説明

発光ナノ複合粒子

無機発光層を形成する方法は、半導体ナノ粒子を成長させるための溶媒、コア/シェル量子ドットの溶液及び半導体ナノ粒子前駆体を組み合わせること、半導体ナノ粒子を成長させ、コア/シェル量子ドット、半導体ナノ粒子及びコア/シェル量子ドットに接続された半導体ナノ粒子の未精製溶液を形成すること、コア/シェル量子ドット、半導体ナノ粒子及びコア/シェル量子ドットに接続された半導体ナノ粒子の単一のコロイド分散液を形成すること、前記コロイド分散液を堆積させて膜を形成すること、及び、前記膜をアニーリングして無機発光層を形成することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、エネルギー省によって認められた協力協定DE-FC26-06NT42864号に基づき政府の援助で行われた。政府は本発明における特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1960年代初頭から半導体発光ダイオード(LED)デバイスが製造されてきており、現在は消費者向けと商業向けの広い用途に製造されている。LEDを含む層は結晶性半導体材料をベースとしており、その材料を成長させるのに超高真空技術(例えば有機金属化学蒸着(MOCVD)を必要とする。さらに、欠陥のない層を形成するには、この層を一般に格子がほぼ一致する基板上に成長させる必要がある。結晶をベースとしたこのような無機LEDは、(導電率の大きな層のために)輝度が高く、寿命が長く、環境安定性が優れていて、外部量子効率が大きいという利点を有する。このような利点をすべて備える結晶性半導体層を利用すると、多数の欠点も生じる。その中でも大きな欠点は、製造コストが高いこと、同一チップから多くの色を発光させることが難しいこと、高価で堅固な基板が要求されることである。
【0003】
1980年代半ば、分子量の小さな分子を用いた有機発光ダイオード(OLED)が発明された(Tang他、Appl. Phys. Lett.、第51巻、913ページ、1987年)。1990年代初頭、ポリマーLEDが発明された(Burroughes他、Nature、第347巻、539ページ、1990年)。それに続く15年の間に有機材料をベースとしたLEDディスプレイが市場に導入され、デバイスの寿命、効率、輝度に関して大きな改善が見られた。例えばリン光発光体を含むデバイスは外部量子効率が19%と高く、一方、デバイスの寿命は何万時間にもなることが当然のように報告されている。OLEDは、結晶をベースとした無機LEDと比較し、(主にキャリアの易動度が小さいために)輝度がはるかに劣り、寿命が短く、デバイスを動作させるのに高価な封止が必要とされる。その一方でOLEDは、製造コストが低下する可能性があること、同じデバイスから多くの色を発生させうること、封止の問題を解決できるならばフレキシブルディスプレイの見込みがあることといった利点を有する。
【0004】
OLEDの性能を向上させるため、1990年代の後半、有機材料と量子ドットとの混合発光体を含むOLEDデバイスが導入された(Matoussi他、J. Appl. Phys.、第83巻、7965ページ、1998年)。量子ドットを発光層に添加することの利点は、デバイスの色域を大きくできる可能性があること、量子ドットの粒子サイズを変えるだけで赤色、緑色、青色の発光が得られる可能性があること、製造コストを下げられる可能性があることである。発光層内で量子ドットが凝集するなどの問題があるため、こうしたデバイスの効率は、典型的なOLEDデバイスと比べてどちらかと言えば低かった。効率は、量子ドットだけからなる膜を発光層として用いる場合に一層低かった(Hikmet他、J. Appl. Phys.、第93巻、3509ページ、2003年)。効率が低いのは、量子ドット層の絶縁性が原因であるとされた。その後、有機正孔輸送層と有機電子輸送層の間に量子ドットからなるモノレイヤー膜を堆積させることによって効率が増大した(約1.5cd/Aまで)(Coe他、Nature、第420巻、800ページ、2002年)。量子ドットからのルミネッセンスは主に、有機分子上のエキシトンからのフォルスターエネルギー移動の結果として起こると言われていた(電子-正孔再結合は有機分子上で起こる)。効率が将来いかに向上しようとも、このようなハイブリッドデバイスは、純粋なOLEDデバイスに付随するあらゆる欠点を相変わらず有する。
【0005】
最近、真空蒸着(MOCVD)したn-GaN層とp-GaN層の間にモノレイヤーの厚さのコア/シェルCdSe/ZnS量子ドット層を挟むことによってほぼ全体が無機のLEDが構成された(Mueller他、Nano Letters、第5巻、1039ページ、2005年)。得られたデバイスは外部量子効率が0.001〜0.01%と小さかった。その問題の一部は、成長後に存在していたと報告されているトリオクチルホスフィン酸化物(TOPO)及びトリオクチルホスフィン(TOP)という有機リガンドに関係している可能性がある。これらの有機リガンドは絶縁体であり、量子ドットへの電子と正孔の注入が少くなるであろう。さらに、高真空技術によって成長させる電子半導体層と正孔半導体層が使用されかつサファイア基板が使用されるため、この構造の残部の製造にはコストがかかる。
【0006】
Alivisatosらによる米国特許第5,537,000号(その全ての開示を参照によって本明細書中に取り込む)には、一以上の複数のモノレイヤーに形成される半導体ナノ結晶(量子ドット)を発光層が含むエレクトロルミネセンスデバイスが記載されている。モノレイヤーは多官能性連結剤を使用するなどして形成されるが、多官能性連結剤はナノ結晶を連結剤に結合させ、次に基板又は支持体に結合させ、最初のモノレイヤーを形成する。さらに、最初のナノ結晶のモノレイヤーを次のナノ結晶のモノレイヤーに結合させるために連結剤を使用することができる。有用な連結剤には、二官能性チオール、及び、チオール基とカルボキシル基とを含む連結剤が含まれる。有機連結剤は電子と正孔の不良導体である。したがって、Alivisatosらは効率的な発光を実現するために発光層そしてさらには量子ドットに十分な導電性キャリアの手段を提供していない。
【0007】
Suらによる米国特許第6,838,816号(全ての開示を参照によって本明細書に取り込む)には、発光性コロイドナノ粒子(量子ドット)を使用した発光源の製造方法が記載されている。コロイドナノ粒子は発光層を形成するために基板上をコーティングする液体中で均一に分散されうる。場合によっては、SiO2 粒子がコロイドナノ粒子の層に添加され、層がアニールされる。これらの粒子を添加することにより、層を密封し、量子ドットを環境酸素との相互作用から保護するのに役立つ。発光層はLEDに組み込まれているが、Suらの方法も発光層及び量子ドット発光体内で電子と正孔の導体として十分な手段を提供しないため、得られる発光は十分ではない。
【0008】
Kahenによる米国特許出願公開第2007/0057263号(全ての開示を参照によって本明細書に取り込む)には、コア/シェル量子ドット発光体及び半導体ナノ粒子のコロイド分散液から形成される無機発光層が記載されている。コア/シェル量子ドットは合成で使用する温度に耐えることができる非揮発性リガンドを用いて調製された。量子ドットを合成で使用された溶媒から分離し、該非揮発性リガンドを揮発性リガンドと交換させた。揮発性リガンドを有するコア/シェル量子ドットの分散液と半導体ナノ粒子の分散液とを混合して新しいコロイド分散液を調製した。この新しい分散液を基板に塗布し、アニールした。アニーリングには、揮発性リガンドを除去することと、ナノ粒子を半導体マトリックスに転化させることの2つの機能がある。半導体マトリックスは、発光層及び量子ドットのコアへの正孔又は電子の注入を促進できる導電性パスを提供する。
【0009】
リガンドを交換するには、溶媒から量子ドットを分離する必要がある。これは、量子ドットが極小なため難しい。例えば、コロイド分散液の遠心分離により量子ドットを分離しようとすると、長時間経過した後であってもドットの一部分しか沈殿しない。さらに、遠心分離の速度を高速にすると、得られた量子ドットの密集した沈殿物を再分散させることは非常に難しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、発光層をコーティングするために使用される量子ドット発光体を含むコロイド分散液を形成するための高収率プロセスが非常に有用になるであろう。また、このコロイド分散液と低コストの堆積技術を使用して全体が無機のLEDを構成できると有用であろう。さらに、個々の層の導電性が優れた全体が無機のLEDが望ましい。得られるLEDは、結晶性LEDと有機LEDの望ましい属性の多くを合わせ持つことになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
本発明の一つの態様によると、無機発光層を形成する方法であって、
(a)半導体ナノ粒子を成長させるための溶媒、コア/シェル量子ドットの溶液及び半導体ナノ粒子前駆体を組み合わせ、
(b)半導体ナノ粒子を成長させ、コア/シェル量子ドット、半導体ナノ粒子及びコア/シェル量子ドットに接続された半導体ナノ粒子の未精製溶液を形成し、
(c)コア/シェル量子ドット、半導体ナノ粒子及びコア/シェル量子ドットに接続された半導体ナノ粒子の単一のコロイド分散液を形成し、
(d)前記コロイド分散液を堆積させて膜を形成し、
(e)前記膜をアニーリングして無機発光層を形成することを含む方法が提供される。
【0012】
本発明の別の態様では、発光ナノ複合粒子はコア/シェル量子ドットに接続されたナノ粒子を含む。
【0013】
本発明の1つの利点には、発光種が量子ドットであって、同時に発光性かつ導電性である発光層を形成する1つの方法が提供されることが含まれる。発光層は、バンドギャップが広い導電性ナノ粒子と、前記ナノ粒子に接続された、シェルを有する量子ドット発光体とからなる複合体を含んでいる。熱アニールを利用して導電性ナノ粒子を互いに焼結させるとともに、導電性ナノ粒子と量子ドットの表面との間の電気接続性を高める。その結果、電子-正孔が量子ドットに注入される際に発光層の導電性が増大する。(量子ドットを不動態化している有機リガンドはアニールプロセスの間に蒸発するので)量子ドットが蛍光効率を低下させることなくアニール工程で生き延びられるようにするために、量子ドットのシェルを作って電子と正孔を閉じ込めることにより、その波動関数が外側の無機シェルの表面状態を表わさないようにする。
【0014】
本発明の別の利点は、全体が無機の発光ダイオードデバイスに導電性かつ発光性の発光層が組み込まれることである。一実施形態において、電子輸送層と正孔輸送層は導電性ナノ粒子で構成されている。さらに、別々の熱アニール工程を使用してこれらの層の導電性が大きくされる。ナノ粒子と該ナノ粒子に接続された量子ドットはすべて化学的に合成されてコロイド分散液にされる。その結果、デバイスのすべての層は低コストの方法(例えばドロップキャスティング又はインクジェット)で堆積される。得られる全体が無機の発光ダイオードデバイスは低コストであり、さまざまな基板の上に形成することができ、可視光と赤外線の波長の広い範囲にわたって光が出るように調節することができる。有機材料をベースとした発光ダイオードデバイスと比較すると、輝度が増大し、封止の必要性が低下しているはずである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な説明
【図1a】従来技術のコア/シェル量子ドットの模式図を示す。
【図1b】従来技術の無機発光層の断面の模式図を示す。
【図2】コア/シェル量子ドット及びナノ粒子核を含むコロイド分散液の模式図を示す。
【図3】ナノ複合粒子及びナノワイヤーの模式図を示す。
【図4】別のナノ複合粒子の模式図を示す。
【図5】無機発光層の模式図を示す。
【図6】本発明に基づく無機発光デバイスの側面模式図を示す。
【図7】本発明に基づく無機発光デバイスの別の実施形態の側面模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
発光ダイオードにおいて量子ドットを発光体として用いることには、量子ドット粒子のサイズを変えることによって発光波長を簡単にチューニングできるという利点がある。そのためスペクトルが狭い(その結果として色域がより広くなる)マルチ-カラーの光を同じ基板から発生させることができる。量子ドットをコロイド法によって調製する(高真空技術によって成長させる(S. Nakamura他、Electron. Lett.、第34巻、2435ページ、1998年)のではない)場合には、基板はもはや高価である必要も、格子がLED半導体系と一致している必要もない。基板は、例えばガラス、プラスチック、金属ホイル、Siのいずれかにすることができる。このような技術で量子ドットLEDを形成することは、特に、低コストの堆積法を利用してLED層を堆積させる場合であるならば、非常に望ましい。
【0017】
コア/シェル量子ドット発光体100の概略を図1aに示してある。この粒子は、発光コア102と、半導体シェル104と、有機リガンド106を備えている。典型的な量子ドットのサイズは約数ナノメートルであってその固有エキシトンのサイズと同程度であるため、ナノ粒子の吸収ピークと発光ピークは、バルクでの値と比べて青色側にシフトする(R. Rossetti他、J. Chem. Phys.、第79巻、1086ページ、1983年)。量子ドットのサイズが小さい結果として、ドットの表面の電子状態が、ドットの蛍光量子収率に大きな影響を与える。発光コア102の表面の電子状態は、第一級脂肪族アミンなどの適切な有機リガンドをその表面に結合させることによって、又は別の半導体(半導体シェル104)を発光コア102の周囲にエピタキシャル成長させることによって不動態化できる。半導体シェル104を成長させることの(有機物で不動態化したコアと比較した)利点は、正孔コア粒子と電子コア粒子両方の表面の状態を同時に不動態化でき、得られる量子収率が一般により大きくなり、量子ドットが光に対してより安定で化学的に強くなることである。
【0018】
半導体シェル104の厚さは限られている(一般に1〜3モノレイヤー)ため、その表面の電子状態も不動態化する必要がある。ここでも、有機リガンド106は共通に選択される。CdSe/ZnSコア/シェル量子ドットを例に取ると、コア/シェルの界面における価電子帯と伝導帯のずれは、その結果として生じるポテンシャルが正孔と電子の両方をコア領域に閉じ込めるような値である。電子は一般に重い正孔よりも軽いため、正孔は大半がコアに閉じ込められるのに対し、電子はシェルの中に侵入し、金属表面原子に付随する表面の電子状態を表わす(R. Xie他、J. Am. Chem. Soc.、第127巻、7480ページ、2005年)。したがってCdSe/ZnSコア/シェル量子ドットの場合には、シェルの表面の電子状態だけを不動態化する必要がある。適切な有機リガンド106の例は、表面のZn原子に対してドナー/アクセプタ結合を形成する第一級脂肪族アミンである(X. Peng他、J. Am. Chem. Soc.、第119巻、7019ページ、1997年)。要するに、典型的な高輝度量子ドットは、コア/シェル構造(より大きなバンドギャップがより小さいバンドギャップを取り囲む)を持ち、シェルの表面に結合した非導電性有機リガンド106を有する。
【0019】
高輝度コア/シェル量子ドットのコロイド分散液は、過去10年の間に多くの研究者が製造してきた(O. Masala及びR. Seshadri, Annu. Rev. Mater. Res., 第34巻、41ページ、2004年)。米国特許第6,322,901号にも、コア/シェル量子ドットを調製する有用な方法が記載されている。通常、発光コア102は、IV型、III-V型、II-VI型、又はIV-VI型の半導体材料からなる。
【0020】
IV型は、Siなどの周期表第IVB族から選択された元素を含む半導体材料を指す。III-V型は、周期律表の第VB族から選択された元素との組み合わせで第IIIB族から選択された原子を含む半導体材料、例えば、InAsを指す。同様に、II-VI型は、周期表第VIB族から選択された元素との組み合わせで第IIB族から選択された元素を含む半導体材料、例えば、CdTeを指し、そしてIV-VI型材料には第VIB族元素と組み合わせて第IVB族元素が含まれ、例えば、PbSeである。
【0021】
スペクトルの可視部分で発光させるには、CdSeがコア材料として好ましい。なぜならCdSeコアの直径を変えること(1.9〜6.7nm)によって発光の波長を465nmから640nmまで変えられるからである。別の好ましい材料にはCdxZn1-xSe(xは0から1まで)が含まれる。しかし、従来技術でよく知られているように、可視光を発生させる有用な量子ドットは、ドープされたZnS(A.A. Bol他、Phys. Stat. Sol.,第B224巻、291ページ、2001年)又はInPなどの他の材料系から製造することができる。発光コア102は、従来技術でよく知られている化学的方法で製造することができる。典型的な合成経路には、配位性溶媒中での分子前駆体の高温分解、溶媒加熱法(O. Masala及びR. Seshadri、Annu. Rev. Mater. Res.、第34巻、41ページ、2004年)、捕獲沈澱(R. Rossetti他、J. Chem. Phys.、第80巻、4464ページ、1984年)が含まれる。
【0022】
通常、半導体シェル104は、IV型、III-V型、IV-VI型、又はII-VI型の半導体材料から構成される。望ましい一実施形態では、シェルにはCdS又はZnSeなどのII-VI型の半導体材料が含まれる。適切な一実施形態では、シェルにはZn、S及びSeからなる群から選択された元素又はそれらの組み合わせが含まれる。シェルの半導体は、一般に、コア材料の格子とほぼ適合するように選択され、コアの正孔と電子の大半が量子ドットのコア領域に閉じ込められるようなレベルの価電子帯と伝導帯を持つ。コアがCdSeである場合にシェルとして好ましい材料は、ZnSeS1-y(y は0.0〜約0.5)である。発光コア102を取り囲む半導体シェル104の形成は、一般に、配位性溶媒中での分子前駆体の高温分解(M.A. Hines他、J. Phys. Chem.、第100巻、468ページ、1996年)によって、又は逆ミセル技術(A.R. Kortan他、J. Am. Chem. Soc.、第112巻、1327ページ、1990年)によって実現される。
【0023】
望ましい一実施形態において、適切なコア/シェル量子ドットは、コアの電子及び正孔の波動関数がコア/シェル量子ドットの表面に有意に拡張されないように、十分な厚さのシェルを有する。つまり、波動関数は表面状態を表さない。例えば、ZnSシェルの場合、よく知られている計算法(S.A. Ivanov他、J. Phys. Chem.、第108巻、10625ページ、2004年)を利用すると、ZnSの表面状態の影響を無視できるためにはZnSシェルの厚さが少なくとも5モノレイヤー (ML)でなければならないことが計算される。しかし、シェル材料及びコア材料の格子間の不整合に起因する格子の欠陥を発生させることなく、厚さが2ML超のZnSなどの厚いシェルを成長させることはしばしば困難である(D.V. Talapin他、J. Phys. Chem.、第108巻、18826ページ、2004年)。
【0024】
厚いシェルを得て、格子の欠陥を回避するには、コアと外側シェルの間に中間シェルを成長させることが望ましいことがある。例えば、格子欠陥を回避するには、ZnSeからなる中間シェルをCdSeコアとZnS外側シェルの間に成長させるとよい。この方法はTalapinら(D.V. Talapin他、J. Phys. Chem.、第B108巻、18826ページ、2004年)によって記載されているものであり、1.5ML厚のZnSe中間シェルとともに、8ML厚のZnSの外側シェルをCdSeコア上に成長させることができた。格子の不整合を最小にするにはより洗練されたアプローチも利用できる。それは例えば、CdSeから ZnSまで、多数のモノレイヤーの距離にわたって中間シェルの半導体含有分を滑らかに変化させるというものである(R. Xie他、J. Am. Chem. Soc.、第127巻、7480ページ、2005年)。
【0025】
さらに、必要な場合には、適切な半導体含有分の中間シェルを量子ドットに付加することで、厚い半導体シェル104に付随する欠陥の発生を回避する。望ましくは、外側シェル及びコア/シェル量子ドットの内側シェルの厚さを十分に厚くし、どの自由コア電子も正孔も外側シェルの表面状態を表わしていることがないようにする。
【0026】
従来技術でよく知られているように、量子ドット膜を形成する低コストの2つの手段では、ドロップキャスティング及びスピンキャスティングによってコア/シェル量子ドット100のコロイド分散液を堆積させる。量子ドットをドロップキャスティングによって形成するための一般的な溶媒はヘキサン:オクタンの9:1混合物である(C.B. Murray他、Annu. Rev. Mater. Sci.、第30巻、545ページ、2000年)。有機リガンド106は、量子ドット粒子がヘキサンに溶けるようなものを選択する必要がある。そのため炭化水素をベースとした尾部を有する有機リガンド(例えばアルキルアミン)が優れた選択肢となる。従来技術でよく知られた方法を利用し、成長手順で得られるリガンド(例えばTOPO)を、選択した有機リガンド106と交換することができる(C.B. Murray他、Annu. Rev. Mater. Sci.、第30巻、545ページ、2000年)。量子ドットのコロイド分散液をスピンキャスティングによって堆積させる場合には、溶媒の条件は、堆積表面に容易に広がることと、スピニングプロセスの間に溶媒が適度な速さで蒸発することである。アルコールをベースとした溶媒が優れた選択肢であることがわかった。例えば低沸点のアルコール(例えばエタノール)を沸点がより高いアルコール(例えばブタノール-ヘキサノール混合物)と組み合わせると、優れた膜が形成される。それに対応し、リガンド交換を用いて、尾部が極性溶媒に溶ける有機リガンドを(量子ドットに)結合させることができる。適切なリガンドの一例はピリジンである。これら2通りの堆積法で得られる量子ドット膜は発光性だが非導電性である。非導電性有機リガンドがコア/シェル量子ドット100粒子を互いに分離しているために膜は抵抗性になる。膜が抵抗性になることには別の理由もある。それは、移動できる電荷が量子ドットに沿って伝播するとき、半導体シェル104の閉じ込めポテンシャル障壁のためにその移動できる電荷がコア領域に捕獲されるからである。
【0027】
上述のように、典型的な量子ドット膜は発光性だが絶縁性である。図1bに、同時に発光性かつ導電性である無機発光層250を提供する従来技術の1つの方法を模式的に示してある。考え方は、コア/シェル量子ドット100に沿って小さな(2nm未満)導電性無機ナノ粒子240を同時に堆積させて無機発光層250を形成するということに基づく。次に、不活性ガス(Ar又はN2)を用いたアニール工程を用いて揮発性有機リガンド106を除去し、より小さな無機ナノ粒子240を相互に焼結させるとともに、より大きなコア/シェル量子ドット100の表面に焼結させる。無機ナノ粒子240を焼結させると、連続的な導電性半導体マトリックス230が形成される。この焼結プロセスにより、このマトリックスはコア/シェル量子ドット100にも接続される。そのため無機発光層250の縁部から半導体マトリックス 230を通ってコア/シェル量子ドット100に至る導電路が形成され、発光コア102において電子と正孔が再結合する。導電性半導体マトリックス130の中にコア/シェル量子ドット100を閉じ込めることには、量子ドットが環境酸素と水分の両方の影響から保護されるという別の利点もあることにも注意されたい。
【0028】
この従来技術の手法により発光層を形成させるには、半導体ナノ粒子の分散液を発光量子ドットの分散液とは別に形成する必要がある。これらの2つの分散液を混合し、発光層をコーティングする共分散液を形成する。本発明の一実施形態では、発光量子ドットの溶液の中で半導体ナノ粒子が形成され、半導体ナノ複合粒子が形成される。有用な半導体発光ナノ複合粒子には、1つ以上の半導体ナノ粒子に接続されたコア/シェル量子ドットが含まれ、接続された該ナノ粒子は量子ドットの表面から突出している。突出部分は棒、ワイヤー、球体に類似するものなど、さまざまな形をしている。
【0029】
発光ナノ複合粒子のコロイド分散液を形成する1つの創意ある方法に、半導体ナノ粒子を成長させるための溶媒、コア/シェル量子ドットの溶液、及び半導体ナノ粒子前駆体を組み合わせて混合物を形成する方法がある。ナノ粒子の成長によりナノ複合粒子が形成される。例えば、一実施形態では、ナノ粒子前駆体が反応して半導体材料の小結晶であるナノ粒子核を形成することができる。コア/シェル量子ドットの存在下でナノ粒子核を成長させると、発光ナノ複合粒子を含む混合物が形成される。この混合物には一般に量子ドットに接続されていない自由ナノ粒子が含まれる。また、この混合物には、未変性の量子ドットに加えて、ナノ粒子核、及び、ナノ粒子核の凝集体が含まれる。
【0030】
望ましいコア/シェル量子ドットには、第二の組成(例えばZnS)のシェルによって囲まれたコア(例えばCdSe)が含まれる。有用なコア/シェルの組み合わせの非限定的な例として、CdSe/ZnS、CdSe/CdS、CdZnSe/ZnSeS、及びInAs/CdSe量子ドットが含まれる。
【0031】
適切なナノ粒子前駆体は、IV型、III-V型、IV-VI型、又はII-VI型材料を含む半導体材料からなるナノ粒子を形成する前駆体である。望ましい一実施形態では、ナノ粒子は、IV型(例えばSi)、III-V型(例えばGaP)、II-VI型(例えば、ZnS又はZnSe)又はIV-VI型(例えばPbS)半導体を含んでいる。IV型、III-V型、II-VI型及びIV-VI型材料についてはすでに説明されている。望ましい一実施形態では、半導体ナノ粒子はZnSもしくはZnSe、又はその混合物を含んでいる。
【0032】
好ましい一実施形態では、無機半導体ナノ粒子は、コア/シェル量子ドットの半導体シェル104のバンドギャップと同程度のバンドギャップの半導体材料、さらに特定するならば、バンドギャップが量子ドットのシェルのバンドギャップから0.2eV以内である半導体材料を含む。例えば、コア/シェル量子ドットの外側シェル104にZnSが含まれる場合には、望ましい無機ナノ粒子の例にはZnS又はSeの含有量が少ないZnSSeで構成された材料が含まれる。
【0033】
半導体ナノ粒子を成長させる方法は従来技術でよく知られている。有用な方法には、Khosraviらの方法(A.A. Khosravi他、Appl. Phys. lett.、第67巻、2506ページ、1995年)が含まれる。例として、元素XYからなるナノ粒子核は、Xドナーである前駆体とYドナーである前駆体とを溶媒中で組み合わせることによって形成できる。例えば、ZnS(X=Zn及びY=S)からなるナノ粒子核は、ZnCl2などのZnドナーとビス(トリメチルシリル)スルフィド(TMS)2SなどのSドナーを組み合わせることによって形成することができる。前駆体が過剰に存在しかつ適切な反応条件下では、ナノ粒子核が形成され、ナノ粒子に成長する。
【0034】
特に有用なXドナーには、第IV族、第IIB族、第IIIB族、又は第IVB族の元素を提供する材料が含まれる。非限定的な例には、ジエチル亜鉛、酢酸亜鉛、酢酸カドミウム、及び酸化カドミウムが含まれる。
【0035】
特に有用なYドナーには、第VB族又は第VIB族の元素を提供する材料が含まれる。有用なYドナーの非限定的な例には、セレン化(トリ-n-オクチルホスフィン)(TOPSe)又はセレン化(トリ-n-ブチルホスフィン)(TBPSe)などのセレン化トリアルキルホスフィン、テルル化(トリ-n-オクチルホスフィン)(TOPTe) などのテルル化トリアルキルホスフィン又はテルル化ヘキサプロピルリントリアミド(HPPTTe)、テルル化ビス(トリメチルシリル)((TMS)2Te)、ビス(トリメチルシリル)スルフィド((TMS)2S)、ビス(トリメチルシリル)セレニド((TMS)2Se)、及び(トリ-n-オクチルホスフィン)スルフィド(TOPS)などのトリアルキルホスフィンスルフィドが含まれる。
【0036】
特定の実施形態では、XドナーとYドナーは同一分子内の部分とすることができる。例えば、ヘキサデシル亜鉛キサンテートはZnSを形成するためのZnとSの両方を含んでいる。実施形態によっては、2つより多くのナノ粒子前駆体が存在することがある。別の実施形態では、ナノ粒子は1つ、2つ、又は3つ以上の元素を含むことがある。
【0037】
実施形態によっては、ドーパントを含むナノ複合粒子を形成することが有用である。ドーパントは一般に小さな化合物であり、導電性を高めるために材料に組み込むことができる。これは、しばしば、1つ以上のドーパント前駆体を初期反応混合物に添加するか、ナノ粒子成長プロセス中に添加することによって行うことができる。ドーパントは一般にナノ複合粒子のナノ粒子部分の格子構造に組み込まれる元素である。例えば、A1でドープしたZnSeを含むナノ複合物を成長させることが望ましい場合、量子ドットの存在下かつ少量のA1前駆体の存在下に、ZnSeナノ粒子を成長させることができる。例えば、量子ドット、ヘキサン中のジエチル亜鉛などのZnドナー、TOP中に溶かしたSe粉末などのSeドナー(TOPSeを形成)、トリメチルアルミニウムなどの少量のA1ドナー、及び、ヘキサデシルアミン(HDA)などの配位性溶媒を組み合わせことができる。これは現場(In-situ)でのドーピング法を提供する。
【0038】
成長プロセス中に、配位性溶媒を存在させることが望ましいことがしばしばある。配位性溶媒は、成長プロセスをさらによく制御しそして得られるコロイドを安定させるために、成長しているナノ粒子の表面に可逆的に配位できる。溶媒は配位リガンドとしての機能を果たすか、又は、配位リガンドは非配位性溶媒と組み合わせて利用できる。望ましい配位リガンドは、成長しているナノ粒子の表面に提供できる1つ以上の非共有電子対を有する。有用な配位リガンドの例には、トリ-n-オクチルホスフィン(TOP)などのホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド(TOPO)などのホスフィンオキシド、テトラデシルホスホン酸などのホスホン酸類、及び脂肪族チオールが含まれる。アミンは特に配位リガンドとして有用である。特に、ヘキサデシルアミンもしくはオクチルアミンなどの脂肪族第一級アミン又は脂肪族第一級アミンの組み合わせは貴重である。
【0039】
成長プロセスは、例えば、反応混合物の温度を制御すること、前駆体の濃度及び種類を制御すること、溶媒を選択すること、及び配位リガンドの濃度及び種類を選択することなど、さまざまな手段により制御できる。好ましい実施形態では、成長プロセスを促進するために反応混合物を加熱することが望ましい。加熱しながら又は加熱せずに圧力下で反応を行うか、又は、反応混合物をマイクロ波照射に付すか、あるいは、その組み合わせは有用である。
【0040】
好ましい実施形態では、前駆体の添加割合及び反応混合物の温度は、ナノ粒子形成及び成長を最適化するために利用されるファクターである。1つの適切な実施形態では、2つ以上のナノ粒子前駆体を、溶媒及び1つ以上の配位リガンドの存在下にすべての前駆体を急速に注入し又は添加するなどして急速に混合させる。1つの適切な実施形態では、溶媒は脂肪族第一級アミンである。好ましい実施形態では、配位性溶媒を前駆体のうちの1つと混合し、反応混合物を反応温度まで加熱し、そして第二の前駆体を混合物に急速に注入又は添加する。
典型的な反応温度はしばしば80℃超であり、頻繁に100℃以上となり、120℃以上となることもある。溶媒は100℃〜300℃の反応温度まで加熱することが好ましい。
【0041】
ナノ粒子を適切に成長させるために必要な反応条件は厳密にはナノ粒子とその前駆体の組成により異なるであろう。反応条件は、過度の実験を行うことなく当業者が決定できる。
【0042】
成長プロセスは、実質的な量の酸素が存在せずかつ不活性条件下で実施することが一般的に有用である。これにより、しばしば、望ましくない金属酸化物の形成を防ぐことができる。例えば、反応は窒素雰囲気下又はアルゴン雰囲気下で行うことができる。
【0043】
成長プロセスは大半の量子ドットがナノ複合粒子に転化されるまで継続することが望ましい。成長プロセスを監視する方法には、反応混合物から少量サンプルを取り出すこと、及びサンプルを遠心分離にかけて、沈殿物及び上清液を形成することが含まれ、それは量子ドットを含むことができる。上清液は、光が量子ドットに吸収されるときにフォトルミネセンスが発生するように光の波長を選択した光源に暴露される。注意深く較正を行うことによって、フォトルミネセンスから上清液中の量子ドットの濃度を決定できる。一実施形態では、上清液中の量子ドットの濃度が初期量子ドット濃度の20%未満、好ましくは10%未満となるまで、成長プロセスが継続される。
【0044】
図2はコア/シェル量子ドット100、半導体核108及び配位リガンド106を含む、反応混合物の一実施形態の模式図を示す。成長プロセスの間に、1つ以上の核が量子ドットの表面に結合することになるであろう。この核は量子ドットの表面から外側に向かって成長し、発光ナノ複合粒子112を形成することができる。図3にこのようなナノ複合粒子112を模式的に示し、該ナノ複合粒子には量子ドット部分112A及びナノ粒子部分112Bが含まれる。配位リガンド106はナノ複合粒子112の両方の部分の表面に結合し、安定させる。一部のナノ複合粒子112には、1つより多くのナノ粒子に接続された量子ドットが含まれる。成長プロセスの間に、量子ドットに接続されていない自由ナノ粒子116Aも形成され、その表面に付随するリガンドを有することになるであろうことが期待される。
【0045】
ナノ複合粒子112には、コア/シェル量子ドットの外側シェルから突出したナノ粒子が含まれる。すでに説明されているとおり、突出部分は反応体及び成長条件により、棒、ワイヤー、球体に類似するものなど、さまざまな形をしていることができる。好ましい一実施形態では、突出部分はナノワイヤーに類似している。成長プロセスを延ばすことにより、図4に模式的に示す長いワイヤー突出部のあるナノ複合体118を得ることができる。例えば、量子ドットは一般的に直径が8nm未満であるが、ナノワイヤー突出部の長さは20nm、50nm、100nm、500nm又は1000nm(1マイクロメートル)以上にすることができる。優れた焼結特性を与えるために、量子ドットに接続されたナノ粒子の平均直径は20nm未満であることが好ましく、望ましくは10nm未満、好ましくは5nm未満である。ナノ複合粒子のナノワイヤー部分は、また、ナノ粒子の長さを直径で除算して求めるアスペクト比を特徴とすることができる。特に望ましいナノワイヤー突出部のアスペクト比は10超、適切には30超、好ましくは100超、又は、さらには500超である。
【0046】
さまざまな形状のナノ粒子を調製する方法は従来技術でよく知られている。例えば、ナノワイヤーの調製はPradhanら(N. Pradhan他、Nano Letters 第6巻、720ページ、2006年)により説明されている。Alivisatosらの米国特許第6,306,736号及び米国特許第6,225,198号にも、半導体ナノ粒子前駆体、溶媒、並びに、球状半導体ナノ粒子又は棒状半導体ナノ粒子の成長を促進することができるホスホン酸及びホスホン酸誘導体の混合物などのリン含有有機界面活性剤の二元混合物を組み合わせることにより、III-V型及びII- VI型半導体ナノ粒子の成形体を形成する方法が記載されている。ナノ粒子の形状は二元混合物中の界面活性剤の比率を調整することによって制御される。
【0047】
上述のように、好ましくは、ナノ複合粒子の外側表面は成長プロセス中に使用される配位リガンド106の層を含むであろう。しばしば、ナノ複合体のコーティング溶媒における溶解性を高めかつアニーリング工程中のリガンド除去を促進するために、ナノ複合体に結合されたリガンドを変更することが望ましい。リガンド交換のための有用な方法には、Murrayら(C.B. Murray他、Annu. Rev. Mater. Sci.、第30巻、545ページ、2000年)及びSchulzら(Schulz他、米国特許第6,126,740号)により記載されたものが含まれる。例えば、尾部が極性溶媒に対して可溶性であり、比較的に揮発性である有機リガンドをナノ複合体に結合させるためにリガンド交換を用いることができる。適切なリガンドの一例はピリジンである。
【0048】
発光ナノ複合体を含むコロイド分散液は、また、自由ナノ粒子又は自由量子ドットも含むことができる。実施形態によっては、Kahenによる米国特許出願公開第2007/0057263号に記載されている方法と同様の方法で、この分散液を、上記の自由ナノ粒子と同一であるか又は異なる更なるナノ粒子を含む第二の分散液と組み合わせることが望ましいことがある。実施形態によっては、更なる量子ドットをコロイド分散液に添加することが望ましいことがある。
【0049】
コロイド分散液は発光層を形成するために基板上をコーティングすることができる。粒子のコロイド分散液から膜を形成するための2つの低コストの手段には、ドロップキャスティング及びスピンキャスティングが含まれる。非極性揮発性溶媒がしばしばコーティングに使用される。例えば、量子ドットを堆積させるために有用なドロップキャスティングのための一般的な溶媒は、ヘキサン:オクタンの9:1混合物である(C.B. Murray他、Annu. Rev. Mater. Sci.、第30巻、545ページ、2000年)。一実施形態では、ナノ複合体がヘキサンなどの非極性溶媒に溶けるように、ナノ複合体の交換されるリガンドが選択される。そのため炭化水素をベースとした尾部を有する有機リガンド(例えば脂肪族アミン)が優れた選択肢となる。
【0050】
コロイド分散液をスピンキャスティングするために望ましい溶媒には、堆積表面上に容易に広がりかつスピニングプロセスの間に適度な速さで蒸発する溶媒が含まれる。有用な溶媒には、アルコールをベースとした溶媒、特に低沸点のアルコールと高沸点のアルコールの混合物が含まれる。例えば、エタノールをブタノールとヘキサノールとの混合物と組み合わせて形成されるコーティング溶媒を使用すると、スピンキャスティング後に優れた膜が形成される。
【0051】
スピンキャスティングによりナノ複合粒子を含む膜を形成することができるが、得られるコーティングされたままの膜は発光性だが非導電性である。非導電性有機リガンドがナノ複合粒子どうしを分離しそしてナノ複合粒子を自由ナノ粒子からも分離しているために膜は抵抗性になる。図5はナノ複合粒子118、ナノ粒子(ナノワイヤー)116B及びコア/シェル量子ドット100のコロイド分散液から形成される発光層120の一実施形態の模式図を示す。絶縁性リガンドを除去し、導電性発光層を形成するためには、通常、不活性雰囲気下(例えば窒素又はアルゴン下)で行われるアニーリング工程が必要である。コーティングされたコロイド分散液をアニーリングすると、ナノ複合粒子118が互いに焼結されるとともに自由ナノ粒子116Bと焼結し、半導体マトリックスを形成する。さらに、自由コア/シェル量子ドットが存在する場合には、アニール工程はこれらの量子ドットを半導体マトリックスに接続させることができる。
【0052】
上述のように、焼結すると多結晶導電性半導体マトリックスが生成される。そのため、無機発光層の縁部から半導体マトリックスを通ってマトリックス内のコア/シェル量子ドットに至る導電路が形成される。電子と正孔がマトリックス内に輸送され、量子ドットのコア内で再結合して、発光することができる。発光ナノ複合体を導電性半導体マトリックスへと融着させることで、発光層中の量子ドットを環境酸素及び水分の影響から保護するという追加の利点が生まれる。
【0053】
従来技術でよく知られているように、ナノメートルサイズのナノ粒子は、その材料がバルクのときよりもはるかに低温で溶融する(A.N. Goldstein他、Science、第256巻、1425ページ、1992年)。その結果、一実施形態では、焼結プロセスを改良するために、量子ドットに接続されたナノ粒子及びあらゆる自由ナノ粒子の平均直径が20nm未満、適切には10nm未満、望ましくは5nm未満、好ましくは2nm未満、さらに好ましくは1.5nm未満であることが望ましい。さらに、最終層の導電性を高めるには、コロイド分散液中のナノ複合粒子の大半は、ナノ粒子部分の表面積と量子ドット部分の表面積との比が1:1以上であり、望ましくは2:1以上であり、好ましくは3:1よりも大きいことが望ましい。
【0054】
量子ドット部分の形状及びサイズに実質的に影響を与えずに、ナノ複合体のナノ粒子部分を少なくとも部分的に融解するように、焼結温度を選択できる。例えば、ZnSシェルを備えているあるコア/シェル量子ドットは、350℃までのアニール温度に対して比較的に安定であることが報告されている(S.B. Qadri他、Phys. Rev.、第B60巻、9191ページ、1999年)。このように、一実施形態では、アニール温度は350℃未満である。ナノ粒子部分の直径がナノ複合体の量子ドット部分の直径より小さくなり、その結果融点がより低くなるように、成長プロセスを制御することが望ましい。ナノ複合体のナノ粒子部分が350℃未満、望ましくは250℃未満、好ましくは200℃未満の温度で少なくとも部分的に融解することが望ましい。
【0055】
得られる膜で優れた導電性を確保するため、アニーリングプロセスを十分に長い時間行う。一実施形態では、有用なアニーリング工程には250〜300℃の温度にて最長60分間加熱することが含まれる。
【0056】
上述のように、しばしば、コーティング溶媒中でのナノ複合体の溶解性を高めるために該ナノ複合体をリガンド交換手順に付すことが望ましい。また、アニーリングプロセス中にリガンドを実質的に除去できるように、十分に揮発性があるリガンドを選択することが望ましい。揮発性リガンドは、沸点が200℃未満、好ましくは175℃未満、好ましくは150℃未満のリガンドである。リガンドが揮発性でなくかつ除去できない場合には、焼結中に分解することがある。リガンド又はその分解生成物は絶縁体として作用することで膜導電性を阻害することがある。無機発光層の導電率(及び電子-正孔注入プロセス)を改良するには、不活性雰囲気中で無機発光層120をアニーリングしたときに、ナノ複合体に結合した有機リガンド106が蒸発することが好ましい。沸点が低い有機リガンド106を選択することにより、アニーリングプロセスの間に膜から有機リガンドを蒸発させることができる(C.B. Murray他、Annu. Rev. Mater. Sci.、第30巻、545ページ、2000年)。
【0057】
アニーリング工程を2以上の段階で実施することが望ましいことがある。一実施形態では、アニーリングプロセスは2つのアニーリング工程を含んでおり、第一のアニーリングは揮発性リガンドを除去し、第二のアニーリングは半導体マトリックスを形成する。例えば、第一のアニーリング工程を120℃〜220℃の温度で最大60分行い、第二のアニーリング工程を250℃〜400℃の温度で最大60分行うことができる。
【0058】
薄膜を高温でアニーリングすると、熱膨張によって膜と基板の間に不整合が起こって膜が割れる可能性がある。この問題を避けるには、アニール温度を室温からアニール温度まで徐々に上昇させ、アニール温度から室温まで徐々に戻すことが好ましい。温度変化にかける好ましい時間は約30分間である。
【0059】
アニーリング工程の後、半導体マトリックスに組み込まれたコア/シェル量子ドットは、有機リガンドの外側シェルが実質的になくなる。上述のように、コア領域の電子又は正孔の波動関数がシェル表面状態を表すことがないように、十分な厚さのシェルをコア/シェル量子ドットが有することが望ましい。
【0060】
図6は、基板126に堆積したアニーリング層120により形成された無機発光層124を組み込んだ簡単なエレクトロルミネッセンスLEDデバイス122の模式図を示す。無機発光層124の厚さは優れた発光を得られるように十分であるべきである。一実施形態では、膜の厚さは10nm以上、好ましくは10〜100nmである。
【0061】
基板126は、堆積プロセスが可能になる程度に十分に堅固であり、アニーリングプロセスに耐えられる程度に十分に熱安定性があるものを選択することが好ましい。用途によっては、透明の支持体を使用することが望ましいことがある。有用な基板材料の例には、ガラス、シリコン、金属ホイル、及びいくつかのプラスチックが含まれる。
【0062】
アノード128は基板126に堆積される。基板126がp型Siである場合には、アノード128は基板126の底面に堆積させる必要がある。p型Siに適したアノード用金属はAlである。アノード128は、蒸着又はスパッタリングなどのよく知られた方法によって堆積させることができる。堆積させた後、アノード128をアニールすることがしばしば望ましい。例えば、A1アノードの場合、430℃で20分間アニーリングすることが適している。
【0063】
p型Si材料を含まないタイプの多くの基板では、アノード128は基板126の上面に堆積させることができる(図6に示すとおり)。望ましくは、アノード128には、インジウムスズ酸化物(ITO)などの透明な導電体が含まれる。ITOは、スパッタリング又は他のよく知られた手順によって堆積させることができる。ITOは、一般に、300℃で1時間にわたってアニールして透明度を向上させる。透明な導電体(例えばITO)は金属よりも面抵抗がはるかに大きいため、接点用パッドから実際のデバイスまでの電圧低下をより小さくすることを目的として、熱蒸着又はスパッタリングを利用してバス用金属132をシャドウマスクを通じて選択的に堆積させるとよい。無機発光層120はアノード128上に堆積させることができる。上述のように、発光層は、透明な導電体(又はSi基板)の表面にドロップキャスティング又はスピンキャスティングによって堆積させることができる。他の堆積技術として、例えばコロイド状量子ドット-無機ナノ粒子混合物をインクジェットで堆積させることも可能である。堆積の後、無機発光層120を例えば270℃の温度で45分間にわたってアニールし、発光層124を形成する。
【0064】
最後に、カソード130金属を無機発光層124の上に堆積させることができる。適切なカソード用金属は、発光層及び半導体マトリックスとオーム接触を形成するものである。例えば、ZnSシェルを備えたコア/シェル量子ドットを含むナノ複合体の場合には、好ましいカソード金属はInである。Inは、熱蒸着によって堆積させることができ、堆積後に例えば約250℃にて10分間にわたって熱アニールすることができる。実施形態によっては、例えばカソード130を基板126の上に堆積させ、アノード128を無機発光層124の上に形成できるように、層構造を逆転させることができる。
【0065】
図7は、無機発光層124を組み込んだエレクトロルミネッセンスLEDデバイス134の別の実施形態の模式図を提供している。この図は、p型輸送層136とn型輸送層138がデバイスに付加され、無機発光層124を取り囲んでいる状態を示している。従来技術でよく知られているように、LED構造には、一般に、ドープされたn型輸送層とp型輸送層が含まれる。これらの輸送層は、いくつかの異なる目的で利用される。半導体に対するオーム接触の形成は、半導体がドープされている場合により単純になる。発光層は、一般に、元々ドープされているか、又はわずかにドープされているため、ドープされた輸送層へのオーム接触の形成ははるかに単純である。金属層が発光層に隣接していると、表面プラズモンの効果(K.B. Kahen、Appl. Phys. Lett.、第78巻、1649ページ、2001年)によって発光効率が低下する。結果として、十分に厚い(好ましくは少なくとも約150nm)輸送層によって発光層を金属接点から離すことはしばしば有利である。輸送層は、電子と正孔を発光層に注入するだけでなく、材料を適切に選択することにより、発光層からのキャリアの漏れを防止することもできる。例えば、ナノ複合体112の無機ナノ粒子部分112B及び自由ナノ粒子116はZnS0.5Se0.5で構成されていて、輸送層はZnSで構成されている場合には、電子と正孔は、ZnSポテンシャル障壁によって発光層に閉じ込められるであろう。p型輸送層に適した材料として、II-VI型及びIII-V型の半導体材料が含まれる。典型的なII-VI型半導体材料は、ZnSe、CdS及びZnSである。十分に大きなp型導電性を得るには、追加のp型ドーパントを3つの材料すべてに添加すべきである。II-VI型の輸送層の場合には、可能なドーパントの候補は、リチウム及び窒素である。例えば文献では、Li3Nを約350℃にてZnSeの中に拡散させ、抵抗率が0.4Ωcmという低いp型ZnSeを製造することができることが示されている(S.W. Lim、Appl. Phys. Lett.、第65巻、2437ページ、1994年、その全ての開示を参照によって本明細書に取り込む)。
【0066】
n型輸送層に適した材料としては、II-VI型半導体及びIII-V型半導体が含まれる。典型的なII-VI型半導体はZnSe又はZnSであることが好ましい。p型輸送層に関しては、十分に大きなn型導電性を得るため、追加のn型ドーパントを半導体に添加すべきである。II-VIのn型輸送層の場合には、可能なドーパントの候補は、A1、In又はGaのIII型ドーパントである。
【0067】
適切なエレクトロルミネッセンスデバイスには、さまざまなデバイス構造が含まれうる。発光層及び基板を含むデバイスには、基板上に形成されるアノード、基板上に形成されるカソード、又は基板上に形成されるアノードとカソードの両方が含まれる。
【0068】
好ましい実施形態では、多結晶ナノ粒子をベースとする半導体輸送層は、上述の同一出願人による米国特許出願第11/668,041号、米国特許出願第11/677,794号、及び米国特許出願第11/678,734号に記載される方法に従って形成され、その開示を参照によって本明細書に取り込む。
【0069】
一実施形態では、発光デバイス中、ドープされていてよいナノ粒子ベースの輸送層及びドープされた半導体接合は、上述の自由ナノ粒子と同一又は異なる半導体ナノ粒子から形成される。ドーパントを含むナノ粒子は現場(in-situ)ドーピング法又は現場外(ex-situ)ドーピング法のいずれかによりドープされる。現場ドーピング法の場合には、コロイドナノ粒子の合成・成長プロセス中にドーパント材料が添加される。現場外ドーピング法の場合には、半導体ナノ粒子及びドーパント材料ナノ粒子の混合物を表面にコーティングすることによりデバイス層が形成され、アニールを行って半導体ナノ粒子を融着させ、ドーパント材料原子をドーパント材料ナノ粒子から拡散させ、融着された半導体ナノ粒子ネットワークに拡散させることを可能にする。
【0070】
無機ナノ粒子からなる半導体接合は一般に抵抗性が非常に高く、低コストにもかかわらず、これらの接合を含むデバイスの有用性を制限している。現場又は現場外でドープされた無機ナノ粒子を含む、ドープされた半導体接合を形成することにより、半導体接合デバイスの優れた性能を維持しながら、その半導体接合デバイスを低コストで製造することができる。ドープされた半導体接合は、それぞれの輸送層のn型フェルミレベル及びp型フェルミレベルの分離を向上させることによってデバイスの性能を高め、オーム加熱を低減し、オーム接触の形成を補助する。
【0071】
好ましい実施形態では、発光デバイスには、半導体ナノ粒子の混合物をアニーリングすることにより形成される、少なくともn型又はp型層である少なくとも1つのナノ粒子ベースの輸送層が含まれる。一実施形態では、ナノ粒子には、平均直径が10nm未満、好ましくは5nm未満でかつアスペクト比が10以上、望ましくは100以上のナノワイヤーが含まれる。適切なアニーリング条件は上述したとおりである。
【0072】
輸送層及びドープされた半導体結合を無機ナノ粒子から形成することにより、デバイスの層は、例えばドロップキャスティング、スピンコーティング又はインクジェットなどの低コストの方法で堆積できる。得られるナノ粒子ベースのデバイスはフレキシブル基板を含むさまざまな基板上に形成できる。
【0073】
以下の例は、本発明をさらに理解するためのものであり、それを制限するものとは解釈されないものとする。
【0074】
例1. 発光ナノ複合粒子の調製及び発光層の形成
量子ドットの調製
CdSe/ZnSeSコアシェル量子ドットを以下の手順により調製した。合成では標準シュレンクライン手順に従った。Talapinらのグリーン合成手順に従ってCdSeを形成した(D.V. Talapin他、J. Phys. Chem.、第B108巻、18826ページ、2004年)。さらに具体的に言うと、反応混合物を260℃で7分激しく攪拌した後に532nm発光CdSeコアを得た。CdSe未精製溶液を室温まで冷却した後、4 mlのTOPO及び3 mlのHDAをシェレンク管中の1.5 mlの未精製溶液(未洗浄)に添加した。混合物を110℃で30分間脱ガスした後、溶液をアルゴン過圧下で絶え間なく撹拌して190℃まで上昇させた。ZnSeSで構成されたシェルでは、Zn、Se及びSの前駆体をドライボックスで調製した。Zn前駆体はヘキサン中の1 Mジエチル亜鉛であり、Se前駆体は1 M TOPSe(標準手法で調製)であり、S前駆体はTOP中の1 M (TMS)2Sであった。注射器に(ZnSe0.5S0.5形成するために)Zn前駆体を200 μmol、Se前駆体を100 μmol、S前駆体を100 μmol添加した。さらに1 mlのTOPも注射器に添加した。次に、注射器の内容物を10 ml/時の速度でシュレンク管にドリップさせた。注射器の内容物をドリップさせた後、コア/シェル量子ドットを180℃で1時間アニールした。発光波長はシェル形成手順で変化しなかった。
【0075】
発光ナノ複合粒子の調製
量子ドットの存在下でZnSe量子ワイヤーを形成した。ワイヤーはPradhanら(N. Pradhan他、Nano Letters 第6巻、720ページ、2006年)に記載されている手順に類似した手順で、酢酸亜鉛の亜鉛前駆体及びセレノ尿素のSe前駆体を使用して合成した。合成では同じモル(1.27x10モル)量の前駆体を使用した。配位性溶媒は、使用前に30℃で30分間脱ガスしたオクチルアミン(OA)であった。
【0076】
ドライボックス内の小さなガラス瓶の中で、0.03 gの酢酸亜鉛を4 mlのOAに添加し、濁った溶液を形成した。絶え間なく混ぜながらゆっくりと加熱した後、溶液は5分から10分で透明になった。この混合物を、三つ口フラスコの中に入れ、シュレンクラインに接続した。上述のように合成した2.0 mlのコア/シェル量子ドット未精製(未洗浄)溶液を溶液に添加した。室温で、内容物に対してガス排出、次いで、アルゴン補充のサイクルを3回行った。3回目のサイクルの後、反応混合物を120℃まで加熱した。
【0077】
小さなガラス瓶中の550 μlのOA に、0.016 gのセレノ尿素を(ドライボックス内で)を添加することによってSe前駆体を調製した。混合物は、ゆっくりと加熱し、連続して25分から30分撹拌した後に透明になった。溶液を注射器に移し、120℃の温度であった反応混合物に注入した。反応混合物は注入から数秒以内に濁った。ゆっくりと撹拌すると、量子ドットの存在下にZnSeナノワイヤーの成長を120℃で4時間から6時間続け、最後の20分140℃で加熱した。これにより、ナノ複合粒子及びナノワイヤーを含む生成混合物を得た。
【0078】
約1〜2 mlの未精製生成混合物を、遠心菅中の3 mlのトルエン及び10 mlのメタノールに添加した。数分間遠心分離した後、形成した沈殿物及び上清液は透明になり、UV光に暴露されたときに発光しなかった。上清液をデカントし、3〜4mlのピリジンを添加した。沈殿物がピリジン内で溶解し、透明な溶液を提供した。
【0079】
ナノ複合粒子及びナノワイヤーを含むピリジン溶液を80℃で24時間連続して撹拌しながら加熱し、非揮発性OAリガンドを揮発性ピリジンリガンドと交換した。真空法により過剰なピリジンの一部を除去し、その後、約12 mlのヘキサンを溶液に添加した。次に、この溶液を遠心分離し、デカントされた上清液、及び1-プロパノールとエタノールとの混合物を沈殿物プラグに添加して、透明な分散液を得た。
【0080】
発光層の形成
透明なホウケイ酸塩ガラス上で分散液の一定分量をスピンコーティングして、鏡面状のナノ粒子ベースの膜を得た。この膜はドライボックス内でスピンコーティングした。次に、膜をチューブ炉の中で(アルゴン流下に)、160℃にて30分間にわたってアニールし、次いで、275℃で30分間アニールして、ピリジンリガンドを蒸発除去し、ナノ複合粒子及びナノワイヤーを焼結した。第二のアニーリング工程で半導体マトリックスを形成した。得られたアニール後の発光層は、365nmのUV光に暴露したときに、(明るい室内光の中で)はっきりと見ることができるフォトルミネセンスを生じた。
【0081】
例2. 溶媒からの量子ドットの比較分離
非揮発性TOPO、HDA及びTOPリガンドを有するコア/シェル量子ドット(例1で使用されたものと同一の)のみを含む未精製溶液を、例1の最初の部分に記載されている方法と実質的に同じ方法でリガンド交換(ピリジンリガンドに交換)した。(トルエン及びメタノールによる)最初の洗浄では実質的な問題は発生しなかった。そのようにして、遠心分離後にプラグを形成でき、得られた上清液は透明であった。次に、上述と同じようにピリジンを添加し、混合物を80℃にて24時間撹拌した。交換された溶液を(上述同様に)ヘキサンで洗浄し、プラグを得るために遠心分離を行ったときに問題が発生した。例1よりも高速で遠心分離を行ったにもかかわらず、ほんの少量のプラグしか得られなかった。実際、上清液をUV光に暴露すると、量子ドットの大部分が溶液中に残っていたことがわかった(75%超)。
【0082】
例2は量子ドットを分離することが難しいことを示している。量子ドットはそれが形成された溶媒から容易に分離することができないため、その多くが失われる。これにより、非常に非効率的なプロセスとなる。例1に示すように、量子ドットをナノ粒子に接続して、新しい発光ナノ複合粒子を形成することにより、効率を劇的に改善できる。従来技術でよく知られているように、ナノ粒子を溶媒から分離する場合の効率はナノ粒子の表面積とともに増加する。表面積を増やすための本発明の手段は、量子ドット表面上でナノ粒子(ナノワイヤーなど)を成長させ、表面積を大幅に向上させたナノ複合体を得ることである。本プロセスの別の利点は、ナノ粒子と量子ドットとの間の電気接続をナノ粒子成長手順により高めることである。ナノ複合粒子は発光層を形成するために使用できる。層をアニーリングすることにより、量子ドットを埋め込んだ半導体マトリックスが形成される。
【0083】
上記の実験は、ZnSeナノワイヤーの一部がCdSe/ZnSeS量子ドットの表面上で成長していたことを間接的に証明することに注意されたい。上述のように、ピリジン交換の後に、ナノ複合体が形成されて初めてヘキサンから量子ドットをうまく分離できた。ナノ複合体が分離された量子ドットとZnSeナノワイヤーのみを含む場合に、ZnSeナノワイヤーのみを溶液から分離できるであろう(初期の実験で実際に発生した)。
【0084】
本発明の実施形態は、発光を向上させ、安定性を高め、抵抗を引き下げ、コストを削減し、製造可能性を向上させた発光材料を提供する。本発明を特定の好ましい実施態様を特に参照して詳しく説明してきたが、本発明の精神と範囲内でさまざまな変更及び修正が可能であることが理解されよう。
【符号の説明】
【0085】
100 コア/シェル量子ドット
102 コア/シェル量子ドットのコア
104 コア/シェル量子ドットのシェル
106 有機リガンド
108 ナノ粒子核
110 ナノ粒子凝集体
112 ナノ複合粒子
112A ナノ複合粒子の量子ドット部分
112B ナノ複合粒子のナノ粒子部分
116A 自由ナノ粒子
116B 自由ナノワイヤー
118 ナノ複合粒子
120 発光層
122 エレクトロルミネッセンスLED
124 アニーリング後の発光層
126 基板
128 アノード
130 カソード
132 バス用金属
134 輸送層を備えたエレクトロルミネッセンスLED
136 p型輸送層
138 n型輸送層
230 半導体マトリックス
240 無機ナノ粒子
250 無機発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機発光層を形成する方法であって、
(a)半導体ナノ粒子を成長させるための溶媒、コア/シェル量子ドットの溶液及び半導体ナノ粒子前駆体を組み合わせ、
(b)半導体ナノ粒子を成長させ、コア/シェル量子ドット、半導体ナノ粒子及びコア/シェル量子ドットに接続された半導体ナノ粒子の未精製溶液を形成し、
(c)コア/シェル量子ドット、半導体ナノ粒子及びコア/シェル量子ドットに接続された半導体ナノ粒子の単一のコロイド分散液を形成し、
(d)前記コロイド分散液を堆積させて膜を形成し、
(e)前記膜をアニーリングして無機発光層を形成することを含む方法。
【請求項2】
前記半導体ナノ粒子を成長させるための溶媒は配位性溶媒である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(a)は半導体ナノ粒子を成長させるための溶媒をコア/シェル量子ドット及び第一の前駆体と組み合わせ、100℃以上の温度に加熱し、そして第二の半導体前駆体を添加することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
成長工程は加熱すること、混合物を高圧条件下に付すこと、もしくは混合物にマイクロ波エネルギーを加えること、又はその組み合わせを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
リガンド交換を行い、コア/シェル量子ドット、半導体ナノ粒子及びコア/シェル量子ドットに接続された半導体ナノ粒子の表面を沸点が200℃未満の有機リガンドで覆うことをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記コア/シェル量子ドットのコアは、IV型、III-V型、IV-VI型又はII-VI型半導体材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記コア/シェル量子ドットに接続された半導体ナノ粒子は第一の半導体材料を含み、前記コア/シェル量子ドットのシェルは第二の半導体材料を含み、前記第一の半導体材料のバンドギャップエネルギーレベルが前記第二の半導体材料のバンドギャップエネルギーレベルの0.2ev以内である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記コア/シェル量子ドットのシェルは、IV型、III-V型、IV-VI型又はII-VI型半導体材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記コア/シェル量子ドットは、CdxZn1-xSe(xは0から1である)を含むコア及びZn、S及びSeからなる群より選択される元素又はそれらの組み合わせを含むシェルを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記コア/シェル量子ドットは、伝導帯電子又は価電子帯正孔をコア領域に閉じ込め、そのように閉じ込められた場合に、電子又は正孔の波動関数がコア/シェル量子ドットの表面に拡張されないようにするのに十分な厚さのシェルを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記コア/シェル量子ドットに接続された半導体ナノ粒子は、IV型、III-V型、IV-VI型又はII-VI型半導体材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記コア/シェル量子ドットに接続された半導体ナノ粒子はナノワイヤーを含み、該ナノワイヤーは平均直径が20nm未満でかつアスペクト比が10を超える、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記ナノワイヤーは平均直径が5nm未満でかつアスペクト比が30を超える、請求項12記載の方法。
【請求項14】
半導体ナノワイヤーを含む第二のコロイド分散液を前記単一のコロイド分散液に添加する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
アニーリング工程は、120℃から220℃の温度で最大60分行う第一のアニーリング工程、及び250℃から400℃の温度で最大60分行う第二のアニーリング工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
コア/シェル量子ドットに接続されたナノ粒子を含む発光ナノ複合粒子。
【請求項17】
前記ナノ粒子は、平均直径が20nm以下でかつアスペクト比が10を超えるナノワイヤーを含む、請求項16記載の発光ナノ複合粒子。
【請求項18】
前記コア/シェル量子ドットは、伝導帯電子又は価電子帯正孔をコア領域に閉じ込め、そのように閉じ込められた場合に、電子又は正孔の波動関数がコア/シェル量子ドットの表面に拡張されないようにするのに十分な厚さのシェルを含む、請求項16記載の発光ナノ複合粒子。
【請求項19】
(a)基板、
(a)アノード及び空間的に隔てて離れたカソードであって、前記アノード、前記カソード又はその両方が基板上に形成されている、アノード及びカソード、及び、
(b)前記アノードと前記カソードの間に配置された請求項1記載の無機発光層、
を備える無機発光デバイス。
【請求項20】
少なくとも1つの多結晶ナノ粒子をベースとした無機半導体輸送層をさらに含む、請求項19記載の発光デバイス。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−532409(P2010−532409A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514764(P2010−514764)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/007729
【国際公開番号】WO2009/014588
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】