発光ダイオード装置及びその製作方法
【課題】電力変換効率の低い補助電力供給モジュールの使用を減少することで、電力割当装置全体の電力変換効率を向上させる。
【解決手段】電力割当装置は第一スイッチ素子と制御装置とを含む。第一スイッチ素子は、複数の電力供給モジュールのうち変換効率が相対的に高い電力供給モジュールの出力端と、変換効率が相対的に低い電力供給モジュールの出力端にそれぞれ結合される第一接続端と第二接続端を備え、導通または切断状態により変換効率が相対的に高い電力供給モジュールから出力された電力を所定数量の負荷に同時に割り当てる。制御装置は第一スイッチ素子に結合され、制御信号を生成して第一スイッチ素子の導通または切断状態を制御する。
【解決手段】電力割当装置は第一スイッチ素子と制御装置とを含む。第一スイッチ素子は、複数の電力供給モジュールのうち変換効率が相対的に高い電力供給モジュールの出力端と、変換効率が相対的に低い電力供給モジュールの出力端にそれぞれ結合される第一接続端と第二接続端を備え、導通または切断状態により変換効率が相対的に高い電力供給モジュールから出力された電力を所定数量の負荷に同時に割り当てる。制御装置は第一スイッチ素子に結合され、制御信号を生成して第一スイッチ素子の導通または切断状態を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光ダイオード(LED)装置及びその製作方法に関し、特にLEDに多孔質材料層を形成し、この多孔質材料層にある複数の孔にナノ結晶を埋め込むようなLED装置の製作方法、及びこの方法で製作されたナノ結晶を有するLED装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白色LEDが全世界的に注目されている新製品となっている。白色LEDは小型で熱放射をせず、低電力消費で寿命が長く、良好な反応速度と環境にやさしいなどの特長を持ち、従来の白熱電球で克服しがたい問題を解決し、21世紀の照明器具として欧米の科学者に期待されている。
【0003】
従来の白色LED装置の製作技術は概ね3種類に分けられる。第一は赤、青、緑のLEDを設け、各LEDの通過電流をそれぞれ制御して白色光を生成する技術であり、第二は黄色と青色LEDを設け、各LEDの通過電流をそれぞれ制御して白色光を生成する技術である。しかしこれらの方法はいずれも、色の異なる複数のLEDを同時に利用して白色光を生成するとき、そのいずれかが劣化すれば白色光が得られなくなるという欠点を有する。また、複数のLEDを同時に使用するのはコストが高く、制御回路が複雑であるのみならず、白色LED装置のサイズを有効に縮小できない。これは実際の応用にとって不利である。
【0004】
第三は単色LEDを利用して特定の蛍光材料を励起する技術である。例えば窒化インジウムガリウム(InGaN)青紫色LEDによる青色光を利用して、黄色光を発する蛍光粉を励起し、この青色光と黄色光を混色して白色光を生成する。これは、前記方法の欠点を解消するのみならず、駆動回路の設計と製品の生産を容易にし、電力消費とコストを削減できるので、現在の白色LEDの製作に多用される。しかし、蛍光粉の粒径は一般に数mm以上に達するので、蛍光粉により入射した可視光が遮蔽されたり散乱し、発光効率が低下せざるを得ない。この問題を改善するために、LEDとナノ級の蛍光粉を組み合わせた応用例が多数公開されている。例えばアメリカ特許US6,890,777では、ナノ級の量子ドットをコロイド溶液に混入してLEDに塗布し、量子ドットを含む蛍光層を製作してLEDに設ける方法を開示している。同特許によれば、蛍光層が発する蛍光の色は、量子ドットの大きさによって変わる。また、アメリカ特許US7,342,260 B2では、量子ドットの材料の改善に着目し、LEDの表面にZnX量子ドットを塗布する方法を開示している。なお、多層量子ドットと短波長チップを組み合わせて、蛍光層のスペクトルを制御する応用例も、2006年にアメリカ特許出願公開US2006/0113895 A1により公開されている。
【0005】
前掲技術に掲げられるナノ級の量子ドットとLEDを組み合わせた応用例は光の散乱問題を改善できるが、量子ドットがナノ粒子の特性により凝集しやすいという問題がある。特に現行の蛍光粉と量子ドットの塗布方法はいずれも、蛍光粉または量子ドットをコロイド溶液に混入してから注射や回転塗布などの方式でLEDに塗布するため、コロイド溶液の中の蛍光粉または量子ドットは大きさがまちまちな凝集物になり、均一に分散できない。したがって、前記方法で製作された蛍光層は、蛍光粉の均一性を容易に制御できず、LED装置が発する白色光は均一な分布が得られない。特に、実装技術の進歩に伴い、LEDアレイを回路基板に直接実装した大型LEDモジュールが増え、複数のLEDを一枚の基板に設けた応用例では、蛍光粉または量子ドットの塗布は均一性が得られにくいので、LEDの色分布の不均一問題は一層深刻になる。
【0006】
したがって、LEDの色均一性と発光効率の向上は、業界において開発の目標とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的のひとつは、ナノ結晶の均一性を有効に向上させ、LED装置の色均一性と発光効率を高め、光の散乱を減少させるためのLED装置及びその製作方法。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前掲目的を達成するために、本発明の実施例では発光ダイオード(LED)装置の製作方法を提供する。当該方法によれば、まず基板と、基板に設けられる少なくとも1つのLEDを設ける。次に当該LEDの表面に複数の孔を有する多孔質材料層を形成する。最後に当該各孔に複数のナノ結晶を埋め込み、LEDの表面に蛍光層を形成する。
【0009】
前掲目的を達成するために、本発明ではLED装置を提供する。当該LED装置は、少なくとも1つのLEDと、多孔質材料層と、複数のナノ結晶とを含む。当該多孔質材料層はLEDの表面に設けられ、複数の孔を有する。当該少なくとも1つのナノ結晶は当該各孔の中にそれぞれ設けられ、その粒径は当該各孔の孔径より小さい。
【0010】
本発明は多孔質材料層の孔配列構造を先に形成してから、各孔にナノ結晶を埋め込むことで、蛍光層におけるナノ結晶分布の均一性を制御する。したがって、本発明によるLEDから発せられた光とナノ結晶から発せられた蛍光を混合して得た白色光または他色の光は均一に分散し、多数のチップまたはチップアレイが回路基板に直接実装された構造に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1によるLED装置の製作方法のフローを表す説明図である。
【図2】本発明の実施例1によるLED装置の製作方法のフローを表す説明図である。
【図3】本発明の実施例1によるLED装置の製作方法のフローを表す説明図である。
【図4】本発明の実施例1によるLED装置の製作方法のフローを表す説明図である。
【図5】本発明による矩形配列を呈する第一孔を表す説明図である。
【図6】本発明による第一蛍光層の垂直断面を透過型電子顕微鏡(TEM)から観察した画像である。
【図7】本発明による第一蛍光層の第一ナノ結晶密度の、第一蛍光層の厚さに応じた分布を表す説明図である。
【図8】本発明の実施例2によるLED装置の断面図である。
【図9】本発明の実施例3によるLED装置の断面図である。
【図10】本発明の実施例4によるLED装置の断面図である。
【図11】本発明の実施例5によるLED装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
かかる装置及び方法の特徴を詳述するために、具体的な実施例を挙げ、図を参照にして以下に説明する。
【0013】
図1から図4を参照する。図1から図4は本発明の実施例1によるLED装置の製作方法のフローを表す説明図であり、そのうち図4は本発明の実施例1によるLED装置の断面図である。図1に示すように、本発明によるLED装置の製作方法ではまず、基板10と、基板10に設置する少なくとも1つのLED12を設ける。基板10は回路基板、リードフレーム、またはシリコン基板など用途の異なる基板であり、LED12を載せるために用いられる。もっとも、本発明による基板はLEDを載せるのに限らない。LED12はウェハーに作られた未分割のものでも可能なので、ウェハー上のLED12にかける後続の工程を容易にするために、基板10を台座または積載板として働かせることもできる。また、LED12は例えば各色の光を発するLEDであり、その発光の波長範囲は望ましくは380〜500nmである(例えば窒化インジウムガリウム青色LED)。もっとも本発明はこれに限らない。
【0014】
次に図2に示すように、LED12の表面にコロイド溶液14を塗布し、LED12の表面にコロイド薄膜16を形成する。コロイド溶液14は塗布される前に、以下の方法で製作される。まずゾルゲル法で複数の無機材料と複数の有機材料を混合して混合溶液を形成し、この混合溶液を約60〜90℃に加熱した後、更に60〜120分間加熱し、室温の中で2〜7時間放置すれば、所要のコロイド溶液が得られる。
【0015】
本実施例によれば、前記無機材料は水、塩酸(HCl)、エタノール、及びテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を含み、前記有機材料は臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ポリオキシエチレンセチルエーテルBrij−56、及びトリブロック共重合体プルロニックP−123、P123を含み、コロイド溶液14を形成する各成分のモル数比は略、TEOS:(P123、CTAB、Brij−56):水:塩酸:エタノール=1:0.008〜0.03:3.5〜5:0.003〜0.03:10〜34である。もっとも本発明は前記材料とモル数比に限らない。また、図2に示すように、本実施例によるコロイド溶液14を塗布する方法は回転塗布法(図2の矢印参照)であり、回転速度は約2200回転/分とされ塗布時間は30秒とされる。もっとも本発明はこれに限らず、回転速度と塗布時間によりコロイド薄膜16の均一性と厚さを制御することができる。また、本発明による塗布方法は回転塗布法に限らず、スプレー法、スクリーン印刷法、または金型固定法を利用し、液体または流体を均一に塗布することもできる。なお、本実施例によるLED12は、ダイボンディング法または共晶接合法など金属ワイヤを要しない方式で、LED12の導電パッド(図示せず)と基板10上の電極(図示せず)を接続する。もっとも本発明はこれに限らず、LED12の表面にコロイド溶液14を塗布する前に、ワイヤボンディング方式でLED12表面の導電パッドを金属導線を介して基板上の電極(図示せず)に接続することもできる。
【0016】
その後、図3に示すように乾燥プロセスを行い、例えばコロイド薄膜16の塗布されたLEDを25〜60℃の温度で2〜7時間放置する。その後、ベーキングプロセスを行う。ベーキングプロセスは約90〜150℃の温度で1〜5時間実行され、コロイド薄膜16のうちシンナーの部分を取り除き、複数の第一孔18を有する第一多孔質材料層20をLED12の表面に生成する。第一多孔質材料層20の材料は低透水性のシリコン酸化物、例えば二酸化珪素(SiO2)またはシリカなど安定性の高い材料である。波長400〜700nmの光について第一多孔質材料層20の光透過率は90%より大きい。注意すべきは、本実施例による各第一孔18の孔径は、乾燥プロセスとベーキングプロセスの時間と温度条件を制御して所要の値が得られ、その値はいずれも200nmより小さい。なお、図3に示すように、第一孔18の形状は望ましくは柱状であり、第一孔18はいずれもLED12の表面12と平行で、その垂直断面は三角形の配列を呈する。もっとも、本発明による第一孔はこのような配列形状に限らない。図5を参照する。図5は本発明による矩形配列を呈する第一孔を表す説明図である。図5に示すように、第一孔I8の垂直断面の配列形状は正方形などの矩形であってもよい。
【0017】
続いて図4に示すように、高密度プラズマ化学的気相成長(HDPCVD)工程を行い、成長工程用の成長チャンバー22にシラン(SiH4)と水素を通し、各第一孔18に気相成長法で複数の第一ナノ結晶24を埋め込み、第一多孔質材料層20と第一ナノ結晶24を第一蛍光層226として作成する。HDPCVD工程の温度条件は100〜500℃とされ、圧力は5〜50ミリトルとされ、プラズマ電力は100〜500Wとされる。また、水素が継続的に成長チャンバーに導入されるのに対して、シランは間歇的に成長チャンバーに導入される。シランの導入は、0.5〜3秒の導入と1〜5秒の中止が繰り返されるように行われる。そうすれば第一多孔質材料層20の各第一孔18の中に第一ナノ結晶24が形成される。また、本実施例において第一多孔質材料層20の厚さは約200nmとされる。このような厚さにより、導入気体は第一多孔質材料層20の構造間隙を通して第一多孔質材料層20の各第一孔18に進入し、各第一孔18に第一ナノ結晶24を生成することができる。もっとも本発明はこれに限らず、気体が第一孔18に進入できるような厚さであればよい。また、第一多孔質材料層20に埋め込む第一ナノ結晶24の数量は、第一多孔質材料層20の厚さを調整することで制御できる。
【0018】
なお、本実施例による第一蛍光層26は励起時に発する蛍光の波長範囲は400〜700nmであり、波長400〜700nmの光について第一蛍光層26の光透過率は80%より大きい。第一孔18の中にはCTAB、Brij−56、P123などの有機材料が残っているが、200〜500℃の環境で水素プラズマ(50〜300sccm)を0.5〜3時間導入して処理すれば除去できる。そうすれば、LED12の表面に均一に分散する第一ナノ結晶24を有する第一蛍光層26が得られ、本実施例によるLED装置28の製作が完成する。本発明による第一蛍光層において第一ナノ結晶が均一に分散しているのを詳述するために、図6と図7を参照する。図6は本発明による第一蛍光層の垂直断面を透過型電子顕微鏡(TEM)から観察した画像であり、図7は本発明による第一蛍光層の第一ナノ結晶密度の、第一蛍光層の厚さに応じた分布を表す説明図である。図6に示すように、第一ナノ結晶24は格子配列を有するナノ結晶であり、第一蛍光層26の第一多孔質材料層20は均一に分散する第一ナノ結晶24を含み、これらの第一ナノ結晶は三角形の配列を呈する。また、図7に示すように、二次イオン質量分析計(SIMS)を利用すれば、第一蛍光層26の表面から表面下80nmの箇所まで、第一ナノ結晶24の数量が一定値であると測定される。言い換えれば、表面からその下80nmまでの第一蛍光層26は、均一した第一ナノ結晶24の分布密度を有する。
【0019】
続いて図4を参照する。本発明による第一ナノ結晶24を第一孔18に埋め込む方法はHDPCVD法に限らず、常圧化学的気相成長(APCVD)法、低圧化学的気相成長(LPCVD)法、またはプラズマ化学的気相成長(PECVD)法を利用してもよく、成長温度は100〜500℃とされる。本実施例において導入気体がシランと水素であるため、第一孔18に埋め込まれる第一ナノ結晶24はシリコンナノ結晶となる。もっとも本発明はシリコンに限らず、他種の気体を導入して所要のナノ結晶を形成することができる。また、第一ナノ結晶24はIII−V族半導体材料、II−VI族半導体材料、官能基または非金属元素である。そのうち半導体材料にはマグネシウム、マンガン、鉄、クロム、セシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、スズ、アルミニウムなど他の元素が混入しており、官能基は酢酸基またはベンゼン環などであり、非金属元素はハロゲン、イオウ、リン、またはゲルマニウムなどの元素である。
【0020】
注意すべきは、本発明で放射される蛍光の波長は第一多孔質材料層20の材料と第一孔18の孔径、及び第一ナノ結晶24の材料と第一ナノ結晶の大きさによって決められる。第一ナノ結晶24の大きさは第一孔18の孔径によって決められるので、所要の蛍光波長に基づき、コロイド薄膜16にかける乾燥プロセスとベーキングプロセスの時間と温度条件を調整し、所要の孔径を有する第一孔18を形成してから、その孔径により気相成長工程で所要の大きさを有する第一ナノ結晶24を定めれば、所要の蛍光波長を有する第一蛍光層26が製作できる。また、気相成長工程において、第一孔18に形成予定の第一ナノ結晶24は第一多孔質材料層20と結合し、第一孔18の中で徐々に形成される。第一ナノ結晶24の材料と第一多孔質材料層20により異なる分子間結合が形成され、異なる相互作用力が生成される。また、要求に応じて第一多孔質材料層20に第一ナノ結晶24を埋め込めば、所要の第一蛍光層26が得られる。したがって、第一多孔質材料層20の材料と第一孔18の孔径、及び第一ナノ結晶24の大きさまたは材料を変えれば、波長は調整される。
【0021】
前述のように、本発明では規則的に配列した孔を有する多孔質材料層をLEDに形成し、この多孔質材料層の孔にナノ結晶材料を埋め込むことで、ナノ結晶を蛍光層に均一に配列させ、LED装置の色均一性を向上させる。また、本発明による多孔質材料層は90%以上の光透過率を有しながらも、LEDから発せられた光が従来の蛍光層を透過してコロイドに吸収され、発光効率が低下するという影響を受けないので、LED装置の発光効率を向上させることができる。なお、本発明によるナノ結晶はいずれも粒径が100nm以下なので、従来の技術のように、LEDから発せられた光が蛍光層により散乱する問題は解消される。
【0022】
まとめて言えば、本発明によるLED装置の製作方法は、基板10と、LED12と、基板10とLED12を覆う第一蛍光層26とを含むLED装置28を製作する。もっとも、本発明によるLED装置は単層の蛍光層に限らない。各実施例の異同を比較するために、以下に述べる各実施例において同一の素子には前掲実施例1と同じ番号がつけられ、同様の構造については説明が省略される。
【0023】
図8を参照する。図8は本発明の実施例2によるLED装置の断面図である。図8に示すように、前掲実施例1によるLED装置に比べて、本実施例によるLED装置50は更に、少なくとも1枚の第二蛍光層52を含む。第二蛍光層52は前掲第一蛍光層を形成する工程の条件を調整して、第一蛍光層26の上に形成されたものである。第二蛍光層52は複数の第二孔54を有する第二多孔質材料層56と、第二孔54の中にそれぞれ設けられる複数の第二ナノ結晶58とを含む。注意すべきは、第一孔18の孔径と異なる第二孔54の孔径にしたり、または第一多孔質材料層20の材料と異なる第二多孔質材料層56の材料を利用すれば、第二蛍光層52を励起して得た蛍光の波長を第一蛍光層26を励起して得た蛍光の波長と異ならせ、本実施例によるLED装置50に種々の色温度、色飽和度、及び演色性を有する光を発せしめられる(すなわちLED装置50から発せられた光が種々の波長を有する)。また、第一蛍光層26の特性を有する蛍光層を厚くするために、本発明では第一蛍光層26の上に当該第一蛍光層26と同じ蛍光特性を有する第二蛍光層52を形成し、所要の蛍光層厚さを調整して蛍光層励起時の蛍光強度を向上させることができる。
【0024】
なお、本発明は基板に単一のLED装置を設けるのに限らず、複数のLED装置を基板に設けるのも可能である。図9を参照する。図9は本発明の実施例3によるLED装置の断面図である。図9に示すように、前掲実施例2によるLED装置に比べて、本実施例によるLED装置60は基板10に設けられる複数のLED12を含む。
【0025】
また、本発明による蛍光層はLED装置の表面に設けるのに限らない。図10を参照する。図10は本発明の実施例4によるLED装置の断面図である。図10に示すように、本実施例によるLED装置70は、複数の溝72を備える基板74と、各溝72にそれぞれ設けられる複数のLED12と、溝72内に設けられ各LED12を覆う第一透光材料層78と、第一透光材料層78の上に設けられ各溝72を埋め込む第二透光材料層80と、基板74と第二透光材料層80を覆う蛍光層82とを含む。前掲実施例によるLED装置との相違点は、LED12と蛍光層82の間に第一透光材料層78と第二透光材料層80が設けられているところにある。第一透光材料層78と第二透光材料層80は蛍光粉が入った蛍光コロイドまたは透明コロイドである。注意すべきは、蛍光層82の屈折率が約1.2であるため、第一透光材料層78の屈折率は1.2〜1.7にしなければならず、そしてLED12から発せられた光が第一透光材料層78と蛍光層82の間を通過するときに生じる全反射の光線量を低くするためには、第二透光材料層80の屈折率は第一透光材料層78の屈折率より小さくしなければならない。もっとも、本発明による第二透光材料80は蛍光粉の入った蛍光コロイドに限らず、多孔質材料層とナノ結晶を含む蛍光層を利用しても可能である。
【0026】
本発明による蛍光層は基板を覆うのに限らず、溝を埋め込むことも可能である。図11を参照する。図11は本発明の実施例5によるLED装置の断面図である。図11に示すように、前掲実施例4によるLED装置に比べて、本実施例によるLED装置100の蛍光層82は、各溝72を埋め込むように第二透光材料層80の上に設けられている。もっとも、本実施例はこれに限らず、蛍光層82と第二透光材料層80の成長位置を変えたり、または蛍光層82と第二透光材料層80として多孔質材料層とナノ結晶を含む蛍光層を使用することも可能である。
【0027】
まとめて言えば、本発明によるLED装置及びその製作方法には以下の特長がある。
1.本発明は多孔質材料層の中の孔配列結構を先に形成してから、均一に分散している各孔の中にナノ結晶を埋め込み、それにより蛍光層におけるナノ結晶分布の均一性を制御する。したがって、LEDから発せられた光とナノ結晶から発せられた蛍光を混合して得た白色光または他色の光は均一に分散でき、多数のチップまたはチップアレイが回路基板に直接実装された構造でも均一な色の光を発せられる。
2.本発明は乾燥プロセスとベーキングプロセスの時間と温度条件を制御して孔の孔径を制御し、更にこの孔径によりナノ結晶の大きさを制御することで、ナノ結晶が光を吸収した後に放射する蛍光の波長を定める。或いは、多孔質材料層の材料と、ナノ結晶の材料を制御してナノ結晶と多孔質材料層との間の分子間結合を変え、蛍光層に種々の蛍光波長を放射させる。したがって、単層または多層の蛍光層を利用すれば、種々の色温度、色飽和度、及び演色性を有する光を混合することができる。
3.前記多孔質材料層と蛍光層はいずれも高い光透過率を有するので、光が散乱する確率を低くし、光が再び吸収されるのを避けるとともに、発光効率を向上させる効果がある。
【0028】
以上は本発明に好ましい実施例であって、本発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなし得る修正、もしくは変更であって、本発明の精神の下においてなされ、本発明に対して均等の効果を有するものは、いずれも本発明の特許請求の範囲に属するものとする。
【符号の説明】
【0029】
10、74 基板
12 LED
14 コロイド溶液
16 コロイド薄膜
18 第一孔
20 第一多孔質材料層
22 成長チャンバー
24 第一ナノ結晶
26 第一蛍光層
28、50、60、70、100 LED装置
52 第二蛍光層
54 第二孔
56 第二多孔質材料層
58 第二ナノ結晶
72 溝
78 第一透光材料層
80 第二透光材料層
82 蛍光層
【技術分野】
【0001】
本発明は発光ダイオード(LED)装置及びその製作方法に関し、特にLEDに多孔質材料層を形成し、この多孔質材料層にある複数の孔にナノ結晶を埋め込むようなLED装置の製作方法、及びこの方法で製作されたナノ結晶を有するLED装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白色LEDが全世界的に注目されている新製品となっている。白色LEDは小型で熱放射をせず、低電力消費で寿命が長く、良好な反応速度と環境にやさしいなどの特長を持ち、従来の白熱電球で克服しがたい問題を解決し、21世紀の照明器具として欧米の科学者に期待されている。
【0003】
従来の白色LED装置の製作技術は概ね3種類に分けられる。第一は赤、青、緑のLEDを設け、各LEDの通過電流をそれぞれ制御して白色光を生成する技術であり、第二は黄色と青色LEDを設け、各LEDの通過電流をそれぞれ制御して白色光を生成する技術である。しかしこれらの方法はいずれも、色の異なる複数のLEDを同時に利用して白色光を生成するとき、そのいずれかが劣化すれば白色光が得られなくなるという欠点を有する。また、複数のLEDを同時に使用するのはコストが高く、制御回路が複雑であるのみならず、白色LED装置のサイズを有効に縮小できない。これは実際の応用にとって不利である。
【0004】
第三は単色LEDを利用して特定の蛍光材料を励起する技術である。例えば窒化インジウムガリウム(InGaN)青紫色LEDによる青色光を利用して、黄色光を発する蛍光粉を励起し、この青色光と黄色光を混色して白色光を生成する。これは、前記方法の欠点を解消するのみならず、駆動回路の設計と製品の生産を容易にし、電力消費とコストを削減できるので、現在の白色LEDの製作に多用される。しかし、蛍光粉の粒径は一般に数mm以上に達するので、蛍光粉により入射した可視光が遮蔽されたり散乱し、発光効率が低下せざるを得ない。この問題を改善するために、LEDとナノ級の蛍光粉を組み合わせた応用例が多数公開されている。例えばアメリカ特許US6,890,777では、ナノ級の量子ドットをコロイド溶液に混入してLEDに塗布し、量子ドットを含む蛍光層を製作してLEDに設ける方法を開示している。同特許によれば、蛍光層が発する蛍光の色は、量子ドットの大きさによって変わる。また、アメリカ特許US7,342,260 B2では、量子ドットの材料の改善に着目し、LEDの表面にZnX量子ドットを塗布する方法を開示している。なお、多層量子ドットと短波長チップを組み合わせて、蛍光層のスペクトルを制御する応用例も、2006年にアメリカ特許出願公開US2006/0113895 A1により公開されている。
【0005】
前掲技術に掲げられるナノ級の量子ドットとLEDを組み合わせた応用例は光の散乱問題を改善できるが、量子ドットがナノ粒子の特性により凝集しやすいという問題がある。特に現行の蛍光粉と量子ドットの塗布方法はいずれも、蛍光粉または量子ドットをコロイド溶液に混入してから注射や回転塗布などの方式でLEDに塗布するため、コロイド溶液の中の蛍光粉または量子ドットは大きさがまちまちな凝集物になり、均一に分散できない。したがって、前記方法で製作された蛍光層は、蛍光粉の均一性を容易に制御できず、LED装置が発する白色光は均一な分布が得られない。特に、実装技術の進歩に伴い、LEDアレイを回路基板に直接実装した大型LEDモジュールが増え、複数のLEDを一枚の基板に設けた応用例では、蛍光粉または量子ドットの塗布は均一性が得られにくいので、LEDの色分布の不均一問題は一層深刻になる。
【0006】
したがって、LEDの色均一性と発光効率の向上は、業界において開発の目標とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的のひとつは、ナノ結晶の均一性を有効に向上させ、LED装置の色均一性と発光効率を高め、光の散乱を減少させるためのLED装置及びその製作方法。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前掲目的を達成するために、本発明の実施例では発光ダイオード(LED)装置の製作方法を提供する。当該方法によれば、まず基板と、基板に設けられる少なくとも1つのLEDを設ける。次に当該LEDの表面に複数の孔を有する多孔質材料層を形成する。最後に当該各孔に複数のナノ結晶を埋め込み、LEDの表面に蛍光層を形成する。
【0009】
前掲目的を達成するために、本発明ではLED装置を提供する。当該LED装置は、少なくとも1つのLEDと、多孔質材料層と、複数のナノ結晶とを含む。当該多孔質材料層はLEDの表面に設けられ、複数の孔を有する。当該少なくとも1つのナノ結晶は当該各孔の中にそれぞれ設けられ、その粒径は当該各孔の孔径より小さい。
【0010】
本発明は多孔質材料層の孔配列構造を先に形成してから、各孔にナノ結晶を埋め込むことで、蛍光層におけるナノ結晶分布の均一性を制御する。したがって、本発明によるLEDから発せられた光とナノ結晶から発せられた蛍光を混合して得た白色光または他色の光は均一に分散し、多数のチップまたはチップアレイが回路基板に直接実装された構造に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1によるLED装置の製作方法のフローを表す説明図である。
【図2】本発明の実施例1によるLED装置の製作方法のフローを表す説明図である。
【図3】本発明の実施例1によるLED装置の製作方法のフローを表す説明図である。
【図4】本発明の実施例1によるLED装置の製作方法のフローを表す説明図である。
【図5】本発明による矩形配列を呈する第一孔を表す説明図である。
【図6】本発明による第一蛍光層の垂直断面を透過型電子顕微鏡(TEM)から観察した画像である。
【図7】本発明による第一蛍光層の第一ナノ結晶密度の、第一蛍光層の厚さに応じた分布を表す説明図である。
【図8】本発明の実施例2によるLED装置の断面図である。
【図9】本発明の実施例3によるLED装置の断面図である。
【図10】本発明の実施例4によるLED装置の断面図である。
【図11】本発明の実施例5によるLED装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
かかる装置及び方法の特徴を詳述するために、具体的な実施例を挙げ、図を参照にして以下に説明する。
【0013】
図1から図4を参照する。図1から図4は本発明の実施例1によるLED装置の製作方法のフローを表す説明図であり、そのうち図4は本発明の実施例1によるLED装置の断面図である。図1に示すように、本発明によるLED装置の製作方法ではまず、基板10と、基板10に設置する少なくとも1つのLED12を設ける。基板10は回路基板、リードフレーム、またはシリコン基板など用途の異なる基板であり、LED12を載せるために用いられる。もっとも、本発明による基板はLEDを載せるのに限らない。LED12はウェハーに作られた未分割のものでも可能なので、ウェハー上のLED12にかける後続の工程を容易にするために、基板10を台座または積載板として働かせることもできる。また、LED12は例えば各色の光を発するLEDであり、その発光の波長範囲は望ましくは380〜500nmである(例えば窒化インジウムガリウム青色LED)。もっとも本発明はこれに限らない。
【0014】
次に図2に示すように、LED12の表面にコロイド溶液14を塗布し、LED12の表面にコロイド薄膜16を形成する。コロイド溶液14は塗布される前に、以下の方法で製作される。まずゾルゲル法で複数の無機材料と複数の有機材料を混合して混合溶液を形成し、この混合溶液を約60〜90℃に加熱した後、更に60〜120分間加熱し、室温の中で2〜7時間放置すれば、所要のコロイド溶液が得られる。
【0015】
本実施例によれば、前記無機材料は水、塩酸(HCl)、エタノール、及びテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を含み、前記有機材料は臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ポリオキシエチレンセチルエーテルBrij−56、及びトリブロック共重合体プルロニックP−123、P123を含み、コロイド溶液14を形成する各成分のモル数比は略、TEOS:(P123、CTAB、Brij−56):水:塩酸:エタノール=1:0.008〜0.03:3.5〜5:0.003〜0.03:10〜34である。もっとも本発明は前記材料とモル数比に限らない。また、図2に示すように、本実施例によるコロイド溶液14を塗布する方法は回転塗布法(図2の矢印参照)であり、回転速度は約2200回転/分とされ塗布時間は30秒とされる。もっとも本発明はこれに限らず、回転速度と塗布時間によりコロイド薄膜16の均一性と厚さを制御することができる。また、本発明による塗布方法は回転塗布法に限らず、スプレー法、スクリーン印刷法、または金型固定法を利用し、液体または流体を均一に塗布することもできる。なお、本実施例によるLED12は、ダイボンディング法または共晶接合法など金属ワイヤを要しない方式で、LED12の導電パッド(図示せず)と基板10上の電極(図示せず)を接続する。もっとも本発明はこれに限らず、LED12の表面にコロイド溶液14を塗布する前に、ワイヤボンディング方式でLED12表面の導電パッドを金属導線を介して基板上の電極(図示せず)に接続することもできる。
【0016】
その後、図3に示すように乾燥プロセスを行い、例えばコロイド薄膜16の塗布されたLEDを25〜60℃の温度で2〜7時間放置する。その後、ベーキングプロセスを行う。ベーキングプロセスは約90〜150℃の温度で1〜5時間実行され、コロイド薄膜16のうちシンナーの部分を取り除き、複数の第一孔18を有する第一多孔質材料層20をLED12の表面に生成する。第一多孔質材料層20の材料は低透水性のシリコン酸化物、例えば二酸化珪素(SiO2)またはシリカなど安定性の高い材料である。波長400〜700nmの光について第一多孔質材料層20の光透過率は90%より大きい。注意すべきは、本実施例による各第一孔18の孔径は、乾燥プロセスとベーキングプロセスの時間と温度条件を制御して所要の値が得られ、その値はいずれも200nmより小さい。なお、図3に示すように、第一孔18の形状は望ましくは柱状であり、第一孔18はいずれもLED12の表面12と平行で、その垂直断面は三角形の配列を呈する。もっとも、本発明による第一孔はこのような配列形状に限らない。図5を参照する。図5は本発明による矩形配列を呈する第一孔を表す説明図である。図5に示すように、第一孔I8の垂直断面の配列形状は正方形などの矩形であってもよい。
【0017】
続いて図4に示すように、高密度プラズマ化学的気相成長(HDPCVD)工程を行い、成長工程用の成長チャンバー22にシラン(SiH4)と水素を通し、各第一孔18に気相成長法で複数の第一ナノ結晶24を埋め込み、第一多孔質材料層20と第一ナノ結晶24を第一蛍光層226として作成する。HDPCVD工程の温度条件は100〜500℃とされ、圧力は5〜50ミリトルとされ、プラズマ電力は100〜500Wとされる。また、水素が継続的に成長チャンバーに導入されるのに対して、シランは間歇的に成長チャンバーに導入される。シランの導入は、0.5〜3秒の導入と1〜5秒の中止が繰り返されるように行われる。そうすれば第一多孔質材料層20の各第一孔18の中に第一ナノ結晶24が形成される。また、本実施例において第一多孔質材料層20の厚さは約200nmとされる。このような厚さにより、導入気体は第一多孔質材料層20の構造間隙を通して第一多孔質材料層20の各第一孔18に進入し、各第一孔18に第一ナノ結晶24を生成することができる。もっとも本発明はこれに限らず、気体が第一孔18に進入できるような厚さであればよい。また、第一多孔質材料層20に埋め込む第一ナノ結晶24の数量は、第一多孔質材料層20の厚さを調整することで制御できる。
【0018】
なお、本実施例による第一蛍光層26は励起時に発する蛍光の波長範囲は400〜700nmであり、波長400〜700nmの光について第一蛍光層26の光透過率は80%より大きい。第一孔18の中にはCTAB、Brij−56、P123などの有機材料が残っているが、200〜500℃の環境で水素プラズマ(50〜300sccm)を0.5〜3時間導入して処理すれば除去できる。そうすれば、LED12の表面に均一に分散する第一ナノ結晶24を有する第一蛍光層26が得られ、本実施例によるLED装置28の製作が完成する。本発明による第一蛍光層において第一ナノ結晶が均一に分散しているのを詳述するために、図6と図7を参照する。図6は本発明による第一蛍光層の垂直断面を透過型電子顕微鏡(TEM)から観察した画像であり、図7は本発明による第一蛍光層の第一ナノ結晶密度の、第一蛍光層の厚さに応じた分布を表す説明図である。図6に示すように、第一ナノ結晶24は格子配列を有するナノ結晶であり、第一蛍光層26の第一多孔質材料層20は均一に分散する第一ナノ結晶24を含み、これらの第一ナノ結晶は三角形の配列を呈する。また、図7に示すように、二次イオン質量分析計(SIMS)を利用すれば、第一蛍光層26の表面から表面下80nmの箇所まで、第一ナノ結晶24の数量が一定値であると測定される。言い換えれば、表面からその下80nmまでの第一蛍光層26は、均一した第一ナノ結晶24の分布密度を有する。
【0019】
続いて図4を参照する。本発明による第一ナノ結晶24を第一孔18に埋め込む方法はHDPCVD法に限らず、常圧化学的気相成長(APCVD)法、低圧化学的気相成長(LPCVD)法、またはプラズマ化学的気相成長(PECVD)法を利用してもよく、成長温度は100〜500℃とされる。本実施例において導入気体がシランと水素であるため、第一孔18に埋め込まれる第一ナノ結晶24はシリコンナノ結晶となる。もっとも本発明はシリコンに限らず、他種の気体を導入して所要のナノ結晶を形成することができる。また、第一ナノ結晶24はIII−V族半導体材料、II−VI族半導体材料、官能基または非金属元素である。そのうち半導体材料にはマグネシウム、マンガン、鉄、クロム、セシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、スズ、アルミニウムなど他の元素が混入しており、官能基は酢酸基またはベンゼン環などであり、非金属元素はハロゲン、イオウ、リン、またはゲルマニウムなどの元素である。
【0020】
注意すべきは、本発明で放射される蛍光の波長は第一多孔質材料層20の材料と第一孔18の孔径、及び第一ナノ結晶24の材料と第一ナノ結晶の大きさによって決められる。第一ナノ結晶24の大きさは第一孔18の孔径によって決められるので、所要の蛍光波長に基づき、コロイド薄膜16にかける乾燥プロセスとベーキングプロセスの時間と温度条件を調整し、所要の孔径を有する第一孔18を形成してから、その孔径により気相成長工程で所要の大きさを有する第一ナノ結晶24を定めれば、所要の蛍光波長を有する第一蛍光層26が製作できる。また、気相成長工程において、第一孔18に形成予定の第一ナノ結晶24は第一多孔質材料層20と結合し、第一孔18の中で徐々に形成される。第一ナノ結晶24の材料と第一多孔質材料層20により異なる分子間結合が形成され、異なる相互作用力が生成される。また、要求に応じて第一多孔質材料層20に第一ナノ結晶24を埋め込めば、所要の第一蛍光層26が得られる。したがって、第一多孔質材料層20の材料と第一孔18の孔径、及び第一ナノ結晶24の大きさまたは材料を変えれば、波長は調整される。
【0021】
前述のように、本発明では規則的に配列した孔を有する多孔質材料層をLEDに形成し、この多孔質材料層の孔にナノ結晶材料を埋め込むことで、ナノ結晶を蛍光層に均一に配列させ、LED装置の色均一性を向上させる。また、本発明による多孔質材料層は90%以上の光透過率を有しながらも、LEDから発せられた光が従来の蛍光層を透過してコロイドに吸収され、発光効率が低下するという影響を受けないので、LED装置の発光効率を向上させることができる。なお、本発明によるナノ結晶はいずれも粒径が100nm以下なので、従来の技術のように、LEDから発せられた光が蛍光層により散乱する問題は解消される。
【0022】
まとめて言えば、本発明によるLED装置の製作方法は、基板10と、LED12と、基板10とLED12を覆う第一蛍光層26とを含むLED装置28を製作する。もっとも、本発明によるLED装置は単層の蛍光層に限らない。各実施例の異同を比較するために、以下に述べる各実施例において同一の素子には前掲実施例1と同じ番号がつけられ、同様の構造については説明が省略される。
【0023】
図8を参照する。図8は本発明の実施例2によるLED装置の断面図である。図8に示すように、前掲実施例1によるLED装置に比べて、本実施例によるLED装置50は更に、少なくとも1枚の第二蛍光層52を含む。第二蛍光層52は前掲第一蛍光層を形成する工程の条件を調整して、第一蛍光層26の上に形成されたものである。第二蛍光層52は複数の第二孔54を有する第二多孔質材料層56と、第二孔54の中にそれぞれ設けられる複数の第二ナノ結晶58とを含む。注意すべきは、第一孔18の孔径と異なる第二孔54の孔径にしたり、または第一多孔質材料層20の材料と異なる第二多孔質材料層56の材料を利用すれば、第二蛍光層52を励起して得た蛍光の波長を第一蛍光層26を励起して得た蛍光の波長と異ならせ、本実施例によるLED装置50に種々の色温度、色飽和度、及び演色性を有する光を発せしめられる(すなわちLED装置50から発せられた光が種々の波長を有する)。また、第一蛍光層26の特性を有する蛍光層を厚くするために、本発明では第一蛍光層26の上に当該第一蛍光層26と同じ蛍光特性を有する第二蛍光層52を形成し、所要の蛍光層厚さを調整して蛍光層励起時の蛍光強度を向上させることができる。
【0024】
なお、本発明は基板に単一のLED装置を設けるのに限らず、複数のLED装置を基板に設けるのも可能である。図9を参照する。図9は本発明の実施例3によるLED装置の断面図である。図9に示すように、前掲実施例2によるLED装置に比べて、本実施例によるLED装置60は基板10に設けられる複数のLED12を含む。
【0025】
また、本発明による蛍光層はLED装置の表面に設けるのに限らない。図10を参照する。図10は本発明の実施例4によるLED装置の断面図である。図10に示すように、本実施例によるLED装置70は、複数の溝72を備える基板74と、各溝72にそれぞれ設けられる複数のLED12と、溝72内に設けられ各LED12を覆う第一透光材料層78と、第一透光材料層78の上に設けられ各溝72を埋め込む第二透光材料層80と、基板74と第二透光材料層80を覆う蛍光層82とを含む。前掲実施例によるLED装置との相違点は、LED12と蛍光層82の間に第一透光材料層78と第二透光材料層80が設けられているところにある。第一透光材料層78と第二透光材料層80は蛍光粉が入った蛍光コロイドまたは透明コロイドである。注意すべきは、蛍光層82の屈折率が約1.2であるため、第一透光材料層78の屈折率は1.2〜1.7にしなければならず、そしてLED12から発せられた光が第一透光材料層78と蛍光層82の間を通過するときに生じる全反射の光線量を低くするためには、第二透光材料層80の屈折率は第一透光材料層78の屈折率より小さくしなければならない。もっとも、本発明による第二透光材料80は蛍光粉の入った蛍光コロイドに限らず、多孔質材料層とナノ結晶を含む蛍光層を利用しても可能である。
【0026】
本発明による蛍光層は基板を覆うのに限らず、溝を埋め込むことも可能である。図11を参照する。図11は本発明の実施例5によるLED装置の断面図である。図11に示すように、前掲実施例4によるLED装置に比べて、本実施例によるLED装置100の蛍光層82は、各溝72を埋め込むように第二透光材料層80の上に設けられている。もっとも、本実施例はこれに限らず、蛍光層82と第二透光材料層80の成長位置を変えたり、または蛍光層82と第二透光材料層80として多孔質材料層とナノ結晶を含む蛍光層を使用することも可能である。
【0027】
まとめて言えば、本発明によるLED装置及びその製作方法には以下の特長がある。
1.本発明は多孔質材料層の中の孔配列結構を先に形成してから、均一に分散している各孔の中にナノ結晶を埋め込み、それにより蛍光層におけるナノ結晶分布の均一性を制御する。したがって、LEDから発せられた光とナノ結晶から発せられた蛍光を混合して得た白色光または他色の光は均一に分散でき、多数のチップまたはチップアレイが回路基板に直接実装された構造でも均一な色の光を発せられる。
2.本発明は乾燥プロセスとベーキングプロセスの時間と温度条件を制御して孔の孔径を制御し、更にこの孔径によりナノ結晶の大きさを制御することで、ナノ結晶が光を吸収した後に放射する蛍光の波長を定める。或いは、多孔質材料層の材料と、ナノ結晶の材料を制御してナノ結晶と多孔質材料層との間の分子間結合を変え、蛍光層に種々の蛍光波長を放射させる。したがって、単層または多層の蛍光層を利用すれば、種々の色温度、色飽和度、及び演色性を有する光を混合することができる。
3.前記多孔質材料層と蛍光層はいずれも高い光透過率を有するので、光が散乱する確率を低くし、光が再び吸収されるのを避けるとともに、発光効率を向上させる効果がある。
【0028】
以上は本発明に好ましい実施例であって、本発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなし得る修正、もしくは変更であって、本発明の精神の下においてなされ、本発明に対して均等の効果を有するものは、いずれも本発明の特許請求の範囲に属するものとする。
【符号の説明】
【0029】
10、74 基板
12 LED
14 コロイド溶液
16 コロイド薄膜
18 第一孔
20 第一多孔質材料層
22 成長チャンバー
24 第一ナノ結晶
26 第一蛍光層
28、50、60、70、100 LED装置
52 第二蛍光層
54 第二孔
56 第二多孔質材料層
58 第二ナノ結晶
72 溝
78 第一透光材料層
80 第二透光材料層
82 蛍光層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード(LED)装置の製作方法であって、
基板と、基板に設けられる少なくとも1つのLEDを設ける段階と、
前記LEDの表面に複数の孔を有する多孔質材料層を形成する段階と、
前記各孔に複数のナノ結晶を埋め込み、前記LEDの表面に蛍光層を形成する段階とを含む、LED装置の製作方法。
【請求項2】
前記多孔質材料層を形成する段階は、
コロイド溶液を提供する段階と、
前記LEDの表面に前記コロイド溶液を塗布する段階と、
乾燥プロセスを実行して前記コロイド溶液を前記多孔質材料層にする段階とを含む、請求項1に記載のLED装置の製作方法。
【請求項3】
前記コロイド溶液を形成する段階は、
複数種の有機材料と複数種の無機材料を混合して混合溶液を形成する段階と、
前記混合溶液を加熱して前記コロイド溶液にする段階とを含む、請求項2に記載のLED装置の製作方法。
【請求項4】
前記多孔質材料層の材料はシリコン酸化物を含む、請求項1に記載のLED装置の製作方法。
【請求項5】
前記各孔にナノ結晶を埋め込む段階は化学的気相成長(CVD)工程を利用する、請求項1に記載のLED装置の製作方法。
【請求項6】
前記各孔にナノ結晶を埋め込む段階の温度条件は100〜500℃である、請求項1に記載のLED装置の製作方法。
【請求項7】
前記ナノ結晶はシリコン、III−V族半導体材料、II−VI族半導体材料から選ばれる、請求項1に記載のLED装置の製作方法。
【請求項8】
LED装置であって、
少なくとも1つのLEDと、
前記LEDに設けられ、複数の第一孔を有する第一多孔質材料層と、
前記各第一孔の中に設けられ、前記各第一孔の孔径より小さい粒径を有する複数の第一ナノ結晶とを含む、LED装置。
【請求項9】
前記各第一孔は柱状である、請求項8に記載のLED装置。
【請求項10】
前記各第一孔は前記LEDの表面と平行である、請求項9に記載のLED装置。
【請求項11】
前記各第一孔の垂直断面は三角形配列を呈する、請求項10に記載のLED装置。
【請求項12】
前記各第一孔の垂直断面は矩形配列を呈する、請求項10に記載のLED装置。
【請求項13】
前記各第一孔の孔径は200nmより小さい、請求項8に記載のLED装置。
【請求項14】
前記LED装置から発せられた光の波長範囲は380〜500nmである、請求項8に記載のLED装置。
【請求項15】
前記第一多孔質材料層と前記第一ナノ結晶は第一蛍光層を構成し、当該第一蛍光層の励起時に発する蛍光の波長範囲は400〜700nmである、請求項8に記載のLED装置。
【請求項16】
前記LED装置はさらに少なくとも1枚の第二蛍光層を含み、当該第二蛍光層は複数の第二孔を有する第二多孔質材料層と、当該各第二孔の中に設けられる複数の第二ナノ結晶とを含む、請求項15に記載のLED装置。
【請求項17】
前記各第二孔は前記各第一孔と異なる、請求項16に記載のLED装置。
【請求項18】
前記各第一ナノ結晶は前記各第二ナノ結晶と異なる、請求項16に記載のLED装置。
【請求項19】
前記LED装置は更に、前記LEDと前記第一多孔質材料層の間に設けられ、1.2〜1.7の屈折率を有する第一透光材料層を含む、請求項8に記載のLED装置。
【請求項20】
前記LED装置は更に、前記第一透光材料層と前記第一多孔質材料層の間に設けられ、前記第一透光材料層より小さい屈折率を有する少なくとも1枚の第二透光材料層を含む、請求項19に記載のLED装置。
【請求項1】
発光ダイオード(LED)装置の製作方法であって、
基板と、基板に設けられる少なくとも1つのLEDを設ける段階と、
前記LEDの表面に複数の孔を有する多孔質材料層を形成する段階と、
前記各孔に複数のナノ結晶を埋め込み、前記LEDの表面に蛍光層を形成する段階とを含む、LED装置の製作方法。
【請求項2】
前記多孔質材料層を形成する段階は、
コロイド溶液を提供する段階と、
前記LEDの表面に前記コロイド溶液を塗布する段階と、
乾燥プロセスを実行して前記コロイド溶液を前記多孔質材料層にする段階とを含む、請求項1に記載のLED装置の製作方法。
【請求項3】
前記コロイド溶液を形成する段階は、
複数種の有機材料と複数種の無機材料を混合して混合溶液を形成する段階と、
前記混合溶液を加熱して前記コロイド溶液にする段階とを含む、請求項2に記載のLED装置の製作方法。
【請求項4】
前記多孔質材料層の材料はシリコン酸化物を含む、請求項1に記載のLED装置の製作方法。
【請求項5】
前記各孔にナノ結晶を埋め込む段階は化学的気相成長(CVD)工程を利用する、請求項1に記載のLED装置の製作方法。
【請求項6】
前記各孔にナノ結晶を埋め込む段階の温度条件は100〜500℃である、請求項1に記載のLED装置の製作方法。
【請求項7】
前記ナノ結晶はシリコン、III−V族半導体材料、II−VI族半導体材料から選ばれる、請求項1に記載のLED装置の製作方法。
【請求項8】
LED装置であって、
少なくとも1つのLEDと、
前記LEDに設けられ、複数の第一孔を有する第一多孔質材料層と、
前記各第一孔の中に設けられ、前記各第一孔の孔径より小さい粒径を有する複数の第一ナノ結晶とを含む、LED装置。
【請求項9】
前記各第一孔は柱状である、請求項8に記載のLED装置。
【請求項10】
前記各第一孔は前記LEDの表面と平行である、請求項9に記載のLED装置。
【請求項11】
前記各第一孔の垂直断面は三角形配列を呈する、請求項10に記載のLED装置。
【請求項12】
前記各第一孔の垂直断面は矩形配列を呈する、請求項10に記載のLED装置。
【請求項13】
前記各第一孔の孔径は200nmより小さい、請求項8に記載のLED装置。
【請求項14】
前記LED装置から発せられた光の波長範囲は380〜500nmである、請求項8に記載のLED装置。
【請求項15】
前記第一多孔質材料層と前記第一ナノ結晶は第一蛍光層を構成し、当該第一蛍光層の励起時に発する蛍光の波長範囲は400〜700nmである、請求項8に記載のLED装置。
【請求項16】
前記LED装置はさらに少なくとも1枚の第二蛍光層を含み、当該第二蛍光層は複数の第二孔を有する第二多孔質材料層と、当該各第二孔の中に設けられる複数の第二ナノ結晶とを含む、請求項15に記載のLED装置。
【請求項17】
前記各第二孔は前記各第一孔と異なる、請求項16に記載のLED装置。
【請求項18】
前記各第一ナノ結晶は前記各第二ナノ結晶と異なる、請求項16に記載のLED装置。
【請求項19】
前記LED装置は更に、前記LEDと前記第一多孔質材料層の間に設けられ、1.2〜1.7の屈折率を有する第一透光材料層を含む、請求項8に記載のLED装置。
【請求項20】
前記LED装置は更に、前記第一透光材料層と前記第一多孔質材料層の間に設けられ、前記第一透光材料層より小さい屈折率を有する少なくとも1枚の第二透光材料層を含む、請求項19に記載のLED装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−87465(P2010−87465A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103833(P2009−103833)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(508107788)旭麗電子(廣州)有限公司 (21)
【出願人】(503419697)光寶科技股▲分▼有限公司 (42)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(508107788)旭麗電子(廣州)有限公司 (21)
【出願人】(503419697)光寶科技股▲分▼有限公司 (42)
【Fターム(参考)】
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