説明

癌細胞増殖を阻害するためのウレアーゼの使用

【課題】哺乳動物被験体における癌細胞の増殖を阻害するのに用いる薬学的組成物および
方法を提供すること。
【解決手段】この組成物は、酵素ウレアーゼおよびそれらの関連物、この組成物が被験体
に投与される場合にこの酵素の癌細胞への送達を増強させるのに有効な化学実体を含有す
る。弱塩基性の抗腫瘍化合物の有効性を増加させる方法、被験体内の固形腫瘍の存在、サ
イズ、もしくは状態を評価する方法、および被験体内の癌を処置するための遺伝子治療組
成物も、また開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/397,244号(2002年7月18日出願)の
優先権を主張し、その開示内容は、あらゆる目的のために、その全体が本明細書中におい
て参考として援用される。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、ウレアーゼタンパク質および抗ウレアーゼポリペプチドを利用する癌治療法
に関する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
癌は、米国の総死亡率の1/5を占め、そして死亡の2番目の主な原因である。癌は代
表的に、細胞集団の制御されない分裂によって特徴付けられる。この制御されない分裂は
、血液細胞(例えば、種々の型のリンパ腫)、または特定の組織もしくは器官(例えば、
固形腫瘍)に凝集するかもしくは、それらを源とする細胞(例えば、胸部、肝臓、食堂、
胃、腸、脳、骨、もしくは前立腺の、続発性もしくは原発性腫瘍のような、固形腫瘍)に
関する。
【0004】
種々の処置様式が、癌治療のために提唱されている。これらとしては、一般的には、固
形腫瘍の外科的切除、X線のような放射線による処置、化学療法、免疫治療、および遺伝
子治療が挙げられる。所定の癌によって選択される治療の型は、患者の年齢、癌の局在の
程度、および癌の型および病期のような因子に依存する。しばしば、この治療は、2つ以
上の様式の組み合わせ(例えば、化学療法と組み合わせるX線治療、もしくは化学療法と
組み合わせる免疫治療)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの化学療法用化合物および化学療法用組成物および戦略が、癌を治療するのに利用
されている。多くの抗腫瘍性(antrineoplastic)の化合物が、迅速に分
裂する細胞の複製を妨害するため、もしくは活発に増殖する細胞における重要な代謝の連
鎖を阻害するために設計される。このようなアプローチは、ある型の癌、もしくはある病
期の癌では成功のレベルに達したが、化学療法は、一般に、消耗性の副作用(例えば、倦
怠感、悪心、食欲不振、脱毛、および貧血)という不快に伴われる。さらに、細胞複製の
レベルに作用する化合物は、分裂細胞へヌクレオチドアナログを導入することによって、
もしくは通常の複製を阻害することによって、被験体の通常細胞へ広範な遺伝子突然変異
を導入する効力を有する。加えて、癌細胞は、多くの型の抗腫瘍剤への抵抗性を、細胞へ
のこの薬剤の取り込みを制限することによってか、もしくは細胞内でのこの薬剤の代謝を
変化させることによって、発生し得る。
【0006】
これらの制限に対して、その副作用を減少させるように化学療法剤を改変する試み、抵
抗性の問題を克服する試み、もしくは選択される腫瘍部位へのそれら標的化を改善する試
みが、展開されてきた。これらの努力がいくつかの場合で治療結果の改善をもたらした一
方で、化学療法用薬剤および方法の改善を提供することへの必要性が依然として残ってい
る。特に、このような薬剤は、癌細胞の増殖を止めるかもしくは阻害するのに有効である
べきであり、処置される被験体の遺伝的統合性に対する副作用および長期作用の両方に関
して、比較的無毒性であるべきであり、そして好ましくは、腫瘍内への直接導入を可能に
するかもしくは腫瘍に対して選択的に標的化することが可能である形態で、送達可能であ
る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、哺乳動物被験体における癌細胞の増殖を阻害するのに用いる薬学的組成物を
提供する。この組成物は、酵素ウレアーゼ(例えば、細菌性ウレアーゼおよび植物ウレア
ーゼ)、およびウレアーゼに関連する、この組成物が被験体に投与される場合にこの酵素
の癌細胞への送達を増強する化学実体を含有する。
【0008】
1つの実施形態において、この化学実体は、血液循環時間を延長するのに、もしくは組
成物のネイティブなウレアーゼに対する抗原性を減少させるのに有効な量のウレアーゼと
結合体化される親水性ポリマーを含有する。このポリマーは、例えば、ポリエチレングリ
コール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリヒドロキシプロピルメ
タクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリ
レート、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリメチルオキサゾリン
、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピ
ルオキサゾリン(polyhydroxypropyoxazoline)、ポリアスパ
ルタミド、もしくは親水性セルロース誘導体であり得る。このポリマーは、好ましくは、
約1,000〜10,000ダルトンの分子量を有する直鎖ポリマー(例えば、ポリエチ
レングリコール直鎖)である。
【0009】
この化学実体は、ウレアーゼに結合される標的化部分(例えば、抗腫瘍抗原抗体、抗h
CG抗体、および癌細胞表面レセプターに特異的に結合し得るリガンド)であり得る。こ
の標的化部分がポリペプチドである場合、この組成物は、この標的化部分と酵素ウレアー
ゼとの融合タンパク質であり得る。あるいはここで、このウレアーゼは、そのC末端もし
くはそのN末端に第一のコイル形成ペプチドを含み得、ここで、この第一のコイル形成ペ
プチドは、選択された電荷によって、および第二の逆に荷電したコイル形成ペプチドと相
互作用して安定したαへリックス状コイルドコイルヘテロ二量体を形成する能力によって
、特徴付けられ;そしてこの化学実体は、この第二のコイル形成ペプチドを含む標的化部
分を含有し得る。
【0010】
この化学実体は、取り込まれた形態で酵素ウレアーゼを有する小胞を含有し得る。例示
的な小胞としては、リポソーム(これは、上記組成物が静脈内に投与される場合、ポリエ
チレングリコール鎖の外部被覆によって長期循環し続け、かつ腫瘍領域に溢出する大きさ
である)、および表面結合標的化部分を有するリポソームが挙げられる。この小胞は、さ
らなる薬剤(例えば、尿素、薬学的に活性な抗腫瘍剤、もしくは画像化剤)を含み得る。
【0011】
この化学実体は、上記酵素の活性を阻害するのに十分な量の、ウレアーゼインヒビター
およびその関連物質を含有し得る。
【0012】
別の局面において、本発明は、哺乳動物被験体における癌細胞の増殖を阻害するための
方法を含む。この方法は、細胞を、癌細胞の増殖を阻害するのに有効な量のウレアーゼに
曝露する工程を包含する。
【0013】
癌細胞が固形腫瘍を含む場合、ウレアーゼは被験体の腫瘍内に直接注入され得るか、も
しくは非経口投与(例えば、直接投与以外の注入)によって注入され得る。薬学的に受容
可能なキャリア内のウレアーゼに加えて、上記のウレアーゼを含有する種々の組成物が、
本発明における使用に適する。
【0014】
この方法はまた、癌細胞におけるウレアーゼの活性を、この癌細胞におけるウレアーゼ
の活性を減少させるのに有効な量のウレアーゼインヒビターを被験体に投与することによ
って、調節(modulate)すること含み得る。ウレアーゼ活性は、ウレアーゼ投与
前、投与中、もしくは投与後に、被験体へ尿素を投与することによって、逆方向へ調節(
modulate)され得る。
【0015】
ウレアーゼは、二段階:腫瘍標的化部分と、第一の結合部分(第二の結合部分と相互作
用する能力を有する)との結合に関与する第一の段階;および、ウレアーゼと結合される
第二の結合部分を含む第二の結合に関与する第二の段階、で投与され得る。
【0016】
さらに別の実施形態において、この方法は、遺伝子治療組成物を被験体に投与する工程
を包含する。この遺伝子治療組成物は、その被験体に投与される場合に、癌細胞を選択的
にトランスフェクトするのに有効な標的化ベクター、およびこのベクター中に保有された
、トランスフェクトされた癌細胞中でウレアーゼmRNAを生成するのに有効な組み換え
核酸配列を含む。例示的なベクターは、アデノウイルスである。例示的な核酸配列は、ウ
レアーゼ、およびこのトランスフェクトされた癌細胞からのウレアーゼの分泌を促進する
のに有効な、分泌性リーダー配列をコードする。
【0017】
関連する局面において、本発明は、腫瘍処置用の薬剤を受ける被験体において、弱塩基
性の抗腫瘍化合物(その有効性は、固形腫瘍における、細胞内でより高く/細胞外でより
低いpH勾配によって減少される)の治療効果を増強する方法を提供する。この方法は、
固形腫瘍における、細胞内でより高く/細胞外でより低いpH勾配を減少させるか、もし
くは逆転させるのに有効な量のウレアーゼを、被験体に投与する工程を包含する。好まし
くは、投与されるウレアーゼの量は、腫瘍の細胞外液を、少なくともpH7.2に上昇さ
せるのに有効である。このウレアーゼは、腫瘍に直接注入され得るか、もしくは上記のよ
うな、直接投与以外の非経口投与によって注入され得る。
【0018】
抗腫瘍化合物が、例えば、ドキソルビシンン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、エ
ピルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチンおよびビンクリスチンの
ようなビンカアルカロイド、シクロフォスファミドおよび塩酸メクロレタミンのようなア
ルキル化剤、ならびに抗腫瘍性の(antrineoplastic)プリン誘導体もし
くはピリミジン誘導体であり得る。
【0019】
さらに別の局面において、本発明は、被験体内の固形腫瘍の存在、サイズ、もしくは状
態を評価するのに有用である。ここで、ウレアーゼは、被験体中の固形腫瘍にウレアーゼ
を局在化させるのに有効な条件下で、固形腫瘍を有するか、もしくは固形腫瘍を有すると
疑われる被験体に投与される。被験体は、次いで、pH感受性のレポーターの存在下もし
くは非存在下のいずれかで、細胞外pHの上昇を示す被験体内の組織領域を同定するため
に、被験体組織中の細胞外pHの変化を検出し得る診断手段(例えば、X線透視検査、M
RI、陽電子断層撮影法)にかけられる。
【0020】
この方法は、上記の処置方法と組み合わせて使用されてウレアーゼの投与もしくは処置
の範囲および/または有効性を評価し得る。したがって、例えば、被験体へのウレアーゼ
の投与において、腫瘍領域におけるpH変化の範囲および程度が追跡されてウレアーゼ投
与を指導し得るか、または腫瘍サイズの変化、もしくは処置中の範囲を評価し得る。
【0021】
哺乳動物被験体における癌細胞の増殖を阻害するのに用いるキットがまた、開示される
。このキットは、酵素ウレアーゼを含有する薬学的組成物、および、被験体の癌を処置す
るために、被験体へのこの組成物の投与を教える使用説明資料を有する。
【0022】
この使用説明資料は、ウレアーゼ組成物を被験体に、腫瘍のサイズに依存し、かつ以下
のような:この組成物が腫瘍に直接注入される場合は、0.1〜100国際単位(好まし
くは0.5〜10ウレアーゼ活性/mm腫瘍)、そしてこの組成物が被験体に非経口的
に(腫瘍への直接注入による以外で)投与される場合は、100〜100,000国際単
位/kg(好ましくは500〜10,000国際単位/kgウレアーゼ活性国際単位/k
g被験体体重)、量で投与する方法を教示し得る。
【0023】
この使用説明資料は、ウレアーゼ組成物を、弱塩基性の抗腫瘍化合物(この有効性は、
固形腫瘍における、細胞内でより高く/細胞外でより低いpH勾配によって減少される)
を受けている被験体に、以下の量:固形腫瘍における、細胞内でより高く/細胞外でより
低いpH勾配を減少させるか、もしくは逆転させるのに有効な量、で投与する方法を教え
得る。
【0024】
この使用説明資料は、ウレアーゼ組成物を、固形腫瘍を有するか、もしくは有すると疑
われる被験体に、被験体中の固形腫瘍にウレアーゼを局在化させるのに有効な条件下で投
与する方法、この被験体を、被験体組織中の細胞外pHの変化を検出し得る診断手段にか
ける方法、およびこの投与に続く細胞外pHの上昇を示す、被験体内の組織領域を同定す
る方法、を教え得る。
【0025】
哺乳動物被験体における癌細胞の増殖を阻害するのに用いる遺伝子治療組成物がまた、
開示される。この組成物は、上記のように、被験体に投与される場合に、癌細胞を選択的
にトランスフェクトするのに有効な標的化ベクターを含有し、かつトランスフェクトされ
た癌細胞中でウレアーゼmRNAを生成するのに有効な組み換え核酸配列を、このベクタ
ー中に保有している。
【0026】
本発明の、これらのおよび他の目的ならびに特徴は、以下の本発明の詳細な説明が、図
と組み合わせて読まれた場合、より十分に明白になる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
哺乳動物被験体における癌細胞の増殖を阻害するのに用いる、薬学的キャリア中に酵素ウ
レアーゼを含有する薬学的組成物。
(項目2)
項目1に記載の組成物であって、該組成物が被験体に投与される場合に、前記酵素の癌
細胞への送達を増強させるのに有効な化学実体を含有する、組成物。
(項目3)
項目1に記載の組成物であって、前記化学実体が親水性ポリマーを含有し、該親水性ポ
リマーが、
(i)前記ウレアーゼと結合体化され、
(ii)ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル
、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、
ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミ
ド、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシエチルオキサゾ
リン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリアスパルタミド、および親水性セルロ
ース誘導体からなる群から選択され、ならびに、
(iii)血液循環時間を延長させるのに有効な量、もしくは該組成物のネイティブな
ウレアーゼに対する抗原性を減少させるのに有効な量で存在する、
組成物。
(項目4)
前記親水性ポリマーが、約1,000〜10,000ダルトンの分子量を有するポリエチ
レングリコールである、項目3に記載の組成物。
(項目5)
前記化学実体が、前記ウレアーゼに結合される標的化部分であり、かつ抗腫瘍抗原抗体、
抗hCG抗体、および癌細胞表面レセプターに特異的に結合し得るリガンドからなる群か
ら選択される、項目2もしくは3に記載の組成物。
(項目6)
前記標的化部分がポリペプチドであり、かつ前記組成物が該標的化部分と酵素ウレアーゼ
との融合タンパク質である、項目5に記載の組成物。
(項目7)
項目5に記載の組成物であって、前記ウレアーゼが、そのC末端もしくはそのN末端に
第一のコイル形成ペプチドを含み、ここで該第一のコイル形成ペプチドは、選択された電
荷によって、および逆に荷電した第二のコイル形成ペプチドと相互作用して安定したαへ
リックス状コイルドコイルヘテロ二量体を形成する能力によって、特徴付けられ;そして
前記化学実体が、該第二のコイル形成ペプチドを含む標的化部分を含有する、組成物。
(項目8)
前記化学実体が、取り込まれた形態で酵素ウレアーゼを有する小胞を含有する、項目2
に記載の組成物。
(項目9)
前記小胞が、前記組成物が静脈内に投与される場合、ポリエチレングリコール鎖の外部被
覆によって長期間循環し続けるリポソームであり、かつ腫瘍領域中に溢出する大きさのリ
ポソームである、項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記小胞がリポソームであり、該リポソームが、抗腫瘍抗原抗体、抗hCG抗体、および
癌細胞表面レセプターに特異的に結合し得るリガンドからなる群から選択される、表面結
合標的化部分を有する、項目8に記載の組成物。
(項目11)
前記化学実体が、前記酵素の活性を阻害するのに十分な量で、ウレアーゼインヒビターお
よびその関連物質を含有する、項目2に記載の組成物。
(項目12)
前記ウレアーゼが、植物ウレアーゼもしくは細菌性ウレアーゼである、項目1に記載の
組成物。
(項目13)
尿素、治療的に活性な抗腫瘍剤、および画像化剤からなる群から選択される薬剤をさらに
含有する、項目1に記載の組成物。
(項目14)
前記ウレアーゼおよび薬剤を取り込まれた形態で含む小胞を、さらに含有する、項目1
3に記載の組成物。
(項目15)
項目1に記載の組成物であって、弱塩基性の抗腫瘍化合物をさらに含有し、該弱塩基性
の抗腫瘍化合物の有効性が、固形腫瘍における、細胞内でより高く/細胞外でより低いp
H勾配によって減少される、組成物。
(項目16)
前記抗腫瘍化合物が、ドキソルビシンン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、エピルビ
シン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチンおよびビンクリスチンのような
ビンカアルカロイド、シクロフォスファミドおよび塩酸メクロレタミンのようなアルキル
化剤、ならびに抗腫瘍性のプリン誘導体およびピリミジン誘導体からなる群から選択され
る、項目15に記載の組成物。
(項目17)
哺乳動物被験体中の癌を処置するか、もしくは診断するための薬剤の製造における、酵素
ウレアーゼの使用。
(項目18)
哺乳動物被験体中の固形腫瘍を処置するための薬剤の製造における、項目17に記載の
使用。
(項目19)
弱塩基性の抗腫瘍化合物によって処置されている被験体において固形腫瘍を処置するため
の薬剤であって、該弱塩基性の抗腫瘍化合物の有効性が、固形腫瘍における、細胞内でよ
り高く/細胞外でより低いpH勾配によって減少される、薬剤の製造における、項目1
7に記載の使用。
(項目20)
被験体中の固形腫瘍領域内のpHについての診断情報を作製するのに使用するための薬剤
の製造における、項目17に記載の使用。
(項目21)
哺乳動物被験体中の癌細胞の増殖を阻害するのに使用するための遺伝子治療組成物であっ
て、該遺伝子治療組成物が、
被験体に投与される場合に、癌細胞を特異的にトランスフェクトするのに有効な標的化
ベクターを含有し、かつ
トランスフェクトされた癌細胞中でウレアーゼmRNAを生成するのに有効な組み換え
核酸配列を、該ベクター中に保有した、
遺伝子治療組成物。
(項目22)
前記ベクターがアデノウイルスである、項目21に記載の組成物。
(項目23)
前記配列が、ウレアーゼをコードし、かつ前記トランスフェクトされた癌細胞からのウレ
アーゼの分泌を促進するのに有効な分泌性リーダー配列をコードする、項目21に記載
の遺伝子治療組成物。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1A〜図1Dは、ウレアーゼ反応の段階を説明する。尿素は、ウレアーゼによって切断され、1分子のアンモニアおよび1分子のカルバメートを生成する(A)。カルバメートは、アンモニアと炭酸とに自発性に分解する(B)。炭酸は、水中で平衡化し(C)、同時にアンモニア2分子も平衡化し、プロトン化してアンモニウムイオンおよび水酸化物イオンを生成する(D)。この反応は、反応環境のpHの上昇をもたらす。
【図2】図2は、調製されたウレアーゼを含有する粗製試料の質量分析プロフィールを示す。
【図3−1】図3は、本発明の別の実施形態に従う精製プロセスの種々の段階における、ウレアーゼのアフィニティー精製プロフィールを示す。
【図3−2】図3−2は、図3−1の続である。
【図4】図4は、本発明の1つの実施形態に従って調製された、GプロテインカラムによるEコイルαhEGFR IgG結合体の精製を示す。
【図5】図5は、固定化KコイルELISAによって決定されるような、本発明の1つの実施形態に従って調製された精製EコイルαhEGFR IgG結合体の抗体力価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
他に示されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発
明の分野の当業者に対する意味と同じ意味を有する。実行者らは、当該分野の定義および
用語について、Sambrookら(2001)「Molecular Cloning
:A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor
Press(第3版);およびAusubel,F.M.ら(1993)のCurren
t Protocols in Molecular Biologyに、特に導かれる
。本発明が記載される特定の方法論、プロトコール、および試薬に限定されないことは(
これらが変動し得るという理由から)、理解されるべきである。
【0029】
用語「ウレアーゼ」とは、尿素アミドヒドロラーゼの酵素活性を有する酵素(E.C.
3.5.1.5)であって、天然に存在するか、または、例えば組換え核酸技術および/
もしくは化学合成によって得られるかのいずれかである酵素を指す。ウレアーゼはまた、
ウレアーゼ全体、サブユニット、もしくはそれらのフラグメントを含む融合タンパク質、
および/または、このポリペプチドの尿素アミドヒドロラーゼ活性を保存するアミノ酸置
換、欠失、付加を有するウレアーゼを含む。本明細書中で使用される短縮ウレアーゼ配列
は、ウレアーゼのアミノ末端もしくはカルボキシ末端のいずれかで開始するインタクトな
ウレアーゼ配列の一部を含まない、ウレアーゼフラグメントである。ネイティブなウレア
ーゼを単離する方法、組み換え体によってウレアーゼを合成する方法、ならびに活性フラ
グメントおよび改変ウレアーゼポリペプチドを同定する方法は、以下に示される。
【0030】
用語「癌」とは、異常な細胞、もしくは組織塊を指すことを意味する。これらの細胞も
しくは組織の増殖は、正常な細胞もしくは組織の増殖を越え、かつそれと同調せず、そし
て変化を引き起こす刺激の停止後も、同じ過剰な様式を持続する。これらの新生組織もし
くは細胞は、正常な組織もしくは細胞に比べて構造的な組織化、および協調の欠損を示し
、結果として良性もしくは悪性のいずれかであり得る組織塊もしくは細胞塊となり得る。
本明細書中で使用される場合、癌は、あらゆる新生物を含む。これには、黒色腫、腺癌、
悪性神経膠腫、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、膵臓癌、甲状腺癌、肺癌、結腸癌、直腸癌、
脳腫瘍、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、などが挙げられる(しかし、これに限定されない)。
【0031】
「腫瘍」もしくは「固形腫瘍」としては、癌細胞の凝集塊を指し、半固形および固形の
腫瘍、固形腫瘍転移、血管線維腫、水晶体後線維増殖症、血管腫、およびカポジ肉腫が挙
げられる(しかし、これに限定されない)。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「標的化部分」とは、決められた細胞集団もしくは
選択された細胞の型に結合する分子を指す。この標的化部分は、レセプター、オリゴヌク
レオチド、酵素基質、抗原決定基、あるいは、標的細胞もしくは標的細胞集団上または標
的細胞もしくは標的細胞集団中に存在する他の結合部位に結合し得る。例示的な標的化部
分は、抗体である。発現される抗原を認識し得る抗体フラグメントおよび小さなペプチド
配列もまた、意図される標的化部分である。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「癌細胞の増殖を阻害する」もしくは「癌細胞の増
殖を阻害すること」とは、観察もしくは予測される未処置のコントロール癌細胞の増殖速
度と比較して癌細胞増殖の速度が減少されるように、癌細胞の増殖および/もしくは移動
の速度のあらゆる緩徐化、癌細胞の増殖および/もしくは移動の停止、または癌細胞を死
滅させること、を指す。用語「増殖を阻害する」とはまた、癌細胞もしくは腫瘍のサイズ
の減少もしくは消滅、およびその転移能力の減少を指し得る。好ましくは、このような細
胞レベルでの阻害は、サイズを減少させ得、増殖を抑止し得、攻撃性を減少させ得、また
は患者における癌の転移を防止もしくは阻害し得る。当業者は、任意の種々の適切な指標
(indicia)によって、癌細胞の増殖が阻害されるかどうかを容易に決定し得る。
【0034】
癌細胞の増殖の阻害は、例えば、細胞周期の特定の期での癌細胞の停止(例えば、細胞
周期のG2/M期での停止)、によって証明され得る。癌細胞の増殖の阻害はまた、癌細
胞もしくは腫瘍のサイズの直接的もしくは間接的測定によって証明され得る。ヒト癌患者
においては、このような測定は、一般的に、周知の造影法(例えば、磁気共鳴映像法、コ
ンピュータ処理された軸位断層撮影法、およびX線)を用いて行われる。癌細胞の増殖は
また、例えば癌胎児性抗原、前立腺特異性抗原、もしくは癌細胞の増殖に関連付けられる
他の癌特異性抗原の循環レベルを決定することによって、間接的に決定され得る。癌の増
殖の阻害はまた、一般的に、被験体の生存の延長、ならびに/または被験体の健康および
良好さの増進に関連付けられる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「アポトーシスを誘導する」とは、DNAの断片化
に特徴付けられる、プログラムされた細胞死の形成の促進を指す。アポトーシスは、当該
分野で公知の方法によって決定され得る。例えば、インサイチュ免疫組織化学によって断
片化したDNAの存在を検出するキット(例えば、Intergen,Purchase
,N.Y.から入手可能なApoptag)が、市販されている。加えて、アポトーシス
はまた、FACS分析(ここでは、アポトーシス細胞がsub−G1 DNA含有物を提
示し、DNA断片化を示す)によって決定され得る。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「抗体」とは、少なくとも1つの免疫グロブリン核酸分
子もしくは免疫グロブリン遺伝子、または少なくとも1つの免疫グロブリン核酸分子もし
くは免疫グロブリン遺伝子のフラグメントに、実質的もしくは部分的にコードされる1つ
以上のペプチド、またはポリペプチドを含むペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク
質を指す。認識される免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμ定常
領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、κ、もしく
はλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、もしくはεに分類され、これら
はまた、免疫グロブリン分類、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを、それ
ぞれ定義する。代表的な免疫グロブリン(例えば、抗体)構造単位は、4量体を含む。各
4量体は、2対の同一のポリペプチド鎖からなり、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD
)および1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識
に関与する、約100〜110以上のアミノ酸からなる可変領域を定義する。用語「可変
軽鎖」(VL)および「可変重鎖」(VH)とは、それぞれこれらの軽鎖および重鎖を指
す。抗体は、インタクトな免疫グロブリンとしてか、もしくは、種々のペプチダーゼによ
る消化によって生成される、多くのよく特徴付けられたフラグメントとして存在する。し
たがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域におけるジスルフィド連結の下位で抗体を消
化し、Fab(これそのものは、ジスルフィド連結によってVH−CH1に結合する軽鎖
である)の2量体である、F(ab)’2を生成する。F(ab)’2は、穏やかな条件
下において還元されてヒンジ領域におけるジスルフィド連結を分解し得、これによって、
2量体(Fab)’2を単量体Fab’に転換する。Fab’単量体は、実質的に、ヒン
ジ領域の一部を有するFabである(他の抗体フラグメントのより詳細な記載に関しては
、Fundamental Immunology,W.E.Paul(編)、Rave
n Press,N.Y.(1993)を参照のこと)。種々の抗体フラグメントが、イ
ンタクトな抗体の消化によって定義されるが、当業者は、このようなFab’フラグメン
トが、化学的に、もしくは組み換えDNA方法論を利用することによってのいずれかで、
新たに(de novo)合成され得ることを理解する。したがって、本明細書中で使用
される場合、用語「抗体」はまた、抗体全体の改変によって生成されるか、もしくは組み
換えDNA方法論を用いて新たに(de novo)合成されるかのいずれかの抗体フラ
グメントを含む。抗体は、単鎖抗体を含み、これには、VHおよびVLが互いに(直接に
もしくはペプチドリンカーを通じて)結合されて連続するポリペプチドを形成する、単鎖
Fv(sFv)抗体が挙げられる。
【0037】
抗体の「抗原結合フラグメント」は、抗原に結合する、その抗体のペプチドもしくはポ
リペプチドフラグメントである。抗原結合部位は、抗原の結合に寄与するか、関与するか
、もしくは影響を与える、この抗体のアミノ酸によって形成される。Scott,T.A
.およびMercer,E.I.,CONCISE ENCYCLOPEDIA:BIO
CHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY(de Gruyt
er(第3版)1997)、およびWatson,J.D.ら、RECOMBINANT
DNA(第2版、1992)を参照のこと。これらはそれぞれ、あらゆる目的のために
、その全体が本明細書中において参考として援用される。用語「抗体フラグメント」とし
てはまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する、
任意の合成もしくは遺伝的に改変されたタンパク質が挙げられる。
【0038】
用語「活性薬剤」、「薬物」、「薬理学的に活性な薬剤」は、被験体に投与される場合
に所望の薬理学的効果を誘導し、そして診断剤もしくは治療剤(放射性核種、薬物、抗癌
剤、毒物などが挙げられる)を含むことが意図される化学実体もしくは化合物を指すため
に、本明細書中において可換性に使用される。好ましくは、活性薬剤という用語は、タン
パク質、糖タンパク質、天然および合成のペプチド、アルカロイド、多糖類、核酸分子、
低分子、などを含む。より好ましくは、活性薬剤という用語はタンパク質を指す。例示的
な活性薬剤は、ウレアーゼである。
【0039】
「pH感受性」活性薬剤とは、所望の薬理学的効果を誘導するその能力が、少なくとも
部分的に、周辺の細胞外環境のpHに依存する活性薬剤を指す。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「浄化剤」とは、受容者の循環中に存在する投与部
分と結合するか、複合するか、もしくは関連し得、それによって、受容者の身体からの循
環部分のクリアランス、血液循環からの除去、もしくは循環中におけるそれらの不活性化
を促進する薬剤を指す。この浄化剤は、好ましくは、サイズ、電荷、構造もしくはそれら
の組み合わせのような、物理特性によって特徴付けられ、そしてこの物理特性は、この浄
化剤と同じ処置プロトコールで使用される標的化部分によって認識される標的細胞集団へ
アクセスする、薬剤の浄化を制限する。
【0041】
用語「画像化剤」は、検出され得る化合物を指すことを意味する。
【0042】
用語「アジュバント」とは、処方物もしくは組成物に加えられて主成分の作用を助ける
物質もしくは薬剤を指す。
【0043】
用語「間質」液および「細胞外」液とは、哺乳動物細胞の間にあるか、もしくは哺乳動
物細胞を浸している液体を指す。
【0044】
用語「被験体」、「個体」、および「患者」は、処置の任意の標的を指すために、本明
細書中において可換性に使用される。本明細書中によって、腫瘍細胞をインサイチュにお
いて、またはそれらの通常の位置もしくは部位(例えば、胸部の新生細胞もしくは前立腺
腫瘍)において処置する方法が、また提供される。これらのインサイチュ腫瘍は、広範な
種類の宿主(例えば、ヒト宿主、イヌ宿主、ネコ宿主、ウマ宿主、ウシ宿主、ブタ宿主、
など)の内部または表面に位置し得る。腫瘍もしくは腫瘍細胞が見られるあらゆる宿主は
、本発明を用いて処置され得、そして本発明に従い得る。被験体としては、したがって、
脊椎動物が挙げられ、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0045】
「標的細胞滞留時間」によって、ウレアーゼ分子もしくは他の活性薬剤が標的細胞表面
もしくは標的細胞内に残存する時間の量を意味する。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「結合体」は、化学的結合体(共有結合もしくは非
共有結合)、融合タンパク質などを含む。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、もしくは「ペ
プチド」とは、アミノ酸サブユニットもしくはアミノ酸アナログサブユニットからなる生
体高分子を、可換性に指す。この生体高分子は、代表的に、生物学的タンパク質に見られ
る20種類の共通L−アミノ酸のいくつかもしくは全てが、ペプチドのサブユニット間連
結もしくは他のサブユニット間連結によって連結される。タンパク質は、そのサブユニッ
ト配列によって表される一次構造を有し、そして二次のらせん状もしくは平面状の構造、
および全体的な3次元構造を有し得る。「タンパク質」は、一般に比較的大きいポリペプ
チド(例えば、100以上のアミノ酸)を指し、そして「ペプチド」はより小さいポリペ
プチドを指すが、この用語は本明細書中において可換性に使用される。すなわち、用語「
タンパク質」は、より大きいポリペプチド、およびより小さいペプチドを参照し得、そし
てその逆もそうである。
【0048】
「ウレアーゼの調節因子」は、ウレアーゼインヒビターもしくはウレアーゼエンハンサ
ーのいずれかである。
【0049】
「ウレアーゼインヒビター」は、以下:(1)ウレアーゼの発現、改変、調節(reg
ulation)、活性化、もしくは分解;または(2)ウレアーゼの1つ以上の通常機
能、を干渉する分子もしくは分子群を含む。このウレアーゼの通常機能としては、尿素の
加水分解、カルバメートおよびアンモニアの生成をもたらすこと、が挙げられる。インヒ
ビターは、このインヒビターが、静電気的相互作用もしくは化学的相互作用を介してウレ
アーゼに結合する場合、「ウレアーゼへ直接的に作用する」。このような相互作用は、他
の分子に媒介ても、媒介されくてもよい。インヒビターは、その最も速い効果が、ウレア
ーゼの発現、活性化もしくは機能に影響するウレアーゼ以外の分子に対してである場合、
「ウレアーゼへ間接的に」作用する。
【0050】
「ウレアーゼ(の)エンハンサー」は、以下:(1)ウレアーゼの発現、改変、調節(
regulation)、もしくは活性化;または(2)ウレアーゼの1つ以上の通常機
能、を増強する分子もしくは分子群を含む。エンハンサーは、その最も速い効果が、ウレ
アーゼの発現、活性化もしくは作用に影響するウレアーゼ以外の分子に対してである場合
、「ウレアーゼへ間接的に」作用する。
【0051】
ウレアーゼ遺伝子の「人工突然変異」は、以下:(1)このような変化がない状態で生
成される量に対する、ウレアーゼタンパク質量の増加もしくは減少;または、(2)この
ような変化がない状態での通常機能に対する、通常機能の増強もしくは障害を有するウレ
アーゼタンパク質、の生成をもたらす、ウレアーゼ遺伝子のヌクレオチド配列の変化を含
む。
【0052】
用語「薬学的組成物」とは、被験体(動物もしくはヒトが挙げられる)への薬学的な使
用に適する組成物を意味する。この薬学的組成物は、一般的に、有効量の活性薬剤および
キャリア(例えば、薬学的に受容可能なキャリアが挙げられる)を含有する。
【0053】
「薬学的に受容可能な処方物」は、活性薬剤(例えば、ウレアーゼもしくはウレアーゼ
調節因子)を、所望の結果を与え、かつ有害な副作用(患者への見込まれる害が、この患
者への見込まれる利益を上回ると医師に確信させるに十分な作用)をまた生じない様式で
投与するのに適切な処方物を含む。注入可能な処方物としての基本成分は、代表的に水の
ビヒクルである。有用な水性ビヒクルは、塩化ナトリウム(NaCl)溶液、リンゲル溶
液、NaCl/デキストロース溶液、などを含む。水混和性ビヒクルは、活性薬剤の十分
な溶解性をもたらすのに、また有用である。抗菌剤、緩衝液、および抗酸化剤は、必要に
応じて有用であり得る。同様に、本明細書中で使用される、化合物の「薬学的に受容可能
な」塩、もしくは化合物の「薬学的に受容可能な」誘導体は、生物学的に、もしくはその
他に所望されなくはない塩もしくは他の誘導体である。
【0054】
用語「制御された放出」とは、処方物からの薬物の放出の様式およびプロフィールが制
御される、あらゆる薬物含有処方物を指すことを意味する。用語「制御された放出」とは
、即時および非即時放出性処方物を指し、ここで、非即時放出性処方物としては、徐放性
処方物および遅延放出性処方物が挙げられる(しかしこれに限定されない)。
【0055】
用語「徐放性」(「拡張放出性」とも呼ばれる)は、その通常の意味において、長期間
に渡る薬剤の緩やかな放出のために提供され、そして好ましくは(必須ではないが)実質
的に、長期間に渡って一定な薬剤の血液レベルをもたらす薬物処方物を指すために用いら
れる。用語「遅延放出性」は、その通常の意味において、処方物の投与とそこからの薬剤
の放出との間に時間遅れがある薬物処方物を指すために用いられる。「遅延放出性」は、
長期間に渡る薬剤の緩やかな放出を含んでも、含まなくてもよく、したがって「徐放性」
であっても、「徐放性」でなくともよい。
【0056】
「治療的処置」とは、病理、疾患、もしくは障害の症状または徴候を示す被験体に施さ
れる処置であり、このとき、これらの病理、疾患、もしくは障害の徴候または症状を減少
もしくは除去する目的で、処置が被験体に施される。「治療学的活性」は、薬剤(例えば
、核酸、ベクター、遺伝子、ポリペプチド、タンパク質、物質、もしくはそれらの組成物
)の活性であって、病理、疾患、もしくは障害の徴候または症状を、このような徴候もし
くは症状を被る被験体に投与される場合に、除去もしくは減少させる活性である。「治療
学的に有用な」薬剤もしくは化合物(例えば、核酸もしくはポリペプチド)とは、病理、
疾患、もしくは障害のこのような徴候または症状を、減少、処置、除去するのに有用な薬
剤もしくは化合物を表す。
【0057】
用語「低分子」は、合成、天然由来、もしくは一部合成の化合物もしくは分子複合体を
含み、これは、好ましくは5,000ダルトンより少ない分子量を有する。より好ましく
は低分子は、約100〜1,500ダルトンの間の分子量を有する。
【0058】
用語「核酸分子」もしくは「オリゴヌクレオチド」もしくは本明細書中で文法上の等価
物は、互いに共有結合された少なくとも2つのヌクレオチドを指し、そして代表的には、
RNA、DNA、およびcDNA分子を指す。本発明の核酸は、好ましくは1本鎖もしく
は2本鎖であり、そして一般的には、ホスホジエステル結合を含むが、いくつかの場合に
おいては、例えば、ホスホラミド、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、および
/もしくはO−メチルホスホラミダイト連結を含む、代替の骨格を有する核酸アナログが
含まれる。遺伝暗号の縮重の結果として、所定のペプチド(例えば、ウレアーゼ)をコー
ドする多数のヌクレオチド配列が生成され得ることが、理解される。
【0059】
「異種」核酸構築物もしくは核酸配列は、それが発現される細胞由来でない配列の一部
を有する。制御配列に関する異種とは、現在その発現が調節(regulation)さ
れている遺伝子と同じ遺伝子を調節(regulate)するように事実上機能しない、
制御配列(すなわち、プロモーターもしくはエンハンサー)を指す。一般的に異種核酸配
列は、それが存在する細胞もしくはゲノムの一部の内因性ではなく、そして感染、トラン
スフェクション、微量注入、電気穿孔法、などによって細胞に加えられている。異種核酸
構築物は、ネイティブ細胞で見られる制御配列/DNAをコードする配列の組み合わせと
同じか、もしくは異なる制御配列/DNAをコードする配列の組み合わせ、を含み得る。
【0060】
本明細書中で使用される場合、用語「ベクター」は、異なる宿主細胞間での移送のため
に設計される核酸構築物を指す。「発現ベクター」とは、外来細胞に異種DNAフラグメ
ントを組み込み、そして発現させる能力を有するベクターを指す。多くの原核生物発現ベ
クターおよび真核生物発現ベクターが、市販されている。適切な発現ベクターの選択は、
当業者の知識の範囲内である。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「発現カセット」もしくは「発現ベクター」は、組み換
え体としてかもしくは合成的に生成され、標的細胞中もしくはインビトロでの特定の核酸
の転写を可能にする一連の特定化された核酸要素を有する、核酸構築物である。組み換え
発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA,ウイ
ルス、もしくは核酸フラグメントに組み込まれ得る。代表的に、発現ベクターの組み換え
発現カセット部分は、他の配列中に、転写される核酸配列およびプロモーターを含み得る

【0062】
本明細書中で使用される場合、用語「プラスミド」とは、クローニングベクターとして
使用される環状2本鎖DNA構築物を指し、これは、多くの細菌およびいくつかの真核生
物において、染色体外の自己複製する遺伝要素を形成する。
【0063】
本明細書中で使用される場合、「選択マーカーをコードするヌクレオチド配列」とは、
宿主細胞中で発現し得るヌクレオチド配列を指し、ここで、選択マーカーの発現は、この
発現される遺伝子を含有する細胞に、対応する選択的薬剤の存在下で増殖する能力を与え
る。
【0064】
本明細書中で使用される場合、用語「プロモーター」および「転写イニシエーター」と
は、下流遺伝子の転写を導くよう機能する核酸配列を指す。プロモーターは一般的に、標
的遺伝子が発現されている宿主細胞に適切である。プロモーターは、他の転写調節(re
gulatory)核酸配列および他の翻訳調節(regulatory)核酸配列(「
制御配列とも称される」)とともに、所定の遺伝子を発現させるのに必須である。一般に
、この転写調節(regulatory)核酸配列および翻訳調節(regulator
y)核酸配列としては、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転
写停止配列、翻訳開始配列および翻訳停止配列、ならびにエンハンサー配列もしくは活性
化配列が挙げられる(しかし、これに限定されない)。
【0065】
本明細書中で定義される場合、「キメラ遺伝子」もしくは「異種核酸構築物」とは、異
なる遺伝子の一部(調節(regulatory)要素を含む)を含み得る非ネイティブ
遺伝子(すなわち、宿主に導入されたもの)を指す。宿主細胞の形質転換のためのキメラ
遺伝子構築物は、代表的に、異種タンパク質をコードする配列に操作可能に連結される転
写調節(regulatory)領域(プロモーター)からなるか、または選択マーカー
のキメラ遺伝子においては、形質転換される宿主細胞に抗菌剤耐性を与えるタンパク質を
コードする選択マーカー遺伝子をコードする配列に操作可能に連結される転写調節(re
gulatory)領域(プロモーター)からなる。宿主細胞の形質転換のための本発明
の代表的なキメラ遺伝子としては、構成性もしくは誘導性の転写調節(regulato
ry)領域、タンパク質をコードする配列、および終止配列が挙げられる。キメラ遺伝子
構築物はまた、標的タンパク質の分泌が所望される場合、シグナルペプチドをコードする
第二のDNA配列を含み得る。
【0066】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係におかれる場合、「作動可能に連結される」。例え
ば、分泌性リーダーをコードするDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタ
ンパク質として発現される場合、ポリペプチドに関するDNAに操作可能に連結される;
プロモーターもしくはエンハンサーは、コード配列に、それがこの配列の転写に影響する
場合、操作可能に連結される;または、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するよう配置
される場合、コード配列に操作可能に連結される。一般的に、「操作可能に連結される」
とは、連結されるDNA配列が、接近しており、そして分泌性リーダーの場合は、接近し
、かつ読み取り段階にあることを意味する。しかし、エンハンサーは接近している必要は
ない。連結は、都合の良い制限部位でのライゲーションによって達成される。このような
部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターもしくはリンカーが、都合の
良い実行に合わせて使用される。
【0067】
本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖の生成に関与し、コ
ード領域に先立つ領域およびコード領域にに続く領域(例えば、5’非翻訳領域(5’U
TR)もしくは「リーダー」配列、および3’UTRもしくは「トレイラー」配列、なら
びに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン))を含んでも、含
まなくともよいDNAのセグメントを意味する。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「組み換え」は、異種核酸配列の導入によって改変され
た細胞もしくはベクターへの参照を含むか、または細胞がそのような改変された細胞に由
来することを含む。したがって、例えば、組み換え細胞は、慎重なヒトの介在の結果とし
て、細胞のネイティブ(非組み換え)形態内では同じ形態が見られない遺伝子を発現する
か、または、さもなければ異常に発現されるか、過小発現されるか、もしくは全く発現さ
れないネイティブ遺伝子を発現する。
【0069】
用語「導入される」とは、細胞への核酸配列の挿入に関する場合、「トランスフェクシ
ョン」、「形質転換」もしくは「形質導入」を意味し、真核生物細胞もしくは原核生物細
胞への核酸配列の組み込みへの参照を含む。このとき、この核酸配列は、細胞のゲノム(
例えば、染色体、プラスミド、プラスチド、もしくはミトコンドリアDNA)に組み込ま
れ得るか、自立レプリコンに転換され得るか、または一時的に発現され得る(例えば、ト
ランスフェクトされたmRNA)。
【0070】
本明細書中で使用される場合、用語「発現」とは、遺伝子の核酸配列に基づいてポリペ
プチドが生成されるプロセスを指す。このプロセスは、転写と翻訳とを含む。
【0071】
用語「シグナル配列」とは、成熟形態のタンパク質の細胞外への分泌を促進する、タン
パク質のN末端部分のアミノ酸配列を指す。この細胞外タンパク質の成熟形態は、分泌プ
ロセス中に切断されるシグナル配列を欠いている。
【0072】
用語「宿主細胞」によって、ベクターを含み、発現構築物の複製、または転写および翻
訳(発現)を支持する細胞が意味される。本発明で使用される宿主細胞は、原核生物細胞
(例えば、E.Coli)、または真核生物細胞(例えば、酵母、植物、昆虫、両生類、
もしくは哺乳動物細胞)であり得る。
【0073】
本明細書中で使用される場合、活性薬剤の「有効量」もしくは「薬学的に有効な量」と
は、標的細胞もしくは被験体の生理学的なパラメータにおける測定可能な変化を誘導する
のに十分な量、および/あるいは、1つ以上の薬学的投薬単位の投与を通じて活性薬剤の
発現もしくは活性を提供または調節(modulate)するのに十分な量を指す。この
ような有効量は、人によって、彼らの状態、身長、体重、年齢、および/もしくは健康、
この活性薬剤(例えば、ウレアーゼもしくはウレアーゼ調節因子)の投与様式、投与され
る特定の活性薬剤、ならびに他の因子に依存して、変動し得る。結果として、特定の環境
下で、特定の患者に対する有効量を実験的に決定することは有用であり得る。
【0074】
本明細書中で引用される全ての刊行物および特許は、本発明と組み合わせて使用され得
る組成物および方法論を記載し、そして開示する目的のため、本明細書中において参考の
ために特別に援用される。
【0075】
(II. 本発明の組成物)
本発明は、1つの局面において、癌細胞の増殖の阻害に使用する活性薬剤として、ウレ
アーゼを含有する組成物を含む。以下に記載されるように、この活性成分の癌細胞への送
達を増強するように、化学実体がこの活性薬剤と関連する。患者の癌細胞をウレアーゼに
曝露することは、本明細書中で記載されるように、患者の癌に効果的な処置となることが
発見された。この癌細胞は、腫瘍(例えば固形腫瘍もしくは半固形腫瘍)中に含まれ得る
。あるいは、この癌細胞は、被験体の血流中を循環し得る。
【0076】
癌、腫瘍、および/もしくは新生物は、細胞もしくは組織の新たな増殖を含み、この細
胞の増殖は、制御されておらず、かつ進行性である。このような増殖の一部は良性である
が、他は「悪性」と称され、「生体の死をもたらす」。攻撃的な細胞増殖を示すことに加
えて、癌細胞が周辺の組織およびを浸潤し、かつ転移する点で、悪性新生物は良性増殖と
区別される。さらに悪性新生物は、分化の重大な欠損を示し、またはお互いおよび周辺組
織への組織化の重大な欠損を示す点で、特徴付けられる。
【0077】
以下で検討されるものは、本発明の組成物に含まれる化合物である。
【0078】
(A.ウレアーゼ)
上記のように、組成物中の活性薬剤はウレアーゼである。このウレアーゼは、あらゆる
由来のものであり得る(例えば、細菌、植物、菌類、およびウイルスを含む)。多くの研
究が、進化的に多様な細菌、植物、菌類、およびウイルス由来のウレアーゼの遺伝学につ
いての詳細な情報を提供している(Mobley、H.L.Tら(1995)Micro
biol.Rev.59:451−480;Eur.J.Biochem.,175,1
51−165(1988);Labigne,A.(1990)国際公開WO90/04
030;Clayton,C.L.ら(1990)Nucleic Acid Res.
18,362;ならびに米国特許第6,248,330号および同第5,298,399
号、これらはそれぞれ、本明細書中において参考のため援用される)。特に関心があるの
は、植物に見られるウレアーゼである(Sirko,A.およびBrodzik,R.(
2000)Acta Biochim Pol 47(4):1189−95)。1つの
例示的な植物ウレアーゼは、タチナタマメウレアーゼであり、これは、実施例2〜3に記
載される。例示的なタチナタマメウレアーゼのアミノ酸配列は、配列番号7で示される。
【0079】
有用なウレアーゼ配列は、公開のデータベース(例えば、Entrez(http:/
/www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez/))上で同定され得る。
加えて、広範な種類の生物からウレアーゼを増幅するのに有用なプライマーは、Bake
r,K.M.およびCollier,J.L.(http://www.science
.smith.edu/departments/Biology/lkatz/NEM
EB_webpage/abstracts.html)によって記載されるように、ま
たは、Roseら(1998)Nucl.Acids Res. 26:1628に記載
されるように、CODEHOP(COnsensus−DEgenerate Hybr
id Oligonucleotide Primer)を用いて、利用され得る。
【0080】
ウレアーゼは、腫瘍細胞に接触し得るか、細胞外環境もしくは腫瘍細胞周辺の間質液に
配置され得るか、または癌細胞内もしくは癌細胞近傍の細胞内で発現され得る。ウレアー
ゼによる癌細胞の増殖阻害の成功の基礎をなす、いかなる特定の分子機構にも拘束される
ことを望まないが、被験体の間質液へのウレアーゼの添加によって、このウレアーゼ組成
物は、癌細胞が浸されている間質液のpHを上昇させ得る。ウレアーゼは、尿素基質をア
ンモニアおよびカルバメートに転換し得る。この酵素活性は、pHを上昇させ、環境をよ
り塩基性にさせ得る(図1A〜1D)。癌細胞の周りの環境は、代表的には酸性である(
Webb,S.D.ら(2001)Novartis Found Symp 240:
169−81)。したがって、この様式で細胞外環境のpHを上昇させることによって、
癌細胞の増殖は阻害される。したがって、本発明の所定の実施形態における活性薬剤の添
加は、間質液のpHを、約0.1pH単位(例えば、0.1〜0.5pH単位以上)上昇
させる。
【0081】
したがって、本発明の活性薬剤としては、天然に存在する形態のウレアーゼおよびそれ
らの機能的に活性な変異体が挙げられる。2つのアミノ酸配列変異体の一般型が予測され
る。アミノ酸配列変異体は、ウレアーゼ活性を無効化しない特定のアミノ酸における1つ
以上の置換を有するものである。これらの変異体としては、実質的に相同であり、かつ機
能的にネイティブタンパク質と等価である沈黙変異体および保存的に改変された変異体が
挙げられる。ネイティブタンパク質の変異体は、そのアミノ酸配列がネイティブタンパク
質のアミノ酸配列と、少なくとも約80%同一である場合、より好ましくは少なくとも9
0%同一である場合、さらにより好ましくは少なくとも約95%同一である場合、なおさ
らにより好ましくは少なくとも98%同一である場合、そして最も好ましくは少なくとも
約99%同一である場合、ネイティブタンパク質と「実質的に相同」である。変異体は、
わずか1〜10以上のアミノ酸によって異なり得る。
【0082】
変異体の第二の型は、ウレアーゼの活性フラグメントとして単離させるウレアーゼのサ
イズ変異体を含む。サイズ変異体は、例えば、ウレアーゼを断片化することによって、化
学的改変によって、タンパク質分解酵素消化によって、もしくはそれらの組み合わせによ
って、形成され得る。加えて、遺伝子工学技術およびアミノ酸残基から直接的にポリペプ
チドを合成する方法が、サイズ変異体の生成に利用され得る。
【0083】
「機能的に等価」によって、変異体の配列が、ネイティブウレアーゼと実質的に同じ生
物学的活性を有するタンパク質を生成する鎖を定義することが、意図される。実質的な配
列変異を含む、このような機能的に等価な変異体もまた、本発明に含まれる。したがって
、ネイティブウレアーゼタンパク質の機能的に等価な変異体は、治療学的に有用であるの
に十分な生物学的活性を有する。機能的等価性を決定するために、いくつかの方法が当該
分野で利用可能である。生物学的活性は、実施例3のように、ネイティブウレアーゼタン
パク質の活性を測定するために特別に設計されたアッセイを用いて測定され得る。加えて
、生物学的に活性なネイティブタンパク質に対して増加した抗体は、機能的に等価な変異
体に結合するその能力を検査され得、ここで、有効な結合は、高次構造がネイティブタン
パク質のそれと類似するタンパク質を示している。
【0084】
遺伝暗号の縮重に起因して、本発明のウレアーゼポリペプチドをコードする多数の核酸
配列が生成され得、これらのいくつかは、公知のウレアーゼ核酸配列とわずかな相同性の
みを有するということが、当業者によって理解される。このような「沈黙変異体」は、以
下で議論されるように、「保存的に改変された変異体」の一種である。本発明は、本発明
のポリペプチドをコードする核酸配列(可能な暗号選択に基づく選択の組み合わせによっ
て生成され得る)の、それぞれおよび全ての可能な変異を提供する。これらの組み合わせ
は、本発明のウレアーゼタンパク質ポリペプチドをコードする核酸配列に適用されるよう
な、標準の3塩基遺伝暗号に従って生成される。
【0085】
本発明のウレアーゼポリペプチドは、公知のウレアーゼポリペプチド配列の配列の1つ
以上の保存的に改変された変異体(もしくは、単純に「保存的変異体」)を含む。このよ
うな保存的変異体は、単一のアミノ酸もしくは低いパーセンテージのアミノ酸を変更する
か、付加するか、または除去する置換、付加、または欠失を含む。当業者は、代表的に保
存的変異を構成する配列において、単一のアミノ酸もしくは低いパーセンテージのアミノ
酸(代表的に5%より少ない、より代表的に4%、2%、1%より少ないか、もしくはよ
り少ない)を置換するか、除去するか、または付加し、ここでこのような変化がアミノ酸
の欠失、アミノ酸の付加、もしくは化学的に類似するアミノ酸によるアミノ酸の置換をも
たらす、個々の置換、欠失、または付加を認識する。
【0086】
機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当業者に周知である。表1は、互
いに保存的置換もしくは保存的変異であるアミノ酸を含む6つの群を示す。
【0087】
(表1.保存的置換基)
【0088】
【表1】

【0089】
アミノ酸のさらなる群もまた、処方され得る。例えば、アミノ酸は、類似する機能、ま
たは化学構造もしくは組成(例えば、酸性、塩基性、脂肪族、芳香族、硫黄含有)によっ
て分類され得る。例えば、脂肪族群としては:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、
イソロイシンが挙げられ得る。互いの保存的置換であるアミノ酸を含む他の群としては、
以下:(i)芳香族:フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;(ii)硫黄含有
:メチオニン、システイン;(iii)塩基性:アルギニン、リジン、ヒスチジン;なら
びに(iv)酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸アスパラギン、グルタミン、が挙げら
れる。アミノ酸のさらなる分類に関しては、Creighton(1984)Prote
ins,W.H.Freeman and Companyを参照のこと。
【0090】
本発明のウレアーゼタンパク質配列(保存的に置換された配列を含む)は、タンパク質
の精製のための1つ以上のドメイン(例えば、ポリヒス(poly his)セグメント
、FLAGタグセグメントなど)の付加によって生じるような、より長いポリペプチド配
列の一部として存在し得る(例えば、ここで、付加された機能的ドメインは、そのタンパ
ク質のウレアーゼプロテイン部分の活性にほとんどもしくは全く影響を有さない、または
付加されたドメインは、プロテアーゼ処理のような合成後のプロセシング工程によって除
去され得る)。
【0091】
本発明の核酸配列分子のコードされる活性を変化させない、1つ以上の核酸もしくは配
列の付加(例えば、非機能的配列の付加)は、基本的核酸分子の保存的変異であり、そし
て、本発明のポリペプチドの活性を変化させない1つ以上のアミノ酸残基の付加は、基本
的ポリペプチドの保存的変異である。このような付加の型の両方は、本発明の特徴である
。当業者は、開示される核酸構築物の多くの保存的変異が、機能的に同一の構築物を生じ
ることを理解する。
【0092】
配列の関連性を決定する種々の方法が使用され得、これには、手作業によるアライメン
ト、ならびにコンピュータに補助される配列のアライメントおよび分析が挙げられる。こ
の後者のアプローチは、コンピュータに補助される方法によってもたらされる処理量の増
加のため、本発明において好ましいアプローチである。配列アライメントを実行するため
の種々のコンピュータプログラムが利用可能であるか、もしくは当業者によって作製され
得る。
【0093】
上記のように、本発明で利用される核酸配列およびポリペプチドの配列(ならびにそれ
らのフラグメント)は、本名発明のウレアーゼポリペプチドもしくはウレアーゼ核酸分子
(またはそれらのフラグメント)の配列、もしくは関連分子の配列に対して同一である必
要はないが、実質的に同一(もしくは実質的に類似)であり得る。例えば、ポリペプチド
は種々の変化(例えば、1つ以上のアミノ酸もしくは核酸の挿入、欠失、および置換、こ
れらは保存的もしくは非保存的のいずれかである)に供され得、このことは、例えば、こ
のような変化が、その使用(例えば、治療的もしくは予防的使用、または投与、または診
断的適用)において特定の利点を提供し得る、ということを含む。
【0094】
比較的短いアミノ酸配列(約30残基より少ない)のアライメントおよび比較は、代表
的に、直接行う。より長い配列の比較は、2つの配列の最適なアライメントを達成するた
めに、より洗練された方法を必要とし得る。比較ウインドウを整列させるための配列の最
適なアライメントは、SmithおよびWaterman(1981)Adv Appl
Math 2:482の局所的相同性アルゴリズム(local homology
algorithm)によって;NeedlemanおよびWunsch(1970)J
Mol Biol 48:443の相同性アライメントアルゴリズム(homolog
y alignment algorithm)によって;Pearson and L
ipman(1988)Proc Nat’l Acad Sci USA 85:24
44の類似性探索法(the search for similarity meth
od)によって;これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(the Wisc
onsin Genetics Software Package Release
7.0のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA(Genetics
Computer Group、575 Science Dr. Madison,
Wis.);ならびに、BLAST(例えば、Altschul etal. (197
7) Nuc Acids Res 25:3389− 3402およびAltschu
lら(1990)J Mol Biol 215: 403−410を参照のこと))に
よって;または、選択される種々の方法によってもたらされる最も良い整列(すなわち、
比較ウインドウ全体で、配列類似性もしくは配列同一性の最高のパーセンテージを結果と
してもたらす)を用いた検査によって、導かれる。
【0095】
パーセント配列同一性(パーセント同一性)および配列類似性を決定するのに適切な、
例示的アルゴリズムは、FASTAアルゴリズムであり、これは、Pearson,W.
R.およびLipman,D.J.(1988)Proc Nat’l Acad Sc
i USA 85:2444に記載されている(または、W.R.Pearson(19
96)Methods Enzymology 266:227−258を参照のこと)
。パーセント同一性を計算するための、DNA配列のFASTAアライメントに使用され
る好ましいパラメータは、最適化される(BL50 Matrix 15:−5、k−t
uple=2;joining penalty=40、optimization=2
8;gap penalty=−12、gap length penalty=−2;
およびwidth=16)。
【0096】
探索およびアライメントのアルゴリズムについての上記の議論が、ヌクレオチド配列を
含む照会配列の置換(およびここで、適切な、核酸データベースの選択)を用いて、ポリ
ヌクレオチド配列の同定および評価にもあてはまることは、当業者に理解される。
【0097】
(B.関連化学実体)
本発明の組成物は、活性薬剤と関連してこの活性薬剤の癌細胞への送達を増強する化学
実体を含有し得る。広範な種類の関連化学実体が、以下に記載されるような使用のために
意図される。
【0098】
(B1.ポリマー)
この化学実体はポリマー(例えば、親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーが挙げられ、
親水性ポリマーが好ましい)を含み得る。本明細書中で使用される場合、用語「親水性」
とは、一般に水と容易に結合し得る組成物、物質(substance)、もしくは材料
(material)を指す(例えば、ポリマー)。したがって、本発明に利用され得る
親水性ポリマーは、種々の型のドメイン(例えば、より親水性の高いドメイン、およびよ
り疎水性の高いドメイン)を有し得るが、親水性ポリマーの全体の性質は、好ましくは親
水性であり、もちろんこの親水性は、相対的に親水性の高い状態から相対的に親水性の低
い状態まで、連続的に変化し得ることが理解される。
【0099】
広範な種類のポリマーが、本発明の組成物および本発明の処方物として利用され得る。
一般的に、ポリマーは、本明細書中で記載されるように、所望の親水性および/もしくは
疎水性を有し、そして基質および標的リガンドとの共有結合性の付加を形成し得る。ポリ
マーは、架橋されうるか、もしくは架橋されていない可能性がある。本明細書中で使用さ
れる場合、用語「架橋する」、「架橋された」および「架橋」とは、一般に、2つ以上の
化合物もしくは材料(例えば、ポリマー)の、1つ以上の橋による連結を指す。この橋は
、1つ以上の要素、基もしくは化合物で構成され得、一般に、第一の化合物もしくは材料
分子由来の原子と、第二の化合物もしくは材料分子の原子とを結合するよう作用する。架
橋は、共有結合性および/もしくは非共有結合性結合を含み得る。任意の種々の要素、基
、および/もしくは化合物は、架橋中の橋を形成し得、そして化合物もしくは材料は、天
然に、または合成手段を通じて架橋され得る。
【0100】
特定の実施形態に従って、ポリマー(直鎖状、星状、もしくは分枝状のいずれか)は、
ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンアミン、ポリアルケン
スルフィド、ポリアルキレンスルホネート、ポリアルキレンスルホン、ポリ(アルキレン
スルホニルアルキレンイミン)、およびそれらのコポリマーからなる群から選択され得る

【0101】
上記のように、利用される特定のポリマーに依存して、ポリマーは相対的により親水性
もしくはより疎水性であり得る。適切な、相対的により親水性なポリマーの例としては、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、分枝したポリエチレンイミン、ポ
リビニルピロリドン、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)、ポリソルベ
ート、ポリエチレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド−コ−ポリプロピレンオキシド)
、ポリ(オキシエチル化)グリセロール、ポリ(オキシエチル化)ソルビトール、ポリ(
オキシエチル化グルコース)、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリ
ヒドロキシエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリビニルアル
コール、ポリ(ヒドロキシアルキルカルボン酸)、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポ
リヒドロキシプロピルメタクリル酸、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレ
ート、ポリオキサゾリジン、ポリアスパルタミド、ポリシアル酸、ならびにそれらの誘導
体、混合物、およびコポリマーが挙げられる(しかし、これに限定されない)。
【0102】
したがって、ポリマー(好ましくは親水性)は、活性薬剤、もしくは本明細書中で開示
される他の関連化学実体と結合体化されて、活性薬剤の癌細胞への送達を増強し得る。ポ
リマー−活性薬剤結合体は、好ましくは、血液循環時間を延長させるのに有効な量、なら
びに/またはネイティブな、もしくは非誘導体である活性薬剤に対するこの組成物の抗原
性および/もしくは免疫原性を減少させるのに有効な量で投与される。特に好ましい親水
性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリヒドロキ
シプロピルメタクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシ
エチルアクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリメチル
オキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシエチルオキサゾリン、ポリヒド
ロキシプロピルオキサゾリン、ポリアスパルタミド、および/もしくは親水性セルロース
誘導体が挙げられる(しかし、これに限定されない)。好ましい親水性ポリマーは、例え
ば、約1,000〜10,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールであ
る。1つに実施形態においては、ポリエチレングリコールは、1,000〜5,000ダ
ルトンの分子量を有する。本発明での使用が予想されるさらなるポリマーは、2002年
4月11日に公表された、米国特許公開公報(U.S.Pre−Grant Publi
shed)第20020041898号(本明細書中において、参考のため援用される)
において、より詳細に議論される。
【0103】
(B2.標的化部分)
標的化部分は、本発明の化学実体と意図され、そして定義され、選択された細胞の型も
しくは標的細胞集団(例えば、癌細胞)に結合する。この点で有用な標的化部分としては
、抗体および抗体フラグメント、ペプチドならびにホルモンが挙げられる。既知の細胞表
面レセプターに対応するタンパク質(低密度リポタンパク質、トランスフェリン、および
インシュリンを含む)、線維素溶解性酵素、抗HER2、血小板結合タンパク質(例えば
、アネキシン)、ならびに生物学的反応修飾因子(インターロイキン、インターフェロン
、エリスロポイエチン、およびコロニー刺激因子)がまた、標的化部分と意図される。オ
リゴヌクレオチド(例えば、標的細胞核酸の一部と相補的であるアンチセンスオリゴヌク
レオチド)は、本発明の標的化部分として使用され得る。標的化部分はまた、標的細胞表
面に結合するオリゴヌクレオチドであり得る。定義された標的細胞集団に結合する能力を
保持する、上記に挙げられる標的化部分のアナログもまた、標的化部分として使用され得
る。
【0104】
上記の標的化部分との機能的等価物もまた、本発明の標的化部分として有用である。例
示的な、機能的に等価な標的化部分は、標的化部分の標的細胞への結合のために適切な構
造および/もしくは配向性を模倣するように設計される、有機化学的構築物である。別の
、機能的に等価な標的化部分は、標的化部分の結合親和性を示す、短いポリペプチドであ
る。
【0105】
本発明の好ましい標的化部分は、標的細胞の表面にある抗原と応答性のある抗体、ペプ
チド、オリゴヌクレオチドなどである。市販されているか、または文献に記載されるかの
いずれかであるポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方が、利用され得る。
抗体は、抗体全体もしくはそれらのフラグメントであり得る。モノクローナル抗体および
フラグメントは、従来の技術(例えば、ハイブリドーマ合成、組み換えDNA技術、およ
びタンパク質合成)に従って生成され得る。有用なモノクローナル抗体およびフラグメン
トは、あらゆる種(ヒトを含む)に由来され得るか、または2つ以上の種由来の配列を利
用するキメラタンパク質として生成され得る。
【0106】
本発明の1つの実施形態において、ヒトモノクローナル抗体およびヒト化マウス抗体が
、標的化部分として使用される。ヒト化標的化部分が、宿主の受容者における抗体もしく
はポリペプチドの免疫反応を減少させ得、半減期の増加および有害な免疫応答の減少を可
能にし得る。マウスモノクローナル抗体は、例えば、マウスFv領域またはそれらの相補
性決定領域をコードするヌクレオチド配列を、ヒト定常ドメイン領域およびFc領域をコ
ードするヌクレオチド配列に組み換えることによって、ヒト化され得る。マウス残基はま
た、ヒト変異領域の枠組みのドメイン内に保持され、適切な標的部位へ結合する特徴を確
実にし得る。標的化部分の非制限的な例は、脳のグリア細胞(α−2−糖タンパク質)に
対する抗α−2−GP抗体である(Slepnevら、Bioconjugate Ch
em.3:273−274(1992)に記載される)。種々の活性薬剤の癌細胞への送
達のために遺伝的に改変された抗体は、Bodey,B.(2001)Expert O
pin Biol.Ther.1(4):603−17に概説される。
【0107】
本発明の別の実施形態において、標的化部分は、標的細胞の表面にあるレセプターと応
答性のあるリガンドである。したがって、標的化部分はとしては(制限されることなく)
、細胞の結合成分に対して親和性のあるホルモン、細胞の結合成分に認識される炭水化物
部分を含有するあらゆる分子、および細胞の結合成分に結合する薬物もしくは低分子が挙
げられる。「結合成分」という語句は、レセプターおよび分子アクセプターの両方を含む
。好ましくは、結合成分は、細胞表面結合成分である。1つの実施形態において、標的化
部分は、標的部位に結合する、天然に存在するタンパク質(例えば、インシュリン)であ
る。サイトカイン(インターロイキンを含む)、ならびに顆粒球/マクロファージコロニ
ー刺激因子(GM−CSF)および腫瘍壊死因子(TNF)のような因子もまた、レセプ
ターを高レベルに発現する特定の細胞に結合することが知られた特異的な標的化部分であ
る(Terlikowski,SJ(2002)Toxicology 174(3):
143−152)。
【0108】
非標的細胞もしくは組織へのウレアーゼ曝露または他の活性薬剤曝露を減少させるため
、標的化部分は、最小の非標的応答性を示し、一方で標的特異性および標的応答性を保持
している成分を同定するため、スクリーニングされ得る。非標的曝露(ならびに有害な非
標的局在および/もしくは有毒性)を減少させることによって、増加された用量のウレア
ーゼもしくは他の活性薬剤が投与され得る。これによって、標的細胞の曝露を、受容でき
ない非標的毒性の閾値より低く保持しながら最大化するため、ウレアーゼもしくは他の治
療薬の最も高い可能濃度での投与が可能になる。
【0109】
本発明の特定の実施形態において、2つ以上の活性薬剤標的化部分結合体が利用される
、ここで、各結合体は、異なる標的化部分(例えば、異なる抗体種)を含む。各利用され
る標的化部分は、同じもしくは異なる標的部位と関連し得る、異なる標的部位領域に結合
する。各投与される結合体の活性薬剤化合物は、同じかもしくは異なる。米国特許第4,
867,962号および同第5,976,535号(これらはそれぞれ、本明細書中にお
いて参考のため援用される)を参照のこと。本発明のこの実施形態の実施において、各標
的化部分(例えば、抗体種)が異なる標的部位領域(例えば、標的部位エピトープ)を認
識するので、標的部位に結合する活性薬剤の標的部位付着は改善される。この代替の標的
部位領域アプローチは、活性薬剤のためのより効力のある標的部位結合点を提供する。結
果的に、実際の、もしくは有効的な標的部位飽和(例えば、エピトープ飽和および/もし
くは立体障害を介する)は回避され得る。したがって、活性薬剤(例えば、ウレアーゼ)
の相加的な蓄積が達成され得る。あるいは、もしくは加えて、付加的なウレアーゼ特異的
遺伝子の産物が活性薬剤として(例えば、標的部位で触媒として活性なホロ酵素の生成の
ため)、使用され得る。例示的なウレアーゼアポ酵素としては、細菌のureABC遺伝
子(Burne、R.A.およびChen,Y.M.(2000)Microbes a
nd Infection 2:533−542)によってコードされるγ、β、および
αサブユニットが挙げられる。
【0110】
特定の標的部位に指向するモノクローナル抗体への交差応答性のパターンは、診断もし
くは治療用途での使用において非重複交差応答性を有する、2つ以上の標的特異性モノク
ローナル抗体の一団を同定するために、分析され得る。「交差応答性の非重複パターン」
という語句は、ある抗体種によって結合される非標的組織が、別の抗体種によって結合さ
れる非標的組織と実質的に異なることを示す。交差応答性のパターンは、治療用途の活性
薬剤の曝露を比例的に減少させるのに必要な程度に異なっている。より少ない抗体の組み
合わせ(もしくは、抗体のより大きな一団)の重複が、好ましい。
【0111】
抗体は種々の方法によってスクリーニングされ得る。標的組織との応答性、および非標
的組織との交差応答性を決定するために、免疫組織化学的分析が利用され得る。抗体種が
結合する組織は、組織を抗体に曝露し;組織を洗浄して未結合の抗体を除去し;そして結
合した抗体の存在を検出することによって、同定され得る。インビトロでの組織化学的手
順は、当該分野で公知である。例えば、Sanchez−lslas,E.およびLeo
n−Olea,M.(2001)Nitric Oxide 5(4):302−16を
参照のこと。
【0112】
本発明の組成物はまた、hCG分泌腫瘍の処置に有用であり得る。胎盤の栄養膜はhC
Gを通常合成する部位であるため、妊娠性栄養膜腫瘍および非妊娠性栄養膜腫瘍の両方が
、hCGを合成および分泌することが理解され得る。実際、hCG測定は、これらの腫瘍
の診断、腫瘍の病期の決定、および治療効果のモニタリングに非常に有用であった。加え
て、いくつかの非栄養膜性腫瘍は、異所的に(ectopically)hCGを生成し
得る。hCGは、いくつかの腫瘍に対して成長因子として作用し得る(Melmed S
.およびBraunstein GD:Human chorionic gonado
tropin stimulates proliferation of Nb2 r
at lymphoma cells.J.Clin.Endocrinol.Meta
b 56:1068−1070,(1983))。例えば、米国特許第6,448,02
2号(本明細書中において参考のため援用される)を参照のこと。
【0113】
したがって、本発明の1つの実施形態によれば、hCG分泌腫瘍に対して活性薬剤を標
的に向ける抗hCG抗体の使用は、hCG分泌腫瘍の増殖を抑制する。したがって、特定
の実施形態において、本発明の化学実体は、活性薬剤に付加される標的化部分であり、抗
腫瘍抗原抗体、抗hCG抗体、もしくは癌細胞表面レセプターに特異的に結合し得るリガ
ンドである。標的化部分は、好ましくは、酵素ウレアーゼに連結されて融合タンパク質を
形成するポリペプチドである。
【0114】
上記のように、本発明の1つの実施形態に従って、活性薬剤は、標的化部分に直接的に
結合体化される。あるいは、本発明の別の実施形態に従って、二段階もしくは三段階のア
プローチが、活性薬剤を癌細胞に送達するのに使用される。したがって、この活性薬剤は
、第二の結合パートナーと相互作用し得る第一の結合パートナーを含み得、そしてこの化
学実体は、第二の結合パートナーを含む標的化部分を含み得る。これらの実施形態は、以
下の第III章により詳細に記載される。
【0115】
当業者は、本発明の標的化部分、および活性薬剤が、任意の様式で互いに結合され得る
ことを理解する。したがって、標的化部分がポリペプチドである場合、活性薬剤は、この
標的化分子のアミノ末端もしくはカルボキシ末端のいずれかに結合し得る。付加が分子の
それぞれの活性を干渉しない限り、標的化部分はまた、活性薬剤の内部領域に結合され得
、または逆に、活性薬剤は、標的化部分の内部部位に結合され得る。
【0116】
標的化部分および活性薬剤は、当業者に周知である多くの手段のいずれかによって、付
加され得る。代表的に、活性成分は、直接的に、もしくはリンカー(スペーサー)を通し
て、標的化部分に結合体化される。しかし、標的化部分および活性薬剤の両方がポリペプ
チドである場合、単鎖融合タンパク質のようなキメラ分子を、組み換え体として発現する
ことは、好ましくあり得る。
【0117】
1つの実施形態において、標的化部分(例えば、αhEGFR IgG Ab)は、活
性薬剤もしくは化学実体(例えば、薬物、ウレアーゼ、もしくはリポソーム)に、化学的
に結合体化される。分子を化学的に結合する手段は、当業者に周知である。
【0118】
薬剤を抗体もしくは他のポリペプチド標的化分子に付加する手順は、この薬剤の化学構
造に従って変動する。ポリペプチドは、代表的に、種々の官能基(例えば、カルボン酸(
COOH)もしくは遊離アミン(−NH)基を含み、これらは、活性薬剤上の適切な官
能基と反応しこれらに標的化部分を結合するのに利用可能である。
【0119】
あるいは、標的化部分および/もしくは活性薬剤は、さらなる反応性の官能基に曝露す
るか、もしくは反応性の官能基を付加するように誘導され得る。この誘導は、多くのリン
カー分子(Pierce Chemical Company,Rockford II
Iから入手可能なもの)のいずれかの付加を含み得る。
【0120】
本明細書中で使用される場合、「リンカー」は、標的化部分と活性薬剤とを結合するの
に使用される分子である。リンカーは、標的化部分および活性薬剤の両方との共有結合を
形成し得る。適切なリンカーは、当業者に周知であり、直鎖もしくは分枝した炭素リンカ
ー、複素環式炭素リンカー、ペプチドリンカーが挙げられる(しかしこれに限定されない
)。標的化部分および活性薬剤分子がポリペプチドである場合、リンカーは、構成アミノ
酸と、それらの側鎖を通して結合され得る(例えば、システインへのジスルフィド連結を
通して)。しかし、好ましい実施形態において、リンカーは、末端アミノ酸のα炭素のア
ミノ基およびカルボキシル基に結合される。
【0121】
特定の薬剤の基に反応性がある官能基、および抗体に反応性のある別の官能基を有する
二官能性リンカーは、所望の免疫結合体を形成するのに使用され得る。あるいは、誘導体
化は、標的化部分の化学処理(例えば、遊離アルデヒド基を生成する、過ヨウ化酸塩によ
る糖タンパク質抗体の糖成分のグリコール切断)を含み得る。抗体上の遊離アルデヒド基
は、活性薬剤上の遊離アミノ基もしくはヒドラジン基と反応されて、それらと結合し得る
(米国特許第4,671,958号を参照のこと)。ポリペプチド(例えば、抗体もしく
は抗体フラグメント)上での遊離スルフヒドリル基の生成手順もまた、公知である(米国
特許第4,659,839号を参照のこと)。
【0122】
種々の化合物(放射性核種金属キレート剤、毒物および薬物を含む)のタンパク質(例
えば抗体)への付加のための多くの手順およびリンカー分子が公知である(欧州特許出願
第188,256号;米国特許第4,671,958号、同第4,659,839号、同
第4,414,148号、同第4,699,784号、同第4,680,338号、同第
4,569,789号、および同第4,589,071号、ならびにBorlingha
usら(1987)Cancer Res.47:4071−4075を参照のこと)。
特に、種々の免疫毒素の生成は、当該分野で周知であり、そして例えば、「Monocl
onal Antibody−Toxin Conjugates:Aiming th
e Magic Bullet」、Thorpeら、Monoclonal Antib
odies in Clinical Medicine,Academic Pres
s、168〜190ページ(1982);Waldmann(1991)Science
,252:1657;米国特許第4,545,985号、および同第4,894,443
号に見られ得る。
【0123】
いくつかの環境において、キメラ分子がその標的部位に達した場合、標的化部分から活
性薬剤を遊離させることが分子を望ましい。したがって、エフェクターが標的部位で放出
されるべき場合、この標的部位近傍において切断され得る連結を含むキメラ結合体が、使
用され得る。標的化部分から薬剤を放出する、この連結の切断は、酵素活性によってか、
または標的細胞中もしくは標的部位近傍のいずれかに結合体が供される状態によって、促
進され得る。標的部位が腫瘍である場合、腫瘍部位に存在する条件(例えば、腫瘍関連酵
素もしくは酸性pHに曝露される場合)下で切断され得るリンカーが、使用され得ること
が理解されるべきれある。
【0124】
多くの異なる切断可能なリンカーは、当業者に公知である(米国特許第4,618,4
92号、同第4,542,225号、および同第4,625,014号を参照のこと)。
これらのリンカー基から活性薬剤を放出する機構としては、例えば、感光性結合への照射
および酸に触媒される加水分解が挙げられる。米国特許第4,671,958号は、例え
ば、患者の補体系のタンパク質分解酵素によって、インビボにおいて標的部位で切断され
るリンカーを含む、免疫結合体についての記載を含む。種々の放射性診断化合物、放射性
治療化合物、薬物、毒物、および他の薬剤を標的化部分へ付加する、報告されている多数
の方法から見て、当業者は、選択した標的化部分に任意の薬剤を付加するための、適切な
方法を決定し得る。
【0125】
標的化部分および/もしくは活性薬剤が相対的に短い場合、これらは標準的な化学的ペ
プチド合成技術を用いて合成され得る。両分子が相対的に短い場合、キメラ分子は、単一
の連続するポリペプチドとして合成され得る。あるいは、標的化部分および活性薬剤は、
別個に合成され得、そして、次いで1つの分子のアミノ末端と他の分子のカルボキシル末
端との縮合によって融合され、これによってペプチド結合が形成され得る。あるいは、標
的化部分および活性薬剤は、それぞれペプチドスペーサー分子の一方の末端と縮合され、
これによって連続的な融合タンパク質を形成し得る。
【0126】
配列のC末端アミノ酸が不溶性の支持体に付加され、配列中の残りのアミノ酸の逐次的
な付加がそれに続く固相合成が、本発明のポリペプチドの化学合成方法の1つの実施形態
として、意図される。固相合成の技術は、BaranyおよびMerrifield、S
olid−Phase Peptide Synthesis;The Peptide
s:Analysis,Synthesis,Biology.第2巻:Special
Methods in Peptide Synthesis、パートA.3〜284
ページ;Merrifieldら、J.Am.Chem.Soc.85:2149−21
56(1963);および、Stewartら、Solid Phase Peptid
e Synthesis(第2版)Pierce Chem.Co.、Rockford
,III.(1984)によって記載される。
【0127】
好ましい実施形態において、本発明のキメラ融合タンパク質は、組み換えDNA方法論
を用いて合成される。一般的に、これは、融合タンパク質をコードするDNA配列を作製
すること、発現カセット中のDNAを特定のプロモーターの制御下におくこと、宿主中で
タンパク質を発現させること、発現されたタンパク質を単離すること、および、必要な場
合、このタンパク質を再生すること、を含む。
【0128】
本発明における融合タンパク質をコードするDNAは、例えば、適切な配列のクローニ
ングおよび制限酵素切断、もしくは直接的な化学合成(例えば、Narangら(197
9)Meth.Enzymol. 68:90−99のリン酸トリエステル法;Brow
nら(1979)Meth.Enzymol. 68:109−151のリン酸ジエステ
ル法;Beaucageら(1981)Tetra.Lett.,22:1859−18
62のジエチルホスホルアミダイト法;および米国特許第4,458,066号の固体支
持法(solid support method))を含む、任意の適切な方法によっ
て調製され得る。
【0129】
化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成する。これは、相補的な配列とのハイブ
リダイゼーションによってか、または1本鎖をテンプレートとして用いたDNAポリメラ
ーゼによる重合によって、2本鎖DNAに転換され得る。当業者は、DNAの化学合成が
約100塩基の配列までに制限される一方、より長い配列が短い配列のライゲーションに
よって得られることを認識する。
【0130】
あるいは、部分配列(subsequence)がクローン化され得、そして適切な部
分配列が、適切な制限酵素を用いて切断され得る。フラグメントは、次いで、連結されて
、所望のDNA配列を生成し得る。
【0131】
2つの分子が、好ましくは、実質的に直接に、互いに結合する一方で、当業者は、分子
が1つ以上のアミノ酸からなるペプチドスペーサーによって分離され得ることを理解する
。一般に、スペーサーは、タンパク質を結合する以外に、または、それらの間のある最小
の距離もしくは他の空間的関係を保存する以外に、特定の生物学的活性を有さない。しか
し、スペーサーの構造アミノ酸は、分子のいくつかの特性(例えば、折りたたみ、正味の
電荷、もしくは疎水性)に影響するように選択される。
【0132】
融合タンパク質をコードする核酸配列は、種々の宿主細胞(E.coli、他の細菌性
宿主、酵母、および種々のより高等な真核生物細胞(例えば、COS細胞株、CHO細胞
株およびHeLa細胞株、ならびにミエローマ細胞株)が挙げられる)において発現され
得る。組み換えタンパク質遺伝子は、各宿主の適切な発現制御配列に、操作可能に連結さ
れる。E.coliの場合、これは、プロモーター(例えば、T7、trp、もしくはラ
ムダプロモーター)、リボソーム結合部位、および好ましくは、転写停止シグナル含む。
真核生物細胞の場合、この制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロ
ウイルス、などに由来するプロモーターおよび好ましくは、エンハンサー、ならびにポリ
アデニル化配列を含み、そしてスプライシングドナー配列およびアクセプター配列を含み
得る。
【0133】
本発明のプラスミドは、E.coliに対する塩化カルシウム形質転換、および哺乳動
物細胞に対するリン酸カルシウム処理もしくは電気穿孔法のような周知の方法によって、
選ばれた宿主細胞中に移送され得る。プラスミドによって形質転換される細胞は、プラス
ミドに含まれる遺伝子(例えば、amp、gpt、neo、およびhyg遺伝子)によっ
て与えられる抗生剤への耐性によって選別され得る。
【0134】
一旦発現された後、この組み換え融合タンパク質は、当該分野において標準的な手順(
硫安沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動など)に従
って精製され得る(R.Scopes(1982)Protein Purificat
ion,Springer−Verlag,N.Y.;Deutscher(1990)
Methods in Enzymology Vol.182:Guide to P
rotein Purification., Academic Press,Inc
.N.Y.を参照のこと)。薬学的使用のためには、少なくとも90〜95%同質である
、実質的に純粋な組成物が好ましく、そして98〜99%以上同質であると最も好ましい
。一旦(部分的に、もしくは所望の同質性まで)精製された後、このポリペプチドは、次
いで治療学的に使用され得る。
【0135】
当業者は、化学合成、生物学的発現、もしくは精製の後、標的に向けられる融合タンパ
ク質が、構成要素のポリペプチドのネイティブな高次構造より実質的に異なる高次構造を
有し得ることを認識する。この場合において、ポリペプチドを変性および還元し、次いで
このポリペプチドを適切な高次構造へと再度折りたたませることが必要であり得る。タン
パク質を還元および変性し、そして再折りたたみを誘導する方法は、当業者に周知である
(Debinskiら(1993)J.Biol.Chem.,268:14065−1
4070;KreitmanおよびPastan(1993)Bioconjug.Ch
em.,4:581−585;ならびにBuchnerら(1992)Anal. Bi
ochem.,205:263−270を参照のこと)。
【0136】
当業者は、標的に向けられる融合タンパク質に対して、その生物学的活性を減少させる
ことなく改変が行われ得ることを認識する。いくつかの改変は、クローニング、発現、も
しくは標的化分子の融合タンパク質への組み込みを、促進させ得る。このような改変は、
当業者に周知であり、そして、例えば、開始部位を提供するためのアミノ末端へ付加され
るメチオニン、または、都合よく位置付けられた制限酵素切断部位もしくは終止コドンを
生成するようにいずれかの末端に配置される付加的なアミノ酸、が挙げられる。
【0137】
(B3.取り込まれる活性薬剤)
特定の実施形態において、本発明は、活性薬剤(例えば、ウレアーゼ)の癌細胞への送
達のために、小胞(例えば、リポソームおよび/もしくは化学実体としてのナノカプセル
)の使用を意図する。このような処方物は、本明細書中で開示されるポリペプチドの薬学
的に受容可能な処方物、治療剤、および/もしくは抗体の導入のために、好ましくあり得
る。リポソームの処方および使用は、一般的に当業者に公知である。(Backer,M
.V.ら(2002)Bioconjug Chem 13(3):462−7を参照の
こと)。好ましい実施形態において、開示される組成物は、リポソームに取り込まれ得る

【0138】
ナノカプセルは、一般的に、化合物を安定な状態かつ再現性のある方法で、取り込み得
る(Whelan,J.(2001)Drug Discov Today 6(23)
:1183−84)。細胞内の重合体の過負荷に起因する副作用を避けるため、このよう
な超微小な粒子(約0.1μm)が、インビボで分解され得るポリマーを用いて設計され
得る。これらの要求を満たす、生分解性のポリイソブチルシアノアクリル酸塩のナノ粒子
が、本発明における使用のために意図され、そしてそのような粒子は、例えば、Lamb
ert,G.ら(2001)Int J Pharm 214(1−2):13−6に記
載されるように、容易に作製され得る。生物学的に活性のある物質を含むポリアルキル−
シアノ−アクリル酸塩のナノ粒子の調製、およびそれらの使用の方法は、米国特許第4,
329,332号、同第4,489,055号、および同第4,913,908号に記載
される。ナノカプセルは、Capsulution,Inc.(www.capsulu
tion.com)のような供給源から商業的に入手可能である。
【0139】
活性薬剤の送達のためのナノカプセルを含有する薬学的組成物は、米国特許第5,50
0,224号、同第5,620,708号、および同第6,514,481号に記載され
る。米国特許第5,500,224号は、ナノカプセルのコロイド状懸濁液の形態である
(この懸濁液は、その中に界面活性剤が溶解され、かつその中に多数の、500ナノメー
ターより小さい直径を有するナノカプセルが懸濁される油から本質的になる油相を含む)
、薬学的組成物を記載する。米国特許第5,620,708号は、薬物および他の活性薬
剤の投与のための組成物および方法を記載する。この組成物は、哺乳動物の腸細胞の表面
に存在する標的分子に特異的に結合する結合成分に付加された、活性薬剤キャリア粒子を
含有する。結合成分は、粒子状の活性薬剤キャリアのエンドサイトーシスもしくはファゴ
サイトーシスを開始させ、それによってこのキャリアが腸細胞に吸収されるのに十分な結
合親和性もしくは結合力で、標的分子に結合する。活性薬剤は、次いで、キャリアから宿
主の体循環へ放出される。このようにして、腸における、ポリペプチドのような分解感受
性薬剤の分解は、タンパク質およびポリペプチドの腸管からの吸収が増進されると同時に
、回避され得る。あるいは、本発明は、標的細胞周辺環境での活性薬剤の放出を意図する
。例えば、1つの実施形態において、ウレアーゼは、標的細胞への標的化部分の結合に続
いて、ナノカプセルから放出され、それによって、ウレアーゼは、標的細胞(例えば、腫
瘍細胞)周辺の微小環境中に放出される。米国特許第6,379,683号および同第6
,303,150号は、ナノカプセルを作製する方法、およびそれらを使用する方法を記
載し、そして本明細書中で参考のため援用される。
【0140】
したがって、本発明の1つの実施形態において、この接触としては、標的化部分および
第一のコイル形成ペプチド(選択された電荷によって、および第二の逆に荷電したコイル
形成ペプチドと相互作用して安定したαへリックス状コイルドコイルヘテロ二量体を形成
する能力によって、特徴付けられる)を含む結合体の、細胞への添加が挙げられる。続い
て、リポソームがこの細胞に添加される。このリポソームは、外部表面および内部区画を
含み;このリポソームの内部区画内に局在する活性薬剤(例えば、ウレアーゼ)を含み;
そして、多くの二次ペプチドを含み、ここで各二次ペプチドは、このリポソームの外部表
面に結合される。
【0141】
以下に詳細に記載される別の実施形態において、この接触としては、細胞へのリポソー
ムの添加が挙げられ、ここで、このリポソームは、活性薬剤(例えば、ウレアーゼ)を、
取り込まれた形態で有し、そしてこのリポソームの外部表面は、標的表面に特異的に結合
するのに有効な細胞標的化部分、および標的化部分を標的表面との相互作用から遮蔽する
のに有効な親水性ポリマー被覆を含む。この親水性ポリマー被覆は、解放可能な連結を通
してリポソームの表面脂質成分に共有結合性に連結されるポリマー鎖から生成され得る。
この実施形態において、放出剤が、添加されるリポソームの連結の実質的な部分の解放を
引き起こすのに有効な量で腫瘍細胞に添加され、これによって、標的表面に標的化部分を
曝露する。この解放可能な連結は、還元可能な化学的連結(例えば、ジスルフィド連結、
エステル連結、およびペプチド連結)であり得る。好ましくは、親和性部分は、癌特異抗
原へ特異的に結合するのに有効である。
【0142】
本発明のこの実施形態に従って、哺乳動物被験体に対するリポソームに基づく治療方法
が意図される。この方法は、被験体への、表面結合標的化部分および親水性ポリマー被覆
を有するリポソームの全身性の投与(例えば、静脈内投与)を含む。親水性ポリマー被覆
は、解放可能に付加されたポリマー鎖からなり、標的化部分を、その標的との相互作用か
ら遮蔽するのに有効である。好ましい親水性ポリマーは、上記で議論される。投与される
リポソームは、所望のリポソームの体内分布が達成されるまで、全身性に循環するように
される。放出される薬剤は、以下に記載されるように、解放可能な連結の実質的な部分(
例えば約50%より多い、好ましくは約70%より多い、そしてより好ましくは約90%
より多い)の切断を引き起こすのに有効な量で、被験体に投与される。標的化部分は、親
水性ポリマー鎖の解放によって、その標的との相互作用のために曝露される。
【0143】
好ましい実施形態において、リポソームは、固形腫瘍の処置に使用される。リポソーム
はウレアーゼ、および必要に応じて、付加的な活性薬剤(例えば、抗腫瘍薬物)を取り込
まれた形態で含み、そして腫瘍特異的抗原へ特異的に結合するのに有効な標的化部分によ
って、腫瘍領域に対して標的化される。例示的な方法において、リポソームは、増殖する
腫瘍内皮細胞で発現するFlk−1,2レセプターへの選択的付加のために、リポソーム
中にVEGFリガンドを含むことによって、腫瘍の血管内皮細胞に対して標的化される(
Niederman,T.M.ら(2002)Proc Natl Acad Sci
99(10):7009−14)。
【0144】
好ましくは、リポソームは、約30〜400nmのサイズを有する。このサイズの範囲
のリポソームは、内皮細胞に存在して腫瘍の血管系を内張りしている「ギャップ」を通っ
て腫瘍に入り得ることが示されている(Maruyama,Kら(1999)Adv D
rug Deliv Rev 40(1−2):89−102)。
【0145】
リポソームの投与(例えば、静脈内投与)に続いて、そしてリポソームが被験体全体に
分布し、そして腫瘍に結合することができるのに十分な時間が経過した後、放出剤が被験
体に投与され、親水性表面被覆をリポソームから放出させる。表面被覆の放出は、標的細
胞へのリポソームの結合を可能にする標的化部分を曝露するのに有効である。1つの実施
形態において、この親水性表面被覆は、pH感受性の連結によってリポソームに結合され
る。この連結は、リポソームが腫瘍に結合した後に解放される。
【0146】
上記に記載される任意の実施形態におけるリポソームは、必要に応じて、1つ以上の取
り込まれた抗腫瘍薬物もしくは画像化剤もしくはこの両方を含有する。リポソームは、付
加され、かつ分布するようにされ、この後、放出剤が投与され、親水性表面被覆を放出さ
せて付加された標的化部分を曝露し得、そして結合を開始させ得る。したがって、取り込
まれた抗腫瘍薬物もしくは画像化剤もしくはこの両方は、特異的かつ局所的に、標的に投
与される。例示的な抗癌薬物は、以下の第III章Aに記載される。本発明の方法に使用
する例示的な画像化剤は、以下の第III章Bに記載される。リポソームは、米国特許第
6,043,094号(本明細書中で参考のため援用される)に記載されるように調製さ
れ、そして投与され得る。
【0147】
米国特許第6,180,114号(本明細書中で、その全体が参考のため援用される)
に記載されるような、さらなる送達剤(例えば、小さな単層の小胞(small uni
lamellar vesicle;SUV))が、本発明において利用され得る。
【0148】
(B4.活性薬剤調節因子)
活性薬剤調節因子はまた、本発明によって関連化学実体として意図される。好ましい活
性薬剤調節因子は、ウレアーゼ調節因子である。「ウレアーゼ調節因子」は、ウレアーゼ
のインヒビターであるか、もしくはウレアーゼのエンハンサーであるかのいずれかである
。組成物(例えば、薬学的組成物)中の調節因子は、したがって、ウレアーゼポリヌクレ
オチド配列、ウレアーゼアンチセンス分子、ウレアーゼポリペプチド、タンパク質、ペプ
チド、またはウレアーゼ生物活性の有機調節因子(例えば、インヒビター、アンタゴニス
ト(抗体を含む)、もしくはアゴニスト)の全てもしくは一部から選択され得る。好まし
くは、この調節因子は、ウレアーゼの発現もしくはウレアーゼの活性によって媒介される
か、または改善される医学的状態を処置する際に、活性である。
【0149】
「ウレアーゼのインヒビター」は、以下:(1)ウレアーゼの発現、改変、調節(re
gulation)、活性化、もしくは分解:または(2)ウレアーゼの1つ以上の正常
機能(カルバミン酸およびアンモニアの生成をもたらす尿素の加水分解を含む)、を妨害
する分子もしくは分子群を含む。インヒビターは、このインヒビターが静電気的相互作用
もしくは化学的相互作用を介してウレアーゼに結合する場合、「ウレアーゼに直接的に作
用する」。このような相互作用は、他の分子によって媒介され得るか、もしくは媒介され
ない可能性がある。インヒビターは、その最も速い効果が、ウレアーゼの発現、活性化も
しくは機能に影響するウレアーゼ以外の分子に対してである場合、「ウレアーゼに間接的
に」作用する。
【0150】
ウレアーゼインヒビターは、尿素のアンモニウムイオンへの転換を遅くさせるように働
く。ウレアーゼインヒビターとしては、ヒドロキサム酸誘導体(例えば、アセトヒドロキ
サム酸)、ホスホラミド誘導体(例えば、フルロファミド)、リン酸塩、チオール(例え
ば、2−メルカプトエタノールなど)、ホウ酸、ハロゲン化合物(例えば、フッ化物)、
および桂皮抽出物、が挙げられる(しかしこれに制限されない)。さらなるウレアーゼイ
ンヒビターは、当該分野で公知であり、そして米国特許第4,824,783号(198
9年4月25日)(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0151】
ウレアーゼ(の)エンハンサーは、以下:(1)ウレアーゼの発現、改変、調節(re
gulation)、もしくは活性化:または(2)ウレアーゼの1つ以上の正常機能、
を増強する分子もしくは分子群を含む。エンハンサーは、このエンハンサーが、静電気的
相互作用もしくは化学的相互作用を介してウレアーゼに結合する場合、「ウレアーゼに直
接的に作用する」。このような相互作用は、他の分子によって媒介され得るか、もしくは
媒介されない可能性がある。エンハンサーは、その最も速い効果が、ウレアーゼの発現、
活性化もしくは機能に影響するウレアーゼ以外の分子に対してである場合、「ウレアーゼ
に間接的に」作用する。
【0152】
(C.さらなる活性薬剤)
さらなる活性薬剤もまた、本発明の組成物に含まれる。さらなる活性薬剤(例えば、抗
腫瘍剤(増殖する細胞に対して活性のある薬剤))は、細胞が第一の活性薬剤に接触され
る前に、接触されると同時に、または接触される後に、この組成物において利用され得る
。例えば、ウレアーゼが腫瘍細胞に標的化された後、これは腫瘍の外部環境を(例えば、
pHの変化を介して)調節(modulate)もしくは調節(regulate)する
能力を有する。塩基性環境を好む活性薬剤(例えば、抗腫瘍剤)は、次いで、より有効に
なる。
【0153】
特定の実施形態において、ウレアーゼによって酵素的にプロセスされ得る基質が、活性
薬剤としての使用を意図される。好ましくは、この活性薬剤は、ウレアーゼが利用して、
アンモニウムイオンを形成する基質(例えば、尿素)である。
【0154】
例示的な抗腫瘍剤としては、サイトカインおよび他の成分(例えば、インターロイキン
(例えば、IL−2、IL−4、IL−6、IL−12など)、トランスフォーミング成
長因子−β、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、インターフェロン(例えば、γ−インター
フェロン)、コロニー刺激因子(例えば、GM−CSF、M−CSFなど)、血管透過性
因子、レクチン炎症反応促進因子(セレクチン;例えば、L−セレクチン、E−セレクチ
ン、P−セレクチン)、およびタンパク質性成分(例えば、C1qおよびNKレセプター
タンパク質))が挙げられる。さらなる適切な抗腫瘍剤としては、血管新生を阻害し、し
たがって転移を阻害する化合物が挙げられる。このような薬剤の例としては、プロタミン
メドロキシプロゲステロン、ペントサンポリサルフェート、スラミン、タキソール、サリ
ドマイド、アンギオスタチン、インターフェロン−α、メタロプロテイナーゼインヒビタ
ー、血小板第4因子、ソマトスタチン、トロンボスポンジンが挙げられる。本発明の下で
有用な活性薬物の、他の代表的かつ非制限的な例としては、ビンクリスチン、ビンブラス
チン、ビンデシン、ブスルファン、クロラムブシル、スピロプラチン、シスプラチン、カ
ルボプラチン、メトトレキサート、アドリアマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン
、シトシンアラビノシド、アラビノシルアデニン、メルカプトプリン、ミトーテン、プロ
カルバジン、ダクチノマイシン(アンチノマイシンD)、ダウノルビシン、塩化ダウノル
ビシン、タキソール、プリカマイシン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、フルタ
ミド、ロイプロリド、酢酸メゲストロール、タモキシフェン、テストラクトン、トリロス
タン、アムサクリン(m−AMSA)、アスパラギナーゼ(L−アスパラギナーゼ)、エ
トポシド、ヘマトポルフィリンのような血液製剤、または上記の誘導体、が挙げられる。
活性薬剤の他の例としては、天然もしくは合成由来の核酸、RNA、およびDNAのよう
な遺伝物質(組み換えRNAおよび組み換えDNA)が挙げられる。特定のタンパク質を
コードするDNAは、多くの異なる型の疾患の処置に使用され得る。例えば、腫瘍壊死因
子遺伝子もしくはインターロイキン−2遺伝子は、進行性の癌を処置するために提供され
得る;チミジンキナーゼ遺伝子は、卵巣癌もしくは脳腫瘍を処置するために提供され得る
;そして、インターロイキン−2遺伝子は、神経芽細胞腫、悪性黒色腫、もしくは腎臓癌
を処置するために提供され得る。本発明における使用を意図されるさらなる活性薬剤は、
米国特許第6,261,537号(その全体が、本明細書中で参考として援用される)に
記載される。抗腫瘍剤およびこのような薬剤を検出するためのスクリーニングは、Mon
ga、MおよびSausville,E.A.(2002)Leukemia 16(4
):520−6に概説される。
【0155】
特定の実施形態において、この活性製剤は弱塩基性の抗腫瘍化合物であり、その有効性
は、固形腫瘍における細胞内でより高く/細胞外でより低いpH勾配によって減少される
。例示的な弱塩基性の抗腫瘍化合物としては、ドキソルビシンン、ダウノルビシン、ミト
キサントロン、エピルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチンおよび
ビンクリスチンのようなビンカアルカロイド、シクロフォスファミドおよび塩酸メクロレ
タミンのようなアルキル化剤、ならびに抗腫瘍性のプリン誘導体およびピリミジン誘導体
、が挙げられる。
【0156】
本発明の1つの実施形態において、この組成物は、ウレアーゼを含有し、そして実質的
にあらゆるサイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子、および/もしくはインターフェロン)
を欠く。この実施形態において、ウレアーゼ単独、もしくはサイトカイン以外の活性薬剤
を組み合わせたウレアーゼ、好ましくは低分子抗腫瘍剤と組み合わせたウレアーゼは、癌
細胞の増殖を阻害するのに有効である。したがって、この実施形態において、この組成物
は、処置される被験体に存在する内在性サイトカインもしくはネイティブのサイトカイン
と協力して作用し得るか、または作用しない可能性があるが、投与されるこの組成物は、
さらなる外来性サイトカインを含まない。
【0157】
(D.画像化剤)
同様に、画像化剤が、この組成物中もしくは付加的な組成物中に含有され得る。適切な
画像化剤としては、ポジトロン放出断層撮影(PET)、コンピュータ支援断層撮影(c
omputer assisted tomography)(CAT)、単一光子放射
型コンピュータ断層撮影、X線、蛍光透視、および磁気共鳴映像法(MRI)に使用され
る市販の薬剤が挙げられる。
【0158】
画像化剤としては、金属、放射性同位体、および放射線不透過性薬剤(例えば、ガリウ
ム、テクネチウム、インジウム、ストロンチウム、ヨウ素、バリウム、臭素、およびリン
含有化合物)、放射線透過性薬剤、造影剤、色素(例えば、蛍光色素および発色団)、な
らびに比色定量反応もしくは蛍光定量反応を触媒する酵素が挙げられる。一般に、このよ
うな薬剤は、上記に記載されるような種々の技術を用いて付加されるかもしくは取り込ま
れ得、かつ任意の配位で存在し得る。米国特許第6,159,443号および同第6,3
91,280号(これらの両方は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0159】
本発明に基づく造影剤は、イメージング様式に有用である(例えば、X線画像化剤、光
イメージングプローブ、スピン標識、もしくは放射活性単位)。
【0160】
MRIにおける造影剤としての使用に適切な物質の例としては、現在入手可能なガドリ
ニウムキレート剤(例えば、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、およびガド
ペントテートジメグルミン)、ならびに鉄、マグネシウム、マンガン、銅、およびクロム
が挙げられる。
【0161】
CATおよびX線に有用な物質の例としては、ヨウ素ベースの物質、例えば、ジアトリ
ゾアート、およびヨータラム酸塩、によって代表されるイオン性単量体、イオパミドール
、イソヘキソール、およびイオベルソルのような非イオン性単量体、イオトロールおよび
イオジキサノールのような非イオン性二量体、ならびにイオン性二量体(例えば、イオキ
サグレート(ioxagalte))、が挙げられる。
【0162】
空気および他のガスは、超音波画像診断での使用に組み込まれ得る。これらの薬剤は、
当該分野で利用可能な標準的技術、および市販の設備を用いて検出され得る。
【0163】
本発明の1つの実施形態に従って、癌細胞は、活性薬剤と接触させられる前、もしくは
活性薬剤と接触させられた後、もしくは活性薬剤と接触させられる前および後に、画像化
剤と接触させられる。例えば、ウレアーゼが腫瘍細胞に標的化された後、これは腫瘍細胞
の外部環境を(例えば、pHの変化を介して)調節(modulate)もしくは調節(
regulate)する能力を有し得る。塩基性環境を好む画像化剤は、したがってより
効果的である。
【0164】
発光シクレン(cyclen)ベースのランタニドキレート剤とそれらの最初に生ずる
磁気共鳴信号との両方が、pHの変化に感受性があることが示された。pHの変化を感知
するのに使用される発光プローブは、代表的には、ランタニドイオンの蛍光寿命の変化を
pHの関数として検出する。同様に、pHの変化を介する水素イオンの緩和を調節(mo
dulate)する磁気共鳴造影剤が本発明において有用である。どちらの場合において
も、所定の系の中でpHを変化させることにより、増強されたコントラストによって薬剤
を見ることができる。
【0165】
したがって、pH感受性造影剤が、癌細胞のある場所で、もしくは癌細胞の近くで利用
される。癌細胞(単数または複数)はまた、癌細胞のある場所で、もしくは癌細胞の近く
でpHの変化を引き起こす酵素ウレアーゼを含有するウレアーゼ組成物に曝露される。こ
のように、pHの変化は、水性媒体中の水プロトンもしくは他の核の核磁気共鳴緩和特性
を、pHを反映する様式で変化させる。利用され得るpH感受性造影剤の例としては、ラ
ンタニド金属(例えば、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Db、Dy、Ho、Er
、Tm、Ybなど)、または別の常磁性元素(例えば、Fe、Mn、17Oなど)を含有
するこれらの薬剤が挙げられる。利用され得る特定の造影剤としては、H(2)(17)
O、GdDOTA−4AmP(5−)(Magn Reson Med.2003 Fe
b;49(2):249−57に記載される)、ならびにFe(III)メソ−テトラ(
4−スルホネートフェニル)ポルフィン(Fe−TPPS4)(Helpernら(19
87)Magnetic Resonance in Medicine 5:302−
305、および米国特許第6,307,372号(これらは本明細書中で参考として援用
される)に記載される)、が挙げられる。加えて、ポリイオンベースのGd(Mikaw
aら、Acad.Radiol(2002)9(suppl 1):S109−S111
1に記載される)が、本発明で使用され得る。
【0166】
別の代替として、シフト試薬が、癌細胞周囲の水性媒体に提供され得る。このシフト試
薬は、pHの変化が、pHを反映する様式で、水プロトンもしくは他の核の化学的シフト
特性に影響を与えるように構成される。化学的シフト特性の変化は、次いで、核磁気共鳴
を用いて測定され、活性薬剤は生物学的に活性であるかどうかを決定し得る。使用され得
る例示的なシフト試薬としては、ランタニド金属(例えば、Ce、Pr、Nd、Sm、E
u、Gd、Db, Dy、Ho、Er、Tm、もしくはYb)、または別の常磁性元素を
含有するものが挙げられる。利用され得る特定のシフト試薬の例としては、Tm(DOT
P)(5−)、1,4,7,10−テトラアザシロドデカン(tetraazacylo
dodecane)−N,N’,N’’,N’’’−テトラ(メチレンホスフェート(m
ethylenephospate))のツリウム(III)錯体、Dy(PPP)(2
)(7)−ジスプロシウムトリポリホスフェートなど、が挙げられる。
【0167】
本発明の1つの実施形態において、2種のガドリニウム剤(例えば、pH非感受性Gd
DOTP (5−)およびpH感受性GdDOTA−4AmP (5−))を用いた二重
造影剤ストラテジー(dual−contrast−agent strategy)は
、Magn Reson Med(2003)Feb;49(2):249−57に記載
されるように、MRIによるpH地図を作成するのに利用され得る。
【0168】
PET走査での使用に好ましい薬剤としては、13Nおよびフルオロデオキシグルコー
ス(FDG)が挙げられる。
【0169】
(E.組成物の処方物)
上記のように、本発明の組成物は活性薬剤を含有し、そして必要に応じて関連する化学
実体を含有する。例えば、ウレアーゼポリペプチドもしくはウレアーゼポリヌクレオチド
は、ウレアーゼ発現もしくはウレアーゼ活性の調節因子として活性のある化学的化合物も
しくは生物学的化合物を含む。加えて、生体適合性のある薬学的キャリア、アジュバント
、もしくはビヒクルもまた、含まれる。
【0170】
組成物はまた、賦形剤もしくは他の薬学的に受容可能なキャリアに混合された他のヌク
レオチド配列、ポリペプチド、薬物、もしくはホルモンを含有し得る。薬学的組成物以外
の組成物は、必要に応じて、液体(すなわち、水もしくは水ベースの液体)を含有する。
【0171】
薬学的組成物に付加される薬学的に受容可能な賦形剤はまた、当業者に公知であり、容
易に利用可能である。賦形剤の選択は、本発明に従って生成物を投与するのに使用される
特定の方法によって、ある程度決定される。したがって、広範な種類の、本発明に関する
使用に適切な処方物がある。
【0172】
薬学的組成物の処方物と投与の技術は、Remington’s Pharmaceu
tical Sciences(第19版)、(第19版)、Williams & W
ilkins,1995で見られ得、かつ当業者に周知である。賦形剤の選択は、本発明
に関して生成物を投与するのに使用される特定の方法によって、ある程度決定される。し
たがって、各種の、本発明に関する使用に適切な処方物がある。以下の方法および賦形剤
は、例示的であるのみであり、いかなる限定でもない。
【0173】
本発明の薬学的組成物は、任意の従来法(例えば、混合プロセス、溶解プロセス、顆粒
化プロセス、粉砕プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、取り込みプロセス、溶
解紡糸プロセス、噴霧乾燥プロセス、もしくは凍結乾燥プロセス)を用いて製造され得る
。しかし、最適な薬学的処方物は、投与経路および所望の投与量に依存して、当業者によ
って決定される。このような処方物は、物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、お
よび投与される薬剤のインビボでのクリアランス速度に影響する。処置される状態に依存
して、これらの薬学的組成物は、以下の第III章に記載されるように処方および投与さ
れ得る。
【0174】
薬学的組成物は、適切な薬学的に受容可能なキャリアを含有するように処方され、そし
て、必要に応じて、医薬品に使用され得る調製物への活性化合物のプロセシングを促進す
る賦形剤および佐剤(auxiliary)を含有し得る。投与様式は、一般的に、キャ
リアの性質を決定する。例えば、非経口投与のための処方物は、水に可溶な形態の活性化
合物の水性溶液を含有し得る。非経口投与のためのキャリアは、生理食塩水、緩衝化され
た生理食塩水、ブドウ糖、水、および他の生理学的に適合性の溶液の中から選択され得る
。非経口投与のための好ましいキャリアは、生理学的に適合性の緩衝液(例えば、ハンク
ス液、リンゲル液、もしくは生理学的に緩衝化された生理食塩水)である。組織もしくは
細胞への投与のため、浸透されるべき特定の障壁に対して適切な浸透剤が処方物に使用さ
れる。このような浸透剤は、一般的に当該分野で公知である。タンパク質を含有する調製
物のために、処方物は、ポリオール(例えば、ショ糖)および/もしくは界面活性剤(例
えば、非イオン性界面活性剤)などのような安定化物質を含有し得る。
【0175】
あるいは、非経口使用のための処方物は、適切な油状注射懸濁液として調製された活性
化合物の懸濁液を含有し得る。適切な親油性溶媒もしくは親油性ビヒクルは、脂肪油(例
えば、ゴマ油)および合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリ
セリド)、またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、この懸濁液の粘度を増加させる
物質(例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストラン
)を含有し得る。必要に応じて、この懸濁液はまた、適切な安定剤もしくは化合物の安定
性を増加させる薬剤を含有し、調製物を、高度に濃縮された溶液にし得る。乳濁液(例え
ば、水中油型分散液(dispersion)、もしくは油中水型分散液)もまた、使用
され得、必要に応じて乳化剤もしくは分散剤(界面活性物質;界面活性剤)によって安定
化される。上記に記載されるように活性薬剤を含むリポソームもまた、非経口投与に利用
され得る。
【0176】
あるいは、経口投与に適切な投与量で薬剤を含有する薬学的組成物が、当該分野で公知
の薬学的に受容可能なキャリアを用いて処方され得る。経口投与のために処方される調製
物は錠剤、丸剤、カプセル、カシェ剤、ロゼンジ、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸
濁液、もしくは粉末の形態である。説明のため、経口使用のための薬学的調製物は、活性
化合物と固形賦形剤とを組み合わせることによって得られ得、必要に応じて、結果として
得られた混合物を粉砕することによって、そして所望される場合、この顆粒混合物を、適
切な佐剤を添加した後に加工して錠剤を得ることによって、得られ得る。経口処方物は、
非経口使用に関して記載された型と同様の液体キャリア(例えば、緩衝化された水溶液、
懸濁液など)を利用し得る。
【0177】
これらの調製物は、1つ以上の賦形剤を含有し得、この賦形剤としては、以下が挙げら
れる(限定ではない):a)糖(乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトールもしくはソルビ
トールを含む)のような希釈剤;b)結合剤(例えば、マグネシウムアルミニウムケイ酸
塩、デンプン(トウモロコシ(com)、コムギ、コメ、ポテトなど由来);c)メチル
セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyhnet
hyl cellulose)、およびカルボキシルメチルセルロースナトリウムのよう
なセルロース材料、ポリビニルピロリドン、ゴム(アラビアゴムおよびトラガカントゴム
)、およびタンパク質(例えば、ゼラチンおよびコラーゲン);d)崩壊剤もしくは安定
化薬剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそれ
らの塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))、または発砲性組成物;e)滑沢材(例えば
、シリカ、滑石、ステアリン酸またはそのマグネシウムもしくはカルシウム塩、およびポ
リエチレングリコール);f)香料もしくは甘味料;g)着色料もしくは色素(例えば、
製品を識別するため、もしくは活性薬剤の量(投与量)を特徴化するため);および、h
)他の成分(例えば、保存剤、安定剤、膨張剤、乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節(r
egulate)するための塩、および緩衝液)。
【0178】
薬学的組成物は、活性薬剤の塩として提供され得る。ここで、この塩は多くの酸ととも
に生成され得、これには、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、コ
ハク酸塩などが挙げられる(しかしこれに限定されない)。塩は、遊離塩基形態に対応す
る水性溶媒もしくは他のプロトン溶媒に、より可溶性である傾向がある。
【0179】
上記のように、活性薬剤そのものおよびこの薬剤の処方物の特徴は、物理的状態、安定
性、インビボでの放出速度、および投与された薬剤のインビボでのクリアランス速度に影
響し得る。このような薬物動態学的および薬力学的な情報は、前臨床インビトロ研究およ
びインビボ研究を通して収集され得、後に臨床試験の経過中に、ヒトで確認され得る。イ
ンビボでの動物データに基づく、ヒト臨床試験を実施するための指針は、多くの情報源(
例えば、http://www.clinicaltrials.govを含む)から得
られ得る。したがって、本発明の方法に使用されるあらゆる化合物に関して、哺乳動物、
特にヒトにおける治療学的に有効な用量は、生化学的アッセイおよび/または細胞ベース
のアッセイから最初に推定され得る。次いで、投薬が、活性薬剤の発現もしくは活性を調
節(modulate)する所望の循環濃度範囲を達成するように、動物モデルに処方さ
れ得る。ヒトでの研究が実施される場合、適切な投与量レベルに関して、ならびに種々の
疾患および状態の処置期間に関して、さらなる情報が明らかになる。
【0180】
このような化合物の毒性および治療学的有効性は、細胞培養物もしくは実験動物におけ
る標準的な薬学的手順(例えば、LD50(集団の50%に対する致死量)、およびED
50(集団の50%における治療学的有効量)を決定するための手順)によって決定され
得る。
【0181】
(III.本発明の方法)
本発明の別の局面としては、癌細胞を阻害する方法が挙げられる。この方法は、上記の
II章、および/もしくは下記のIV章〜VII章に記載される組成物の、1つ以上の組
成物を利用する。この方法は、癌細胞の増殖を阻害するのに有効な量の活性薬剤としての
ウレアーゼに、細胞を曝露することを含む。
【0182】
(A.活性薬剤への癌細胞の曝露)
ウレアーゼ組成物(例えば、ウレアーゼ単独、もしくは癌細胞への酵素の送達を増強す
るのに有効な化学実体と組み合わせたウレアーゼ)は、当該分野で公知の多くの方法によ
って癌細胞へ送達され得る。治療用途において、この組成物は、癌細胞を有する患者に、
その癌細胞の増殖を阻害するのに十分な量で投与される。本発明の薬学的組成物は、多く
の経路(非経口、経腸、経上皮(transepithelial)、経粘膜、経皮(t
ransdermal)、および/もしくは外科的経路を含む(限定ではない))による
投与によって癌細胞に曝露され得る。
【0183】
非経口投与様式としては、例えば、静脈内注入、動脈内注入、腹腔内注入、骨髄内注入
、筋肉内注入、関節内注入、くも膜下腔内注入、および脳室内注入;皮下、性腺内、もし
くは腫瘍内への針によるボーラス注入(needle bolus injection
);あるいは、適切なポンプ技術を用いた、長期継続する、拍動性もしくは計画的な潅流
、または微量注入によって、組成物が投与される様式が挙げられる。腸内投与様式として
は、例えば、経口(口腔および舌下を含む)および経直腸投与が挙げられる。経上皮(t
ransepithelial)投与様式としては、例えば、経粘膜投与、および経皮(
transdermal)投与が挙げられる。経粘膜投与としては、例えば、腸内投与が
挙げられ、そして鼻腔内、吸入、および肺深部への投与、膣内投与、ならびに直腸投与が
挙げられる。経皮(transdermal)投与としては、受動的もしくは能動的な、
経皮(transdermalもしくはtranscutaneous)様式が挙げられ
、この様式としては、例えば、パッチ、およびイオン導入装置、ならびにペースト剤、軟
膏(salveもしくはointment)の局所適用が挙げられる。外科的技術として
は、デポー(depot)(貯蔵)組成物、浸透圧ポンプなどの移植が挙げられる。
【0184】
活性薬剤の単回投与もしくは複数回投与は、被験体によって要求されかつ許容される投
与量および頻度に依存して投与され得る。いずれにしても、組成物は、被験体を有効に処
置するのに十分な量の本発明の活性薬剤を提供するべきである。
【0185】
重篤に血管新生化されないか、あるいは接着結合によって結合される細胞によって、お
よび/または血流中に存在する高分子の侵入を減少させるかもしくは防止する能動輸送機
構によって保護される、いくつかの領域があることが、当業者によって理解される。した
がって、例えば、神経膠腫もしくは他の脳腫瘍を処置する治療剤の全身性投与は、くも膜
下腔内への高分子の侵入に抵抗する血液脳関門によって制約され得る。これらの型の腫瘍
において、治療組成物は、好ましくは直接的に、腫瘍部位に投与される。したがって、例
えば、脳腫瘍は、治療組成物を腫瘍部位に直接的に(例えば、ボーラス注入、微量注入、
もしくは外科的に移植されたカテーテルを通して)投与することによって処置され得る。
【0186】
曝露は、癌細胞もしくは腫瘍を画像誘導手段を用いて(例えば、MRIに関しては、E
nhanced Magnetic Resonance Imaging,V.M.R
unge(編)、C.V.Mosby Co.(1989)に記載されるように;例えば
、放射線診断学および/もしくは放射線治療に関して、EP 188,256;Koza
kら、TIBTEC October 1986,262;Radiotracers
for Medical Applications,CRC Press,Boca
Raton,Fla.に記載されるように;PETに関して、Positron Emi
ssion Tomography of the Brain,Springer V
erlag 1983に記載されるように;および、J.W.Nowickyら、”Ma
croscopic UV−Marking through Affinity”、J
.Tumor Marker Oncology 31,463−465(1988)に
記載されるように)可視化させることを含み得る。したがって、あらゆる種類の診断剤が
、この組成物に組み込まれ得、これらは、患者への投与に続いて、組み込まれた薬剤を局
所的もしくは全身的に送達する。
【0187】
画像化剤は、上記に記載されるように、患者への組成物の投与に続いて腫瘍の処置をモ
ニタリングできるように、使用され得る。例えば、これらは、代表的には、画像化手順の
実施に先立って投与される。所望される場合、投与が画像化と同時であることもまた可能
である(例えば、薬物動態学的研究において)。標的部位での局在化に最適な時間および
最適な画像増強はまた、活性薬剤および/もしくは結合体および/もしくは組織および/
もしくは画像化様式によって変動し、そしてまた、慣用的に決定可能である。代表的に、
画像化は、その部位からの活性薬剤の有意なクリアランスに先立って起こり、この時間は
また、当業者によって慣用的に決定され得る。特定の実施形態において、以下でさらに議
論されるように、活性薬剤はその標的部位へ迅速に局在化され得、次いで、必要であれば
、迅速にそこから浄化されるので、活性薬剤もしくは結合体は、画像化手順の15分前〜
4時間前に投与される。
【0188】
本発明の1つの実施形態において、曝露は、被験体組織中の細胞外pHの変化を検出し
得る診断手段を用いた被験体の調査、および投与の後に細胞外pHの選択的上昇を示す被
験体内の組織領域の同定を含む。この同定に基づいて、曝露は、固形腫瘍全体の中での細
胞外pHの選択的変化が達成されるまで、繰り返され得る。
【0189】
本発明の1つの実施形態において、曝露は、直接的注入以外によって、活性薬剤組成物
を非経口的に被験体へ投与することを含む。この活性薬剤は、上記II章で議論されるよ
うに、誘導体化され得る。
【0190】
先で議論されるように、ウレアーゼは尿素の加水分解を触媒し、カルバメートおよびア
ンモニアの生成をもたらす。水性環境において、カルバメートは迅速かつ自発的に分解し
、第二のアンモニア分子および1つの二酸化炭素を生じる(図1)。ウレアーゼは多様な
機能を有する。その主要な環境的役割は、生物に、外部および内部で生成された尿素を窒
素源として使用させることである。植物において、ウレアーゼは、全身性の窒素輸送経路
に関与し得、そしておそらく、毒性防御タンパク質として作用し得る。
【0191】
ウレアーゼの基質は尿素であり、これは、肝臓で生成され、血流によって腎臓まで運ば
れ、そして尿中に排出される。健康なヒトにおいては、尿素の血清濃度は代表的に1〜1
0mMであり、そして尿中の尿素レベルは0.5Mを超え得る(Merck Manua
l of Diagnosis and Therapy, Merck and Co
., Inc.,Rahway,NJ,1999)。尿素はまた、主要なもしくは主要で
ない外分泌腺の分泌物中に、血清とほぼ同じ濃度で存在し、そのため循環する尿素の大部
分は分泌系によって細胞表面上、もしくは組織滲出液中にトランスロケートされる(Bu
rne,R.A.およびChen,Y.M.,Microbes and Infect
ion,2,2000;533−542)。例えば、ヒト成人は、一日に、1〜10mM
の尿素を含むほぼ1Lの唾液を分泌し、そして生成される全尿素のおよそ20〜25%は
、尿中で体外に出ていくよりもむしろ、腸管に入る(Visek,W.J.,Fed.P
roc.31(1972)1178−1193)。尿素の外分泌のための明白な能動流出
機構はなく、そのため、非荷電の尿素分子は、細胞および上皮の接着結合を通して単に水
に従うと考えられる。結論として、人体の細胞表面は、尿素を含む流体に浸されている(
McLean R.J.C.ら、CRC,Crit.Rev.Microbiol.16
(1988)37−79)。
【0192】
(B.二段階曝露および三段階曝露)
上記のように、本発明の1つの実施形態に従って、活性薬剤は標的化部分に直接的に結
合体化される。あるいは、本発明の別の実施形態に従って、二段階アプローチが、腫瘍細
胞への活性薬剤の送達に使用される。好ましくは、腫瘍細胞は、被験体に含まれる。二段
階アプローチは、標的化部分の薬物動態から活性薬剤の薬物動態を分離するという利点を
有する。標的化部分はこの標的部位へ付着することを許容され、一方で第一の結合パート
ナー(例えば、コイル形成ペプチド)へ結合体化される。標的部位への付着に続いて、実
質的に全ての非標的性結合は、被験体の循環から排泄され得る。活性薬剤が、次いで、相
補的な結合パートナーのメンバー(例えば、第二のコイル形成ペプチド)との結合体とし
て投与され得る。
【0193】
当該分野で公知のあらゆる二段階系(例えば、高親和性結合パートナー(例えば、アビ
ジン、特異的抗体など)を有するビオチン、ハプテンなど)が使用され得る。例えば、米
国特許第6,190,923号、同第6,187,285号、および同第6,183,7
21号を参照のこと。
【0194】
好ましい二段階系としては、コイルドコイル系が挙げられる。したがって、上記に記載
されるように二段階アプローチを利用する本発明の特定の実施形態において、標的化部分
および第一のコイル形成ペプチド(選択された電荷によって、および第二の逆に荷電した
コイル形成ペプチドと相互作用して安定したαへリックス状コイルドコイルヘテロ二量体
を形成する能力によって、特徴付けられる)を含む第一の結合体が、腫瘍細胞に添加され
る。抗体標的化部分をコイル形成ペプチドに結合体化させる例示的な方法は、実施例4に
記載される。
【0195】
続いて、第二のコイル形成ペプチドをおよび活性薬剤を含む第二の結合体が、この細胞
に投与される。好ましい活性薬剤は、ウレアーゼである。コイル形成ペプチドへのタチナ
タマメウレアーゼの結合に関する例示的な方法は、実施例2に記載される。
【0196】
第一のコイル形成ペプチドおよび第二のコイル形成ペプチドが、αへリックス状コイル
ドコイルヘテロ二量体を形成するのに好適な状況下で一緒に混合される場合、これらは相
互作用して2つのサブユニットのαへリックス状コイルドコイルヘテロ二量体複合体を形
成する。αへリックス状コイルドコイル構造のペプチドは、各ペプチドの1次配列によっ
て決定される特徴的な様式で、互いに相互作用する。αへリックスの3次構造は、1次配
列上の7アミノ酸残基がαへリックスのおよそ2回転に相当するような構造である。した
がって、αへリックス構造を生じる1次アミノ酸配列は、それぞれ7残基の単位(「ヘプ
タッド(heptad)」と称される)に分解され得る。ヘテロ二量体サブユニットペプ
チドは、直列する一連のヘプタッドから構成される。ヘプタッドの配列が特定のヘテロ二
量体サブユニットペプチドにおいて繰り返される場合、このヘプタッドは、「ヘプタッド
反復(heptad repeat)」、もしくは単純に「反復」と呼ばれ得る。
【0197】
第一のコイル形成ペプチドおよび第二のコイル形成ペプチドは、平行配置もしくは逆平
行配置のいずれかで、ヘテロ二量体コイルドコイルへリックス(コイルドコイルヘテロ二
量体)へと集合し得る。平行配置においては、2つのヘテロ二量体サブユニットペプチド
へリックスは、それらが同じ方向(アミノ末端からカルボキシル末端へ)を有するように
並べられる。逆平行配置においては、このへリックスは、1方のへリックスのアミノ末端
が、他方のヘリックスのカルボキシル末端と並べられるように配置されるか、もしくはそ
の逆である。このようなヘテロ二量体サブユニットは、PCT特許出願WO95/314
80「Heterodimer Polypeptide Immunogen Car
rier Composition and Method」(1995年11月23日
公開)(その全体が、本明細書中で参考として援用される)に記載される。さらなる例示
的なサブユニットは、Kコイル(これは、その電荷が主にリジン残基によって提供される
、正に電荷したサブユニットを指す)、およびEコイル(これは、その電荷が主にグルタ
ミン酸残基によって提供される、負に電荷したサブユニットを指す)と本明細書中で呼ば
れる。上述の出願からの好ましい例は、配列番号1〜2を含む。
【0198】
上記に参照される出願に提示される指針に従って設計されるヘテロ二量体サブユニット
ペプチドは、代表的に、逆平行方向に対して、平行方向で集合することへの優先性を示す
。例えば、配列番号3および配列番号4によって同定される例示的なペプチドは、(WO
95/31480出願で議論されたように)他のペプチド配列と同様に、平行配置のヘテ
ロ二量体からを形成する。さらなる例示的なペプチドは、7アミノ酸(例えば、配列番号
5の反復)から作られるKコイルペプチドを含む。1つの実施形態において、このKコイ
ルは35アミノ酸長である;これは正に荷電しており、溶液中で特定の構造を有さない。
Eコイルは、7アミノ酸(例えば、配列番号6の反復)から作られるぺプチドである。1
つの実施形態において、このEコイルは35アミノ酸長であり得る;これは負に荷電して
おり、溶液中で特定の構造を有さない。
【0199】
記載されるように、ヘテロ二量体の2つのサブユニットペプチドの1つは、標的化部分
を含み、他のペプチドは活性薬剤を含む。両方の場合において、このペプチドは、必要な
付着機能を提供するように合成され得るか、もしくは合成後に誘導体化され得る。ペプチ
ド合成の例示的な方法は、実施例1に記載される。一般に、ほとんどの結合体化は、いず
れのコイル形成ペプチドのコイル形成活性も妨害せず、そのような結合体化は、結合体化
された活性薬剤もしくは標的化部分の活性もまた妨害しない。
【0200】
第一のコイル形成ペプチドの改変を考慮すると、そのペプチドは、そのN末端もしくは
C末端のいずれかで合成され、標的化部分とペプチドのヘリックス形成部分との間のスペ
ーサーとして機能し得るさらなる末端ペプチドを有し得る。標的化部分−コイル形成ペプ
チドおよび/もしくは活性薬剤−コイル形成ペプチドは、上記のように、固体状態(so
lid−state)、PCR、もしくは組み換え法のいずれかによって、インビボもし
くはインビトロで合成され得る。
【0201】
固体状態法を通じて結合体を形成する場合、活性薬剤もしくは標的化部分は、好ましく
は、N末端アミノ酸残基もしくはヘテロ二量体の露出された面に面する残基の1つに、共
有結合性に結合される。好ましいカップリング基はシステイン残基のチオール基であり、
これは標準的方法によって容易に改変される。他の有用なカップリング基としては、メチ
オニンのチオエステル、ヒスチジンのイミダゾリル基、アルギニンのグアニジニル基、チ
ロシンのフェノール基、およびトリプトファンのインドリル基、が挙げられる。これらの
カップリング基は、当業者に公知の反応条件を用いて誘導体化され得る。
【0202】
活性薬剤の第二のコイル形成ペプチドを標的化部分の第一のコイル形成ペプチドに結合
するため、2つのペプチドは、ヘテロ二量体形成に好適な条件下で接触される。コイルド
コイルヘテロ二量体に好適な例示的媒体は、代表的に約6〜約8のpHおよび約50mM
〜約500mMの塩濃度を有する、生理学的に適合性の水溶液である。好ましくは、この
塩濃度は、約100mM〜約200mMである。例示的な媒体は、以下の組成を有する:
50mMリン酸カリウム、100mMKCl、pH7。同様に有効な媒体は、例えば、リ
ン酸ナトリウムでリン酸カリウムを、そしてNaClでKClを置き換えることによって
作られ得る。ヘテロ二量体は、上記のpHおよび塩の範囲である媒体外の条件下で形成し
得るが、上記の分子相互作用のうちのいくつか、およびホモ二量体に対するヘテロ二量体
の相対的安定性は、上記に詳述される特徴とは異なり得る。例えば、ヘテロ二量体を安定
化する傾向にあるイオン基間のイオン相互作用は、酸性pHでの、例えばGlu側鎖のプ
ロトン化に起因して、もしくは塩基性pHでの、例えばLys側鎖の脱プロトン化に起因
して、低pH値もしくは高pH値において崩壊し得る。しかし、コイルドコイルへテロ二
量体形成に対する低pH値および高pH値のこのような影響は、塩濃度を増加させること
によって克服され得る。
【0203】
塩濃度の増加は、安定化させるイオン引力を中和し得るか、または不安定化させるイオ
ン反力を抑制し得る。特定の塩は、イオン相互作用を中和させることにおいて、より強力
な有効性を有する。例えば、Kコイルペプチドの場合、1Mもしくはより高濃度のClO
4−アニオンが最大のαヘリックス構造を誘導するために必要とされ、他方、3Mもしく
はより高濃度のClイオンが同じ効果のために必要とされる。低pHおよび高pHにお
けるコイルドコイル形成に対する高濃度塩の効果はまた、ヘリックス内イオン引力はヘリ
ックス形成のために必須ではなく、むしろヘリックス内イオン引力は、コイルドコイルが
ホモ二量体に対してヘテロ二量体を形成する傾向にあるかどうかを制御するということを
示す。第一のコイル形成ペプチド(例えば、Eコイルペプチド)および第二のコイル形成
ペプチド(例えば、Kコイルペプチド)はまた、共有に係る米国特許出願第09/654
,191号(代理人整理番号#4800−0015.31)(本明細書中でその全体が参
考として援用される)の実施例2に記載されるように、標的化部分および活性薬剤に結合
体化され得る。米国特許第6,300,141号(本明細書中でその全体が参考として明
示的に援用される)もまた参照のこと。
【0204】
本発明の1つの実施形態において、活性薬剤−コイルドコイルペプチドは、短い血清半
減期を有し、そして腎臓経路を介して排泄される。したがって、この活性薬剤は、標的部
位に付着するか、もしくは被験体から迅速に除去されるかのいずれかである。この活性薬
剤の体内分布は、レシピエントの正常組織を望しくない曝露から保護するのを促進する。
腎排泄を増強するため、腎排泄を促進する体内分布を指向する分子との結合が、利用され
得る。必要に応じたのクリアランス工程の代替法は、被験体のネイティブなクリアランス
機構が循環中の第一の結合体を実質的に除去することを可能にする、十分な経過時間を可
能にすることである。
【0205】
別の実施形態において、抗体ベースもしくは非抗体ベースの標的化部分は、リガンドも
しくは抗リガンドを、調節されていない(unregulated)抗原を保有する標的
部位に送達するために利用される。好ましくは、このような調節されていない(unre
gulated)抗原に対する天然の結合剤が、この目的で使用される。例えば、肝細胞
腫もしくは骨髄腫のような疾患は、調節されていない(unregulated)IL−
6レセプター(これに対して、IL−6が、これらの標的細胞型の急激な増殖に関してオ
ートクライン部分もしくはパラクリン部分として作用する)によって、一般的に特徴付け
られる。このような病気の処置に対して、IL−6は、したがって、標的化部分として利
用され得る。例えば、Miki,C.ら(2002)Cancer 94(5):158
4−92を参照のこと。
【0206】
例えば、IL−6および第一のコイル形成ペプチドは、化学的手段を介して結合体化さ
れ得るか、もしくは組み換え分子として形成され得る。IL−6−第一コイル形成ペプチ
ド結合体はレシピエントに投与され、そしてその結合体のIL−6成分は、この結合体の
局在をIL−6レセプターに向ける。この局在化は、調節されていない(unregul
ated)IL−6レセプターを保有する部位に、優先的に生じる。標的部位局在化が生
じた後、以下に記載されるような浄化剤が必要に応じて投与され、レシピエントのIL−
6−第一コイル形成ペプチド結合体の循環を実質的に浄化する。この目的のために適切な
浄化剤は、例えば、IL−6レセプター−HSA−ガラクトースもしくは抗IL−6抗体
−HSA−ガラクトースである。レシピエントの循環からのIL−6の実質的な(例えば
、50%、70%、好ましくは90%の)クリアランスに十分な時間の後、活性薬剤−第
二コイル形成ペプチド(例えば、ウレアーゼ−第二コイル形成ペプチド)が投与され、そ
してIL−6−第一コイル形成ペプチド結合体を介して標的部位に局在化する。
【0207】
以下のVII章により詳細に記載されるように、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘ
ルペスウイルス、もしくはワクシニアウイルスに由来するか、または種々の細菌性プラス
ミドに由来する発現ベクターが、組み換えウレアーゼ分子の標的細胞手段への送達に使用
され得る。当業者に公知の方法は、ウレアーゼを含む組み換えベクターを構築するために
使用され得る。例えば、Sambrookら、およびAusubelらに記載される技術
を参照のこと。あるいは、活性薬剤は、上記II章に記載されるように、リポソームもし
くはナノカプセルを利用して標的細胞に送達され得る。1つの実施形態において、本発明
の方法は、被験体に組成物(活性薬剤、および細胞に対してこの組成物を標的化するのに
有効な標的化部分を含有する)を加える工程を包含する。
【0208】
(C.浄化剤)
上記で議論されるように、浄化剤が被験体に投与され得る。この浄化剤は、循環する第
一の結合体を肝細胞レセプターに向け得、これによって、第二の結合体の投与に先立って
、循環する第一の結合体の量を減少させる。
【0209】
上記のように、腫瘍細胞が被験体(例えば、ヒト)内に含まれる場合、結合していない
標的化部分結合体のインビボでの複合体化のための使用を促し、かつ結合していない標的
化部分結合体の血液クリアランスを促進する物理的性質を有するタンパク質組成物もしく
は非タンパク質組成物の浄化剤が有用であり得る。浄化剤は、好ましくは以下の特徴の1
つ以上を示す:インビボでの標的化部分との迅速で、効率的な複合体化;続いて投与され
る活性薬剤に結合し得る標的化部分結合体の、血液からの迅速な浄化;大量の標的化部分
結合体を浄化するかもしくは失活させる高い能力;および、低い免疫原性。
【0210】
有用な浄化剤としては、ヘキソースベース部分、および非ヘキソースベース部分が挙げ
られる。ヘキソースベースの浄化剤は、アシュウェル(Ashwell)レセプターもし
くは他のレセプター(例えば、内皮細胞および/もしくは肝臓のクップファー細胞に関連
するマンノース/N−アセチルグルコサミンレセプター、またはマンノース6−リン酸レ
セプター)によって認識される1つ以上のヘキソース(六炭糖部分)を組み込むように誘
導体化された分子である。例示的なヘキソースとしては、ガラクトース、マンノース、マ
ンノース6−リン酸、N−アセチルグルコサミンなどが挙げられる。アシュウェルレセプ
ターによって認識される他の部分(ガラクトース、N−ガラクトサミン、N−アセチルガ
ラクトサミン、ガラクトースのチオグリコシド、ならびに、一般に、D−ガラクトシドお
よびグリコシド、が挙げられる)もまた使用され得る。 タンパク質とのガラクトースチ
オグリコシド結合体化が、例えば、Leeら(1976)Biochemistry,1
5(18):3956もしくはDrantzら(1976)Biochemistry,
15(18):3963に記載されるように、達成され得る。
【0211】
タンパク質型のガラクトースベース浄化剤としては、内在性の露出されたガラクトース
残基を有するタンパク質か、またはこのようなグルコース残基を露出するかもしくは組み
込むように誘導体化されたタンパク質が挙げられる。露出されたガラクトースは、特定の
レセプター(アシュウェルレセプター)を通した肝臓内へのエンドサイトーシスによって
浄化剤を迅速に浄化させる。これらのレセプターは、浄化剤に結合して肝細胞へのエンド
サイトーシスを誘導し、このことは、リソソームとの融合をもたらし、そしてレセプター
を細胞表面に戻して再利用させる。このクリアランス機構は、高い効率性、高い能力、お
よび迅速な動態によって特徴付けられる。
【0212】
タンパク質ベースで/ガラクトースを保有する種類の例示的な浄化剤は、ヒトα−1酸
糖タンパク質のアシアロオロソムコイド誘導体である。アシアロオロソムコイドの血液か
らの迅速なクリアランスは、Galliら、J of Nucl Med Allied
Sci(1988)32(2):110−16に記載される。ノイラミニダーゼによる
オロソムコイドの処理は、シアル酸残基を除去し、これによって、ガラクトース残基を露
出させる。さらなる誘導体化された浄化剤としては、例えば、ガラクトシル化されたアル
ブミン、ガラクトシル化されたIgM、ガラクトシル化されたIgG,アシアロハプトグ
ロビン、アシアロフェチュイン、およびアシアロセルロプラスミンが挙げられる。
【0213】
さらなる浄化剤は、米国特許第6,358,490号(2002年3月19日発行)、
同第6,172,045号(2001年1月9日発行)、および同第5,886,143
号(1999年3月23日発行)に記載される(これらは、本明細書中で参考として援用
される)。
【0214】
本発明において有用な浄化剤のさらなる種類としては、低分子(例えば、約500ダル
トン〜約10,000ダルトンの範囲)が挙げられる。この低分子は、ガラクトースによ
って誘導体化され得る。この低分子浄化剤は、好ましくは、(1)関連する結合体、コイ
ル形成ペプチド、活性薬剤、および/もしくは標的化部分と迅速かつ効率的に複合体化し
得;そして(2)このような複合体は、例えば肺および脾臓によって取り込まれる複合体
へと凝集するのに対して、ガラクトースレセプター(肝臓特異的分解系)を介して血液か
ら浄化され得る。加えて、ガラクトース媒介性の肝臓への取り込みの迅速な動態は、リガ
ンド−抗リガンド相互作用の親和性と相まって、中程度の分子量、もしくは、さらには低
い分子量のキャリアの使用を可能にする。
【0215】
本発明の1つの実施形態において、タンパク質型およびポリマー型の、非ガラクトース
ベースの浄化剤が使用される。これらの浄化剤は、凝集媒介性機構を通して作用し得る。
本発明のこの実施形態において、使用される浄化剤は、浄化剤の接近が除外されるべき標
的器官に基づいて選択され得る。例えば、腫瘍細胞標的が含まれる場合、高分子量(例え
ば、約200,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンの範囲)が有用であり得
る。
【0216】
別の種類の浄化剤としては、循環する活性薬剤/標的化部分結合体を除去しないが、代
わりに、その活性薬剤、標的化部分、リポソーム、ウイルスベクター、および/もしくは
それらの他の部分上の関連部位をブロックすることによって、循環する結合体を不活性化
させる薬剤が挙げられる。これらの「キャップ型」の浄化剤は、好ましくは小さい(例え
ば、500〜10,000ダルトン)、高度に荷電した分子である(例えば、誘導体化さ
れた6,6’−[(3,3’−ジメチル[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル)
ビス(アゾ)ビス[4−アミノ−5−ヒドロキシ−1,3−ナフタレンジスルホン酸]四
ナトリウム塩)。
【0217】
(E.投与量/投与)
本発明の方法において、投与のタイミングおよび順序を調節(regulating)
するあらゆる効果的な投与レジメンが使用され得る。ヒト被験体に対する例示的な投与量
レベルは、投与様式、腫瘍の範囲(サイズおよび分布)、患者のサイズ、およびウレアー
ゼ処置に対する癌の応答性に依存する。
【0218】
ウレアーゼ組成物が腫瘍に直接注入される場合、例示的な用量は、0.1ウレアーゼ活
性国際単位/mm腫瘍〜1,000ウレアーゼ活性国際単位/mm腫瘍である。例え
ば、そして腫瘍におけるウレアーゼの比較的均一な分布の仮定が成り立つ場合、0.5国
際単位と5国際単位との間の用量が適切であり得る。注入針の配置は、従来の画像指針技
術(例えば、蛍光透視)によって導かれ、それによって、医師は、標的腫瘍に対するこの
針の位置を見得る。このような指針手段としては、超音波、蛍光透視、CT、もしくはM
RIが挙げられ得る。
【0219】
本発明の1つの局面によれば、投与されたウレアーゼ用量の有効性もしくは分布は、腫
瘍へのウレアーゼの直接注入中もしくは注入後に、被験体の癌組織領域内でのpHの変化
を検出し得る手段によって腫瘍組織をモニタリングすることによって、モニタリングされ
得る。このような手段としては、腫瘍中に直接挿入され得るpHプローブか、または可視
化手段(例えば、磁気共鳴画像化(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、もしくは
蛍光透視)が挙げられ得る。MRIによる調査は、付加的な画像化剤の非存在下で、pH
の関数としての組織の磁気特性の違いに単純に基づいて、実施され得る。CTもしくは蛍
光透視画像化は、その不透明度が組織媒体のpHによって影響される付加的なpH感受性
画像化剤を必要とし得る。このような画像化剤は、当業者に周知である。
【0220】
任意のウレアーゼ注入の前に、腫瘍組織は、周囲の正常組織に対してより低いそのpH
によって、可視化され得る。したがって、正常組織は約7.2の正常なpHを有し得、一
方腫瘍組織はpH単位で0.1〜0.4以上低くあり得る。つまり、任意のウレアーゼが
注入される前に、腫瘍組織の範囲は、より低いそのpHによって定義され得る。ウレアー
ゼ投与に続いて、ウレアーゼを有する腫瘍領域のpHは上昇し始め、そして結果として得
られた画像と以前の投与前画像とを比較することによって、同定され得る。
【0221】
この様式で組織を調査することによって、pHの変化の程度および罹患した組織の範囲
がモニタリングされ得る。この調査に基づいて、医師は、さらなる組成物をその部位に投
与し得、かつ/または腫瘍部位内の付加的な領域に組成物を投与し得る。この手順は、固
形腫瘍の領域全体に渡って、所望の程度のpH変化(例えば、0.2〜0.4pH単位)
が達成されるまで繰り返され得る。
【0222】
直接注入による投薬は、適切な間隔(例えば、毎週もしくは週に2回)によって、所望
の終点まで、好ましくは、腫瘍質量の実質的なもしくは完全な後退が観察されるまで、繰
り返され得る。処置の効力は、上記のように、処置の経過の間に処置される組織のpHの
変化を可視化することによって、モニタリングされ得る。したがって、各付加的注入の前
に、組織のpHは可視化されて現在存在する腫瘍の範囲を決定し得、その後、この組織の
pHの変化は、新しい用量のウレアーゼ組成物のこの組織への投与をモニタリングするの
に使用され得る。
【0223】
ウレアーゼが、好ましくは直接注入以外の方法で非経口投与される場合、ウレアーゼの
例示的用量は、100国際単位/kgウレアーゼ活性/kg被験体体重〜100,000
国際単位/kgウレアーゼ活性/kg被験体体重である。本明細書中に記載されるように
、本発明のウレアーゼ組成物は、好ましくは、ウレアーゼを癌細胞(例えば、固形腫瘍部
位)に対して標的化するため、もしくは腫瘍部位において選択的に、ウレアーゼを(例え
ば、リポソーム形態で)隔離するための標的化剤を含む。
【0224】
上記のように、組織pHの変化に感受性のある画像化技術は、投与された用量の有効性
をモニタリングするために使用され得る。このような標的化には数時間以上かかり得るた
め、この方法は、上記のように、ウレアーゼ注入の前および投薬に続く数時間(例えば1
2〜24時間)腫瘍pHをモニタリングして、腫瘍領域のpHの上昇によって証明される
ように、腫瘍部位が適切に投薬されたことを確認することを含み得る。腫瘍領域のpHの
上昇によって証明されるように、この調査の結果に依存して、この方法は、所望のpHの
上昇(例えば、0.2〜0.4pH単位)が観察されるまで、付加的な投薬を指示し得る
。一度この用量が確立された場合、患者は、定期的な(例えば、週に1回もしくは2回の
)同様の容量のウレアーゼ組成物によって、腫瘍のサイズもしくは状態の変化が達成され
るまで処置され得る。
【0225】
両方の型の投与において、最終投薬レジメンは、良好な医学的診療の観点において、薬
物の作用を改変する種々の因子(例えば、薬剤の比活性、疾患状態の重篤度、患者の応答
性、患者の年齢、状態、体重、性別、および食事、何らかの感染の重篤度、など)を考慮
して、担当医により決定される。考慮され得るさらなる因子としては、時間および投与頻
度、薬物の組み合わせ、応答の感受性、および/もしくは治療への許容性/応答性が挙げ
られる。本明細書中で記述されるあらゆる処方物に関する処置に適切な投薬のさらなる微
調整は、特に投薬情報および開示されるアッセイ、ならびに臨床試験で得られる薬物動態
学的データを考慮して、当業者によって慣用的に行われる。適切な投薬は、体液中もしく
は他の試料中の薬剤の濃度を用量反応データとともに決定するための、確立されたアッセ
イの使用を通じて確認され得る。
【0226】
投薬頻度は、薬剤の薬物動態学的パラメータ、および投与経路に依存する。投薬量およ
び投与は調整されて、十分なレベルの活性薬剤を提供し、かつ所望の効果を保つ。したが
って薬学的組成物は、この薬剤の所望の最低レベルを保つために必要とされるように、単
回投与、複数の別個の投与、継続注入、持続放出デポー、もしくはそれらの組み合わせと
して投与され得る。
【0227】
短時間作用性の薬学的組成物(すなわち、短い半減期)は、1日1回以上(例えば、1
日2回、3回、もしくは4回)投与され得る。長時間作用性の薬学的組成物は、3〜4日
毎、毎週、もしくは2週間に1回投与され得る。ポンプ(例えば、皮下ポンプ、腹腔内ポ
ンプ、もしくは硬膜下ポンプ)が、継続注入のために好ましくあり得る。
【0228】
薬学的に受容可能なキャリア中に、上記II章に記載されるように処方される本発明の
活性薬剤を含有する組成物が調製され得、適切な容器内に収められ得、そして指示される
状態の処置のについてラベルされ得る。ラベルに示される状態としては、種々の型の癌の
処置および診断が挙げられ得る(しかし、これらに限定されない)。キットもまた、以下
に記載されるように意図され得、ここで、このキットは薬学的組成物の投薬形態、および
医学的症状の処置におけるこの組成物の使用に関する説明を含む添付文書を含む。
【0229】
一般的に、本発明に使用される活性薬剤は、有効量で被験体に投与される。一般的に、
有効量とは、(1)処置することが求められる疾患の症状を減少させるか;または(2)
処置することが求められる疾患を処置することに関する薬理学的変化を誘導するかのいず
れかに有効な量である。癌に関しては、有効量とは:腫瘍のサイズを減少させるか;腫瘍
の増殖を遅くするか;転移を防止もしくは阻害するか;または罹患した被験体の余命を増
加させるのに有効な量を含み得る。この活性薬剤のマウスへの投与の例示的な方法は、以
下の実施例6に記載される。
【0230】
本発明の活性薬剤、浄化剤、および/もしくは画像化剤は、単回投与もしくは複数回投
与で投与され得る。あるいは、この薬剤は長期に渡って静脈内に注入され得る。例えば、
浄化剤は、継続的な様式で標的化部分を浄化するのに十分な期間、静脈内に投与され得る

【0231】
上記に記載される、本発明の、複数の標的化部分を投与する実施形態において、投与さ
れる各成分の用量は:担当医により、彼もしくは彼女の経験に従って決定され得る;レシ
ピエントの状態の詳細によって決定され得る(例えば、標的部位(それらと関連する抗原
を含む)の性質および位置は、標的化部分の選択および投与経路の決定に影響する);そ
して、用いられる標的化部分の組み合わせによって決定され得る(例えば、抗体の性能は
、抗原の密度およびこの抗原に対する抗体の親和性に関して変動し得る)。
【0232】
(IV.抗癌薬を増強する方法)
上記のように、現在の化学療法における制限の1つは、標的腫瘍が、抗腫瘍化合物の作
用に対して次第に抵抗性になることである。この抵抗性は、腫瘍細胞への化合物の取り込
みが減少すること、取り込み部位での薬物の利用可能性の減少、もしくは細胞内代謝の増
加に起因し得る。
【0233】
多くの弱塩基性薬物に関して、つまり1つ以上のプロトン化し得るアミンを有する薬物
に関して、薬物取り込み機構は、荷電しない形態で細胞膜を通過する受動拡散に関与し得
る。したがって、細胞膜を通過する化合物の移動速度は、内部/外部pH勾配に依存する
。細胞外pHが、細胞内pH(例えば、約pH7.2)と同じかもしくはそれより大きい
場合、化合物は荷電しない形態で、少なくともそれが細胞を出て行く頻度で、細胞内へと
入る傾向にある。反対に、固形腫瘍におけるように、細胞外pHが細胞内pHに対して低
下した場合、より低い外部pHは、荷電した、プロトン化した形態の化合物を好み、そし
てこれは、細胞への薬物の取り込みを阻害する。事実上、腫瘍における、より低い細胞外
pHの効果の1つは、腫瘍を弱塩基性の抗腫瘍化合物に対して保護することである。
【0234】
その活性が、より低い細胞外pHによって悪影響を及ぼされ得る、弱塩基性の抗腫瘍化
合物としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、エピルビシン、マ
イトマイシン、ブレオマイシン、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチンおよびビ
ンクリスチン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミドおよび塩酸メクロレタミン
)、および抗腫瘍性のプリン誘導体およびピリミジン誘導体が挙げられる。
【0235】
本方法において、ウレアーゼもしくはウレアーゼ含有組成物は、腫瘍液の細胞外pHを
少なくとも0.1pH単位(例えば、0.1〜0.5pH単位以上)上昇させるのに有効
な量で、固形腫瘍に投与される。特定の実施形態において、この液体の細胞外pHは、少
なくともpH7.0、pH7.2もしくはそれより高くまで上昇する。
【0236】
ウレアーゼは、上記III章に記載されるように(例えば、被験体の腫瘍内に直接、も
しくは直接注入以外によって非経口的に)投与され得る。また、上記に記載されるように
、ウレアーゼの投与によってもたらされるpHの変化は、腫瘍pHを可視化する画像化手
段を用いて、もしくは腫瘍の直接的なpH測定によって、腫瘍組織におけるpHの変化お
よびこれらの変化の範囲を決定することにより、モニタリングされ得る。
【0237】
この方法において投与される用量は、注入量が、腫瘍pHの所望の上昇をもたらすのに
十分である限り、ウレアーゼが単独の抗腫瘍剤である場合に必要とされるよりも少量であ
り得る。あるいは、この方法は治療量のウレアーゼの投与、および治療量もしくは治療量
以下の抗腫瘍化合物の投与を含み得る。理解され得るように、この方法は、与えられるべ
き抗腫瘍化合物の通常用量より低い量を可能にし得る、なぜなら、ウレアーゼがこの化合
物の治療効果を増強するため、そしてウレアーゼがそれ自身で治療効果に寄与し得るため
である。より少ない副作用でより大きな効力が生じる。
【0238】
1つの実施形態において、化学実体はまた、上記に記載されるように、活性薬剤と関連
して活性薬剤の送達を増強し得る。この実施形態において、この活性薬剤は、直接注入以
外の任意の方法(例えば、非経口投与)によって投与され得る。
【0239】
(V.抗癌処置をモニタリングする方法)
本方法はまた、なお別の局面において、被験体中の固形腫瘍の存在、サイズもしくは状
態を評価することによって抗癌処置をモニタリングする方法を提供する。この方法は、上
記に記載されるような活性薬剤(例えば、ウレアーゼ)を、固形腫瘍を有するか、もしく
は有すると疑われる被験体に投与する工程を包含する。この活性薬剤は、この活性薬剤を
被験体の固形腫瘍に局在化させるのに有効な状況下で投与される。
【0240】
被験体は、上記に記載されるように、被験体組織における細胞外pHの変化を検出し得
る診断手段によって調査される。この診断手段は、好ましくは、上記II章に記載される
ように、活性薬剤の前に、活性薬剤の後に、もしくは活性薬剤と同時に投与され得る、腫
瘍に局在化し得るpH感受性診断剤(例えば、画像化剤、造影剤、もしくはシフト試薬)
である。組織領域は、この投与に続いて細胞外pHの上昇を示す被験体内で同定される。
診断剤を同定し得るあらゆる手段が、この薬剤を検出するのに使用され得る(例えば、上
記に記載されるように、MRI、PET走査などである)。
【0241】
1つの実施形態において、この方法は、抗腫瘍治療を行う被験体にウレアーゼを投与す
る工程を包含し、そして同定が、固形腫瘍におけるウレアーゼの局在化を検出するのに使
用される。
【0242】
この同定は、ウレアーゼ投与に応答する腫瘍のサイズおよび形状の変化をモニタリング
するのに使用され得る。
【0243】
PET走査を利用する1つの実施形態において、被験体は13N標識されたアンモニア
を投与される。この患者は、次いで、腫瘍部位に到達するのに有効な量のウレアーゼ投与
される。ウレアーゼは尿素を加水分解し、非標識アンモニアを生成する。時間が経つと、
標識されたアンモニアは希釈されるかもしくは置換され、結果として走査上で徐々に浄化
する。
【0244】
PET走査を利用する別の実施形態において、被験体は、13N標識された尿素を投与
される。この患者は、次いで、腫瘍部位に到達するのに有効な量のウレアーゼを投与され
る。ウレアーゼは標識された尿素を加水分解して標識アンモニアを生成し、これは走査で
検出され得る。
【0245】
(VI.キット)
さらに別の局面において、この発明は、本明細書中で記載される方法を用いて腫瘍細胞
の増殖を阻害するためのキットを提供する。このキットは、1つ以上の活性薬剤を含む容
器を含む。このキットは、この発明の方法の実行のため、本明細書中で記載される任意の
他の成分をさらに含み得る。このような成分としては、薬学的成分、標的化部分、画像化
剤、浄化剤、遺伝子治療成分、などが挙げられる(しかしこれらに限定されない)。
【0246】
このキットは、必要に応じて、腫瘍細胞増殖を阻害するための活性薬剤の使用を開示す
る指示(すなわち、プロトコール)を含む使用説明資料を含み得る。したがって、1つの
実施形態において、このキットは、被験体における癌の処置のため、活性薬剤(好ましく
は酵素ウレアーゼ)を含有する薬学的組成物、および被験体へのこの組成物の投与を教示
する使用説明資料を含む。1つの実施形態において、この使用説明資料は、この組成物が
腫瘍内に直接注入によって投与される場合は、腫瘍のサイズに依存し、かつ0.1〜10
0ウレアーゼ活性国際単位/mm腫瘍の量で、被験体にウレアーゼ組成物を投与するこ
とを教示し、そしてこの組成物が腫瘍への直接注入以外によって被験体に非経口的に投与
される場合は、100〜100,000国際単位/kgウレアーゼ活性国際単位/kg被
験体体重の量で、被験体にウレアーゼを投与することを教示する。
【0247】
別の実施形態において、この使用説明資料は、弱塩基性の抗腫瘍化合物(その有効性は
、固形腫瘍における、細胞内でより高く/細胞外でより低いpH勾配によって減少される
)をまた受けている被験体に、固形腫瘍における細胞内でより高く/細胞外でより低いp
H勾配を減少もしくは逆転させるのに有効なウレアーゼ量で、ウレアーゼ組成物を投与す
ることを教示する。
【0248】
あるいは、この使用説明資料は、固形腫瘍を有するかもしくは有すると疑われる被験体
に、この被験体の固形腫瘍にウレアーゼを局在化させるのに有効な状況下でウレアーゼ組
成物を投与すること、被験体組織中の細胞外pHの変化を検出し得る診断手段によっ、こ
の被験体を調査すること、およびその投与に続いて細胞外pHの上昇を示す被験体内の組
織領域を同定すること、を教示する。
【0249】
この使用説明資料は、代表的には、書面のもしくは印刷されている資料であるが、この
ようなものに限定されない。このような使用説明を保管し得、そしてそれをエンドユーザ
ーに伝達し得る、あらゆる媒体が、本発明によって意図される。このような媒体としては
、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(
例えば、CD ROM)、などが挙げられる(しかし、これに限定されない)。このよう
な媒体は、このような使用説明資料を提供するインターネットサイトのアドレスを含み得
る。
【0250】
(VII.遺伝子/細胞治療)
本発明の別の局面において、哺乳動物被験体における癌細胞の増殖を阻害することにお
ける使用のため、遺伝子治療組成物もまた意図される。この遺伝子治療組成物は、被験体
に投与される場合に、癌細胞を選択的にトランスフェクトするのに有効な標的化ベクター
を含み、そしてトランスフェクトされた癌細胞中で活性薬剤(好ましくはウレアーゼ)を
コードする核酸分子(例えば、mRNA)を生成するのに有効な組み換え核酸配列を、こ
のベクター中に保有する。
【0251】
1つの実施形態において、腫瘍細胞は、活性薬剤をコードする異種核酸分子を発現する
、操作された非腫瘍形成性細胞と接触させられる。非腫瘍形成性の操作された細胞として
は(これに限定されないが)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、骨細胞、ケラチノサイ
ト、もしくは、腫瘍細胞に由来する、放射線処理された、操作された非腫瘍形成性細胞で
あり得る。
【0252】
別の実施形態において、腫瘍細胞は、細胞標的化部分をコードする遺伝子構築物、なら
びにウレアーゼタンパク質配列および分泌性リーダー配列をコードする異種核酸分子を用
いてトランスフェクトされる。この遺伝子構築物は、腫瘍細胞内における結合体として、
細胞標的化部分、ならびに異種ウレアーゼタンパク質配列および分泌性リーダー配列を発
現し得、これによって、この結合体は、分泌性リーダー配列によって、細胞から出て行き
、その後、細胞標的化部分によって認識される細胞表面抗原に選択的に局在化するように
方向付けられる。
【0253】
好ましくは、この細胞標的化部分は、細胞表面抗原に選択的に局在化し、そして細胞表
面抗原は、少なくとも1種のヒト固形腫瘍に対して特異的である。この遺伝子構築物は、
プロモーターとこの遺伝子構築物の発現を制御する遺伝的スイッチを含む制御エレメント
とを含む、転写調節配列を含み得る。
【0254】
本発明の1つの実施形態にしたがって、この遺伝子構築物は、ウイルスベクター中にパ
ッケージングされる。腫瘍に対して標的化するため、種々のウイルスベクターが利用可能
である。パルボウイルス(Parvivirus)は、腫瘍細胞に選択的に感染すること
が公知である。あるいは、ウイルスは、公開された方法に従って、腫瘍細胞中で選択的に
複製するように設計され得る。例えば、Puhlmann Mら、Hum Gene T
her,(1999)10(4):649−57;Noguiez−Hellin Pら
、Proc Natl Acad Sci U S A,(1996)93(9):41
75−80;およびCooper MJ,Semin Oncol(1996)23(1
)172−87を参照のこと。例えば、ウイルスは、チミジンキナーゼ酵素もしくはたポ
リメラーゼ酵素を含む、急激に分裂している細胞でのみウイルス複製を可能にする、変異
したチミジンキナーゼ遺伝子もしくは変異したポリメラーゼ遺伝子を含むように改変され
得る。あるいは、ウイルスは、応答性で、かつ所望のタンパク質もしくは腫瘍細胞のみで
のウイルス複製に必須のタンパク質を発現する、腫瘍特異的制御エレメント(例えば、腫
瘍特異的プロモーター領域)を含むように遺伝的に改変され得る。好ましくは、この遺伝
子構築物はアデノウイルス内にパッケージングされる。
【0255】
(A.クローニング、遺伝子の導入および発現のためのベクター)
本発明の特定の実施形態の中では、ウレアーゼポリペプチド産物を発現するために発現
ベクターが用いられ、次いでこの産物が精製され得る。他の実施形態において、この発現
ベクターは、遺伝子治療に使用される。発現ベクターは、ベクター内に提供されるに適切
なシグナル、種々の調節エレメント(例えば、宿主細胞中で目的の遺伝子の発現を推進す
る、ウイルスおよび/もしくは哺乳動物供給源由来のエンハンサー/プロモーター)を含
み得る。宿主細胞中におけるメッセンジャーRNAの安定性および翻訳可能性を最適化す
るよう設計されるエレメントがまた、定義される。産物を発現する、恒久的で安定な細胞
クローンを確立するための多くの優性薬物選択マーカーの使用のための条件がまた(薬物
選択マーカーの発現とポリペプチドの発現とを結び付けるエレメントのように)提供され
る。
【0256】
(B.調節エレメント)
用語「発現構築物」とは、遺伝子産物をコードする核酸を含有する(その中で、この核
酸がコードする配列の一部もしくは全部が転写され得る)、あらゆる型の遺伝子構築物を
含むことを意味する。この転写物は、タンパク質へと翻訳され得るが、その必要はない。
特定の実施形態において、発現は、遺伝子の転写とmRNAの遺伝子産物への翻訳との両
方を含む。他の実施形態において、発現は、目的の遺伝子をコードする核酸の転写を含む
のみである。
【0257】
好ましい実施形態において、遺伝子産物をコードする核酸はプロモーターの転写制御下
にある。「プロモーター」とは、遺伝子の特異的の転写を開始するのに必要とされる、細
胞の合成機構もしくは導入された合成機構によって認識されるDNA配列を指す。語句「
転写制御下」は、プロモーターが核酸に対して、RNAポリメラーゼ開始および遺伝子の
発現を制御するのに正しい位置にあり、かつ正しく配向していることを意味する。
【0258】
用語、プロモーターは本明細書において、RNAポリメラーゼIIに対する開始部位の
周りにクラスター形成される転写制御モジュールの群を指すのに使用される。プロモータ
ーは別々の機能モジュールから構成され得、各モジュールは、およそ7bp〜20bpの
DNAからなり、そして、転写アクチベーターもしくはリプレッサータンパク質のための
1つ以上の認識部位を含む。各プロモーターの少なくとも1つのモジュールは、RNA合
成のための開始部位を配置するように機能する。例示的なモジュールは、TATAボック
スであるが、TATAボックスを欠くいくつかのプロモーター(例えば、哺乳動物ターミ
ナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼのプロモーター遺伝子、およびSV40
後期遺伝子のプロモーター)においては、開始部位自体の上にある別のエレメントが開始
位置を固定することを助ける。
【0259】
標的細胞内の核酸の発現に指向し得るのであれば、目的の核酸配列の発現を制御するの
に利用される特定のプロモーターが重要であるとは考えられない。したがって、ヒト細胞
が標的される場合、ヒト細胞で発現し得るプロモーターの隣およびその制御下に、核酸の
コード領域を配置することが好ましい。一般的に、このようなプロモーターは、ヒトもし
くはウイルスプロモーターのいずれかを含み得る。
【0260】
種々の実施形態において、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモー
ター、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列、ラットインシュリ
ンプロモーター、およびグリセルアルデヒド3リン酸ジヒドロゲナーゼは、目的のコード
配列の高レベルの発現を得るために使用され得る。目的のコード配列を発現させるための
、他のウイルスプロモーターもしくは哺乳動物細胞プロモーターもしくは細菌性ファージ
プロモーター(これらは当該分野で周知である)の使用も、同様に考えられる。
【0261】
cDNAインサートが利用される場合、遺伝子転写物の適切なポリアデニル化をもたら
すため、ポリアデニル化シグナルを含むことを所望し得る。ポリアデニル化シグナルの性
質は、本発明の実行の成功に重要であるとは考えられないため、任意のこのような配列が
利用され得る(例えば、ヒト成長ホルモンおよびSV40ポリアデニル化シグナル)。ま
た、発現カセットの要素としてターミネーターが考えられる。これらの要素は、メッセー
ジレベルを増強し、かつこのカセットから他の配列への読み取りを最小化するように作用
し得る。
【0262】
(C.選択マーカー)
本発明の特定の実施形態において、本発明の核酸構築物を含む細胞は、発現構築物中に
マーカーを含むことによって、インビボもしくはインビトロで同定され得る。このような
マーカーは、細胞に同定可能な変化を与え、発現構築物を含む細胞の容易な同定を可能に
する。代表的に、クローニングおよび形質転換体の選択における薬物選択マーカーの助け
を含むもの(例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、
GPT、ゼオシンおよびヒスチジノールに対する耐性を与える遺伝子)は、有用な選択マ
ーカーである。あるいは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)もしくはクロ
ラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼのような酵素が利用され得る。免疫性マー
カーがまた利用され得る。選択マーカーのさらなる例は、当業者に周知である。例えば、
Baumann,R.P.ら(2002)Biotechniques 32(5):1
030−34を参照のこと。
【0263】
(D.発現ベクターの送達)
発現ベクターが細胞に導入され得る多くの方法がある。本発明の特定の実施例において
、発現構築物は、ウレアーゼ組成物を標的細胞に送達するために使用される、ウイルスも
しくはウイルスゲノム由来の改変された構築物を含む。特定のウイルスの、レセプター媒
介性エンドサイトーシスを介して細胞内に入る能力、宿主細胞ゲノムに一体化する能力、
およびウイルス遺伝子を安定的かつ効率的に発現する能力は、それらのウイルスを、哺乳
動物細胞への外来遺伝子の導入のための魅力的な候補とする。
【0264】
インビボ送達のための好ましい方法の1つは、アデノウイルス発現ベクターの使用に関
する。「アデノウイルス発現ベクター」とは、(a)この構築物のパッケージングを補助
し、そして(b)それらの中にクローン化されたポリヌクレオチドを発現する、ことに十
分なアデノウイルス配列を含む、それらの構築物を含むことを意味する。これに関して、
発現は、遺伝子産物が合成されることを必要としない。例えば、Barnett,B.G
.ら(2002)「Targeted Adenovirus Vectors」Bio
chim Biophys Acta 1575(1−3):1−14を参照のこと。
【0265】
本発明の1つの実施形態において、発現ベクターは、アデノウイルスの遺伝的に操作さ
れた形態を含み得る。アデノウイルスの遺伝機構についての知識(36kb、直鎖、二本
鎖DNAウイルス)は、アデノウイルスDNAの大部分を7kbまでの外来配列で置換す
ることを可能にする。アデノウイルスのDNAは、潜在的遺伝毒性なしにエピソーム様式
で複製され得るため、レトロウイルスと対照的に、宿主細胞のアデノウイルス感染は染色
体の統合をもたらさない。また、アデノウイルスは構造的に安定で、かつ大量増幅後にゲ
ノムの再構成は検出されない。
【0266】
アデノウイルスは、その中程度のサイズのゲノムのため、操作が容易であるため、高い
力価のため、広範な標的細胞範囲のため、および高い感染性のために、遺伝子導入ベクタ
ーとしての使用に特に適している。アデノウイルスベクターの発生および増殖は、ヘルパ
ー細胞株に依存し得る。ヘルパー細胞株は、ヒト細胞(例えば、ヒト胚性腎細胞、筋肉細
胞、造血細胞、もしくは他のヒト胚性間葉細胞もしくは上皮細胞)に由来され得る。ある
いは、ヘルパー細胞は、ヒトアデノウイルスに寛容な他の哺乳動物種の細胞に由来され得
る。このような細胞としては、例えばベロ細胞もしくは他のサル胚性間葉細胞もしくは上
皮細胞が挙げられる。例示的なヘルパー細胞株は、293細胞株であり、これはヒト胚性
腎細胞からAd5 DNAフラグメントによって形質転換されており、そして恒常的にE
1タンパク質を発現する。293細胞を培養する方法およびアデノウイルスを増殖させる
方法は、記載されている。
【0267】
さらなるウイルスベクターが、発現構築物として本発明において利用され得る。ウイル
ス(例えば、ワクシニアウイルス、(Walther,W.およびStein,U.(2
000)Drugs 60(2):249−71)、アデノ随伴ウイルス(Zhao,N
.ら(2001)Mol Biotechnol 19(3):229−37)およびヘ
ルペスウイルス(Burton,E.A.ら(2001) Adv Drug Deli
v Rev 53(2):155−70))由来のベクターが利用され得る。本発明に使
用され得るさらなる腫瘍特異性、複製選択性ウイルスは、Hawkins,L.K.ら(
2002)Lancet Oncol 3(1):17−26に概説される。
【0268】
培養された哺乳動物細胞への発現構築物の導入のための、いくつかの非ウイルス法がま
た、本発明によって意図される。これらは、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキスト
ラン、電気穿孔法、直接的微量注入、DNAを取り込んだリポソーム、およびリポフェク
タミン−DNA複合体、細胞の超音波処理、高速微量発射体(microproject
ile)を用いた遺伝子銃(gene bombardment)、およびレセプター媒
介性トランスフェクションである。
【0269】
一旦発現構築物が細胞内に送達された場合、目的の遺伝子(例えば、ウレアーゼ遺伝子
)をコードする核酸は、異なる部位に配置されて発現し得る。特定の実施形態において、
活性薬剤をコードする核酸は、細胞のゲノムに安定に組み込まれ得る。この組み込みは、
相同組み換えを介した同種の配置および配向(遺伝子置換)であり得るか、またはそれは
ランダムに、非特異的位置に組み込まれ得る(遺伝子増大)。なおさらなる実施形態にお
いて、核酸は、別個のDNAのエピソームセグメントとして、細胞内に安定に維持され得
る。このような核酸セグメントもしくは「エピソーム」は、宿主細胞周期と独立している
かもしくは宿主細胞周期と同期した維持および複製を可能にするのに十分な配列をコード
する。発現構築物の送達の方法、および核酸がとどまる細胞内におけるその配置の方法は
、利用される発現構築物の型に依存する。
【0270】
本発明のなお別の実施形態において、発現構築物は単純に裸の(naked)組み換え
DNAもしくはプラスミドからなり得る。この構築物の導入は、物理的もしくは化学的に
細胞膜を透過させる上述の方法のいずれかによって実施され得る。これは、特にインビト
ロでの導入に適用可能であるが、インビボでの使用にも適用され得る。
【0271】
裸のDNA発現構築物を細胞に導入するための、本発明のさらに別の実施形態において
は、微粒子銃を含み得る。この方法は、DNAコーティングされた微量発射体を高速に加
速し得、それらを細胞膜に貫通させて、細胞を殺すことなく細胞内に入れることを可能に
する。小さな微粒子を加速させるためのいくつかの装置が、これに関して有用である。こ
のような装置の1つは、高電圧の放出によって電流を発生させ、これは次に推進力をもた
らす。使用される微量発射体は、生物学的に不活性な物質(例えば、タングステンビーズ
もしくは金ビーズ)からなり得る。
【0272】
1つの実施形態において、このような発現構築物はリポソーム、脂質複合体、ナノカプ
セル、もしくは上記II章で開示された方法のうちの1つ以上を用いた他の処方物に取り
込まれ得る。リポフェクタミン−DNA複合体もまた、企図される。
【0273】
本発明の特定の実施形態において、リポソームは、血球凝集ウイルス(HVJ)と複合
体化され得る。他の実施形態において、リポソームは、核の非ヒストン染色体タンパク質
(HMG−1)と複合体化され得るか、またはそれと組み合わせて利用され得る。なおさ
らなる実施形態において、リポソームはHVJおよびHMG−1の両方と複合体化され得
るか、またはそれと組み合わせて利用され得る。
【0274】
特定の遺伝子をコードする核酸を細胞に送達するのに利用され得る、他の発現構築物は
、レセプター媒介性送達ビヒクルである。これらは、ほぼ全ての真核生物細胞におけるレ
セプター媒介性エンドサイトーシスによる、高分子の選択的取り込みを利用する。種々の
レセプターの細胞型特異性の分布のため、この送達は高度に特異的であり得る。
【0275】
レセプター媒介性遺伝子標的化ビヒクルは、一般的に2つの成分からなる:細胞レセプ
ター特異的リガンドおよびDNA結合剤である。いくつかのリガンドはレセプター媒介性
遺伝子導入に使用されている(例えば、アシアロオロソムコイドおよびトランスフェリン
)。加えて、上皮細胞成長因子(EGF)もまた、扁平上皮癌細胞に遺伝子を送達するの
に使用されている(欧州特許出願公開EP 0360257、これは、本明細書中で参考
として特に援用される)。
【0276】
他の実施形態において、送達ビヒクルは、リガンドおよびリポソームを含み得る。した
がって、特定の遺伝子をコードする核酸もまた、ある細胞型(例えば、肺細胞、上皮細胞
、もしくは腫瘍細胞)内へ、任意の数のレセプター−リガンド系によって、リポソームを
用いてかもしくは用いずに、特異的に送達され得る可能性がある。例えば、EGFもしく
は他の低分子は、EGFレセプターのアップレギュレーションを示す多くの腫瘍細胞にお
いて、遺伝子をコードする核酸の媒介性送達のために、レセプターとして使用され得る。
(Basela,J.(2002)J Clin Oncol 20(9):2217−
9)。また、CD5(CLL)、CD22(リンパ腫)、CD25(T細胞白血病)およ
びMAA(黒色腫)に対する抗体が、標的化部分として同様に使用され得る。
【0277】
特定の実施形態において、遺伝子移入は、エキソビボ条件下でより容易に実施され得る
。エキソビボ遺伝子治療とは、動物から細胞の単離、この細胞へのインビトロでの核酸の
送達、そしてこの改変した細胞を動物に戻すこと、を指す。これは、動物からの組織/器
官の外科的除去、もしくは細胞および組織の初代培養に関し得る。例えば、Ahonen
,M.ら(2002)Mol Ther 5(6):705−15およびKawai,K
.ら(2000)Mol Urol 4(2):43−6;米国特許第6,395,71
2号、同第6,149,904号、および同第6,410,029号を参照のこと(これ
らはそれぞれ、本明細書中で参考として援用される)。
【0278】
初代哺乳動物細胞培養は、種々の方法で調製され得る。インビトロおよび発現構築物と
接触した状態で細胞が生存可能に保たれるように、この細胞は、代表的に正しい比率の酸
素および二酸化炭素、ならびに栄養分との接触を保ち、かつ微生物のコンタミネーション
から保護される。細胞培養技術は、当業者に周知である。
【0279】
有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、ベロ細胞およびHela細胞、ならびにチャイニー
ズハムスター卵巣の細胞株、W138細胞、BHK細胞、COS−7細胞、293細胞、
HepG2細胞、NIH3T3細胞、RIN細胞、およびMDCK細胞である。加えて、
宿主細胞系統は、挿入された配列の発現を調節(modulate)するように、もしく
は所望の様式で遺伝子産物を改変および処理するように、選択され得る。タンパク質産物
のこのような改変(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)は、こ
のタンパク質の機能にとって重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳後の
プロセシングおよび改変に関して、特徴的および特異的機構を有する。適切な細胞株もし
くは宿主系は、発現される外来タンパク質の正しい改変およびプロセシングを保証するよ
うに、選択され得る。
【0280】
多くの選択系が使用され、これらとしては、それぞれtk細胞、hgprt細胞、もし
くはaprt細胞における、HSVチミジンキナーゼ遺伝子、ヒポキサンチン−グアニン
ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、およびアデニンホスホリボシルトランスフェ
ラーゼ遺伝子が挙げられる(しかし、これに限定されない)。また、抗代謝産物抵抗性が
、gpt(ミコフェノール酸(mycophenolic acid)に対する抵抗性を
与える);neo(アミノグリコシドG418に対する抵抗性を与える);および、hy
gro(ハイグロマイシンに対する抵抗性を与える)、による選択の基本として使用され
得る。
【0281】
上記から、どのように種々の対象物と本発明の特色とが対応されたかが見られ得る。
【0282】
(表2)
(本発明の補助として提供される配列)
【0283】
【表2−1】

【0284】
【表2−2】

【実施例】
【0285】
(IV.実施例)
以下の実施例は、本明細書中に記載される本発明をさらに説明し、かつ本発明の範囲を
限定することを決して意図しない。
【0286】
(実施例1)
(A1.ペプチド合成)
従来のN−t−ブチルオキシカルボニル(t−Boc)化学を用いた固相合成方法論に
よって、ペプチドを調製した。ペプチドは、10%アニソールおよび2%の1,2−エタ
ンジチオールを含有するフッ化水素(20ml/g樹脂)との4℃、1.5時間の反応に
よって樹脂から切断した。粗製ペプチドは、冷やしたエーテルによって洗浄し、氷酢酸に
よって樹脂から抽出し、そして凍結乾燥した。合成ペプチドは、Zorbaxの半分取用
(semi−preparative)C−8カラム(250×10mm I.D.、粒
子サイズ6.5μm、孔径300Å)上で、線形AB勾配(0.2%B/分〜1.0%B
/分の範囲)を用いて、流速2ml/分で、逆相HPLCによって精製した。ここで、溶
媒Aは、水性の0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)であり、溶媒Bは、0.05%T
FAアセトニトリルである。精製されたぺプチドの均質性は、分析用逆相HPLC、アミ
ノ酸分析、およびMALDI質量分析法によって検証した。
【0287】
(A2.ウレアーゼのアフィニティー精製)
ヒドロキシ尿素とエポキシで活性化されたSepharose 6B(Amersha
m Biosciences)とを反応させることによって、アフィニティーカラムを調
製した。残りの活性基は、1Mエタノールアミンを用いてブロックした。
【0288】
精製は以下のように行った。PEB(0.02Mリン酸、1mM EDTA、1mM
β−メルカプトエタノール、pH7.0)によって、カラムを平衡化した。粗製ウレアー
ゼ試料(図2)を適用した(PEB中に0.5mg/ml、全体で8ml)。15mlの
PB(0.02Mリン酸、1mM β−メルカプトエタノール、pH7.0)によって、
カラムを洗浄した。次いでそれぞれ8mlの以下によって、カラムを洗浄した:PB+0
.1M NaCl、PB+0.5M NaCl、およびPB+0.95M NaCl。ウ
レアーゼを、8mlのEB(0.2Mリン酸、1mM β−メルカプトエタノール、pH
4.6)によって溶出し、1mlの分画を集めた。分画は、280nmでのODを読むこ
と、およびHPLC(C5カラム)分析によってチェックした。カラムは、0.01%
NaN中に保存した。
【0289】
(B.実施例2−ウレアーゼ−コイル結合体の調製)
10mgのタチナタマメウレアーゼを300μLの2mMリン酸緩衝液pH7.2に溶
解し、ウレアーゼコイル結合体を調製した。次いで、5mgの二官能性架橋剤スルホ−M
BSをこの溶液に加え、そしてこの混合物を、室温で1時間、ゆっくりと攪拌した。この
混合物は、次いで2mMリン酸緩衝液(pH7.2)に対して透析し、過剰なリンカーを
除去した。
【0290】
C末端のシス(cys)リンカーを有するKコイルもしくはEコイル(1.5mg)を
、リンカーで改変されたウレアーゼ溶液に加え、室温で3時間、ゆっくりと攪拌した。こ
のコイルウレアーゼ結合体を、新しい2mMリン酸緩衝液(pH7.2)に対して一晩透
析し、結合されていないコイルペプチドを除去した。透析されたウレアーゼ結合体を凍結
乾燥し、次いで1mLの2mMリン酸緩衝液(pH7.2)に溶解し、そしてさらなる精
製のため、sephadex G75カラムに適用した。コイルウレアーゼ結合体を含む
空隙容量分画を集め、凍結乾燥して4℃で保存した。
【0291】
標準的手順を用いたアミノ酸分析およびMALDI質量分析法によって、この結合体の
純度および調製物中のコイル対ウレアーゼの比率を決定した。
【0292】
(C.実施例3−ウレアーゼおよびウレアーゼ結合体の活性アッセイ)
グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)との共役酵素反応において、ウレアーゼま
たはウレアーゼ結合体の酵素活性を行った。340nmでの吸光度の変化を測定すること
によって、酸化されたNADHの量を決定した(Kaltwasser,H.およびSc
hlegel,H.G.,Anal.Biochem.,16,132,1966)。使
用した試薬は以下であった:0.10M リン酸カリウム緩衝液(pH7.6);1.8
0M 尿素(リン酸緩衝液中に調製);0.025M アデノシン−5’−二リン酸(A
DP)(10.7mg/ml)(緩衝液中);0.008M NADH(5mg/ml)
(リン酸緩衝液中);0.025M α−ケトグルタレート(3.7mg/ml)(リン
酸緩衝液中);グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)溶液(アンモニウムイオンを
含まない);50U/ml リン酸緩衝液(アッセイ前に新たに調製)。リン酸緩衝液に
溶解することによってウレアーゼ溶液を調製し、0.1〜0.5U/mlの濃度を得た。
この溶液は、アッセイ前に新たに調製した。
【0293】
以下の2mL:リン酸緩衝液2.40ml、各0.10mlの尿素、ADP、NADH
、GLDH、およびα−ケトグルタル酸、をキュベットに加えることによって、アッセイ
を開始した。分光光度計は、340nmおよび25℃に調整した。添加成分を入れたキュ
ベットを、25℃で5分間分光光度計に配置して、温度平衡に達せさせ、次いで、もし行
うとすれば340nmで、ブランク比を確立した。
【0294】
酵素反応を開始するため、0.1mlのウレアーゼ溶液をキュベットに加えた。340
nmでの吸光度の変化を15分間記録した。酵素活性と1分当りの340nmでの吸光度
の減少とを相関させた。
【0295】
(D.実施例4−コイル抗体結合体の調製)
材料としては、以下が挙げられる:(1)ラット抗hEGFR IgG2a(Sero
tec)、200ug/0.2ml(すなわち、1mg/ml);(2)Eコイル(N−
リンカー);(3)m−過ヨウ素酸塩ナトリウム(Pierce);および(4)二官能
性架橋剤、KMUH(Pierce)。
【0296】
以下の工程によって、Eコイルの機能改変を行った:
a.DMSOにKMUHを溶解し10mg/ml溶液(250μlのDMSO中に2.
5mg)を調製した。
【0297】
b.PBにEコイルを溶解(392μlの10mM PB(pH7.4)+4μlのT
CEP(100mM保存液)中に約2mg)。
【0298】
c.1μlのTris(2M)を加え、Eコイル溶液を中和。
【0299】
d.Eコイル溶液をKMUH溶液に加え、室温で2時間インキュベート。
【0300】
e.溶液を4℃で一晩保存。
【0301】
f.翌朝、12000rpmで5分間遠心分離を行い、不溶性の沈殿を除去。
【0302】
g.C8 HPLCカラム(0.05%TFAを含む0%〜20%アセトニトリル/H
O)上でKMUHおよびDMSOを除去し、全てのペプチド分画を回収(75%アセト
ニトリル)。
【0303】
g.ペプチド分画を凍結乾燥し、MSによってチェック。
【0304】
抗体を、以下の工程によって酸化した:
a.抗体各2mgに対して、アンバーのバイアル中で、20mgの過ヨウ素酸塩を秤量。
b.バイアルに、2mlのPBS(pH7.2)および2mlの保存抗体を加え(最終抗
体濃度は、0.5mg/ml)、過ヨウ素酸塩粉末が溶解するまで緩やかに攪拌。
c.室温で、30分間インキュベート。
d.100mM酢酸緩衝液(pH5.5)に対して3回透析し、過ヨウ素酸塩を除去。
【0305】
以下の工程によって、結合体化を行った:
a.Millipore Ultrafree Filter units(30k M
Wc/o)を用いて酸化抗体を濃縮(4ml中に約2mg)。
b.官能性を与えたEコイル溶液(4μg/μl ddHO)75μlを、酸化抗体溶
液(酢酸緩衝液(pH5.5)中に約0.75mgの抗体を含有)の半量に加えた。
c.室温で2時間、振とうしながらインキュベート。
d.Gプロテインカラムを用いて抗体混合物を精製(図4を参照)。
e.(アフィニティー精製の前後で)試料を比較および分析。
【0306】
(E.実施例5−コイルウレアーゼ結合体およびコイル抗体結合体のBiacore分
析)
システイン含有Kコイルペプチドもしくはシステイン含有Eコイルペプチドを、Pio
neer B1バイオセンサーチップと、製造元が示唆するプロトコールに従って共有結
合させた。簡単に言えば、このセンサーチップのデキストラン表面を、初めにNHS/E
DC(15μl)で活性化し、続いてPDEA(20μl)を加えた。Kコイル(もしく
はEコイル)(10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.3)中に50μg/ml)を注
入し、およそ200〜400RUの表面密度を与えるように反応させた。次いで、残った
活性基は脱活性化溶液(50mMシステイン、1M NaCl、0.1Mフォルメート(
pH4.3))の注入(10μL)によってブロックした。
【0307】
BIAcore3000機器上で、25℃で、動態学的実験を実施した。各バイオセン
サーの作動は、以下からなる:(1)600秒の試料注入相(コイルウレアーゼもしくは
コイル抗体)、(2)600秒の解離層、および(3)2×15秒の再生層(6M塩酸グ
アニジン)。このサイクルを通じて5μl/分の流速を維持した。PBSを緩衝液として
使用した。SPRシグナルを、0.5秒毎にサンプリングしながらリアルタイムで記録し
、RU対時間としてプロットした(センサーグラム(sensorgram))。対応す
るブランク細胞表面への試料注入サイクルを引き算することによって、得られた各センサ
ーグラムを全体的な(bulk)屈折率の変化について補正した。
【0308】
(F.実施例6−動物研究)
ヒト乳腺癌異種移植片を有する胸腺欠損nu/nu/雌マウスを試験に使用した。選択
された動物は、一般的に大体5〜7週齢で、処置開始時の体重はおよそ15〜28gの範
囲であった。
【0309】
MCF細胞を異種移植片の生成に使用した。この細胞を、5000U/mlのペニシリ
ン/ストレプトマイシン、200mMのL−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須
アミノ酸、ビタミン、および10%FBSを補充したMEM培地中で増殖させた;細胞イ
ンキュベーターは、5%CO、37.5℃、および湿度80%に維持した。この細胞を
0.25%(w/v)トリプシン−0.03%(w/v)EDTA溶液を用いて収集した
。およそ1×10細胞(100μL中)を、各マウスの右腹側に皮下注入した。
【0310】
約6日間〜8日間腫瘍の増殖を進行させ、腫瘍のサイズが少なくとも直径2〜4mmに
達するようにさせた。腫瘍内注入を介して投薬を投与した。各動物への用量は50μLで
あった。各固形腫瘍に、「扇状の様式(fanning fashion)」で、所定用
量の試験物を注入した。腫瘍容量を外部カリパー(caliper)測定によって取得し
た。体重は、試験の開始時および屠殺時に取得した。
【0311】
結果は、下記の表3に示すように、腫瘍が処置後24時間で認知不可能であったことを
示す。
【0312】
(表3)
(マウス腫瘍の処置の成功)
【0313】
【表3】

【0314】
本発明は特定の実施形態に関して記載されたが、本発明から逸脱することなく種々の変
化および改変がされ得ることは、当業者にとって明白である。
【0315】
(配列表)
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−207913(P2011−207913A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−161332(P2011−161332)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2004−522053(P2004−522053)の分割
【原出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【出願人】(504066807)へリックス バイオファーマ コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】