説明

痛みおよび痒みの治療方法、組成物およびキット

本発明は、細胞内の1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害する方法を特徴とし、該方法は、細胞を(i)侵害受容器および/または掻痒受容器(pruriceptor)上に存在するチャネル形成型受容体を活性化する第1の化合物;および(ii)チャネルの内側に作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側に作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない第2の化合物と接触させることにより行なわれ、該第2の化合物は該チャネル形成型受容体が活性化しているときに該受容体を通って侵害受容器または掻痒受容器に侵入することができるものである。本発明はまた、チャネルの内側に作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側に作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない化合物の第四級アミン誘導体または他の恒久的もしくは一次的荷電誘導体を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疼痛感受性でないニューロン、または他の型の細胞に対する影響を最小限にしながら、低分子量の薬剤分子によって痛みおよび痒みを感じるニューロン(侵害受容器および掻痒受容器(pruriceptors))を選択的に阻害するための方法、組成物、およびキットを特徴とする。本発明の方法によれば、小さな親水性の薬剤分子が、痛みおよび痒みを感じるニューロン中には存在するが、他の型のニューロンもしくは他の型の組織中には存在しないか、またはその程度がより小さい受容体を通した侵入を介して、痛みを感じるニューロンの細胞内コンパートメントにアクセスすることができる。
【背景技術】
【0002】
リドカインおよびアルチカイン等の局所麻酔剤は、ニューロン中の電位依存性ナトリウムチャネルを阻害することによって作用する。これらの麻酔剤はナトリウムチャネルを遮断し、それによって痛みを感じるニューロン(侵害受容器)だけでなく、全てのニューロンの興奮性を遮断する。従って、局所もしくは部分的(regional)麻酔の目的は、侵害受容器におけるシグナルの伝達を遮断して痛みを抑制することであるが、局所麻酔剤の投与によって、閾値の低い圧力および接触受容体の遮断からの体のしびれ感、運動軸索の遮断からの運動不全(motor deficits)、および自律神経線維の遮断からの他の合併症等、望まれない、もしくは有害な効果も生じる。局所麻酔剤は、細胞膜中に、もしくは細胞膜を通して拡散することによってナトリウムチャネル上のその遮断部位へのアクセスができる比較的疎水性の分子である。これらの化合物の恒久的に荷電した誘導体(QX-314、リドカインの第四級窒素誘導体等)は、膜透過性ではなく、神経膜の外表面に投与した場合にはニューロンのナトリウムチャネルに対して効果を有さないが、例えば単離されたニューロンからのホールセル電気生理学的記録法のために用いるマイクロピペットによって何とか細胞の内側に導入された場合には、ナトリウムチャネルを遮断することができる。痛みを感じるニューロンは、痛みを伴う程の熱、または唐辛子の刺激成分であるカプサイシンによって活性化されるTRPV1受容体/チャネルを(ほとんどの場合に)発現する点で、他の型のニューロンと異なる。種々の型の痛みを感じるニューロンおよび痒みを感じる(掻痒受容器)ニューロンにおいて選択的に発現される別の型の受容体として、限定するものではないが、TRPA1、TRPM8、およびP2X(2/3)受容体が挙げられる。
【0003】
神経障害性、炎症性、および侵害性疼痛は、その原因、病理生理、診断、および治療において異なる。侵害性疼痛は、末梢の感覚神経の特定のサブセット、侵害受容器の、強い刺激または有害な刺激による活性化に応答して生じる。これは一般的に急性で自己限定的(self-limiting)であり、潜在的もしくは進行中の組織傷害の警告として作用することによって、保護的な生物学的機能を発揮する。典型的には非常に局所的である。侵害性疼痛の例としては、限定するものではないが、外傷性もしくは外科手術による痛み、陣痛、捻挫、骨折、火傷、瘤(bumps)、打撲、注射、歯科的処置(dental procedures)、皮膚の生検、および閉塞が挙げられる。
【0004】
炎症性疼痛は、手術後、外傷後の痛み、関節炎(リウマチまたは変形性関節症)の痛み、および軸性(axial)腰痛の痛み等の関節、筋肉、および腱の損傷に関連する痛みを含む、組織損傷または炎症の存在によって生じる痛みである。
【0005】
神経障害性疼痛は、末梢もしくは中枢神経系における損傷または異常の結果であり、保護的な生物学的機能を果たさない通常の型の慢性的で非悪性の痛みである。これは米国の人口中160万人以上が罹患していると推定されている。神経障害性疼痛には多くの異なる原因があり、例えば外傷、手術、椎間板ヘルニア、脊髄損傷、糖尿病、帯状ヘルペス感染(帯状疱疹)、HIV/AIDS、後期の癌、切断(乳房切除を含む)、手根管症候群、慢性的なアルコールの使用、放射線への暴露のために、またある種の抗HIV薬および化学療法剤等の神経毒性治療剤の予期しない副作用として生じる場合がある。
【0006】
侵害性疼痛とは対照的に、神経障害性疼痛は現実にはしばしば「燃えるような(burning)」「電気のような(electric)」「チクチクする(tingling)」「撃たれるような(shooting)」ものとして記載される。これは慢性異痛(軽い接触等の通常は痛みの応答を引き起こさない刺激から生じる痛みとして定義される)および痛覚過敏(通常痛みを生じる刺激に対する感受性の増大として定義される)を特徴とすることが多く、損傷した組織が見かけ上治癒した後も数ヶ月もしくは数年持続する場合がある。
【0007】
痛みは癌患者において生じる場合があり、それは複数の要因;炎症、圧迫、浸潤、骨もしくは他の組織中への転移性の広がりによるものであり得る。
【0008】
機能不全性疼痛と言われる、有害刺激、組織損傷または神経系への障害なしに痛みが生じる状態があり、これらには、限定するものではないが、線維筋肉痛、緊張型頭痛、過敏性腸疾患および肢端紅痛症が挙げられる。
【0009】
片頭痛は、脳の髄膜に分布する感覚神経の活性化に関係する頭痛である。
【0010】
痒み(掻痒)は、局在性および全身性であり得る、皮膚の障害(発疹、アトピー性湿疹、膨疹)と関連し得る皮膚の状態である。痒みは、限定するものではないが、ストレス、不安、太陽からのUV照射、代謝および内分泌障害(例えば肝臓もしくは腎臓の疾患、甲状腺機能亢進症)、癌(例えばリンパ腫)、医薬品もしくは食品への反応、寄生虫および真菌感染、アレルギー反応、血液疾患(例えば真性赤血球増加症)、および皮膚の状態を含む多くの状態に伴って生じる。痒みは、TRPV1チャネルの発現を含むがこれに限定されない、侵害受容器ニューロンの多くの特徴を共有する、直径の小さい一次感覚ニューロンのサブセット(掻痒受容器)によって仲介される。ある種の痒みメディエイター、例えばエイコサノイド、ヒスタミン、ブラジキニン、ATP、および種々の神経栄養因子は、エンドバニロイド(endovanilloid)機能を有する。カプサイシンの局所投与はヒスタミン誘導性の痒みを抑制する。従って、掻痒受容器は、侵害受容器と同様に、イオンチャネルブロッカーを送達する本方法の好適な標的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
痛みおよび痒みのために種々の治療法が開発されたにも関わらず、更なる薬剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様において、本発明は、チャネルの内側から作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側から作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない第1の化合物であって、膜結合受容体/イオンチャネルが活性化しているときに該受容体を通ってニューロンに侵入することができるものである第1の化合物;および、場合によって、該第1の化合物が通過できる受容体を活性化する第2の化合物、を患者に投与することによって、患者における痛みおよび痒み(例えば神経障害性疼痛、炎症性疼痛、侵害性疼痛、突発性疼痛、癌の痛み、片頭痛、機能障害性疼痛または処置性疼痛(procedural pain)(例えば歯科的処置、注射、骨折の固定(setting fractures)、生検)並びに掻痒を治療するための方法を特徴とする。特定の実施形態において、第2の化合物は、第1の化合物が通過できるTRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、およびTRPM8から選択される受容体を活性化する。痛みもしくは痒みの治療は、本明細書中に記載するもの等の任意の標準的な痛みもしくは痒みの指標を用いて決定することができ、または患者の主観的な痛みもしくは痒みの評価に基づいて決定することができる。痛みの軽減、もしくは痛みを引き起こす刺激に対する反応の軽減、および痒みの軽減が報告される場合に、患者は「治療された」と考えられる。特定の実施形態において、受容体(例えばTRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、および/またはTRPM8受容体)の活性化を確実にするために第2の化合物を投与し、それにより第1の化合物の侵入を可能にすることが望ましい。他の実施形態において、受容体(例えばTRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、および/またはTRPM8受容体)は既に活性化されているため、第2の化合物は投与されない。従って、第1の化合物は内在的に活性化されている受容体を有するニューロンにのみ侵入する。更に別の実施形態において、受容体(例えばTRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、および/またはTRPM8受容体)は、これらの受容体を活性化する生理的状態を引き起こすことによって活性化され、それによって第1の化合物の侵入が可能となる。
【0013】
必要であれば、TRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、および/またはTRPM8受容体を活性化する2種以上の化合物を使用することができ、また1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害する2種以上の化合物を使用することができる。望ましくは、第1の化合物および第2の化合物は互いに4時間以内、2時間以内、1時間以内、30分以内、もしくは15分以内の間隔で患者に投与されるか、または実質的に同時に投与される。重要なことは、いずれの化合物を最初に投与することもできることである。従って、一実施形態においては、TRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、および/またはTRPM8受容体を活性化する1種以上の化合物をまず投与し、一方、別の実施形態においては、チャネルの内側から作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側から作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない1種以上の化合物をまず投与する。化合物は単一の組成物中に共に製剤化されていても良く、あるいは別個に製剤化されていても良い。それぞれの化合物は、例えば経口、非経口、静脈内、筋肉内、直腸内、皮内、皮下、局所、経皮、舌下、鼻内、膣内、くも膜下、硬膜外、もしくは眼内投与によって、あるいは注射、吸入、または鼻もしくは口腔の粘膜との直接接触によって投与することができる。
【0014】
TRPV1受容体のアクチベーターとしては、限定するものではないが、カプサイシン、オイゲノールアルバニル(eugenol arvanil)(N-アラキドノイルバニルアミン(arachidonoylvanillamine))、アナンダミド、2-アミノエトキシジフェニルボレート (2APB)、AM404、レシニフェラトキシン、ホルボール12-フェニルアセテート 13-アセテート 20-ホモバニレート(homovanillate)(PPAHV)、オルバニル(NE 19550)、OLDA(N-オレオイルドーパミン)、N-アラキドニルドーパミン (NADA)、6'-ヨードレシニフェラトキシン(6'-IRTX)、C18 N-アシルエタノールアミン、12-ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸等のリポキシゲナーゼ誘導体、インヒビターシステインノット(inhibitor cysteine knot)(ICK)ペプチド(バニロトキシン(vanillotoxins))、ピペリン、MSK195 (N-[2-(3,4-ジメチルベンジル)-3-(ピバロイルオキシ)プロピル]-2-[4-(2-アミノエトキシ)-3-メトキシフェニル]アセトアミド)、JYL79 (N-[2-(3,4-ジメチルベンジル)-3-(ピバロイルオキシ)プロピル]-N’-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)チオウレア)、ヒドロキシ-α-サンショオール、2-アミノエトキシジフェニルボレート、10-ショーガオール、オレイルジンゲロール、オレイルショーガオール、およびSU200 (N-(4-tert-ブチルベンジル)-N’-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)チオウレア)が挙げられる。TRPV1受容体の他のアクチベーターは、O'Dell 等、Bioorg Med Chem (2007) 15:6164-6149、およびSexton 等、FASEB J (2007) 21:2695-2703に記載されている。
【0015】
TRPA1受容体のアクチベーターとしては、限定するものではないが、シンナムアルデヒド、アリル-イソチオシアネート、ジアリルジスルフィド、イチリン(icilin)、シナモンオイル、ウィンターグリーンオイル、クローブオイル、アクロレイン、ヒドロキシ-α-サンショオール、2-アミノエトキシジフェニルボレート、4-ヒドロキシノネナール、メチル p-ヒドロキシベンゾエート、マスタードオイル、および3'-カルバモイルビフェニル-3-イルシクロヘキシルカルバメート (URB597)が挙げられる。TRPA1受容体の他のアクチベーターは、Taylor-Clark等、Mol Pharmacol (2007) PMID: 18000030;Macpherson 等、Nature (2007) 445:541-545;およびHill等、J Biol Chem (2007) 282:7145-7153に記載されている。
【0016】
P2X受容体のアクチベーターとしては、限定するものではないが、ATP、2-メチルチオ-ATP、2'および3'-O-(4-ベンゾイルベンゾイル)-ATP、およびATP5'-O-(3-チオトリホスフェート)が挙げられる。
【0017】
TRPM8受容体のアクチベーターとしては、限定するものではないが、メントール、イチリン、ユーカリプトール、リナロール、ゲラニオール、およびヒドロキシシトロネラールが挙げられる。
【0018】
特定の実施形態において、第1の化合物は電位依存性ナトリウムチャネルを阻害する。このクラスの阻害剤の例は、QX-314、N-メチル-プロカイン、QX-222、N-オクチル-グアニジン、9-アミノアクリジン、およびパンクロニウムである。
【0019】
更に別の実施形態において、第1の化合物は電位依存性カルシウムチャネルを阻害する。このクラスの阻害剤の例はD-890(第四級メトキシベラパミル)およびCERM 11888(第四級ベプリジル)である。
【0020】
更に別の実施形態において、第1の化合物は、リルゾール、メキシリチン(mexilitine)、フェニトイン、カルバマゼピン、プロカイン、アルチカイン、ブピビカイン(bupivicaine)、メピビカイン(mepivicaine)、トカイニド、プリロカイン、ジイソピラミド(diisopyramide)、ベンシクラン、キニジン、ブレチリウム、リファリジン、ラモトリジン、フルナリジン、およびフルスピリレン(fluspirilene)から選択される化合物の第四級アミン誘導体または他の荷電誘導体である。誘導体の例は本明細書中に記載されている。
【0021】
本発明はまた、リルゾール、メキシリチン、フェニトイン、カルバマゼピン、プロカイン、アルチカイン、ブピビカイン、メピビカイン、トカイニド、プリロカイン、ジイソピラミド、ベンシクラン、キニジン、ブレチリウム、リファリジン、ラモトリジン、フルナリジン、およびフルスピリレンから選択される化合物の第四級アミン誘導体または他の荷電誘導体を特徴とする。
【0022】
関連する態様において、本発明は、リルゾール、メキシリチン、フェニトイン、カルバマゼピン、プロカイン、アルチカイン、ブピビカイン、メピビカイン、トカイニド、プリロカイン、ジイソピラミド、ベンシクラン、キニジン、ブレチリウム、リファリジン、ラモトリジン、フルナリジン、およびフルスピリレンから選択される化合物の第四級アミン誘導体または他の荷電誘導体、および製薬上許容される賦形剤を含有する医薬組成物を特徴とする。
【0023】
本発明はまた、(i)TRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、およびTRPM8から選択される受容体を活性化する第1の化合物;および(ii)チャネルの内側から作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、外側から作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない第2の化合物であって、TRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、および/またはTRPM8受容体が活性化しているときにこれらの受容体を通って痛みの感覚ニューロンに侵入することができるものである第2の化合物、を含有する組成物を特徴とする。一実施形態において、第2の化合物は、外側から作用させた場合には活性が低下しているか、もしくは部分的に活性があるが、内側から作用させた場合にはより活性があるものである。組成物は、例えば経口、静脈内、筋肉内、直腸内、皮内、皮下、局所、経皮、舌下、鼻内、膣内、くも膜下、硬膜外、もしくは眼内投与、あるいは注射、吸入、または鼻もしくは口腔粘膜との直接接触のために製剤化することができる。必要であれば、TRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、および/またはTRPM8受容体を活性化する2種以上の化合物、および/または1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害する2種以上の化合物を含有し得る。
【0024】
本発明はまた、細胞を(i)TRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、および TRPM8から選択される受容体を活性化する第1の化合物;および(ii)チャネルの内側から作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側から作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない第2の化合物であって、受容体が活性化しているときに該受容体を通って痛みを感じるニューロンに侵入することができるものである第2の化合物、と接触させることによる、細胞中の1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するための方法を特徴とする。好適な化合物は上記したものである。
【0025】
本発明はまた、化合物を、痛みおよび痒みの治療に有用であると同定するための方法を特徴とする。この方法は、(a)TRPV1、TRPA1、TRPM8、および/またはP2X(2/3)発現ニューロンの外表面を:(i)TRPV1、TRPA1、TRPM8もしくはP2X(2/3)受容体を活性化する第1の化合物;および(ii)チャネルの内側から作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側から作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない第2の化合物、と接触させるステップ、および(b)第2の化合物がニューロン中の電位依存性イオンチャネルを阻害するか否かを決定するステップを含む。第2の化合物による電位依存性イオンチャネルの阻害によって、第2の化合物が痛みおよび/または痒みの治療に有用な化合物として同定される。
【0026】
本方法、組成物、およびキットはまた、TRPV、TRPA、TRPM、およびP2X受容体ファミリーの異なるメンバーを発現する他の型のニューロンにおけるニューロン活性を選択的に遮断するために使用することもでき、この場合第1の化合物はこうした型のニューロンに存在する特定のTRPV、TRPA、TRPM、およびP2X受容体のアゴニストであり、第2の化合物は通常は膜不透過性のナトリウムまたはカルシウムチャネルブロッカーである。
【0027】
それなしでは侵入不可能であろう化合物の侵入を可能にする他の受容体が存在し得ることは理解される。1以上のこれらの受容体を活性化する化合物を、チャネルの内側から作用させた場合には1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側から作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない1以上の化合物と組み合わせて共投与することも本発明の態様である。
【0028】
本発明の方法、組成物、およびキットによって、軽い接触もしくは運動制御を変えることなく痛みまたは痒みの遮断が可能となる。例えば、硬膜外に投与された患者は、感覚を完全には消失しないであろう。
【0029】
用語「痛み(疼痛)」は本明細書において最も広い意味で用い、急性および慢性の痛みを含む全ての型の痛み、例えば体性痛および内臓痛等の侵害性疼痛;炎症性疼痛、機能不全性疼痛、突発性疼痛、神経障害性疼痛、例えば中枢で発生する痛みおよび末梢で発生する痛み、片頭痛、および癌の痛みをいう。
【0030】
用語「侵害性疼痛」は、限定するものではないが、切り傷、打撲、骨折、挫滅外傷(crush injury)、火傷等を含む、身体組織に脅威となるか、または実際に損傷させる有害刺激によって引き起こされる全ての痛みを含むために用いる。組織損傷の痛みの受容体(侵害受容器)は、ほとんどが皮膚、筋骨格系、または内臓に存在する。
【0031】
用語「体性痛」は、骨、関節、筋肉、皮膚、または結合組織から生じる痛みをいうために用いる。この型の痛みははっきり局在しているのが典型的である。
【0032】
用語「内臓痛」は、本明細書において、呼吸器、胃腸管および膵臓、尿路および生殖器等の内臓から生じる痛みをいうために用いる。内臓痛には、臓器被膜(organ capsule)に腫瘍があることで生じる痛みが含まれる。別の型の内臓痛は、典型的には中空の内臓の閉塞によって生じるものであり、断続的な筋痙攣およびはっきりとは局在しない痛みを特徴とする。内臓痛は、膀胱炎または逆流性食道炎のように炎症と関連する場合がある。
【0033】
用語「炎症性疼痛」には、外傷、外科手術、感染および自己免疫疾患によって引き起こされ得る活性の炎症に関連する痛みが挙げられる。
【0034】
用語「神経障害性疼痛」は、本明細書において、末梢もしくは中枢神経系の損傷の結果、これらの神経系による感覚インプットの異常なプロセシングから生じる痛みをいう。
【0035】
用語「処置性の痛み」とは、通常計画的であるか、または急性の外傷と関連する、医学的、歯科的、または外科的処置によって生じる痛みをいう。
【0036】
用語「痒み」は本明細書において最も広い意味で用い、局所性および全身性、急性、断続的および持続的な痒くてつらい全ての型の感覚をいう。痒みは、突発性、アレルギー性、代謝性、感染性、薬剤誘導性、肝臓・腎臓疾患、もしくは癌由来のものであり得る。「掻痒」は激しい痒みである。
【0037】
「患者」とは任意の動物を意味する。一実施形態において、患者はヒトである。本発明の方法、組成物、およびキットを用いて治療することができる他の動物として、限定するものではないが、非ヒトの霊長類(例えばサル、ゴリラ、チンパンジー)、家畜(例えばウマ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ラマ)、およびコンパニオン動物(例えばモルモット、ラット、マウス、ワニ、ヘビ、イヌ、ネコ、魚、ハムスター、および鳥)が挙げられる。
【0038】
本発明において有用な化合物としては、限定するものではないが、本明細書に記載した化合物のジアステレオマーおよびエナンチオマー等の異性体、塩、エステル、アミド、チオエステル、溶媒和物、およびこれらの多型、並びにラセミ混合物および純粋な異性体を含む、これらの製薬上許容されるいずれかの形態で本明細書に記載されたものが挙げられる。
【0039】
「低分子量」とは、約500ダルトン未満を意味する。
【0040】
用語「製薬上許容される塩」は、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を起こすことなしにヒトおよび下等動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、合理的な対危険便益比(benefit/risk ratio)に見合った塩を表す。製薬上許容される塩は当分野において周知である。塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製の間にin situで、または遊離塩基を好適な有機酸と反応させることによって別個に調製することができる。代表的な酸付加塩としては、限定するものではないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属の塩としては、限定するものではないが、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等、並びに限定するものではないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等を含む非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオンが挙げられる。
【0041】
本発明の化合物に関する包括的記載において、置換基中の特定の型の原子の数は一般にある範囲として、例えば1〜4個の炭素原子を含むアルキル基、またはC1-4アルキルとして与えられる。このような範囲への言及は、特定の範囲内のそれぞれの整数個の原子を有する基についての特定の言及を含むことが意図される。例えば、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基はC1、C2、C3、およびC4のそれぞれを含む。例えばC1-12ヘテロアルキルは、1個以上のヘテロ原子に加えて1〜12個の炭素原子を含む。原子の他の数、および原子の他の型も、同様にして示すことができる。
【0042】
本明細書で用いる場合、用語「アルキル」および接頭辞「アルク-(alk-)」は、直鎖および分岐鎖の基の双方を包含し、環状の基、すなわちシクロアルキルも包含する。環状の基は単環であっても多環であっても良く、好ましくは3〜6個の環炭素原子を有する。環状の基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル基が挙げられる。
【0043】
「C1-4アルキル」とは、1〜4個の炭素原子を有する分岐した、または分岐していない炭化水素基を意味する。C1-4アルキル基は置換されていても置換されていなくても良い。置換基の例としては、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハライド、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、第四級アミノ、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、およびカルボキシル基が挙げられる。C1-4アルキルとして、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、およびシクロブチルが挙げられる。
【0044】
「C2-4アルケニル」とは、1以上の二重結合を含み、2〜4個の炭素原子を有する分岐した、または分岐していない炭化水素基を意味する。C2-4アルケニルは、場合によって単環または多環式の環を含んでいても良く、その場合それぞれの環は望ましくは3〜6員である。C2-4アルケニル基は置換されていても置換されていなくても良い。置換基の例としては、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハライド、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、第四級アミノ、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、およびカルボキシル基が挙げられる。C2-4アルケニルとして、限定するものではないが、ビニル、アリル、2-シクロプロピル-1-エテニル、1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチル-1-プロペニル、および2-メチル-2-プロペニルが挙げられる。
【0045】
「C2-4アルキニル」とは、1以上の三重結合を含み、2〜4個の炭素原子を有する分岐した、または分岐していない炭化水素基を意味する。C2-4アルキニルは、場合によって単環、二環、または三環式の環を含んでいても良く、その場合それぞれの環は望ましくは5または6員である。C2-4アルキニル基は置換されていても置換されていなくても良い。置換基の例としては、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハライド、ヒドロキシ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、第四級アミノ、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、およびカルボキシル基が挙げられる。C2-4アルキニルとして、限定するものではないが、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、および3-ブチニルが挙げられる。
【0046】
「C2-6ヘテロシクリル」とは、飽和、部分不飽和もしくは不飽和(芳香族)であり、かつ2〜6個の炭素原子、および独立してN、O、およびSから選択される1、2、3もしくは4個のヘテロ原子からなり、上記で定義した複素環のいずれかがベンゼン環に融合した二環の基を含む、安定な5〜7員の単環または7〜14員の二環の複素環を意味する。ヘテロシクリル基は置換されていても置換されていなくても良い。置換基の例としては、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハライド、ヒドロキシ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、第四級アミノ、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、およびカルボキシル基が挙げられる。窒素および硫黄のヘテロ原子は場合によって酸化されていても良い。複素環は、任意のヘテロ原子もしくは炭素原子を介して共有結合して安定な構造を生じることができ、例えばイミダゾリニル環は環上の炭素原子の位置もしくは窒素原子で結合することができる。複素環内の窒素原子は場合により第四級化されていても良い。好ましくは、複素環内のSおよびO原子の総数が1を超える場合、これらのヘテロ原子は互いに隣接しない。複素環として、限定するものではないが、1H-インダゾール、2-ピロリドニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、2H-ピロリル、3H-インドリル、4-ピペリドニル、4aH-カルバゾール、4H-キノリジニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダザロニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、b-カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニルペリミジニル(oxazolidinylperimidinyl)、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、プテリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、カルボリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,5-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、キサンテニルが挙げられる。好ましい5〜10員の複素環としては、限定するものではないが、ピリジニル、ピリミジニル、トリアジニル、フラニル、チエニル、チアゾリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、1H-インダゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンゾオキサゾリニル、キノリニル、およびイソキノリニルが挙げられる。好ましい5〜6員の複素環としては、限定するものではないが、ピリジニル、ピリミジニル、トリアジニル、フラニル、チエニル、チアゾリル、ピロリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、およびテトラゾリルが挙げられる。
【0047】
「C6-12アリール」とは、共役π電子を有する炭素原子で構成された環系を有する芳香族の基(例えばフェニル)を意味する。アリール基は6〜12個の炭素原子を有する。アリール基は、場合によって単環、二環、または三環式の環を含んでいても良く、その場合それぞれの環は望ましくは5員または6員である。アリール基は置換されていても置換されていなくても良い。置換基の例としては、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハライド、フルオロアルキル、カルボキシル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、一置換アミノ、二置換アミノ、および第四級アミノ基が挙げられる。
【0048】
「C7-14アルカリール」とは、アリール基(例えばベンジル、フェネチル、または3,4-ジクロロフェネチル)によって置換された7〜14個の炭素原子を有するアルキルを意味する。
【0049】
「C3-10アルクヘテロシクリル」とは、1個以上のヘテロ原子に加えて3〜10個の炭素原子を有するアルキル置換複素環基(例えば3-フラニルメチル、2-フラニルメチル、3-テトラヒドロフラニルメチル、または2-テトラヒドロフラニルメチル)を意味する。
【0050】
「C1-7ヘテロアルキル」とは、N、O、S、およびPよりなる群から独立して選択される1、2、3もしくは4個のヘテロ原子に加えて1〜7個の炭素原子を有する、分岐した、もしくは分岐していないアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を意味する。ヘテロアルキルとしては、限定するものではないが、第三級アミン、第二級アミン、エーテル、チオエーテル、アミド、チオアミド、カルバメート、チオカルバメート、ヒドラゾン、イミン、ホスホジエステル、ホスホロアミデート、スルホンアミド、およびジスルフィドが挙げられる。ヘテロアルキルは、場合によって単環、二環、または三環式の環を含んでいても良く、その場合それぞれの環は望ましくは3〜6員である。ヘテロアルキル基は置換されていても置換されていなくても良い。置換基の例としては、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハライド、ヒドロキシル、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、第四級アミノ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、およびカルボキシル基が挙げられる。C1-7ヘテロアルキルの例として、限定するものではないが、メトキシメチルおよびエトキシエチルが挙げられる。
【0051】
「ハライド」とは、臭素、塩素、ヨウ素、またはフッ素を意味する。
【0052】
「フルオロアルキル」とは、フッ素原子で置換されているアルキル基を意味する。
【0053】
「パーフルオロアルキル」とは、炭素およびフッ素原子のみからなるアルキル基を意味する。
【0054】
「カルボキシアルキル」とは、式-(R)-COOHを有する化学的部分を意味し、ここでRはC1-7アルキル、C2-7アルケニル、C2-7アルキニル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、C3-10アルクヘテロシクリル、またはC1-7ヘテロアルキルから選択される。
【0055】
「ヒドロキシアルキル」とは、式-(R)-OHを有する化学的部分を意味し、ここでRはC1-7アルキル、C2-7アルケニル、C2-7アルキニル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、C3-10アルクヘテロシクリル、またはC1-7ヘテロアルキルから選択される。
【0056】
「アルコキシ」とは、式-ORの化学的置換基を意味し、ここでRはC1-7アルキル、C2-7アルケニル、C2-7アルキニル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、C3-10アルクヘテロシクリル、またはC1-7ヘテロアルキルから選択される。
【0057】
「アリールオキシ」とは、式-ORの化学的置換基を意味し、ここでRはC6-12アリール基である。
【0058】
「アルキルチオ」とは、式-SRの化学的置換基を意味し、ここでRはC1-7アルキル、C2-7アルケニル、C2-7アルキニル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、C3-10アルクヘテロシクリル、またはC1-7ヘテロアルキルから選択される。
【0059】
「アリールチオ」とは、式-SRの化学的置換基を意味し、ここでRはC6-12アリール基である。
【0060】
「第四級アミノ」とは、式-(R)-N(R’)(R’’)(R’’’)の化学的置換基を意味し、ここでR、R’、R’’、およびR’’’はそれぞれ独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリール基である。Rは置換基としての第四級アミノ窒素原子をもう1つの部分(moiety)に連結するアルキル基であり得る。窒素原子Nはアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、および/またはアリール基の4個の炭素原子に共有結合し、その結果窒素原子の位置で正の電荷が生じる。
【0061】
「荷電部分」とは、生理的pHでプロトンを得、それによって正に荷電した部分(例えばアンモニウム、グアニジニウム、またはアミジニウム)、またはプロトン化されずに純粋な正規の正電荷を有する部分(例えば第四級アンモニウム)を意味する。荷電部分は恒久的に荷電していても、一時的に荷電していても良い。
【0062】
本明細書で用いる場合、用語「親」とは、親化合物に存在するアミン窒素原子の第四級化またはグアニル化によって改変され得る、チャネル遮断化合物をいう。第四級化およびグアニル化された化合物は、親化合物の誘導体である。本明細書に記載するグアニジル誘導体は、その荷電していない塩基の形態で提示されている。これらの化合物は塩(すなわち酸付加塩)として、またはその荷電していない塩基形態(in situでプロトン化されて荷電部分を形成する)で投与することができる。
【0063】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、および請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】細胞外からのQX-314(5mM)およびカプサイシン(1μM)の共投与によってカプサイシン応答性の後根神経節(DRG)感覚ニューロンにおけるナトリウム電流が選択的に遮断されることを示す。(a) 小さい(24μm)カプサイシン感受性の成体由来培養DRGニューロンにおける、5mM QX-314単独(赤のトレース)、1μMカプサイシン単独(緑のトレース)、および5mM QX-314および1μM カプサイシンの共投与(青のトレース)の10分間のwash-inのナトリウム電流(-70から-5mVへのステップで誘起)に対する効果を示す。上段パネル:このニューロンにおいてはカプサイシンの短時間投与によって持続的な内向きの電流が誘導される(-70mVの電圧を保持)。(b) 大きな(52μm)カプサイシン非感受性ニューロンに対する同じ一連の薬剤投与のナトリウム電流に対する効果を示す。(c) ピークの内向き電流を対照(黒の記号)、5mM QX-314単独存在下(赤の記号)、1μM カプサイシン単独存在下(緑の記号)、および5mM QX-314および1μM カプサイシンの共投与下(青の記号)において記録した試験パルスの関数として示す。記号は、25個の小さなカプサイシン感受性ニューロンに対する実験における平均±SEMを示す。電流は-70mVの保持電位から5mVずつの増分の試験電位範囲まで20m秒の脱分極ステップによって誘起した。(d) カプサイシンおよびQX-314の組み合わせのピークナトリウム電流に対する効果の経時変化を示す。バーは対照と比較して標準化したピークナトリウム電流についての平均±SEMを示す(n=25)。
【図2】QX-314およびカプサイシンの共投与によって侵害受容様DRGニューロンにおける興奮性が遮断されることを示す。(a)小さい(23μm)DRGニューロンに脱分極性電流ステップ(250pA、4m秒)をかけると降下相(falling phase)に突出した偏り(矢印)を有する侵害受容器様の幅広の活動電位が生じた。QX-314(5mM)の2分間のwash-inでは効果がなかった(2番目のパネル)。カプサイシン(1μM)によって活動電位の振幅が小さくなった(3番目のパネル)が、これはおそらく図1に示すようなカプサイシンによって生じるナトリウム電流の中程度の低減およびカプサイシンによって生じる脱分極により派生するナトリウム電流の不活化の組み合わせによるものであろう。QX-314およびカプサイシンの共投与によって、ずっと大きな刺激性電流注入を行っても活動電位の生成が完全に失われた。(b) 活動電位の振幅の平均±SEMを示す(QX-314についてn=25、カプサイシンおよびカプサイシン+QX-314についてn=15)。
【図3】カプサイシン(10μg/10μL)をQX-314(2%、10μL)と共に足底内注射すると、機械的刺激(von Freyフィラメント)および有害熱刺激に対する長期の局所麻酔に至ることを示す。(a) QX-314単独(2%、10μL;緑の記号)、カプサイシン単独(10μg/10μL;黒の記号)、またはQX-314およびカプサイシンの共投与(赤の記号)の足底内注射後に強度の増大するvon Frey hairに応答した脚の引っ込め行動についての機械的閾値を示す。最高値(57g、矢印)に対して全く応答しなかった動物数を最大効果と共にその時点に示す(=p<0.05、各群でn=6)。(b) 脚の引っ込め行動の熱的(輻射熱)閾値についての同様のデータを示す。矢印はカットオフを示し、最強の刺激に対して応答しなかった動物数を最大効果のあった時点に示す(=p<0.05、各群でn=6)。
【図4】坐骨神経付近にQX-314に続いてカプサイシンを注射すると、有害な機械刺激および熱刺激に対して運動不全を生じさせずに動物の後脚が麻酔されたことを示す。(a) QX-314単独(0.2%、100μL)、カプサイシン単独(0.5μg/μL、100μL)、またはQX-314をカプサイシンの10分前に注射した場合の、坐骨神経注射後に強度の増大するvon Freyフィラメントに応答した脚の引っ込め行動の機械的閾値を示す。最高値(57g、矢印)に対して全く応答しなかった動物数を最大効果のあったと時点に示す(=p<0.05、**=p<0.01、各群でn=6)。(b) 脚の引っ込め行動の熱的(輻射熱)閾値についての同様のデータを示す。(c) リドカイン(2%;0.2%)、QX-314(0.2%)、カプサイシン(5μg/10μL)、およびQX-314後にカプサイシンを坐骨注射した後に評価した運動機能(スコア:2=完全麻痺;1=部分的麻痺;0=障害なし)の変化を示す。注射による影響を受けた動物数を各カラムの上に示す。
【図5】後根神経節小ニューロンにおけるナトリウムチャネル電流の電圧固定記録を示す。このデータから、オイゲノール単独でナトリウム電流に対して中程度の阻害効果(10-20%阻害)を有することが示される。オイゲノールおよびQX-314の共投与によって、7分後に完了し得る進行的な遮断が生じる。2つの例を示すが、これは同様の結果を有する10回の実験の代表的なものである。
【図6】TRPAアゴニストのマスタードオイル(MO)(50μM)およびQX-314(5mM)の共投与の効果を示す。MO単独ではナトリウム電流が20-30%低下し、およそ3分後にプラトーに達する。MOおよびQX-314の共投与によってナトリウム電流が劇的に低下した。
【発明を実施するための形態】
【0065】
痛みを感じるニューロンにおける電位依存性イオンチャネルは、痛みを治療する医薬を開発する上で現在非常に興味あるものである。痛みを感じるニューロンにおける電位依存性ナトリウムチャネルを遮断すると、活動電位の起動および伝達を妨害することによって痛みのシグナルを遮断することができ、またカルシウムチャネルを遮断すると、脊髄中の二次ニューロンへの痛みのシグナルの神経伝達を抑制することができる。従来、ナトリウムチャネルまたはカルシウムチャネルを遮断する有機小分子を設計する上での制約は、これらが標的細胞に外側から作用させた場合に活性でなければならないということである。こうした外側から作用させる分子の大多数は疎水性であり、膜を通過することができる。このため、これらは全ての細胞に侵入し、従って痛みを感じるニューロンのみに影響するための選択性を有していない。更に、細胞の内側に存在する場合にのみ効果的なQX-314のようないくつかの遮断剤が知られている。今日まで、このような遮断剤は、主として膜の機械的破砕によって細胞の内側の透析を可能とするホールセルパッチクランプ等の電気生理学的記録手段を用いて研究されてきた。細胞を殺さずに機械的に破砕することの困難性、および、続いて細胞の内側に遮断剤を可逆的に投与することの困難性から、細胞の内側から作用し得る薬剤分子のハイスループットスクリーニングアッセイの開発は不可能とされてきた。
【0066】
本発明者らは、電位依存性イオンチャネルの阻害剤を侵害受容性ニューロン内に送達する手段を発見した。本発明により、これらの阻害剤が侵害受容性ニューロンに侵入する方法を提供することによって、細胞の内側から薬剤ブロッカーとして活性であるが、膜透過性である必要のない全てのクラスの分子の、スクリーニングおよび治療の双方における使用が可能となる。更に、治療的条件下においてこのような遮断剤の侵入を痛みを感じるニューロンに限定することによって、他の型の細胞と比較して痛みを感じるニューロンのイオンチャネルに対して必ずしも内在的選択性を有さない薬剤であるが、神経および心血管系中の他の細胞に優先して痛みを感じるニューロンに侵入することが可能となることで、痛みを感じるニューロンに対する選択的作用が増大する薬剤の使用が可能となる。更に、特にTRPV1受容体は痛みと関連する組織状態(炎症等)においてより活性がある場合が多いため、痛みを生じている組織と最も関連する特定の感覚ニューロンへの侵入が優勢になる。痒み感受性の一次感覚ニューロンもTRPチャネル、特にTRPV1を発現しており、このアプローチが適している。
【0067】
以下に本発明をより詳細に記載する。
【0068】
電位依存性イオンチャネルの阻害剤
本発明の方法、組成物、およびキットにおいて使用するために好適な電位依存性イオンチャネルの阻害剤は、望ましくは正に荷電した親水性の化合物である。一実施形態において、化合物は恒久的に荷電している(すなわち一時的でない電荷を有する)。別の実施形態において、化合物は一時的に荷電している。電位依存性ナトリウムチャネルの好適な阻害剤としては、限定するものではないが、QX-314、N-メチル-プロカイン(QX-222)、N-オクチル-グアニジン、9-アミノアクリジン、およびパンクロニウムが挙げられる。電位依存性カルシウムチャネルの好適な阻害剤としては、限定するものではないが、D-890 (第四級メトキシベラパミル)およびCERM 11888(第四級ベプリジル(bepridil))が挙げられる。
【0069】
更に、本発明の方法において有用であるために好適なサイズのものであり(例えば約100〜4,000Da、100〜3,000Da、100〜2,000Da、150〜1,500Da、または200〜1,200Da)、容易に改変されて(例えば正に荷電した第四級アミンとして、または一時的に荷電したグアニル化化合物として)荷電し得るアミン基を有するか、もしくは改変されてアミン基を含み得る、電位依存性イオンチャネルの多くの既知の阻害剤が存在する。そのような阻害剤としては、限定するものではないが、リルゾール、メキシリチン、フェニトイン、カルバマゼピン、プロカイン、トカイニド、プリロカイン、ジイソピラミド(diisopyramide)、ベンシクラン、キニジン、ブレチリウム、リファリジン、ラモトリジン、フルナリジン、アルチカイン、ブピビカイン(bupivicaine)、メピビカイン(mepivicaine)、およびフルスピリレンが挙げられる。
【0070】
本発明の組成物、キット、および方法において使用することができる化合物として、下記の式I〜Xの化合物が挙げられる。
【化1】

【0071】
式Iにおいて、R1A、R1B、およびR1Cはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、OR1H、NR1IR1J、NR1KC(O)R1L、S(O)R1M、SO2R1NR1O、SO2NR1PR1Q、SO3R1R、CO2R1S、C(O)R1T、およびC(O)NR1UR1Vから選択され;そしてR1H、R1I、R1J、R1K、R1L、R1M、R1N、R1O、R1P、R1Q、R1R、R1S、R1T、R1U、およびR1Vはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;X1は-CR1WR1X-、-NR1YC(O)-、-OC(O)-、-SC(O)-、-C(O)NR1Z-、-CO2-、および-OC(S)-から選択され;そしてR1W、R1X、R1Y、およびR1Zはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;R1DはH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;そしてR1E、R1F、およびR1Gはそれぞれ独立してC1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択されるか;あるいはR1DおよびR1Gは一緒になって少なくとも1個の窒素原子を有する複素環を完成させる。好ましい実施形態において、X1は-NHC(O)-である。式Iの化合物の例としては、麻酔剤のメチル化第四級アンモニウム誘導体、例えばN-メチルリドカイン、N,N-ジメチルプリロカイン、N,N,N-トリメチルトカイニド、N-メチルエチドカイン、N-メチルロピバカイン、N-メチルブピバカイン、N-メチルレボブピバカイン、N-メチルメピバカインが挙げられる。これらの誘導体は、スキーム1に記載したものと類似の方法を使用して調製することができる。式Iの化合物としてQX-314(CAS 21306-56-9)およびQX-222(CAS 21236-55-5)(下記参照)が挙げられる。
【化2】

【0072】
式IIにおいて、R2A、R2B、およびR2Cはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、OR2I、NR2JR2K、NR2LC(O)R2M、S(O)R2N、SO2R2OR2P、SO2NR2QR2R、SO3R2S、CO2R2T、C(O)R2U、およびC(O)NR2VR2Wから選択され;そしてR2I、R2J、R2K、R2L、R2M、R2N、R2O、R2P、R2Q、R2R、R2S、R2T、R2U、R2V、R2Wはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;X2は-CR2XR2Y-、-NR2ZC(O)-、-OC(O)-、-SC(O)-、-C(O)NR2AA-、-CO2-、および-OC(S)-から選択され;そしてR2X、R2Y、R2Z、およびR2AAはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;R2DはH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;R2EはHまたはC1-4アルキルであり;そしてR2F、R2G、およびR2Hはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択されるか;あるいはR2FおよびR2Gは一緒になって2個の窒素原子を有する複素環を完成する。R2FおよびR2Gが2個の窒素原子を有する複素環を形成する場合、得られるグアニジン基は、望ましくは
【化3】

【0073】
[式中R2HはHまたはCH3である。]
から選択される。望ましくは、R2FおよびR2Gは組み合わさって2〜4個の炭素原子のアルキレンもしくはアルケニレン、例えば5、6、および7員環の環系を形成する。好ましい実施形態において、X2は-NHC(O)-である。式IIの化合物の例としては、麻酔剤のN-グアニジル誘導体(例えば-C(NH)NH2誘導体)、例えばデスエチルN-グアニジルリドカイン、N-グアニジルプリロカイン、N-グアニジルトカイニド、デスエチルN-グアニジルエチドカイン、デスブチル-N-グアニジルロピバカイン、デスブチル-N-グアニジルブピバカイン、デスブチル-N-グアニジルレボブピバカイン、デスメチル-N-グアニジルメピバカインが挙げられる。これらの誘導体は、スキーム2〜5に記載したものと類似の方法を使用して調製することができる。
【0074】
本明細書に記載するグアニジル誘導体(例えば式IIの化合物)は、荷電していない塩基形態で提示される。これらの化合物は、塩(すなわち酸付加塩)として、または荷電していない塩基形態(これはin situでプロトン化されて荷電部分を形成する)のいずれかで投与することができる。
【0075】
式IおよびIIの親薬剤の合成は、文献に記載されている。例えば、米国特許第2,441,498号(リドカインの合成)、米国特許第3,160,662号(プリロカインの合成)、ドイツ特許第2235745号(トカイニドの合成)、ドイツ特許第2162744号(エチドカインの合成)、PCT出願公開第WO85/00599号(ロピバカインの合成)、米国特許第2,955,111号(ブピバカインおよびレボブピバカインの合成)、および米国特許第2,799,679号(メピバカインの合成)を参照のこと。
【化4】

【0076】
式IIIにおいて、n=0〜3かつm=0〜3、(n+m)=0〜6であり;R3A、R3B、およびR3Cはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、OR3L、NR3MR3N、NR3OC(O)R3P、S(O)R3Q、SO2R3RR3S、SO2NR3TR3U、SO3R3V、CO2R3W、C(O)R3X、およびC(O)NR3YR3Zから選択され;そしてR3L、R3M、R3N、R3O、R3P、R3Q、R3R、R3S、R3T、R3U、R3V、R3W、R3X、R3Y、R3Zはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;Y3は-CR3AAR3AB-、-NR3ACC(O)-、-OC(O)-、-SC(O)-、-C(O)NR3AD-、-CO2-、および-OC(S)-から選択され;そしてR3AA、R3AB、R3AC、およびR3ADはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;R3D、R3E、R3F、およびR3Gはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、およびC3-10アルクヘテロシクリルから選択され;R3H、R3J、およびR3Kはそれぞれ独立してC1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択される。式IIIにおける第四級窒素は本明細書においてN’とする。式IIIの化合物の例としては、麻酔剤のメチル化第四級アンモニウム誘導体、例えばN’-メチルプロカイン、N’-メチルプロパラカイン、N’-メチルアロカイン(allocain)、N’-メチルエンカイニド、N’-メチルプロカインアミド、N’-メチルメトクロプラミド、N’-メチルストバイン、N’-メチルプロポキシカイン、N’-メチルクロロプロカイン、N’,N’-ジメチルフレカイニド、およびN’-メチルテトラカインが挙げられる。これらの誘導体は、スキーム1に記載したものと類似の方法を使用して調製することができる。
【化5】

【0077】
式IVにおいて、n=0〜3かつm=0〜3、(n+m)=0〜6であり;R4AおよびR4Bはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、OR4L、NR4MR4N、NR4OC(O)R4P、S(O)R4Q、SO2R4RR4S、SO2NR4TR4U、SO3R4V、CO2R4W、C(O)R4X、およびC(O)NR4YR4Zから選択され;そしてR4L、R4MR4N、R4O、R4P、R4Q、R4R、R4S、R4T、R4U、R4V、R4W、R4X、R4Y、およびR4Zはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;Y4は-CR4AAR4AB-、-NR4ACC(O)-、-OC(O)-、-SC(O)-、-C(O)NR4AD-、-CO2-、および-OC(S)-から選択され;そしてR4AA、R4AB、R4AC、およびR4ADはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;R4C、R4D、R4E、およびR4Fはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、およびC3-10アルクヘテロシクリルから選択され;X4はH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびNR4JR4Kから選択され;R4JおよびR4Kはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;そしてR4G、R4H、およびR4Iはそれぞれ独立してC1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択される。式IVにおける第四級窒素は本明細書においてN”とする。式IIIの化合物の例としては、麻酔剤のメチル化第四級アンモニウム誘導体、例えばN”,N”,N”-トリメチルプロカイン、N”,N”,N”-トリメチルプロパラカイン、N”,N”,N”-トリメチルプロカインアミド、N”,N”,N”-トリメチルメトクロプラミド、N”,N”,N”-トリメチルプロポキシカイン、N”,N”,N”-トリメチルクロロプロカイン、N”,N”-ジメチルテトラカイン、N”,N”,N”-トリメチルベンゾカイン、およびN”,N”,N”-トリメチルブタンベンが挙げられる。これらの誘導体は、スキーム1に記載したものと類似の方法を使用して調製することができる。
【化6】

【0078】
式Vにおいて、n=0〜3かつm=0〜3、(n+m)=0〜6であり;R5A、R5B、およびR5Cはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、OR5M、NR5NR5O、NR5PC(O)R5Q、S(O)R5R、SO2R5SR5T、SO2NR5UR5V、SO3R5W、CO2R5X、C(O)R5Y、およびC(O)NR5ZR5AAから選択され;そしてR5M、R5N、R5O、R5P、R5Q、R5R、R5S、R5T、R5U、R5V、R5W、R5X、R5Y、R5Z、およびR5AAはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;Y5は-CR5ABR5AC-、-NR5ADC(O)-、-OC(O)-、-SC(O)-、-C(O)NR5AE-、-CO2-、および-OC(S)-から選択され;そしてR5AB、R5AC、R5AD、およびR5AEはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;R5D、R5E、R5F、およびR5Gはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、およびC3-10アルクヘテロシクリルから選択され;R5HはHまたはC1-4アルキルであり;そしてR5J、R5K、およびR5Lはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択されるか;あるいはR5JおよびR5Kは一緒になって2個の窒素原子を有する複素環を完成する。R5JおよびR5Kが2個の窒素原子を有する複素環を形成する場合、得られるグアニジン基は、望ましくは
【化7】

【0079】
[式中R5LはHまたはCH3である。]
から選択される。望ましくは、R5JおよびR5Kは組み合わさって2〜4個の炭素原子のアルキレンもしくはアルケニレン、例えば5、6、および7員環の環系を形成する。式Vにおけるグアニル化窒素は本明細書においてN’とする。式Vの化合物の例としては、麻酔剤のN-グアニジル誘導体(例えば-C(NH)NH2誘導体)、例えばデスエチル-N’-グアニジルプロカイン、デスエチル-N’-グアニジルプロパラカイン、デスエチル-N’-グアニジルアロカイン、デスメチル-N’-グアニジルエンカイニド、デスエチル-N’-グアニジルプロカインアミド、デスエチル-N’-グアニジルメトクロプラミド、デスメチル-N’-グアニジルストバイン、デスエチル-N’-グアニジルプロポキシカイン、デスエチル-N’-グアニジルクロロプロカイン、N’-グアニジルフレカイニド、およびデスエチル-N’-グアニジルテトラカインが挙げられる。これらの誘導体は、スキーム2〜5に記載したものと類似の方法を使用して調製することができる。
【化8】

【0080】
式VIにおいて、n=0〜3かつm=0〜3、(n+m)=0〜6であり;R6AおよびR6Bはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、OR6K、NR6LR6M、NR6NC(O)R6O、S(O)R6P、SO2R6QR6R、SO2NR6SR6T、SO3R6U、CO2R6V、C(O)R6W、およびC(O)NR6XR6Yから選択され;そしてR6K、R6L、R6M、R6N、R6O、R6P、R6Q、R6R、R6S、R6T、R6U、R6V、R6W、R6X、およびR6Yはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;Y6は-CR6ZR6AA-、-NR6ABC(O)-、-OC(O)-、-SC(O)-、-C(O)NR6AC-、-CO2-、および-OC(S)-から選択され;そしてR6Z、R6AA、R6AB、およびR6ACはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;R6C、R6D、R6E、およびR6Fはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、およびC3-10アルクヘテロシクリルから選択され;X6はH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびNR6ADR6AEから選択され;R6ADおよびR6AEはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;R6GはHまたはC1-4アルキルであり;そしてR6H、R6I、およびR6Jはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択されるか;あるいはR6HおよびR6Iは一緒になって2個の窒素原子を有する複素環を完成する。R6HおよびR6Iが2個の窒素原子を有する複素環を形成する場合、得られるグアニジン基は、望ましくは
【化9】

【0081】
[式中R6J はHまたはCH3である。]
から選択される。望ましくは、R6HおよびR6Iは組み合わさって2〜4個の炭素原子のアルキレンまたはアルケニレン、例えば5、6、および7員環の環系を形成する。式Vにおけるグアニル化窒素は、本明細書においてN”とする。式VIの化合物の例としては、麻酔剤のN-グアニジル誘導体(例えば-C(NH)NH2 誘導体)、例えばN”-グアニジルプロカイン、N”-グアニジルプロパラカイン、N”-グアニジルプロカインアミド、N”-グアニジルメトクロプラミド、N”-グアニジルプロポキシカイン、N”-グアニジルクロロプロカイン、N”-グアニジルテトラカイン、N”-グアニジルベンゾカイン、およびN”-グアニジルブタンベンが挙げられる。これらの誘導体は、スキーム2〜5に記載したものと類似の方法を使用して調製することができる。
【0082】
式III〜VIの親薬剤の合成は文献に記載されている。例えば、米国特許第812,554号(プロカインの合成)、Clinton等、J. Am. Chem. Soc. 74:592 (1952)(プロパラカインの合成)、米国特許第2,689,248号(プロポキシカインの合成)、Hadicke等、Pharm. Zentralh. 94:384(1955)(クロロプロカインの合成)、米国特許第1,889,645号(テトラカインの合成)、Salkowski等、Ber. 28:1921(1895)(ベンゾカインの合成)、Brill等、J. Am. Chem. Soc. 43:1322(1921)(ブタンベンの合成)、米国特許第3,931,195号(エンカイニドの合成)、Yamazaki等、J. Pharm. Soc. Japan 73:294(1953)(プロカインアミドの合成)、米国特許第3,177,252号(メトクロプラミドの合成)、米国特許第3,900,481号(フレカイニドの合成)、およびFourneau等、Bull. Sci. Pharmacol. 35:273(1928)(ストバインの合成)を参照のこと。
【化10】

【0083】
式VIIにおいて、n=0〜3かつm=0〜3、(n+m)=0〜6であり;R7A、R7B、およびR7Cはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、OR7L、NR7MR7N、NR7OC(O)R7P、S(O)R7Q、SO2R7RR7S、SO2NR7TR7U、SO3R7V、CO2R7W、C(O)R7X、およびC(O)NR7YR7Zから選択され;そしてR7L、R7M、R7N、R7O、R7P、R7Q、R7R、R7S、R7T、R7U、R7V、R7W、R7X、R7Y、およびR7Zはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;X7は-CR7AAR7AB-、-NR7ACC(O)-、-OC(O)-、-SC(O)-、-C(O)NR7AD-、-CO2-、および-OC(S)-から選択され;そしてR7AA、R7AB、R7AC、およびR7ADはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;R7D、R7E、R7F、およびR7Gはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、およびC3-10アルクヘテロシクリルから選択され;そしてR7H、R7J、およびR7Kはそれぞれ独立してC1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択される。好ましい実施形態において、X7は-C(O)NH-である。式VIIの化合物の例としては、麻酔剤のメチル化第四級アンモニウム誘導体、例えばN’-メチルジブカインが挙げられる。これらの誘導体は、スキーム1に記載したものと類似の方法を使用して調製することができる。
【化11】

【0084】
式VIIIにおいて、n=0〜3かつm=0〜3、(n+m)=0〜6であり;R8A、R8B、およびR8Cはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、OR8L、NR8MR8N、NR8OC(O)R8P、S(O)R8Q、SO2R8RR8S、SO2NR8TR8U、SO3R8V、CO2R8W、C(O)R8X、およびC(O)NR8YR8Zから選択され;そしてR8L、R8M、R8N、R8O、R8P、R8Q、R8R、R8S、R8T、R8U、R8V、R8W、R8X、R8Y、およびR8Zはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;X8は-CR8AAR8AB-、-NR8ACC(O)-、-OC(O)-、-SC(O)-、-C(O)NR8AD-、-CO2-、および-OC(S)-から選択され;そしてR8AA、R8AB、R8AC、およびR8ADはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;R8D、R8E、R8F、およびR8Gはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-4ヘテロアルキル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、およびC3-10アルクヘテロシクリルから選択され;R8HはHまたはC1-4アルキルであり;そしてR8I、R8J、およびR8Kはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択されるか;あるいはR8IおよびR8Jは一緒になって2個の窒素原子を有する複素環を完成する。R8IおよびR8Jが2個の窒素原子を有する複素環を形成する場合、得られるグアニジン基は、望ましくは
【化12】

【0085】
[式中R8KはHまたはCH3である。]
から選択される。望ましくは、R8IおよびR8Jは組み合わさって2〜4個の炭素原子のアルキレンまたはアルケニレン、例えば5、6、および7員環の環系を形成する。式Vにおけるグアニル化窒素は本明細書においてN’とする。好ましい実施形態において、X8は-C(O)NH-である。式VIIIの化合物の例としては、麻酔剤のN-グアニジル誘導体(例えば-C(NH)NH2誘導体)、例えばデスエチル-N-グアニジルジブカインが挙げられる。これらの誘導体は、スキーム2〜5に記載されたものと類似の方法を使用して調製することができる。
【化13】

【0086】
式IXにおいて、n=0〜6であり;R9A、R9B、R9C、R9D、およびR9Eはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、OR9I、NR9JR9K、NR9LC(O)R9M、S(O)R9N、SO2R9OR9P、SO2NR9QR9R、SO3R9S、CO2R9T、C(O)R9U、およびC(O)NR9VR9Wから選択され;そしてR9I、R9J、R9K、R9L、R9M、R9N、R9O、R9P、R9Q、R9R、R9S、R9T、R9U、R9V、およびR9Wはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;X9は-CR9XR9Y-、-O-、-S-、および-NR9Z-から選択され;そしてR9X、R9Y、およびR9Zはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;Y9はNR9AANR9ABNR9ACまたはNR9ADZ9であり;R9AA、R9AB、およびR9ACはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、およびC2-4アルキニルから選択され;R9ADはHまたはC1-4アルキルであり;Z9
【化14】

【0087】
であり;そしてR9F、R9G、およびR9Hはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、およびC2-4アルキニルから選択されるか;あるいはR9FおよびR9Gは一緒になって2個の窒素原子を有する複素環を完成する。R9FおよびR9Gが2個の窒素原子を有する複素環を形成する場合、得られるグアニジン基は、望ましくは
【化15】

【0088】
[式中R9HはHまたはCH3である。]
から選択される。望ましくは、R9FおよびR9Gは組み合わさって2〜4個の炭素原子のアルキレンまたはアルケニレン、例えば5、6、および7員環の環系を形成する。好ましい実施形態において、X9=-O-である。式IXの化合物の例としては、N-グアニジル誘導体(例えば-C(NH)NH2誘導体)、例えばN-グアニジルフルオキセチン(fluoxetine)、およびメチル化第四級アンモニウム誘導体、例えばN,N-ジメチルフルオキセチンが挙げられる。これらの誘導体は、スキーム1〜5に記載したものと類似の方法を使用して調製することができる。
【化16】

【0089】
式Xにおいて、W3はO、NH、NCH2R10J、NC(O)CH2R10J、CHCH2R10J、C=CHR10J、またはC=CHR10Kであり;W1-W2はS、O、OCHR10K、SCHR10K、N=CR10K、CHR10L-CHR10K、またはCR10L=CR10Kであり;R10A、R10B、R10C、R10D、R10E、R10F、R10G、およびR10Hはそれぞれ独立してH、OH、ハライド、C1-4アルキル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択され;R10JはCH2CH2X10AまたはCH(CH3)CH2X10Aであり;R10LはHまたはOHであり;R10KはH、OH、または基:
【化17】

【0090】
であり;X10AはNR10MR10NR10P、またはNR10QX10Cであり;X10BはNR10RR10S、またはNX10Cであり;R10M、R10N、R10P、R10R、およびR10Sはそれぞれ独立してC1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、およびC2-4ヘテロアルキルから選択されるか、あるいはR10RおよびR10Sは一緒になって少なくとも1個の窒素原子を有する複素環を完成し;R10QはHまたはC1-4アルキルであり;X10C
【化18】

【0091】
であり;そしてR10T、R10UおよびR10Vはそれぞれ独立してH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、およびC2-4アルキニルから選択されるか、あるいはR10TおよびR10Vは一緒になって2個の窒素原子を有する複素環を完成する。R10TおよびR10Vが2個の窒素原子を有する複素環を形成する場合、得られるグアニジン基は、望ましくは
【化19】

【0092】
[式中R10UはHまたはCH3である。]
から選択される。望ましくは、R10TおよびR10Vは組み合わさって2〜4個の炭素原子のアルキレンまたはアルケニレン、例えば5、6、および7員環の環系を形成する。式Xの化合物の例としてはN-グアニジル誘導体(例えば-C(NH)NH2誘導体)およびメチル化第四級アンモニウム誘導体が挙げられる。式XのN-グアニジル誘導体としては、限定するものではないが、N-グアニジルアモキサピン、デスメチル-N-グアニジルトリミプラミン、デスメチル-N-グアニジルドチエピン、デスメチル-N-グアニジルドキセピン、デスメチル-N-グアニジルアミトリプチリン、N-グアニジルプロトリプチリン、N-グアニジルデシプラミン、デスメチル-N-グアニジルクロミプラミン、デスメチル-N-グアニジルクロザピン、デスメチル-N-グアニジルロキサピン、N-グアニジルノルトリプチリン、デスメチル-N-グアニジルシクロベンザプリン、デスメチル-N-グアニジルシプロヘプタジン、デスメチル-N-グアニジルオロパタジン、デスメチル-N-グアニジルプロメタジン、デスメチル-N-グアニジルトリメプラジン、デスメチル-N-グアニジルクロルプロチキセン、デスメチル-N-グアニジルクロルプロマジン、デスメチル-N-グアニジルプロピオマジン、デスメチル-N-グアニジルプロクロルペラジン、デスメチル-N-グアニジルチエチルペラジン、デスメチル-N-グアニジルトリフロペラジン、デスエチル-N-グアニジルエタシジン(ethacizine)、およびデスメチル-N-グアニジルイミプラミンが挙げられる。式Xのメチル化第四級アンモニウム誘導体としては、限定するものではないが、N,N-ジメチルアモキサピン、N-メチルトリミプラミン、N-メチルドチエピン、N-メチルドキセピン、N-メチルアミトリプチリン、N,N-ジメチルプロトリプチリン、N,N-ジメチルデシプラミン、N-メチルクロミプラミン、N-メチルクロザピン、N-メチルロキサピン、N,N-ジメチルノルトリプチリン、N-メチルシクロベンザプリン、N-メチルシプロヘプタジン、N-メチルオロパタジン、N-メチルプロメタジン、N-メチルトリメプラジン、N-メチルクロルプロチキセン、N-メチルクロルプロマジン、N-メチルプロピオマジン、N-メチルモリシジン、N-メチルプロクロルペラジン、N-メチルチエチルペラジン、N-メチルフルフェナジン、N-メチルペルフェナジン、N-メチルフルペンチキソール、N-メチルアセトフェナジン、N-メチルトリフロペラジン、N-メチルエタシジン、およびN-メチルイミプラミンが挙げられる。これらの誘導体は、スキーム1〜5に記載したものと類似の方法を使用して調製することができる。
【0093】
本明細書に記載のようにグアニル化もしくは第四級化され得るアミン窒素を含み得る他のイオンチャネルブロッカーとしては、限定するものではないが、オルフェナドリン、フェンベンザミン、ベプリジル、ピモジド、ペンフルリドール、フルナリジン、フルスピリレン、プロピベリン、ジソピラミド、メタドン、トルテロジン、トリジヘキセチル塩(tridihexethyl salts)、トリペレナミン、メピラミン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、カルビノキサミン、酢酸レボメタジル、ガロパミル(gallopamil)、ベラパミル、デバパミル(devapamil)、チアパミル(tiapamil)、エモパミル(emopamil)、ジクロニン、プラモキシン、ラモトリジン、ミベフラジル、ガバペンチン、アミロライド、ジルチアゼム、ニフェジピン、ニモジピン、ニトレンジピン(nitrendipine)、コカイン、メキシレチン、プロパフェノン、キニジン、オキセサゼイン、アルチカイン、リルゾール、ベンシクラン、リファリジン、およびストリキニーネが挙げられる。更に他のイオンチャネルブロッカーは、改変して第四級化またはグアニル化に好適な窒素原子を組み込むことができる。これらのイオンチャネルブロッカーとしては、限定するものではないが、フォスフェニトイン、エトトイン、フェニトイン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、トピラマート、ゾニサミド、およびバルプロ酸の塩が挙げられる。
【0094】
合成
荷電改変イオンチャネルブロッカーの合成は、親のイオンチャネルブロッカー、リンカー、バルキーな基、および/もしくは荷電した基のアルコール、アミン、ケトン、スルフヒドリルまたはカルボキシル官能基の選択的保護および脱保護が含まれ得る。例えば、アミン類で通常使用される保護基としては、tert-ブチル、ベンジル、2,2,2-トリクロロエチル、2-トリメチルシリルエチル、9-フルオレニルメチル、アリル、およびm-ニトロフェニル等のカルバメートが挙げられる。アミン類で通常使用される他の保護基としては、ホルムアミド、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、スルホンアミド、トリフルオロメタンスルホニルアミド、トリメチルシリルエタンスルホンアミド、およびtert-ブチルスルホニルアミド等のアミドが挙げられる。カルボキシル類で通常使用される保護基の例としては、メチル、エチル、tert-ブチル、9-フルオレニルメチル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル、ベンジル、ジフェニルメチル、O-ニトロベンジル、オルト-エステル、およびハロ-エステル等のエステルが挙げられる。アルコール類で通常使用される保護基の例としては、メチル、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、テトラヒドロピラニル、エトキシエチル、ベンジル、2-ナフチルメチル、O-ニトロベンジル、P-ニトロベンジル、P-メトキシベンジル、9-フェニルキサンチル、トリチル(メトキシ-トリチルを含む)、およびシリルエーテル等のエーテルが挙げられる。スルフヒドリル類で通常使用される保護基の例としては、ヒドロキシル類で使用される保護基と同じものの多くが挙げられる。更に、スルフヒドリルは、還元型(例えばジスルフィドとして)または酸化型(例えばスルホン酸、スルホン酸エステル、またはスルホン酸アミド)で保護することができる。保護基は、分子中の他の保護基を除き、それぞれを除去するために選択条件(例えば酸性条件、塩基性条件、求核試薬による触媒、ルイス酸による触媒、または水素化)が必要とされるように選択することができる。アミン、アルコール、スルフヒドリル、およびカルボキシル官能基に保護基を付加するために必要な条件、およびこれらの除去のために必要な条件は、T.W. GreenおよびP.G.M. Wuts, 「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」(第二版)、John Wiley & Sons, 1991およびP.J. Kocienski, 「保護基(Protecting Groups)」Georg Thieme Verlag, 1994に詳細に記載されている。
【0095】
荷電改変イオンチャネルブロッカーは、当業者に良く知られた技術を使用して調製することができる。改変は、例えば、J. March「高等有機化学:反応、メカニズムおよび構造(Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure)」John Wiley & Sons, Inc., 1992, 第617頁に記載された技術を使用して、親のイオンチャネルブロッカーのアルキル化によって行うことができる。アミノ基のグアニジン基への変換は、標準的な合成プロトコルを使用して達成することができる。例えば、Mosherはアミノイミノメタンスルホン酸のアミンとの反応による一置換グアニジンの一般的な調製方法を記載している(Kim等、Tetrahedron Lett. 29:3183 (1988))。第一級および第二級アミンのグアニル化のためのより便利な方法は、Bernatowiczが1H-ピラゾール-1-カルボキシアミジン塩酸;1-H-ピラゾール-1-(N,N’-ビス(tert-ブトキシカルボニル)カルボキシアミジン;または1-H-ピラゾール-1-(N,N’-ビス(ベンジルオキシカルボニル)カルボキシアミジンを用いて開発した。これらの試薬は、アミンと反応して一置換グアニジンとする(Bernatowicz 等、J. Org. Chem. 57:2497 (1992); およびBernatowicz 等、Tetrahedron Lett. 34:3389 (1993)を参照のこと)。更に、チオウレアおよびS-アルキル-イソチオウレアは、置換グアニジンの合成において有用な中間体であることが示されている(Poss 等、Tetrahedron Lett. 33:5933 (1992))。特定の実施形態において、グアニジンは2個の窒素原子を有する複素環の一部である(例えば下記の構造を参照のこと)。
【化20】

【0096】
環系は、2〜4個の炭素原子のアルキレンまたはアルケニレン、例えば5、6、および7員環の環系を含み得る。このような環系は、例えばSchlama等、J. Org. Chem., 62:4200 (1997)に開示された方法を用いて調製することができる。
【0097】
荷電改変イオンチャネルブロッカーは、スキーム1に示す親化合物中のアミン窒素のアルキル化によって調製することができる。
【化21】

【0098】
あるいはまた、荷電改変イオンチャネルブロッカーは、グアニジン基の導入によって調製することができる。親化合物は、スキーム2に示すようなシナミド(cynamide)、例えばメチルシアナミド、またはスキーム3に示すようなピラゾール-1-カルボキシアミジン誘導体[式中ZはHまたは適切な保護基である。]と反応させることができる。あるいはまた、親化合物は、スキーム4に示すように、臭化シアン、続いてメチルクロロアルミニウムアミドと反応させることができる。2-(メチルチオ)-2-イミダゾリン等の試薬を使用して好適に機能化した誘導体を調製することもできる(スキーム5)。
【化22】

【化23】

【0099】
アミン窒素原子を含むいずれのイオンチャネルブロッカーも、スキーム1〜5に示すように改変することができる。
【0100】
TRPV1アゴニスト
本発明の方法、組成物、およびキットにおいて使用できるTRPV1アゴニストとしては、限定するものではないが、侵害受容器上のTRPV1受容体を活性化し、少なくとも1種の電位依存性イオンチャネル阻害剤の侵入を可能とする任意のものが含まれる。好適なTRPV1アゴニストとしては、限定するものではないが、カプサイシン、オイゲノール、アルバニル(N-アラキドノイルバニルアミン)、アナンダミド、2-アミノエトキシジフェニルボレート(2APB)、AM404、レシニフェラトキシン、ホルボール12-フェニルアセテート13-アセテート 20-ホモバニレート(PPAHV)、オルバニル(NE 19550)、OLDA(N-オレオイルドーパミン)、N-アラキドニルドーパミン(NADA)、6'-ヨードレシニフェラトキシン(6'-IRTX)、C18 N-アシルエタノールアミン、12-ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸等のリポキシゲナーゼ誘導体、インヒビターシステインノット(ICK)ペプチド(バニロトキシン)、ピペリン、MSK195 (N-[2-(3,4-ジメチルベンジル)-3-(ピバロイルオキシ)プロピル]-2-[4-(2-アミノエトキシ)-3-メトキシフェニル]アセトアミド)、JYL79 (N-[2-(3,4-ジメチルベンジル)-3-(ピバロイルオキシ)プロピル]-N’-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)チオウレア)、ヒドロキシ-α-サンショオール、2-アミノエトキシジフェニルボレート、10-ショーガオール、オレイルジンゲロール、オレイルショーガオール、およびSU200 (N-(4-tert-ブチルベンジル)-N’-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)チオウレア)が挙げられる。
【0101】
TRP1Aアゴニスト
本発明の方法、組成物、およびキットにおいて使用できるTRP1Aアゴニストとしては、侵害受容器または掻痒受容器上のTRP1A受容体を活性化し、少なくとも1種の電位依存性イオンチャネル阻害剤の侵入を可能とする任意のものが含まれる。好適なTRP1Aアゴニストとしては、限定するものではないが、シンナムアルデヒド、アリル-イソチオシアネート、ジアリルジスルフィド、イチリン、シナモンオイル、ウィンターグリーンオイル、クローブオイル、アクロレイン、ヒドロキシ-α-サンショオール、2-アミノエトキシジフェニルボレート、4-ヒドロキシノネナール、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、マスタードオイル、および3'-カルバモイルビフェニル-3-イルシクロヘキシルカルバメート(URB597)が挙げられる。
【0102】
P2Xアゴニスト
本発明の方法、組成物、およびキットにおいて使用できるP2Xアゴニストとしては、侵害受容器または掻痒受容器上のP2X受容体を活性化し、少なくとも1種の電位依存性イオンチャネル阻害剤の侵入を可能とする任意のものが含まれる。好適なP2Xアゴニストとしては、限定するものではないが、2-メチルチオ-ATP、2'および3'-O-(4-ベンゾイルベンゾイル)-ATP、およびATP5'-O-(3-チオトリフォスフェート)が挙げられる。
【0103】
TRPM8アゴニスト
本発明の方法、組成物、およびキットにおいて使用できるTRPM8アゴニストとしては、侵害受容器または掻痒受容器上のTRPM8受容体を活性化し、少なくとも1種の電位依存性イオンチャネル阻害剤の侵入を可能とする任意のものが含まれる。好適なTRPM8アゴニストとしては、限定するものではないが、メントール、イシクリン(iciclin)、ユーカリプトール、リナロール、ゲラニオール、およびヒドロキシシトロネラールが挙げられる。
【0104】
更なる薬剤
本発明の方法、組成物、およびキットは、痛み(例えば神経障害性疼痛、侵害性疼痛、突発性疼痛、炎症性疼痛、機能不全性疼痛、片頭痛、または処置性疼痛)および痒み(例えばアトピー性湿疹もしくは乾癬等の皮膚状態、寄生虫および真菌乾癬における痒み、薬剤誘導性、アレルギー性、代謝性、癌または肝不全および腎不全における痒み)の治療のために使用することができる。必要であれば、本明細書に記載する方法、組成物、およびキットにおいて、痛みの治療のために典型的に使用される1種以上の更なる薬剤を、本発明の組み合わせと合わせて使用することができる。そのような薬剤としては、限定するものではないが、NSAID類、オピオイド類、三環系抗うつ薬、アミントランスポーター阻害剤、抗けいれん薬が挙げられる。必要であれば、本明細書に記載する方法、組成物、およびキットにおいて、痒みの治療のために典型的に使用される1種以上の更なる薬剤を、本発明の組み合わせと合わせて使用することができる。そのような薬剤としては、局所または経口ステロイド、および抗ヒスタミン剤が挙げられる。
【0105】
組成物製剤
本発明の組み合わせの投与は、標的領域における痛みの感覚の低減を生じさせる適切な任意の手段によることができる。電位依存性イオンチャネルの阻害剤およびTRPV1/TRPA1/P2X/TRPM8受容体アゴニストは、任意の好適な担体物質中に任意の適切な量で含有されていて良く、一般的に、合わせて組成物の総重量の1〜95重量%となる量で存在する。本組成物は、経口、非経口(例えば静脈内、筋肉内)、直腸内、皮内、皮下、局所、経皮、舌下、鼻内、膣内、くも膜下、硬膜外、もしくは眼内投与、あるいは注射、吸入、または鼻もしくは口腔粘膜との直接接触による投与のために好適な投与形態で投与することができる。
【0106】
従って、組成物は、例えば錠剤、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、懸濁液、エマルジョン、溶液、ヒドロゲルを含むゲル、ペースト、軟膏、クリーム、プラスター、ドレンチ(drenches)、浸透送達デバイス(osmotic delivery devices)、坐剤、浣腸剤、注射可能物質、インプラント、スプレー、またはエアロゾルの形態であり得る。組成物は、慣用的な製剤化の手順に従って製剤化することができる(例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, 2000, A.R. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins編, Philadelphia, およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, J. SwarbrickおよびJ. C. Boylan編, 1988-1999, Marcel Dekker, New Yorkを参照のこと)。
【0107】
組み合わせ中の各化合物は、当分野において公知の種々の方法で製剤化することができる。例えば、第1および第2の薬剤は、共に製剤化されても、別個に製剤化されても良い。望ましくは、第1および第2の薬剤は、薬剤を同時もしくはほぼ同時に投与するために合わせて製剤化される。
【0108】
個々に、もしくは別個に製剤化された薬剤は、キットとして一緒に包装することができる。非制限的な例として、限定されるものではないが、例えば2種の丸剤、丸剤および粉末、坐剤およびバイアルの液体、2種の局所用クリーム等を含むキットが挙げられる。キットは、患者への単位投与量の投与を補助する任意の成分、例えば粉末形態の再構成のためのバイアル、注射用シリンジ、特別注文のIV送達システム、吸入器等を含むことができる。更に、単位投与量キットは、組成物の調製および投与についての説明書を含むことができる。
【0109】
キットは、一人の患者のための1回使用の単位投与量として、特定の患者のための(定常量での、あるいは治療が進行するにつれて個々の化合物の効力が変動し得る)複数回使用として製造することができ;あるいはキットは複数の患者に投与するのに適した複数回投与量を含んでいても良い(「バルク包装」)。キットの構成成分は、カートン、ブリスターパック、瓶、チューブ等に組み立てることができる。
【0110】
経口使用のための固形投与形態
経口使用のための製剤として、活性成分を非毒性の製薬上許容される賦形剤と共に混合物中に含有する錠剤が挙げられる。これらの賦形剤は、例えば不活性の希釈剤または増量剤(例えばスクロースおよびソルビトール)、潤滑剤(lubricating agents)、滑剤(glidants)、および癒着防止剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水素添加植物油、もしくはタルク)であり得る。
【0111】
錠剤、カプセル、または他のビヒクル中に2種以上の化合物を一緒に混合することができ、あるいは仕切ることができる。一例において、第1の化合物の放出に先立って第2の化合物の実質的な部分が放出されるように、第1の化合物を錠剤の内側に含ませ、第2の化合物を外側に含ませる。
【0112】
経口使用のための製剤はまた、チュアブル錠として、または活性成分が不活性の固体希釈剤と混合されているハードゼラチンカプセルとして、または活性成分が水もしくは油性の媒体と混合されているソフトゼラチンカプセルとして提供されても良い。
【0113】
一般に、ヒトに投与する場合には、本発明の組み合わせの化合物のいずれかの経口投与量はその化合物の性質に依存し、当業者によって容易に決定され得る。典型的には、そうした投与量は通常約0.001mg〜2000mg/日、望ましくは約1mg〜1000mg/日、より望ましくは約5mg〜500mg/日である。1日に200mgまでの投与量が必要な場合がある。TRPV1/TRPA1/P2X/TRPM8受容体を活性化するために必要な最小治療量を投与することが有用であり得るが、これは標準的技術を用いて決定することができる。
【0114】
組み合わせ中のそれぞれの薬剤の投与は、各々1日1〜4回で1日ないし1年とすることができ、患者の生涯にわたる場合さえあり得る。多くの場合、慢性的・長期投与が指示されるであろう。
【0115】
局所製剤
組成物はまた、活性成分を0.0001%〜25%(w/w)、またはそれ以上含有する局所ビヒクルを用いて局所的使用に適合させることもできる。
【0116】
好ましい組み合わせにおいて、活性成分は好ましくはそれぞれ0.0001%〜10%(w/w)、より好ましくは0.0005%〜4%(w/w)の活性剤である。クリームは1日に1〜4回、または必要に応じて適用することができる。例えば、局所投与のために適合させたプレドニゾロンの場合、局所ビヒクルは0.01%〜5%(w/w)、好ましくは0.01%〜2%(w/w)、より好ましくは0.01%〜1%(w/w)を含有するであろう。
【0117】
本明細書に記載した方法を実施するにあたり、本発明の組み合わせを含有する局所ビヒクルは、好ましくは被験者の不快を感じる部位に適用する。例えば、クリームは被験者の関節炎を起こしている指のある手に適用することができる。
【0118】
コンジュゲート
必要であれば、本明細書に記載した組み合わせのいずれかで使用する薬剤を、互いに共有結合させて式(XI)のコンジュゲートを形成しても良い。
【0119】
(A)-(L)-(B) (XI)
式(XI)において、(A)は、侵害受容器および/または掻痒受容器上に存在する、チャネル形成型受容体を活性化する化合物であり;(L)はリンカーであり;そして(B)は、チャネルの内側から作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側から作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない化合物であって、該チャネル形成型受容体が活性化しているときに該受容体を通って侵害受容器または掻痒受容器に侵入することができる化合物である。
【0120】
本発明のコンジュゲートは、例えば細胞内および細胞外の酵素(例えばアミダーゼ、エステラーゼ、およびホスファターゼ)によるコンジュゲートの分解後に薬剤(A)および薬剤(B)を放出するプロドラッグであり得る。本発明のコンジュゲートはまた、受容体が活性化された場合にコンジュゲートがチャネル形成型受容体を通って侵害受容器または掻痒受容器に侵入し得る限りにおいて、細胞内および細胞外の酵素による分解に抵抗して、in vivoにおいてほとんどインタクトのままでいるように設計することもできる。コンジュゲートのin vivoにおける分解は、コンジュゲートの合成の際に、リンカー(L)、および化合物(A)および化合物(B)で形成される共有結合の設計によって調節することができる。
【0121】
コンジュゲートは、当業者に良く知られた技術を用いて調製することができる。例えば、コンジュゲートは、G. Hermanson「バイオコンジュゲートの技術(Bioconjugate Techniques)」Academic Press, Inc., 1996に開示された方法を使用して調製することができる。コンジュゲートの合成には、薬剤(A)、リンカー、および/または薬剤(B)のアルコール、アミン、ケトン、スルフヒドリルもしくはカルボキシル官能基の選択的保護および脱保護が含まれ得る。例えば、アミンのために通常用いられる保護基としては、カルバメート類、例えばtert-ブチル、ベンジル、2,2,2-トリクロロエチル、2-トリメチルシリルエチル、9-フルオレニルメチル、アリル、およびm-ニトロフェニルが挙げられる。アミンのために通常用いられる他の保護基としては、アミド類、例えばホルムアミド、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、スルホンアミド、トリフルオロメタンスルホニルアミド、トリメチルシリルエタンスルホンアミド、およびtert-ブチルスルホニルアミドが挙げられる。カルボキシルのために通常用いられる保護基の例としては、エステル類、例えばメチル、エチル、tert-ブチル、9-フルオレニルメチル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル、ベンジル、ジフェニルメチル、O-ニトロベンジル、オルト-エステル、およびハロ-エステルが挙げられる。アルコールのために通常用いられる保護基の例としては、エーテル類、例えばメチル、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、テトラヒドロピラニル、エトキシエチル、ベンジル、2-ナフチルメチル、O-ニトロベンジル、P-ニトロベンジル、P-メトキシベンジル、9-フェニルキサンチル、トリチル(メトキシ-トリチルを含む)、およびシリルエーテルが挙げられる。スルフヒドリルのために通常用いられる保護基の例としては、ヒドロキシルのために用いられるものと同じ保護基の多くが挙げられる。更に、スルフヒドリルは還元型で (例えばジスルフィドとして)、または酸化型で(例えばスルホン酸、スルホン酸エステル、もしくはスルホン酸アミドとして)保護することができる。保護基は、分子中の他の保護基を除き、それぞれを除去するために選択条件(例えば酸性条件、塩基性条件、求核試薬による触媒、ルイス酸による触媒、または水素化)が必要とされるように選択することができる。アミン、アルコール、スルフヒドリル、およびカルボキシル官能基に保護基を付加するために必要な条件、およびこれらの除去のために必要な条件は、T.W. Green および P.G.M. Wuts, 「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」(第二版)、John Wiley & Sons, 1991およびP.J. Kocienski, 「保護基(Protecting Groups)」Georg Thieme Verlag, 1994に詳細に記載されている。更なる合成の詳細は以下に記載する。
【0122】
リンカー
本発明のリンカー成分は、最も簡単には化合物(A)および化合物(B)間の結合であるが、典型的には化合物(A)を化合物(B)に共有的に連結するペンダント基を有する鎖状、環状、または分岐した分子骨格を提供する。従って、化合物(A)の化合物(B)への連結は、化合物(A)および化合物(B)上に存在する1以上の官能基との結合形成を含む、共有的手段によって達成される。この目的のために使用し得る化学反応性官能基の例としては、限定するものではないが、アミノ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、カルボニル、カーボハイドレート基、隣接ジオール、チオエーテル、2-アミノアルコール、2-アミノチオール、グアニジニル、イミダゾリル、およびフェノール基が挙げられる。
【0123】
化合物(A)および化合物(B)の共有結合は、化合物(A)および化合物(B)中に存在するこうした官能基と反応できる反応性部分を含むリンカーを用いて行うことができる。例えば、化合物(A)のアミン基はリンカーのカルボキシル基、またはその活性化誘導体と反応して、その結果2つを連結するアミドを形成することができる。
【0124】
スルフヒドリル基と反応し得る部分の例としては、型XCH2CO-[式中X=Br、ClまたはI]のα-ハロアセチル化合物が挙げられ、これはスルフヒドリル基に対して特定の反応性を示すが、Gurd, Methods Enzymol. 11:532 (1967)に記載されたような、イミダゾリル、チオエーテル、フェノール、およびアミノ基の改変にも使用され得る。N-マレイミド誘導体も、スルフヒドリル基に対して選択的であると考えられるが、更に特定の条件下でアミノ基へのカップリングにおいて有用であり得る。アミノ基の変換を介してチオール基を導入する2-イミノチオラン等の試薬(Traut等、Biochemistry 12:3266 (1973))は、連結がジスルフィド架橋の形成を介して生じるのであればスルフヒドリル試薬と考えることができる。
【0125】
アミノ基と反応し得る反応性部分の例として、例えばアルキル化剤およびアシル化剤が挙げられる。代表的なアルキル化剤としては、以下のものが挙げられる:
(i) 反応性チオール基なしにアミノ基に対する特異性を示し、型XCH2CO-[式中X=Cl、BrまたはI]であるα-ハロアセチル化合物、例えばWong, Biochemistry 24:5337 (1979)に記載されたもの;
(ii) Michael型の反応を介して、もしくは環のカルボニル基への付加によるアシル化を介してアミノ基と反応し得るN-マレイミド誘導体、例えばSmyth等, J. Am. Chem. Soc. 82:4600 (1960) およびBiochem. J. 91:589 (1964)に記載されたもの;
(iii) 反応性ニトロハロ芳香族化合物等のアリールハライド類;
(iv) アルキルハライド類、例えばMcKenzie等, J. Protein Chem. 7:581 (1988)に記載されたもの;
(v) アミノ基と共にシッフ塩基を形成することができるアルデヒド類およびケトン類、形成した付加物は通常還元によって安定化されて安定なアミンを得る;
(vi) アミノ、スルフヒドリル、またはフェノール性ヒドロキシル基と反応し得るエピクロルヒドリンおよびビスオキシラン等のエポキシド誘導体;
(vii) アミノ、スルフヒドリル、およびヒドロキシル基等の求核試薬に対して非常に反応性が高い、s-トリアジンの塩素含有誘導体;
(viii) 開環によってアミノ基等の求核試薬と反応する、上記のs-トリアジン化合物に基づくアジリジン類、例えばRoss, J. Adv. Cancer Res. 2:1 (1954)に記載されたもの;
(ix) スクアリン酸ジエチルエステル、例えばTietze, Chem. Ber. 124:1215 (1991)に記載されたもの;および
(x) エーテル酸素原子によって生じる活性化のために通常のアルキルハライドより反応性が高いアルキル化剤であるα-ハロアルキルエーテル、例えばBenneche等, Eur. J. Med. Chem. 28:463 (1993)に記載されたもの。
【0126】
代表的なアミノ反応性アシル化剤としては、以下のものが挙げられる:
(i) それぞれ安定なウレアおよびチオウレア誘導体を形成するイソシアネートおよびイソチオシアネート類、特に芳香族誘導体;
(ii) Herzig 等, Biopolymers 2:349 (1964)に記載されたスルホニルクロライド;
(iii) 酸ハライド類;
(iv) ニトロフェニルエステルもしくはN-ヒドロキシスクシンイミジルエステル等の活性エステル類;
(v) 酸無水物、例えば混合型、対称型、またはN-カルボキシ無水物等;
(vi) アミド結合形成に有用な他の試薬、例えばM. Bodansky「ペプチド合成の原理(Principles of Peptide Synthesis)」 Springer-Verlag, 1984に記載されたもの;
(vii) 例えば予め形成したヒドラジド誘導体から亜硝酸ナトリウムを用いてアジド基が生成するアシルアジド類、例えばWetz等, Anal. Biochem. 58:347 (1974)に記載されたもの;および
(viii) アミノ基との反応によって安定なアミジンを形成するイミドエステル類、例えばHunterおよびLudwig, J. Am. Chem. Soc. 84:3491 (1962)に記載されたもの。
【0127】
アルデヒドおよびケトンはアミンと反応させてシッフ塩基を形成することができ、これは有利には還元的アミノ化を介して安定化させることができる。アルコキシアミノ部分はケトンおよびアルデヒドと容易に反応して安定なアルコキシアミン、例えばWebb 等、Bioconjugate Chem. 1:96 (1990)に記載されたものが生成する。
【0128】
カルボキシル基と反応できる反応性部分の例としては、高い特異性で反応してエステル基を生成するジアゾアセテートエステルおよびジアゾアセトアミド等のジアゾ化合物、例えばHerriot, Adv. Protein Chem. 3:169 (1947)に記載されたものが挙げられる。O-アシルウレア形成とそれに続くアミド結合の形成を介して反応するカルボジイミド等のカルボキシル改変試薬も使用することができる。
【0129】
化合物(A)および/または化合物(B)内の官能基を、必要であれば、例えば更なる反応性もしくは選択性を付与するために、反応に先立って他の官能基に変換しても良いことは理解されるであろう。この目的のために有用な方法の例としては、以下のものが挙げられる:無水ジカルボン酸等の試薬を使用するアミンのカルボキシルへの変換;N-アセチルホモシステインチオラクトン、無水S-アセチルメルカプトコハク酸、2-イミノチオラン、もしくはチオール含有スクシンイミジル誘導体等の試薬を使用するアミンのチオールへの変換;α-ハロアセテート等の試薬を使用するチオールのカルボキシルへの変換;エチレンイミンまたは2-ブロモエチルアミン等の試薬を使用するチオールのアミンへの変換;カルボジイミド、続いてジアミン等の試薬を使用するカルボキシルのアミンへの変換;および塩化トシル等の試薬を使用するアルコールのチオールへの変換と、続いてチオ酢酸エステルとのエステル交換および酢酸ナトリウムを用いるチオールへの加水分解。
【0130】
化合物(A)の反応性化学基を更なる連結物質を導入することなく化合物(B)の反応性化学基に直接的共有結合させることに関連する、いわゆる長さ0のリンカー(zero-length linkers)は、必要であれば、本発明に従って用いることができる。
【0131】
しかしながら、最も一般的には、リンカーは、スペーサー要素によって接続された上記のような2個以上の反応性部分を含むであろう。このようなスペーサーの存在により、二官能性リンカーが化合物(A)および化合物(B)内の特定の官能基と反応することができ、その結果、2つの間に共有結合が生じる。リンカー中の反応性部分は同じであっても(ホモ二官能性リンカー)、また異なっていても良く(ヘテロ二官能性リンカー、または数種の異なる反応性部分が存在する場合にはヘテロ多官能性リンカー)、化合物(A)および化合物(B)間の共有結合をもたらし得る多様な試薬候補が提供される。
【0132】
リンカー中のスペーサー要素は典型的には直鎖もしくは分岐鎖からなり、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、C3-10アルクヘテロシクリル、またはC1-10ヘテロアルキルを挙げることができる。
【0133】
場合によって、リンカーは以下の式(XII)によって記載される:
G1-(Z1)o-(Y1)u-(Z2)s-(R30)-(Z3)t-(Y2)v-(Z4)p-G2 (XII)
式(XII)において、G1は化合物(A)およびリンカー間の結合であり;G2はリンカーおよび化合物(B)間の結合であり;Z1、Z2、Z3、およびZ4はそれぞれ独立してO、S、およびNR31から選択され;R31は水素、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、C3-10アルクヘテロシクリル、またはC1-7ヘテロアルキルであり;Y1およびY2はそれぞれ独立してカルボニル、チオカルボニル、スルホニル、またはホスホリルから選択され;o、p、s、t、u、およびvはそれぞれ独立して0または1であり;そしてR30はC1-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C2-6ヘテロシクリル、C6-12アリール、C7-14アルカリール、C3-10アルクヘテロシクリル、もしくはC1-10ヘテロアルキルであるか、またはG1-(Z1)o-(Y1)u-(Z2)s-を-(Z3)t-(Y2)v-(Z4)p-G2に連結する化学結合である。
【0134】
本発明のコンジュゲートの調製に有用なホモ二官能性リンカーの例としては、限定するものではないが、エチレンジアミン、プロピレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、およびポリカプロラクトンジオールから選択されるジアミンおよびジオールが挙げられる。
【0135】
使用例
本発明の方法、組成物、およびキットは、背中および首の痛み、癌の痛み、婦人科関連の痛みおよび陣痛、線維筋肉痛、関節炎および他のリウマチの痛み、整形外科関連の痛み(orthopedic pains)、疱疹後神経痛(post herpetic neuralgia)および他の神経障害性疼痛、鎌状赤血球クライシス(sickle cell crises)、間質性膀胱炎、尿道炎および他の泌尿器科関連の痛み、歯の痛み、頭痛、手術後の痛み、および処置性の痛み(すなわち注射、排膿処置、手術、歯科的処置、眼科的処置、関節鏡検査および他の医学的計測器の使用、美容整形外科的処置(cosmetic surgical procedures)、皮膚科的処置、骨折の固定、生検等に関連する痛み)を含む、数多くの状態のいずれかと関連する痛みを治療するために使用することができる。
【0136】
侵害受容器のあるサブクラスは痒みの感覚を仲介するため、本発明の方法、組成物、およびキットは、皮膚炎、感染症、寄生虫、虫刺され、妊娠、代謝障害、肝不全もしくは腎不全、薬剤反応、アレルギー反応、湿疹、および癌等の状態を有する患者における痒みを治療するために使用することもできる。
【0137】
痛みおよび機能の指標
本発明の方法、組成物、またはキットのいずれかの有効性を測定するために、測定指標を使用することができる。筋骨格、免疫炎症性および神経性の障害に関連した痛みの測定のための本発明の方法、組成物、およびキットにおいて有用な指標としては、視覚的アナログ評価スケール(visual analog scale)(VAS)、Likert スケール、カテゴリ的疼痛スケール(categorical pain scales)、記述式(descriptors)、Lequesne指標、WOMAC指標およびAUSCAN指標が挙げられ、いずれも当分野において周知であるる。こうした指標を用い、痛み、痒み、機能、硬直度、またはその他の変量を測定することができる。
【0138】
視覚的アナログ評価スケール(VAS)は、一元的な量的尺度を提供する。VASは一般的に距離表示、例えば規則的な距離間隔で引かれた刻み目(例えば10個の1cm間隔)を有する線図を利用する。例えば、患者は痛みまたは痒みの感覚に最も合致する線上のスポット(線の一方の端が「痛みなし」(スコア0cm)または「痒みなし」に対応し、線の他方の端が「耐え難い痛み」または「耐え難い痒み」(スコア10cm)に対応する)を選択することによって、痛みまたは痒みの感覚を評価するように求められ得る。この手法によって、患者がいかなる痛みまたは痒みを経験しているのかについての量的な情報を得るための簡便および迅速なアプローチが提供される。VASスケールおよびその使用は、例えば米国特許第6,709,406号および同第6,432,937号に記載されている。
【0139】
Likertスケールは同様に一元的な量的尺度を提供する。一般に、Likertスケールは低い値(例えば痛みのないことを意味する0)から高い値(例えば極度の痛みを意味する7)までの個々の整数値を有する。痛みを訴える患者は、この低い値と高い値の間の数を選択して経験する痛みの程度を表すように求められる。Likertスケールおよびその使用は、例えば米国特許第6,623,040号および同第6,766,319号に記載されている。
【0140】
Lequesne指標および西オンタリオ・マクマスター大学(Western Ontario and McMaster Universities)(WOMAC)変形性関節症指標は、自己記入型の質問表を使用してOA患者の膝および腰の痛み、機能、および硬直度を評価する。膝および腰はいずれもWOMACに含まれているが、Lequesne質問表では膝について1つ、腰について別個のものがある。これらの質問表は、VASまたはLikertと比較してより多くの情報量が含まれるため、有用である。WOMAC指標およびLequesne指標の質問表はいずれも、外科的固定(surgical settings)(例えば膝および腰の関節形成)を含め、OAにおいて広範囲に効果が実証されている。これらの測定基準の特徴は大きく異なるものではない。
【0141】
AUSCAN(オーストラリア・カナダにおける手の関節炎(Australian-Canadian hand arthritis))指標は、妥当で信頼性があり、かつ反応を示す(valid, reliable, and responsive)患者の自己報告型の質問表を用いる。一つの例では、この質問表には3つの側面からの15個の質問が含まれる(痛み、5個の質問;硬直度、1個の質問;および身体機能、9個の質問)。AUSCAN 指標は、例えばLikertまたはVASスケールを使用する場合がある。
【0142】
痛みの測定のために本発明の方法、組成物、およびキットにおいて有用な指標としては、疼痛記述式スケール(the Pain Descriptor Scale)(PDS)、視覚的アナログ評価スケール(VAS)、口頭式評価スケール(the Verbal Descriptor Scales)(VDS)、数値疼痛強度スケール(the Numeric Pain Intensity Scale)(NPIS)、神経障害性疼痛スケール(the Neuropathic Pain Scale)(NPS)、神経障害性疼痛症候群インベントリ(the Neuropathic Pain Symptom Inventory)(NPSI)、現在の痛みインベントリ(the Present Pain Inventory)(PPI)、老人の疼痛尺度(the Geriatric Pain Measure)(GPM)、マッギル疼痛質問表(the McGill Pain Questionnaire)(MPQ)、平均疼痛強度(記述式識別スケール)(mean pain intensity (Descriptor Differential Scale))、数値疼痛スケール(numeric pain scale)(NPS)、包括的評価スコア(global evaluation score)(GES)、簡易版マッギル疼痛質問表(the Short-Form McGill Pain Questionnaire)、ミネソタ多面人格インベントリ(the Minnesota Multiphasic Personality Inventory)、疼痛プロファイルおよび多面的疼痛インベントリ(the Pain Profile and Multidimensional Pain Inventory)、小児健康調査表(the Child Heath Questionnaire)、および小児評価質問表(the Child Assessment Questionnaire)が挙げられる。
【0143】
痒みは主観的な尺度で測定することができる(VAS、Lickert、記述式)。もう1つのアプローチは、振動変換器または運動感受性計測器(movement-sensitive meters)を使用して痒みと客観的に相関する引っかき傷を測定するものである。
【0144】
スクリーニング
侵害受容器および掻痒受容器で発現し、そこに存在する特定のチャネルが、電位依存性イオンチャネルを阻害する化合物の標的細胞中への侵入を可能にするという我々の発見によって、化合物が痛みおよび痒みの治療のために有用であると同定するための方法が提供される。一例において、侵害受容器または掻痒受容器を、TRPV1、TRPA1、TRPM8および/またはP2X(2/3)受容体を活性化する1種、2種、またはそれ以上の化合物と接触させる。同じ侵害受容器または掻痒受容器を、(例えばホールセル・パッチクランプ技法におけるマイクロピペットを介した細胞内投与によって)侵害受容器の内側から作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、(化合物が細胞膜を通過できないために)細胞の外側から作用させた場合には阻害しない第2の化合物とも接触させる。侵害受容器または掻痒受容器におけるイオンチャネルの阻害によって、細胞の活動電位の伝播および/または二次ニューロンへのシグナル伝達が阻害されて、いずれの場合も痛みのシグナルの伝達が遮断されることになり、従って、第2の化合物が侵害受容器における電位依存性イオンチャネルを阻害できる場合に、その化合物がTRPV1、TRPA1、TRPM8および/またはP2X(2/3)受容体を活性化する化合物と組み合わせて使用して痛みまたは痒みを治療することができるものとして同定される。
【実施例】
【0145】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図するものであり、本発明を制限することを意図するものではない。
【0146】
実施例1
本発明者らは、成体ラットDRGニューロンからのホールセル電圧固定記録法を使用して、電位依存性ナトリウムチャネルを通した電流を記録した。侵害受容器を選択するために、小ニューロン(24±5μm;n=25)から記録をとり、1μMカプサイシンの短時間(1秒)投与によって、TRPV1受容体の発現についてニューロンを試験した。試験した小ニューロン25個中25個において、カプサイシンによって持続的な(10±3秒)内向きの電流が生じ(図1A、上段パネル)、そのニューロンが侵害受容器であることを裏付けた。ナトリウム電流は、-70mVの保持電位からの脱分極化ステップによって誘発された。5mM QX-314の単独投与(bath application)は、ナトリウム電流に対して最小限の効果を有した(5分間の投与後に3±0.5%の低下、n=25)(図1A、左;b)。カプサイシン単独投与(1μM、1〜10分間)ではナトリウム電流が中程度に低下した(31±9%の阻害、n=25)。しかしながら、QX-314をカプサイシンと共に投与した場合、ナトリウム電流はほとんど完全に消失した(98±0.4%の阻害、n=25)(図1A、左;b)。ナトリウム電流の遮断がTRPV1受容体を介したQX-314の段階的侵入から生じるのであれば予測されるように、阻害は数分間にわたって大きくなり、15分後にほとんど完了した(図1C)。
【0147】
共投与したカプサイシンおよびQX-314のナトリウム電流阻害能がTRPV1受容体を発現する細胞に対して選択的であるか否かを試験するために、DRG大ニューロン(細胞体直径>40μm)についても記録した(図1A、右)。これらのニューロンにおいて、カプサイシンは内向きの電流を誘起しなかった(10個中10個)。直径の小さいニューロンについては、QX-314の単独投与ではナトリウム電流に対して効果がないか、ほとんどなかった(電流は10分間の投与後に8±4%増大した、n=10)。直径の小さいニューロンと異なり、直径の大きなニューロンにおけるナトリウム電流に対してカプサイシンは効果がなかった(10分間の投与後に増加平均3±2%、n=10)。最も明白なことに、QX-314およびカプサイシンの共投与は、直径の大きなニューロンにおけるナトリウム電流に対して効果がないか、ほとんどなかった(10分間の投与後に9±5%の低下、n=10)。従って、QX-314およびカプサイシンの共投与によってナトリウム電流を阻害できる能力は、QX-314がTRPV1受容体を通ってニューロン内に侵入するとすれば予測されるように、TRPV1受容体を発現するニューロンに高度に選択的である。
【0148】
本発明者らはまた、生理的内部および外部溶液を使用して、電流固定におけるQX-314およびカプサイシンの共投与の効果を検討した。電圧固定実験の結果から予測されたように、QX-314およびカプサイシンの共投与により、直径の小さいニューロンの興奮性が阻害され、活動電位の生成が完全に遮断された(図2、15個のニューロン中15個)。
【0149】
次に、カプサイシンおよびQX-314の組み合わせがin vivoにおける痛みの挙動を低減させることができるか否かを検討した。成体ラットの後脚へのQX-314単独注射(2%溶液10μL)では、von Frey hairによって測定して、引っ込め応答(withdrawal response)を誘発するための機械的閾値について有意な効果がなかった(p=0.33)(図3A)。カプサイシン単独(10μg/10μL)では侵害受容器に対するカプサイシンの直接的刺激作用を反映して自発的なフリンチング(flinching)を誘発し(5分間で40±6回)、15分および30分後、予測した通り、機械的閾値が有意に低下した(p<0.05)(図3a)。カプサイシンおよびQX-314を共に注射すると、注射後の最初の5分間にフリンチングの回数は有意には変わらなかった(30±7、p=0.24)。しかしながら、この組み合わせによって、カプサイシン単独で正常に起こる後期の機械的閾値の低下が完全になくなった(p=0.14、15分後に測定)。更に、カプサイシンおよびQX-314を組み合わせて注射した60分後、機械的閾値は実際に増大し、注射2時間後にはベースラインの値の2倍に達した(46±5g vs. 24±3g、p<0.05)。3匹の動物で、最高値のvon Freyフィラメント(57g)に対してさえも脚は感受性を有さなかった。機械的閾値の上昇は約3時間持続し、次いで4時間までに次第に基底レベルに戻った(図3A)。
【0150】
同様の効果は、標準化された有害輻射熱刺激に対する感受性を検討して観察された。意外なことに、QX-314単独では注射30分後における熱応答潜時(latency)が一時的に低下した(30分後でp<0.01;他の全ての時点でp>0.05)(図3B)。カプサイシン(10μg/10μL)単独でも予想通り熱応答潜時が低下した(15分および30分後でp<0.01)(図3B)。しかしながら、QX-314およびカプサイシンの単独投与はいずれも熱感受性を増大させたが、QX-314およびカプサイシンの共投与では有害な熱に対して動物が進行的に麻酔され、注射2時間後には25秒間与えられた有害輻射熱に対して反応する動物がいなかった。この効果は、注射後4時間残存した(図3B)。
【0151】
次に、カプサイシンおよびQX-314の共投与を使用して、リドカインによって局所麻酔が生じる際に観察される運動効果なしに局所的神経遮断を生じさせることができるか否かを試験した。運動効果は、0(効果なし;正常な歩行および四肢の配置)、1(四肢の動きはあるが配置および動きが異常)または2(四肢の動きの完全な消失)のスケールに従って記録した。坐骨神経に近接して2%リドカイン(局所的神経遮断の標準的濃度)を注射すると、15分後にアッセイして下肢の完全な麻痺が生じ(6匹中6匹)、30分後に完全または部分的麻痺がまだ残っていた(平均運動スコア1.67±0.2、p<0.01;図4C)。触覚刺激で誘発される踏み直り反射(placing reflex)の完全な消失が全ての動物で少なくとも30分間持続し、これらの感覚および運動の不全は45分間までに完全に回復した(図4)。麻痺が生じている間、知覚感受性(sensory sensitivity)をアッセイすることはできなかった。QX-314を用いたパイロット実験において、リドカインよりもずっと低濃度のQX-314を用いてカプサイシンと共に投与した場合に、有効な局所麻酔を行うことができることが明らかとなった。QX-314(0.2%、100μL)単独の注射では運動機能に影響はなく(6匹中6匹;図4C)、また機械的閾値(p=0.7)または熱応答潜時(p=0.66)のいずれに対しても有意な効果がなかった(図4A、4B)。神経の近くにカプサイシン単独(0.5μg/μL、100μL)を注射した場合、注射後の30分間、機械的閾値(p<0.05)および熱応答潜時(p<0.05)の双方が低下した(図4A、4B)。この間、6匹中4匹で、注射された脚の持続的屈曲が示され、移動運動のわずかな機能障害につながった(平均運動スコア0.7±0.2、p<0.01)が、膝および腰の動き、並びに踏み直り反射は変化がなかった。この感受性および運動性の変化は、持続的屈曲反射を生じさせる侵害受容器の軸索の活性化を反映するものと解釈される。坐骨神経領域近傍にQX-314およびカプサイシンを共投与するために、QX-314が細胞外に存在し、TRPV1チャネルが活性化すると速やかに該チャネルに侵入できる状態となるであろうという構想によって、最初にQX-314を注射し、10分後にカプサイシンを注射した。実際に、QX-314注射を先に行った場合、カプサイシン注射に対して挙動応答はないか、もしくはほとんどなく、この挙動応答から、有害刺激に対して有効な麻酔がなされていることが示された。機械的閾値では非常に顕著な上昇があり、全ての動物が最も堅いvon Frey hairに対して反応を示さず(57g;vs. 注射前の刺激に対する引っ込め反射は平均して15.2±3.4;p<0.01、n=6)、また熱的応答潜時も同様であった(22.3±2.3秒 vs. 14.9±0.4秒、p<0.05、n=6)。これらの変化は、機械的刺激に関してはカプサイシン注射の15分後、熱刺激に関しては30分後に明らかであり、90分間持続した(図4A、4B)。6匹の動物中5匹は運動不全が全くなく(平均運動スコア0.17±0.17、p=0.34)(図4C)、踏み直り反射の変化もなかった。1匹の動物において、カプサイシンを単独で注射した場合に観察されたものと同様の持続的な屈曲が示されたが、より一過性であった。
【0152】
方法
電気生理学
6〜8週齢のSprague-Dawleyラットから後根神経節を取り出し、1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Sigma)を含有するダルベッコ最小必須培地中に置き、次いで5mg/ml コラゲナーゼ、1mg/ml Dispase II(Roche, Indianapolis, IN)で90分間処理し、0.25%トリプシンで7分間処理、続いて2.5%トリプシンインヒビターを添加した。細胞をDNAase I インヒビター(50U)の存在下で破砕し、15%BSA(Sigma)を通して遠心分離し、1mlのNeurobasal medium(Sigma)、10μM AraC、NGF(50ng/ml)およびGDNF(2ng/ml)中に再懸濁し、ポリリシン(500μg/ml)およびラミニン(5mg/ml)でコーティングした35mmの組織培養ディッシュ(Becton Dickinson)に、ウェルあたり8000〜9000個播種した。培養物を37℃、5%二酸化炭素でインキュベートした。播種後48時間以内に記録をとった。侵害受容器様として選択された小ニューロンの平均サイズは23±6μm(n=50)であり、大ニューロンの平均サイズは48±8μm(n=10)であった。
【0153】
ホールセル電位固定または電流固定記録は、Axopatch 200A増幅器(Axon Instruments, Union City, CA)および電気抵抗が1〜2MΩのパッチピペットを使用して行った。電位固定記録のために、ピペットのキャパシタンスはシャンクをパラフィルムで包むか、またはシャンクをSylgard (Dow Corning, Midland, MI)でコーティングすることによって低減させた。細胞のキャパシタンスについては増幅器の回路を使用して補正し、線状漏れ電流はP/4手順を使用して差し引いた。直列抵抗(通常3〜7MΩであり、常に 10MΩ未満)は80%まで補正した。電圧固定記録は、カリウムおよびカルシウム電流を遮断することによってナトリウム電流を単離するために設計された溶液を使用し、外部のナトリウムを減少させて電圧固定を改善した。ピペット溶液は110mM CsCl、1mM CaCl2、2mM MgCl2、11mM EGTA、および10mM HEPESであり、pHは25mMまでのCsOHで7.4に調整した。外部溶液は、60mM NaCl、60mM 塩化コリン、4mM KCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2、0.1mM CdCl2、15mM 塩化テトラエチルアンモニウム、5mM 4-アミノピリジン、10mM グルコース、および10mM HEPESであり、pHはNaOHで7.4に調整した。液間電位差が小さかった(-2.2mV)ため、補正は行わなかった。
【0154】
電流固定記録は、Axopatch 200A増幅器の高速電流固定モードを使用して行った。ピペット溶液は135mM グルコン酸カリウム;2mM MgCl2;6mM KCl;10mM HEPES;5mM Mg ATP;0.5mM Li2GTP;(KOHでpH=7.4に調整)とした。外部溶液は、145mM NaCl;5mM KCl;1mM MgCl2;2mM CaCl2;10mM HEPES;10mM グルコース;(pHはNaOHで7.4に調整)とした。膜電位は-15mVの液間電位のために補正した。
【0155】
コマンドプロトコルの作成およびデータのデジタル化には、pCLAMP 8.2 ソフトウェアを組み込んだDigidata 1200 A/Dインターフェース(Axon Instruments, Union City, CA)を使用した。電圧固定電流記録は2kHzの低域通過フィルターを通し、電流固定記録は10kHzのフィルターを通した(-3dB、4 pole Besselフィルター)。
【0156】
QX-314(5mM)、カプサイシン(1μMまたは500nM)、またはこれらの組み合わせは、ニューロンから約200〜250μmにおいた特注の多胴式(multibarrel)急速薬剤送達システムを使用して投与した。溶液の交換は1秒未満で完了させた。
【0157】
挙動
足底内注射(intraplantar injections)のために、まずラットを操作に慣れさせ、処置に対して知らされていない(blind)実験者によって試験を実施した。左の後脚にビヒクル(20%エタノール、5%Tween 20(生理食塩水中)、10μL)、カプサイシン(1μg/μL)、QX-314(2%)またはカプサイシンとQX-314の混合物の足底内注射を行い、von Frey hairおよび輻射熱を用いて機械的および熱的感受性をそれぞれ測定した。
【0158】
坐骨神経への注射のために、まず10日間かけて動物を操作に慣れさせた。リドカイン(0.2%もしくは2%、100μL);QX-314(0.2%、100μL)単独;カプサイシン(100μL中50μg)単独、またはQX-314に続けてカプサイシン(間隔10分)を、股関節の下の坐骨神経領域内に注射した。機械的および熱的閾値は、von Freyフィラメントおよび輻射熱を使用して測定した。注射された脚の運動機能を、以下の格付けスコア:0=なし;1=部分的遮断;および2=完全遮断を用い、15分毎に評価した。歩行、よじ登り、ロッド上の歩行および踏み直り反射について調べた。運動遮断の格付けは、歩行が正常であり、四肢の脱力が観察されない場合に「なし」とし;四肢の動きは可能だが動きが異常であり、正常な姿勢を維持できない場合に「部分的遮断」とし;四肢が弛緩し、四肢の牽引に対する抵抗が無くなった場合に「完全遮断」とした。全ての実験は条件を知らない実験者が行った。
【0159】
統計解析
統計データは、Students t検定または一元配置分散分析(one-way ANOVA)、続いて適切な場合はダネット検定(Dunnett’s test)を使用して解析した。運動スコア付けについては、リドカイン0.2%の注射後に得られたデータをダネット検定のための対照として使用した。データは平均±SEMとして表す。
【0160】
実施例2
我々は、オイゲノール(C10H12O2)、すなわちアリル鎖置換グアヤコール、2-メトキシ-4-(2-プロペニル)フェノール(クローブオイル中の活性成分であり、TRPV1受容体の非刺激性アゴニスト)が、TRPV1チャネルを活性化することによって後根神経節ニューロンへのQX-314の侵入を促進することも示した。図5は後根神経節小ニューロンにおけるナトリウムチャネル電流の電圧固定記録を示す。このデータから、オイゲノール単独ではナトリウム流に対して穏やかな阻害効果(10〜20%阻害)を有することが示される。オイゲノールおよびQX-314の共投与によって、7分後に完了し得る進行的遮断が生じる。同様の結果が得られた10回の実験のうち、代表的な2回の例を示す。上記したように、外側からのQX-314単独投与では効果がないが、内側からのQX-314投与でナトリウムチャネルが遮断される。従って、これらの実験から、オイゲノールがTRPV1チャネルを活性化することによって後根神経節ニューロンへのQX-314の侵入を促進することが示される。
【0161】
実施例3
図6は、TRPAアゴニストのマスタードオイル(MO)(50μM)およびQX-314(5mM)の共投与の結果を示す。MO単独ではナトリウム電流を20〜30%低下させ、およそ3分後にプラトーに達する。MOおよびQX-314を共投与すると、ナトリウム電流が劇的に低下した。
【0162】
他の実施形態
本発明の記載した方法およびシステムの種々の改変および変形が、本発明の範囲および精神から逸脱することなしに、当業者には明らかであろう。本発明を特定の望ましい実施形態と関連付けて記載したが、特許を受けようとする本発明はこうした特定の実施形態に過度に限定されるべきでないことは理解されるべきである。実際、医学、免疫学、薬学、内分泌学、または関連の分野における通常の技術者には明らかである、本発明を実施するために記載した方法の種々の改変が、本発明の範囲内のものであることが意図される。
【0163】
本明細書中で言及した全ての文献は、それぞれの独立した文献が具体的かつ個々に参照によって組み込まれるのと同じ程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者での痛みまたは痒みを治療する方法であって、該患者に、
(i)侵害受容器および/または掻痒受容器(pruriceptor)上に存在するチャネル形成型受容体を活性化する第1の化合物;および
(ii)チャネルの内側から作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側から作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない第2の化合物であって、該チャネル形成型受容体が活性化しているときに該受容体を通って侵害受容器または掻痒受容器に侵入することができるものである第2の化合物
を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項2】
前記第1の化合物が、TRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、およびTRPM8から選択されるチャネル形成型受容体を活性化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の化合物が、カプサイシン、オイゲノール、アルバニル(arvanil)(N-アラキドノイルバニルアミン(arachidonoylvanillamine))、アナンダミド、2-アミノエトキシジフェニルボレート(2APB)、AM404、レシニフェラトキシン、ホルボール12-フェニルアセテート13-アセテート20-ホモバニレート(PPAHV)、オルバニル(NE 19550)、OLDA(N-オレオイルドーパミン)、N-アラキドニルドーパミン(NADA)、6'-ヨードレシニフェラトキシン(6'-IRTX)、C18 N-アシルエタノールアミン、12-ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸等のリポキシゲナーゼ誘導体、インヒビターシステインノット(inhibitor cysteine knot)(ICK)ペプチド(バニロトキシン(vanillotoxins))、ピペリン、MSK195 (N-[2-(3,4-ジメチルベンジル)-3-(ピバロイルオキシ)プロピル]-2-[4-(2-アミノエトキシ)-3-メトキシフェニル]アセトアミド)、JYL79 (N-[2-(3,4-ジメチルベンジル)-3-(ピバロイルオキシ)プロピル]-N’-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)チオウレア)、ヒドロキシ-α-サンショオール、2-アミノエトキシジフェニルボレート、10-ショーガオール、オレイルジンゲロール(oleylgingerol)、オレイルショーガオール、およびSU200 (N-(4-tert-ブチルベンジル)-N’-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)チオウレア)から選択されるTRPV1受容体のアクチベーターである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の化合物が、シンナムアルデヒド、アリル-イソチオシナネート、ジアリルジスルフィド、イチリン、シナモンオイル、ウィンターグリーンオイル、クローブオイル、アクロレイン、ヒドロキシ-α-サンショオール、2-アミノエトキシジフェニルボレート、4-ヒドロキシノネナール、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、マスタードオイル、および3'-カルバモイルビフェニル-3-イルシクロヘキシルカルバメート(URB597)から選択されるTRPA1受容体のアクチベーターである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の化合物が、ATP、2-メチルチオ-ATP、2'および3'-O-(4-ベンゾイルベンゾイル)-ATP、およびATP5'-O-(3-チオトリホスフェート)から選択されるP2X受容体のアクチベーターである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の化合物が、メントール、イシクリン(iciclin)、ユーカリプトール、リナロール、ゲラニオール、およびヒドロキシシトロネラールから選択されるTRPM8受容体のアクチベーターである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の化合物が電位依存性ナトリウムチャネルを阻害する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の化合物が、QX-314、N-メチル-プロカイン、QX-222、N-オクチル-グアニジン、9-アミノアクリジン、パンクロニウム、または細胞の内側に存在する場合に電位依存性ナトリウムチャネルを阻害する他の低分子量の荷電分子である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の化合物が電位依存性カルシウムチャネルを阻害する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物がD-890(第四級メトキシベラパミル)、CERM 11888(第四級ベプリジル(bepridil))、または細胞の内側に存在する場合に電位依存性カルシウムチャネルを阻害する他の低分子量の荷電分子である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の化合物が、リルゾール、メキシリチン、フェニトイン、カルバマゼピン、プロカイン、トカイニド、プリロカイン、アルチカイン、ブピビカイン(bupivicaine)、メピビシン(mepivicine)、ジイソピラミド、ベンシクラン、キニジン、ブレチリウム、リファリジン、ラモトリジン、フルナリジン、およびフルスピリレンから選択される化合物の第四級アミン誘導体または他の荷電誘導体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記痛みが神経障害性疼痛である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記痛みが炎症性疼痛である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記痛みが侵害性疼痛(nociceptive pain)である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記痛みが処置性疼痛(procedural pain)である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
以下のもの:
(i)侵害受容器および/または掻痒受容器上に存在するチャネル形成型受容体を活性化する第1の化合物;および
(ii)チャネルの内側から作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側から作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない第2の化合物であって、該チャネル形成型受容体が活性化しているときに該受容体を通って侵害受容器または掻痒受容器に侵入することができるものである第2の化合物;
を含有する組成物。
【請求項17】
前記第1の化合物がTRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、およびTRPM8から選択される受容体を活性化する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
経口、非経口(例えば静脈内、筋肉内)、直腸、皮膚、皮下、局所、経皮、舌下、鼻内、膣内、くも膜下、硬膜外、もしくは眼への投与、あるいは注射、吸入、または鼻もしくは口腔粘膜との直接的接触のために製剤化されたものである、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
細胞において1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害する方法であって、該細胞を、以下のもの:
(i)侵害受容器および/または掻痒受容器上に存在するチャネル形成型受容体を活性化する第1の化合物;および
(ii)チャネルの内側から作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側から作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない第2の化合物であって、該チャネル形成型受容体が活性化しているときに該受容体を通って侵害受容器または掻痒受容器に侵入することができるものである第2の化合物
と接触させるステップを含む、上記方法。
【請求項20】
前記第1の化合物がTRPV1、P2X(2/3)、TRPA1、およびTRPM8から選択される受容体を活性化する、請求項20に記載の方法。
【請求項21】
化合物が痛みまたは痒みの治療に有用であると同定するための方法であって、以下のステップ:
(a)TRPV1、TRPA1、TRPM8、またはP2X(2/3)発現ニューロンの外側を:
(i)TRPV1、TRPA1、TRPM8またはP2X(2/3)受容体を活性化する第1の化合物;および
(ii)チャネルの内側から作用させた場合に1以上の電位依存性イオンチャネルを阻害するが、チャネルの外側から作用させた場合には該チャネルを実質的に阻害しない第2の化合物
と接触させるステップ;および
(b)該第2の化合物が該ニューロンにおいて該電位依存性イオンチャネルを阻害するか否かを決定するステップ、
を含み、該第2の化合物による該電位依存性イオンチャネルの阻害により、該第2の化合物を痛みまたは痒みの治療に有用な化合物として同定する、上記方法。
【請求項22】
リルゾール、メキシリチン、フェニトイン、カルバマゼピン、プロカイン、アルチカイン、ブピビカイン、メピビカイン、トカイニド、プリロカイン、ジイソピラミド、ベンシクラン、キニジン、ブレチリウム、リファリジン、ラモトリジン、フルナリジン、およびフルスピリレンから選択される化合物の第四級アミン誘導体または他の恒久的もしくは一時的荷電誘導体。
【請求項23】
前記化合物が式(I)〜(X)のいずれかの式を有する、請求項22に記載の第四級アミン誘導体または他の荷電誘導体。
【請求項24】
以下のもの:
(i)リルゾール、メキシリチン、フェニトイン、カルバマゼピン、プロカイン、アルチカイン、ブピビカイン、メピビカイン、トカイニド、プリロカイン、ジイソピラミド、ベンシクラン、キニジン、ブレチリウム、リファリジン、ラモトリジン、フルナリジン、およびフルスピリレンから選択される化合物の第四級アミン誘導体または他の恒久的もしくは一時的荷電誘導体、および
(ii)製薬上許容される賦形剤
を含有する医薬組成物。
【請求項25】
前記化合物が式(I)〜(X)のいずれかの式を有する、請求項24に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−510227(P2010−510227A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537235(P2009−537235)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/024174
【国際公開番号】WO2008/063603
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】