説明

発光ダイオード

【課題】蛍光体の量及び表面積を増大させることのできる高輝度な発光ダイオードを実現する。
【解決手段】絶縁材料より成る基板12上にLEDチップ14を接続・固定し、該LEDチップ14の一方の電極と一方の外部電極16aとを接続すると共に、LEDチップ14の他方の電極と他方の外部電極16aとを接続し、また、上記LEDチップ14を、円筒状の不織布22で囲繞すると共に、該不織布22を構成する繊維24の表面に蛍光体20を担持せしめ、さらに、蛍光体20が混入された透光性のコーティング材27を、上記円筒状の不織布22内に充填してLEDチップ14を封止し、さらにまた、LEDチップ14及び不織布22を枠部材28で囲繞すると共に、該枠部材28内に透光性材料を充填して形成した蓋部材30によってLEDチップ14を封止した発光ダイオード10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LEDチップから発光される紫外線等の光を、所定波長の可視光等の光に波長変換して放射する蛍光体を有する発光ダイオード(LED)に係り、特に、蛍光体の量及び表面積を増大させることのできる高輝度な発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、蛍光体を有する従来のLEDの一例を示すものであり、該発光ダイオード60は、発光ダイオードチップ搭載用の第1のリードフレーム62の先端部62aに、その底面から上方に向かって孔径が徐々に拡大する略漏斗形状の凹部を設けると共に該凹部内面を反射面と成してリフレクタ64を形成し、該リフレクタ64の底面に発光ダイオードチップ(以下、LEDチップと称する)66をAgペースト等を介してダイボンドすることにより、上記第1のリードフレーム62と、LEDチップ66底面の一方の電極(図示せず)とを電気的に接続している。また、第2のリードフレーム68の先端部68aと、上記LEDチップ66上面の他方の電極(図示せず)とをボンディングワイヤ70を介して電気的に接続して成る。
【0003】
上記LEDチップ66の上面及び側面は、リフレクタ64内に充填された透光性エポキシ樹脂等のコーティング材72によって被覆・封止されており、また、上記コーティング材72中には、LEDチップ66から発光された紫外線等の光を所定波長の可視光等の光に変換する波長変換用の蛍光体74が分散状態で多数混入されている。
さらに、コーティング材72で被覆された上記LEDチップ66、第1のリードフレーム62の先端部62a及び端子部62bの上端、第2のリードフレーム68の先端部68a及び端子部68bの上端は、エポキシ樹脂等より成り、先端に凸レンズ部76を有する透光性の外囲器78によって被覆・封止されている。
【0004】
而して、上記第1のリードフレーム62及び第2のリードフレーム68を介してLEDチップ66に電圧が印加されると、LEDチップ66が発光して紫外線等の光が放射され、この光が上記コーティング材72中の蛍光体74に照射されることにより、所定波長の可視光等の光に波長変換され、波長変換された光が外囲器78の凸レンズ部76で集光されて外部へ放射されるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記蛍光体74から放射される光の輝度は、一般に蛍光体74の量及び表面積に略比例するものであるが、上記従来のLED60にあっては、リフレクタ64内に充填したコーティング材72中に蛍光体74を混入していたことから、混入できる蛍光体74の量には限界があった。
【0006】
この発明は、従来の上記問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、蛍光体の量及び表面積を増大させることのできる高輝度な発光ダイオードを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る発光ダイオードは、蛍光体を励起させる波長の光を放射するLEDチップを、繊維の集合体で囲繞すると共に、該繊維の集合体に蛍光体を担持させ、さらに、上記LEDチップを蛍光体が混入されたコーティング材で封止したことを特徴とする。
上記繊維の集合体としては、筒状の不織布が好ましく、この場合、不織布を構成する繊維に蛍光体を担持させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発光ダイオードにあっては、LEDチップを封止するコーティング材中に蛍光体を混入すると共に、LEDチップを囲繞し、単位体積当たりの繊維の表面積が大きい繊維の集合体にも蛍光体を担持させたことから、従来の発光ダイオード60の如く、リフレクタ64内に充填したコーティング材72中に蛍光体74を混入するだけの場合に比べ、蛍光体の量及び表面積を増大させることができる。
【0009】
多数の繊維が立体的に絡み合って形成された不織布を、上記繊維の集合体として用い、
該不織布を構成する繊維に蛍光体を担持させた場合には、単位体積当たりの繊維の表面積が極めて大きいことから、従来の発光ダイオード60の如く、リフレクタ64内に充填したコーティング材72中に蛍光体74を混入した場合に比べ、蛍光体の量及び表面積を飛躍的に増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき、本発明に係る発光ダイオードの実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る発光ダイオード10を示すものであり、該発光ダイオード10は、樹脂やセラミック等の絶縁材料より成る基板12上に、LEDチップ14を接続・固定して成る。該LEDチップ14は、窒化ガリウム系半導体結晶等で構成されており、後述する蛍光体を励起させる波長の紫外線や青色可視光等の光を発光するものである。
また、上記基板12の表面から側面を経て裏面にまで延設された一対の外部電極16a,16bが相互に絶縁された状態で形成されている。
【0011】
上記LEDチップ14上面の一方の電極(図示せず)は、ボンディングワイヤ18を介して、一方の外部電極16aに接続されると共に、LEDチップ14上面の他方の電極(図示せず)は、ボンディングワイヤ18を介して、他方の外部電極16bに接続されている。
【0012】
上記LEDチップ14及びボンディングワイヤ18は、蛍光体20を担持して成る繊維の集合体としての円筒状の不織布22(図2参照)で囲繞されている。
不織布22は、図3及び図4に示すように、多数の繊維24が立体的に絡み合って形成されるものであり、繊維24間には多数の空隙26(図4参照)が形成されており、また、多数の繊維24が立体的に絡み合っているため、単位体積当たりの繊維24の表面積が極めて大きいものである。蛍光体20は、不織布22を構成する繊維24の表面に被着・担持されているものであり、図5に示すように、繊維24の表面に緻密な層状態で被着・担持される場合の他、繊維24表面の蛍光体20の粒子間に微小な隙間が存在する状態で粗く被着・担持される場合もある(図6参照)。
尚、不織布22を構成する繊維24の繊維密度や、不織布22の厚さ、目付等を適宜調整することにより、不織布22を構成する繊維24の総表面積を任意に増減可能である。
【0013】
上記繊維24は、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂繊維、レーヨン等のセルロース系の化学繊維、ガラス繊維、金属繊維等の短繊維から成り、その直径は5〜20μm、長さは0.5〜20mm程度である。
尚、長さが50〜100mm程度の長繊維から成る繊維24を用いることも勿論可能である。
【0014】
上記蛍光体20は、紫外線等の光の照射を受けると、この光を所定波長の可視光等の光に波長変換するものであり、例えば以下の組成のものを用いることができる。
紫外線等の光を赤色可視光に変換する赤色発光用の蛍光体20として、MS:Eu(Mは、La、Gd、Yの何れか1種)、0.5MgF・3.5MgO・GeO:Mn、2MgO・2LiO・Sb:Mn、Y(P,V)O4:Eu、YVO4:Eu、(SrMg)3(PO4):Sn、Y:Eu、CaSiO:Pb,Mn等がある。
また、紫外線等の光を緑色可視光に変換する緑色発光用の蛍光体20として、BaMgAl1627:Eu,Mn、ZnSiO4:Mn、(Ce,Tb,Mn)MgAl1119、LaPO4:Ce,Tb、(Ce,Tb)MgAl1119、YSiO:Ce,Tb、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、(Zn,Cd)S:Cu,Al、SrAl:Eu、SrAl:Eu,Dy、SrAl1425:Eu,Dy、YAl12:Tb、Y(Al,Ga)12:Tb、YAl12:Ce、Y(Al,Ga)12:Ce等がある。
更に、紫外線等の光を青色可視光に変換する青色発光用の蛍光体20として、(SrCaBa)(PO)Cl:Eu、BaMgAl1627:Eu、(SrMg)7:Eu、Sr7:Eu、Sr:Sn、Sr(PO4Cl:Eu、BaMgAl1627:Eu、CaWO4、CaWO4:Pb青色蛍光体、ZnS:Ag,Cl、ZnS:Ag,Al、(Sr,Ca,Mg)10(PO)Cl:Eu等がある。
上記赤色発光用の蛍光体20、緑色発光用の蛍光体20、青色発光用の蛍光体20を適宜選択・混合して用いることで、種々の色の発色が可能である。
また、青色の可視光を放射するLEDチップ16を用いて白色光を得る場合には、LEDチップ16から放射される光を補色としての黄色可視光に変換する黄色発光用の蛍光体24として、YAl12:Ce、YBO:Ce、BaMgAl1017:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga):Eu、BaSiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、SiAlON:Eu等がある。
尚、蛍光体20は、有機、無機の蛍光染料や、有機、無機の蛍光顔料を含むものである。
【0015】
上記LEDチップ14は、円筒状の不織布22内に充填したエポキシ樹脂等より成る透光性のコーティング材27で被覆・封止されており、該コーティング材27中には、蛍光体20が分散状態で多数混入されている。
さらに、LEDチップ16及び不織布22は、基板12上に配置された所定高さを備えた枠部材28で囲繞されていると共に、該枠部材28内にエポキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂等の透光性材料を充填して形成された透光性の蓋部材30によって封止されている。
【0016】
本発明の発光ダイオード10にあっては、一対の外部電極16a,16bを介してLEDチップ14に電圧が印加されると、LEDチップ14が発光して、上記蛍光体20を励起させる紫外線や可視光等の光が放射される。
この光が、コーティング材27中に混入された蛍光体20に照射されると共に、光の一部はコーティング材27を透過して不織布22に担持された蛍光体20に照射され、所定波長の可視光等の光に波長変換された後、透光性の蓋部材30を透過して外部へ放射されるのである。
【0017】
而して、本発明の発光ダイオード10にあっては、LEDチップ14を封止するコーティング材27中に蛍光体20を混入すると共に、LEDチップ14を囲繞し、単位体積当たりの繊維24の表面積が極めて大きい円筒状の不織布22を構成する繊維24の表面にも蛍光体20を担持せしめたことから、従来の発光ダイオード60の如く、リフレクタ64内に充填したコーティング材72中に蛍光体74を混入するだけの場合に比べ、蛍光体20の量及び表面積を飛躍的に増大させることができる。
【0018】
尚、上記不織布22は、円筒状に限定されるものではなく、角筒状であっても良く、
或いは、図7に示すように、その下端から上端に向かって孔径が徐々に拡大する略漏斗形状の筒状体であっても良い。要するに、LEDチップ14が筒状の不織布22で囲繞されていれば足りる。
【0019】
以下、本発明の発光ダイオード10において、不織布22に蛍光体20を担持させると共に、LEDチップ14を蛍光体20が混入されたコーティング材27で被覆・封止する方法について説明する。
先ず、LEDチップ14及びボンディングワイヤ18を囲繞するように、蛍光体20が担持されていない円筒状の不織布22を基板12上に載置する。
次に、蛍光体20が混入された未硬化状態のコーティング材27を、円筒状の不織布22内に所定量充填する。この結果、蛍光体20の混入された未硬化状態のコーティング材27によってLEDチップ14が被覆されると共に、蛍光体20の混入された未硬化状態のコーティング材27が、不織布22に含浸される。
その後、コーティング材27を硬化させれば、LEDチップ14が蛍光体20の混入されたコーティング材27で封止されると共に、不織布22を構成する繊維24の表面に蛍光体20が担持される。
上記方法にあっては、LEDチップ14を囲繞する円筒状の不織布22内に、蛍光体20が混入された未硬化状態のコーティング材27を充填することにより、蛍光体20の混入されたコーティング材27によるLEDチップ16の封止と、不織布22を構成する繊維24の表面への蛍光体20の担持とを略同時に行うことができるので、極めて製造容易である。
【0020】
上記においては、繊維の集合体として、不織布22を用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、多数の繊維を織り込んで形成した織布を用い、該織布を構成する繊維に蛍光体を担持させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る発光ダイオードを模式的に示す概略断面図である。
【図2】蛍光体を担持した不織布を模式的に示すに斜視図である。
【図3】蛍光体を担持した不織布を模式的に示す部分拡大図である。
【図4】不織布を構成する繊維を模式的に示す拡大図である。
【図5】不織布を構成する繊維を模式的に示す断面図である。
【図6】不織布を構成する繊維を模式的に示す断面図である。
【図7】蛍光体を担持した不織布を模式的に示すに斜視図である。
【図8】従来の発光ダイオードを模式的に示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 発光ダイオード
12 基板
14 LEDチップ
16a外部電極
16b外部電極
18 ボンディングワイヤ
20 蛍光体
22 不織布
24 繊維
27 コーティング材
28 枠部材
30 蓋部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体を励起させる波長の光を放射するLEDチップを、繊維の集合体で囲繞すると共に、該繊維の集合体に蛍光体を担持させ、さらに、上記LEDチップを蛍光体が混入されたコーティング材で封止したことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
上記繊維の集合体が筒状の不織布であり、該不織布を構成する繊維に蛍光体を担持させたことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−263232(P2010−263232A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150818(P2010−150818)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【分割の表示】特願2004−295251(P2004−295251)の分割
【原出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)
【Fターム(参考)】