説明

癌の治療に有用な化合物、その組成物、およびそれを用いる方法

本発明は、一般的には、リガーゼ活性のモジュレーションに有用な化合物および組成物に関する。本発明はさらに、癌、新生物障害、急性もしくは慢性腎不全、炎症障害、免疫障害、心臓血管疾患、老化作用、または感染症を治療または予防する本発明の化合物、その組成物、および方法(有効量の本発明の化合物を投与することを含む)に関する。本発明はさらに、細胞、血液、組織、もしくは器官の保存剤としての、または幹細胞をモジュレートする作用剤としての、本発明の化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年6月17日出願の米国出願第60/389,461号による優先権の利益を主張する。該米国出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0002】
1. 発明の分野
本発明は、一般的には、リガーゼ活性のモジュレーションに有用である新規な化合物および医薬品組成物に関する。本発明はさらに、癌、新生物障害、急性もしくは慢性腎不全、炎症障害、免疫障害、心臓血管疾患、老化作用、または感染症を治療または予防する方法であって、その必要のある患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む上記方法に関する。本発明はさらに、細胞、血液、組織、もしくは器官の保存剤としての、または幹細胞をモジュレートする作用剤としての、本発明の化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 発明の背景
ユビキチン媒介タンパク質分解は、p27、p53、p300、サイクリン、E2F、STAT-1、c-Myc、c-Jun、EGFレセプター、IkBa、NfkB、およびb-カテニンをはじめとする多くの細胞内調節タンパク質の破壊を制御する非リソソームタンパク質分解の重要な経路である(Pagano (1997) FASEB J. 11:1067)。ユビキチンは、真核細胞中に存在する高度に保存された76アミノ酸ポリペプチドである。ユビキチン経路は、標的基質へのポリユビキチン鎖の共有結合を引き起こし、次に、この標的基質を多触媒性プロテアソーム複合体により分解する(Goldberg et al. (1995) Science 269:682-685)。タンパク質ユビキチン化を調節する多くの段階が知られている。最初に、ユビキチン活性化酵素(E1)は、ユビキチンとの高エネルギーチオエステル結合の形成を触媒し、次に、このユビキチンを多くのユビキチンコンジュゲート化酵素のうちの1つの反応性シスチン残基に転移させる。標的タンパク質中のe-アミノ基または反応性リシン残基へのユビキチンの最終的転移は、ユビキチンリガーゼ(E3)タンパク質を用いる必要のない反応で起こる。
【0004】
p27/kip1は、主にユビキチン媒介タンパク質分解経路を介して調節されるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤である。調節タンパク質p27/kip1の分解は、G1期からS期への移行に必要であるようにみえる(Sheaff et al. (1997) Genes Dev. 11:1464-1478)。S期キナーゼ関連タンパク質2(SKP2)とサイクリン依存性キナーゼサブユニット1(CKS2)の両方をノックアウトしたマウスでは、p27/kip1は高レベルに蓄積され、増殖細胞はG1期からS期への移行時に停止された。このほかに、Hela細胞におけるp27/kip1の過剰発現により、細胞周期のG1期停止に関連する増殖阻害を生じた(Tang and Nordin (1997) Bioch. and Biophys. Res. Comm. 238:534-538)。また、p27/kip1の過剰発現により、HCC-9204細胞系(ヒト肝細胞癌)および肺癌において、G1期で細胞周期停止が誘発され、続いて、アポトーシスが誘発された(Yu et al. (1998) PNAS 95:11324-11329)。さらに、p27/kip1の過剰発現は、抗血管新生作用を有する(Goukassian et al. (2001) FASEB J. 15:1877-1885)。
【0005】
CDK2によりp27/kip1のThr187がリン酸化されると、skp1-cul1-f-box(「SCF」)タンパク質として知られるSKP2含有E3ユビキチン-タンパク質リガーゼに対する結合部位が形成される。続いてSCFによりp27/kip1がユビキチン化されると、プロテアソーム複合体によりp27/kip1が分解される(Alessandrini et al. (1997) Leukemia 11:342-345)。このほか、SCF1ユビキチンリガーゼ複合体のレセプター成分として機能するSKP2は、p27/kip1のThr187がリン酸化された場合にかぎり、CKS2と協同してp27/Kipに結合する。この決定的な結合および相互作用は、p27/kip1のユビキチン化および分解に必要であるようにみえる。したがって、E3ユビキチン-タンパク質リガーゼによりp27/kip1のユビキチン化をモジュレートしてp27/kip1の分解を引き起こすようにすれば、癌、新生物疾患、および他の増殖性疾患の治療および予防の可能性が得られる。
【0006】
さらに、細胞の長期生存能力に悪影響を及ぼすことなく細胞周期のある時点で細胞を休止状態にする一般的能力を備えた化合物は、そのような保存の必要な細胞、血液、組織、または器官の保存剤として有用である。保存されるヒト血液および血液製剤は、限られた「保存寿命」でその60%程度が失われる可能性がある。全細胞のような生物学的製剤の劣化は、細胞レベルの異化過程の結果であり、保存温度に反比例する。G1期で細胞を停止状態にすることのできる化合物を用いれば、生物学的製剤の「保存寿命」を延ばしたたり、または異化速度を増大させることなく生物学的製剤を高温で保存もしくは搬送したりすることができる。したがって、生物学的製剤を保存する能力を備えた化合物が依然として必要とされている。
【0007】
2.1. 癌および新生物疾患
世界中で約2000万人の成人および子供が癌に冒されており、今年は、900万人を超える新患者が診断されるであろう(International Agency for Research on Cancer; www.iarc.fr)。American Cancer Societyによれば、今年、約563,100人のアメリカ人が癌で死亡すると予想される(1日あたり1500人)。1990年以来、米国内だけで、約500万人の生命が癌により失われ、約1200万人の新患者が診断された。
【0008】
現在のところ、癌療法は、患者の新生物細胞を根絶するために、手術、化学療法、および/または放射線治療を必要とする(たとえば、Stockdale, 1998, "Principles of Cancer Patient Management", in Scientific American: Medicine, vol. 3, Rubenstein and Federman, eds., Chapter 12, Section IVを参照されたい)。これらの手法はすべて、患者にとって顕著な欠点を伴う。たとえば、手術は、患者の健康によっては禁忌になることもあるし、または患者に受け入れがたいこともある。さらに、手術では、新生物組織を完全に除去しえない可能性もある。放射線療法は、照射される新生物組織が正常組織よりも放射線に対して高い感受性を呈する場合にのみ効果があり、しかも放射線療法は、多くの場合、重篤な副作用を引き起こす可能性がある(上掲文献参照)。化学療法に関しては、新生物疾患の治療に利用可能なさまざまな化学療法剤が存在する。しかしながら、さまざまな化学療法剤が利用可能であるにもかかわらず、化学療法は多くの欠点を有する(たとえば、Stockdale, 1998, "Principles Of Cancer Patient Management" in Scientific American Medicine, vol. 3, Rubenstein and Federman, eds., Ch. 12, sect. 10を参照されたい)。ほとんどすべての化学療法剤は有毒であり、化学療法は、重度の悪心、下痢、骨髄抑制、免疫抑制などを含めて、顕著でかつ多くの場合危険な副作用を引き起こす。このほか、多くの腫瘍細胞は、多剤耐性により化学療法剤に対して耐性があるかまたは耐性を獲得する。
【0009】
したがって、先に述べた副作用を低減させ、あるいははそうした副作用を伴うことなく癌または新生物疾患を治療または予防するのに有用である新規な化合物、組成物および方法が、当技術分野でかなり必要とされている。さらに、特異性を増大させかつ毒性を低減させた癌細胞特異的療法を提供する癌治療が必要とされている。
【0010】
本願の第2節でいかなる参考文献が引用また特定されていようとも、そのような参考文献は本発明の先行技術として利用可能なことを認めているわけではない。
【発明の開示】
【0011】
3. 発明の概要
本発明は、式(I):
【化1】

〔式中、変数は、以下に定義されているとおりである〕
で示される化合物(そのプロドラッグ、包接体、水和物、溶媒和物、多形体、および製薬上許容される塩を含む)のような本発明の化合物に関する。
【0012】
本発明はまた、有効量の本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0013】
本発明の化合物およびその組成物は、リガーゼ活性のモジュレーション;リガーゼ活性のモジュレーションに応答する疾患の治療もしくは予防;リガーゼ活性の阻害に応答する疾患の治療もしくは予防;リガーゼ活性の活性化に応答する疾患の治療もしくは予防;E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ活性のモジュレーション;p27/kip1のE3ユビキチン-タンパク質リガーゼ媒介ユビキチン化のモジュレーション;細胞内p27/kip1のモジュレーション;細胞の増殖の停止;化学療法もしくは放射線療法に伴う副作用の治療もしくは予防;低温保存される細胞、血液、組織、器官、もしくは生物の寿命の延長;特定の細胞系列および組織系列に沿った哺乳動物(とくに、ヒト)幹細胞の分化および成熟(とくに、分娩後の胎盤に由来する胚様幹細胞の分化もしくは臍帯血のような供給源から単離された幹細胞の分化)の調節および制御;そのような治療もしくは予防の必要な患者における癌もしくは新生物疾患の治療もしくは予防;または癌細胞もしくは新生物細胞の増殖の阻害に有用である。
【0014】
本発明はさらに、癌、新生物障害、急性もしくは慢性腎不全、炎症障害、免疫障害、心臓血管疾患、老化作用、または感染症を治療または予防する方法であって、その必要のある患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む上記方法に関する。本発明はさらに、細胞、血液、組織、もしくは器官の保存剤としての、または幹細胞をモジュレートする作用剤としての、本発明の化合物の使用に関する。
【0015】
4. 発明の詳細な説明
4.1. 定義
本明細書中で使用する場合、「患者」という用語は、動物、好ましくは、哺乳動物、たとえば、非霊長類(たとえば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、もしくはモルモット)または霊長類(たとえば、サルおよびヒト)、最も好ましくはヒトを意味する。
【0016】
「アルキル」とは、1〜10個の炭素原子を有する飽和の直鎖状(非分枝状)または分枝状非環状炭化水素を意味する。「低級アルキル」とは、1〜4個の炭素原子を有する先に定義したアルキルを意味する。代表的な飽和直鎖状(非分枝状)アルキルとしては、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、-n-ヘキシル、-n-ヘプチル、-n-オクチル、-n-ノニル、および-n-デシルが挙げられ;一方、飽和分枝状アルキルとしては、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルペンチル(dimtheylpentyl)、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、3,3-ジエチルヘキシルなどが挙げられる。
【0017】
「アルケニル」とは、2〜10個の炭素原子を有しかつ少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖状または分枝状非環状炭化水素を意味する。代表的な直鎖状および分枝状(C2〜C10)アルケニルとしては、-ビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、-2,3-ジメチル-2-ブテニル、-1-ヘキセニル、-2-ヘキセニル、-3-ヘキセニル、-1-ヘプテニル、-2-ヘプテニル、-3-ヘプテニル、-1-オクテニル、-2-オクテニル、-3-オクテニル、-1-ノネニル、-2-ノネニル、-3-ノネニル、-1-デセニル、-2-デセニル、-3-デセニルが挙げられる。アルケニル基は、置換されていなくても置換されていてもよい。
【0018】
「環状アルキリデン」とは、3〜8個の炭素原子を有しかつ少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む環であり、この環は、1〜3個のヘテロ原子を有していてもよい。
【0019】
「アルキニル」とは、2〜10個の炭素原子を有しかつ少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む直鎖状または分枝状非環状炭化水素を意味する。代表的な直鎖状および分枝状-(C2〜C10)アルキニルとしては、-アセチレニル、-プロピニル、-1-ブチニル、-2-ブチニル、-1-ペンチニル、-2-ペンチニル、-3-メチル-1-ブチニル、-4-ペンチニル、-1-ヘキシニル、-2-ヘキシニル、-5-ヘキシニル、-1-ヘプチニル、-2-ヘプチニル、-6-ヘプチニル、-1-オクチニル、-2-オクチニル、-7-オクチニル、-1-ノニニル、-2-ノニニル、-8-ノニニル、-1-デシニル、-2-デシニル、-9-デシニルなどが挙げられる。アルキニル基は、置換されていなくても置換されていてもよい。
【0020】
「ハロゲン」および「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
「ハロアルキル」とは、1個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基(ここで、アルキルは、先に定義したとおりである)を意味し、たとえば、-CH2F、-CH2Cl、-CH2Br、-CH2I、-(CH2)2F、-(CH2)2Cl、-(CH2)2Br、-(CH2)2I、-CF3、-CH2CF3、-(CH2)2CF3などが挙げられる。
【0021】
「アシルオキシ」とは、-OC(O)アルキル基(ここで、アルキルは、先に定義したとおりである)を意味し、たとえば、-OC(O)CH3、-OC(O)CH2CH3、-OC(O)(CH2)2CH3、-OC(O)(CH2)3CH3、-OC(O)(CH2)4CH3、-OC(O)(CH2)5CH3などが挙げられる。
【0022】
「アルコキシ」とは、-O-(アルキル)(ここで、アルキルは、先に定義したとおりである)を意味し、たとえば、-OCH3、-OCH2CH3、-O(CH2)2CH3、-O(CH2)3CH3、-O(CH2)4CH3、-O(CH2)5CH3などが挙げられる。
「低級アルコキシ」とは、-O-(低級アルキル)(ここで、低級アルキルは、先に定義したとおりである)を意味する。
【0023】
「アリール」とは、5〜10個の環原子を含有する炭素環式芳香族基を意味する。代表例としては、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、ピリジニル、およびナフチル、さらには5,6,7,8-テトラヒドロナフチルをはじめとするベンゾ縮合炭素環部分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素環式芳香族基は、置換されていなくても置換されていてもよい。一実施形態では、炭素環式芳香族基は、フェニル基である。
【0024】
「シクロアルキル」とは、炭素原子および水素原子を有しかつ炭素-炭素多重結合を有していない単環式または多環式飽和環を意味する。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルをはじめとする(C3〜C7)シクロアルキル基、ならびに飽和環式および二環式テルペンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。シクロアルキル基は、置換されていなくても置換されていてもよい。一実施形態では、シクロアルキル基は、単環または二環である。
【0025】
「モノ-アルキルアミノ」とは、-NH(アルキル)(ここで、アルキルは、先に定義したとおりである)を意味し、たとえば、-NHCH3、-NHCH2CH3、-NH(CH2)2CH3、-NH(CH2)3CH3、-NH(CH2)4CH3、-NH(CH2)5CH3などが挙げられる。
【0026】
「ジ-アルキルアミノ」とは、-N(アルキル)(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して、先に定義したアルキル基である)を意味し、たとえば、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、-N((CH2)2CH3)2、-N(CH3)(CH2CH3)などが挙げられる。
【0027】
「アルキルアミノ」とは、先に定義したモノ-アルキルアミノまたはジ-アルキルアミノを意味し、たとえば、-NHCH3、-NHCH2CH3、-NH(CH2)2CH3、-NH(CH2)3CH3、-NH(CH2)4CH3、-NH(CH2)5CH3などの-NH(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して、先に定義したアルキル基である)、および-N(CH2CH3)2、-N((CH2)2CH3)2、-N(CH3)(CH2CH3)などの-N(アルキル)(アルキル)、-N(CH3)2(ここで、各アルキルは、独立して、先に定義したアルキル基である)が挙げられる。
【0028】
「カルボキシル」および「カルボキシ」とは、-COOHを意味する。
「アミノアルキル」とは、-(アルキル)-NH2(ここで、アルキルは、先に定義したとおりである)を意味し、たとえば、CH2-NH2、-(CH2)2-NH2、-(CH2)3-NH2、-(CH2)4-NH2、-(CH2)5-NH2などが挙げられる。
【0029】
「モノ-アルキルアミノアルキル」とは、-(アルキル)-NH(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して、先に定義したアルキル基である)を意味し、たとえば、-CH2-NH-CH3、-CH2-NHCH2CH3、-CH2-NH(CH2)2CH3、-CH2-NH(CH2)3CH3、-CH2-NH(CH2)4CH3、-CH2-NH(CH2)5CH3、-(CH2)2-NH-CH3などが挙げられる。
【0030】
「ジ-アルキルアミノアルキル」とは、-(アルキル)-N(アルキル)(アルキル)(ここで、各アルキルは、独立して、先に定義したアルキル基である)を意味し、たとえば、-CH2-N(CH3)2、-CH2-N(CH2CH3)2、-CH2-N((CH2)2CH3)2、-CH2-N(CH3)(CH2CH3)、-(CH2)2-N(CH3)2などが挙げられる。
【0031】
「ヘテロアリール」とは、5〜10員であり、かつ窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有し、かつ少なくとも1個の炭素原子を含有する芳香族ヘテロ環を意味し、単環系および二環系の両方が包含される。代表的なヘテロアリールは、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリジル、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、ピロリル、インドリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ピリミジル、オキセタニル、アゼピニル、ピペラジニル、モルホリニル、ジオキサニル、チエタニル、およびオキサゾリルである。
【0032】
「ヘテロ環」とは、飽和、不飽和のいずれかであり、かつ窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を含有し、しかも窒素および硫黄ヘテロ原子が場合により酸化されていてもよく、かつ窒素ヘテロ原子が場合により四級化されていてもよい5〜7員単環式または7〜10員二環式ヘテロ環を意味し、これらのヘテロ環のいずれかがベンゼン環に縮合されている二環が含まれる。ヘテロ環は、任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合されうる。ヘテロ環には、先に定義したヘテロアリールが包含される。代表的なヘテロ環としては、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリミジニル(tetrahydroprimidinyl)、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどが挙げられる。
「フェニルに縮合したヘテロ環」とは、フェニル環の2個の隣接した炭素原子でフェニル環に結合されたヘテロ環(ここで、ヘテロ環は、先に定義したとおりである)を意味する。
【0033】
「ハロアルキル」とは、1個以上の水素原子がハロゲン(ここで、ハロゲンは、先に定義したとおりである)で置き換えられたアルキル(ここで、アルキルは、先のように定義される)を意味し、たとえば、-CF3、-CHF2、-CH2F、-CBr3、-CHBr2、-CH2Br、-CCl3、-CHCl2、-CH2Cl、-CI3、-CHI2、-CH2I、-CH2-CF3、-CH2-CHF2、-CH2-CH2F、-CH2-CBr3、-CH2-CHBr2、-CH2-CH2Br、-CH2-CCl3、-CH2-CHCl2、-CH2-CH2Cl、-CH2-CI3、-CH2-CHI2、-CH2-CH2Iなどが挙げられる。
【0034】
「ヒドロキシアルキル」とは、1個以上の水素原子がヒドロキシで置き換えられたアルキル(ここで、アルキルは、先に定義したとおりである)を意味し、たとえば、-CH2OH、-CH2CH2OH、-(CH2)2CH2OH、-(CH2)3CH2OH、-(CH2)4CH2OH、-(CH2)5CH2OH、-CH(OH)-CH3、-CH2CH(OH)CH3などが挙げられる。
「ヒドロキシ」とは、-OHを意味する。
【0035】
「スルホニル」とは、-SO3Hを意味する。
「スルホニルアルキル」とは、-SO2-(アルキル)(ここで、アルキルは、先に定義したとおりである)を意味し、たとえば、-SO2-CH3、-SO2-CH2CH3、-SO2-(CH2)2CH3、-SO2-(CH2)3CH3、-SO2-(CH2)4CH3、-SO2-(CH2)5CH3などが挙げられる。
【0036】
「スルフィニルアルキル」とは、-SO-(アルキル)(ここで、アルキルは、先に定義したとおりである)を意味し、たとえば、-SO-CH3、-SO-CH2CH3、-SO-(CH2)2CH3、-SO-(CH2)3CH3、-SO-(CH2)4CH3、-SO-(CH2)5CH3などが挙げられる。
【0037】
「チオアルキル」とは、-S-(アルキル)(ここで、アルキルは、先に定義したとおりである)を意味し、たとえば、-S-CH3、-S-CH2CH3、-S-(CH2)2CH3、-S-(CH2)3CH3、-S-(CH2)4CH3、-S-(CH2)5CH3などが挙げられる。
【0038】
本明細書中で使用される「置換」という用語は、置換対象部分の少なくとも1個の水素原子が置換基で置き換えられている上記の基(すなわち、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、またはシクロアルキル)のいずれかを意味する。一実施形態では、置換対象の基の各炭素原子が、2個以下の置換基で置換される。他の実施形態では、置換対象の基の各炭素原子が、1個以下の置換基で置換される。ケト置換基の場合、2個の水素原子が、二重結合を介して炭素に結合される酸素で置き換えられる。置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、一置換または二置換アルキルアミノ、アリール、ヘテロ環、-NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)NRaRb、-NRaC(=O)ORb -NRaSO2Rb、-ORa、-C(=O)Ra C(=O)ORa -C(=O)NRaRb、-OC(=O)Ra、-OC(=O)ORa、-OC(=O)NRaRb、-NRaSO2Rbが挙げられる。ここで、RaおよびRbは、同一であっても異なっていてもよく、独立して、水素、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アリール、もしくはヘテロ環であるか、またはRaおよびRbは、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、ヘテロ環を形成する。
【0039】
本明細書中で使用する場合、「有効量」には、原発性、局所性、または転移性の癌細胞または癌組織を、破壊、改善、抑制、または除去するのに;癌の進展を遅延または最小化するのに;あるいは癌、新生物障害、急性もしくは慢性腎不全、炎症障害、免疫障害、心臓血管疾患、老化作用、または感染症の治療または管理において治療上の利点を提供するのに、十分である本発明の化合物量が包含される。また、「有効量」には、癌または新生物細胞の死滅を引き起こすのに十分である本発明の化合物の量も包含される。また、「有効量」には、in vitroまたはin vivoのいずれかでリガーゼ活性をモジュレートする(たとえば、活性化または阻害する、好ましくは阻害する)のに十分である本発明の化合物の量も包含される。
【0040】
本明細書中で使用する場合、「リガーゼ活性のモジュレーション」とは、リガーゼ活性を有する1種以上のタンパク質の活性化速度または活性化速度増加の阻害、促進、または遅延、好ましくは阻害を意味する。一実施形態では、「リガーゼ活性のモジュレーション」とは、リガーゼ活性を備えた1種以上のタンパク質の活性化速度を阻害することを意味する。他の実施形態では、「リガーゼ活性のモジュレーション」とは、リガーゼ複合体(たとえば、p27/kip1複合体)のモジュレーションを意味する。他の実施形態では、「リガーゼ活性のモジュレーション」とは、リガーゼ複合体中の1種以上のタンパク質のモジュレーションを意味する。他の実施形態では、「リガーゼ活性のモジュレーション」とは、リガーゼ活性を有する1種以上のタンパク質の活性化を意味する。他の実施形態では、「リガーゼ活性のモジュレーション」とは、リガーゼ活性を有する1種以上のタンパク質の活性化速度の遅延を意味する。他の実施形態では、「リガーゼ活性のモジュレーション」とは、リガーゼ活性を有する1種以上のタンパク質の活性化速度を増大させることを意味する。リガーゼ活性のモジュレーションは、mRNAレベル、タンパク質発現レベル、およびキナーゼ活性レベルで達成することができる。
【0041】
本明細書中で使用する場合、「リガーゼ活性のモジュレーションに応答する」とは、リガーゼ活性を有する1種以上のタンパク質の活性が本発明の化合物により阻害または活性化されること、好ましくは阻害されることを意味する。
【0042】
本明細書中で使用する場合、「E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ活性のモジュレーション」とは、E3ユビキチン-タンパク質リガーゼの活性が本発明の化合物により阻害または活性化されること、好ましくは阻害されることを意味する。
【0043】
本明細書中で使用する場合、「p27/kip1レベルのモジュレーション」とは、本発明の化合物に接触した細胞のp27/kip1の量が、本発明の化合物に接触しなかった細胞に対して、増加または減少すること、好ましくは増加することを意味する。
【0044】
本明細書中で使用する場合、「予防上有効な量」とは、癌の再発または進展を予防できるようにするのに十分である本発明の化合物の量を意味する。予防上有効な量は、患者(たとえば、限定されるものではないが、癌に罹患しやすい患者または発癌物質に既に暴露されている患者)において癌の再発もしくは進展または癌の発生を予防するのに十分である本発明の化合物の量を意味しうる。予防上有効な量はまた、癌の予防において予防上の利点を提供する本発明の化合物の量をも意味しうる。さらに、他の予防剤に対して、予防上有効な量とは、癌の予防において予防上の利点を提供する本発明の化合物と併用される予防剤の量を意味する。本発明の化合物の量に関連して用いられる場合、「予防上有効な量」という用語は、予防全般を改良するかまたは他の予防剤の予防効力を向上させるかもしくは他の予防剤と相乗作用を呈する量を包含しうる。
【0045】
本明細書中で使用する場合、「新生物」という用語は、良性であっても癌性であってもよい細胞または組織の異常増殖(たとえば、腫瘍)を意味する。
【0046】
本明細書中で使用する場合、「管理」という用語には、一実施形態で疾患を治癒しない本発明の化合物から患者が受ける1つ以上の有益な作用を提供することが包含される。特定の実施形態では、疾患の進行または悪化が予防されるように疾患を「管理」すべく、本発明の化合物を患者に投与する。
【0047】
本明細書中で使用する場合、「予防」という用語には、患者における癌の再発、進展、または発生を予防することが包含される。
本明細書中で使用する場合、「治療」という用語には、原発性、局所性、または転移性の癌組織を根絶、除去、改善、または抑制すること;および癌の進展を最小化または遅延することが包含される。
【0048】
本明細書中で使用する場合、「本発明の化合物(複数種も可)」という表現には、式(I)、式(II)、式(III)で示される任意の化合物(複数種も可)(式(I)〜式(III)で示される化合物のそれぞれの特定の実施形態を含む)、およびその包接体、水和物、溶媒和物、多形体、または製薬上許容される塩が包含される。一実施形態では、本発明の化合物には、立体化学的に純粋な化合物、たとえば、他の立体異性体を実質的に含まない化合物(たとえば、85%ee超、90%ee超、95%ee超、97%ee超、または99%ee超)が包含される。
【0049】
本明細書中で使用する場合、「製薬上許容される塩(複数種も可)」という用語は、無機の酸および塩基ならびに有機の酸および塩基を含めて製薬上許容される無毒の酸または塩基から調製される塩を意味する。本発明の化合物に好適な製薬上許容される塩基付加塩としては、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、および亜鉛から作製される金属塩、またはリシン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(n-メチルグルカミン)、およびプロカインから作製される有機塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な無毒の酸としては、無機および有機の酸、たとえば、酢酸、アルギン酸、アントラニル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロ酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グリコール酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、硫酸、酒石酸、およびp-トルエンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の無毒の酸としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、およびメタンスルホン酸が挙げられる。したがって、特定の塩の例としては、塩酸塩およびメシル酸塩が挙げられる。他の塩は、当技術分野で周知であり、たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1990) or Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th eds., Mack Publishing, Easton PA (1995)を参照されたい。
【0050】
本明細書中で使用する場合、とくに明示されていないかぎり、「多形体」という用語は、本発明の化合物の固体結晶形またはその複合体を意味する。同一の化合物の異なる多形体は、異なる物理的、化学的、および/または分光学的性質を呈する可能性がある。異なる物理的性質としては、安定性(たとえば、熱または光に対する安定性)、圧縮率および密度(配合および製剤製造に重要である)、ならびに溶解速度(生物学的利用能に影響を及ぼす可能性がある)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。安定性の差異により、化学反応性が変化したり(たとえば、示差的酸化を起こして、一方の多形体で構成されているときのほうが他方の多形体で構成されているときよりも製剤がより速く変色する)、もしくは機械的特性が変化したり(たとえば、速度論的に優位な多形体が熱力学的により安定な多形体に変換されるにつれて、保存時に錠剤が崩壊する)、またはその両方が変化したり(たとえば、ある1つの多形体の錠剤が、高湿度でより分解されやすい)する可能性がある。多形体の物理的性質が異なると、その加工処理が影響を受ける可能性がある。たとえば、一方の多形体が、その粒子の形状またはサイズ分布などに起因して、他方の多形体よりも、溶媒和物を形成しやすくなったり、または不純物を含まないように濾過もしくは洗浄することが困難になったりする可能性がある。
【0051】
本明細書中で使用する場合、「溶媒和物」という用語は、非共有結合分子間力により結合された化学量論量または非化学量論量の溶媒をさらに含む本発明の化合物またはその塩を意味する。好ましい溶媒は、揮発性、非毒性、かつ/または極微量でヒトへの投与に適合性である。
【0052】
本明細書中で使用する場合、「水和物」という用語は、非共有結合分子間力により結合された化学量論量または非化学量論量の水をさらに含む本発明の化合物またはその塩を意味する。
【0053】
本明細書中で使用する場合、「包接体」とは、内部にトラップされたゲスト分子(たとえば、溶媒または水)を有する空間(たとえば、チャネル)を含む結晶格子の形態の本発明の化合物またはその塩を意味する。
【0054】
本明細書中で使用する場合、とくに明示されていないかぎり、「プロドラッグ」という用語は、生物学的条件下(in vitroまたはin vivo)で加水分解、酸化、またはそれ以外の反応を起こして活性な化合物(とくに、本発明の化合物)を提供することのできる本発明の化合物を意味する。プロドラッグの例としては、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド、および生加水分解性ホスフェート類似体のような生加水分解性部分を含む本発明の化合物の代謝物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、カルボキシル官能基を有する化合物のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボキシレートエステルは、分子上に存在するカルボン酸部分のいずれかをエステル化することにより都合よく形成される。プロドラッグは、典型的には、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed. (Donald J. Abraham ed., 2001, Wiley)およびDesign and Application of Prodrugs (H. Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers Gmfh)に記載されているような周知の方法を用いて調製することができる。
【0055】
一実施形態では、患者(たとえば、獣医学的目的の哺乳動物または臨床目的のヒト)に投与する場合、本発明の化合物は、単離された形態で投与される。本明細書中で使用する場合、「単離」とは、本発明の化合物が(a)植物、細胞、もしくは細菌培養物のような天然源または(b)合成有機化学反応混合物のいずれかの他の成分から分離されることを意味する。好ましくは、従来技術により、本発明の化合物を精製する。本明細書中で使用する場合、「精製」とは、単離時、単離物が90%超の純度、一実施形態では95%超の純度、他の実施形態では99%超の純度、そして他の実施形態では99.9%超の純度であることを意味する。
【0056】
4.2. 本発明の化合物
先に述べたように、本発明は、式(I):
【化2】

【0057】
〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
mは、0〜5であり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物のような本発明の化合物ならびにそのプロドラッグ、包接体、水和物、溶媒和物、多形体、および製薬上許容される塩に関する。
【0058】
一実施形態では、式(I)で示される化合物には、(4-{[3-(2,2-ジメチル-テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチルアミノ]-メチル}-フェニル)-ジメチル-アミン))が包含されない。
【0059】
他の実施形態では、式(I)で示される化合物は、ZがOである化合物である。
他の実施形態では、式(I)で示される化合物は、QがHである化合物である。
他の実施形態では、pは、1または2である。さらなる実施形態では、pは、2である。
【0060】
他の実施形態では、式(I)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも無置換である化合物である。さらなる実施形態では、式(I)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも置換されている化合物である。さらなる実施形態では、式(I)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも二置換されている化合物である。さらなる実施形態では、式(I)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも一置換されている化合物である。さらなる実施形態では、式(I)で示される化合物は、Zのα位の炭素の一方が二置換されておりかつZのα位の炭素の他方が一置換されている化合物である。
【0061】
他の実施形態では、Wは、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、または-O(CH2)qNR1R2である。
【0062】
他の実施形態では、UおよびXは、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、または-O(CH2)qNR1R2である。
【0063】
他の実施形態では、本発明は、式(II):
【化3】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
X'は、H、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物のような本発明の化合物ならびにそのプロドラッグ、包接体、水和物、溶媒和物、多形体、および製薬上許容される塩に関する。
【0064】
一実施形態では、式(II)で示される化合物には、(4-{[3-(2,2-ジメチル-テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチルアミノ]-メチル}-フェニル)-ジメチル-アミン))が包含されない。
【0065】
他の実施形態では、式(II)で示される化合物は、ZがOである化合物である。
他の実施形態では、式(II)で示される化合物は、QがHである化合物である。
他の実施形態では、式(II)で示される化合物は、X、X'、U、またはWのうちの1つがHでない化合物である。
【0066】
他の実施形態では、式(II)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも無置換である化合物である。さらなる実施形態では、式(II)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも置換されている化合物である。さらなる実施形態では、式(II)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも二置換されている化合物である。さらなる実施形態では、式(II)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも一置換されている化合物である。さらなる実施形態では、式(II)で示される化合物は、Zのα位の炭素の一方が二置換されておりかつZのα位の炭素の他方が一置換されている化合物である。
【0067】
他の実施形態では、本発明は、式(III):
【化4】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;そして
qは、0〜5である〕
で示される化合物のような本発明の化合物ならびにそのプロドラッグ、包接体、水和物、溶媒和物、多形体、および製薬上許容される塩に関する。
【0068】
一実施形態では、式(III)で示される化合物には、(4-{[3-(2,2-ジメチル-テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチルアミノ]-メチル}-フェニル)-ジメチル-アミン))が包含されない。
【0069】
他の実施形態では、式(III)で示される化合物は、ZがOである化合物である。
他の実施形態では、式(III)で示される化合物は、QがHである化合物である。
他の実施形態では、式(III)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも無置換である化合物である。さらなる実施形態では、式(III)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも置換されている化合物である。さらなる実施形態では、式(III)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも二置換されている化合物である。さらなる実施形態では、式(III)で示される化合物は、Zのα位の炭素が両方とも一置換されている化合物である。さらなる実施形態では、式(III)で示される化合物は、Zのα位の炭素の一方が二置換されておりかつZのα位の炭素の他方が一置換されている化合物である。
【0070】
本発明はまた、有効量の本発明の化合物と製薬上許容される担体とを含む医薬組成物に関する。一実施形態では、医薬組成物は、リガーゼのモジュレーションに関連する疾患を治療するのに好適である。他の実施形態では、医薬組成物は、リガーゼの阻害に関連する疾患を治療するのに好適である。
【0071】
本発明の化合物およびその医薬組成物は、リガーゼ活性のモジュレーション;リガーゼ活性のモジュレーションに応答する疾患の治療もしくは予防;リガーゼ活性の阻害に応答する疾患の治療もしくは予防;リガーゼ活性の活性化に応答する疾患の治療もしくは予防;E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ活性のモジュレーション;p27/kip1のE3ユビキチン-タンパク質リガーゼ媒介ユビキチン化のモジュレーション;細胞内p27/kip1のモジュレーション;細胞の増殖の停止;化学療法もしくは放射線療法に伴う副作用の治療もしくは予防;低温保存される細胞、血液、組織、器官、もしくは生物の寿命の延長;特定の細胞系列および組織系列に沿った哺乳動物(とくに、ヒト)幹細胞の分化および成熟(とくに、分娩後の胎盤に由来する胚様幹細胞の分化もしくは臍帯血のような供給源から単離された幹細胞の分化)の調節および制御;そのような治療もしくは予防の必要な患者における癌もしくは新生物疾患の治療もしくは予防;または癌細胞もしくは新生物細胞の増殖の阻害に有用である。
【0072】
他の実施形態では、本発明は、患者においてリガーゼ活性のモジュレーションに応答する疾患を治療または予防する方法に関する。この方法は、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。患者においてリガーゼ活性のモジュレーションに応答する疾患としては、癌、新生物疾患、炎症疾患、感染症、心臓血管疾患、および免疫疾患が挙げられる。
【0073】
他の実施形態では、本発明は、患者においてp27/kip1の細胞内レベルのモジュレーションに応答する疾患を治療または予防する方法に関する。この方法は、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。患者においてp27/kip1の細胞内レベルのモジュレーションに応答する疾患としては、癌、新生物疾患、炎症疾患、感染症、心臓血管疾患、および免疫疾患が挙げられる。
【0074】
他の実施形態では、本発明は、細胞の増殖を停止させる方法に関する。この方法は、増殖停止の必要な細胞を有効量の本発明の化合物に接触させることを含む。
【0075】
他の実施形態では、本発明は、癌細胞または新生物細胞の死滅を引き起こす方法に関する。この方法は、癌細胞または新生物細胞を有効量の本発明の化合物に接触させることを含む。
【0076】
他の実施形態では、本発明は、化学療法または放射線療法に伴う副作用を治療または予防する方法に関する。この方法は、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。化学療法または放射線療法に伴う副作用としては、低血球数、悪心、下痢、口腔病変、および脱毛(毛髪減少)が挙げられる。
【0077】
他の実施形態では、本発明は、細胞、血液、組織、器官、または生物を保存する方法に関する。この方法は、細胞、血液、組織、器官、または生物を有効量の本発明の化合物に接触させることを含む。
【0078】
他の実施形態では、本発明は、哺乳動物幹細胞の分化または成熟を調節または制御する方法に関する。この方法は、細胞を有効量の本発明の化合物に接触させることを含む。
【0079】
他の実施形態では、本発明は、患者において癌または新生物疾患を治療または予防する方法に関する。この方法は、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0080】
他の実施形態では、本発明は、患者において癌または新生物疾患を治療または予防する方法に関する。この方法は、有効量の本発明の化合物を癌細胞または新生物細胞に接触させることを含む。
【0081】
他の実施形態では、本発明は、癌細胞または新生物細胞の増殖を阻害する方法に関する。この方法は、有効量の本発明の化合物を癌細胞または新生物細胞に接触させることを含む。
【0082】
他の実施形態では、本発明は、患者において急性もしくは慢性腎不全を治療または予防する方法に関する。この方法は、そのような治療の必要な患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0083】
他の実施形態では、本発明は、患者において炎症疾患を治療または予防する方法に関する。この方法は、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0084】
他の実施形態では、本発明は、患者において老化作用を治療または予防する方法に関する。この方法は、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。老化作用としては、筋減少症(筋肉量の減少)および記憶喪失が挙げられる。
【0085】
他の実施形態では、本発明は、患者において感染症を治療または予防する方法に関する。この方法は、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0086】
他の実施形態では、本発明は、患者において免疫障害を治療または予防する方法に関する。この方法は、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0087】
他の実施形態では、本発明は、患者において心臓血管疾患を治療または予防する方法に関する。この方法は、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0088】
4.3. 本発明の化合物の調製
本発明の化合物は、市販の出発物質ならびに従来の有機反応および試薬を用いて調製することができる。
本発明の化合物は、一般的には、当業者であれば以下のスキームI〜IIIに示されるように調製することができる。
【0089】
【化5】

上記スキーム中、変数Zは、炭素または酸素を表し、変数R1は、アルキル、特定の実施形態では低級アルキル(たとえば、メチル)を表し、そして変数XおよびRは、それぞれ独立して、1個以上の場合により存在していてもよい置換基(たとえば、先の第4.1節に記載の置換基を含めて、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、または当業者に公知である任意の他の好適な置換基)を表し、そして変数nは、0〜2の範囲の整数を表す。当業者には当然のことであろうが、使用される特定の出発物質および試薬に応じてスキームIの小変更が必要になることもある。
【0090】
【化6】

上記スキーム中、変数Zは、炭素または酸素を表し、そして変数R'は、置換もしくは無置換フェニルを表す。
【0091】
本発明の化合物の例示的実施例である実施例1の化合物((4-{[3-(2,2-ジメチル-テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチルアミノ]-メチル}-フェニル)-ジメチル-アミン)は、以下のスキームIIIに示されるように調製することができる:
【0092】
【化7】

実施例1の化合物はまた、ChemBridge Corporation (16981 Via Tazon, suite G, San Diego, CA 92127 ; catalog no. 5936317)から市販品として入手することもできる。市販品として入手した実施例1の化合物は、HPLC(20〜100%グラジエント:アセトニトリル/水/1%トリフルオロ酢酸)で1つのピークを示す。
【0093】
4.4. 例示的化合物
本発明の化合物の例示的実施例としては、以下の化合物、ならびにそのプロドラッグ、包接体、水和物、溶媒和物、多形体、および製薬上許容される塩が挙げられる。
【化8】





【0094】
4.5. 治療/予防のための投与および組成物
本発明の化合物は、獣医学および人間医学で有利に利用できる。たとえば、本発明の化合物は、癌、新生物障害、急性もしくは慢性腎不全、炎症障害、免疫障害、心臓血管疾患、化学療法もしくは放射線療法の副作用、老化作用、または感染症を治療または予防するのに有用である。本発明の化合物はまた、癌細胞または新生物細胞の増殖の阻害にも有用である。
【0095】
有効量の本発明の化合物を含む本発明の医薬組成物は、任意の都合のよい経路により、たとえば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚の内層(たとえば、口腔粘膜、直腸粘膜、腸粘膜など)に吸収させることにより、投与することができ、また他の治療剤と共に投与することができる。投与は、全身的であっても局所的であってもよい。リポソーム中、マイクロ粒子中、マイクロカプセル中、またはカプセル中にカプセル化するなどの種々の送達システムが知られており、これらを用いて本発明の化合物を投与することができる。特定の実施形態では、2種以上の本発明の化合物を患者に投与する。投与方法はとしては、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、鼻腔内投与、硬膜外投与、経口投与、舌下投与、鼻腔内投与、脳内投与、膣内投与、経真皮投与、直腸内投与、吸入投与、または耳、鼻、眼、もしくは皮膚への局所投与が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい投与形態は、診療医の裁量にゆだねられ、部分的には疾患部位(たとえば、癌の部位)に依存するであろう。
【0096】
特定の実施形態では、治療を必要とする領域に1種以上の本発明の化合物を局所投与することが望ましいこともある。これは、たとえば、手術中に局所注入により、手術後にたとえば創傷用包帯と組み合わせて局所適用により、注射により、カテーテルを利用することにより、坐剤を利用することにより、またはインプラント(インプラントは、シラスティック(sialastic)膜のような膜もしくは繊維をはじめとする多孔性、非多孔性、もしくはゼラチン様の材料である)を利用することにより、達成することができるが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、癌、腫瘍、または新生物もしくは前新生物の組織の部位(または旧部位)に直接注射することにより、投与可能である。
【0097】
特定の実施形態では、脳室内および脊髄内への注射を含めて任意の好適な経路を用いて本発明の1種以上の化合物を投与することが望ましいこともある。脳室内注射は、たとえば、オムマヤレザバーのようなレザバーに取り付けられた脳室内カテーテルにより、容易に行うことが可能である。
【0098】
また、経肺投与は、たとえば、吸入器またはネブライザーとエーロゾル化剤を含む製剤とを使用することにより、またはフルオロカーボンもしくは合成肺胞界面活性物質に添加して灌流させることにより、利用可能である。特定の実施形態では、本発明の化合物は、伝統的な結合剤および担体(たとえば、トリグリセリド)を用いて坐剤として製剤化することができる。
【0099】
他の実施形態では、小胞、とくに、リポソームに添加して、本発明の化合物を送達することができる(Langer, Science 249:1527-1533 (1990); Treat et al. , in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365 (1989); Lopez-Berestein, ibid., pp. 317-327; see generally ibid.を参照されたい)。
【0100】
さらに他の実施形態では、本発明の化合物を制御放出システムで送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用してもよい(Langer, supra ; Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987); Buchwald et al., Surgery 88:507 (1980); Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321:574 (1989)を参照されたい)。他の実施形態では、高分子材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres. , Boca Raton, Florida (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983)を参照されたい;さらにLevy et al., Science 228:190 (1985); During et al. , Ann. Neurol. 25:351 (1989); Howard et al., J. Neurosurg. 71:105 (1989)をも参照されたい)。さらに他の実施形態では、制御放出システムを本発明の化合物の標的に近接して配置することが可能であり、したがって、全身的用量の何分の一かが必要になるにすぎない(たとえば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138 (1984)を参照されたい)。Langerによる総説(Science 249:1527-1533 (1990))に論述されている他の制御放出システムを使用してもよい。
【0101】
本発明の医薬組成物は、患者への適切な投与の形態が提供されるように、適切量の製薬上許容される担体と共に、好ましくは精製された形態で有効量の本発明の化合物を含有する。
【0102】
一実施形態では、「製薬上許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の監督官庁により承認されているかまたは米国薬局方もしくは動物(より特定的には、ヒト)に使用するための他の公認の薬局方に列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、本発明の化合物を投与するために併用される希釈剤、佐剤、賦形剤、または媒体を意味する。そのような医薬担体は、水および油のような液体、たとえば、石油源、動物源、植物源、または合成源の油、具体的には、落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などであってよい。医薬担体は、生理食塩水、アカシアガム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素などであってもよい。さらに、助剤、安定化剤、粘稠化剤、滑沢剤、および着色剤を使用してもよい。患者に投与する場合、本発明の化合物は、好ましくは無菌である。本発明の化合物を静脈内投与する場合、水が好ましい担体である。生理食塩溶液ならびにデキストロースおよびグリセロールの水溶液もまた、とくに注射溶液用の液体担体として利用することができる。このほかに、好適な医薬担体としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ナトリウムステアレート、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどのような賦形剤が挙げられる。本発明の組成物はまた、所望であれば、副次量の湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝剤を含有することもできる。
【0103】
本発明の組成物は、溶液剤、懸濁剤、エマルジョン剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、散剤、持続放出性製剤、坐剤、エマルジョン剤、エーロゾル剤、スプレー剤、懸濁剤の形態、または使用に好適な任意の他の形態をとることができる。一実施形態では、製薬上許容される担体は、カプセルである(たとえば、米国特許第5,698,155号を参照されたい)。好適な医薬担体の他の例については、E. W. Martinにより"Remington's Pharmaceutical Sciences"に記載されている。
【0104】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として慣例的手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与に供される本発明の化合物は、無菌等張水性緩衝液に添加された溶液剤である。所要により、組成物にはまた、可溶化剤が含まれていてもよい。静脈内投与に供される組成物には、場合により、注射部位の痛みを和らげるためにリグノカインのような局所麻酔剤が含まれていてもよい。一般的には、成分は、個別に供給されるか、またはユニット製剤として、たとえば、活性薬剤の量が記されたアンプルもしくはサシェットのような気密封着容器中の無水凍結乾燥粉末もしくは無水濃厚物として、混合一体化される。本発明の化合物を注入により投与する場合、たとえば、無菌の医薬等級の水または生理食塩水の入った注入ボトルを用いて、送出することができる。本発明の化合物を注射により投与する場合、投与前に成分を混合しうるように、注射用滅菌水または生理食塩水の入ったアンプルを提供することができる。
【0105】
経口送達に供される組成物は、たとえば、錠剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁剤、顆粒剤、散剤、エマルジョン剤、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態をとりうる。経口投与される組成物には、薬として飲みやすい調製物を提供するために、場合により、1種以上の作用剤、たとえば、フルクトース、アスパルテーム、またはサッカリンのような甘味剤;ペパーミント、ウインターグリーン油、またはチェリーのような香味剤;着色剤;および保存剤が含まれていてもよい。さらに、錠剤または丸剤の形態の場合、胃腸管内での崩壊および吸収を遅らせるように組成物にコーティングを施すことにより、長期間にわたる持続作用を提供しうる。浸透活性駆動性化合物を取り囲む選択透過性膜もまた、経口投与される本発明の化合物に好適である。この後者のプラットフォームでは、カプセルを取り囲む環境からの流体が駆動性化合物により吸収され、これにより駆動性化合物が膨潤し、その結果、作用剤または作用剤組成物が孔を通って移動できるようになる。この送達プラットフォームを用いれば、即時放出性製剤のスパイクプロファイルとは対照的に、本質的にゼロ次の送達プロファイルを提供することができる。グリセロールモノステアレートまたはグリセロールステアレートのような遅延物質を使用することも可能である。経口組成物には、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような標準的担体が含まれうる。そのような担体は、好ましくは医薬等級である。
【0106】
特定の障害または症状の治療に有効な本発明の化合物の量は、障害または症状の性質に依存するであろう。また、その量は、標準的な臨床技術により決定することができる。さらに、最適用量範囲の特定化を支援すべく、場合により、in vitroまたはin vivoアッセイを利用してもよい。正確な用量はまた、投与経路、および疾患または障害の重症度にも依存するであろう。また、その量は、診療医の判断および各患者の状況に従って決定しなければならない。しかしながら、好適な用量範囲は、とくに静脈内投与に供される場合、一般的には、体重1キログラムあたり本発明の化合物約20〜500マイクログラムである。本発明の特定の好ましい実施形態では、静脈内投与量は、体重1キログラムあたり、約10〜40、30〜60、60〜100、または100〜200マイクログラムである。他の実施形態では、静脈内投与量は、体重1キログラムあたり、約75〜150、150〜250、250〜375、または375〜500マイクログラムである。鼻腔内投与に好適な用量範囲は、一般的には、約0.01pg/kg体重〜1mg/kg体重である。坐剤は、一般的には、約0.5重量%〜10重量%の範囲で本発明の化合物を含有する。経口組成物は、好ましくは、本発明の化合物約10重量%〜95重量%で本発明の化合物のを含有する。本発明の特定の好ましい実施形態では、経口投与に好適な用量範囲は、一般的には、体重1キログラムあたり本発明の化合物約1〜500マイクログラムである。特定の好ましい実施形態では、経口投与量は、体重1キログラムあたり約1〜10、10〜30、30〜90、または90〜150マイクログラムである。他の実施形態では、経口投与量は、体重1キログラムあたり、約150〜250、250〜325、325〜450、または450〜1000マイクログラムである。有効用量は、in vitroまたは動物モデルの試験系から導かれる用量-応答曲線から外挿して得ることも可能である。そのような動物モデルおよび系は、当技術分野で周知である。
【0107】
本発明はまた、本発明の化合物の入った容器を備えた医薬キットを提供する。場合により、そのような容器(複数種も可)に、医薬品または生物学的製剤の製造、使用、または販売を取り締まる政府機関により規定された形態の注意書きを添付することができる。注意書きには、ヒトへの投与を目的とした製造、使用、もしくは販売、または使用説明書が取締機関により承認されたことが表示される。キットはまた、癌または新生物疾患の治療に有用である化学療法剤の入った容器を備えることもできる。
【0108】
ヒトに使用する前に、好ましくは、本発明の化合物が所望の治療活性または予防活性を有しているかを、in vitroで、次に、in vivoでアッセイする。たとえば、in vitroアッセイを用いて、1種以上の本発明の化合物の投与が好ましいかどうか判断することができる。
【0109】
一実施形態では、患者の組織サンプルを培養により増殖させて本発明の化合物に接触させるかまたはそれに本発明の化合物を投与し、そして組織サンプルに及ぼすそのような本発明の化合物の影響を観測して非接触組織の場合と比較する。他の実施形態では、細胞培養モデルを使用し、細胞培養物中の細胞を本発明の化合物に接触させるかまたはそれに本発明の化合物を投与し、そして組織サンプルに及ぼすそのような本発明の化合物の影響を観測して非接触細胞培養物の場合と比較する。一般的には、非接触細胞と比較して接触細胞の増殖または生存のレベルが低い場合には、本発明の化合物は患者を治療するのに有効であるとみなされる。動物モデル系を用いて、そのような本発明の化合物が有効かつ安全であることを実証することも可能である。
【0110】
当業者であれば他の方法についてもわかるであろう。そのような方法も本発明の範囲内にある。
【0111】
4.6. 癌細胞および新生物細胞ならびに疾患の阻害
当技術分野で公知であるかまたは本明細書に記載されているさまざまなアッセイを用いて、本発明の化合物が、腫瘍細胞増殖、細胞形質転換および腫瘍発生をin vitroおよびin vivoで阻害することを実証することが可能である。そのようなアッセイでは、癌細胞系の細胞または患者由来の細胞を用いることができる。当技術分野で周知の多くのアッセイを用いて、そのような生存および/または増殖を評価することができる。たとえば、(3H)-チミジン取込みを測定することにより、直接細胞計数により、プロトオンコジーン(たとえば、fos、myc)または細胞周期マーカー(Rb、cdc2、サイクリンA、D1、D2、D3、もしくはE)のような既知の遺伝子の転写、翻訳、または活性の変化を検出することにより、細胞増殖をアッセイすることができる。そのようなタンパク質およびmRNAならびに活性のレベルは、当技術分野で周知の任意の方法により決定することができる。たとえば、市販の抗体を用いて、ウェスタンブロット法または免疫沈降法のような公知の免疫診断法により、タンパク質を定量することができる(たとえば、多くの細胞周期マーカー抗体がSanta Cruz, Inc.から市販されている)。mRNAは、当技術分野で周知かつ常用的な方法、たとえばノーザン分析、RNアーゼ保護、逆転写と組み合わせたポリメラーゼ連鎖反応などによって定量することができる。細胞生存能力は、当技術分野で公知のトリパンブルー染色または他の細胞死マーカーもしくは生存マーカーにより評価することができる。分化は、モルホロジーなどの変化に基づいて視覚的に評価することができる。
【0112】
本発明は、以下のような当技術分野で公知のさまざまな方法を用いた細胞周期および細胞増殖分析を提供するが、ただし、これらの方法に限定されるものではない。
【0113】
一例として、ブロモデオキシウリジン(「BRDU」)取込みは、増殖細胞を同定するアッセイとして使用することが可能である。BRDUアッセイでは、新たに合成されたDNAへのBRDUの取込みにより、DNA合成を行う細胞集団を同定する。この際、抗BRDU抗体を用いて、新たに合成されたDNAを検出することが可能である(Hoshino et al., 1986, Int. J. Cancer 38, 369; Campana et al., 1988, J. Immunol. Meth. 107, 79を参照されたい)。
【0114】
(3H)-チミジン取込みを用いて細胞増殖を調べることもできる(たとえば、Chen, J., 1996, Oncogene 13:1395-403; Jeoung, J., 1995, J. Biol. Chem. 270:18367-73を参照されたい)。このアッセイを用いると、S期DNA合成の定量的特性づけが可能になる。このアッセイでは、DNAを合成する細胞は、新たに合成されるDNAに(3H)-チミジンを取り込む。この際、当技術分野の標準的方法により、たとえば、シンチレーション計数器(たとえば、Beckman LS 3800 Liquid Scintillation Counter)で放射性同位体を計数することにより、取込みを測定することが可能である。
【0115】
増殖細胞核抗原(PCNA)の検出を利用して細胞増殖を測定することも可能である。PCNAは、増殖細胞中で、とくに細胞周期の初期G1期およびS期に、発現が増大する36キロダルトンのタンパク質であり、したがって、増殖細胞に対するマーカーとして機能しうる。陽性細胞は、抗PCNA抗体を用いて免疫染色により同定される(Li et al., 1996, Curr. Biol. 6:189-199; Vassilev et al., 1995, J. Cell Sci. 108:1205-15を参照されたい)。
【0116】
細胞増殖は、細胞集団のサンプルを経時的に計数することにより、測定可能である(たとえば、毎日、細胞を計数する)。血球計および光学顕微鏡法を用いて細胞を計数することが可能である(たとえば、HyLite hemacytometer, Hausser Scientific)。細胞数を時間に対してプロットすることにより、対象の集団の増殖曲線を得ることが可能である。好ましい実施形態では、生細胞が染料を排除するように、この方法で計数される細胞を最初に染料トリパンブルー(Sigma)と混合し、そして集団中の生存可能なメンバーを計数する。
【0117】
細胞のDNA含有量および/または分裂指数は、たとえば、細胞のDNA倍数値を基準にして測定可能である。たとえば、細胞周期のG1期にある細胞は、一般的には、2NのDNA倍数値を有している。DNAは複製されたが有糸分裂が進行しなかった細胞(たとえば、S期の細胞)は、2Nを超える4NまでのDNA含有量の倍数値を呈するであろう。倍数値および細胞周期動態は、さらに、ヨウ化プロピジウムアッセイを用いて測定することが可能である(たとえば、Turner, T., et al., 1998, Prostate 34:175-81を参照されたい)。このほか、コンピューター化ミクロデンシトメトリー染色系を用いてDNAフォイルゲン染色(化学量論的にDNAに結合する)により定量化することによって、DNA倍数性を調べることも可能である(たとえば、 Bacus, S., 1989, Am. J. Pathol.135:783-92を参照されたい)。他の実施形態では、染色体スプレッドを作製することにより、DNA含有量を分析することが可能である(Zabalou, S., 1994, Hereditas.120:127-40; Pardue, 1994, Meth. Cell Biol. 44:333-351)。
【0118】
細胞周期タンパク質(たとえば、CycA、CycB、CycE、CycD、cdc2、Cdk4/6、Rb、p21、またはp27)の発現は、細胞または細胞集団の増殖状態に関する重要な情報を提供する。たとえば、p21 cip1の誘導により、抗増殖シグナリング経路の同定を行いうる。細胞内のp21発現のレベルが増大すると、細胞周期のG1への進行が遅れる(Harper et al., 1993, Cell 75:805-816; Li et al., 1996, Curr. Biol. 6:189-199)。p21誘導は、市販の特異的抗p21抗体(たとえば、Santa Cruz, inc.製の抗体)を用いて免疫染色により、同定することが可能である。同様に、市販の抗体を用いてウェスタンブロット分析により、細胞周期タンパク質を調べることも可能である。他の実施形態では、細胞周期タンパク質を検出する前に細胞集団を同期化させる。細胞周期タンパク質もまた、対象のタンパク質に対する抗体を用いてFACS(蛍光標示式細胞分取器)分析により検出することが可能である。
【0119】
細胞周期の長さまたは細胞周期の速度の変化の検出もまた、本発明の化合物による細胞増殖の阻害を測定するために使用することが可能である。一実施形態では、細胞集団の倍加時間により細胞周期の長さを決定する(たとえば、1種以上の本発明の化合物と接触させた細胞または接触させなかった細胞を用いて行う)。他の実施形態では、FACS分析を用いて、細胞周期進行の期を分析するかまたはG1、S、およびG2/M画分を精製する(たとえば、Delia, D. et al., 1997, Oncogene 14:2137-47を参照されたい)。
【0120】
本明細書に記載の方法によりまたは当技術分野で公知の任意の方法により、細胞周期チェックポイントの失効および/または細胞周期チェックポイントの誘導を調べることが可能である。細胞周期チェックポイントとは、特定の細胞事象が確実に特定の順序で起こるようにする機序であるが、このことに限定されるものではない。チェックポイント遺伝子は、初期事象をあらかじめ終了させることなく後期事象を引き起こせるようにする突然変異により特定される(Weinert, T., and Hartwell, L., 1993, Genetics, 134:63-80)。細胞周期チェックポイント遺伝子の誘発または阻害は、たとえば、ウェスタンブロット分析により、または免疫染色などにより、アッセイすることが可能である。さらに、細胞周期チェックポイントの失効は、特異的事象を先行して発生させることなくそのチェックポイントを通過する細胞の進行により、評価することが可能である(たとえば、ゲノムDNAの完全な複製を伴わない有糸分裂への進行)。
【0121】
特定の細胞周期タンパク質の発現の影響に加えて、細胞周期に関与するタンパク質の活性および翻訳後修飾が、細胞の調節および増殖状態に不可欠な役割を果たす可能性がある。
【0122】
本発明は、当技術分野で公知の任意の方法により翻訳後修飾(たとえば、リン酸化)を検出することを含むアッセイを提供する。たとえば、リン酸化されたチロシン残基を検出する抗体が市販されており、それをウェスタンブロット分析で使用することにより、そのような修飾を有するタンパク質を検出することが可能である。他の例では、薄層クロマトグラフィーまたは逆相h.p.l.c.を用いて、ミリスチル化のような修飾を検出することが可能である(たとえば、Glover, C., 1988, Biochem. J. 250:485-91; Paige, L., 1988, Biochem J.;250:485-91を参照されたい)。
【0123】
シグナリングおよび細胞周期のタンパク質および/またはタンパク質複合体の活性は、多くの場合、キナーゼ活性により媒介される。本発明は、ヒストンH1アッセイのようなアッセイによるキナーゼ活性の分析を提供する(たとえば、Delia, D. et al., 1997, Oncogene 14:2137-47を参照されたい)。
【0124】
本発明の化合物がin vitroで培養細胞の細胞増殖を改変することを当技術分野で周知の方法を用いて実証することもできる。細胞培養モデルの具体例としては、肺癌では、原発性ラット肺腫瘍細胞(Swafford et al., 1997, Mol. Cell. Biol., 17:1366-1374)および大細胞未分化癌細胞系(Mabry et al., 1991, Cancer Cells, 3:53-58);結腸癌では、結腸直腸細胞系(Park and Gazdar, 1996, J. Cell Biochem. Suppl. 24:131-141);乳癌では、多数の樹立細胞系(Hambly et al., 1997, Breast Cancer Res. Treat. 43:247-258; Gierthy et al., 1997, Chemosphere 34:1495-1505; Prasad and Church, 1997, Biochem. Biophys. Res. Commun. 232:14-19);前立腺癌では、いくつかの良好に特性づけられた細胞モデル(Webber et al., 1996, Prostate, Part 1, 29:386-394; Part 2, 30:58-64; and Part 3, 30:136-142; Boulikas, 1997, Anticancer Res. 17:1471-1505);泌尿生殖器癌では、連続ヒト膀胱癌細胞系(Ribeiro et al., 1997, Int. J. Radiat. Biol. 72:11-20);
移行上皮癌の器官培養物(Booth et al., 1997, Lab Invest. 76:843-857)およびラット進行モデル(Vet et al., 1997, Biochim. Biophys Acta 1360:39-44);ならびに白血病およびリンパ腫の樹立細胞株(Drexler, 1994, Leuk. Res. 18:919-927, Tohyama, 1997, Int. J. Hematol. 65:309-317)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0125】
本発明の化合物がin vitroで細胞形質転換(すなわち、悪性表現型への進行)を阻害することを実証することもできる。この実施形態では、形質転換された細胞表現型を有する細胞を1種以上の本発明の化合物と接触させ、形質転換された表現型と関連した特性の変化を調べる(in vivoの腫瘍形成能に関連するin vitroの特性群)。こうした特性としては、たとえば、軟寒天内コロニー形成、より丸形の細胞形態、より弱い培養基板付着、接触阻害の喪失、足場依存性の喪失、プラスミノーゲンアクチベーターようなプロテアーゼの放出、糖輸送の増大、血清要求性の低下、または胎児性抗原の発現などが挙げられるが、これらに限定されるものではない(Luria et al., 1978, General Virology, 3d Ed., John Wiley & Sons, New York, pp. 436-446を参照されたい)。
【0126】
浸潤性の喪失または接着性の低下を用いて、本発明の化合物の抗癌作用を実証することも可能である。たとえば、転移癌の形成の重要な側面は、前癌細胞または癌細胞が疾患の原発部位から分離して第2の部位で新規な増殖コロニーを樹立する能力である。細胞が末梢部位に浸潤する能力は、癌状態の可能性を反映している。浸潤性の損失は、たとえば、E-カドヘリン媒介細胞間接着の誘導をはじめとする当技術分野で公知のさまざまな方法により測定することが可能である。そのようなE-カドヘリン媒介接着が起こると、表現型復帰および浸潤性の喪失を生じる可能性がある(Hordijk et al., 1997, Science 278:1464-66)。
【0127】
さらに、浸潤性の喪失は、細胞移動の阻害により調べることも可能である。さまざまな2次元および3次元細胞マトリックスが市販されている(Calbiochem-Novabiochem Corp. San Diego, CA)。マトリックスを貫通するまたはマトリックス中への細胞移動は、顕微鏡観察法、経時的写真撮影法、またはビデオカメラ撮影法により、あるいは細胞移動の測定を可能にする当技術分野の任意の方法により、調べることが可能である。関連する実施形態では、浸潤性の喪失は肝細胞増殖因子(HGF)に対する応答により調べられる。HGF誘導細胞散乱は、Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞のような細胞の浸潤性と関連づけられる。このアッセイでは、HGFに応答して細胞散乱活性を喪失した細胞集団を同定する(Hordijk et al., 1997, Science 278:1464-66)。
【0128】
このほか、浸潤性の喪失は、化学走性チャンバーを貫通する細胞移動により測定することも可能である(Neuroprobe/Precision Biochemicals Inc. Vancouver, BC)。そのようなアッセイでは、化学誘引剤をチャンバーの一方の側(たとえば、底部チャンバー)でインキュベートし、反対側(たとえば、上部チャンバー)を分離するフィルター上に細胞をプレーティングする。細胞が上部チャンバーから底部チャンバーに移るために、細胞は、能動的にフィルター中の小細孔を貫通して移動しなければならない。その後、移動した細胞の数をチェッカーボード分析して、浸潤性との関連づけを行いうる(たとえば、Ohnishi, T., 1993, Biochem. Biophys. Res. Commun.193:518-25を参照されたい)。
【0129】
本発明の化合物がin vivoで腫瘍形成を阻害することを実証することもできる。腫瘍発生および転移進展を含めて莫大な数の過増殖障害の動物モデルが当技術分野で公知である(Table 317-1, Chapter 317, "Principals of Neoplasia," in Harrison's Principals of Internal Medicine, 13th Edition, Isselbacher et al. , eds., McGraw-Hill, New York, p. 1814, and Lovejoy et al., 1997, J. Pathol. 181:130-135を参照されたい)。特定例としては、肺癌では、ラットへの腫瘍結節の移植(Wang et al., 1997, Ann. Thorac. Surg. 64:216-219)またはNK細胞を欠失したSCIDマウスにおける肺癌転移の定着(Yono and Sone, 1997, Gan To Kagaku Ryoho 24:489-494);結腸癌では、ヌードマウスへのヒト結腸癌細胞の結腸癌移植(Gutman and Fidler, 1995, World J. Surg. 19:226-234)、ヒト潰瘍性大腸炎のコットントップタマリンモデル(Warren, 1996, Aliment. Pharmacol. Ther. 10 Supp 12:45-47)、および腺腫様ポリポーシス腫瘍サプレッサーの突然変異を有するマウスモデル(Polakis, 1997, Biochim. Biophys. Acta 1332:F127-F147);乳癌では、乳癌のトランスジェニックモデル(Dankort and Muller, 1996, Cancer Treat. Res. 83:71-88; Amundadittir et al., 1996, Breast Cancer Res. Treat. 39:119-135)およびラットにおける腫瘍の化学誘導(Russo and Russo, 1996, Breast Cancer Res. Treat. 39:7-20);前立腺癌では、化学誘導およびトランスジェニック齧歯動物モデルならびにヒト異種移植モデル(Royai et al., 1996, Semin. Oncol. 23:35-40);泌尿生殖器癌では、ラットおよびマウスにおける誘導膀胱新生物(Oyasu, 1995, Food Chem. Toxicol 33:747-755)ならびにヌードラットへのヒト移行上皮癌の異種移植(Jarrett et al., 1995, J. Endourol. 9:1-7);さらには造血癌では、動物に移植された同種異系骨髄(Appelbaum, 1997, Leukemia 11 (Suppl. 4):S15-S17)が挙げられる。このほかに、多くのタイプの癌に適用可能な一般的動物モデルが報告されている。たとえば、p53-欠損マウスモデル(Donehower, 1996, Semin. Cancer Biol. 7:269-278)、Minマウス(Shoemaker et al., 1997, Biochem. Biophys. Acta, 1332: F25-F48)、およびラットにおける腫瘍に対する免疫応答(Frey, 1997, Methods, 12:173-188)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0130】
たとえば、試験動物に、一実施形態では、所定のタイプの腫瘍を生じるようにあらかじめ処置された試験動物に、本発明の化合物を投与し、続いて、本発明の化合物を投与しなかった動物と比較して試験動物の腫瘍形成の発生率が低下したかを調べることができる。このほか、腫瘍を有する試験動物(たとえば、悪性細胞、新生物細胞、もしくは形質転換細胞を導入することにより、または発癌物質の投与により、腫瘍が誘導された動物)に本発明の化合物を投与し、続いて本発明の化合物を投与しなかった動物と比較して試験動物の腫瘍退縮を調べることができる。
【0131】
4.7. p27のユビキチン化のin vitro阻害
当技術分野で公知であるかまたは本明細書に記載されているアッセイを用いて、本発明の化合物がp27のユビキチン化をin vitroで阻害することを実証することが可能である。例示的なin vitroアッセイがAlessandriniら((1997) Leukemia 11:342-345)により報告されている。このアッセイでは、精製された組換えヘキサヒスチジンタグづけp27(p27-his6)をユビキチン化の基質として使用し、ウサギ網状赤血球溶解物(RRL)をユビキチン化酵素およびプロテアソーム複合体の供給源として使用する。阻害剤を用いたときと用いないときのユビキチン化の度合を比較することにより、阻害剤の効力を決定することができる。
【0132】
さらに例示的なin vitroユビキチン化アッセイについては、ChiaurらのPCT国際公開WO 00/12679号(その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。対数増殖期のKeLa-S3細胞を6×105細胞/mlの濃度で捕集した。70mMロバスタチンで48時間処理することにより、細胞をG1期で停止させた。次の物質:40mM Tris pH7.6、5mM MgCl2、1mM DTT、10%グリセロール、1mMユビキチンアルデヒド、1mg/mlメチルユビキチン、10mMクレアチンリン酸、0.1mg/mlクレアチンホスホキナーゼ、0.5mM ATP、1mMオカダ酸、20〜30 mg HeLa細胞抽出物を含有する10mlのユビキチン化混合物中で、1mlのin vitro翻訳された[35S]p27を、さまざまな時間(0〜75分間)にわたり30℃でインキュベートした。ユビキチンアルデヒドをユビキチン化反応系に添加することにより、p27からユビキチンの鎖を除去するイソペプチダーゼを阻害することができる。メチルユビキチンの添加は、細胞抽出物中に存在するユビキチンおよび末端p27ユビキチン鎖と競合する。そのような鎖は、高分子スミアとしてではなく個別のバンドとして現れる。これらのより短いポリユビキチン鎖は、プロテアソームに対して低い親和性を有しているので、より安定である。b-メルカプトエタノールを含有するLaemmliサンプラー緩衝剤で反応を停止させ、タンパク質ゲル上において変性条件下で生成物を分析することができる。ポリユビキチン化されたp27形態は、オートラジオグラフィーにより同定される。
【0133】
4.8 化学療法または放射線療法と組み合わせた癌または新生物疾患の治療または予防
有効量の本発明の化合物を投与することにより、癌または新生物疾患、たとえば、限定されるものではないが、新生物、腫瘍、転移、または無制御な細胞増殖により特性づけられる任意の疾患もしくは障害を治療または予防することができる。一実施形態では、有効量の1種以上の本発明の化合物または製薬上許容されるその塩を含む組成物を投与する。
【0134】
特定の実施形態では、本発明は、癌または新生物疾患を治療または予防する方法を包含する。この方法は、その必要のある患者に有効量の本発明の化合物および他の治療剤を投与することを含む。一実施形態では、治療剤は、化学療法剤であり、たとえば、限定されるものではないが、メトトレキセート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア類、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルバジン(procarbizine)、エトポシド類、カンプトテシン(campathecin)類、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、およびドセタキセルである。一実施形態では、他の治療剤がその活性を発揮するときに、同時に、本発明の化合物がその活性を発揮する。他の治療剤を表1に列挙する。
【0135】
〔表1〕
化学療法剤および他の抗癌剤
放射線: γ放射線
アルキル化剤
ナイトロジェンマスタード類: シクロホスファミド
イホスファミド
トロホスファミド
クロラムブシル
ニトロソウレア類: カルムスチン(BCNU)
ロムスチン(CCNU)
アルキルスルホネート類 ブスルファン
トレオスルファン
トリアゼン類: ダカルバジン
白金含有化合物: シスプラチン
カルボプラチン
植物アルカロイド類
ビンカアルカロイド類: ビンクリスチン
ビンブラスチン
ビンデシン
ビノレルビン
タキソイド類: パクリタキセル
ドセタキソール
DNAトポイソメラーゼ阻害剤
エピポドフィロトキシン(epipodophyllin)類:
エトポシド
テニポシド
トポテカン
9-アミノカンプトテシン
イリノテカン(Campto(登録商標))
クリスナトール
マイトマイシン(mytomycin)類
マイトマイシン(mytomycin)C マイトマイシン(mytomycin)C
抗代謝剤
抗葉酸剤
DHFR阻害剤: メトトレキセート
トリメトレキセート
IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤: ミコフェノール酸
チアゾフリン
リバビリン
EICAR
リボヌクレオチド(ribonuclotide)レダクターゼ阻害剤:
ヒドロキシウレア
デフェロキサミン
ピリミジン類似体
ウラシル類似体 5-フルオロウラシル
フロクスウリジン
ドキシフルリジン
ラチトレキセド
シトシン類似体 シタラビン(ara C)
シトシンアラビノシド
フルダラビン
プリン類似体: メルカプトプリン
チオグアニン
ホルモン療法剤
レセプターアンタゴニスト
抗エストロゲン剤 タモキシフェン
ラロキシフェン
メゲストロール
LHRHアゴニスト: ゴセレリン(goscrclin)
酢酸ロイプロリド
抗アンドロゲン剤: フルタミド
ビカルタミド
レチノイド/デルトイド
ビタミンD3類似体: EB 1089
CB 1093
KH 1060
光力学的治療剤: ベルトポルフィン(BPD-MA)
フタロシアニン
光増感剤Pc4
デメトキシ-ヒポクレリンA
(2BA-2-DMHA)
サイトカイン類: インターフェロン-α
インターフェロン-γ
腫瘍壊死因子
その他
イソプレニル化阻害剤: ロバスタチン
ドーパミン作動性神経毒: 1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン
細胞周期阻害剤: スタウロスポリン
アクチノマイシン類: アクチノマイシンD
ダクチノマイシン
ブレオマイシン類: ブレオマイシンA2
ブレオマイシンB2
ペプロマイシン
アントラサイクリン類: ダウノルビシン
ドキソルビシン(アドリアマイシン)
イダルビシン
エピルビシン
ピラルビシン
ゾルビシン
ミトキサントロン
MDR阻害剤: ベラパミル
Ca2+ATPアーゼ阻害剤: タプシガルギン
TNF-α阻害剤/
血管新生阻害剤 サリドマイド
3-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-3-(1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-プロピオンアミド
(SelCIDTM)
ImiDsTM
RevimidTM
ActimidTM
【0136】
他の実施形態では、癌を治療または予防する本発明の方法は、放射線療法を施すことをさらに含む。癌は、不応性であっても非不応性であってもよい。本発明の化合物は、癌の治療として手術を受けた患者に投与することができる。
【0137】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、化学療法または放射線療法と同時に癌の治療として手術を受けた患者に投与することができる。他の特定の実施形態では、本発明の化合物の投与前または投与後に、好ましくは、少なくとも1時間後、5時間後、12時間後、1日後、1週間後、1ヶ月間後、より好ましくは数ヶ月後(たとえば、最長で3か月後)に、化学療法剤または放射線療法を施す。
【0138】
本発明の化合物の投与と同時にまたは投与前にまたは投与後に施される化学療法剤または放射線療法は、当技術分野で公知の任意の方法により実施することができる。化学療法剤は、好ましくは、一連の処置で投与されるが、その際、先に列挙した化学療法剤の任意の1種または組み合わせを投与することができる。放射線療法に関しては、治療対象の癌のタイプに応じて任意の放射線療法プロトコールを使用することができる。たとえば、限定されるものではないが、X線を照射することがでる。とくに、深部の腫瘍に対しては高エネルギーメガボルト(1MeV超のエネルギーの放射線)が使用可能であり、皮膚癌に対しては電子ビームおよび常用電圧X線照射が使用可能である。組織を放射線に曝露するために、ラジウム、コバルト、および他の元素の放射性同位体のようなγ線放出放射性同位体を投与することも可能である。
【0139】
このほか、化学療法または放射線療法が過度に有害であることが実証されているかまたはそれを実証しうる場合、たとえば、治療される患者にとって許容しえないかまたは耐えられない副作用を生じる場合、本発明は、化学療法または放射線療法の代替法として本発明の化合物により癌または新生物疾患を治療する方法を提供する。場合により、どのような治療であれば許容しうるかまたは耐えられるかに応じて、治療される患者に、手術、放射線療法、または化学療法のような他の癌治療を施してもよい。
【0140】
4.9. 治療可能または予防可能な癌および新生物疾患
本発明の化合物を投与することにより治療できるかまたは予防できる癌または新生物疾患および関連障害としては、頭部、頸部、眼、皮膚、口腔、咽喉、食道、胸部、骨、肺、結腸、S状結腸、直腸、胃、前立腺、乳房、卵巣、精巣、腎臓、肝臓、膵臓、脳、腸、心臓、または副腎の癌、さらには以下の表2に列挙されている癌が挙げられるが、これらに限定されるものではない(そのような障害の総説に関しては、Fishman et al., 1985, Medicine, 2d Ed., J. B. Lippincott Co., Philadelphiaを参照されたい)。
【0141】
〔表2〕
癌および新生物障害
白血病
急性白血病
急性リンパ性白血病
急性骨髄性白血病
骨髄芽球性
前骨髄球性
骨髄単球性
単球性
赤白血病
慢性白血病
慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病
慢性リンパ性白血病
真性赤血球増加症
胃癌
リンパ腫(悪性および非悪性)
ホジキン病
非ホジキン病
多発性骨髄腫
ヴァルデンストレームマクログロブリン血症
重鎖病
充実性腫瘍
肉腫および癌腫
繊維肉腫
粘液肉腫
脂肪肉腫
軟骨肉腫
骨原性肉腫
脊索腫
血管肉腫
内皮肉腫
リンパ管肉腫
リンパ管内皮肉腫
滑膜腫
中皮腫
ユーイング腫瘍
平滑筋肉腫
横紋筋肉腫
結腸癌
膵臓癌
乳癌
卵巣癌
前立腺癌
扁平上皮癌
口腔扁平上皮癌
肝細胞癌
基底細胞癌
腺癌
汗腺癌
脂腺癌
乳頭状癌
乳頭状腺癌
嚢胞腺癌
髄様癌
気管支原性癌
腎細胞癌
肝癌
胆管癌
絨毛癌
精上皮腫
胎生期癌
ウィルムス腫瘍
子宮頸癌
子宮頸腺癌
子宮癌
精巣腫瘍
肺癌
小細胞肺癌
非小細胞肺腺癌
膀胱癌
上皮癌
神経膠腫
悪性神経膠腫
多形性膠芽腫
星状細胞神経膠症
髄芽腫
頭蓋咽頭腫
上衣腫
松果体腫
血管芽細胞腫
聴神経腫
乏突起膠腫
髄膜腫
黒色腫
神経芽細胞腫
網膜芽腫
【0142】
特定の実施形態では、卵巣、乳房、結腸、肺、皮膚、膵臓、前立腺、膀胱、または子宮の癌、悪性疾患、もしくは異常増殖性変化(たとえば、化生および異形成)、または過増殖性障害が、治療可能または予防可能である。他の特定の実施形態では、有効量の本発明の化合物を投与することにより治療可能または予防可能な癌は、肉腫、黒色腫、または白血病である。他の特定の実施形態では、有効量の本発明の化合物を投与することにより治療可能または予防可能な癌は、多発性骨髄腫、白血病、骨髄異形成症候群、または骨髄増殖性障害である。他の特定の実施形態では、有効量の本発明の化合物を投与することにより治療可能または予防可能な癌は、神経膠腫である。
【0143】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、前立腺癌(より好ましくは、ホルモン非感受性前立腺癌)、神経芽細胞腫、リンパ腫(好ましくは、濾胞性もしくはびまん性大B細胞リンパ腫)、乳癌(好ましくは、エストロゲン受容体陽性乳癌)、結腸直腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、リンパ腫(好ましくは、非ホジキン病)、肺癌(好ましくは、小細胞肺癌)、または精巣癌(好ましくは、生殖細胞癌)などの癌を治療または予防するのに有用である。
【0144】
他の実施形態では、本発明の化合物は、前立腺癌(より好ましくは、ホルモン非感受性前立腺癌)、神経芽細胞腫、リンパ腫(好ましくは、濾胞性もしくはびまん性大B細胞リンパ腫)、乳癌(好ましくは、エストロゲン受容体陽性乳癌)、結腸直腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、リンパ腫(好ましくは、非ホジキン病)、肺癌(好ましくは、小細胞肺癌)、または精巣癌(好ましくは、生殖細胞癌)のような癌または新生物に由来する細胞の増殖を阻害するのに有用である。
【0145】
本発明の特定の実施形態では、本発明の化合物、表2または本明細書に記載の癌または新生物に由来する細胞の増殖を阻害するのに有用である。
【0146】
本発明の化合物の例示的実施例である実施例1の化合物 (4-{[3-(2,2-ジメチル-テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチルアミノ]-メチル}-フェニル)-ジメチル-アミン)は、次の細胞系で細胞死(プログラム死)を誘導することが判明した:Hela(子宮頸腺癌)、MDA-MB-435(乳癌)、MDA-MB-231(乳癌)、MCF-7(乳癌)、HL-60(白血病)、A172(悪性神経膠腫)、NCIH1703(非小細胞肺腺癌)、A357(肺癌)、DU145(前立腺癌)、MM1s(多発性骨髄腫)、DF15(多発性骨髄腫)、H929(多発性骨髄腫)、U266(多発性骨髄腫)、ANB6(多発性骨髄腫)。
【0147】
4.10. 治療可能または予防可能な感染症
本発明の化合物を投与することにより治療できるかまたは予防できる感染症および関連障害としては、表3に列挙されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0148】
〔表3〕
感染症
細菌性疾患:
ジフテリア(Diptheria)
百日咳
潜在性菌血症
尿路感染症
胃腸炎
蜂巣炎
喉頭蓋炎
気管炎
アデノイド肥大
咽頭後膿瘍
膿痂疹
膿瘡
肺炎
心内膜炎
化膿性関節炎
肺炎球菌
腹膜炎
細菌
髄膜炎
急性化膿性髄膜炎
尿道炎
子宮頸管炎
直腸炎
咽頭炎
耳管炎
副睾丸淡
リステリア症
炭疽菌
ノカルジア症
サルモネラ症
腸チフス
赤痢
結膜炎(Conjuntivitis)
静脈洞炎
ブルセラ症
野兎病(Tullaremia)
コレラ
腺ペスト
破傷風
壊死性腸炎
アクチノミセス症
混合嫌気性感染
梅毒
回帰熱
レプトスピラ症
ライム病
鼠咬症
結核
リンパ節炎
癩病
全身性真菌性疾患:
ヒストプラスマ症(Histoplamosis)
コクシジオイデス症(Coccicidiodomycosis)
ブラストミセス症
スポロトリクム症
クリプトコッカス症(Cryptococcsis)
全身性カンジダ症
アスペルギルス症
ムコール症
菌腫
クロモミセス症
リケッチア性疾患:
発疹チフス
ロッキー山紅斑熱
エールリヒア症
東半球ダニ媒介性リケッチア症
リケッチア痘
Q熱
バルトネラ症
クラミジア性疾患
クラミジア症
クラミジア肺炎
トラコーマ
封入体性結膜炎
寄生虫性疾患:
マラリア
バベシア病
アフリカ睡眠病
シャーガス病
リーシュマニア症
ダムダム熱
トキソプラズマ症
髄膜脳炎
角膜炎
アメーバ症
ジアルジア症
クリプトスポリジウム症(Cryptosporidiasis)
イソスポーラ症
サイクロスポーラ症
微胞子虫病
回虫症
鞭虫感染症
鉤虫感染症
線虫感染症
眼幼虫移行症
旋毛虫病
メジナ虫症
リンパ性糸状虫症
ロア糸状虫症
河川盲目症
イヌ糸状虫感染症
住血吸虫症
水泳性痒疹
東洋肺吸虫症
肝吸虫症
肝蛭症
肥大吸虫症
オピストルキス感染症
条虫症
包虫症
多包虫症
ウイルス性疾患:
麻疹
亜急性硬化性全脳炎
風邪
耳下腺炎
風疹
バラ疹
第五病
水痘
呼吸合包体ウイルス感染症
クルップ
細気管支炎
伝染性単核球症
小児麻痺
ヘルパンギーナ
手足口病
ボルンホルム病
無菌性髄膜炎
心筋炎
心膜炎
胃腸炎
後天性免疫不全症候群(AIDS)
ライ症候群
原因不明熱
川崎病
蟯虫寄生
インフルエンザ
気管支炎
ウイルス性「歩行性」肺炎
急性熱性呼吸器疾患
急性咽頭結膜熱
流行性角結膜炎
1型単純ヘルペスウイルス(HSV-1)症
2型単純ヘルペスウイルス(HSV-2)症
帯状疱疹
サイトメガロ封入体疾患
狂犬病
進行性多病巣性白質脳症
プリオン病
クールー病
致死性家族性不眠症
クロイツフェルト-ヤコブ病
ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病
熱帯性痙性不全対麻痺
西部ウマ脳炎
カリフォルニア脳炎
セントルイス脳炎
黄熱病
デング熱
リンパ球性脈絡髄膜炎
ラッサ熱
出血熱
ハンタウイルス(Hantvirus)肺症候群
マールブルグウイルス感染症
エボラウイルス感染症
天然痘
性感染性疾患:
淋病
梅毒
性器カンジダ症
軟性下疳(Chancoid)
亀頭包皮炎
陰部疱疹
性器疣贅
性感染性腸管感染症
【0149】
本発明の化合物と組み合わせて使用しうる感染症の治療に有用な治療剤としては、ペニシリン、セファロスポリン、バンコマイシン、アミノグリコシド、キノロン、ポリミキシン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、スルホンアミド、イドクスウリジン、ビダラビン、トリフルオロチミジン、アシクロビル、ペンシクロビル、およびバラシクロビルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
4.11. 治療可能または予防可能な炎症疾患
本発明の化合物を投与することにより治療できるかまたは予防できる炎症疾患および関連障害としては、慢性関節リウマチ、結合組織疾患、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、および回腸炎が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0151】
本発明の化合物と組み合わせて使用しうる炎症疾患の治療に有用な治療剤としては、抗コリン作動剤、ジフェノキシレート、ロペラミド、脱臭アヘンチンキ、コデイン、および親水性粘漿剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
4.12. 治療可能または予防可能な心臓血管疾患
本発明の化合物を投与することにより治療できるかまたは予防できる心臓血管疾患および関連障害としては、高コレステロール血症、動脈性高血圧、動脈硬化症、冠状動脈疾患、不整脈、弁膜性心疾患、心内膜炎、および心膜疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0153】
本発明の化合物と組み合わせて使用しうる心臓血管疾患の治療に有用な治療剤としては、抗生物質、葉酸、および抗高血圧薬が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0154】
4.13. 治療可能または予防可能な免疫障害
本発明の化合物を投与することにより治療できるかまたは予防できる免疫障害としては、アレルギー、喘息、慢性肉芽腫症、自己免疫障害、ヴェゲナー肉芽腫症、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、1型糖尿病、慢性関節リウマチ、移植片対宿主疾患、リウマチ性心疾患、およびディジョージ奇形が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
本発明の化合物と組み合わせて使用しうる免疫障害の治療に有用な治療剤としては、ガンマインターフェロン、グルココルチコイド、およびシクロホスファミドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
4.14. 細胞、血液、組織、器官、または生物の保存剤として有用な本発明の化合物
細胞増殖の阻害剤として本発明の化合物を使用すれば、患者で使用するのに好適な条件で、血液、組織、または器官を保存するのに有用な作用剤として役立つ。とくに、本発明の化合物は、低温保存、たとえば、液体窒素凍結、、ドライアイス凍結、氷水凍結、またはコールドパック凍結される細胞、血液、組織、器官、または生物の寿命を伸ばすのに役立つ。
【実施例】
【0157】
5. 実施例
以下の実施例は、本発明の理解に役立てるべく記載されたものであり、当然のことながら、本明細書に記載および特許請求された本発明をなんら限定するものではない。当業者の理解の範囲内にある現在知られているかまたは後で開発されるすべての等価物による置換、さらには処方の変更または実験デザインの小変更のような本発明の変形例は、本明細書に組み入れられている本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0158】
以下の条件を用いて、合成実施例1〜24に関連したHPLC保持時間を取得した。
カラム: YMC Pack-Pro C18 250mm×4.6mm ID
トータルランタイム20分、指定のグラジエント条件0〜10分、アイソクラティック条件10〜20分
検出波長214nm、254nm、および290nm
グラジエント: 25〜75%アセトニトリル-水/0.1% TFA
25〜95%アセトニトリル-水/0.1% TFA
【0159】
【化9】

5.1 実施例1: (4-[3-(2',2'-ジメチルテトラヒドロピラン-4'-イル)-4-フェニルブチルアミノ]-メチル)-フェニル)-ジメチルアミン二塩酸塩
【0160】
【化10】

1(A). 2,2-ジメチル-テトラヒドロピラン-4-オン
メシチルオキシド(11.6mmol)および水性ホルムアルデヒド(11.6mmol)を合わせて165℃で2時間加熱した。反応混合物を冷却し、エチルアセテートとブラインとの間で分配させ、硫酸ナトリウムで脱水し、そして蒸発させて油を得た。粗反応生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にかけてエチルアセテート-ヘキサン(1:9)で溶出させ、油を得た。油をクロロホルム(250ml)に溶解させ、amberlyst 15樹脂(11g)を添加し、混合物を約16時間攪拌した。濾過および蒸発を行って粗生成物を取得し、これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にかけてジエチルエーテル-ヘキサン(1:9)で溶出させ、所望の生成物を得た。
【0161】
【化11】

1(B). (E)および(Z)メチル(2,2-ジメチル-テトラヒドロピラン-4-イリデン)アセテート
0℃のTHF(80ml)中の水素化ナトリウム(23.8mmol)に、トリメチルホスホノアセテート(22.86mmol)を添加した。反応混合物を15分間攪拌し、THF(20ml)中の実施例1(A)(20.6mmol)の溶液を添加した。周囲温度で20時間後、塩化アンモニウム水溶液を添加することにより反応を停止させた。エチルアセテートで抽出し、脱水し(硫酸ナトリウム)、そして蒸発させ、粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にかけてエチルアセテート-ヘキサン(1:5)で溶出させることにより精製し、所望の生成物を得た。
【0162】
【化12】

1(C). メチル(2',2'-ジメチルテトラヒドロピラン-4'イル)アセテート(acteate)
エチルアセテート(35ml)中の実施例1(B)(17.9mmol)に10%バナジウム担持カーボン(10mol%)を添加し、次に、水素化処理に付した。周囲温度で3時間後、触媒を濾別し、次に、反応混合物を真空中で蒸発させ、所望の物質を得た。
【0163】
【化13】

1(D). メチル2-(2',2'-ジメチルテトラヒドロピラン-4'-イル)-3-フェニルプロピオネート)
-78℃のTHF(10ml)中のジ-イソプロピルアミン(22.5mmol)に、ブチルリチウム(22.4mmol)を添加し、反応系を0℃に5分間加温し、その後、-78℃に再冷却させた。次に、THF(25ml)中の実施例1(C)(16.1mmol)の溶液を、あらかじめ形成しておいたLDA溶液に徐々に添加した。-78℃で1時間後、ベンジルブロミド(17.6mmol)を添加し、30分間にわたり反応混合物を周囲温度に加温した。塩化アンモニウム水溶液を添加し、エチルアセテートで抽出し、ブラインで洗浄し、脱水し(硫酸ナトリウム)、続いて蒸発させ、粗生成物を得た。フラッシュカラムカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にかけてエチルアセテート-ヘキサン(1:3)で溶出させることにより精製し、所望の生成物を得た。
【0164】
【化14】

1(E). 2-(2',2'-ジメチルテトラヒドロピラン-4'-イル)-3-フェニルプロパン-1-オール
-78℃のジクロロメタン(35ml)中の実施例1(D)(10.9mmol)の溶液に、1.0M DIBAL(27.0mmol)を添加した。ただちに反応系を周囲温度に加温し、その時点で1N HC1を用いて反応を停止させた。エチルアセテートで抽出し、ブラインで洗浄し、脱水し(硫酸ナトリウム)、続いて蒸発させ、粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にかけてジエチルエーテル-ヘキサン(1:1)で溶出させることにより精製し、所望の生成物を得た。
【0165】
【化15】

1(F). 2-(2',2'-ジメチルテトラヒドロピラン-4'-イル)-3-フェニルプロパン-1-オールメタンスルホネート
ジクロロメタン(40ml)中の実施例1(E)(10.4mmol)の溶液にジ-イソプロピルエチルアミン(15.5mmol)を添加し、続いてメタンスルホニルクロリド(11.6mmol)を添加した。2時間後、反応系を水とエチルアセテートとの間で分配させ、1N HCl、ブラインで洗浄し、脱水し(硫酸ナトリウム)、真空中で蒸発させ、粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にかけてジエチルエーテル-ヘキサン(1:1)で溶出させることにより精製し、所望の生成物を得た。
【0166】
【化16】

1(G). 3-(2',2'-ジメチルテトラヒドロピラン-4'-イル)-4-フェニルブチロニトリル)
DMF(20ml)中の実施例1(F)(9.90mmol)の溶液にナトリウムシアニド(10.6mmol)を添加した。反応系を100℃で6時間攪拌し、その後、水とエチルアセテートとの間で分配させ、ブラインで洗浄し、脱水し(硫酸ナトリウム)、そして蒸発させ、粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にかけてジエチルエーテル-ヘキサン(1:1)で溶出させることにより精製し、所望の生成物を得た。
【0167】
【化17】

1(H). 3-(2',2'-ジメチルテトラヒドロピラン-4'-イル)-4-フェニルブチルアミン
0℃のTHF(40ml)中の実施例1(G)(8.37mmol)の溶液に、水素化リチウムアルミニウム(11.85mmol)を添加した。反応系を16時間攪拌して周囲温度に加温し、その後、水(0.45ml)、3N NaOH(0.45ml)、水(1.3ml)を逐次添加することにより反応を停止させた。反応系をCelite(登録商標)に通して濾過し、蒸発させ、油を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にかけてエチルアセテート:メタノール:水酸化アンモニウム(90:10:1)で溶出させることにより精製し、所望の生成物を得た。
【0168】
【化18】

1(I). (4-{[3-(2',2'-ジメチルテトラヒドロピラン-4'-イル)-4-フェニルブチルアミノ]-メチル}-フェニル)-ジメチルアミン二塩酸塩
ジクロロメタン(5ml)中の実施例1(H)(1.09mmol)の溶液に、硫酸マグネシウムおよび4-ジメチルアミノ-ベンズアルデヒド(1.09mmol)を添加し、反応系を周囲温度で16時間攪拌した。反応混合物を濾過して硫酸マグネシウムを除去し、蒸発させ、粗製イミン生成物を得た。これをただちにメタノール(5ml)に溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム(4.20mmol)を添加した。水を添加することにより反応を停止させ、小体積になるまで蒸発させ、そしてエチルアセテートで抽出した。ブライン洗浄および脱水(硫酸ナトリウム)を行った後、蒸発させて粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にかけてエチルアセテート:メタノール:水酸化アンモニウム(90:10:1)で溶出させることにより精製し、所望の遊離塩基を得た。ジエチルエーテルに溶解させ、ジエチルエーテル中のHCl(ガス)の溶液を添加することにより、沈殿を生成させた。これを濾別し、アセトンで摩砕し、続いて煮沸プロパン-2-オールから固体を再結晶させることにより、白色の固体として所望の二塩酸塩を得た:m.p. 191-193℃; C 66.80 H 8.62 N 5.99 Cl 15.17 % (C26H38N20.2HClに対する計算値) 実測値 C66.94 H 8.45 N 5.92 Cl 14.95 %; HPLC: 9.00 mins (25-75%); MS (e/z): 395 (M+1).
当業者であれば、実施例1に対して概説された手順に従って、中間体1(A)〜1(H)、市販品の置換酢酸、置換酢酸エステル、または環状ケトンのいずれかを用いて、本発明の化合物の例示的実施例である以下の実施例を、以上に概説したプロトコールにより調製しうる。
【0169】
【化19】

5.2 実施例2: (4-{[3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチル]-(4-ピロリジン-1-イル-ベンジル)-アミン: HPLC: 12.45 mins (25-75%); MS (e/z): 421 (M+1).
【0170】
【化20】

5.3 実施例3: (4-クロロ-ベンジル)-[3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチル]-アミン: HPLC: 10.37 mins (25-95%); MS (e/z): 385 (M+1).
【0171】
【化21】

5.4 実施例4: [3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチル]-(4-メトキシ-ベンジル)アミン: HPLC: 9.49 mins (25-95%); MS (e/z): 382 (M+1).
【0172】
【化22】

5.5 実施例5: (3,4-ジクロロ-ベンジル-[3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチル]-アミン: HPLC: 11.21 mins (25-95%); MS (e/z): 420 (M+1).
【0173】
【化23】

5.6 実施例6: [3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチル]-(4-メチル-ベンジル)-アミン: HPLC: 11.79 mins (25-75%); MS (e/z): 366 (M+1).
【0174】
【化24】

5.7 実施例7: [3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチル]-(4-フルオロ-ベンジル)アミン: HPLC: 11.34 mins (25-75%) ; MS (e/z): 370 (M+1).
【0175】
【化25】

5.8 実施例8: (4-{[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチルアミノ]-メチル}-フェニル)-ジメチル-アミン: HPLC: 10.75 mins (25-75%) ; MS (e/z): 463 (M+1).
【0176】
【化26】

5.9 実施例9: 4-ジメチルアミノ-N-[3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチル]-ベンズアミド: HPLC: 14.27 mins (25-75%); MS (e/z): 409 (M+1).
【0177】
【化27】

5.10 実施例10: N-[3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチル]-4-フルオロ-ベンズアミド: HPLC: 16.80 mins (25-75%); MS (e/z): 384 (M+1).
【0178】
【化28】

5.11 実施例11: N-[3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチル]-4-メチル-ベンズアミド: HPLC: 17.42 mins (25-75%); MS (e/z): 380 (M+1).
【0179】
【化29】

5.12 実施例12: ジメチル-(4-{[4-フェニル-3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-ブチルアミノ]-メチル}-フェニル)-アミン: HPLC: 8.13 mins (25-75%); MS (e/z): 367 (M+1).
【0180】
【化30】

5.13 実施例13: [3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチル]-(4-イソプロピル-ベンジル-アミン: HPLC: 14.32 mins (25-75%); MS (e/z): 394 (M+1).
【0181】
【化31】

5.14 実施例14: (4-クロロ-ベンジル)-[4-フェニル-3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-ブチル]-アミン: HPLC: 11.14 mins (25-75%); MS (e/z): 358 (M+1).
【0182】
【化32】

5.15 実施例15: (4-メトキシ-ベンジル)-[4-フェニル-3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-ブチル]-アミン: HPLC: 10.54 mins (25-75%); MS (e/z): 354 (M+1).
【0183】
【化33】

5.16 実施例16: (4-メチル-ベンジル)-[4-フェニル-3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-ブチル]-アミン: HPLC: 11.03 mins (25-75%); MS (e/z): 338 (M+1).
【0184】
【化34】

5.17 実施例17: ベンジル-[4-フェニル-3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-ブチル]-アミン: HPLC: 10.45 mins (25-75%); MS (e/z): 324 (M+1).
【0185】
【化35】

5.18 実施例18: (4-フルオロ-ベンジル)-[4-フェニル-3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-ブチル]-アミン: HPLC: 10.84 mins (25-75%); MS (e/z): 342 (M+1).
【0186】
【化36】

5.19 実施例19: {4-[(3-シクロヘキシル-4-フェニル-ブチルアミノ)-メチル]-フェニル}-ジメチル-アミン: HPLC: 11.60 mins (25-75%); MS (e/z): 365 (M+1).
【0187】
【化37】

5.20 実施例20: (3-シクロヘキシル-4-フェニル-ブチル)-(4-メトキシ-ブチル)-アミン: HPLC: 13.63 mins (25-75%); MS (e/z): 352 (M+1).
【0188】
【化38】

5.21 実施例21: (3-シクロヘキシル-4-フェニル-ブチル)-(4-フルオロ-ベンジル)-アミン: HPLC: 13.65 mins (25-75%); MS (e/z): 340 (M+1).
【0189】
【化39】

5.22 実施例22: (4-{[3-シクロヘキシル-4-(3,4-ジクロロフェニル)-ブチルアミノ]-メチル}フェニル)-ジメチル-アミン: HPLC: 12.94 mins (25-75%); MS (e/z): 435 (M+1).
【0190】
【化40】

5.23 実施例23: [3-シクロヘキシル-4-(3,4-ジクロロフェニル)-ブチル]-(4-フルオロベンジル)-アミン: HPLC: 14.73 mins (25-75%); MS (e/z): 408 (M+1).
【0191】
【化41】

5.24 実施例24: ジメチル-(4-{[3-フェニル-3-(2,2-ジメチルテトラヒドロピラン-4-イル)-プロピルアミノ]-メチル}フェニル)-アミン: HPLC: 7.90 mins (25-75%); MS (e/z): 353 (M+1).
【0192】
5.25 実施例25
MDA-435細胞において実施例1の化合物がG1期停止を誘導することを実証するin vitroアッセイ方法
MDA-435ヒト乳癌細胞において本発明の化合物が細胞周期停止を誘導することを実証するために、in vitro細胞周期アッセイを使用した。24時間にわたり血清欠乏状態にすることにより腫瘍細胞を同期化させ、次に、実施例1の化合物((4-{[3-(2,2-ジメチル-テトラヒドロ-ピラン-4-イル)-4-フェニル-ブチルアミノ]-メチル}-フェニル)-ジメチル-アミン)(ChemBridge Corporationから取得; HPLC:20〜100%グラジエント:アセトニトリル/水/1%トリフルオロ酢酸で単一ピーク)または媒体(ジメチルスルホキシド)のいずれかと共に10%血清を細胞培養物に添加することにより同期化を解除した。細胞を採取し、50mg/mlのヨウ化プロピジウムを含む0.04%ジギトニン使用液で染色した。DNA含有量をFlow Cytometry(Coulter)により分析した。Coulter EPICS(登録商標)XLTM Cytometer用のExpo 32-ADC Software(バージョン1.1B(2001))を用いて、各期の細胞の数を決定した。
【0193】
結果
実施例1の化合物で処理されたMDA-435ヒト乳癌細胞は、媒体で処理されたものよりも、G0/G1期からS期への移行が効率的に阻害された(媒体で処理された細胞では期移行が28%阻害されたのに対して、実施例1の化合物で処理された細胞では期移行が38%阻害された)。このように、本発明の化合物の例示的実施例である実施例1の化合物は、細胞周期を有意に停止させるので、ヒト乳癌を治療または予防するのに有用である。
【0194】
5.26 実施例26
MDA-435腫瘍細胞において実施例1の化合物がアポトーシスを誘導することを実証するin vitroアッセイ
方法
MDA-435ヒト乳癌細胞を媒体またはさまざまな用量の実施例1の化合物のいずれかで処理した。細胞を採取し、ApoAlert Annexin V-FITCアポトーシスキット(Clonetech, BD)を用いてFlow CytometryによりAnnexin V-FITCおよびPIで染色した。EPICS(登録商標) XLTMおよびXL-MCL, System IITM Software(バージョン1.0 (1996))を用いて、アポトーシス細胞のパーセントを決定した。
【0195】
結果
実施例1の化合物は、用量依存的に細胞集団の30%までアネキシンV-FITC染色の強度を増大させる。アネキシンVは、ホスファチジルセリン(PS)に対して強い親和性を有する36kDのCa2+タンパク質である。非アポトーシス細胞では、ほとんどのPS分子は、原形質膜の内層に局在化される。アポトーシス時、PSは、膜の外層に再分布する。PSの外層分布は、蛍光色素に結合されたアネキシンVにより検出することができる。このことから、本発明の化合物の例示的実施例である実施例1の化合物がアポトーシスを誘導し、したがって、癌(とくに、ヒト乳癌)を治療または予防するのに有用であることが実証される。
【0196】
PIは、DNAを染色する蛍光染料である。PIは、生細胞の原形質膜を通過しない。これに対して、アポトーシスの後期の細胞は、その完全性が失われるので、PIを通過させる。実施例1の化合物で処理された細胞のPI染色の増加は、アポトーシスを誘導する能力および癌を治療または予防するのに有用であることを示すさらなる証拠である。
【0197】
本発明の範囲は、本発明のいくつかの態様の一例であることが意図された実施例に開示されている特定の実施形態により限定されるものではなく、機能的に等価ないかなる実施形態も、本発明の範囲内である。実際に、本明細書で提示および説明した実施形態のほかに本発明のさまざまな変更形態が当業者に自明なものとなるであろう。これらは、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0198】
いくつかの文献を引用してきたが、それらの全開示内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌または新生物疾患を治療または予防する方法であって、そのような治療の必要な患者に有効量の式(I):
【化1】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
mは、0〜5であり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物または製薬上許容されるその塩を投与することを含む、上記方法。
【請求項2】
前記癌が、乳房、卵巣、精巣、前立腺、頭部、頸部、眼、皮膚、口腔、咽喉、食道、胸部、骨、肺、結腸、S状結腸、直腸、胃、腎臓、肝臓、膵臓、脳、腸、心臓、または副腎の癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
癌細胞または新生物細胞の増殖を阻害する方法であって、癌細胞または新生物細胞を有効量の式(I):
【化2】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
mは、0〜5であり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物または製薬上許容されるその塩に接触させることを含む、上記方法。
【請求項4】
急性もしくは慢性腎不全、炎症疾患、老化作用、感染症、免疫障害、または心臓血管疾患を治療または予防する方法であって、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の式(I):
【化3】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
mは、0〜5であり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物または製薬上許容されるその塩を投与することを含む、上記方法。
【請求項5】
リガーゼ活性のモジュレーションに応答する疾患を治療または予防する方法であって、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の式(I):
【化4】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
mは、0〜5であり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物または製薬上許容されるその塩を投与することを含む、上記方法。
【請求項6】
前記リガーゼ活性が阻害されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記リガーゼ活性が活性化されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記リガーゼがE3ユビキチン-タンパク質リガーゼである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記リガーゼ活性が阻害されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
細胞内p27/kip1レベルのモジュレーションに応答する疾患を治療または予防する方法であって、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の式(I):
【化5】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
mは、0〜5であり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物または製薬上許容されるその塩を投与することを含む、上記方法。
【請求項11】
細胞増殖をモジュレートする方法であって、その必要のある患者に有効量の式(I):
【化6】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
mは、0〜5であり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物または製薬上許容されるその塩を投与することを含む、上記方法。
【請求項12】
前記細胞増殖が阻害されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が非癌細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
細胞、血液、組織、器官、または生物を保存する方法であって、該血液、組織、または器官を有効量の式(I):
【化7】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
mは、0〜5であり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物または製薬上許容されるその塩に接触させることを含む、上記方法。
【請求項15】
前記細胞、血液、組織、または器官が低温保存される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
化学療法または放射線療法の副作用を治療または予防する方法であって、そのような治療の必要な患者に有効量の式(I):
【化8】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
mは、0〜5であり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物または製薬上許容されるその塩を投与することを含む、上記方法。
【請求項17】
前記副作用が脱毛である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記副作用が低血球数である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記副作用が悪心である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記副作用が下痢である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記副作用が口腔病変である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物幹細胞の分化または成熟を調節または制御する方法であって、そのような治療または予防の必要な患者に有効量の式(I):
【化9】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
mは、0〜5であり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物または製薬上許容されるその塩を投与することを含む、上記方法。
【請求項23】
リガーゼのモジュレーションに関連する疾患の治療に好適な医薬組成物であって、式(I):
【化10】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、Oであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
mは、0〜5であり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;そして
rは、0〜5である〕
で示される化合物または製薬上許容されるその塩と、製薬上許容される担体と、を含む、上記医薬組成物。
【請求項24】
リガーゼのモジュレーションに関連する疾患の治療に好適な医薬組成物であって、式(II):
【化11】

〔式中、
X、W、およびUは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
X'は、H、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、ハロアルキル、アシルオキシ、チオアルキル、スルホニル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、ヒドロキシアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換ヘテロ環、置換もしくは無置換シクロアルキル、-C(=O)OR1、-OC(=O)R1、-C(=O)NR1R2、-C(=O)NR1OR2、-SO2NR1R2、-NR1SO2R2、-CN、-NO2、-NR1R2、-NR1C(=O)R2、-NR1C(=O)(CH2)qOR2、-NR1C(=O)(CH2)qR2、NR1C(=O)(CH2)qNR1R2、-O(CH2)qNR1R2であり;
R1およびR2は、独立して、Hまたは分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
Yは、それぞれ独立して、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであるか、またはoが1であるとき、Yは(=O)であってもよく;
Zは、CまたはOであり;
Qは、H、分枝状もしくは非分枝状C1〜C10アルキルであり;
nは、0〜8であり;
oは、0〜2であり;
pは、0〜2であり;
qは、0〜5であり;
rは、0〜5であり;そして
X、X'、U、またはWのうちの1つは、Hでない〕
で示される化合物または製薬上許容されるその塩と、製薬上許容される担体と、を含む、上記医薬組成物。

【公表番号】特表2006−515560(P2006−515560A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−512682(P2004−512682)
【出願日】平成15年6月17日(2003.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/018905
【国際公開番号】WO2003/105774
【国際公開日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【出願人】(504135550)シグナル ファーマシューティカルズ,エルエルシー (21)
【Fターム(参考)】