説明

癌および他の疾患または障害の処置のための、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの乳酸塩およびその薬学的組成物

本発明は、式(I)の化合物、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物、またはその薬学的経口投薬形態;式(I)の化合物、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物、またはその薬学的経口投薬形態の合成または製造のためのプロセス;ならびに、上記化合物、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物、またはその薬学的経口投薬形態の、細胞の生存性、増殖、および移動が関係している疾患、障害、または症状(心臓血管疾患(例えば、動脈硬化症および血管の再閉塞)、癌(例えば、AMLおよび悪性神経膠腫)、糸球体硬化症、線維性疾患、および炎症を含む)に罹患しているか、あるいはそれらになりやすい患者の処置のための使用を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年11月21日に出願された米国仮特許出願第61/199,888号および2009年3月17日に出願された米国仮特許出願第61/210,398号からの優先権を主張し、この両方は、その全体が本明細書において参照として援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、式(I)の4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの(L)−乳酸塩:
【0003】
【化1】

【0004】
またはその結晶形態に関する。
【0005】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその結晶形態の合成のためのプロセスにも関する。本発明はまた、式(I)の4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド乳酸塩またはその結晶形態の薬学的組成物にも関する。本発明はまた、式(I)の化合物またはその結晶形態またはその薬学的組成物の、癌および他の障害の処置のための使用方法にも関する。
【背景技術】
【0006】
(発明の背景)
式(II)の化合物4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドは、タイプIII受容体チロシンキナーゼ(RTK)の、低分子であるATP競合的および可逆的阻害剤である。インビトロでは、式(II)の化合物は、Flt−3、c−Kit、およびPDGFR−βを阻害し、およそ30nMの中央値IC50を有する。細胞アッセイにおいては、式(II)の化合物は、200nMのIC50でこれらの受容体の自己リン酸化を阻害した(非特許文献1)。
【0007】
【化2】

【0008】
急性骨髄性白血病(AML)の患者のおよそ30%は、それらのFlt−3遺伝子の中に突然変異を、具体的には、遺伝子内縦列重複(internal tandem duplication)(ITD)を有し、これは、白血病の増殖および生存性に関係している可能性がある。前臨床試験において、式(II)の化合物は、ヒトFlt−3/ITD陽性AML癌細胞を選択的に死滅させた(非特許文献2)。式(II)の化合物の硫酸塩は、AML患者の臨床試験において研究されている(DeAngeloら、Blood 2006,108:3674−3681)。
【0009】
悪性神経膠腫は、成人の原発性脳腫瘍の最も一般的な形態である。悪性神経膠腫のうち、多形性膠芽腫(GBM)が悪性神経膠腫のおよそ60%〜70%を占め、退形成性星細胞腫が10%〜15%を占め、退形成性乏突起膠腫および退形成性乏突起星細胞腫が10%を占め、あまり一般的には存在しない腫瘍が残りを占める(非特許文献3)。
【0010】
異常調節された自己分泌PDGF刺激は、初期の形質転換事象と神経膠腫の腫瘍形成の維持の両方に寄与すると考えられる。PDGFR−αサブユニットは、実質的に全ての神経膠腫細胞株、および悪性神経膠腫の初代培養物中で過剰発現され、PDGFR−βサブユニットは、神経膠腫の腫瘍細胞および内皮細胞中で頻繁に発現される(非特許文献4)。c−Kitもまた、一定の割合の原発性の膠芽腫腫瘍により発現される(非特許文献5)。
【0011】
PDGFRの阻害が、VEGFRの抗血管形成活性を有意に増強することもまた示されている(非特許文献6)。PDGFRに特異的なマウスモノクローナル抗体とVEGFRに特異的なマウスモノクローナル抗体との組み合わせは、2つの異なる異種移植モデル(膵臓癌と非小細胞肺癌)において、VEGFR抗体だけについての18%と比較して、58%のマウスにおいて腫瘍退縮を示した。
【0012】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4は、タイプIIIチロシンキナーゼ(特に、Flt−3、PDGFR、およびc−Kit)に対して阻害作用を示す、置換されたキナゾリン化合物を開示している。これらの出願は、さらに、これらの化合物の調製のための方法、これらの化合物を含有する薬学的組成物、ならびに、増大したチロシンキナーゼ活性と関係がある疾患、障害、または症状(心臓血管疾患(例えば、動脈硬化症および血管の再閉塞)、癌(例えば、白血病(例えば、急性リンパ球性白血病)、または悪性神経膠腫)、糸球体硬化症、線維性疾患、および炎症を含むがこれらに限定されない)の予防および治療、ならびに細胞増殖性疾患の一般的な処置のための方法も開示している。
【0013】
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(II)は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および非特許文献1に記載されている。特許文献5は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩の結晶形態を記載している。
【0014】
Pandeyらが報告した合成においては、式(II)の4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドは、減圧下で乾燥させられた後に、塩酸塩として単離される。特許文献6は、式(II)の化合物の合成のためのプロセス、および硫酸塩として式(II)の化合物を生成するための方法を記載している。特許文献5は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩の結晶形態を記載している。
【0015】
これらの出願および刊行物は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(II)の他の塩または結晶形態は開示していない。
【0016】
薬学的組成物の大規模製造は、化学者および化学技術者に多くの難題を突き付ける。これらの難題の多くは、大量の試薬の取り扱いと大規模な反応の制御に関係するが、最終生成物の取り扱いも、最終的な活性生成物自体の性質と関連がある特別な難題を突き付ける。生成物が高収率で調製され、安定であり、容易に単離できなければならないだけではなく、この生成物は、これらが最終的に使用されるであろう複数のタイプの薬学的調製物に適している特性を有していなければならない。薬学的調製物の有効成分の安定性が、合成、単離、大量貯蔵、薬学的処方、および長期処方を含む製造プロセスの各工程の間に検討されなければならない。これらの工程のそれぞれは、温度および湿度の様々な環境条件により影響を受け得る。
【0017】
薬学的組成物を調製するために使用される薬学的活性物質は、可能な限り純粋であるべきであり、長期貯蔵の際のその安定性は、様々な環境条件下で保証されなければならない。これらの特性は、薬学的組成物中に意図されない分解生成物が出現することを防ぐために絶対的に必要であり、この分解生成物は、毒性である可能性があり得るか、または単純に組成物の効力の低下を生じ得る。
【0018】
薬学的化合物の大規模製造についての一番の関心事は、一定の処理パラメーターと製剤の品質を確保するためには、活性物質が安定な結晶形態を有さなければならないことである。不安定な結晶形態が使用されれば、結晶形態は、製造および/または貯蔵の間に変わってしまい、それにより、品質管理の問題および処方物の不均一性が生じる可能性がある。そのような変化は、製造プロセスの再現性に影響を及ぼし得、それにより、薬学的組成物の処方物に課された高い品質および厳しい条件を満たさない最終的な処方物を生じてしまう。これに関して、一般的には、薬学的組成物の固体状態の物理的および化学的安定性を改善することができる薬学的組成物の固体状態に対する何らかの変更は、同じ薬物の安定性が低い形態を上回る有意な利点をもたらすことを念頭に置いて、行われるべきである。
【0019】
溶液またはスラリーから化合物を結晶化させる場合は、上記化合物は、「多形」と呼ぶのが適している、様々な空間的格子配列で結晶化し得る。各結晶形態は、「多形体」である。所定の物質の多形体は同じ化学的組成を有するが、これらは、1つ以上の物理的特性(例えば、溶解度および解離性、真密度、融点、結晶形状、圧密挙動、流動特性、および/または固体状態の安定性)に関して互いに異なり得る。
【0020】
上記に一般的に記載したように、薬物の多形挙動は、薬学および薬理学において非常に重要視され得る。多形体が示す物理的特性の差異は、実際のパラメーター(例えば、貯蔵安定性、圧縮性、および密度(処方物および製品の製造に重要である)、ならびに溶解速度(生体利用性を決定する際の重要な要素)に影響を及ぼす。安定性の差異は、化学反応性の変化(例えば、酸化の差、その結果、投薬形態は、それが別の多形体である場合よりも1つの多形体である場合に、より迅速に変色する)、または、機械的変化(例えば、錠剤は、動力学的に好ましい多形体が、熱力学的により安定な多形体に転換するので、貯蔵すると崩れる)、あるいはそれらの両方(例えば、1つの多形体の錠剤は、高湿度でより崩壊しやすい)により生じ得る。加えて、結晶の物理的特性が、処理に重要であり得る:例えば、1つの多形体は、溶媒和物を形成する可能性がより高い場合がある。この溶媒和物は、固体形態の凝集を引き起こし、固体の取り扱いの困難を増大させるか、または不純物の濾過および洗い流しを難しくし得る(すなわち、粒子の形状およびサイズ分布は、他の多形体と比較して1つの多形体間で異なり得る)。
【0021】
改善された化学的および物理的特性を有している薬物処方物が所望されるが、そのような処方物について既存の分子の新規の薬物形態(例えば、多形体)を調製するための予測可能な手段は存在してない。これらの新規の形態は、製造および組成物の使用に共通する環境範囲全体にわたり、物理的特性の一貫性を提供するであろう。さらに具体的には、タイプIIIチロシンキナーゼ(特に、Flt−3、PDGFR、およびc−Kit)の阻害により作動する、そのようなチロシンキナーゼの阻害剤が必要である。そのような阻害剤は、タイプIIIチロシンキナーゼに媒介される病理学的(疾患)症状(心臓血管疾患(例えば、動脈硬化症および血管の再閉塞)、癌(例えば、白血病(例えば、急性骨髄性白血病);または悪性神経膠腫)、糸球体硬化症、線維性疾患、および炎症を含む)に罹患しているかまたはなりやすい患者の処置において、ならびに細胞増殖疾患の一般的処置において有用性を有しているはずであり、さらには、大規模製造および処方に適している特性を有しているはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第02/016351号
【特許文献2】米国特許出願公開第05/101609号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第05/288297号明細書
【特許文献4】米国特許第6,982,266号明細書
【特許文献5】国際公開第07/012402号
【特許文献6】国際公開第02/36587号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Pandeyら、J.Med.Chem.2002,45:3772−3793
【非特許文献2】Kellyら、Cancer Cell 2002,1(5):421−432
【非特許文献3】Kesariら、Current Neurology and Neuroscience Reports 2005,5:186−187
【非特許文献4】Kesariら、Current Neurology and Neuroscience Reports 2005,5:186−187
【非特許文献5】Gomesら、Cell Oncol.2007,29(5):399−408
【非特許文献6】Shenら、Biochem Biophys Res Commun 2007,357(4):1142−1147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
式(II)の化合物のさらなる塩、特に、大規模製造、薬学的処方、および貯蔵に有用な塩を開発することが必要である。式(II)の化合物の薬学的処方物(特に、高い薬物積載量(drug loading)が可能であり、投与に便利(convient)であり、安定であるもの)を開発することもまた必要である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明の1つの態様は、式(I)の4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの(L)−乳酸塩、またはその結晶形態を提供する。可能な結晶形態が本明細書中に記載される。
【0026】
別の態様においては、本発明は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(I)の(L)−乳酸塩、またはその結晶形態の合成のためのプロセスを提供する。本発明の他の実施形態は、乳酸塩が結晶形態である上記プロセスに関する。可能な結晶形態が本明細書中に記載される。
【0027】
別の態様においては、本発明は、薬学的に許容され得る担体または希釈剤と、4−{6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(I)の(L)−乳酸塩またはその結晶形態を含有する薬学的組成物を提供する。本発明の他の実施形態は、乳酸塩が結晶形態である上記薬学的組成物に関する。可能な結晶形態が本明細書中に記載される。
【0028】
別の態様においては、本発明は、薬学的経口投薬形態の大量生産に適している、式(I)の化合物またはその結晶形態を含有する薬学的組成物を提供する。
【0029】
別の態様においては、本発明は、錠剤の大量生産に適している、式(I)の化合物またはその結晶形態を含有する薬学的組成物を提供する。
【0030】
別の態様においては、本発明は、式(I)の化合物またはその結晶形態、滑沢剤、崩壊剤、増量剤(filler)、および流動促進剤(glidant)を含有する薬学的組成物を提供する。
【0031】
別の態様においては、本発明は、式(I)の化合物またはその結晶形態を有効成分として含有する、高い薬物積載量を持つ薬学的経口投薬形態を提供する。
【0032】
別の態様においては、本発明は、式(I)の化合物またはその結晶形態の薬学的経口投薬形態の大量生産のためのプロセスを提供する。
【0033】
別の態様においては、本発明は、式(I)の化合物またはその結晶形態の薬学的組成物の、細胞の生存性、増殖、および移動が関係している疾患、障害、または症状(心臓血管疾患(例えば、動脈硬化症および血管の再閉塞)、癌(例えば、AMLおよび悪性神経膠腫)、糸球体硬化症、線維性疾患、および炎症を含む)に罹患しているかまたはなりやすい患者の処置のための使用方法を提供する。
【0034】
本発明は、以下の図および下記の詳細な説明の助けを借りて、さらに十分に議論されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態1)のX線粉末回折図形(XRPD)である。
【図2】図2は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態1)についての示差走査熱量測定(DSC)/熱重量分析(TGA)プロフィールである。
【図3】図3は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態1)についての蒸気収着重量分析(gravimetric vapor sorption)(GVS)プロフィールである。
【図4】図4は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態2)のX線粉末回折図形(XRPD)である。
【図5】図5は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態2)についての示差走査熱量測定(DSC)プロフィールである。
【図6】図6は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態2)の蒸気収着重量分析(GVS)プロフィールである。
【図7】図7は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態3)のX線粉末回折図形(XRPD)である。
【図8】図8は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態3)についての示差走査熱量測定(DSC)/熱重量分析(TGA)プロフィールである。
【図9】図9は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態3)についての蒸気収着重量分析(GVS)プロフィールである。
【図10】図10は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態4)のX線粉末回折図形(XRPD)である。
【図11】図11は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態4)についての示差走査熱量測定(DSC)/熱重量分析(TGA)プロフィールである。
【図12】図12は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(形態4)についての蒸気収着重量分析(GVS)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(発明の詳細な説明)
(定義および略語)
上記で、そして本明細書を通じて使用される場合は、以下の用語および表現は、特に明記されない限りは、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0037】
本明細書中で使用される場合は、表現「乳酸塩」は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの(L)−乳酸塩を記載するように意味され、これは、式(I)の構造を有する。
【0038】
本明細書中で使用される場合は、用語「形態1」は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの(L)−乳酸塩の形態1を記載するように意味される。
【0039】
本明細書中で使用される場合は、用語「形態2」は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの(L)−乳酸塩の形態2を記載するように意味される。
【0040】
本明細書中で使用される場合は、用語「形態3」は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの(L)−乳酸塩の形態3を記載するように意味される。
【0041】
本明細書中で使用される場合は、用語「形態4」は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの(L)−乳酸塩の形態4を記載するように意味される。
【0042】
本明細書中で使用される場合は、用語「結晶」は、規則性が高い化学構造を有している固体をいう。特に、結晶乳酸塩(crystalline Lactate Salt)は、乳酸塩の1種類以上の結晶形態として産生され得る。本出願の目的については、用語「多形体」と、表現「単結晶形態」および「結晶形態」は、同義である。これらは、異なる特性(例えば、異なるXRPDパターン、異なるDSCスキャン結果)を有している結晶を区別する。偽多形体は、通常は、1つの物質の異なる溶媒和物であり、したがって、それらの特性は互いに異なる。本出願の目的については、偽多形体は、用語「多形体」の下位カテゴリーの1つである。したがって、乳酸塩の個々の異なる多形体または偽多形体は、本明細書中では、「単結晶形態」または「結晶形態」と見なされる。
【0043】
「実質的に結晶」は、少なくとも特定の重量百分率が結晶であり得る乳酸塩をいう。特定の重量百分率は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%〜100%の間の任意の百分率である。いくつかの実施形態においては、実質的に結晶は、少なくとも70%が結晶である乳酸塩をいう。他の実施形態においては、実質的に結晶は、少なくとも90%が結晶である乳酸塩をいう。なお他の実施形態においては、実質的に結晶は、少なくとも95%が結晶である乳酸塩をいう。
【0044】
本明細書中で使用される場合は、用語「溶媒和物または溶媒和された」は、本発明の1つの化合物の、1つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合には、水素結合が含まれる。特定の場合には、溶媒和物は、例えば、1つ以上の溶媒分子が結晶固体の結晶格子に組み込まれている場合には、単離することができるであろう。「溶媒和物または溶媒和された」には、液相の溶媒和物と単離可能な溶媒和物の両方が含まれる。代表的な溶媒和物としては、例えば、水和物、エタノール付加物、またはメタノール付加物が挙げられる。溶媒和物の物理的特性は、通常、他の溶媒和物と異なり、そしてその化合物の溶媒和されていない形態とも異なる。化学組成もまた溶媒和物間で異なるので、これらの形態は「偽多形体」と呼ばれる。
【0045】
本明細書中で使用される場合は、用語「水和物または水和された」は、溶媒分子が定義された化学量論量で存在するHOである溶媒和物を示すために使用され、これには、例えば、半水和物、一水和物、二水和物、または三水和物が含まれ得る。本明細書中で使用される場合は、用語「無水物」は、その結晶格子の中にHOが組み込まれていない本発明の化合物である。
【0046】
他に具体的に示されない限りは、本明細書中に示される構造は、それらの水和物、無水物、溶媒和物、および多形体を全て含むように意味される。
【0047】
本明細書中で使用される場合は、用語「混合物」は、1つに合わせられた相状態(例えば、液体または液体/結晶)にはかかわらず、その混合物の1つに合わせられた複数の要素をいうように使用される。
【0048】
本明細書中で使用される場合は、用語「シーディング(seeding)」は、再結晶化または結晶化を開始するための結晶材料の添加をいうように使用される。
【0049】
本明細書中で使用される場合は、用語「貧溶媒(antisolvent)」は、その中で本発明の化合物が難溶性である溶媒をいうように使用される。
【0050】
本明細書中で使用される場合は、用語「被験体」は、好ましくは、鳥類または哺乳動物(例えば、ヒト)であるが、獣医学的処置が必要な動物(例えば、家畜(domestic animal)(例えば、イヌ、ネコなど)、農場用家畜(farm animal)(例えば、ウシ、ヒツジ、ニワトリ、ブタ、ウマなど)、および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど))でもあり得る。
【0051】
本明細書中で使用される場合は、用語「処置すること(treating)」または「処置」は、疾患、障害、または症状の予防、部分緩和、あるいは治癒を意味する。本発明の化合物および組成物は、チロシンキナーゼに媒介される疾患、障害、または症状(特に、PDGFR、c−Kit、もしくはFlt−3に媒介される疾患、障害、または症状)を処置することにおいて有用である。チロシンキナーゼ活性の阻害は、細胞の生存性、増殖、および移動が関係している多数の疾患(心臓血管疾患(例えば、動脈硬化症および血管の再閉塞)、癌(例えば、AMLおよび悪性神経膠腫)、糸球体硬化症、線維性疾患、および炎症を含む)、さらには他の細胞増殖疾患を処置するために役立ち得る。
【0052】
本明細書中で使用される場合は、PDGFRに媒介される疾患、障害、または症状は、PDGFRの生物学的機能が、その疾患、障害、もしくは症状の発症およびまたは経過に影響を及ぼすか、あるいは、PDGFRの調節が、その発症、経過、および/または症候を変化させる、疾患、障害、または症状をいう。
【0053】
本明細書中で使用される場合は、Flt−3に媒介される疾患、障害、または症状は、Flt−3の生物学的機能が、その疾患、障害、もしくは症状の発症およびまたは経過に影響を及ぼすか、あるいは、Flt−3の調節が、発症、経過、および/または症候を変化させる、疾患、障害、または症状をいう。
【0054】
本明細書中で使用される場合は、c−Kitに媒介される疾患、障害、または症状は、c−Kitの生物学的機能が、その疾患、障害、もしくは症状の発症およびまたは経過に影響を及ぼすか、あるいは、c−Kitの調節が、発症、経過、および/または症候を変化させる、疾患または症状をいう。
【0055】
本明細書中で使用される場合は、表現「薬学的有効量」は、所望される治療効果を生じることにおいて有効である、化合物、組成物、医薬品、または他の有効成分の量を記載するように意味される。
【0056】
本明細書中で使用される場合は、1つの薬学的経口投薬形態の総重量は、その薬学的経口投薬形態中の成分の重量を全て足し算することによって決定され、これは、それが形成された後にその薬学的経口投薬形態に対して必要に応じて行われ得る何らかのコーティングの重量を含まない。1つの薬学的経口投薬形態の総重量は、薬学的経口投薬形態の個々の成分の重量百分率を計算するための基準として使用される。
【0057】
本明細書中で使用される場合は、用語「リボン」は、混ぜ合わせたものをローラー圧縮機に通過させることにより産生される、得られる圧縮シートである。
【0058】
本明細書中で使用される場合は、用語「約」は、およそ、ほぼ、おおよそ、または前後を意味するように本明細書中で使用される。用語「約」が数的範囲と組み合わせて使用される場合は、これは、示される数値の上および下に境界を延長することにより、その範囲を修正する。一般的には、用語「約」は、10%の分散だけ、記載された値の上下に数値を修正するために、本明細書中で使用される。
【0059】
本明細書中で使用される場合は、用語「含む(comprises)」は、「含むが、それらに限定されない」を意味する。
【0060】
1つの態様においては、本発明は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの(L)−乳酸塩、またはその結晶形態を提供する。したがって、本発明は、式(I):
【0061】
【化3】

【0062】
の化合物、またはその結晶形態を提供する。
【0063】
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの(L)−乳酸塩(I)の結晶形態を記載するための、特性についての情報の分類が本明細書中に提供される。しかし、そのような情報が必ずしも全て、当業者が、そのような特定の形態が所定の組成物中に存在することを決定するために必要であるわけではなく、特定の形態の決定が、当業者が特定の形態の存在を証明するために十分であると認識するであろう特性についての情報の任意の部分を使用して達成され得ることが理解されるはずである。例えば、ただ1つの区別できるピークでも、そのような特定の形態が存在することを当業者が認識するために十分であり得る。
【0064】
本明細書中に記載される乳酸塩の結晶形態のいくつかは、式(II)の化合物を上回る、相当に増大した水溶解度を示す。例えば、水中では、遊離の塩基は、6.95のpHで約1.24mg/mLの溶解度を有する。形態1は、生理学的に適切なpHで、450mg/mLを上回る溶解度を有する。そして、形態4は、生理学的に適切なpHで、325mg/mLを上回る溶解度を有する。
【0065】
いくつかの実施形態においては、乳酸塩は実質的に結晶である。結晶乳酸塩の限定ではない例としては、乳酸塩の単結晶形態または異なる結晶形態の混合物が挙げられる。本発明の1つの実施形態はまた、乳酸塩の特定の重量百分率から1種類以上の指定された結晶形態を押し出し成形する乳酸塩にも関する。特定の重量百分率は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%〜100%の間の任意の百分率であり得る。
【0066】
本発明の他の実施形態は、指定された結晶形態である乳酸塩に関する。指定された結晶形態は、特定の重量百分率の乳酸塩であり得る。特定の重量百分率は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%〜100%の間の任意の百分率であり得る。いくつかの実施形態においては、乳酸の特定の重量百分率が指定された結晶形態である場合には、残りの乳酸塩は、非晶質の乳酸塩と、指定された結晶形態を除く乳酸塩の1種類以上の結晶形態の組み合わせである。いくつかの他の実施形態においては、乳酸塩の特定の重量百分率が指定された結晶形態である場合には、残りの乳酸塩は非晶質の乳酸塩である。
【0067】
結晶形態の例としては、本明細書中で議論される1つ以上の特性を特徴とする結晶形態の記載が挙げられる。結晶形態の特性についての記載はまた、結晶乳酸塩中に存在し得る様々な結晶形態の混合物を記載するためにも使用され得る。
【0068】
乳酸塩についての以下の説明においては、本発明の実施形態が、塩の特定の結晶「形態」に関連して記載され得る。しかし、個々の塩の特定の結晶形態はまた、本明細書中に記載される多形体の特徴の1つ以上を特徴とし得、特定の「形態」に関連する場合も、または関連しない場合もある。
【0069】
(形態1)
本発明の1つの実施形態においては、乳酸塩の結晶形態(形態1)は、図1に示すX線粉末回折(XRPD)パターンと、CuKα線を使用して得た表1に示すデータを特徴とする。本発明の特定の実施形態においては、形態1は、図1から導き出された1つ以上のピークを特徴とし得る。
【0070】
【表1】

【0071】
本発明の別の実施形態においては、ピークは、5.50°、10.98°、19.65°、19.97°、および21.83°の2θ角で認められる。さらに具体的な実施形態においては、ピークは、5.50°、19.65°、および19.97°の2θ角で認められる。
【0072】
本発明の別の実施形態においては、形態1は、図2に示す示差走査熱量測定プロフィール(DSC)/熱重量分析(TGA)を特徴とする。DSCグラフを、試料による温度の関数として熱流をプロットし、温度の変化率は約10℃/分である。このプロフィールは、約177.0℃の開始温度と約178.7℃での融解を持つ吸熱転移を特徴とする。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0073】
これもまた図2に示すTGAプロフィールは、試料の重量減少率を温度の関数としてグラフに描く。温度の変化率は約10℃/分である。重量減少は、温度を25℃〜250℃まで変化させる場合には、試料の重量の約0.3142%の減少を示す。
【0074】
本発明の別の実施形態においては、形態1は、図3に示すように、蒸気収着プロフィール(GVS)を特徴とする。このプロフィールは、その環境の相対湿度(RH)を、25℃の温度で、0%〜90%のRH範囲全体にわたり10%RHの間隔で変化させる場合の、試料の重量の変化を示す。
【0075】
本発明の別の実施形態においては、形態1は、以下の特性(I−i)〜(I−iii)の少なくとも1つを特徴とする:
(I−i)表1に示すX線粉末回折ピークの少なくとも1つ;
(I−ii)図1と実質的に類似するX線粉末回折パターン;および
(I−iii)約175℃〜約185℃の吸熱範囲を有しており、約177℃の開始温度を持つ、示差走査熱量測定(DSC)プロフィール。
【0076】
本発明のさらなる実施形態においては、形態1は、特性(I−i)〜(I−iii)のうちの2つを特徴とする。本発明の別のさらなる実施形態においては、形態1は、特性(I−i)〜(I−iii)の全てを特徴とする。
【0077】
(形態2)
本発明の1つの実施形態においては、乳酸塩の結晶形態(形態2)は、図4に示すX線粉末回折(XRPD)パターンと、CuKα線を使用して得た表2に示すデータを特徴とする。本発明の特定の実施形態においては、形態2は、図4から導き出された1つ以上のピークを特徴とし得る。
【0078】
【表2】

【0079】
本発明の別の実施形態においては、ピークは、6.38°、7.98°、11.19°、14.12°、19.39°、20.41°、20.68°、21.44°、および27.65°の2θ角で認められる。さらに具体的な実施形態においては、ピークは、11.19°、19.39°、20.41°、および21.44°の2θ角で認められる。
【0080】
本発明の別の実施形態においては、形態2は、図5に示す示差走査熱量測定プロフィール(DSC)を特徴とする。DSCグラフは、試料による温度の関数として熱流をプロットし、温度の変化率は約10℃/分である。このプロフィールは、いくつかの吸熱転移と発熱転移を特徴とする。第1のものは、約155.7℃の開始温度と約157.4℃での融解(ピーク最大値)を持つ吸熱転移である。この後に、約159.2℃(ピーク最大値)での発熱転移がある。この後に、約174.5℃の開始温度と約177.3℃での融解を持つ第2の吸熱転移がある。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0081】
本発明の別の実施形態においては、形態2は、図6に示す蒸気収着プロフィール(GVS)を特徴とする。このプロフィールは、その環境の相対湿度(RH)を、25℃の温度で、0%〜90%のRH範囲全体にわたり10%RHの間隔で変化させる場合の、試料の重量の変化を示す。
【0082】
本発明の別の実施形態においては、形態2は、以下の特性(II−i)〜(II−iii)の少なくとも1つを特徴とする:
(II−i)表2に示すX線粉末回折ピークの少なくとも1つ;
(II−ii)図4と実質的に類似するX線粉末回折パターン;および
(II−iii)約155.7℃の開始温度を持ち、約150℃〜約160℃の第1の吸熱範囲を含む、示差走査熱量測定(DSC)プロフィール。
【0083】
本発明のさらなる実施形態においては、形態2は、特性(II−i)〜(II−iii)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態においては、形態2は、特性(II−i)〜(II−iii)の全てを特徴とする。
【0084】
(形態3)
本発明の1つの実施形態においては、乳酸塩の結晶形態(形態3)は、図7に示すX線粉末回折(XRPD)パターンと、CuKα線を使用して得た表3に示すデータを特徴とする。本発明の特定の実施形態においては、形態3は、図7から導き出された1つ以上のピークを特徴とし得る。
【0085】
【表3】

【0086】
本発明の別の実施形態においては、ピークは、3.66°、11.04°、19.93°、および23.98°の2θ角で認められる。
【0087】
本発明の別の実施形態においては、形態3は、図8に示す示差走査熱量測定プロフィール(DSC)/熱重量分析(TGA)を特徴とする。DSCグラフは、試料による温度の関数として熱流をプロットし、温度の変化率は約10℃/分である。このプロフィールは、いくつかの吸熱転移と発熱転移を特徴とする。第1のものは、約110℃の開始温度を持つ弱い吸熱転移であり、このすぐ後には、約114℃(ピーク最大値)での発熱転移がある。第2の吸熱転移は、約129℃の開始温度を有し、約131.5℃(ピーク最大値)での融解を持ち、この後に、約133℃(ピーク最大値)での発熱再結晶(exothermic recrystallisation)がある。第3の吸熱転移は、約176℃の開始温度を有する。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0088】
これもまた図8に示すTGAプロフィールは、試料の重量減少率を温度の関数としてグラフに描く。温度の変化率は約10℃/分である。重量減少は、温度を25℃〜250℃まで変化させる場合には、試料の重量の約4.55%の減少を示す。Karl Fischer測定は約4.8%の水分含量を示し、これは、TGAプロフィールにおいて見られる重量の減少が、水の減少が原因であることを示唆しており、形態3が水和物であることを示している。
【0089】
本発明の別の実施形態においては、形態3は、図9に示す蒸気収着プロフィール(GVS)を特徴とする。このプロフィールは、その環境の相対湿度(RH)を、25℃の温度で、0%〜90%のRH範囲全体にわたり10%RHの間隔で変化させる場合の、試料の重量の変化を示す。
【0090】
本発明の別の実施形態においては、形態3は、以下の特性(III−i)〜(III−iii)の少なくとも1つを特徴とする:
(III−i)表3に示すX線粉末回折ピークの少なくとも1つ;
(III−ii)図7と実質的に類似するX線粉末回折パターン;および
(III−iii)図8と実質的に類似する示差走査熱量測定(DSC)プロフィール。
【0091】
本発明のさらなる実施形態においては、形態3は、特性(III−i)〜(III−iii)のうちの2つを特徴とする。本発明の別のさらなる実施形態においては、形態3は、特性(III−i)〜(III−iii)の全てを特徴とする。
【0092】
(形態4)
本発明の1つの実施形態においては、乳酸塩の結晶形態(形態4)は、図10に示すX線粉末回折(XRPD)パターンと、CuKα線を使用して得た表4に示すデータを特徴とする。本発明の特定の実施形態においては、形態4は、図10から導き出された1つ以上のピークを特徴とし得る。
【0093】
【表4】

【0094】
本発明の別の実施形態においては、ピークは、11.30°、12.71°、15.15°、16.02°、20.03°、24.15°、および24.66°の2θ角で認められる。さらに具体的な実施形態においては、ピークは、11.30°、16.02°、20.03°、および24.15°の2θ角で認められる。
【0095】
本発明の別の実施形態においては、形態4は、図11に示す示差走査熱量測定プロフィール(DSC)/熱重量分析(TGA)を特徴とする。DSCグラフは、試料による温度の関数として熱流をプロットし、温度の変化率は約10℃/分である。このプロフィールは、いくつかの発熱転移と吸熱転移を特徴とする。第1のものは、約123℃の開始温度を持つ弱い吸熱転移である。この後に、約133℃(ピーク最大値)での発熱再結晶がある。第2の吸熱転移は、約155.7℃の開始温度を有し、この後に、約159.4℃(ピーク最大値)での発熱再結晶がある。第3の転移は、約174℃の開始温度を有する。これらの温度は、±2℃の誤差を有する。
【0096】
これもまた図11に示すTGAプロフィールは、試料の重量減少率を温度の関数としてグラフに描く。温度の変化率は約10℃/分である。重量減少は、温度を25℃〜250℃まで変化させる場合には、試料の重量の約3.1%の減少を示す。Karl Fischer測定は約2.5%の水分含量を示し、これは、この重量の減少が水の減少が原因であることを示唆しており、形態4が水和物であることを示している。
【0097】
本発明の別の実施形態においては、形態4は、図12に示す蒸気収着プロフィール(GVS)を特徴とする。このプロフィールは、その環境の相対湿度(RH)を、25℃の温度で、0%〜90%のRH範囲全体にわたり10%RHの間隔で変化させる場合の、試料の重量の変化を示す。
【0098】
本発明の別の実施形態においては、形態4は、以下の特性(IV−i)〜(IV−iii)の少なくとも1つを特徴とする:
(IV−i)表4に示すX線粉末回折ピークの少なくとも1つ;
(IV−ii)図10と実質的に類似するX線粉末回折パターン;および
(IV−iii)図11と実質的に類似する示差走査熱量測定(DSC)プロフィール。
【0099】
本発明のさらなる実施形態においては、形態4の単結晶形態は、特性(IV−i)〜(IV−iii)のうちの2つを特徴とする。本発明のさらなる実施形態においては、形態4の単結晶形態は、特性(IV−i)〜(IV−iii)の全てを特徴とする。
【0100】
本発明の他の実施形態は、本明細書中で議論される結晶形態のいずれかの上記特性の組み合わせを特徴とする乳酸塩の結晶形態に関する。この特性は、特定の結晶形態について記載されたXRPD、TGA、DSC、および水収着/水脱着の測定の1つ以上の任意の組み合わせによる特性であり得る。例えば、乳酸塩の結晶形態は、XRPDスキャンにおける主要なピークの位置に関するXRPDの結果の任意の組み合わせ;および/またはXRPDスキャンにより得たデータから導いた細胞パラメーターの1つ以上の任意の組み合わせを特徴とし得る。乳酸塩の1つの結晶形態はまた、指定された温度範囲全体および/または一定の重量減少転移が始まる温度での、試料と関係がある重量減少のTGAによる決定を特徴とする場合もある。熱流転移の間の最大熱流と関係がある温度および/または試料が熱流転移を受け始める温度のDSCによる決定もまた、結晶形態を特性決定し得る。試料の重量変化および/または一定の相対湿度範囲(例えば、0%〜90%)全体にわたる水収着/水脱着の測定により決定した無水乳酸塩1分子あたりの水の収着/脱着の変化もまた、乳酸塩の結晶形態を特性決定し得る。
【0101】
上記で議論される特性の組み合わせは、本明細書中で議論される乳酸塩の結晶形態(例えば、形態1、形態2、形態3、または形態4)のいずれかを記載するために使用され得る。
【0102】
本発明の別の態様は、以下のスキーム1、スキーム2、およびスキーム3に概説するように、式(II)の化合物またはその水和物の合成のためのプロセスを提供する。スキーム1は、工程(a)および(b)を記載する。
【0103】
【化4】

【0104】
本発明の1つの実施形態は、上記スキーム1に示すように、工程(a)における、式(III)の化合物からの式(IIIa)の化合物またはその塩の合成を記載する。工程(a)は、式(III)の化合物の溶液を、塩基の存在下でクロロギ酸フェニルの溶液で処理して、式(IIIa)の活性化されたカルバミン酸塩を生じさせることを含む。
【0105】
工程(a)に適している溶媒としては、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、n−ブタノール、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、酢酸イソプロピル、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、トルエン、アニソール、クロロベンゼン、メチルtert−ブチルエーテル、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジグリム、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、工程(a)の溶媒は、トルエン、塩化メチレン、2−メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、クロロベンゼン、アセトニトリル、メチルtert−ブチルエーテル、またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態においては、化合物(III)の溶液を調製するための工程(a)の溶媒は、アセトニトリルである。いくつかの実施形態においては、クロロギ酸フェニルの溶液を調製するために使用される工程(a)の溶媒はトルエンである。
【0106】
工程(a)に適している塩基は、アルカリ土類金属塩基または有機アミン塩基である。アルカリ土類金属塩基の例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム、リチウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、炭酸セシウム、および水酸化セシウムが挙げられるが、これらに限定されない。有機アミン塩基としては、トリアルキルアミン、環状アミン、ピリジン、および置換されたピリジンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの例としては、トリエチルアミン、ピリジン、コリジン、2,6−ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジ−tertブチルピリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(1,5−diazabicycle[4.3.0]non−5−ene)、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリブチルアミン、およびトリイソプロピルアミン(trisopropylamine)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、工程(a)についての塩基はトリエチルアミンである。
【0107】
工程(a)についての適切な反応温度および反応時間の選択は、使用される塩基および溶媒に大きく依存するであろう。当業者は、使用されている反応条件を考慮して、適している反応温度および反応時間を選択することができるであろう。いくつかの実施形態においては、工程(a)の処理は、約0℃〜約7℃の温度で行われる。
【0108】
工程(b)では、上記スキーム1に示すように、式(IIIa)の化合物がピペラジンで処理され、続いて必要に応じて加熱され、続いて、得られる生成物の酸での処理が行われて、式(IV)の化合物を塩として生じさせる。いくつかの実施形態においては、式(IIIa)の化合物とピペラジンが溶媒中で一緒に混合され、得られる混合物が必要に応じて加熱される。いくつかの他の実施形態においては、式(IIIa)の化合物の溶液が、ピペラジンに対してゆっくりと添加され、得られる混合物が、必要に応じて加熱される。いくつかの他の実施形態においては、式(IIIa)の化合物の溶液が加熱され、その後、ピペラジンの溶液がゆっくりと添加される。
【0109】
いくつかの実施形態においては、式(IV)の化合物の塩は塩酸塩である。いくつかの他の実施形態においては、式(IV)の化合物の塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ベシル酸塩、リン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、または安息香酸塩である。
【0110】
工程(b)に適している溶媒としては、塩化メチレン、2−メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、メタノール、およびイソプロピルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、工程(b)の溶媒は酢酸エチルである。
【0111】
工程(b)は、室温または高温で行われる。当業者は、使用されている反応条件を考慮して、適している反応温度と反応時間を選択することができるであろう。いくつかの実施形態においては、工程(b)の加熱は、約25℃〜約80℃の温度で行われる。いくつかの他の実施形態においては、工程(b)の加熱は、約35℃〜約50℃の温度で行われる。いくつかの他の実施形態においては、工程(b)の加熱は、約37℃〜約42℃の温度で行われる。
【0112】
【化5】

【0113】
本発明の別の実施形態は、上記スキーム2に示すように、工程(c)における、式(V)の化合物からの式(VI)の化合物の合成を記載する。工程(c)においては、式(V)の化合物の溶液が、酢酸ホルムアミジンと、必要に応じて塩基で処理される。いくつかの実施形態においては、工程(c)において、塩基は、反応操作(work−up)の間のみ添加される。
【0114】
工程(c)に適している溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、n−ブタノール、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、トルエン、アニソール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジグリム、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、工程(c)で使用される溶媒は、N−メチルピロリジノンである。
【0115】
工程(c)に適している塩基は、アルカリ土類金属塩基または有機アミン塩基である。アルカリ土類金属塩基の例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム、リチウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、炭酸セシウム、および水酸化セシウムが挙げられるが、これらに限定されない。有機アミン塩基としては、トリアルキルアミン、環状アミン、ピリジン、および置換されたピリジンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの例としては、トリエチルアミン、ピリジン、コリジン、2,6−ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジ−tertブチルピリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(1,5−diazabicycle[4.3.0]non−5−ene)、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリブチルアミン、およびトリイソプロピルアミン(trisopropylamine)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、工程(c)で使用される塩基は、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、またはコリジンである。いくつかの実施形態においては、工程(c)で使用される塩基は、N,N’−ジイソプロピルエチルアミンである。
【0116】
工程(c)は、高温で行われることが好ましい。当業者は、使用されている反応条件を考慮して、適している反応温度と反応時間を選択することができるであろう。いくつかの実施形態においては、工程(c)は、約50℃〜約150℃の温度で行われる。いくつかの他の実施形態においては、工程(c)は、約80℃〜約150℃の温度で行われる。いくつかの他の実施形態においては、工程(c)は、約115℃〜約140℃の温度で行われる。特定の実施形態においては、工程(c)は、約130℃の温度で行われる。
【0117】
本発明の別の実施形態は、上記スキーム2に示すように、式(VI)の化合物からの式(VII)の化合物の合成を記載する。工程(d)は、式(VI)の化合物を、POClおよび塩基で、溶媒中で処理して、式(VII)の化合物を生じさせることを含む。
【0118】
特定の実施形態においては、工程(d)は、芳香族炭化水素溶媒と、ニトリルまたはエーテルである溶媒を含有する溶媒混合物中で行われる。適している芳香族炭化水素溶媒としては、トルエン、クロロベンゼン、アニソール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適しているニトリル溶媒としては、アセトニトリルが挙げられるが、これに限定されない。適しているエーテル溶媒としては、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。別の特定の実施形態においては、ニトリルまたはエーテル溶媒に対する芳香族炭化水素溶媒の比は、約5:1〜約4:1である。別の特定の実施形態においては、溶媒混合物は、トルエンとアセトニトリルを含有する。
【0119】
工程(d)に適している塩基は、有機アミン塩基である。適している有機アミン塩基としては、トリアルキルアミン、環状アミン、ピリジン、および置換されたピリジンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの例としては、トリエチルアミン、ピリジン、コリジン、2,6−ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジ−tertブチルピリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(1,5−diazabicycle[4.3.0]non−5−ene)、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリブチルアミン、およびトリイソプロピルアミン(trisopropylamine)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、工程(d)の塩基は、N,N’−ジイソプロピルエチルアミンである。
【0120】
工程(d)は、高温で行われることが好ましい。当業者は、使用されている反応条件を考慮して、適している反応温度と反応時間を選択することができるであろう。いくつかの実施形態においては、工程(d)は、約20℃〜約90℃の温度で行われる。いくつかの他の実施形態においては、工程(d)は、約25℃〜約60℃の温度で行われる。いくつかの他の実施形態においては、工程(d)は、約35℃〜約45℃の温度で行われる。特定の実施形態においては、工程(d)は、約40℃の温度で行われる。特定の他の実施形態においては、工程(d)は、約80℃の温度で行われる。
【0121】
特定の実施形態においては、工程(d)において、トルエンとアセトニトリルの溶媒混合物の使用は、二量体副生成物(式(VIa)の化合物のような二量体を含む)の量を減少させる:
【0122】
【化6】

【0123】
さらに、工程(d)におけるトルエンとアセトニトリルの溶媒混合物の使用により、反応のクエンチおよび操作(work−up)のために別の溶媒を使用する必要はない。これは、工程(d)についてのプロセスの効率と簡素化を有意に改善する。
【0124】
加えて、工程(d)において大過剰量のPOClを使用する必要もない。1つの実施形態においては、使用されるPOClの量は、式(VI)の化合物の量と比較して、約0.5モル当量に対して約2.3モル当量である。別の実施形態においては、POClの量は、式(VI)の化合物の量と比較して、約1.8モル当量から約1.2当量である。
【0125】
本発明の別の実施形態は、以下のスキーム3に示すように、工程(e)における、式(IV)の化合物と式(VII)の化合物からの式(II)の化合物またはその水和物の合成を含む。工程(e)は、塩基の存在下、溶媒中で、式(IV)の化合物と式(VII)の化合物を混ぜ合わせることを含む。
【0126】
【化7】

【0127】
工程(e)に適している溶媒としては、イソプロパノール、sec−ブタノール、n−ブタノール、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、トルエン、アニソール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジグリム、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、工程(e)の溶媒は、エタノールである。
【0128】
工程(e)に適している塩基は、アルカリ土類金属塩基または有機アミン塩基である。アルカリ土類金属塩基の例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム、リチウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、炭酸セシウム、および水酸化セシウムが挙げられるが、これらに限定されない。有機アミン塩基としては、トリアルキルアミン、環状アミン、ピリジン、および置換されたピリジンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの例としては、トリエチルアミン、ピリジン、コリジン、2,6−ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジ−tertブチルピリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(1,5−diazabicycle[4.3.0]non−5−ene)、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリブチルアミン、およびトリイソプロピルアミン(trisopropylamine)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、工程(e)で使用される塩基は、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸セシウム、またはジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)である。いくつかの他の実施形態においては、工程(e)のための塩基は、N,N’−ジイソプロピルエチルアミンである。
【0129】
工程(e)は、室温または高温で行われる。当業者は、使用されている反応条件を考慮して適している反応温度と反応時間を選択することができるであろう。いくつかの実施形態においては、工程(e)は、約20℃〜約50℃の温度で行われる。いくつかの他の実施形態においては、工程(e)は、約20℃〜約40℃の温度で行われる。いくつかの他の実施形態においては、工程(e)は、約25℃の温度で行われる。
【0130】
いくつかの実施形態においては、使用されている反応条件に応じて、工程(e)は、式(II)の化合物を水和物として生じる。他の実施形態においては、式(II)の化合物は、三水和物として産生される。他の実施形態においては、式(II)の化合物が、Karl−Fischer分析により決定されるような、特定の水分含有率になるように乾燥させられる。
【0131】
本発明の別の態様は、式(I)の4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの(L)−乳酸塩の結晶形態の合成のためのプロセスを提供する。
【0132】
1つの実施形態においては、本発明は、式(II)の化合物から形態1の乳酸塩を産生するためのプロセスに関する。工程1においては、テトラヒドロフラン中の式(II)の化合物の溶液が加熱され、水分含量が調整される。この後には、必要に応じた清澄濾過と、必要に応じて2度目の水分含量の調整が行われる。工程2は、水中の(L)−乳酸の86%溶液を添加することと、その後の形態1のシーディングを含む。結晶化は、貧溶媒として酢酸イソプロピルを添加することにより、工程3において継続され、これに続いて、制御冷却が行われ、その後、固体が収集され、酢酸イソプロピルで洗浄され、乾燥させられる。
【0133】
いくつかの実施形態においては、上記工程1において、テトラヒドロフラン中の式(II)の化合物の溶液が、約40℃の温度で加熱され、水分含量が、約0%〜約4%の間になるように調整される。いくつかの他の実施形態においては、上記工程1において、テトラヒドロフラン中の式(II)の化合物の溶液が、約60℃の温度で加熱され、水分含量が、約0%〜約2%の間になるように調整される。
【0134】
いくつかの実施形態においては、上記工程2において、溶液は、(L)−乳酸の溶液の添加と形態1のシーディング後、工程1の温度で約2時間以内の時間保たれる。
【0135】
いくつかの実施形態においては、上記工程3において、酢酸イソプロピルが、約10時間かけて添加される。いくつかの他の実施形態においては、上記工程3において、制御冷却は、約6時間〜約10時間の時間をかけて、約18℃〜約24℃の温度になるまでである。
【0136】
別の実施形態においては、形態1は、式(II)の化合物にエタノールを添加すること、そして得られる混合物を約55℃に加熱することにより、産生される。その後、水中の(L)−乳酸の85%溶液が添加される。その後、この溶液が約40℃に冷却され、必要に応じて、酢酸エチルが貧溶媒として、約3時間かけてゆっくりと添加される。0℃での冷却後、この懸濁液が濾過され、固体が乾燥させられる。
【0137】
別の実施形態においては、形態1の乳酸塩が、溶媒中の非晶質乳酸塩をスラリーにすることにより産生される。そのような実施形態においては、適している溶媒は、ジオキサン、トルエン、クメン、メチルtert−ブチルエーテル、テトラリン、アニソール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、またはニトロメタンである。
【0138】
別の実施形態においては、形態1の乳酸塩は、室温で溶媒中で撹拌され、結晶形態に変化がないことが観察される。そのような実施形態においては、適している溶媒は、ヘキサン、ジオキサン、トルエン、クメン、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン、エタノール、メタノール、アセトニトリル、ニトロメタン、またはN,N’−ジメチルホルムアミドである。
【0139】
別の実施形態においては、形態2の乳酸塩は、ヘプタン中の非晶質乳酸塩をスラリーにすることにより産生される。1つの例においては、スラリーは、4日間にわたる各温度で4時間の室温〜約50℃の間の加熱−冷却サイクルで維持され、これにより、XRPDにより決定されるような形態2の乳酸塩の単離が生じた。
【0140】
別の実施形態においては、形態2の乳酸塩は、形態1の乳酸塩が、2.5%の水を含むテトラヒドロフラン:酢酸イソプロピル(THF:iPrOAc)の1:1溶液で、室温で処理され、続いて、形態2または形態2と形態1の混合物のいずれかがシーディングされた場合に産生される。約5日〜約7日の間の撹拌または振盪後、形態2だけが単離される。
【0141】
別の実施形態においては、形態3の乳酸塩は、形態1の乳酸塩が、2.5%の水を含む必要に応じて冷却されたTHF:iPrOAcの1:1溶液で、約0℃で、約20時間〜約90時間処理された場合に調製される。得られる固体がXRPDにより分析され、形態3の乳酸塩と一致していることが明らかにされた。
【0142】
別の実施形態においては、形態3の乳酸塩が、形態1の乳酸塩の水溶液を凍結乾燥させること、それに続いて、上記凍結乾燥した物質を、2.5%の水を含む必要に応じて冷却されたTHF:iPrOAcの1:1溶液で、約0℃で、約80時間〜約90時間処理することにより、調製される。得られる固体がXRPDにより分析され、形態3の乳酸塩と一致していることが明らかにされた。
【0143】
別の実施形態においては、形態4の乳酸塩は、テトラヒドロフラン中で式(II)の化合物を処理し、水分含量を、水中の(L)−乳酸の85%溶液で、約40℃で、約3%〜約4%の間になるように調整することにより、産生される。形態4のシーディング、それに続く酢酸イソプロピルの添加、その後の制御冷却により、形態4の単離が導かれる。
【0144】
別の実施形態においては、形態4の乳酸塩は、1:1のTHF:iPrOAc中の1.2%の水中の非晶質乳酸塩の溶液を室温で処理することにより産生される。得られる固体が濾過され、乾燥させられる。
【0145】
別の実施形態においては、形態2の乳酸塩、形態3の乳酸塩、または形態4の乳酸塩のいずれか1つを約135℃〜約165℃の間に加熱することにより、形態1の乳酸塩の形成が生じる。
【0146】
別の実施形態においては、形態1の水溶液が凍結乾燥されて、非晶質乳酸塩が生じる。
【0147】
本発明の他の実施形態は、薬学的に許容され得る担体または希釈剤と、乳酸塩またはその結晶形態を含有する薬学的組成物に関する。他の実施形態においては、薬学的組成物は、薬学的に許容され得る担体または希釈剤と、実質的に結晶である乳酸塩を含有する。他の実施形態においては、薬学的組成物は、薬学的に許容され得る担体または希釈剤と乳酸塩を含有し、ここでは、上記乳酸塩は、少なくとも95重量%が指定された結晶形態であり、上記結晶形態は本明細書中に記載されている。他の実施形態においては、薬学的組成物は、薬学的に許容され得る担体または希釈剤と乳酸塩を含有し、ここでは、上記乳酸塩は単結晶形態であり、上記単結晶形態は本明細書中に記載されている。他の実施形態においては、これらの組成物は、必要に応じて、1種類以上のさらなる治療薬をさらに含有する。
【0148】
上記のように、本発明の薬学的に許容され得る組成物はさらに、薬学的に許容され得る担体を含有し、上記薬学的に許容され得る担体には、本明細書中で使用される場合は、所望される特定の投薬形態に適している限りは、任意の、あるいは全ての、溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散補助剤または懸濁補助剤、ゼラチンまたはポリマー製のカプセル殻、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などが含まれる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、薬学的に許容され得る組成物の処方に使用される様々な担体、およびその調製のための公知の技術を開示している。任意の従来の担体媒体が、例えば、何らかの望ましくない生物学的作用を生じることによるか、または別の方法で薬学的に許容され得る組成物の任意の他の成分(単数または複数)と有害な様式で相互作用することにより、本発明の化合物と不適合である場合を除き、その使用は本発明の範囲内にあると考えられる。薬学的に許容され得る担体とすることができる物質のいくつかの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム)、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド性シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);粉末状トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、ココアバターおよび坐剤ワックス);油(例えば、ピーナッツ油、綿実油;サフラワー油;ゴマ油;オリーブ油;コーン油および大豆油);グリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリル酸エチル);寒天;緩衝化剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;ならびにリン酸緩衝溶液、ならびに他の非毒性の適合性滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されず、そして着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味料および香料、保存剤および抗酸化剤もまた、処方者の判断に従って、組成物中に存在し得る。
【0149】
乳酸塩、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物は、ヒトおよび他の動物に対して、処置される感染の重篤度に応じて、経口投与、直腸投与、非経口投与、嚢内投与、膣内投与、腹腔内投与、局所投与(粉末、軟膏、または点眼薬によって)、口腔投与、経口スプレーまたは経鼻スプレーなどとして投与することができる。特定の実施形態において、本発明の化合物は、所望される治療効果を得るために、1日当たり被験体の体重に基づき、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは、約1mg/kg〜約25mg/kgの投与量レベルで、1日に1回以上、経口投与または非経口投与され得る。
【0150】
経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に許容され得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが挙げられるがこれらに限定されない。活性化合物に加えて、液体投薬形態は、当該分野で一般的に使用される不活性な希釈剤(例えば、水または他の溶媒)、可溶化剤、および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚(germ)油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物が挙げられ得る。不活性な希釈剤に加えて、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味料、ならびに香料のようなアジュバントを含有し得る。
【0151】
注射可能な調製物、例えば、滅菌の注射可能な水性または油性の懸濁液が、公知の技術に従って、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を使用して処方され得る。滅菌の注射可能な調製物はまた、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液のような非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の滅菌の注射可能な溶液、懸濁液、あるいはエマルジョンでもあり得る。
【0152】
使用され得る許容され得るビヒクルおよび溶媒としては、水、リンガー溶液、U.S.P.、および等張性の塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、滅菌の、不揮発性油が、慣習的に溶媒または懸濁媒質として使用される。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の刺激の少ない不揮発性油が使用され得る。加えて、オレイン酸のような脂肪酸が、注射可能な調製物において使用される。
【0153】
注射可能な処方物は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過により、または滅菌の固体組成物の形態である滅菌剤(使用前に、滅菌水もしくは他の滅菌の注射可能な媒体に溶解することができるか、または分散させることができる)を取り込むことによって、滅菌することができる。
【0154】
本発明の化合物の効果を長くするために、皮下注射または筋肉内注射による化合物の吸収を遅くすることが、しばしば所望される。これは、低い水溶解度を持つ結晶または非晶質の物質の液体懸濁液の使用により達成され得る。次いで、化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、溶解速度は、順に、結晶の大きさおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口的投与された化合物形態の吸収の遅延は、化合物を油性のビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成される。注射可能なデポー製剤の形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中に化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することにより作製される。ポリマーに対する化合物の比、および利用される特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。注射可能なデポー製剤処方物はまた、化合物を、体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に閉じ込めることによっても調製される。
【0155】
直腸投与または経膣投与のための組成物は、好ましくは、本発明の化合物を適切な非刺激性の賦形剤または担体(例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックス)と混合することにより調製され得る坐剤である。適切な非刺激性の賦形剤または担体は、室温では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸窩または膣窩で融解し、活性化合物を放出する。あるいは、直腸投与または経膣投与のための組成物は、化合物を、上記化合物を溶解させるための適切な非刺激性の賦形剤(例えば、油または水)と混合することにより調製され得るゲルまたはクリームであり、そしてポリマーおよび脂肪アルコールが、直腸窩または膣窩での滞留時間を延長し、活性化合物を放出させるために処方物を濃くするために、添加され得る。
【0156】
経口投与のための固体投薬形態としては、カプセル、錠剤、ピル、粉末、および顆粒が挙げられる。このような固体投薬形態において、活性化合物は、必要に応じて、少なくとも1種類の不活性な薬学的に許容され得る賦形剤または担体(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)、ならびに/あるいは、a)増量剤またはエクステンダー(extender)(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸);b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギニン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア);c)保湿剤(例えば、グリセロール);d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギニン酸、特定のケイ酸塩、クロスポビドン、および炭酸ナトリウム);e)溶液遅延剤(例えば、パラフィン);f)吸収加速剤(例えば、四級アンモニウム化合物);g)湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート);h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ);ならびにi)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、およびそれらの混合物)と混合され得る。カプセル、錠剤およびピルの場合は、投薬形態はまた、緩衝剤、またはコロイド状二酸化ケイ素のような流動補助剤も含有し得る。他の実施形態においては、活性化合物は、さらなる物質を全く含まないゼラチンまたはポリマー製のカプセル殻(滑らかな(neat)カプセル殻)の中にカプセル化され得る。
【0157】
類似するタイプの固体組成物もまた、ラクトースすなわち乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、ソフトおよびハードの充填型のゼラチンカプセルにおいて、増量剤として使用され得る。コーティングおよび殻(例えば、腸溶性コーティング、および薬学的処方の分野で周知の他のコーティング)を持つ、錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、および顆粒の固体投薬形態を調製することができる。これらの固体投薬形態は、必要に応じて、不透明化剤を含有し得、そして、腸菅の特定の部分で、必要に応じて、遅延様式で、有効成分(単数または複数)だけを、または優先的に放出する組成物でもあり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトースすなわち乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、ソフトおよびハードの充填型のゼラチンカプセルにおいて、増量剤としても使用され得る。
【0158】
活性化合物はまた、上記の1種類以上の賦形剤を含むマイクロカプセル化形態でもあり得る。コーティングおよび殻(例えば、腸溶性コーティング、放出制御型コーティング、および薬学的処方の分野で周知の他のコーティング)を持つ、錠剤、糖衣丸、カプセル、丸剤、および顆粒の固体投薬形態を調製することができる。そのような固体投薬形態において、活性化合物は、少なくとも1種類の不活性な希釈剤(例えば、スクロース、ラクトース、またはデンプン)と混合され得る。そのような投薬形態はまた、通常行われているように、不活性な希釈剤以外のさらなる物質(例えば、錠剤化滑沢剤および他の錠剤化補助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース))を含有し得る。カプセル、錠剤、および丸剤の場合は、上記投薬形態はまた、緩衝剤も含有し得る。これらは、必要に応じて、不透明化剤を含有し得、そして、腸菅の特定の部分で、必要に応じて、遅延様式で、有効成分(単数または複数)だけを、または優先的に放出する組成物でもあり得る。使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0159】
本発明の化合物の局所投与または経皮投与のための投薬形態としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤、またはパッチが挙げられる。活性成分は、滅菌条件下で、薬学的に許容され得る担体、および必要に応じて、任意の必要な保存剤または緩衝剤と混合される。眼用の処方物、点耳剤、および点眼剤もまた、本発明の範囲内であることが意図される。さらに、本発明は、体への化合物の制御された送達を提供するというさらなる利点を有する、経皮パッチの使用を意図する。このような投薬形態は、化合物を適切な媒体に溶解させるかまたは分散させることにより製造され得る。吸収増強剤もまた、化合物の皮膚を通る流れを増大させるために使用され得る。その速度は、速度制御膜を提供すること、あるいは化合物のポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることのいずれかにより制御され得る。
【0160】
いくつかの実施形態においては、固体投薬形態は、乳酸塩またはその結晶形態と、フマル酸ステアリルナトリウム、クロスポビドン、マンニトール、およびコロイド状二酸化ケイ素のうちの少なくとも1種類を含有する。いくつかの実施形態においては、固体投薬形態は、フィルムコーティングを持つ錠剤を含有する。いくつかの他の実施形態においては、固体投薬形態は、約10%の滑沢剤を含有する。いくつかの他の実施形態においては、固体投薬形態は、約9%の崩壊剤を含有する。いくつかの実施形態においては、固体投薬形態は高い薬物積載量を有する。いくつかの実施形態においては、固体投薬形態は、約30重量%〜約60重量%の乳酸塩またはその結晶形態を含有する。いくつかの実施形態においては、固体投薬形態は、約40重量%〜約50重量%の乳酸塩またはその結晶形態を含有する。
【0161】
1つの実施形態においては、薬学的組成物は式(I)の化合物を含有し、ここでは、式(I)の化合物は結晶である。別の実施形態においては、薬学的組成物中の式(I)の化合物は、少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%が指定された結晶形態である。さらになお別の実施形態においては、薬学的組成物中の式(I)の化合物は指定された結晶形態であり、ここでは、上記結晶形態は形態1である。
【0162】
1つの実施形態においては、薬学的組成物は薬学的経口投薬形態である。別の実施形態においては、薬学的経口投薬形態は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、または顆粒剤である。なお別の実施形態においては、薬学的経口投薬形態は錠剤である。
【0163】
1つの実施形態においては、薬学的組成物は、式(I)の化合物またはその結晶形態、滑沢剤、崩壊剤、増量剤、および流動促進剤を含有する。別の実施形態においては、薬学的組成物は、総重量の重量百分率として、約30%〜約60%の式(I)の化合物またはその結晶形態;約6%〜約12%の滑沢剤;約6%〜約12%の崩壊剤;約15%〜約50%の増量剤;および約0.3%〜約2%の流動促進剤を含有する。なお別の実施形態においては、薬学的組成物は、総重量の重量百分率として、約45%〜約55%の式(I)の化合物またはその結晶形態;約9%〜約11%の滑沢剤;約8%〜約10%の崩壊剤;約20%〜約40%の増量剤;および約0.8%〜約1.5%の流動促進剤を含有する。
【0164】
適している滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリル、水添植物油、タルク、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸スクロース、フマル酸ステアリルナトリウム、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、またはそれらの混合物である。他の実施形態においては、滑沢剤はフマル酸ステアリルナトリウムである。
【0165】
いくつかの実施形態においては、薬学的組成物は、高レベルの滑沢剤を含有する。いくつかの実施形態においては、滑沢剤は、総重量の重量百分率として約2%〜約12%の量で存在する。いくつかの実施形態においては、滑沢剤は、総重量の重量百分率として約6%〜約12%の量で存在する。いくつかの他の実施形態においては、滑沢剤は、総重量の重量百分率として約9%〜約11%の量で存在する。なおいくつかの他の実施形態においては、滑沢剤は、総重量の重量百分率として、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、または約12%の量で存在する。さらになおいくつかの実施形態においては、滑沢剤は、総重量の重量百分率として、約9%、約10%、または約11%の量で存在する。いくつかのさらなる実施形態においては、滑沢剤は、総重量の重量百分率として約10%の量で存在する。
【0166】
いくつかの実施形態においては、滑沢剤は、粒子内にある第1の滑沢剤と、粒子間にある第2の滑沢剤を含有し、これらは同じである場合も、また異なる場合もある。他の実施形態においては、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤は同じである。いくつかの他の実施形態においては、第1の滑沢剤だけが存在する。なおいくつかの他の実施形態においては、第2の滑沢剤だけが存在する。
【0167】
いくつかの実施形態においては、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤は、それぞれ独立して、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、またはそれらの混合物である。いくつかの他の実施形態においては、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤はいずれもフマル酸ステアリルナトリウムである。
【0168】
いくつかの実施形態においては、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤は、滑沢剤の総量が、総重量の重量百分率として約12%を超えないという条件で、同じ量で存在する。他の実施形態においては、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤は、滑沢剤の総量が、総重量の重量百分率として約12%を超えないという条件で、異なる量で存在する。いくつかの実施形態においては、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤は、滑沢剤の総量が、総重量の重量百分率として約12%を超えないという条件で、それぞれ独立して、約0%〜約12%の量で存在する。いくつかの他の実施形態においては、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤は、滑沢剤の総量が、総重量の重量百分率として約12%を超えないという条件で、それぞれ独立して、約2%〜約8%の量で存在する。なおいくつかの他の実施形態においては、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤は、総重量の重量百分率として、それぞれ独立して、約3%〜約6%の量で存在する。いくつかのさらなる実施形態においては、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤は、総重量の重量百分率として、それぞれ独立して、約3%、約4%、約5%、または約6%の量で存在する。なおいくつかのさらなる実施形態においては、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤は、総重量の重量百分率として、それぞれ独立して、約5%の量で存在する。
【0169】
適している崩壊剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、粉末状セルロース、アルファ化デンプン、ケイ酸カルシウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、崩壊剤は、クロスポビドン、ケイ酸カルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、またはそれらの混合物である。いくつかの他の実施形態においては、崩壊剤はクロスポビドンである。
【0170】
いくつかの実施形態においては、薬学的組成物は、高レベルの崩壊剤を含有する。いくつかの実施形態においては、崩壊剤は、総重量の重量百分率として、約2%〜約12%の量で存在する。いくつかの実施形態においては、崩壊剤は、総重量の重量百分率として、約6%〜約12%の量で存在する。いくつかの他の実施形態においては、崩壊剤は、総重量の重量百分率として約8%〜約10%の量で存在する。なおいくつかの他の実施形態においては、崩壊剤は、総重量の重量百分率として、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、または約12%の量で存在する。さらになおいくつかの実施形態においては、崩壊剤は、総重量の重量百分率として、約8%、約9%、または約10%の量で存在する。いくつかのさらなる実施形態においては、崩壊剤は、総重量の重量百分率として、約9%の量で存在する。
【0171】
いくつかの実施形態においては、崩壊剤は、粒子内にある第1の崩壊剤と、粒子間にある第2の崩壊剤を含有する。これらは同じである場合も、また異なる場合もある。他の実施形態においては、第1の崩壊剤と第2の崩壊剤は同じである。いくつかの他の実施形態においては、第1の崩壊剤だけが存在する。なおいくつかの他の実施形態においては、第2の崩壊剤だけが存在する。
【0172】
いくつかの実施形態においては、第1の崩壊剤と第2の崩壊剤は、独立して、クロスポビドン、ケイ酸カルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、またはそれらの混合物である。いくつかの他の実施形態においては、第1の崩壊剤と第2の崩壊剤はいずれもクロスポビドンである。
【0173】
いくつかの実施形態においては、第1の崩壊剤と第2の崩壊剤は、崩壊剤の総量が、総重量の重量百分率として約12%を超えないという条件で、それぞれ独立して、約0%〜約12%の量で存在する。いくつかの他の実施形態においては、第1の崩壊剤と第2の崩壊剤は、崩壊剤の総量が、総重量の重量百分率として約12%を超えないという条件で、それぞれ独立して、約2%〜約8%の量で存在する。なおいくつかの他の実施形態においては、第1の崩壊剤と第2の崩壊剤は、それぞれ独立して、総重量の重量百分率として約3%〜約6%の量で存在する、いくつかのさらなる実施形態においては、第1の崩壊剤と第2の崩壊剤は、それぞれ独立して、総重量の重量百分率として、約3%、約4%、約5%、または約6%の量で存在する。なおいくつかのさらなる実施形態においては、第1の崩壊剤と第2の崩壊剤は、それぞれ独立して、総重量の重量百分率として、約4%〜約5%の量で存在する。
【0174】
増量剤の選択が、薬学的経口投薬形態の溶出挙動に影響を及ぼすことが明らかになった。適している増量剤としては、デンプン、スクロース,リン酸カルシウム、粉末状セルロース,微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、イソマルト、マンニトール、ラクトース、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、増量剤は、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、イソマルト、マンニトール、またはそれらの混合物である。いくつかの他の実施形態においては、増量剤はマンニトールである。いくつかの実施形態においては、増量剤は、総重量の重量百分率として、約10%〜約85.7%の量で存在する。いくつかの実施形態においては、増量剤は、総重量の重量百分率として、約10%〜約70%の量で存在する。いくつかの他の実施形態においては、増量剤は、総重量の重量百分率として、約15%〜約50%の量で存在する。なおいくつかの他の実施形態においては、増量剤は、総重量の重量百分率として、約20%〜約40%の量で存在する。いくつかのさらなる実施形態においては、増量剤は、総重量の重量百分率として、約28%〜約33%の量で存在する。なおいくつかのさらなる実施形態においては、増量剤は、総重量の重量百分率として、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、または約33%の量で存在する。さらになおいくつかのさらなる実施形態においては、増量剤は、総重量の重量百分率として、約31.3%の量で存在する。
【0175】
いくつかの実施形態においては、増量剤は、粒子内にある第1の増量剤と、粒子間にある第2の増量剤を含有する。これらは同じである場合も、また異なる場合もある。他の実施形態においては、第1の増量剤と第2の増量剤は同じである。いくつかの他の実施形態においては、第1の増量剤だけが存在する。なおいくつかの他の実施形態においては、第2の増量剤だけが存在する。
【0176】
いくつかの実施形態においては、第1の増量剤と第2の増量剤は、それぞれ独立して、増量剤の総量が、総重量の重量百分率として約70%を超えないという条件で、約0%〜約70%の量で存在する。いくつかの他の実施形態においては、第1の増量剤と第2の増量剤は、増量剤の総量が、総重量の重量百分率として約50%を超えないという条件で、それぞれ独立して、約0%〜約50%の量で存在する。なおいくつかの他の実施形態においては、第1の増量剤と第2の増量剤は、増量剤の総量が、総重量の重量百分率として約50%を超えないという条件で、それぞれ独立して、約5%〜約30%の量で存在する。さらになおいくつかの他の実施形態においては、第1の増量剤と第2の増量剤は、総重量の重量百分率として、それぞれ独立して、約10%〜約25%の量で存在する。
【0177】
適している流動促進剤としては、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、第三リン酸カルシウム、デンプン、三ケイ酸マグネシウム、粉末状セルロース、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、流動促進剤はコロイド状二酸化ケイ素である。いくつかの他の実施形態においては、流動促進剤は、総重量の重量百分率として、約0.3%〜約2%の量で存在する。なおいくつかの他の実施形態においては、流動促進剤は、総重量の重量百分率として、約0.8%〜約1.5%の量で存在する。さらになおいくつかの他の実施形態においては、流動促進剤は、総重量の重量百分率として、約1%の量で存在する。
【0178】
薬学的経口投薬形態が錠剤であるいくつかの実施形態においては、上記錠剤はフィルムコーティングされていない。薬学的経口投薬形態が錠剤であるいくつかの実施形態においては、上記錠剤はさらに、フィルムコーティングを含有する。いくつかの他の実施形態においては、使用されるフィルムコーティングシステムは、Opadry(登録商標)II(Colorcon,West Point,PA)である。なおいくつかの他の実施形態においては、フィルムコーティングは、錠剤の総量のさらに約2%〜約4%である量で存在する。さらになおいくつかの他の実施形態においては、フィルムコーティングは、錠剤の総量のさらに約3%である量で存在する。
【0179】
いくつかの実施形態においては、薬学的組成物は、高い薬物積載量の式(I)の化合物またはその結晶形態を、有効成分として含有する。いくつかの実施形態においては、式(I)の化合物またはその結晶形態は、総重量の重量百分率として、約10%〜約70%の量で存在する。いくつかの他の実施形態においては、式(I)の化合物またはその結晶形態は、総重量の重量百分率として、約30%〜約60%の量で存在する。なおいくつかの他の実施形態においては、式(I)の化合物またはその結晶形態は、総重量の重量百分率として、約45%〜約55%の量で存在する。
【0180】
いくつかの実施形態においては、薬学的組成物は、総重量の重量百分率として、約30%〜約60%の式(I)の化合物またはその結晶形態;約6%〜約12%のフマル酸ステアリルナトリウム;約6%〜約12%のクロスポビドン;約15%〜約50%のマンニトール;および約0.3%〜約2%のコロイド状二酸化ケイ素を含有する。別の実施形態においては、薬学的組成物は、総重量の重量百分率として、約45%〜約55%の式(I)の化合物またはその結晶形態;約9%〜約11%のフマル酸ステアリルナトリウム;約8%〜約10%のクロスポビドン;約20%〜約40%のマンニトール;および約0.8%〜約1.5%のコロイド状二酸化ケイ素を含有する。
【0181】
別の実施形態においては、薬学的組成物は、総重量の重量百分率として、約45%〜約55%の式(I)の化合物(形態1);約9%〜約11%のフマル酸ステアリルナトリウム;約8%〜約10%のクロスポビドン;約20%〜約40%のマンニトール;および約0.8%〜約1.5%のコロイド状二酸化ケイ素を含有する。
【0182】
いくつかの実施形態においては、本発明は、式(I)の化合物またはその結晶形態の薬学的経口投薬形態の大量生産のためのプロセスを提供し、ここでは、薬学的経口投薬形態は錠剤である。上記プロセスは、以下の工程を含む:
(a−1)式(I)の化合物またはその結晶形態と、篩にかけた第1の滑沢剤を混ぜ合わせる工程;
(a−2)工程(a−1)により得られた混合物を、篩にかけた第1の崩壊剤および篩にかけた増量剤と混ぜ合わせる工程;
(a−3)工程(a−2)により得られた混合物を篩にかけ、その後、さらに混ぜ合わせる工程;
(a−4)工程(a−3)により得られた混合物をローラー圧縮してリボンにする工程;
(a−5)工程(a−4)により得られたリボンを粉砕する(mill)工程;
(a−6)工程(a−5)により得られた顆粒を、篩にかけた流動促進剤および篩にかけた第2の崩壊剤と混ぜ合わせる工程;
(a−7)工程(a−6)により得られた混合物を、篩にかけた第2の滑沢剤と混ぜ合わせる工程;
(a−8)工程(a−7)により得られた混合物を錠剤化する工程;ならびに、
(a−9)必要に応じて、工程(a−8)により得られた錠剤をフィルムコーティングする工程。
【0183】
いくつかの実施形態においては、工程(a−4)および工程(a−5)を省略することができ、工程(a−3)により得られた混合物は、篩にかけた流動促進剤および篩にかけた第2の崩壊剤と、工程(a−6)において直接混ぜ合わせられる。いくつかの他の実施形態においては、工程(a−1)および工程(a−2)が合わせて1つにされ、得られる混合物が工程(a−3)に供される。なおいくつかの他の実施形態においては、工程(a−6)および工程(a−7)が合わせて1つにされ、得られる混合物が工程(a−8)に供される。
【0184】
いくつかの他の実施形態においては、本発明は、式(I)の化合物またはその結晶形態の薬学的経口投薬形態の大量生産のためのプロセスを提供し、ここでは、上記薬学的経口投薬形態は錠剤である。上記プロセスは、以下の工程を含む:
(b−1)式(I)の化合物またはその結晶形態を、篩にかけたフマル酸ステアリルナトリウムと混ぜ合わせる工程;
(b−2)工程(b−1)により得られた混合物を、篩にかけたクロスポビドンおよび篩にかけたマンニトールと混ぜ合わせる工程;
(b−3)工程(b−2)により得られた混合物を篩にかけ、その後、さらに混ぜ合わせる工程;
(b−4)工程(b−3)により得られた混合物をローラー圧縮してリボンにする工程;
(b−5)工程(b−4)により得られたリボンを粉砕する工程;
(b−6)工程(b−5)により得られた顆粒を、篩にかけたコロイド状二酸化ケイ素および篩にかけたクロスポビドンと混ぜ合わせる工程;
(b−7)工程(b−6)により得られた混合物を、篩にかけたフマル酸ステアリルナトリウムと混ぜ合わせる工程;
(b−8)工程(b−7)により得られた混合物を錠剤化する工程;ならびに、
(b−9)必要に応じて、工程(b−8)により得られた錠剤をフィルムコーティングする工程。
【0185】
いくつかの実施形態においては、工程(b−4)および工程(b−5)は省略することができ、工程(b−3)により得られた混ぜ合わせた物は、篩にかけたコロイド状二酸化ケイ素および篩にかけたクロスポビドンと、工程(b−6)において直接混ぜ合わせられる。いくつかの他の実施形態においては、工程(b−1)および工程(b−2)が合わせて1つにされ、得られる混合物が工程(b−3)に供される。なおいくつかの他の実施形態においては、工程(b−6)および工程(b−7)が合わせて1つにされ、得られる混合物が工程(b−8)に供される。
【0186】
いくつかの実施形態においては、工程(a−1)および工程(b−1)において、式(I)の化合物またはその結晶形態の粒子の大きさは、約10ミクロン〜1000ミクロンの間である。いくつかの他の実施形態においては、工程(a−1)および工程(b−1)において、式(I)の化合物またはその結晶形態の粒子の大きさは、約30ミクロン〜約400ミクロンの間である。いくつかの他の実施形態においては、工程(a−1)および工程(b−1)において、式(I)の化合物またはその結晶形態の粒子の大きさは、約50ミクロン〜約250ミクロンの間である。
【0187】
上記で概説したプロセス工程は、従来の装置または機器を利用する。概要については、例えば、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets:Unit Operations and Mechanical Properties,第1版,L.L.Augsburger & S.W.Hoag編,Taylor and Francis,Inc.,2008を参照のこと。
【0188】
上記で概説した混ぜ合わせる工程は、任意の従来の混ぜ合わせる装置または混合装置において行うことができる。いくつかの実施形態においては、それぞれ個々の混ぜ合わせる工程の混ぜ合わせる時間は、約5分〜約40分の間である。いくつかの他の実施形態においては、それぞれ個々の混ぜ合わせる工程の混ぜ合わせる時間は、約5分〜約15分の間である。
【0189】
上記で概説したリボンを粉砕する工程は、従来のメッシュスクリーンを使用して行われる。いくつかの実施形態においては、メッシュスクリーンの大きさは、約0.8mm〜約2.0mmである。いくつかの他の実施形態においては、メッシュスクリーンの大きさは、約0.8mm、約1.0mm、約1.25mm、約1.5mm、約1.75mm、または約2.0mmである。
【0190】
上記ローラー圧縮する工程は、任意の従来のローラー圧縮機において行うことができる。約0.5kN/cm〜約5kN/cmの範囲の適しているローラー圧縮力(Roll Compression Forces)を使用することができる。ローラー圧縮力の増大はより大きな顆粒を生じ、これは、錠剤の強度および均一性の増大をもたらすことが明らかにされた。
【0191】
本発明の薬学的処方物は、錠剤化の間に、改善されたプロセス挙動(processing behavior)を示す。上記錠剤化する工程は、任意の従来の錠剤プレス加工機において行うことができる。目的とする圧縮力は錠剤の大きさおよび形状に応じて様々であろうことが理解されるであろう。いくつかの実施形態においては、上記に記載される錠剤化する工程の間の目的とされる圧縮力は、約3kN〜約30kNの間である。いくつかの他の実施形態においては、錠剤化する工程の間の目的とされる圧縮力は、約7.5kNである。なおいくつかの他の実施形態においては、錠剤化する工程の間の目的とする圧縮力は、約13kNである。
【0192】
いくつかの実施形態においては、上記錠剤化する工程について、得られる錠剤は、二重半径のキャップ(dual radius cap)を持つ形状の円形である。いくつかの他の実施形態においては、上記錠剤化する工程について、得られる錠剤は、改良されたカプセル型の錠剤である。
【0193】
上記必要に応じたフィルムコーティング工程は、任意の従来のフィルムコーティングシステムを使用して行う。フィルムコーティングは水と混合され、その後、錠剤をコーティングするための孔のあいたコーティングパンの中で吹き付けられる。他の実施形態においては、利用されるフィルムコーティングシステムは、Opadry(登録商標)II(Colorcon,West Point,PA)である。
【0194】
薬学的経口投薬形態の物理的および化学的安定性は、従来の様式で、例えば、分解、もろさ、崩壊時間の測定、様々な時間の長さの間の様々な温度での貯蔵後の式(I)の化合物の分解生成物についてのアッセイにおいて試験され得る。
【0195】
乳酸塩、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物の薬理学的特性は、チロシンキナーゼ(特に、PDGFR、c−Kit、およびFlt−3)により媒介される疾患、障害、または症状に罹患しているか、あるいはそれらになりやすい患者の処置における使用に適しているものである。チロシンキナーゼ活性(特に、PDGFR、c−Kit、およびFlt−3)の阻害は、細胞の生存性、増殖、および移動が関係している多数の疾患(心臓血管疾患(例えば、動脈硬化症および血管の再閉塞)、癌(例えば、AMLおよび悪性神経膠腫)、糸球体硬化症、線維性疾患、および炎症を含む)、ならびに他の細胞増殖性疾患を処置するように作用し得る。
【0196】
本発明の化合物は、細胞の生存性、増殖、および移動が関係している多数の疾患を処置するか、またはそれらの重篤度を低下させるために有用である。いくつかの実施形態においては、これらの疾患および障害として、心臓血管疾患(例えば、動脈硬化症および血管の再閉塞)、糸球体硬化症、線維性疾患、および炎症が挙げられるが、これらに限定されない(Pandeyら、J.Med.Chem.2002,45:3772−3793)。
【0197】
他の実施形態においては、本発明の化合物は、癌の処置に有用である。処置され得る癌のタイプとしては、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML))および脳腫瘍が挙げられる(Hegiら、Annals of Oncology 2006,17(補遺10):x191−x197。処置され得る白血病のタイプとしては、急性骨髄性白血病(AML)が挙げられる(DeAngeloら、Blood 2006,108:3674−3681)。処置され得る脳腫瘍のタイプとしては、悪性神経膠腫(例えば、多形性膠芽腫(GBM))が挙げられる(Kesariら、Current Neurology and Neuroscience Reports 2005,5:186−187;Rich and Bigner,Nature Reviews 2004,3:430−.446)。
【0198】
いくつかの実施形態においては、薬学的有効量の乳酸塩、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む、癌を処置するための方法が提供される。
【0199】
いくつかの実施形態においては、乳酸塩、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物は、AMLの処置に有用である。いくつかの実施形態においては、乳酸塩、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物は、脳腫瘍の処置に有用である。いくつかのそのような実施形態においては、乳酸塩、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物は、悪性神経膠腫の処置に有用である。特定の実施形態においては、乳酸塩、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物は、多形性膠芽腫の処置に有用である。
【0200】
乳酸塩、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物は、本発明の方法にしたがって、疾患の処置に有効な任意の投与量および任意の投与経路を使用して投与され得る。必要とされる正確な量は、被験体ごとに、被験体の種、年齢、および全体的な健康状態、感染の重篤度、特定の薬剤、その投与様式などに応じて異なるであろう。乳酸塩、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物が、投与の容易さ、および投薬量の均一性のために、単位投与量形態で処方されることが好ましい。語句「単位投与量形態」は、本明細書中で使用される場合は、処置される患者に適切な薬剤の物理的に不連続な単位をいう。しかし、本発明の化合物および組成物の一日の合計使用量は、適正な医学的判断の範囲内で主治医により決定されるであろう。任意の特定の患者または生命体についての特別な有効用量レベルは、処置される疾患とその疾患の重篤度;利用される特定の化合物の活性;利用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康状態、性別、および食事療法;投与時間、投与経路、および利用される特定の化合物の排泄速度;処置期間、利用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、ならびに医学の分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に応じて変化するであろう。用語「患者」は、本明細書中で使用される場合は、動物、好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒトを意味する。特定の実施形態においては、本発明の化合物は、所望される治療効果を得るために、1日あたり被験体の体重について、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは、約1mg/kg〜約25mg/kgの投与量レベルで、1日1回以上経口投与され得る。
【0201】
乳酸塩、またはその単結晶形態、またはその薬学的組成物は、障害、疾患、または症候を処置するための単剤療法の用途において使用され得、これらはまた、本発明の化合物または組成物(治療薬)の使用が、同じタイプおよび/もしくは他のタイプの障害、症候、および疾患を処置するための1種類以上の他の治療薬の使用と組み合わせられる併用療法においても使用され得る。併用療法は、治療薬の同時または連続での投与を含む。あるいは、複数の治療薬を合わせて、患者に投与される1つの組成物にすることができる。
【0202】
1つの実施形態においては、本発明の乳酸塩、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物は、他の治療薬(例えば、キナーゼ(特に、チロシンキナーゼ)の他の阻害剤)と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態においては、本発明の乳酸塩、またはその結晶形態、またはその薬学的組成物は、細胞毒性薬、放射線治療、および免疫療法からなる群より選択される治療薬と組み合わせて投与される。他の組み合わせが行われ得、それらもなお本発明の範囲内に留まることが理解される。
【0203】
本発明の別の態様は、生物学的試料または患者においてPDGFR、c−Kit、またはFlt−3活性を阻害することに関する。この方法は、患者に、乳酸塩、またはその結晶形態、または薬学的組成物を投与する工程、あるいは生物学的試料を、乳酸塩、またはその結晶形態、または薬学的組成物と接触させる工程を含む。用語「生物学的試料」は、本明細書中で使用される場合は、一般的には、インビボ、インビトロ、およびエキソビボの物質を含み、これにはまた、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物もしくはその抽出物から得られた生検材料;および血液、唾液、尿、糞、精液、涙液、または他の体液、あるいはそれらの抽出物が含まれるが、これらに限定されない。
【0204】
本発明がより完全に理解されるように、以下の調製例を示す。これらの実施例は、特定の組成物を生成するまたは試験するための方法を説明し、いかなる方法でも本発明の範囲を限定するようには解釈されるべきではない。
【実施例】
【0205】
略語
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
iPrOAc 酢酸イソプロピル
MeOH メタノール
RO/DI 逆浸透/脱イオン(reverse osmosis/deionized)
THF テトラヒドロフラン
hr 時間
min 分
m/z 質量電荷比
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
AUC 曲線下面積
NMR 核磁気共鳴
核磁気共鳴(NMR):プロトン核磁気共鳴スペクトルは、Varian Mercury 300分光計で300MHzで、Bruker AVANCE 300分光計で300MHzで、またはBruker AVANCE 500分光計で500MHzで得る。
【0206】
X線粉末回折法(XRPD):X線粉末回折パターンは、Bruker D8回折計で、CuKa線(40kV、40mA)、θ−2θ角度計、およびV4の発散スリットと受光スリット、GeモノクロメーターとLynxeye検出器を使用して収集する。データ収集に使用するソフトウェアは、Diffrac Plus XRD Commander v2.5.0であり、Diffrac Plus EVA v 11,0.0.2またはv 13.0.0.2を使用してデータを分析し、表示する。
【0207】
試料は、周囲条件下で、平板試験片(flat plate specimen)として実行される。およそ10mgの試料を、研磨したゼロバックグラウンドの(510)シリコンウェハーの孔の切り込み(cavity cut)に丁寧に充填する。試料を、分析の間、その自身の平面で回転させる。データ収集の詳細は、特に明記しない限りは、以下のとおりである:(i)角範囲:2〜42° 2θ;(ii)刻み幅(step size):0.05° 2θ;および(iii)収集時間:0.5s・ステップ−1。形態1についてのデータを図1および表1に示し、形態2についてのデータを図4および表2に示し、形態3についてのデータを図7および表3に示し、そして形態4についてのデータを、図10および表4に示す。
【0208】
示差走査熱量測定(DSC):DSCデータは50ポジションオートサンプラーを備えたTA Instruments Q2000で収集する。熱容量についての較正は、サファイアを使用して行い、エネルギーおよび温度についての較正は、認証済みの(certified)インジウムを使用して行った。典型的には、ピンで孔があけられたアルミニウムパン(pin−holed aluminium pan)の中で、0.5mg〜3mgの各試料を、10℃・分−1で、25℃〜250℃まで加熱する。50ml・分−1での乾燥窒素のパージを、試料全体に維持する。温度変調DSCは、2℃・分−1の基本的な加熱速度と、±0.2℃・分−1および40秒の温度調節パラメーターを使用して行う。機器の制御用のソフトウェアは、Advantage for Q Series v2.8.0.392およびThermal Advantage v4.8.3であった。データを、Universal Analysis v4.3Aを使用して分析する。形態1についてのデータを図2に示し、形態2についてのデータを図5に示し、形態3についてのデータを図8に示し、そして形態4についてのデータを図11に示す。
【0209】
熱重量分析(TGA):TGAデータは、16ポジションオートサンプラーを備えたTA Instruments Q500 TGAで収集する。この機器は、認証済みのアルメルを使用して温度較正する。典型的には、5mg〜30mgの各試料を、予め重量を量った(pre−tared)白金るつぼ、およびアルミニウムDSCパンに充填し、10℃・分−1で周囲温度から250℃まで加熱する。60mL・分−1での窒素パージを、試料全体について維持する。機器の制御用のソフトウェアは、Advantage for Q Series v2.8.0.392およびThermal Advantage v4.8.3である。形態1についてのデータを図2に示し、形態3についてのデータを図8に示し、そして形態4についてのデータを図11に示す。
【0210】
蒸気収着重量分析(GVS):蒸気収着重量分析(GVS)データは、Hiden IGASorp水分収着分析計(Hiden IGASorp moisture sorption analyzer)またはSMS DVS 固有水分収着分析計(SMS DVS Intrinsic moisture sorption analyzer)のいずれかを使用して収集する。1)Hiden IGASorp水分収着分析計は、CFRSorpソフトウェアにより制御する。試料の温度は、Huber再循環型水浴により25℃に維持する。湿度は、乾燥窒素流と湿潤窒素流を混合することにより制御し、全体の流速は250ml・分−1とする。相対湿度は、試料の近くに配置する較正したVaisala RHプローブ(0%〜95%RHの動作範囲)により測定する。典型的には、10mg〜20mgの試料を、重さを量った(tared)メッシュのステンレス鋼製のバスケットの中に、周囲条件下で入れる。試料を充填し、40%RHおよび25℃で取り出す(unload)。水分収着の検量線は、25℃で、10%RHの間隔で0%〜90%RHの範囲全体について行う。2)SMS DVS 固有水分収着分析計は、SMS Analysis Suiteソフトウェアにより制御する。試料の温度は、機器での制御により25℃に維持する。湿度は、乾燥窒素流と湿潤窒素流を混合することにより制御し、全体の流速は200ml・分−1とする。相対湿度は、試料の近くに配置する、較正したRotronicプローブ(1.0%〜100%RHの動作範囲)により測定する。典型的には、5mg〜20mgの試料を、重さを量った(tared)メッシュのステンレス鋼製のバスケットの中に、周囲条件下で入れる。試料を充填し、40%RHおよび25℃(典型的には、室内条件)で取り出す。水分収着の検量線は、25℃で、10%RHの間隔で0%〜90%RHの範囲全体について行う。形態1についてのデータを図3に示し、形態2についてのデータを図6に示し、形態3についてのデータを図9に示し、そして形態4についてのデータを図12に示す。
【0211】
Karl Fischer滴定による水分量の決定:試料の水分含量は、Hydranal Coulomat AG試薬とアルゴンパージを使用して、Mettler Toledo DL39 クーロメーター(Coulometer)で測定する。秤量した固体試料を、白金製のTGAパン上の容器に入れ、これを、水の侵入を避けるためにスバシールに接続する。1回の滴定につき、およそ10mgの試料を使用し、決定は二重に行う。
【0212】
(実施例1)フェニル4−イソプロポキシフェニルカルバメート(IIIa)の調製
フェニルクロロホルメート(15.2kg、97.1mol)を、トルエン(115.7kg)中に溶解し、3℃に冷却した。4−イソプロポキシアニリン(III)(13.3kg、88.0mol)をアセトニトリル(43.4kg)と混合し、クロロギ酸フェニル溶液に対して、1時間40分間かけてゆっくりと添加し、続いて、トリエチルアミン(9.8kg、96.8mol)を46分間かけてゆっくりと添加した。この混合物を17.5℃に加熱し、HPLCにより反応が完了したと考えられるまで、3時間30分間撹拌した。生成物の溶液を、1NのHClで洗浄し、続いて、さらなるトルエン(52.3kg)を用いた共沸蒸留によりアセトニトリルを除去した。この溶液を58℃に加熱し、その後、ヘプタン(43.7kg)を1時間2分間かけてゆっくりと添加し、その後、スラリーを23.5℃に、2時間35分間かけて冷却し、さらに2時間51分間撹拌した。この物質を単離し、ヘプタンで2回洗浄し、≦40℃で3時間49分間乾燥させた。生成物を取り出し(discharge)、19.1kgの表題化合物(IIIa)を得た(80%の収率、100%の純度、HPLC AUC)。1H NMR (300 MHz, CD3OD, δ): 7.38 (m, 4H), 7.19 (m, 3H), 6.86 (d, J = 9Hz 2H), 4.52 (sept, J = 6Hz, 1H), 1.28 (d, J = 6Hz, 6H)。
【0213】
(実施例2)N−(4−イソプロポキシフェニル)ピペラジン−1−カルボキサミド塩酸塩(IV)の調製
フェニル4−イソプロポキシフェニルカルバメート(IIIa)(19.1kg、70.4mol)とピペラジン(30.2kg、350.6mol)を、酢酸エチル(256.7kg)に添加し、38.8℃に加熱した。この反応物を、HPLCにより完了したと考えられるまで、4時間15分間撹拌した。この反応混合物を23.3℃に冷却し、18時間6分間撹拌し、その後、濾過して固体を取り出し、この固体を酢酸エチル(15.5kg)で洗浄した。濾液を10%の食塩水溶液(aqueous brine solution)で洗浄し、水層を酢酸エチル(86.3kg)で逆抽出し、そしてこれを有機物に添加した。その後、この有機物を、10%の食塩溶液でさらに2回洗浄した。イソプロパノール中の1.25MのHClの、78分間にわたるゆっくりとした添加、それに続くさらに3時間56分間の撹拌により、生成物の沈殿が生じた。固体を単離し、イソプロパノールで洗浄し、そして≦40℃で、71時間37分間乾燥させた。生成物を取り出し、17.0kgの表題化合物(IV)を得た(81%の収率、99.9%の純度、HPLC AUC)。1H NMR (300 MHz, CD3OD, δ): 7.23 (d, J = 9Hz, 2H), 6.83 (d, J = 9Hz, 2H), 4.52 (sept, J = 6Hz, 1H), 3.77 (m, 4 H), 3.29 (m, 4 H), 1.28 (d, J = 6Hz, 6H)。
【0214】
(実施例3)6−メトキシ−7−(3−(ピペリジン−1−イル)プロポキシ)キナゾリン−4−オール(VI)の調製
2−アミノ−5−メトキシ−4−(3−(ピペリジン−1−イル)プロポキシ)安息香酸エチル(V)(1.0kg、2.97mol)および酢酸ホルムアミジン(0.464kg、4.46mol)を、1−メチル−2−ピロリジノン(5L)に添加し、130℃に加熱した。この混合物を、HPLCにより反応が完了したと考えられるまで、6時間撹拌した。生成物の溶液を100℃に冷却し、この時点で、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン(1.04L、5.94mol)およびRO/DI水(0.107L)を添加した。この溶液を90分間撹拌し、その後、80℃に冷却し、6−メトキシ−7−(3−(ピペリジン−1−イル)プロポキシ)キナゾリン−4−オール(0.01kg、0.003mol)をシーディングした。次いで、生成物の混合物を、25℃に3時間かけて冷却し、さらに12時間撹拌した。この生成物を、1時間かけてアセトニトリル(10L)をゆっくりと添加し、1時間撹拌し、1時間かけて5℃までゆっくり冷却し、そして2時間撹拌することによりさらに結晶化した。固体を単離し、アセトニトリルで2回洗浄し、そして≦40℃で3日間乾燥させた。生成物を取り出し、0.822kgの表題化合物を得た(87%の収率、99.74%の純度、HPLC AUC)。1H NMR (300 MHz, d6-DMSO, δ): 7.96 (s, 1H), 7.42 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 4.14 (m, 2H), 3.86 (s, 3H), 2.35 (m, 6H), 1.88 (m, 2H), 1.49 (m, 4H) and 1.30 (m, 2H)。
【0215】
(実施例4)4−クロロ−6−メトキシ−7−(3−(ピペリジン−1−イル)プロポキシ)キナゾリン(VII)の調製
6−メトキシ−7−(3−(ピペリジン−1−イル)プロポキシ)キナゾリン−4−オール(VI)(17.2kg、54.2mol)をトルエン(88.1kg)に添加し、次いで、アセトニトリル(20.5kg)およびN,N’−ジイソプロピルエチルアミン(8.9kg、68.9mol)と混合し、その後、9分間かけてオキシ塩化リン(12.3kg、80.2mol)を制御添加した。この反応溶液を42℃に加熱し、HPLCにより反応が完了したと考えられるまで、19時間撹拌した。生成物の溶液を、水酸化アンモニウム溶液を39分間かけて添加することによりクエンチした。クエンチの完了後、この溶液は、pH 11であった。その後、この溶液を35℃に加熱し、47分間撹拌し、57℃までさらに加熱した。水層を除去し、有機物を、RO/DI水で2回洗浄した。2回目の水での洗浄の間に、エマルジョンが生じた。このエマルジョンの層を、残りの有機物と合わせて1つにし、水での2回の洗浄を繰り返した。最後に、この有機物を、飽和食塩溶液で洗浄し、その後、さらなるアセトニトリル(121.4kg)を用いた共沸蒸留によりトルエンの除去を行った。生成物を、完全な溶解のため最初に78℃に加熱し、その後、52℃に冷却し、1時間40分間撹拌し、25℃に冷却し、2時間撹拌し、5℃に冷却し、最後に2時間25分間撹拌することにより結晶化した。この固体を単離し、冷アセトニトリル(4.5℃)で2回洗浄し、≦40℃で41時間40分間乾燥させた。生成物を取り出し、13.2kgの表題化合物(VII)を得た(73%の収率、98.7%の純度、HPLC AUC)。1H NMR (300 MHz, d6-DMSO, δ): 7.96 (s, 1H), 7.42 (s, 1H), 7.13 (s, 1H), 4.14 (m, 2H), 3.86 (s, 3H), 2.35 (m, 6H), 1.88 (m, 2H), 1.49 (m, 4H) and 1.30 (m, 2H)。
【0216】
(実施例5)4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(II)三水和物の調製
4−クロロ−6−メトキシ−7−(3−(ピペリジン−1−イル)プロポキシ)キナゾリン(VII)(12.9kg、38.4mol)、N−(4−イソプロポキシフェニル)ピペラジン−1−カルボキサミド塩酸塩(IV)(12.2kg、40.7mol)、およびジイソプロピルエチルアミン(12.9kg、99.8mol)を、エタノール(81.4kg)に添加した。この混合物を、HPLCにより反応が完了したと考えられるまで、21時間54分間撹拌した。生成物の混合物を49℃に加熱し、35分間撹拌し、その後、混合物に添加されるエタノール(13.4kg)リンスを用いて10μmの清澄濾過(polish filtration)を行った。RO/DI水(75.9L)を添加し、その後、この溶液を42℃に冷却し、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(II)三水和物(13.04g、0.02mol)をシーディングした。4時間6分間の撹拌の後、さらなるRO/DI水(53.1L)を、1時間36分間かけてゆっくりと添加した。スラリーを、5時間36分間かけて22℃に冷却し、さらに94分間かけてさらに7℃に冷却し、2時間12分間撹拌した。固体を単離し、4:5のエタノール:水溶液で2回洗浄し、≦30℃、その後、≦40℃で、合計で5日と21時間21分間乾燥させて、Karl Fisher分析により8%の水分含量となるまでにした。生成物を取り出し、21.3kgの表題化合物(II)を三水和物として得た。(90%の収率、97.1%の純度、HPLC AUC)。1H NMR (300 MHz, d6-DMSO, δ): 8.88 (s, 1H), 7.45 (s, 1H), 7.40 (s, 1H), 4.26 (m, 2H), 4.00 (s, 3H), 2.39 (m, 6H), 1.96 (m, 2H), 1.49 (m, 4H) and 1.39 (m, 2H)。
【0217】
(実施例6)4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態1)の調製:手順1
処理を開始する前に、86%のL−乳酸溶液を、(L)−乳酸(5.339kg、59.3mol)をRO/DI水(0.835L)中に溶解することにより調製した。4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(II)三水和物(21.1kg、34.2mol)を、テトラヒドロフラン(93.1kg)に添加し、39℃に加熱した。この溶液の水分含量を、RO/DI水(2.64L)を添加することにより3.8%に調整し、その後、この溶液を、テトラヒドロフラン(8.2kg)リンスを用いて10μmのフィルターに通すことにより清澄濾過し、その後、水分含量を、さらなるRO/DI水(0.342L)を添加することにより、3.8%に再度調整した。(L)−乳酸溶液(4.782kg、45.6mol)を充填し、これに続いて、形態1(211.8g、0.32mol)をシーディングし、65分間撹拌した。結晶化を、4時間5分間かけて酢酸イソプロピル(29.3kg)を、続いて、さらなる酢酸イソプロピル(62.0kg)を5時間49分かけてゆっくりと添加することにより継続した。この結晶化は、以下の冷却プロフィールを用いて行った:62分間の撹拌、125分間かけた32℃への冷却、60分間の撹拌、121分間かけた22℃への冷却、および106分間の撹拌。固体を単離し、酢酸イソプロピルで2回洗浄し、そして≦45℃で3日と19時間2分間乾燥させた。生成物を取り出し、20.2kgの表題化合物を得た(90%の収率、99.5%の純度、HPLC AUC)。1H NMR (300 MHz, MeOD, δ): 8.56 (s, 1H), 8.46 (s, 1 H), 7.34 (d, J = 9 Hz, 2H), 7.22 (s, 1H), 7.19 (s, 1H), 6.81 (d, J = 9Hz, 2 H), 4.50 (sept, J = 6Hz, 1 H), 4.17 (m, 2 H), 3.93 (s, 3H), 3.67 (m, 8 H), 2.38 (m, 6H), 1.94 (m, 2H), 1.49 (m, 4H) and 1.38 (m, 2H), 1.23 (d, J = 6 Hz, 6H)。
【0218】
(実施例7)4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態1)の調製:手順2
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(II)三水和物(250g、0.405mol)を、室温で、エタノール(750ml)に添加した。この混合物を55℃にあたため、水中の85%の(L)−乳酸溶液(46ml、0.52mol)を添加した。この溶液を40℃に冷却し、形態1をシーディングした。40℃で1時間30分間の撹拌の後、酢酸エチル(750ml)を、およそ3時間かけて添加し、その後、この溶液を、40℃でさらに2時間保持し、7時間かけて0℃に冷却し、この温度で一晩保った。この懸濁液を濾過し、得られた固体を乾燥させて恒量として、157g(59%の収率)の表題化合物を得た。
【0219】
(実施例8)4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態1)の調製:手順3
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(II)三水和物(4.0g、6.49mmol)に対して、THF(20ml)を添加した。この混合物をあたためて溶液を得、Karl Fischer分析を行った。水分レベルを2.1%に調整した。60℃で、水中の85%の(L)−乳酸溶液(0.74ml、8.45mmol)を添加し、この溶液に形態1をシーディングした。この溶液を60℃で2時間保持し、酢酸イソプロピル(28ml)を、10時間かけて添加した。この懸濁液を、全部で9時間かけて、10℃の間隔で冷却し、その後、20℃で2時間保持し、この時点で懸濁液を濾過した。固体を酢酸イソプロピルで洗浄し、乾燥させて恒量として、3.63g(86%の収率)の表題化合物を得た。
【0220】
(実施例9)4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態2)の調製:手順1
107.8mgの4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態1)を、20mlのバイアルの中で、200μlの水中に溶解し、形態2のシードを添加した。10mlのiPrOAc:THF(4A分子篩上で乾燥させた)を添加し、さらなる形態2のシードを添加した。1時間後、シード物質だけが、懸濁液の中でなおも観察された。その後、476.1mgの形態1+20.2mgの形態2をこの懸濁液に添加した。その後、バイアルを、室温の振盪機に移した。1日後のXRPD分析は、形態1および形態2の混合物を示した。室温でさらに4日間の振盪の後、XRPD分析は、形態2だけを示した。室温で3時間の減圧下での乾燥後、表題化合物の収量は458mgであった。
【0221】
(実施例10)4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態3)の調製:手順1
600mgの4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態1)を、0℃に予め冷却し、その後、6mlの予め冷却したiPrOAc:THF(1:1)+2.5%の水を0℃で添加した。この懸濁液を0℃で24時間撹拌した。24時間後、アリコートをXRPDにより分析した。XRPDは形態3を示した。この懸濁液を、吸引濾過し、得られた固体を一晩風乾させて、543mgの表題化合物を得た。
【0222】
(実施例11)4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態4)の調製:手順1
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(II)三水和物(4.0g、6.49mmol)に対して、THF(20ml)を添加した。この混合物を40℃にあたため、水分含量を3.2%に調整した。水中の85%の(L)−乳酸(0.74ml、8.45mmol)を添加し、この溶液に形態4(40mg)をシーディングした。酢酸イソプロピル(20ml)を10時間かけて添加し、この懸濁液を40℃で1時間保持し、2時間かけて30℃に冷却し、30℃で1時間保持し、2時間かけて20℃に冷却し、そして短時間保持し、その後、この懸濁液を濾過し、固体を酢酸イソプロピルで洗浄した。これにより、表題化合物を90%の収率で得た。
【0223】
(実施例12)形態1の溶解度
形態1の平衡水溶解度をpH制御条件下で調べ、結果を以下の表5に示す。溶解性溶液(solubility solution)の安定性を評価し、親ピークの純度は、HPLC分析により試験した全ての試料において、周囲温度で12日後に、>99%であった。
【0224】
【表5】

【0225】
(実施例13)形態4の溶解度
形態4の平衡水溶解度をpH制御条件下で調べ、結果を以下の表6に示す。溶解性溶液の安定性を評価し、親ピークの純度は、HPLC分析により試験した全ての試料において、周囲温度で12日後に、>99%であった。
【0226】
【表6】

【0227】
(実施例14)キナーゼリン酸化アッセイ
本発明の化合物は、PDGFR、Flt−3、およびc−Kitの阻害剤である。キナーゼリン酸化アッセイは、Pandeyら、J.Med.Chem.2002,45:3772−3793に記載されているように行うことができる。本発明の化合物が示すキナーゼに対する強力な親和性は、IC50値(nM)として測定することができる。IC50値は、キナーゼの50%の阻害を提供するために必要な化合物の濃度(nM)である。
【0228】
本発明の化合物を評価および選択するために有用であり得るアッセイの他の例は、WO 02/016351、US 05/101609、およびUS 05/288297、およびUS 6,982,266、ならびに以下に記載されている。
【0229】
(実施例15)インビトロでのPDGFR−βのリン酸化についての分析
およそ5×10個の細胞を10cmのペトリ皿に置くか、または1×10個の細胞を6ウェルプレートの各ウェルにシーディングする。細胞を37℃で一晩インキュベートする。使用前に、細胞をPBSで2回洗浄し、4時間血清飢餓状態にし、0μM〜100μMの化合物で1時間、前処理し、その後、50ng/mLのPDGF−BB(Cell Signaling,Beverly,MA)で5分間刺激する。PDGF刺激を氷冷したPBSで終わらせ、全タンパク質溶解物を、1mMのPMSF、1mMのNaVO、1mMのNaF、1μg/mLのロイペプチン、1μg/mLのアプロチニン、および1μg/mLのペプスタチン(Upstate,Charlottesville,VA)を補充したMPERバッファー(Pierce)で抽出する。全タンパク質溶解物をプロセシングし、ゲル上で分離し、PVDF Immobilon−FLトランスファーメンブレン(Millipore、カタログ番号IPFL00010)に移し、anti−phospho−PDGFR−β(Y751)(Cell Signaling,カタログ番号3161L)、anti−phospho−PDGFR−β(Y857)(Santa Cruz Biotech,カタログ番号sc−12907−R)、およびanti−全PDGFR−β(Santa Cruz Biotech,カタログ番号sc−432)で免疫ブロットする。phosphor−PDGFR−β阻害の百分率を決定するために、全PDGFR−βレベルとphospho−PDGFR−βレベルを、Odyssey Infrared Imaging System(LI−COR Biosciences,Lincoln,NB)を使用して線形標準に対して定量化し、0時点で採取した試料から得たレベルに対して比較する。
【0230】
(実施例16)腫瘍異種移植片におけるPDGFR−βの自己リン酸化の阻害
C6ラット神経膠腫細胞(ATCC,Rockville MD)を、15%のウマの血清(GIBCO)、2.5%のFBS(Hyclone,Logan UT)、1.5g/Lの炭酸水素ナトリウム、および2mMのL−グルタミンを補充したF12K(Kaighn’s改変)培地(Gibco,Grand Island NY)中で増殖させ、37℃、5%のCO2の中で維持する。4週齢〜9週齢のNCr nu/nu免疫無防備状態マウス(immunocompromised mice)(Taconic,Germanstown,NY)に、0.1mLのHank’s平衡化塩溶液(GIBCO)中に懸濁した1×10個のC6神経膠腫細胞を、右脇腹に皮下注射する。腫瘍の大きさを、計測器を使用して2〜3日ごとに評価し、腫瘍の平均容積を、式V=LW/2を使用して計算する。400mm前後の腫瘍を持つマウスを、薬物動態実験/薬力学的実験のために3〜5匹の動物/グループに無作為に分ける。動物に、化合物の単回用量を投与し、安楽死させ、腫瘍を取り出し、−80℃で凍結保存し、そして血液を、時系列で採取する。血液は、EDTA(Microtainer)を含む試験管の中に採取し、試料を10,000rpmで10分間遠心分離する。血漿(透明な上層)を別の試験管に移し、−80℃で保存する。化合物の血漿濃度を、robust LC/MS/MS法を使用して測定する。腫瘍試料を、定量的ウェスタンブロッティング手順を使用して、PDGFR−βのリン酸化について分析することができる。例えば、腫瘍ホモジネートをCovaris超音波処理装置を使用して調製する。腫瘍試料を粉砕し、M−PER溶解バッファー(Pierce)のような適切なバッファー中に溶解させ、その後、Covaris超音波処理装置を使用してホモジナイズする。溶解物を、7%のTris−Acetateゲル(Invitrogen)上で泳動させ、PVDF Immobilon−FLトランスファーメンブレン(Millipore、カタログ番号IPFL00010)上にブロットする。メンブレンを、anti−phospho−PDGFR−β(Y751)(Cell Signaling カタログ番号3161L)、anti−phospho−PDGFR−β(Y857)(Santa Cruz Biotech,カタログ番号sc−12907−R)、およびanti−全PDGFR−β(Santa Cruz Biotech,カタログ番号sc−432)で免疫ブロットする。phosphor−PDGFR−β阻害の百分率を決定するために、全PDGFR−βレベルとphospho−PDGFR−βレベルを、Odyssey Infrared Imaging System(LI−COR Biosciences,Lincoln,NB)を使用して線形標準に対して定量化し、0時点で採取した試料から得たレベルに対して比較する。
【0231】
(実施例17)膠芽腫腫瘍の異種移植モデル
C6ラット神経膠腫細胞(1×10個)を0.1mLのHank’s平衡化塩溶液(GIBCO)中に懸濁し、4週齢〜9週齢のNCr nu/nu免疫無防備状態のマウス(Taconic,Germanstown,NY)の右脇腹に皮下注射する。腫瘍の大きさを、計測器を使用して2〜3日ごとに評価し、腫瘍の平均容積を、式V=LW/2を使用して計算する。200mm前後の腫瘍を持つマウスを、有効性についての実験のために10匹の動物のグループに無作為に分ける。試験化合物を、5%のデキストロースのようなビヒクル中に調製し、1日1回または1日2回のスケジュールでの強制経口投与により投与するか、あるいは、1日1回または1日2回の皮下注射により投与することもできる。数種類の用量レベルを、1回の実験で試験することができる。腫瘍増殖の阻害を、式TGI%=100(V−V)/V(式中、VおよびVは、それぞれ、処置の最終日の対照および処置した腫瘍の腫瘍平均容積である)を使用して計算する。
【0232】
(実施例18)4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態1)の調製:手順4
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(II)三水和物(600g、0.973mol)を、室温でエタノール(2400ml)に添加した。この混合物を周囲温度で30分間撹拌した。炭(60g、5mol)を添加し、この混合物を60℃で1時間加熱した。この混合物をセライトを通して濾過し、セライトをエタノール(300ml)で洗浄した。このエタノール性混合物をジャケットリアクター(jacketed reactor)に移し、第1の容器をエタノールでリンスし、さらにエタノールを添加し(添加したさらなるエタノールの全量はおよそ1500ml)、続いて水中の85%(L)−乳酸(100ml、1.14mol)を添加した。この混合物を70℃にあたため、別のジャケットリアクターに移した。この溶液を57℃に冷却し、形態1をシーディングした。60℃に設定したジャケット温度での1時間の後、酢酸エチル(6000ml)をゆっくりと添加した。添加が完了したら、この懸濁液を1時間撹拌し、5時間かけて20℃に冷却し、その後、20℃で一晩撹拌した。この懸濁液を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、減圧オーブンの中で、室温でおよそ40時間乾燥させて恒量として、419g(64%の収率)の表題化合物を得た。
【0233】
(実施例19)4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態2)の調製:手順2
およそ500mgの4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態1)をガラスバイアルに入れ、5mlのiPrOAc:THF混合物(1:1)を添加した。この懸濁液を、周囲条件下で1時間スラリーにし、その後、およそ50mgの4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態2)(少量の形態1を含有する)を添加した。その後、この試料を5℃に冷却し、この温度で3日間保持した。1日後および3日後のXRPD分析は、形態1と形態2の混合物を示した。全体を通じて撹拌を維持した。その後、この試料を室温にし、振盪機の中に置いた。さらに3日後のXRPD分析は、形態1および形態2の混合物を示した。その後、1%の水をこの懸濁液に添加し、次いでこれを、1日以上かけてスラリーにした。少量のアリコートのXRPD分析は、この物質が形態2であることを示した。残りの懸濁液を5ミクロンのWhatmanフィルターカップを通して濾過した。この物質を25℃で18時間、減圧下で乾燥させて、400mgの形態2を得た。
【0234】
(実施例20)4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態3)の調製:手順2
200mgの4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態1)を、2mlのiPrOAc:THF(1:1)+2.5%の水で0℃で処理し、3.5日間撹拌した。XRPD分析は、形態3を示した。
【0235】
(実施例21)4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(L)−乳酸塩(I)(形態4)の調製:手順2
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(II)三水和物(4.0g、6.49mmol)とテトラヒドロフラン(17.78g)を合わせて1つにし、40℃にあたためた。この溶液の水分含量をKarl−Fischerにより測定し、水(0.34ml)を添加して、3.2%の水分含量とした。水中の85%の(L)−乳酸溶液(0.741ml、8.45mmol)を添加した。この溶液に形態4をシーディングした。40℃で1時間の撹拌の後、酢酸イソプロピル(20ml)を10時間かけて添加し、その後、この溶液を、40℃でさらに1時間保持し、2時間かけて30℃に冷却し、1時間保持し、2時間かけて20℃に冷却し、この温度で一晩保持した。この懸濁液を濾過し、得られた固体を乾燥させて恒量として、3.82g(90%の収率)の表題化合物を得た。
【0236】
(実施例22)錠剤組成
錠剤の組成を、以下の表7に示す。
【0237】
【表7】

【0238】
(実施例23)錠剤組成
錠剤の組成を、以下の表8に示す。
【0239】
【表8】

【0240】
(実施例24)錠剤組成
錠剤の組成を、以下の表9に示す。
【0241】
【表9】

【0242】
(実施例25)錠剤組成
錠剤の組成を、以下の表10に示す。
【0243】
【表10】

【0244】
(実施例26)錠剤組成
錠剤の組成を、以下の表11に示す。
【0245】
【表11】

【0246】
(実施例27)錠剤組成
錠剤の組成を、以下の表12に示す。
【0247】
【表12】

【0248】
(実施例28)バッチ組成
式(I)の化合物(形態1)(9.75kg)を、篩にかけたフマル酸ステアリルナトリウム(1.0kg)と混ぜ合わせた。得られた混合物を、篩にかけたクロスポビドン(1.00kg)および篩にかけたマンニトール(6.25kg)と混ぜ合わせた。得られた混合物を篩にかけ、さらに混ぜ合わせ、その後、ローラー圧縮機を通過させてリボンを作製し、これを粉砕した。得られた顆粒を、篩にかけたクロスポビドン(0.80kg)および篩にかけたコロイド状二酸化ケイ素(0.20kg)と混ぜ合わせ、得られた混合物を、篩にかけたフマル酸ステアリルナトリウム(1.00kg)と混ぜ合わせて、表13に示す組成を持つバッチを得た。
【0249】
【表13】

【0250】
表13にしたがって調製したバッチのうち6.38kgを採り、圧縮して300mgの錠剤にした。この300mgの錠剤を、Opadry(登録商標)II 黄色フィルムコーティングシステムを使用してコーティングした(9mg/錠剤)。表13にしたがって調製したバッチのうちの12.76kgを採り、圧縮して600mgの錠剤にした。600mgの錠剤を、Opadry(登録商標)II 黄色フィルムコーティングシステムを使用してコーティングした(18mg/錠剤)。
【0251】
本発明者らは本発明の多数の実施形態を記載したが、本発明者らの基本的な実施例が変更されて、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態が生じ得ることは明らかである。したがって、本発明の範囲が、例のために示されている特定の実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲により定義されるべきであることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化8】


またはその結晶形態。
【請求項2】
少なくとも95重量%が結晶である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記結晶形態が形態1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記形態1が、5.50°、10.98°、19.65°、19.97°、および21.83°の2θ角における少なくとも1つのX線粉末回折ピークを特徴とする、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記形態1が、5.50°、19.65°、および19.97°の2θ角における少なくとも1つのX線粉末回折ピークを特徴とする、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
前記形態1が、以下の特性(I−i)〜(I−iii)の少なくとも1つを特徴とする、請求項3に記載の化合物:
(I−i)表1に示すX線粉末回折ピークの少なくとも1つ;
(I−ii)図1と実質的に類似するX線粉末回折パターン;および
(I−iii)約175℃〜約185℃の吸熱範囲を有しており、約177℃の開始温度を持つ、示差走査熱量測定(DSC)プロフィール。
【請求項7】
前記結晶形態が形態2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記形態2が、6.38°、7.98°、11.19°、14.12°、19.39°、20.41°、20.68°、21.44°、および27.65°の2θ角における少なくとも1つのX線粉末回折ピークを特徴とする、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記形態2が、11.19°、19.39°、20.41°、および21.44°の2θ角における少なくとも1つのX線粉末回折ピークを特徴とする、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
前記形態2が、以下の特性(II−i)〜(II−iii)の少なくとも1つを特徴とする、請求項7に記載の化合物:
(II−i)表2に示すX線粉末回折ピークの少なくとも1つ;
(II−ii)図4と実質的に類似するX線粉末回折パターン;および
(II−iii)約150℃〜約160℃に第1の吸熱範囲を含み、約155.7℃の開始温度を持つ、示差走査熱量測定(DSC)プロフィール。
【請求項11】
前記結晶形態が形態3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記形態3が、3.66°、11.04°、19.93°、および23.98°の2θ角における少なくとも1つのX線粉末回折ピークを特徴とする、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記形態3が、以下の特性(III−i)〜(III−iii)の少なくとも1つを特徴とする、請求項11に記載の化合物:
(III−i)表3に示すX線粉末回折ピークの少なくとも1つ;
(III−ii)図7と実質的に類似するX線粉末回折パターン;および
(III−iii)図8と実質的に類似する示差走査熱量測定(DSC)プロフィール。
【請求項14】
前記結晶形態が形態4である、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
前記形態4が、11.30°、12.71°、15.15°、16.02°、20.03°、24.15°、および24.66°の2θ角における少なくとも1つのX線粉末回折ピークを特徴とする、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記形態4が、11.30°、16.02°、20.03°、および24.15°の2θ角における少なくとも1つのX線粉末回折ピークを特徴とする、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
前記形態4が、以下の特性(IV−i)〜(IV−iii)の少なくとも1つを特徴とする、請求項14に記載の化合物:
(IV−i)表4に示すX線粉末回折ピークの少なくとも1つ;
(IV−ii)図10と実質的に類似するX線粉末回折パターン;および
(IV−iii)図11と実質的に類似する示差走査熱量測定(DSC)プロフィール。
【請求項18】
式(I)の化合物:
【化9】


またはその結晶形態、滑沢剤、増量剤、崩壊剤、および流動促進剤を含有する、薬学的組成物。
【請求項19】
前記薬学的組成物が、総重量の重量百分率として、約30%〜約60%の式(I)の化合物またはその結晶形態;約6%〜約12%の滑沢剤;約6%〜約12%の崩壊剤;約15%〜約50%の増量剤;および約0.3%〜約2%の流動促進剤を含有する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記薬学的組成物が、総重量の重量百分率として、約45%〜約55%の式(I)の化合物またはその結晶形態;約9%〜約11%の滑沢剤;約8%〜約10%の崩壊剤;約20%〜約40%の増量剤;および約0.8%〜約1.5%の流動促進剤を含有する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記薬学的組成物が薬学的経口投薬形態である、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記薬学的経口投薬形態が錠剤である、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記結晶形態が形態1である、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記式(I)の化合物またはその結晶形態が、総重量の重量百分率として約30%〜約60%の量で存在する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記式(I)の化合物またはその結晶形態が、総重量の重量百分率として約44%〜約55%の量で存在する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記滑沢剤が、総重量の重量百分率として約6%〜約12%の間の量で存在する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記滑沢剤が、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤を含有し、ここでは、前記第1滑沢剤と前記第2の滑沢剤は、独立して、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、またはそれらの混合物である、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記第1の滑沢剤がフマル酸ステアリルナトリウムであり、前記第2の滑沢剤がフマル酸ステアリルナトリウムである、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記崩壊剤が、総重量の重量百分率として約6%〜約12%の量で存在する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記崩壊剤が、第1の崩壊剤と第2の崩壊剤を含有し、ここでは、前記第1の崩壊剤と前記第2の崩壊剤は、独立して、クロスポビドン、ケイ酸カルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、またはそれらの混合物である、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記第1の崩壊剤がクロスポビドンであり、前記第2の崩壊剤がクロスポビドンである、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記増量剤が、総重量の重量百分率として約15%〜約50%の量で存在する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
前記増量剤が、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、イソマルト、マンニトール、またはそれらの混合物である、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
前記増量剤がマンニトールである、請求項33に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
前記流動促進剤が、総重量の重量百分率として約0.3%〜約2%の量で存在する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記流動促進剤が、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、第三リン酸カルシウム、デンプン、三ケイ酸マグネシウム、粉末状セルロース、またはそれらの混合物である、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
前記流動促進剤がコロイド状二酸化ケイ素である、請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記薬学的組成物が、総重量の重量百分率として、約45%〜約55%の式(I)形態1の化合物;約9%〜約11%のフマル酸ステアリルナトリウム;約8%〜約10%のクロスポビドン;約20%〜約40%のマンニトール;および約0.8%〜約1.5%のコロイド状二酸化ケイ素を含有する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
式(I)の化合物またはその結晶形態の薬学的経口投薬形態の大量生産のためのプロセスであって、ここでは、前記薬学的経口投薬形態が錠剤であり、以下の工程:
(a−1)式(I)の化合物またはその結晶形態と、篩にかけた第1の滑沢剤を混ぜ合わせる工程;
(a−2)工程(a−1)により得られた混合物を、篩にかけた第1の崩壊剤および篩にかけた増量剤と混ぜ合わせる工程;
(a−3)工程(a−2)により得られた混合物を篩にかけ、その後、さらに混ぜ合わせる工程;
(a−4)工程(a−3)により得られた混合物をローラー圧縮してリボンにする工程;
(a−5)工程(a−4)により得られたリボンを粉砕する工程;
(a−6)工程(a−5)により得られた顆粒を、篩にかけた流動促進剤および篩にかけた第2の崩壊剤と混ぜ合わせる工程;
(a−7)工程(a−6)により得られた混合物を、篩にかけた第2の滑沢剤と混ぜ合わせる工程;
(a−8)工程(a−7)により得られた混合物を錠剤化する工程;ならびに
(a−9)必要に応じて、工程(a−8)により得られた錠剤をフィルムコーティングする工程
を含む、プロセス。
【請求項40】
以下の工程:
(b−1)式(I)の化合物またはその結晶形態を、篩にかけたフマル酸ステアリルナトリウムと混ぜ合わせる工程;
(b−2)工程(b−1)により得られた混合物を、篩にかけたクロスポビドンおよび篩にかけたマンニトールと混ぜ合わせる工程;
(b−3)工程(b−2)により得られた混合物を篩にかけ、その後、さらに混ぜ合わせる工程;
(b−4)工程(b−3)により得られた混合物をローラー圧縮してリボンにする工程;
(b−5)工程(b−4)により得られたリボンを粉砕する工程;
(b−6)工程(b−5)により得られた顆粒を、篩にかけたコロイド状二酸化ケイ素および篩にかけたクロスポビドンと混ぜ合わせる工程;
(b−7)工程(b−6)により得られた混合物を、篩にかけたフマル酸ステアリルナトリウムと混ぜ合わせる工程;
(b−8)工程(b−7)により得られた混合物を錠剤化する工程;ならびに
(b−9)必要に応じて、工程(b−8)により得られた錠剤をフィルムコーティングする工程
を含む、請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
治療有効量の請求項1〜17のいずれかに記載の化合物および薬学的に許容され得る担体または希釈剤の投与を含む、癌を処置するための方法。
【請求項42】
治療有効量の請求項18〜38のいずれかに記載の薬学的組成物の投与を含む、癌を処置するための方法。
【請求項43】
前記癌がAMLまたは悪性神経膠腫である、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記癌が多形性膠芽腫である、請求項43に記載の方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−509321(P2012−509321A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537428(P2011−537428)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/006235
【国際公開番号】WO2010/059239
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(500287639)ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】