹の構築
全ての既知のゲノムワイドスキャニング研究によって、アポリポタンパク質C1[ApoC1]遺伝子座の周囲の極めて有意なp値が実証される(Mahley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 103: 5644-51 (2006)、Coon et al., J. Clin. Psychiatry 68: 613-8 (2007)、Li et al., Arch. Neurol. 65: 45-53 (2007))。同様に重要なのは、各々の系列によってApoE連鎖不平衡領域の外側の「好適な」有意に近い(borderline significant)候補遺伝子が同定されたが、これらの好適な候補遺伝子は各研究において異なっていたことである。TOMM40はApoC1に近く、ApoEと連鎖不平衡である。ApoE 3又はApoE 4と種々のTOMM40アイソフォームとの間の相互作用は、より低年齢層でアルツハイマー病を発症する危険性の増大又は減少と関連すると考えられている。ApoEプロファイルに応じたより低年齢での疾患発症の危険性の範囲を示す、Apo 4/4、3/4、3/3、2/4及び2/3遺伝子型についての発病年齢曲線を図2に示す。しかしながら、ApoEのみではこれらの発病年齢曲線のデータの全てが説明されないと考えられる。
【0172】
種々のApoE対立遺伝子と関連するアルツハイマー病の危険性の多型プロファイリングに関する様々な方法が提案されている(例えば、Cox et al.の米国特許出願公開第20060228728号;Li and Grupeの米国特許出願公開第20080051318号を参照されたい)。ApoE 4パズルに対する系統発生的アプローチが本明細書中で実証される。
【0173】
生体試料、DNA単離、対象となる遺伝子座の増幅。合計して340人の被験体は、グループAに135人のアルツハイマー病症例及び99人の年齢適合対照、並びにグループBに57人の症例及び49人の対照を含んでいた。全ての被験体は、以前により低年齢での疾患発病の高い危険性と関連付けられたApoE遺伝子型(すなわち3/3、3/4又は4/4)を保有していた。DNAを含有する生体試料を全ての被験体から採取した。次いで、ゲノムDNAを染色体19上の遺伝子座をシークエンシングする従来の方法に従って単離した。
【0174】
図3は、複数の報告値からのゲノムワイドスキャニングデータを用いた研究の標的とされる染色体19上の遺伝領域を示す。この領域はGenBank参照配列AF050154内に含まれる。ソフトウェアを用いて、変異遺伝子座について複数の配列アラインメントを作製した(例えばClustalW2(欧州バイオインフォマティクス研究所))。続いて、複数の配列アラインメントを、系統樹を展開するソフトウェアを用いて分析した(例えば、MEGAバージョン2.1(進化機能ゲノム学センター(Center for Evolutionary Functional Genomics))、TREEVOLVE(オックスフォード大学動物学部)、又はPAUP(Sinauer Associates)等の節約法に基づく構築ソフトウェア)。統計分析は、例えば、Genetic Data Analysis(GDA:不連続遺伝的データの分析用のソフトウェア、ノースカロライナ州立大学のバイオインフォマティクス研究センターを用いて行った)。領域B分析の結果を図4の系統樹に示す。
【0175】
図4中の各々のデータは、観察された配列変異を表す。これらの変異はヌクレオチド置換、挿入、欠失、又はマイクロサテライトであり得るが、遺伝子発現又はタンパク質機能において検出可能な差異を生じる場合も、又は生じない場合もある。各々のノードは2つ以上の染色体上に生じた変異(すなわち変異の数)を表す。隣接するノードは、被験体の染色体上の対象となる領域においてシス位にあり、したがって1つの単位として遺伝する可能性がより高い配列の境界を規定する。最大数の後続ノードに先行するノードは、進化的に祖先の変異(そこから遺伝的分岐が時間をかけて生じた)を表す。
【0176】
実質的に高いアルツハイマー病の発生率を有する被験体(すなわち、非罹患対照被験体に対する疾患に罹患している被験体の比がより高い)を表す系統樹の領域に相当するハプロタイプ又は配列変異の存在は、個々の被験体の危険性が増大していることも意味し得る。反対に、実質的に低い比はアルツハイマー病を発症する危険性の低減に相当する。
【0177】
TOMM40は、ミトコンドリアタンパク質輸送の調節においてApoEと直接相互作用するが、現在の仮説は、特定のTOMM40変異(複数可)の発現が、ApoE 3対立遺伝子の用量依存的な存在と関連してアルツハイマー病の比較的中程度の危険性を悪化させるということである。このようなTOMM40変異は、本発明の方法を用いて領域B内に発見される。
【0178】
ヒト被験体に対して新たな薬物を試験することは非常に大きな危険性を伴う(Kenter and Cohen, Lancet, 368: 1387-91 (2006)を参照されたい)。対象となる薬物又は治療に対する個々の応答を予想するための系統樹の使用は、この危険性を大いに緩和する可能性を有する。予備研究によって、ロシグリタゾン(Avandia)がアルツハイマー病の治療において遺伝子プロファイルに特異的な効力を有し得ることが示された(Risner et al., The Pharmacogenomics Journal 6, 246-254 (2006);Brodbeck et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 105, 1343-6 (2008)を参照されたい)。第二相臨床試験データは、ApoE 4対立遺伝子を有しないアルツハイマー病患者が、1つ又は2つのApoE 4対立遺伝子を保有する患者よりも良好にロシグリタゾンに対して応答したことを示している(データは示さない)。このことは、本明細書中に教示される方法によって同定された変異が、遺伝子型に基づく治療に対する個人の応答を予想するために使用され得るという仮説を支持するものである。
【0179】
実施例2:対象となるTOMM40変異の同定
174個の配列(87人の被験体の各々から2個ずつ)を、CLUSTAL Xプログラム(バージョン2.0.10、Larkin et al., Clustal W and Clustal X version 2.0. Bioinformatics, 23:2947-2948 (2007))を用いてアラインメントした。欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)のウェブサイトで実施されるように、近隣結合アルゴリズム(Saitou and Nei, The neighbor-joining method: a new method for reconstructing phylogenetic trees. Mol. Evol. Biol., 4:406-425 (1987))を用いて系統樹を構築するために複合配列アラインメントを使用した。
【0180】
得られた系統樹は最初の分岐に大きな2つのグループ(A、B)がある構造を有する。これらのグループに関するApoE遺伝子型頻度を図5に一覧にして示す。グループBが主としてε3/ε3及びε3/ε4 ApoE遺伝子型の被験体−ハプロタイプを含有し、ε4/ε4をほとんど有しないことが明らかである。グループAはε4/ε4遺伝子型を含むほとんど全ての被験体ハプロタイプを含有する。
【0181】
SNP発見プラットホームによって作製した多型のリスト(Polymorphic)を用いて、データを2つのグループに分けるTOMM40遺伝子中の特定の変異を同定した。尤度比検定を用いて、0.005未満のp値を有する有意な変異を同定した。
【0182】
変異のリストを表1に要約する。表において、「欠失」という用語はマイナー対立遺伝子がヌクレオチドの欠失である場合に使用され、「挿入」という用語はマイナー対立遺伝子がヌクレオチドの付加である場合に使用される。「欠失/挿入多型」という用語は3つ以上の可能な形態が存在し、マイナー対立遺伝子が明らかでない場合に使用される。例えばポリT多型については、複数の長さの多型が観察される。表の2列目には、配列を2つのグループに分ける変異と関連する特定の対立遺伝子の固有性についての情報を与える。例えば、T>AはT対立遺伝子が配列を系統樹上でグループ「A」に分けることを示す。2つの対立遺伝子が載っている場合(例えばG>B;A>A)、各々の対立遺伝子が独自に配列データを2つのグループに分けるが、単一の対立遺伝子が載っている場合、 データの優勢な分離と関連し、残りの対立遺伝子は独自にデータを均質なグループに分離せず、両方のグループを混合したものである。
【0183】
【表1】

【0184】
実施例3:ApoE 3の2つの異なる形態:危険性を増大させ、発病年齢を低下させるTOMM40ハプロタイプと連鎖した形態、及び危険性を減少させる形態
アポリポタンパク質E(ApoE)遺伝子型、特にApoE ε4(ApoE 4)と、アルツハイマー病(AD)の危険性及び発病年齢との関連性は依然として、任意の複合疾患に関して確認される最大の遺伝的関連性である。遅発性ADに関するApoE 4の遺伝率の推定値は58%〜79%の範囲であり、ApoE 4対立遺伝子による集団寄与危険度は20%〜70%である。これらの推定値によって、他の遺伝的変異及び/又は変異間の相互作用がさらなる疾患危険性を招き、発病年齢分布を変更することが示唆される。
【0185】
ADに関するゲノムワイドスキャン関連結果は、ApoEを含有するLD領域の並外れた関連性を一貫して再現した。ミトコンドリア外膜のタンパク質トランスロカーゼであるTOMM40はApoEと高LDであり、細胞質ペプチド及びタンパク質が新たなミトコンドリアを合成するために横断する膜チャネルをコードする。本発明者らの目的は、遺伝率の推定値を増大させるLD領域内のさらなるハプロタイプを同定することであった。
【0186】
方法:本発明者らは、ApoE及びTOMM40の両方を含有するLD領域を、AD患者及び対照におけるディープ(10×)プライマリシークエンシングを用いて試験した。危険性及び発病年齢分布に関して、66人の患者及び66人の年齢適合対照において、TOMM40及びApoEを含むLD領域の系統発生分析法を行った。
【0187】
結論:本発明者らは、種々のTOMM40変異の独自の別個に遺伝したファミリーが、ApoE 3と同じゲノム範囲上に位置するが、ApoE 4含有ゲノム範囲上には位置せず、ADの危険性分布の年齢を上昇又は低下させ得ることを見出した。したがって、これらのTOMM40変異の遺伝(genetic inheritance)は、ApoE 4の遺伝とは独立しており、ApoE 3の2つの異なる形態(危険性を増大させ、発病年齢を低下させるTOMM40ハプロタイプと連鎖した形態、及び危険性を減少させる形態)を効果的に区別する。これらのデータは、発病年齢の遺伝的危険性(年齢、ApoE及びTOMM40遺伝子型に依存する)の正確性を増大させ、その後5年〜7年にわたってADのより低い危険性に対してADの高い危険性を規定する機会をもたらす。
【0188】
実施例4:3つの同定されたTOMM40 DIP変異の分析
本出願において同定したTOMM40変異のうち3つは、イントロン6又はイントロン9に位置する欠失/挿入多型(DIP)である。これらのDIPは、国立バイオテクノロジー情報センターのdbSNPデータベースにおけるrs10524523及びrs10602329、並びに以前に記載されていない多型(DIP3と指定する)として同定される。これらの多型は、NCBI build 36によると、それぞれchr19:50,094,889、chr19:50,094,731及びchr19:50,096,647に位置する。本発明では、TOMM40遺伝子(特に該遺伝子の10Kb断片)の系統発生分析を用いたこれらのDIPの同定、及びDIPが系統発生分析によって決定される種々の進化的グループと関連することを説明する。本発明はさらに、(1)健常者が将来アルツハイマー病を発症する危険性を決定すること、及び(2)およそ8年の時間枠内でADの発病年齢を予測することに対するこれらのDIPの有用性を開示する。
【0189】
本明細書中で特徴付けた3つのDIP多型は、TOMM40遺伝子中の異なる長さのDIPポリT反復に相当する。DIPポリT変異と疾患危険性との関連性が優先される。例えば、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子中のイントロン8のポリT変異は、エキソン9のスキッピング及び嚢胞性線維症の発症と関連する(Groman et al., Am J Hum Genet 74(1):176-9 (2004))。本明細書中では、(1)疾患危険性及び/又は疾患発病年齢の差異を予測するDIPを同定するための新規の方法(系統発生関連性分析(上記))の使用、(2)AD発病年齢及びAD危険性における差異と関連する3つの特異的DIPの固有性、(3)疾患を診断するか、又は疾患発病年齢、疾患の予後、疾患の亜型、疾患の重症度等の疾患特性を予測若しくは決定するため、さらに薬物に対する応答を分析若しくは決定するための、これらのSNPの個々の、合わせた、又はTOMM40若しくはApoEの他の配列変異との使用が開示される。
【0190】
系統発生分析によって、2つの異なるクレードへのrs10524523及びrs10602329 DIPの分布が明らかとなる。この分析によって、これらの遺伝子座の短いポリT長が、グループB中の系統発生学的に同定されたクレードにマッピングされ、このグループはまた、より高い割合のApoE e3/e3遺伝子型被験体、事実上わずかな(0%)ApoE e4/e4被験体、及びより低い症例/対照比(すなわちADの疾患危険性)を含むことが明らかとなる(図5)。DIP長と系統発生グループとの間の関連性は、尤度比検定又はピアソンのカイ二乗検定によると統計的に有意である(p<0.0001)。
【0191】
上記の2つの遺伝子間の系統発生分析によって示されるようなゲノム構造、高い連鎖不平衡及び進化的関係性、並びに2つの遺伝子産物間の推定の物理的相互作用のために、TOMM40遺伝子型の影響は、ApoE遺伝子型によって影響を受ける他の疾患にまで及ぶ可能性が高い。これらの疾患としては、パーキンソン病、多発性硬化症、心臓血管疾患、脂質異常症、外傷性脳損傷からの回復、虚血脳イベントからの回復、麻酔薬に対する応答、及びAD及び本明細書中で挙げられる疾患を治療するのに使用される薬物に対する応答が挙げられるが、これらに限定されない。
【0192】
これらの多型は、TOMM40又はApoEタンパク質又は遺伝子変異の変動に影響される疾患を治療するのに有用な化合物のスクリーニングのための創薬努力においても使用することができる。
【0193】
また、変異は、モノクローナル抗体及びsiRNA分子によって例示されるような特異的に標的とされる生物医薬品に基づく療法に影響を与えるか、又はそれを決定する。
【0194】
本明細書中に開示されるTOMM40中のDIP多型は、多くの異なる分子ヌクレオチド分析法(下記に挙げる表4に示されるプライマーを用いたDNAシークエンシングを含むが、これに限定されない)を用いて、個体のDNA試料から同定することができる。
【0195】
実施例5:rs10524523のより長いポリT領域(tracts)は、LOADのより低い発病年齢と有意に相関する
系統発生分析を用いて、低頻度遺伝的変異間のゲノム関係を同定し、進化的に関連したハプロタイプをクラスタリングした(Hahn et al. Population genetic and phylogenetic evidence for positive selection on regulatory mutations at the factor VII locus in humans. Genetics 167, 867-77 (2004))。この方法を利用して、ApoE−TOMM40 LDブロックをLOADに対する新規の危険性決定因子の存在について探索した。探索研究では、72人のLOAD症例及び60人の年齢適合対照について、TOMM40及びApoE遺伝子を含有する23KbのDNAを増幅してシークエンシングし、位相分解(phase-resolved)ハプロタイプを決定した(Li et al. Candidate single-nucleotide polymorphisms from a genomewide association study of Alzheimer disease. Arch Neurol 65, 45-53 (2008))。この領域のうちエキソン2〜10をコードする10Kbについて明確な系統樹を構築することが可能であった。2つのクレード(A及びB)を、強いブートストラップサポート(98%、1000回の反復)で区別した。この系統樹上の2つのTOMM40ハプロタイプの2つのクレード間でApoE遺伝子型の分布に有意な差異があり、この領域が機能的に重要であり得ることが示唆された。両方のクレードはε3/ε3遺伝子型を有する被験体を含有していたが、全てのクレードBハプロタイプの98%がApoE ε3対立遺伝子とシス位で生じた(P=1.2×10−18、フィッシャーの正確確率検定、両側)。
【0196】
続いて、このTOMM40の10Kb領域の系統発生学的構造、特定のハプロタイプのApoE ε3特異的遺伝、及びクレード特異的多型の固有性(identify)を、2つの独立したLOAD症例/対照コホート(剖検によって確認されるAD状態及び疾患発病年齢のデータによる1つのコホートを含む)において確認した。2つのクレードと、疾患危険性及び疾患発病年齢(データが利用可能であった場合)との間の関連性も、これら2つのコホートに関して探索した。第1のコホート(AS)は、アリゾナアルツハイマー病研究センター(ADRC)で確認されたAD症例(n=74)及び対照(n=31)を含んでいた。第2のコホート(DS)は、デューク大学のブライアンADRCに集められ、ApoE ε3/ε4被験体のみを含んでいた(疾患発病年齢が明らかな40人の剖検によって確認された症例及び33人の対照)(表2)。DNAシークエンシングは50歳〜68歳に疾患が発病したDSコホートのサブセットにとっては成功であったが、関連性分析はADを60歳以降に発症した患者のサブセットに限られていた。
【0197】
【表2】

【0198】
探索研究において作製したものと同様の構造の系統樹を、ASコホートについて強いブートストラップサポート(97%、1000回の反復)で展開した。ApoE ε4/ε4被験体はクレードAにおいてのみ生じたが(98%のグループ間の分離、P=2.0×10−4、フィッシャーの正確確率検定、両側)、残りのApoE遺伝子型はクレードAとクレードBとに分布していた(図6)。すなわち、ApoE ε4は常にクレードA変異とLDであったが、ApoE ε3はクレードA及びクレードBハプロタイプの両方において生じた。少数のApoE ε2/ε4被験体の系統樹上での分布の検査によって、ApoE ε2−TOMM40ハプロタイプが、ApoEε3−TOMM40ハプロタイプと同様の進化史を共有することが示唆される(データは示さない)。系統発生学的構造を別の方法を用いて確かめるため、またその遺伝子間隔内での組み換えがASコホートに対して展開された系統樹構造を交絡させていないことを確実にするため、統計的節約法(TCSバージョン1.21(Clement et al. TCS: a computer program to estimate gene genealogies. Mol Ecol 9, 1657-9 (2000)))を用いてハプロタイプネットワークも構築した。この2つの方法(最大節約法及びTCS)によって得られる大部分の被験体−ハプロタイプクラスターは合同であった。
【0199】
クレードAは、クレードBよりも高頻度でAD症例と関連していた(OR=1.44、95%CI=0.76〜2.70)。ApoE ε4の影響を制御しながらApoE ε3/ε4ヘテロ接合体(n=36)を分析して、クレードAハプロタイプと関連する疾患危険性を推定した。TOMM40クレードAについてホモ接合であったサブセットは、クレードA及びクレードBについてヘテロ接合であったサブセットと比較してLOAD発生率がより高いという傾向があり(OR=1.36、95%CI=0.40〜4.61)、したがってクレードAを規定するTOMM40変異の少なくとも一部が、ApoE ε4とは無関係のLOADの危険性を与えることが想定された。
【0200】
ASコホート配列データを分析することによって、TOMM40の10Kb領域において39個の多型部位が同定され、そのうち30個が節約法に有益な部位(それぞれが少なくとも2つの配列で表される少なくとも2つの異なるヌクレオチド)であった。30個の節約法に有益な部位のうち、18個が0.10を上回るマイナー対立遺伝子頻度(MAF)を有し、6個のSNPがTOMM40遺伝子の境界外部にあった。10個のSNPがApoE ε3との関連でのみ生じ(P=6.07×10−50、フィッシャーの正確確率検定、両側、n=210)、ApoE ε4/ε4ホモ接合被験体において観察されることはなかった(n=16)。ε3特異的TOMM40変異の大部分はイントロン領域に位置していた。
【0201】
図7に、ASコホートからのApoE ε3/ε3被験体についてTOMM40クレードAとクレードBとを(P<0.001で)区別する10個のSNP及び6個の挿入/欠失多型を示す。これらの多型を個々に、LOAD危険性との関連性についてのハプロタイプとして試験した(表3)。マイナー対立遺伝子の全ての症例における、各々のクレードB対立遺伝子についての疾患危険性に対するオッズ比によって、クレードB対立遺伝子がASコホートにおいてAD危険性を保つことが示唆されるが、各々の症例における関連性はわずかに有意性を外れていた。表3に報告したオッズ比に対するApoE ε4の影響を説明するために、48人のAD症例及び48人のAD対照という均衡の取れたセットを、プールしたASコホート及びDSコホートからのApoE ε3/ε4被験体から配列を無作為に選択することによって構築した。単一のSNPも同様に、この均衡の取れたデータセットにおいて有意にLOADと関連しなかった。しかしながら、TOMM40クレードBを区別する4個のSNP(rs8106922、rs1160985、rs760136、rs741780)のマイナー対立遺伝子を、3つのLOAD症例/対照ゲノムワイド関連性研究において前もって検査し、疾患危険性を保つことを見出したが(各々の症例においてOR<1)、これは本発明者らの研究において観察された傾向と一致する(Abraham et al. A genome-wide association study for late-onset Alzheimer's disease using DNA pooling. BMC Med Genomics 1, 44 (2008); Carrasquillo et al. Genetic variation in PCDH11X is associated with susceptibility to late-onset Alzheimer's disease. Nat Genet 41, 192-198 (2009); Takei et al. Genetic association study on in and around the ApoE in late-onset Alzheimer disease in Japanese. Genomics 93, 441-448 (2009))。
【0202】
【表3】

【0203】
2つのクレード、したがってApoE ε3ハプロタイプの2つのグループを区別した別の多型は、TOMM40のイントロン6に位置するポリT変異(rs10524523)であった。ApoE ε4染色体上では、この変異は比較的長く(狭く単峰型の長さの分布を有する)(21個〜30個のT残基、平均=26.78、標準偏差=2.60、n=32)、一方でApoE ε3染色体上では、ピークが15.17個(標準偏差=0.85、n=36)及び33.15個(標準偏差=2.09、n=55)のT残基にある二峰性の長さの分布が見てとれる(図8)。より長いポリT長(T≧27)は、ASコホートにおいて危険性が高いクレードであるクレードAにほぼ例外なく分けられた(P=7.6×10−46、n=210、フィッシャーの正確確率検定、両側)。その2つの最も一般的な短い長さ(15個又は16個のT残基)を含有するカテゴリーについての症例/対照比は1.46であり(95%CI=1.25〜1.75)、より長い長さ(28個、29個、33個及び34個のT残基)のカテゴリーについての症例/対照比は2.02であった(95%CI=1.13〜2.87)。このデータによって、より長いrs10524523のポリT長とADとの間の関連性に対する傾向が示された(OR=1.38、95%CI=0.80〜2.39)。
【0204】
ASコホートについてはTOMM40ハプロタイプ又は個々の多型とLOADとの間の関連性に対する傾向しか見られなかったが、rs10524523のポリT長カテゴリーとLOAD発病年齢との間に有意な関連性が見られた。これを、疾患発病データがある剖検によって確認されたApoE ε3/ε4被験体のDSコホートを用いて試験した。より長いポリT対立遺伝子(27個以上のT残基)は、はるかに若い年齢での疾患の発病と有意に関連していた(70.5歳±1.2歳対77.6歳±2.1歳、P=0.02、n=34)(図5)。
【0205】
したがって、この多型は、ApoE ε3対立遺伝子を保有する個体に関する疾患発病年齢に有意に影響を与えた。イントロン6中に位置する3つの他のポリT長多型(rs34896370、rs56290633及びrs10602329)も、クレードAとクレードBとを区別するが、これらの多型は疾患発病年齢と関連していなかった。同様に、クレードを区別するSNPとLOADの年齢との間の関係性は見られず、又は3つのゲノムワイド関連性研究において有意にAD危険性と関連していた単一のSNP(rs8106922)についても関係性は見られなかった(Abraham et al. A genome-wide association study for late-onset Alzheimer's disease using DNA pooling. BMC Med Genomics 1, 44 (2008);Carrasquillo et al. Genetic variation in PCDH11X is associated with susceptibility to late-onset Alzheimer's disease. Nat Genet 41, 192-198 (2009);Takei et al. Genetic association study on in and around the ApoE in late-onset Alzheimer disease in Japanese. Genomics 93, 441-448 (2009))(データは示さない)。
【0206】
rs10524523のより長いポリT領域が、LOADのより低い発病年齢と有意に相関することを結論付ける。この変異の長さはApoE ε4染色体上では比較的均一であり、比較的長いが、ApoE ε3と連鎖するポリT長の2つのカテゴリーがある。ApoE ε2染色体もε3染色体と同様に可変長のポリT反復を保有するようであるが、この予備調査結果を確かめるため、及びApoE ε2の保因者に対してポリT反復が非常に遅い年齢での疾患発病に影響を与えるか否かを決定するためにさらなる調査が必要とされる。
【0207】
ApoE ε4に関してホモ接合でない個体に対してLOADの発病年齢に影響を与える他の変異が存在する可能性はあるが、TOMM40イントロン6中のポリT多型の長さは、この連鎖領域における最も強力な遺伝的予測因子であると考えられ、予め確認する必要がある。これらのデータから、ApoE遺伝子型によって層別化した発病年齢曲線(Corder et al. Gene dose of apolipoprotein E type 4 allele and the risk of Alzheimer's disease in late onset families. Science 261, 921-3 (1993);Li et al. Candidate single-nucleotide polymorphisms from a genomewide association study of Alzheimer disease. Arch Neurol 65, 45-53 (2008))が、実際には、各々の曲線がApoE及びTOMM40において連鎖した多型の特異的相互作用を反映する曲線の組であることが示唆される。したがって、これらのデータは、60歳を超えた個体に対して5年〜7年の期間内にLOAD発病年齢の予測に対する解決策を与える。ApoE遺伝子型及びTOMM40ハプロタイプ又はrs10524523と、疾患発病年齢との間の関連性を確認する研究が現在計画されている。この研究は、幾つかの民族集団において行われる5年間の集団に基づく前向き研究であり、疾患発病を予防又は遅延させる薬物の試験と組み合わせられる。
【0208】
方法
本研究において分析した2つのコホートは、アリゾナアルツハイマー病研究センター(ADRC)(Phoenix,Arizona)及びデューク大学のブライアンADRC(Durham,North Carolina)からのものであった。全ての被験体はヨーロッパ系であった。アリゾナ及びデュークの研究は治験審査委員会によって認可され、全ての参加者から適切なインフォームドコンセントが得られた。各々のコホート中の症例及び対照に対する年齢及び性別のデータを表2に示す。デュークのコホートについては、疾患発病年齢をレトロスペクティブに決定し、疾患診断結果を剖検によって確認した。
【0209】
Polymorphic DNA Technologies (Alameda,CA)でのロングレンジPCR及びDNAシークエンシングのために試料を96ウェルプレート上にプレーティングした。
【0210】
ロングレンジPCRは、Takara LA Taq Polymerase(Takara Mirus Bio)を用いて行った。反応混合物及びPCR条件は、製造業者によって推奨されるものと同じであった。PCRを、2.5UのLA Taq及び200ng〜400ngのヒトゲノムDNAを含む50μL容量中で行った。熱サイクリング(Thermocycling)は以下の条件で行った:94℃、1分間を1サイクル;94℃、30秒間;57℃、30秒間;68℃、9分間を14サイクル;94℃、30秒間;57℃、30秒間;68℃、9分間+15秒間/サイクルを16サイクル;72℃、10分間を1サイクル。ロングレンジPCR用のプライマーを表4に示す。
【0211】
【表4】

【0212】
PCR産物を0.8%アガロースゲル上で泳動し、クリスタルバイオレット色素によって可視化し、サイズ標準と比較し、ゲルから切り取り、TOPO XL PCR Cloningキット(Invitrogen)に付随の精製材料を用いて抽出した。ロングレンジPCR産物をTOPO XL PCRクローニングベクターにクローン化した。このシステムはTAクローニングベクターを使用し、最大で10kbの挿入が推奨される。製造業者の取扱説明書によると、(同じキットからの)エレクトロコンピテントセルをベクターによって形質転換し、抗生物質の存在下でプレーティングし、インキュベートした。各プレートから10個のクローンを採取し、96ウェルフォーマットで培養した。
【0213】
希釈した培養物を、TempliPhi DNA Sequencing Template Amplificationキット(GE HealthCare/Amersham Biosciences)に含まれる変性バッファーに移した。このバッファーはプラスミドDNAの放出を引き起こすが、細菌DNAの放出は引き起こさない。培養物を加熱し、冷却し、遠心し、TempliPhi酵素及び他の成分を含有する新たなプレートに移した。この混合物を30℃で18時間インキュベートして、プラスミド鋳型の増幅を促進した。これらの産物を次いで遠心し、65℃に加熱して酵素を破壊した。
【0214】
プラスミド鋳型を、Big Dyeバージョン3.1シークエンシングキット(Applied Biosystems)を用いるDNAシークエンシング反応に使用した。各々の反応について、鋳型の独自の位置にアニールするように設計された適切なシークエンシングプライマー(表4)を使用した。サイクルシークエンシングを50℃のアニーリング温度、60℃の伸長温度及び96℃の変性温度で、合計して30サイクル行った。シークエンシング反応産物を、50cmのキャピラリーアレイを備えるABI 3730XL DNAシークエンサー上で標準泳動モードを用いて泳動した。
【0215】
「Agent」と呼ばれる独自のシークエンシング分析プログラム(Celeraによって開発された)を用いて、シークエンシング読み取り値を適切な参照配列にアラインメントし、各々のクローンと関連する「コンティグ」を作製した。このシステムは、いずれの試料についても任意の変異がある全ての塩基に対する推定の品質スコアをもたらす。各々の試料に対するシークエンシング報告値を、クローンの1つのサブセットについて或るハプロタイプパターンで相関し、残りのクローンについて異なるハプロタイプパターンで相関するSNPの存在について分析した。対象となる領域に対する参照ファイルを、NCBI dbSNPから公開されているこの領域に対する既知の変異を列挙することによって作製した。対象となる領域についての遺伝子型ファイルを、既知の参照配列とコンセンサスハプロタイプ配列との間の全ての変異について各々の被験体のハプロタイプ報告値を探索することによって作製した。
【0216】
ポリT変異(例えばrs10524523)に関する長さ−読み取り誤差の大きさを、単一のハプロタイプを有する試料について調製された10個のクローンからの観測長を試験することによって推定した。16bpという短いポリT長を有する典型的な試料については、10個のクローンに対する標準偏差は0.97であった。例えば27bpというより長いポリT長を有する典型的な試料については、標準偏差は1.58であった。
【0217】
系統発生分析を行った。デフォルトパラメータを用いてClustalW2(バージョン2.0.10)プログラムを使用して配列の複合配列アラインメントを行った。Genedoc(バージョン2.7.000)を使用してアラインメントのマニュアル調整を完了させた。ベイジアン最大尤度及び距離ベースの再構築を用いて系統樹を構築した。使用した系統樹構築ソフトウェアはPaup(バージョン4.0b10)、ClustalX2(近接結合法、バージョン2.0.10)及びMr.Bayes(バージョン3.1.2)であった。
【0218】
樹形二分割再結合法(Tree-bisection and reconnection brunch swapping)を全ての方法で使用した。配列進化の最適モデルをModeltestプログラム(バージョン3.7)を使用して推定し、以下の重要な決定因子に関する推定値が与えられた:速度行列(rate matrix)、γ分布の形状及び不変異部位の割合。特異的な系統樹形態に関する統計的支持を決定するために1000回の反復を用いてブートストラップ分析を行った。
【0219】
また、プログラムTCS(バージョン1.21(Clement et al. TCS: a computer program to estimate gene genealogies. Mol Ecol 9, 1657-9(2000)))を使用して、配列データからハプロタイプネットワークを構築し、系統樹を比較して、統計的節約法を使用して分岐図の推定を行った。系統樹及びハプロタイプネットワークを2度構築し、ギャップは最初のものでは欠測データとして、及び2番目のものでは第5の形質として処理した。対象となる領域におけるヌクレオチド多様性をDnaSP(バージョン5.00.02(Librado et al. DnaSP v5: a software for comprehensive analysis of DNA polymorphism data. Bioinformatics 25, 1451-2(2009)))を使用して計算した。
【0220】
系統樹及びハプロタイプネットワークを構築し、対象となる領域におけるヌクレオチド多様性の分析を完了させた後、様々な方法による結果を比較し、コンセンサス系統樹へと調整した(reconciled)。最近の疾患突然変異を共有する配列群を推測し、より綿密に系統樹上で分けたが、表現型模写(phenocopies)、優性及びエピスタシスにより、散発性症例では表現型−ハプロタイプ関係性にノイズが導入される可能性がある(Tachmazidou et al. Genetic association mapping via evolution-based clustering of haplotypes. PLoS Genet 3, e111 (2007))。
【0221】
しかしながら、表現型模写、優性及びエピスタシスにより、散発性症例では表現型−ハプロタイプ関係性にノイズが導入される可能性がある。この系統発生分析はこれらの影響を最小限にするためにクレードの高レベルの集約に注目した。系統樹において最初のスプリットで決定されるクレードを用いて、クレード「B」由来のTOMM40被験体−ハプロタイプがクレード「A」由来の被験体−ハプロタイプより遅い年齢でのADの発病と関連していた(各々の被験体では、AD発病年齢関連性シグナルに対して2つのハプロタイプが寄与していた)という仮説を検証した。このアプローチを用いて行った関連性の試験の数は典型的なゲノムワイド関連性研究でのものよりも桁違いに少なく、これは系統発生分析が進化的に関連した被験体−ハプロタイプのカテゴリーを同定したためであった。関連性の試験により、異なるクレードが発病年齢で被験体−ハプロタイプデータを分類することが確認された場合、配列を各々のクレードに分離させる変異を同定するためにさらに統計的分析を行った。この分析により、系統樹構造によって導かれる一連の一自由度試験を用いて発病年齢に影響する因子として各々の変異の有意性が効果的に評価された。単一のヌクレオチド及び挿入/欠失多型を使用して、系統発生分析法を行った。関連性の統計的試験を、この分析に含まれる多型部位の数に関してボンフェローニ補正を用いて調整した。
【0222】
多型分析ソフトウェアによるハプロタイプ報告値及びDnaSPソフトウェア(バージョン5.00.02(Librado et al. DnaSP v5: a software for comprehensive analysis of DNA polymorphism data. Bioinformatics 25, 1451-2(2009)))による報告値を後続の統計的分析法に使用した。本発明者らは、ASコホートではLOAD危険性及びDSコホートではLOAD発病年齢との関連性に関して、個々のTOMM40 SNP変異、TOMM40ハプロタイプ及びポリT反復の長さを分析した。各々のApoE対立遺伝子又はApoE遺伝子型と関連する特異的TOMM40対立遺伝子の割合の差異をフィッシャーの正確確率検定(両側)を用いて比較した。30個の節約法に有益な部位及びα=0.05から始める場合、特異的対立遺伝子関連性の有意性に関するボンフェローニ補正には、0.001のP値が必要となる。オッズ比(OR)を(症例におけるマイナー対立遺伝子の数/対照におけるマイナー対立遺伝子の数)/(症例におけるメジャー対立遺伝子の数/対照におけるメジャー対立遺伝子の数)として計算し、95%信頼区間で報告した。LOAD発病年齢群を規定する手段をt検定(両側)で比較した。群分散でのスタンダードF検定を行い、等分散又は不等分散のどちらを仮定してt検定を計算したかを決定した。統計分析をJMPソフトウェア(バージョン8、SAS Institute, Cary, NC)を使用して完了させた。
アクセッションコード:GenBank:TOMM40、ミトコンドリア外膜40ホモログのトランスロカーゼ、10452;ApoE、アポリポタンパク質E、348
【0223】
上述の記載は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものとしては解釈されない。本発明は以下の特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲の均等物が本明細書中に包含される。
【配列表フリーテキスト】
【0224】
配列番号1:ロングレンジPCRプライマー
配列番号2:ロングレンジPCRプライマー
配列番号3:シークエンシングプライマー
配列番号4:シークエンシングプライマー
配列番号5:シークエンシングプライマー
配列番号6:シークエンシングプライマー
配列番号7:シークエンシングプライマー
配列番号8:シークエンシングプライマー
配列番号9:シークエンシングプライマー
配列番号10:シークエンシングプライマー
配列番号11:シークエンシングプライマー
配列番号12:シークエンシングプライマー
配列番号13:シークエンシングプライマー
配列番号14:シークエンシングプライマー
配列番号15:シークエンシングプライマー
配列番号16:シークエンシングプライマー
配列番号17:シークエンシングプライマー
配列番号18:シークエンシングプライマー
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配列番号20:シークエンシングプライマー
配列番号21:シークエンシングプライマー
配列番号22:シークエンシングプライマー
配列番号23:シークエンシングプライマー
配列番号24:シークエンシングプライマー
配列番号25:シークエンシングプライマー
配列番号26:シークエンシングプライマー
配列番号27:シークエンシングプライマー
配列番号28:シークエンシングプライマー
配列番号29:シークエンシングプライマー
配列番号30:シークエンシングプライマー
配列番号31:シークエンシングプライマー
配列番号32:シークエンシングプライマー
配列番号33:シークエンシングプライマー
配列番号34:シークエンシングプライマー
配列番号35:シークエンシングプライマー
配列番号36:シークエンシングプライマー
配列番号37:シークエンシングプライマー
配列番号38:シークエンシングプライマー
配列番号39:シークエンシングプライマー
配列番号40:シークエンシングプライマー
配列番号41:シークエンシングプライマー
配列番号42:シークエンシングプライマー
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配列番号44:シークエンシングプライマー
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配列番号46:シークエンシングプライマー
配列番号47:シークエンシングプライマー
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配列番号50:シークエンシングプライマー
配列番号51:シークエンシングプライマー
配列番号52:シークエンシングプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる病態の発症に関連する遺伝的変異を同定する方法であって、
(a)DNAを含有する生体試料から対象となる遺伝子座で複数の個々のヒト被験体により保有されるヌクレオチド配列を決定することであって、該被験体が(i)前記対象となる病態に罹患した被験体、及び(ii)該対象となる病態に罹患していない被験体の両方を含む、決定すること、
(b)複合配列アラインメント分析を行い、前記遺伝子座での遺伝的変異を前記複数のヒト被験体で観察されるヌクレオチド配列から同定する、複合配列アラインメント分析を行うこと、
(c)前記遺伝的変異をマッピングすることであって、該被験体の系統樹を構築し、該系統樹が同じシストロン上で前記被験体間の変異変化を同定するブランチを含む、マッピングすること、
(d)前記系統樹でブランチとして表される前記遺伝的変異を試験すると共に、罹患した被験体と罹患していない被験体との比を決定し、罹患した被験体と罹患していない被験体との比の変化をもたらす該遺伝的変異の変化を同定すること、及びそれから
(e)罹患した被験体と罹患していない被験体との前記比が前記系統樹上の1つ又は複数の隣接変異と少なくとも5%異なる遺伝的変異を同定すること、
を含み、それにより前記対象となる病態の発症に関連する遺伝的変異を同定する、方法。
【請求項2】
全ての前記被験体が前記対象となる病態に関して同じ既知の多型を保有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記既知の多型がアポリポタンパク質E対立遺伝子である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象となる遺伝子座が前記既知の多型と連鎖不平衡にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象となる遺伝子座が同じ染色体上にあり、かつ前記既知の多型と10キロベース、20キロベース、30キロベース、40キロベース、又は50キロベース未満しか離れていない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子座がTOMM40である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象となる病態がミトコンドリア機能障害の増大又は低減に関連する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象となる病態が神経変性疾患、代謝性疾患、心臓血管疾患、精神障害又は癌である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象となる病態が冠動脈疾患である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象となる病態が2型糖尿病である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象となる病態がパーキンソン病である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象となる病態がアルツハイマー病である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
対象となる病態の発症に関する危険性の増大を決定する方法であって、
(a)DNAを含有する生体試料から、個々の被験体により保有される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により同定された遺伝的変異(genetic variant)を決定すること、及びそれから
(b)前記遺伝的変異が存在する場合、前記被験体の前記対象となる病態の発症に関する危険性が増大していることを決定すること、
を含む、方法。
【請求項14】
被験体においてアルツハイマー病の発症に関する危険性の増大を決定する方法であって、
(a)前記被験体から採取したDNAを含有する生体試料からアルツハイマー病の危険性の増大又は低減に関連する前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異の有無を検出することであって、該変異が該TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9における欠失/挿入多型である、検出すること、及び
(b)前記遺伝的変異が存在している又は非存在である場合、前記被験体のアルツハイマー病の危険性が増大又は低減していることを決定すること、
を含む、方法。
【請求項15】
前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記被験体がApo E3/E3又はE3/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
(c)前記被験体のアルツハイマー病の危険性が増大していることが決定された場合、抗アルツハイマー病活性剤を治療に効果的な量で前記被験体に投与する工程をさらに含む、請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記遺伝的変異が存在しないすなわち非存在である被験体と比較して、該遺伝的変異の有無により該被験体の危険性が増大していることが決定された場合、より低年齢で該被験体において前記投与する工程を行う、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記活性剤がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体アンタゴニスト、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト又はモジュレータ、抗体、融合タンパク質、治療用RNA分子、及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記活性剤がロシグリタゾン又はその薬学的に許容される塩である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項21】
前記TOMM40の前記遺伝的変異がNCBI Build 36.3のゲノム位置50094889でのポリT挿入変異である、請求項14〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
アルツハイマー病の被験体を、抗アルツハイマー病活性剤を治療的に有効な量で該被験体に投与することにより治療する方法において、その改良点が
前記被験体が、アルツハイマー病の危険性の増大に関連する前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異を保有していない対応する被験体と比較して、該遺伝的変異を保有する場合、より低年齢で前記活性剤を該被験体に投与することを含み、
前記TOMM40の遺伝的変異が前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9における欠失/挿入多型(DIP)であることである、方法。
【請求項23】
前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記被験体がApo E3/E3又はE3/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記活性剤がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体アンタゴニスト、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト又はモジュレータ、抗体、融合タンパク質、治療用RNA分子、及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記活性剤がロシグリタゾン又はその薬学的に許容される塩である、請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異がrs10524523、rs10602329、及びDIP3から成る群から選択される変異である、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記DIPが挿入多型である、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記DIPがポリT欠失/挿入多型である、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異がrs10524523である、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記DIPが少なくとも27個の連続した塩基対のポリTを有するポリT欠失/挿入多型である、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記DIPがrs10524523で少なくとも27個の連続した塩基対のポリTを有するポリT欠失/挿入多型である、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
対象となる病態を治療する方法であって、それを必要とする患者に関して該対象となる病態がApoE及び/又はTOMM40に関連し、該方法が
(a)個々の被験体により保有される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により同定された遺伝的変異の有無を決定し、前記患者の遺伝子プロファイルを作製する、決定すること、及びそれから
前記プロファイルが前記患者が活性剤に対して応答性であることを示している場合、(b)前記活性剤を治療に効果的な量で前記被験体に投与し、前記対象となる病態を治療すること、
を含む、方法。
【請求項34】
前記活性剤がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体アンタゴニスト、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト又はモジュレータ、抗体、融合タンパク質、治療用RNA分子、及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記活性剤がロシグリタゾン又はその薬学的に許容される塩である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記TOMM40の遺伝的変異が50092565、50092587、50093506、50093609、50094317、50094558、50094716、50094733、50094889、50095252、50095506、50095698、50095764、50096271、50096531、50096647、50096697、50096812、50096902、50097361、50098378、50098513、及び50099628から成る群から選択されるNCBI Build 36.3の遺伝子位置にあるTOMM40の変異である、請求項33〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異が欠失/挿入多型(DIP)である、請求項33〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記DIPが挿入多型である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記DIPがポリT欠失/挿入多型である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記DIPがrs10524523、rs10602329又はDIP3である、請求項37〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記DIPがrs10524523である、請求項37〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
被験体においてアルツハイマー病を治療する方法であって、
(a)前記被験体から採取したDNAを含有する生体試料から活性剤に対する応答性に関連する前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異の有無を検出すること、及び
前記遺伝的変異が存在する場合、
(b)前記活性剤を治療に効果的な量で前記被験体に投与し、前記アルツハイマー病を治療する、投与すること、
を含む、方法。
【請求項43】
前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記被験体がApo E3/E3又はE3/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記活性剤がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体アンタゴニスト、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト又はモジュレータ、抗体、融合タンパク質、治療用RNA分子、及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項42〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記活性剤がロシグリタゾン又はその薬学的に許容される塩である、請求項42〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異が50092565、50092587、50093506、50093609、50094317、50094558、50094716、50094733、50094889、50095252、50095506、50095698、50095764、50096271、50096531、50096647、50096697、50096812、50096902、50097361、50098378、50098513、及び50099628から成る群から選択されるNCBI Build 36.3の遺伝子位置にある、請求項42〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記TOMM40遺伝子の遺伝的変異が欠失/挿入多型(DIP)である、請求項42〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記DIPがrs10524523、rs10602329又はDIP3である、請求項48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記DIPが挿入多型である、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
前記DIPがポリT欠失/挿入多型である、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項52】
前記DIPがrs10524523である、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項53】
請求項17〜52のいずれか一項に記載の方法を行うための薬剤の調製のための抗アルツハイマー病活性剤の使用。
【請求項54】
請求項17〜52のいずれか一項に記載の方法を行うための抗アルツハイマー病活性剤の使用。
【請求項55】
患者プロファイルを得ることを含む、患者において予後又はアルツハイマー病を発症する危険性を決定する方法であって、該患者プロファイルを得ることが、
前記患者の生体試料において少なくとも1つのApoE 2、ApoE 3、又はApoE 4対立遺伝子の有無を検出すること、
前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を検出すること、及びそれから
前記患者プロファイルを前記予後へと変換すること、
を含み、前記ApoE 2、ApoE 3又はApoE 4対立遺伝子の存在、及び前記少なくとも1つのTOMM40 DIP多型の存在により、前記患者がアルツハイマー病を発症する危険性がある患者として同定される、方法。
【請求項56】
前記DIPがrs10524523、rs10602329又はDIP3である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記DIPが挿入多型である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記DIPがポリT欠失/挿入多型である、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記DIPがrs10524523である、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む、請求項55〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
被験体をアルツハイマー病の治療のための治療法の臨床試験のサブグループに階層化する方法であって、
前記患者の生体試料において少なくとも1つのApoE 2、ApoE 3、又はApoE 4対立遺伝子の有無を検出すること、
前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を検出すること、及び
前記少なくとも1つのApoE 2、ApoE 3、又はApoE 4対立遺伝子及び/又はTOMM40 DIP対立遺伝子の有無に基づいて、前記治療法の前記臨床試験のために前記被験体を前記サブグループに階層化すること、
を含む、方法。
【請求項62】
前記DIPが挿入多型である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記DIPがポリT欠失/挿入多型である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記DIPがrs10524523、rs10602329又はDIP3である、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記DIPがrs10524523である、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む、請求項61〜65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
アルツハイマー病の治療の臨床試験において患者を同定する方法であって、
a)アルツハイマー病と診断された患者を同定すること、及び
b)患者プロファイルを得ることを含む、アルツハイマー病と診断された前記患者の予後を決定することであって、前記患者プロファイルが、
i)前記患者の生体試料において少なくとも1つのApoE 3、ApoE 4、及び/又はApoE 2対立遺伝子の有無を検出すること、
ii)前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を検出すること、及び
iii)前記患者プロファイルを前記予後に変換すること、
を含み、前記予後が、前記患者がアルツハイマー病の前記治療の前記臨床試験の候補であるか否かを予測することを含む、方法。
【請求項68】
前記DIPが挿入多型である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記DIPがポリT欠失/挿入多型である、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記DIPがrs10524523、rs10602329又はDIP3である、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記DIPがrs10524523である、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む、請求項67〜71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
被験体の後発性アルツハイマー病を発症する危険性が増大しているか否かを決定するキットであって、
(A)ApoEアイソフォームと選択的に結合する抗体、及びApoE対立遺伝子をコードするDNAと選択的に結合するオリゴヌクレオチドプローブから成る群から選択される、ApoE 3、ApoE 4、及び/又はApoE 2を特異的に検出する少なくとも1つの試薬、
(B)前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を特異的に検出する少なくとも1つの試薬、並びに
(C)取扱説明書であって、
(i)前記少なくとも1つの試薬を用いて前記被験体においてApoE 3、ApoE 4、及び/又はApoE 2アイソフォームの有無を検出すること、
(ii)前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を検出すること、及び
(iii)ApoE 3、ApoE 4、及び/又はApoE 2、及び前記TOMM40 DIPの存在が前記少なくとも1つの試薬を用いて検出されるか又は検出されないかを観察することにより前記被験体の後発性アルツハイマー病を発症する危険性が増大しているか否かを観察することによって、該被験体の後発性アルツハイマー病を発症する危険性が増大していることを決定するための取扱説明書を含み、ApoE 3、ApoE 4、及び/又はApoE 2アイソフォーム及び前記TOMM40 DIPの存在により、前記被験体の後発性アルツハイマー病を発症する危険性が増大していることが示される、キット。
【請求項74】
前記少なくとも1つの試薬及び前記取扱説明書が単一容器に封入されている、請求項73に記載のキット。
【請求項75】
前記DIPが挿入多型である、請求項73又は74に記載のキット。
【請求項76】
前記DIPがポリT欠失/挿入多型である、請求項73又は74に記載のキット。
【請求項77】
前記DIPがrs10524523、rs10602329又はDIP3である、請求項73又は74に記載のキット。
【請求項78】
前記DIPがrs10524523である、請求項73又は74に記載のキット。
【請求項79】
前記決定する工程が、前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む、請求項73〜78のいずれか一項に記載のキット。
【請求項80】
被験体が、ApoE及び/又はTOMM40に関連する対象となる病態の活性剤による治療に対して応答性であるか否かを決定するキットであって、
(A)ApoEアイソフォームと選択的に結合する抗体、及びApoE対立遺伝子をコードするDNAと選択的に結合するオリゴヌクレオチドプローブから成る群から選択される、ApoE 3、ApoE 4、及び/又はApoE 2を特異的に検出する少なくとも1つの試薬、
(B)前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を特異的に検出する少なくとも1つの試薬、並びに
(C)取扱説明書であって、
(i)前記少なくとも1つの試薬を用いて前記被験体においてApoE 3、ApoE 4、及び/又はApoE 2アイソフォームの有無を検出すること、
(ii)前記TOMM40遺伝子のイントロン6又はイントロン9に位置する少なくとも1つのTOMM40欠失/挿入多型(DIP)の有無を検出すること、及び
(iii)ApoE 3、ApoE 4、及び/又はApoE 2アイソフォーム、及び前記TOMM40 DIPの存在が前記少なくとも1つの試薬を用いて検出されるか又は検出されないかを観察することにより前記被験体が治療に対して応答性であるか否かを決定することによって、該被験体が前記対照となる活性剤による前記対象となる病態の治療に対して応答性であることを決定するための取扱説明書を含み、ApoE 3、ApoE 4、及び/又はApoE 2及び前記TOMM40 DIPの存在により、前記被験体が前記活性剤による前記治療に対して応答性であることが示される、キット。
【請求項81】
前記少なくとも1つの試薬及び前記取扱説明書が単一容器に封入されている、請求項80に記載のキット。
【請求項82】
前記DIPが挿入多型である、請求項80又は81に記載のキット。
【請求項83】
前記DIPがポリT欠失/挿入多型である、請求項80又は81に記載のキット。
【請求項84】
前記DIPがrs10524523、rs10602329又はDIP3である、請求項80又は81に記載のキット。
【請求項85】
前記DIPがrs10524523である、請求項80又は81に記載のキット。
【請求項86】
前記決定する工程が、前記被験体がApo E2/E2、E2/E3、E2/E4、E3/E3、E3/E4、又はE4/E4被験体であるか否かを検出することをさらに含む、請求項80〜85のいずれか一項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−500004(P2012−500004A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523086(P2011−523086)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/053373
【国際公開番号】WO2010/019550
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(511035801)ジンファンデル ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】