説明

癌およびその前駆病変の検出のための化合物および方法

本発明は、癌腫およびその前駆病変の検出および処置のための化合物および方法に関する。本発明は、癌腫およびその前駆病変の検出および処置に有用なDNase核酸およびポリペプチドを提供する。本発明はまた、より詳細には、生物学的試料中の1以上のDNase分子の亜細胞局在および/またはレベルの検出を含む癌腫およびその前駆病変の検出方法に関する。さらに、本発明は、癌腫およびその前駆病変の疾患課程の診断、予後およびモニタリングのための方法ならびに該病変の処置のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、癌およびその前駆病変を検出および処置するための化合物および方法に関する。本発明は、癌およびその前駆病変の検出および処置に有用なDNase核酸およびポリペプチドを提供する。本発明はより詳細には、生物学的試料中の1つ以上のDNase分子のレベルおよび/または亜細胞局在化の検出を含む、癌およびその前駆病変の検出方法に関する。さらに、本発明は、癌およびその前駆病変の疾患経過の診断、予後およびモニタリングのため、ならびに上記障害の処置のための方法を提供する。
【0002】
大抵の腫瘍では初期治療後の患者の転帰と、疾患が診断された病期との間に強い相関関係がある。そのため癌が初期に検出されるほど、患者が生存する見込みが高くなる。従って、初期の腫瘍、または前癌期等の癌の準備期の腫瘍もしくは悪性癌期の前駆体をも検出するための高感度の試験方法が必要とされている。
【0003】
腫瘍の初期診断の最も有望な方法は、腫瘍に特徴的な、または腫瘍の前駆期に特徴的な分子マーカーを含むものである。
【0004】
癌は非常に異質な疾患であり、複数の細胞増殖調節因子が癌の発生に関与しうる。これらの細胞周期の調節エレメントは、変異した場合、オンコジーンと呼ばれる正の調節因子(それによりトランスフォーム状態に達する)、または腫瘍抑制遺伝子と呼ばれる負の調節因子のいずれかでありうる。細胞周期の調節に関与することが知られており、癌の発生の潜在的な原因因子である因子の数は、知られているもので100を超え、さらに増加している。
【0005】
細胞の癌状態の発生に関与する分子は、癌細胞と正常な組織とを識別するために使用されうる。癌組織は、がん細胞に特徴的な分子を検出することにより検出されうる。これは、癌の発生に潜在的に関与する多数の分子により精巧になっている。
【0006】
腫瘍の診断の改良のために、特異的初期検出を可能にし、早期に病変を処置する機会を与える、癌およびその前駆病変の診断に使用するための新規マーカー分子が必要とされている。
【0007】
本発明は、癌およびその前駆病変の検出に使用するためのDNase核酸およびポリペプチドを提供する。本発明に従って、これらの分子は、癌およびその前駆病変(例えば、初期の胃腸管障害、呼吸器障害等でさえ)の総合的な検出を可能にする分子マーカーとして使用されうる。さらに、癌およびその前駆病変の検出方法が提供される。
【0008】
本発明をもたらした実験の間、DNase分子は、癌およびその前駆病変の検出のための分子マーカーとして働きうることが示され得た。癌およびその前駆病変の検出のためのDNase核酸またはポリペプチドの診断価値は今日まで公開されていない。
【0009】
腫瘍中のDNaseの変異に関する開示が見出されうる。癌およびその前駆病変の検出および診断のためのDNase分子の使用に関する示唆はまだない。
【0010】
癌およびその前駆病変ならびに腫瘍の異なる病期におけるDNaseの発現に対する研究は、その診断および予後目的のためのその使用を解明した。従って、本発明は、試料中のDNase核酸、およびこれらのDNase核酸によりコードされるポリペプチドの発現のレベルが、癌およびその前駆病変(例えば、胃腸管病変、呼吸器の病変)を診断および等級付け、疾患の経過を予測し、初期治療後に疾患を追跡することを可能にするという下記の実施例に示される本発明者らの知見に基づく。
【0011】
本発明者らは、免疫化学的手順において、DNaseは、特に核内のような特異的な亜細胞領域において検出可能でありうることを示し得た。DNase Xの場合には、免疫組織化学的手順における示差的染色パターンが実験に使用された各々の結合因子に依存しうることを示し得た。DNase Xが、腫瘍および正常組織からのウェスタンブロットまたはELISAアッセイにおいて等しいレベルで検出されうることが示され得た。対照的に、同じ組織は、腫瘍試料中のDNase Xの特異的核染色パターンを示し、正常な対照試料において染色を欠く。さらに本発明者らは、体液におけるDNAse活性の検出が癌または癌前駆体を有する個体の同定に使用されうることを見出した。
【0012】
これは、正常組織において使用された抗体により認識されるエピトープのマスキングによるものであり得る。腫瘍組織において、エピトープは、特に細胞核においてマスクされない。
【0013】
本発明は、生物学的試料中の1つ以上のDNase分子の検出を含む癌および前駆病変の検出方法を提供する。本発明による方法の過程におけるDNase分子の検出は、生物学的試料中のDNase分子のレベルの検出、生物学的試料中のDNase分子の有無の検出、または例えば細胞におけるDNase分子の局在の測定を含みうる。
【0014】
ある局面では、本発明の方法は、結腸直腸病変等の異常細胞増殖に関連する障害の早期検出に特に有用であり、微小残存病変の診断の過程における播種性腫瘍細胞の検出に特に有用である。上記癌およびその前駆病変の検出のための方法は、DNase分子の(亜細胞性)局在化の検出、DNase分子の有無および/またはレベルの検出、または生物学的試料中のDNase分子の特異的エピトープの接近可能性(検出可能性)の検出を含みうる。この方法は、例えば、試料を得るための低侵襲的または非侵襲的手順を使用しうる。
【0015】
本発明の別の局面では、DNaseポリペプチドおよび/またはDNase核酸の上記検出方法は、腫瘍治療の病気分類、予後の評価、モニタリングおよびストラテジーのデザインの過程において分子マーカーとして使用されうる。
【0016】
本発明はさらに、癌およびその前駆体病変(例えば、結腸直腸病変、肺癌、胃癌、食道癌、乳癌、子宮頸癌等)の検出において使用するためのDNase核酸およびポリペプチドを提供する。
【0017】
本発明はまた、DNaseポリヌクレオチドもしくはDNaseポリペプチドの検出のための診断キットまたは研究キット等のキット、またはDNaseポリヌクレオチド、DNaseポリペプチドもしくは癌およびその前駆病変の検出において使用するためのDNaseポリペプチドまたはポリヌクレオチドに特異的に結合する結合剤を含有するキットを提供する。
【0018】
本発明のある局面は、異常な細胞増殖に関連する障害の治療方法である。この局面では、本発明のDNaseポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドは、免疫療法または遺伝子治療の過程において上記障害を患う個体に投与されうる。1つ以上のDNase核酸および/またはポリペプチドは、単独でまたは他の分子と組み合わせて癌およびその前駆病変の治療に使用されうる。
【0019】
本発明のさらに別の局面は、本明細書に開示されるDNaseポリペプチドおよび/またはDNaseポリヌクレオチド単独または1つ以上の他の治療剤または診断剤および/またはキャリアもしくはアジュバント物質との組み合わせを含有する医薬組成物である。
【0020】
本発明のさらに別の局面は、本発明の核酸およびポリペプチドに結合する分子ならびに本発明に遺伝子の発現のアクチベーターおよびインヒビターの同定方法を提供することである。癌およびその前駆病変の治療のための薬物候補の同定方法も提供される。
【0021】
本発明の文脈で使用するためのDNase分子は、DNaseI(AJ298844),DNaseII(AB004574)、DNaseI様1(DNase X)(NM_006730)、DNaseI様2(AK098028)、DNaseI様3(DNaseγとも呼ばれる)(AF047354)、カスパーゼ活性化DNase(AB013918)、DNase KIAA0218(D86972)、DNaseII様DNase(AF274571)、DFF-45(AF087573)および他の公知のDNaseを含む。
【0022】
本発明の文脈で使用されるDNase分子は、核酸、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含みうる。核酸のレベルにおいて、マーカー分子は、ゲノムDNA、cDNA、およびmRNAまたはhnRNA等のRNAを含むDNAまたはRNAでありうる。
【0023】
一般的には、本明細書中で使用される接近可能性は、第2または第3の分子がその領域に接触または相互作用しうるような、表面上の高分子の特定の領域(エピトープ)の局在化を含みうる。高分子の特定の領域の接近可能性の任意の測定方法が、本発明の方法に使用されうる。かかる方法は、例えば、顕微鏡、結晶学等の物理的方法、高分子の官能基の誘導体化、高分子の近隣領域間の架橋等の化学的方法、または例えば免疫化学的手順における結合剤の適用を含みうる。
【0024】
特定の態様では、分子のエピトープの接近可能性は、例えば、結合剤を使用する方法により測定されうる。本発明の所定の局面では、エピトープに対して特異的に指向する結合剤が試料中のエピトープに結合し、認識しうる場合、エピトープは、接近可能であると言われる。逆に、特異的な結合剤がエピトープに結合し得ない場合、エピトープはマスクされているか、または接近可能でないと言われる。
【0025】
本発明により使用される発現は、例えばタンパク質の発現を含みうる。RNAの転写、従ってmRNAのレベルはまた、本発明による発現でありうると理解されうる。
【0026】
化合物の発現は、発現のレベルが30%より多く異なる場合、本発明により有意に変化したと言われる。発現の変化は、例えば上記化合物の発現の上昇または発現の減少を含みうる。変化した発現の別の局面は、化合物が非野生型環境下で発現される様式の変化でありうる。これは、化合物が、例えば発現を天然に抑制する状況下で発現されるか、化合物の発現を天然に誘導する状況下では発現されないことを含みうる。
【0027】
本明細書中で使用される発現の変化はまた、遺伝子の転写パターンにおける変化を含みうる。例えば、転写パターンの変化は遺伝子のオルタナティブスプライシングを含みうる。転写パターンの変化は、変化した転写物から翻訳されたポリペプチドに影響しうるか、または非翻訳領域に制限されうる。遺伝子の転写パターンの変化は、転写物における新規エキソン使用、転写物におけるエキソンの欠失、細胞の異なるスプライシングバリアントの比における変化を含みうる。従って、本明細書中で使用される遺伝子の転写パターンの変化は、対照組織において生じる野生型核酸と比べて核酸配列の付加的ストレッチを含むmRNA、cDNA等の核酸の産生を含みうる。
【0028】
あるいは、オルタナティブスプライシングパターンにより産生される核酸は、野生型ポリヌクレオチドに存在する核酸配列のストレッチを欠いた核酸を生じうる。付加的ストレッチの存在は、単一の転写物中のオリジナルの配列ストレッチの非存在と同時に起こりうる。本発明の文脈で使用される遺伝子の発現の変化はまた、遺伝子のスプライシングバリアントの発現のレベルにおける変化を含みうる。これは、特定のスプライシングバリアントの増大または減少した発現、ならびに野生型組織において存在しないバリアントの発現、または野生型組織に存在するスプライシングバリアントの発現の非存在を含みうる。ある態様では、スプライシングバリアントの発現の変化は、上記組織における種々のスプライシングバリアントの比の変化を含みうる。
【0029】
本発明の文脈において使用される核酸は、好ましくは、ポリヌクレオチドまたはその断片である。好ましいポリヌクレオチドは、本明細書中に開示される増殖障害に関連するポリペプチドと比較して、同一であるか、配列相同性を共有するか、または同一もしくは相同なポリペプチドをコードする少なくとも20個の連続したヌクレオチド、好ましくは少なくとも30個の連続したヌクレオチドおよびより好ましくは少なくとも45個の連続したヌクレオチドを含む。本発明の核酸はまた、上記ポリペプチドのいずれかに相補的でありうる。ポリヌクレオチドは、例えば、一本鎖(センスまたはアンチセンス)または二本鎖分子を含み得、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNAでありうる。RNA分子は、mRNA(イントロンを含有しない)と同様にhnRNA(イントロンを含有する)を含む。本発明に従って、ポリヌクレオチドはまた、支持材料または検出マーカー分子等の任意の他の分子に連結され得るが、さらなるコードまたは非コード配列を含む必要はない。
【0030】
本発明の方法に使用するためのDNaseポリヌクレオチドは、天然の配列またはそのバリアントでありうる。バリアントは、コードされるポリペプチドの免疫原性が、各々の天然のDNaseタンパク質と比べて、減少しないように1つ以上の置換、付加、欠失および/または挿入を含みうる。バリアントは、本発明の方法で使用される天然の核酸分子に対して、好ましくは65〜75%、より好ましくは少なくとも80%および最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を示す。本発明のある態様では、バリアントは、天然のDNase核酸に対して少なくとも65%〜99%または間の任意の値の配列同一性を示す。本発明の別の態様では、バリアントは、約60、65、70、75、80、85、90、95または100%の配列相同性を示す。配列類似性の測定方法は当業者に公知である。
【0031】
本発明のある態様では、天然のリガンドまたは結合パートナーへの相互作用が損なわれない様式で変化するDNase分子のバリアントが使用されうる。
【0032】
配列の相同性を検出するための1つの例は、DKFZ HeidelbergのHUSARサーバーにおいて利用可能なFastAおよび/またはBlastNバイオインフォマティクスソフトウェアを用いて行われうる。
【0033】
さらに、本発明の方法において使用するためのDNase核酸は、全てポリヌクレオチドであり、これは、ストリンジェントな条件下で本明細書中に開示される配列に特異的なプローブにハイブリダイズする。当業者に公知のハイブリダイゼーション反応のために適用されるストリンジェントな条件は、当業者に公知であり、Sambrookら、Molecular cloning: A Laboratory Manual, 第二版、1989に記載されるように適用されうる。
【0034】
本発明はまた、遺伝子コードの縮重のために、開示されるDNase核酸により天然にコードされるDNaseポリペプチドをコードするが、核酸配列内に上記のような配列相同性のパーセンテージを示さないポリヌクレオチドを使用する。かかる核酸は、縮重コドンにより開示配列中に存在するコドンを変更し、そのようにして合成核酸を調製することにより生じ得る。ある特別な態様では、コドンは、酵母、マウス、ラット等の適切なトランスジェニック宿主生物の一般的なコドン使用頻度に調整されうる。
【0035】
本発明に従って使用されるDNaseヌクレオチド配列は、公知の組換えDNA技術を使用して種々の他の核酸配列に連結されうる。配列は、例えばプラスミド、ファージミド、λファージ誘導体およびコスミド等の種々のクローニングベクターのいずれかにクローニングされうる。さらに発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよび配列決定用ベクター等のベクターは、本明細書中に開示される配列と連結されうる。本発明による核酸にクローニングされうる特別な目的の配列は、例えば、プロモーター、エンハンサーおよびターミネーターを含む非コード配列および調節配列である。
【0036】
本発明の特定の態様では、DNaseポリペプチドをコードする1つ以上の核酸配列が連結されうる。これは、治療目的のために、または組換えタンパク質の発現のために特に有用でありうる。これらの態様では、2、3、4、5、6、7、8、9、10個もしくはさらに多くの異なるか、または同一のDNase核酸が1つの核酸分子に互いに連結されうる。
【0037】
好ましい態様では、DNaseポリヌクレオチドは、それらが哺乳動物に入り、上記細胞中で発現されるように製剤化され得る。かかる製剤は、治療目的のために特に有用である。標的細胞における核酸配列の発現は、当業者に公知の任意の方法により達成されうる。核酸は、例えば、宿主細胞におけるそれらの発現を可能にするのに適切なエレメントに連結されうる。かかるエレメントは、CMV-、SV40-、RSV-、メタロチオネインI-またはポリヘドリン-プロモーター各々にCMV-またはSV40-エンハンサー等のプロモーターまたはエンハンサーを含みうる。発現のための考えられる方法は、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルスまたはポックスウイルスを含むウイルスベクターへのポリヌクレオチドの取り込みである。哺乳動物宿主細胞における核酸発現のためのウイルスベクターは、pcDNA3、pMSX、pKCR、pEFBOS、cDM8、pCEV4などを含みうる。これらの技術は当業者に公知である。
【0038】
治療目的において投与するための他の製剤は、例えば、高分子複合体、ミクロスフェア、ビーズ、ミセルおよびリポゾーム等のコロイド分散系を含む。
【0039】
一般的に、従来の分子生物学的方法により、本発明の核酸分子に種々の変異を導入することができる(例えば、Sambrookら、前出参照)。結果として、本発明の腫瘍関連DNaseポリペプチドまたはもしかすると改変された生物学的特性を有するそれに関連するポリペプチドが合成される。1つの可能性は、コードDNA配列5'-または3'-末端からの連続した欠失により核酸分子が生成される欠失変異体の製造であり、これは、結果的に短くなったDNaseポリペプチドの合成を導く。別の可能性は、アミノ酸の改変が、例えば、増殖特異的特性に影響する位置での単一点変異の導入である。この方法により、例えば、改変されたKm値を有するか、または例えば、アロステリック制御もしくは共有結合修飾、または改変された結合、二量体化、分子間または分子内相互作用特性に関して、細胞に通常存在する調節機構にもはや従わないムテインが製造されうる。かかるムテインは、本発明の方法において使用されるDNase分子の治療に有用なアゴニストまたはアンタゴニストとして有益でありうる。
【0040】
遺伝子操作による原核細胞における操作のために、本発明のDNase核酸分子またはこれらの分子の一部が、DNA配列の組換えにより配列の変異または改変を可能にするプラスミドに導入されうる。従来の方法(Sambrookら、前出参照)により、塩基は交換され、天然配列または合成配列が付加されうる。DNA断片を互いに連結するために、アダプターまたはリンカーが断片に付加されうる。さらに、適切な切断部位を提供するか、余分なDNAまたは切断部位を除去する操作が行われうる。挿入、欠失または置換が可能である場合、インビトロ変異誘発、プライマー修復、制限またはライゲーションが行われうる。分析方法として、通常、配列分析、制限分析および他の生化学的または分子生物学的方法が使用される。
【0041】
本発明のDNase核酸分子の種々のバリアントによりコードされるDNaseポリペプチドは、分子量、免疫原性反応性もしくはコンフォメーション、または電気泳動度、クロマトグラフィー挙動、沈降係数、溶解度、分光学的特性、安定性、最適pH、最適温度のような物理的特性等の所定の共通の特徴を示す。
【0042】
本発明はさらに、本発明の腫瘍関連DNase核酸分子を含むベクターを使用する。好ましくは、それらはプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージおよび遺伝子操作の分野で通常使用される他のベクターである。本発明における使用に適切なベクターとしては、哺乳動物細胞における発現のためのT7ベース二重発現ベクター(原核生物および真核生物における発現)および昆虫細胞における発現のためのバキュロウイルス由来ベクターが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、本発明の方法において使用するためのDNase核酸分子は、翻訳されうる原核細胞および/または真核細胞におけるmRNAの転写および合成を保証する本発明の組換えベクター中の調節エレメントに作動可能に連結される。転写対象のヌクレオチド配列は、T7、メタロチオネインIまたはポリヘドリンプロモーターのようなプロモーターに作動可能に連結されうる。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、DNase核酸分子を一過的または安定に含む組換え宿主細胞を利用する。宿主細胞は、インビトロ組換え体DNAを取り込むことができ、その場合、本発明の核酸分子によりコードされるポリペプチドを合成することができる生物であると理解される。好ましくは、これらの細胞は、原核生物細胞または真核生物細胞、例えば、哺乳動物細胞、細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞または酵母細胞である。本発明で使用するための宿主細胞は、導入されるDNase核酸分子が形質転換細胞に関して異種である、すなわち、それがこれらの細胞において天然には存在しないか、または対応する天然に存在するDNase配列のゲノムの位置とは異なる位置に局在しているかのいずれかであるという事実により好ましくは特徴付けられる。
【0044】
本発明のさらなる態様は、DNaseの生物学的特性を示し、既知のDNase核酸分子によりコードされるポリペプチドの使用に関する。
【0045】
これらのタンパク質またはポリペプチドは、例えば、宿主細胞がDNaseポリペプチドの合成を可能にする条件下で培養され、DNaseポリペプチドが培養細胞および/または培養培地から続いて単離される方法を含む任意の適切な方法により製造されうる。
【0046】
組換え産生されたポリペプチドの単離および精製は、例えば、本発明の腫瘍関連マーカータンパク質に対する抗体を用いて、調製用クロマトグラフィーならびに親和性および免疫原性分離を含む慣例の手段により行われうるか、または例えば、SmithおよびJohnson, Gene 67; 31-40 (1988)に記載されるワンステップ方法により実質的に精製されうる。
【0047】
しかし、本発明において使用するためのポリペプチドは、組換え産生されたDNaseポリペプチドを含むだけでなく、単離された天然に存在するDNaseポリペプチド、合成生成されたDNaseポリペプチド、またはこれらの方法の組み合わせにより産生されたポリペプチドをも含む。かかるポリペプチドまたは関連するポリペプチドを調製するための方法は、当該分野で十分に理解されている。これらのポリペプチドは、好ましくは実質的に精製された形態である。
【0048】
本発明の方法において使用するためのDNaseポリペプチドの産生は、例えば細胞非含有インビトロ転写および/または翻訳系において行われうる。かかる系は当業者に公知である。1つの例は、Roche molecular Biochemicals' Rapid translation Systemにより提供されるインビトロ翻訳系を含みうる。
【0049】
本発明の方法において使用されるDNase(ポリ)ペプチドは、全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を含み、ここでアミノ酸残基は共有ペプチド結合により連結されている。
【0050】
本発明の文脈において開示される癌およびその前駆病変の検出または処置において使用するためのDNaseポリペプチドは、少なくとも4アミノ酸の長さのポリペプチドを含むべきである。これらのDNaseペプチドは、例えば、4〜50アミノ酸またはその間の任意の数のアミノ酸を含みうる。本発明の別の態様では、ペプチドは、50より多くのアミノ酸を有するポリペプチドを含みうる。本発明の方法において使用するためのこれらのDNaseポリペプチドは、例えば、50、100、500、750、1000アミノ酸またはその間の任意の数のアミノ酸を含み得、タンパク質、またはその断片、および/または1つ以上のさらなる異種配列を含む融合またはキメラタンパク質を含みうる。さらなる配列は、天然のDNaseタンパク質に由来しても異種でもよく、かかる配列は、免疫反応性および/または抗原性でありうる(必ずしもその必要はない)。下記に詳述されるように、かかるポリペプチドは、腫瘍組織から単離されても、合成もしくは組換え手段により調製されてもよい。
【0051】
本明細書中で使用される場合、本明細書中に開示される方法において使用するためのDNaseポリペプチドの生物学的特性を示すポリペプチドは、少なくとも実質的に同一の免疫原性特性を有するポリペプチドである、すなわち、依然としてDNaseポリペプチドに対する抗体に結合することができ、例えば、DNaseポリペプチドの少なくとも1つの免疫原性エピトープを含むことが理解される。
【0052】
本明細書中に開示される方法において使用するためのペプチドは、例えば、免疫原性ポリペプチドでありうる。これには、ポリペプチドが、その天然の環境下で採る形態および/または特にポリペプチドが細胞抗原処理および存在するマシーナリーにより処理された後に採る形態のいずれかで宿主生物において免疫応答を刺激し得ることが必要である。
【0053】
上記で使用される免疫原性部分は、タンパク質の一部であり、B細胞および/またはT細胞表面抗原レセプターにより認識される。免疫原性部分は、本明細書中に開示されるタンパク質の少なくとも4アミノ酸残基、少なくとも10アミノ酸残基または少なくとも15アミノ酸残基を含む。本発明のある態様では、例えば、膜貫通ドメインまたはN末端リーダー配列等のタンパク質の特定のドメインが欠失している。
【0054】
本発明による免疫原性部分は、天然の全長タンパク質と同一またはほぼ同一の強度で抗血清または特異的な抗体と反応する。免疫原性部分は、一般に、当該分野で周知の技術を用いて同定される。考えられうる技術は、例えば、抗原特異的抗体、抗血清および/またはT細胞株またはクローンと反応する能力に関するポリペプチドのスクリーニングである。
【0055】
DNase Xの適切な免疫原性部分は、例えば、ペプチド:
71-90: RELNRFDGSGPYSTLSSPQL
207-224: HWVIADGEDTTVRASTHC
187-206: CASLTKKRLDKLELRTEPGF
225-241: TYDRVVLHGERCRSLLH
254-269: LTEEEALNISDHYPVE
110-126: VLSSYVYNDEDDVFARE
を含みうる。
【0056】
これらのDNase Xの免疫原性配列は、免疫原性領域の例であるべきであり、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。全てのDNaseについて、本発明の方法において使用するための免疫原性領域は、任意の適切な方法により決定されうる。特定のDNase分子の各々の免疫原性領域を決定する方法は、当業者に公知である。
【0057】
本発明の特定の態様では、DNaseポリペプチドは、本明細書中に開示される配列を含む融合またはキメラポリペプチドを含みうる。融合タンパク質は、本発明のポリペプチドと共に、例えば、同一の配列または別の配列の1つ以上のポリペプチド等の任意の第2およびさらなるポリペプチドを含む。異種ポリペプチドは、例えば、酵素、レセプター分子、抗原、抗原性もしくは免疫原性エピトープまたは断片、抗原もしくはその断片、シグナル伝達ポリペプチドまたは情報伝達ポリペプチド、標識ポリペプチド等を含みうる。免疫原性タンパク質は、例えば、リコール応答を引き起こしうる。かかるタンパク質の例としては、破傷風、結核および肝炎タンパク質が挙げられる(例えば、Stouteら、New Engl. J. Med., 336:86-91(1997)参照)。医薬組成物における使用のために、血清アルブミンまたはその断片を含む融合タンパク質は、本発明の特定の態様において有用でありうる。
【0058】
本発明のある態様では、融合ペプチドは、ポリペプチドまたはDNaseポリペプチドと本発明の各々の免疫原性実体との複合体の増強された検出もしくは精製のために構築されうる。精製の目的で、例えば、his-タグ、myc-タグ等のタグがポリペプチドに付加されうる。検出の目的で、抗原部分、酵素、色素生産性配列等がポリペプチドに融合されうる。本発明の融合タンパク質は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの間にリンカーペプチドを含みうる(必ずしもその必要はない)。
【0059】
ペプチドリンカー配列は、各々のポリペプチドがその二次構造および三次構造に折りたたまれることを確実にするのに十分な間隔で第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを分離するために使用されうる。ポリペプチドリンカー配列は、当該分野で周知の標準的な技術を用いて融合タンパク質に組み込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の要因に基づいて選択されうる:(1)フレキシブルな拡大されたコンフォメーションを採る能力;(2)第1および第2のポリペプチド上の機能的なエピトープと相互作用しうる二次構造を採れないこと;および(3)ポリペプチド官能基エピトープと反応しうる疎水性または荷電残基を含まないこと。
【0060】
好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、AsnおよびSer残基を含む。ThrおよびAla等の他のほぼ中性アミノ酸もまたリンカー配列に使用されうる。リンカーとして有用に使用されうるアミノ酸配列は、Marateaら、Gene 40:39-46, 1985; Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258-8262, 1986; 米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に開示されたものを含む。リンカー配列は、1〜約50アミノ酸長でありうる。第1および第2のポリペプチドが、機能的ドメインを分離し、立体干渉を妨げるために使用されうる非必須N-末端アミノ酸領域を有する場合、ペプチド配列は必要ではない。
【0061】
本発明の方法において使用するためのDNaseポリペプチドはまた、天然のDNaseタンパク質のバリアントを含む。これらのバリアントは、置換、欠損、付加および/または挿入等の1つ以上の改変において天然のタンパク質とは異なりうる。本発明のバリアントの免疫反応性は、天然のDNaseタンパク質と比較して実質的に減少しない。本発明の好ましい態様では、免疫反応性は、天然のポリペプチドと比較して、50%未満減少し、より好ましい態様では免疫反応性は20%未満減少する。ある態様では、免疫反応性は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%未満またはその間の任意の値減少する。ある態様では、バリアントの免疫反応性は、50%より多く減少する。
【0062】
ある態様では、DNaseバリアントは、例えばN-末端リーダー配列、膜貫通ドメインまたは小N-および/またはC-末端配列等の1つ以上の部分が欠失しうる。バリアントは、本発明により開示されるDNaseポリペプチドに60%、65%または70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%または90%、最も好ましくは少なくとも92.5%、95%、97.5%、98%、98.5%、99%または99.5%の同一性を示す。
【0063】
本発明のバリアントは、好ましくは保存的置換であり、そのため変化されるアミノ酸は類似した特性を有するアミノ酸に置換される。関連する特性としては、アミノ酸残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性性質が挙げられうる。本明細書中に開示されるバリアントはまた、さらなる末端リーダー配列、リンカーまたはより容易もしくはより快適な方法でポリペプチドの合成、精製または安定性が可能な配列を含みうる。
【0064】
本発明の方法で使用するためのDNase(ポリ)ペプチドは、当業者に公知の任意の方法により製造されうる。例えば、ポリペプチドは、そのポリペプチドを発現する細胞または生物から単離されてもよいし、組換え宿主細胞において組換え産生されてもよいし、ポリペプチドの合成に一般に適用される方法により化学的に合成されてもよい。
【0065】
本明細書中で使用される用語、結合剤は、オリゴペプチド、抗体、抗原結合オリゴペプチドを含むペプチド模倣分子、核酸、糖質、有機化合物等の種々の物質を含む。本発明の抗体は、好ましくは、種々のエピトープ特異性を有するプールされたモノクローナル抗体、から本質的になる抗体、および個別のモノクローナル抗体調製物に関する。モノクローナル抗体は、当業者に周知である方法により本発明のポリペプチドの断片を含む抗原から製造される(例えば、Koehlerら、Nature 256 (1975), 495参照)。本明細書中で使用されるように、用語「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗体」(Mab)は、タンパク質に特異的に結合することができる完全な分子および抗体断片(例えば、FabおよびF(ab')2断片)を含むとされる。Fabおよびf(ab')2断片は完全な抗体のFc断片を欠失し、循環からより迅速に除去され、完全な抗体よりも非特異的組織結合が少ない。(Wahlら、J.Nucl.Med. 24:316-325(1983))。従って、これらの断片およびFabまたは他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物は好ましい。さらに、本発明の抗体は、キメラ、単鎖、およびヒト化抗体を含む。
【0066】
本発明に従って使用される結合剤は、例えば、本発明のDNaseポリペプチドの活性の阻害のために使用されうる。この点で用語「結合剤」は、新規腫瘍関連核酸から転写されるDNaseポリペプチドに特異的に結合する薬剤に関し、従って上記ペプチドの活性を阻害する。かかる結合剤は、例えば、核酸(DNA、RNA、PNA等)、ポリペプチド(抗体、レセプター、抗原性断片、オリゴペプチド)、糖質、脂質、有機または無機化合物(金属イオン、硫黄化合物、ボラン、ケイ酸塩、還元剤、酸化剤)を含みうる。結合剤は、好ましくは、生物学的活性に必須であるエピトープに結合することによりポリペプチドと相互作用しうる。相互作用は可逆的でも非可逆的でもよい。結合は、ポリペプチドへの非共有結合または共有結合でありうる。さらに結合剤は、DNaseポリペプチドに改変を導入し得、本発明のDNaseポリペプチドの生物学的活性を改変または減少する。
【0067】
特定の目的、例えば、診断方法のために、本発明の抗体または結合剤は、例えば、放射性同位体、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート、ビオチンもしくはジゴキシゲニンまたは酵素等の生物学的に関連する結合構造で検出可能に標識されうる。さらに、分子内相互作用の検出に適切な任意の方法が使用されうる。
【0068】
本明細書中の本発明の方法において使用されるDNaseタンパク質と検出可能なレベルで反応し、他のタンパク質と有意に反応しない場合、抗体または抗原結合剤は特異的に結合すると言われる。本発明の抗体は、モノクローナルでもポリクローナル抗体でもよい。特異的に結合することができる他の分子は、例えば、Fab断片等の抗体の抗原結合断片、RNA分子またはポリペプチドでありうる。本発明に従って、結合剤は、単独でまたは組み合わせて使用されうる。組み合わせにより、より高い程度の感受性を達成することができる。
【0069】
特定の態様では、結合剤は、本発明の方法で使用されうる種々のDNaseポリペプチドに対して選択的特異性を示しうる。これらの結合剤は、例えば、エピトープ特異性により規定されうる。特異性は、例えば、DNase遺伝子のポリペプチド産物の一種だけが各々の結合剤により認識されることを確実にする様式で選択されうる。
【0070】
本発明の方法に有用な抗体または結合剤は、治療剤または他のポリペプチドの結合部位をさらに含みうるか、または上記治療剤もしくはポリペプチドに連結されうる。治療剤は、薬物、毒素、放射性核種およびその誘導体が含みうる。薬剤は、直接的にまたは例えばリンカーもしくはキャリア分子により間接的に結合剤に連結されうる。リンカー基は、例えば、結合剤と治療剤または他の薬剤との間の連結反応を可能にするために、または融合分子の個々のパーツの間のスペーサーとして作用しうる。リンカーはまた、特定の環境下で切断され得、その条件下で結合剤を放出する。治療剤は、キャリア基に直接またはリンカー基を介して共有結合により連結される。薬剤はまた、キャリアに非共有結合により連結されうる。本発明に従って使用されうるキャリアは、例えば、アルブミン、ポリペプチド、多糖、ポリサッカリドまたはリポゾームである。
【0071】
本発明に従って使用される抗体は1つ以上の薬剤に連結されうる。1つの抗体に連結された複数の薬剤は、同一の種の全てでも、1つの抗体に結合されたいくつかの異なる薬剤でもよい。
【0072】
本発明は、本発明のDNase核酸分子またはベクターを含む、トランスジェニックマウス、ラット、ハムスター、イヌ、サル、ウサギ、ブタ、C.elegans、およびシビレエイ等の魚等のトランスジェニック非ヒト動物を使用し、好ましくは上記DNase核酸分子またはベクターは、上記非ヒト動物に安定に統合され、好ましくは上記DNase核酸分子またはベクターの存在はDNaseポリペプチド(または関連するポリペプチド)の発現を導き、そうでなければ非ヒト動物内で一過的に発現されうる。上記動物は、1つまたはいくつかの形態のDNaseポリペプチドまたはその変異体型をコードする1つまたはいくかのコピーの同一または異なる核酸分子を有しうる。この動物は、細胞増殖および分化の調節のための研究モデルとしての有用性を含む、多数の有用性を有し、それ故、例えば、細胞増殖性障害、例えば、腫瘍の発生に関与するDNaseタンパク質の欠陥または不全により引き起こされる疾患のための、治療、処置等の開発における新規かつ有益な動物を示す。従って、この場合、非ヒト哺乳動物は、好ましくはマウスまたはラット等の研究動物である。
【0073】
特定の態様では、トランスジェニック非ヒト動物は、本発明のDNaseポリペプチドをコードする対応する遺伝子の少なくとも1つの不活化された野生型対立遺伝子をさらに含む。この態様は、例えばDNaseポリペプチドの種々の変異体形態の相互作用の研究を可能にする。トランスジェニック動物に関して本明細書中で前に考察された全ての応用は、2つ、3つまたはそれ以上の導入遺伝子を保有する動物にも適用する。
【0074】
本発明の方法では、トランスジェニック動物の発生および/または生存の特定の段階でタンパク質発現または機能を不活化することも望ましい。これは、例えば、本発明のDNaseコードmRNAをコードするRNA転写物に対する、例えば、アンチセンスまたはリボザイムの発現を駆動する組織特異的、発生および/または細胞調節および/または誘導可能プロモーターを使用することにより達成されうる;前出参照。適切な誘導可能な系は、例えば、GossenおよびBujard(Proc.Natl.Acad.Sci. 89 USA (1992), 5547-5551)およびGossenら(Trends Biotech.12(1994), 58-62)に記載されるテトラサイクリン調節遺伝子発現である。同様に、変異性の本発明の腫瘍関連タンパク質の発現は、かかる調節エレメントにより調節されうる。
【0075】
さらに、特定の態様では、本発明は、DNase核酸分子またはその一部を含むトランスジェニック哺乳動物細胞(好ましくは、そのゲノムに安定に組み込まれるか、一過的に導入される)を利用し、核酸分子またはその一部の転写および/または発現は、天然のDNase分子の合成の減少を導く。好ましい態様では、減少は、アンチセンス、センス、リボザイム、同時抑制および/またはドミナント変異体効果により達成される。「アンチセンス」および「アンチセンスヌクレオチド」は、天然に存在する遺伝子産物の発現をブロックするDNAまたはRNA構築物を意味する。別の態様では、DNaseポリペプチドをコードする天然の核酸配列は、例えば、組換えにより上記核酸配列のバリアントにより改変または置換され得、従ってDNase遺伝子を機能しないようにする。このようにして、DNase活性を欠失する生物は、ノックアウト実験により生成されうる。
【0076】
特定の態様では、DNaseタンパク質のレベルが減少したトランスジェニック非ヒト動物は有用でありうる。これを達成するための技術は当業者に周知である。これらは、例えば、アンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスおよびリボザイム機能を組み合わせる分子および/または同時抑制効果を提供する分子の発現を含む。細胞中の本発明の腫瘍関連マーカータンパク質の量を減少させるためにアンチセンスアプローチを用いる場合、アンチセンスRNAをコードする核酸分子は、好ましくは、形質転換のために使用される動物種に関して同種の起源である。しかし、DNaseタンパク質をコードする内因的に生じる核酸分子に対して高い程度の相同性を示す核酸分子を使用することもできる。この場合、相同性は、好ましくは、75%、80%または85%より高く、特に90%、91%、92%、93%または94%より高く、さらに好ましくは95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%または99.9%よりも高い。トランスジェニック哺乳動物細胞における本発明の方法で使用するためのDNaseポリペプチドの合成の減少は、例えば、内因性タンパク質の分解において変化を生じうる。かかる細胞を含むトランスジェニック動物においては、これは、種々の物理的、発生的および/または形態的変化を導きうる。
【0077】
従って、本発明はまた、上記トランスジェニック細胞を含むトランスジェニック非ヒト動物を利用する。これらは、例えば、以下の特性の少なくとも1つを生じる外来DNAの安定なまたは一過性の存在により野生型動物と比較して細胞増殖および/または分化の調節における欠損を示しうる:
(a)DNaseをコードする内因性遺伝子の破壊
(b)DNase核酸を含有する転写物に対する少なくとも1つのアンチセンスRNAおよび/またはリボザイムの発現;
(c)DNase核酸のセンスおよび/または非転写可能mRNAの発現;
(d)DNaseポリペプチドに対する抗体の発現;
(e)DNaseの調節配列の機能的または非機能的コピーの組み込み;または
(f)DNase核酸を含む組換えDNase分子またはベクターの組み込み。
【0078】
本発明において使用するためのトランスジェニック非ヒト動物、好ましくはトランスジェニックマウスの製造方法は、当業者に周知である。かかる方法は、例えば、核酸および、生殖細胞、胚細胞、幹細胞または卵細胞またはそれらに由来する細胞への核酸分子またはベクターの導入を含む。非ヒト動物は、本明細書中に記載されるスクリーニング方法に従って使用され得、健康な非トランスジェニック動物であり得、または障害、好ましくは、DNaseタンパク質および/または遺伝子における少なくとも1つの変異により引き起こされる障害を有しうる。
【0079】
かかるトランスジェニック動物は、例えば上記に記載される本発明の腫瘍関連マーカーポリペプチドの変異形態と共に薬物の薬理的研究のために十分に適している。トランスジェニック胚の産生およびそれのスクリーニングは、例えば、A.L.Joyner編、Gene Targeting, A Practical Approach (1993), Oxford University Pressに記載されるように行われうる。胚の胚膜のDNAは、例えば、適切なプローブ、核酸に基づく増幅技術(例えば、PCR)等;上記参照を用いたサザンブロットを用いて分析されうる。
【0080】
本発明の別の局面は、癌およびその前駆病変の処置において使用するための医薬組成物である。本発明により使用されるDNaseポリペプチド、DNaseポリヌクレオチドおよびDNase結合剤(特に抗体)は医薬組成物または免疫原性組成物に取り込まれうる。
【0081】
医薬組成物は、当業者に公知の任意の適切な方法により投与されうる。投与は、例えば、皮内注射、筋肉内注射、静脈内注射または皮下注射等の注射、例えば吸入による鼻内投与または経口投与を含みうる。処置の薬学的利益を確実するための適切な投薬量は、患者の年齢、性別、体重等の当業者に公知のパラメータに従って選択されるべきである。
【0082】
医薬組成物は、上記化合物および生理的に許容されうるキャリアを含む。本発明の医薬組成物において使用されるキャリアのタイプは、投与の形態に応じて変化する。皮下注射等の非経口投与のために、キャリアは、好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、脂質、ワックスおよび/またはバッファーを含む。経口投与のために、マンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石粉、セルロース、グルコース、ショ糖、および/または炭酸マグネシウム等の任意の上記キャリアまたは固体キャリアが使用されうる。生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸グリコリド)はまた、本発明の医薬組成物のためのキャリアとして使用されうる。適切な生物分解性ミクロスフェアが、例えば、米国特許第4,897,268および5,075,109に開示されている。
【0083】
本発明の方法に使用するための医薬組成物は、例えば、1つ以上のDNaseポリペプチドをコードするDNAを含みうる。DNAは、ポリペプチドがインサイチュで産生されるように投与されうる。適切な発現系は当業者に公知である。本発明の別の態様では、DNase核酸は、例えば、アンチセンス構築物でありうる。医薬組成物はまた、ウイルスまたは他の発現系、例えば、アデノウイルスベクター系を含む哺乳動物またはヒト宿主系において発現可能なDNase核酸分子を含みうる。
【0084】
DNase核酸はまた、裸の核酸として投与されうる。この場合、細胞に効率的に輸送される生分解性ビーズに核酸を被覆する等の核酸の取り込みを増強する適切な物理的な送達系が使用されうる。裸の核酸の投与は、例えば、宿主または宿主細胞内の一過性発現の目的のために有用でありうる。
【0085】
あるいは、医薬組成物は、1つ以上のポリペプチドを含みうる。医薬組成物に取り込まれるポリペプチドは、DNaseポリペプチドでありうる。任意に、DNaseポリペプチドは、例えば、酵素、抗体、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼもしくはCKI等の調節因子、または毒素等の1つ以上の他の既知のポリペプチドと組み合わせて投与されうる。
【0086】
本発明で用いられるDNaseポリペプチドまたはその断片は、免疫原性部分を含み、医薬組成物に用いられ得、ここで該ポリペプチドは、例えば、患者の腫瘍細胞に対して特異的な応答を刺激する。患者は疾患を罹患していてもよく、検出可能な疾患がなくてもよい。したがって、DNase化合物は癌を治療するか、または癌の進行を阻害するのに用いられ得る。該化合物は、原発腫瘍の外科切除、放射線療法、従来の化学療法的方法またはそれぞれの癌またはその前駆体の治療の任意の他の様式の実施による治療等の従来の腫瘍の治療の、前または後のいずれかに投与され得る。
【0087】
免疫原性組成物は1つ以上のポリペプチドおよび非特異的免疫応答エンハンサーを含み得、ここで非特異的免疫応答エンハンサーは外来性抗原に対する免疫応答を誘発または促進できる。任意の適切な免疫応答エンハンサーが、本発明のワクチンに用いられ得る。例えば、アジュバントが含まれ得る。殆どのアジュバントは、水酸化アルミニウムまたは鉱油等の、急速な異化から抗原を保護するように設計された物質、および脂質A、百日咳菌またはヒト結核菌等の免疫応答の非特異的刺激物質を含む。かかるアジュバントは、例えばフロイント不完全アジュバントおよびフロイント完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, Mich.)およびMerck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.)として市販されている。
【0088】
医薬組成物およびワクチンもまた、上述のような融合タンパク質(すなわち複数のエピトープを含む単一のポリペプチド)に取り込まれているか別々のポリペプチド中に存在するかのいずれかの、腫瘍抗原の他のエピトープを含み得る。
【0089】
本発明はさらに、例えば研究または診断方法における使用のためのキットを提供する。かかるキットは科学的または診断的分析を行うための2つ以上の構成要素を含み得る。構成要素は、化合物、試薬、容器および/または装置であり得る。ある構成要素は、DNaseポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその断片であり得る。さらにキットは、試薬、バッファーまたは当該分野で診断分析を行うのに必要だと知られている他のものを含み得る。あるいは、研究キットまたは診断キットは、DNASE DNAまたはRNAの検出のためのヌクレオチドプローブまたはプライマーを含み得る。かかるキットは、当該分野で公知の適切なさらなる試薬およびバッファーを含むべきである。
【0090】
本発明のキットは:
a) DNaseマーカー分子の検出のための試薬
b) バッファー、検出マーカー、担体物質および他のもの等の、検出反応を行うために一般的に用いられる試薬およびバッファー
d) 陽性対照反応を行うためのDNaseマーカー試料
を含む。
【0091】
DNaseマーカー検出のための試薬は、該マーカー分子に結合できる任意の薬剤を含む。かかる試薬は、タンパク質、ポリペプチド、核酸、糖タンパク質、プロテオグリカン、多糖または脂質を含み得る。
【0092】
陽性対照を行うための試料は、例えばDNase核酸を溶液または塩等の適切な形態で含むか、DNaseペプチドを適切な形態で含むか、組織切片試料またはDNase分子を発現する陽性細胞を含むことができる。
【0093】
本発明のある好ましい態様において、マーカー分子の検出は、ポリペプチドのレベルで行われる。この態様において、結合剤は、例えばDNaseまたはその断片に特異的な抗体であり得る。
【0094】
検査キットの別の態様において、DNaseの検出は核酸レベルで行われる。本発明のこの態様において、検出のための試薬は、例えば該DNase核酸に相補的な核酸プローブまたはプライマーであり得る。
【0095】
本発明の癌腫およびその前駆体病変は、正常な対照細胞または組織の成長特性と比較した、細胞または組織の異常な成長特性によって特徴付けられる障害である。細胞または組織の成長は、例えば異常に促進されるか、または異常に調節され得る。上で用いられるような異常な調節は、細胞または組織の、自然に起こる成長調節作用に対する非野生型応答の存在または非存在の任意の形態を含み得る。細胞または組織の成長の異常は、例えば新生物性または過形成性であり得る。本発明のある好ましい態様において、腫瘍は気道の癌または前癌状態である。
【0096】
異常な細胞増殖を特徴とする障害は、本発明の文脈で用いる場合、例えば良性および悪性腫瘍、癌腫、肉腫、白血病または形成異常等の新生物を含み得る。腫瘍は、頭部および頚部の腫瘍、気道の腫瘍、胃腸管の腫瘍、泌尿器系の腫瘍、生殖器系の腫瘍、内分泌系の腫瘍、中枢または末梢神経系の腫瘍、皮膚およびその付属器の腫瘍、軟組織および骨の腫瘍、リンパ球産生系および造血系の腫瘍、乳癌、前立腺癌、消化管癌、結腸直腸癌、肛門性器癌等を含み得る。
【0097】
特定の態様において、障害は例えば結腸の腺腫または腺癌、扁平上皮肺癌、小細胞肺癌、肺の腺癌、大細胞肺癌、扁平上皮肺癌、肺のカルチノイド、気管支腺腫瘍または(悪性)中皮腫等の気道の障害、子宮頸癌、外陰癌、膣癌、直腸の癌、肛門の癌および陰茎の癌等の肛門性器癌である。
【0098】
本発明の方法の試料は任意の試料であり、細胞、組織または体液を含み得る。さらに、検出されるマーカー分子を潜在的に含む任意の試料が本発明の試料であり得る。かかる試料は、例えば血液、血漿、血清、液体、骨髄、塗沫標本、洗浄液、分泌物、漏出液、滲出液、唾液、便、尿、精液、細胞試料もしくは組織試料、穿刺物(punctuates)または生検材料である。
【0099】
本発明の文脈において用いられる場合、生検材料は、例えば腫瘍の切除試料、内視鏡手段によって調製された組織試料、または針生検材料を含み得る。さらに、検出されるマーカー分子を潜在的に含む任意の試料が本発明の試料であり得る。
【0100】
本発明のある態様において、試料は肛門性器管(anogenital tract)の細胞、気道、胃腸管(特に結腸直腸管(colorectal tract))の細胞、または皮膚またはその付属器の細胞を含む。ある態様において、細胞は子宮頚、膣、外陰、陰茎、肛門、直腸、気管支樹、肺、腹膜、腹膜腔、鼻咽頭腔、口腔、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、膵臓、小腸、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、食道、胃、胆汁樹(bile tree)、肝臓または皮膚の細胞であり得る。
【0101】
本発明の特定の態様において、試料は、例えばスミア、綿棒で採取した標本、洗浄液、細胞を含む体液(痰、分泌物、唾液等)等の組織学的試料、生検材料または細胞学的試料であり得る。本発明のある態様において、試料はパピローマウイルスに感染した細胞を含み得る。試料は、ある態様において子宮頚スミア、気管支肺胞洗浄液、便、例えば胃鏡検査法、結腸鏡検査法、気管支鏡検査法等の内視鏡手段によって得られた試料を含み得る。
【0102】
試料の調製は、例えば患者から組織の試料、体液の試料、細胞の試料を得ることを含み得る。本発明によると、試料の調製はまた、解剖体の調製、細胞懸濁液の調製、調べる対象の細胞の、顕微鏡スライドグラス上への拡延または適用、組織アレイの調製、ポリペプチドまたは核酸の単離、固相固定ペプチドまたは核酸の調製、または測定対象の分子が共有結合もしくは非共有結合でカップリングされるビーズ、膜またはスライドグラスの調製等、試料をさらに調製するいくつかの工程を含み得る。
【0103】
本発明の方法における使用のための試料は、任意の適切な手法によって得られ、調製され得る。試料は、例えば胃腸管(例えば胃、食道または腸)の内容物、気道の内容物(例えば鼻咽頭腔、気管支または細気管の)、肛門性器管(例えば膣の)、尿生殖管(例えば膀胱または尿道)、脈管系の内容物等の任意の試料を含み得る。試料は個体による能動的な物質の排出によって得ることができるか、または外科的で侵襲性もしくは低侵襲性医療処置の過程で得ることができる。例えば、本発明の文脈において用いられる場合、便試料は、浣腸によって、結腸鏡検査法によって、指によって直腸から得られた、結腸の管腔に含まれる物質の試料であり得るか、または患者によって排泄された便から得られ得る。本発明の便試料は、結腸直腸起源の細胞または細胞残屑を含み得るが、含まなくてもよい。本発明のある態様において、結腸直腸の病変の検出に用いられるポリペプチドは、試料中の結腸直腸の病変起源の細胞または細胞残屑の存在と無関係な、便試料中に検出され得る分泌タンパク質である。本発明のある態様において、試料は血液、リンパ、リンパ節、骨髄等を含み得る。本発明の別の態様において、試料は乳房組織、乳房細胞、乳頭吸引物(nipple aspirate)、管の洗浄液(ductal lavage)または乳房に由来する細胞または細胞残屑を含む任意の試料を含み得る。
【0104】
本発明の特定の態様において、試料は、尿、便、痰等の、個体の体内のそれぞれの物質を指し得る。これに関連して、試料は、例えば、インビボにおける個体の腸管の内容物であり得る。この態様において、(便、尿、痰、滲出液、精液、分泌物)試料は、本明細書中に開示される方法に供される患者から分離されなくてもよい。
【0105】
試料の調製方法は、異常な成長特性を伴う病変の存在または非存在の正確な検出を確実にする適切な任意の方法を含み得る。本発明のある態様において、試料の調製は、例えば、試料全体(例えば排泄された便、排出された尿、得られたスミア、洗浄液、痰等)の任意の部分を、へら、ブラシ、匙、先端具、布、膜、毛細管、注射器、針またはピン等の任意の適切な手段で選び取る工程を含み得る。例えば試料の調製は、試料の一部(例えば便の表面等)を膜、箔、プラスチックフィルムまたは布にブロッティングする工程、便の一部を針、注射器、毛細管、へら、匙等によって選び取る工程を含み得る。試料の調製は、ある態様において、へら、ブラシ、タンポン、布、多孔性装置または織物(綿、セルロース、誘導体化セルロース等)装置もしくはチップ、または任意の他の適切な手段のような適切な手段によって得られた固体試料または粘性試料(例えば排泄された便、ある分泌物等)の表面から綿棒で採取した標本を含み得る。
【0106】
本発明の特定の態様において、試料のあらゆる無作為の小部分が本明細書中に開示される検出方法を行うのに適切であり得る。本発明の他のある態様において、試料は、試料全体の代表的部分の存在を確実にするような方法で調製され得る。かかる代表的な部分は、例えば、米国特許第6.303.304号に記載される方法によって得ることができ、これは本明細書中に便試料の参考として援用されるものとする。
【0107】
本発明のある特別な態様では、試料は細胞診標本の単層または薄層調製物として調製され得る。細胞学における単層または薄層調製物のそれぞれの調製方法は、当業者に公知である。ある態様において、調製物は、例えばThinPrep(商標)技術を含み得る。他の方法は、従来のスミア、または細胞の懸濁液を細胞診標本検の調製に使用する方法を含む。
【0108】
本発明の特定の態様において、対象のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドを富化または精製する手法が用いられ得る。場合によってはいくつかの核酸、タンパク質またはペプチドを含む複合の試料中の核酸、タンパク質またはペプチドの同定は、試料中に存在する特定の分子種の分離処置によって強化され得る。これらの精製工程は、試料の全ての核酸、タンパク質またはペプチド成分を脂質、核酸等の他の成分と分離するという意味の精製を含み得る。本発明のある態様において、精製は、特定の特性を有する核酸および/またはタンパク質またはペプチドを、混合物中の他のタンパク質またはペプチド成分と分離する工程も含み得る。
【0109】
一般的に、本明細書中で言及される核酸およびポリペプチドの精製方法は、本発明のDNase分子の検出に適切な任意の検出手法の過程で適用され得る。したがって、場合によっては、単独または他のマーカー分子と組み合わせた、本明細書中に開示されるマーカー分子の検出のための任意の検出手法は、下記のような核酸および/またはポリペプチドの精製方法を含み得る。精製方法は、全処置の過程の任意の段階、例えば検出または増幅反応の前に、検出または増幅反応に続いて、検出または増幅反応と同時に単一工程の反応等で行われ得る。
【0110】
タンパク質および/または核酸の分離は、それらの物理的、化学的または生物学的特性の使用によって行われ得る。分離に用いられる物理的パラメータは、電荷、疎水性、質量、体積、形状または異なるタンパク質またはペプチド種の分離に適切な他の任意の物理的パラメータを含み得る。タンパク質の分離に適用可能な化学的パラメータは、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基等の反応基、またはタンパク質/ペプチドの分離に適切な他の任意の反応性または非反応性の構造の使用を含む。タンパク質の分離に用いられ得る生物学的パラメータは、酵素活性、例えばリガンドまたは受容体等の生物学的結合部分の結合等の分子間相互作用、免疫原性または異なるタンパク質またはペプチドの分離に適切な他の任意の生物学的特性を含み得る。核酸に関して、生物学的パラメータは、特にハイブリダイゼーション特性に関し得る。
【0111】
上述の全てのパラメータは、個々に、また核酸、タンパク質および/またはペプチドの分離および精製に適切な任意の組み合わせで用いられ得る。ある態様において、複合の試料は、アガロースゲル電気泳動、PAGE、SDS-PAGE、フリーフロー電気泳動、キャピラリー電気泳動、二次元電気泳動または核酸、タンパク質もしくはペプチドの分離に適切な他の任意の電気泳動方法等の電気泳動方法によって分離され得る。ある態様において、第一の次元の分離が電荷に基づいて行われるように(例えば高電圧条件下、ポリアクリルアミドゲル中で)二次元電気泳動が用いられ得、得られた分離タンパク質またはペプチドは、その質量によって分離される(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル中で第一の次元に垂直な方向へ)。あるいは、タンパク質またはペプチドの分離の第一の次元は、pH勾配中、高電圧下で分子の等電点電気泳動法によって得ることができる。ある態様において、パルスフィールド電気泳動法が、本発明のDNase分子の分離に適用され得る。
【0112】
さらなる特定の態様において、キャピラリー電気泳動法が複合混合物の分離に用いられ得る。例えば、キャピラリーは、例えばポリアクリルアミド等の適切な分離媒体で満たされ得、試料はキャピラリーの一方の端(頂部等、キャピラリーの配置による)に付けられる。バッファーおよびゲルの条件により、試料中のタンパク質およびまたはペプチドは、質量または電荷のそれぞれによって分離され得る。
【0113】
さらに、液体クロマトグラフィーが核酸、タンパク質および/またはペプチドの分離に適用され得る。核酸、ペプチドおよび/またはタンパク質等の高分子は、それらの物理的およびまたは化学的性質およびまたは生物学的性質およびまたはそれらの組み合わせに従って、クロマトグラフィーの媒体およびまたはクロマトグラフィーに用いられる溶媒に応じて分離され得る。ある態様において、タンパク質および/またはペプチドの複合混合物は、それらの電荷に従って固相に結合し得、塩濃度の上昇によって別々に溶出され得る。ある態様において、複合混合物は、質量に従って孔に拡散することによってタンパク質およびまたはペプチドが流速を増大する規定された孔サイズ分布を有する固相を用いることによって、その質量に従って、固相によって分離される。
【0114】
ある態様において、タンパク質およびまたはペプチドの複合混合物は、タンパク質およびまたはペプチドがその形状に従って孔に拡散することによってその流速を増大させる規定された孔の形状およびまたは孔サイズ分布を有する固相を用いることによって、それらの形状に従って、固相によって分離される。ある態様において、タンパク質およびまたはペプチドの複合混合物は疎水性に従って固相に結合し、疎水性溶媒のグラジエントを適用することによって別々に溶出される。ある態様において、上述の一つまたは全てのクロマトグラフ方法は、タンパク質およびまたはペプチドの複合混合物の分離に適切な方法で組み合わせた。
【0115】
特定の態様において、二次元HPLCが、核酸、タンパク質および/またはペプチドの分離に用いられ得る。例えば、イオン交換カラムによる分離が、逆相カラムと組み合わせて適用され得る。イオン交換カラムは、例えば本明細書中で開示される方法での使用に適切な強度の陰イオンまたは陽イオン交換カラムであり得る。これらのHPLC方法における使用のための物質は、当業者に公知である。ある態様において、第一のカラムからの(例えば塩を増加させる工程(increasing salt steps)によって溶出した)溶出液は逆相カラムに負荷され得る。逆相カラムは、例えば上昇する勾配または適切な溶媒(例えばアセトニトリル)によって溶出され得る。
【0116】
本発明の特定の態様において、分離された、タンパク質またはポリペプチド等の高分子の前処理は、検出反応の前に適用され得る。かかる手法は、例えばタンパク質またはペプチドの還元または酸化、タンパク質分解的切断、タンパク質またはペプチドの修飾、ペプチドの反応部分の不必要な反応を妨げる保護部分の誘導体化または適用を用い得る。例えばある態様において、スルフヒドリル基により酸化が妨げられ得る。一般的に、本発明の方法における使用のためのタンパク質抽出物は、検出に適切なプリペプチドを調製するために、トリプシンまたは他の任意のプロテアーゼ等の適切な酵素で消化され得るが、消化されなくてもよい。
【0117】
本発明の特定の態様において、試料調製のいかなる段階にも試料を供することなく、一つ以上の断片が存在し得る。これは例えば便、胃腸管の液体または胃腸管の分泌物等の試料中の(消化性)タンパク質分解酵素の活性によるものであり得る。断片は、本明細書中に記載される任意の手段によって検出され得る。ある態様において、断片は質量分析の過程で検出され得る。DNase由来のペプチドに対応するそれぞれの断片のピークの検出は、試料中のDNaseの存在または非存在および/またはそのレベルの検出に特に有用であり得る。
【0118】
本発明のある態様において、核酸は、後に続く検出または増幅反応の前に精製工程に供され得るが、供されなくてもよい。これは、例えば信号対雑音比のさらなる増強に望ましくあり得る。さらに、核酸の精製もまた、場合によって増幅反応に続いて適用され得る。
【0119】
核酸の精製を目的とする精製技術は、当業者に公知であり、例えばゲル電気泳動法、クロマトグラフィー、沈殿、超遠心分離法等を含む。例えば、核酸は、当業者に公知の物質(アガロース、ポリアクリルアミド、デンプン等)から作られたゲル等の適切な固体、粘性または液体媒体中で電気泳動法を用いることによって精製され得る。
【0120】
あるいは核酸は、アフィニティークロマトグラフィーまたは他の適切な捕捉形式の手法において、相補的または反相補的核酸プローブ(例えばビーズ、膜、スライドグラス等の固相に固定された)への核酸のハイブリダイゼーションを用いて精製され得る。さらに、核酸の沈殿のための沈殿方法(例えばエタノール、イソプロパノールまたは適切な濃度の他のアルコール、トリクロロ酢酸もしくは他の適切な酸または溶液からの核酸の沈殿に適切な他の薬剤を用いて)が精製、およびイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフ法に適用できる。本発明によると、核酸は、例えば等速または等密度の様式の密度勾配遠心分離法等の超遠心分離技術または他の適切な遠心分離技術を用いて精製され得る。
【0121】
一般的には、本発明の方法における使用のためのマーカー分子のレベルの検出方法は、試料中の核酸、ペプチドおよびタンパク質分子等の生物学的高分子の検出および同定に適した任意の方法である。本発明のある態様において、これらの方法は高い感度を示す方法であり得、そのため少量の分子であっても検出され得る。本発明のさらなる態様において、適切な感度を示す標準的な検出方法が用いられ得る。例えば溶液中の検出反応を含むもの、固相に吸着またはカップリングさせた薬剤を用いる方法等の任意の方法が用いられ得る。該方法は、インビトロの方法であり得、またはインビボで、例えばインビボ撮像法の過程で適用される方法であり得る。
【0122】
特定の態様において、DNaseポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド由来の1つより多いペプチドが、検出手順で確認されよう。本発明のマーカーポリペプチドまたはその断片のレベルの検出は、別々の反応混合物中の単一のマーカー分子のレベルの検出、および同時にマーカーの組み合わせの検出であり得る。
【0123】
さらに、本明細書中で開示されるようなDNase核酸、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの検出は、1つ以上のさらなる検出反応と組み合わせて行われ得る。これらの検出反応は、例えば試料中のさらなる適切なマーカー核酸および/もしくはポリペプチド、または1つ以上の核酸マーカー分子の存在を判定するための反応であり得る。さらなるマーカー分子は、本明細書中に開示されたような方法の過程における増殖性疾患の検出に適切であり得、例えばサイクリン(サイクリンA、サイクリン,B、サイクリンE)、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子(p13.5、p14、p15、p16、p18、p19、p21、p27等)、サイクリン依存性キナーゼ(cdk2、cdk4、cdk6等)、細胞周期調節タンパク質(p14ARF、pRb、mdm2、p53)、増殖マーカー分子(mcm2、mcm3、mcm4、mcm5、mcm6、mcm7、cdc2、cdc6、Ki67、Ki-S2、PCNA、DNAポリメラーゼδ、rFκB等)、ウイルス感染(HBV、HPV(特にリスクの高いHPV:16、18、31、33、38、44、45、58、68等)、HIV等)に対するマーカーまたは他の腫瘍マーカータンパク質もしくは核酸(例えばher2neu、CEA、PSA等)を含み得る。
【0124】
特定の態様において、DNase分子のレベルの検出は、DNaseの酵素活性の測定によって間接的に行われる。酵素活性は、例えばDNA等の酵素基質の分解を測定することによって測定される。DNase活性の検出方法は、当業者に公知である。
【0125】
1つ以上の分子マーカーの検出は、単一の反応混合物中か、または2つ以上の(two or)別々の反応混合物中で行われ得る。いくつかのマーカー分子に対する検出反応は、例えばマルチウェル反応容器中で同時に行われ得る。本明細書中で開示されるDNase核酸および/またはポリペプチドは、これらの分子を特異的に検出する方法および/または試薬を用いて検出され得る。同時に1つ以上のさらなるマーカーが、これらを特異的に検出する方法および/または試薬を用いて検出され得る。各単一のマーカーに対する検出手順は、1つ以上の工程を含み得る。ある態様において、検出手順は、一次検出工程、それに続く、検出手順の結果を定量的および/または定性的分析に利用可能にする、さらなる二次検出工程によるマーカー分子の検出を含み得る。複数の工程を含む検出手順の例は、例えば一次および二次ならびにさらなる結合剤の使用を含み得る。
【0126】
特定の態様において、検出手順はさらに、本発明のDNaseポリペプチドおよび/または核酸のレベルを示すリポーター反応を含み得る。リポーター反応は、例えば着色された化合物を生成する反応、生物発光または化学発光反応、蛍光反応、一般的には放射線放射反応またはビオチン結合もしくは金属キレート結合等の化学結合反応であり得る。
【0127】
本発明の特定の態様において、本発明の検出反応のための手順は、例えばウエスタンブロット、ドットブロット、免疫沈降またはELISA、RIA、側方流動分析等の免疫学的分析等の分子の任意の免疫学的な検出方法を用い得る。
【0128】
これらの態様において、(DNase)マーカー核酸および/またはポリペプチドの測定は、例えばマーカー分子の検出に特異的な結合剤を含む反応において行われ得る。これらの結合剤は、例えば核酸プローブ、抗体、および抗原結合断片、二官能性ハイブリッド抗体、最小限の抗原結合エピトープを含むペプチド模倣物等を含み得る。結合剤は、多くの種々の検出技術、例えばサザンブロット、ノーザンブロット、ウエスタンブロット、ELISA、側方流動分析、(ハイブリッド)捕捉分析、ラテックス凝集、免疫クロマトグラフストリップまたは免疫沈降に用いられ得る。一般的には、結合剤ベースの検出は、インビトロで、およびインサイチュ、例えば免疫細胞化学的染色反応の過程で行われ得る。生物化学的、化学的、物理的または物理化学的方法等の、生物学的試料の溶液中の特定のポリペプチドの量の測定に適切な他の任意の方法が、本発明で用いられ得る。
【0129】
核酸のメチル化の検出方法は当業者に公知であり、例えば核酸の、例えば亜硫酸水素ナトリウム、過マンガン酸塩またはヒドラジンでの化学的前処理、およびそれに続く、例えば増幅反応における特異的な制限エンドヌクレアーゼまたは特異的プローブによる修飾の検出を用いた方法を含み得る。メチル化の検出は、さらにメチル化特異的制限エンドヌクレアーゼを用いて行われ得る。
【0130】
本発明のある態様において、マーカー分子のレベルの検出は、試料中に存在するマーカー分子をコードする核酸またはその断片のレベルの検出によって行われる。核酸分子の検出の手段は当業者に公知である。核酸の検出の手順は、例えば検出される分子の、相補的な核酸プローブ、核酸に結合特異性を有するタンパク質、または該核酸を特異的に認識または結合する他の任意に実体への結合反応によって行われ得る。この方法は、インビトロで、および直接インサイチュで、例えば検出染色反応の過程で行われ得る。本発明の方法で行われる試料中のマーカー分子を核酸のレベルに関して検出する別の方法は、核酸の増幅反応であり、例えばPCR、LCRまたはNASBA等の定量的方法で行われ得る。
【0131】
本発明の特定の態様において、リボ核酸の増幅またはデオキシリボ核酸の増幅は、試料中の、少量のDNaseマーカー分子、またはDNaseマーカー分子を発現している少量の細胞の検出に適用され得る。これは、試料中に分散した腫瘍細胞の検出、またはこれらのDNase分子を発現する腫瘍細胞から体液に分散したDNase分子の検出に特に有用である。一般的には、体試料中の転移、微小遺残病変または播種性腫瘍細胞は、上述したような核酸増幅反応を含み得る。
【0132】
微小遺残病変の検出の過程において、一般的には、血液試料中のペプチド、タンパク質、DNAまたはmRNA等のDNase分子の検出または播種性細胞の検出が適切であり得る。DNase分子の検出の過程において、増幅反応(例えばPCR、LCR、NASBA)が用いられ得る。播種性腫瘍の検出の過程において、細胞は体液から分離され得、細胞の溶解の後にDNase分子は溶解物中に検出され得る。本発明のある態様において、分散した腫瘍細胞の検出は、リンパ節試料中または骨髄試料中で行われ、それぞれの試料に拡散した転移または播種性腫瘍細胞を検出し得る。播種性腫瘍細胞の検出の過程で、個体から得ることができる任意の試料が有用であることは、理解されるべきである。
【0133】
本発明のある態様において、癌腫もしくはその前駆体病変の検出または個体中の転移もしくは微小遺残病変の検出は、試料中のDNase分子の特定の領域の影響の受けやすさの測定を含み得る。これは、例えば部位特異的結合剤の、試料中のDNaseと反応する能力の検出を含み得る。さらに、癌腫およびその前駆体病変の検出ならびに微小遺残病変または転移の検出は、細胞中のDNaseの非細胞の局在の測定を含み得る。
【0134】
あるいは、播種性腫瘍細胞、転移または微小遺残病変の検出の目的で、核酸の質量分析的検出を、増幅に続いて適用し得るか、または増幅反応なしで適用し得る。
【0135】
本発明の別の態様において、マーカー分子のレベルの検出は、タンパク質の発現のレベルを測定することによって行われる。タンパク質レベルでのマーカー分子の測定は、例えば、マーカー分子の検出に特異的な結合剤を含む反応において行われ得る。これらの結合剤は、例えば抗体および抗原結合断片、二官能性ハイブリッド抗体、最小限の抗原結合エピトープを含むペプチド模倣薬等を含み得る。結合剤は、多くの種々の検出技術、例えばウエスタンブロット、ELISA、側方流動分析、ラテックス凝集、免疫クロマトグラフストリップまたは免疫沈降で用いられ得る。一般的には、結合剤ベースの検出は、インビトロで、および直接インサイチュで、例えば免疫細胞化学的染色反応の過程で行われ得る。生化学的、化学的、物理的または物理化学的方法等、生物学的試料の溶液中の特定のポリペプチドの量の測定に適切な他の任意の方法が本発明によって用いられ得る。
【0136】
本発明の特定の態様において、DNaseマーカー核酸および/またはポリペプチドの検出に質量分析が用いられ得る。一般的には、任意の型の質量分析が本発明の方法に用いられ得る。分析される分子は、任意の適切な方法によってイオン化され得る。ある態様において、質量分析の過程におけるイオン化方法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化、高速原子衝撃イオン化、電子スプレーイオン化または他の任意の適切な方法であり得る。質量分析的解析および生成されたイオンの検出の当該分野で公知な任意の技術が、本発明の方法に用いられ得る。質量分析解析は、例えば飛行時間分析器によって行われ得、イオントラップ、四極子、セクタフィールドアナライザ、サイクロトロン等を用い得る。
【0137】
二次元HPLCおよび質量分析的同定を含む完全な分析は、例えばProteomeX-Workstation(ThermoFinnigan、San Jose、CA、USA)上で行われ得る。該系は、別々に溶媒を供給するために強力な陽イオン交換カラムおよび逆相カラム(reversed column)に接続された2つのHPLCポンプおよび自動サンプラーを含むHPLC系を含む。第一の工程において、トリプシン消化物を強力なイオン交換カラムに負荷し、適切な溶媒を用いて洗浄して、さらなる分析に適切でない任意の汚染物質を除去する。1 mM塩化アンモニウムで始まり、900 mM塩化アンモニウムで終わる塩を増加させる工程において、タンパク質分解性ペプチドの画分が強力な陽イオン交換カラムから溶出され、逆相カラムに負荷される。第二のHPLCポンプを用いて、逆相カラム上のペプチドを、結合したペプチドを洗浄して過剰な塩(access salt)を除去し、それに続く質量分析のためにペプチドの条件を設定した後に、水中で5%から80%のアセトニトリルに上昇するアセトニトリル勾配によって溶出する。逆相カラムから溶出するペプチドは、溶出したペプチドの直接の分析および断片化を可能にする電子スプレーイオン化イオントラップ質量分析器(DECA LCQ、ThermoFinnigan、San Jose、CA、USA)を用いて、オンラインで測定される。各逆相流出(reversed phase run)は、ESI-MSおよびESI-MS/MSスペクトルで継続的にモニタリングされ、それに続くSEQUESTソフトウェアパッケージを用いたタンパク質同定のために保存される。SEQUESTは、溶出したペプチドの断片質量スペクトルを生じるデータ依存MS/MSプロセス中に検索されるペプチド断片化質量分析スペクトルを用いる。SEQUESTアルゴリズムは、実験的に得られた断片スペクトルを、データベースからインシリコ(in silico)で生じた断片スペクトルと関連づけ、実験的に得られたスペクトルを適切なデータベース記録と相関させ、この記録に適合するペプチドの同定を可能にする。
【0138】
MS分析中に検出される断片は、これらの断片をデータベースから得られたデータと比較することによって同定され得る。適切なアルゴリズムを用いて、MS分析で得られた断片データに従ってタンパク質を同定し得る。
【0139】
ある態様において、DNaseタンパク質のタンパク質分解的切断で得ることができるペプチド断片は、試料中のDNaseタンパク質の検出に特に有用であり得る。試料中のDNaseタンパク質の存在またはレベルの検出は、本発明のある態様において、試料中のDNaseタンパク質由来の1つ以上のタンパク質分解性断片ペプチドの存在または非存在および/またはレベルの検出を含み得る。ある態様において、検出は、質量スペクトルにおける、または適切な分析方法によって得ることができる種々のペプチド断片シグナルの複合したパターンにおける、それぞれの断片のピークの検出を含み得る。
【0140】
特定の態様において、タンパク質の分離、それに続くタンパク質およびペプチドの分析ならびに検出された質量スペクトルに従ったタンパク質の最終的な同定が、集合的なプロセスで行われ得る。
【0141】
複合的な試料中のペプチドの同定に適切な別の技術は、二次元液体クロマトグラフィーの代わりに二次元電気泳動を用いる。クーマシーブリリアントブルーで染色されたゲルスポットはゲルから切り取られ、トリプシンを用いて消化され得る。それに続く単一のポリペプチドおよび消化されたタンパク質の「質量フィンガープリント」の両方の同定は、マトリックス支援レーザー脱離およびイオン化質量分析または電子スプレーイオン化質量分析を用いて行われ得る。
【0142】
核酸の質量分析における検出のために、精製された核酸が増幅反応に供され得る。適切な増幅反応は当業者に公知であり、DNAベースの増幅およびRNAベースの増幅を含み得る。本発明の増幅反応は、PCR、LCR、NASBA等を含み得る。増幅反応は1つ以上の特異的なプライマーを用いて行われ得る。本発明のある態様において、増幅反応は単一の核酸の増幅を含む。本発明の別の態様において、増幅は、同時に一連のいくつかの核酸を増幅する多重の増幅反応として行われる。
【0143】
本発明のある態様において、増幅された核酸は、それに続くプライマー伸長反応に、10〜約50bp長の核酸断片を生じる事前の精製ありまたはなしで用いられ得る。
【0144】
本発明の特定の態様において、DNaseに対する免疫学的実体が検出され得る。この検出反応は、DNase分子の発現と関連する障害の検出の過程で、または個体の免疫状態の測定のための、もしくは免疫化またはワクチン治療の効果のモニタリングのための免疫療法の過程で行われ得る。
【0145】
本発明のある態様において、DNaseペプチドに特異的な免疫学的実体のレベルの検出は、抗体のレベルに基づいて行われる。したがって本発明の障害の検出方法は、1つの単一のペプチドに対する免疫学的実体の検出または一連の免疫学的実体の検出を用い得る。様々な潜在的ポリペプチドの使用によって、特定の障害の存在を検出する可能性が高まり、障害の層化、疾患の経過のモニタリングまたは疾患の経過に関連した予後の評価に有用なさらなる情報をさらに与え得る。
【0146】
本発明の文脈において用いられるような免疫学的実体は、抗原性エピトープと特異的に反応できる哺乳類の免疫系の任意の構成要素を含むものとする。かかる免疫学的実体は、例えば抗体、例えばIgG、IgM、IgA、IgE、IgD等の全ての免疫グロブリン、特異的CD8+T細胞または特異的Tヘルパー細胞を含み得る。
【0147】
この態様において、検出は、例えばそれぞれのDNaseペプチドと抗体との間の特異的な相互作用を用いて行われ得る。個体中のDNaseペプチドに対する抗体の存在または非存在および/またはレベルの測定は、例えば組み換えで生成されたDNaseペプチドを用いて行われ得る。該ペプチドは、多くの種々の検出技術、例えばウエスタンブロット、ELISAまたは免疫沈降で用いられ得る。ある態様において、抗体の検出は、抗体捕捉分析として行われる(Antibodies A laboratory Manual, Harlowら編, Cold Spring Harbor Laboratory 1988)。
【0148】
本発明の別の態様において、特定の抗体の検出は、第一の抗体の抗原結合エピトープを特異的に認識するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて行われる。この目的のために、上述の免疫学的検出手順が適用され得る。さらなる態様において、キメラ抗原が検出反応に用いられ得る。かかるキメラ抗原は、例えば、検出抗体によって認識され得る別の抗原に融合し、問題の抗体に認識される腫瘍関連ポリペプチドの抗原エピトープが一体化した融合タンパク質を含み得る。キメラポリペプチド中の特定の抗原は、リンカー領域またはスペーサー領域によって分離され得る。
【0149】
生物学的試料中の特定の抗体または免疫グロブリンの量を測定する他の任意の方法が、本発明で用いられ得る。
【0150】
一般的には、本発明の抗体の検出は、インビトロで、および直接インサイチュでも、例えば免疫組織化学的または免疫細胞化学的染色反応の過程で行われ得る。
【0151】
本発明のある態様において、DNase分子に対する免疫学的実体は、皮膚試験で検出され得る。この試験形式において、DNaseのペプチドは、インビボで個体の皮膚に、皮内に導入され得る。該試験形式は、いわゆる尖叉試験またはSero-Merieuxによる血清試験スタンプ(SERO test stamp)から当業者に公知である。この試験において、DNase分子に対する免疫学的実体の存在は、例えばペプチドの注射のそれぞれの点における皮膚の炎症として見ることができる個体の反応から診断される。したがって評価は、皮膚が赤くなること、および例えば皮膚上の赤らんだ丘疹等の形成に依存する。試験結果は、例えば抗原の適用後に検出され得る赤くなった点または丘疹の直径に依存し得る。試験結果は、例えばフォトドキュメンテーションによって記録され得る。
【0152】
個体中の免疫学的実体の検出に適用可能なペプチド(この文脈において「抗原」とも呼ばれる)は、当業者に公知の任意の方法で生成され得、例えばポリペプチドの化学合成(fmoc合成または相当物)を含み得るか、または任意の適切な宿主中で組み換えによって生成され得る。しかしながら、ペプチドはそれぞれのDNase由来ペプチド以外の免疫原性成分を含まないことは、守られなければならない。
【0153】
可視的な免疫反応にするためにこの試験形式に適用されるべきペプチドの量は0.1μgと10μgの間の範囲の精製されたペプチドである。ある態様において、0.05μg、0.1μg、0.5μg、1μgもしくは5μgの抗原または間の任意の値が1つの適用ごとに用いられ得る。抗原(ペプチド)は、好ましくは溶液として適用される(一方で、粉末、エアロゾル等の他の任意の適切な適用形式もまた、本発明で用いられ得る)。溶媒は任意の、医学的に許容され得る、無菌で発熱物質を含まず、示された皮膚試験に用いられるような試験形式に適用された場合に炎症性または免疫原性反応を引き起こさない溶液であり得る。
【0154】
DNase抗原に対する特異性を示す細胞は、この目的に適切な、当業者に公知の任意の方法で検出され得る。方法は、例えば増殖分析、サイトカインELISA、ELISpotアッセイ、細胞内FACS染色、ペプチド特異的サイトカイン(または同様の)発現細胞のPCR媒介同定、テトラマー染色、細胞障害性アッセイおよびDTH(遅延型過敏症)反応を含み得る。
【0155】
増殖分析の場合、ペプチド特異的T細胞増殖の誘導は、当業者に公知の方法で測定され得る。これは細胞の単純な計数か、標識ヌクレオチドの細胞性DNAへの取り込みの測定か、または細胞性タンパク質のレベルおよび/もしくは活性の測定によって達成できる。サイトカインELISAは、上清中のサイトカインレベルの測定によるペプチド特異的サイトカイン分泌細胞の同定を含み得る。ELISpotアッセイの過程で、試料中のペプチド特異的サイトカイン(すなわちIFN-g)分泌細胞の数が測定される。同様に、細胞内FACS染色は、サイトカイン発現細胞を、タンパク質レベルで同定する。対照的に、(リアルタイム)PCRは、ペプチド特異的サイトカイン(または同様の)発現細胞の転写物レベルでの同定に用いられ得る。テトラマー染色アッセイの過程で、標識は組み換えMHCクラスI分子のテトラマー分子であり、特定のペプチドを負荷され、色素にカップリングされる。テトラマーはT細胞受容体に結合する。細胞障害性アッセイは、ペプチド特異的な方法で標的細胞を認識および殺傷できる細胞の同定方法である。DTH(遅延型過敏症)反応は、ワクチン接種されたヒトの、皮内(または同様の)にペプチドを適用された後の皮膚反応の測定に基づく。
【0156】
本明細書中に開示されるような免疫学的実体の検出方法は、個体の免疫療法的治療の過程で、モニタリングの目的で行われ得る。これに関して、個体中の本発明のペプチドに対する抗体の存在または非存在およびまたはレベルが測定される。レベルの測定は、上述のような(as se forth above)方法を用いて行われ得る。検出は、いくつかの連続した時点で、免疫学的実体のレベルの時間的変化(timely alteration)をモニタリングするために(as to monitor)行われ得る。測定は、例えば毎日、週に1回、月に1回、年に1回もしくは10年に1回または間の任意の間隔で行われ得る。
【0157】
本発明のある好ましい態様において、マーカーのレベルは非腫瘍性試験試料と比較して有意に増大する。この場合、マーカーは試料中で過剰発現される。本発明の別の好ましい態様において、マーカーのレベルは非腫瘍性試験試料と比較して有意に減少する。第三の態様において、対照試料とは異なり、試験試料中にマーカーの検出可能な発現は全くない。さらに別の態様において、検出可能なレベルの非野生型マーカー分子が存在する。非野生型マーカー分子は、配列または構造において、細胞増殖性疾患にかかっていない野生型組織で機能している構造または配列から逸脱した任意のマーカー分子を含み得る。野生型配列または構造は、主に正常な細胞または組織中に存在する配列または構造である。本発明のある好ましい態様において、マーカー遺伝子の特定のスプライシングバリアントのレベルは、野生型組織と比較して、試験試料中で変更されている。これはスプライシングバリアント、新規のスプライシングバリアント、新ペプチド(neo-peptide)のレベルの変更、遺伝子の種々のスプライシングバリアントの割合の変更をもたらし得る。
【0158】
本発明の検出手順はさらに、細胞または細胞区画の色素染色または蛍光染色させる細胞化学的染色手順を含み得る。かかる染色手順は当業者に公知であり、例えば、細胞学的標本中の酸親和性または塩基親和性構造用の染色、非細胞領域(例えば核、ミトコンドリア、ゴルジ、細胞質等)の染色、特定の分子の(染色体の、脂質の、糖タンパク質の、多糖の、等)染色を含み得る。DAPI、キナクリン、クロモマイシン等の蛍光色素が用いられ得る。さらに、アザン、アクリジンオレンジ、ヘマトキシリン、エオシン、スダンレッド、チアジン染色(トルイジンブルー、チオニン)等の色素染料が用いられ得る。他の態様において、Pap染色、ギムザ染色、ヘマトキシリン-エオシン染色、ヴァン・ギーソン染色、シッフ染色(シッフ試薬を用いて)、フォイルゲン染色、(例えば硝酸銀を用いた染色手順における銀等の)金属の沈殿または例えばターンブルブルー(または他の不溶性シアン化金属)等の不溶性染料等を用いた染色手順等の染色手順が、本明細書中に開示されるような方法の過程で用いられ得る。ここに挙げた染料および染色方法は適用可能な方法の例であり、当該分野で公知の他の任意の方法が本明細書中で開示されるような方法に適用可能であり得ることは理解されねばならない。
【0159】
染色手順は、光学顕微鏡検査用の色素染料または蛍光顕微鏡条件下での検査用の蛍光染料を生成し得る。本発明の別の態様において、放射線放射手順、放射線の透過を減ずる物質または試料中の細胞学的状態の画像化用の他の造影剤を用いた手順(例えば(マイクロ)オートラジオグラフィックまたは(マイクロ)ラジオグラフィック像形成等による視覚的印象)は、本発明の方法に有益であり得る。
【0160】
全ての染色および画像化手順は、顕微鏡的手順における分析だけでなく、フローサイトメトリー、自動化顕微鏡(コンピューター化またはコンピューター援用)分析または染色された細胞学的標本の他の任意の分析方法自動化分析手順における分析にも用いられ得る。
【0161】
種々の手順の染色結果または画像化結果の分析は、単一の分析工程において、または種々の連続する工程において行われ得る。例えば、標本の蛍光顕微鏡検査の前または後に、標本の光学顕微鏡検査が行われ得る。蛍光顕微鏡法において、種々の励起波長を有する種々の染料の分析は、同時または後に続く分析であり得る。他の画像化方法が、ここに挙げた手順と同時または後に続いて用いられ得る。
【0162】
種々の染色方法の組み合わせが適切である様々な環境があり得る。例えば、免疫化学的染色で十分な細胞学的染色結果が得られなかった場合、一般的な細胞学的染色技術のさらなる適用が適切であり得る。
【0163】
本発明の特定の態様において、試料中のマーカー分子の検出方法は、自動化された方法で行われ得る。方法の自動化は、顕微鏡的手段による固体表面上の自動化された、組織学的または細胞学的標本の染色および分析によって達成され得る。別の態様において、自動化は、溶液中の細胞の染色のフローサイトメトリー分析を含み得る。
【0164】
ある好ましい態様において、DNase遺伝子産物を発現する組織の検出は、分子撮像法の形で行われる。それぞれの手順は当業者に公知である。本発明の文脈において使用される画像化方法は、例えばMRI、SPECT、PETおよびインビボ画像化に適切な他の方法を含み得る。
【0165】
ある態様において、方法は、不活性なまたは標識された化合物の、マーカー分子による分子撮像法の過程で検出可能な分子への酵素作用による変換に基づき得る。別の態様において、分子撮像方法は、インビボでマーカー分子に特異的に結合する放射性同位体、金属イオン等のインビボ分子撮像に適切な標識を有する化合物の使用に基づき得る。
【0166】
本発明の好ましい態様において、これらの化合物は非毒性化合物であり、DNaseマーカー遺伝子を過剰発現する腫瘍組織内に蓄積した標識の検出を行えるようにする時間、ヒト等の生物の循環から排除され得る。本発明の別の好ましい態様において、循環からのクリアランスが分子撮像反応の実施と関連がない化合物が、分子撮像に用いられる。これは、例えば循環している分子等によって生じる低いバックグラウンドのためであり得る。分子撮像法における使用のための化合物は、薬学的に許容され得る形式で、例えば他の診断上有用な物質、治療上有用な物質、担体物質等の他の任意の適切な物質をさらに含み得る組成物中で投与される。
【0167】
本発明で開示されるDNase分子は、例えば腫瘍等の細胞増殖性疾患の診断、疾患の経過および予後のモニタリングに用いられ得る。
【0168】
本発明のDNase分子、DNase分子上の領域の近接可能性またはDNase分子に対する免疫学的実体の任意の検出方法が、例えば癌腫およびその前駆体病変の診断の過程で有用であり得る。さらに、DNase分子またはDNase分子に対する免疫学的実体の検出方法は、個体の免疫状態の判定に、例えば免疫療法またはワクチン接種手順の過程で用いられ得る。
【0169】
本明細書中で用いられるような癌腫およびその前駆体病変の診断は、例えば異常な成長に冒された細胞または組織の検出を含み得る。ある好ましい態様において、診断は、生物または試料中の疾患の一次検出を意味する。
【0170】
本発明によると、癌腫およびその前駆体病変の診断方法は、該疾患を疾患の発症の早期に検出するために、予防的側面のための通常のスクリーニング試験に適用され得る。早期検出の目的のために、例えば、血液試料、便試料、痰試料、乳頭吸引物等の低侵襲性の方法によって得られた試料、または結腸鏡法、気管支鏡法、気管支肺胞洗浄液、管洗浄液等を含む方法によって得られた試料が用いられ得る。本発明の方法は、腫瘍の早期の検出および腫瘍または癌の前駆体病変の検出の過程で用いられ得る。
【0171】
別の好ましい態様において、診断方法は、一次治療の後の腫瘍の微小遺残病変を判定するのに用いられ得る。これに関して、本発明の方法は、腫瘍に特徴的である、本発明のマーカー分子の異常な発現を示している体試料中の細胞を判定するのに適用され得る。したがって、罹患した細胞の拡散は体液中で検出され得る。
【0172】
本発明のある態様において、本明細書中に開示された方法は、転移の検出および同定に用いられ得る。該方法は、本明細書中に記載された検出方法による体組織もしくは器官中のいずれかの転移の検出に用いられ得るか、または転移は疾患の経過の予後および予測に関して診断される。
【0173】
疾患の経過のモニタリングは、種々の時点におけるマーカー分子のレベルを測定すること、種々の時点の該レベルを比較すること、および包含される期間にわたる(over the covered period of time)疾患の予後についての診断を評価することを含み得る。したがって、モニタリングは予後の評価および/または特定の患者に対する適切な治療の設計を可能にし得る。
【0174】
本発明の文脈で用いられるようなモニタリングまたは診断はまた、免疫療法またはワクチン療法の過程での個体の免疫状態の検出も含み得る。
【0175】
本発明における、例えば腫瘍等の細胞増殖性障害の疾患の経過の予後は、1つ以上のマーカー分子の発現のレベルを測定すること、該レベルとそれに続く研究のデータとをデータベースで比較すること、および該比較からの疾患の経過を予測することを含み得る。好ましい態様において、該方法は一連のマーカー分子のレベルの検出を含み得、その別個のレベルは疾患の過程の別個の病期を特徴づけ得る。本発明のさらなる態様において、組み合わされたマーカーのレベルの組み合わせは、さらなる疾患の経過の予後の指標であり得、適切な治療の設計の根拠を築き得る。
【0176】
本発明の別の局面は、治療および/またはワクチン接種の方法を提供することである。本発明において、細胞増殖性疾患の治療は、本発明のDNaseポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドを用いて行われ得る。該治療は、例えば免疫療法または体細胞遺伝子治療であり得る。
【0177】
本発明のDNaseポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドは、本発明に従って、細胞増殖性障害に対するワクチン接種に使用され得る。本発明によるワクチン接種は、該免疫原性化合物に対して指向される免疫応答を刺激し、かくして該個体を該免疫原性化合物に対して免疫処置する目的のために、個体に免疫原性化合物を投与することを含み得る。免疫応答の刺激は、該化合物に対する抗体の産生を誘導すること、および細胞傷害性T細胞を刺激することを含み得る。ワクチン接種の目的のため、本発明によるポリペプチド、核酸および結合剤を、生理学的に許容され得る形態で投与し得る。個体に投与される組成物は、1つ以上の抗原性成分、生理学的に許容され得る担体物質またはバッファー溶液、免疫刺激物質および/またはアジュバントを含有し得る。アジュバントとしては、例えば、フロイント不完全アジュバントもしくはフロイント完全アジュバントまたは当業者に公知の他のアジュバントが含まれ得る。
【0178】
上記組成物は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内などの任意の適用可能な様式で投与し得る。組成物の用量は、具体的な症例およびワクチン接種の目的に依存する。これは、年齢、体重、性別などの処置対象の個体のパラメータに適合させるべきである。さらにまた、惹起される免疫応答のタイプを考慮しなければならない。一般に、本発明のポリペプチド100μg〜1gまたはインサイチュで発現され得る形態の本発明の核酸を含有する組換え核酸106〜1012MOIを個体に与えるのが好ましかろう。
【0179】
ワクチン接種が意図される個体は、本発明の腫瘍関連ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドを含み、細胞増殖性障害に罹患し得る任意の生物であり得る。
【0180】
個体のワクチン接種は、例えば、細胞増殖性障害に関連するマーカー分子の改変された非野生型の配列または構造の場合において好ましかろう。本発明の一態様において、ワクチン接種は、癌腫およびその前駆病変に、野生型組織には存在しないDNaseの非野生型四次構造が現れる場合に適用され得る。
【0181】
本明細書に開示したポリペプチドはまた、癌の処置のための養子免疫療法において用いられ得る。養子免疫療法は、能動または受動免疫療法のいずれかに大別され得る。能動免疫療法では、処置は、免疫応答調節剤(例えば、腫瘍ワクチン、細菌アジュバントおよび/またはサイトカイン)の投与による、腫瘍に対して反応する内因性宿主免疫系のインビボ刺激に依存する。
【0182】
受動免疫療法では、処置は、抗腫瘍効果を直接または間接的に媒介し得、必ずしも天然の宿主免疫系に依存しない、確立された腫瘍免疫反応性を有する生物学的試薬(エフェクター細胞または抗体など)の送達を含む。エフェクター細胞の例としては、開示した抗原を発現する、Tリンパ球(例えば、CD8+細胞傷害性Tリンパ球、CD4+ Tヘルパー、腫瘍浸潤性リンパ球)、キラー細胞(ナチュラルキラー細胞、リンホカイン活性化キラー細胞など)、B細胞、または抗原提示細胞(樹状細胞およびマクロファージなど)が挙げられる。本明細書に開示したポリペプチドはまた、受動免疫療法のための抗体または抗イディオタイプ抗体を生成させるために使用され得る(米国特許第4,918,164号のように)。
【0183】
養子免疫療法のための充分な量のT細胞を獲得するために広く行なわれている方法は、免疫T細胞をインビトロで成長させることである。単一の抗原特異的T細胞をインビボでの抗原認識を保持したまま数十億の数に拡大するための培養条件は、当該技術分野で周知である。これらのインビトロ培養条件は、典型的には、しばしばIL-2などのサイトカインおよび非分割フィーダー細胞の存在下での抗原による断続的な刺激を利用する。上記のように、本明細書に記載の免疫反応性ポリペプチドは、免疫療法のための充分な数の細胞を作製させるために、抗原特異的T細胞培養物を速やかに拡大するのに使用され得る。特に、樹状、マクロファージまたはB細胞などの抗原提示細胞を、当該技術分野で周知の標準的な技術を用い、免疫反応性ポリペプチドでパルス処理するか、または核酸配列(単数または複数)でトランスフェクトし得る。例えば、抗原提示細胞を、発現を増加させるのに適切なプロモーター領域を含み、組換えウイルスまたは他の発現系の一部として発現され得る核酸配列でトランスフェクトし得る。培養T細胞が治療において有効であるためには、培養T細胞は、成長して広く分布し、かつインビボで長期間生存できなければならない。研究により、培養T細胞は、IL−2を加えた抗原での反復刺激により、かなりの数でインビボ成長し、かつ長期間生存するよう誘導され得ることが示された(例えば、Cheever, M.ら,“Therapy With Cultured T Cells : Principles Revisited,”Immunological Reviews, 157: 177,1997参照のこと)。
【0184】
本発明において使用されるDNaseポリペプチドはまた、腫瘍反応性T細胞を生成および/または単離(次いで、これを患者に投与し得る)するために使用され得る。一技術において、抗原特異的T細胞株は、開示したポリペプチドの免疫原性部分に相当する単鎖ペプチドによるインビボ免疫処置により作製され得る。生じる抗原特異的CD8+ CTLクローンは、患者から単離し、標準的な組織培養技術を用いて拡大し、患者に戻し得る。
【0185】
あるいはまた、本発明に従って使用されるDNaseポリペプチドの免疫原性部分に相当するペプチドは、自系T細胞を選択的インビトロ刺激および拡大して抗原特異的T細胞を提供する(これは、続いて、例えばChangら(Crit. Rev. Oncol. Hematol., 22 (3), 213,1996)により記載されたようにして患者に移し得る)ことにより、腫瘍反応性T細胞サブセットを作製するために使用され得る。T細胞などの免疫系の細胞は、CellPro Incorporated社(Bothell, Wash.)のCEPRATE.TM系(米国特許第5,240,856号;米国特許第5,215,926号;WO 89/06280号;WO 91/16116およびWO92/07243号を参照のこと)などの市販の細胞分離系を用いて患者の末梢血から単離し得る。分離した細胞を、マイクロスフェアなどの送達ビヒクル内に含めた1つ以上の免疫反応性ポリペプチドにより刺激し、抗原特異的T細胞を提供する。次いで、腫瘍抗原特異的T細胞の集団を、標準的な技術を用いて拡大し、細胞を患者に投与して戻す。
【0186】
別の態様において、該ポリペプチドに特異的なT細胞および/または抗体レセプターをクローン化し、拡大し、養子免疫療法における使用のための他のベクターまたはエフェクター細胞に移すことができる。
【0187】
さらなる態様において、同系または自系樹状細胞を、本明細書に開示したポリペプチドの少なくとも免疫原性部分に相当するペプチドでパルス処理し得る。得られる抗原特異的樹状細胞は、患者に移すか、またはT細胞を刺激して抗原特異的T細胞を提供し、次にこれを患者に投与するために使用するかのいずれかであり得る。抗原特異的T細胞を作製するためのペプチドパルス処理樹状細胞の使用、続いてマウスモデルにおいて腫瘍を根絶するためのかかる抗原特異的T細胞の使用は、Cheeverら, Immunological Reviews, 157: 177,1997により示された。
【0188】
本発明によるこれらの癌腫およびその前駆病変は、正常な対照細胞または組織の成長特性と比較したときの細胞または組織の異常な成長特性を特徴とする状態を包含する。細胞または組織の成長は、例えば、異常に加速され得るか、または異常に調節され得る。上記で使用した異常な調節には、天然に存在する成長調節の影響に対する細胞または組織の非野生型応答の存在または非存在の任意の形態が含まれ得る。細胞または組織の成長における異常性は、例えば、新生物形成性または過形成性であり得る。
【0189】
本発明の文脈において使用される異常細胞増殖を特徴とする障害は、例えば、良性および悪性の腫瘍、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫または異形成物などの新生物を含み得る。腫瘍は、頭部および頚部の腫瘍、気道の腫瘍、胃腸管の腫瘍、泌尿器系の腫瘍、生殖器系の腫瘍、内分泌系の腫瘍、中枢神経系および末梢神経系の腫瘍、皮膚およびその付属器の腫瘍、軟組織および骨の腫瘍、リンパ球産生系および造血系の腫瘍、乳癌、結腸直腸癌、胃腸管癌、肛門性器癌などを含み得る。
【0190】
ある特定の態様において、該障害は、例えば、結腸の腺腫または腺癌、扁平上皮細胞肺癌、小細胞肺癌、肺の腺癌、大細胞肺癌、腺扁平上皮癌、肺の類癌腫、気管支腺腫瘍または(悪性)中皮腫などの気道の障害、頚部癌、外陰癌、膣癌、直腸の癌、肛門の癌および陰茎の癌のなどの肛門性器癌である。一態様において、障害は乳癌であり得る。
【0191】
さらにまた、DNase核酸を発現するベクターを、患者から採取した幹細胞内に導入し、自系移植片を同じ患者に戻すためにインビトロでクローン的に増殖させ得る。
【0192】
本発明の方法において腫瘍を縮小または排除するために、DNase分子に対して指向されるモノクローナル抗体を治療用化合物として使用し得る。該抗体は、単独で、(例えば、転移を抑制するため)または1つ以上の治療用薬剤に結合させて使用し得る。この点において好適な薬剤としては、放射性核種、分化誘導物質、薬物、毒素およびその誘導体が挙げられる。好ましい放射性核種としては、90Y、123I、125I、131I、186Re、188Re、211Atおよび212Biが挙げられる。好ましい薬物としては、メトトレキセートならびにピリミジンおよびプリンアナログが挙げられる。好ましい分化誘導物質としては、ホルボルエステル類および酪酸が挙げられる。好ましい毒素としては、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、コレラ毒素、ゲロニン、シュードモナス外毒素、赤痢菌毒素およびアメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質が挙げられる。
【0193】
本発明の一態様において、癌腫およびその前駆病変の治療は、アンチセンス構築物またはリボザイムの投与を含み得る。リボザイムまたはアンチセンス構築物の投与のための方法は、当業者に公知である。投与は、裸の核酸の投与として、関連する活性産物のインサイチュ発現に適した核酸の投与として行ない得る。
【0194】
本発明の別の態様において、癌腫およびその前駆病変の処置は、DNaseポリペプチドに対して指向される結合剤の投与を含み得る。これらの結合剤は、例えば、毒素、酵素、放射性同位体などの他の化合物に結合させ得る。
【0195】
本発明の別の態様において、癌腫およびその前駆病変の治療は、DNaseポリペプチドのアンタゴニストもしくはアゴニスト、DNaseポリペプチドの結合パートナー、DNaseポリペプチドの発現のインヒビターもしくはエンハンサー、またはDNaseポリペプチドの活性の測定を含むアッセイにより同定され得る薬物の投与を含み得る。これらの物質を同定するための方法は、当業者に公知である。
【0196】
DNaseポリペプチド(もしくは関連するポリペプチド)および/またはポリヌクレオチドの結合パートナーを同定するための方法の一例は、
(a)本発明による本発明のDNaseポリペプチドを、スクリーニング対象の化合物と接触させること;および
(b)該化合物がポリペプチドの活性に影響するかどうかを調べること
を含み得る。
【0197】
DNaseポリペプチドは、本発明の結腸直腸病変関連ポリペプチドに結合するタンパク質もしくは他の化合物、または本発明の結腸直腸病変関連ポリペプチドが結合するタンパク質もしくは他の化合物をスクリーニングするために使用され得る。DNaseポリペプチドと該分子との結合は、結合したDNaseポリペプチドまたは分子の活性を活性化(アゴニスト)、増加、阻害(アンタゴニスト)、または低下し得る。かかる分子の例としては、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば、レセプター)または低分子が挙げられる。
【0198】
一態様において、該分子は、DNaseポリペプチドの天然リガンド、例えば、リガンドの断片、または天然基質、リガンド、構造的もしくは機能的擬似物と密接に関連している;例えば、Coligan, Current Protocols in Immunology 1 (2) (1991);第5章参照。同様に、該分子は、DNaseが結合し得る天然レセプターまたはDNaseポリペプチドにより結合され得る該セプターの少なくとも断片(例えば、活性部位)と密接に関連し得る。いずれの場合においても、該分子は、公知の技術を用いて合理的に設計し得る。
【0199】
好ましくは、これらの分子のスクリーングは、DNaseポリペプチドを、分泌タンパク質として、または細胞膜においてのいずれかで発現する適切な細胞を作製することを含む。好ましい細胞としては、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、または大腸菌由来の細胞が挙げられる。本発明の結腸直腸病変関連ポリペプチドを発現する細胞(または発現したポリペプチドを含む細胞膜)を、次いで、好ましくは、潜在的に該分子を含み得る試験化合物と接触させ、DNaseポリペプチドの結合、活性の刺激または阻害を観察する。
【0200】
上記アッセイは、単に、候補化合物のDNaseポリペプチドへの結合を試験するものであり得、ここで、結合は、標識により、または標識した競合物質との競合を含むアッセイにおいて検出される。さらに、該アッセイは、候補化合物が、DNaseポリペプチドへの結合により生じるシグナルをもたらすかどうかを試験するものであり得る。
【0201】
あるいはまた、アッセイは、細胞無含有調製物、固相支持体に固定したポリペプチド/分子、化学物質ライブラリーまたは天然物の混合物を用いて行ない得る。また、該アッセイは、単に、候補化合物をDNase含有溶液と混合する工程、DNaseポリペプチド/分子の活性または結合を測定する工程、およびDNaseポリペプチド/分子の活性または結合を標準と比較する工程を含むものであり得る。
【0202】
好ましくは、ELISAアッセイにより、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて、試料(例えば、生物学的試料)中のDNaseレベルまたは活性を測定することができる。抗体により、直接または間接的なDNaseポリペプチドへの結合、または基質についてDNaseポリペプチドとの競合のいずれかによりDNaseポリペプチドのレベルまたは活性を測定することができる。これらの上記のアッセイはすべて、診断用または予後用マーカーおよび治療剤をスクリーニングするために使用され得る。これらのアッセイを用いて見出された分子は、DNaseポリペプチド分子を活性化または阻害することにより、患者において疾患を処置するため、または特定の成果をもたらす(例えば、上皮腫瘍の排除または腫瘍成長の進行の停止)ために使用され得る。さらにまた、該アッセイにより、適切に操作した細胞または組織からのDNaseポリペプチドの産生を阻害または亢進し得る薬剤が見い出され得る。
【0203】
したがって、本発明は、(a)DNaseポリペプチドと候補結合化合物をインキュベートする工程;および(b)結合が生じたかどうかを調べる工程を含む、癌腫およびその前駆病変の処置における使用のための、DNaseポリペプチドに結合する化合物の同定方法を含む。
【0204】
さらにまた、本発明は、(a)候補化合物をDNaseポリペプチドとインキュベートする工程;b)DNaseの生物学的活性(酵素活性またはその他)をアッセイする工程、および(c)DNaseポリペプチドの生物学的活性が改変されたかどうかを調べる工程を含む、異常細胞増殖を特徴とする障害の処置における使用のための本発明の結腸直腸病変関連ポリペプチドのアクチベーター/アゴニストまたはインヒビター/アンタゴニストを同定する方法を含む。
【0205】
さらなる態様において、本発明は、
a. DNaseまたは該DNaseポリペプチドを発現する細胞を、
−細胞増殖の改変された調節
−DNaseポリペプチドの改変された活性
−改変された細胞分化
に応答して、検出可能なシグナルを提供することができる成分の存在下で、候補薬物と接触させ、タンパク質分解が可能な条件下でスクリーニングする工程、および
b. DNaseポリペプチド活性、細胞増殖または分化により生じたシグナルまたはシグナルの増加の存在または非存在を検出する工程(ここで、シグナルの存在または増加は、推定薬物であることを示す)を含む、癌腫およびその前駆病変の治療のための薬物候補を同定して得る方法に関する。
【0206】
動物または単離した細胞もしくは細胞株を用いた実験を、DNaseポリペプチド作用に依存する細胞または組織の増殖挙動を調べるために使用し得る。同じ手順を細胞分化の研究のために使用し得る。
【0207】
薬物候補は、単一の化合物または複数の化合物であり得る。本発明の方法において、用語「複数の化合物」は、同一であっても同一でなくてもよい複数の物質であると理解されたい。
【0208】
上記化合物または複数の化合物は、化学的に合成されたもの、または微生物学的に産生されたものおよび/または例えば、試料、例えば、植物、動物もしくは微生物由来の細胞抽出物中に含有されたものであり得る。さらにまた、該化合物(単数または複数)は、当該技術分野で公知であるが、DNaseポリペプチドを抑制または活性化できることがこれまでに知られていないものであり得る。反応混合物は、細胞無含有抽出物であってもよく、細胞または組織培養物を含有するものであってもよい。本発明の方法に好適な実験装置は、当業者に公知であり、例えば、一般的に、Albertsら, Molecular Biology of Cell, 第3版(1994)および添付の実施例に記載されている。複数の化合物は、例えば、反応混合物、培養培地に添加されるか、細胞内に注入されるか、またはそうでない場合は、トランスジェニック動物に適用され得る。本発明の方法に使用され得る細胞または組織は、好ましくは、以下の態様に記載する本発明の宿主細胞、哺乳動物細胞または非ヒトトランスジェニック動物である。
【0209】
化合物または複数の化合物を含む試料が本発明の方法において同定されると、DNaseポリペプチドを抑制または活性化できる化合物を含むと同定された元の試料から該化合物を単離することができるか、または、例えば複数の異なる化合物からなる場合、1試料あたりの異なる物質の数を減らすため、および元の試料の細分画分で該方法を繰返すため、元の試料をさらに細分化できるかのいずれかであり得る。試料の複雑さに応じ、上記の工程を数回、好ましくは、本発明の方法にしたがって同定された試料が限定された数またはただ1つの物質を含むまで行ない得る。好ましくは、該試料は、類似の化学的および/または物理的特性の物質を含有し、最も好ましくは該物質は同一である。
【0210】
標的に対する特異的親和性を有する化合物を同定するために大ライブラリーを作製およびスクリーングするためのいくつかの方法が当業者に公知である。これらの方法としては、無作為化ペプチドがファージによりディスプレーされ、固定化したレセプターに対するアフィニティクロマトグラフィーによりスクリーニングされるファージディスプレー法が挙げられる;例えば、WO 91/17271、WO 92/01047、US-A-5,223,409を参照のこと。別のアプローチにおいて、チップ上に固定化したポリマーのコンビナトリアルライブラリーを、フォトリソグラフィーを用いて合成する;例えば、米国特許第5,143,854号、WO 90/15070およびWO 92/10092を参照のこと。固定化したポリマーを、標識したレセプターと接触させ、ラベルに関してスキャンし、レセプターに結合するポリマーを同定する。
【0211】
DNaseポリペプチドの結合リガンド、したがっておそらくインヒビターおよびアクチベーターを同定するために使用され得る、連続セルロース膜支持体上でのペプチドライブラリーの合成およびスクリーングは、例えば、Kramer, Methods Mol. Biol. 87 (1998), 25-39に記載されている。この方法はまた、例えば、DNaseポリペプチド内の結合部位および認識モチーフを調べるために使用され得る。同様に、DnaKシャペロンの基質特異性を測定し、ヒトインターロイキン−6とそのレセプター間の接触部位;それぞれ、Rudiger, EMBO J. 16 (1997), 1501-1507およびWeiergraber, FEBS Lett. 379 (1996), 122-126を参照のこと。
【0212】
さらにまた、上記方法を、本発明のポリペプチド由来の結合スーパートープを構築するために使用し得る。同様のアプローチが、好結果として、抗p24(HIV−1)モノクローナル抗体のペプチド抗原に関して記載されている;Kramer, Cell 91 (1997), 799-809を参照のこと。クラスター化したアミノ酸ペプチドライブラリーを用いるペプチド−抗体相互作用のフィンガープリント解析の一般的な手段は、Kramer, Mol. Immunol. 32 (1995), 459-465に記載された。また、DNaseのアンタゴニストは、Doring, Mol. Immunol. 31 (1994), 1059-1067に記載の方法に従い、本発明のポリペプチドと特異的に反応するモノクローナル抗体から誘導され、同定され得る。
【0213】
より最近では、WO 98/25146に、所望の特性、特にDNaseポリペプチドまたはその細胞レセプターを活性化するか、これに結合するか、またはこれと拮抗する能力を有する化合物について複合体のライブラリーをスクリーングするためのさらなる方法が記載された。かかるライブラリーにおける複合体は、試験される化合物、化合物の合成の少なくとも1つの工程を記録するタグ、およびレセプター分子による修飾に感受性であるテーター(tether)を含有する。テーターの修飾は、複合体が、所望の特性を有する化合物を含むことを表示するために使用される。タグをデコード(decode)すると、かかる化合物の合成における少なくとも1つの工程が明らかとなり得る。DNaseポリペプチドまたはかかる分子をコードするDNase核酸分子と相互作用する化合物を同定するための他の方法は、例えば、ファージディスプレー系を用いるインビトロスクリーングならびにフィルター結合アッセイまたはBIAcore装置(Pharmacia)を用いる相互作用の「リアルタイム」測定である。
【0214】
これらの方法はすべて、本発明にしたがって、本発明の方法における使用のためのDNaseポリペプチドまたは関連するポリペプチドのアクチベーター/アゴニストおよびインヒビター/アンタゴニストを同定するために、使用され得る。
【0215】
かかるアクチベーターまたはインヒビターの基本構造には種々の供給源が使用され得、例えば、本発明のポリペプチドの擬似的アナログが含まれ得る。本発明のDNaseポリペプチドの擬似的アナログまたは生物学的に活性なその断片は、例えば、生物学的活性に必須であることが期待されるアミノ酸を、例えば立体異性体、すなわちD−アミノ酸で置換することにより作製され得る;例えば、Tsukida, J. Med. Chem. 40 (1997), 3534-3541を参照のこと。さらにまた、生物学的に活性なアナログの設計に断片を使用する場合、プロ擬似的成分をペプチドに組み込み、元のポリペプチドの一部を除去したときに失われたのであろう立体配座特性の少なくとも一部を再確立し得る;例えば、Nachman, Regul. Pept. 57 (1995), 359-370を参照のこと。
【0216】
さらにまた、DNaseポリペプチドは、本発明のポリペプチドに結合するか、または本発明のポリペプチドのリガンド、基質、結合パートナーまたはレセプターとして天然ポリペプチドと同程度に効果的に機能を果たし得る合成化学的ペプチド擬似物を同定するために使用することができる;例えば、Engleman, J. Clin. Invest. 99 (1997), 2284-2292を参照のこと。例えば、本発明のポリペプチドの構造モチーフのフォールディングのシミュレーションおよびコンピュータによる再設計は、適切なコンピュータプログラムを用いて行ない得る(Olszewski, Proteins 25 (1996), 286-299; Hoffman, Comput.Appl. Biosci. 11 (1995), 675-679)。タンパク質フォールディングのコンピュータによるモデリングは、詳細なペプチドモデルおよびタンパク質モデルの立体配座の解析およびエネルギー的解析に使用され得る(Monge, J. Mol. Biol. 247 (1995), 995-1012; Renouf, Adv. Exp. Med. Biol. 376 (1995), 37-45)。特に、適切なプログラムを用い、相補ペプチド配列のコンピュータ補助検索により、DNaseポリペプチドとおそらくそのリガンドまたは他の相互作用性タンパク質の相互作用部位を同定し得る(Fassina, Immunomethods 5 (1994), 114-120。タンパク質およびペプチドの設計のためのさらなる適切なコンピュータシステムは、先行技術、例えば、Berry, Biochem. Soc. Trans. 22 (1994), 1033-1036; Wodak, Ann. N. Y. Acad. Sci. 501 (1987), 1-13; Pabo, Biochemistry 25 (1986), 5987-5991に記載されている。
【0217】
上記コンピュータ解析から得られる結果は、例えば、DNaseタンパク質またはその断片のペプチド擬似物の調製に使用され得る。該タンパク質の天然アミノ酸配列のかかる偽ペプチドアナログは、非常に効率的に親タンパク質を擬態し得る(Benkirane, J. Biol. Chem. 271 (1996), 33218-33224)。例えば、容易に得られ得るアキラルアミノ酸残基の本発明のタンパク質またはその断片への組み込みは、アミド結合の脂肪族鎖のポリメチレン単位との置換をもたらし、それにより、ペプチド擬似物を構築するための簡便なストラテジーが提供される(Banerjee,Biopolymers 39 (1996), 769-777)。
【0218】
他の系における低分子ペプチドホルモンの超活性ペプチド擬似物は、先行技術に記載されている(Zhang, Biochem. Biophys. Res. Commun. 224 (1996), 327-331)。本発明のタンパク質の適切なペプチド擬似物はまた、連続的アミドアルキル化を介するペプチド擬似物コンビナトリアルライブラリーの合成、ならびに得られた化合物の、例えば、その結合および免疫学的性質に関する試験により同定され得る。ペプチド擬似物コンビナトリアルライブラリーの作製および使用のための方法は、先行技術において、例えば、Ostresh, Methods in Enzymology 267 (1996), 220-234およびDomer, Bioorg. Med. Chem. 4 (1996), 709-715に記載されている。
【0219】
さらにまた、DNaseポリペプチドの三次元および/または結晶学的構造は、本発明のポリペプチドの生物学的活性のインヒビターを擬態するペプチドの設計に使用することができる(Rose, Biochemistry 35 (1996), 12933-12944; Rutenber, Bioorg. Med. Chem. 4 (1996), 1545-1558)。
【0220】
天然の生物学的ポリペプチドの活性を擬態する低分子量合成分子の構造に基づく設計および合成は、例えば、Dowd, Nature Biotechnol. 16 (1998), 190-195; Kieber-Emmons, Current Opinion Biotechnol. 8 (1997), 435-441; Moore, Proc. West Pharmacol. Soc. 40 (1997), 115-119; Mathews, Proc. West Pharmacol. Soc. 40 (1997), 121- 125; Mukhija, European J. Biochem. 254 (1998), 433-438にさらに記載されている。
【0221】
また、例えば、本発明において使用されるDNaseポリペプチドまたは関連するポリペプチドに対する基質またはリガンドとしての機能を果たし得る低分子有機化合物の擬似物を設計、合成および評価することが可能であることは当業者に周知である。例えば、ハパロシンのD−グルコース擬似物が、細胞障害性において多剤耐性補助関連タンパク質と拮抗する際においてハパロシンと同様の効率を示したことが記載されている;Dinh, J. Med. Chem. 41 (1998), 981-987を参照のこと。
【0222】
DNase核酸分子はまた、アクチベーターおよびインヒビターの標的として利用され得る。アクチベーターは、例えば、DNaseポリペプチドをコードする遺伝子であるmRNAに結合し、それにより、例えば、Tatタンパク質がHIV-RNAに対して作用するのと同様の様式で、mRNAの天然の立体配座を安定化し、転写および/または翻訳を促進するタンパク質を含み得る。さらにまた、細胞内部で化合物が結合する明確または不明確な標的RNA分子の構造を擬態し、細胞成長または細胞死の遅滞をもたらすRNA断片などの核酸分子を同定するための方法が文献に記載されている;例えば、WO 98/18947およびそこに挙げられた参考文献を参照のこと。これらの核酸分子は、医薬用目的および/または農業用目的の未知の化合物を同定するため、および疾患の処置における使用のための未知のRNA標的を同定するために使用され得る。これらの方法および組成物は、新規な抗生物質、静菌剤のスクリーングもしくはその修飾のため、または核酸分子にコードされるタンパク質の発現レベルを改変するのに有用な化合物を同定するために使用され得る。
【0223】
あるいはまた、例えば、結合部位を擬態するRNA断片の立体配座的構造は、既知の抗生物質を標的に対してより高いアビディティで結合するように修飾する合理的な薬物設計において用いられ得る。かかる方法論の1つは核磁気共鳴(NMR)であり、これは、薬物およびRNA立体配座的構造を同定するのに有用である。さらに他の方法は、例えば、WO 95/35367、US-A-5,322,933に記載のような薬物設計方法であり、この場合、RNA断片の結晶構造が推定され得、抗生物質としての機能を果たし得る新規な結合化合物を設計するためにコンピュータプログラムが用いられる。
【0224】
ある遺伝子変化により、改変されたタンパク質立体配座的状態がもたらされる。例えば、本発明の結腸直腸病変関連ポリペプチドであるいくつかの変異体は、これらを、ほとんどタンパク質分解できないようにする三次構造を有し得る。変異型タンパク質の正常または調節された立体配座の回復は、これらの分子欠陥を修正するための最も簡潔および特異的な手段であるが、困難な場合がある。この点において最も重要なのは、本発明の結腸直腸病変関連ポリペプチドのコンセンサスドメインである。
【0225】
本発明の方法にしたがって試験および同定され得る化合物は、発現ライブラリー、例えば、cDNA発現ライブラリー、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、低分子有機化合物、ホルモン、ペプチド擬似物、PNAなどであり得る(Milner, Nature Medicine 1 (1995), 879-880; Hupp, Cell 83 (1995), 237-245; Gibbs, Cell 79 (1994), 193-198および上記の参考文献)。さらにまた、DNaseポリペプチドの推定調節因子をコードする遺伝子および/またはDNaseポリペプチドの上流または下流で効果を発揮する遺伝子は、例えば、当該技術分野で公知の遺伝子標的化ベクターなどを用いる挿入変異誘発を用いて同定され得る。該化合物はまた、既知のインヒビターまたはアクチベーターの機能的誘導体またはアナログであり得る。かかる有用な化合物は、例えば、本発明の腫瘍関連ポリペプチドまたはこれをコードする遺伝子の調節配列に結合するトランス作用性因子であり得る。トランス作用性因子の同定は、当該技術分野の標準的な方法を用いて行なうことができる(例えば、Sambrook,上記,およびAusubel,上記を参照のこと)。
【0226】
タンパク質がDNaseタンパク質それ自体または調節配列に結合するかどうかを調べるため、標準的なネイティブゲルシフト解析を行なうことができる。タンパク質または調節配列に結合するトランス作用性因子を同定するため、タンパク質または調節配列を、標準的なタンパク質精製方法における親和性試薬として、または発現ライブラリーをスクリーングするためのプローブとして使用することができる。
【0227】
上記の本発明のDNaseと相互作用するポリペプチドをコードする核酸分子の同定はまた、いわゆる酵母「ツーハイブリッド系」を使用することにより、例えばScofield (Science 274 (1996), 2063-2065)に記載のようにして達成され得る。この系において、本発明の核酸分子にコードされるポリペプチドまたはそのより小さい部分をGAL4転写因子のDNA結合ドメインに結合させる。この融合ポリペプチドを発現し、GAL4転写因子により認識される適切なプロモーターにより駆動されるlacZレセプター遺伝子を含有する酵母株を、活性化ドメインと融合したその植物タンパク質またはペプチドが発現されるcDNAのライブラリーで形質転換する。したがって、該cDNAのうちの1つにコードされるペプチドが、本発明のDNaseポリペプチドであるペプチドを含有する融合ペプチドと相互作用できる場合、複合体は、レセプター遺伝子を直接発現することができる。このようにして、本発明の核酸分子およびコードされたペプチドを、DNaseタンパク質と相互作用するペプチドおよびタンパク質を同定するために使用することができる。次いで、この系および類似する系を、DNaseタンパク質の結合のインヒビターの同定にさらに利用し得ることは、当業者に自明である。
【0228】
一旦、トランス作用性因子が同定されると、例えば、本発明のDNaseタンパク質に対するトランス作用性因子の結合に対するインヒビターについてスクリーニングすることから始めて、DNaseポリペプチドへの結合の調節または発現の調節を追跡する。次いで、トランス作用性因子(またはそのインヒビター)またはこれをコードする遺伝子を、例えば発現ベクターにおいて適用することにより、本発明のDNaseタンパク質の活性化または抑制を動物において達成し得る。また、トランス作用性因子の活性形態がダイマーである場合、その活性を阻害するために、トランス作用性因子の優性ネガティブ変異体を作製し得る。
【0229】
さらにまた、トランス作用性因子が同定されると、次いで、本発明の腫瘍関連ポリペプチドの制御に関与する遺伝子の活性化(例えば、シグナル伝達)または抑制をもたらす経路において、さらなる成分が同定され得る。次いで、動物におけるタンパク質分解の代謝を調節するためのさらなる薬物および方法を開発するため、これらの成分の活性の調節を追求し得る。したがって、本発明はまた、本発明の腫瘍関連ポリペプチドまたは本発明のDNaseポリペプチドのアクチベーターもしくはインヒビターの同定ための、上記のようなツーハイブリッド系の使用に関する。
【0230】
上記の方法により単離される化合物はまた、アナログ化合物の開発のためのリード化合物として有用である。該アナログは、重要な官能基が、リード化合物と実質的に同じ様式で、DNaseポリペプチドまたはおそらくそのレセプターに提示されるような安定化した電子立体配置および分子立体配座を有するべきである。特に、アナログ化合物は、結合領域と同等の空間的電子特性を有するが、リード化合物よりも小さい分子(高頻度には約2kD未満、好ましくは1kD未満の分子量を有する)であり得る。
【0231】
アナログ化合物の同定は、つじつまの合う場の方法(self-consistent field)(SCF)解析、立体配座相互作用(CI)解析および正常モード動力学解析などの技術の使用により行なわれ得る。これらの技術を実施するために、コンピュータプログラムが利用可能である;例えば、Rein, Computer-Assisted Modeling of Receptor-Ligand Interactions(Alan Liss, New York, 1989)。化学的誘導体およびアナログの調製のための方法は、当業者に周知であり、例えば、Beilstein, Handbook of Organic Chemistry, Springer編 New York Inc., 175 Fifth Avenue, New York, N. Y. 10010 U. S. A.およびOrganic Synthesis, Wiley, New York, USAに記載されている。
【0232】
さらにまた、上記誘導体およびアナログは、その効果に関して、当該技術分野で公知の方法に従って試験し得る;上記もまた参照のこと。さらにまた、ペプチド擬似物ならびに/または適切な誘導体およびアナログのコンピュータ補助設計を、例えば、上記の方法にしたがって使用し得る。
【0233】
上記の本発明の方法の好ましい態様では、該細胞は、本発明の細胞、もしくは本発明の方法により得られる細胞または上記のトランスジェニック非ヒト動物に含有される細胞である。
【0234】
一旦、記載の化合物が同定されて得られると、これは、好ましくは、治療的に許容され得る形態で提供される。
【0235】
本文中に開示した化合物および方法は、任意の哺乳動物個体に適用可能である、と理解されたい。したがって、該化合物および方法は、動物およびヒトに適用可能であり得、医薬目的と同様獣医学目的において有用である。本発明に関して特に重要な動物は、ネコ、イヌなどの愛玩動物、ウシ、ブタ、ウマなどの農業目的の動物、ラット、マウス、ハムスター、ウサギなどの実験用動物、および細胞の異常成長を特徴とする障害に罹患し得る任意の他の動物である。
【0236】
本発明は、癌腫およびその前駆病変の検出および処置に有用な化合物および方法を提供する。一局面において、発明は、生物学的試料中におけるDNase分子の発現の存在もしくは非存在および/またはレベルの測定に基づく癌腫およびその前駆病変の検出のための方法を提供する。この検出方法は、例えば、新形成および腫瘍の前兆段階の初期検出の過程において用い得る。第2の局面において、本発明は、治療的に活性な薬剤としてのDNase遺伝子産物の調節による癌腫およびその前駆病変の処置のための方法を提供する。本発明はまた、DNaseポリペプチドの活性の調節に基づく治療方法を提供する。患者試料におけるDNase遺伝子産物の検出に基づく合理的な腫瘍管理および該DNase遺伝子産物の検出された過剰発現と相関する治療のテーラーリング(tailoring)ための方法を提供することは本発明の一局面である。さらにまた、本発明は、DNase遺伝子の過剰発現の存在もしくは非存在および/またはレベルの検出に関与する反応を行なうための研究用または診断用試験キットを提供する。最後に、本発明は、本明細書に開示したDNase化合物を含有する、癌腫およびその前駆病変の処置に適用可能な医薬組成物に関する。
【0237】
以下の実施例は、例示の目的のみのために示したのであって、本明細書に開示した本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0238】
実施例1:癌腫の組織試料中のDNase Xの過剰発現の免疫化学的検出
ホルマリンで固定化し、パラフィン包埋した結腸の組織試料の切片を、DNase Xに特異的な抗体を用いて免疫組織化学的に染色した。
【0239】
キシレンおよび等級品エタノール中におけるインキュベーションにより切片を再水化し、Aqua bidestに移した。抗原回復を10mMクエン酸バッファー(pH 6.0)を用いて行なった。したがって、スライドを水浴中にて40分間95℃で加熱した。スライドを20分間でRTまで冷却し、洗浄バッファー(PBS/0.1% Tween20)に移した。
【0240】
内因性ペルオキシダーゼの不活化のため、試料を3% H202とともに20分間RTでインキュベートした後、PBS/0.1% Tween20中で5〜10分洗浄する。
【0241】
次いで、スライドを、一次抗体、ラット抗DNase X(1:25)(RTで1時間)とともにインキュベートした。次いで、スライドを洗浄用バッファーでリンスし、新しいバッファー浴中に5分間入れた。用いた抗体は、ヒトDNase Xのペプチド配列
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に対して指向されるものである。
【0242】
その後、スライドを二次抗体(ヤギ抗ラット(1:500))とともにインキュベートした。5分間で3回、洗浄を行なった。過剰のバッファーを排出し、100μlの可視化試薬で被検物を30分間RTにて覆った。スライドを先のようにして洗浄し、200μlの基質色原体溶液(DAB)で10分間覆った。次いで、スライドを先のようにして洗浄し、ヘマトキシリンの浴中で3分間対比染色した。残留ヘマトキシリンを蒸留水でリンスし、被検物を載せ、水性マウント(mounting)培地とともにカバーガラスを載せた。
【0243】
スライドの顕微鏡検査により、DNase Xと免疫反応性である細胞が試料に見られることが明らかになり、これは、顕微鏡検査により結腸直腸癌腫の試料であると同定され得る。癌腫において、DNase X特異的染色は、細胞核に集中している。対照的に、対照試料では、単一細胞はほとんど染色されていないようである。非癌細胞ではすべて染色は細胞質であるが、癌腫およびその前駆病変の細胞では、染色は核に局在する。特に胃腸管組織では、内分泌腺細胞は、DNase Xについて細胞質染色を示す。胃腸管組織内の他の細胞は染色されないと言ってよい。その他の被験組織では、陽性染色はない。これらの場合では、染色は、細胞の細胞質に局在する。
【0244】
上記の免疫組織化学的染色手順を、さらに、乳癌、肺癌、子宮頚癌(CINIII)、胃癌、食道(oesophageal)癌、子宮内膜癌、卵巣癌由来の組織に適用した。これらのすべての場合で、DNase Xについて核染色は癌細胞において観察することができた。正常組織では、染色は、ほとんど、ないし全く確認されなかった。
【0245】
さらにまた、肝臓に位置する結腸直腸癌腫からの転移を、上記の免疫化学的手順により解析した。結果は、腫瘍細胞における核染色および正常組織周囲における無染色を示した。
【0246】
記載の方法による末梢静脈血、骨髄およびリンパ球の免疫化学的解析は、正常対照個体から得た試料においてDNase Xに対する免疫反応性はないことが明らかとなった。これは、DNase Xに対して指向される抗体による特異的免疫化学的染色により、これらの試料においてDNase Xと免疫反応性である播種性腫瘍細胞が同定され得ることを示す。
【0247】
この結果は、DNase Xに特異的な試薬を用いた染色により、生物学的試料において癌腫を同定することが可能になることを示す。癌腫およびその前駆病変では、用いた抗体によるDNase Xについての核染色があるが、正常組織では、ほんのわずかの細胞が細胞質において染色され得る。
【0248】
一般的に、染色は細胞の核に集中すると言えよう。しかしながら、細胞質免疫反応性もまた、トランスフェクトした細胞(腫瘍組織)において見られ得る。
【0249】
実施例2:個体のリンパ節における播種性腫瘍細胞の検出
結腸の腺癌腫の外科的切除の過程で得た患者のリンパ節試料を用い、DNase X特異的結合剤との免疫反応性を示す細胞の存在を調べた。全部で、結腸癌腫を有する7患者由来の試料を含めた。
【0250】
免疫組織化学的染色を、実施例1に示したようにして行なった。
【0251】
この実験により、DNase Xに対して指向される抗体を用いた染色が、癌腫を有する患者の試料において検出され得ることが明らかである。
【0252】
試料中のDNase Xに対する免疫組織化学学的染色は、リンパ組織内の播種性腫瘍細胞の検出可能性を改善し得る。
【0253】
実施例3:管洗浄液に含まれる細胞におけるDNase Xの検出によるインサイチュ管癌腫の初期診断
14 個体の集合を、本試験に含めた。7患者が、マンモグラフィ検査により、乳管にカルシウム沈着を有する(初期段階インサイチュ管癌腫であることを示す)と同定された。7個体は、乳の新形成病変を示す兆候を何ら示さなかった。
【0254】
管洗浄をすべての14個体について行い、管洗浄液から細胞を単離した。
【0255】
細胞学的調製物を、ThinPrepTM技術により洗浄液から作製した。免疫化学的染色を実施例1に記載のようにして行った。
【0256】
この実験により、9個体の細胞学的調製物において、DNase Xに免疫反応性である細胞の存在が明らかである。マンモグラフィ診断がインサイチュ管癌腫の存在を示したすべての患者の試料において、DNase Xに免疫反応性である細胞を同定することができた。
【0257】
この結果は、乳房の初期段階の新形成の同定のための従来法は、本明細書に示したDNase X免疫反応性の検出に基づく方法により改善され得ることを示す。
【0258】
実施例4:体液中におけるDNase活性の検出によるインサイチュ胃腸管癌腫の診断
DNase Xタンパク質に対して指向されるモノクローナル抗体を用いると、DNase Xタンパク質の過剰発現が、免疫組織化学により解析したどの腫瘍存在物においても検出された。したがって、DNase Xタンパク質の過剰発現は、腫瘍における一般的な現象を表す。DNase Xタンパク質は、内在的酵素活性を有する可溶性タンパク質であるため、免疫組織化学レベルで見られる過剰発現が、腫瘍細胞に見られるDNase Xタンパク質の過剰発現は、腫瘍患者の体液における増強されたレベルのDNase Xタンパク質またはDNase活性をもたらし得ることを示す。
【0259】
この仮説を試験するため、本発明らは、まず、DNase Xタンパク質の過剰発現が、腫瘍患者の血清において増強されたDNase活性をもたらすかどうかを解析した。
【0260】
診断と血清におけるDNase X活性との間に相関性があるかどうかを見出すため、異なる癌腫を有する個体由来の血清を使用した。全部で、肝臓癌腫を有する患者(1患者)、結腸直腸癌を起源とする肝臓転移(7患者)、甲状腺癌腫(1患者)、膵臓癌(7患者)、食道癌(4患者)、胃癌(17患者)、結腸直腸癌(22患者)、直腸癌(8患者)、結腸直腸腺腫(7患者)および19正常対照由来の血清試料を含めた。
【0261】
腫瘍患者由来の血清におけるDNase活性を測定するため、本発明者らは、全身性エリテマトーデス(SLE)患者におけるDNase活性レベルの低下の測定のために確立されたDNase活性試験を用いた。この試験を用い、本発明者らは、腫瘍患者の血清における増強されたDNase活性を検出することができた。使用したDNase活性試験では、血清中に存在するDNaseは、ELISAプレートにコートしたDNase基質の分解をもたらす。したがって、血清において存在するDNase活性が高いほど、二次抗体の結合およびそれに伴う(concomittant)ELISA値は低くなる(シグナル高さとDNase活性間の反比例関係)。
【0262】
実験の結果を図7に示す。8つの直腸癌腫の血清は、上昇した(またはわずかに弱く上昇した)DNase活性レベルを示さないが、結腸の癌腫および腺腫患者のほとんどの血清は、上昇したDNase活性レベルを示す。また、膵臓および胃癌患者は、上昇したDNase活性レベルを示す。肝臓癌腫患者の血清は上昇したDNase活性レベルを示さないが、7つの肝臓転移血清はすべて、極めて上昇したDNase活性レベルを示す。
【0263】
免疫組織化学的解析により、DNase Xタンパク質の過剰発現が95%を超える膀胱癌腫において示された。膀胱癌腫患者由来の尿に関するDNase活性試験により、健常な対照由来の尿と比べ、患者の尿において増強されたDNase活性が明らかとなった(示さず)。
【0264】
酵素による検出に基づく上昇したレベルのDNaseの検出に加え、本発明者らはまた、DNase Xに対して指向される抗体の捕捉および検出の組み合わせを用い、標準的なELISA実験を行なった。DNase Xに対して指向されるモノクローナル抗体およびDNase Xに対して指向されるポリクローナル抗体の組み合わせにより、試験の感受性および特異性に関して最も特異的な結果が明らかとなった。この試験を用いると、増強されたレベルのDNase Xタンパク質が、腫瘍患者の血清、痰および尿などの体液において検出された(示さず)。
【0265】
腫瘍におけるDNase Xタンパク質の過剰発現に基づいて、スクリーング試験を効率的に行なうことができ、これは、まだ認識されていない腫瘍を有する患者の同定をもたらす。したがって、検出の時点は、不顕性出血(hemeoccult)(糞便潜血)試験などの標準的な試験と比べ、ずっと早期になる。また、これまで検出するのが極めて困難であった胃癌または膵臓癌などの腫瘍タイプが、これで検出され得る。この癌早期検出試験は、ほとんどすべての、またはすべての腫瘍存在物を同定することができるため、この試験は、集団検診のための一般的で安価な早期癌試験に対する重要な基準を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0266】
【図1】図1は、DNase Xに対して指向される抗体で染色した免疫組織学的被検物である。A:結腸癌腫;B:対応する正常組織;結腸癌腫被検物および正常組織を、DNase Xに対して指向される一次抗体を用いる免疫化学的染色反応に供した。図は、腫瘍細胞におけるDNase Xについての核陽性染色を示す。正常組織では、上皮内内分泌腺細胞が、細胞質においてDNase X に対する免疫反応性を示す。実験の詳細については実施例1を参照のこと。
【図2】図2は、DNase Xに対して指向される抗体で染色した免疫組織学的被検物である。A:胃癌腫;B:対応する正常組織;胃癌腫被検物および対応する正常組織を、DNase Xに対して指向される一次抗体を用いる免疫化学的染色反応に供した。図は、腫瘍細胞におけるDNase Xについての核陽性染色を示す。正常組織では、内分泌腺細胞が、細胞質においてDNase Xに対する免疫反応性を示す。実験の詳細については実施例1を参照のこと。
【図3】図3は、DNase Xに対して指向される抗体で染色した免疫組織学的被検物である。肺癌腫被検物を、DNase Xに対して指向される一次抗体を用いる免疫化学的染色反応に供した。図は、腫瘍細胞におけるDNase Xについての核陽性染色を示す。実験の詳細については実施例1を参照のこと。
【図4】図4は、DNase Xに対して指向される抗体で染色した免疫組織学的被検物である。A:食道胃接合部における腺癌腫;B:対応する正常食道組織;食道癌腫被検物および対応する正常組織を、DNase Xに対して指向される一次抗体を用いる免疫化学的染色反応に供した。図は、腫瘍細胞におけるDNase Xについての核陽性染色を示す。正常組織では、染色は見られない。実験の詳細については実施例1を参照のこと。
【図5】図5は、DNase Xに対して指向される抗体で染色した免疫組織学的被検物である。頚部異常形成被検物(CINIII)を、DNase Xに対して指向される一次抗体を用いる免疫化学的染色反応に供した。図は、腫瘍細胞におけるDNase Xについての核陽性染色を示す。実験の詳細については実施例1を参照のこと。
【図6】図6は、DNase Xに対して指向される抗体で染色した免疫組織学的被検物である。インサイチュ腺管癌腫を、DNase Xに対して指向される一次抗体を用いる免疫化学的染色反応に供した。図は、腫瘍細胞におけるDNase Xについての核陽性染色を示す。隣接する正常組織はDNase Xについての染色を示さない。実験の詳細については実施例1を参照のこと。
【図7】図7は、異なる種類の癌腫を有する個体の血清において測定したDNase活性の反比例を示すグラフである。グラフは、平均すると、直腸癌腫を除き、試験したすべての癌腫が、上昇した血清DNase活性を伴うことを示す。(詳細は実施例4)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)個体から試料を得る工程、
b)1つ以上のDNase分子のレベルを測定する工程;
c)該試料内のDNase分子のレベルと、試験対象の疾患に罹っていない相当する対象試料内の含有物とを比較する工程;
d)ここで疾患過程の診断または予後が、該障害または疾患過程の予後の指標として、少なくとも1つの単一のDNase分子またはDNase分子のセットの野生型レベルと比べた有意な変化を考察することから予測される、
を含む、癌およびその前駆病変の診断および/または疾患過程の予後のための方法。
【請求項2】
DNaseが、
a)DNaseI様1(DNase X)(NM_006730);
b)DNaseI様3(DNaseγとも呼ばれる)(AF047354);
c)DNaseI(AJ298844);
d)DNaseII(AB004574);
e)DNaseI様2(AK098028);
f)カスパーゼ活性化DNase(AB013918);
g)DNase KIAA0218;
h)DNaseI様DNase(AF274571);および
i)DFF-45(AF087573)
からなる群より選ばれる請求項1記載の方法。
【請求項3】
DNase分子の検出がDNase分子の特定領域の接近可能性の検出を含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
DNaseの亜細胞局在化が測定される請求項1〜3いずれか記載の方法。
【請求項5】
試料が、核酸、ポリペプチドまたはその断片を含有する液体、細胞または細胞細片、体液、組織試料および細胞試料から選ばれる前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項6】
組織が血液、血漿、血清、液体、リンパ液、骨髄、塗沫標本、洗浄液、洗浄液、分泌物、漏出液、滲出液、唾液、便、尿、精液、細胞試料および組織試料、穿刺物または生検材料である請求項5記載の方法。
【請求項7】
癌が頭部および頸部の癌、呼吸器の癌、胃腸管の癌、皮膚およびその付属物の癌、中枢神経および末梢神経の癌、泌尿器系の癌、生殖器系の癌、内分泌系の癌、軟組織および骨の癌、リンパ球産生系の癌、乳癌、肺癌、子宮頸癌、結腸直腸癌または肛門性器の癌を含む群から選ばれる前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項8】
DNase分子の発現の検出が、試料中のDNase酵素活性の検出により行われる請求項1〜7いずれか記載の方法。
【請求項9】
DNase分子の発現の検出が、検出対象分子への少なくとも1つのプローブの特異的な結合を用いて行われる請求項1〜7いずれか記載の方法。
【請求項10】
プローブが検出可能な標識である請求項9記載の方法。
【請求項11】
標識が、放射性同位体、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート、ビオチンもしくはジゴキシゲニンまたは酵素等の生物学的に関連する結合構造体からなる群より選ばれる請求項10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのプローブが抗体、抗体の断片、抗原結合エピトープまたはミニ抗体である請求項9〜11記載の方法。
【請求項13】
検出が、免疫細胞化学検出手順を含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
マーカー核酸にハイブリダイズする少なくとも1つのプローブが、DNaseマーカー分子の検出のために使用される請求項9〜11記載の方法。
【請求項15】
検出反応が核酸増幅反応を含む請求項14記載の方法。
【請求項16】
インサイチュ検出に使用される請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
インビボまたはインビトロ分子イメージング法の課程において検出される前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項18】
障害の早期診断、最小残基疾患診断またはスクリーニング試験の課程において行われる前期請求項いずれか記載の方法。
【請求項19】
a)DNase核酸および/またはDNaseポリペプチドの検出のための試薬;
b)バッファー、検出マーカー、キャリア物質等の検出反応を行うために一般に使用される試薬および緩衝液
を少なくとも含有してなり、研究キット、診断キットまたはポイントオブケア試験キットである、前記請求項いずれか記載の方法を行うための試験キット。
【請求項20】
DNase核酸および/またはDNaseポリペプチドの検出のための試薬が該核酸および/またはポリペプチドに特異的に結合する薬剤である請求項19記載の試験キット。
【請求項21】
a)DNase活性、細胞増殖または細胞分化に応答して検出可能なシグナルを提供することができる成分の存在下で、DNaseポリペプチドまたは該ポリペプチドを発現する細胞と、スクリーニング対象の薬物候補とをDNase活性、細胞増殖または細胞分化における変化を可能にする条件下で接触させる工程および
b)DNase活性、細胞増殖または細胞分化から生じるシグナルの有無またはシグナルの増大を検出する工程、ここでシグナルの存在または増大は推定の薬物を示す、
を含む癌およびその前駆病変を治療するための薬物候補を同定し、得るための方法。
【請求項22】
癌およびその前駆病変の検出および処置において使用するための、
a)DNaseポリペプチドに対する結合パートナー
b)DNaseポリペプチドのアクチベーター/アゴニストまたはインヒビター/アンタゴニスト;
c)DNaseポリペプチドの発現のアクチベーターまたはインヒビター; および
d)請求項21記載の方法により同定された薬物候補;
からなる群より選ばれる化合物。
【請求項23】
癌およびその前駆病変を処置するのに有用な医薬の製造のための、
a)核酸またはポリペプチドである1つ以上のDNase分子;
b)DNaseポリペプチドの1つ以上のアクチベーター/アゴニストまたはインヒビター/アンタゴニスト;
c)DNaseポリペプチドの発現の1つ以上のアクチベーターまたはインヒビター;
d)DNaseポリペプチドの1つ以上の結合パートナー;および
e)請求項21記載の方法により同定可能な1つ以上の薬物候補;
を含む群より選ばれる化合物の使用。
【請求項24】
癌が、頭部および頸部の癌、呼吸器の癌、胃腸管の癌、皮膚およびその付属物の癌、中枢神経および末梢神経の癌、泌尿器の癌、生殖器系の癌、内分泌系の癌、軟組織および骨の癌、リンパ球産生系および造血系の癌、乳癌、肺癌、子宮頸癌、結腸直腸癌または肛門性器の癌を含む群から選ばれる請求項23記載の使用。
【請求項25】
癌およびその前駆病変を処置するための、
a)核酸またはポリペプチドである1つ以上のDNase分子;
b)DNaseポリペプチドの1つ以上のアクチベーター/アゴニストまたはインヒビター/アンタゴニスト;
c)DNaseポリペプチドの発現の1つ以上のアクチベーターまたはインヒビター;
d)DNaseポリペプチドの1つ以上の結合パートナー;
e)請求項21記載の方法により同定可能な1つ以上の薬物候補;
からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含有してなる医薬組成物。
【請求項26】
請求項22記載の化合物または請求項25記載の医薬組成物を個体に投与することを含む癌およびその前駆病変の処置方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−510363(P2006−510363A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560521(P2004−560521)
【出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2003/051028
【国際公開番号】WO2004/055514
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(505228257)
【Fターム(参考)】