説明

痴呆の処置のためのグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト

【課題】痴呆を処置するための方法および薬剤を提供することを本発明の課題と
する。
【解決手段】上記課題は、コルチゾールのそのレセプターへの結合を阻害する
薬剤が痴呆を処置するための方法に使用され得ることを発見し、上記課題が解決
された。ミフェプリストンなどのグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト
が、本発明において使用され得る。本発明はまた、ヒトにおける痴呆を処置する
ためのキット(グルココルチコイドレセプターアンタゴニストおよびグルココル
チコイドレセプターアンタゴニストの投与の適応症、投薬量および計画を教示す
る使用説明書を含む)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願番号第60/085,703号(1998年5月15日
に出願)のPCT出願である。前述の出願は、その全体において、そして全ての
目的のために、本明細書中で参考として明示的に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、精神医学の分野に関する。特に本発明は、コルチゾールの
そのレセプターへの結合を阻害する薬剤が痴呆を処置する方法に使用され得ると
いう発見に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
痴呆は、思考し、そして記憶する能力の損失である。この状態は、数千の個体
、特に高齢者を悩まし、そして本発明者らの集団の年齢でより一般的になってき
ている。代表的には、認知力および記憶の損失は、遅くかつ進行性であり、多く
の月または年がかかる。現在までに、このプロセスを停止、遅延または逆転させ
得る効果的な処置が存在しない。
【0004】
何が痴呆を引き起こすのかが議論になっており、このことは、原因および処置
の方法の多くの異なるかつ対照的な提唱された理論を生じた。痴呆は、一般に、
アルツハイマー病および多発脳梗塞性痴呆または血管性痴呆と関連する一方で、
痴呆はまた、種々の他の状態を伴って見られる。当業者は、一般に、脳ニューロ
ンの死または傷害、特に海馬の脳ニューロンの死または傷害が痴呆を引き起こす
ことを提唱する理論に同意する。痴呆はまた、コルチゾールのレベルの増大と関
連している。この高コルチゾール血症が脳の損傷を引き起こすか、または脳損傷
の結果であるかに関して矛盾する証拠が存在する。例えば、高コルチゾール血症
により特徴付けれる全ての状態(例えば、クッシング症候群)が、痴呆と関連す
るわけではない。1つのグループは、脳の損傷がコルチゾール調節系を過剰活性
化し得、高コルチゾール血症を引き起こすと提唱した。彼らは、コルチゾールの
上昇が痴呆の生物学的マーカーであり得、そして痴呆の診断に価値を有し得ると
いうことを示唆した。彼らはまた、この活性化が一般に認知低下自体に関与し、
痴呆の病因に関与しないことを示唆した(非特許文献1)。別の理論は、コルチ
ゾールレベルの増大が、特に海馬(複雑な情報および記憶のプロセシングおよび
一時的な貯蔵に対する中枢であると考えられる脳の構造)において神経毒性であ
ると提唱する(Sapolsky(1994)Ann.NY Acad.Sci.
746:249〜304);Silva(1997)Annu.Rev.Gen
et.31:527〜546)。海馬の萎縮は、将来的なアルツハイマー病の前
兆であると提唱されている(de Leon(1997)Int.Psycho
geriatr.9補遺1:183〜190)。
【0005】
なお別の理論は、本発明者らの発明とちょうど反対である。本発明者らは、コ
ルチゾール活性の阻害(レセプターアンタゴニストを使用する)が痴呆により誘
導される脳の損傷を予防することを提唱する。直接的な対比において、代替的な
理論は、痴呆を生じる脳の損傷が炎症(例えば、自己免疫において見られる)に
より引き起こされるということを提唱する。これに基づくと、これは、アルツハ
イマー病が病理学的な脳組織(例えば、ジストロフィー軸索を含む老人斑、τタ
ンパク質および凝集したβアミロイド沈着;Gasiorowski(1997
)Med.Hypotheses 49:319〜326;Hull(1996
)Neurobiol.Aging.17:795〜800)に対して指向され
た自己免疫反応であることを提唱する。従って、痴呆が、炎症により媒介される
神経変性疾患であると仮定すると、アルツハイマー病は、合成コルチゾールでの
免疫抑制により処置される。進行中の臨床研究は、プレドニゾン(合成コルチゾ
ール(アゴニスト)))を使用している(Aisen(1998)Drugs
Aging 12:1〜6;Aisen(1997)Gerontology
43:143〜149;Aisen(1996)Mol.Chem.Neuro
pathol.28:83〜88)。他の抗炎症薬物(例えば、ヒドロキシクロ
ロキンおよびコルヒチン)もまた、アルツハイマー病に対する処置として臨床試
験を受けている(Aisen(1998)前出)。
【0006】
本分野における混乱に加えて、痴呆およびアルツハイマー病を処置するいくつ
かのさらなる理論および方法が、追求されている。当業者は、痴呆が記憶を誘導
する神経伝達物質を産生する細胞(前脳のコリン作用性ニューロン)の死により
引き起こされると考えている。従って、アルツハイマー病はまた、記憶を改善す
る努力において、コリン作用性アゴニストを使用して処置されている(Asth
ana(1996)Clin.Pharmacol.Ther.60:76〜2
82)。別のグループは、エストロゲンを使用して記憶を誘導するニューロンの
成長を促進することを提唱する。痴呆を処置するなお別の理論は、ビタミンE(
α−トコフェロール)が神経細胞死を遅延させるので、ビタミンEを使用するこ
とを提唱する。神経成長因子は、同じ理由のために提唱されている。カルシウム
ブロッカー(例えば、ニモジピン(nimodipine))はまた、細胞内遊
離カルシウムの増大をブロックすることがニューロンの死のプロセスを遅らせ得
、そしてこの疾患の進行を遅延させ得ることに基づいて、アルツハイマー病に対
する処置として評価されている(Brodaty(1997)Med.J.Au
st.167:447〜449)。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Maeda(1991)Neurobiol Aging12:161〜163
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、現在までに、痴呆の病因または処置に関してコンセンサスが存在しな
いことは明らかである。本発明の前に、痴呆を処置するか、またはアルツハイマ
ー病または多発脳梗塞性痴呆のような疾患における認知低下の速度を減少させる
効果的な処置が存在しなかった。従って、痴呆に対する効果的かつ安全な処置、
特に、認知低下の速度および重篤度を低下させ得る痴呆に対する効果的かつ安全
な処置に対する大きな必要性が存在する。本発明は、これらの必要性および他の
必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、痴呆を処置するためのグルココルチコイドレセプターアンタゴニス
トの有効量を投与することによって、痴呆の症状を有するとして診断された個体
において、痴呆を処置する方法を提供する。1つの実施態様において、グルココ
ルチコイドレセプターアンタゴニストは、個体スコアがFolstein簡易精
神状態検査で30未満である場合に投与される。別の実施態様において、グルコ
コルチコイドレセプターアンタゴニストは、Folstein簡易精神状態検査
で約21〜29の間のスコアにより示されるように、個体がアルツハイマー病の
経過において初期であると診断される場合に投与される。痴呆は、アルツハイマ
ー病および多発脳梗塞性痴呆からなる群より選択される状態と関連し得る。痴呆
は、アルツハイマー病と関連し得、ここで痴呆がアポリポタンパク質E4対立遺
伝子の非存在またはアポリポタンパク質E4の発現の欠損に伴って起こる。
【0010】
1つの実施態様において、痴呆を処置する本発明の方法は、ステロイド骨格の
11−β位に少なくとも1つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含む
グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを使用する。ステロイド骨格の1
1−β位のフェニル含有部分は、ジメチルアミノフェニル部分であり得る。代替
的な実施態様において、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、ミフ
ェプリストンを含むか、または、グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト
は、RU009およびRU044からなる群より選択される。
【0011】
他の実施態様において、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、1
日当たり体重1kg当たり約0.5〜約20mg;1日当たり体重1kg当たり
約1〜約10mg;または1日当たり体重1kg当たり約1〜約4mgの量を毎
日投与される。投与は、1日当たり1回であり得る。代替的な実施態様において
、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与様式は、経口であるか、
または経皮適用によってか、霧状懸濁(nebulized suspensi
on)によってか、もしくはエアロゾルスプレーによってである。
【0012】
本発明はまた、ヒトにおける痴呆の処置のためのキットを提供し、このキット
は、グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト;およびグルココルチコイド
レセプターアンタゴニストの投与の適応症、投薬量および計画を教示する使用説
明書を含む。代替的な実施態様において、この使用説明書は、グルココルチコイ
ドレセプターアンタゴニストが1日当たり体重1kg当たり約0.5〜約20m
gの量、1日当たり体重1kg当たり約1〜約10mgの量、または1日当たり
体重1kg当たり約1〜約4mgの量を毎日投与され得ることを示す。この使用
説明書は、コルチゾール(coriticol)が痴呆を患う患者における認知
低下の速度に寄与し、そしてグルココルチコイドレセプターアンタゴニストが痴
呆を処置するために使用され得ることを示し得る。キットの使用説明書はさらに
、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストがアポリポタンパク質E4対立
遺伝子を有さない患者におけるアルツハイマー病の経過において初期の処置に使
用され得ることを示し得る。1つの実施態様において、このキットにおけるグル
ココルチコイドレセプターアンタゴニストはミフェプリストンである。このミフ
ェプリストンは、錠剤形態であり得る。
従って、本発明は、以下を提供する:
(項目1) 痴呆を処置するための有効量のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストを投与することによって、該痴呆の症状を有すると診断された個体において痴呆を処置する方法。
(項目2) 前記個体のスコアがFolstein簡易精神状態検査で30未満である場合、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが投与される、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記個体がFolstein簡易精神状態検査で約21〜29の間のスコアにより示される、アルツハイマー疾患の経過において初期である場合に、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが投与される、項目1に記載の方法。
(項目4) 前記痴呆が、アルツハイマー疾患および多発脳梗塞性痴呆からなる群より選択される状態と関連している、項目1に記載の方法。
(項目5) 前記痴呆がアルツハイマー疾患と関連しており、そしてアポリポタンパク質
E4対立遺伝子の非存在またはアポリポタンパク質E4の発現の欠失が随伴する、項目1に記載の方法。
(項目6) 前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、ステロイド骨格の11−β位に少なくとも1つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含む、項目1に記載の方法。
(項目7) 前記ステイロド骨格の11−β位のフェニル含有部分がジメチルアミノフェニル部分である、項目6に記載の方法。
(項目8) 前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストがミフェプリストンを含む、項目6に記載の方法。
(項目9) 前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、RU009およびRU044からなる群より選択される、項目6に記載の方法。
(項目10) 前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1日当たり体重1kg当たり約0.5mg〜約20mgの量で毎日投与される、項目1に記載の方法。
(項目11) 前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1日当たり体重1kg当たり約1mg〜約10mgの量で毎日投与される、項目10に記載の方法。
(項目12) 前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1日当たり体重1kg当たり約1mg〜約4mgの間の量で毎日投与される、項目11に記載の方法。
(項目13) 前記投与が1日当たり1回である、項目1に記載の方法。
(項目14) 前記投与の様式が経口である、項目1に記載の方法。
(項目15) 前記投与の様式が、経皮適用によってか、霧状懸濁によってか、またはエアロゾルスプレーによる、項目1に記載の方法。
(項目16) ヒトにおいて痴呆を処置するためのキットであって、該キットが、以下:
グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト;および、 該グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与の適応症、投薬量および計画を教示する使用説明書、を含む、キット。
(項目17) 前記使用説明書が、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが1日当たり体重1kg当たり約0.5mg〜約20mgの量で毎日投与され得るということを示す、項目16に記載のキット。
(項目18) 前記使用説明書が、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが1日当たり体重1kg当たり約1mg〜約10mgの量で毎日投与され得るということを示す、項目17に記載のキット。
(項目19) 前記使用説明書が、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが1日当たり体重1kg当たり約1mg〜約4mgの量で毎日投与され得るということを示す、項目18に記載のキット。
(項目20) コルチゾールが痴呆を患う患者における認知低下の速度に寄与すること、そして前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが痴呆を処置するために使用され得るということを、前記使用説明書が示す、項目16に記載のキット。
(項目21) 前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、アポリポタンパク質E4対立遺伝子を有さないアルツハイマー病の患者の経過において初期に、処置のために使用され得ることを、前記使用説明書が示す、項目16に記載のキット。
(項目22) 前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストがミフェプリストンである、項目16に記載のキット。
(項目23) 前記ミフェプリストンが錠剤形態である、項目16に記載のキット。
【0013】
本発明の性質および利点のさらなる理解は、本明細書の残りの部分、図面およ
び特許請求の範囲を参照することによって認識される。
【0014】
本明細書中で引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、本明細書によ
って、全ての目的のために参考として明白に援用される。
【0015】
(定義)
用語「処置(する)」とは、減退;緩和;症状の減少、または損傷、病理また
は状態を、患者に対してより耐用性があるようにする;変性または低下の速度に
おける遅延;変性の最終点をより衰弱しないようにする;患者の身体的または精
神的健康の改善;あるいは、いくつかの状況において、痴呆の発症の予防のよう
な、任意の客観的パラメータまたは主観的パラメータを含む、傷害、病理または
状態の処置または寛解における任意の徴候の成功をいう。症状の処置または寛解
は、身体的試験および/または精神医学的評価の結果を含む、客観的パラメータ
または主観的パラメータに基づき得る。例えば、本発明の方法は、認知低下の速
度またはその程度を遅延させることによって患者の痴呆を首尾よく処置する。
【0016】
用語「コルチゾール」とは、ヒドロコルチゾンともいわれる組成物のファミリ
ー、およびそれらの任意の合成アナログまたは天然アナログをいう。
【0017】
用語「痴呆」とは、American Psychiatric Assoc
iation:Diagnostic and Statistical Ma
nual of Mental Disorders、第4版、Washing
ton,D.C.、1994(「DSM−IV」)において定義されるような、
その最も広範な意味における精神医学的状態をいう。DSM−IVは、記憶にお
ける障害を含む、多発性の認知欠損により特徴付けられる「痴呆」を定義し、そ
して推定される病因に従って種々の痴呆を列挙する。DSM−IVは、以下に記
載されるように、痴呆および関連する精神医学的障害(アルツハイマー病および
多発脳梗塞性痴呆を含む)の診断、分類および処置に対する一般的に受けいられ
ている標準を示す。
【0018】
用語「アルツハイマー病の経過において初期」とは、Folstein簡易精
神状態検査において約21〜29の間の試験スコアにより客観的に測定され得る
、その初期状態におけるアルツハイマー病をいう。
【0019】
用語「Folstein簡易精神状態検査」とは、Flostein(197
5)「‘Mini−mental state.’An objective
and practical method for grading the
cognitive state of patients for the
clinician.」J.Psychiatr.Res.12:189〜1
98により記載されるような、簡易精神状態検査(MMSE)をいう。MMSE
は、痴呆の処置または寛解(すなわち、減退、緩和、症状の減少、変性または低
下の速度における遅延、発症の遅延または予防、あるいは患者の認知の健康の改
善)を客観的に評価するために使用され得る多くの試験のうちの1つである。
【0020】
用語「グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト」とは、グルココルチコ
イドレセプター(GR)アゴニスト(例えば、コルチゾール、またはGRに対す
るコルチゾールアナログ(合成もしくは天然))の結合を部分的または完全に阻
害(拮抗)する任意の組成物または化合物をいう。「グルココルチコイドレセプ
ターアンタゴニスト」はまた、アゴニストへのGRの結合と関連した任意の生物
学的応答を阻害する任意の組成物または化合物をいう。
【0021】
用語「グルココルチコイドレセプター(「GR」)とは、コルチゾールレセプ
ターとしてもまたいわれる細胞内レセプターのファミリーをいい、これは、コル
チゾールおよび/またはコルチゾールアナログに特異的に結合する。この用語は
、GRのアイソフォーム、組換えGRおよび変異したGRを含む。
【0022】
用語「ミフェプリストン」とは、(代表的には高度な親和性で)GRに結合す
る、ならびにGRレセプターに対する任意のコルチゾールまたはコルチゾールア
ナログの結合により開始/媒介される生物学的効果を阻害する、RU486、ま
たはRU38.486、あるいは17−β−ヒドロキシ−11−β−(4−ジメ
チル−アミノフェニル)−17−α−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−
ジエン−3−オン)、または11−β−(4ジメチルアミノフェニル)−17−
β−ヒドロキシ−17−α−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−
3−オン)ともいわれる組成物のファミリー、あるいはそれらのアナログをいう
。RU−486についての化学名は変化する;例えば、RU486は、11B−
[p−(ジメチルアミノ)フェニル]−17B−ヒドロキシ−17−(1−プロ
ピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;11B−(4−ジメチル−ア
ミノフェニル)−17B−ヒドロキシ−17A−(プロプ−1−イニル)−エス
トラ−4,9−ジエン−3−オン;17B−ヒドロキシ−11B−(4−ジメチ
ルアミノフェニル−1)−17A−(プロピニル−1)−エストラ−4,9−ジ
エン−3−オン;17B−ヒドロキシ−11B−(4−ジメチルアミノフェニル
−1)−17A−(プロピニル−1)−E;(11B,17B)−11−[4−
ジメチルアミノ)−フェニル]−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)
エストラ−4,9−ジエン−3−オン;および11B−[4−(N,N−ジメチ
ルアミノ)フェニル]−17A−(プロプ−1−イニル)−D−4,9−エスト
ラジエン−17B−オール−3−オンとも呼ばれている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明は、アゴニストに占有されているグルココルチコイドレセプター(GR
)により引き起こされる生物学的応答を阻害し得る薬剤が痴呆の処置のために効
果的であるという驚くべき発見に関する。痴呆の処置において(特にアルツハイ
マー型および多発脳梗塞性痴呆の一次変性痴呆の場合において)、本発明の方法
は、認知低下の速度または程度を遅延し得る。1つの実施態様において、本発明
の方法は、GRアンタゴニストとして作用する薬剤を使用して、痴呆を処置また
は寛解するために、GRとのコルチゾールの相互作用をブロックする。本発明の
方法は、正常なレベルまたは増大したレベルのコルチゾールまたは他のグルココ
ルチコイド(天然もしくは合成)のいずれかを伴う患者において、痴呆に罹患す
る患者における認知低下の速度を遅延するに効果的である。
【0024】
コルチゾールは、ステロイドであり、そして細胞内のグルココルチコイドレセ
プター(GR)に結合することによって作用する。コルチゾールの生物学的効果
(高コルチゾール血症により引き起こされる病理または機能不全を含む)は、レ
セプターアンタゴニストを使用して、GRレベルで調節および制御され得る。い
くつかの異なるクラスの薬剤は、GRアンタゴニストとして作用し得る(すなわ
ち、GRアゴニスト(天然アゴニストは、コルチゾールである)の結合の生理学
的効果をブロックし得る)。これらのアンタゴニストは、GRに結合することに
よって、GRに効果的に結合および/または活性化するアゴニストの能力をブロ
ックする組成物を含む。既知のGRアンタゴニストの1つのファミリー(ミフェ
プリストンおよび関連化合物)はヒトにおいて効果的かつ強力な抗グルココルチ
コイド剤である(Bertagna(1984)J.Clin.Endocri
nol.Metab.59:25)。ミフェプリストンは、高親和性で(解離の
K≦10-9Mで)GRに結合する(Cadepond(1997)Annu.R
ev.Med.48:129)。従って、本発明の1つの実施態様において、ミ
フェプリストンおよび関連化合物は、痴呆を処置するために使用される。
【0025】
痴呆は、記憶および認知における障害を含む、精神障害または精神医学的障害
として表され得る。従って、痴呆を診断し、そして処置の成功(すなわち、本発
明の方法により痴呆が処置される、成功および程度)を評価する種々の手段が使
用され得、そして少数の例示的な手段が以下に示される。これらの手段は、以下
に記載される客観的試験に加えて、古典的な主観的心理学的評価およびさらなる
客観的試験を含み得る。
【0026】
痴呆はまた、身体的(すなわち、化学的または構造的)変化により表される。
従って、主観的および客観的な記憶試験および認知試験に加えて、種々の実験的
手順が使用され得る。これらは、血液分析および組織学的分析ならびに脳機能分
析および脳構造分析を含む。これらは、痴呆を診断するために、そして本発明の
方法の有効性を評価するために使用され得る。身体的パラメータを評価する少数
の例示的手段を以下に示す。
【0027】
本発明の方法は、アゴニスト結合GRの生物学的効果を阻害するための任意の
手段の使用を含むので、痴呆を処置するために使用され得る例示的な化合物およ
び組成物もまた以下に示す。本発明の方法を実施する際の使用のためのGRアゴ
ニスト相互作用により引き起こされる生物学的応答をブロックし得るさらなる化
合物および組成物を同定するために使用され得る慣用的な手順もまた記載される
。本発明は、薬剤としてこれらの化合物および組成物を投与することを提供する
ので、GRアンタゴニスト薬物レジメを決定する慣用的な手段および本発明の方
法を実施する処方物を以下に示す。
【0028】
(1.痴呆を含む状態および疾病の診断および評価)
痴呆は、代表的には、記憶の障害を含む多発性の認知欠損により特徴付けられ
る。痴呆は、症候群と関連され得るか、または種々の疾患プロセスの要素であり
得る。痴呆の発症、痴呆のこれらの種々の形態または程度を診断する種々の手段
、および本発明の方法を使用する処置の成功を評価する種々の手段が存在する。
これらの手段は、慢性疾患(例えば、アルツハイマー病または多発脳梗塞性痴呆
)を患う患者における認知低下の速度を減少または低下させることにおける、本
発明の方法の有効性を評価するために特に有用である。これらの手段は、本明細
書中に記載される種々の実験室手順に加えて、古典的な心理学的評価を含む。こ
のような手段は、科学文献および特許文献に十分に記載され、そしていくつかの
例示的な実施例が以下に提供される。
【0029】
(a.痴呆の評価および診断)
痴呆の任意の徴候または症状が検出される直後での本発明の方法の投与は、重
要である。なぜなら、認知劣化の速度は、迅速であり得、そして代表的には、痴
呆の進行は、逆転も停止もされ得ないが、遅延または減少され得るのみだからで
ある。例えば、アルツハイマー病の場合において、本発明の方法は、この状態の
(初期状態において)の経過において初期に、そして最も好ましくは、この疾患
の最初の兆候で実施される。これは、認知低下の速度が相対的に迅速である、早
期発症アルツハイマー病の場合に特に重要である。外傷または毒の場合において
、痴呆のいくつかの程度は、後遺症であり得ることが合理的に予測される場合、
本発明の方法が、予防的に使用され得る。本発明の方法が予防的に適用される別
のシナリオは、患者が発作(脳梗塞)および同時発生の脳アテローム性動脈硬化
症または海馬の構造的な脳損傷を有するとして診断される場合である。
【0030】
本発明の方法において処置された痴呆は、上記で定義したように、DSM−I
Vにおいて広範に記載されたように、広範な範囲の精神状態および精神症状を包
含する。開業医は、前述または経験的な基準の任意のセットを使用して、本発明
の方法を実施する適応症として、痴呆の存在を診断し得るが、いくつかの例示的
な診断の指針および関連する症状および状態の例は、以下に記載される。
【0031】
痴呆は、個体が痴呆に罹患しているか、または進行性の認知低下を経ているか
否かを決定するための主観的な診断または客観的な試験の基準を使用して、公式
の精神医学的評価によって診断され得る。主観的および客観的な基準を使用して
、特定のGRアンタゴニスト、薬学的処方物、投薬量、処置計画またはレジメの
成功を測定および評価し得る。痴呆を診断するための特性(症状)およびその基
準は、例えば、DSM−IV(前出)において記載される。開業医は、本発明の
方法を実施する痴呆の評価のために、任意の基準または手段を使用し得るが、D
SM−IVは、痴呆および関連する精神医学的障害(アルツハイマー病および多
発脳梗塞痴呆を含む)を診断、分類および処置するために、一般に受け入れられ
ている標準を示す。本発明の方法に利用されるこのような基準のいくつかの例示
的な実施例を以下に示す。
【0032】
DSM−IVは、痴呆が代表的にアルツハイマー病(アルツハイマー型の痴呆
)、「血管性痴呆」(多発脳梗塞性痴呆としても公知)、または「一般の医学状
態に起因する痴呆」(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)疾患、頭部
外傷、パーキンソン病、またはハンチントン病(以下でさらに記載される)と関
連していることを記載している。痴呆はまた、「物質誘導性持続性痴呆」であり
得、すなわち薬物乱用、治療、または毒の暴露、「多発性の病因に起因する痴呆
」またはその病因が不確定である場合には、「他の方法で特定されない痴呆」に
起因し得る。
【0033】
痴呆は、心理学または精神医学の分野において周知でありかつ受け入れられて
いる、任意の多くの客観的な試験または基準を使用して診断および評価され得る
。客観的な試験を使用して、個体が痴呆を患っているか否かを決定し得、そして
特定のGRアンタゴニスト、薬学的処方物、用量、処置計画またはレジメの成功
を測定および評価し得る。例えば、認知能力および記憶における変化を測定する
ことは、痴呆を患う患者の診断および処置の評価を補助する。当該分野で公知の
任意の試験が使用され得る。
【0034】
1つの客観的な検査は、Folstein(1975)「‘Mini−men
tal state’、A practical method for gr
ading the cognitive state of patient
s for the clinician」、J.Psychiatr.Res
.12:189〜198に記載されるような、いわゆる簡易精神状態検査(MM
SE)である。MMSEは、全体的な知性の衰えの存在を評価する。Folst
ein(1997)「Differential diagnosis of
dementia.The clinical process.」Psych
iatr Clin North Am.20:45〜57もまた参照のこと。
MMSEは、アルツハイマー病および多発脳梗塞性痴呆(multi−infa
rt dementia)においてみられるような、痴呆の発症および全体的な
知性の衰えの存在を評価するための長期の認識される手段である。例えば、Ka
ufer(1998)J.Neuropsychiatry Clin.Neu
rosci.10:55〜63;Becker(1998)Alzheimer
Dis Assoc Disord.12:54〜57;Ellis(199
8)Arch.Neurol.55:360〜365;Magini(1996
)Int.Psychogeriatr.8:127〜134;Monsch(
1995)Acta Neurol.Scand.92:145〜150を参照
のこと。MMSEは、1〜30にスコア付けされる。MMSEは、例えば、いわ
ゆるIQ検査のように、基本的な認知能を評価しない。代わりに、これは、知性
の技力を検査する。「正常な」知的能力の人は、MMSEの客観的試験で「30
」にスコア付けする(しかし、30のMMSEスコアの人はまた、IQ検査で「
正常」よりも十分に下にスコア付けされ得る)。従って、30未満のスコアは、
知的能力の有意な程度の損失、痴呆の有意な症状を示す(以下の、診断のための
DSM−IV基準を参照のこと)。従って、本発明の方法は、MMSEで個体ス
コアが30未満である場合に、適切に投与される。上記のように、本発明の方法
の投与は、MMSEでの30未満のスコアのような、痴呆の初期の兆候で(また
は、任意の客観的または主観的な基準を使用する、疾患の最初の適応症または最
も初期の兆候で)重要である。別の実施態様において、本発明の方法は、個体が
MMSEで約21〜29の間のスコアにより示されるような、アルツハイマー病
の経過において初期であると診断される場合のように、アルツハイマー病の経過
において初期に投与される。
【0035】
認知能力を評価するための別の手段は、アルツハイマー病評価スケール(AD
AS−Cog)、または正規化したアルツハイマー病評価スケール(SADAS
)と呼ばれるバリエーションである。それは、アルツハイマー病および認知低下
により特徴付けられる関連障害の臨床薬物試験における有効な測定として一般に
使用される。SADASおよびADAS−Cogは、アルツハイマー病を診断す
るためには設計されなかった;これらは、痴呆の症状を特徴付ける際に有用であ
り、そして痴呆の進行の比較的に感度の高い指標である。例えば、Dorais
wamy(1997)Neurology 48:1511〜1517;Sta
ndish(1996)J.Am.Geriatr.Soc.44:712〜7
16を参照のこと。
【0036】
認知低下の存在および程度の評価は、主観的な診断および客観的な検査の組合
せを利用し得る。例えば、1つの研究において、アルツハイマー病の患者におけ
る痴呆の程度は、Alzheimer’s Disease Assessme
nt Scale−Cognitive Component)、Clinic
ian Interview Based Impression、簡易精神状
態検査(Mini−Mental State Examination)、お
よびCaregiver−rated Clinical Global Im
pression of Change(Farlow(1998)Neuro
logy 50:669〜677)を使用して測定された。別の研究は、Enh
anced Cued Recall、Temporal Orientati
on、Verbal Fluency、およびClock Drawing検査
を使用し、潜在的なアルツハイマー病を患う患者と健康なコントロールの被験体
との間を区別した(Solomon(1998)Arch Neurol.55
:349〜355)。Delirium Rating Scale(DRS)
またはBlessed Dementia Scaleのような、他の検査もま
た、使用され得る(Rockwood(1996)J.Am.Geriatr.
Soc.44:839〜842)。
【0037】
多発性脳梗塞病関連痴呆を有すると疑われる患者を評価する場合に、検査の組
合せ(例えば、機能的評価(例えば、機能独立測定(Functional I
ndependence Measure)、Barthel指数、Ranki
n機能的スケール(Functional Scale))、神経学的評価(例
えば、Canadian Neurological Scale、Natio
nal Institute of Health Stroke Scale
)、身体的評価(例えば、運動回復の状態、臨床結果の変動性スケール(Cli
nical Outcome Variables Scale))、および認
知の評価(例えば、Stroke Unit Mental Status E
xamination、簡易精神状態検査、Raven Matrices、B
oston Naming Test)を含む)を与え得る(例えば、Haje
k(1997)Arch.Phys.Med.Rehabil.78:1331
〜1337;Wyller(1997)Clin.Rehabil.11:13
9〜145を参照のこと)。
【0038】
身体的試験および組織構造的試験および機能的試験はまた、上記のような、主
観的な診断基準および客観的検査とともに補助的に使用され得る。例えば、アル
ツハイマー病または多発脳梗塞病を患うかまたはそれを有することが疑われる患
者における大脳の血行力学は、本発明の方法とともに投与され得る。領域的な大
脳血液容積は、例えば、力学的感受性コントラスト(dynamic susc
eptibility contrast)(DSC)MRI、陽子射出断層撮
影法(PET)、または単光子射出コンピューター断層撮影法(SPECT)に
より測定され得る;例えば、Maas(1997)J.Magn.Reson.
Imaging 7:215〜219;Jagust(1996)J.Neur
oimaging 6:156〜160を参照のこと。
【0039】
(b.アルツハイマー型の痴呆の診断および評価)
アルツハイマー病と関連する痴呆は、本発明の方法により処置される。上記の
ように、早期の診断および処置は、重要である。なぜなら、アルツハイマー型の
痴呆は、停止も回復もし得ず、そして特に早期発症アルツハイマー病で迅速に進
行し得る。
【0040】
アルツハイマー病は、家族性形態および非家族性形態;および早期発症形態ま
たは散発性形態にさらに分類されている。早期発症形態さえも、アポリポタンパ
ク質E e4対立遺伝子の存在または非存在に依存する、2つのサブタイプを有
することが提起されている(Bronzova(1996)J.Neurol.
243:465〜468)。しかし、本発明の方法を実施するために、患者がア
ルツハイマー病のどの形態を有し得るかまたは有し得ないかを確認することは重
要ではない。この疾患の初期の兆候(代表的には痴呆である)の早期検出は、重
要なパラメータである。なぜなら、本発明の方法での処置は、可能な限りすぐに
開始し得るからである。痴呆以外の基準は、後天性アルツハイマー病の早期診断
または予測に使用され得ることが提起されている(Ohm(1997)Mol.
Psychiatry 2:21〜25)。従って、任意の身体的パラメータ、
実験室パラメータまたは遺伝的パラメータは、当業者により使用され、本発明の
方法を使用して、個体を処置することが適切であるかを決定し得る。痴呆の早期
診断および早期処置は、認知低下の速度および程度を有意に減少させ、そして患
者の健康および満足のいく状態を改善する。
【0041】
痴呆を有する場合、アルツハイマー病は、主観的な診断または客観的な試験の
補助を伴って診断され得る。他の身体的基準または遺伝的基準もまた、診断およ
び予後において補助するために使用され得る(補助的な実験室試験を以下に記載
する)。例えば、家族性の早期発症アルツハイマー病を診断するための現在の候
補マーカーとしては、プレセニリン1遺伝子、プレセニリン2遺伝子、およびア
ミロイド前駆体タンパク質(APP)遺伝子における変異が挙げられる。これら
の変異を有する個体は、代表的には、血漿におけるアミロイドAβ42ペプチド
のレベルの増大および脳脊髄液におけるAPPのレベルの減少を有する。後期発
症および散発性アルツハイマー病において、これらの測定は有用ではないが、ア
ポリポタンパク質E e4対立遺伝子の検出は、臨床診断に自信を付与し得る。
散発性アルツハイマー病に対する他の提起される分子マーカーおよび生化学マー
カーの中で、低レベルのAβ42および高レベルのタウを示す脳脊髄液アッセイ
は、有用な生体マーカーに対する基準を最も満たす(Neurobiol Ag
ing(1998)Mar;19(2):109〜116を参照のこと)。
【0042】
DSM−IVは、アルツハイマー型の痴呆についての診断基準が、記憶障害お
よび1以上の以下の認知障害の両方により表されるように複数の認知欠損の知見
を含むことを述べる:失語症(言語障害);失行症(インタクトな運動機能にも
かかわらず、運動活性を実行する能力の損失);認知不能症(インタクトな知覚
機能にかかわらず、物体の認識または同定の不全);または管理的な機能(すな
わち、計画、組織化、順番付け、抽象化)の障害。記憶障害は、新しい情報を覚
えるか、または以前に覚えた情報を思い出す能力の障害である。
【0043】
アルツハイマー型の痴呆の発症は、代表的には、漸次である。発症は、認知低
下の持続(例えば、記憶障害および失語症)、先行症、認知不能症、または管理
的な機能の障害に関し、各々は、社会的機能または職業的な機能における有意な
損失を引き起こす。以前のレベルの機能からの有意な低下もまた、存在するにち
がいない。アルツハイマー病の存在の直接的な病理学的証拠を得る困難性のため
に、診断は、痴呆に対する他の病因が除外されている場合のみになされ得る。詳
細には、認知欠損は、記憶または認知において、進行性の欠損を生じる、他の中
枢神経系(CNS)の状態に起因しない。これらは、例えば、脳血管性疾患、パ
ーキンソン病、ハンチントン病、硬膜下血腫、正常圧水頭症、または脳腫瘍を含
み得る。アルツハイマー型の痴呆を診断する際に、認知欠損はまた、痴呆を引き
起こすことが公知である全身状態(例えば、甲状腺不全症、ビタミンB12欠乏症
、HIV感染、神経梅毒、高カルシウム血症、ナイアシン欠乏症、または葉酸欠
乏症)に起因しない。認知不全はまた、物質または毒素(例えば、アルコールま
たは農薬)の持続性効果に起因しない。せん妄は、アルツハイマー型の痴呆の先
在に重ねられ、この場合、「せん妄を患う」のサブタイプは、診断されるべきで
ある。最後に、認知欠損は、別のDSM−IV Axis I障害(例えば、「
大うつ病障害」または精神分裂病)によってより良好に説明されない。
【0044】
痴呆に加えて、挙動変化もまた、アルツハイマーの患者において一般に見られ
、これには、精神病、うつ病、不安、人格変化、および自律神経の変化が含まれ
る。例えば、Engelborghs(1997)Acta Neurol.B
elg.97:67〜84;Cummings(1996)Neurology
47:876〜883;Samson(1996)Eur.Neurol.3
6:103〜106を参照のこと。動揺は、特に一般的であり、そしてアルツハ
イマー病を患う患者において持続する(Devanand(1997)Arch
.Gen.Psychiatry 54:257〜263)。
【0045】
アルツハイマー型の痴呆は、代表的に、関連した実験室的な知見を有する。大
多数の場合、脳萎縮症が、所定の正常な加齢プロセスの場合に予期されるよりも
、より広い皮質の溝およびより大きい大脳室を伴って存在する。これは、コンピ
ュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、力学的感受性コントラ
スト(DSC)MRI、陽子射出断層撮影法(PET)、または単光子射出コン
ピューター断層撮影法(SPECT)により決定され得る。顕微鏡での試験は、
通常、組織病理学的変化(老人斑、神経細線維もつれ、顆粒空胞変性、ニューロ
ンの損失、星状細胞神経膠症、およびアミロイド血管症を含む)を示す。レーヴ
ィ体は、時折、皮質ニューロンに見られる。例えば、Dickson(1996
)J.Neural Transm.Suppl.47:31〜46;Mega
(1997)Neuroimage 5:147〜153を参照のこと。
【0046】
アルツハイマー型の痴呆は、代表的には、関連した身体的試験の知見および一
般の医学的状態を有する。疾患の初めの年に、わずかな運動兆候および知覚兆候
がアルツハイマー型の痴呆と関連する。経過のより後期には、ミオクロヌスおよ
び歩行障害が現れ得る。発作は、この障害を患う個体のおよそ10%に生じる。
文化および年齢の特性はまた、痴呆と関連し得る。アルツハイマー型の痴呆の後
期の発症(65歳齢の後)は、早期発症よりも非常に一般的である。わずかな事
例は、50歳齢前に発症する。この障害は、男性よりも女性においてわずかによ
り一般的である。65歳齢を超える集団の2%〜4%は、アルツハイマー型の痴
呆を有すると推定される。この有病率は、年齢の増大に伴い、特に75歳齢の後
に増大する。
【0047】
アルツハイマー型の痴呆の経過は、上記のMMSEのような、標準的な評価機
器において1年当たり3〜4点の損失で、遅く進行する傾向がある。しかし、本
発明の方法での早期診断および処置がなお重要である。なぜなら、アルツハイマ
ー型の痴呆は、停止も逆転もし得ないからである。従って、本発明の1つの実施
態様において、グルココルチコイドレセプターアンタゴニストは、この疾患の最
も早期の兆候(例えば、MMSEでの個体スコアが30未満である場合)で投与
される。別の実施態様において、グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト
は、患者がMMSEにおいて約21〜29の間のスコアにより示されるように、
アルツハイマー病の初期の病期である場合に投与される。
【0048】
欠損の種々のパターンが見られる。一般のパターンは、初期での最近の記憶に
おける欠損、続いて数年後の失語症、先行症、および認知不能症の発生を伴う、
潜伏性の発症である。幾つかの個体は、初期段階において、人格の変化を示し得
るか、または被刺激性を増大し得る。この疾患の後期段階において、個体は、歩
行障害および運動障害を発生し得、そして最終的に、無言かつ寝たきりになり得
る。症状の発症から死亡までの疾病の平均持続時間は、8〜10年である。
【0049】
一般の集団と比較して、「早期に発症した」アルツハイマー型の痴呆を患う個
体の第1級の生物学的な親戚は、この障害をより発生するようである。後期の発
症の事例はまた、遺伝的素因を有し得る。いくつかの家族におけるアルツハイマ
ー型の痴呆は、いくつかの染色体(第21染色体、第14染色体、および第19
染色体を含む)と連鎖するドミナントな形質のように、遺伝されることが示され
ている。
【0050】
(c.多発脳梗塞性痴呆(血管性痴呆)の診断および評価)
多発脳梗塞性痴呆(虚血性血管性痴呆または血管性痴呆とも呼ばれる)と関連
する痴呆は、本発明の方法によって処置される。血管性痴呆は、アルツハイマー
病後の痴呆の第2の最も一般の原因であると考えられる(Lowe(1998)
Brain Pathol.8:403〜406)。病因学的には、血管性痴呆
は、大脳動脈硬化症と推定される関連を有する(Lechner(1998)N
euroepidemiology 17:10〜13)。示差的な診断につい
ては、1つの研究は、アルツハイマー病を患う個体に対して多発脳梗塞性疾患を
患う個体を比較し、そして患者が、年齢、痴呆の重篤度、教育の年数、および性
の基準が一致したことが見出された。多発脳梗塞性痴呆の患者は、アルツハイマ
ー病の患者よりも、より乏しい言語の流暢さを有したが、より良好な自由な追想
、より少ない追想の強要、およびより良好な認識記憶を有した(Lafosse
(1997)Neuropsychology 11:514〜522)。アル
ツハイマー病を患う個体に対する多発脳梗塞性痴呆を患う個体の別の比較は、一
次記憶および二次的な記憶における痴呆関連欠損を反映する個体変動性において
、群の差異が全くないことを見出し;顔の認識および対象の追想において、群の
差異が全くないことを見出し、そして言葉の追想において、アルツハイマー病の
患者と比較して多発脳梗塞性痴呆の患者の利点を見出した(Hassing(1
997)Dement.Geriatr.Cogn.Disord.8:376
〜383)。例えば、Erkinjuntti(1997)Int.Psych
ogeriatr.9補遺1:51〜58;Konno(1997)Drugs
Aging 11:361〜373を参照のこと。
【0051】
DSM−IVは、血管性痴呆についての診断基準としては、記憶障害および1
以上の認識障害の両方(失語症、先行症、認知不能症、または管理的な機能にお
ける障害を含む)により示されるような、多発性の認知欠損の知見を含むことを
記載する。血管性痴呆において、認知欠損は、記憶障害および失語症、先行症、
認知不能症、または管理的な機能における障害の各々が、社会的または職業的な
機能において有意な障害を引き起こし、そして機能の以前のレベルからの有意な
低下を示すようである。
【0052】
血管性痴呆を診断するために、痴呆に病因的に関連すると判定される、大脳血
管性疾患の証拠(すなわち、病巣の神経学的な兆候および症状または実験室での
証拠)もまた存在するにちがいない。病巣の神経学的な兆候および症状としては
、足底伸筋(extensor plantar)応答、偽球麻痺、歩行異常、
深い腱反射の誇張、または四肢の弱さ、あるいは大脳血管性疾患を示す実験室で
の証拠が挙げられる。頭部のコンピューター断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像
化(MRI)、力学的感受性コントラスト(DSC)MRI、陽子射出断層撮影
法(PET)、または単光子射出コンピューター断層撮影法(SPECT)は、
大脳の皮質構造および皮質下構造の多発性血管性病変を明示し得る。血管性痴呆
は、症状がせん妄の間に専ら生じる場合、診断されない。しかし、せん妄は、予
め存在する血管性痴呆に重ねられ得、この場合、「せん妄を患う」サブタイプは
、診断されるべきである。
【0053】
血管性痴呆においてCT、MRI、PETなどにより検出されるCNS病変の
程度は、代表的に、健常な高齢者の脳において検出される変化の程度を超える(
例えば、MRIスキャンで示される室周過強度および白質過強度)。病変は、し
ばしば、白質構造および灰白質構造(皮質下領域および核を含む)の両方におい
て現れる。古い梗塞形成の証拠(例えば、病巣の萎縮)、およびより最近の疾患
の知見が、検出され得る。EEG知見は、脳における病巣の病変を反映し得る。
さらに、関連した心血管状態および全身性血管状態の実験室証拠(例えば、腎不
全の証拠であるECG異常)が存在し得る。
【0054】
血管性痴呆を患う個体において見られる関連した身体的検査の知見および一般
の医学状態としては、一般の神経学的兆候(例えば、上記の異常な反射、四肢の
弱さ、歩行障害)が挙げられる。しばしば、長年の動脈性高血圧(例えば、検眼
鏡下での異常、肥大した心臓)、弁性心疾患(例えば、異常な心臓音)、または
大脳梗塞の供給源であり得る頭蓋外血管性疾患の証拠が存在する。1回の発作は
、精神状態において比較的限局性の変化(例えば、左半球に対する損傷後の失語
症、または後大脳動脈の分布における梗塞形成からの健忘障害)を引き起こし得
るが、一般に、代表的には、通常異なる時間での複数の発作の発生から生じる血
管性痴呆を引き起こさない。
【0055】
血管性痴呆の発症は、代表的には、剥離、続いて緩慢な進行ではなく機能にお
ける迅速な変化によって特徴付けられる段階的かつ振動性の経過である。しかし
、この経過は、高度に変動し得、そして緩やかな低下に伴う潜行性の発症もまた
、遭遇される。通常、欠損のパターンは、脳のどの領域が破壊されているかに依
存して「まだら」である。特定の認知機能は、早期に影響され得、一方、他の認
知機能は、比較的損なわれていないままである。
【0056】
(d.一般の医学的状態に起因する痴呆の診断および評価)
認知低下を含む変性病理と関連する痴呆は、本発明の方法によって処置される
。本発明は、任意の特定の作用の機構によって限定されないが、投与されるGR
アンタゴニストは、コルチゾールの痴呆誘導効果を相殺し得る。コルチゾールは
、例えば、アルツハイマー病、多発脳梗塞性痴呆、前頭側頭骨性痴呆、またはD
SM−IVにおいて、要約されるような他の状態(毒素または傷害)からの認知
低下を経験している個体において、知的変質および認知低下の速度を悪化および
加速すると推定されている。疾患の脳または傷害を受けた脳は、コルチゾールま
たは他のグルココルチコイドによりもたらされる効果のような、さらなる傷害、
疾患または毒素の効果にかかりやすくなることが考えられる。これらのかかりや
すくなった患者において、「正常」な範囲とみなされるコルチゾールのレベルは
、認知低下の速度を加速または悪化し得る。従って、本発明の方法は、任意の形
態の痴呆(毒素、薬物の副作用、傷害、一般の医学的状態、前頭側頭骨性痴呆な
どに起因する痴呆を含む)に苦しむ患者またはそれにかかりやすくなった患者に
おける痴呆の処置に関する。
【0057】
本発明の方法において処置される痴呆は、広範な範囲の精神状態および症状(
上記のようなDSM−IVに記載されるような一般の医学的状態に起因する痴呆
を含む)を包含する。DSM−IVは、認知欠損および他の障害の知見に加えて
、一般の医学的状態が病因学的に痴呆に関するという病歴、身体的検査または実
験室での知見からの証拠が存在するに違いないことを記載する。このような一般
の医学的状態には、例えば、HIV−1の感染、外傷性の脳傷害、パーキンソン
病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト−ヤコープ病、正常圧水頭症
、脳腫瘍、硬膜下血種、内分泌状態(例えば、甲状腺機能低下症)、高カルウシ
ウム血症、低血糖症、栄養状態(例えば、チミン、ナイアシン、またはビタミン
12の欠乏)、感染(例えば、神経梅毒、クリプトコックス症)、腎機能または
肝機能の障害、他の神経学的な状態(例えば、多発性硬化症)、またはまれな貯
蔵疾患が挙げられる。
【0058】
「ピック病」には、痴呆の非アルツハイマー形態から構成される前頭側頭骨性
痴呆(FTD)の1つの群を含む。それらは、無感動および無言症を生じる挙動
および人格の変化によって臨床的に特徴付けられる。ある障害は、いくつかの型
の潜在する病理を有する、脳の前頭葉、前側頭葉および前頭頂葉の進行性の萎縮
と関連する。ある型(前頭葉の変性)は、軽度かつ主な軟膜下の神経膠症および
神経細胞の損失を伴う、皮質層の外部(outer cortical lam
inae)の微小血管の変性により特徴付けられる。別の型は、タウ陽性封入体
およびユビキチン陽性封入体ならびにαβクリスタリン陽性の膨らんだニューロ
ンの存在によって特徴付けられるニューロンの変性を有する、皮質間組織の空洞
化および十分に発達した神経膠症を示す。このような変化は、「ピック型の組織
学」と呼ばれており、そして「ピック病」の近代の定義についての基準を形成す
る。例えば、Mann(1998)Brain Pathol.8:325〜3
38を参照のこと。
【0059】
痴呆はまた、物質の摂取(薬物療法の副作用、環境毒または物質乱用のためで
あるかにかかわらず)により引き起こされ得る。この形態の痴呆は、「物質誘導
性持続性痴呆」として、DSM−IVにより分類される。この形態の痴呆は、ア
ルコール、吸入剤、催眠剤または抗不安剤の摂取と関連して生じ得る。痴呆を引
き起こすと報告される薬物療法には、例えば、抗痙攣剤および鞘内のメトトレキ
セートが挙げられる(Fernandez−Bouzas(1992)J.Ne
urosurg.Sci.36:211〜214)。痴呆を引き起こすと報告さ
れる毒素には、例えば、鉛、水銀、一酸化炭素、有機リン(例えば、殺虫剤)、
および産業用溶媒が挙げられる(例えば、Lolin(1989)Hum To
xicol.8:293〜300を参照のこと)。
【0060】
(2.一般的な実験室手順)
多くの一般的な実験室試験を使用して、痴呆を患う患者の診断、進行および予
後において補助し得る(血中コルチゾール、薬物代謝、脳構造および脳機能など
のようなパラメータのモニタリングが本発明の方法と共に実施され得ることを含
む)。これらの手順は補助的であり得る。なぜなら、全ての患者は、独自に、薬
物を代謝しそして反応するからである。さらに、このようなモニタリングは重要
であり得る。なぜなら、各々のGRアンタゴニストは、異なる薬物動態を有する
からである。異なる患者および疾患状態は、異なる投薬レジメおよび処方物を必
要とし得る。投薬レジメおよび処方物を決定するためのこのような手順および手
段は、科学文献および特許文献に十分に記載される。少数の例示的な例を以下に
示す。
【0061】
(a.血中コルチゾールレベルの決定)
種々のレベルの血中コルチゾール、特に高レベルのコルチゾールは、痴呆なら
びに認知低下の速度および程度と関連している。例えば、アポリポタンパク質E
4対立遺伝子を有さない早期段階のアルツハイマー病を患う個体の中において、
より高いベースラインのコルチゾール測定は、認知機能における低下の有意によ
り大きな速度と関連する。従って、血中コルチゾールのモニタリングおよびベー
スラインのコルチゾールレベルの決定は、患者の診断、処置および予後を補助す
る、有用な実験室試験であり得る。個体が正常、低コルチゾール血症または高コ
ルチゾール血症であるか否かを決定するために使用され得る、広範な種々の実験
室試験が存在する。イムノアッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ)が一般に
使用される。なぜなら、イムノアッセイは、正確で、行うことが容易かつ比較的
安価だからである。循環コルチゾールのレベルは、副腎皮質機能の指標であるの
で、種々の刺激試験および抑制試験(例えば、ACTH刺激、ACTH貯蔵、デ
キサメタゾン抑制試験(例えば、Greenwald(1986)Am.J.P
sychiatry 143:442〜446)はまた、本発明の方法において
補助的に使用される、診断情報、予後情報または他の情報を提供し得る。
【0062】
キット形態で利用可能な1つのこのようなアッセイは、「Double An
tibody Cortisol KitTM」(Diagnostic Pro
ducts Corporation、Los Angeles、CA(198
4)Acta Psychiatr.Scand.70:239〜247)とし
て利用可能なラジオイムノアッセイである。この試験は、125I−標識コルチゾ
ールが抗体部位について臨床サンプル由来のコルチゾールと競合する競合ラジオ
イムノアッセイである。この試験において、抗体の特異性および任意の有意なタ
ンパク質の効果の欠損に起因して、血清サンプルおよび血漿サンプルは、予備抽
出も予備希釈も必要としない。このアッセイは、以下の実施例1においてさらに
詳細に記載される。
【0063】
(b.血中/尿中ミフェプリストンレベルの決定)
患者の代謝、クリアランス速度、毒性レベルなどは、根元的な原発性または続
発性の疾患状態、薬物歴、年齢、一般の医学的状態などにおけるバリエーション
によって異なるので、GRアンタゴニストの血中レベルおよび尿中レベルを測定
することが必要とされ得る。このようなモニタリングのための手段は、科学文献
および特許文献に十分に記載される。本発明の1つの実施態様において、ミフェ
プリストンは、痴呆を処置するために投与されるので、血中ミフェプリストンレ
ベルおよび尿中ミフェプリストンレベルを決定する例示的な例を以下の実施例に
示す。
【0064】
(c.他の実験室手順)
痴呆は、種々の疾患、状態、および薬物の効果と関連し得るので、多数のさら
なる実験室試験を本発明の方法において補助的に使用して、診断、処置の有効性
、予後、毒性などにおいて補助し得る。例えば、高コルチゾール血症の増大はま
た、精神病およびうつ病と関連しているので、診断および処置の評価は、グルコ
コルチコイド感受性の変動(空腹時の血糖、経口のグルコース投与後の血糖、甲
状腺刺激ホルモン(TSH)、コルチコステロイド結合グロブリン、黄体化ホル
モン(LH)、テストステロン−エストラジオール−結合グロブリン、および/
または総テストステロンおよび遊離テストステロンの血漿濃度を含むがこれらに
限定されない)をモニターおよび測定することによって増大され得る。GRアン
タゴニスト代謝物生成、血漿濃度およびクリアランス速度(アンタゴニストおよ
び代謝物の尿中濃度を含む)をモニタリングおよび測定する実験室試験はまた、
本発明の方法の実施に有用であり得る。例えば、ミフェプリストンは、2つの親
水性のN−モノメチル化代謝物およびN−ジメチル化代謝物を有する。これらの
代謝物(RU486に加えて)の血漿濃度および尿中濃度は、例えば、Kawa
i(1987)Pharmacol.and Experimental Th
erapeutics 241:401〜406に記載されるように、薄層クロ
マトグラフィーを使用して決定され得る。
【0065】
(3.痴呆を処置するグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト)
本発明は、GRへのコルチゾールまたはコルチゾールアナログの結合と関連す
る生物学的応答をブロックし得る任意の組成物または化合物を利用して痴呆を処
置する方法を提供する。本発明の方法に利用されるGR活性のアンタゴニストが
、科学文献または特許文献に十分に記載されている。少数の例示的な実施例を以
下に示す。
【0066】
(a.GRアンタゴニストとしてのステロイド性抗グルココルチコイド)
ステロイド性グルココルチコイドアンタゴニストが、本発明の種々の実施態様
において、痴呆の処置のために投与される。ステロイド性抗グルココルチコイド
は、グルココルチコイドアゴニストの基本構造の改変(すなわち、ステロイド骨
格の形態改変)により得られ得る。コルチゾールの構造は、種々の方法において
改変され得る。グルココルチコイドアンタゴニストを作製するためのコルチゾー
ルステロイド骨格の構造改変の2つの最も一般的な公知のクラスは、11−βヒ
ドロキシ基の改変および17−β側鎖の改変を含む(例えば、Lefebvre
(1989)J.Steroid Biochem.33:557−563を参
照のこと)。
【0067】
(i.11−βヒドロキシ基の除去または置換)
11−βヒドロキシ基の除去または置換を含む改変したステロイド骨格を有す
るグルココルチコイドアゴニストは、本発明の1つの実施態様において投与され
る。このクラスは、コルテキソロン誘導体、プロゲステロン誘導体およびテスト
ステロン誘導体、ならびに合成組成物(例えば、ミフェプリストン)を含む、天
然の抗グルココルチコイドを含む(Lefebvreら(1989)Ibid)
。本発明の好ましい実施態様は、全ての11−βアリールステロイド骨格誘導体
を含む。なぜなら、これらの化合物は、プロゲステロンレセプター(PR)結合
活性を欠いているからである(Agarwal(1987)FEBS 217:
221〜226)。別の好ましい実施態様は、有効な抗グルココルチコイド剤お
よび抗プロゲステロン剤の両方である、11−βフェニル−アミノジメチルステ
ロイド骨格誘導体(すなわち、ミフェプリストン)を含む。これらの組成物は、
可逆的に結合するステロイドレセプターアンタゴニストとして作用する。例えば
、11−βフェニル−アミノジメチルステロイドに結合した場合、このステロイ
ドレセプターは、その天然リガンド(例えば、GRの場合にはコルチゾール(C
adepond(1997)、前出))を結合し得ない高次構造において維持さ
れる。
【0068】
合成11−βフェニル−アミノジメチルステロイドとしては、ミフェプリスト
ン(RU486、または17−β−ヒドロキシ(hydrox)−11−β−(
4−ジメチル−アミノフェニル)17−α−(1−プロピニル)エストラ−4,
9−ジエン−3−オン)としても公知)が挙げられ得る。ミフェプリストンは、
プロゲステロンおよびグルココルチコイド(GR)レセプターの両方の強力なア
ンタゴニストであることが示されている。GRアンタゴニスト効果を有すること
が示された別の11−βフェニル−アミノジメチルステロイドとしては、RU0
09(RU39.009)、11−β−(4−ジメチル−アミノエトキシフェニ
ル)−17−α−(プロピニル−17β−ヒドロキシ−4,9−エストラジエン
−3−オン)が挙げられる(Bocquel(1993)J.Steroid
Biochem.Molec.Biol.45:205〜215を参照のこと)
。RU486に関する別のGRアンタゴニストは、RU044(RU43.04
4)17−β−ヒドロキシ(hydrox)−17−α−19−(4−メチル−
フェニル)−アンドロスタ−4,9(11)−ジエン−3−オン)である(Bo
cquel(1993)前出)。Teutsch(1981)Steroids
38:651〜665;米国特許第4,386,085号および同第4,91
2,097号もまた参照のこと。
【0069】
1つの実施態様は、不可逆的な抗グルココルチコイドである、基本的なグルコ
コルチコイドステロイド構造を含む組成物を含む。このような化合物は、コルチ
ゾールのα−ケト−メタンスルホネート誘導体(コルチゾール−21−メシレー
ト(4−プレグネン−11−β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオ
ン−21−メタン−スルホネート)およびデキサメタゾン−21−メシレート(
16−メチル−9α−フロロ−1,4−プレグナジエン−11β,17−α,2
1−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホネート)を含む)を
含む。Sinons(1986)J.Steroid Biochem.24:
25〜32(1986);Mercier(1986)J.Steroid B
iochem.25:11〜20;米国特許第4,296,206を参照のこと

【0070】
(ii.17−β側鎖基の改変)
17−β側鎖基の種々の構造的改変により得られ得るステロイド性抗グルココ
ルチコイドはまた、本発明の方法に使用される。このクラスとしては、デキサメ
タゾン−オキセタノン(oxetanone)、デキサメタゾンの種々の17,
21−アセトニド誘導体および17−β−カルボキサミド誘導体のような合成抗
グルココルチコイドが挙げられる(Lefebvre(1989)前出;Rou
sseau(1979)Nature 279:158〜160)。
【0071】
(iii.他のステロイド骨格改変)
本発明の種々の実施態様に使用されるGRアンタゴニストは、GRアゴニスト
相互作用から生じる生物学的応答をもたらす任意のステロイド骨格の改変を含む
。ステロイド骨格アンタゴニストは、コルチゾールの任意の天然バリエーション
または合成バリエーション(例えば、19−ノルデオキシコルチコステロンおよ
び19−ノルプロゲステロンのような、C−19メチル基を欠く副腎ステロイド
)であり得る(Wynne(1980)Endocrinology 107:
1278〜1280)。
【0072】
一般に、11−β側鎖置換基、および特にその置換基のサイズは、ステロイド
性抗グルココルチコイド活性の程度を決定する際に重要な役割を果たし得る。ス
テロイド骨格のA環における置換はまた、重要であり得る。17−ヒドロキシプ
ロペニル側鎖は、一般に、17−プロピニル側鎖含有化合物と比較して、抗グル
ココルチコイド活性を減少させる。
【0073】
(b.アンタゴニストとしての非ステロイド性抗グルココルチコイド)
非ステロイド性グルココルチコイドアンタゴニストはまた、痴呆を処置する本
発明の方法に使用される。これらは、タンパク質の合成模倣物およびアナログ(
部分的なペプチド分子実体、擬ペプチド分子実体および非ペプチド分子実体を含
む)を含む。例えば、本発明に有用なオリゴマーペプチド模倣物は、(α,β−
不飽和)ペプチドスルホンアミド、N−置換型グリシン誘導体、オリゴカルバメ
ート、オリゴ尿素ペプチド模倣物、ヒドラジノペプチド、オリゴスルホンなどを
含む(例えば、Amour(1994)Int.J.Pept.Protein
Res.43:297〜304;de Bont(1996)Bioorga
nic & Medicinal Chem.4:667〜672を参照のこと
)。合成分子の大きなライブラリーの作製および同時のスクリーニングは、コン
ビナトリアル化学における周知の技術を使用して実行し得る(例えば、van
Breemen(1997)Anal Chem 69:2159〜2164;
Lam(1997)Anticancer Drug Des 12:145〜
167(1997)を参照のこと)。GRに特異的なペプチド模倣物の設計は、
コンピュータプログラムをコンビナトリアル化学(コンビナトリアルライブラリ
ー)スクリーニングアプローチと組み合わせて使用して設計され得る(Murr
ay(1995)J.of Computer−Aided Molec.De
sign 9:381〜395);Bohm(1996)J.of Compu
ter−Aided Molec.Design 10:265〜272)。こ
のような「合理的な薬物設計」は、シクロアイソマー、レトロ−インバーソ(r
etro−inverso)アイソマー、レトロアイソマーなどを含む、ペプチ
ドアイソマーおよびコンホーマー(conformer)の開発を補助し得る(
Chorev(1995)TibTech 13:438〜445において考察
される)。
【0074】
(c.グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの同定)
任意のGRアンタゴニストは、上記の化合物および組成物に加えて、本発明の
方法において痴呆の処置に使用されるので、さらなる有用なGRアンタゴニスト
は、当業者により決定され得る。種々のこのような慣用的な周知の方法は、化学
文献および特許文献において、使用され得、そして記載される。それらは、さら
なるGRアンタゴニストの同定についてのインビトロアッセイおよびインビボア
ッセイを含む。少数の例示的な実施例は、以下に記載される。
【0075】
本発明のGRアンタゴニストを同定するために使用され得る1つのアッセイは
、Granner(1970)Meth.Enzymol.15:633の方法
に従って、チロシンアミノトランスフェラーゼ活性に対する推定GRアンタゴニ
ストの効果を測定する。この分析は、ラット肝癌細胞(RHC)の培養における
肝臓酵素のチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性の測定に基づく
。TATは、チロシンの代謝における第1の段階を触媒し、そして肝臓および肝
癌細胞の両方においてグルココルチコイド(コルチゾール)により誘導される。
この活性は、細胞抽出物において容易に測定される。TATは、チロシンのアミ
ノ基を2−オキソグルタル酸に変換する。P−ヒドロキシフェニルピルビン酸塩
もまた形成される。これは、アルカリ溶液において、より安定なp−ヒドロキシ
ベンズアルデヒドに変換され得、そして331nmでの吸光度により定量され得
る。推定GRアンタゴニストは、コルチゾールとともに肝臓全体にインビボまた
はエキソビボでか、または肝癌細胞または細胞抽出物に、同時投与される。化合
物は、その投与がコントロール(すなわち、コルチゾールのみまたはGRアゴニ
ストのみが添加される)と比較してTAT活性の誘導量を減少させる場合、GR
アンタゴニストとして同定される(Shirwany(1986)「インビボで
の肝サイトゾルグルココルチコイドレセプターのグルココルチコイド調節および
チロシンアミノトランスフェラーゼの誘導に対するその関係」Biochem.
Biophys.Acta 886:162〜168もまた参照のこと)。
【0076】
TATアッセイに加えて、本発明の方法に利用される組成物を同定するために
使用され得る、多くのアッセイのさらなる例示は、インビボでのグルココルチコ
イド活性に基づくアッセイである。例えば、グルココルチコイドにより刺激され
る、細胞中のDNAへの3H−チミジンの取り込みを阻害する推定GRアンタゴ
ニストの能力を評価するアッセイが、使用され得る。あるいは、推定GRアンタ
ゴニストは、肝癌組織培養物のGRへの結合に対する3H−デキサメタゾンと競
合し得る(例えば、Choi(1992)「Enzyme induction
and receptor−binding affinity of st
eroidal 20−carboxamides in rat hepat
oma tissue culture cells」、Steroids 5
7:313〜318を参照のこと)。別の例のように、3H−デキサメタゾン−
GR複合体の核結合をブロックする推定GRアンタゴニストの能力が、使用され
得る(Alexandrova(1992)「Duration of ant
agonizing effect of RU486 on the ago
nist iuduction of tyrosine aminotran
sferase via glucocorticoid receptor」
、J.Steroid Biochem.Mol.Biol.41:723〜7
25)。推定GRアンタゴニストをさらに同定するために、レセプター結合速度
によりグルココルチコイドアゴニストとグルココルチコイドアンタゴニストとの
間を区別し得る速度アッセイもまた、使用され得る(Jones(1982)B
iochem J.204:721〜729に記載される)。
【0077】
別の例示的な例において、Daune(1977)Molec.Pharm.
13:948〜955、および米国特許第4,386,085号により記載され
るアッセイは、抗グルココルチコイド活性を同定するために使用され得る。簡潔
には、腎上部切除(surrenalectomized)ラットの胸腺細胞を
、種々の濃度の試験化合物(推定GRアンタゴニスト)とともにデキサメタゾン
を含む栄養培地中でインキュベートする。3H−ウリジンを細胞培養物に添加し
、これをさらにインキュベートし、そしてポリヌクレオチドへの放射標識の取り
込みの程度を測定する。グルココルチコイドアゴニストは、取り込まれる3H−
ウリジンの量を減少させる。従って、GRアンタゴニストは、この効果に相反す
る。
【0078】
本発明の方法に利用され得るさらなる化合物およびこのような化合物を同定し
、そして作製する方法については、米国特許第4,296,206号(上記を参
照のこと);同第4,386,085号(上記を参照のこと);同第4,447
,424号;同第4,447,445号;同第4,519,946号;同第4,
540,686号;同第4,547,493号;同第4,634,695号;同
第4,634,696号;同第4,753,932号;同第4,774,236
号;同第4,808,710号;同第4,814,327号;同第4,829,
060号;同第4,861,763号;同第4,912,097号;同第4,9
21,638号;同第4,943,566号;同第4,954,490号;同第
4,978,657号;同第5,006,518号;同第5,043,332号
;同第5,064,822号;同第5,073,548号;同第5,089,4
88号;同第5,089,635号;同第5,093,507号;同第5,09
5,010号;同第5,095,129号;同第5,132,299号;同第5
,166,146号;同第5,166,199号;同第5,173,405号;
同第5,276,023号;同第5,380,839号;同第5,348,72
9号;同第5,426,102号;同第5,439,913号;および同第5,
616,458号;ならびにWO 96/19458(これは、ステロイドレセ
プターに対する、高アフィニティーの高度な選択的モジュレーター(アンタゴニ
スト)である非ステロイド化合物(例えば、6−置換型−1,2−ジヒドロN−
1保護キノリン)を記載する)を参照のこと。
【0079】
(4.グルココルチコイドレセプターアンタゴニストを使用する、痴呆と関連
する状態および疾病の処置)
抗グルココルチコイド(例えば、ミフェプリストン)は、痴呆を処置する本発
明の方法に使用されるべき薬剤として処方される。GRへのコルチゾールまたは
コルチゾールアナログの結合と関連する生物学的応答をブロックし得る、任意の
組成物または化合物は、本発明の薬剤として使用され得る。GRアンタゴニスト
薬物レジメを決定する慣用的な手段および本発明の方法を実施する処方は、特許
文献および化学文献に十分に記載され、そしていくつかの例示的な実施例が以下
に示される。
【0080】
(a.薬学的組成物としてのグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト)
本発明の方法に使用されるGRアンタゴニストは、当該分野において公知の任
意の手段によって(例えば、非経口的、局部的、経口的に、または局所投与によ
って(例えば、エアロゾルによってかまたは経皮的に))投与され得る。本発明
の方法は、予防的処置および/または治療的処置を提供する。薬学的処方物とし
てのGRアンタゴニストは、痴呆の状態または疾患および程度、各患者の一般の
医学的状態、得られた好ましい投与方法などに依存する種々の単位投薬形態で投
与され得る。処方および投与についての技術の詳細は、科学文献および特許文献
に十分に記載されている(例えば、Remington’s Pharmace
utical Sciences、Maack Publishing Co、
Easton PA(「Reminton’s」の最新版を参照のこと)。
【0081】
GRアンタゴニストの薬学的処方物は、薬剤の製造についての当該分野で公知
の任意の方法に従って調製され得る。このような薬物は、甘味剤、香味剤、着色
剤および保存剤を含有し得る。任意のGRアンタゴニスト処方物は、製造に適切
である、非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤と混合され得る。
【0082】
経口投与についての薬学的処方物は、当該分野において適切な周知の薬学的に
受容可能なキャリアおよび適切な投薬量を使用して処方され得る。このようなキ
ャリアは、薬学的処方物が患者による摂取に適切な単位投薬形態(例えば、錠剤
、丸剤、散剤、糖剤、カプセル剤、液体、ロゼンジ、ゲル、シロップ、スラリー
、懸濁液など)で処方されることを可能にする。経口の使用についての薬学的調
製物は、所望される場合、錠剤コアまたは糖剤コアを得るために、適切なさらな
る化合物を添加した後に、GRアンタゴニスト化合物と固体賦形剤との組合せを
介して、必要に応じて得られた混合物を砕いて、および顆粒剤の混合物をプロセ
スして、得られ得る。適切な固体賦形剤は、炭水化物またはタンパク質充填剤で
あり、これには、糖(ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビト
ールを含む);トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモ、または他の植物由来
のデンプン;セルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチ
ル−セルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウム);およびガム
(アラビアゴムおよびトラガカントを含む);ならびにタンパク質(例えば、ゼ
ラチンおよびコラーゲンを含む)を含むがこれらに限定されない。所望される場
合、崩壊剤または可溶化剤(例えば、架橋したポリビニルピロリドン、アガー、
アルギン酸、またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)が添加され得る。
【0083】
糖剤コアは、濃縮した糖溶液のような適切なコーティングとともに提供され、
これには、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポール(ca
rbopol)ゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、
ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒の混合液もまた含まれ得る。色
素材料(dyestuff)または色素は、製品の同定のためか、または活性化
合物の量(すなわち、投薬量)を特徴付けるために、錠剤または糖衣コーティン
グに添加され得る。本発明の薬学的調製物はまた、例えば、ゼラチンから作製さ
れる押し出し適合(push−fit)カプセル剤、およびゼラチンおよびコー
ティング(例えば、グリセロールまたはソルビトール)から作製される軟らかい
密封したカプセル剤を使用して、経口的に使用され得る。押し出しカプセル剤は
、充填剤または結合剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)、滑沢剤(例えば
、タルクまたはステアリン酸マグネシウム)、および必要に応じて、安定化剤と
混合したGRアンタゴニストを含み得る。軟カプセル剤において、GRアンタゴ
ニスト化合物は、安定化剤とともにかまたはそれを含まずに、適切な液体(例え
ば、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコール)中に溶解さ
れ得るか、または懸濁され得る。
【0084】
本発明の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適切な賦形剤との混合してGRア
ンタゴニストを含み得る。このような賦形剤は、懸濁化剤(例えば、カルボキシ
メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセ
ルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムお
よびアカシアゴム)、および分散剤または湿潤剤(例えば、天然に存在するホス
ファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物(例
えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アル
コールとの縮合産物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレ
ンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合産
物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、またはエチレ
ンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの
縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート))を含む。
水性懸濁液はまた、1以上の保存剤(例えば、エチルp−ヒドロキシベンゾエー
トまたはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート)、1以上の着色剤、1以上
の香味剤および1以上の甘味剤(例えば、スクロース、アスパルテート、または
サッカリン)を含み得る。処方物は、浸透圧について調節され得る。
【0085】
油性懸濁液は、植物油(例えば、ピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油またはコ
コナッツ油)中でか、または鉱油(例えば、液体パラフィン);あるいはこれら
の混合中でGRアンタゴニストを懸濁させることによって処方され得る。油性懸
濁液は、濃厚剤(thickening agent)(例えば、ミツロウ、硬
質パラフィンまたはセチルアルコール)を含み得る。甘味剤は、口に合う経口調
製物(例えば、グリセロール、ソルビトールまたはスクロース)を提供するよう
に添加され得る。これらの処方物は、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)の添
加により保存され得る。注射可能な油性ビヒクルの例としては、Minto(1
997)J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93〜102を
参照のこと。本発明の薬学的組成物はまた、水中油乳化剤の形態であり得る。油
相は、上記の植物油または鉱油、あるいはこれらの混合物であり得る。適切な乳
化剤としては、天然に存在するゴム(例えば、アカシアゴムおよびトラガカント
ゴム)、天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズレシチン)、脂肪酸およ
びヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル(例えば、ソ
ルビタンモノオレエート)、およびこれらの部分エステルとエチレンオキシドと
の縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げら
れる。この乳化剤はまた、シロップ剤またはエリキシル剤の処方物中に、甘味剤
および香味剤を含み得る。このような処方物はまた、粘滑剤、保存剤または着色
剤を含み得る。
【0086】
水の添加による水性懸濁液の調製に適切な、本発明の分散性散剤および顆粒剤
は、分散剤、懸濁剤および/または湿潤剤、ならびに1以上の保存剤と混合して
、GRアンタゴニストから処方され得る。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁
剤は、上記で開示されたものにより例示される。さらなる賦形剤(例えば、甘味
剤、香味剤および着色剤)もまた、提示され得る。
【0087】
本発明のGRアンタゴニストはまた、薬物の直腸投与に対して座剤の形態で投
与される。これらの処方物は、普通の温度では固体であるが直腸の温度では液体
であり、従って直腸中で融解し薬物を放出する、適切な非刺激性賦形剤と、薬物
を混合することによって調製され得る。このような材料は、ココアバターおよび
ポリエチレングリコールである。
【0088】
本発明のGRアンタゴニストはまた、鼻腔内経路、眼内経路、膣内経路、およ
び直腸内経路によって投与され得、これには、座剤、吸入剤、散剤およびエアロ
ゾル処方物(例えば、ステロイド吸息剤、Rohatagi(1995)J.C
lin.Pharmacol.35:1187〜1193;Tjwa(1995
)Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107〜1
11を参照のこと)を含む。
【0089】
本発明のGRアンタゴニストは、経皮経路によって、局部経路によって、塗布
器スティック、溶液、懸濁液、乳化剤、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリ
ー、塗布剤、散剤、およびエアロゾルとして処方されて、送達され得る。
【0090】
本発明のGRアンタゴニストはまた、身体中での徐放のためのミクロスフェア
として送達され得る。例えば、ミクロスフェアは、薬物(例えば、ミフェプリス
トン)含有ミクロスフェア(これは、皮下で徐放される)の皮内注射を介して投
与され得る(Rao(1995)J.Biomater Sci.Polym.
Ed.7:623〜645を参照のこと;生分解性処方物および注射可能なゲル
組成物としては、例えば、Gao(1995)Pharm.Res.12:85
7〜863(1995)を参照のこと;または経口投与のためのミクロスフェア
としては、例えば、Eyles(1997)J.Pharm.Pharmaco
l.49:669〜674を参照のこと)。経皮経路および皮内経路の両方は、
数週間または数ヶ月間、一定の送達を提供する。
【0091】
本発明のGRアンタゴニストの薬学的処方物は、塩として提供され得、そして
多くの酸(塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むが
これらに限定されない)で形成され得る。塩は、対応する遊離塩形態である、水
性溶媒または他のプロトン性溶媒中でより可溶性の傾向がある。他の場合には、
好ましい調製物は、1mM〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%スクロース、
2%〜7%マンニトール中(pH4.5〜5.5の範囲)での凍結乾燥した散剤
であり得、これは、使用の前に緩衝液と組み合わされる。
【0092】
別の実施態様において、本発明のGRアンタゴニスト処方物は、静脈内(IV
)投与または体腔もしくは器官腔内への投与のような、非経口投与に有用である
。投与のための処方物は、一般に、薬学的に受容可能なキャリア中に溶解したG
Rアンタゴニスト(例えば、ミフェプリストン)の溶液を含む。用いられ得る受
容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水およびリンゲル溶液、等張な塩化ナト
リウムがある。さらに、滅菌不揮発性油は、従来のように、溶媒または懸濁培質
として用いられ得る。この目的のために、任意のブランドの不揮発性油(合成モ
ノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む)が用いられ得る。さらに、脂肪酸
(例えば、オレイン酸)は、注射剤の調製に同様に使用され得る。これらの溶液
は、無菌であり、そして一般には、所望されない物質を含まない。これらの処方
物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌され得る。この処方物は、pHの調整剤
および緩衝化剤、毒性調整剤(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化
カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど)のような生理学的条件に近づ
けるために必要とされるような、薬学的に受容可能な補助物質を含み得る。これ
らの処方物におけるGRアンタゴニストの濃度は、広範に変動し得、そして液体
の容量、粘度、体重などに主に基づいて、選択される投与の特定の様式および患
者の必要性に従って、選択される。IV投与については、この処方物は、無菌の
注射可能な処方物(例えば、無菌の注射可能な水性懸濁液または油性懸濁液)で
あり得る。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、
公知の技術に従って処方され得る。無菌の注射可能な調製物はまた、非毒性の非
経口的に受容可能な希釈剤または溶媒(例えば、1,3−ブタンジオールの溶液
)中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であり得る。
【0093】
別の実施態様において、本発明のGRアンタゴニスト処方物は、細胞膜と融合
するか、またはエントサイトーシスされるリポソームの使用によって(すなわち
、エンドサイトーシスを生じる細胞の表面膜タンパク質レセプターに結合する、
リポソームに付着するかオリゴヌクレオチドに直接付着するリガンドを用いるこ
とによって、送達され得る。リポソーム(特に、ここでリポソーム表面が標的細
胞に特異的なリガンドを保有するか、またはそうでなければ特定の器官に優先的
に指向する)を使用することによって、インビボで標的細胞中へのGRアンタゴ
ニストの送達に焦点をあて得る。例えば、Al−Muhammed(1996)
J.Microencapsul.13:293〜306;Chonn(199
5)Curr.Opin.Biotechnol.6:698〜708;Ost
ro(1989)Am.J.Hosp.Pharm.46:1576〜1587
を参照のこと。
【0094】
(b.グルココルチコイドレセプターアンタゴニストについての用量レジメの
決定)
本発明の方法は、痴呆を処置する。すなわち、認知低下の発症を予防するか、
遅延させるか、またはその重篤度を減少させる。これを達成するために適切なG
Rアンタゴニストの量は、「治療的有効用量」と定義される。投薬計画およびこ
の使用に有効な量(すなわち、「投薬レジメ」)は、種々の因子(疾患または状
態の段階、疾患または状態の重篤度、患者の健康の一般状態、患者の身体的状態
、年齢などを含む)に依存する。患者に対する投薬レジメを算定する際に、投与
の様式もまた考慮に入れられる。
【0095】
投薬レジメはまた、当該分野で周知の薬物速度論パラメータ(すなわち、GR
アンタゴニストの吸収速度、バイオアベイラビリティー、代謝、クリアランスな
ど)を考慮に入れる(例えば、Hidalgo−Aragones(1996)
J.Steroid Biochem.Mol.Biol.58:611〜61
7;Groning(1996)Pharmazie 51:337〜341;
Fotherby(1996)Contraception 54:59〜69
;Johnson(1995)J.Pharm.Sci.84:1144〜11
46;Rohatagi(1995)Pharmazie 50:610〜61
3;Brophy(1983)Eur.J.Clin.Pharmacol.2
4:103〜108;Remington‘s 最新版、前出を参照のこと)。
例えば、1つの研究において、ミフェプリストンの一日の用量の0.5%未満が
、尿中に排出された;この薬物は、循環しているアルブミンに広汎に結合した(
Kawai(1989)前出を参照のこと)。当該分野の状態は、臨床医が、各
々の個々の患者、GRアンタゴニストおよび処置される疾患または状態について
の投薬レジメを決定することを可能にさせる。例示的な例としては、ミフェプリ
ストンについて以下に提供されるガイドラインは、本発明の方法を実施する場合
に投与される任意のGRアンタゴニストの投薬レジメ(すなわち用量計画および
投薬レベル)を決定する指針として使用され得る。
【0096】
GRアンタゴニスト処方物の単回投与または複数の投与は、患者により必要お
よび寛容されるような、投薬量および頻度に依存して投与され得る。この処方物
は、痴呆を効果的に処置するに十分な量の活性薬剤(すなわち、ミフェプリスト
ン)を提供するべきである。従って、ミフェプリストンの経口投与についての1
つの代表的な薬学的処方物は、1日当たり体重1kg当たり約0.5mg〜約2
0mgの間の、一日量である。別の実施態様において、1日当たり患者当たり体
重1kg当たり約1mg〜約4mgの投薬量が、使用される。より低い投薬量が
、特にその薬物が、経口、血流中、体腔中または器官の内腔中への投与とは対照
的に、解剖学的に隔離された部位(例えば、脳脊髄液(CSF)間隙)に投与さ
れる場合、使用され得る。実質的により高い投薬量が局部投与に使用される。非
経口的に投与可能なGRアンタゴニスト処方物を調製するための実際の方法は、
当業者に公知であるかまたは明らかであり、そしてRemington’s(前
出)のような刊行物により詳細に記載される。Nieman、「Recepto
r Mediated Antisteroid Action」、Agarw
alら編、De Gruyter、New York(1987)もまた参照の
こと。
【0097】
本発明のGRアンタゴニストを含む薬剤が受容可能なキャリア中に処方された
後に、適切な容器中に配置され得、そして示された状態の処置に標識され得る。
GRアンタゴニストの投与について、このような標識は、例えば、投与の量、頻
度および方法に関する使用説明書を含む。1つの実施態様において、本発明は、
ヒトの痴呆の処置のためのキット(GRアンタゴニストおよびGRアンタゴニス
トの投与の適応症、投薬量および計画を教示する使用説明書を含む)を提供する

【0098】
本明細書中に記載される実施例および実施態様は、例示の目的のみのためであ
り、そして種々の改変または変化が、当業者に示唆され、そして本出願の精神お
よび範囲ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきであることが理
解される。
【実施例】
【0099】
(実施例)
以下の実施例は、特許請求の範囲の発明を例示するように提供されるがこれら
に限定されない。
【0100】
(実施例1:ミフェプリストンでの痴呆の処置)
以下の実施例は、本発明の方法が痴呆に有効な処置であることを実証する研究
を詳述する。
【0101】
(研究の背景)
本研究は、約200mgの一日の投薬量で投与されるグルココルチコイドレセ
プター(GR)アンタゴニストであるミフェプリストンがアルツハイマー病の経
過において初期の認知低下を遅延させる有効な処置であることを実証する。
【0102】
(患者の選択)
本研究における個体を、アルツハイマー病の進行の初期状態において、主観的
な基準または客観的な基準(上記のような、National Institu
te of Neurological Diseases and Stro
ke(NINCDS)およびDSM−IVによる基準を含む)を使用して、診断
する。全ての患者は、スタンフォード大学医療センターのヒト被験体委員会(H
uman Subject Committee at Stanford U
niversity Medical Center)により承認されたプロト
コルに対する自らの書面の承諾を与える。
【0103】
2人の精神医学者により確認されたアルツハイマー型の痴呆の診断を有する患
者のみを、本研究において登録する。この疾患の進行において相対的に初期であ
る患者のみを選択する。すなわち、進行状態に進行していない痴呆を有する個体
のみを本研究に含む。例えば、個体がFolstein簡易精神状態検査(Mi
ni Mental Status Exam)において少なくとも約21をス
コア付けし得る場合、患者をアルツハイマー病の経過において初期であるとみな
す。被験体のMMSEスコアが少なくとも21であることを必要とすることは、
その被検体がアルツハイマー病の進行において十分に初期に入り、その結果合理
的な長期的な進行を算定し得ることを保証する。
【0104】
公知の内分泌障害または任意の他の有意な医学的疾病を患う患者を除外する。
ApoE e4対立遺伝子を保有する、アルツハイマー病を患う個体を、本研究
で認可しない。3オンスよりも多いアルコールを毎日使用するか、またはアルコ
ール依存症の病歴を有する被験体もまた除外する。
【0105】
(実験室での試験)
午後のコルチゾール試験測定(Afternoon Cortisol Te
st measurement)は、本研究についてのベースラインのコルチゾ
ールの尺度である(0日目とする)。薬物療法またはプラセボを受けた後の1週
間目(14日目)に開始して、および本研究の最後までの各通院毎に、その被験
体を、血液試験ならびに精神医学的評価および認知評価について外来患者として
認める。患者は、残っている4ヶ月に対して4週間毎に戻ってくる。コルチゾー
ルレベルを、13:00〜16:00に1時間半毎に連続して測定する;血漿A
CTHを、13:00〜16:00に1時間毎に連続して測定する。さらに、血
液をCBC鑑別的試験およびChem 20 lab試験のために採取する。こ
れらの血液学的試験を、0日目、14日目、および28日目の第1回目の用量(
薬物療法またはプラセボ)の前に、次いで本研究が終了するまで(合計6ヶ月)
4週間毎に実行する。以下の計画を7日目より後の各通院について使用する。
時間 行動
1130 承認(外来患者の状態)
1145 身体的症状および認知症状チェックリストの適用
1200 昼食
1245 静脈内ラインの配置
1300〜1600 血液をコルチゾールについて1時間半毎の採取
1300〜1600 血液をACTHについて1時間毎の採取
1600 ミフェプリストンまたはプラセボの処方(28日目に供給

存在する場合、副作用を、被験体と会う全ての研究調査官によって、各々の通
院時に注意深く記録する。研究外科医は、本プロトコルの進行の間に各被験体を
モニターし、そして有害な反応について適切な行動を推奨する。
【0106】
(血中コルチゾールレベルの測定)
「Double Antibody Cortisol KitTM」(Dia
gnostic Products Corporation、Los Ang
eles、CA)を使用して、血中コルチゾールレベルを測定する。この試験は
125I−標識コルチゾールが抗体部位について臨床サンプル由来のコルチゾー
ルと競合する競合ラジオイムノアッセイであり、そして製造業者により供給され
る試薬を使用して、製造業者の指示に本質的に従って実行する。手短には、血液
を静脈穿刺より収集し、そして血清を細胞から分離する。このサンプルを7日目
まで2〜8℃、または2ヶ月後まで−20℃で凍結して貯蔵する。アッセイの前
に、サンプルを、穏やかに回転するかまたは倒置することによって室温(15〜
28℃)にする。1チューブ当たり25μlの血清の2連の16個のチューブを
調製する。コルチゾール濃度を調製した較正チューブから算定する。正味のカウ
ントは、平均CPM−平均非特異的CPMに等しい。未知のコルチゾール濃度を
、較正曲線から外挿することによって評価する(Dudleyら(1985)C
lin.Chem.31:1264〜1271)。
【0107】
(ミフェプリストンの投薬レジメおよび投与)
グルココルチコイドレセプター(GR)アンタゴニストであるミフェプリスト
ンを本研究に使用する。200mgの投薬量を毎日投与する。本研究の始まりの
7日後に、患者を2つの群のうちの1つに無作為化する。第1の群における個体
に200mgのミフェプリストンを6ヶ月間毎日与える。第2の群における被験
体にプラセボを6ヶ月間毎日与える。被験体および調査者の両方には、患者がど
の化合物を受けたかに関して知らせない。
【0108】
ミフェプリストン錠剤を、Shanghai HuaLian Pharma
ceuticals Co.Ltd.、Shanghai、China(現在、
ミフェプリストンの唯一の商業的な供給源)により供給する。
【0109】
(痴呆の処置の評価)
アルツハイマー病において高コルチゾール血症と関連する任意の特定の認知欠
損およびアルツハイマー型の痴呆の進行および程度を遅延させるかまたは和らげ
るミフェプリストンの能力を詳述するために、公式の精神医学的評価ならびに一
連の神経精神医学的な試験および評価(MMSEを含む)を、全ての患者に適用
する。これらの試験および診断的評価は、ベースライン(本研究への患者の開始
)および最初の6ヶ月後(患者が薬物摂取を停止する時点)に行う。一連の試験
は、言語による記憶および言語によらない記憶;管理的な(executive
)機能(例えば、要約の合理化および問題解決);言語(対面時の命名(con
frontation naming)および言葉の流暢さの両方を含む);空
間視覚の能力および空間認知の能力;ならびに注意の尺度を含む。
【0110】
(結果)
これらのデータは、毎日の約200mgの範囲において、ミフェプリストンは
、アルツハイマー病の認知低下速度を減少させるために、効果的かつ安全な処置
であることを実証する。
【0111】
本明細書中に記載される実施例および実施態様は、例示の目的のみのためであ
り、そしてそれらに鑑みて種々の改変または変化が当業者に示唆され、そして本
願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含められることが
理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Folstein簡易精神状態検査で21〜29の間のスコアを有すると決定され痴呆の症状を有すると診断された個体において痴呆を処置するための有効量のグルココルチコイドレセプターアンタゴニストを含む、組成物。
【請求項2】
前記個体のスコアがFolstein簡易精神状態検査で30未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記個体がFolstein簡易精神状態検査で約21〜29の間のスコアにより示される、アルツハイマー疾患の経過において初期である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記痴呆が、アルツハイマー疾患および多発脳梗塞性痴呆からなる群より選択される状態と関連している、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記痴呆がアルツハイマー疾患と関連しており、そしてアポリポタンパク質E4対立遺伝子の非存在またはアポリポタンパク質E4の発現の欠失が付随する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、ステロイド骨格の11−β位に少なくとも1つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ステイロド骨格の11−β位のフェニル含有部分がジメチルアミノフェニル部分である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストがミフェプリストンを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、RU009およびRU044からなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1日当たり体重1kg当たり約0.5mg〜約20mgの量で投与されるのに適切な形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1日当たり体重1kg当たり約1mg〜約10mgの量で投与されるのに適切な形態である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1日当たり体重1kg当たり約1mg〜約4mgの間の量で投与されるのに適切な形態である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、経口投与に適した形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、経皮適用によってか、霧状懸濁によってか、またはエアロゾルスプレーによって投与されるのに適切な形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
ヒトにおいて痴呆を処置するためのキットであって、該キットが、以下:
グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト;および、
該グルココルチコイドレセプターアンタゴニストの投与の適応症、投薬量および計画を教示する使用説明書、
を含む、キット。
【請求項16】
前記使用説明書が、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが1日当たり体重1kg当たり約0.5mg〜約20mgの量で毎日投与され得るということを示す、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記使用説明書が、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが1日当たり体重1kg当たり約1mg〜約10mgの量で毎日投与され得るということを示す、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記使用説明書が、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが1日当たり体重1kg当たり約1mg〜約4mgの量で毎日投与され得るということを示す、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
コルチゾールが痴呆を患う患者における認知低下の速度に寄与すること、そして前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが痴呆を処置するために使用され得るということを、前記使用説明書が示す、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、アポリポタンパク質E4対立遺伝子を有さないアルツハイマー病の患者の経過において初期に、処置のために使用され得ることを、前記使用説明書が示す、請求項15に記載のキット。
【請求項21】
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストがミフェプリストンである、請求項15に記載のキット。
【請求項22】
前記ミフェプリストンが錠剤形態である、請求項15に記載のキット。
【請求項23】
前記使用説明書が、前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、1日に1回投与され得ることを示す、請求項15に記載のキット。

【公開番号】特開2009−185067(P2009−185067A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124741(P2009−124741)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【分割の表示】特願2000−549261(P2000−549261)の分割
【原出願日】平成10年10月5日(1998.10.5)
【出願人】(591148484)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (8)
【Fターム(参考)】