説明

発光素子、露光ヘッド、カートリッジ、画像形成装置及び発光素子製造方法

【課題】面内発光均一性を有した高精細な発光を得ることを課題とする。
【解決手段】第1電極の一例としての陽極71と、陽極71と対をなす第2電極の一例としての陰極73と、発光層72の発光には寄与しない第3電極79と、陽極71と陰極73との間に配置された発光層72と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、露光ヘッド、カートリッジ、画像形成装置及び発光素子製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子としては、非特許文献1に開示される技術が公知である。非特許文献1に開示される技術では、EL層(発光層)を成膜する際に、インクジェット法を用いている。また、インクジェット法を用いる際に、バンクや基板に撥水処理などを行い、基板改質をすることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】第15回フラットパネルディスプレイ研究開発・製造技術展の配布資料「多様に進化する有機ELディスプレイ」(2005年4月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、面内発光均一性を有した高精細な発光を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る発光素子は、被形成面の表面に形成された第1電極と、前記第1電極と対をなす第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が印加されることにより発光する発光層と、前記被形成面の表面に形成され、前記発光層の発光には寄与しない第3電極と、を備える。
【0006】
本発明の請求項2に係る発光素子は、請求項1の構成において、前記第1電極及び前記第3電極は、前記被形成面の面方向に沿って交互に配置されている。
【0007】
本発明の請求項3に係る発光素子は、請求項1又は請求項2の構成において、前記第1電極と前記第3電極とが同じ材料である。
【0008】
本発明の請求項4に係る露光ヘッドは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光素子を備える。
【0009】
本発明の請求項5に係るカートリッジは、潜像を保持する潜像保持体、前記潜像保持体を帯電させる帯電装置及び前記潜像保持体の潜像を現像する現像装置の少なくとも1つと、前記潜像保持体に光を照射して潜像を形成する請求項4に記載の露光ヘッドと、を備える画像形成装置に着脱可能なカートリッジである。
【0010】
本発明の請求項6に係る画像形成装置は、潜像を保持する潜像保持体と、前記潜像保持体に光を照射して潜像を形成する請求項4に記載の露光ヘッドと、前記露光ヘッドによって形成された潜像を現像する現像装置と、を備える。
【0011】
本発明の請求項7に係る発光素子製造方法は、電圧を印加して発光材料溶液を帯電させる帯電工程と、前記帯電工程と逆極性の電圧を第1電極に印加する第1電圧印加工程と、前記第1電極と交互に配置された第2電極に前記帯電工程と同極性の電圧を印加する第2電圧印加工程と、前記第1電圧印加工程及び前記第2電圧印加工程による電圧印加がなされている状態において、前記帯電工程で帯電した発光材料溶液を前記第1電極に向けて供給する第1供給工程と、前記帯電工程と同極性の電圧を前記第2電極に印加する第3電圧印加工程と、前記帯電工程と逆極性の電圧を前記第1電極に印加する第4電圧印加工程と、前記第3電圧印加工程及び前記第4電圧印加工程による電圧印加がなされている状態において、前記帯電工程で帯電した発光材料溶液を前記第2電極に向けて供給する第2供給工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1の構成によれば、第3電極を有していない場合に比べ、面内発光均一性を有した高精細な発光を得ることができる。
【0013】
本発明の請求項2の構成によれば、本構成を有していない場合に比べ、面内発光均一性を有した高精細な発光を得ることができる。
【0014】
本発明の請求項3の構成によれば、本構成を有していない場合に比べ、高精細なパターニングができる。
【0015】
本発明の請求項4の構成によれば、本構成を有していない露光ヘッドに比べ、高精細な画像書き込みができる。
【0016】
本発明の請求項5の構成によれば、本構成を有していないカートリッジに比べ、高精細な画像書き込みができる。
【0017】
本発明の請求項6の構成によれば、本構成を有していない画像形成装置に比べ、高精細な画像が得られることができる。
【0018】
本発明の請求項7の構成によれば、本構成を有していない製造方法に比べ、膜の均一性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る露光ヘッドの構成を示す概略図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る露光ヘッドからの発光光が感光体ドラムに結像される状態を模式的に示した模式図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る露光ヘッドの構成を示す概略平面図である。
【図5】図5は、ボトムエミッション型の有機EL素子の構成を示す概略図である。
【図6】図6は、陽極と第3電極の形状を示す概略平面図である。
【図7】図7は、陽極と第3電極の形状の変形例を示す概略平面図である。
【図8】図8は、陽極と第3電極の形状の変形例を示す概略平面図である。
【図9−1】図9−1は、ボトムエミッション型の有機EL素子の製造工程を示す概略図である。
【図9−2】図9−2は、ボトムエミッション型の有機EL素子の製造工程を示す概略図である。
【図10】図10は、ボトムエミッション型の有機EL素子の製造工程のうちの発光層形成工程を示す概略図である。
【図11】図11は、第3電極を形成しない構成を示す概略平面図である。
【図12】図12は、発光材料溶液に溶解された発光材料を示す構造式である。
【図13】図13は、比較例1に係る陽極の構成を示す概略平面図である。
【図14】図14は、実施例1〜4と比較例1、2との評価結果を示す表である。
【図15】図15は、トップエミッション型の有機EL素子の構成を示す概略図である。
【図16−1】図16−1は、トップエミッション型の有機EL素子の製造工程を示す概略図である。
【図16−2】図16−2は、トップエミッション型の有機EL素子の製造工程を示す概略
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(本実施形態に係る画像形成装置10の構成)
まず、本実施形態に係る画像形成装置10の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置10の構成を示す概略図である。
【0021】
本実施形態に係る画像形成装置10は、図1に示すように、各構成部品を収容する装置筐体11と、用紙等の記録媒体Pが収容される記録媒体収容部12と、記録媒体Pにトナー画像を形成する画像形成部14と、記録媒体収容部12から画像形成部14へ記録媒体Pを搬送する搬送部16と、画像形成部14によって形成されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置18と、定着装置18によってトナー画像が定着された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部(図示省略)と、を備えている。
【0022】
記録媒体収容部12、画像形成部14、搬送部16及び定着装置18は、装置筐体11に収容されている。
【0023】
画像形成部14は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kと、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kで形成されたトナー画像が転写される中間転写体の一例としての中間転写ベルト24と、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kで形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写する一次転写部材の一例としての一次転写ロール26と、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像を記録媒体Pに転写する二次転写部材の一例としての二次転写ロール28と、を備えている。
【0024】
画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kは、潜像を保持する像保持体の一例として、一方向(図1において時計回り方向)へ回転する感光体ドラム30をそれぞれ有している。
【0025】
各感光体ドラム30の周囲には、感光体ドラム30の回転方向上流側から順に、感光体ドラム30の表面を帯電させる帯電装置32と、帯電した感光体ドラム30の表面を露光して感光体ドラム30の表面に静電潜像を形成する露光装置としての露光ヘッド34と、感光体ドラム30の表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置36と、トナー画像が中間転写ベルト24に転写された後の感光体ドラム30の表面に残留しているトナーを除去する除去装置40と、が設けられている。
【0026】
感光体ドラム30、帯電装置32、露光ヘッド34、現像装置36及び除去装置40は、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kに収容されてユニット化されている。画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kは、装置筐体11に着脱可能に設けられたプロセスカートリッジとされており、交換可能となっている。
【0027】
なお、感光体ドラム30、帯電装置32、露光ヘッド34、現像装置36及び除去装置40の全てがユニット化される必要は無い。例えば、感光体ドラム30、帯電装置32及び現像装置36の少なくとも1つと、露光ヘッド34とが、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kに収容されてユニット化されていれば良い。
【0028】
中間転写ベルト24は、二次転写ロール28に対向する対向ロール42、駆動ロール44及び支持ロール46によって支持され、感光体ドラム30と接触しながら一方向(図1において反時計回り方向)へ循環移動するようになっている。
【0029】
一次転写ロール26は、中間転写ベルト24を挟んで、感光体ドラム30に対向している。一次転写ロール26と感光体ドラム30との間には、感光体ドラム30上のトナー画像が中間転写ベルト24に一次転写される一次転写位置が形成される。この一次転写位置において、一次転写ロール26が感光体ドラム30の表面のトナー画像を圧接力と静電力により中間転写ベルト24に転写するようになっている。
【0030】
二次転写ロール28は、中間転写ベルト24を挟んで対向ロール42と対向している。二次転写ロール28と対向ロール42との間には、中間転写ベルト24上のトナー画像が記録媒体Pに二次転写される二次転写位置が形成される。この二次転写位置において、二次転写ロール28が中間転写ベルト24の表面のトナー画像を圧接力と静電力により記録媒体Pに転写するようになっている。
【0031】
搬送部16は、記録媒体収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール50と、送出ロール50によって送り出された記録媒体Pを二次転写位置へ搬送する搬送ロール対52と、を備えている。
【0032】
定着装置18は、二次転写位置より搬送方向下流側に配置されており、二次転写位置で転写されたトナー画像を記録媒体Pへ定着させる。
【0033】
二次転写位置より搬送方向下流側であって、定着装置18よりも搬送方向上流側には、定着装置18に記録媒体Pを搬送する搬送部材の一例としての搬送ベルト54が配置されている。
【0034】
以上の構成により、本実施形態に係る画像形成装置10では、まず記録媒体収容部12から送り出された記録媒体Pが、搬送ロール対52によって二次転写位置へ送り込まれる。
【0035】
一方、中間転写ベルト24には、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kで形成された各色のトナー画像が重ねられて、カラー画像が形成される。二次転写位置へ送り込まれた記録媒体Pは、中間転写ベルト24上に形成されたカラー画像が転写される。
【0036】
トナー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置18へ搬送され、転写されたトナー画像が定着装置18により定着される。トナー画像が定着された記録媒体Pは、記録媒体排出部(図示省略)へ排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0037】
なお、画像形成装置の構成としては、上記の構成に限られず、例えば、中間転写体を有さない直接転写型の画像形成装置でもよく、種々の構成とすることが可能である。
【0038】
(露光ヘッド34の構成)
次に、露光ヘッド34の構成を説明する。図2、図3及び図4は、本実施形態に係る露光ヘッド34の構成を示す概略図である。
【0039】
各露光ヘッド34は、図2及び図3に示すように、主走査方向Xに長尺状に形成された基板60と、発光素子アレイの一例としての有機EL(エレクトロルミネッセント)素子アレイ62と、有機EL素子アレイ62により生成された光を集光し、被照射面たる感光体ドラム30の表面に結像する結像素子アレイの一例としてのセルフォックレンズアレイ64と、を備えている。
【0040】
基板60は、絶縁性を有する基板で形成され、例えば、ガラス基板や樹脂基板で構成されている。
【0041】
有機EL素子アレイ62は、発光素子の一例としての有機EL素子70を有している。有機EL素子70は、画素数(ドット数)に応じて、図4に示すように、基板60に主走査方向Xへ沿って複数配列されている。
【0042】
有機EL素子70は、後述の陰極73及び陽極71が、図4に示すように、それぞれ帯状に形成されており、陰極73及び陽極71が重なる交差部に発光領域Rが形成される。陽極71は、発光領域R毎に分割されると共に、それぞれ露光ヘッド34の副走査方向Yに沿って延びており、発光領域Rに流れる電流は個別に制御される。陰極73は、露光ヘッド34の主走査方向Xに沿って延びており、全ての発光領域Rに対して共通に形成されている。
【0043】
また、基板60には、有機EL素子70を駆動する駆動回路の一例としてのドライバIC66が複数設けられている。ドライバIC66は、複数の有機EL素子70を個別に駆動するようになっている。
【0044】
セルフォックレンズアレイ64は、結像素子の一例としてのロッドレンズ64Aが複数配列されて構成されており、複数の有機EL素子70の光射出側に配置されている。
【0045】
セルフォックレンズアレイ64では、1ドットに対して複数のロッドレンズ64Aで正立等倍結像するように、各ロッドレンズ64Aが2次元状に配列されている。従って、各有機EL素子70からの発光光は、対応する複数のセルフォックレンズアレイ64を介して感光体ドラム30の表面に結像される。このように、有機EL素子70からの発光光によって、感光体ドラム30が露光されて潜像が形成される。
【0046】
なお、有機EL素子70に組み合わせる光学レンズとしては、セルフォックレンズアレイ64に限られず、シリンドリカルレンズを組み合わせても良い。また、個々の有機EL素子70上にマイクロレンズを接合しても良い。
【0047】
(有機EL素子70の構成)
次に、有機EL素子70の構成を説明する。
【0048】
有機EL素子70の構成としては、後述の発光層72から発生する光を基板60側から取り出すボトムエミッション型の有機EL素子と、後述の発光層72から発生する光を基板60とは反対側から取り出すトップエミッション型の有機EL素子とがある。
【0049】
なお、発光素子としては、有機EL素子に限られず、無機物を用いた無機EL素子であってもよい。
【0050】
(ボトムエミッション型の有機EL素子70Aの構成)
まず、ボトムエミッション型の有機EL素子70Aの構成を説明する。図5は、ボトムエミッション型の有機EL素子70Aの構成を示す概略図である。
【0051】
有機EL素子70Aは、図5に示すように、第1電極の一例としての陽極71と、陽極71と対をなす第2電極の一例としての陰極73と、発光層72の発光には寄与しない第3電極79と、陽極71と陰極73との間に配置された発光層72と、正孔注入層76と、反射層74と、封止層75とを備えている。陽極71、陰極73、発光層72、正孔注入層76、反射層74及び封止層75は、陽極71、正孔注入層76、発光層72、陰極73、反射層74、封止層75の順で、基板60に積層されている。
【0052】
なお、ボトムエミッション型の有機EL素子70Aとしては、正孔注入層76、反射層74及び封止層75を有さない構成であってもよく、少なくとも、陽極71、陰極73、発光層72及び第3電極79を有していれば良い。
【0053】
陽極71は、基板60表面に形成されている。陽極71の形状は、副走査方向Yに長くされた帯状とされている。具体的には、陽極71は、4辺で囲まれた4辺形状とされており、副走査方向Yに沿って延びる辺が長くされた矩形状に形成されている。
陽極71は、光を透過する透過性を有しており、発光層72から発生する光を基板60側から取り出すことを許容する。陽極71には、例えば、SnO2、In2O3、ITO、IZO:Alなどの導電性金属酸化物が用いられる。なお、陽極71の材料は、上記に限られるものではない。また、陽極71の厚さは、例えば、100nmとされる。なお、陽極71の厚さは、これに限られるものではない。
【0054】
正孔注入層76は、陽極71の表面に形成されている。正孔注入層76は、陰極73と陽極71との間に電圧が印加されることにより、陽極71側から正孔が注入される。正孔注入層76には、例えば、フタロシアニン類(CuPcなどを含む)またはインダンスレン系化合物などの低分子材料、MTDATA(4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、ポリアニリン、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート)等の高分子材料等が用いられる。なお、正孔注入層76の材料としては、上記に限られるものでない。また、正孔注入層76の厚さは、例えば、30nmとされる。なお、正孔注入層76の厚さは、これに限られるものではない。なお、正孔注入層76と陽極71との間には、正孔注入効率を高めるために正孔輸送層などを配置しても良い。
【0055】
発光層72は、正孔注入層76の表面に形成されている。発光層72には、陰極73と陽極71との間に電圧が印加されることにより、陰極73側から電子が注入される。また、発光層72には、正孔注入層76に注入された正孔が移動し、この正孔と電子とが発光層72で結合することにより、発光層72が発光する。
【0056】
発光層72としては、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、又はオキサジアゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又はポリアセチレン誘導体等が挙げられる。なお、発光層72の材料としては、上記に限られるものでない。また、発光層72の厚さは、例えば、50nmとされる。なお、発光層72の厚さは、これに限られるものではない。
【0057】
陰極73は、発光層72の表面に形成されている。有機EL素子70Aでは、発光層72で発生した光を基板60側から取り出すため、陰極73は、光を透過する透過性を有している必要性はない。本実施形態では、陰極73は、一層で構成されている。なお、陰極73は複数層で構成されていてもよい。
【0058】
陰極73は、例えば、Caで構成されている。なお、陰極73の材料は、上記に限られるものではない。陰極73の材料としては、例えば、SnO2、In2O3、ITO、IZO:Alなどの導電性金属酸化物を用いてもよい。陰極73の厚さは、例えば、30nmとされる。なお、陰極73の厚さは、これに限られるものではない。また、陰極73と発光層72との間には、電子注入効率を高めるための電子注入層や電子輸送層などを配置しても良い。
【0059】
反射層74は、陰極73表面に形成されている。反射層74は、発光層72からの光を発光層72側に反射する。反射層74には、例えば、Al、Ag、Mo、W、Ni、Crなどが用いられている。なお、反射層74の材料としては、上記に限られるものではない。また、反射層74の厚さは、例えば、150nmとされる。なお、反射層74の厚さは、これに限られるものではない。
【0060】
第3電極79は、基板60表面に形成されている。第3電極79は、図6に示すように、陽極71の間に配置された複数の第1部位79Aと、第1部位79Aの一端部同士をつなぐ第2部位79Bとを備えている。
【0061】
第3電極79の第1部位79Aが陽極71の間に配置されることにより、陽極71及び第3電極79は、基板60の面方向に沿って交互に配置される。
また、第1部位79Aは、陽極71に沿って延び設けられている。第1部位79Aは、主走査方向Xに沿った幅が、副走査方向Yの一方から他方にかけて一定とされている。
【0062】
第3電極79の第2部位79Bは、陽極71(第1部位79A)の配置方向(露光ヘッド34の主走査方向X)に沿って延び設けられており、第1部位79Aの長手方向の一端部同士が連結されている。第2部位79Bは、副走査方向Yに沿った幅が、主走査方向Xの一方から他方にかけて一定とされている。
【0063】
また、第3電極79の第1部位79A及び第2部位79Bと陽極71との間には、隙間77が形成されている。この隙間77は、一定幅とされている。
【0064】
第3電極79の第1部位79A及び第2部位79Bが上記のように形成されることにより、陽極71は、その周囲3方を第3電極79の第1部位79A及び第2部位79Bによって囲まれる。
【0065】
第3電極79の厚さは、陽極71と同様に、例えば、100nmとされる。なお、第3電極79の厚さは、これに限られるものではない。
【0066】
なお、発光領域Rの幅Wは、露光ヘッド34の解像度によるが600dpi時で、20μm程度、1200dpi時で10μm程度である。
【0067】
また、陽極71及び第3電極79の形状は、上記に示したものに限られず、例えば、図7及び図8に示す形状としても良い。
【0068】
図7に示す構成では、陽極71は、発光領域Rとなる発光領域部位71Xと、発光領域Rとならない非発光領域部位71Yとを備えている。発光領域部位71Xは、4辺で囲まれた4辺形状とされており、副走査方向Yに沿って延びる辺が長くされた矩形状に形成されている。非発光領域部位71Yも、発光領域部位71Xと同様に、4辺で囲まれた4辺形状とされており、副走査方向Yに沿って延びる辺が長くされた矩形状に形成されている。
【0069】
非発光領域部位71Yは、発光領域部位71Xよりも主走査方向Xの幅が狭くされた形状とされている。非発光領域部位71Yは、発光領域部位71Xの副走査方向一方側の辺の中央部に連結されており、発光領域部位71Xから副走査方向Yの一方に延び設けられている。
【0070】
また、第3電極79の第1部位79Aは、陽極71の非発光領域部位71Yに隣接する部分において、発光領域部位71Xに隣接する部分より、主走査方向Xの幅が太くされている。
【0071】
図8に示す構成では、陽極71は、発光領域部位71Xが円形状に形成されている。非発光領域部位71Yは、4辺で囲まれた4辺形状とされており、副走査方向Yに沿って延びる辺が長くされた帯状に形成されている。
【0072】
非発光領域部位71Yは、発光領域部位71Xの直径よりも主走査方向Xの幅が狭くされた形状とされている。非発光領域部位71Yは、発光領域部位71Xに連結されており、発光領域部位71Xから副走査方向Yの一方に延び設けられている。
【0073】
また、第3電極79の第1部位79Aは、陽極71の発光領域部位71Xに隣接する部分において、発光領域部位71Xに対向する外縁が、発光領域部位71Xの外縁に沿って、円弧状にされている。また、陽極71の発光領域部位71Xに隣接する部分は、副走査方向Yの両端部から中央部に向かって、主走査方向Xに沿った幅が徐々に狭くなっている。
【0074】
さらに、第3電極79の第1部位79Aは、陽極71の非発光領域部位71Yに隣接する部分において、発光領域部位71Xに隣接する部分の主走査方向Xの最小幅より、主走査方向Xの幅が太くされている。
【0075】
(ボトムエミッション型の有機EL素子70Aの製造方法)
次に、ボトムエミッション型の有機EL素子70Aの製造方法の一例について説明する。図9−1及び図9−2は、ボトムエミッション型の有機EL素子70Aの製造方法を説明するための概略図である。なお、ボトムエミッション型の有機EL素子70Aの製造方法は、下記に限られず、種々の方法を用いることが可能である。
【0076】
まず、図9−1(A)に示すように、陽極71を基板60上に形成する。第3電極79を基板60上に陽極71間に形成する。陽極71の形成及び第3電極79の形成は、同一工程でなされる。陽極71の形成及び第3電極79の形成は、例えば、溶液を吐出するインクジェット法により行われる。
【0077】
なお、陽極71及び第3電極79の形成方法としては、種々の方法を用いることが可能である。例えば、印刷、スピンコートなどにて形成した後に、フォトリソエッチングにより、予め定められたサイズにパターニングすることにより、陽極71及び第3電極79を形成してもよい。
【0078】
次に、図9−1(B)に示すように、正孔注入層76を陽極71上に形成する。正孔注入層76は、例えば、スプレー法により形成される。なお、正孔注入層76の形成方法としては、種々の方法を用いることが可能である。例えば、インクジェット法、スピンコート、印刷により正孔注入層76を形成してもよい。
【0079】
次に、図9−2(C)及び図10に示すように、発光材料を含んだ発光材料溶液を供給することにより発光層72を形成する。発光層72を形成する発光層形成工程は、電圧を印加して発光材料溶液を帯電させる帯電工程と、帯電工程と逆極性の電圧を陽極71に印加する第1電圧印加工程と、第3電極79に帯電工程と同極性の電圧を印加する第2電圧印加工程と、第1電圧印加工程及び第2電圧印加工程による電圧印加がなされている状態において、帯電工程で帯電した発光材料溶液を陽極71に向けて供給する供給工程と、を備えて構成されている。
【0080】
具体的には、発光材料を含んだ発光材料溶液を金属ノズルのついたキャピラリ100に充填し、そのキャピラリ100に例えば5000Vを印加する。これにより、キャピラリ100のノズルから吐出される発光材料溶液を帯電させる。また、陽極71を接地すると共に、第3電極79に例えば1000Vを印加する。そして、発光材料溶液をキャピラリ100から陽極71に向けて吐出する。これにより、発光材料溶液は、第3電極79から反発力が作用すると共に、陽極71に吸引され、発光層72が陽極71表面に形成される。発光材料溶液としては、溶媒に発光材料を溶解したものが用いられる。なお、図10においては、正孔注入層76を省略して図示している。
【0081】
次に、図9−2(D)に示すように、陰極73としてのCa及び反射層74としてのAl膜を蒸着等により形成する。なお、陰極73及び反射層74の形成方法としては、種々の方法を用いることが可能である。最後に封止層75を形成する。
【0082】
なお、上記の発光層72を形成する発光層形成工程は、第3電極79を有さない構成であっても適用することが可能である。第3電極79を有さない構成としては、図11に示すように、陽極71A及び陽極71Bが、基板60の面方向に沿って交互に配置される構成がある。また、陽極71Aの発光領域部位71X及び陽極71Bの発光領域部位71Xはそれぞれ、主走査方向Xに沿って一列に配置されるとともに、陽極71Aの発光領域部位71Xは、陽極71Bの発光領域部位71Xに対して副走査方向Yにずれており、千鳥状に配置されている。
【0083】
この構成における発光層形成工程の変形例では、電圧を印加して発光材料溶液を帯電させる帯電工程と、帯電工程と逆極性の電圧を陽極71Aに印加する第1電圧印加工程と、陽極71Bに帯電工程と同極性の電圧を印加する第2電圧印加工程と、第1電圧印加工程及び第2電圧印加工程による電圧印加がなされている状態において、帯電工程で帯電した発光材料溶液を陽極71Aに向けて供給する第1供給工程と、帯電工程と同極性の電圧を陽極71Bに印加する第3電圧印加工程と、帯電工程と逆極性の電圧を陽極71Aに印加する第4電圧印加工程と、第3電圧印加工程及び第4電圧印加工程による電圧印加がなされている状態において、帯電工程で帯電した発光材料溶液を陽極71Bに向けて供給する第2供給工程と、を備えて構成されている。
【0084】
具体的には、発光材料を含んだ発光材料溶液を金属ノズルのついたキャピラリ100に充填し、そのキャピラリ100に例えば5000Vを印加する。これにより、キャピラリ100のノズルから吐出される発光材料溶液を帯電させる。また、陽極71Aを接地すると共に、陽極71Bに例えば1000Vを印加する。そして、発光材料溶液をキャピラリ100から陽極71Aに向けて吐出する。これにより、発光材料溶液は、陽極71Bから反発力が作用すると共に、陽極71Aに吸引され、発光層72が陽極71A表面に形成される。
【0085】
次に、陽極71Bを接地すると共に、陽極71Aに例えば1000Vを印加する。そして、発光材料溶液をキャピラリ100から陽極71Bに向けて吐出する。これにより、発光材料溶液は、陽極71Aから反発力が作用すると共に、陽極71Bに吸引され、発光層72が陽極71B表面に形成される。このようにして陽極71A及び陽極71Bの両方の表面に発光層72が形成される。なお、図11においては、発光材料溶液が吸引される側の電極をドットにて示している。
【0086】
このように、この構成では、陽極71Aと陽極71Bとで印加する電圧を替える必要があるため工程が増えるが、第3電極79を形成する必要がない。一方、上述した第3電極79を設ける構成では、電圧の切り替えが不要であり、一の工程で発光層72が形成される。
【0087】
(ボトムエミッション型の有機EL素子70Aの評価)
次に、ボトムエミッション型の有機EL素子70Aの評価について説明する。
【0088】
この評価では、ボトムエミッション型の有機EL素子70Aとしての実施例1〜4と、比較例1、2とを比較評価した。この実施例1〜4及び比較例1、2に対して、材料使用効率と、発光層72の膜のラフネスと、発光領域R内における発光ムラの有無と、を評価した。
発光層の膜のラフネスは、触針式表面形状測定器を用いて評価を行った。また、発光ムラの有無は、マイクロスコープにて評価を行った。
【0089】
材料使用効率は、キャピラリ100から吐出させた発光材料溶液の量に対して、陽極71に塗布された量を示すものであり、キャピラリ100から吐出させた発光材料溶液の全てが陽極71に塗布された場合が100%となる。
【0090】
<実施例1>
実施例1では、基板60としてのガラス基板に、図6に示すように、陽極71としてのITOが20μm幅で、20μmピッチで形成されると共に、10μm幅の第3電極79がITOにて形成されている。陽極71には、正孔注入層としてのPEDOT/PSSが、80nm均一に形成されている。発光層72は、図12に示す構造式の発光材料をキシレンに1wt%溶解した発光材料溶液を金属ノズルのついたキャピラリ100に充填し、陽極71を接地し、第3電極79に1000V印加し、キャピラリ100に5000V印加し、スプレー塗布にて80nmの膜を作製した。最後に、20μm幅のマスクを用い、陰極73としてのCa、反射層74としてのAlを蒸着した。
【0091】
<実施例2>
陽極71及び第3電極79の形状を図7のように形成した以外は、実施例1と同様に形成した。
【0092】
<実施例3>
陽極71及び第3電極79の形状を図8のように形成した以外は、実施例1と同様に形成した。
【0093】
<実施例4>
実施例4では、基板60としてのガラス基板に、図11に示すように、千鳥状に配置された陽極71としてのITOが、発光領域部位71Xにおいて20μm幅で、20μmピッチで形成されている。陽極71には、正孔注入層としてのPEDOT/PSSが、80nm均一に形成されている。発光層72は、図12に示す構造式の発光材料をキシレンに1wt%溶解した塗布液を金属ノズルのついたキャピラリ100に充填し、陽極71Aを接地し、陽極71Bに1000V印加し、キャピラリ100に5000V印加し、スプレー塗布にて80nmの膜を作製した。次に、発光層72が形成されていない陽極71Bを接地し、発光層72が形成された陽極71Aに1000V印加し、キャピラリ100に5000V印加し、スプレー塗布にて80nmの膜を作製した。最後に、20μm幅のマスクを用い、陰極73としてのCa、反射層74としてのAlを蒸着した。
【0094】
<比較例1>
比較例1では、基板60としてのガラス基板に、図13に示すように、矩形状の陽極71としてのITOが、20μm幅で、20μmピッチで形成されている。陽極71には、正孔注入層としてのPEDOT/PSSが、80nm均一に形成されている。発光層72は、図12に示す構造式の発光材料をキシレンに1wt%溶解した塗布液を金属ノズルのついたキャピラリ100に充填し、陽極71を接地し、キャピラリ100に5000V印加し、スプレー塗布にて80nmの膜を作製した。最後に、20μm幅のマスクを用い、陰極73としてのCa、反射層74としてのAlを蒸着した。
【0095】
<比較例2>
比較例2では、基板60としてのガラス基板に、図11に示すように、千鳥状に配置された陽極71としてのITOが、発光領域部位71Xにおいて20μm幅で、20μmピッチで形成されている。陽極71には、正孔注入層としてのPEDOT/PSSが、80nm均一に形成されている。発光層72は、図12に示す構造式の発光材料をキシレンに1wt%溶解した塗布液を金属ノズルのついたキャピラリ100に充填し、陽極71を接地し、キャピラリ100に5000V印加し、スプレー塗布にて80nmの膜を作製した。最後に、20μm幅のマスクを用い、陰極73としてのCa、反射層74としてのAlを蒸着した。
【0096】
この結果は、図14に示すように、実施例1〜4は、比較例1、2に比べて、材料使用効率がよいことがわかった。また、比較例1、2では、エッジ部に突起ができ、発光層72層の膜厚が不均一であるのに対して、実施例1〜4では、発光層72層の膜厚が均一であった。また、実施例1〜4は、比較例1、2に比べて、発光領域内における発光ムラが無いことがわかった。
【0097】
なお、実施例2及び実施例3のほうが、実施例1に比べて、材料使用効率が良いのは、第3電極79の第1部位79Aが、陽極71の非発光領域部位71Yに隣接する部分において、主走査方向Xの幅が太くされているため、発光材料溶液を反発する反発力が強く作用したためと考えられる。また、図14では示されていないが、実施例3のほうが、実施例1及び実施例2に比べて、膜厚の均一性が高い。これは、陽極71の発光領域部位71Xにエッジ(角部)があると、第3電極79に2方から囲まれているため、反発された発光材料溶液がエッジに付着しやすいが、実施例3ではエッジがないためである。
【0098】
(トップエミッション型の有機EL素子70B)
次に、トップエミッション型の有機EL素子70Bについて説明する。図15は、トップエミッション型の有機EL素子70Bの構成を示す概略図である。
【0099】
有機EL素子70Bは、図15に示すように、有機EL素子70Aと同様に、陽極71と、陽極71と対をなす陰極73と、陽極71と陰極73との間に配置された発光層72と、反射層74と、正孔注入層76と、封止層75とを備えている。
【0100】
陽極71、陰極73、発光層72、反射層74、正孔注入層76及び封止層75は、反射層74、陽極71、正孔注入層76、発光層72、陰極73、封止層75の順で、基板60に積層されている。
【0101】
反射層74、陽極71、正孔注入層76及び発光層72の材料等の構成は、有機EL素子70Aと同様であるので、省略する。
【0102】
なお、陽極71は、有機EL素子70Bでは、発光層72から発生した光を基板60と反対側から取り出すため、陽極71は、光を透過する透過性を有している必要性はない。
【0103】
陰極73は、光を透過する透過性を有しており、発光層72から発生する光を基板60とは反対側から取り出すことを許容する。本実施形態では、陰極73は、第1層73Xと第2層73Yとを備えている。第1層73Xは、発光層72側に配置されており、例えば、Caで構成されている。第2層73Yは、発光層72とは反対側に配置されており、例えば、Alで構成されている。また、第1層73Xの厚さは、例えば、20nmとされ、第2層73Yの厚さは、例えば、数十nmとされる。なお、第1層73X及び第2層73Yの厚さは、これに限られるものではない。
【0104】
また、陰極73は一層で構成されていてもよい。また、陰極73の材料は、上記の限られるものではなく、例えば、SnO2、In2O3、ITO、IZO:Alなどの導電性金属酸化物を用いてもよい。
【0105】
第3電極79は、基板60表面に形成されている。第3電極79は、図6に示すように、陽極71の間に配置された複数の第1部位79Aと、第1部位79Aの一端部同士をつなぐ第2部位79Bとを備えている。
【0106】
第3電極79の第1部位79Aが陽極71の間に配置されることにより、陽極71及び第3電極79は、基板60の面方向に沿って交互に配置される。
また、第1部位79Aは、陽極71に沿って延び設けられている。第1部位79Aは、主走査方向Xに沿った幅が、副走査方向Yの一方から他方にかけて一定とされている。
【0107】
第3電極79の第2部位79Bは、陽極71(第1部位79A)の配置方向(露光ヘッド34の主走査方向X)に沿って延び設けられており、第1部位79Aの長手方向の一端部同士が連結されている。第2部位79Bは、副走査方向Yに沿った幅が、主走査方向Xの一方から他方にかけて一定とされている。
【0108】
また、第3電極79の第1部位79A及び第2部位79Bと陽極71との間には、隙間77が形成されている。この隙間77は、一定幅とされている。
【0109】
第3電極79の第1部位79A及び第2部位79Bが上記のように形成されることにより、陽極71は、その周囲3方を第3電極79の第1部位79A及び第2部位79Bによって囲まれる。
【0110】
第3電極79の厚さは、陽極71と同様に、例えば、100nmとされる。なお、第3電極79の厚さは、これに限られるものではない。
【0111】
なお、発光領域Rの幅Wは、露光ヘッド34の解像度によるが600dpi時で、20μm程度、1200dpi時で10μm程度である。
【0112】
また、陽極71及び第3電極79の形状は、上記に示したもの限られず、例えば、図7及び図8に示す形状としても良い。なお、図7及び図8の構成は、上述したとおりである。
【0113】
(トップエミッション型の有機EL素子70Bの製造方法)
次に、トップエミッション型の有機EL素子70Bの製造方法の一例について説明する。図16−1及び図16−2は、トップエミッション型の有機EL素子70Bの製造方法を説明するための図である。なお、トップエミッション型の有機EL素子70Bの製造方法は、下記に限られず、種々の方法を用いることが可能である。
【0114】
まず、図16−1(A)に示すように、基板60上に、反射層74としてのAl膜を蒸着により形成し、その形成されたAl膜をフォトリソエッチングによりパターニングする。なお、反射層74の形成方法としては、種々の方法を用いることが可能である。
【0115】
次に、陽極71を反射層74上に形成する。第3電極79を反射層74上に陽極71間に形成する。陽極71の形成及び第3電極79の形成は、同一工程でなされる。陽極71の形成及び第3電極79の形成は、例えば、材料を含んだ溶液を吐出するインクジェット法により行われる。
【0116】
なお、陽極71及び第3電極79の形成方法としては、種々の方法を用いることが可能である。例えば、印刷、スピンコートなどにて形成した後に、フォトリソエッチングにより、予め定められたサイズにパターニングすることにより、陽極71及び第3電極79を形成してもよい。
【0117】
次に、図16−1(B)に示すように、正孔注入層76を陽極71上に形成する。正孔注入層76は、例えば、スプレー法により形成される。なお、正孔注入層76の形成方法としては、種々の方法を用いることが可能である。例えば、インクジェット法、スピンコート、印刷により正孔注入層76を形成してもよい。
【0118】
次に、図16−2(C)及び図10に示すように、発光材料を含んだ発光材料溶液を供給することにより発光層72を形成する。発光層72を形成する発光層形成工程は、電圧を印加して発光材料溶液を帯電させる帯電工程と、帯電工程と逆極性の電圧を陽極71に印加する第1電圧印加工程と、第3電極79に帯電工程と同極性の電圧を印加する第2電圧印加工程と、第1電圧印加工程及び第2電圧印加工程による電圧印加がなされている状態において、帯電工程で帯電した発光材料溶液を陽極71に向けて供給する供給工程と、を備えて構成されている。
【0119】
具体的には、発光材料を含んだ発光材料溶液を金属ノズルのついたキャピラリ100に充填し、そのキャピラリ100に例えば5000Vを印加する。これにより、キャピラリ100のノズルから吐出される発光材料溶液を帯電させる。また、陽極71を接地すると共に、第3電極79に例えば1000Vを印加する。そして、発光材料溶液をキャピラリ100から陽極71に向けて吐出する。これにより、発光材料溶液は、第3電極79から反発力が作用すると共に、陽極71に吸引され、発光層72が陽極71表面に形成される。発光材料溶液としては、溶媒に発光材料を溶解したものが用いられる。なお、図10においては、正孔注入層76及び反射層74を省略して図示している。
【0120】
次に、図16−2(D)に示すように、陰極73としてのCa及びAl膜を蒸着等により形成する。なお、陰極73の形成方法としては、種々の方法を用いることが可能である。最後に封止層75を形成する。
【0121】
なお、上記の発光層72を形成する発光層形成工程は、ボトムエミッション型の有機EL素子70A場合と同様に、第3電極79を有さない構成であっても適用することが可能である。
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0122】
10 画像形成装置
22C、22M、22Y、22K 画像形成ユニット
30 感光体ドラム(像保持体)
34 露光ヘッド
36 現像装置
70 有機EL素子
71 陽極(第1電極)
72 発光層
73 陰極(第2電極)
79 第3電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被形成面の表面に形成された第1電極と、
前記第1電極と対をなす第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が印加されることにより発光する発光層と、
前記被形成面の表面に形成され、前記発光層の発光には寄与しない第3電極と、
を備える発光素子。
【請求項2】
前記第1電極及び前記第3電極は、前記被形成面の面方向に沿って交互に配置されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1電極と前記第3電極とが同じ材料である請求項1又は請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光素子を備える露光ヘッド。
【請求項5】
潜像を保持する潜像保持体、前記潜像保持体を帯電させる帯電装置及び前記潜像保持体の潜像を現像する現像装置の少なくとも1つと、
前記潜像保持体に光を照射して潜像を形成する請求項4に記載の露光ヘッドと、
を備える画像形成装置に着脱可能なカートリッジ。
【請求項6】
潜像を保持する潜像保持体と、
前記潜像保持体に光を照射して潜像を形成する請求項4に記載の露光ヘッドと、
前記露光ヘッドによって形成された潜像を現像する現像装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項7】
電圧を印加して発光材料溶液を帯電させる帯電工程と、
前記帯電工程と逆極性の電圧を第1電極に印加する第1電圧印加工程と、
前記第1電極と交互に配置された第2電極に前記帯電工程と同極性の電圧を印加する第2電圧印加工程と、
前記第1電圧印加工程及び前記第2電圧印加工程による電圧印加がなされている状態において、前記帯電工程で帯電した発光材料溶液を前記第1電極に向けて供給する第1供給工程と、
前記帯電工程と同極性の電圧を前記第2電極に印加する第3電圧印加工程と、
前記帯電工程と逆極性の電圧を前記第1電極に印加する第4電圧印加工程と、
前記第3電圧印加工程及び前記第4電圧印加工程による電圧印加がなされている状態において、前記帯電工程で帯電した発光材料溶液を前記第2電極に向けて供給する第2供給工程と、
を備える発光素子製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【公開番号】特開2010−219115(P2010−219115A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61187(P2009−61187)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】