説明

発光素子制御回路装置およびその制御方法

【課題】
消費電流が所定のタイミングに集中するのを排除するとともにノイズの発生を抑制することができる発光素子制御回路装置を提供する
【解決手段】
発光素子制御回路装置100は、電源V1、トランジスタTR1、発光ユニットEU1、スイッチSW1〜SW17、定電流源回路CC1〜CC17および制御部110を備える。制御部110からはトランジスタTRが断続的にオンオフするようにスイッチング電圧Vs1が印加され、トランジスタTR1のドレインDに接続されたパルス電圧供給線Y1にパルス電圧が出力される。スイッチSW1〜SW17にはオンオフ動作を切り替える駆動信号SP1〜SP17が時分割で供給される。発光素子A1〜A17はパルス電圧供給線Y1にハイ(H)レベルの電圧が生じている期間であって、駆動信号SP1〜SP17がオンされた期間、時分割にパルス通電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子をオンタイミング又はオフタイミングをずらして発光させ、消費電流が所定のタイミングに集中するのを排除し、消費電流が増大することによって生じるノイズを抑制することができる発光素子制御回路装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子、表示素子としてよく知られている半導体素子としては発光ダイオード(LED;Lighting Emitting Diode)、有機発光ダイオード(OLED;Organic
Lighting Emitting Diode)、レーザーダイオード(LD;Laser Diode)などが知られている。発光素子はたとえば、携帯電話、時計、キャラクター表示、装飾等に用いられる。
【0003】
図5は特許文献1(特開2001−343936号公報、図1)に示された画像形成装置を示す。画像形成装置の表示装置には、操作パネルに含まれる4×3のマトリクスにより構成されたLEDダイナミック駆動部が示される。なお、特許文献1に開示された画像形成装置はマトリクス配列された発光ダイオードを用いた操作パネルの消費電力を低減させるというものである。
【0004】
図5を参照すると、LEDダイナミック駆動部は、4つのPNPトランジスタTR0乃至TR3を用いたコモンドライバ1、マトリクス状に配列された4×3のLED群2を備える。また、各発色光、すなわち、緑(G0、G1、G2、G3)、赤(R0、R1、R2、R3)、及び黄色(Y0、Y1、Y2、Y3)に流れる電流を調整するための電流制限抵抗群3、および3つのNPN型トランジスタTRG、TRR、TYYを用いたデータドライバ4を備える。LED群2は、2つのドライバ、すなわち、コモンドライバ1及びデータドライバ4によって駆動される。
【0005】
CPU5は画像形成装置の制御をつかさどり、所定の条件に応じて2つのドライバで指定された駆動トランジスタを時分割的に駆動するための駆動信号を出力ポートCOM0乃至COM3及び出力ポートDATA0乃至2に出力する。CPU5は、読出し専用メモリROM7に格納されているプログラムと読み書き自由なメモリRAM8に記憶されている情報に基づいて、LEDダイナミック駆動部を含む画像形成装置全体を制御する中央処理装置である。
【0006】
コモンドライバ1の各PNP型トランジスタTR0乃至TR3のエミッタは5Vの電源と接続され、各コレクタはLED群2のそれぞれ対応する位置に配置されている。
【0007】
PNPトランジスタTR0乃至TR3のベースは、CPU5の対応する出力ポートCOM0乃至COM3にそれぞれ接続されている。出力ポートCOM0乃至COM3には時分割駆動信号が出力される。時分割駆動信号が“High(H)”レベルにあるときは、PNPトランジスタTR0乃至TR3はオフ状態にあるが、“Low(L)”レベルにあるときは、これらのトランジスタはオンの状態に移行する。
【0008】
一方、データドライバ4の各NPN型トランジスタTRG、TRR、TYYは発色光対応に設けられており、その各エミッタはアースに接続され、各コレクタは対応する電流制限抵抗RG、RR、RYを介して、それぞれの発色光を有するLEDの各カソード側に接続されている。また、トランジスタTRG、TRR、TYYのベースCPU5の出力ポートDATA0乃至DATA2にそれぞれ接続されている。出力ポートDATA0乃至DATA2に出力される時分割の駆動信号が“Low(L)”レベルのままでは、トランジスタTRG、TRR、TYYはオフの状態にあるが、“High(H)”レベルとすると、トランジスタTRG、TRR、TYYはオンの状態になる。
【0009】
したがって、コモンドライバ1のいずれかのPNP型トランジスタTRi(iは0乃至3のいずれかを示す)のベース電圧を“L”とすると同時に、データドライバ4のいずれかのNPN型トランジスタTRj(jはG,R,Yのいずれかを示す)のベースの電圧レベルを“H”とすると選択された(i,j)に配置されているLEDに電流が流され点灯される。
【0010】
特許文献1にはマトリクス状に配列された発光ダイオードを時分割駆動させる第1及び第2の駆動手段、すなわち、コモンドライバ1とデータドライバ4の間にLEDマトリクス2が直列に接続されているものが開示されている。
【0011】
図6は、本出願人がすでに提案済みの特許文献2(国際公開第WO2006/137273号パンフレット、図1)に示された、発光制御回路を一部参照符号を替えて示す。発光制御回路600は、PWM制御回路61と、昇圧回路62と、スイッチSW1〜SW3と、定電流ドライバK1〜K3とを備える。
【0012】
図6に示される発光制御回路600の回路構成の特徴は要約すると次のとおりである。すなわち、複数個の発光素子D1、D2、およびD3を点灯させる発光制御回路600は、発光素子D1、D2、およびD3に供給するための電流Io1、Io2、およびIo3を発生する電流源回路K1、K2、およびK3を備える。また、発光制御回路600は発光素子に対応して配置され、電流源回路K1、K2、およびK3が発生した電流を発光素子に供給するか否かを切り替える複数個のスイッチSW1、SW2、SW3と、各スイッチSW1、SW2、SW3を制御して電流源回路が発生した電流を各発光素子に断続的に供給し、かつ、電流供給の停止状態から開始状態への切り替えを発光素子ごとに異なるタイミングで行うPWM制御回路61を備える。
【0013】
したがって、特許文献2は発光素子D1、D2、およびD3に電流を供給するにあたり、電流供給の停止状態から開始状態への切り替えを発光素子ごとに異なるタイミングで行うものであるから特許文献1と同様に発光素子を時分割で制御するものを開示している。
【0014】
図7は特許文献3、図1(a)に示されたLED駆動装置について一部参照符号を替え、かつ、一部参照符号を追加するとともに、図1(b)の一部も追加して示す。
【0015】
特許文献3は、LEDをLCDのバックライトや各種照明として用い、明るさを調節するためにLEDをパルス幅によって通電制御する際、並列接続した多くのLEDが一斉にオンオフすることによって生じるノイズを防止し、また、LEDの急激な光度増加時にもLEDが安定して作動することができるようにしたLED駆動を提供するとしている。
【0016】
図7において、LED駆動装置700は、LED発光部71とLED発光部71を制御するLED駆動制御部72とを備える。LED発光部71にはそれぞれ複数のLEDを直列に接続したLEDG1、LEDG2、LEDG3、LEDG4、LEDG5の5グループ並列に接続した構成が示されている。LED発光部71には電源73から電流が供給され、各LEDグループのアース線側にスイッチング素子としてのトランジスタをLEDグループごとにTr.1、Tr.2、Tr.3、Tr.4、Tr.5の5個設け、これらを制御指示信号Sに応じて駆動パルスを供給するPWM(Pulse Width Modulation)制御部74から、駆動信号DRV1、DRV2、DRV3、DRV4、DRV5を出力して駆動制御を行うものを示す。
【0017】
PWM制御部74では、LEDの明るさの制御指示信号Sを入力すると、PWMとして駆動信号DRV1、DRV2、DRV3、DRV4、およびDRV5を出力する。PWM制御部74にLED明るさ指示信号Sが入力されると、その指示信号に応じたパルス幅の駆動信号を出力する。その際各駆動信号の1周期TをLEDのグループ数に分割して順に出力する。図7においては、LEDのグループ数が5個であるため、1周期を5分割し、第1LEDグループLEDG1の電流制御を行う第1トランジスタTr.1を駆動するパルス信号である駆動信号DRV1は、時刻t1で立ち上がる。第2LEDグループLEDG2の電流制御を行う第2トランジスタTr.2を駆動するパルス信号である駆動信号DRV2は、第1トランジスタTr.1の立ち上がり時刻t1よりT/5周期遅れたタイミングで立ち上がる。同様に、第3LEDグループLEDG3の電流制御を行う第3トランジスタTr.3を駆動するパルス信号である駆動信号DRV3は、第2トランジスタTr.2の立ち上がり時刻よりT/5周期遅れたタイミングで立ち上がる。同様に、第4LEDグループLEDG4の電流制御を行う第4トランジスタTr.4を駆動するパルス信号である駆動信号DRV4は、第3トランジスタTr.3の立ち上がり時刻よりT/5周期遅れたタイミングで立ち上がる。同様に、第5LEDグループLEDG5の電流制御を行う第5トランジスタTr.5を駆動するパルス信号である駆動信号DRV5は、第4トランジスタTr.4の立ち上がり時刻よりT/5周期遅れたタイミングで立ち上がる。このようにして、LEDのグループ数に応じて数に時分割され各LEDの点灯が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2001−343936号公報(図1)
【特許文献2】国際公開第WO2006/137273号パンフレット(図1)
【特許文献3】特開2008−91311号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献1には発光ダイオードに供給する電圧、電流の両者を時分割駆動するものが示唆されていることは認められる。しかし仔細にみると、複数の発光素子それぞれがパルス通電の1周期の所定時間遅れて駆動されるということまでは示唆していない。
【0020】
特許文献2は発光素子に時分割で電流を供給するというものを開示するも、電圧および電流の両者を時分割で供給するということまでは開示していない。また、発光素子をマトリクス状に配置した発光素子を個々に制御するという技術的思想も開示していない。
【0021】
特許文献3は特許文献2と同様に発光素子に時分割で電流を供給するという技術的思想を開示する。しかし、特許文献3にも発光素子に供給する電圧および電流の両者を時分割で供給するということまでは開示していない。また、発光素子をマトリクス状に配置した発光素子を個々に制御するという技術的思想も開示していない。
【0022】
本発明の発光素子制御回路装置は、上記特許文献1〜3の構成要件の一部を包含するが、さらに消費電力を低減し、さらに特定のタイミングで発光素子がオンオフすることで生じるノイズの発生を低減することができる発光素子制御回路装置を提供するものである。特に、m(mは2以上の整数)行n(nは2以上の整数)列に配置された個々の発光素子のオンオフのタイミングが重ならないようにずらすことによって、電流が特定のタイミングに集中することを排除した発光素子制御回路装置およびその制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明にかかる第1の発光素子制御回路装置は、
(a)複数の発光素子と、
(b)複数の発光素子に対して所定間隔で各別にパルス通電を行う複数の駆動制御線と、
(c)複数の発光素子にオンまたはオフ状態に遷移するパルス電圧を供給するパルス電圧供給線とを備え、
パルス電圧供給線がオン状態に遷移したときに複数の発光素子それぞれがパルス通電の1周期の所定時間遅れて駆動される。こうした構成によれば、発光素子は所定時間ずつ遅れて点灯するといういわゆる時分割で点灯されるので、複数の発光素子が同時に点灯するときに電流が集中して生じるノイズを抑制することができる。また、発光素子が点灯する期間に限って電源側から発光素子側へ電圧を供給するので、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0024】
また、本発明にかかる第2の発光素子制御回路装置は、上記第1の発明の発光素子制御回路装置に加えて
(a)複数の発光素子は複数の発光ユニットに区分けされ、
(b)発光ユニットは複数用意され、
(c)かつ、発光ユニットの数に応じてパルス電圧供給線が複数用意され、
(d)複数の発光ユニットそれぞれは複数のパルス電圧供給線それぞれから1周期が所定時間ずつ遅れたパルス電圧が順に供給される。こうした構成によれば発光素子をマトリクス状に配列した発光素子制御回路装置において、複数の発光素子が同時に点灯するときに電流が集中して生じるノイズを抑制することができる。また、発光素子が点灯する期間に限って電源側から発光素子側へ電圧を供給するので、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0025】
また、本発明にかかる第3の発光素子制御回路装置は、上記第2の発明に加えて
(a)複数のパルス電圧供給線および複数の駆動制御線は、m行(mは2以上の整数)n列(nは2以上の整数)からなるマトリクス状に配置され、
(b)複数の発光素子は、m行に配列されたパルス電圧供給線とn列に配列された駆動制御線とが交差する箇所に接続されてなり、
(c)m行に配列された複数のパルス電圧供給線には1周期が所定時間遅れたパルス電圧が各発光ユニットに供給され、
(d)n列に配列された複数の駆動制御線には複数の発光ユニットにまたがる発光素子に共通のパルス通電するためのパルス状の電流が供給されてなる。こうした構成によれば、上記第2の発明と同様に、発光素子をマトリクス状に配列した発光素子制御回路装置において、複数の発光素子が同時に点灯するときに電流が集中して生じるノイズを抑制することができる。また、発光素子が点灯する期間に限って電源側から発光素子側へ電圧が供給されるので、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0026】
本発明にかかる発光素子制御回路装置の制御方法は、m行(mは2以上の整数)n列(nは2以上の整数)からなるマトリクス状に配置された複数の発光素子m×n個をオンまたはオフ制御するにあたり、前記m×n個の発光素子のすべてのオンオフタイミングが所定間隔ずらされて制御される。前記m×n個からなるすべての発光素子に流れる電流のタイミングをずらすことができるので特定のタイミングにパルス状の電流が集中して流れるという不具合を排除することができる。これによってノイズ発生の増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、発光素子制御回路装置を構成する発光素子のすべてを異なるタイミングで動作させることができ、これによりピーク電流が生じるタイミングが分散されるので電源電圧が急激に低下するという不具合を排除するとともに電流増加によって発生するノイズを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる発光素子制御回路装置を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかるタイミングチャートを示す。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかる発光素子制御回路装置を示す。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかるタイミングチャートを示す。
【図5】従来の画像形成装置に用いられたダイナミックLED駆動部の一例を示す。
【図6】従来の発光制御回路の一例を示す。
【図7】従来のLED駆動装置の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施の形態にかかる発光素子制御回路装置100を示す。発光素子制御回路装置100は、発光素子A1〜A17を有する発光ユニットEU1、電源V1、トランジスタTR1、スイッチS1〜S17、定電流源CC1〜CC17、および制御部110を備える。発光素子A1〜A17を除く構成要素は半導体集積回路として1つの半導体チップの中に内蔵されている。なお、発光素子A1〜A15、スイッチS3〜S15および定電流源CC3〜CC15は実際は存在するが作図の便宜上省略している。なお、「発光ユニット」なる語句は、複数の発光素子を区分けする1つの単位として用いている。したがって、第1の実施形態では発光素子A1〜A17からなる17個の発光素子を指す。
したがって、1つの発光ユニットに含まれる発光素子の数は用途に応じて7個になったり、10個になったり、あるいは24個になったりする場合がある。
【0030】
トランジスタTR1は、Pチャネル型MOSトランジスタからなり、ソースS、ドレインD、および、ゲートGは、電源V1、発光ユニットEU1、および制御部110にそれぞれ接続されている。
【0031】
電源V1は、たとえば3V〜5.5Vの直流電圧であり、その直流電圧はトランジスタTR1のソースSに印加される。トランジスタTR1のゲートGには制御部110から、ハイ(H)レベルおよびロー(L)レベルが交互に変化するスイッチング電圧Vs1が印加される。トランジスタTR1はスイッチング電圧Vs1がHレベルであるときにオフ状態に、Lレベルであるときにオン状態にそれぞれ置かれる。トランジスタTR1は、PチャネルMOSトランジスタではなく、PNPバイポーラトランジスタに置き換えることができる。その場合、スイッチング電圧Vs1のHレベルおよびLレベルに対応するオンオフ状態はPチャネルMOSトランジスタを用いたときと同じになる。
【0032】
発光ユニットEU1を構成する発光素子A1〜A17の第1電極すなわちアノードは共通接続され、この共通接続点はトランジスタTR1のドレインDに接続される。トランジスタTR1のドレインDと共通接続される電圧供給線はパルス電圧供給線Y1として表している。発光素子A1〜A17の個々は半導体デバイスであるLED、OLED、またはLDからなり、かつ単一であることが望ましい。ここで単一とは2個以上の発光素子が直列または並列に接続されていないことを指す。もちろん、電球等の非半導体デバイスを用いてもかまわないが、装置の小型化を図るためにも半導体デバイスを用いるのが好適である。
【0033】
トランジスタTR1のドレインDにはそのゲートGに印加されるスイッチング電圧Vs1の極性とは逆極性のパルス電圧Vp1が出力される。すなわち、スイッチング電圧Vs1がHレベルのときはLレベルとなり、LレベルのときにはHレベルとなる。パルス電圧Vp1がHレベルのときにのみ発光素子A1〜A17を点灯させることができる。
【0034】
発光素子A1〜A17の第2電極すなわちカソードは各別に駆動制御線X1〜X17を介してスイッチS1〜S17の第1端子に各別に接続される。スイッチS1〜S17は、発光素子A1〜A17にそれぞれ対応しており、発光素子A1〜A17のオンオフ動作を切り替えるために用意されている。いま、トランジスタTR1のドレインDにHレベルのパルス電圧Vp1が出力されると、発光素子A1〜A17のすべてが同時にオンするのではなく、スイッチS1〜S17によって選択された発光素子のみがパルス通電される。たとえば、スイッチS1が「閉」の状態、すなわちオン状態であるが、他のスイッチS2〜S17が「開」の状態すなわちオフ状態であるときには、発光素子A1のみがパルス通電されて点灯し、他の発光素子A2〜A17はオフ状態すなわち非点灯状態に置かれる。
【0035】
スイッチS1〜S17のオンオフ切り替えは、制御部110から印加される駆動信号SP1〜SP17によって行われる。駆動信号SP1〜SP17は、スイッチング電圧Vs1と同様にHレべルおよびLレベルをもったいわゆるパルス状の電圧であり、かつ、LレベルからHレベルに遷移するタイミング、およびHレベルからLレベルに遷移するタイミングは、駆動信号SP1〜SP17がすべて同じではなく、所定時間ずつずれるように設定されている。すなわち時分割されている。また、駆動信号S1〜S17は時分割されているだけではなく、そのパルス幅が時間経過とともに変化するいわゆるPWM駆動信号でもある。発光素子A1〜A17の明るさはパルス通電される電流値に依存するが、さらにPWM駆動信号のデューティ比を調整して調整される。デューティ比の調整は制御部110において、たとえば、1.6%〜100%の範囲でたとえば、1.6%のステップで調整されている。
【0036】
定電流源CC1〜CC17は、スイッチS1〜S17の第2端子に各別に接続され、発光素子A1〜A17に流す電流を決めている。定電流の大きさは制御部110で、数mAの単位で調整されている。
【0037】
制御部110からは、スイッチング電圧Vs1、駆動信号SP1〜SP17などの各種電圧や各種信号が提供される。こうした電圧や信号は、制御部110に内蔵される発振器112で生成されたクロック信号が分周期、カウンタ、シフトレジスタ等の各種各様の回路によって信号処理され所定の大きさを有する電圧や所定の周波数、周期、デューティ比に調整されて作られている。
【0038】
発光ユニットEU1は、既に述べたように17個の発光素子A1〜A17を有する。こうした構成は発光素子がLEDであるとき、当業者は、たとえば「17チャンネルLEDドライバ」と称することがある。LEDドライバには17チャンネルだけではなく、7チャンネルや10チャンネルなど用途に応じて使い分けるのが一般的である。
【0039】
図2は、図1に示した発光素子制御回路装置100のタイミングチャートである。スイッチング電圧はVs1は、1周期Tsで表されるパルス状の信号であり、トランジスタTR1のゲートGに印加される。スイッチング電圧Vs1は、立下りタイミングtsf1でHレベルからLレベルに遷移し、立上りタイミングtsr1でLレベルからHレベルに遷移する。立下りタイミングtsf1から立上りタイミングtsr1までのLレベル期間、すなわち期間Ts1でトランジスタTR1はオン状態に置かれる。期間Ts1を除く期間すなわち、Hレベルの間トランジスタTR1はオフ状態に置かれる。
【0040】
パルス電圧Vp1は、スイッチング電圧Vs1に応動してトランジスタTR1のドレインDに出力される。すなわち、パルス電圧Vp1は、若干の遅れを無視すればスイッチング電圧Vs1の極性が反転されたものと同じになる。立上りタイミングtpr1はスイッチング電圧Vs1の立下りタイミングtsf1と同じタイミングであり、立下りタイミングtpf1はスイッチング電圧Vs1の立上りタイミングtsr1と同じとなる。期間Tp1で発光素子A1〜A17のすべてがイネーブル状態に置かれる。しかし、実際点灯に供される発光素子は駆動信号SP1〜SP2の中でイネーブル状態に選択されたものに限られる。なお、「イネーブル状態」とは、駆動制御X1〜X17にパルス電流が供給されている状態を指す。なお、イネーブル状態の逆は「ディスエーブル状態」と称される。各発光素子へのパルス電流の供給はスイッチS1〜S17にオンオフ動作で一義的に決められる。
【0041】
駆動信号SP1は、制御部110からスイッチS1に印加される。駆動信号SP1の1周期Tspは、スイッチング電圧Vs1の1周期Tsと同じであり、かつ、パルス電圧Vp1の1周期Tpとも同じに選ばれる。駆動信号SP1の期間Tsp1でスイッチS1がオンされる。期間Tsp1は立上りタイミングtr1から立下りタイミングtf1までのHレベル期間である。立上りタイミングtr1はスイッチング電圧Vs1の立下りタイミングtsf1およびパルス電圧Vp1の立上りタイミングtpr1と同時にならないように、すなわち、遅延時間tdrだけ遅れるように制御部110で設定される。こうした遅延時間を設けることで、スイッチS1はパルス電圧Vp1が確実にHレベルに遷移した後にオン状態となるので、駆動信号SP1のHレベルの期間、発光素子A1がパルス通電するに十分な電流を供給することができる。遅延時間tdrは制御部110で設定される。遅延時間は例えば、数μs〜数十μsの範囲で設定される。また、トランジスタTR1がオンするタイミングとスイッチS1がオンするタイミングがずらされているので、特定のタイミングでパルス状の電流が集中するという不具合を排除することができる。これによって、電流増大によって生じるノイズを排除することができる。なお、仮に駆動信号SP1の立上りタイミングtr1がパルス電圧Vp1の立上りタイミングtpr1よりも早いとすると発光素子A1に十分なパルス電流を供給することができなくなり所定の明るさを得ることができなくなる。
【0042】
駆動信号SP2は、制御部110からスイッチS2に印加される。駆動信号SP2の1周期は、図示しないスイッチング電圧Vs1の1周期Ts、パルス電圧Vp1の1周期Tp、および駆動信号SP1の1周期Tspと同じに選ばれる。駆動信号SP2の期間Tsp2でスイッチS2がオンされる。期間Tsp2は立上りタイミングtr2から立下りタイミングtf2までのHレベル期間に相当する。立上りタイミングtr2はスイッチング電圧Vs1の立下りタイミングtsf1、パルス電圧Vp1の立上りタイミングtpr1、および駆動信号SP1の立上りタイミングtr1とも同時にならないように設定される。すなわち、駆動信号SP1の立上りタイミングtr1よりも遅延時間td1だけ遅れるように制御部110で設定される。これによって、発光素子A2がパルス通電される点灯タイミングが発光素子A1の点灯タイミングから所定間隔(時間)ずらされるので、特定のタイミングにノイズが増大するという不具合を排除することができる。なお、遅延時間td1は遅延時間tdよりもたとえば1桁ほど小さな大きさに設定されている。
【0043】
駆動信号SP16は、制御部110からスイッチS16に印加される。駆動信号SP16の1周期は、図示しないスイッチング電圧Vs1の1周期Ts、パルス電圧Vp1の1周期Tp、および駆動信号SP1〜SP15の1周期と同じに選ばれる。駆動信号SP16の期間Tsp16でスイッチS16がオンされる。期間Tsp16は立上りタイミングtr16から立下りタイミングtf16までのHレベル期間に相当する。立上りタイミングtr16はスイッチング電圧Vs1の立下りタイミングtsf1、パルス電圧Vp1の立上りタイミングtpr1、駆動信号SP1の立上りタイミングtr1、駆動信号SP2の立上りタイミングtr2とも同時にならないように設定される。また、図示しないが駆動信号SP3〜SP15の立上りタイミングともずらされている。駆動信号SP16の立上りタイミングtr16は、駆動信号SP1の立上りタイミングtr1から15td1の期間、すなわち駆動信号SP1とSP2との間の遅延時間td1の15倍の大きさに遅延時間を広げている。これによって、発光素子A16がパルス通電される点灯タイミングは、発光素子のA1〜A15の点灯タイミングから所定間隔(時間)ずらされるので、特定のタイミングにノイズが増大するという不具合を排除することができる。
【0044】
駆動信号SP17は、制御部110からスイッチS17に印加される。駆動信号SP17の1周期Tspは、スイッチング電圧Vs1の1周期Ts、パルス電圧Vp1の1周期Tp、および駆動信号SP1〜SP16の1周期と同じ大きさに選ばれる。駆動信号SP17の期間Tsp17でスイッチS17がオンされる。期間Tsp17は立上りタイミングtr17から立下りタイミングtf17までのHレベル期間に相当する。立上りタイミングtr17はスイッチング電圧Vs1の立下りタイミングtsf1、パルス電圧Vp1の立上りタイミングtpr1、駆動信号SP1の立上りタイミングtr1、駆動信号SP2の立上りタイミングtr2、駆動信号SP16の立上りタイミングtr16とも同時にならないように設定される。また、図示しないが駆動信号SP3〜SP15の立上りタイミングとも重ならないようにずらされている。立上りタイミングtr17はスイッチング電圧Vs1の立下りタイミングtsf1、パルス電圧Vp1の立上りタイミングtpr1、駆動信号SP1の立上りタイミングtr1、駆動信号SP2の立上りタイミングtr2、駆動信号SP16の立上りタイミングtr16とも同時にならないように設定される。また、図示しないが駆動信号SP3〜SP16の立上りタイミングともずらされている。駆動信号SP17の立上りタイミングtr17は、駆動信号SP1の立上りタイミングtr1から16td1の期間、すなわち駆動信号SP1とSP2との間の遅延時間td1の16倍の大きさに遅延時間を広げている。これによって、発光素子A16がパルス通電される点灯タイミングは、発光素子のA1〜A15の点灯タイミングから所定間隔(時間)ずらされるので、特定のタイミングにノイズが増大するという不具合を排除することができる。
【0045】
以上、駆動信号SP1、SP2、SP16、およびSP17について主に説明した。しかし、駆動信号SP3〜SP15についても同様のことが言える。たとえば、図示しない駆動信号SP10は、制御部110から図示しないスイッチS10に印加される。駆動信号SP10がHレベルのときスイッチS10がオンされる。駆動信号SP10のHレベルはパルス電圧Vp1のHレベルの期間Tp1に収まるように設定される。駆動信号SP10は図示しない立上りタイミングtr10でLレベルからHレベルに遷移し、図示しない立下りタイミングtf10でHレベルからLレベルに遷移する。駆動信号SP10の立上りタイミングTr10はパルス電圧Vp1の立上りタイミングtpr1と同時でもなく、また、駆動信号SP1〜SP9、および駆動信号SP11〜SP17の立上りタイミングとも同時にならないように設定されている。これによって、発光素子A10がパルス通電されるタイミングは発光素子A1〜A9、およびA11〜A17の点灯タイミングから所定時間ずらされるので、特定のタイミングにノイズが増大するという不具合を排除することができる。
【0046】
トランジスタTR1がオン状態の期間、すなわち期間Tp1において、スイッチS1〜S17を順にオンさせ発光素子A1〜A17に時間的に異なるタイミングで電流を供給する方法はたとえば特許文献2に開示されるように時分割駆動と称される。
【0047】
本発明の第1の実施形態は要約すると次のとおりである。すなわち、発光素子制御回路装置100は、第1電極および第2電極を有する発光素子A1〜A17を備えた発光ユニットEU1と、発光素子A1〜A17に対して所定時間td1遅れてパルス通電を行う駆動制御線X1〜X17を備える。また、発光ユニットEU1にオンまたはオフ状態に遷移するパルス電圧Vp1を供給するパルス電圧供給線Y1を備え、パルス電圧供給線Y1がオン状態、すなわちイネーブル状態に置かれたときに複数の発光素子A1〜A17それぞれがパルス通電の1周期Tspを所定時間td1遅れて駆動される発光素子制御回路装置であると言える。
【0048】
(第2の実施形態)
図3は本発明の第2の実施形態にかかる発光素子制御回路装置300を示す。発光素子制御回路装置300は、複数の発光ユニットを備える。「発光ユニット」とは複数の発光素子を区分けする1つの単位として用いている。したがって、「発光ユニット」なる部品や部位が実際に存在するわけではない。図1に示した発光素子制御回路装置100との違いは、第1に発光ユニットEU1だけではなく、発光ユニットEU2〜EU7を加えた7チャンネルの発光ユニットを備えている。第2に、7チャンネルの発光ユニットにパルス状の電圧を供給するためにトランジスタTR1〜TR7の7つのトランジスタを用意している。第3にトランジスタTR1〜TR7の各ドレインDにパルス電圧供給線Y1〜Y7を各別に接続している。第4に複数の発光ユニットEU1〜EU7にまたがって駆動信号供給線X1〜X17を接続している。第5に、トランジスタTR1〜TR7のオンオフ動作を切り替えるために、スイッチング電圧Vs1〜Vs7の7つ用意している。第6に駆動信号供給線X1〜X17を各別にスイッチS1〜S17に接続している。なお、スイッチS1〜S17、定電流源CC1〜CC17、および制御部110は第1の実施形態と同じものを用いることができる。
【0049】
発光ユニットEU1は第1の実施形態と同様に発光素子A1〜A17を有する。発光ユニットEU2は、発光素子B1〜B17を有し、図示しない発光ユニットEU3〜EU5は、図示しない発光素子C1〜C17、D1〜D17、E1〜E17を各別に有している。発光ユニットEU6は、発光素子F1〜F17を、発光ユニットEU7は、発光素子G1〜G17をそれぞれ有している。
【0050】
トランジスタTR1〜TR7の各ゲートGには同じ周期でかつ時分割されたスイッチング電圧Vs1〜Vs7が各別に印加される。すなわち、トランジスタTR1〜TR7は同じタイミングでオンオフするのではなく、互いにオンオフ時間がずらされるように所定間隔(時間)を持つように設定されている。たとえば、トランジスタTR1がオンすると、その後はトランジスタTR2が所定時間経過した後に遅れてオンし、その後トランジスタTR3、TR4、TR5、TR6、およびTR7が所定の間隔をもって、この順にオンするように設定されている。
【0051】
発光素子制御回路装置300は、発光素子がm行n列に配置されたいわゆるマトリクス状に配置されている。すなわち、発光素子はたとえば7行17列に配置され、119個の発光素子が配列される。こうした配置に伴い、パルス電圧供給線Y1〜Y7は行方向に、駆動制御線X1〜X17は、列方向にそれぞれ配置される。そして、これらが交差する箇所に発光素子A1〜A17、B1〜B17、C1〜C17(図示せず)、D1〜D17(図示せず)、E1〜E17(図示せず)、F1〜F17、G1〜G17が各別に接続される。こうした構成は発光素子がLEDであるとき、当業者はたとえば「7x17LEDマトリクスドライバ」と称し、携帯電話のキー部や背面部分にマトリクス状に配置されたLEDを制御し、図柄や文字等を点灯、点滅させるために用いる。
【0052】
たとえば、発光ユニットEU1を構成する発光素子A1の点灯(発光)は、パルス電圧供給線Y1と駆動制御線X1を共にイネーブル状態にして行う。発光素子A2の点灯は、パルス電圧供給線Y1と駆動制御線X2を共にイネーブル状態にして行う。発光素子A16の点灯は、パルス電圧供給線Y1と駆動制御線X16を共にイネーブル状態にして行う。同様に、発光素子A17の点灯は、パルス電圧供給線Y1と駆動制御線X17を共にイネーブル状態にして行う。
【0053】
イネーブル状態、ディスエーブル状態と、パルス電圧供給線Y1〜Y7および駆動制御線X1〜X17のHレベル、Lレベルとの関係は一義的に定めることはできない。しかし、本発明の一実施形態では、パルス電圧供給線Y1〜Y7および駆動制御線X1〜X17がHレベルのときにイネーブル状態となり、パルス電圧供給線Y1〜Y7および駆動制御線X1〜X17がLレベルのときにディスエーブル状態になるように設定される。
【0054】
また、発光ユニットEU7を構成する発光素子G1の点灯(発光)は、パルス電圧供給線Y7と駆動制御線X1を共にイネーブル状態にして行う。発光素子G2の点灯は、パルス電圧供給線Y7と駆動制御線X2を共にイネーブル状態にして行う。発光素子G16の点灯は、パルス電圧供給線Y7と駆動制御線X16を共にイネーブル状態にして行う。同様に、発光素子G17の点灯は、パルス電圧供給線Y7と駆動制御線X17を共にイネーブル状態にして行う。
【0055】
他の発光ユニットについても、発光ユニットEU1、EU7と同様である。すなわち、各発光素子は交差するパルス電圧供給線Y1〜Y7と駆動制御線X1〜X17が共にイネーブル状態に置かれたときに点灯する。たとえば、発光ユニットEU2の発光素子B1は、パルス電圧供給線Y2と駆動制御線X1が共にイネーブル状態に置かれたときに点灯する。また、図示しない発光ユニットEU6の発光素子F16は、パルス電圧供給線Y6と駆動制御線X16が共にイネーブル状態に置かれたときに点灯する。
【0056】
図3に示す発光素子制御回路装置の特徴は端的に言えば、発光素子7x17=119個のすべての発光素子は同時にオンまたはオフしないように制御されることにある。言い換えれば119個の発光素子のオンオフのタイミングが重ならないよう個々の発光素子のオンオフタイミングが個別に設定される。
【0057】
ここで、本発明の技術的思想から離れ、パルス電圧供給線Y1〜Y7の間、および駆動制御線X1〜X17の間に遅延時間が設けない場合を想定してみる。この場合、119個の発光素子は同時に点灯または消灯する。したがって、すべての発光素子がたとえば点灯されたタイミングでは電流が最も多く流れる。これによってノイズが増大するという不具合が生じる。
【0058】
また、たとえば、パルス電圧供給線Y1〜Y7の間にのみ遅延をもたせ、かつ、パルス電圧供給線Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7の順序で遅延させ、駆動制御線X1〜X17の間には遅延時間が設けないときを想定してみる。このときには、最初にパルス電圧供給線Y1に接続される発光素子A1〜A17が同時に点灯または消灯する、次にパルス電圧供給線Y2に接続される発光素子B1〜B17が同時に点灯または消灯し、最後にはパルス電圧供給線Y7に接続される発光素子G1〜G17が同時に点灯または消灯することになる。したがって電流が集中して流れる状態は7分の1に分散されるので、ノイズの増大を抑制することは可能となる。しかし、依然としてノイズの増大が生じていることには変わりはない。
【0059】
これに対し、本発明にかかる発光素子制御回路300は、パルス電圧供給線Y1〜Y7、およびに駆動制御線X1〜X17の両者に遅延時間を設けるというものである。すなわち、電圧供給線Y1〜Y7、およびに駆動制御線X1〜X17の両者が時分割に制御されるものである。これによって、発光素子のオンオフタイミングは、発光素子すべてにおいて異なるので、特定のタイミングでの電流集中を大幅に減少させることができるので、ノイズの発生を大幅に抑制することができる。
【0060】
図4は、図3に示した発光素子制御回路装置300のタイミングチャートである。パルス電圧Vp1〜Vp7は、それぞれパルス電圧供給線Y1〜Y7に出力される。なお、パルス電圧Vp3〜Vp5、および発光ユニットEU3〜EU5は図3には図示していないが図4には示している。
【0061】
パルス電圧Vp1は、トランジスタTR1のドレインDに出力される。パルス電圧Vp1は、発光素子A1〜A17を有する発光ユニットEU1に供給される。パルス電圧Vp1の1周期Tpの間には、発光ユニットEU1を構成する発光素子A1〜A17をオン状態、すなわちイネーブル状態にするための期間Tp1が設けられる。パルス電圧Vp1の1周期Tpの大きさは制御部110で設定される。制御部110には発振器112が内蔵されており、発振器112から出力される基準クロック信号clkの1周期を1単位として、パルス電圧Vp1〜Vp7の1周期Tpおよび期間Tp1が設定される。たとえば、発振器112の基準発振周波数、すなわち、基準クロック信号clkが1MHzに設定されたとすると、その1周期は1μsとなる。したがって、基準クロック信号clkの1単位は1μsとなる。1周期Tpはたとえば4760clkに設定される。すなわち、1周期Tpは4,76msに設定されている。周期Tpは周波数に換算すると210Hz程度となる。また、期間Tp1は680clkに設定されている。すなわち、期間Tp1は、0.68msに設定されている。期間Tp1の大きさは発光ユニットの数、すなわち、パルス電圧Vp1〜Vp7の数に基づき一義的に決められる。本発明の一実施形態では発光ユニットはEU1〜EU7の7つであるから、期間Tp1は、1周期Tpの7分1の大きさとなり、Tp1=Tp/7=4.76ms/7=0.68msとなる。
【0062】
パルス電圧Vp1〜Vp7の間の関係は、互いに時間的にずらされて、すなわち時分割されて発生するように制御されていることを除けば同じ条件に設定されている。すなわち、これらのパルス電圧の周期Tpは等しく、また、期間Tp1も等しく設定される。パルス電圧Vp1がトランジスタTR1のドレインDに出力されるように、パルス電圧Vp2〜Vp7は、トランジスタTR2〜TR7のドレインDに各別に出力される。パルス電圧Vp1が立上ると、その後はパルス電圧Vp2、Vp3、Vp4、Vp5、Vp6、およびVp7がこの順序で立上る。すなわち、前のパルス電圧が立上った後、期間Tp1遅れて次のパルス電圧が立上る。すなわち、各パルス電圧は時分割でオンオフされるよう制御部110で制御される。最後のパルス電圧Vp7が発光ユニットEU7をイネーブル状態にする期間Tp1が、HレベルからLレベルに遷移すると、再びパルス電圧Vp1はLレベルからHレベルに遷移し、発光ユニットEU1をイネーブル状態に設定する。
【0063】
図4にはパルス電圧Vp1〜Vp7の他に発光ユニットEU1〜EU7がイネーブル状態に置かれる期間Teu1を示す。
【0064】
期間Teu1において、図2に示した駆動信号SP1〜SP17が制御部110で発生される。また、発光ユニットEU1〜EU7は、それぞれ1周期Teuでもって制御される。発光ユニットEU1〜EU7のイネーブル状態はパルス電圧Vp1〜Vp7がHレベルの期間、すなわち、期間Tp1に限って提供される。すなわち、発光ユニットEU1は、パルス電圧Vp1の期間Tp1でイネーブル状態となり、発光ユニットEU2は、パルス電圧Vp2の期間Tp1でイネーブル状態となる。同様に発光ユニットEU3〜EU7は、パルス電圧Vp3〜Vp7の各期間Tp1でイネーブル状態に置かれる。
【0065】
発光ユニットEU1〜EU7がイネーブル状態に置かれる期間Teu1は制御部110で設定される。この期間Teu1はパルス電圧Vp1〜Vp7に設定された期間Tp1よりも短い。すなわち、Tsp1<Teu1の関係に維持される。期間Tp1がたとえば680clkに設定されたとき、期間Teu1はたとえば、635clkに設定されている。したがって、基準クロック信号clkの周波数が1MHz、すなわち、その1周期が1μsであるとき、期間Tp1とTeu1との差は、680−635=45clk=45μsの間隔(時間)が設定されることになる。また、パルス電圧Vp1〜Vp7がLレベルからHレベルに立上ったタイミングからEU1〜EU7がそれぞれ立上るタイミングとの間には発光ユニットEU1〜EU7を確実に駆動するために遅延時間tdrを設ける。遅延時間tdrは制御部110で設定され、その大きさは、たとえば、20clkに設定している。すなわち、20μsに設定している。遅延時間tdrの設定は発光ユニットの数と、1つの発光ユニットに内蔵される発光素子の数に応じて制御部110で設定される。
【0066】
上記の説明から明らかなように発光ユニットEU1〜EU7のそれぞれには17個の発光素子が構成されている。そして、各発光ユニットに内蔵される17個の発光素子は所定時間遅れて点灯する。図3に示したマトリクス状に配置した発光素子制御回路装置300では、発光素子と隣の発光素子との間にはたとえば、1clkの間隔(時間)を設けて点灯させる。すなわち、17チャンネルLEDドライバの場合、最初に点灯する発光素子と最後に発光する発光素子との間には16μsの時間差が生じる。したがって、各発光ユニットがイネーブル状態に置かれる期間Tp1の大きさは、チャンネル数も考慮して設定される。
【0067】
本発明の一実施形態では基準クロック信号clkの周波数は1MHzに設定している。なお、発振器112を用いずに制御部110の外部から所定の周波数と周期に設定した基準クロック信号clkを供給するようにしてもよい。いずれにしても基準クロック信号clkの周波数と周期は、随時設定することができる。たとえば、周波数は200KHz〜10MHzの範囲で調整してもよい。いま、周期Tpの設定はクロックパルス数によって決めるものとし、そのクロック数をたとえば4760clkに設定すると、基準クロック信号clkの周波数をたとえば200KHzに設定した場合には、基準クロック信号clkの1単位は5μsとなるから、パルス電圧Vp1〜Vp7の1周期Tpは、Tp=5μs・4760=23.8msに設定される。これは周波数に換算すると、約42Hzとなる。また、発振器112の発振周波数を10Mzに設定したとすると、基準クロック信号clkの1単位は0.1μsとなり、パルス電圧Vp1〜Vp7の1周期Tpは、Tp=0.1μs・4760=0.476msに設定される。これは周波数に換算すると、約2.1KHzとなる。
【0068】
さて、本発明にかかるように、発光素子、表示素子に印加される電圧および電流が共に時分割で駆動される、いわゆる電圧、電流が時分割で駆動される発光素子制御回路装置では、供給するパルス電圧およびパルス電流の周波数の設定に配慮しなければならない。すなわち、本発明の一実施の形態では、制御部110に内蔵される発振器112で、周波数が1MHzの基準クロック信号clkを発振させるも、発光ユニットEU1〜EU7は、周波数が約210Hzで駆動するようにしてみた。一般的にこの周波数を高く設定することには不都合は存在しないものと考えられる。しかし、この周波数を低くなると、発光素子、表示素子のちらつきを無視することができなくなる。このちらつきは日本での電源商用周波数50Hz、60Hzが1つの目安となる。すなわち、ちらつきが許容できるのは一般的に50Hzであると考えると、本発明の実施形態では周期に換算して、20ms以下の駆動周波数で発光ユニットを駆動するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の発光素子制御回路装置は、発光素子には電圧および電流が共に所定時間ずつ遅れた、すなわち時分割されて供給されるので発光素子が特定のタイミングで同時に点灯することによって電流が集中して流れるという不具合を排除することができる。これによって、発光素子がスイッチングしたときに生じるノイズが特定のタイミングで増大するという不具合を排除することができるので、その産業上の利用可能性は極めて高い。
【符号の説明】
【0070】
100、300 発光素子制御回路装置
110 制御部
112 発振器
A1〜A17、B1〜B17、C1〜C17、D1〜D17、E1〜E17、F1〜F17、G1〜G17 発光素子
CC1〜CC17 定電流源
EU1〜EU7 発光ユニット
S1〜S17 スイッチ
SP1〜SP17 駆動信号
TR1〜TR7 トランジスタ
V1 電源
Vs1〜Vs7 スイッチング電圧
Vp1〜Vp7 パルス電圧
X1〜X17 駆動制御線
Y1〜Y7 パルス電圧供給線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子と、前記複数の発光素子に対して所定間隔で各別にパルス通電を行う複数の駆動制御線と、前記複数の発光素子にオンまたはオフ状態に遷移するパルス電圧を供給するパルス電圧供給線とを備え、前記パルス電圧供給線が前記オン状態に遷移した期間に前記複数の発光素子それぞれが前記パルス通電の1周期の所定時間遅れて駆動される発光素子制御回路装置。
【請求項2】
請求項1において、前記複数の発光素子は複数の発光ユニットに区分けされ、かつ、前記発光ユニットの数に応じて前記パルス電圧供給線を複数用意し、前記複数の発光ユニットそれぞれには前記複数のパルス電圧供給線それぞれから1周期が所定時間ずつ遅れたパルス電圧が順に供給される発光素子制御回路装置。
【請求項3】
請求項2において、前記複数のパルス電圧供給線および前記複数の駆動制御線は、m行(mは2以上の整数)n列(nは2以上の整数)からなるマトリクス状に配置され、前記複数の発光素子は、m行に配列された前記パルス電圧供給線と前記n列に配列された前記駆動制御線とが交差する箇所に接続されてなり、前記m行に配列された前記複数のパルス電圧供給線には1周期が所定時間遅れた前記パルス電圧が前記発光ユニットに供給され、前記n列に配列された前記複数の駆動制御線には前記複数の発光ユニットにまたがる前記発光素子に共通の前記パルス通電するためのパルス状の電流が供給されてなる発光素子制御回路装置。
【請求項4】
請求項1または2において、前記発光素子は単一の半導体デバイスである発光素子制御回路装置。
【請求項5】
請求項1または2において、前記パルス電圧の周期は20ms以下である発光素子制御回路装置。
【請求項6】
請求項1または2において、前記複数の駆動制御線には各別に前記発光素子に電流を供給するための定電流源と前記定電流源の動作をオンオフさせるスイッチが互いに直列に接続される発光素子制御回路装置。
【請求項7】
請求項6において、前記スイッチはパルス幅変調信号によってオンオフされ、前記パルス通電はパルス幅変調された電流によって行われる発光素子制御回路装置。
【請求項8】
請求項1または2において、前記複数の発光素子にパルス通電される最初のタイミングは、前記パルス電圧供給線がオン状態にされるタイミングよりも所定時間遅い発光素子制御回路装置。
【請求項9】
請求項8において、前記複数の発光素子にパルス通電される最後のタイミングは、前記パルス電圧供給線がオフ状態にされるタイミングよりも所定時間早い発光素子制御回路装置。
【請求項10】
請求項1または2において、第1主電極、第2主電極、および制御電極を有するP型トランジスタを有し、前記第1主電極に直流電圧が印加され、前記制御電極にパルス状のスイッチング電圧が印加され、前記第2主電極から前記パルス電圧が出力される発光素子制御回路装置。
【請求項11】
請求項10において、前記P型トランジスタはpチャネルMOSトランジスタであり、前記第1主電極、第2主電極、および制御電極はそれぞれソース、ドレインおよびゲートである発光素子制御回路装置。
【請求項12】
請求項10において、前記P型トランジスタはpnpバイポーラトランジスタであり、前記第1主電極、第2主電極、および制御電極はそれぞれエミッタ、コレクタおよびベースである発光素子制御回路装置。
【請求項13】
m行(mは2以上の整数)n列(nは2以上の整数)からなるマトリクス状に配置された複数の発光素子m×n個をオンまたはオフを制御するにあたり、前記m×n個の発光素子のすべてのオンオフタイミングが重ならないように所定間隔ずらされて制御される発光素子制御回路装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−221262(P2011−221262A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89990(P2010−89990)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】