説明

発光素子、表示装置および電子機器

【課題】発光効率および耐久性(寿命)に優れる発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い表示装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】発光素子1は、陽極3と陰極6との間(一対の電極間)に、発光層5と正孔輸送層(キャリア輸送層)4とを介挿してなるものである。この発光素子1は、発光層5および正孔輸送層4のうちの少なくとも一方は、高分子材料を主材料として構成されており、陽極3(正孔輸送層4側の一方の電極)と正孔輸送層4との間に、半導体材料および/または絶縁材料を主材料として構成された中間層8が設けられている。半導体材料は、酸化バナジウムを主成分とするものが好ましく、絶縁材料は、酸化シリコンを主成分とするものが好ましい。また、中間層8は、その平均厚さが5nm以下であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一層の発光性有機層(有機エレクトロルミネッセンス層)が、陰極と陽極とに挟まれた構造の有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と称する。)は、無機EL素子に比べて印加電圧を大幅に低下させることができ、多彩な発光色の素子が作製可能である(例えば、非特許文献1〜3、特許文献1〜3参照)。
現在、より高性能な有機EL素子を得るため、材料の開発・改良をはじめ、様々なデバイス構造が提案されており、活発な研究が行われている。
【0003】
また、この有機EL素子については既に様々な発光色の素子、また高輝度、高効率の素子が開発されており、表示装置の画素としての利用や光源としての利用など多種多様な実用化用途が検討されている。
そして、実用化に向けて、さらなる発光効率の向上を目指し、種々の研究がなされている。
【0004】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.51(12),21 September 1987,p.913
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.71(1),7 July 1997,p.34
【非特許文献3】Nature 357,477 1992
【特許文献1】特開平10−153967号公報
【特許文献2】特開平10−12377号公報
【特許文献3】特開平11−40358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、発光効率および耐久性(寿命)に優れる発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光素子は、第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた発光層と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられたキャリア輸送層と、
前記キャリア輸送層と前記第1の電極との間に設けられた中間層とを有し、
前記発光層および前記キャリア輸送層のうちの少なくとも一方は、高分子材料を含み、
前記中間層は、半導体材料および絶縁材料のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする。
これにより、発光効率および耐久性(寿命)に優れる発光素子が得られる。
【0007】
本発明の発光素子では、前記キャリア輸送層は、前記発光層と前記第1の電極との間に設けられていることが好ましい。
本発明の発光素子では、前記半導体材料は、酸化バナジウムを主成分とするものであることが好ましい。
これにより、発光効率および耐久性(寿命)がより向上する。
本発明の発光素子では、前記絶縁材料は、酸化シリコンを主成分とするものであることが好ましい。
これにより、発光効率および耐久性(寿命)がより向上する。
【0008】
本発明の発光素子では、前記中間層は、その平均厚さが5nm以下であることが好ましい。
このような膜厚で、中間層は、その機能を十分に発揮する。
本発明の発光素子では、前記中間層は、気相成膜法により形成されたものであることが好ましい。
これにより、中間層は、緻密なものとなり、その性能がより優れたものとなる。
【0009】
本発明の発光素子では、前記中間層は、前記第1の電極と接触していることが好ましい。
これにより、発光素子の大型化(特に、厚膜化)や、キャリアの発光層への注入効率が低下するのを防止することができる。
本発明の発光素子では、前記中間層は、前記キャリア輸送層と接触していることが好ましい。
これにより、発光素子の大型化(特に、厚膜化)や、キャリアの発光層への注入効率が低下するのを防止することができる。
【0010】
本発明の発光素子では、前記発光層が高分子材料を含み、
前記中間層は、前記発光層で生じたエキシトンが前記第1の電極に接触するのを阻止するよう機能するものであることが好ましい。
本発明の発光素子では、前記発光層を構成する高分子材料は、ポリフルオレンまたはその誘導体であることが好ましい。
これにより、発光層を、より発光効率に優れるものとすることができる。
【0011】
本発明の発光素子では、前記キャリア輸送層が高分子材料を含み、
前記中間層は、前記第2の電極から注入されたキャリアが前記第1の電極に到達するのを阻止するよう機能するものであることが好ましい。
本発明の発光素子では、前記キャリア輸送層は、正孔輸送層であり、
該正孔輸送層を構成する高分子材料は、ポリアリールアミンまたはその誘導体であることが好ましい。
これにより、正孔輸送層を、正孔の輸送能力により優れたものとすることができる。
本発明の発光素子では、前記発光層と前記キャリア輸送層とは、相分離により一括して形成されたものであることが好ましい。
これにより、発光効率および耐久性(寿命)がより向上する。また、特に、かかる構成の発光素子において中間層を設けることが効果的である。
【0012】
本発明の表示装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い表示装置が得られる。
本発明の電子機器は、本発明の表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の発光素子の実施形態の縦断面を模式的に示す図、図2は、図1に示す発光素子の各部(各層)の界面付近を模式的に示す図、図3は、図2をさらに拡大して示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図3中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0014】
図1に示す発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)1は、陽極(第1の電極)3と、陰極(第2の電極)6と、陽極3と陰極6との間(一対の電極間)に、陽極3側に正孔輸送層(キャリア輸送層)4と、陰極6側に発光層5とが介挿され、さらに、正孔輸送層4と陽極3との間に中間層8が設けられてなるものである。そして、発光素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材7で封止されている。
【0015】
基板2は、発光素子1の支持体となるものである。本実施形態の発光素子1は、基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板2および陽極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされている。
基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0016】
なお、発光素子1が基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、基板2には、透明基板および不透明基板のいずれも用いることができる。
不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0017】
陽極3は、後述する正孔輸送層4に正孔を注入する電極である。この陽極3の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0018】
一方、陰極6は、後述する発光層5に電子を注入する電極である。この陰極6の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極6の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0019】
特に、陰極6の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極6の構成材料として用いることにより、陰極6の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極6の平均厚さは、特に限定されないが、100〜10000nm程度であるのが好ましく、200〜500nm程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態の発光素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極6に、光透過性は、特に要求されない。
【0020】
正孔輸送層4は、陽極3から注入された正孔を、発光層5まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層4の構成材料には、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミンのようなアリールアミン骨格を有するもの、フルオレン−ビチオフェン共重合体のようなフルオレン骨格を有するもの、フルオレン−アリールアミン共重合体のようなアリールアミン骨格およびフルオレン骨格の双方を有するもの、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
また、前記化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0021】
一方、p型の低分子材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、正孔輸送層4の構成材料としては、高分子材料を主とするものが好ましい。正孔輸送層4を、高分子材料を主材料として構成することにより、正孔の輸送能力により優れたものとすることができる。
また、発光層5の構成材料として、高分子材料(高分子の発光材料)を用いることにより、正孔輸送層4と発光層5とを相分離(垂直相分離)により、一括して形成することもできる。これにより得られる効果は、後に詳述する。
特に、正孔輸送層4の構成材料としては、ポリアリールアミンまたはその誘導体を主成分とする高分子材料が好ましい。これにより、前記効果をより向上させることができる。
ここで、ポリアリールアミン誘導体の一例としては、下記化1で示すトリフェニルアミン系高分子が挙げられる。
【0023】
【化1】

【0024】
このような正孔輸送層4の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、30〜100nm程度であるのがより好ましい。
正孔輸送層4に接触して、発光層5が設けられている。この発光層5は、陰極6から注入された電子を輸送するとともに、正孔輸送層4から正孔を受け取る。そして、その正孔輸送層4との界面付近において正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。
【0025】
発光層5の構成材料としては、各種高分子の発光材料(高分子材料)、各種低分子の発光材料(低分子材料)を単独または組み合わせて用いることができる。
高分子の発光材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物、ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物、ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物等が挙げられる。
【0026】
一方、低分子の発光材料としては、例えば、配位子に下記化2で示す2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を持つ、3配位のイリジウム錯体、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq)、8−ヒドロキシキノリン 亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン プラチナム(II)のような各種金属錯体、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物等が挙げられる。
【0027】
【化2】

【0028】
これらの中でも、発光層5の構成材料としては、高分子の発光材料を主とするものが好ましい。発光層5を、高分子の発光材料を主材料として構成することにより、より発光効率に優れるものとすることができる。
また、前述したように、正孔輸送層4の構成材料として、高分子材料を用いた場合に正孔輸送層4と発光層5とを相分離(垂直相分離)により、一括して形成することもできる。
【0029】
特に、発光層5の構成材料としては、ポリフルオレンまたその誘導体を主成分とする高分子の発光材料が好ましい。これにより、前記効果をより向上させることができる。
以上のようなことから、正孔輸送層4および発光層5の双方を高分子材料を主材料として構成するのが好ましい。この場合、正孔輸送層4と発光層5とは、相分離により一括して形成するのが好ましい。
【0030】
ここで、相分離により一括して形成された発光層5と正孔輸送層4との界面は、図2に示すように、巨視的には、陽極3の上面とほぼ平行となっており、図3に示すように、微視的には、各層が互いに凹凸状に入り込んだ(重なり合った)状態となる。
これにより、発光層5と正孔輸送層4との接触面積が大きくなり、電子と正孔との再結合サイトが広がる。そして、この再結合サイトは、電極(陽極3および陰極6)から離れた部分に存在するので、結果として発光するサイトが広がる(発光に寄与する分子の数が増加する)。このため、発光素子1の発光効率の向上や、さらなる長寿命化を図ることができる。
【0031】
また、発光層5と正孔輸送層4との界面が均一(平坦)でなく、凹凸状であるため、駆動電圧量を上昇させても、一斉に正孔と電子とが励起、結合するの防止して、発光の強度が急峻に上昇するのを防止することができる。したがって、駆動電圧量に応じて輝度を穏やかに上昇させることができるので、発光素子1の発光輝度のコントロールや、低輝度の諧調コントロールを容易に行うことができる。また、駆動電圧を細かく制御するための複雑な周辺回路が不要になるという利点がある。
このような発光層5の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、20〜50nm程度であるのがより好ましい。
【0032】
封止部材7は、陽極3、正孔輸送層4、発光層5および陰極6を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材7を設けることにより、発光素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
封止部材7の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材7の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材7と陽極3、正孔輸送層4、発光層5および陰極6との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
また、封止部材7は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
【0033】
さて、本発明では、正孔輸送層(キャリア輸送層)4と陽極(一方の電極)3との間に、半導体材料および/または絶縁材料を主材料として構成された中間層8を設けたことに特徴を有する。
前述したように、発光素子1の特性向上の観点から、正孔輸送層4および発光層5は、好ましくは高分子材料を主材料として構成されるが、この場合、次のような問題が生じる。
【0034】
すなわち、正孔輸送層4では、正孔(キャリア)の輸送効率が向上するが、これに伴って、陰極(他方の電極)6から発光層5に注入された電子、すなわち、正孔輸送層4を輸送されるキャリアである正孔と反対の極性を有するキャリアである電子も陽極3に向かって移動(通過)し易くなる傾向を示す。
このとき、正孔輸送層4と陽極3との間に、前記中間層8が存在すると、電子が陽極3に到達(接触)するのを阻止することができる。すなわち、中間層8は、電子が陽極3に接触するのを阻止するブロック層として機能する。
【0035】
一方、発光層5では、発光効率が向上するが、層中で電子と正孔との再結合により生成したエキシトン(励起子)が、層中を移動し、正孔輸送層4を通過して、陽極3に到達(接触)し易くなる傾向を示す。特に、この傾向は、正孔輸送層4と発光層5とを相分離により一括して形成した場合に顕著となる。
このとき、正孔輸送層4と陽極3との間に、前記中間層8が存在すると、エキシトンが陽極3に到達して接触するのを阻止することができる。すなわち、中間層8は、エキシトンが陽極3に接触するのを阻止するブロック層として機能する。
このように、中間層8を設けることにより、例えば、陽極3上での電子と正孔との再結合率や、エキシトンの陽極3への接触によるクエンチングが発生する確率等を低減または消失することがでる。その結果、発光素子1において、発光効率や耐久性(寿命)の向上を図ることができる。
【0036】
このような中間層8を構成する半導体材料としては、バンドギャップができるだけ広い化合物(ワイドバンドギャップ化合物)が好ましく、特に限定されないが、例えば、酸化バナジウム(V)、酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、酸化タングステン(WO)、酸化二オブ(Nb)のような金属酸化物、硫化カドミウム(CdS)のような金属硫化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
これらの中でも、半導体材料としては、金属酸化物、特に、酸化バナジウムを主成分とするものが好適である。酸化バナジウムを主材料として構成することにより、中間層8を前述した能力に特に優れたものとすることができる。
また、特に、本実施形態の場合、酸化バナジウム自体が正孔輸送性が高いため、陽極3から正孔輸送層4への正孔の注入効率が低下するのを好適に防止することもできるという利点がある。
【0038】
一方、中間層8を構成する絶縁材料としては、例えば、酸化シリコン(SiO)、LiF、CsF、NaFのような金属ハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、絶縁材料としては、酸化シリコンを主成分とするものが好適である。酸化シリコンを主材料として構成することにより、中間層8を前述した能力に特に優れたものとすることができる。
【0039】
このような中間層8の平均厚さは、特に限定されないが、5nm以下であるのが好ましく、1〜4nm程度であるのがより好ましい。これにより、陽極3から正孔輸送層4への正孔の注入効率が低下するのを防止しつつ、電子やエキシトン等が陽極3に接触するの確実に阻止することができる。換言すれば、前述したような材料を主材料として、中間層8を構成することにより、前記範囲の膜厚で電子やエキシトン等が陽極3に接触するのを阻止する効果が十分に発揮される。
【0040】
また、中間層8は、陽極3と正孔輸送層4との間に設けるようにすれば、前記効果が十分に発揮されるが、陽極3と正孔輸送層4との少なくとも一方と接触しているのが好ましく、双方と接触しているのがより好ましい。これにより、発光素子1の大型化(特に、厚膜化)や、正孔(キャリア)の発光層5への注入効率が低下するのを防止することができる。
【0041】
このような発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
以下では、正孔輸送層4および発光層5を、それぞれ高分子材料を主材料として構成する場合を代表に説明する。
[1] まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射法のような気相成膜法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、ゾル・ゲル法、MOD法のような液相成膜法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0042】
[2] 次に、陽極3上に中間層8を形成する。
中間層8は、例えば、前述のような気相成膜法や液相成膜法等を用いて形成することができる。
これらの中でも、中間層8は、気相成膜法を用いて形成するのが好ましい。気相成膜法によれば、中間層8をより緻密に形成することができ、その結果、前述したような効果がより顕著なものとなる。
【0043】
[3] 次に、中間層(下地層)8の上面に、正孔輸送層4を構成する高分子材料との親和性(濡れ性)を向上させるための親和性向上処理を施す。
これにより、次工程[4]において正孔輸送層4と発光層5とを相分離により一括して形成する際に、液状被膜中において、正孔輸送層4を構成する高分子材料をより確実に中間層8側(下側)に集めることができ、正孔輸送層4および発光層5を確実に分離・形成することができる。
【0044】
この親和性向上処理としては、例えば、前記高分子材料を構成する化合物の一部を含む化学構造(ビルディングユニット)を導入する化学修飾処理や、前記高分子材料が親水性を示すものである場合には親水化処理等が挙げられるが、特に、前者を用いるのが好ましい。これにより、前記効果をより向上させることができる。
例えば、前記高分子材料がトリフェニルアミン骨格(構造)を有する場合には、中間層8の表面に、アミノ基、トリフェニルアミン(アリールアミン)、フェニル基、ベンジル基等を末端に有するアルキル鎖を導入する化学修飾処理を行う。
なお、この化学修飾処理に用いる処理剤(試剤)としては、例えば、中間層8が金属酸化物を主材料として構成される場合、導入すべき原子団を一方の末端に、トリメチルシラン、メチルシラン、トリクロロシラン等を他方の末端に有する化合物(カップリング剤)を用いることができる。
【0045】
[4] 次に、中間層8上に、相分離により正孔輸送層4と発光層5とを一括して形成する。これは、次のようにして行うことができる。
まず、正孔輸送層4を構成する高分子材料と、発光層5を構成する高分子材料とを溶媒(液状媒体)に溶解して液状材料を調製する。
溶媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0046】
これらの中でも、溶媒としては、非極性溶媒が好適であり、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
【0047】
次に、この液状材料を中間層8上に供給して、液状被膜を形成する。
この液状材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。かかる塗布法によれば、液状被膜を比較的容易に形成することができる。
【0048】
次に、液状被膜中から溶媒を除去する。溶媒が除去されると、液状被膜中では、中間層8(陽極3)側に、正孔輸送層4を構成する高分子材料が、一方、陰極6側に、発光層5を構成する高分子材料が分離、固化して、正孔輸送層4と発光層5とが形成される。すなわち、相分離により、正孔輸送層4と発光層5とが一括して形成される。
このとき、溶媒の種類、正孔輸送層4を構成する高分子材料の重量平均分子量や、その液状材料中の含有量、発光層5を構成する高分子材料の重量平均分子量や、その液状材料中の含有量、溶媒を除去する速度、溶媒を除去する際の雰囲気、液状材料を供給する下層(中間層8)の表面性状態等のうちの少なくとも1つの条件を適宜設定することにより、正孔輸送層4を構成する高分子材料と発光層5を構成する高分子材料との相分離の状態を制御することができる。
例えば、正孔輸送層4を構成する高分子材料として、その重量平均分子量が発光層5を構成する高分子材料の重量平均分子量より小さいものを選択するようにするのが好ましい。
【0049】
[5] 次に、発光層5上に陰極6を形成する。
陰極6は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
[6] 次に、陽極3、正孔輸送層4、発光層5および陰極6を覆うように、封止部材7を被せ、基板2に接合する。
以上のような工程を経て、本発明の発光素子1が製造される。
【0050】
このような発光素子1において、中間層8と同様の構成の層を、発光層5と陰極6との間にも設けるようにしてもよい。
また、本実施形態では、キャリア輸送層を正孔輸送層に適用した場合を代表に説明したが、本発明では、キャリア輸送層を電子輸送層に適用することもできる。
この場合において、電子輸送層を高分子材料を主材料として構成する場合、電子輸送層を構成する高分子材料としては、例えば、オキサジアゾール系高分子、トリアゾール系高分子等が挙げられる。
【0051】
このような発光素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の発光素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置(本発明の表示装置)を構成することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0052】
次に、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の一例について説明する。
図4は、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図4に示すディスプレイ装置10は、基体20と、この基体20上に設けられた複数の発光素子1とで構成されている。
【0053】
基体20は、基板21と、この基板21上に形成された回路部22とを有している。
回路部22は、基板21上に形成された、例えば酸化シリコン層からなる保護層23と、保護層23上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)24と、第1層間絶縁層25と、第2層間絶縁層26とを有している。
駆動用TFT24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
このような回路部22上に、各駆動用TFT24に対応して、それぞれ、発光素子1が設けられている。また、隣接する発光素子1同士は、第1隔壁部31および第2隔壁部32により区画されている。
【0054】
本実施形態では、各発光素子1の陽極3は、画素電極を構成し、各駆動用TFT24のドレイン電極245に配線27により電気的に接続されている。また、各発光素子1の陰極6は、共通電極とされている。
そして、各発光素子1を覆うように封止部材(図示せず)が基体20に接合され、各発光素子1が封止されている。
ディスプレイ装置10は、単色表示であってもよく、各発光素子1に用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
このようなディスプレイ装置10(本発明の表示装置)は、各種の電子機器に組み込むことができる。
【0055】
図5は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0056】
図6は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0057】
図7は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0058】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置10で構成されている。
【0059】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0060】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0061】
なお、本発明の電子機器は、図5のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図6の携帯電話機、図7のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
以上、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【実施例】
【0062】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.発光素子の製造
(実施例1)
[1] まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。
[2] 次に、この基板上に、スパッタ法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
【0063】
[3] 次に、このITO電極上に、真空蒸着法により、平均厚さ3nmの酸化バナジウム(V)層(中間層)を形成した。
[4] 次に、この酸化バナジウム層上に、0.1wt%のNH(CHSiCl(シランカップリング剤)のエタノール溶液をスピンコート法(2000rpm)により塗布した後、乾燥した。
【0064】
[5] 次に、正孔輸送層の構成材料として、前記化1に示すポリフェニルアミン系高分子(重量平均分子量:5000)と、発光層の構成材料として、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)(重量平均分子量:10000)を、それぞれ、キシレンに添加して液状材料を調製した。
なお、ポリフェニルアミン系高分子の含有量は、0.5wt%、ポリフルオレン系高分子の含有量は、1.5wt%とした。
【0065】
そして、この液状材料を酸化バナジウム層上に、スピンコート法(2000rpm)により塗布した後、乾燥した。
なお、液状材料の乾燥条件は、大気化、室温とした。
これにより、正孔輸送層と発光層とを相分離により形成した。
なお、正孔輸送層の平均厚さは、30nm、発光層の平均厚さは、50nmであった。
【0066】
[6] 次に、発光層上に、真空蒸着法により、平均厚さ300nmのAlLi電極(陰極)を形成した。
次に、形成した各層を覆うように、ポリカーボネート製の保護カバー(封止部材)を被せ、紫外線硬化性樹脂により固定、封止して、発光素子を完成した。
【0067】
(実施例2)
前記工程[3]において、ITO電極上に、真空蒸着法により、平均厚さ3nmの酸化チタン(TiO)層(中間層)を形成した以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
(比較例)
前記工程[3]を省略した以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
【0068】
2.評価
各実施例および比較例で製造した発光素子について、それぞれ、発光効率および寿命の評価を行った。
この発光効率の評価は、直流電源により、0Vから6Vに電圧を印加し、電流値を測定し、輝度を輝度計により測定することで行った。
また、寿命の評価は、初期輝度400cd/mの定電流駆動を行うことで行った。
その結果を、それぞれ、図8および図9に示す。
【0069】
図8に示すように、各実施例の発光素子は、いずれも、比較例の発光素子に比べて、明らかに発光効率に優れるものであった。
また、図9に示すように、各実施例の発光素子は、いずれも、比較例の発光素子に比べて、明らかに長寿命化することが確認された。
特に、中間層として酸化バナジウム層を設けた発光素子は、その発光効率がより優れ、より長寿命化することが確認された。
【0070】
なお、酸化バナジウム層の平均厚さを5nmとした以外は、前記実施例1と同様にして製造した発光素子でも、十分な発光効率および寿命(耐久性)が確認されたが、実施例1の発光素子において、特性がより向上する傾向を示した。
また、中間層を、SiO(絶縁材料)や、絶縁材料と半導体材料とを組み合わせて用いて、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造すると、前記と同様の結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の発光素子の実施形態の縦断面を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す発光素子の各部(各層)の界面付近を模式的に示す図である。
【図3】図2をさらに拡大して示す図である。
【図4】本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図5】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【図8】各実施例および比較例で製造された発光素子に対して、発光効率の評価を行った結果を示すグラフである。
【図9】各実施例および比較例で製造された発光素子に対して、寿命の評価を行った結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0072】
1……発光素子 2……基板 3……陽極 4……正孔輸送層 5……発光層 6……陰極 7……封止部材 8……中間層 10……ディスプレイ装置 20……基体 21……基板 22……回路部 23……保護層 24……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 25……第1層間絶縁層 26……第2層間絶縁層 27……配線 31……第1隔壁部 32……第2隔壁部 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた発光層と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられたキャリア輸送層と、
前記キャリア輸送層と前記第1の電極との間に設けられた中間層とを有し、
前記発光層および前記キャリア輸送層のうちの少なくとも一方は、高分子材料を含み、
前記中間層は、半導体材料および絶縁材料のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記キャリア輸送層は、前記発光層と前記第1の電極との間に設けられている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記半導体材料は、酸化バナジウムを主成分とするものである請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記絶縁材料は、酸化シリコンを主成分とするものである請求項1ないし3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記中間層は、その平均厚さが5nm以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の発光素子。
【請求項6】
前記中間層は、気相成膜法により形成されたものである請求項1ないし5のいずれかに記載の発光素子。
【請求項7】
前記中間層は、前記第1の電極と接触している請求項1ないし6のいずれかに記載の発光素子。
【請求項8】
前記中間層は、前記キャリア輸送層と接触している請求項1ないし7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項9】
前記発光層が高分子材料を含み、
前記中間層は、前記発光層で生じたエキシトンが前記第1の電極に接触するのを阻止するよう機能するものである請求項1ないし8のいずれかに記載の発光素子。
【請求項10】
前記発光層を構成する高分子材料は、ポリフルオレンまたはその誘導体である請求項9に記載の発光素子。
【請求項11】
前記キャリア輸送層が高分子材料を含み、
前記中間層は、前記第2の電極から注入されたキャリアが前記第1の電極に到達するのを阻止するよう機能するものである請求項1ないし10のいずれかに記載の発光素子。
【請求項12】
前記キャリア輸送層は、正孔輸送層であり、
該正孔輸送層を構成する高分子材料は、ポリアリールアミンまたはその誘導体である請求項11に記載の発光素子。
【請求項13】
前記発光層と前記キャリア輸送層とは、相分離により一括して形成されたものである請求項1ないし12のいずれかに記載の発光素子。
【請求項14】
請求項13に記載の発光素子を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−245329(P2006−245329A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59467(P2005−59467)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】