説明

発光体、それを用いた照明及び表示装置

【課題】赤(R),緑(G),青(B)の波長成分を有して色再現範囲が広く、単一の電源と制御系で駆動が可能で、かつ構成部材が光劣化しない発光体を提供する。
【解決手段】一次発光手段と、一次発光手段より発せられる光により発光する二次発光手段とを含み、前記二次発光手段がイリジウム化合物を含むことを特徴とする発光体。イリジウム化合物としてはL123Ir(式中、L1、L2及びL3はイリジウムに配位している二座の有機配位子であり、これらのうち少なくとも一つは窒素原子と炭素原子で配位している。)のイリジウム錯体、好ましくは下記式(2)のイリジウム錯体が挙げられる。式中、Xはイリジウムに結合した炭素原子及び窒素原子と共に芳香族キレート配位子を形成する原子団を表し、nは2または3の整数であり、Lは炭素以外の原子がイリジウムに結合した二座の有機配位子を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機蛍光色素を用いた、高効率で演色性に優れ、かつ長寿命の発光体、それを用いた照明及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明または非自発光型ディスプレイデバイスの光源としては、冷陰極管または発光ダイオードが用いられてきた。しかし、冷陰極管は色再現範囲が狭く演色性に劣り、また水銀を使用しているため環境保護上も問題がある。
【0003】
近年、青色発光のダイオードが見出され、これと黄色発光の蛍光体とを組み合わせることにより得られる白色光源が広く普及しつつある。この方法は、460nm近辺の青色発光とその波長で励起され550〜590nmの黄色発光する蛍光体とを組み合わせることにより白色光を得るものである。青色で励起され黄色の発光をする蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体が知られている。しかし、この方式では本来の緑及び赤の成分を光源に含んでいないため、照明としては演色性に劣り、ディスプレイ用のバックライト等として用いた場合には、色再現範囲が狭いという問題があった。
【0004】
また、この青色発光ダイオードと、従来の赤と緑の発光ダイオードとを組み合わせることにより、色再現範囲が広く演色性に優れた白色光源が得られるが、3つの発光ダイオードを使用しなければならないため、3つの電源と制御系を必要とし、システムが複雑になる問題があった。
【0005】
最近、紫外発光するダイオードが見出され、これと紫外光を吸収して赤、緑、青に発光する蛍光体とを組み合わせることにより、単一発光ダイオードによる白色光源が実現した(「白色LED照明システムの高輝度・高効率・長寿命化技術」(技術情報協会),7頁,2003年:非特許文献1)。しかし、この方式では紫外光による構成部材の光劣化が避けられず、光源としての実用に耐える十分な寿命がなかった。
また従来のLEDの分野で波長変換用として使われる蛍光体は、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系やEuで賦活したストロンチウムシリケートなどの酸化物やEuなどで賦活したサイヤロンなどの窒化物であり、この粉体を樹脂に混ぜて使うという方法が一般的である。その場合、粉体と樹脂の界面が剥離しやすいために耐久性に問題が生じたり、粉体と樹脂の屈折率の違いにより、粉体の濃度や粒度分布によっては隠蔽力が発生してしまい、高輝度を得るための取り扱いが非常に難しいという問題があった。
【0006】
【非特許文献1】「白色LED照明システムの高輝度・高効率・長寿命化技術」(技術情報協会),7頁,2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の各種LED光源の問題を解決することを目的とする。すなわち、赤(R),緑(G),青(B)の波長成分を有して色再現範囲が広く、単一の電源と制御系で駆動が可能で、かつ構成部材が光劣化しない発光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定のイリジウム錯体からなる有機蛍光色素が、350〜530nmの波長領域の光を吸収して赤及び緑の高い色純度の蛍光を高効率で発することを見出し、さらに半導体に電圧をかけると350〜530nmの波長の光を発生する窒化ガリウム系化合物と組み合わせることにより色座標上のほとんどすべての色を発生する発光装置を作ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の発光体、それを用いた照明及び表示装置に関する。
[1]一次発光手段と、一次発光手段より発せられる光により発光する二次発光手段とを含み、前記二次発光手段がイリジウム化合物を含むことを特徴とする発光体。
[2]イリジウム化合物が、式(1)
【化1】

(式中、L1、L2及びL3はイリジウムに配位している二座の有機配位子であり、これらのうち少なくとも一つは窒素原子と炭素原子で配位している。)
で示されるイリジウム錯体である前記1に記載の発光体。
[3]イリジウム錯体が式(2)
【化2】

(式中、Xはイリジウムに結合した炭素原子及び窒素原子と共に芳香族キレート配位子を形成する原子団を表し、nは2または3の整数であり、それぞれの芳香族キレート配位子における複数のXは同一でも異なっていてもよく、Lは炭素以外の原子がイリジウムに結合した二座の有機配位子を表す。)
で示される前記2に記載の発光体。
[4]式(2)中の[ ]内が、下記式(3)
【化3】

(式中、破線はその部分でイリジウムに結合することを表し、芳香環の各水素原子は、ハロゲン原子または炭素数1〜15の有機基に置換されていてもよく、nが複数の場合は、それぞれの配位子は異なっていてもよい。)
で示される構造式群から選ばれる配位子のいずれかである前記3に記載の発光体。
[5]イリジウム錯体が、式(4)
【化4】

(式中、R1〜R8は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜15の有機基を表し、隣り合う置換基(R1〜R8)同士は互いに1か所以上で結合して縮合環を形成していてもよく、nは2または3の整数であり、[ ]内で示される2つまたは3つの配位子はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Lは炭素原子以外の原子がイリジウムに結合した二座の有機配位子を表す。)
で示される前記3記載の発光体。
[6]イリジウム錯体が、式(5)
【化5】

(式中、R11〜R18は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
または式(6)
【化6】

(式中、R21〜R29は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で示される前記3記載の発光体。
[7]二座の有機配位子Lが、下記式(7)
【化7】

(式中、破線はその部分でイリジウムに結合することを表し、それぞれの配位子における炭素原子は炭素数1〜15の有機基で置換されていてもよい。)で示される構造式群から選ばれるいずれかの配位子である前記3〜5のいずれか1項に記載の発光体。
[8]二次発光手段が、透明基板上または一次発光手段の発光面上にイリジウム錯体を層状に形成してなる前記1に記載の発光体。
[9]透明基板上または一次発光手段の発光面上の二次発光手段が、複数の層により形成されてなる前記8に記載の発光体。
[10]二次発光手段が、透明基板または発光面上に設けたイリジウム錯体を含む組成物層、及びその層上に設けたイリジウム錯体を含まない組成物層からなる前記9に記載の発光体。
[11]二次発光手段が、透明基板または発光面上に設けたイリジウム錯体を含まない組成物層、その層上に設けたイリジウム錯体を含む組成物層、及びその層上に設けたイリジウム錯体を含まない組成物層からなる前記9に記載の発光体。
[12]イリジウム錯体を含む組成物層の上に設けたイリジウム錯体を含まない組成物層がCVDカーボンコート層である前記11に記載の発光体。
[13]イリジウム錯体が、前記7に記載の式(7)で示される二座の有機配位子Lを有するイリジウム錯体である前記8に記載の発光体。
[14]イリジウム錯体が、下記式(E1)〜(E32)
【化8】

【化9】

【化10】

で示されるイリジウム錯体群から選ばれる1または2以上のイリジウム錯体である前記8に記載の発光体。
[15]二次発光手段が、結着剤中にイリジウム錯体を溶解または分散させたものであって、前記二次発光手段を一次発光手段の発光面を覆うように載置したものである前記1に記載の発光体。
[16]一次発光手段が350〜530nmの波長の光を発するものである前記1に記載の発光体。
[17]一次発光手段が青色発光ダイオードである前記16に記載の発光体。
[18]一次発光手段が窒化ガリウム系化合物半導体である前記17に記載の発光体。
[19]一次発光手段から発生した光の光路に、イリジウム錯体を溶解または分散させた結着剤を含む二次発光手段を配置し、白色の光を取り出す構造を有する前記1に記載の発光体。
[20]一次発光手段から発生した光の光路に、510〜570nmに発光ピークを有するイリジウム錯体と600〜680nmに発光ピークを有するイリジウム錯体との少なくとも2種を溶解または分散させた結着剤を含む二次発光手段を配置してなる前記19に記載の発光体。
[21]演色評価数が80以上である前記1〜20のいずれか1項に記載の発光体。
[22]一次発光手段が、350〜530nmの波長の光を発する発光ダイオードであり、演色評価数が90以上の白色の光を取り出す前記20に記載の発光体。
[23]結着剤を導光板または散乱板として使用する前記19または20に記載の発光体。
[24]一次発光手段からの光を受ける透明基板上に、塗布、スピンコートまたは印刷のいずれかの方法によりイリジウム化合物を含む二次発光手段を形成することを特徴とする前記8に記載の発光体の製造方法。
[25]一次発光手段の発光面上に、滴下後硬化、印刷封止、ディスペンサー方式、トランスファー成形、射出成形またはスピンコートのいずれかの方法によりイリジウム化合物を含む二次発光手段を形成することを特徴とする前記8に記載の発光体の製造方法。
[26]前記1〜23のいずれか1項に記載の発光体を用いた照明装置。
[27]前記1〜23のいずれか1項に記載の発光体を用いた表示装置。
[28]発光体をバックライトとして用いた前記27に記載の表示装置。
[29]発光体を透明基板の一方の面上に形成して二次発光手段とし、さらに前記発光体上、または前記発光体が形成されたのとは反対側の面上に透明電極を形成し、これを透過型液晶表示装置の一方の電極として用いる前記27または28に記載の表示装置。
[30]複数の一次発光手段、一次発光手段より発せられる光により発光する二次発光手段、導光板、反射板及び拡散板を含み、前記二次発光手段がイリジウム化合物を含むことを特徴とする面状発光体。
[31]前記面状発光体を構成する部材の全ての接触面が、実質的に空気層が介在しないよう密着した状態で接合され一体化している前記30に記載の面状発光体。
[32]接合が接着剤または熱圧着により行われている前記31記載の面状発光体。
[33]接着剤が、屈折率が1.4以上であるエポキシ樹脂またはアクリル樹脂である前記32記載の面状発光体。
[34]複数の一次発光手段と導光板とを接合するための接着剤中にイリジウム化合物を溶解または分散することにより二次発光手段が形成されている前記32記載の面状発光体。
[35]導光板の端部に形成された複数の凹部に一次発光手段が設置されている前記30記載の面状発光体。
[36]凹部の導光板に光を入射させる端面の断面形状が凸形状であり、凹部の封入に用いる接着剤の屈折率が導光板の屈折率より大きい前記35記載の面状発光体。
[37]反射板が、アルミニウム、白色塗装アルミニウム、銀蒸着フィルムまたは白色フィルムである前記30記載の面状発光体。
[38]一次発光手段が発光ダイオードである前記30に記載の面状発光体。
[39]前記30〜38のいずれか1項に記載の面状発光体を用いた液晶バックライト。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発光体は、色座標上の殆どすべての色調の発光をすることが可能であり、色再現範囲が広く演色性に優れ、かつ部材の紫外劣化の問題がないので特に白色光源として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における一次発光手段としては、その一次発光波長領域の光を、二次発光手段が吸収し発光できるものが挙げられる。その具体例としては、発光ダイオード、蛍光管、水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプなどが挙げられる。これらのうち、装置を小型化できるという観点からは発光ダイオードが好ましい。
【0012】
また、表示装置や照明装置用としては、一次発光手段の光と二次発光手段の光を合わせた光が白色であり、色再現範囲が広いことが好ましい。このためには、一次発光手段として発光波長350〜530nmを有する発光ダイオードを用いることが好ましい。該発光ダイオードの例としては窒化ガリウム系化合物半導体が挙げられる。
【0013】
窒化ガリウム系化合物半導体は、V族元素として窒素を含み、その他に砒素、燐、などを含んでいてもよい。また、III族元素としてはガリウムの他、アルミニウム、インジウム、ホウ素を含むことができる。
【0014】
窒化ガリウム系化合物半導体のLEDには、基板としてサファイア、炭化珪素、シリコン、燐化ガリウム、砒化ガリウム、窒化ガリウムなどを用いることができる。一旦LED構造を含む結晶層を成長させたあと、基板を剥離することもできる。中でも、サファイアは最も広く使用されている基板であり、廉価で入手可能で取り扱いが容易である。発光強度を上げるためには、基板を剥離した構造とすることが有効である。
【0015】
窒化ガリウム系化合物半導体のLEDチップは、発光層としてInGaN、GaN、AlGaNなどを用いることができる。発光層の構造も、数百nmの比較的厚い発光層とする構造のほか、数nmの薄い井戸層と障壁層で構成される量子井戸構造とすることもできる。量子井戸構造には、単一の井戸層からなる単一量子井戸構造(SQW構造)や複数の量子井戸からなる多重量子井戸構造(MQW構造)などがある。強い発光強度を得ることが可能であることから、発光層の構造は量子井戸構造をとることが望ましい。
【0016】
励起用LEDチップから発光される光は、波長が350〜500nmであることが望ましい。さらに望ましくは、375〜470nmであり、最も望ましいのは380〜460nmの発光である。
また、発熱による蛍光体の劣化を防ぐために、LEDチップの構成にはできるだけオーミック性の抵抗を含まないことが望ましい。オーミック性の接触成分は、LEDチップの駆動電圧で判断できるが、20mAでの駆動電圧が4.0V以下であることが望ましい。さらに望ましくは3.5V以下であり、3.3V以下であることが最適である。
【0017】
同様に発熱による劣化を防ぐために、より高輝度のチップを使用することが望ましい。高輝度であるということは、より効率的に電流エネルギーを光エネルギーに変換できることを意味し発熱量が小さい。具体的には、ベアチップ測定で、20mAの電流を通電した場合に5mW以上の発光を示すことが望ましい。さらに望ましくは7mW以上であり、9mW以上であることが最適である。ここでいうベアチップ測定とは、チップを簡易的な缶タイプと呼ばれるマウント部材にマウントして、樹脂などによるモールドはせずに積分球で全光束の測定を行うものである。
【0018】
使用するチップの形状は、一般的に知られているものを何ら問題なく使用することができる。
炭化珪素を基板とするチップや、積層構造を基板から剥離したチップなどの場合、電極はチップの両面に付けることができる。
【0019】
一方、サファイアなどの絶縁体材料を基板として用いる場合には、同じ面にn電極とp電極を作製する。この場合、光をサファイア基板の側から取り出すフリップチップと呼ばれる構造をとることもできるし、エピ層側に透光性の電極を設けることでフェイスアップと呼ばれる構造をとることもできる。
【0020】
また、光の取り出しを促進する目的で、チップの側面にチップ上下面に対して垂直ではない面を形成することによって、放射された光を無駄なくイリジウム錯体の励起に利用することができる。
【0021】
本発明の二次発光手段として用いるイリジウム化合物は、上記一次発光手段の光で発光するものであれば使用可能である。イリジウム化合物としてはイリジウム錯体が好ましい。
イリジウム錯体は、二座の有機配位子L1、L2及びL3がイリジウムに配位した式(1)
【化11】

で示されるものが使用される。但し、L1、L2、L3のうち少なくとも一つは、その有する窒素原子と炭素原子でイリジウムに配位している二座の有機配位子である。
【0022】
イリジウム錯体の具体例としては、式(2)
【化12】

(式中、Xはイリジウムに結合した炭素原子及び窒素原子とともに芳香族キレート配位子を形成する原子団を表し、nは2または3の整数であり、それぞれの芳香族キレート配位子における複数のXは同一でも異なっていてもよく、Lは炭素以外の原子がイリジウムに結合した二座の有機配位子を表す。)
で示される錯体が挙げられる。
【0023】
また、上記式(2)中の[ ]内が、下記式(3)
【化13】

(式中、破線はその部分でイリジウムに結合することを表し、芳香環の各水素原子は、ハロゲン原子または炭素数1〜15の有機基に置換されていてもよく、nが複数の場合は、それぞれの配位子は異なっていてもよい。)
で示される構造式群から選ばれる配位子のいずれかであることが好ましい。
【0024】
また、上記式(2)のイリジウム錯体は、式(4)
【化14】

(式中、R1〜R8は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜15の有機基を表し、隣り合う置換基(R1〜R8)同士は互いに1か所以上で結合して縮合環を形成していてもよく、nは2または3の整数であり、[ ]内で示される2つまたは3つの配位子はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Lは炭素原子以外の原子がイリジウムに結合した二座の有機配位子を表す。)
で示される錯体であることが好ましい。
【0025】
上記式(3)及び(4)における炭素数1〜15の有機基の具体例としては、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等)、炭素数6〜10のアリール基(フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等)、炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基(アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基等)、シリル基(トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等)を挙げることができる。
【0026】
式(4)で示されるイリジウム錯体の中でも特に良好な緑色及び赤色の発光を示す例として、それぞれ式(5)
【化15】

(式中、R11〜R18は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で示される化合物、または式(6)
【化16】

(式中、R21〜R29は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で示される化合物を挙げることができる。
【0027】
式(5)及び式(6)における炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等を挙げることができる。
【0028】
さらに、前記式(2)中の二座の有機配位子Lは、下記式(7)
【化17】

(式中、破線はその部分でイリジウムに結合することを表し、それぞれの配位子における炭素原子は炭素数1〜15の有機基で置換されていてもよい。)
で示される構造式群から選ばれるいずれかの配位子であることが好ましい。なお、上記式(7)に係る炭素数1〜15の有機基の具体例としては、前記式(3)及び(4)における場合と同じものが挙げられる。
【0029】
本発明に用いられるイリジウム錯体の具体例として、下記式(E1)〜(E32)
【化18】

【化19】

【化20】

で示される構造のイリジウム錯体群が挙げられる。なお、式(E1)〜(E32)中の化合物番号下に示した数字はそれぞれ460nmの光で励起した固体状態における極大発光波長(λem,max)(nm)を表す。
【0030】
上記以外に本発明に用いられるイリジウム錯体の具体的な構造としては、次のE33〜E42を例示することができる。
【化21】

【0031】
本発明に係るイリジウム化合物は公知の方法により容易に得ることができる。
前記式(2)
【化22】

で示されるイリジウム錯体において、nが3、すなわち
【化23】

で示されるイリジウム錯体は下記スキーム(1)に示すようにイリジウムトリス(アセチルアセトナート)錯体と配位子の水素化体(A)
【化24】

をグリセロール中で加熱することによって合成することができる。
【化25】

【0032】
nが2、すなわち
【化26】

で示されるイリジウム錯体は、下記スキーム(2)に示すように、まず塩化イリジウム水和物と配位子の水素化体Aをエトキシエタノール−水混合溶液中で加熱した後、生成物をAとは異なる配位子(L)の水素化体(LH)と反応させることによって得られる。
【化27】

【0033】
一次発光手段によって二次発光手段を照明し、発光させる方法は特に制限されるものではなく、例えば、上記イリジウム錯体を結着剤に溶解または分散させ、これを透明基材上に塗布、スピンコート、印刷などの手段により形成し、この透明基板に一次発光手段より放射される光を到達させる方法が挙げられる。また、上記結着剤中にイリジウム錯体を溶解または分散させて得られた組成物を、塗布、接着等の手段により一次発光手段の発光面を覆うように被覆、載置する方法を採用して二次発光手段としてもよい。一次発光手段の発光面の被覆方法は特に限定されず、組成物を滴下後に硬化させる方法、印刷封止、ディスペンサー方式、トランスファーによる金型成型、射出成型等の成型方式、スピンコートなどを用いた塗布方式等の公知の方法を採用できる。これらの方法によりレンズの形成、キャスティングまたは板状の樹脂形成などを行うことができる。
透明基材上へ形成されるか、または一次発光手段の発光面上に被覆形成される二次発光手段は、イリジウム化合物含有組成物層を含む複数の層から構成することができる。この場合、組成物は同じであっても異なっていても良く、イリジウム錯体が入る層にも限定はない。例えば、イリジウム錯体を含む組成物を1層目に、イリジウム錯体を含まない組成物を2層目にしてもよいし、イリジウム錯体を含まない組成物を1層目にイリジウム錯体を含む組成物を2層目にしてもよいし、イリジウム錯体を含まない組成物を1層目にイリジウム錯体を含む組成物を2層目にイリジウム錯体を含まない組成物を3層目にしてもよいが、最外層はイリジウム錯体を含まない組成物を用いることが望ましい。
【0034】
本発明に用いるイリジウム錯体を溶解、分散させる結着剤は、特に限定されないが、例えば、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、熱ラジカル重合性樹脂、水溶性樹脂等を挙げることができる。
これらの樹脂は、波長400〜800nmの間の透過率が50%以上、好ましくは80%以上のものが好ましい。
【0035】
砲弾型やトップビュー型またはサイドビュー型の照明装置を作製する場合は、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂が注型して作製できるため好ましい。
照明装置は、砲弾型であれば本発明のイリジウム錯体を溶解または分散した樹脂を鋳型に入れ、LEDチップを搭載したリードフレームを投入硬化することにより作製することができる。また同様にトップビュー型またはサイドビュー型の照明装置は、本発明のイリジウム錯体を溶解または分散した樹脂をLEDチップが配線されたケース内部に注型させることにより作製することができる。
【0036】
熱硬化樹脂としては、波長400〜800nmの透過性の観点から、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、熱ラジカル重合性樹脂が好ましい。
【0037】
エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂環型、脂肪族型、またはこれらの蒸留品、水添型などが挙げられる。また、エポキシアクリレート類も挙げられる。グリシジルエーテル型のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂のような二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DPPノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂のような多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。また、脂環型エポキシ樹脂としては、アリシクリック・ジエポキシ・アセタール、アリシクリック・ジエポキシ・アジペイト、アリシクリック・ジエポキシ・カルボキシレイト、ビニル・シクロヘキセン・ジオキサイドなどが挙げられる。他にも、トリグリシジルイソシアネート型エポキシ樹脂、ヒダントインエポキシ樹脂などが挙げられる。特に、グリシジルエーテル型、脂環型、脂肪族型、またはこれらの蒸留品、水添型などが好ましい。
【0038】
エポキシ樹脂の粘度が高すぎると樹脂と本発明のイリジウム錯体との相溶性が悪くなるため、粘度50,000cps程度以下、好ましくは5,000cps程度以下(BH型粘度計)の低粘度の液状のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0039】
窒化ガリウム系化合物半導体からは紫外線がわずかではあるが発生しているために、封止樹脂は紫外線により劣化し難いものであることが望まれるが、これらのエポキシ樹脂は、紫外線により劣化し難い点で好ましい。中でも、グリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が好ましい。特に水添型ビスフェノールA型エポキシ樹脂または水添型ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂が好ましい。水添型ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び水添型ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、紫外線により劣化し難いとともに、光の透過性に優れるために好ましい。エポキシ樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0040】
これらエポキシ樹脂を硬化するために、通常は硬化剤及び必要に応じて硬化促進剤を添加する。硬化剤は特に限定されず、例えば液状の無色の酸無水物などを使用することができる。液状の無色の酸無水物としては、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水パイロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸等が挙げられ、特に十分に精製され着色の少ないものが好ましい。硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ当量の通常60〜120%程度、特に80〜110%程度を添加することが好ましい。硬化剤の添加量が少ないと、エポキシ樹脂配合物中に未硬化の部分が生じる。また、硬化剤の添加量が多過ぎると、エポキシ樹脂配合物そのものが吸湿しやすくなって硬化特性上問題がある。前記範囲であればこのような問題は生じない。
【0041】
硬化促進剤としては、例えばイミダゾール類、トリフェニルフォスフィン類、トリブチルフォスフィンまたはそれらの塩類、DBU(ジアザビスシクロウンデセン)、三級アミン、カルボン酸金属塩類等を使用できる。硬化促進剤の使用量は硬化剤に対して0.001〜50質量%程度、特に0.01〜10質量%程度とすることが好ましい。
【0042】
市販品としては、LEDの注型材料として販売されている、サンユレック(株)製EL−308、EL−438、日本ペルノックス(株)製ME−561/HV−560等を用いることもできる。
【0043】
また、硬化剤及び硬化促進剤の使用に代えて、例えばカチオン系重合触媒のような硬化触媒などを使用することもできる。加熱により酸を発生する、芳香族ジアゾニウム塩(HPF6、HSbF6等)、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩のようなブレンステッド酸のオニウム塩類、ブレンステッド酸の鉄芳香族化合物塩、アルミニウム錯体/光分解性ケイ素化合物系触媒等を用いることにより硬化することが可能である。市販品としては、例えば、旭電化工業(株)製CP−66、CP−77、日本曹達(株)製CI−2855、CI−2639;三新化学工業(株)製サンエイドSI−60、SI−100等が挙げられる。これら酸発生型カチオン重合開始剤は、上述した材料の中から選択したものを単独で使用することもでき、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0044】
シリコーン樹脂系としては、フェニルシリコーン樹脂系、エポキシシリコーン樹脂系、フェニルシリコーンゴム系、メチルシリコーンゴム系、メチルシリコーン樹脂系が挙げられる。
市販品としてはLEDの注型材料として販売されている、日本ペルノックス(株)製XJL−0001A/B、信越化学工業(株)製KER−2667、X−32−2379−4、X−32−2480−1等を用いることもできる。
【0045】
熱ラジカル重合性樹脂としては特に限定されず、ラジカル重合性不飽和結合や、(メタ)アクリル基を有する公知慣用のラジカル重合性モノマーが使用できる。一般的には、多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、多官能ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等に、反応性希釈剤で所望の粘度に調整したものが使用される。
反応性希釈剤としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0046】
熱ラジカル重合を円滑に促進させるための熱ラジカル開始剤としては、加熱によりラジカルを発生する公知慣用のものが使用できる。具体的には有機過酸化物、アゾ系の開始剤が挙げられる。
【0047】
光硬化系としては、光カチオン重合系、光ラジカル重合系を用いることができる。
光カチオン重合系はエポキシ樹脂のところで記載した加熱により酸を発生する開始剤に代えて、紫外線等の活性エネルギー線の照射により酸を発生する開始剤を使用することにより硬化させることができる。
市販品としては、例えば、旭電化工業(株)製SP−150、SP−170;ユニオンカーバイド社製CYRACURE−UVI−6990、UVI−6974;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート)、「ロードシル(RHODORSIL)2074」;ローヌ・プーラン社製4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0048】
これら酸発生型カチオン重合開始剤は、上述した材料の中から選択したものを単独で使用することができ、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
これら樹脂、開始剤等を含む組成物をケースに注入して、活性エネルギー線を0.001〜10J程度照射し、硬化させることができる。
光ラジカル重合性樹脂としては特に限定されず、熱ラジカル重合性樹脂に記載した材料が用いられる。
【0049】
このラジカル重合性不飽和結合や、(メタ)アクリル基を有する化合物の光ラジカル重合を円滑に促進させるための光ラジカル開始剤としては、光に感応しラジカルを発生する公知慣用のものが使用できる。ここで「光」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の放射線を意味する。光ラジカル開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製;イルガキュア907)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4‘−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製;ルシリンTPO)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド含有開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製;イルガキュア1700,149,1800)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製;イルガキュア819)等が挙げられる。これらを1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0050】
光ラジカル開始剤の使用量は、組成物中のラジカル重合性不飽和基を有する化合物の(メタ)アクリル1当量に対し0.007〜0.5モル、好ましくは0.035〜0.3モルである。光ラジカル開始剤の添加量が0.007モルより少ないと感度不良となり、一方0.5モルを超えて添加しても感度の向上がみられず、経済的にも好ましくない。
これら樹脂、開始剤等を含む組成物をケースに注入して、活性エネルギー線を0.001〜10J程度照射し、硬化させることができる。
【0051】
窒化ガリウム系化合物半導体に電極を付けて電圧をかけて発光させた光をイリジウム錯体で多様な波長の光に変換する発光装置においてイリジウム錯体を分散させる樹脂は、波長変換板、波長変換シートとして窒化ガリウム系化合物半導体から距離を離して使うこともできる。
これら波長変換板、波長変換シートの形状及び大きさは、特に限定されない。面状に作れば面発光照明となり液晶などの非発光型ディスプレイのバックライトとして使用することができる。レンズ状にすれば投影機などのランプにすることもできる。
【0052】
この波長変換板、波長変換シートの作製に用いる樹脂は限定されないが、波長400〜800nmの間の透過率が50%以上、好ましくは80%以上のものが好ましい。
樹脂は熱可塑性、熱硬化性樹脂、熱ラジカル重合性樹脂、光硬化樹脂を問わず使用することができるが、板などに加工する場合は熱可塑性樹脂が有利である。熱可塑性樹脂を使用する場合は、二軸ラボプラストミル等の適当な混練機を用いてイリジウム錯体を分散もしくは溶解させ、押し出し成形、射出成形、プレス機による成形等により目的の波長変換板、波長変換シートを得ることができる。
【0053】
また、熱硬化性樹脂を用いる場合も、同様に適当な混練機を用いて本発明のイリジウム錯体を分散もしくは溶解させ、所望の厚みに設定した鋳型に注型、加熱硬化することにより得ることができる。
熱硬化性樹脂の具体例としては、砲弾型やトップビュー型及びサイドビュー型の照明装置の作製について先述した、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、熱ラジカル樹脂を使用することができる。
【0054】
熱可塑性樹脂としては、高分子素材ガイドブック'97(高分子素材センター、平成9年10月発行)に記載の、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリメチルペンテン、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン)、塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂、スチレン/N−フェニルマレイミド樹脂、スチレン/無水マレイン酸樹脂)、ポリメタクリル酸樹脂(PMMA)、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル(PET、PBT、PEN、PBN)、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性フェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート樹脂、ケトン系樹脂、スルホン系樹脂が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は単独でも、また複数のポリマーアロイとしても使用することができる。
【0055】
また、イソプレンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等も挙げられる。
【0056】
さらにポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリル酸、水性ポリエステル、水性ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、水性アクリル樹脂、水性アルキド樹脂、マレイン酸樹脂等の水溶性樹脂を用いることもできる。
【0057】
中でも、400〜800nmの光線透過率が高い、PMMA、MMA−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、透明ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリオレフィン系樹脂(JSR(株)製;ARTON、日本ゼオン(株)製;ZEONEX、CR−39(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)樹脂、透明ナイロン樹脂が好ましい。
【0058】
光硬化樹脂の具体例としては、砲弾型やトップビュー型またはサイドビュー型の照明装置を作製するところで先述した、光カチオン硬化型樹脂、光ラジカル硬化型樹脂が使用できる。
【0059】
また、熱可塑性樹脂を用いて砲弾型やトップビュー型またはサイドビュー型の照明装置、及び波長変換板、波長変換シートを作製する際、樹脂を溶剤に溶解して所望の位置に滴下、充填して溶剤を乾燥すること(溶解分散法)により封止、シート及び板を作製することも可能である。
【0060】
溶剤としては、上記皮膜形成性樹脂成分を溶解乃至分散できるものが使用できる。具体的には、トルエン、キシレン、高沸点石油系炭化水素などの炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系溶剤等を挙げることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0061】
また、本発明の砲弾型やトップビュー型またはサイドビュー型の照明装置、及び波長変換板、波長変換シートには本発明のイリジウム錯体の発光を妨げない範囲内で、発光波長や色座の調整のため他の有機蛍光物質、無機系蛍光物質、顔料などを含有してもよい。
【0062】
また、本発明の照明装置に用いる樹脂組成物には、イリジウム錯体の発光を妨げない範囲内で、UV吸収剤や光安定剤、酸化防止剤等の添加剤を加えることができる。
【0063】
UV吸収剤や光安定剤は耐光性を確保するために添加される。UV吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系、サリチル酸系、ベンゾエート系、蓚酸アニリド系、ゾルゲルなどの無機系のUV吸収剤を挙げることができる。またこれらのUV吸収剤を共重合させたものも好適に用いることができる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系に代表される従来公知のものが使用できる。
【0064】
さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内で、各種添加剤を適宜樹脂組成物に添加することができる。添加剤としては、例えば耐熱安定剤、ヒンダードフェノールやリン系の酸化防止剤剤、有機系の滑剤、流動調整剤、シランカップリング剤等の密着性付与剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、KBM303、KBM403、KBM402(製品名、信越シリコーン(株)製)等が用いられる。
【0065】
さらに必要に応じて、シリコン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤;レベリング剤;シリコン系やアクリル系の顔料分散剤;三酸化アンチモン、ブロモ化合物、リン酸エステル、赤リン及びメラミン樹脂をはじめとする含窒素化合物等の難燃剤;シリコーンオイルやシリコンゴム粉末等の応力緩和剤のような従来公知の添加剤類を用いることができる。また広指向性を持たせるために、光を拡散させるための炭酸カルシウム、樹脂ビーズ、球状シリカ等の拡散剤などを含有してもよい。
【0066】
本発明の発光装置の製造方法は、結着剤中にイリジウム錯体を添加し撹拌混合して組成物を得る工程と、イリジウム錯体を含む媒体で窒化ガリウム系化合物半導体を被覆する工程と、イリジウム錯体を含む媒体を固定化する工程からなる。
【0067】
上記結着剤が、例えばエポキシ樹脂の場合は、エポキシ樹脂にイリジウム錯体を添加し撹拌により混合させて組成物を得る工程と、イリジウム錯体を含むエポキシ樹脂で窒化ガリウム系化合物半導体を被覆する工程と、イリジウム錯体を含むエポキシ樹脂を硬化させる工程からなる。
【0068】
エポキシ樹脂にイリジウム錯体を添加し撹拌混合する方法には特に限定はないが、室温で震盪機等を用いて、混合することができる。このとき加温してもよいが、その場合は硬化温度以下で短時間加熱するか、基材樹脂(いわゆる主剤)のみで混合し、その後、硬化剤を加えればよい。
【0069】
得られたイリジウム錯体を含む結着剤は、次工程前に脱気をしておくことが望ましい。脱気の手段に特に限定されないが、例えば、デシケーター内にイリジウム錯体を含む結着剤を入れ、10〜300分減圧状態にすることで脱気できる。
【0070】
結着剤に対するイリジウム錯体の混合、分散または溶解比率は用途によって異なるが、通常0.001〜30質量%が好ましく、0.01〜10質量%がさらに好ましい。
【0071】
固定化は多くの場合、加熱により行えるが、固定化条件は媒体によって異なる。例えば、エポキシ樹脂の場合、硬化条件は通常60〜180℃程度で30〜600分程度、特に80〜150℃で60〜300分程度行うことが好ましい。固定化の雰囲気は大気下でも窒素下でもかまわないが、窒素下で行うことが望ましい。
【0072】
本発明の発光装置はさらに、CVDカーボン、SiO2などでコートすることができる。
本発明で用いられる、イリジウム錯体や媒体を収容する容器、パッケージ、ケースは特に限定されない。例えば、東洋電波(株)製、トップビュー型パッケージ、サイドビュー型パッケージシステムが用いられる。これらの容器、パッケージは事前に、CVDカーボン、SiO2などでコートしておいてもよい。
【0073】
熱可塑性樹脂を使用する場合、樹脂とイリジウム錯体の混合は従来公知の混合装置を用いて行うことができる。混合装置としては、各原料を均一に混合することのできる装置であれば特に限定されない。具体的には、ニーダー、三本ロールミル、二軸ラボプラストミル等が挙げられる。これらの混練機を用いて本発明のイリジウム錯体を分散もしくは溶解させ、押し出し成形、射出成形、プレス機による成形等により目的の波長変換板、波長変換シートが得られる。
【0074】
溶融混練する方法は特に制限されないが、例えばPMMA樹脂のペレットとイリジウム錯体とをあらかじめ簡単に混合したものをミル等で窒素雰囲気下加熱混練してもよく、ミル内で溶融している樹脂中にイリジウム錯体を添加してもよい。
【0075】
溶融の温度は用いる樹脂の軟化点温度によるが、ポリエチレン、ポリプロピレン、PMMA、ポリスチレンでは180℃付近が好ましい。これらの樹脂で220℃を超える温度で溶融混練すると樹脂の着色や、イリジウム錯体の劣化が起こる可能性があり好ましくない。また、溶融混練する時間は当該温度付近で、数秒から1時間以内とすることが好ましい。
【0076】
成形方法としては、混練した樹脂組成物を塊状のまま、または一旦取り出されたペレット状のものを、プレス機により加熱成形して板もしくはシートを得る方法が簡便である。より好ましくは、溶融混練されたものを直接成形する方法である。特に、射出成形や押出成形などの成形方法を採用すれば、複雑な形状への成形が可能となるとともに、溶融混練と成形を連続的に行うことができ、生産効率を高めることができる。
【0077】
また熱硬化性樹脂を用いる場合の混練機としては、同様に適当な撹拌羽根を供える撹拌機、撹拌混練機、ペイントシェーカー、ニーダー、三本ロールミル等が挙げられ、組成物の粘度などを考慮して選定し、本発明のイリジウム錯体を樹脂に分散もしくは溶解させ、所望の厚みに設定した鋳型に注型、加熱硬化することにより得ることができる。
光硬化性樹脂を用いる場合も同様に混練し、光透過性のある注型鋳型に注入したのち、紫外線等の活性エネルギーを照射することにより硬化することができる。
【0078】
樹脂に対するイリジウム錯体の混合、分散または溶解比率は用途によって異なるが、通常0.001〜30質量%が好ましく、0.01〜10質量%がさらに好ましい。
照明装置として利用するには、窒化ガリウム系化合物半導体チップに電極から電圧をかけることによって発生する光を、イリジウム錯体によって色変換してその装置外部に放射させればよい。
必要とする発光色を得るには、イリジウム錯体の種類、混合比及び濃度を調節すればよい。色調の微調整のために着色剤を入れてもよい。着色剤は一般のカラーフィルターに用いられているものと同じ着色剤を用いることができる。
【0079】
本発明に用いられる着色剤としては、染料及び顔料のいずれでもよいが、耐熱性や耐光性の観点から顔料が望ましい。顔料は有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。有機顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレド216、C.I.ピグメントレッド217、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド227、C.I.ピグメントレッド228、C.I.グメントレッド240、C.I.グメントレッド254、C.I.ピグメントレッド48:1等の赤色顔料;C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36等の緑色顔料;C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー64等の青色顔料;C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット30、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントバイオレット40、C.I.ピグメントバイオレット50等のバイオレット顔料;C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー185等の黄色顔料;C.I.ピグメントブラック7等の黒色顔料等が挙げられる。また、無機顔料としては、例えば、カーボン系、チタン系、バリウム系、アルミニウム系、カルシウム系、鉄系、鉛系、コバルト系等の無機顔料が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0080】
照明装置を得るには、一次発光手段及び二次発光手段より生じる光を、その装置外部に放射させればよい。
必要とする発光色を得るには、二次発光手段であるイリジウム錯体の種類、混合比及び濃度を調節すればよい。
【0081】
本発明の発光体を表示装置のバックライトとして用いる場合には、一次発光手段の発光面上に二次発光手段を所望の光源色となるように形成してランプを構成し、必要な光量に応じてそのランプを配置すればよい。あるいは、一次発光手段と二次発光手段を空間的に分離し、前者から発する光が後者を照射するよう両者を配置したり、導光体により前者から後者へ光を導いてもよい。この場合、二次発光手段は、一次発光の光源から発した光が入射できるように、透明体上に形成することが好ましく、また一次発光の光が二次発光手段内のイリジウム錯体を均一に照射するためには、その錯体を前記透明体上に層状に形成することが好ましい。
【0082】
また、二次発光手段を3原色からなる画素として形成することにより、自発光型ディスプレイを構成することもできる。すなわち、透明基板上に、赤、緑、青の発光をするイリジウム錯体をストライプ状またはマトリクス状に塗りわけて画素を形成する。一次発光手段と二次発光手段の間に、画素単位で制御可能な光バルブを配置し、その光バルブの開閉によって、所望の画素をオン・オフすることにより、画像を形成する。上記光バルブとしては液晶パネル、デジタルミラーデバイスなどが挙げられる。また、一次発光手段として青色発光ダイオードを用いる場合には、青色発光体は設けず、これに相当する塗りわけ部分は透明として、光源の光をそのまま通すこともできる。
【0083】
次に面状発光体についてより具体的に説明する。
近年、発光ダイオード素子は発光効率が著しく向上し、照明への応用が進んでいる。特に、液晶ディスプレイ用のバックライト光源として発光ダイオードを用いた場合、良好な色再現性と高速応答性が実現でき、高品位な画質を達成することが期待されている。バックライト光源は通常、個別のパッケージに収納された発光ダイオード素子を線状に配列して導光体の端面を照らすことにより、光を導光体内に導入している。そして導光体の一方の面に設けた拡散反射板により他の一方の面に光を放出することにより、面状発光体を形成している(月刊ディスプレイ,Vol.9,No.4,33頁,(株)テクノタイムズ社,2003年発行)参照)。
【0084】
また、直下型方式バックライトにおいては、平面状の反射板上に発光ダイオード素子を二次元的に配列し、その上に光を均一にするための拡散板等を置き、面状発光体を形成している(LCD用フロント・バックライトの新展開,東レリサーチセンター(株),2002年発行参照)。
【0085】
本発明の発光体も、このような面状発光体に適用することが出来る。すなわち、本発明の面状発光体は、複数の一次発光手段、一次発光手段より発せられる光により発光する二次発光手段、導光板、反射板及び拡散板を含み、前記二次発光手段がイリジウム化合物を含む。一次発光手段としては上述したような発光ダイオードを用いることが好ましい。
【0086】
本発明に係る面状発光体を構成する部材としては、発光ダイオードからなる一次発光手段、一次発光手段より発せられる光により発光する二次発光手段、導光板、反射板及び拡散板(光散乱板)を挙げることができる。
【0087】
本発明の面状発光体に使用する発光ダイオード素子は、面状発光体の用途に応じて選択すればよいが、液晶ディスプレイのバックライト光源は良好な白色を発現できるものが好ましい。バックライト光源の好ましい具体例としては、近年開発された青色LEDと従来の赤及び緑のLEDを組み合わせたもの、青色LEDとその青色LEDの発光によって励起され青色LEDの補色を発光するフォトルミネッセント材料(二次発光手段)とを組み合わせたもの、紫外LEDと、赤、緑及び青に発光するフォトルミネッセント材料(二次発光手段)を組み合わせたものが挙げられる。このようなフォトルミネッセント材料としては、(YaGd1-a3(Alb,Ga1-b512:Ce(YAG蛍光体)、Y22S:Eu3+、(ZnS:Cu,Al)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu2+等の無機蛍光体、クマリン、ローダミン等の有機蛍光体、イリジウム錯体燐光体等が挙げられる。
【0088】
バックライト光源として特に好ましいのは、青色LEDとその青色LEDの発光によって励起されて赤および緑に発光するフォトルミネッセント材料(二次発光手段)を組合わせたものである。この方式によれば単一のLEDを制御するだけで白色を良好に発現でき、かつ青色光を使用しているため構成部材の紫外線劣化がない。組合わせるフォトルミネッセント材料の具体例としては、前記した式(E1)〜(E32)に示すイリジウム錯体化合物が挙げることができる。
【0089】
本発明において、フォトルミネッセント材料(二次発光手段)は、単体で使用しても、後記の結着材に分散または溶解した状態で使用してもよい。フォトルミネッセント材料(二次発光手段)は、LED光源より発せられた光が照射される位置であれば構成部材のどの部分に設けてもよいが、好ましくは、結着材と共にLED素子表面にコーティングするか、あるいは拡散板光放出面上に塗布・印刷等の方法によって形成するか、あるいは拡散板の内部に混合、溶解もしくは分散することが好ましい。
【0090】
結着材は、上記錯体を溶解または分散できるものであればよく、一般に熱硬化性樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、透明性が高く接着性等の実用特性に優れる観点から透明エポキシ樹脂が好ましい。
【0091】
透明エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−5,5−スピロ(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ樹脂を、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物等の酸無水物で硬化させるものが挙げられる。これらのエポキシ樹脂及び硬化剤は単独で用いても、複数のものを組み合わせてもよい。
【0092】
導光板としては、ガラス、またはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどの透明性樹脂が好ましく、特に好ましいのはアクリル樹脂、ポリカーボネートである。
【0093】
反射板としては、アルミニウム、鏡面仕上げやアルマイト処理を施したアルミニウム、白色に塗装されたアルミニウム、銀蒸着PETフィルム、白色フィルムとしては白色PETフィルム、白色ポリプロピレンフィルム、白色ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。白色PETフィルムの例として、東レ(株)製の、ルミラー60L、ルミラー60V、ルミラー60SL、ルミラー60SV、三井化学(株)製のPPリフレクタ−、古河電工(株)製のエムシーペット等が挙げられる。また、これら白色フィルムは金属等の支持体に貼り合せたものでもよい。
【0094】
拡散板としては、透明性樹脂内に透明性樹脂とは屈折率の異なる材料を混合または分散させたもの、透明性樹脂板またはフィルムの片面または両面に、透明性樹脂とは屈折率の異なる材料を塗布したものが挙げられる。透明性樹脂と屈折率の異なる材料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスなどの無機微粒子、あるいはスチレン樹脂、アクリル樹脂などの有機微粒子等が好ましく、特に有機微粒子が好ましい。
【0095】
このような面状発光体においては、面状発光体を構成する部材の全ての接触面が、実質的に空気層が介在しないよう密着した状態で接合し一体化させることが好ましい。これにより、平面光源にするまでの過程での光の損失を低減することができ、よって消費電力を抑えることができる。
【0096】
具体的には、発光ダイオードを光源とするバックライトにおいて、発光ダイオード素子の発光表面から光が、一旦空気層に出た後、導光体または拡散板に入射する構造とすると、空気の屈折率が小さいために、発光面と空気の界面において光の反射が生じ、発光ダイオードから光を高効率で取り出すことができない。また、導光体の上に拡散板を置いて光を散乱させることが通常行われているが、この拡散板を単に導光体に載置するか接触して置くだけだと、両者の密着が十分でなく、両者の間に空気層が存在し、ここでも導光体側での反射により、導光体からの光の取り出し効率を低下させる。
【0097】
発光ダイオード素子の発光面から面状発光体の発光表面に至るまでの経路にあるすべての構成部品を密着させて接合することにより一体化させることにより光利用効率を著しく向上させることができる。
【0098】
このような構成とした面状発光体は、光利用効率に優れているのでバックライト光源として有用である。また、発光素子を収納する凹部の形状を、そこに充填する接着剤の屈折率に合わせて制御することにより、より均一な輝度を有する面状発光体を得ることができる。
【0099】
本発明の面状発光体の構成部材の接合は、通常は構成部材を接着剤によって一体化するが、構成部材が熱可塑性樹脂の場合は熱圧着によって接合してもよい。
【0100】
接着剤としては、屈折率が1.2以上のものが好ましく、1.4以上の透明樹脂がさらに好ましい。接着剤の具体例としては、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤が挙げられる。
【0101】
また、反射板にアルミニウム板等の金属板を用い、導光板にアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いる場合は、金属板を加熱することにより導光板に熱圧着させることができる。また、散乱板は導光板上に、アクリル樹脂やスチレン樹脂からなる有機微粒子をアクリル樹脂やポリカーボネートに分散または溶解して得た塗料を印刷またはスピンコートによって形成することによって導光板と接合してもよい。
【0102】
発光ダイオードを導光板に接合する方法としては、導光板に光を入射させる端面に、発光ダイオードを収容する凹部を設け、そこに設置し、上記した接着剤にて封入する方法が挙げられる。さらに、ここで封入に用いる接着剤の屈折率を導光板の屈折率よりも大きくすると、導光板への光の入射効率を大きくできるので好ましい。さらに好ましくは、凹部の導光体に光を入射する導光板底面の平行断面形状を凸形状とすると、入射角が小さい場合においても全反射が起こりにくく、かつ輝度むらも小さくなるので好ましい。
この場合において、接着剤にイリジウム化合物を溶解又は分散し、それを二次発光手段とすることが好ましい。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、x、y色度座標、輝度、演色評価数、発光効率は分光放射輝度計(コニカミノルタ製CS1000A)を用いて測定した。
【0104】
実施例1:
二次発光手段としてイリジウム錯体(E2)9mgと錯体(E17)1mgをビスフェノールAジグリシジルエーテル5gとメチルヘキサヒドロ無水フタル酸5gの混合物に加えたものを用い、上記材料を混合後、脱泡させた。得られた混合物を一次発光手段である青色発光ダイオードを配置したリードフレームのカップの凹部にディスペンサーを用いて注入し、120℃で1時間硬化した。さらに砲弾型の型枠であるキャスティング内にビスフェノールAジグリシジルエーテルとメチルヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物を予め注入し、上記リードフレームを浸漬させ、120℃で1時間硬化し、砲弾型白色LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光効率及び100時間通電後の発光効率低下を測定した。その結果を表1に示す。また、得られた白色LEDの発光スペクトルを図1に示し、青色発光ダイオードと青色ダイオードによって励起された緑と赤のイリジウム錯体の発光の色度座標を図2に示す。なお、図2の実線(三角形)は従来の冷陰極管を使用した液晶ディスプレイの色再現範囲を示す。
【0105】
実施例2:
イリジウム錯体として、錯体(E1)8.9mg及び錯体(E16)1.1mgを用いた以外は実施例1と同様にして砲弾型LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光効率及び100時間通電後の発光効率低下を測定した。その結果を表1に示す。
【0106】
実施例3:
イリジウム錯体として、錯体(E3)9.1mg及び錯体(E18)0.9mgを用いた以外は実施例1と同様にして砲弾型LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光効率及び100時間通電後の発光効率低下を測定した。その結果を表1に示す。
【0107】
実施例4:
イリジウム錯体として、錯体(E4)12mg及び錯体(E17)1mgを用いた以外は実施例1と同様にして砲弾型LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光効率及び100時間通電後の発光効率低下を測定した。その結果を表1に示す。
【0108】
実施例5:
イリジウム錯体として、錯体(E9)10mg及び錯体(E16)1mgを用いた以外は実施例1と同様にして砲弾型LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光効率及び100時間通電後の発光効率低下を測定した。その結果を表1に示す。
【0109】
実施例6:
イリジウム錯体として、錯体(E2)8.8mg及び錯体(E19)1.2mgを用いた以外は実施例1と同様にして砲弾型LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光効率及び100時間通電後の発光効率低下を測定した。その結果を表1に示す。
【0110】
実施例7:
イリジウム錯体として、錯体(E2)9mg及び錯体(E15)1mgを用いた以外は実施例1と同様にして砲弾型LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光効率及び100時間通電後の発光効率低下を測定した。その結果を表1に示す。
【0111】
実施例8:
イリジウム錯体として、錯体(E7)9mg及び錯体(E16)1mgを用いた以外は実施例1と同様にして砲弾型LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光効率及び100時間通電後の発光効率低下を測定した。その結果を表1に示す。
【0112】
実施例9:
イリジウム錯体として、錯体(E11)10mg及び錯体(E17)1mgを用いた以外は実施例1と同様にして砲弾型LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光効率及び100時間通電後の発光効率低下を測定した。その結果を表1に示す。
【0113】
実施例10:
イリジウム錯体として、錯体(E8)14mg及び錯体(E13)1.5mgを用いた以外は実施例1と同様にして砲弾型LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光効率及び100時間通電後の発光効率低下を測定した。その結果を表1に示す。
【0114】
比較例1:
イリジウム錯体に代えて、緑色蛍光色素HFG−4(林原生物化学研究所製)4mg及び赤色蛍光色素HFR−4(林原生物化学研究所製蛍光色素)0.4mgを用いた以外は実施例1と同様にして砲弾型LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光効率及び100時間通電後の発光効率低下を測定した。その結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
実施例11
イリジウム錯体(E2)1gとイリジウム錯体(E17)100mgを透明エポキシ樹脂(サンユレック製)50gに混合したのち、脱泡した。次いでこれを、高さ150mm、外径45mm、内径40mmのアクリル樹脂製の円筒形容器の内面及び直径45mm、厚さ5mmのアクリル樹脂製円板の一方の面に約0.1mmの厚さでワイヤバーにより塗布したのち、70℃で6時間処理して硬化させた。次いで、円板が円筒容器の底部を形成するように円板を円筒に接着した。このようにして二次発光手段を得た。一次発光手段として、全長145mm、最大径50mmの紫外線ランプ(東芝製ネオボール5ブラックライト)を用い、上記の二次発光手段内にこのランプの発光部を収容し、最大径の箇所と接触する部分をエポキシ樹脂にて接合した。
得られた照明用光源の演色評価数は90、初期発光効率は36lm/W、100時間通電後の発光効率の低下は1%以下であった。
【0117】
実施例12
イリジウム錯体を溶解させるエポキシ樹脂として日本ペルノックス社製ME561の主剤2.0g、硬化剤2.0gを混合した。これにイリジウム錯体(E2)を20.0mg添加しSHIBATA社製TEST TUBE MIXERにて30分振動混合させた。減圧脱泡後、離型フィルム付きガラス2枚を3mmの隙間を設けて上述の樹脂組成物を流し込み、120℃で1時間硬化させた。得られた樹脂硬化物を3mm×3mm×3mmに切断し、460nm、6.8mWの青色LED(クリー社製XT12)の上部に固定し、緑色ランプを作製した。このランプの輝度を測定したところ、27.4lm/W、色度座表は(x=0.354,y=0.607)であった。
【0118】
実施例13
イリジウム錯体を溶解させるエポキシ樹脂として日本ペルノックス社製ME561の主剤2.0g、硬化剤2.0gを混合した。これにイリジウム錯体(E2)を2.64mg及びイリジウム錯体(E17)を0.36mg添加しSHIBATA社製TEST TUBE MIXERにて30分振動混合させた。減圧脱泡後、離型フィルム付きガラス2枚を3mmの隙間を設けて上述の樹脂組成物を流し込み、120℃で1時間硬化させた。得られた樹脂硬化物を3mm×3mm×3mmに切断し、460nm、6.8mWの青色LED(クリー社製XT)の上部に固定し、白色ランプを作製した。このランプの輝度を測定したところ、23.4lm/W、色度座表は(x=0.315,y=0.340)であった。
【0119】
実施例14
PMMA(クラレ社製パラペットGH−100S)40gにイリジウム錯体(E2)を82mg、光安定剤三共社製サノールLS770を80mg、チバスペシャリティーケミカルズ社製酸化防止剤イルガノックス1010を80mgを窒素雰囲気下にて二軸ラボプラストミルで180℃、5分溶融混練した。
続いてこの樹脂組成物をプレス機にて180℃、4.9×106kPaで1mmのシートを作製した。得られたシートを3mm×3mm×1mmに切断し、460nm、6.9mWの青色LED(クリー社製XT)の上部に固定し、薄緑色ランプを作製した。このランプの輝度を測定したところ、32.76lm/W、色度座表は(x=0.262,y=0.485)であった。
【0120】
実施例15
実施例14のPMMA40gの代わりに分子量25万のポリスチレンを用いた以外は全く同様の操作を行い、1mmのシートを作製した。得られたシートを3mm×3mm×1mmに切断し、460nm、6.9mWの青色LED(クリー社製XT)の上部に固定し輝度を測定したところ、33.36lm/W、色度座表は(x=0.293,y=0.590)であった。
【0121】
実施例16:
イリジウム錯体(E2)8.2mgとイリジウム錯体(E17)1.8mgと日本ペルノックス社製ME561(A液B液あわせて)15gを混合後、脱泡させ、液状樹脂1を得た。
この液状樹脂1を、青色発光ダイオード(クリー社製XT)を配置したトップビュー型パケージの凹部にディスペンサーを用いて注入し、120℃で2時間、さらに150℃で2時間硬化させ、白色LEDを作製した。得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光量及び30mAを500時間通電後の発光量低下を測定したところ、色度座標(x、y)は(0.33,0.34)、演色評価数は90、初期発光量5.1mW、通電後の発光量は4.4mWであった。
【0122】
実施例17:
イリジウム錯体を溶解させるエポキシ樹脂として、サンユレック社製EL438(A液B液あわせて)を混合後、脱泡させ、液状樹脂2を調製した。
また、イリジウム錯体(E2)8.2mgとイリジウム錯体(E17)1.8mgをサンユレック社製EL438(A液B液あわせて)を混合後、脱泡させ、液状樹脂3を調製した。
(1) 1層目;液状樹脂2を青色発光ダイオード(クリー社製XT)を配置したトップビュー型パケージの凹部にディスペンサーを用いて注入し、120℃で2時間、さらに150℃で2時間硬化させた。
(2) 2層目;この上に液状樹脂3をディスペンサーを用いて注入し、120℃で2時間、さらに150℃で2時間硬化させた。
(3) 3層目;この上に液状樹脂2をディスペンサーを用いて注入し、120℃で2時間、さらに150℃で2時間硬化させ、白色LEDを作製した。
得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光量及び30mAを500時間通電後の発光量低下を測定したところ、色度座標(x、y)は(0.33,0.34)、演色評価数は90、初期発光量5.1mW、通電後の発光量は4.9mWであった。
【0123】
実施例18:
実施例17で用いた液状樹脂2と3を用い、2層目まで実施例17と同様に製造した。
2層コートしたトップビュー型パッケージをANELVA製PED350により、CVDカーボンコートし、白色LEDを作製した。CVDカーボンコートの成膜条件は次のとおりである。
CH4ガス流量 100sccm、
成膜圧力 6Pa、
バイアス電力 150W,
成膜時間 10分、
成膜温度 室温
得られた白色LEDのx、y色度座標、演色評価数、初期発光量及び30mAを500時間通電後の発光量低下を測定したところ、色度座標(x、y)は(0.33,0.33)、演色評価数は89、初期発光量4.7mW、通電後の発光量は4.6mWであった。
【0124】
実施例19:
実施例1と同様のイリジウム錯体混合物を、携帯電話ディスプレイ用バックライト導光板(吉川化成製)の、光を入射させる端面に塗布したのち、120℃で1時間硬化させて、厚さ10μmのイリジウム錯体層を形成することにより、二次発光体を得た。主発光波長460nmを有する表面実装型発光ダイオード(日亜化学NSCB215)4個を一次発光手段として用い、常法によって導光板端面に設置し発光させた。
以下、図3(バックライトユニット(1))を参照しながら説明する。
発光ダイオード(LED(2))の光はイリジウム錯体層(5)によって色変換されて白色となって、導光板(3)に入射した。導光板上に厚さ100μmの光拡散層(4)(帝人化成パンライト)を形成して、バックライトユニットとした。ユニット表面における輝度は9000cd/m2であった。また、演色評価数は92であった。得られたバックライトユニットの模式断面図(実施例19の断面図)を図3に示す。
【0125】
実施例20:
以下、図4を参照しながら説明する。
カラー発光体基板の作製;
対角2.2インチ、厚さ0.7mmのガラス基板(19)上に、ブラックマトリクスの材料としてV259BK(新日鉄化学社製)をスピンコートし、QVGA相当の格子状のパターンになるようなフォトマスクを介して紫外線露光し、2%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、200℃でベークし、ブラックマトリクス(18)(膜厚1.5μm)のパターンを形成した。
緑色変換膜の材料として、イリジウム錯体(E2)0.5gを、アクリル系ネガ型フォトレジスト(V259PA、固形分濃度50%;新日鐵化学社製)100gに溶解させたインキを調製した。このインキを上記ガラス基板上にスピンコートし、ブラックマトリクス(18)に位置あわせして紫外線露光し、2%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、150℃でベークして、緑色発光イリジウム錯体(17)を含む緑色変換蛍光体膜(膜厚10μm)を形成した。
次に、赤色変換膜の材料として、イリジウム錯体(E17)50mgをアクリル系ネガ型フォトレジスト(V259PA、固形分濃度50%;新日鐵化学社製)100gに溶解させたインキを調製した。前記と同様にして赤色発光イリジウム錯体(16)を含む赤色変換膜(膜厚10μm)を形成し、カラー発光体基板を得た。
対向電極の作製;
カラー発光体基板と同一の断面形状で厚さが200μmのガラス基板(20)の一方の面上に透明電極を形成し、もう一方の面上に偏光フィルム(偏光板(13))を貼付した。この偏光フィルムが貼付された面とカラー発光体基板の、発光体が形成された面を接着によって貼り合せ一体化して、対向電極基板を得た。
液晶パネルの作製;
対角2.2インチ、QVGA相当の画素電極を有するアモルファスシリコンTFTパネル(TFT基板(14))と上記対向電極を組み合わせて、常法により液晶パネルを製作した。これと実施例2で用いたと同様の表面実装型青色発光ダイオード(クリー社製XT12)(青色LED(11))及び導光板(12)からなるバックライトユニットを組み合わせることにより、フォトルミネッセント方式液晶表示装置を製作した。製作したフォトルミネッセント方式液晶表示装置の模式断面図(実施例20の断面図)を図4に示す。
得られた表示装置の演色評価数は92であった。また、発光面が観測者側から見て液晶(15)層よりも手前にあるため、画像の視野角依存性が全くなかった。さらにLED光源が青色であるため、1万時間の駆動させた後、導光板や液晶材料には紫外線劣化による変色や光の透過率の低下は全く生じなかった。
【0126】
実施例21:
導光板端面ではなく、拡散層上面に実施例1と同様のイリジウム錯体混合物を、厚さ10μmで塗る以外は、実施例19とまったく同様バックライトユニットを製作した。拡散層に入射した光は、拡散層上面のイリジウム錯体層により白色に色変換されて、拡散光として射出した。ユニット表面における輝度は9000cd/m2であった。また、演色評価数は92であった。
このバックライトユニットを用いて対角2.2インチのQVGA液晶表示装置を製作した。得られた表示装置に全面白色、緑、青及び赤を表示したときの明るさを表2に示す。
比較用として上記と同じポリアクリレート樹脂を使って同じ形状の導光板をつくり、主発光波長460nmで発光出力4.6mWの素子を使って発光波長570nmの黄色蛍光体を封止エポキシ樹脂に混ぜ込んで表面実装型白色LEDを作った。この白色LED4個を透明導光板端面に配置して、上記と同じ対角2.2インチのQVGA液晶表示装置を試作した。
【0127】
【表2】

【0128】
拡散層の全面が均一に発光するので、光の利用効率が高くなり、比較例よりも輝度が向上した。また、比較用装置の白色LEDはバックライトとして使った場合、緑と赤を再現よく出すのは困難である。
【0129】
実施例22:
イリジウム錯体(E2)9mgとイリジウム錯体(E17)1mgをビスフェノールAジグリシジルエーテル5gとメチルヘキサヒドロ無水フタル酸5gの混合物に加え、混合後脱泡した。
これをトルエン20gに溶解し、ドクターブレードを使って液晶表示装置の入射光の面にある偏向フィルムの表面に塗布した。乾燥後の厚さは10μmであった。
導光板は無色透明のポリメチルメタクリレート(クラレ製)を使い、主発光波長460nmで発光出力4.6mWの表面実装型の発光ダイオード(豊田合成社製E1S25−AB1F7−03)4個をこの導光板端面に設置して発光させた。全面白色、緑、青及び赤を表示したときの明るさを測定した、その結果を表3に示す。
【0130】
【表3】

【0131】
実施例23:
図7に構成を示すように、マウント基板(42)上に発光波長470nm、発光出力4.6mWのInGaN発光ダイオードチップ(41)を設置し、これを金属電極(43)と電気的に接続して、発光ダイオード素子(44)を作製した。
【0132】
また、図5に構成を示すように、バックライトユニットの導光板(22)として4cm×5cm×0.8cmの透明アクリル樹脂板(屈折率1.5)を用い、短辺側の端面に溝加工を行い、4個の方形の凹部(25)を等間隔(但し、両末端は凹部間隔の2分の1)に形成した。
次いで、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネットとセリウムの混合体)蛍光体500mgをエポキシ樹脂(屈折率1.6、サンユレック(株)製EL438)5gに分散し、上記4個の凹部に発光素子の体積分を残して流し込んだ。
【0133】
次に、予めフレキシブル基板(26)の電極上に電極が接触するように導電性樹脂接着剤で接着した発光ダイオード素子(21)4個を設置した。
次いで、温度120℃で4時間熱処理し、樹脂を硬化させ蛍光体層を形成した。このとき同時に、蛍光体層が導光板(22)に接合され、一体化した光源ユニットを得た。
【0134】
次いで、光源ユニットの底面にアルマイト板(24)をエポキシ接着剤(屈折率1.6)によって接合した。さらに、導光板の光放出面上に光散乱板(23)(帝人化成(株)製パンライトシート)をアクリル系接着剤(屈折率1.5)により接合し、図5に示すような一体化された面状発光体を作製した。
【0135】
得られた面状発光体の4個のLEDに3.27V、20mAの通電を行い点灯した。このときの面状発光体の中心の表面輝度は520cd/m2であった。また、表示エリアを縦、横それぞれ3等分した9区画に分割して、その中央部の輝度を測定した結果、輝度むら(最大値と最小値の差を、9点の平均値で除したもの)は23%であった。
【0136】
実施例24:
YAGの替わりに式(E2)のIr錯体化合物8.5mgと式(E17)のIr錯体化合物1.5mgを用いてエポキシ樹脂10gに分散した以外は、実施例23と同様に凹部に等量(5mg)投入後、120℃で4時間熱処理して樹脂を硬化した。以降は、実施例23と同様にして面状発光体を得た。また、実施例23と同様の条件で輝度の測定を行った。その結果、得られた面発光体の中心の表面輝度は510cd/m2であった。また、輝度むらは26%であった。
【0137】
実施例25:
凹部の導光板に光を入射させる端面の断面形状が凸レンズ状のものを使用した以外は実施例23と同様にして面状発光体を製作し、同様の条件で輝度の測定を行った。得られた面発光体の中心の表面輝度は480cd/m2であった。また、輝度むらは20%であった。
【0138】
参考例1:
実施例23と同様の発光ダイオードチップをサイドビュータイプの表面実装型パッケージに設置し、実施例23と同様のYAG蛍光体とエポキシ樹脂の混合物で封止して発光ダイオード素子(31)を得た。この素子4個を実施例23と同じ大きさで凹部がない導光板(32)の端面に圧着して設置し、光源ユニット(30)を得た。光源ユニットを実施例23と同様アルマイト反射板(34)上に置き、さらに導光板(32)の反対側の面上に光散乱板(33)(帝人化成(株)製パンライトシート)を載置して組み立て、図6に示すような面状発光体を作製した。実施例23と同様の条件で輝度の測定を行った結果、得られた面状発光体の中心の表面輝度は410cd/m2であった。また、輝度むらは58%であった。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明による発光体の発光スペクトルを示す。
【図2】本発明の発光体の色度座標を示す。三角形の実線は従来の冷陰極管を使用した液晶ディスプレイの色再現範囲を示す。
【図3】本発明によるバックライトユニット(実施例19)の模式断面図を示す。
【図4】本発明によるフォトルミネッセント方式液晶表示装置(実施例20)の模式断面図を示す。
【図5】実施例23で調製したバックライトユニットの模式断面図である。
【図6】参考例1で調製したバックライトユニットの模式断面図である。
【図7】実施例23〜25で用いたチップ型発光ダイオード素子の模式断面図である。
【符号の説明】
【0140】
1 バックライトユニット
2 LED
3 導光板
4 拡散層
5 イリジウム錯体層
11 青色LED
12 導光板
13 偏光板
14 TFT基板
15 液晶
16 赤色発光イリジウム錯体
17 緑色発行イリジウム錯体
18 ブラックマトリクス
19 ガラス基板
20 ガラス基板
21,31,44 発光ダイオード素子
22,32 導光板
23,33 光散乱板
24,34 アルマイト反射板
25 凹部
26,35 フレキシブル基板
30 面状発光体
41 発光ダイオードチップ
42 マウント基板
43 金属電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次発光手段と、一次発光手段より発せられる光により発光する二次発光手段とを含み、前記二次発光手段がイリジウム化合物を含むことを特徴とする発光体。
【請求項2】
イリジウム化合物が、式(1)
【化1】

(式中、L1、L2及びL3はイリジウムに配位している二座の有機配位子であり、これらのうち少なくとも一つは窒素原子と炭素原子で配位している。)
で示されるイリジウム錯体である請求項1に記載の発光体。
【請求項3】
イリジウム錯体が式(2)
【化2】

(式中、Xはイリジウムに結合した炭素原子及び窒素原子と共に芳香族キレート配位子を形成する原子団を表し、nは2または3の整数であり、それぞれの芳香族キレート配位子における複数のXは同一でも異なっていてもよく、Lは炭素以外の原子がイリジウムに結合した二座の有機配位子を表す。)
で示される請求項2に記載の発光体。
【請求項4】
式(2)中の[ ]内が、下記式(3)
【化3】

(式中、破線はその部分でイリジウムに結合することを表し、芳香環の各水素原子は、ハロゲン原子または炭素数1〜15の有機基に置換されていてもよく、nが複数の場合は、それぞれの配位子は異なっていてもよい。)
で示される構造式群から選ばれる配位子のいずれかである請求項3に記載の発光体。
【請求項5】
イリジウム錯体が、式(4)
【化4】

(式中、R1〜R8は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜15の有機基を表し、隣り合う置換基(R1〜R8)同士は互いに1か所以上で結合して縮合環を形成していてもよく、nは2または3の整数であり、[ ]内で示される2つまたは3つの配位子はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Lは炭素原子以外の原子がイリジウムに結合した二座の有機配位子を表す。)
で示される請求項3記載の発光体。
【請求項6】
イリジウム錯体が、式(5)
【化5】

(式中、R11〜R18は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
または式(6)
【化6】

(式中、R21〜R29は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で示される請求項3記載の発光体。
【請求項7】
二座の有機配位子Lが、下記式(7)
【化7】

(式中、破線はその部分でイリジウムに結合することを表し、それぞれの配位子における炭素原子は炭素数1〜15の有機基で置換されていてもよい。)で示される構造式群から選ばれるいずれかの配位子である請求項3〜5のいずれか1項に記載の発光体。
【請求項8】
二次発光手段が、透明基板上または一次発光手段の発光面上にイリジウム錯体を層状に形成してなる請求項1に記載の発光体。
【請求項9】
透明基板上または一次発光手段の発光面上の二次発光手段が、複数の層により形成されてなる請求項8に記載の発光体。
【請求項10】
二次発光手段が、透明基板または発光面上に設けたイリジウム錯体を含む組成物層、及びその層上に設けたイリジウム錯体を含まない組成物層からなる請求項9に記載の発光体。
【請求項11】
二次発光手段が、透明基板または発光面上に設けたイリジウム錯体を含まない組成物層、その層上に設けたイリジウム錯体を含む組成物層、及びその層上に設けたイリジウム錯体を含まない組成物層からなる請求項9に記載の発光体。
【請求項12】
イリジウム錯体を含む組成物層の上に設けたイリジウム錯体を含まない組成物層がCVDカーボンコート層である請求項11に記載の発光体。
【請求項13】
イリジウム錯体が、請求項7に記載の式(7)で示される二座の有機配位子Lを有するイリジウム錯体である請求項8に記載の発光体。
【請求項14】
イリジウム錯体が、下記式(E1)〜(E32)
【化8】

【化9】

【化10】

で示されるイリジウム錯体群から選ばれる1または2以上のイリジウム錯体である請求項8に記載の発光体。
【請求項15】
二次発光手段が、結着剤中にイリジウム錯体を溶解または分散させたものであって、前記二次発光手段を一次発光手段の発光面を覆うように載置したものである請求項1に記載の発光体。
【請求項16】
一次発光手段が350〜530nmの波長の光を発するものである請求項1に記載の発光体。
【請求項17】
一次発光手段が青色発光ダイオードである請求項16に記載の発光体。
【請求項18】
一次発光手段が窒化ガリウム系化合物半導体である請求項17に記載の発光体。
【請求項19】
一次発光手段から発生した光の光路に、イリジウム錯体を溶解または分散させた結着剤を含む二次発光手段を配置し、白色の光を取り出す構造を有する請求項1に記載の発光体。
【請求項20】
一次発光手段から発生した光の光路に、510〜570nmに発光ピークを有するイリジウム錯体と600〜680nmに発光ピークを有するイリジウム錯体との少なくとも2種を溶解または分散させた結着剤を含む二次発光手段を配置してなる請求項19に記載の発光体。
【請求項21】
演色評価数が80以上である請求項1〜20のいずれか1項に記載の発光体。
【請求項22】
一次発光手段が、350〜530nmの波長の光を発する発光ダイオードであり、演色評価数が90以上の白色の光を取り出す請求項20に記載の発光体。
【請求項23】
結着剤を導光板または散乱板として使用する請求項19または20に記載の発光体。
【請求項24】
一次発光手段からの光を受ける透明基板上に、塗布、スピンコートまたは印刷のいずれかの方法によりイリジウム化合物を含む二次発光手段を形成することを特徴とする請求項8に記載の発光体の製造方法。
【請求項25】
一次発光手段の発光面上に、滴下後硬化、印刷封止、ディスペンサー方式、トランスファー成形、射出成形またはスピンコートのいずれかの方法によりイリジウム化合物を含む二次発光手段を形成することを特徴とする請求項8に記載の発光体の製造方法。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の発光体を用いた照明装置。
【請求項27】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の発光体を用いた表示装置。
【請求項28】
発光体をバックライトとして用いた請求項27に記載の表示装置。
【請求項29】
発光体を透明基板の一方の面上に形成して二次発光手段とし、さらに前記発光体上、または前記発光体が形成されたのとは反対側の面上に透明電極を形成し、これを透過型液晶表示装置の一方の電極として用いる請求項27または28に記載の表示装置。
【請求項30】
複数の一次発光手段、一次発光手段より発せられる光により発光する二次発光手段、導光板、反射板及び拡散板を含み、前記二次発光手段がイリジウム化合物を含むことを特徴とする面状発光体。
【請求項31】
前記面状発光体を構成する部材の全ての接触面が、実質的に空気層が介在しないよう密着した状態で接合され一体化している請求項30に記載の面状発光体。
【請求項32】
接合が接着剤または熱圧着により行われている請求項31記載の面状発光体。
【請求項33】
接着剤が、屈折率が1.4以上であるエポキシ樹脂またはアクリル樹脂である請求項32記載の面状発光体。
【請求項34】
複数の一次発光手段と導光板とを接合するための接着剤中にイリジウム化合物を溶解または分散することにより二次発光手段が形成されている請求項32記載の面状発光体。
【請求項35】
導光板の端部に形成された複数の凹部に一次発光手段が設置されている請求項30記載の面状発光体。
【請求項36】
凹部の導光板に光を入射させる端面の断面形状が凸形状であり、凹部の封入に用いる接着剤の屈折率が導光板の屈折率より大きい請求項35記載の面状発光体。
【請求項37】
反射板が、アルミニウム、白色塗装アルミニウム、銀蒸着フィルムまたは白色フィルムである請求項30記載の面状発光体。
【請求項38】
一次発光手段が発光ダイオードである請求項30に記載の面状発光体。
【請求項39】
請求項30〜38のいずれか1項に記載の面状発光体を用いた液晶バックライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−16196(P2007−16196A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250866(P2005−250866)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】