説明

瘻カテーテル

【課題】栄養剤注入用器具等との接続が容易で、更に栄養剤注入速度が高く、なお且つ日常動作の邪魔になり難い瘻用カテーテルを提供することを目的とする。
【解決手段】外部バンパ3を有すると共に、栄養剤注入用器具と接続するためのコネクタ7が、少なくとも栄養剤注入用器具と接続する際に外部バンパ3の外部に配置される瘻カテーテル1であって、該外部バンパ3が、栄養剤注入用器具等とのコネクタ7を保持する機構を有していることを特徴とする瘻カテーテル1を提供した。また、該コネクタ7を保持する機構が、外部バンパ3に設けられた収納部、或いは固定治具であることを特徴とする瘻カテーテル1を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養剤注入用器具とのコネクタを保持することが可能な外部バンパを有する瘻カテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
口から食事を摂取できない患者は、例えば胃瘻チューブを介して栄養補給することが多く見られる。胃瘻チューブは、通常、胃と体外をつなぎ、抜けないように内部バンパ(胃内)と外部バンパ(体外)で止める機構を有している。
【0003】
胃瘻チューブの外部バンパには、大きく分けて「ボタン型」と「チューブ型」の2種類がある(「ボタン型」、「チューブ型」の外部バンパを有する胃瘻カテーテルの構造の例を、それぞれ図1、2に示した。)。
【0004】
ボタン型の長所は、目立たず日常動作の邪魔にならないので患者のQOL(クオリティーオブライフ)に貢献する。一方、短所は、指先でボタンを開閉し難いこと、栄養チューブとの接続がし難いこと、さらに栄養剤の流路が狭いことである。
【0005】
これに対しチューブ型の長所は、栄養チューブとの接続が容易であることである。短所は、チューブが長いためチューブ内の感染が起き易いこと、体外に露出したチューブが邪魔になり事故抜去(引張って又は、引っ掛って抜ける)し易いことである。このように、ボタン型、チューブ型ともに改善の余地があることがわかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】NPO法人 PEGドクターズネットワーク ホームページ(http://www.peg.ne.jp/eiyou/peg/about.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点を改善するものであって、栄養剤注入用器具との接続が容易で、更に栄養剤注入速度が高く、なお且つ日常動作の邪魔になり難い瘻カテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、外部バンパを有すると共に、栄養剤注入用器具と接続するためのコネクタが、少なくとも栄養剤注入用器具と接続する際に外部バンパーの外部に配置される瘻カテーテルであって、該外部バンパが、栄養剤注入用器具とのコネクタを保持する機構を有していることを特徴とする瘻カテーテルを提供した。これによれば、栄養剤注入用器具との接続が容易で、注入速度が高く、更に日常動作の邪魔になり難い瘻カテーテルを提供することが可能である。
【0009】
また、コネクタを保持する機構が、コネクタを収納可能な、外部バンパに設けられた収納部であることを特徴とする前記瘻カテーテルを提供した。
【0010】
また、コネクタを保持する機構が、外部バンパに設けられた固定治具であることを特徴とする前記瘻カテーテルを提供した。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、栄養剤注入用器具との接続が容易で、更に栄養剤注入速度が高く、なお且つ日常動作の邪魔になり難い瘻カテーテルを提供することが可能となり、患者のQOL(クオリティーオブライフ)に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ボタン型の胃瘻カテーテル
【図2】チューブ型の胃瘻カテーテル
【図3】テーパー状部分を有するコネクタの一例
【図4】テーパー状部分に同心円状のリブを有するコネクタの一例
【図5】瘻カテーテルの挿入軸に対し平行にコネクタを収納する構造の一例の拡大図(収納前)
【図6】瘻カテーテルの挿入軸に対し平行にコネクタを収納する構造の一例の拡大図(収納後)
【図7】瘻カテーテルの挿入軸に対し約90°の方向にコネクタを向けて固定する構造の例(a),(b)の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の瘻カテーテルは、外部バンパを有すると共に、栄養剤注入用器具と接続するためのコネクタが、少なくとも栄養剤注入用器具と接続する際に外部バンパーの外部に配置される瘻カテーテルであって、該外部バンパが、栄養剤注入用器具とのコネクタを保持する機構を有していることを特徴としている。ここで、コネクタを保持する機構としては各種構造を選択することが可能であるが、例えば第1の例として、コネクタを保持する機構として、コネクタを収納可能な、外部バンパに設けられた収納部、更には、該コネクタと外部バンパの間にチューブを有する場合は、コネクタとチューブを収納可能な、外部バンパに設けられた収納部を挙げることができる(また、チューブのみを収納することも考えられる。)。また、第2の例として、コネクタを保持する機構として、外部バンパに設けられた固定治具を挙げることができる。これらの構造によれば、瘻カテーテルが栄養剤注入用器具とのコネクタを、少なくとも栄養剤注入用器具と接続する際に外部バンパーの外部に有していることから、栄養剤注入用器具との接続が容易で、なお且つ栄養剤注入速度を高くすることが可能になる。また、このコネクタを瘻カテーテルの外部バンパに保持することが可能であることから、体外に露出したチューブが邪魔になったり、或いは事故抜去(引張って又は、引っ掛って抜ける)することを防止することが可能となり、患者のQOLに貢献することができる。
【0014】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下に説明する具体的事例に限定されるものではない。
【0015】
1.瘻カテーテル
本発明の瘻カテーテルとしては、医療分野において栄養剤や薬剤等を移送するのに用いられ、外部バンパを有す各種カテーテルを対象とすることができるが、特に体内と体外両方からカテーテルを固定するものであることが好ましい。この様な例として、胃瘻カテーテル、空腸瘻カテーテル(PEJ)、食道瘻カテーテル(PTEG)、盲腸瘻カテーテル、直腸瘻カテーテル等を挙げることができるが、この中でも特に胃瘻カテーテルに好適に利用することができる。
【0016】
2.コネクタ
本発明の瘻カテーテルのコネクタには各種器具を接続することが可能であるが、特に栄養剤注入用器具と接続することが想定される。本発明のコネクタは、胃瘻カテーテルでは造設用カテーテル、交換用カテーテル、キット内の付属品等の接続用にも利用することができる。このコネクタの形状としては、栄養チューブなどの栄養剤注入用器具と接続可能で、更に栄養剤注入用器具と接続する際に外部バンパーの外部に配置される構造であれば特に問題は無いが、受け側の構造で、その受け部の内面がテーパー状(例えば、図3のようなテーパー(ファネル)型の例)や、更にこの構造に加え、そのテーパー状部分に同心円状、或いはらせん状のリブを設けた構造(図4のようにテーパー型の内側嵌合部に同心円状に突起(リブ)があるものなど)を好適に用いることができる。また、JIS T3212記載のカテーテルテーパー構造と適合することが好ましい。また、コネクタの遠位側内部、或いは近位側内部に栄養剤等の逆流防止弁を備えていることが好ましい。その逆流防止弁は一方向のみしか流体が流れないチェックバルブであることが好ましく、更にはカテーテルテーパー部品を接続することで開くバルブであることが好ましい。
【0017】
尚、このコネクタに接続される器具、例えば栄養剤注入用器具としては、特にJIS T3212記載のカテーテルテーパーを有するものであることが好ましく、例えばシリンジ、栄養チューブ、栄養剤の容器に付属しているものなど、栄養剤を注入する際に用いる器具が挙げられる。
【0018】
3.原料
本発明の瘻カテーテル(コネクタを含め)を構成する材料としては各種材料を用いることが可能であるが、例えばシリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂などを使用することができる。或いは、シリコーン、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂等の各種樹脂から任意に選択される2種以上の混合物を用いることもできる。その中でも、シリコーン、或いはポリウレタン系樹脂とスチレン系樹脂の混合樹脂(特にスチレン系エラストマー)であることが好ましい。
【0019】
さらに、前記樹脂組成物には、材料の熱力学的特性や、生体適合性などの特徴を著しく損なわない範囲で、顔料、染料、安定剤、酸化防止剤、滑剤、造核剤、増量剤、充填剤、補強剤、造粘剤、相溶化剤、などの各種有機/無機物を混合してもよい。
【0020】
コネクタの成形方法は、特に限定されるものではないが、射出成形やLIM成形等によって行うことが好ましい。
【0021】
4.コネクタを保持する機構
本発明の瘻カテーテルは、外部バンパにコネクタを保持する機構を有していることを特徴としている。本構造について、以下、例を挙げて説明する。
【0022】
第1の例として、コネクタを保持する機構が、コネクタと、該コネクタと外部バンパの間にチューブを有する場合は当該チューブとを収納可能な、外部バンパに設けられた収納部である構造について説明する。当該構造の例を図5、6に示した。これらの図はメス側のコネクタであって、特に図5はオス側のコネクタを接続可能な収納前の状態を表しており、図6は収納後の状態を表している。尚、図5、6の例は、収納部が瘻カテーテルの挿入軸に対し平行にコネクタが収納される構造であるが(この場合、外部バンパの厚みを考慮して、コネクタ、或いは該コネクタと外部バンパの間にチューブを有する場合は当該チューブがこれに収まる様に形成することが望ましい。その様な観点から、コネクタが外部バンパに直接設けられていることが好ましく、更にコネクタが外部バンパの収納部に直接設けられていることが好ましい。図5、6の例はコネクタが外部バンパの収納部に直接設けられた例を示している。)、これとは別に瘻カテーテルの挿入軸に対し略90°の方向にコネクタを向けて収納する構造とすることも可能である(ここで略90°とは、外部バンパの近位側表面(天面)に対しコネクタの側面が沿うように配置されることを意図したもので、75°〜105°の範囲であることが好ましい。この様に固定する場合、外部バンパ天面からの出っ張りを低減することが容易となる。また、先の例と同様に、コネクタが外部バンパに直接設けられていることが好ましく、更にコネクタが外部バンパの収納部に直接設けられていることが好ましい。)。
【0023】
一方、図5、6の例では、コネクタはテーパー部品が組み上げられて形成される構造をしており、その中でも特にテーパー部品の角がオス側と嵌合する際に同心円状リブの役割を担う構造とされている(これとは別に、コネクタをコイル状に形成することで、らせん状のリブを得ることも可能である。但し、これらリブは必ずしもコネクタの伸縮構造に基づいたものである必要はなく、別途設けることも可能である。一方、段差をなくし、単純なテーパー状とすることも可能である。)。また、このテーパー部品はスライドして組み上げられた後に、回転させることでロックでき、テーパー形状を保持できる構造とすることが更に好ましい。尚、収納状態からオス側コネクタとの嵌合状態とする手順としては、図5のように組み立ててからオス側コネクタを挿入する方法と、図6の状態からキャップ26を取り除いた後に、先ずオス側コネクタを差し込み、そのオス側コネクタに沿ってコネクタを引き出す方法が可能である。なお、図5で取っ手24として示した様に、手で引き出しやすい構造を備えていることが好ましい。尚、図6に示した様に、収納時は外部バンパから図面上の上部に大きくはみ出さないようにコンパクトになることが好ましい(図5、6では、スライドして伸縮する構造が示されているが、この他にも例えば蛇腹構造とすることも可能である。)。
【0024】
第2の例として、コネクタを保持する機構が、外部バンパに設けられた固定治具である構造について説明する。当該構造の例として図7に(a)、(b)として2例を示した。これらの図は共に瘻カテーテルの挿入軸に対し略90°の方向に前記コネクタを向けて固定する構造であるが(固定治具を設ける構造では、特にコネクタ、或いはその根元や間に介するチューブを曲げて固定することとなり易く、コネクタの外部バンパ天面からの出っ張りを低減することが容易な点で挿入軸に対し略90°の方向に固定することが好ましい。)、これとは異なり瘻カテーテルの挿入軸に対し平行にコネクタが固定される構造とすることも可能である。尚、この固定冶具としては、コネクタとの嵌合構造有するものが使用できる。この固定治具のホルダーとしては、各種方法を採用することが可能であるが、1ヶ又は複数のコネクタを引掛ける為のフック状のものを配置する方法や、外部バンパとコネクタの両方に磁石を配置、或いは一方に磁石、他方に磁性材料(例えば鉄など)を配置し、磁力を使って固定するもの、或いはマジックテープ(登録商標)を利用する方法などが挙げられる。尚、図7(b)に示した様に、更に磁石移動領域(固定解除位置)の様な、固定を解除する手段、或いは固定されない状態を保持することが可能な手段が設けられていることが、更に好ましい。
【0025】
これらの方法によれば、コネクタを外部バンパにコンパクトに保持することが可能であり、患者のQOLに貢献する。更に、カテーテルテーパーなどの接続部を有する栄養剤注入用器具との接続においても容易に操作でき、比較的大きな流路を確保することができ、十分に栄養剤等の流量を確保することができる。
【符号の説明】
【0026】
1.胃瘻カテーテル ボタン型
2.内部バンパ
3.外部バンパ
4.胃壁及び腹部
5.胃瘻カテーテル チューブ型
7.コネクタ
8.チューブ
10.コネクタ本体
12.接続口
14.リブ
20.収納用外部バンパ
21.接続口
22.スライド式テーパー部品
24.取っ手
26.キャップ
28.チューブ
30.キャップ
32.ホルダー
34.磁石(固定位置)
36.磁石移動領域(固定解除位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部バンパを有すると共に、栄養剤注入用器具と接続するためのコネクタが、少なくとも栄養剤注入用器具と接続する際に外部バンパーの外部に配置される瘻カテーテルであって、
該外部バンパが、栄養剤注入用器具とのコネクタを保持する機構を有していることを特徴とする瘻カテーテル。
【請求項2】
前記コネクタを保持する機構が、コネクタを収納可能な、外部バンパに設けられた収納部であることを特徴とする請求項1に記載の瘻カテーテル。
【請求項3】
前記収納部が、コネクタと、該コネクタと外部バンパの間にチューブを有する場合に当該チューブとを収納可能であることを特徴とする請求項2に記載の瘻カテーテル。
【請求項4】
前記コネクタが、外部バンパに直接設けられていることを特徴とする請求項2に記載の瘻カテーテル。
【請求項5】
前記コネクタが、外部バンパの収納部に直接設けられていることを特徴とする請求項4に記載の瘻カテーテル。
【請求項6】
前記収納部が、瘻カテーテルの挿入軸に対し平行に前記コネクタを収納する構造であることを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載の瘻カテーテル。
【請求項7】
前記コネクタを保持する機構が、外部バンパに設けられた固定治具であることを特徴とする請求項1に記載の瘻カテーテル。
【請求項8】
前記固定治具が、瘻カテーテルの挿入軸に対し略90°の方向に前記コネクタを向けて固定する構造であることを特徴とする請求項7に記載の瘻カテーテル。
【請求項9】
前記固定治具が、コネクタとの嵌合構造を有するものであることであることを特徴とする請求項7又は8の何れか1項に記載の瘻カテーテル。
【請求項10】
前記固定治具に磁石を有し、更にコネクタ側にも磁石が配置されているか、或いは固定治具、コネクタ側の何れか一方に磁石、他方に磁性材料が配置されていることを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の瘻カテーテル。
【請求項11】
前記コネクタが、メス側で、その受け部の内面がテーパー状で、なお且つそのテーパー状部分に同心円状、或いはらせん状のリブを有することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の瘻カテーテル。
【請求項12】
前記瘻カテーテルが、胃瘻カテーテルであることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の瘻カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−115509(P2011−115509A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278068(P2009−278068)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】