説明

発光層の形成方法および有機発光デバイス

【課題】 均一な膜厚の発光層を所望のパターンで形成する方法と、高品質な表示が可能で信頼性が高い有機発光デバイスを提供する。
【解決手段】 表面張力が35dyne/cm以上である樹脂フィルムを表面層として備えるブランケットと、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5〜200cPの範囲であり、溶媒の表面張力が40dyne/cm以下で、かつ、沸点が150〜250℃の範囲である発光層用インキとを使用し、発光層用インキをグラビア版のセルに充填させ、このセルからブランケットに発光層用インキを受理させた後、前記ブランケット上の発光層用インキを発光層被形成面に転移させて発光層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光デバイスを構成する発光層をグラビアオフセット印刷法により形成する方法と有機発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機のエレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機発光素子)は、自発光により視認性が高いこと、液晶ディスプレーと異なり全固体ディスプレーであること、温度変化の影響をあまり受けないこと、視野角が大きいこと等の利点をもっており、近年、フルカラー表示装置、エリアカラー表示装置、照明等の有機発光デバイスとして実用化が進んでいる。
有機発光素子には、発光層を構成する有機発光材料が低分子タイプのものと高分子タイプのものとがあり、例えば、高分子タイプの発光層は、有機発光材料を含有する発光層用インキを使用して種々の印刷方式、あるいはインクジェット方式により製造することができる。
このような例として、粘度が100〜60000cPでチキソトロピー性の有機発光材料含有インキを用いて、凹版からシリコンブランケットに受理させ、その後、枚葉の基板に転移させるオフセット印刷方式により発光層を形成する方法がある(特許文献1)。
【0003】
また、水分溶解度が5重量%以下の溶媒に有機発光材料を含有させたインキを用い、凹版からブランケットに受理させ、その後、基板に転移させるオフセット印刷方式により発光層を形成する方法がある(特許文献2)。
また、有機発光材料を含有するインキをグラビアロールを介してシリコンブランケット表面に供給して塗布膜を形成し、この塗布膜に凸版を押圧し、押圧部位の塗布膜を除去し、その後、シリコンブランケット表面に残った塗布膜を被形成面に転写して発光層を形成する方法がある(特許文献3)。
【0004】
さらに、有機発光材料を含有するインキと、このインキに用いる溶剤に浸漬したときの体積変化率が40%以下であるシリコーンエラストマーからなるブランケットとを使用し、インキを凹版の凹部からブランケットに転移させ、さらに、基板上に転写させる凹版オフセット印刷方式により発光層を形成する方法がある(特許文献4)。
また、従来の有機発光デバイスとして、アノードを形成した基板上に所望のパターンで絶縁層を設け、絶縁層が形成されていない領域(発光表示領域)の電極パターン上に発光層を含む発光素子層を形成し、この発光素子層と接触するように絶縁層上にカソードを所望のパターンで形成したフルカラー、あるいはエリアカラーの表示装置が開発されている(特許文献5)。
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−291587号公報
【特許文献3】特開2004−178915号公報
【特許文献4】特開2003−308973号公報
【特許文献5】特開2004−111158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような従来の発光層の形成方法では、比較的高粘度のインキを使用するので、ドクターブレードによる凹版の凹部へのインキ充填に際し、掻き残しや厚みムラが生じやすく、均一な厚みの発光層形成が困難であった。また、シリコンブランケットにインキが浸透し易く、このため形成された発光層の表面が粗くなるとともに、シリコンブランケットの耐刷力が低下するという問題があった。
【0006】
一方、有機発光材料を含有するインキをスピンコート法で基板上に塗布、乾燥することにより、均一な厚みの発光層を形成することができる。しかし、スピンコート法は、所望のパターン形状で発光層を形成するには、フォトリソグラフィー法との組み合わせが必要であり工程が複雑となり、また、発光層形成用のインキの使用効率が低いという問題があった。これに対して、インクジェット方式では、パターン形状での発光層形成が容易であるが、吐出されたインキの流動性や表面張力等の制御が不十分であると、均一な厚みの発光層を形成することが困難であった。
【0007】
さらに、従来のフルカラー、あるいはエリアカラーの表示装置としての有機発光デバイスは、上述のような発光層の厚みムラにより、表示品質の向上に限界があった。また、絶縁層が形成されていない領域(発光表示領域)内に発光素子層の形成不良部位が存在すると、アノードとカソードとの短絡が生じ、信頼性が著しく低下するという問題があった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、均一な膜厚の発光層を所望のパターンで形成する方法と、高品質な表示が可能で信頼性が高い有機発光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明は、対向する電極と、該電極間に配設され少なくとも発光層を有する発光素子層と、を備えた有機発光デバイスの発光層形成方法において、少なくとも有機発光材料を含有する発光層用インキをグラビア版のセルに充填させ、該セルからブランケットに発光層用インキを受理させた後、前記ブランケット上の発光層用インキを発光層被形成面に転移する工程を有し、前記ブランケットは表面張力が35dyne/cm以上である樹脂フィルムを表面層として備えるものであり、前記発光層用インキはせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5〜200cPの範囲であり、前記発光層用インキに用いる溶媒は表面張力が40dyne/cm以下で、かつ、沸点が150〜250℃の範囲であるような構成とした。
【0009】
本発明の他の態様として、前記樹脂フィルムの厚みは、5〜200μmの範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケットは、ブランケット胴の周面に前記樹脂フィルムを一体的に備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケットは、グラビア版から発光層用インキを受理する位置と発光層用インキを発光層被形成面に転移する位置とを少なくとも含む範囲において、回転するブランケット胴に巻き付く状態で前記樹脂フィルムが搬送されるものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケット胴は、表面にクッション層を備えるような構成とした。
【0010】
本発明の他の態様として、前記発光層用インキにおける前記有機発光材料の含有量は、1.5〜4.0重量%の範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記グラビア版のセルは、最大開口長が20〜200μmの範囲であり、深さが10〜200μmの範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記グラビア版は、複数のセルによって1つのエリアカラー用の絵柄が構成されるものであり、1つの絵柄幅を200μm以上とするような構成とした。
本発明の他の態様として、複数組のグラビア版とブランケットを用いて発光色が異なる複数の発光層を連続して形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、グラビア版を軸方向に複数に区画し、各区画毎に任意の発光層用インキを供給して、発光色が異なる複数の発光層を同時に形成するような構成とした。
【0011】
本発明の有機発光デバイスは、透明基材と、該透明基材上に所望のパターンで形成された透明電極層と、前記透明基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記透明電極層を被覆するとともに前記開口部の周縁の前記絶縁層に乗り上げるように形成され少なくとも発光層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、上述のいずれかの発光層形成方法により形成されたものであるような構成とした。
【0012】
また、本発明の有機発光デバイスは、基材と、該基材上に所望のパターンで形成された電極層と、前記基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記電極層を被覆するとともに前記開口部の周縁の前記絶縁層に乗り上げるように形成され少なくとも発光層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された透明電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、上述のいずれかの発光層形成方法により形成されたものであるような構成とした。
【0013】
本発明の他の態様として、前記発光素子層を構成する前記発光層のうち、前記開口部内に位置する部位の厚み変動が10%以下であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記発光素子層は少なくとも正孔注入層/発光層/電子注入層がこの順に積層されたものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、パッシブマトリックス型であるような構成とした。
本発明の他の態様として、アクティブマトリックス型であるような構成とした。
本発明の他の態様として、最大開口幅が10mm以上の前記開口部を前記絶縁層に備えた有機発光ポスターであるような構成とした。
本発明の他の態様として、カラーフィルタ層を備えるような構成とした。
【0014】
本発明の他の態様として、前記カラーフィルタ層と前記透明電極との間に色変換蛍光体層を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記発光素子層は、白色を含む所望の色の発光であるか、あるいは所望の複数の色の発光が所定のパターンで組み合わされたものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記発光素子層は、青色発光であり、前記色変換蛍光体層は青色光を緑色蛍光に変換して発光する緑色変換層と、青色光を赤色蛍光に変換して発光する赤色変換層とを備えているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記正孔注入層用の塗膜を形成した後1分以内に前記発光層用の塗膜を形成し、これら2層を100〜200℃の範囲で同時に一括乾燥して形成した正孔注入層と発光層とを備えるような構成とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発光層の形成方法は、発光層を均一な厚みで形成することができ、また、各発光色毎の発光層を所望のパターンで形成することができ、さらに、樹脂フィルム基材のような可撓性を有する基材への発光層形成も可能であるとともに、ブランケットの耐刷力が極めて高く、有機発光デバイスの製造コスト低減も可能である。
また、本発明の有機発光デバイスは、開口部の周縁の絶縁層に乗り上げるように発光素子層が形成されているので、発光素子層を介して対向する位置に存在する電極間の短絡を生じることがなく信頼性が高いとともに、発光素子層の発光層が本発明の方法で製造されているので、発光層の厚みが均一であり高品質の表示が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
[発光層の形成方法]
図1は、本発明の発光層の形成方法を説明するための図である。図1において、印刷ユニット1を構成するインキパン9内の発光層用インキ15は、回転するグラビア版2の表面に供給され、ドクターブレード10で不要な発光層用インキ15が掻き取られ、セル3内にのみ発光層用インキ15が供給される。このセル3内の発光層用インキ15は、ブランケット4に受理され、その後、圧胴8上を搬送されている基材11の発光層被形成面11Aに転移される。この基材11は、乾燥ゾーン13に送られ、発光層用インキ15が乾燥されて発光層20が形成される。
【0017】
本発明では、ブランケット4として、表面張力が35dyne/cm以上、好ましくは35〜65dyne/cmの範囲である樹脂フィルム5を、ブランケット胴6の表面に表面層として備えるものを使用する。また、発光層用インキ15として、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5〜200cP、好ましくは20〜150cPの範囲であり、使用している溶媒の表面張力が40dyne/cm以下、好ましくは20〜37dyne/cmの範囲であり、かつ、沸点が150〜250℃、好ましくは170〜230℃の範囲であるインキを使用する。
【0018】
ブランケット4の表面層を構成する樹脂フィルム5の表面張力が35dyne/cm未満であると、グラビア版2からのインキ受理性が低下し、厚みが均一な発光層20の形成が困難となる。尚、樹脂フィルム5の表面張力(固体の表面張力[γs])の測定は、2種以上の表面張力が判っている液体(標準物質)を使用して、自動接触角計(協和界面科学(株)製 DropMaster 700型)にて接触角θを測定し、γs(固体の表面張力)=γL(液体の表面張力)cosθ+γSL(固体と液体の表面張力)の式に基づいて求める。
【0019】
使用する樹脂フィルム5としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、易接着タイプのポリエチレンテレフタレートフィルム、コロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、コロナ処理を施したポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、易接着タイプのポリエチレンナフタレートフィルム、ポリノルボルネンフィルム、メラミン焼付けポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂フィルムを挙げることができる。樹脂フィルム5の厚みは、例えば、5〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲とすることができる。樹脂フィルム5の厚みが5μm未満であると、フィルム加工性、ブランケット胴6への装着性が低下して好ましくない。また、樹脂フィルム5の厚みが200μmを超えると、硬度が高くなりすぎ、柔軟性が低下して好ましくない。
【0020】
尚、図示例では、ブランケット胴6は、表面層である樹脂フィルム5の下層としてクッション層6aを備えている。このクッション層6aの硬度は、例えば、20〜80°の範囲とすることができ、厚みは、例えば、0.1〜30mmの範囲とすることができる。尚、上記の硬度は、JIS(K6253)デュロメータ硬さ試験によるTypeA硬度である。
【0021】
また、図1に示される例では、樹脂フィルム5は、ブランケット胴6に一体的に装着されたものであるが、図2に示されるように、ブランケット胴6に巻き付くように樹脂フィルム5がブランケット胴6の回転とともに搬送されるようにしてもよい。この場合、グラビア版2から発光層用インキ15を受理する位置(矢印aで示される位置)と、発光層用インキ15を発光層被形成面11Aに転移する位置(矢印bで示される位置)と、を少なくとも含む範囲において、ブランケット胴6に樹脂フィルム5を巻き付かせる必要がある。このような樹脂フィルム5は、図示しない供給ロールからブランケット胴6上に搬送供給され、図示しない巻上げローラに巻き上げられるようにすることができる。また、樹脂フィルム5をエンドレスフィルムの形状とし、図示していないローラとブランケット胴6との間の無限軌道上を搬送するようにしてもよい。
【0022】
また、本発明では、グラビア版を板状としてもよく、図3は、このような実施形態の例を示す図である。図3に示される例では、まず、板状のグラビア版2′の表面に発光層用インキ15を供給し、図示しないドクターブレードで不要な発光層用インキ15を掻き取ることによりセル3′内にのみ発光層用インキ15を供給する。次いで、このセル3′内の発光層用インキ15は、ブランケット4に受理され、その後、板状の基材11の発光層被形成面11Aに転移され、乾燥されて発光層が形成される。また、圧胴8上を搬送されている基材11の発光層被形成面11Aに発光層用インキ15を転移して乾燥して発光層を形成してもよい。
【0023】
上記の発光層用インキ15のせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5cP未満であると、インキダレが生じたり、所望の厚みの発光層の形成が困難となる。一方、200cPを超えると、グラビア版2のセル目による凹凸大きくなり、均一な厚みの発光層の形成が困難となる。尚、上記の粘度測定は、Physica社製の粘弾性測定装置MCR301型により、測定温度23℃で定常流測定モードにより行うものとする。また、発光層用インキ15は、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)V1と、せん断速度1000/秒における粘度(インキ温度23℃)V2との比(V1/V2)が0.9〜1.5程度となり、ほぼニュートン流動を示すことが好ましい。
【0024】
また、発光層用インキ15に使用している溶媒の表面張力が40dyne/cmを超えると、グラビア版2からの発光層用インキ15の受理性が低下して好ましくない。さらに、発光層用インキ15の溶媒の沸点が150℃未満であると、ブランケット4を構成する樹脂フィルム5から基材11の発光層被形成面11Aに転移された発光層用インキ15が直ちに乾燥して、発光層20にスジが発生し易くなる。また、250℃を超えると、乾燥が困難となり、乾燥ゾーン13での乾燥による基材11等への影響が生じたり、溶剤の残留を生じることがあり好ましくない。尚、溶媒の表面張力の測定は、協和界面科学(株)製の表面張力計CBVP−Z型により、液温20℃で行うものとする。
【0025】
発光層用インキ15に用いる有機発光材料としては、例えば、下記のような色素系、金属錯体系、高分子系のものを挙げることができる。
(1)色素系発光材料
シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
【0026】
(2)金属錯体系発光材料
アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属にAl、Zn、Be等、または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体が挙げられる。
【0027】
(3)高分子系発光材料
ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。
発光層用インキ15における上述のような有機発光材料の含有量は、例えば、1.5〜4.0重量%の範囲で設定することができる。
【0028】
また、発光層用インキ15に用いる溶媒としては、表面張力が上記の範囲(40dyne/cm以下)を満足し、かつ、沸点が上記の範囲(150〜250℃)を満足するもの、例えば、クメン、アニソール、n−プロピルベンゼン、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、リモネン、p−シメン、o−ジクロロベンゼン、ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、安息香酸メチル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、アミルベンゼン、テトラリン、安息香酸エチル、フェニルヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸ブチル等を単独で使用することができる。また、混合溶媒を使用する場合には、混合比に応じた割合で計算した表面張力と沸点が上記の範囲を満足するものを使用する。例えば、表面張力がAdyne/cm、沸点がB℃の溶媒1と、表面張力がCdyne/cm、沸点がD℃の溶媒2とを3:7の重量比で混合した混合溶媒の場合、混合比に応じた割合で計算した表面張力[(A×3/10)+(C×7/10)]が上記の範囲(40dyne/cm以下)を満足し、かつ、混合比に応じた割合で計算した沸点[(B×3/10)+(D×7/10)]が上記の範囲(150〜250℃)を満足することが必要となる。したがって、混合溶媒を構成する個々の溶媒は、表面張力と沸点が上記の範囲から外れるものであってもよい。
【0029】
本発明の発光層の形成方法では、グラビア版2のセル3の最大開口長が20〜200μm、好ましくは30〜170μmの範囲であり、深さが10〜200μm、好ましくは15〜150μmの範囲とすることが望ましい。セル3の最大開口長が20μm未満であると、所望の厚みの発光層の形成が困難であり、200μmを超えると、ドクターブレード10による不要なインキ掻き取りが不十分となる。
また、本発明の発光層の形成方法では、グラビア版2に形成するセルを、複数のセルによって1つのエリアカラー用の絵柄が構成されるようにしてもよい。図4は、このような例を示すものであり、複数(図示例では15個)のセル3により絵柄(鎖線で示す形状)が構成される。この場合、1つの絵柄幅Wは200μm以上、好ましくは300μm以上とすることができる。尚、絵柄幅Wは、グラビア版2の回転方向(図4に矢印aで示した方向)に直交する方向の最小幅である。絵柄幅Wが200μm未満であると、絵柄のエッジ付近の厚み変動が10%以上となり好ましくない。
【0030】
また、本発明の発光層の形成方法では、複数組のグラビア版とブランケットを用いて発光色が異なる複数の発光層を連続して形成してもよい。図5は、このような例を示すものであり、赤発光層形成用のグラビア版2Rと、ブランケット4、圧胴8を備えたユニット1R、緑発光層形成用のグラビア版2Gと、ブランケット4、圧胴8を備えたユニット1G、青発光層形成用のグラビア版2Bと、ブランケット4、圧胴8を備えたユニット1Bとを備えている。各ユニット1R,1G,1Bは、上述の印刷ユニット1と同様であり、各ユニット1R,1G,1Bのインキパン9には、対応する赤色発光層用インキ15R、緑色発光層用インキ15G、青色発光層用インキ15Bが供給されている。そして、基材11の発光層被形成面11A側に対して、ユニット1R,1G,1Bの順で連続して赤色発光層用インキ15R、緑色発光層用インキ15G、青色発光層用インキ15Bを転移させ、その後、乾燥することにより、赤色発光層20R、緑色発光層20G、青色発光層20Bを形成することができる。尚、各発光層の形成パターン等は任意に設定することができ、形成順序は上記の順に限定されるものではない。
【0031】
また、本発明の発光層の形成方法では、グラビア版2を軸方向に複数に区画し、各区画毎に任意の発光層用インキを供給して、発光色が異なる複数の発光層を同時に形成してもよい。図6は、このような例を説明するための図面であり、グラビア版2を軸方向(矢印b方向)に3つ(2G,2R,2B)に区画し、各区画にはエリアカラー用の絵柄を形成するための複数のセル3が形成されている。そして、緑色発光層用インキ15G、赤色発光層用インキ15R、青色発光層用インキ15Bを、それぞれ、区画2G,2R,2Bに供給(例えば、ディスペンサー方式)し、上述のように、基材11の発光層被形成面11A側に対して、赤色発光層用インキ15R、緑色発光層用インキ15G、青色発光層用インキ15Bを同時に転移させ、その後、乾燥することにより、エリアカラー絵柄である赤色発光層20R、緑色発光層20G、青色発光層20Bを形成することができる。尚、絵柄のパターン、寸法、位置関係等は任意に設定することができる。
尚、上述の実施形態におけるブランケット4は、グラビア版2と圧胴8の回転方向に対し順方向回転であるが、形成する発光層のパターンに応じて、逆方向回転としてもよい。また、基材11は枚葉であってもよく、グラビア版2への発光層用インキ15の供給は、インキパン9を使用せずにディスペンサー等を用いてもよい。
【0032】
[有機発光デバイス]
図7は、本発明の有機発光デバイスの一実施形態を示す部分断面斜視図である。図7において、有機発光デバイス31は、透明基材32と、この透明基材32上に矢印a方向に延設さられた帯状パターンの複数の透明電極層33と、ストライプ形状の開口部35を有する絶縁層34と、各透明電極層33上に位置するストライプ形状の開口部35内の透明電極層33を被覆するように配設された発光素子層36と、この発光素子層36上に透明電極層33と直交するように矢印b方向に延設された帯状パターンの複数の電極層40とを備えている。
上記の絶縁層34の開口部35は、矢印a方向に沿ったストライプ形状の開口部であり、各透明電極層33上に位置している。
【0033】
また、発光素子層36は、絶縁層34と各開口部35内の透明電極層33とを被覆するように配設された正孔注入層37と、開口部35内の透明電極層33(正孔注入層37)を被覆するとともに開口部35の周縁の絶縁層34に乗り上げるように各開口部35毎に配設された複数の発光層38と、これらを被覆するように配設された電子注入層39と、からなる。図示例では、発光層38は、帯状パターンの赤色発光層38R、緑色発光層38G、青色発光層38Bが、この順に繰り返し配列されている。尚、電子注入層39は、絶縁層34を覆うように形成されているが、電極層40の下層となる領域のみに形成されたものであってもよい。
【0034】
このような有機発光デバイス31は、帯状パターンの透明電極層33と電極層40とが交差する部位が発光領域となるパッシブマトリックス型であり、発光素子層36の発光層38は、本発明の発光層の形成方法により形成されたものである。そして、有機発光デバイス31は、開口部35の周縁の絶縁層34に乗り上げるように発光素子層36が形成されているので、発光素子層36を挟持する位置に存在する透明電極層33と電極層40との短絡を生じることがなく信頼性が高いものである。また、発光素子層36の発光層38が本発明の製造方法で製造されたものであり、その厚み変動は10%以下で厚みが均一であるため、高品質の表示が可能である。尚、発光層38の厚み変動は、[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)で計算される。また、発光層38の厚みの測定は、セイコーインスツルメンツ(株)製のNanopics 1000を使用し、この装置標準のコンタクトモード用カンチレバーを用いて、測定エリア100μm、スキャンスピード90sec/frameで行う。
【0035】
次に、本発明の有機発光デバイス31の各構成部材について説明する。
有機発光デバイス31を構成する透明基材32は、通常、観察者側の表面に設けられ、発光層38からの光を観察者が容易に視認することができる程度の透明性を有するものである。尚、後述するように、発光層38からの光を取り出す方向を反対方向とする場合には、透明基板32に替えて不透明な基板を使用してもよい。
透明基板32(これに替わる不透明な基板も含む)としては、ガラス材料、樹脂材料、または、これらの複合材料からなるもの、例えば、ガラス板に保護プラスチックフィルムもしくは保護プラスチック層を設けたもの等が用いられる。
【0036】
上記の樹脂材料、保護プラスチック材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。この他の樹脂材料であっても、有機発光デバイス用として使用できる高分子材料であれば、使用可能である。
透明基板32の厚さは、通常、50μm〜1.1mm程度である。
【0037】
このような透明基板32においては、その用途にもよるが、水蒸気や酸素等のガスバリアー性の良好なものであれば更に好ましい。また、透明基板32に、水蒸気や酸素等のガスバリアー層を形成してもよい。このようなガスバリアー層としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機酸化物をスパッタリング法や真空蒸着法等の物理蒸着法により形成したものであってよい。
また、有機発光デバイス31を構成する透明電極層33は、図示例では陽極であり、発光層38に正電荷(正孔)を注入するために、正孔注入層37に隣接して配設されている。尚、透明電極層33は陰極であってもよく、この場合、発光素子層36を構成する正孔注入層37と電子注入層39とが入れ替わって配設される。
【0038】
透明電極層33は、通常の有機発光デバイスに使用されるものであれば特に限定されず、金属、合金、これらの混合物等を使用することができ、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化第二錫、または金等の薄膜電極材料を挙げることができる。中でも、正孔が注入し易いように、仕事関数の大きい(4eV以上)透明、または半透明材料であるITO、IZO、酸化インジウム、金が好ましい。
透明電極層33は、シート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、材質にもよるが、透明電極層33の厚みは、例えば、0.005〜1μm程度とすることができる。
この透明電極層33は、周辺の端子部から中央の画素領域まで所望のパターン形状で配設されている。このようなパターン形状の透明電極層33は、スパッタリング法や真空蒸着法等によりメタルマスクを用いてパターン形状、または、全面に成膜した後、感光性レジストをマスクとしてエッチングすることにより形成される。
【0039】
有機発光デバイス31を構成する絶縁層34は、各透明電極層33上に位置するストライプ形状の開口部35を有している。この絶縁層34は、例えば、透明電極層33を覆うように全面に感光性樹脂材料を塗布し、パターン露光、現像を行って形成したり、熱硬化性樹脂材料を用いて形成することができ、この絶縁層34が形成された部分は非発光部となる。絶縁層34の厚みは、絶縁層34を構成する樹脂固有の絶縁抵抗に応じて適宜設定できるが、例えば、0.05〜5.0μm程度とすることができる。また、上述の樹脂材料にカーボンブラックや、チタン窒化物、チタン酸化物、チタン酸窒化物等のチタン系黒色顔料の1種、あるいは2種以上の遮光性微粒子を混合することにより、ブラックマトリックスを形成して絶縁層34としてもよい。
尚、このような絶縁層34の形状は、上述の形状に限定されるものではない。
【0040】
有機発光デバイス31を構成する発光素子層36は、図示例では、透明電極層33側から正孔注入層37、発光層38、および電子注入層39が積層された構造であるが、発光層38単独からなる構造、正孔注入層37と発光層38とからなる構造、発光層38と電子注入層39とからなる構造、さらに、正孔注入層37と発光層38との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層38と電子注入層39との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
また、発光波長を調整したり、発光効率を向上させる等の目的で、上記の各層に適当な材料をドーピングすることもできる。
【0041】
発光素子層36の発光層38は、図示例では、赤色発光層38R、緑色発光層38G、青色発光層38Bからなっているが、有機発光デバイスの使用目的等に応じて、所望の発光色(例えば、黄色、水色、オレンジ色)である発光層を単独で、また、赤色発光、緑色発光、青色発光以外の他の複数の発光色の所望の組み合わせ等、いずれであってもよい。
発光素子層36の発光層38に用いる有機発光材料は、上述の本発明の発光層の形成方法で挙げた有機発光材料を使用することができる。
【0042】
発光素子層36の各層に用いるドーピング材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子注入材料等は、下記に例示するような無機材料、有機材料いずれでもよい。発光素子層36の各層の厚みは特に制限はなく、例えば、10〜1000nm程度とすることができる。
(ドーピング材料)
ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポリフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等が挙げられる。
【0043】
(正孔輸送材料)
オキサジアゾール系、オキサゾール系、トリアゾール系、チアゾール系、トリフェニルメタン系、スチリル系、ピラゾリン系、ヒドラゾン系、芳香族アミン系、カルバゾール系、ポリビニルカルバゾール系、スチルベン系、エナミン系、アジン系、トリフェニルアミン系、ブタジエン系、多環芳香族化合物系、スチルベン二量体等が挙げられる。
また、π共役系高分子として、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(P−フェニレン)、ポリ(P−フェニレンスルフィド)、ポリ(P−フェニレンオキシド)、ポリ(1,6−ヘプタジエン)、ポリ(P−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレン)、ポリ(2,5−ピロール)、ポリ(m−フェニレンスルフィド)、ポリ(4,4′−ビフェニレン)等が挙げられる。
【0044】
また、電荷移動高分子錯体として、ポリスチレン・AgC104、ポリビニルナフタレン・TCNE、ポリビニルナフタレン・P−CA、ポリビニルナフタレン・DDQ、ポリビニルメシチレン・TCNE、ポリナフタアセチレン・TCNE、ポリビニルアントラセン・Br2、ポリビニルアントラセン・I2、ポリビニルアントラセン・TNB、ポリジメチルアミノスチレン・CA、ポリビニルイミダゾール・CQ、ポリ−P−フェニレン・I2、ポリ−1−ビニルピリジン・I2、ポリ−4−ビニルピリジン・I2、ポリ−P−1−フェニレン・I2、ポリビニルピリジウム・TCNQ等が挙げられ、さらに、電荷移動低分子錯体として、TCNQ−TTF等が、高分子金属錯体としては、ポリ銅フタロシアニン等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、イオン化ポテンシャルの小さい材料が好ましく、特に、ブタジエン系、エナミン系、ヒドラゾン系、トリフェニルアミン系が好ましい。
【0045】
(正孔注入材料)
フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー等の誘電性高分子オリゴマー等、を挙げることができる。
【0046】
さらに、正孔注入材料として、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物を挙げることもできる。上記のポリフィリン化合物としては、ポリフィン、1,10,15,20−テトラフェニル−21H、23H−ポリフィン銅(II)、アルミニウムフタロシアニンクロリド、銅オクタメチルフタロシアニン等を挙げることができる。また、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−[4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、4,4′,4″−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン等を挙げることができる。
【0047】
(電子注入材料)
カルシウム、バリウム、アルミリチウム、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、上記のオキサジアゾール環の酸素原子をイオウ原子に置換したチアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有したキノキサリン誘導体、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ジスチリルピラジン誘導体等を挙げることができる。
【0048】
発光素子層36を構成する各層の形成は、発光層38については、上述の本発明の発光層の形成方法により形成する。
また、正孔注入層37、電子注入層39は、画像表示領域に相当する開口部を備えたフォトマスク(周辺部の透明電極層33からなる電極端子への成膜を防止するためのマスク)を介して真空蒸着法等により成膜して形成することができる。また、スクリーン印刷法等の印刷方法により正孔注入層37、電子注入層39を形成することもできる。
【0049】
また、正孔注入層37と発光層38の形成を、正孔注入層用の塗膜を形成した後1分以内に発光層用の塗膜を形成し、これら2層を100〜200℃の範囲で同時に一括乾燥して形成することにより行うこともできる。この場合、正孔注入層用の塗膜は、上述の本発明の発光層形成方法と同様の方法により、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5〜200cPの範囲であり、用いる溶媒は表面張力が40dyne/cm以下で、かつ、沸点が150〜250℃の範囲である正孔注入層用インキを使用して形成することもできる。
【0050】
有機発光デバイス31を構成する電極層40は、図示例では陰極であり、発光層38に負電荷(電子)を注入するために、電子注入層39に隣接して配設されている。尚、電極層40は陽極であってもよく、この場合、発光素子層36を構成する正孔注入層37と電子注入層39とが入れ替わって配設される。
このような電極層40の材料としては、通常の有機発光デバイスに使用されるものであれば特に限定されず、上述の透明電極層33と同様に、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化第二錫、または金等の薄膜電極材料、さらに、マグネシウム合金(例えば、MgAg等)、アルミニウムまたはその合金(AlLi、AlCa、AlMg等)、銀等を挙げることができる。中でも、電子が注入し易いように仕事関数の小さい(4eV以下)マグネシウム合金、アルミニウム、銀等が好ましい。このような電極層40はシート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、このため、電極層40の厚みは、例えば、0.005〜0.5μm程度とすることができる。
上記の電極層40は、上述の電極材料を用いてマスクを介したスパッタリング法や真空蒸着法等の方法によりパターン形状に成膜して形成することができる。
【0051】
本発明の有機発光デバイスは、例えば、上述の有機発光デバイス31において、電極層40を透明な電極層とすることにより、光を取り出す方向を反対方向とした有機発光デバイスが可能である。この場合、基材32は透明でなくてもよく、また、透明電極層33は不透明な電極層であってもよい。
また、本発明の有機発光デバイスは、アクティブマトリックス型であってもよい。図8および図9は、アクティブマトリックス型の本発明の有機発光デバイスの一例を説明するための図である。図8は電極配線パターンを示す図であり、透明基材(図示せず)上に形成された電極配線パターン53は、信号線53A、走査線53B、TFT(薄膜トランジスタ)53C、透明電極(画素電極)層53Dからなる。また、これらの電極配線パターン53を被覆するように絶縁層54(図8で斜線を付した部位)が形成されており、この絶縁層54は、各透明電極層53D上に位置する開口部55を備えている。また、絶縁層54には、各開口部55内の透明電極層53Dを被覆するように発光素子層(図示せず)が形成され、この発光素子層上に電極(共通電極)層(図示せず)が配設される。
【0052】
上記の発光素子層は、絶縁層54と各開口部55内の透明電極層53Dとを被覆するように配設された正孔注入層と、開口部55内の透明電極層53D(正孔注入層)を被覆するとともに開口部55の周縁の絶縁層54に乗り上げるように各開口部55毎に配設された複数の発光層と、これらを被覆するように配設された電子注入層と、から構成することができる。図9は、絶縁層54の開口部55と発光層との関係を示す図である。図9では、発光層は、開口部55よりも大きい所望のパターン形状の赤色発光層58R、緑色発光層58G、青色発光層58Bからなっている。
【0053】
このようなアクティブマトリックス型の本発明の有機発光デバイスも、発光層(赤色発光層58R、緑色発光層58G、青色発光層58B)は、本発明の発光層の形成方法により形成されたものである。そして、開口部55の周縁の絶縁層54に乗り上げるように発光素子層が形成されているので、発光素子層を挟持する位置に存在する透明電極層53Dと電極層(図示せず)との短絡を生じることがなく信頼性が高いものである。また、発光素子層の発光層(赤色発光層58R、緑色発光層58G、青色発光層58B)が本発明の製造方法で製造されたものであり、その厚み変動は10%以下とすることができ、厚みが均一であり高品質の表示が可能である。
尚、上記の発光素子層は、上述の実施形態と同様に、発光層単独からなる構造、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0054】
図10は、本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分斜視図であり、図11は図10に示される有機発光デバイスのA−A線における断面図である。図10および図11において、有機発光デバイス61は、透明基材62と、この透明基材62上に長方形状に形成された透明電極層63と、ひし形開口部65aと長方形状開口部65bとを有する絶縁層64と、各開口部65a、65b内の透明電極層63を被覆するように配設された発光素子層66と、この発光素子層66を被覆するように形成された電極層70とを備えている。
上記の発光素子層66は、積層配設された正孔注入層67、発光層68、電子注入層69からなっており、各開口部65a、65bの周縁の絶縁層64に乗り上げるように形成されている。
【0055】
このような有機発光デバイス61は、各開口部65a、65bが存在する部位が表示領域となるエリアカラー表示であり、発光素子層66の発光層68は、本発明の発光層の形成方法により形成されたものである。この有機発光デバイス61では、開口部65a、65bの周縁の絶縁層64に乗り上げるように発光素子層66が形成されているので、発光素子層66を挟持する位置に存在する透明電極層63と電極層70との短絡を生じることがなく信頼性が高いものである。また、発光素子層66の発光層68が本発明の形成方法で製造されたものであり、その厚み変動は10%以下とすることができ、厚みが均一であり高品質の表示が可能である。
【0056】
尚、発光層68は、各開口部65a、65bの周縁の絶縁層64に乗り上げる程度の大きさとしてもよく、また、この場合、各開口部65a、65bに位置する各発光層の発光色が異なるものであってもよく、さらに、各開口部65a、65b上に配設される電極層70を電気的に独立したものとして、各発光層毎に発光できるようにしてもよい。
また、上記の発光素子層66は、上述の実施形態と同様に、発光層単独からなる構造、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層を設けた構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0057】
本発明の有機発光デバイスは、上述の実施形態に限定されるものではない。
図12は、本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。図12に示される有機発光デバイス71は、透明基材72と、この透明基材72上に設けられた帯状パターンの赤色着色層73R、緑色着色層73G、青色着色層73Bからなるカラーフィルタ層73と、このようなカラーフィルタ層73を覆うように配設された透明平滑化層75と、この透明平滑化層75上に、上述の実施形態の有機発光デバイス31と同様に形成された帯状パターンの複数の透明電極層33と、各透明電極層33上にストライプ形状の開口部35が位置するように配設された絶縁層34と、各開口部35内の透明電極層33を被覆するように配設された発光素子層36と、この発光素子層36上に透明電極層33と直交するように延設された帯状パターンの複数の電極層40とを備えている。
【0058】
上記の帯状パターンの複数の透明電極層33は、帯状パターンの赤色着色層73R、緑色着色層73G、青色着色層73B上に位置するものである。また、発光素子層36は、絶縁層34と各開口部35内の透明電極層33とを被覆するように配設された正孔注入層37と、開口部35内の透明電極層33(正孔注入層37)を被覆するとともに開口部35の周縁の絶縁層34に乗り上げるように各開口部35毎に配設された複数の発光層38と、これらを被覆するように配設された電子注入層39と、からなる。図示例では、発光層38は、帯状パターンの白色発光層である。
【0059】
このような有機発光デバイス71は、カラーフィルタ層73と透明平滑化層75とを備え、発光層38が白色発光層である点を除いて、上述の有機発光デバイス31と同様である。したがって、同様の部材には、同じ部材番号を付し、ここでの説明は省略する。尚、上記の発光素子層36は、上述の実施形態と同様に、発光層単独からなる構造、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0060】
上記のカラーフィルタ層73は、発光素子層36からの光を色補正したり、色純度を高めるものである。カラーフィルタ層73を構成する赤色着色層73R、緑色着色層73G、青色着色層73Bは、発光素子層36の発光特性に応じて適宜材料を選択することができ、例えば、顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂、反応性化合物および溶媒を含有する顔料分散組成物で形成することができる。このようなカラーフィルタ層73の厚みは、各着色層の材料、有機EL素子層の発光特性等に応じて適宜設定することができ、例えば、1〜3μm程度の範囲で設定することができる。
【0061】
また、透明平滑化層75は、カラーフィルタ層73以下の構成により段差(表面凹凸)が存在する場合に、この段差を解消して平坦化を図り、発光素子層36の厚みムラ発生を防止する平坦化作用をなす。このような透明平滑化層75は、透明(可視光透過率50%以上)樹脂により形成することができる。具体的には、アクリレート系、メタクリレート系の反応性ビニル基を有する光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂を使用することができる。また、透明樹脂として、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等を使用することができる。
このような透明平滑化層75の厚みは、使用する材料を考慮し、平坦化作用が発現できる範囲で設定することができ、例えば、1〜5μm程度の範囲で適宜設定することができる。
【0062】
また、図13は、本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。図13に示される有機発光デバイス81は、透明基材82と、この透明基材82上に設けられた帯状パターンの赤色着色層83R、緑色着色層83R、青色着色層83Bからなるカラーフィルタ層83と、このようなカラーフィルタ層83の赤色着色層83R、緑色着色層83R、青色着色層83Bを覆うように帯状パターンの赤色変換蛍光体層84R(青色光を赤色蛍光に変換する層)、緑色変換蛍光体層84G(青色光を緑色蛍光に変換する層)、青色変換ダミー層84B(青色光をそのまま透過する層)からなる色変換蛍光体層84が設けられ、さらに、これらを覆うように配設された透明平滑化層85と、この透明平滑化層85上に、上述の実施形態の有機発光デバイス31と同様に形成された帯状パターンの複数の透明電極層33と、各透明電極層33上にストライプ形状の開口部35が位置するように配設された絶縁層34と、各開口部35内の透明電極層33を被覆するように配設された発光素子層36と、この発光素子層36上に透明電極層33と直交するように延設された帯状パターンの複数の電極層40とを備えている。
【0063】
上記の帯状パターンの複数の透明電極層33は、帯状パターンの赤色変換蛍光体層84R、緑色変換蛍光体層84G、青色変換ダミー層84B上に位置するものである。また、発光素子層36は、絶縁層34と各開口部35内の透明電極層33とを被覆するように配設された正孔注入層37と、開口部35内の透明電極層33(正孔注入層37)を被覆するとともに開口部35の周縁の絶縁層34に乗り上げるように各開口部35毎に配設された複数の発光層38と、これらを被覆するように配設された電子注入層39と、からなる。図示例では、発光層38は、帯状パターンの青色発光層である。
【0064】
このような有機発光デバイス81は、カラーフィルタ層83と色変換蛍光体層84と透明平滑化層85とを備え、発光層38が青色発光層である点を除いて、上述の有機発光デバイス31と同様である。したがって、同様の部材には、同じ部材番号を付し、ここでの説明は省略する。また、カラーフィルタ層83、透明平滑化層85は、上述のカラーフィルタ層73、透明平滑化層75と同様であり、ここでの説明は省略する。尚、上記の発光素子層36は、上述の実施形態と同様に、発光層単独からなる構造、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0065】
上記の赤色変換蛍光体層84Rおよび緑色変換蛍光体層84Gは、蛍光色素単体からなる層、あるいは、樹脂中に蛍光色素を含有した層である。青色発光を赤色蛍光に変換する赤色変換蛍光体層84Rに使用する蛍光色素としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン等のシアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル]−ピリジウム−パークロレート等のピリジン色素、ローダミンB、ローダミン6G等のローダミン系色素、オキサジン系色素等が挙げられる。また、青色発光を緑色蛍光に変換する緑色変換蛍光体層84Gに使用する蛍光色素としては、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジノ(9,9a,1−gh)クマリン、3−(2′−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2′−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン等のクマリン色素、ベーシックイエロー51等のクマリン色素系染料、ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116等のナフタルイミド色素等が挙げられる。さらに、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等の各種染料も蛍光性があれば使用することができる。上述のような蛍光色素は単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。赤色変換蛍光体層84Rおよび緑色変換蛍光体層84Gが樹脂中に蛍光色素を含有したものである場合、蛍光色素の含有量は、使用する蛍光色素、色変換蛍光体層の厚み等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、使用する樹脂100重量部に対し0.1〜1重量部程度とすることができる。
【0066】
また、青色変換ダミー層84Bは、発光素子層36で発光された青色光をそのまま透過してカラーフィルタ層83に送るものであり、赤色変換蛍光体層84R、緑色変換蛍光体層84Gとほぼ同じ厚みの透明樹脂層とすることができる。
赤色変換蛍光体層84Rおよび緑色変換蛍光体層84Gが樹脂中に蛍光色素を含有したものである場合、樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等の透明(可視光透過率50%以上)樹脂を使用することができる。また、色変換蛍光体層84のパターン形成をフォトリソグラフィー法により行う場合、例えば、アクリル酸系、メタクリル酸系、ポリケイ皮酸ビニル系、環ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト樹脂を使用することができる。さらに、これらの樹脂は、上述の青色変換ダミー層84Bに使用することができる。
【0067】
色変換蛍光体層84を構成する赤色変換蛍光体層84Rと緑色変換蛍光体層84Gは、蛍光色素単体で形成する場合、例えば、所望のパターンマスクを介して真空蒸着法、スパッタリング法により帯状に形成することができる。また、樹脂中に蛍光色素を含有した層として形成する場合、例えば、蛍光色素と樹脂とを分散、または可溶化させた塗布液をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングする方法、上記の塗布液をスクリーン印刷法等でパターン印刷する方法等により赤色変換蛍光体層84Rや緑色変換蛍光体層84Gを形成することができる。また、青色変換ダミー層84Bは、所望の感光性樹脂塗料をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングする方法、所望の樹脂塗布液をスクリーン印刷法等でパターン印刷する方法等により形成することができる。
【0068】
このような色変換蛍光体層84の厚みは、赤色変換蛍光体層84Rおよび緑色変換蛍光体層84Gが発光素子層36で発光された青色光を十分に吸収し蛍光を発生する機能が発現できるものとする必要があり、使用する蛍光色素、蛍光色素濃度等を考慮して適宜設定することができ、例えば、10〜20μm程度とすることができ、赤色変換蛍光体層84Rと緑色変換蛍光体層84Gとの厚みが異なる場合があってもよい。
青色発光である有機発光材料としては、例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、芳香族ジメチリディン系化合物等を挙げることができる。
【0069】
具体的には、2−2′−(p−フェニレンジビニレン)−ビスヘンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系; 2−[2−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系; 2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4′−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト[1,2−d]オキサゾール等のベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤を挙げることができる。
【0070】
また、上記の金属キレート化オキシノイド化合物としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ[f]−8−キノリノール)亜鉛等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピントリジオン等を挙げることができる。
また、上記のスチリルベンゼン系化合物としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−エチルベンゼン等を挙げることができる。
【0071】
また、上記のジスチリルピラジン誘導体としては、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ナフチル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(4−ビフェニル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ピレニル)ビニル]ピラジン等を挙げることができる。
また、上記の芳香族ジメチリディン系化合物としては、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4−フェニレンジメチリディン、2,5−キシレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリディン、1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4−p−テレフェニレンジメチリディン、9,10−アントラセンジイルジルメチリディン、4,4′−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、4,4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等、およびその誘導体を挙げることができる。
【0072】
さらに、発光層の材料として、一般式(Rs−Q)2−AL−O−Lで表される化合物も挙げることができる(上記式中、ALはベンゼン環を含む炭素原子6〜24個の炭化水素であり、O−Lはフェニラート配位子であり、Qは置換8−キノリノラート配位子であり、Rsはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個以上結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート置換基を表す)。具体的には、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラーフェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、カラーフィルタ層73,83の非形成部位にブラックマトリックスを備えるものであってもよい。
【実施例】
【0073】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
下記組成の赤色発光層用のインキA1を調製した。このインキA1のせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を、Physica社製の粘弾性測定装置MCR301型により定常流測定モードで測定した結果、80cPであった。また、溶媒として使用するメシチレンとテトラリンの表面張力を、協和界面科学(株)製の表面張力計CBVP−Z型により、液温20℃で測定した。
(赤色発光層用のインキA1の組成)
・ポリフルオレン誘導体系の赤色発光材料 … 2.5重量%
(分子量:300,000)
・溶媒(メシチレン:テトラリン=50:50の混合溶媒)… 97.5重量%
(混合溶媒の表面張力=32dyne/cm、沸点=186℃)
(メシチレンの表面張力=28dyne/cm、沸点=165℃)
(テトラリンの表面張力=35.5dyne/cm、沸点=207℃)
【0074】
また、グラビア版として、セル間隔25μmとなるように格子形状に配列された正方形のセル(セルの一辺が100μm、セルの深さ35μm)を備えた板状のグラビア版(有効幅50mm)を準備した。このグラビア版では、正方形のセルの対角線方向を、後述のブランケットの稼動方向と一致させた。
【0075】
また、樹脂フィルムとして、下記の5種の樹脂フィルム(F1〜F5)を準備した。尚、これらの樹脂フィルム(幅150mm)の表面張力の測定は、下記のように行った。
(樹脂フィルム)
・F1 :ポリプロピレンフィルム(東レ(株)製 トレファンBOタイプ2500)、
厚み50μm、表面張力30dyne/cm
・F2 :メラミン焼付けポリエチレンテレフタレートフィルム(パナック(株)製
PET100SG−1)、厚み100μm、表面張力35dyne/cm
・F3 :ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 T60)、
厚み75μm、表面張力38dyne/cm
・F4 :ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人(株)製 Q51)、
厚み75μm、表面張力45dyne/cm
・F5 :易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 U10)、
厚み100μm、表面張力60dyne/cm
【0076】
(樹脂フィルムの表面張力の測定方法)
2種以上の表面張力が判っている液体(標準物質)を使用して、自動接触角計(協和界面科学(株)製 DropMaster 700型)にて接触角θを測定し、γs(樹脂フィルムの表面張力)=γL(液体の表面張力)cosθ+γSL(樹脂フィルムと液体の表面張力)の式に基づいて求めた。
次いで、直径12cm、胴幅30cmのブランケット胴(表面にクッション層(硬度70°)を備える)の周面に、上記の各樹脂フィルム(F1〜F5)を装着して5種のブランケットを作製した。尚、クッション層の硬度はJIS(K6253)デュロメータ硬さ試験によるTypeA硬度である。
【0077】
次に、上記のグラビア版と各ブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、グラビア版に上記の赤色発光層用のインキA1を供給し、ブレードを用いて不要なインキA1を除去してセル内にインキA1を充填した。次いで、基材として、洗浄処理と紫外線プラズマ洗浄を施したガラス基板を準備し、グラビア版からブランケットにインキA1を受理させ、その後、ブランケットからガラス基板上にインキA1を転移させることにより、赤色発光層(厚み約70nm)の形成を行った。尚、印刷速度は1000mm/秒であり、乾燥は、120℃に設定したホットプレート上で1時間とした。
【0078】
上記のように、表面張力が異なる樹脂フィルムを装着したブランケットを使用した赤色発光層の形成時の印刷適性を観察し、また、赤色発光層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)を測定して、結果を下記の表1に示した。尚、赤色発光層の厚みは、セイコーインスツルメンツ(株)製のNanopics 1000を使用し、この装置標準のコンタクトモード用カンチレバーを用いて、測定エリア100μm、スキャンスピード90sec/frameで測定した。
【0079】
【表1】

表1に示されるように、樹脂フィルムの表面張力が35dyne/cm以上であるブランケットF2〜F5を使用することにより、実用レベルの赤色発光層を形成できる。
【0080】
[実施例2]
実施例1で使用した赤色発光層用のインキA1をもとに、下記の表2に示される沸点の混合溶媒を使用した8種の赤色発光層用のインキ(A1〜A8)を調製した。尚、混合溶媒の表面張力は40dyne/cm以下であり、せん断速度100/秒におけるインキ粘度(インキ温度23℃)は5〜200cPの範囲内であった。
一方、グラビア版として、実施例1と同じグラビア版を準備した。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、実施例1の樹脂フィルムF3(東レ(株)製 T60、厚み75μm、表面張力38dyne/cm)を装着してブランケットとした。
【0081】
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各赤色発光層用のインキ(A1〜A8)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に赤色発光層(厚み約70nm)の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、沸点が異なる溶媒を用いた赤色発光層用のインキ(8種)を使用しての赤色発光層形成時の印刷適性を観察し、また、赤色発光層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)を測定して、結果を下記の表2に示した。
【0082】
【表2】

表2に示されるように、沸点が150〜250℃の範囲の溶媒を用いたインキ(A3〜A7)を使用することにより、実用レベルの赤色発光層を形成できる。
【0083】
[実施例3]
実施例1で使用した赤色発光層用のインキA1をもとに、下記の表3に示される表面張力の混合溶媒を使用した8種の赤色発光層用のインキ(A′1〜A′8)を調製した。尚、混合溶媒の沸点は150〜250℃の範囲内であり、せん断速度100/秒におけるインキ粘度(インキ温度23℃)は5〜200cPの範囲内であった。
一方、グラビア版として、実施例1と同じグラビア版を準備した。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、実施例1の樹脂フィルムF3(東レ(株)製 T60、厚み75μm、表面張力38dyne/cm)を装着してブランケットとした。
【0084】
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各赤色発光層用のインキ(A′1〜A′8)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に赤色発光層(厚み約70nm)の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、表面張力が異なる溶媒を用いた赤色発光層用のインキ(8種)を使用しての赤色発光層形成時の印刷適性を観察し、また、赤色発光層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)を測定して、結果を下記の表3に示した。
【0085】
【表3】

表3に示されるように、表面張力が40dyne/cm以下の溶媒を用いたインキ(A′1〜A′7)を使用することにより、実用レベルの赤色発光層を形成できる。
【0086】
[実施例4]
実施例1で使用した赤色発光層用のインキA1をもとに、赤色発光材料の含有量を2〜3重量%の範囲で適宜変更し、また、混合溶媒のメシチレンとテトラリンの混合比を変えることにより表面張力を25〜40dyne/cmの範囲で、沸点を150〜250℃の範囲で適宜変更して、下記表4に示されるように、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を3cP〜250cPまで振った11種の赤色発光層用のインキA″2〜A″12を調製した。
一方、グラビア版として、実施例1と同じグラビア版を準備した。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、実施例1の樹脂フィルムF3(東レ(株)製 T60、厚み75μm、表面張力38dyne/cm)を装着してブランケットとした。
【0087】
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各赤色発光層用のインキ(A″1〜A″12)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に赤色発光層(厚み約70nm)の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、粘度が異なる赤色発光層用のインキ(12種)を使用した赤色発光層の形成時の印刷適性を観察し、また、赤色発光層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)を測定して、結果を下記の表4に示した。
【0088】
【表4】

表4に示されるように、インキ粘度が5〜200cPであるインキ(A″3〜A″7、A″1、A″8〜A″11)を使用することにより、実用レベルの赤色発光層を形成できる。
【0089】
[実施例5]
(透明電極層の形成)
まず、ガラス基板(厚み0.7mm)に対して、イオンプレーティング法により膜厚200nmの酸化インジウムスズ(ITO)電極膜を形成し、このITO電極膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、ITO電極膜のエッチングを行って、幅2.2mmのストライプ形状の透明電極層を4mmピッチで10本形成した。
【0090】
(絶縁層の形成)
次に、上記のガラス基板(厚み0.7mm)に、洗浄処理と紫外線プラズマ洗浄を施し、その後、アクリル樹脂を主成分とするネガ型感光性レジストをスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィープロセスでパターニングして、各透明電極層上に2mm×2mmの発光エリア(開口部)が4mmピッチで存在するような絶縁層(厚み1μm)を形成した。
【0091】
(正孔注入層の形成)
次いで、正孔注入層用インキとして、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)(バイエル社製 Baytron P CH8000)をスピンコート法で塗布し、150℃に設定したホットプレート上で30分間乾燥させて正孔注入層を形成した。この正孔注入層は50mm×50mmであり、上記の絶縁層の開口部を被覆するように形成した。尚、PEDOT塗布時のスピンコートの回転数は、正孔注入層の厚みが70nmとなるように調整した。
【0092】
(赤色発光層の形成)
グラビア版として、実施例1と同じグラビア版を準備した。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、実施例1の樹脂フィルムF3(東レ(株)製 T60、厚み75μm、表面張力38dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、実施例1の赤色発光層用のインキA1(せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が80cP、混合溶媒の表面張力32dyne/cm、沸点=186℃)を用いて、実施例1と同様にして、正孔注入層上に赤色発光層(厚み約70nm)の形成を行った。
【0093】
(電子注入層の形成)
赤色発光層を形成した面側に、2.2mm幅のストライプ状の開口部を4mmピッチで備えたメタルマスクを、この開口部が上記のストライプ形状の透明電極層と直交し、かつ、上記の絶縁層の発光エリア(開口部)上に位置するように配置した。次に、このマスクを介して真空蒸着法によりカルシウムを蒸着(蒸着速度=0.1nm/秒)して成膜して電子注入層(厚み10nm)を4mmピッチで10本形成した。
【0094】
(電極層の形成)
次に、電子注入層の形成に用いたメタルマスクをそのまま使用して、真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着(蒸着速度=0.4nm/秒)して成膜した。これにより、電子注入層上に、アルミニウムからなる幅2.2mmのストライプ形状の電極層(厚み300nm)を形成した。
最後に、電極層を形成した面側に、紫外線硬化型接着剤を介して封止板を貼り合わせることにより、本発明の有機発光デバイスを得た。
この有機発光デバイスについて、1000cd/m2の時の発光効率と、定電流駆動時に発光輝度が半減するまでの時間を素子寿命として評価したところ、発光効率が0.9cd/A、素子寿命が30000時間であった。尚、素子寿命は、初期の輝度が100cd/m2となるように電流値を設定し、その電流で連続駆動させ、50cdに半減するまでの時間で評価した。
【0095】
[実施例6]
下記組成の緑色発光層用のインキBを調製した。このインキBのせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を実施例1と同様に測定した結果、80cPであった。
(緑色発光層用のインキBの組成)
・ポリフルオレン誘導体系の緑色発光材料 … 2.5重量%
(分子量:200,000)
・溶媒(メシチレン:テトラリン=67:33の混合溶媒)… 97.5重量%
(混合溶媒の表面張力=33dyne/cm、沸点=193℃)
【0096】
この緑色発光層用のインキBを使用して、実施例5と同様にして、本発明の有機発光デバイスを得た。
この有機発光デバイスについて、1000cd/m2の時の発光効率と、定電流駆動時に発光輝度が半減するまでの時間を素子寿命として評価したところ、発光効率が8.5cd/A、素子寿命が20000時間であった。
【0097】
[実施例7]
下記組成の青色発光層用のインキCを調製した。このインキCのせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を実施例1と同様に測定した結果、60cPであった。
(青色発光層用のインキCの組成)
・ポリフルオレン誘導体系の青色発光材料 … 2.5重量%
(分子量:300,000)
・溶媒(メシチレン:テトラリン=25:75の混合溶媒)… 97.5重量%
(混合溶媒の表面張力=34dyne/cm、沸点=197℃)
【0098】
この青色発光層用のインキCを使用して、実施例5と同様にして、本発明の有機発光デバイスを得た。但し、電子注入層の形成では、カルシウム層を真空蒸着で形成する前に、フッ化リチウムを1nmの厚みで真空蒸着(蒸着速度=0.01nm/秒)により形成した。
この有機発光デバイスについて、1000cd/m2の時の発光効率と、定電流駆動時に発光輝度が半減するまでの時間を素子寿命として評価したところ、発光効率が4.0cd/A、素子寿命が1000時間であった。
【0099】
[実施例8]
下記組成の白色発光層用のインキDを調製した。このインキDのせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を実施例1と同様に測定した結果、45cPであった。
(白色発光層用のインキDの組成)
・ポリフルオレン誘導体系の白色発光材料 … 2.5重量%
(分子量:300,000)
・溶媒(メシチレン:テトラリン=25:75の混合溶媒)… 97.5重量%
(混合溶媒の表面張力=34dyne/cm、沸点=197℃)
【0100】
この白色発光層用のインキDを使用して、実施例5と同様にして、本発明の有機発光デバイスを得た。
この有機発光デバイスについて、1000cd/m2の時の発光効率と、定電流駆動時に発光輝度が半減するまでの時間を素子寿命として評価したところ、発光効率が4.0cd/A、素子寿命が1000時間であった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
フルカラー表示装置、エリアカラー表示装置、照明等の種々の有機発光デバイスの製造において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の発光層の形成方法を説明するための図である。
【図2】本発明の発光層の形成方法を説明するための図である。
【図3】本発明の発光層の形成方法を説明するための図である。
【図4】グラビア版のセルを説明するための図である。
【図5】本発明の発光層の形成方法を説明するための図である。
【図6】本発明の発光層の形成方法を説明するための図である。
【図7】本発明の有機発光デバイスの一実施形態を示す部分断面斜視図である。
【図8】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図9】発光層と絶縁層の開口部との関係を示す図である。
【図10】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】図9に示される有機発光デバイスのA−A線での断面図である。
【図12】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。
【図13】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0103】
2,2′…グラビア版
3,3′…セル
4…ブランケット
5…樹脂フィルム
6…ブランケット胴
11A…発光層被形成面
20…発光層
31,61,71,81…有機発光デバイス
32,62,72,82…透明基材
33…透明電極層
34,54…絶縁層
35,55…開口部
36…発光素子層
37…正孔注入層
38,38R,38G,38B,58R,58G,58G…発光層
39…電子注入層
40…電極層
53…電極配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する電極と、該電極間に配設され少なくとも発光層を有する発光素子層と、を備えた有機発光デバイスの発光層形成方法において、
少なくとも有機発光材料を含有する発光層用インキをグラビア版のセルに充填させ、該セルからブランケットに発光層用インキを受理させた後、前記ブランケット上の発光層用インキを発光層被形成面に転移する工程を有し、前記ブランケットは表面張力が35dyne/cm以上である樹脂フィルムを表面層として備えるものであり、前記発光層用インキはせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5〜200cPの範囲であり、前記発光層用インキに用いる溶媒は表面張力が40dyne/cm以下で、かつ、沸点が150〜250℃の範囲であることを特徴とする発光層形成方法。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの厚みは、5〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の発光層形成方法。
【請求項3】
前記ブランケットは、ブランケット胴の周面に前記樹脂フィルムを一体的に備えるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光層形成方法。
【請求項4】
前記ブランケットは、グラビア版から発光層用インキを受理する位置と発光層用インキを発光層被形成面に転移する位置とを少なくとも含む範囲において、回転するブランケット胴に巻き付く状態で前記樹脂フィルムが搬送されるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光層形成方法。
【請求項5】
前記ブランケット胴は、表面にクッション層を備えることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の発光層形成方法。
【請求項6】
前記発光層用インキにおける前記有機発光材料の含有量は、1.5〜4.0重量%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の発光層形成方法。
【請求項7】
前記グラビア版のセルは、最大開口長が20〜200μmの範囲であり、深さが10〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の発光層形成方法。
【請求項8】
前記グラビア版は、複数のセルによって1つのエリアカラー用の絵柄が構成されるものであり、1つの絵柄幅を200μm以上とすることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の発光層形成方法。
【請求項9】
複数組のグラビア版とブランケットを用いて発光色が異なる複数の発光層を連続して形成することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の発光層形成方法。
【請求項10】
グラビア版を軸方向に複数に区画し、各区画毎に任意の発光層用インキを供給して、発光色が異なる複数の発光層を同時に形成することを特徴とする請求項8に記載の発光層形成方法。
【請求項11】
透明基材と、該透明基材上に所望のパターンで形成された透明電極層と、前記透明基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記透明電極層を被覆するとともに前記開口部の周縁の前記絶縁層に乗り上げるように形成され少なくとも発光層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、請求項1乃至請求項10のいずれかの方法により形成されたものであることを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項12】
基材と、該基材上に所望のパターンで形成された電極層と、前記基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記電極層を被覆するとともに前記開口部の周縁の前記絶縁層に乗り上げるように形成され少なくとも発光層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された透明電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、請求項1乃至請求項10のいずれかの方法により形成されたものであることを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項13】
前記発光素子層を構成する前記発光層のうち、前記開口部内に位置する部位の厚み変動が10%以下であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の有機発光デバイス。
【請求項14】
前記発光素子層は、少なくとも正孔注入層/発光層/電子注入層がこの順に積層されたものであることを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項15】
パッシブマトリックス型であることを特徴とする請求項11乃至請求項14のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項16】
アクティブマトリックス型であることを特徴とする請求項11乃至請求項14のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項17】
最大開口幅が10mm以上の前記開口部を前記絶縁層に備えた有機発光ポスターであることを特徴とする請求項11乃至請求項15のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項18】
カラーフィルタ層を備えることを特徴とする請求項11乃至請求項17のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項19】
前記カラーフィルタ層と前記透明電極との間に色変換蛍光体層を備えることを特徴とする請求項18に記載の有機発光デバイス。
【請求項20】
前記発光素子層は、白色を含む所望の色の発光であるか、あるいは所望の複数の色の発光が所定のパターンで組み合わされたものであることを特徴とする請求項11乃至請求項19のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項21】
前記発光素子層は、青色発光であり、前記色変換蛍光体層は青色光を緑色蛍光に変換して発光する緑色変換層と、青色光を赤色蛍光に変換して発光する赤色変換層とを備えていることを特徴とする請求項19に記載の有機発光デバイス。
【請求項22】
前記正孔注入層用の塗膜を形成した後1分以内に前記発光層用の塗膜を形成し、これら2層を100〜200℃の範囲で同時に一括乾燥して形成した正孔注入層と発光層とを備えることを特徴とする請求項14乃至請求項21のいずれかに記載の有機発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−318850(P2006−318850A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142617(P2005−142617)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】